アクティブ除振装置
【課題】空気ばね20をアクチュエータとして利用して、除振対象物の振動を減殺するようにした空気ばねユニット2において、除振対象物が大型化しても空気の消費量の著しい増大を招くことなく、従来までと同様の高応答、高精度の振動制御を可能としながら、従来以上に高速の位置制御を可能とする。
【解決手段】加速度センサ31により定盤3など除振対象物の振動状態を検出し、これをフィードバックしてサーボ弁34を制御することにより、空気ばね20の内圧を変更して除振対象物にその振動を減殺する制御力を付加する。前記除振対象物の基礎に対する相対高さの変化を変位センサ32により検出し、これをフィードバックして電磁比例弁35を制御することにより、除振対象物の高さが基準位置に近づくように空気ばね20の内圧を調整する。双方の空気圧制御が相互に補完し合うことで、制御の応答性及び安定性の両立が図られる。
【解決手段】加速度センサ31により定盤3など除振対象物の振動状態を検出し、これをフィードバックしてサーボ弁34を制御することにより、空気ばね20の内圧を変更して除振対象物にその振動を減殺する制御力を付加する。前記除振対象物の基礎に対する相対高さの変化を変位センサ32により検出し、これをフィードバックして電磁比例弁35を制御することにより、除振対象物の高さが基準位置に近づくように空気ばね20の内圧を調整する。双方の空気圧制御が相互に補完し合うことで、制御の応答性及び安定性の両立が図られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体関連装置や精密計測装置など、振動の影響を受けやすい精密な装置の設置に用いられる除振装置に関し、特に、それらの除振対象物を支持した気体ばねの内圧を変更することによって、振動を減殺する振動制御の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の除振装置としては、例えば、特許文献1に開示されるように、空気ばねを介して支持した除振対象物(荷)の振動や位置をセンサにより検出し、この検出信号をフィードバックしてコントローラによりアクチュエータを駆動することにより、該除振対象物にその振動を減殺するような振動的な制御力を付加するようにしたアクティブタイプのものが知られている。
【0003】
このものではアクチュエータとして空気ばね自体を利用するようにしており、その空気ばねに対する空気の給排系にサーボ弁を配設し、これをコントローラにより制御して、空気ばねの内圧を変化させることにより、除振対象物の振動を減殺するような制御力を発生させるとともに、除振対象物の高さ位置を維持するように、空気ばねの内圧を調整するようにしている。
【0004】
また、特許文献2、3などには、前記のものと同様に、フィードバックしたセンサ信号に基づいて電気空圧アナログ弁を制御して、空気ばねに制御力としての空気圧を注入するようにしたアクティブ振動絶縁装置において、さらに、除振対象物の高さ位置(レベル)の変動に応じて機械的に作動し、空気ばねに空気圧を注入する圧力調整弁を備えることが開示されている。
【0005】
ところで、そのように空気ばね自体をアクチュエータとして利用する場合には、除振対象物の振動をより高い周波数域まで低減可能とし、且つ安定なフィードバックを実現するために、前記前者の従来例(特許文献1)のように、応答性が高く、微小な制御が可能なサーボ弁を用いて、空気圧を調整するのが一般的である。
【0006】
しかし、サーボ弁は、その構造上、空気圧を一定に維持するときであっても空気を消費し、しかも、その空気消費量がバルブの大流量化に伴い増大するという特性を有するため、除振対象物の大型化に対応して空気ばねの容量を大きくし、これに応じてサーボ弁を大流量化すると、空気消費量が多くなり過ぎて現実には使用できないという事態を招く。このことは空気ばねやサーボ弁の数を増やした場合でも同様である。
【0007】
一方、前記後者の従来例(特許文献2、3)には、空気圧制御のためにサーボ弁、電気空圧比例弁を用いる、旨の記載があり、仮に比例弁を用いるようにすれば前記した空気消費量の問題は生じないが、一般に比例弁による空気圧制御の応答速度はサーボ弁に比べてかなり低いので、前記のような振動制御には不向きであると考えられている。
【0008】
この点につき、特許文献4には、比例弁としてスプール弁を用い、その動作速度を最大限に高めることによって、応答性を高めることが提案されている。すなわち、比例弁の弁体(スプール)を静圧軸受によってハウジングに非接触状態で支持するとともに、その端部に設けた強力なボイスコイルモータによって直接駆動する。さらに、そのモータの制御をスプールの変位及び速度の検出信号に基づくフィードバック制御として、オーバシュートのような無駄な動きを抑制しながら、スプールを最大限、迅速に動作させるのである。
【特許文献1】特許第3372975号公報
【特許文献2】特開平4−262144号公報
【特許文献3】特開平6−50382号公報
【特許文献4】特開2005−147318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、仮に前記提案例(特許文献4)の振動制御装置のようにスプールの動作速度を最大限に高めて、これによる空気圧制御の応答性を高めたとしても、サーボ弁ほど高い応答性は得られない。従って、提案例のものは、比較的要求の緩やかな除振装置には実用可能であっても、例えばミクロンオーダの微細加工を行う半導体製造装置のような厳しい振動制御の要求には応えられない場合がある。
【0010】
また、スプール弁は、筒状のハウジングに形成された複数のポート同士の連通状態を、スプールの軸方向変位によって切換えるとともに、その連通路の断面積を無段階に変化させて空気の流量を調整するという構造であり、空気ばねへの給気状態と排気状態との間に不感帯が存在するとともに、スプールの変位と空気流量の変化とが比例せず、両者の間には複雑な非線形関係があるので、制御の応答性を高めるために制御ゲインを大きく設定すると、不安定になり易いという問題もある。
【0011】
尚、後者の従来例(特許文献2、3)のように、高さ位置の調整のために機械的に作動する圧力調整弁を用いた場合、除振対象物の高さ位置の変動に対する空気圧の調整遅れが大きく、また、構造上、精度の高い位置制御は困難であるとともに、基礎に設置した圧力調整弁の変位検出部が除振対象に常に接触することになるので、ここから振動が伝わってしまうという不具合も生じる。
【0012】
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、気体ばねをアクチュエータとして利用するアクティブ除振装置において、その気体ばねに気体を給排するための構成に工夫を凝らして、除振対象物が大型化しても気体の消費量の著しい増大を招くことなく、所要の応答性及び精度の得られる振動及び位置の制御を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の解決手段は、従来までと同様に除振対象物の振動状態に基づいてサーボ弁を制御し、これにより気体ばねの内圧を変化させて制御力を発生させるとともに、当該除振対象物の高さ位置の変化に対応して、電磁比例弁により気体ばねの内圧を調整するようにしたものである。
【0014】
具体的に、請求項1の発明は、除振対象物を基礎に対し気体ばねで支持するとともに、該除振対象物の振動状態を検出するための振動センサと、前記気体ばねの内圧を調整するためのサーボ弁とを備え、このサーボ弁を前記振動センサからの信号に基づいて制御することにより、前記気体ばねの内圧を変更して、前記除振対象物にその振動を減殺する制御力を付加するようにしたアクティブ除振装置を対象とする。
【0015】
そして、前記除振対象物の基礎に対する高さ位置を検出するための位置センサと、前記気体ばねにその内圧を調整可能に接続された電磁比例弁と、該電磁比例弁を前記位置センサからの信号に基づいて制御することにより、前記除振対象物の基準位置からの変位が小さくなるように前記気体ばねの内圧を調整する変位制御手段とを備える構成とする。
【0016】
前記の構成により、まず、除振対象物の振動が振動センサにより検出されたときには、この振動センサからの信号に基づいてサーボ弁が制御され、これにより気体ばねの内圧が微小に且つ高精度に変更されて、前記除振対象物に制御力が付加される。この制御力によって除振対象物の振動が減殺される(振動制御)。その際、前記サーボ弁が高応答で、微小な気体圧の調整も可能なものであるから、除振対象物の微小な振動に対し遅れなく、且つ高精度に気体ばねの内圧を変更することができ、除振対象物の振動をより高い周波数域まで低減し、且つ安定な振動制御を実現することができる。
【0017】
また、前記除振対象物の基礎に対する高さ位置が変化すると、位置センサからの信号に基づいて変位制御手段により電磁比例弁が制御されて、除振対象物の変位が小さくなるように気体ばねの内圧が調整される(位置制御)。そして、その比例弁による気体圧の調整が前記サーボ弁に比べればラフで応答性も低いものであっても、従来例(特許文献2、3)のような機械式の圧力制御弁と比較すれば高精度且つ高応答であり、また、サーボ弁と比較して気体圧の調整量は大きい(ゲインが大きい)から、除振対象物の高さ位置を速やかに基準位置に戻すことができる。
【0018】
しかも、前記比例弁は、その構造上、気体ばねの内圧を一定に維持するときには気体を消費しないので、除振対象物の大型化に対応して気体ばねの容量を大きくしたときに、これに応じて比例弁を大流量化したとしても、サーボ弁のような気体の消費量増大の問題は生じない。
【0019】
さらに、そのように気体ばねの容量を大きくしたときでも、前記のようにサーボ弁及び比例弁を組合せたことで、前記の振動制御及び位置制御において高い応答性及び安定性を両立できる。
【0020】
すなわち、気体ばねの容量が大きいということは、これをアクチュエータとして見たときには、時定数が大きくて、ゲインが低いということであり、これに対する気体の給排流量を増大させないとすれば、制御応答性の低下が懸念される。このことは、定常的な微小振幅の振動の除振については位置制御に比べて制御力がかなり小さくてよいため、制御ゲインの増大で十分に対応でき、問題にはならないが、例えば装置内のステージが移動するときのように大きな振動が発生して変位が生じる場合には、気体ばねの容量が大きいとサーボ弁だけでは流量が不足し、位置の制御に遅れを生じることになる。
【0021】
これに対し、前記構成の如くサーボ弁及び比例弁を組合せれば、大振幅の振動の入力に対して、まずサーボ弁の作動によって気体の給排が高応答に行われるとともに、その振動入力に伴う除振対象物の変位に対応して比例弁の作動による気体の給排が大流量で行われることになるから、気体ばねの容量が大きいときでも、その内圧を遅れなく、且つ適切に制御することが可能になる。
【0022】
その一方で、前記のように比例弁による気体の給排が大流量で行われるときには、このことに起因して気体ばねの内圧に振動的な変化(オーバーシュート)を生じることがあり、比例弁の特性が非線形であることから、制御の不安定化を招く虞れもあるが、このような気体圧の振動的な変化は、前記したサーボ弁による気体圧の微小且つ高精度の調整(振動制御)によって吸収可能であり、これにより除振対象物の位置を速やかに且つ安定的に基準位置に収束させることができる。
【0023】
斯くして、前記の構成によれば、比較的小流量だが高応答且つ高精度のサーボ弁による気体圧制御と、比較的大流量の比例弁による気体圧制御とを組み合わせて、相互に補完し合うようにしたことで、除振対象物が大型化しても気体の消費量が著しく増大することはなく、従来同様の高応答、高精度の振動制御が行えるとともに、従来以上に高速でしかも安定性の高い位置制御を行うことができる。
【0024】
前記構成のアクティブ除振装置において、好ましいのは、前記振動センサを、除振対象物の加速度を検出する加速度センサ、又は該除振対象物の速度を検出する速度センサの少なくとも一方とし、その加速度センサ乃至速度センサからの信号に基づいてサーボ弁を制御することにより、前記除振対象物に制御力が付加されるように気体ばねの内圧を変更する振動制御手段を備えることである(請求項2の発明)。
【0025】
こうして加速度センサ乃至速度センサからの信号をフィードバックして、振動制御手段によりサーボ弁を制御することにより、除振対象物に対しその振動を減殺するように適切な制御力を付加することができる。
【0026】
その場合に、より好ましいのは、基礎の加速度乃至速度を検出する少なくとも1つの別の振動センサをさらに備え、この別の振動センサからの信号に基づいて前記振動制御手段によりサーボ弁を制御することで、除振対象物に前記基礎からの伝達振動を減殺する制御力が付加されるように、気体ばねの内圧を変更することである(請求項3の発明)。
【0027】
こうして基礎(床)の加速度乃至速度を検出して、そこから気体ばねを通して除振対象物に伝達される微小な振動を推定し、この伝達振動を減殺するように例えば逆位相の制御力を付加することによって、除振対象物の振動をより一層、低減することができる。
【0028】
また、前記構成のアクティブ除振装置において、変位制御手段を、除振対象物の基準位置からの変位が所定値以下のときには電磁比例弁の制御を行わず、位置センサからの信号に基づいてサーボ弁を制御することにより、前記除振対象物の変位が小さくなるように気体ばねの内圧を調整するものとすることもできる(請求項4の発明)。
【0029】
こうすれば、除振対象物の基準位置からの変位が例えば数ミクロン程度と非常に小さくて、前記比例弁による気体圧の調整によっては位置の制御が困難な場合に、変位制御手段により位置センサからの信号に基づいてサーボ弁の制御が行われ、これにより気体ばねの内圧が高精度に調整されることによって、前記除振対象物の位置を極めて正確に基準位置に戻すことができる。
【0030】
さらに、前記変位制御手段は、電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の非線形関係を線形に補正するための補正特性を記憶していて、この補正特性に基づいて前記電磁比例弁への制御入力を補正するものとすることもできる(請求項5の発明)。こうすれば、前記比例弁への制御入力を、気体の流量との間の関係が線形になるように補正することができるので、制御の不安定化を防止しつつ、比例弁の制御ゲインを大きくして応答性を高めることができる。
【0031】
次に、本発明の第2の解決手段は、上述した提案例(特許文献4)のように比例弁を高速化できることを考慮して、この比例弁だけで前記のように気体ばねの内圧を調整し、振動及び位置の制御を行うようにするとともに、そうして高速化した比例弁によって振動制御を行う場合に特に問題になる当該比例弁の非線形性を補償するようにしたものである。
【0032】
