アクリルアミドの分解を増加するための方法
アクリルアミドの形成を抑えるために、遊離チオール化合物と還元剤の組み合わせを調理前の加工食品に添加する。加工食品は、コーンチップ又はポテトチップであることができる。或いは、遊離チオール化合物と還元剤を有する溶液に、スライスしたジャガイモのからのポテトチップのような非加工スナック製品を接触させることができる。還元剤には、電子供与体である任意の可溶性化合物又はそのような化合物の組み合わせを挙げることができる。遊離チオール化合物と還元剤は、それらが食品全体を通して存在するように、製粉、乾燥混合、湿式混合及びその他の混合の間に添加することができる。最終製品の品質及び特徴への影響をできるだけ抑えながら、仕上げ製品におけるアクリルアミドの形成を所望のレベルの下げるために、還元剤と遊離チオール化合物の組み合わせを調整することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱加工された食品におけるアクリルアミドの量を減らす方法に関するものであり、有意に低下したレベルのアクリルアミドを有する食品の生産を可能にする。さらに具体的には、本発明は、a)加工食品を作製する際、2以上のアクリルアミド還元剤の組み合わせを添加すること、及びb)ポテトフレーク、又は加工食品を作製するのに使用されるその他の中間生産物を生産する間に種々のアクリルアミド低減剤を使用することに関する。
【0002】
本出願は、双方共、2003年2月21日に出願された同時係属米国特許出願10/372/738号及び同時係属米国特許出願10/372/154号の一部継続出願である2004年8月30日に出願された同時係属米国特許出願10/929,922号及び2004年8月31日に出願された同時係属米国特許出願10/931/021号の一部継続出願である。米国特許出願10/372/154号は、2002年9月19日に出願された同時係属米国特許出願10/247/504号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0003】
化学物質アクリルアミドは、長い間、水処理、油回収の向上、製紙、凝集剤、濃厚剤、鉱石加工及び耐久プレス加工布への産業的用途でポリマーの形態にて使用されている。アクリルアミドは、白色の結晶固体として関わり、無臭であり、水への溶解性が高い(30℃にて2155g/L)。アクリルアミドの同義語には、2−プロペンアミド、エチレンカルボキサミド、アクリル酸アミド、ビニルアミド及びプロペン酸アミドが挙げられる。アクリルアミドは、分子量71.08、25mmHgにて融点84.5℃、及び沸点125℃である。
【0004】
つい最近、多種多様な食品で、アクリルアミドモノマーの存在について陽性であることが調べられた。アクリルアミドは特に、高温で加熱された又は高温で加工された炭水化物食品に主として見出されている。アクリルアミドについて陽性であることが調べられた食品の例には、コーヒー、シリアル、クッキー、ポテトチップ、クラッカー、フライドポテト、パン及びロールパン並びに肉のから揚げが挙げられる。加熱せず、茹でた食品における検出不能なレベルに比べて、一般に、相対的に低い含量のアクリルアミドは、加熱したタンパク質が豊富な食品に見出され、一方、相対的に高い含量のアクリルアミドは、炭水化物が豊富な食品に見出される。種々の同様に加工された食品で見出されるアクリルアミドの報告されたレベルは、ポテトチップでの330〜2,300(μg/kg)の範囲、フライドポテトでの300〜1,100(μg/kg)の範囲、コーンチップの120〜180(μg/kg)の範囲、及び種々の朝食シリアルにおける検出不能〜1,400(μg/kg)の範囲のレベルが挙げられる。
【0005】
アクリルアミドは、アミノ酸及び還元糖の存在から形成されると現在考えられている。たとえば、生野菜で一般に見出されるアミノ酸である遊離アスパラギンと遊離還元糖との間の反応によって、揚げた食品で見出されるアクリルアミドの大半は説明されると考えられている。アスパラギンは、生のジャガイモで見られる遊離アミノ酸すべてのおよそ40%の割合を占め、高タンパクのライ麦で見られる遊離アミノ酸すべてのおよそ18%の割合を占め、小麦で見られる遊離アミノ酸すべてのおよそ14%の割合を占める。
【0006】
アスパラギン以外のアミノ酸からのアクリルアミドの形成は可能であるが、確実性の程度は未だ確認されていない。たとえば、グルタミン、メチオニン、システイン及びアスパラギン酸を前駆体として調べることから一部のアクリルアミドの形成が報告されている。
しかしながら、ストックのアミノ酸におけるアスパラギン不純物の可能性のために、これらの知見を確認するのは困難である。それにもかかわらず、アスパラギンは、アクリルアミド形成の最大原因であるアミノ酸前駆体として同定されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
食品中のアクリルアミドは最近発見された現象なので、形成の正確なメカニズムは確認されていない。しかしながら、アクリルアミド形成の最も可能性の高い経路には、メイラード反応が関与すると今や考えられる。メイラード反応は、食品加工において最も重要な化学反応の1つとして食品化学で長いこと認識されており、食品の風味、色及び栄養価に影響を及ぼしうる。メイラード反応は、熱、水分、還元糖及びアミノ酸を必要とする。
【0008】
メイラード反応には、多数の中間体とともに一連の複雑な反応が関与するが、一般に、関与する3つの工程として説明される。メイラード反応の第1の工程には、遊離アミノ基(遊離アミノ酸及びタンパク質、もしくは遊離アミノ酸又はタンパク質に由来)の還元糖(たとえば、グルコース)との化合が関与し、アマドリ又はヘインズの再構成生成物が形成される。第2の工程には、デオキシオソン、分裂又はシュトレッカーの分解を含む、異なった別の経路を介したアマドリ又はヘインズの再構成生成物の分解が関与する。脱水、脱離、環化、分裂及び断片化を含む複雑な一連の反応は、芳香のある中間体及び芳香のある化合物を生じる。メイラード反応の第3の工程は、褐色の、窒素を含むポリマー及びコポリマーの形成を特徴とする。アクリルアミドの形成に可能性の高い経路としてメイラード反応を用いて、図1は、アスパラギン及びグルコースから出発したアクリルアミドの形成のための推定される経路を簡略化して説明する。
【0009】
アクリルアミドはヒトに有害であると定められているわけではないが、食品におけるその存在は、特に高いレベルでは望ましくない。前に記したように、加熱した又は熱で加工した食品で相対的に高い濃度のアクリルアミドが見出される。そのような食品中のアクリルアミドの低減は、アクリルアミドを形成する前駆体化合物を低減する又は除くこと、食品の加工中アクリルアミドの形成を阻害すること、食品中でいったん形成されたアクリルアミドモノマーを分解する又は反応させること、或いは消費する前に製品からアクリルアミドを取り除くことによって達成すればよい。当然のことながら、各食品は、上記の選択肢を達成するために独特の難題を提示する。たとえば、粘着片として薄く切り、調理される食品は、調理の際、独特の特徴を食品に与える細胞構造を物理的に破壊することなく、種々の添加剤と容易に混合されなくてもよい。特定の食品に対するその他の加工上の必要条件によって同様に、アクリルアミドの低減戦略が相容れなくなり、又は非常に困難になる。
【0010】
例証として、図2は、生の貯蔵されたジャガイモから揚げたポテトチップを作る周知の従来技術の方法を説明する。約80%以上の水を含有する生のジャガイモは先ず、皮むき工程21に進む。生のジャガイモから皮をむいた後、ジャガイモはスライス工程22に輸送される。スライス工程22における各ジャガイモ細片の厚さは、最終製品の所望の厚さに依存する。従来技術における例には、ジャガイモを約0.053インチにスライスすることが関与する。次いで、これらの細片を洗浄工程23に運び、その際、各細片上の表面デンプンを水で取り除く。次いで、洗浄したジャガイモ細片を調理工程24に運ぶ。調理工程24には通常、連続揚げ鍋にて、たとえば、177℃でおよそ2.5分間、細片を揚げることが関与する。調理工程は一般に、チップの水分レベルを2重量%まで低減する。たとえば、典型的なポテトチップはおよそ1.4重量%の水分で揚げ鍋を出る。調理したポテトチップを次いで、味付け工程25に運び、そこで、回転ドラム中にて調味料が塗布される。最後に、味付けされたチップは、包装工程26に進む。この包装工程26は普通、チップを1以上の垂直形態に向け、満たす1以上の秤量装置及び柔軟性のある包装に包
装するための密封機に、味付けしたチップを搬送することを含む。いったん包装されると、製品は流通し始め、消費者によって購入される。
【0011】
上述のポテトチップ加工工程の数における軽微な調整によって、最終製品の特徴における有意な変化を生じることができる。たとえば、洗浄工程23において細片の滞留時間を延長することは、ジャガイモの風味、色及び質感を持つ最終製品を提供する細片からの化合物の浸出を生じうる。調理工程24にて滞留時間を延ばすこと又は加熱温度を上げることは、水分含量の低下と共にチップでメイラード褐色化レベルの増加を生じうる。揚げる前にジャガイモ細片に成分を組み入れることが所望であれば、チップの細胞構造を破壊することなく、又は有益な化合物を細片から浸出させることなく、細片の内部部分に添加された成分の吸収を提供するメカニズムを確立することが必要であってもよい。
【0012】
最終製品でアクリルアミドのレベルを低減することに独特の難題を表す加熱食品の別の例証として、スナックもまた、パン生地から作られる。用語「加工したスナック」は、元来の且つ変化させていないデンプンの出発物質以外の何かをその出発成分として使用するスナック食品を意味する。たとえば、加工されたスナックには、脱水したジャガイモを出発物質として使用するポテトチップ及びマサフラワーを出発物質として使用するコーンチップが挙げられる。ここでは、脱水ジャガイモ製品は、ジャガイモ粉、ポテトフレーク、ジャガイモ顆粒又は脱水ジャガイモが存在するその他の形態でありうることが言及される。本出願でこれらの用語のいずれかが使用される場合、これらの変形物すべてが含まれることが理解される。
【0013】
図2に戻って参照して、加工されたポテトチップは、皮むき工程21、スライス工程22又は洗浄工程23を必要としない。代わりに、加工されたポテトチップは、たとえば、ポテトフレークで出発し、それを水及びその他成分と混合してパン生地を形成する。次いで、このパン生地を板状にし、調理工程に進む前に切断する。調理工程には、揚げること又は焼くことが関与してもよい。次いで、チップは味付け工程及び包装工程に進む。ジャガイモのパン生地の混合は、ほかの成分の容易な添加に役立つ。逆に、たとえば、ジャガイモ細片のような生の食品へのそのような成分の添加は、製品の細胞構造への成分の浸透を可能にするメカニズムが見出されることを必要とする。しかしながら、混合工程における成分の添加は、成分がパン生地の板状特性及び最終的なチップの特徴に悪影響を及ぼす可能性があることを考慮して行わなければならない。
【0014】
加熱した食品又は熱加工した食品の最終製品におけるアクリルアミドのレベルを下げる1以上の方法を開発することが望ましい。理想的にはそのような加工は、最終製品の質及び特徴に悪影響を及ぼすことなく、最終製品でアクリルアミドを実質的に減らす又は除くべきである。さらに、該方法は、実施するのに容易であり、好ましくは、加工全体に対するコストがほとんどかからない、又はかからない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
提案された本発明には、食品におけるアクリルアミドの低減が関与する。発明の工程では、還元剤を使用して遊離チオールを有する、たとえば、システインのようなアクリルアミド低減剤の効果を拡大する。態様の1つでは、たとえば、アスコルビン酸、塩化第1スズ、亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸ナトリウムのような還元剤と併せて、アクリルアミド低減剤としてシステインを使用する。
【0016】
還元剤は、遊離チオールを有するアクリルアミド低減剤の効果を拡大することができ、それによって、高いレベルのアクリルアミド低減剤によって顕著でありうる異風味を最低限にとどめる。従って、本発明は、最終製品の質及び特徴を高める手段を提供する。さらに、アクリルアミド低減のそのような方法は、一般に実施するのが容易である。本発明の
上記及び追加の特徴並びに利点は、以下に記載される詳細な説明で明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を特徴付ける新規の特徴が添付のクレームで述べられる。しかしながら、本発明自体は、使用の好ましい形態、さらなる目的及びその利点と同様に、以下の図面と併せて読まれた場合、説明的実施態様の上記詳細な説明を参照して最良に理解されるであろう。
【0018】
熱で加工された食品におけるアクリルアミドの形成は、炭素源及び窒素源を必要とする。炭素は炭水化物源によって供給され、窒素はタンパク質源又はアミノ酸源から供給されることが仮定されている。たとえば、コメ、小麦、トウモロコシ、大麦、ダイズ、ジャガイモ及びカラス麦のような多数の植物由来の食品成分はアスパラギンを含有し、その他アミノ酸成分を有する主として炭水化物である。通常、そのような食品成分は小さなアミノ酸のプールを有し、それはアスパラギンに加えてその他のアミノ酸を含有する。
【0019】
「熱で加工される」によって、食物成分の混合物のような食物の構成成分が少なくとも80℃の温度で加熱される食物又は食物成分を意味する。好ましくは、食物又は食物成分の熱加工は、約100℃〜205℃の間で生じる。食物成分は、最終的な食品の形成前に高い温度で別々に加工されてもよい。熱で加工された食物成分の例は、ポテトフレークであり、それは、ジャガイモを170℃と同じくらいの温度に暴露する工程で生のジャガイモから形成される(用語「ポテトフレーク」、「ジャガイモ顆粒」及び「ジャガイモ粉」は本明細書では相互交換可能に使用され、ジャガイモを基にした脱水製品を示すことを意味する)。その他の熱で加工されら食物成分の例には、加工カラス麦、半ゆでライス及び乾燥ライス、調理した大豆製品、コーンマサ、炒ったコーヒー豆及び炒ったカカオ豆が挙げられる。或いは、生の食物成分は、最終の食品の調製に使用され、最終の食品の製造には、熱加熱工程が含まれる。最終の食品が熱加熱工程から生じる原料の加工の一例は、約100℃〜約205℃の間の温度で揚げる工程によって生のジャガイモ細片からポテトチップの製造、又は同様の温度で揚げられるフライドポテトの製造である。
(アクリルアミドの形成におけるアミノ酸の影響)
しかしながら、本発明によれば、還元糖の存在下、アミノ酸アスパラギンを加熱した場合、アクリルアミドの有意な形成が生じることが見出されている。グルコースのような還元糖の存在下、リジンやアラニンのようなその他のアミノ酸を加熱することは、アクリルアミドの形成につながらない。しかし、驚くべきことに、アスパラギンと糖の混合物へのその他のアミノ酸の添加は、形成されたアクリルアミドの量を増減させることができる。
【0020】
還元糖の存在下でアスパラギンを加熱した場合のアクリルアミドの急速な形成を立証したので、熱で加工された食品におけるアクリルアミドの低減は、アスパラギンを不活化することによって達成される。「不活化すること」によって、アスパラギンからのアクリルアミドの形成を妨害する別の化学物質への変換又はそれへの結合によって、アクリルアミド形成の経路に沿って食物からアスパラギンを取り除く又はアスパラギンを非反応性にすることを意味する。
I.アクリルアミド形成に対するシステイン、リジン、グルタミン及びグリシンの影響
アスパラギンがグルコースと反応してアクリルアミドを形成するので、その他の遊離アミノ酸の濃度を高めることが、アスパラギンとグルコースの間の反応に影響を及ぼし、アクリルアミドの形成を減らす可能性がある。この実験については、pH7.0のリン酸ナトリウム緩衝液中で、アスパラギン溶液(0.176%)及びグルコース溶液(0.4%)を調製した。モル基準でグルコースと同じ濃度でほかの4種のアミノ酸、グリシン(GLY)、リジン、グルタミン(GLN)及びシステイン(CYS)を添加した。実験計画は、添加したアミノ酸の可能性のある組み合わせが重複することなくすべて調べられるように完全因子性だった。アクリルアミドを測定する前に溶液を120℃にて40分間加熱
した。以下の表1は、濃度及び結果を示す。
【0021】
表1 アクリルアミド形成に対するシステイン、リジン、グルタミン及びグリシンの影響
【0022】
【表1】
【0023】
上記表に示されるように、ほかのアミノ酸なしでグルコースとアスパラギンは1679ppbのアクリルアミドを形成した。添加したアミノ酸は3種の効果を有した。
1)システインはアクリルアミドの形成をほとんど除いた。システインによる処理はすべて25ppb未満のアクリルアミドを有した(98%の低下)。
【0024】
2)リジン及びグリシンは、アクリルアミドの形成を低下させたが、システインほどではなかった。グルタミンとシステインを含まない、リジン及びグリシン、もしくはリジン又はグリシンによる処理はすべて220ppb未満のアクリルアミドを有した(85%の低下)。
【0025】
3)驚くべきことに、グルタミンはアクリルアミドの形成を5378ppbに高めた(200%の上昇)。グルタミンにシステインを加えてもアクリルアミドを形成しなかった。グリシンとリジンをグルタミンに加えると、アクリルアミドの形成を低減した。
【0026】
これらの試験は、システイン、リジン及びグリシンがアクリルアミド形成の低減に有効であることを実証している。しかしながら、グルタミンの結果は、必ずしもアミノ酸すべてがアクリルアミド形成の低減に有効ではないことを明らかにしている。単独ではアクリルアミド形成を加速するアミノ酸(たとえば、グルタミン)とのシステイン、リジン又はグリシンの組み合わせは同様に、アクリルアミドの形成を低下させることができる。
II.異なった濃度及び温度でのシステイン、リジン、グルタミン及びメチオニンの効果
上記で報告したように、システイン及びリジンは、グルコースと同じ濃度で添加した場合、アクリルアミドを減らした。以下の質問に答えるべく、フォローアップ実験を計画した。
【0027】
1)さらに低い濃度のシステイン、リジン、グルタミン及びメチオニンはアクリルアミドの形成にどのように影響するのか?
2)溶液を120℃及び150℃で加熱した場合、添加されたシステイン及びリジンの効果は同じなのか?