具体的に、請求項6の発明は、除振対象物を基礎に対し気体ばねで支持してなり、その除振対象物の振動状態及び基礎に対する高さ位置の少なくとも一方を検出するためのセンサと、前記気体ばねにその内圧を調整可能に接続された電磁比例弁と、この電磁比例弁を前記センサからの信号に基づいて制御することにより、前記除振対象物の基準位置からの変位が小さくなるか、或いは前記除振対象物にその振動を減殺する制御力が付加されるかの少なくとも一方となるように前記気体ばねの内圧を調整する制御手段と、を備えたアクティブ除振装置において、さらに、前記制御手段を、前記電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の非線形関係を線形に補正するための補正特性を記憶していて、この補正特性に基づいて前記電磁比例弁への制御入力を補正するように構成したものである。
【0033】
前記の構成により、除振対象物の振動状態や高さ位置の変化がセンサにより検出されたときには、このセンサからの信号に基づいて制御手段により電磁比例弁が制御され、これにより気体ばねの内圧が調整されて、前記除振対象物の振動を低減する振動制御が行われるか、該除振対象物の位置を一定に保つ位置制御が行われるか、或いはそれら両方の制御が行われる。
【0034】
そうして行われる比例弁による振動制御は、サーボ弁に比べれば応答性が低いものの、比例弁の動作を高速化すれば、比較的要求の緩い除振対象物に対しては実用可能である。しかも、前記比例弁への制御入力は、気体の流量との間の関係が線形になるように補正されるので、比例弁の制御ゲインを大きくして応答性を高めても、不安定にはなり難い。
【0035】
また、上述したように、比例弁による気体圧の調整は機械式の圧力制御弁と比べれば高精度且つ高応答であり、サーボ弁と比較しても気体圧の調整量は大きい(ゲインが大きい)から、高速で安定性の高い位置制御を行うことができる。しかも、前記の如く比例弁への制御入力を補正して、気体の流量との間の関係を線形化することで、位置制御においても制御の不安定化を防止しつつ、比例弁の制御ゲインを大きくして応答性を高めることができる。そして、勿論、除振対象物の大型化に応じて比例弁を大流量化しても、サーボ弁のような気体の消費量増大の問題は生じない。
【0036】
尚、前記センサとしては、除振対象物の加速度又は速度を検出するための振動センサや除振対象物の基礎に対する高さ位置を検出するための位置センサが考えられる。また、そうして除振対象物の振動状態乃至高さ位置の検出値に基づいて、比例弁を制御する他に、基礎の加速度乃至速度を検出する少なくとも1つの振動センサをさらに備え、この振動センサからの信号に基づいて制御手段により比例弁を制御することにより、除振対象物に基礎からの伝達振動を減殺する制御力が付加されるように、気体ばねの内圧を変更するようにしてもよい。
【0037】
ここで、前記の補正特性としては、例えば前記制御手段においてセンサからの信号に基づいて求めた制御入力の値を、予め設定した演算式により補正演算することもできるが、制御応答性を高めるという観点からは、補正前後の制御入力値を互いに対応付けて設定した補正テーブルを準備し、制御手段は、センサからの信号に基づいて仮決定した制御入力値に対応する補正後の制御入力値を前記補正テーブルから読み取って、これにより電磁比例弁を制御するものとするのがよい(請求項7の発明)。
【0038】
その補正テーブルは、例えば、電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の非線形関係を表す実特性と、該電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の関係が線形となるように予め設定した理想特性と、を対比し、この理想特性に基づいて補正前の制御入力値に対応する目標気体流量を求め、この目標気体流量に対応する補正後の制御入力値を前記実特性から求めたものとすればよい。
【0039】
好ましいのは、前記電磁比例弁から気体ばねへの気体の供給流量に関連する値を検出する検出手段と、該検出手段による検出値と目標気体流量との偏差が小さくなるように補正テーブルのデータを変更する学習手段と、をさらに備えることである(請求項8の発明)。こうすれば、電磁比例弁の個体ばらつきを学習して、補正テーブルのデータを更新することにより、その個体ばらつきを吸収して、比例弁への制御入力と気体の流量との関係をさらに理想特性に近づけることができ、これにより制御性をさらに向上できる。
【0040】
その場合に、より好ましいのは、前記比例弁としてスプール弁を用い、検出手段による検出値と目標気体流量との偏差に基づいて、補正テーブルに設定されている補正後の制御入力値が補正前の制御入力値に対して一律に変化するように、該補正テーブルのデータを一括して変更する学習手段を備えることである(請求項9の発明)。
【0041】
このようにスプール弁の特性を考慮して補正テーブルのデータを一括変更することで、学習結果を早期に制御に反映することができ、結果としてより高精度の制御をより早期に実行可能となる。
【発明の効果】
【0042】
以上、説明したように、第1の発明に係るアクティブ除振装置によると、除振対象物を基礎に対し気体ばねで支持するとともに、この気体ばねの内圧を、比較的小流量だが高応答で且つ高精度のサーボ弁により調整して、除振対象物の振動を減殺するようにしたものにおいて、さらに、大流量化しても気体の消費の少ない比例弁を設けて、これにより除振対象物の高さの制御を行い、前記サーボ弁による除振対象物の振動制御と相互に補完し合うようにしたことで、除振対象物が大型化しても気体の消費量を著しく増大することなく、従来同様の高応答、高精度の振動制御を実現しながら、従来以上に高速でしかも安定性の高い位置制御を実現できる。
【0043】
特に、非線形特性がある比例弁への制御入力を、気体の流量との間に線形関係が成り立つように補正すれば、制御の不安定化を招くことなく、位置制御のゲインを大きくして、応答性をさらに高めることができる。
【0044】
また、第2の発明では、サーボ弁を用いることなく、除振対象物を支持する気体ばねの内圧を比例弁により調整して除振対象物の振動を減殺し、或いはその高さを維持するようにしたので、除振対象物が大型化しても気体の消費量を著しく増大することなく、比較的要求の緩い除振対象物に対応した所要の精度の振動制御を実現できるとともに、従来以上に高速で安定性の高い位置制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0046】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る精密除振台Aの一例を示し、この精密除振台Aは、例えば、半導体関連の製造装置、試験機器や原子間力顕微鏡(AFM)、レーザ顕微鏡等の精密計測機器のように、振動の影響を受けやすい精密な装置を搭載して、それらを床の振動からできるだけ絶縁した状態で設置するためのものである。すなわち、図示の精密除振台Aは、床面に設置された基礎構造部1と、その上面の4隅にそれぞれ配設された空気ばねユニット2,2,…(除振装置)とを備え、これら4つの空気ばねユニット2,2,…により支持された定盤3の上に前記精密装置などが搭載されるようになっている。
【0047】
前記定盤3及びこれに搭載される装置が(厳密には以下に述べる空気ばねユニット2のトッププレート23なども含めて)除振対象物になるが、図の例では、定盤3のみの場合を示している。尚、基礎構造部1は、鋼製角パイプの構造部材を概ね直方体形状となるように櫓組みしたものであり、符号4は脚部を、符号5,6はそれぞれ梁部を示している。また、符号7は、空気ばねユニット2の配設される水平板7であり、符号8,9は、それぞれキャスター、レベラーである。この図では、前記空気ばねユニット2のコントローラ30や圧縮空気の給排系は示していない。
【0048】
(空気ばねユニットの構成)
前記空気ばねユニット2には、以下に述べるように、上下方向の荷重を支持する空気ばね20とセンサ31〜33、サーボ弁34、比例弁35などが設けられているとともに、これと同様の構成が水平方向の振動及び位置制御のために設けられているが、以下、便宜上、上下方向の荷重を支持する空気ばね20などの構成のみについて説明する。
【0049】
図2に模式的に示すように、この実施形態の空気ばねユニット2には、上下方向の荷重を支持するための空気ばね20として、内部に空気が充填された空気室21と、この空気室21の上壁の開口部にダイヤフラムを介して気密状に内挿されたピストン22とを備えたものが設けられている。ピストン22の上面にはトッププレート23が配置されており、一方、空気ばね20のケース下端のベースプレート24は、前記基礎構造部1の水平板7上に配置される。尚、前記空気ばね20のピストン22にジンバル機構を組み込んで、水平方向に非常に柔らかなばね特性が得られるようにすることもできる。
【0050】
前記のように空気ばね20を用いて荷重を支持するようにしているので、空気ばねユニット2,2,…は、基本的に優れた除振性能を有するものであるが、さらに、この実施形態では、空気ばね20の内圧を制御して、定盤3などの除振対象物にその振動を減殺する制御力を付加するようにしている。
【0051】
そのために、前記空気ばねユニット2には、まず、トッププレート23の上下方向の加速度x″と、ベースプレート24に対するトッププレート23の相対変位x−x0とを、それぞれ検出するための加速度センサ31及び変位センサ32が設けられている。また、ベースプレート24の上下方向の加速度x0″(基礎の振動状態)を検出する加速度センサ33も設けられており、それら各センサ31〜33からの出力信号がそれぞれコントローラ30に入力されるようになっている。
【0052】
また、前記空気ばね20には2つの配管25,26を介してサーボ弁34及び電磁比例弁35が個別に接続されている。このサーボ弁34及び比例弁35の作動によって、リザーバタンク36から空気ばね20の空気室21に供給する圧縮空気の流量を調整したり、或いは空気室21から排気する空気の流量を調整したりすることができる。尚、前記リザーバタンク36には、図示しないがコンプレッサが接続されていて、その作動によりリザーバタンク36内の空気圧を設定値に維持するようになっている。
【0053】
そして、前記サーボ弁34及び電磁比例弁35がそれぞれ前記コントローラ30により制御されて、空気ばね20に対する圧縮空気の供給乃至排気流量を調整することにより、当該空気ばね20の内圧を調整して、後述の如く除振対象物の振動を低減し、且つその高さ位置を維持するようになっている。尚、コントローラ30は、詳細は図示しないが、マイクロコンピュータ、I/Oインタフェース、データバスの他、RAM、ROM、或いはHDD等のメモリを備えた従来周知の構造のものである。
【0054】
ここで、前記サーボ弁34は、図3に一例を示すようなノズル−フラッパ型の電空変換器からなる。この電空変換器は、電磁石34aの励磁によってアーマチャアと一体のフラッパ34bが回動して、吸気側及び排気側の各ノズル34c,34dの開度を無段階に変更するように構成されており、例えば図示の中立位置からフラッパ34bを先端(図の下端)が排気側(図の左側)に寄るように回動させれば、吸気側の入口ポートPから空気ばね20に接続されている出口ポートCへの空気流量が増大して、その空気ばね20の空気室21に圧縮空気を供給するようになる。
【0055】
一方、前記フラッパ34bを先端が吸気側(図の右側)に寄るように回動させれば、出口ポートCから排気ポートRへの空気流量が増大し、前記空気ばね20の空気室21から空気を排出するようになる。尚、符号34eは、前記入口ポートP及び出口ポートCにそれぞれ配設されたフィルタである。
【0056】
そのように概ね常時、空気を流通させながらフラッパ34bの回動角度の変更によって空気流量を変更するという構造のため、サーボ弁34は、非常に応答性が高く、しかも微小な空気流量の制御が可能なものであるが、その反面、前記のような空気の給排を行わないときであっても、空気の一部が排気ポートRから大気中に排気されることになるので、空気の消費量がかなり多くなってしまい、しかも、その空気消費量がサーボ弁34の大流量化に伴い増大する、という欠点がある。
【0057】
図4は、サーボ弁34への制御入力に対する空気ばね20の内圧の変化を出力として、その周波数応答を示すボード線図であり、同図によれば、サーボ弁34の作動特性は一次遅れ系に近似できることが分かる。また、ゲインが小さく、無駄時間も小さいことから、前記したように応答性が高く、微小な空気流量の制御が可能なことが分かる。
【0058】
これに対し、前記比例弁35は、図12に一例を示すように、スプール35aを電磁ソレノイド35bによりカートリッジ35cを介して駆動するスプール弁からなる。この比例弁35は、前記サーボ弁34と同様に、圧縮空気の供給側に連通する入口ポートPと、空気ばね20の空気室21に連通する出口ポートAと、大気に開放された排気ポートRとを備え、それら3つのポートの相互の連通状態を前記スプール35aの軸方向の変位によって選択的に切換えるようになっている。
【0059】
すなわち、例えば図示の如くスプール35aが中立位置からやや吸気ポートP寄りの軸方向一端側(同図の右側)に位置して、出口ポートAと排気ポートRとが連通されるときには、空気ばね20に接続されている出口ポートAから排気ポートRへ空気が流れるようになり、空気ばね20から空気を排気する排気状態になる。
【0060】
また、図示はしないが、スプール35aを前記と反対の軸方向他端側(同図の左側)に移動させれば、入口ポートPと出口ポートAとを連通させて、空気ばね20に圧縮空気を供給する給気状態になり、さらに、それらの中間で、スプール35aの軸方向中央の鍔部により出口ポートAを閉塞すれば(中立位置)、空気ばね20の空気圧を一定に維持するとともに、空気消費量を零にする閉止状態になる。
【0061】
また、前記比例弁35は、前記の給気状態及び排気状態においてそれぞれスプール35aの変位により各ポートの有効断面積を無段階に変化させて、空気の流量を調整可能なものであるが、そのように変位させるスプール35aの質量などの影響もあって前記サーボ弁34に比べると応答性が低く、しかも、スプール位置制御の精度が相対的には低いことから、微小な空気流量の制御には不適な面がある。反面、前記閉止状態では空気消費量が零になるので、ポートなどを大型化して大流量化しても、前記サーボ弁34のように空気消費量の増大を招くことはない。
【0062】
尚、図示の符号35dは、ポートA,P,Rの形成されたハウジングであり、符号35eは、ハウジング35d内に嵌入されてスプール35aを軸方向に摺動自在に保持するスリーブである。
【0063】
図5は、比例弁35への制御入力に対する空気ばね20の内圧の変化を出力として、その周波数応答を示すボード線図であり、比例弁35の場合は、前記サーボ弁34に比べてゲインが大きく、空気圧の調整量が大きい(つまり、相対的に大流量である)ものの、無駄時間も大きいことが分かる。尚、同図は、制御入力である電流の変化に比例して空気圧が変化する圧力型のものの特性を示している。
【0064】
(空気ばねの内圧の制御)
上述の如きサーボ弁34及び比例弁35の特性を考慮して、この実施形態では、本発明の特徴部分として、2つの弁34,35による空気圧の調整が相互に補完し合うようにしている。すなわち、空気ばねユニット2毎の空気圧の制御は、概ね図6のブロック図に示すようになり、主に除振対象物の振動を低減するための制御が、図の右側に示す振動制御部30aによりサーボ弁34を用いて行われる一方、主に除振対象物の高さ位置を維持するための制御が、図の左側に示す変位制御部30bにより比例弁35を用いて行われる。
【0065】
尚、同図には、上述した空気ばねユニット2の構成の説明と同じく、便宜上、上下方向の空気ばね20の制御についてのみ示しているが、これと同様の制御は水平方向の空気ばねについても行われる。
【0066】
まず、前記振動制御部30aによるサーボ弁34の制御について説明すると、これは、加速度センサ31により検出される除振対象物の振動状態、即ちトッププレート23の上下方向加速度x″に基づいて、その振動を減殺するような制御力を空気ばね20により発生させるものである。すなわち、検出された加速度x″に対応するフィードバックゲインをGcとし、この加速度x″の微分に対応するフィードバックゲインをGmとし、また、加速度x″の積分に対応するフィードバックゲインをGkとして、それぞれフィードバック補正値を演算し、これらを加算した後に反転して、サーボ弁34への制御入力U1を決定する。
【0067】
この制御入力U1に応じてサーボ弁34のフラッパ34bが回動し、これにより空気圧F1(圧縮空気)が空気ばね20に供給されて、その内圧が変化することにより、除振対象物に制御力が付加される。そうして制御力が付加された後の除振対象物の振動状態(加速度x″)は、該除振対象物及び空気ばね20などよりなる制御対象(Plant)から再びフィードバックされる。
【0068】
そのように、除振対象物の振動状態をフィードバックしてサーボ弁34を制御することにより、空気ばね20の内圧を応答性良く変化させて、除振対象物の実際の振動状態に即した適切な制御力を発生させることができる。すなわち、上述したようにサーボ弁34の応答性が非常に高く、微小な空気流量の制御ができることから、除振対象物の微小な振動に対し遅れなく、且つ高精度に空気ばね20の内圧を変更することができるのである。これにより、除振対象物の振動をより高い周波数域まで低減することができ、しかも、収束性の高い安定な振動制御を実現できる。
【0069】
図7は、前記振動制御部30aによるフィードバックループの周波数応答(開ループ伝達関数)を示す。この振動の制御では、位相交点P(位相がマイナス180°になるところ)が比較的高い周波数域に現れており、その周波数域においてゲインも比較的高いため、無駄時間の影響を受けやすい。そのため、仮に応答の遅い弁を使用したとすると、例えば図に仮想線で示すように位相遅れが大きくなり、位相交点Pにおけるゲイン余裕がなくなって不安定になると考えられるが、この実施形態では、前記のように高応答のサーボ弁34を用いているため、十分なゲイン余裕があり、制御が不安定になることはない。
【0070】
尚、前記のように加速度x″、その微分値及び積分値にそれぞれ制御ゲインGc、Gm、Gkを乗じてフィードバックすることで、見かけ上、空気ばね20の系の減衰係数、質量及びばね定数が増加し、除振性能が向上する。すなわち、この実施形態のようにアクチュエータとして空気ばね20を利用する場合、制御入力U1に比例するのはサーボ弁34の開度であり、空気ばね20の内圧は制御入力U1の積分に比例することになるから、前記のように加速度x″に制御ゲインGcを乗算してフィードバックすれば、この分の制御量が空気系で積分されて、絶対速度に比例する空気圧の変化を生じることになり、いわゆるスカイフックダンパの効果が得られるのである。
【0071】
次に、前記変位制御部30bによる制御について説明すると、これは、変位センサ32により検出されるトッププレート23の基礎に対する相対変位x−x0に基づいて、この相対変位が小さくなるように空気ばね20の内圧を調整するものである。すなわち、図示の如く、検出した相対変位x−x0を目標値(零)から減算した後に、PID制御則に従って制御入力U2を求め、これを比例弁35に入力する。
【0072】
この制御入力U2に応じて比例弁35のスプール35aの位置が変更され、これにより制御力としての空気圧F2(圧縮空気)が空気ばね20に供給されて、その内圧が変化することで、除振対象物の位置は、基準位置からの変位が小さくなるように、即ち初期の設定高さになるように変更される。そうして変更された除振対象物の高さ位置(基礎に対する相対変位x−x0)が制御対象(Plant)から再びフィードバックされる。
【0073】
そのような比例弁35による空気圧の調整は、上述したようにサーボ弁34に比べればラフで応答性も低いものであるが、従来までのような機械式の圧力制御弁を用いる場合と比較すれば高精度且つ高応答であり、また、比例弁35はサーボ弁34と比較して大流量で空気圧の調整量が大きい(ゲインが大きい)ものなので、速やかに除振対象物の高さ位置を基準位置に戻すことができる。
【0074】
しかも、前記比例弁35は、その構造上、空気ばね20の内圧を一定に維持するときには空気を消費しないので、除振対象物の大型化に対応して空気ばね20の容量を大きくしたときに、これに応じて比例弁35を大流量化して、変位制御の応答性を高めるようにしても、このことによって空気の消費量が過大になるという問題は生じない。
【0075】
その上さらに、この実施形態では、上述の如くサーボ弁34を用いた振動制御と、比例弁35を用いた変位制御とを組み合わせたことで、たとえ上記のように空気ばね20の容量が大きくなったとしても、制御の応答性及び安定性を両立することができる。
【0076】
すなわち、上述の如く空気ばね20をアクチュエータとして利用する場合に、この空気ばね20の容量が大きいということは、時定数が大きくて、ゲインが低いということを意味し、制御応答性の低下が懸念される。このことは、定常的な微小振幅の振動の除振に関しては例えばフィードバックゲイン(制御ゲイン)の増大などで対応可能であり、実質的に問題にならないが、大振幅の振動が入力して変位を生じる場合には、サーボ弁34だけでは流量が不足して、制御に著しい遅れを生じる虞れがある。
【0077】
これに対し、前記の如くサーボ弁34を用いた振動制御と比例弁35を用いた変位制御とを組み合わせれば、例えば定盤3上に搭載された装置内のステージの移動などによって大振幅の振動が入力したとき、まず、加速度センサ31の検出値に基づいてサーボ弁34の制御が行われ、これにより空気ばね20の内圧が遅れなく変更されるとともに、その振動入力に伴う除振対象物(定盤3など)の変位に応じて比例弁35の制御が行われて、空気ばね20への空気の給排が大流量で行われることにより、その内圧が速やかに変更される。
【0078】
つまり、比較的容量の大きな空気ばね20に対して大振幅の振動が入力したときでも、その空気圧を遅れなく、適切に且つ速やかに調整して、除振対象物の振動を応答性良く低減することができる。
【0079】
その一方で、前記のように大きな変位(外乱)に対応する比例弁35の制御によって、空気が大流量で給排されると、この結果として空気ばね20の内圧に振動的な変化が生じることがあり、これにより除振対象物に余計な振動が付加される虞れがある。しかし、この振動は加速度センサ31によって検出され、これに応じて、前記の如くサーボ弁34による高応答且つ高精度の空気圧の調整(振動制御)が行われることによって、吸収される。つまり、除振対象物の位置は速やかに且つ安定的に基準位置に収束するようになる。
【0080】
図8は、前記変位制御部30bによるフィードバックループの周波数応答を示す。図示の位相曲線において位相交点Pが比較的低い周波数域に現れているが、これを含む高周波側の領域でゲインが低下しているため、無駄時間の影響は少なく、制御が安定なものとなることが分かる。一方、図に仮想線で示すのは、仮に前記振動制御部30aによるサーボ弁34の制御を行わないようにした場合のものであり、このときには位相交点Pにおけるゲインが高くなっており、制御が不安定になることが分かる。
【0081】
換言すれば、図8に実線で示すゲイン及び位相曲線は、上述の如く振動制御部30aによるサーボ弁34の制御が行われることによって減衰が付加されて、変位制御部30bによるフィードバック制御が安定化することを示している。
【0082】
したがって、上述した実施形態1の精密除振台Aによると、除振対象物を支持する複数の空気ばねユニット2,2,…において、それぞれ、空気ばね20への空気の給排系に、比較的小流量だが高応答且つ高精度のサーボ弁34と、比較的大流量の比例弁35とを配設して、この両者による空気圧の調整が相互に補完し合うようにしたことで、除振対象物が大型化したときでも、空気の消費量が著しく増大することはなく、従来同様の高応答、高精度の振動制御を行えるとともに、従来以上に高速でしかも安定性の高い位置制御を実現できる。
【0083】
(変形例)
上述の実施形態1では、図6に示すように、コントローラ30の振動制御部30a及び変位制御部30bにおいてPID制御則に従い制御入力U2を決定するようにしているが、これに限らず、現代制御理論の手法を適用することもできる。
【0084】
例えば変位制御部30bを変更した変形例を図9に示すと、まず、振動制御部30aを含めた制御対象(Plant)のノミナルモデルPnを設定し、このノミナルモデルの逆関数Pn-1に変位センサ32からの信号を入力して、制御量U2の位置での外乱を推定する。そして、この推定入力値から元々の制御入力の分を減算して外乱のみを抽出し、さらに相補感度関数Tを通過させて安定化した上で、フィードバックする。
【0085】
こうすれば、前記変位制御部30bは、前記制御対象からの出力(変位x−x0)に基づいて当該制御対象への外乱入力を推定する外乱オブザーバとしての機能を有し、この変位制御部30bにより演算される制御入力U2は、外乱をちょうど打ち消すようなものとなるから、このようなフィードバック制御を行うことによって、前記実施形態のものと同等、或いはそれ以上に適切な制御力を発生させることができる。
【0086】
尚、上述した実施形態1、及びその変形例の空気ばねユニット2において、変位制御部30bは、除振対象物の基準位置からの変位が所定値以下のときには比例弁35の制御を行わず、変位センサ32からの信号に基づいてサーボ弁34を制御するように構成してもよい。こうして、サーボ弁34の制御により空気ばね20の内圧を調整して、除振対象物の高さ位置を変更するようにすれば、その高さ位置の変位が例えば数ミクロン程度と非常に小さくて、前記した比例弁35による空気圧の調整によっては制御不能な場合にも対応可能になり、これにより除振対象物の高さ位置を極めて正確に基準位置に維持することができる。
【0087】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2に係る除振装置Aの空気ばねユニット2の構成を示す。この実施形態2のものは、比例弁35のみによって空気ばね20の圧力を調整し、これにより除振対象物の振動及び位置制御を行うようにしたものであり、その点を除いては前記実施形態1のものと同じ構成なので、同じ部材には同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0088】
また、図11は、前記比例弁35のみによる空気圧制御のブロック図であり、振動制御部30aにおける加速度x″のフィードバックループにおいて主に除振対象物の振動を低減するための制御入力が決定される一方、変位制御部30bにおける変位xのフィードバックループにおいて主に除振対象物の高さ位置を維持するための制御入力が決定され、この両者を合わせた制御入力Uが比例弁35に与えられるようになっている。
【0089】
尚、前記両図に示すのは上下方向の振動及び位置制御のための構成のみであり、これと同様の構成が水平方向の振動及び位置制御のためにも設けられているが、以下、便宜上、上下方向の構成のみについて説明する。
【0090】
そして、この第2実施形態では、実施形態1のようにサーボ弁34を用いることなく、比例弁35のみによって振動制御も行うことから、この比例弁35としては、構造自体は実施形態1のものと同様であるが、制御入力Uの変化に比例して空気の流量が変化する流量型のものを用い、スプール35aの軽量化や摩擦抵抗の低減、電磁ソレノイド35bの大型化などによって、できるだけ動作を高速化するのが好ましい。
【0091】
そうして動作を高速化したとしても、比例弁35による空気圧制御の応答速度はサーボ弁34に比べて低いので、振動制御のフィードバックゲインGc、Gm、Gkはできるだけ大きく設定したいところであるが、前記図7を参照して既説したように、振動制御のフィードバックループは無駄時間の影響を受けやすく、応答の遅い比例弁35を使用すると、制御ゲインを大きくした場合に不安定になり易い。
【0092】
さらに、比例弁35はスプール弁であり、上述したように、スプール35aの軸方向の変位によって3つのポートA,P,Rの連通状態を切換えるとともに、その各ポートA,P,Rの有効断面積を無段階に変化させて、空気の流量を調整するものであるから、この比例弁35への制御入力Uと空気の流量との間には複雑な非線形関係があり、このことも前記した振動制御の不安定化を助長する虞れがある。
【0093】
すなわち、比例弁35への制御入力Uと空気流量との間の関係は、例えば図13に実線で示すグラフのようになっていて、空気流量0の閉止状態を基準として制御入力Uが基準値U0とあまり変わらないときにはゲイン(グラフの傾き)が小さく、それよりも制御入力Uが大きくなるか或いは小さくなると、ゲインが大きくなり、さらに制御入力が大きくなるか或いは小さくなると、再びゲインは小さくなっている。
【0094】
そのため、仮に振動制御のフィードバックゲインGc、Gm、Gkを、前記比例弁35のゲインが比較的小さな状態(制御量Uが基準値U0とあまり変わらないとき)でも、高い応答性が得られるように大きく設定すると、例えば装置内のステージの移動などによって大振幅の振動が入力したとき(大きな外乱)、これに対応して大きな制御入力Uが比例弁35に与えられ、このときには比例弁35のゲインも大きいことから、空気ばね20に給排する空気流量の変化が過度に大きくなってしまい、不安定化を招くのである。
【0095】
そのように振動制御を行う場合に特に問題になる比例弁35の非線形性に着目して、この実施形態では、前記図11のようなフィードバックループにおいて除振対象物の加速度x″や変位xに基づいて決定した制御入力Uを補正して、この制御入力Uと比例弁35の空気流量との間の関係が線形となるようにしている。より具体的には、そのように補正する前後の制御入力U,U′の値を互いに対応付けて予め設定した補正テーブルを準備し、前記の如く除振対象物の加速度x″等に基づいて決定(仮決定)した制御入力Uに対応する補正後の制御入力U′を読み取って、これを比例弁35に入力するようにする。