pH7.0のリン酸ナトリウム緩衝液中で、アスパラギン(0.176%)及びグルコース(0.4%)の溶液を調製した。2種類の濃度のアミノ酸(システイン(CYS)、リジン(LYS)、グルタミン(GLN)又はメチオニン(MET))を添加した。2種類の濃度は、グルコースのモル当たり、0.2モル及び1.0モルのアミノ酸だった。試験の半分で溶液2mLを120℃で40分間加熱し、別の半分で2mLを150℃で15分間加熱した。加熱後、GC−MSにてアクリルアミドを測定し、結果を表2に示した。対照は、添加アミノ酸のないアスパラギンとグルコースの溶液だった。
【0028】
表2 アクリルアミドのレベルに対するアミノ酸の温度及び濃度の影響
【0029】
【表2】
【0030】
システイン及びリジンによる試験では、対照は、120℃での40分後、1332ppbのアクリルアミドを形成し、150℃15分後では、3127ppbのアクリルアミドを形成した。システイン及びリジンは、120℃及び150℃でアクリルアミドの形成を低減し、アクリルアミドの低減は、添加したシステイン又はリジンの濃度にほぼ比例する。
【0031】
グルタミン及びメチオニンによる試験では、対照は、120℃での40分後、1953ppbのアクリルアミドを形成し、150℃15分後では、3866ppbのアクリルアミドを形成した。グルタミンは、120℃及び150℃でアクリルアミドの形成を増加させた。グルコースのモル当たり0.2モルのメチオニンはアクリルアミド形成に影響を与えなかった。グルコースのモル当たり1.0モルのメチオニンは50%未満、アクリルアミド形成を低下させた。
III.グルコースとアスパラギンの溶液におけるアクリルアミド形成に対する19種のアミノ酸の影響
4種のアミノ酸(リジン、システイン、メチオニン及びグルタミン)のアクリルアミド形成に対する影響を上で記載した。15種の追加のアミノ酸を調べた。pH7.0のリン酸ナトリウム緩衝液中で、アスパラギン(0.176%)及びグルコース(0.4%)の溶液を調製した。15種のアミノ酸は、モル基準でグルコースと同一濃度にて添加した。対照は、ほかのアミノ酸を含まないアスパラギンとグルコースの溶液を含有した。溶液を120℃で40分間加熱した後、GC−MSによってアクリルアミドを測定した。結果を
以下の表3に示す。
【0032】
表3 アクリルアミド形成に対するその他のアミノ酸の影響
【0033】
【表3】
【0034】
上記の表で見られるように、アクリルアミド形成の低減においてシステイン、リジン又はグリシンほど有効なアミノ酸は追加の15アミノ酸中にはなかった。追加のアミノ酸中で9種が対照の22〜78%の間のレベルにアクリルアミドを減らした一方で、6種のアミノ酸は、対照の111〜150%のレベルにアクリルアミドを増やした。
【0035】
以下の表4は、アミノ酸すべてに関する結果を要約し、それらの有効性の順に列記した。システイン、リジン及びグリシンは有効な阻害剤であり、対照で形成されたものの15%未満の量でアクリルアミドを形成した。次の9種のアミノ酸はあまり有効な阻害剤ではなく、対照で形成されたものの22〜78%の間で総アクリルアミド形成を有した。次の7種のアミノ酸は、アクリルアミドを増加させた。グルタミンがアクリルアミドの最大の増加を起こし、対照の320%を示した。
【0036】
表4 19種のアミノ酸の存在下でのアクリルアミドの形成
【0037】
【表4】
【0038】
IV.750ppmの添加L−システインによるポテトフレーク
750ppm(100万分の1)の添加L−システインと共に試験用ポテトフレークを製造した。対照のポテトフレークは添加L−システインを含有しなかった。ガラス製バイアルに3gのポテトフレークを量り取った。きつくフタを閉めた後、バイアルを120℃にて15分間又は40分間加熱した。GC−MSによって10億分の1単位(ppb)でアクリルアミドを測定した。
【0039】
表5 システインによる時間経過でのアクリルアミドの低減
【0040】
【表5】
【0041】
V.焼いた加工ポテトチップ
上記結果を考えて、システイン又はリジンを加工スナック食品、この場合、焼いた加工ポテトチップのための製法に加えた本発明の好ましい実施態様が開発されている。この製品を作製する工程を図3Aに示す。パン生地調製工程30においてポテトフレーク、水及びその他の成分を組み合わせてパン生地を形成する(本明細書では、用語「ポテトフレーク」と「ジャガイモ粉」は相互交換可能に使用され、粒度にかかわりなく、どちらも乾燥フレーク又は粉末の調製物すべてを包含することを意図する)。板状加工工程31では、パン生地をシータに通し、パン生地が平らにされ、次いで個別の小片に切断される。調理行程32では、特定された色及び水分に達するまで、切断した小片を焼く。次いで、得られたチップに味付け工程33にて味付けを行い、包装工程34で包装に入れられる。
【0042】
上述の工程を使用することによって、本発明の第1の実施態様が明らかにされる。この実施態様を説明するために、対照バッチと3種の濃度のシステイン又は1種の濃度のリジンいずれかが添加された試験バッチの比較が行われる。
【0043】
表6 アクリルアミドのレベルに対するリジン及び種々の濃度のシステインの影響
【0044】
【表6】
【0045】
すべてのバッチで、乾燥した成分を先ず一緒に混合し、次いで油を各乾燥混合物に加え、混合した。パン生地への添加に先立ってシステイン又はリジンを水に溶解した。板状加工前のパン生地の水分レベルは40〜50重量%であった。パン生地を板状加工し、0.020〜0.030インチの間の厚さを作り、チップの大きさに切断し、焼いた。
【0046】
調理した後、ハンターL−A−Bの尺度に従って、水分、油及び色に関する試験を行った。仕上げ製品におけるアクリルアミドのレベルを得るために試料を調べた。表6は、これらの解析の結果を示す。
【0047】
対照のチップでは、最終調理後のアクリルアミドのレベルは1030ppbだった。調べたすべてのレベルでのシステイン及びリジンの添加は双方共、最終的なアクリルアミド
のレベルを有意に低下させた。図4は、グラフの形態にて得られたアクリルアミドのレベルを示す。この図では、各試料で検出されたアクリルアミドのレベルは影付き棒402によって示される。各棒は、直下に適当な試験を示す標識を有し、図の左側のアクリルアミドに関する尺度について目盛りが決められている。製造されたチップの水分レベルも各試験で示され、単一点404として見られる。点404の値は、図の右側に示される水分の比率についての尺度で目盛りが決められている。線406は、視認性を高めるために個々の点404を接続する。アクリルアミドのレベルに対するさらに低い水分の顕著な効果のために、アクリルアミド低減剤の活性を適切に評価するために水分レベルを有することが重要である。本明細書で使用するとき、アクリルアミド低減剤は、アクリルアミドの含量を減らす添加剤である。
【0048】
パン生地にシステイン又はリジンを添加することは、仕上げ製品に存在するアクリルアミドのレベルを有意に低下させる。システイン試料は、添加されたシステインの量にほぼ直接比例してアクリルアミドのレベルが低下することを示している。しかしながら、製造工程にアミノ酸を添加することからの最終製品の特徴(たとえば、色及び質感)への付随的な影響について考慮しなければならない。
【0049】
添加したシステイン、リジン、及び2つのアミノ酸それぞれとCaCl2との組み合わせを用いて追加の試験を行った。これらの試験は、上記試験で記載したのと同様の手順を用いたが、種々のレベルの還元糖及び種々の量の添加したアミノ酸及びCacl2を用いた。以下の表7において、ロット1のポテトフレークは0.81%の還元糖を有し(表のこの部分は上記で示した試験の結果を再現している)、ロット2は1.0%及びロット3は1.8%の還元糖を有した。
【0050】
表7 種々の濃度のシステイン、リジン、還元糖の効果
【0051】
【表7】
【0052】
この表のデータで示されるように、システイン又はリジンのいずれかの添加は、調べた還元糖の各レベルでアクリルアミドのレベルにおいて有意な改善を提供する。この試験が最高レベルの還元糖と共に行われたという事実にもかかわらず。リジンと塩化カルシウムの組み合わせは、生成されたアクリルアミドのほぼ完全な排除を提供した。
VI.スライスし、揚げたポテトチップにおける試験
ジャガイモ細片から作製したポテトチップによっても類似の結果を達成することができる。しかしながら、細片の完全性を破壊するので、上記で説明した実施態様と同様には、所望のアミノ酸をジャガイモ細片と単純に混合することはできない。実施態様の1つでは、アミノ酸がジャガイモ細片の細胞構造に移動できるのに十分な時間、所望のアミノ酸を含有する水溶液にジャガイモ細片を浸漬する。たとえば、このことは、図2で説明した洗浄工程23の間に行うことができる。
【0053】
以下の表8は、上記図2の工程23で記載された洗浄処理に1重量%のシステインを添加した結果を示す。洗浄はすべて室温にて指示した時間行い、対照処理は水に何も加えなかった。次いで、178℃で指示した時間、綿実油にてチップを揚げた。
【0054】
表8 ジャガイモ細片の洗浄水におけるシステインのアクリルアミドに対する影響
【0055】
【表8】
【0056】
この表に示されるように、1重量%濃度のシステインを含有する水溶液にて厚さ0.53インチのジャガイモ細片を15分間浸漬することは、100〜200ppbのオーダーで最終製品のアクリルアミドのレベルを下げるのに十分である。
【0057】
本発明は、システインをトルティーヤチップ用のコーンパン生地(又はマサ)に添加することによっても実証される。システインが製粉の間に生産されるマサで均一に分布するように溶解したL−システインを調理したコーンに加えた。600ppmのL−システインの添加は、対照製品における190ppbからL−システイン処理製品の75ppbにアクリルアミドを減らした。
【0058】
追加の成分の付随する効果、たとえば、食品の色、味及び質感について調整が行われる限り、本明細書で開示される本発明と共にいかなる数のアミノ酸も使用することができる。示される例はすべてα−アミノ酸(NH2−基がα−炭素原子に結合する)を利用するが、出願者は、β−及びγ−アミノ酸は一般に食品添加物としては使用されないが、β−又はγ−アミノ酸のようなその他の異性体を使用できることを予想している。本発明の好ましい実施態様は、システイン、リジン及びグリシン、もしくはシステイン、リジン又はグリシンを使用する。しかしながら、ほかのアミノ酸、たとえば、ヒスチジン、アラニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、フェニルアラニン、バリン及びアルギニンも使用することができる。そのようなアミノ酸及び特に、システイン、リジン及びグリシンは相対的に安価であり、食品添加物として一般に使用される。最終食品中でアクリルアミドの量を減らすために、これらの好ましいアミノ酸を単独で又は併用で使用することができる。さらに、食品の出発物質に市販のアミノ酸を添加すること、又は遊離アミノ酸を高いレベルで含有する別の食物成分を添加することのいずれかによって加熱前の食品にアミノ酸を添加することができる。たとえば、カゼインは遊離リジンを含有し、ゼラチンは遊離グリシンを含有する。従って、出願者が、アミノ酸を食品処方に添加することを指し示す場合、アミノ酸は、市販のアミノ酸として、又は食物中の天然のアスパラギンのレベルより高い濃度のアミノ酸を有する食品として添加してもよいことが理解される。