【0096】
そのような補正のイメージは、図13に示すように、比例弁35への制御入力Uと空気流量との間の非線形関係を表す実特性(実線のグラフ)と、比例弁35への制御入力Uと空気流量との間の関係が線形となるように予め設定した理想特性(破線のグラフ)とを対比し、図11のようにフィードバックループによって求められた制御入力Uから、前記理想特性に基づいて目標とする空気流量を求め、この目標空気流量を得るために必要な実際の制御入力U′を前記実特性から求めるというものである。
【0097】
こうして補正した制御入力U′を比例弁35に与えるようにすれば、この比例弁35から空気ばね20へ供給される空気の流量と、補正前の制御入力Uとの間には線形関係が成立するので、振動制御のフィードバックループにおける制御ゲインGc、Gm、Gkの値を、比例弁35のゲインが比較的小さな状態でも所要の応答性が得られるよう大きめに設定しても、制御量に依らず制御特性が一定であるため、不安定化の問題を招くことはない。
【0098】
したがって、この実施形態2の精密除振台Aでは、空気量の消費が多いサーボ弁34を用いず、電磁比例弁35のみによって空気ばね20の圧力を調整し、これにより除振対象物の振動及び位置制御を行うようにしたから、振動制御の応答性自体は実施形態1に比べて低くなるとしても、比較的要求の緩い除振対象物に対しては十分な実用性が得られる。
【0099】
また、そうして応答性を高める際に特に問題になる比例弁35の非線形性を補正して、制御入力Uと空気流量との間に線形関係が成り立つようにしたから、比例弁35の制御ゲインを或る程度、大きくしても、不安定にはなり難い。しかも、制御入力Uの補正は補正テーブルを用いて行うようにしたから、補正に要する時間が短くなり、この点でも制御応答性の向上に有利になる。
【0100】
さらに、この実施形態2の場合も、上述した実施形態1のものと同じく、比例弁35による空気圧の調整は機械式の圧力制御弁と比較すれば高精度且つ高応答であり、サーボ弁34と比較しても空気圧の調整量は大きい(ゲインが大きい)から、高速で安定性の高い位置制御が行える。しかも、前記の如く比例弁35の非線形性を補正して、制御入力Uと空気流量との間に線形関係が成り立つようにしたから、位置制御においても制御の不安定化を防止しつつ、制御ゲインを大きくして応答性を高めることができる。そして、勿論、除振対象物の大型化に対応して空気ばね20の容量を大きくし、これに応じて比例弁35を大流量化しても、サーボ弁34のような空気の消費量増大の問題は生じない。
【0101】
尚、前記図13に示す比例弁35の実特性には個体ばらつきがあり、経年変化も考えられるが、スプール弁の場合は特性そのもの、即ち図示のグラフの形状自体が大きく異なることは少なく、グラフが全体として制御入力Uの軸(横軸)方向にずれるようなばらつきを生じると考えられる。
【0102】
そこで、例えば空気ばね20の内圧を計測する圧力センサ(検出手段)を備え、これによる検出値(比例弁35から空気ばね20への空気の供給流量に関連する値)に基づいて、その検出値と目標空気流量との偏差が小さくなるように補正テーブルのデータを変更する、所謂学習制御を行うことが考えられる。この際、前記のようなスプール弁の特性を考慮して、例えば図示のグラフを横軸の方向にずらすように、すなわち、補正後の制御入力U′の値が補正前の制御入力Uの値に対して一律に変化するように、前記検出値と目標空気流量との偏差に応じて補正テーブルのデータを一括して変更することが好ましい。
【0103】
すなわち、例えば、空気ばね20の内圧の変化から推定した空気流量が目標空気流量よりも小さければ、図13において実線のグラフが右側にシフトするように、即ち、補正後の制御入力U′の値が予め設定した所定値だけ一律に増大するように、補正テーブルのデータを変更すればよい。一方、推定した空気流量が目標空気流量よりも大きければ、グラフが左側にシフトするように、即ち、補正後の制御入力U′の値が一律に減少するように補正テーブルのデータを変更すればよい。
【0104】
このような学習制御によれば、比例弁35の個体ばらつきや経年変化を吸収して、より精度の高い振動制御を行うことができる。しかも、スプール弁である比例弁35の特性を考慮して、補正テーブルのデータを一括して変更することで、学習結果を振動制御に早期に反映することができ、結果として、より高精度の制御をより早く実行することができる。この場合には、そのような学習制御のプログラムを実行するコントローラ30が、学習手段を構成する。
【0105】
また、前記のように比例弁35の空気流量を推定するためには例えば加速度センサ31の出力を利用することもでき、或いは、比例弁35と空気ばね20との配管26に空気流量センサを設けてもよい。また、比例弁35のスプール35aの位置を検出するセンサの信号を併用することもできる。
【0106】
(変形例)
上述の実施形態2では、比例弁35への制御入力Uを補正するための補正特性として、予め準備した補正テーブルを用いているが、これに限らず補正計算式を用いることも可能である。例えば、図13に実線のグラフで示す比例弁35の実特性は、制御入力Uが基準値U0以上の場合について、空気流量をf(U)として、次のような4次式で近似することができる。 f(U) = a×U4+b×U3+c×U2+d×U+e 尚、a,b,c,d,eは所定の係数である。
【0107】
そして、同図に破線のグラフで示す理想特性が1次式g(U)と表せるので、補正前の制御入力Uを補正後の制御入力U′に変換する補正計算式は、一般的に次のように表すことができる。 U′ = f-1(g(U)) 同様に制御入力Uが基準値U0未満の場合についても補正計算式を定義することができる。但し、一般には逆関数を求めることは難しいので、前記実施形態2のように補正テーブルを用いる方が好ましい。
【0108】
(他の実施形態)
本発明の構成は、前記実施形態1、2のものに限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。すなわち、例えば前記各実施形態の空気ばねユニット2においては除振対象物の振動状態を検出するために、加速度センサ31を空気ばね20のトッププレート23に配設しているが、これは速度センサであってもよいし、それらのセンサは前記トッププレート23に限らず、定盤3或いはその上に搭載される装置に取り付けることもできる。また、空気ばね20に代えて、空気以外の気体を封入した気体ばねを用いることもできる。
【0109】
また、前記各実施形態の空気ばねユニット2において、上述したフィードバックによる振動制御に加えて、フィードフォワード制御も行うようにしてもよい。すなわち、図示はしないが、加速度センサ33からの信号に基づいてベースプレート24の振動状態を検出し、ここから空気ばね20を通して除振対象物に伝達される微小な振動を推定して、この伝達振動を減殺する逆位相の制御力を空気ばね20が発生するように、その内圧をサーボ弁34、比例弁35により制御すればよい。こうすることで、除振対象物の振動をより一層、低減することができる。
【0110】
さらに、前記実施形態1及びその変形例のようにサーボ弁34により振動制御を、比例弁35により位置制御を行う場合にも、前記実施形態2の如く比例弁35への制御入力U2を補正するようにすることが好ましい。こうすれば、前記比例弁35による位置制御の不安定化を防止しつつ、制御ゲインを大きくして応答性を高めることができるからである。また、この場合には、補正テーブルの学習制御も併せて行うことが好ましいことは言うまでもない。
【0111】
さらにまた、前記各実施形態では、定盤3を4つの空気ばねユニット2,2,…により支持する例について説明したが、空気ばねユニット2の個数が4つに限られないことは言うまでもなく、それは例えば3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上、説明したように、本発明に係る除振装置(空気ばねユニット2)は、除振対象物の大型化に対応して、例えば空気ばねの容量を大きくしても、空気消費量の著しい増大を招くことなく、所要の応答性及び精度の振動制御を可能としながら、高速の位置制御も実現できるものなので、例えば半導体や液晶関連の製造装置のように、大型であるにも拘わらず、高度の除振・制振が求められる装置を設置するために好適である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】精密除振台の概略構成を示す図である。
【図2】実施形態1の空気ばねユニットの空気圧制御系の構成図である。
【図3】サーボ弁の概略構成を示す図である。
【図4】サーボ弁の作動特性を示すボード線図
【図5】比例弁についての図4相当図である。
【図6】空気圧制御の構成を示すブロック図である。
【図7】振動制御部の周波数応答を示すボード線図である。
【図8】変位制御についての図7相当図である。
【図9】現代制御理論を適用した変形例に係る図6相当図である。
【図10】実施形態2に係る図2相当図である。
【図11】同図6相当図である。
【図12】比例弁の概略構成を示す図である。
【図13】制御入力の補正の説明図である。
【符号の説明】
【0114】
A 精密除振台
1 基礎構造部(基礎)
2 空気ばねユニット
3 定盤(除振対象物)
20 空気ばね
23 トッププレート(除振対象物)
24 ベースプレート(基礎)
30 コントローラ(制御手段、学習手段)
30a 振動制御部(振動制御手段)
30b 変位制御部(変位制御手段)
31 加速度センサ(振動センサ、センサ)
32 変位センサ(位置センサ、センサ)
33 加速度センサ(別の振動センサ、センサ)
34 サーボ弁
35 電磁比例弁
35a スプール
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体関連装置や精密計測装置など、振動の影響を受けやすい精密な装置の設置に用いられる除振装置に関し、特に、それらの除振対象物を支持した気体ばねの内圧を変更することによって、振動を減殺する振動制御の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の除振装置としては、例えば、特許文献1に開示されるように、空気ばねを介して支持した除振対象物(荷)の振動や位置をセンサにより検出し、この検出信号をフィードバックしてコントローラによりアクチュエータを駆動することにより、該除振対象物にその振動を減殺するような振動的な制御力を付加するようにしたアクティブタイプのものが知られている。
【0003】
このものではアクチュエータとして空気ばね自体を利用するようにしており、その空気ばねに対する空気の給排系にサーボ弁を配設し、これをコントローラにより制御して、空気ばねの内圧を変化させることにより、除振対象物の振動を減殺するような制御力を発生させるとともに、除振対象物の高さ位置を維持するように、空気ばねの内圧を調整するようにしている。
【0004】
また、特許文献2、3などには、前記のものと同様に、フィードバックしたセンサ信号に基づいて電気空圧アナログ弁を制御して、空気ばねに制御力としての空気圧を注入するようにしたアクティブ振動絶縁装置において、さらに、除振対象物の高さ位置(レベル)の変動に応じて機械的に作動し、空気ばねに空気圧を注入する圧力調整弁を備えることが開示されている。
【0005】
ところで、そのように空気ばね自体をアクチュエータとして利用する場合には、除振対象物の振動をより高い周波数域まで低減可能とし、且つ安定なフィードバックを実現するために、前記前者の従来例(特許文献1)のように、応答性が高く、微小な制御が可能なサーボ弁を用いて、空気圧を調整するのが一般的である。
【0006】
しかし、サーボ弁は、その構造上、空気圧を一定に維持するときであっても空気を消費し、しかも、その空気消費量がバルブの大流量化に伴い増大するという特性を有するため、除振対象物の大型化に対応して空気ばねの容量を大きくし、これに応じてサーボ弁を大流量化すると、空気消費量が多くなり過ぎて現実には使用できないという事態を招く。このことは空気ばねやサーボ弁の数を増やした場合でも同様である。
【0007】
一方、前記後者の従来例(特許文献2、3)には、空気圧制御のためにサーボ弁、電気空圧比例弁を用いる、旨の記載があり、仮に比例弁を用いるようにすれば前記した空気消費量の問題は生じないが、一般に比例弁による空気圧制御の応答速度はサーボ弁に比べてかなり低いので、前記のような振動制御には不向きであると考えられている。
【0008】
この点につき、特許文献4には、比例弁としてスプール弁を用い、その動作速度を最大限に高めることによって、応答性を高めることが提案されている。すなわち、比例弁の弁体(スプール)を静圧軸受によってハウジングに非接触状態で支持するとともに、その端部に設けた強力なボイスコイルモータによって直接駆動する。さらに、そのモータの制御をスプールの変位及び速度の検出信号に基づくフィードバック制御として、オーバシュートのような無駄な動きを抑制しながら、スプールを最大限、迅速に動作させるのである。
【特許文献1】特許第3372975号公報
【特許文献2】特開平4−262144号公報
【特許文献3】特開平6−50382号公報
【特許文献4】特開2005−147318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、仮に前記提案例(特許文献4)の振動制御装置のようにスプールの動作速度を最大限に高めて、これによる空気圧制御の応答性を高めたとしても、サーボ弁ほど高い応答性は得られない。従って、提案例のものは、比較的要求の緩やかな除振装置には実用可能であっても、例えばミクロンオーダの微細加工を行う半導体製造装置のような厳しい振動制御の要求には応えられない場合がある。
【0010】
また、スプール弁は、筒状のハウジングに形成された複数のポート同士の連通状態を、スプールの軸方向変位によって切換えるとともに、その連通路の断面積を無段階に変化させて空気の流量を調整するという構造であり、空気ばねへの給気状態と排気状態との間に不感帯が存在するとともに、スプールの変位と空気流量の変化とが比例せず、両者の間には複雑な非線形関係があるので、制御の応答性を高めるために制御ゲインを大きく設定すると、不安定になり易いという問題もある。
【0011】
尚、後者の従来例(特許文献2、3)のように、高さ位置の調整のために機械的に作動する圧力調整弁を用いた場合、除振対象物の高さ位置の変動に対する空気圧の調整遅れが大きく、また、構造上、精度の高い位置制御は困難であるとともに、基礎に設置した圧力調整弁の変位検出部が除振対象に常に接触することになるので、ここから振動が伝わってしまうという不具合も生じる。
【0012】