【0059】
許容可能なレベルにアクリルアミドのレベルを下げるために添加されるべきアミノ酸の量は、幾つかの方法で表現することができる。商業的に許容できるようにするために、添加されるアミノ酸の量は、そのように処理されていない製品に比べて少なくとも20パーセント(20%)アクリルアミド生成の最終レベルを減らすのに十分であるべきである。さらに好ましくは、アクリルアミド生成のレベルを35パーセント〜95パーセント(35〜95%)の範囲内の量に減らすべきである。一層さらに好ましくは、アクリルアミド生成のレベルを50パーセント〜95パーセント(50〜95%)の範囲内の量に減らすべきである。システインを使用する好ましい実施態様では、少なくとも100ppmの添加がアクリルアミドを低減するのに有効でありうることが決定されている。しかしながら、システイン添加の好ましい範囲は、100ppm〜10,000ppmの間であり、最
も好ましい範囲は約1,000ppmの量である。リジンやグリシンのようなその他の有効なアミノ酸を用いた好ましい実施態様では、製品に存在する還元糖に対する添加されたアミノ酸のモル比、少なくとも0.1モルのアミノ酸対1モルの還元剤(0.1:1)が、アクリルアミド形成を低減するのに有効であることが判っている。さらに好ましくは、添加されたアミノ酸対還元糖のモル比は、0.1:1〜2:1の間であるべきであり、最も好ましい比は約1:1である。
【0060】
精選したアミノ酸が見出されたアクリルアミドの量を低減するメカニズムはは現在判っていない。可能性のあるメカニズムには、少ないアクリルアミドを創る反応物質と前駆体の希釈体との競合、及び分解するためのアクリルアミドとの反応メカニズムが挙げられる。可能性のあるメカニズムには、(1)メイラード反応の阻害、(2)グルコース及びその他の還元糖の消費及び(3)アクリルアミドとの反応が挙げられる。遊離チオール基を持つシステインは、メイラード反応の阻害剤として作用する。アクリルアミドは、メイラード反応によりアスパラギンから形成されると考えられているので、システインは、メイラード反応及びアクリルアミドの形成の速度を減らすべきである。リジン及びグリシンは、グルコース及び還元糖と迅速に反応する。リジン及びグリシンによってグルコースが消費されれば、アスパラギンと反応してアクリルアミドを形成するグルコースが減る。アミノ酸のアミノ基は、アクリルアミドの二重結合と反応することができる、ミカエル付加。システインの遊離チオールもアクリルアミドの二重結合と反応することができる。
【0061】
アミノ酸の添加によって最終製品における特徴、たとえば、色、味及び質感に有害な変化を起こしうることを理解すべきである。本発明に係る製品の特徴におけるこれらの変化は種々のその他の手段によって補填することができる。たとえば、ポテトチップにおける色の特徴は、出発物質における糖類の量を調節することによって調整することができる。風味の特徴の一部は、最終製品に種々の風味剤を添加することによって変えることができる。製品の物理的質感は、たとえば、膨脹剤又は種々の乳化剤の添加によって調整することができる。
アクリルアミド形成における二価及び三価のカチオンの影響
本発明の別の実施態様には、スナック食品を調理すること又は熱で加工することに先立ってスナック食品の製法に二価又は三価のカチオンを添加することによってアクリルアミドの生成を減らすことが関与する。化学者は、カチオンが単独では存在しないが、同一価数を有するアニオンの存在下で見出されることを理解するであろう。本明細書では二価又は三価のカチオンを含有する塩を参照するが、それは、水におけるアスパラギンの溶解性を低下させることによってアクリルアミドの形成を減らすと考えられている塩に存在するカチオンである。これらのカチオンはまた、本明細書では少なくとも2つの価数を持つカチオンと呼ばれる。興味深いことに、単一価数のカチオンは、本発明での使用では有効ではない。アニオンとの組み合わせで少なくとも2つの価数を有するカチオンを含有する適当な化合物の選択では、関連する因子は、水への溶解性、食品の安全性及び特定の食品の特徴に対する少なくとも変更である。本明細書では個々の塩としても考察するが、種々の塩の組み合わせを使用することができる。
【0062】
化学者は、ほかの元素と組み合わせる能力の尺度として原子の価数を口にする。具体的には、二価の原子は、ほかの原子と二価のイオン結合を形成する能力を有するが、三価の原子は、ほかの原子と三価のイオン結合を形成することができる。カチオンは、陽性に荷電されたイオンであり、すなわち、1以上の電子を失ってそれに陽性の電荷を与える。次いで、二価又は三価のカチオンは、それぞれ2又は3のイオン結合に対して利用性を有する陽性に荷電したイオンである。
【0063】
アクリルアミド形成に対する二価又は三価のカチオンの影響を調べるために単純なモデル系を使用することができる。1:1モルの調製物でアスパラギンとグルコースを加熱す
ることは、アクリルアミドを生成することができる。添加された塩の有無でアクリルアミド含量を定量的に比較することは、アクリルアミド形成を促進する又は阻害する塩の能力を測定することになる。2種の試料調製及び加熱の方法を用いた。方法の1つには、乾燥化合物を混合し、等量の水を加え、ゆるくフタをしたバイアルで加熱することが関与した。調理条件を再現して、水のほとんどが逃れるにつれて加熱中に試薬が濃縮した。濃いシロップとタールを生産することができ、アクリルアミドの回収を困難にする。これらの試験は以下の実施例1及び2に示される。
【0064】
加圧容器を用いた第2の方法によってさらに制御された実験ができる。試験成分の溶液を化合させ、加圧下で加熱した。食品で見られる濃度にて試験成分を添加することができ、緩衝液は、食品に共通するpHを再現することができる。これらの試験では、以下の実施例3に示すように、水が逃れることはなく、アクリルアミドの回収は簡略化される。
I.二価、三価のカチオンはアクリルアミドを減らすが、一価はそうではない
L−アスパラギン・一水和物(0.15g、1ミリモル)、グルコース(0.2g、1ミリモル)及び水(0.4mL)を含有する20mLのガラス製バイアルをアルミホイルで覆い、20℃/分で40℃から220℃まで加熱し、220℃で2分間保持し、20℃/分で220℃から40℃まで冷却するようにプログラムしたガスクロマトグラフィ(GC)のオーブンで加熱した。残留物を水で抽出し、ガスクロマトグラフィ質量分光計(GC−MS)を用いてアクリルアミドについて分析した。分析によって約10,000ppb(10億分の1)のアクリルアミドが見出された。L−アスパラギン・一水和物(0.13g、1ミリモル)、グルコース(0.2g、1ミリモル)、無水塩化カルシウム(0.1g、1ミリモル)及び水(0.4mL)を含有する2本の追加バイアルを加熱し、分析した。分析によって、7ppb及び30ppbのアクリルアミドが見出され、99%を超える減少だった。
【0065】
カルシウム塩がアクリルアミドの形成を強く抑えるという驚くべき結果を考えて、塩のさらなるスクリーニングを行い、同様の結果を生成する二価及び三価のカチオン(マグネシウム、アルミニウム)を同定した。以下の表9に見られるように、一価のカチオン、すなわち、0.1/0.2gの重炭酸ナトリウム及び炭酸アンモニウム(カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウム)による同様の結果は、アクリルアミド形成を高めたことが言及される。
【0066】
【表9】
【0067】
II.塩化カルシウム及び塩化マグネシウム
第2の実験では、上述と同様の試験を行ったが、無水塩化カルシウムを使用する代わりに、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムのそれぞれ2種の異なる希釈を使用した。以下の1つとL−アスパラギン・一水和物(0.15g、1ミリモル)及びグルコース(0.2g、1ミリモル)を含有するバイアルを混合した:
0.5mLの水(対照)
0.5mLの10%塩化カルシウム溶液(0.5ミリモル)
0.05mLの10%塩化カルシウム溶液(0.05ミリモル)と0.45mLの水
0.5mLの10%塩化マグネシウム溶液(0.5ミリモル)又は
0.05mLの10%塩化マグネシウム溶液(0.05ミリモル)と0.45mLの水。2つずつの試料を、実施例1に記載したように加熱し、分析した。以下の表10にて結果を平均・要約した。
【0068】
表10 アクリルアミドに対する塩化カルシウム及び塩化マグネシウムの影響
【0069】
【表10】
【0070】
(3) なし
III.pHおよび緩衝効果
上述のように、この試験は容器からの水の喪失には関与しないが、加圧下で行われた。2mLの緩衝化ストック溶液(15mMのアスパラギン、15mMのグルコース、500mMのリン酸塩又は酢酸塩)及び0.1mMの塩溶液(1000mM)を含有するバイアルを、20℃/分で40℃から150℃に加熱し、150℃で2分間保持するようにプログラムされたガスクロマトグラフィのオーブン中に置かれたパールボンベで加熱した。ボンベをオーブンから取り出し、10分間冷却した。内容物を水で抽出し、GC−MS法にてアクリルアミドについて分析した。pH及び緩衝液の各組み合わせについて、塩を添加しないで、3つの異なった塩と同様に、対照を操作した。2回行った試験の結果を以下の表11で平均・要約した。
【0071】
表11 二価/三価のカチオンによるアクリルアミドの低下に対するpH及び緩衝液の影響
【0072】
【表11】
【0073】
使用した3種の塩について、最大の低下は、pH7の酢酸塩及びpH5.5のリン酸塩で生じた。小さな低下しか見られなかったのはpH5.5の酢酸塩及びpH7のリン酸塩であった。
IV.塩化カルシウムを増やすとアクリルアミドが減る
モデル系の結果に続いて、加熱する前に塩化カルシウムをポテトフレークに添加する小規模な実験室試験を行った。3mLの0.4%、2%又は10%の塩化カルシウム溶液を3gのポテトフレークに加えた。対照は、3mLの脱イオン水と混合した3gのポテトフレークだった。フレークを混合して、相対的に均一なペーストを形成し、次いで密封したガラス製バイアル中で120℃にて40分間加熱した。加熱後、GC−MSによってアクリルアミドを測定した。加熱する前、対照のポテトフレークは46ppbのアクリルアミドを含有していた。試験結果は、以下の表4に反映される。
【0074】
表12 アクリルアミド低下に対する塩化カルシウム溶液の強度の影響
【0075】
【表12】
【0076】
上記の結果を考えて、加工スナック食品、この場合、焼いて加工したポテトチップの製法にカルシウム塩を添加する試験を実施した。焼いて加工したポテトチップを作製する方法は、図3Bに示す工程から成る。パン生地調製工程35では、ポテトフレークを、水、カチオン/アニオン対(この場合、塩化カルシウム)及びその他成分と混ぜ合わせ、それを十分に混合してパン生地を形成する(本明細書では再び、用語「ポテトフレーク」は粒度にかかわりなく、乾燥ポテトフレーク、顆粒又は粉末の調製物すべてを包含することを意図する)。板状加工/切断工程36では、パン生地を平らにするシータにパン生地を通し、次いで個々の小片に切断する。調理工程37では、形成された小片を調理して特定の色及び水分にする。次いで、得られたチップを味付け工程38にて味付けし、包装工程39にて包装する。