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、気体ばねをアクチュエータとして利用するアクティブ除振装置において、その気体ばねに気体を給排するための構成に工夫を凝らして、除振対象物が大型化しても気体の消費量の著しい増大を招くことなく、所要の応答性及び精度の得られる振動及び位置の制御を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の解決手段は、従来までと同様に除振対象物の振動状態に基づいてサーボ弁を制御し、これにより気体ばねの内圧を変化させて制御力を発生させるとともに、当該除振対象物の高さ位置の変化に対応して、電磁比例弁により気体ばねの内圧を調整するようにしたものである。
【0014】
具体的に、請求項1の発明は、除振対象物を基礎に対し気体ばねで支持するとともに、該除振対象物の振動状態を検出するための振動センサと、前記気体ばねの内圧を調整するためのサーボ弁とを備え、このサーボ弁を前記振動センサからの信号に基づいて制御することにより、前記気体ばねの内圧を変更して、前記除振対象物にその振動を減殺する制御力を付加するようにしたアクティブ除振装置を対象とする。
【0015】
そして、前記除振対象物の基礎に対する高さ位置を検出するための位置センサと、前記気体ばねにその内圧を調整可能に接続された電磁比例弁と、該電磁比例弁を前記位置センサからの信号に基づいて制御することにより、前記除振対象物の基準位置からの変位が小さくなるように前記気体ばねの内圧を調整する変位制御手段とを備える構成とする。
【0016】
前記の構成により、まず、除振対象物の振動が振動センサにより検出されたときには、この振動センサからの信号に基づいてサーボ弁が制御され、これにより気体ばねの内圧が微小に且つ高精度に変更されて、前記除振対象物に制御力が付加される。この制御力によって除振対象物の振動が減殺される(振動制御)。その際、前記サーボ弁が高応答で、微小な気体圧の調整も可能なものであるから、除振対象物の微小な振動に対し遅れなく、且つ高精度に気体ばねの内圧を変更することができ、除振対象物の振動をより高い周波数域まで低減し、且つ安定な振動制御を実現することができる。
【0017】
また、前記除振対象物の基礎に対する高さ位置が変化すると、位置センサからの信号に基づいて変位制御手段により電磁比例弁が制御されて、除振対象物の変位が小さくなるように気体ばねの内圧が調整される(位置制御)。そして、その比例弁による気体圧の調整が前記サーボ弁に比べればラフで応答性も低いものであっても、従来例(特許文献2、3)のような機械式の圧力制御弁と比較すれば高精度且つ高応答であり、また、サーボ弁と比較して気体圧の調整量は大きい(ゲインが大きい)から、除振対象物の高さ位置を速やかに基準位置に戻すことができる。
【0018】
しかも、前記比例弁は、その構造上、気体ばねの内圧を一定に維持するときには気体を消費しないので、除振対象物の大型化に対応して気体ばねの容量を大きくしたときに、これに応じて比例弁を大流量化したとしても、サーボ弁のような気体の消費量増大の問題は生じない。
【0019】
さらに、そのように気体ばねの容量を大きくしたときでも、前記のようにサーボ弁及び比例弁を組合せたことで、前記の振動制御及び位置制御において高い応答性及び安定性を両立できる。
【0020】
すなわち、気体ばねの容量が大きいということは、これをアクチュエータとして見たときには、時定数が大きくて、ゲインが低いということであり、これに対する気体の給排流量を増大させないとすれば、制御応答性の低下が懸念される。このことは、定常的な微小振幅の振動の除振については位置制御に比べて制御力がかなり小さくてよいため、制御ゲインの増大で十分に対応でき、問題にはならないが、例えば装置内のステージが移動するときのように大きな振動が発生して変位が生じる場合には、気体ばねの容量が大きいとサーボ弁だけでは流量が不足し、位置の制御に遅れを生じることになる。
【0021】
これに対し、前記構成の如くサーボ弁及び比例弁を組合せれば、大振幅の振動の入力に対して、まずサーボ弁の作動によって気体の給排が高応答に行われるとともに、その振動入力に伴う除振対象物の変位に対応して比例弁の作動による気体の給排が大流量で行われることになるから、気体ばねの容量が大きいときでも、その内圧を遅れなく、且つ適切に制御することが可能になる。
【0022】
その一方で、前記のように比例弁による気体の給排が大流量で行われるときには、このことに起因して気体ばねの内圧に振動的な変化(オーバーシュート)を生じることがあり、比例弁の特性が非線形であることから、制御の不安定化を招く虞れもあるが、このような気体圧の振動的な変化は、前記したサーボ弁による気体圧の微小且つ高精度の調整(振動制御)によって吸収可能であり、これにより除振対象物の位置を速やかに且つ安定的に基準位置に収束させることができる。
【0023】
斯くして、前記の構成によれば、比較的小流量だが高応答且つ高精度のサーボ弁による気体圧制御と、比較的大流量の比例弁による気体圧制御とを組み合わせて、相互に補完し合うようにしたことで、除振対象物が大型化しても気体の消費量が著しく増大することはなく、従来同様の高応答、高精度の振動制御が行えるとともに、従来以上に高速でしかも安定性の高い位置制御を行うことができる。
【0024】
前記構成のアクティブ除振装置において、好ましいのは、前記振動センサを、除振対象物の加速度を検出する加速度センサ、又は該除振対象物の速度を検出する速度センサの少なくとも一方とし、その加速度センサ乃至速度センサからの信号に基づいてサーボ弁を制御することにより、前記除振対象物に制御力が付加されるように気体ばねの内圧を変更する振動制御手段を備えることである(請求項2の発明)。
【0025】
こうして加速度センサ乃至速度センサからの信号をフィードバックして、振動制御手段によりサーボ弁を制御することにより、除振対象物に対しその振動を減殺するように適切な制御力を付加することができる。
【0026】
その場合に、より好ましいのは、基礎の加速度乃至速度を検出する少なくとも1つの別の振動センサをさらに備え、この別の振動センサからの信号に基づいて前記振動制御手段によりサーボ弁を制御することで、除振対象物に前記基礎からの伝達振動を減殺する制御力が付加されるように、気体ばねの内圧を変更することである(請求項3の発明)。
【0027】
こうして基礎(床)の加速度乃至速度を検出して、そこから気体ばねを通して除振対象物に伝達される微小な振動を推定し、この伝達振動を減殺するように例えば逆位相の制御力を付加することによって、除振対象物の振動をより一層、低減することができる。
【0028】
また、前記構成のアクティブ除振装置において、変位制御手段を、除振対象物の基準位置からの変位が所定値以下のときには電磁比例弁の制御を行わず、位置センサからの信号に基づいてサーボ弁を制御することにより、前記除振対象物の変位が小さくなるように気体ばねの内圧を調整するものとすることもできる(請求項4の発明)。
【0029】
こうすれば、除振対象物の基準位置からの変位が例えば数ミクロン程度と非常に小さくて、前記比例弁による気体圧の調整によっては位置の制御が困難な場合に、変位制御手段により位置センサからの信号に基づいてサーボ弁の制御が行われ、これにより気体ばねの内圧が高精度に調整されることによって、前記除振対象物の位置を極めて正確に基準位置に戻すことができる。
【0030】
さらに、前記変位制御手段は、電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の非線形関係を線形に補正するための補正特性を記憶していて、この補正特性に基づいて前記電磁比例弁への制御入力を補正するものとすることもできる(請求項5の発明)。こうすれば、前記比例弁への制御入力を、気体の流量との間の関係が線形になるように補正することができるので、制御の不安定化を防止しつつ、比例弁の制御ゲインを大きくして応答性を高めることができる。
【0031】
次に、本発明の第2の解決手段は、上述した提案例(特許文献4)のように比例弁を高速化できることを考慮して、この比例弁だけで前記のように気体ばねの内圧を調整し、振動及び位置の制御を行うようにするとともに、そうして高速化した比例弁によって振動制御を行う場合に特に問題になる当該比例弁の非線形性を補償するようにしたものである。
【0032】
具体的に、請求項6の発明は、除振対象物を基礎に対し気体ばねで支持してなり、その除振対象物の振動状態及び基礎に対する高さ位置の少なくとも一方を検出するためのセンサと、前記気体ばねにその内圧を調整可能に接続された電磁比例弁と、この電磁比例弁を前記センサからの信号に基づいて制御することにより、前記除振対象物の基準位置からの変位が小さくなるか、或いは前記除振対象物にその振動を減殺する制御力が付加されるかの少なくとも一方となるように前記気体ばねの内圧を調整する制御手段と、を備えたアクティブ除振装置において、さらに、前記制御手段を、前記電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の非線形関係を線形に補正するための補正特性を記憶していて、この補正特性に基づいて前記電磁比例弁への制御入力を補正するように構成したものである。
【0033】
前記の構成により、除振対象物の振動状態や高さ位置の変化がセンサにより検出されたときには、このセンサからの信号に基づいて制御手段により電磁比例弁が制御され、これにより気体ばねの内圧が調整されて、前記除振対象物の振動を低減する振動制御が行われるか、該除振対象物の位置を一定に保つ位置制御が行われるか、或いはそれら両方の制御が行われる。
【0034】
そうして行われる比例弁による振動制御は、サーボ弁に比べれば応答性が低いものの、比例弁の動作を高速化すれば、比較的要求の緩い除振対象物に対しては実用可能である。しかも、前記比例弁への制御入力は、気体の流量との間の関係が線形になるように補正されるので、比例弁の制御ゲインを大きくして応答性を高めても、不安定にはなり難い。
【0035】
また、上述したように、比例弁による気体圧の調整は機械式の圧力制御弁と比べれば高精度且つ高応答であり、サーボ弁と比較しても気体圧の調整量は大きい(ゲインが大きい)から、高速で安定性の高い位置制御を行うことができる。しかも、前記の如く比例弁への制御入力を補正して、気体の流量との間の関係を線形化することで、位置制御においても制御の不安定化を防止しつつ、比例弁の制御ゲインを大きくして応答性を高めることができる。そして、勿論、除振対象物の大型化に応じて比例弁を大流量化しても、サーボ弁のような気体の消費量増大の問題は生じない。
【0036】
尚、前記センサとしては、除振対象物の加速度又は速度を検出するための振動センサや除振対象物の基礎に対する高さ位置を検出するための位置センサが考えられる。また、そうして除振対象物の振動状態乃至高さ位置の検出値に基づいて、比例弁を制御する他に、基礎の加速度乃至速度を検出する少なくとも1つの振動センサをさらに備え、この振動センサからの信号に基づいて制御手段により比例弁を制御することにより、除振対象物に基礎からの伝達振動を減殺する制御力が付加されるように、気体ばねの内圧を変更するようにしてもよい。
【0037】
ここで、前記の補正特性としては、例えば前記制御手段においてセンサからの信号に基づいて求めた制御入力の値を、予め設定した演算式により補正演算することもできるが、制御応答性を高めるという観点からは、補正前後の制御入力値を互いに対応付けて設定した補正テーブルを準備し、制御手段は、センサからの信号に基づいて仮決定した制御入力値に対応する補正後の制御入力値を前記補正テーブルから読み取って、これにより電磁比例弁を制御するものとするのがよい(請求項7の発明)。
【0038】
その補正テーブルは、例えば、電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の非線形関係を表す実特性と、該電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の関係が線形となるように予め設定した理想特性と、を対比し、この理想特性に基づいて補正前の制御入力値に対応する目標気体流量を求め、この目標気体流量に対応する補正後の制御入力値を前記実特性から求めたものとすればよい。
【0039】
好ましいのは、前記電磁比例弁から気体ばねへの気体の供給流量に関連する値を検出する検出手段と、該検出手段による検出値と目標気体流量との偏差が小さくなるように補正テーブルのデータを変更する学習手段と、をさらに備えることである(請求項8の発明)。こうすれば、電磁比例弁の個体ばらつきを学習して、補正テーブルのデータを更新することにより、その個体ばらつきを吸収して、比例弁への制御入力と気体の流量との関係をさらに理想特性に近づけることができ、これにより制御性をさらに向上できる。
【0040】
その場合に、より好ましいのは、前記比例弁としてスプール弁を用い、検出手段による検出値と目標気体流量との偏差に基づいて、補正テーブルに設定されている補正後の制御入力値が補正前の制御入力値に対して一律に変化するように、該補正テーブルのデータを一括して変更する学習手段を備えることである(請求項9の発明)。
【0041】
このようにスプール弁の特性を考慮して補正テーブルのデータを一括変更することで、学習結果を早期に制御に反映することができ、結果としてより高精度の制御をより早期に実行可能となる。
【発明の効果】
【0042】
以上、説明したように、第1の発明に係るアクティブ除振装置によると、除振対象物を基礎に対し気体ばねで支持するとともに、この気体ばねの内圧を、比較的小流量だが高応答で且つ高精度のサーボ弁により調整して、除振対象物の振動を減殺するようにしたものにおいて、さらに、大流量化しても気体の消費の少ない比例弁を設けて、これにより除振対象物の高さの制御を行い、前記サーボ弁による除振対象物の振動制御と相互に補完し合うようにしたことで、除振対象物が大型化しても気体の消費量を著しく増大することなく、従来同様の高応答、高精度の振動制御を実現しながら、従来以上に高速でしかも安定性の高い位置制御を実現できる。
【0043】
特に、非線形特性がある比例弁への制御入力を、気体の流量との間に線形関係が成り立つように補正すれば、制御の不安定化を招くことなく、位置制御のゲインを大きくして、応答性をさらに高めることができる。
【0044】
また、第2の発明では、サーボ弁を用いることなく、除振対象物を支持する気体ばねの内圧を比例弁により調整して除振対象物の振動を減殺し、或いはその高さを維持するようにしたので、除振対象物が大型化しても気体の消費量を著しく増大することなく、比較的要求の緩い除振対象物に対応した所要の精度の振動制御を実現できるとともに、従来以上に高速で安定性の高い位置制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0046】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る精密除振台Aの一例を示し、この精密除振台Aは、例えば、半導体関連の製造装置、試験機器や原子間力顕微鏡(AFM)、レーザ顕微鏡等の精密計測機器のように、振動の影響を受けやすい精密な装置を搭載して、それらを床の振動からできるだけ絶縁した状態で設置するためのものである。すなわち、図示の精密除振台Aは、床面に設置された基礎構造部1と、その上面の4隅にそれぞれ配設された空気ばねユニット2,2,…(除振装置)とを備え、これら4つの空気ばねユニット2,2,…により支持された定盤3の上に前記精密装置などが搭載されるようになっている。