【0077】
第1の試験では、加工したポテトチップを2バッチ用意し、表13で与えられるレシピに従って調理した;2つのバッチ間における唯一の差異は、試験バッチが塩化カルシウムを含有するということだった。双方のバッチで、先ず、乾燥成分を一緒に混合し、次いで各乾燥混合物に油を加え、混合した。塩化カルシウムはパン生地に加える前に水に溶解した。板状加工前のパン生地の水分は40〜45重量%だった。パン生地を板状にして厚さ0.020〜0.030インチの間にし、チップの大きさに切断し、焼いた。
【0078】
調理の後、ハンターのL−a−b尺度に従って、水分、油及び色を調べた。仕上げ製品におけるアクリルアミドのレベルを得るために試料を調べた。以下の表13は、これらの分析の結果を示す。
【0079】
表13 チップにおけるアクリルアミドに対するCaCl2の影響
【0080】
【表13】
【0081】
これらの結果が示すように、ほぼ1:125の塩化カルシウム対ポテトフレークの重量比でパン生地に添加した塩化カルシウムは、仕上げ製品に存在するアクリルアミドのレベルを有意に低下させ、最終的なアクリルアミドのレベルを1030ppbから160ppbに低下させた。従って、最終製品における油及び水の比率は、塩化カルシウムの添加に
よって影響を受けないと思われる。しかしながら、使用する量によっては、CaCl2は、製品の味、質感及び色に変化を起こしうることが言及される。
【0082】
アクリルアミドを低下させるために食品に添加される二価又は三価のカチオンのレベルは多数の方法によって表現することができる。商業的に許容できるようにするために、添加されるカチオンの量は、少なくとも20%アクリルアミド生成の最終レベルを低下させるのに十分であるべきである。さらに好ましくは、アクリルアミド生成のレベルは、35〜95%の範囲の量、低下させるべきである。一層さらに好ましくは、アクリルアミド生成のレベルは、50〜95%の範囲の量、低下させるべきである。異なった方式でこれを表現するには、添加すべき二価又は三価のカチオンの量を、食品に存在する遊離アスパラギンのモルに対するカチオンのモル比として与えることができる。二価又は三価のカチオンの、モル対遊離アスパラギンのモル比は、少なくとも1:5であるべきである。さらに好ましくは、該比は、少なくとも1:3、一層さらに好ましくは1:2である。現在好ましい実施態様では、カチオンのモル対アスパラギンのモル比は、約1:2〜1:1の間である。カルシウムより製品の味への影響が小さいマグネシウムの場合、カチオンのモル対アスパラギンのモル比は、2:1ほど高くてもよい。
【0083】
上記と同様の手順を用いたが、異なったレベルの還元糖及び種々の量の塩化カルシウムを含有する別のロットのポテトフレークによって追加の試験を行った。以下の表14では、0.8%の還元糖を有するチップは、上記で示した試験を再現している。
【0084】
表14 種々のレベルの還元糖に対するCaCl2及びカチオンレベルの影響
【0085】
【表14】
【0086】
この表で見られるように、CaCl2の添加は、添加したCaCl2対ポテトフレークの重量比が1:250より低くても一貫して最終製品のアクリルアミドのレベルを低下させる。
【0087】
この追加成分の付随的影響に対する調整が行われる限り、本明細書で開示される本発明と共に、二価又は三価のカチオンを形成するいかなる数の塩(又は前記別の方法、少なく
とも2つの価数を持つカチオンを生成する)も使用することができる。アクリルアミドのレベルを低下させる効果は、それと対を成すアニオンではなく二価又は三価のカチオンに由来すると思われる。価数以外のカチオン/アニオン対への限定は、食品における許容性、たとえば、安全性、溶解性、並びに味、色、匂い、外見及び質感に対するそれらの影響に関係する。たとえば、カチオンの有効性は直接、溶解性に関係する。酢酸アニオン又は塩化物アニオンを含む塩のような溶解性の高い塩は、最も好ましい添加物である。炭酸アニオン又は水酸化物アニオンを含む塩のような溶解性の低い塩は、リン酸若しくはクエン酸を添加することによって、又はデンプン系食品の細胞構造を破壊することによってさらに溶解性を高めることができる。示唆されるカチオンには、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、銅、及び亜鉛が挙げられる。これらのカチオンの好適な塩には、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸カルシウム、酢酸カルシウム、EDTAナトリウムカルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、酸化カルシウム、プロピオン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ステロイル乳酸カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム6水和物、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ミョウバンアンモニウム、ミョウバンカリウム、ミョウバンナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化鉄、グルコン酸鉄、クエン酸アンモニウム鉄、ピロリン酸鉄、フマル酸鉄、乳酸鉄、硫酸鉄、塩化銅、グルコン酸銅、硫酸銅、グルコン酸亜鉛、酸化亜鉛、及び硫酸亜鉛が挙げられる。1以上の適当なカチオンの組み合わせによって必要条件は最も満たされると考えられているが、本発明の現在好ましい実施態様は塩化カルシウムを使用する。たとえば、カルシウム塩、特に塩化カルシウムのような多数の塩は相対的に安価であり、食品として一般に使用される。塩化カルシウムをクエン酸カルシウムと併用して使用することができ、それによってCaCl2の付随する味への影響を減らす。さらに、1以上のマグネシウム塩との併用でいかなる数のカルシウム塩も使用することができる。当業者は、必要とされる塩の特定の処方が、該当する食品及び最終製品の所望の特徴によって調整されることを理解するであろう。
【0088】
最終製品の特徴における変化、たとえば、色、味及び整合性における変化は、種々の手段によって調整することができることを理解すべきである。たとえば、ポテトチップにおける色の特徴は、出発物質において糖類の量を調節することによって調整することができる。風味の特徴の一部は、最終製品に種々の風味剤を添加することによって変えることができる。製品の物理的質感は、たとえば、膨脹剤又は種々の乳化剤の添加によって調整することができる。
パン生地作製における作用剤の併用
本発明の上記詳細な実施態様では、二価若しくは三価のカチオン又は数種のアミノ酸のうちの1つのような単一の作用剤によるアクリルアミドの低下に着目し、調理されたスナックで見出されるアクリルアミドの量を低下させた。本発明のその他の実施態様には、たとえば、塩化カルシウムとその他の作用剤のような種々の作用剤の併用が関与し、チップの風味を大きく変えることなく、アクリルアミドの大きな低下を提供する。
I.塩化カルシウム、クエン酸、リン酸の併用
本発明は、カルシウムイオンが酸性pHにてアクリルアミド含量をさらに効果的に低下させることを見出した。以下に示す試験において、酸の存在下での塩化カルシウムの添加を検討し、酸のみの試料と比較した。
【0089】
表15 アクリルアミドに対する、リン酸又はクエン酸とCaCl2との併用の影響
【0090】
【表15】
【0091】
上記表15に見られるように、リン酸のみの添加はアクリルアミド形成を73%低下させたが、CaCl2と酸の添加はアクリルアミドのレベルを93%落とした。図5は、これらの結果をグラフの形態で示す。この図では、対照のアクリルアミドのレベル502は極めて高い(1191)が、リン酸のみを添加した場合、有意に落ち、塩化カルシウムと酸を添加した場合、さらに低い。一方、種々のチップにおける水分レベル504は、作用剤を添加したチップではやや低いが、同一範囲内にとどまった。従って、塩化カルシウムと酸はアクリルアミドを効果的に低下させることができることが実証された。
【0092】
ジャガイモのパン生地への添加物として塩化カルシウムとリン酸を用いてさらなる試験を行った。ポテトフレークの0、0.45及び0.90重量%に相当する3種の異なったレベルの塩化カルシウムを使用した。フレークの0、0.05又は0.1重量%に相当する3種の異なったレベルのリン酸と、これらを組み合わせた。さらに、これらのレベルの組み合わせすべてを表すわけではないが、0.2、1.07及び2.0%に相当するフレーク中の3種のレベルの還元糖を調べた。各試験物をパン生地に混合し、形状を整え、調理してポテトチップを形成した。油揚げ温度、揚げ時間及び板状の厚さは、それぞれ、305F、16秒及び0.64mmで一定に維持した。明瞭にするために、結果を3つの分かれた表(16A、16B及び16C)で提示し、各表は、ポテトフレーク中の糖のレベルの1つを示す。さらに、塩化カルシウム又はリン酸を含まない対照が左側にあるように試験を配置する。表の範囲内で、塩化カルシウム(CC)の各レベルを一緒にまとめ、リン酸(PA)における変動がそれに続く。
【0093】
表16A アクリルアミドのレベルに対するCaCl2/リン酸の影響−0.2%の還元糖
【0094】
【表16A】
【0095】
この試験で最低レベルの還元糖では、生成されるアクリルアミドのレベルは通常、期待どおり、さらに低い範囲であることが分かる。糖のこのレベルでは、塩化カルシウム単独でアクリルアミドのレベルを対照の1/4未満まで落とし、リン酸の添加で得られる追加的利益は少なかった。以下の表で示す、中間的な範囲内での還元糖では、塩化カルシウムの組み合わせは、対照の367ppbからセル12の69ppbにアクリルアミドのレベルを低下させた。この低下の一部が、セル12のやや高い水分含量(2.77対対照の2.66)に起因する可能性があるが、塩化カルシウム及びリン酸のレベルを半分にしてもアクリルアミドを有意に低下させることによってさらなる支持が示される。これはセル6で示され、アクリルアミドの有意な減少及び対照よりも低い水分含量を有する。
【0096】
表16B アクリルアミドのレベルに対するCaCl2/リン酸の影響−1.07%の還元糖
【0097】
【表16B】
【0098】
表16C アクリルアミドのレベルに対するCaCl2/リン酸の影響−2.07%の還元糖
【0099】
【表16C】
【0100】
これら3つの表から分かるように、アクリルアミドのレベルを低下させるのに必要な塩化カルシウムとリン酸のレベルは、期待したとおり、還元糖のレベルが上昇するにつれて高くなる。図6は、上記3つの表に相当するグラフであり、棒602はアクリルアミドのレベルを示し、点604は水分レベルを示す。結果は再び、ジャガイモで利用される還元糖のレベルによって群に分け、各群内では、最初の1つとして下方への一般的な動きがあり、次いで、幾つかのアクリルアミド低減剤を用いて、アクリルアミドのレベルを低下させる。
【0101】
数日後、上記3つの表と同じ手順で、同じ3種のレベルの塩化カルシウム及び4種のレベルのリン酸(0、0.025、0.05及び0.10%)と共に、1.07%の還元糖
のポテトフレークのみを用いて別の試験を行った。結果は表17にて以下で示す。図7は、表の結果をグラフで示し、アクリルアミドレベルは棒702として表現し、左側の表示で目盛りを合わせ、水分比率は点704として表現し、図の右側の表示で目盛りを合わせた。塩化カルシウムの量が増えるにつれて、たとえば、表全体を左から右に移動するにつれて、アクリルアミドは減少する。同様に、各レベルの塩化カルシウムについては、たとえば、カルシウムの1レベルの範囲内で左から右へ移動すると、アクリルアミドのレベルは一般に低下する。
【0102】
表17 アクリルアミドのレベルに対するCaCl2/リン酸の影響−1.07%の還元糖
【0103】
【表17】
【0104】
II.システインを伴った塩化カルシウム/クエン酸
本発明によって行われたコーンチップにおける以前の試験の一部では、所望のレベルにアクリルアミドのレベルをもたらすのに必要な塩化カルシウム及びリン酸の量は、不愉快な風味を生じた。チップにおいてアクリルアミドのレベルを低くすることが示されているシステインのジャガイモパン生地への添加が、アクリルアミドのレベルを低く保持しつつ、塩化カルシウム及び酸の量を許容可能な味レベルに低くできるかどうかを明らかにするために、以下の試験を計画した。この試験では、(i)第1の実験で0.106%のCaCl2、0.084%のクエン酸及び0.005%のL−システイン、(ii)第2の実験で0.106%のCaCl2、0.084%のクエン酸、しかし、システインなし、並びに第3の実験で0.053%のCaCl2、0.042%のクエン酸及び0.005%のL−システインの比率にて、3種の作用剤をマサ(パン生地)に加えた。各実験を2回設定し、再び行い、双方の結果を以下に示した。マサは約50%が水分なので、これらの比を固形物のみにすれば、その濃度は約2倍である。さらに、各試験では、試行の一部は、もとのチップ重量の約10%のナチョチーズで味付けした。この試験の結果を以下の表18に示す。この表では、チップの各カテゴリー、たとえば、普通のチップ、対照について、最初に試行した実験の結果をアクリルアミド#1に与え、第2の実験の結果をアクリルアミド#2として与え2つの平均をアクリルアミド平均として与えた。第1の実験で1つの水分レベルのみを利用し、値を示した。
【0105】
表18 コーンチップにおけるアクリルアミドに対するCaCl2/クエン酸を伴ったシステインの影響
【0106】
【表18】
【0107】
0.106%のCaCl2と0.084%のクエン酸を組み合わせた場合、システインの添加はアクリルアミドの生成をおよそ半分に減らす。ナチョで味付けしたチップでは、このセットの試験では、システインの添加はアクリルアミドのさらなる低下を提供しないと思われたが、塩化カルシウムとクエン酸だけでアクリルアミドの生成を80.5ppbから54ppbに減らした。
【0108】
図8は、上記の表と同じデータをグラフで提示する。実験が行われた各種のチップ(たとえば、普通のチップ、対照)については、2本の棒802がアクリルアミドの結果を示す。第1の実験のアクリルアミドの結果802aは各種チップの左に示し、第2の実験のアクリルアミドの結果802bは右に示す。双方のアクリルアミドの結果は、グラフの左の表示に目盛りを合わせる。単一の水分レベルは、点804として示し、アクリルアミドのグラフに重ね、グラフの右での表示に目盛りを合わせる。
【0109】
上記試験が完了した後、2つの異なったレベルの還元糖を含有するポテトフレークを用いて加工したポテトチップを同様に調べた。コーンチップで使用した濃度を加工したポテトチップに当てはめるには、ポテトフレーク、ジャガイモデンプン、乳化剤及び添加した糖の合計を固形物とみなした。固形物を基にしたコーンチップと同じ濃度が得られるようにCaCl2、クエン酸及びシステインの量を調整した。しかしながら、この試験では、高いレベルの塩化カルシウム及びクエン酸を使用した場合、高いレベルのシステインも使用した。さらに、試験の還元糖の低い部分にて、システインの有無でリン酸と組み合わせた塩化カリウムの使用と比較した。結果を表19に示す。
【0110】
これらから我々は、1.25%の還元糖のポテトフレークで、塩化カルシウム、クエン酸及びシステインの併用は、上記第1レベルにてアクリルアミドの形成を1290ppbから対照図の半分未満である594ppbに低下させたことを見ることができる。作用剤のさらに高いレベルの組み合わせを使用することは、アクリルアミドの形成を対照量の半
分未満、306ppbに低下させた。
【0111】
同一のポテトフレークを用いて、リン酸と塩化カルシウムだけでアクリルアミドの形成を同じ1290ppbから366ppbに低下させたが、リン酸と塩化カルシウムに添加した少量のシステインは、アクリルアミドをさらに188ppbに低下させた。
【0112】
最終的に、2%の還元糖を有するポテトフレークでは、塩化カルシウム、クエン酸及びシステインの添加は、アクリルアミドの形成を1420ppbから半分未満の665ppbに低下させた。
【0113】
表19 ポテトチップにおけるアクリルアミドのレベルに対するCaCl2/酸を伴ったシステインの影響
【0114】
【表19】
【0115】
図9は、この実験の結果をグラフで実証する。結果は先ず還元糖のレベルで群分けし、次いで、添加したアクリルアミド低減剤の量で群分けして示す。前のグラフと同様に、アクリルアミドのレベルを表す棒902は、グラフの左側の表示に従って目盛りを合わせ、水分レベルを表す点904は、グラフの右側の表示に従って目盛りを合わせる。
【0116】
上記実験は、アクリルアミド低減剤は別々に使用されてもよいが、組み合わせて追加の利益を提供できることを示している。この追加の利益を用いて、食品中でのアクリルアミドのますます低下したレベルを達成することができ、又はそれら食品の質感の嗜好に有意な変化を生じることなく、アクリルアミドの低いレベルを達成することができる。示された特定の実施態様は、クエン酸又はリン酸と組み合わせた塩化カルシウム及びシステインと、組み合わせたこれらを開示しているが、当業者は、組み合わせには、その他のカルシウム塩、そのほかの二価又は三価のカチオンの塩、その他の食品等級の酸、並びに仕上げた食品中でアクリルアミドを低下させることが示されたその他の任意のアミノ酸を使用すればよいことを実感するであろう。さらに、これは、ポテトチップ及びコーンチップで実
証されているが、当業者は、たとえば、クッキーやクラッカー等のようなアクリルアミドの形成の対象となるその他の加工食品で、作用剤の同一の組み合わせを使用できることを理解するであろう。
ポテトフレークの製造に添加されるアクリルアミドを減少させる作用剤
塩化カルシウムと酸の添加は、ポテトフレークと共に製造される、揚げた及び焼いたスナック食品においてアクリルアミドを低下させることが示されている。酸の存在はpHを低下させることによってその効果を達成すると考えられている。塩化カルシウムが、遊離アスパラギンからのカルボキシル基の喪失、それに続くアミン基の喪失を妨害してアクリルアミド形成を妨害するのかどうかは判っていない。アミン基の喪失は、一般にスナックの脱水の終わりに向かって生じる高温を必要とすると思われる。カルボキシル基の喪失は水の存在下、低温で起きると考えられる。
【0117】
ポテトフレークは、一連の水及び蒸気の調理(従来)又は蒸気調理のみ(ジャガイモの暴露された表面からの浸出を減らす)のいずれかによって作製される。調理されたジャガイモは次いで、つぶされ、ドラムで乾燥される。これらのフレークから作製された製品は非常に高いレベルのアクリルアミドを獲得しうるが、フレークの分析は、フレークにおける非常に低いアクリルアミドのレベル(100ppb未満)を示している。
【0118】
酸によるパン生地pHの低下若しくはパン生地への塩化カルシウムの添加が、カルボキシル基の喪失を妨害し、次いで、フレーク製造工程間のこれら添加物の導入が、(a)カルボキシルの喪失を減らすのでスナック食品の脱水の間、アミンの喪失割合を減らす、又は(b)いかなるメカニズムであれ、妨害添加物がスナック食品に脱水されるパン生地中に上手く分布することを保証する、という仮説が立てられた。前者は、起きるのであれば、後者よりもアクリルアミドに対する大きな影響である可能性が高い。
【0119】
加工された食品でアクリルアミドの形成を抑える別の可能性のある添加物は、アスパラギナーゼである。アスパラギナーゼは、アスパラギンをアスパラギン酸とアンモニアに分解することが知られている。スライスしたジャガイモからポテトチップを作るのにこの酵素を利用することはできないが、ジャガイモ(食品成分)を調理し、つぶすことによってフレークを作る工程は、細胞壁を破壊し、アスパラギナーゼが作用する機会を提供する。好ましい実施態様では、食品等級のアスパラギナーゼとして純粋な形態で、アスパラギナーゼを食品成分に添加する。
【0120】
本発明者は以下のセットの実験を計画し、ポテトフレークによって作製される製品におけるアクリルアミドのレベルを低下することにおける、ポテトフレークの製造中に添加される種々の作用剤の有効性を検討した。
I.ポテトフレークを作製するのに使用される塩化カルシウム及びリン酸
このシリーズの試験は、ポテトフレークの製造中にCaCl2及びリン酸、もしくはCaCl2又はリン酸を添加した場合のアクリルアミドのレベル低下を評価するように計画された。試験はまた、これらの添加物が、パン生地を作製する後期にそれらが添加された場合と同じ効果を有するかどうかも扱った。
【0121】
この試験については、ジャガイモは20%の固形物及び1%の還元糖を含んだ。ジャガイモを16分間調理し、添加した成分とともにつぶした。バッチすべてに、13.7gの乳化剤及び0.4gのクエン酸を加えた。6バッチ中4つが、2つ(ジャガイモ固形物の0.2%及び0.4%)のレベル中の1つで添加したリン酸を有し、4バッチ中の3つに、2つ(ジャガイモ固形物重量の0.45%及び0.90%)のレベル中の1つでのCaCl2を加えた。ジャガイモを乾燥し、所定のサイズに粉砕した後、様々な測定を行い、各バッチをパン生地にした。パン生地は、4629gのポテトフレーク及びジャガイモデンプン、56gの乳化剤、162gの液体スクロース及び2300mLの水を用いた。さ
らに、フレーク製造中、リン酸又はCaCl2を添加しなかった2つのバッチのうち、パン生地として所定のレベルのこれら添加物を加えた双方のバッチを作った。パン生地は、厚さ0.64mmでロール状にして、小片に切断し、350°Fで20秒間揚げた。表20は、これら種々のバッチについての試験の結果を示す。
【0122】
表20 アクリルアミドのレベルに対するフレーク又はパン生地に添加したCaCl2/リン酸の影響
【0123】
【表20】
【0124】
上記の結果及び添付の図10のグラフから分かるように、アクリルアミドのレベルは、リン酸だけをフレーク調製物に添加した試験Cで最高であり、塩化カルシウムとリン酸を組み合わせて使用した場合、最低だった。
II.ポテトフレーク作製において使用されたアスパラギナーゼ
アスパラギナーゼは、アスパラギンをアスパラギン酸とアンモニアに分解する酵素である。アスパラギン酸はアクリルアミドを形成しないので、本発明者らは、アスパラギナーゼ処理は、ポテトフレークが加熱される際のアクリルアミドの形成を低下させるはずであると推論した。
【0125】
以下の試験を行った。金属製の乾燥鍋にて2gの標準ポテトフレークを35mLの水と