【0047】
前記定盤3及びこれに搭載される装置が(厳密には以下に述べる空気ばねユニット2のトッププレート23なども含めて)除振対象物になるが、図の例では、定盤3のみの場合を示している。尚、基礎構造部1は、鋼製角パイプの構造部材を概ね直方体形状となるように櫓組みしたものであり、符号4は脚部を、符号5,6はそれぞれ梁部を示している。また、符号7は、空気ばねユニット2の配設される水平板7であり、符号8,9は、それぞれキャスター、レベラーである。この図では、前記空気ばねユニット2のコントローラ30や圧縮空気の給排系は示していない。
【0048】
(空気ばねユニットの構成)
前記空気ばねユニット2には、以下に述べるように、上下方向の荷重を支持する空気ばね20とセンサ31〜33、サーボ弁34、比例弁35などが設けられているとともに、これと同様の構成が水平方向の振動及び位置制御のために設けられているが、以下、便宜上、上下方向の荷重を支持する空気ばね20などの構成のみについて説明する。
【0049】
図2に模式的に示すように、この実施形態の空気ばねユニット2には、上下方向の荷重を支持するための空気ばね20として、内部に空気が充填された空気室21と、この空気室21の上壁の開口部にダイヤフラムを介して気密状に内挿されたピストン22とを備えたものが設けられている。ピストン22の上面にはトッププレート23が配置されており、一方、空気ばね20のケース下端のベースプレート24は、前記基礎構造部1の水平板7上に配置される。尚、前記空気ばね20のピストン22にジンバル機構を組み込んで、水平方向に非常に柔らかなばね特性が得られるようにすることもできる。
【0050】
前記のように空気ばね20を用いて荷重を支持するようにしているので、空気ばねユニット2,2,…は、基本的に優れた除振性能を有するものであるが、さらに、この実施形態では、空気ばね20の内圧を制御して、定盤3などの除振対象物にその振動を減殺する制御力を付加するようにしている。
【0051】
そのために、前記空気ばねユニット2には、まず、トッププレート23の上下方向の加速度x″と、ベースプレート24に対するトッププレート23の相対変位x−x0とを、それぞれ検出するための加速度センサ31及び変位センサ32が設けられている。また、ベースプレート24の上下方向の加速度x0″(基礎の振動状態)を検出する加速度センサ33も設けられており、それら各センサ31〜33からの出力信号がそれぞれコントローラ30に入力されるようになっている。
【0052】
また、前記空気ばね20には2つの配管25,26を介してサーボ弁34及び電磁比例弁35が個別に接続されている。このサーボ弁34及び比例弁35の作動によって、リザーバタンク36から空気ばね20の空気室21に供給する圧縮空気の流量を調整したり、或いは空気室21から排気する空気の流量を調整したりすることができる。尚、前記リザーバタンク36には、図示しないがコンプレッサが接続されていて、その作動によりリザーバタンク36内の空気圧を設定値に維持するようになっている。
【0053】
そして、前記サーボ弁34及び電磁比例弁35がそれぞれ前記コントローラ30により制御されて、空気ばね20に対する圧縮空気の供給乃至排気流量を調整することにより、当該空気ばね20の内圧を調整して、後述の如く除振対象物の振動を低減し、且つその高さ位置を維持するようになっている。尚、コントローラ30は、詳細は図示しないが、マイクロコンピュータ、I/Oインタフェース、データバスの他、RAM、ROM、或いはHDD等のメモリを備えた従来周知の構造のものである。
【0054】
ここで、前記サーボ弁34は、図3に一例を示すようなノズル−フラッパ型の電空変換器からなる。この電空変換器は、電磁石34aの励磁によってアーマチャアと一体のフラッパ34bが回動して、吸気側及び排気側の各ノズル34c,34dの開度を無段階に変更するように構成されており、例えば図示の中立位置からフラッパ34bを先端(図の下端)が排気側(図の左側)に寄るように回動させれば、吸気側の入口ポートPから空気ばね20に接続されている出口ポートCへの空気流量が増大して、その空気ばね20の空気室21に圧縮空気を供給するようになる。
【0055】
一方、前記フラッパ34bを先端が吸気側(図の右側)に寄るように回動させれば、出口ポートCから排気ポートRへの空気流量が増大し、前記空気ばね20の空気室21から空気を排出するようになる。尚、符号34eは、前記入口ポートP及び出口ポートCにそれぞれ配設されたフィルタである。
【0056】
そのように概ね常時、空気を流通させながらフラッパ34bの回動角度の変更によって空気流量を変更するという構造のため、サーボ弁34は、非常に応答性が高く、しかも微小な空気流量の制御が可能なものであるが、その反面、前記のような空気の給排を行わないときであっても、空気の一部が排気ポートRから大気中に排気されることになるので、空気の消費量がかなり多くなってしまい、しかも、その空気消費量がサーボ弁34の大流量化に伴い増大する、という欠点がある。
【0057】
図4は、サーボ弁34への制御入力に対する空気ばね20の内圧の変化を出力として、その周波数応答を示すボード線図であり、同図によれば、サーボ弁34の作動特性は一次遅れ系に近似できることが分かる。また、ゲインが小さく、無駄時間も小さいことから、前記したように応答性が高く、微小な空気流量の制御が可能なことが分かる。
【0058】
これに対し、前記比例弁35は、図12に一例を示すように、スプール35aを電磁ソレノイド35bによりカートリッジ35cを介して駆動するスプール弁からなる。この比例弁35は、前記サーボ弁34と同様に、圧縮空気の供給側に連通する入口ポートPと、空気ばね20の空気室21に連通する出口ポートAと、大気に開放された排気ポートRとを備え、それら3つのポートの相互の連通状態を前記スプール35aの軸方向の変位によって選択的に切換えるようになっている。
【0059】
すなわち、例えば図示の如くスプール35aが中立位置からやや吸気ポートP寄りの軸方向一端側(同図の右側)に位置して、出口ポートAと排気ポートRとが連通されるときには、空気ばね20に接続されている出口ポートAから排気ポートRへ空気が流れるようになり、空気ばね20から空気を排気する排気状態になる。
【0060】
また、図示はしないが、スプール35aを前記と反対の軸方向他端側(同図の左側)に移動させれば、入口ポートPと出口ポートAとを連通させて、空気ばね20に圧縮空気を供給する給気状態になり、さらに、それらの中間で、スプール35aの軸方向中央の鍔部により出口ポートAを閉塞すれば(中立位置)、空気ばね20の空気圧を一定に維持するとともに、空気消費量を零にする閉止状態になる。
【0061】
また、前記比例弁35は、前記の給気状態及び排気状態においてそれぞれスプール35aの変位により各ポートの有効断面積を無段階に変化させて、空気の流量を調整可能なものであるが、そのように変位させるスプール35aの質量などの影響もあって前記サーボ弁34に比べると応答性が低く、しかも、スプール位置制御の精度が相対的には低いことから、微小な空気流量の制御には不適な面がある。反面、前記閉止状態では空気消費量が零になるので、ポートなどを大型化して大流量化しても、前記サーボ弁34のように空気消費量の増大を招くことはない。
【0062】
尚、図示の符号35dは、ポートA,P,Rの形成されたハウジングであり、符号35eは、ハウジング35d内に嵌入されてスプール35aを軸方向に摺動自在に保持するスリーブである。
【0063】
図5は、比例弁35への制御入力に対する空気ばね20の内圧の変化を出力として、その周波数応答を示すボード線図であり、比例弁35の場合は、前記サーボ弁34に比べてゲインが大きく、空気圧の調整量が大きい(つまり、相対的に大流量である)ものの、無駄時間も大きいことが分かる。尚、同図は、制御入力である電流の変化に比例して空気圧が変化する圧力型のものの特性を示している。
【0064】
(空気ばねの内圧の制御)
上述の如きサーボ弁34及び比例弁35の特性を考慮して、この実施形態では、本発明の特徴部分として、2つの弁34,35による空気圧の調整が相互に補完し合うようにしている。すなわち、空気ばねユニット2毎の空気圧の制御は、概ね図6のブロック図に示すようになり、主に除振対象物の振動を低減するための制御が、図の右側に示す振動制御部30aによりサーボ弁34を用いて行われる一方、主に除振対象物の高さ位置を維持するための制御が、図の左側に示す変位制御部30bにより比例弁35を用いて行われる。
【0065】
尚、同図には、上述した空気ばねユニット2の構成の説明と同じく、便宜上、上下方向の空気ばね20の制御についてのみ示しているが、これと同様の制御は水平方向の空気ばねについても行われる。
【0066】
まず、前記振動制御部30aによるサーボ弁34の制御について説明すると、これは、加速度センサ31により検出される除振対象物の振動状態、即ちトッププレート23の上下方向加速度x″に基づいて、その振動を減殺するような制御力を空気ばね20により発生させるものである。すなわち、検出された加速度x″に対応するフィードバックゲインをGcとし、この加速度x″の微分に対応するフィードバックゲインをGmとし、また、加速度x″の積分に対応するフィードバックゲインをGkとして、それぞれフィードバック補正値を演算し、これらを加算した後に反転して、サーボ弁34への制御入力U1を決定する。
【0067】
この制御入力U1に応じてサーボ弁34のフラッパ34bが回動し、これにより空気圧F1(圧縮空気)が空気ばね20に供給されて、その内圧が変化することにより、除振対象物に制御力が付加される。そうして制御力が付加された後の除振対象物の振動状態(加速度x″)は、該除振対象物及び空気ばね20などよりなる制御対象(Plant)から再びフィードバックされる。
【0068】
そのように、除振対象物の振動状態をフィードバックしてサーボ弁34を制御することにより、空気ばね20の内圧を応答性良く変化させて、除振対象物の実際の振動状態に即した適切な制御力を発生させることができる。すなわち、上述したようにサーボ弁34の応答性が非常に高く、微小な空気流量の制御ができることから、除振対象物の微小な振動に対し遅れなく、且つ高精度に空気ばね20の内圧を変更することができるのである。これにより、除振対象物の振動をより高い周波数域まで低減することができ、しかも、収束性の高い安定な振動制御を実現できる。
【0069】
図7は、前記振動制御部30aによるフィードバックループの周波数応答(開ループ伝達関数)を示す。この振動の制御では、位相交点P(位相がマイナス180°になるところ)が比較的高い周波数域に現れており、その周波数域においてゲインも比較的高いため、無駄時間の影響を受けやすい。そのため、仮に応答の遅い弁を使用したとすると、例えば図に仮想線で示すように位相遅れが大きくなり、位相交点Pにおけるゲイン余裕がなくなって不安定になると考えられるが、この実施形態では、前記のように高応答のサーボ弁34を用いているため、十分なゲイン余裕があり、制御が不安定になることはない。
【0070】
尚、前記のように加速度x″、その微分値及び積分値にそれぞれ制御ゲインGc、Gm、Gkを乗じてフィードバックすることで、見かけ上、空気ばね20の系の減衰係数、質量及びばね定数が増加し、除振性能が向上する。すなわち、この実施形態のようにアクチュエータとして空気ばね20を利用する場合、制御入力U1に比例するのはサーボ弁34の開度であり、空気ばね20の内圧は制御入力U1の積分に比例することになるから、前記のように加速度x″に制御ゲインGcを乗算してフィードバックすれば、この分の制御量が空気系で積分されて、絶対速度に比例する空気圧の変化を生じることになり、いわゆるスカイフックダンパの効果が得られるのである。
【0071】
次に、前記変位制御部30bによる制御について説明すると、これは、変位センサ32により検出されるトッププレート23の基礎に対する相対変位x−x0に基づいて、この相対変位が小さくなるように空気ばね20の内圧を調整するものである。すなわち、図示の如く、検出した相対変位x−x0を目標値(零)から減算した後に、PID制御則に従って制御入力U2を求め、これを比例弁35に入力する。
【0072】
この制御入力U2に応じて比例弁35のスプール35aの位置が変更され、これにより制御力としての空気圧F2(圧縮空気)が空気ばね20に供給されて、その内圧が変化することで、除振対象物の位置は、基準位置からの変位が小さくなるように、即ち初期の設定高さになるように変更される。そうして変更された除振対象物の高さ位置(基礎に対する相対変位x−x0)が制御対象(Plant)から再びフィードバックされる。
【0073】
そのような比例弁35による空気圧の調整は、上述したようにサーボ弁34に比べればラフで応答性も低いものであるが、従来までのような機械式の圧力制御弁を用いる場合と比較すれば高精度且つ高応答であり、また、比例弁35はサーボ弁34と比較して大流量で空気圧の調整量が大きい(ゲインが大きい)ものなので、速やかに除振対象物の高さ位置を基準位置に戻すことができる。
【0074】
しかも、前記比例弁35は、その構造上、空気ばね20の内圧を一定に維持するときには空気を消費しないので、除振対象物の大型化に対応して空気ばね20の容量を大きくしたときに、これに応じて比例弁35を大流量化して、変位制御の応答性を高めるようにしても、このことによって空気の消費量が過大になるという問題は生じない。
【0075】
その上さらに、この実施形態では、上述の如くサーボ弁34を用いた振動制御と、比例弁35を用いた変位制御とを組み合わせたことで、たとえ上記のように空気ばね20の容量が大きくなったとしても、制御の応答性及び安定性を両立することができる。
【0076】
すなわち、上述の如く空気ばね20をアクチュエータとして利用する場合に、この空気ばね20の容量が大きいということは、時定数が大きくて、ゲインが低いということを意味し、制御応答性の低下が懸念される。このことは、定常的な微小振幅の振動の除振に関しては例えばフィードバックゲイン(制御ゲイン)の増大などで対応可能であり、実質的に問題にならないが、大振幅の振動が入力して変位を生じる場合には、サーボ弁34だけでは流量が不足して、制御に著しい遅れを生じる虞れがある。
【0077】