混合した。鍋にフタをして100℃にて60分間加熱した。冷却した後、5mLの水における250単位のアスパラギナーゼを添加し、アスパラギナーゼの量は計算した必要量よりも有意に高い。対照については、酵素なしの5mLの水とポテトフレークを混合した。アスパラギナーゼと共にポテトフレークを室温で1時間保持した。酵素処理の後、ポテトフレークのスラリーを60℃にて一晩乾燥した。乾燥したポテトフレークの入った鍋にフタをして、120℃にて40分間加熱した。ガスクロマトグラフィ、臭素化誘導体の質量分光計にてアクリルアミドを測定した。対照のフレークは、11,036ppbのアクリルアミドを含有したが、アスパラギナーゼ処理したフレークは117ppbのアクリルアミドを含有し、98%を超える低下だった。
【0126】
この第1の試験に続いて、酵素が有効であるためには、アスパラギナーゼの添加に先立ってポテトフレークと水を調理することが必要なのか否かを検討した。これを調べるために、以下の実験を行った。
【0127】
4つの方法のうちの1つでポテトフレークを調製した。4つの群のそれぞれでは、2gのポテトフレークを35mLの水と混合した。対照の予備処理群では、(a)ポテトフレークと水を混合してペーストを形成した。(b)群では、高速でのバイオホモゲナイザーN133/1281−0で25mLの水によってポテトフレークを均質化した。(c)群では、ポテトフレークと水を混合し、フタをして60℃にて60分間加熱した。(d)群では、ポテトフレークと水を混合し、フタをして100℃にて60分間加熱した。各予備処理群、(a)、(b)、(c)及び(d)について、フレークを分割し、予備処理群の半分をアスパラギナーゼで処理し、残りの半分を、アスパラギナーゼを加えない対照とした。
【0128】
40mLの脱イオン水に1000単位を溶解することによってアスパラギナーゼ溶液を調製した。アスパラギナーゼは、Erwinia chrysanthemiに由来し、シグマA−2925 EC.3.5.1.1だった。試験ポテトフレークのスラリー(a)、(b)、(c)及び(d)のそれぞれに5mLのアスパラギナーゼ溶液を添加した。5mLの脱イオン水を対照のポテトフレークスラリー(a)に添加した。スラリーはすべて室温で1時間放置し、試験はすべて2回行った。ポテトフレークスラリーを含有するフタをしない鍋を60℃で一晩放置して乾燥させた。鍋にフタをした後、ポテトフレークスラリーを120℃にて40分間加熱した。ガスクロマトグラフィ、臭素化誘導体の質量分光計にてアクリルアミドを測定した。
【0129】
以下の表21に示すように、すべての予備処理について、アスパラギナーゼ処理は、98%を超えてアクリルアミドの形成を抑えた。酵素を添加する前、均質化も加熱もしなかったポテトフレークでは、アスパラギナーゼの有効性が高まった。ポテトフレークでは、さらに細胞構造を損傷する処理をすることなく、アスパラギンはアスパラギナーゼに接近可能である。とりわけ、ポテトフレークを処理するのに使用したアスパラギナーゼの量は、極めて過剰だった。ポテトフレークが1%のアスパラギンを含有するのであれば、2gのポテトフレークに125単位のアスパラギナーゼを1時間添加することは、酵素のおよそ50倍過剰である。
【0130】
表21 アスパラギンの有効性に対するポテトフレークの予備処理の影響
【0131】
【表21】
【0132】
ポテトフレークの製造中でのアスパラギナーゼの添加がフレークから作製される調理した製品でアクリルアミドの低下を提供するかどうか、及びフレークを作製するのに使用される、つぶしたジャガイモを酵素活性にとって好ましいpH(たとえば、pH=8.6)に緩衝化することがアスパラギナーゼの有効性を高めるかどうかを評価するために、別の試験を計画した。緩衝化は、4gの水酸化ナトリウムを1リットルの水に加えて10モルの溶液を形成した、水酸化ナトリウム溶液によって行った。
【0133】
2バッチのポテトフレークを対照とし、一方を緩衝化し、他方を緩衝化しなかった。追加の2バッチのポテトフレークにアスパラギナーゼを添加し、再び一方を緩衝化し、他方を緩衝化しなかった。アスパラギナーゼはシグマケミカルから入手し、水対酵素、8対1の比率で水と混合した。アスパラギナーゼを添加した2バッチについては、酵素を添加した後、つぶしたものをフタのある容器中で40分間保持して脱水をできるだけ抑え、およそ36℃で保持した。次いで、つぶしたものをドラム乾燥機で加工し、フレークを製造した。前に示した手順に従って、ポテトフレークを使用してジャガイモのパン生地を作製し、結果を以下の表22に示した。
【0134】
表22 ポテトチップにおけるアクリルアミドのレベルに対するアスパラギナーゼ及び緩衝化の影響
【0135】
【表22】
【0136】
表22に示すように、緩衝液なしでのアスパラギナーゼの添加は、仕上げたチップにおけるアクリルアミドの生成を768ppbから54ppbに減らし、減少率は93%だった。緩衝液の使用は、アクリルアミドの形成に所望の効果を有するとは思えなかった;むしろ、緩衝化された溶液の使用によって、対照及びアスパラギナーゼ実験の双方でさらに大量のアクリルアミドを形成することができた。それでも、アスパラギナーゼは、アクリ
ルアミドのレベルを1199ppbから111ppbに減らし、減少率は91%だった。図11は、表22の結果をグラフの形態で示す。前の図面のように、棒1002は、各実験についてのアクリルアミドのレベルを表し、グラフの左側の表示に従って目盛りを合わせ、点1104は、チップにおける水分レベルを表し、グラフの右側の表示に従って目盛りを合わせる。
【0137】
また、試料において試験を行い、遊離アスパラギンについてチェックし、酵素に活性があるかどうかを測定した。結果を表23にて以下に示す。
表23 酵素処理したフレークにおける遊離アスパラギンに関する試験
【0138】
【表23】
【0139】
緩衝化しなかった群では、アスパラギナーゼの添加によって遊離アスパラギンは1.71から0.061に減り、減少率は96.5%だった。緩衝化した群では、アスパラギナーゼの添加によって遊離アスパラギンは2.55から0.027に減り、減少率は98.9%だった。
【0140】
最後にモデル系にて、各群の試料フレークを評価した。このモデル系では、各試料からの少量のフレークを水と混合して、水に対しておよそ50%のフレークの溶液を形成した。この溶液を試験管にて120℃で40分間加熱した。次いで、アクリルアミドの形成について試料を分析し、結果を表24に示した。各カテゴリーについて2回行った結果を並べて示す。モデル系では、緩衝化していないフレークへのアスパラギナーゼの添加によってアクリルアミドは平均993.5ppbから83ppbに減り、減少率は91.7%だった。緩衝化したフレークへのアスパラギナーゼの添加によってアクリルアミドは平均889.5ppbから平均64.5ppbに減り、減少率は92.7%だった。
【0141】
表24 アクリルアミドに対するアスパラギナーゼのモデル系の影響
【0142】
【表24】
【0143】
揚げ油に添加したローズマリー抽出物
別の試験において、加工ポテトチップの揚げ油にローズマリー抽出物を添加した影響を調べた。この試験では、等しく加工したポテトチップを、添加物を有さない(対照)油又は、500、750、1,000若しくは1,500ppmの4つのうち1つで添加したローズマリー抽出物を有する油のいずれかで揚げた。以下の表25はこの試験の結果を与
える。
【0144】
表25 アクリルアミドに対するローズマリーの影響
【0145】
【表25】
【0146】
対照のチップにおけるアクリルアミドの平均レベルは1133.5ppbであった。500ppmのローズマリーの揚げ油への添加によってアクリルアミドは840ppbに減り、減少率は26%であったが、ローズマリーを750ppmに増やすと、アクリルアミドの形成はさらに775ppbに減り、減少率は31.6%だった。しかしながら、ローズマリーを1,000ppmに増やすと、影響を有さず、ローズマリーを1,500ppmに増やすと、アクリルアミドの形成を引き起こし、1608ppbに増え、増加率は41.9%だった。
【0147】
図12は、ローズマリー実験の結果をグラフで明らかにしている。前の例のように、棒1202はアクリルアミドのレベルを示し、グラフの左側の分割に目盛りを合わせ、点1204は、チップにおける水分量を示し、グラフの右側の分割に目盛りを合わせる。
【0148】
熱で加工された加工食品で使用することができるアクリルアミド低減剤の知見に開示された試験結果を加えてきた。二価及び三価のカチオン並びにアミノ酸は、熱で加工された加工食品におけるアクリルアミドの発生を減らすのに有効であることが示されてきた。これらの作用剤は個々に使用することができるが、互いに併用して、又はその有効性を高める酸と併用して使用することができる。作用剤の併用を利用して、単独の作用剤で達成できるものよりさらに、熱加工された食品におけるアクリルアミドの発生を下げることができ、又は、併用を利用して食品の味及び質感を過度に変えることなく低レベルのアクリルアミドを達成することができる。アスパラギナーゼは、加工食品における有効なアクリルアミド低減剤として調べられてきた。これらの作用剤は、加工食品のためのパン生地に添加した場合にだけ有効でありうるのではなく、製造中の中間産物、たとえば、乾燥ポテトフレーク又はその他の乾燥ジャガイモ製品にも作用剤を添加することができる。中間産物に添加された作用剤による利点は、パン生地に添加されたものと同様に有効でありうる。アクリルアミド形成に対する遊離チオールを有するアクリルアミド低減剤の影響
本発明の別の実施態様には、調理又は熱加工に先立ってスナック食品のパン生地に遊離チオール化合物を持つ低減剤を添加することによってアクリルアミドの生成を減らすことが関与する。本明細書で使用するとき、遊離チオール化合物は、遊離チオールを有するアクリルアミド低減剤である。前に考察したように、システインの遊離チオールはアクリルアミドの炭素二重結合と反応し、メイラード反応の阻害剤として作用することができると考えられている。
【0149】
遊離チオールがアクリルアミドの低下の原因でありうることを確認するために試験を行った。等モル基準にて5種の遊離チオール化合物を調製し、各化合物は、0.4%のアスパラギン(30.3ミリモル)及び0.8%のグルコース(44.4ミリモル)と共に、pH7.0を有する0.5Mリン酸ナトリウム緩衝液中で、1リットル当たり6.48ミリモルの濃度を有した。遊離チオール化合物を有さない対照試料も調製した。6種の溶液
を120℃にて40分間加熱した。次いで、アクリルアミドの濃度について溶液を測定した。結果を以下の表26に示す。
【0150】
表26 分解を介したアクリルアミドの減少に対する遊離チオール化合物の影響
【0151】
【表26】
【0152】
上記の実験は、アクリルアミドを減少させるのは遊離チオール基であることを裏付けている。遮断したアミノ基を有するN−アセチル−L−システインがシステインとほぼ同様に有効なので、システインの遊離アミノ基はアクリルアミドの減少に寄与しない。カルボキシル基を有さないN−アセチル−システアミンがアクリルアミドの減少でシステインとほぼ同様に有効なので、システインのカルボキシル基はアクリルアミドの減少に寄与しない。中間位でシステインを伴ったトリペプチドであるグルタチオンは、システインと同等であった。ジチオスレイトールはチオール基を2つ有するが、ジチオスレイトールによるアクリルアミドは、チオール基1つの化合物に類似した。ジチオスレイトールにおける2つのチオール基は反応してジスルフィドを形成する可能性があるので、ジチオスレイトールは、ほかのチオール含有化合物よりも等モル基準で有効ではなかった。