これに対し、前記の如くサーボ弁34を用いた振動制御と比例弁35を用いた変位制御とを組み合わせれば、例えば定盤3上に搭載された装置内のステージの移動などによって大振幅の振動が入力したとき、まず、加速度センサ31の検出値に基づいてサーボ弁34の制御が行われ、これにより空気ばね20の内圧が遅れなく変更されるとともに、その振動入力に伴う除振対象物(定盤3など)の変位に応じて比例弁35の制御が行われて、空気ばね20への空気の給排が大流量で行われることにより、その内圧が速やかに変更される。
【0078】
つまり、比較的容量の大きな空気ばね20に対して大振幅の振動が入力したときでも、その空気圧を遅れなく、適切に且つ速やかに調整して、除振対象物の振動を応答性良く低減することができる。
【0079】
その一方で、前記のように大きな変位(外乱)に対応する比例弁35の制御によって、空気が大流量で給排されると、この結果として空気ばね20の内圧に振動的な変化が生じることがあり、これにより除振対象物に余計な振動が付加される虞れがある。しかし、この振動は加速度センサ31によって検出され、これに応じて、前記の如くサーボ弁34による高応答且つ高精度の空気圧の調整(振動制御)が行われることによって、吸収される。つまり、除振対象物の位置は速やかに且つ安定的に基準位置に収束するようになる。
【0080】
図8は、前記変位制御部30bによるフィードバックループの周波数応答を示す。図示の位相曲線において位相交点Pが比較的低い周波数域に現れているが、これを含む高周波側の領域でゲインが低下しているため、無駄時間の影響は少なく、制御が安定なものとなることが分かる。一方、図に仮想線で示すのは、仮に前記振動制御部30aによるサーボ弁34の制御を行わないようにした場合のものであり、このときには位相交点Pにおけるゲインが高くなっており、制御が不安定になることが分かる。
【0081】
換言すれば、図8に実線で示すゲイン及び位相曲線は、上述の如く振動制御部30aによるサーボ弁34の制御が行われることによって減衰が付加されて、変位制御部30bによるフィードバック制御が安定化することを示している。
【0082】
したがって、上述した実施形態1の精密除振台Aによると、除振対象物を支持する複数の空気ばねユニット2,2,…において、それぞれ、空気ばね20への空気の給排系に、比較的小流量だが高応答且つ高精度のサーボ弁34と、比較的大流量の比例弁35とを配設して、この両者による空気圧の調整が相互に補完し合うようにしたことで、除振対象物が大型化したときでも、空気の消費量が著しく増大することはなく、従来同様の高応答、高精度の振動制御を行えるとともに、従来以上に高速でしかも安定性の高い位置制御を実現できる。
【0083】
(変形例)
上述の実施形態1では、図6に示すように、コントローラ30の振動制御部30a及び変位制御部30bにおいてPID制御則に従い制御入力U2を決定するようにしているが、これに限らず、現代制御理論の手法を適用することもできる。
【0084】
例えば変位制御部30bを変更した変形例を図9に示すと、まず、振動制御部30aを含めた制御対象(Plant)のノミナルモデルPnを設定し、このノミナルモデルの逆関数Pn-1に変位センサ32からの信号を入力して、制御量U2の位置での外乱を推定する。そして、この推定入力値から元々の制御入力の分を減算して外乱のみを抽出し、さらに相補感度関数Tを通過させて安定化した上で、フィードバックする。
【0085】
こうすれば、前記変位制御部30bは、前記制御対象からの出力(変位x−x0)に基づいて当該制御対象への外乱入力を推定する外乱オブザーバとしての機能を有し、この変位制御部30bにより演算される制御入力U2は、外乱をちょうど打ち消すようなものとなるから、このようなフィードバック制御を行うことによって、前記実施形態のものと同等、或いはそれ以上に適切な制御力を発生させることができる。
【0086】
尚、上述した実施形態1、及びその変形例の空気ばねユニット2において、変位制御部30bは、除振対象物の基準位置からの変位が所定値以下のときには比例弁35の制御を行わず、変位センサ32からの信号に基づいてサーボ弁34を制御するように構成してもよい。こうして、サーボ弁34の制御により空気ばね20の内圧を調整して、除振対象物の高さ位置を変更するようにすれば、その高さ位置の変位が例えば数ミクロン程度と非常に小さくて、前記した比例弁35による空気圧の調整によっては制御不能な場合にも対応可能になり、これにより除振対象物の高さ位置を極めて正確に基準位置に維持することができる。
【0087】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2に係る除振装置Aの空気ばねユニット2の構成を示す。この実施形態2のものは、比例弁35のみによって空気ばね20の圧力を調整し、これにより除振対象物の振動及び位置制御を行うようにしたものであり、その点を除いては前記実施形態1のものと同じ構成なので、同じ部材には同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0088】
また、図11は、前記比例弁35のみによる空気圧制御のブロック図であり、振動制御部30aにおける加速度x″のフィードバックループにおいて主に除振対象物の振動を低減するための制御入力が決定される一方、変位制御部30bにおける変位xのフィードバックループにおいて主に除振対象物の高さ位置を維持するための制御入力が決定され、この両者を合わせた制御入力Uが比例弁35に与えられるようになっている。
【0089】
尚、前記両図に示すのは上下方向の振動及び位置制御のための構成のみであり、これと同様の構成が水平方向の振動及び位置制御のためにも設けられているが、以下、便宜上、上下方向の構成のみについて説明する。
【0090】
そして、この第2実施形態では、実施形態1のようにサーボ弁34を用いることなく、比例弁35のみによって振動制御も行うことから、この比例弁35としては、構造自体は実施形態1のものと同様であるが、制御入力Uの変化に比例して空気の流量が変化する流量型のものを用い、スプール35aの軽量化や摩擦抵抗の低減、電磁ソレノイド35bの大型化などによって、できるだけ動作を高速化するのが好ましい。
【0091】
そうして動作を高速化したとしても、比例弁35による空気圧制御の応答速度はサーボ弁34に比べて低いので、振動制御のフィードバックゲインGc、Gm、Gkはできるだけ大きく設定したいところであるが、前記図7を参照して既説したように、振動制御のフィードバックループは無駄時間の影響を受けやすく、応答の遅い比例弁35を使用すると、制御ゲインを大きくした場合に不安定になり易い。
【0092】
さらに、比例弁35はスプール弁であり、上述したように、スプール35aの軸方向の変位によって3つのポートA,P,Rの連通状態を切換えるとともに、その各ポートA,P,Rの有効断面積を無段階に変化させて、空気の流量を調整するものであるから、この比例弁35への制御入力Uと空気の流量との間には複雑な非線形関係があり、このことも前記した振動制御の不安定化を助長する虞れがある。
【0093】
すなわち、比例弁35への制御入力Uと空気流量との間の関係は、例えば図13に実線で示すグラフのようになっていて、空気流量0の閉止状態を基準として制御入力Uが基準値U0とあまり変わらないときにはゲイン(グラフの傾き)が小さく、それよりも制御入力Uが大きくなるか或いは小さくなると、ゲインが大きくなり、さらに制御入力が大きくなるか或いは小さくなると、再びゲインは小さくなっている。
【0094】
そのため、仮に振動制御のフィードバックゲインGc、Gm、Gkを、前記比例弁35のゲインが比較的小さな状態(制御量Uが基準値U0とあまり変わらないとき)でも、高い応答性が得られるように大きく設定すると、例えば装置内のステージの移動などによって大振幅の振動が入力したとき(大きな外乱)、これに対応して大きな制御入力Uが比例弁35に与えられ、このときには比例弁35のゲインも大きいことから、空気ばね20に給排する空気流量の変化が過度に大きくなってしまい、不安定化を招くのである。
【0095】
そのように振動制御を行う場合に特に問題になる比例弁35の非線形性に着目して、この実施形態では、前記図11のようなフィードバックループにおいて除振対象物の加速度x″や変位xに基づいて決定した制御入力Uを補正して、この制御入力Uと比例弁35の空気流量との間の関係が線形となるようにしている。より具体的には、そのように補正する前後の制御入力U,U′の値を互いに対応付けて予め設定した補正テーブルを準備し、前記の如く除振対象物の加速度x″等に基づいて決定(仮決定)した制御入力Uに対応する補正後の制御入力U′を読み取って、これを比例弁35に入力するようにする。
【0096】
そのような補正のイメージは、図13に示すように、比例弁35への制御入力Uと空気流量との間の非線形関係を表す実特性(実線のグラフ)と、比例弁35への制御入力Uと空気流量との間の関係が線形となるように予め設定した理想特性(破線のグラフ)とを対比し、図11のようにフィードバックループによって求められた制御入力Uから、前記理想特性に基づいて目標とする空気流量を求め、この目標空気流量を得るために必要な実際の制御入力U′を前記実特性から求めるというものである。
【0097】
こうして補正した制御入力U′を比例弁35に与えるようにすれば、この比例弁35から空気ばね20へ供給される空気の流量と、補正前の制御入力Uとの間には線形関係が成立するので、振動制御のフィードバックループにおける制御ゲインGc、Gm、Gkの値を、比例弁35のゲインが比較的小さな状態でも所要の応答性が得られるよう大きめに設定しても、制御量に依らず制御特性が一定であるため、不安定化の問題を招くことはない。
【0098】
したがって、この実施形態2の精密除振台Aでは、空気量の消費が多いサーボ弁34を用いず、電磁比例弁35のみによって空気ばね20の圧力を調整し、これにより除振対象物の振動及び位置制御を行うようにしたから、振動制御の応答性自体は実施形態1に比べて低くなるとしても、比較的要求の緩い除振対象物に対しては十分な実用性が得られる。
【0099】
また、そうして応答性を高める際に特に問題になる比例弁35の非線形性を補正して、制御入力Uと空気流量との間に線形関係が成り立つようにしたから、比例弁35の制御ゲインを或る程度、大きくしても、不安定にはなり難い。しかも、制御入力Uの補正は補正テーブルを用いて行うようにしたから、補正に要する時間が短くなり、この点でも制御応答性の向上に有利になる。
【0100】
さらに、この実施形態2の場合も、上述した実施形態1のものと同じく、比例弁35による空気圧の調整は機械式の圧力制御弁と比較すれば高精度且つ高応答であり、サーボ弁34と比較しても空気圧の調整量は大きい(ゲインが大きい)から、高速で安定性の高い位置制御が行える。しかも、前記の如く比例弁35の非線形性を補正して、制御入力Uと空気流量との間に線形関係が成り立つようにしたから、位置制御においても制御の不安定化を防止しつつ、制御ゲインを大きくして応答性を高めることができる。そして、勿論、除振対象物の大型化に対応して空気ばね20の容量を大きくし、これに応じて比例弁35を大流量化しても、サーボ弁34のような空気の消費量増大の問題は生じない。
【0101】
尚、前記図13に示す比例弁35の実特性には個体ばらつきがあり、経年変化も考えられるが、スプール弁の場合は特性そのもの、即ち図示のグラフの形状自体が大きく異なることは少なく、グラフが全体として制御入力Uの軸(横軸)方向にずれるようなばらつきを生じると考えられる。
【0102】
そこで、例えば空気ばね20の内圧を計測する圧力センサ(検出手段)を備え、これによる検出値(比例弁35から空気ばね20への空気の供給流量に関連する値)に基づいて、その検出値と目標空気流量との偏差が小さくなるように補正テーブルのデータを変更する、所謂学習制御を行うことが考えられる。この際、前記のようなスプール弁の特性を考慮して、例えば図示のグラフを横軸の方向にずらすように、すなわち、補正後の制御入力U′の値が補正前の制御入力Uの値に対して一律に変化するように、前記検出値と目標空気流量との偏差に応じて補正テーブルのデータを一括して変更することが好ましい。
【0103】
すなわち、例えば、空気ばね20の内圧の変化から推定した空気流量が目標空気流量よりも小さければ、図13において実線のグラフが右側にシフトするように、即ち、補正後の制御入力U′の値が予め設定した所定値だけ一律に増大するように、補正テーブルのデータを変更すればよい。一方、推定した空気流量が目標空気流量よりも大きければ、グラフが左側にシフトするように、即ち、補正後の制御入力U′の値が一律に減少するように補正テーブルのデータを変更すればよい。
【0104】
このような学習制御によれば、比例弁35の個体ばらつきや経年変化を吸収して、より精度の高い振動制御を行うことができる。しかも、スプール弁である比例弁35の特性を考慮して、補正テーブルのデータを一括して変更することで、学習結果を振動制御に早期に反映することができ、結果として、より高精度の制御をより早く実行することができる。この場合には、そのような学習制御のプログラムを実行するコントローラ30が、学習手段を構成する。
【0105】
また、前記のように比例弁35の空気流量を推定するためには例えば加速度センサ31の出力を利用することもでき、或いは、比例弁35と空気ばね20との配管26に空気流量センサを設けてもよい。また、比例弁35のスプール35aの位置を検出するセンサの信号を併用することもできる。
【0106】
(変形例)
上述の実施形態2では、比例弁35への制御入力Uを補正するための補正特性として、予め準備した補正テーブルを用いているが、これに限らず補正計算式を用いることも可能である。例えば、図13に実線のグラフで示す比例弁35の実特性は、制御入力Uが基準値U0以上の場合について、空気流量をf(U)として、次のような4次式で近似することができる。 f(U) = a×U4+b×U3+c×U2+d×U+e 尚、a,b,c,d,eは所定の係数である。
【0107】
そして、同図に破線のグラフで示す理想特性が1次式g(U)と表せるので、補正前の制御入力Uを補正後の制御入力U′に変換する補正計算式は、一般的に次のように表すことができる。 U′ = f-1(g(U)) 同様に制御入力Uが基準値U0未満の場合についても補正計算式を定義することができる。但し、一般には逆関数を求めることは難しいので、前記実施形態2のように補正テーブルを用いる方が好ましい。
【0108】
(他の実施形態)
本発明の構成は、前記実施形態1、2のものに限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。すなわち、例えば前記各実施形態の空気ばねユニット2においては除振対象物の振動状態を検出するために、加速度センサ31を空気ばね20のトッププレート23に配設しているが、これは速度センサであってもよいし、それらのセンサは前記トッププレート23に限らず、定盤3或いはその上に搭載される装置に取り付けることもできる。また、空気ばね20に代えて、空気以外の気体を封入した気体ばねを用いることもできる。
【0109】
また、前記各実施形態の空気ばねユニット2において、上述したフィードバックによる振動制御に加えて、フィードフォワード制御も行うようにしてもよい。すなわち、図示はしないが、加速度センサ33からの信号に基づいてベースプレート24の振動状態を検出し、ここから空気ばね20を通して除振対象物に伝達される微小な振動を推定して、この伝達振動を減殺する逆位相の制御力を空気ばね20が発生するように、その内圧をサーボ弁34、比例弁35により制御すればよい。こうすることで、除振対象物の振動をより一層、低減することができる。
【0110】
さらに、前記実施形態1及びその変形例のようにサーボ弁34により振動制御を、比例弁35により位置制御を行う場合にも、前記実施形態2の如く比例弁35への制御入力U2を補正するようにすることが好ましい。こうすれば、前記比例弁35による位置制御の不安定化を防止しつつ、制御ゲインを大きくして応答性を高めることができるからである。また、この場合には、補正テーブルの学習制御も併せて行うことが好ましいことは言うまでもない。
【0111】
さらにまた、前記各実施形態では、定盤3を4つの空気ばねユニット2,2,…により支持する例について説明したが、空気ばねユニット2の個数が4つに限られないことは言うまでもなく、それは例えば3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上、説明したように、本発明に係る除振装置(空気ばねユニット2)は、除振対象物の大型化に対応して、例えば空気ばねの容量を大きくしても、空気消費量の著しい増大を招くことなく、所要の応答性及び精度の振動制御を可能としながら、高速の位置制御も実現できるものなので、例えば半導体や液晶関連の製造装置のように、大型であるにも拘わらず、高度の除振・制振が求められる装置を設置するために好適である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】精密除振台の概略構成を示す図である。
【図2】実施形態1の空気ばねユニットの空気圧制御系の構成図である。
【図3】サーボ弁の概略構成を示す図である。
【図4】サーボ弁の作動特性を示すボード線図
【図5】比例弁についての図4相当図である。
【図6】空気圧制御の構成を示すブロック図である。
【図7】振動制御部の周波数応答を示すボード線図である。
【図8】変位制御についての図7相当図である。
【図9】現代制御理論を適用した変形例に係る図6相当図である。
【図10】実施形態2に係る図2相当図である。
【図11】同図6相当図である。
【図12】比例弁の概略構成を示す図である。
【図13】制御入力の補正の説明図である。
【符号の説明】
【0114】
A 精密除振台
1 基礎構造部(基礎)
2 空気ばねユニット
3 定盤(除振対象物)
20 空気ばね
23 トッププレート(除振対象物)
24 ベースプレート(基礎)
30 コントローラ(制御手段、学習手段)
30a 振動制御部(振動制御手段)
30b 変位制御部(変位制御手段)
31 加速度センサ(振動センサ、センサ)
32 変位センサ(位置センサ、センサ)
33 加速度センサ(別の振動センサ、センサ)
34 サーボ弁
35 電磁比例弁
35a スプール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除振対象物を基礎に対し気体ばねで支持するとともに、該除振対象物の振動状態を検出するための振動センサと、前記気体ばねの圧力を調整するためのサーボ弁とを備え、このサーボ弁を前記振動センサからの信号に基づいて制御することにより、前記気体ばねの内圧を変更して、前記除振対象物にその振動を減殺する制御力を付加するようにしたアクティブ除振装置であって、
前記除振対象物の基礎に対する高さ位置を検出するための位置センサと、
前記気体ばねにその内圧を調整可能に接続された電磁比例弁と、
前記電磁比例弁を前記位置センサからの信号に基づいて制御することにより、前記除振対象物の基準位置からの変位が小さくなるように前記気体ばねの内圧を調整する変位制御手段と、を備えることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項2】
請求項1のアクティブ除振装置において、
振動センサは、除振対象物の加速度を検出する加速度センサ、又は該除振対象物の速度を検出する速度センサの少なくとも一方であり、
前記加速度センサ乃至速度センサからの信号に基づいてサーボ弁を制御することにより、前記除振対象物に制御力が付加されるように気体ばねの内圧を変更する振動制御手段を備えている
ことを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項3】
請求項2のアクティブ除振装置において、
基礎の加速度乃至速度を検出する少なくとも1つの別の振動センサを備え、
振動制御手段は、前記別の振動センサからの信号に基づいてサーボ弁を制御することにより、除振対象物に前記基礎からの伝達振動を減殺する制御力が付加されるように、気体ばねの内圧を変更するものである
ことを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つのアクティブ除振装置において、
変位制御手段は、除振対象物の基準位置からの変位が所定値以下のときには電磁比例弁の制御を行わず、位置センサからの信号に基づいてサーボ弁を制御することにより、前記除振対象物の変位が小さくなるように気体ばねの内圧を調整するものであることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つのアクティブ除振装置において、
変位制御手段は、電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の非線形関係を線形に補正するための補正特性を記憶していて、この補正特性に基づいて前記電磁比例弁への制御入力を補正するように構成されていることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項6】
除振対象物を基礎に対し気体ばねで支持してなる除振装置であって、
前記除振対象物の振動状態及び基礎に対する高さ位置の少なくとも一方を検出するためのセンサと、
前記気体ばねにその内圧を調整可能に接続された電磁比例弁と、
前記電磁比例弁を前記センサからの信号に基づいて制御することにより、前記除振対象物の基準位置からの変位が小さくなるか、或いは該除振対象物にその振動を減殺する制御力が付加されるか、の少なくとも一方となるように前記気体ばねの内圧を調整する制御手段と、を備えており、
前記制御手段は、前記電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の非線形関係を線形に補正するための補正特性を記憶していて、この補正特性に基づいて前記電磁比例弁への制御入力を補正するように構成されていることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項7】
請求項6のアクティブ除振装置において、
補正特性は、補正前後の制御入力値を互いに対応付けて設定した補正テーブルであり、
前記補正テーブルは、電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の非線形関係を表す実特性と、該電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の関係が線形となるように予め設定した理想特性と、を対比し、この理想特性に基づいて補正前の制御入力値に対応する目標気体流量を求め、この目標気体流量に対応する補正後の制御入力値を前記実特性から求めたものであり、
制御手段は、センサからの信号に基づいて仮決定した制御入力値に対応する補正後の制御入力値を前記補正テーブルから読み取り、これにより前記電磁比例弁を制御するものであることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項8】
請求項7のアクティブ除振装置において、
電磁比例弁から気体ばねへの気体の供給流量に関連する値を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出値と目標気体流量との偏差が小さくなるように、補正テーブルのデータを変更する学習手段と、をさらに備えることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項9】
請求項8のアクティブ除振装置において、
電磁比例弁はスプール弁により構成され、
学習手段は、検出手段による検出値と目標気体流量との偏差に基づいて、補正テーブルに設定されている補正後の制御入力値が補正前の制御入力値に対して一律に変化するように、該補正テーブルのデータを一括して変更するものであることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項1】
除振対象物を基礎に対し気体ばねで支持するとともに、該除振対象物の振動状態を検出するための振動センサと、前記気体ばねの圧力を調整するためのサーボ弁とを備え、このサーボ弁を前記振動センサからの信号に基づいて制御することにより、前記気体ばねの内圧を変更して、前記除振対象物にその振動を減殺する制御力を付加するようにしたアクティブ除振装置であって、
前記除振対象物の基礎に対する高さ位置を検出するための位置センサと、
前記気体ばねにその内圧を調整可能に接続された電磁比例弁と、
前記電磁比例弁を前記位置センサからの信号に基づいて制御することにより、前記除振対象物の基準位置からの変位が小さくなるように前記気体ばねの内圧を調整する変位制御手段と、を備えることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項2】
請求項1のアクティブ除振装置において、
振動センサは、除振対象物の加速度を検出する加速度センサ、又は該除振対象物の速度を検出する速度センサの少なくとも一方であり、
前記加速度センサ乃至速度センサからの信号に基づいてサーボ弁を制御することにより、前記除振対象物に制御力が付加されるように気体ばねの内圧を変更する振動制御手段を備えている
ことを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項3】
請求項2のアクティブ除振装置において、
基礎の加速度乃至速度を検出する少なくとも1つの別の振動センサを備え、
振動制御手段は、前記別の振動センサからの信号に基づいてサーボ弁を制御することにより、除振対象物に前記基礎からの伝達振動を減殺する制御力が付加されるように、気体ばねの内圧を変更するものである
ことを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つのアクティブ除振装置において、
変位制御手段は、除振対象物の基準位置からの変位が所定値以下のときには電磁比例弁の制御を行わず、位置センサからの信号に基づいてサーボ弁を制御することにより、前記除振対象物の変位が小さくなるように気体ばねの内圧を調整するものであることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つのアクティブ除振装置において、
変位制御手段は、電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の非線形関係を線形に補正するための補正特性を記憶していて、この補正特性に基づいて前記電磁比例弁への制御入力を補正するように構成されていることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項6】
除振対象物を基礎に対し気体ばねで支持してなる除振装置であって、
前記除振対象物の振動状態及び基礎に対する高さ位置の少なくとも一方を検出するためのセンサと、
前記気体ばねにその内圧を調整可能に接続された電磁比例弁と、
前記電磁比例弁を前記センサからの信号に基づいて制御することにより、前記除振対象物の基準位置からの変位が小さくなるか、或いは該除振対象物にその振動を減殺する制御力が付加されるか、の少なくとも一方となるように前記気体ばねの内圧を調整する制御手段と、を備えており、
前記制御手段は、前記電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の非線形関係を線形に補正するための補正特性を記憶していて、この補正特性に基づいて前記電磁比例弁への制御入力を補正するように構成されていることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項7】
請求項6のアクティブ除振装置において、
補正特性は、補正前後の制御入力値を互いに対応付けて設定した補正テーブルであり、
前記補正テーブルは、電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の非線形関係を表す実特性と、該電磁比例弁への制御入力と気体の流量との間の関係が線形となるように予め設定した理想特性と、を対比し、この理想特性に基づいて補正前の制御入力値に対応する目標気体流量を求め、この目標気体流量に対応する補正後の制御入力値を前記実特性から求めたものであり、
制御手段は、センサからの信号に基づいて仮決定した制御入力値に対応する補正後の制御入力値を前記補正テーブルから読み取り、これにより前記電磁比例弁を制御するものであることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項8】
請求項7のアクティブ除振装置において、
電磁比例弁から気体ばねへの気体の供給流量に関連する値を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出値と目標気体流量との偏差が小さくなるように、補正テーブルのデータを変更する学習手段と、をさらに備えることを特徴とするアクティブ除振装置。
【請求項9】
請求項8のアクティブ除振装置において、
電磁比例弁はスプール弁により構成され、
学習手段は、検出手段による検出値と目標気体流量との偏差に基づいて、補正テーブルに設定されている補正後の制御入力値が補正前の制御入力値に対して一律に変化するように、該補正テーブルのデータを一括して変更するものであることを特徴とするアクティブ除振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−283966(P2006−283966A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282139(P2005−282139)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
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