【0153】
上記表6によって例示されるような実験は、アクリルアミドの減少が、システインのような遊離チオールの添加された濃度にほぼ比例することを示した。しかしながら、システインのような遊離チオール化合物の添加による、最終製品の色、味及び質感のような特徴に対する付随的影響を考慮しなければならない。高レベルのシステインは、たとえば、最終製品において望ましくない異風味を付与しうる。従って、システインのような遊離チオール化合物の有効性を高める又は拡大する添加物が望ましく、そのような添加物は、より低い濃度のチオール化合物によって同じレベルのアクリルアミドの減少を可能とするからである。還元剤をシステインのような遊離チオール化合物に加えた場合、アクリルアミドの減少が強まることが発見されている。還元剤は、酸化還元化学において、電子供与体である化合物であることが知られ、酸化剤は電子受容体であることが知られている。
アクリルアミドの分解におけるシステイン+還元剤の影響
単純なモデル系を用いて、還元剤の添加による遊離チオール化合物の強化された有効性を調べることができる。pH7.0を有する0.5モルのリン酸ナトリウム緩衝液中で、遊離チオール(1.114ミリモルのシステイン)及びアクリルアミド(0.0352ミリモル)を含む対照試料溶液を調製した。溶液を120℃で40分間加熱した。添加したアクリルアミドの回収は21%だった。従って、還元剤を含まない対照試料でのアクリルアミド減少の量は79%だった。たとえ、システイン対アクリルアミドのモル比が30を
超えたとしても、アクリルアミドのすべてがシステインと反応するわけではなかった。
【0154】
次いで、遊離チオール化合物及び還元剤によって試験を行った。pH7.0を有する0.5モルのリン酸ナトリウム緩衝液中で、135ppmの遊離チオール化合物(1.114ミリモルのシステイン)、2500ppbのアクリルアミド(0.0352ミリモル)及び約305ppmの還元剤(1.35ミリモルの塩化第一スズ・2水和物)を含む溶液を調製した。120℃で40分間加熱した後、添加したアクリルアミドの回収は、4%未満であると測定された。従って、還元剤を含有する試料によるアクリルアミドの減少量は、96%を超え、遊離チオール単独、又は対照試料をさらに17%超えた。
アクリルアミドの分解におけるシステイン+酸化剤の影響
次いで、還元剤の代わりに酸化剤を添加することによって試験を行った。pH7.0を有する0.5モルのリン酸ナトリウム緩衝液中で、135ppmの遊離チオール化合物(1.114ミリモルのシステイン)、2500ppbのアクリルアミド(0.0352ミリモル)及び235ppmの酸化剤(1.35ミリモルのデヒドロアスコルビン酸)を含む溶液を調製した。120℃で40分間加熱した後、添加したアクリルアミドの回収は、約27%であると測定された。従って、酸化剤を含有する試料によるアクリルアミドの減少量は、約73%であり、システインの対照試料により達成される減少より少ない。従って、アクリルアミドの分解は酸化剤の添加によって悪化した。
【0155】
2500ng/mL又は2500ppbのアクリルアミドを有するアクリルアミド溶液と共にその他の酸化剤及び還元剤によってさらなる試験を行った。結果は、以下の表27に提供される。
【0156】
表27 アクリルアミドに対するシステインを伴った酸化剤及び還元剤の影響
【0157】
【表27】
【0158】
図13は、アクリルアミド低減剤への酸化剤又は還元剤の添加の理論化された影響をグ
ラフで説明する。理論に束縛されることなく、還元剤1304は、システインを還元されたチオール1306の形態に保持することによってシステインの有効性を高める又は拡大すると考えられている。上記で考察したように、システインの遊離チオールはアクリルアミドの二重結合と反応すると考えられている。デヒドロアスコルビン酸のような酸化剤1302は、システインのチオール1306を不活性のシステインのジスルフィド(シスチン)1308に変換し得る。本発明の実施態様の1つでは、約+0.2〜−0.2ボルトの間の標準的な還元電位(E°)を有する還元剤が使用される。
ポテトフレークによる還元剤を伴ったチオールの向上した効果
ポテトフレークの存在下、還元剤の有無にて遊離チオールによるアクリルアミドの減少を比較するために試験を行った。3mLの水と混合された3gのポテトフレークを有する6本のバイアルを用意した。800ppm、400ppm、200ppm及び100ppmの濃度(μgのシステイン/gのポテトフレーク)にてシステインをバイアルに加えた。遊離チオール源の可能性があるカゼインを1%のレベルでバイアルに加えた。6本の試料をそれぞれ120℃にて40分間加熱した。次いで、アクリルアミドの濃度について溶液を測定した。結果を以下の表28に示す。
【0159】
表28 還元剤なしでのアクリルアミドに対する種々の濃度レベルの影響
【0160】
【表28】
【0161】
データは再び、システインの濃度が高くなるにつれて、アクリルアミドの減少も大きくなることを裏付けている。上記試験はまた、1%のカゼインは還元剤なしではアクリルアミドを減少させないことも示している。
【0162】
上記表27に示すように、亜硫酸ナトリウム(還元剤)は、添加したアクリルアミドを減少させるシステインの有効性を高め、遊離チオール又は対照試料をさらに18%超えた。ポテトフレークでアクリルアミドのレベルを低下させることにおけるシステイン及びカゼインの有効性に対する亜硫酸ナトリウムの影響を定めるために試験を行った。3mLの水と混合された3gのポテトフレークを有する5本のバイアルを用意した。400ppm(μgシステイン/ポテトフレーク)の濃度でシステインを2本のバイアルに加えた。カゼインは1%のレベルでバイアル1本に加えた。483ppm(μg亜硫酸ナトリウム/gポテトフレーク)にて亜硫酸ナトリウムを、カゼインのバイアル及びシステインのバイアルのうちの1本に加えた。試料を120℃にて40分間加熱した。次いで、アクリルアミドの濃度について溶液を測定した。結果を以下の表29に示す。
【0163】
表29 還元剤なしでのポテトフレークのアクリルアミドの減少に対する種々の濃度レベルの影響
【0164】
【表29】
【0165】
表28は、1%のカゼインの添加は、還元剤なしではポテトフレークにおけるアクリルアミドのレベルを低下させることができなかったことを示している。しかしながら、表29は、還元剤(483ppmの亜硫酸ナトリウム)の添加が、亜硫酸ナトリウム単独よりもさらに10%のアクリルアミドの減少を生じることを明らかにしている。
【0166】
チオール及び還元剤は、非ポテトフレークの溶液よりもポテトフレークの試料(表28及び29)の方がアクリルアミドのレベルを低下させることにおける有効性が低かった。これを説明する、可能性のある理由が幾つか存在する。たとえば、アクリルアミドは、非ポテトフレーク試料では添加したが、ポテトフレーク試料では形成されなければならなかった。従って、アクリルアミドの形成は、おそらく分解よりも重要である。さらに、ポテトフレークについては条件が最適化されなかった。ポテトフレークのpHは、pH7に調整されなかったが、pH7では、システインのアクリルアミドとの反応性が高まる。
【0167】
実施態様の1つでは、遊離チオール化合物1306は、システイン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−システアミン、還元グルタチオン、ジチオスレイトール及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。実施態様の1つでは、還元剤1304は、塩化第一スズ・2水和物、亜硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸)、アスコルビン酸誘導体の塩、これらの鉄、亜鉛、第一鉄イオン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0168】
本発明の利点の1つは、遊離チオール化合物を還元剤と混合した場合、さらに少ない遊離チオールを使用することによって同一のアクリルアミドの減少を達成できることである。従って、望ましくない異風味を抑えること又は除くことができる。いかなるパン生地ベースのスナック食品においても遊離チオール化合物と還元剤を用いてアクリルアミドの減少を達成することができる。本発明の別の利益は、一部の還元剤に関連する固有の栄養的利益である。たとえば、アスコルビン酸は一般にビタミンCとして知られている。
【0169】
幾つかの実施態様を参照して本発明を特に示し、説明してきたが、本発明の精神及び範
囲から逸脱することなく、遊離チオールと還元剤の添加物の使用による熱加工した食品におけるアクリルアミドの減少への種々のその他のアプローチが行われてもよいことが当業者によって理解されるであろう。たとえば、ジャガイモ及びコーンの製品に関連して工程を開示してきたが、大麦、小麦、ライ麦、コメ、カラス麦、雑穀及びその他のデンプン系穀類から作られる食品、並びにアスパラギン及び還元糖を含むその他の食品、たとえば、サツマイモ、タマネギ及びその他の野菜の加工にも該工程を使用することができる。さらに、工程は、ポテトチップ及びコーンチップで明らかにされたが、多数のその他の加工食品、たとえば、その他の種類のスナックチップ、シリアル、クッキー、クラッカー、ハードプレッツェル、パン及びロールパン、並びに肉の唐揚げのためのパン粉付けの加工に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】アスパラギンとグルコースを出発とするアクリルアミド形成の推定される経路の概略を示す反応機構。
【図2】生のジャガイモ貯蔵物から揚げたポテトフライを作るための周知の従来技術の方法を示すフローチャート。
【図3A】本発明の2つの別々の実施態様に従って加工スナック食品を作る方法を示すフローチャート。
【図3B】本発明の2つの別々の実施態様に従って加工スナック食品を作る方法を示すフローチャート。
【図4】システインとリジンを加えた一連の試験で見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図5】CaCl2をリン酸又はクエン酸と組み合わせた一連の試験で見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図6】種々のレベルの還元糖を有するポテトフレークにCaCl2及びリン酸を加えた一連の試験で見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図7】ポテトフレークにCaCl2及びリン酸を加えた一連の試験で見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図8】コーンチップのためのミックスにCaCl2及びクエン酸を加えた一連の試験で見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図9】システイン、塩化カルシウム、及びリン酸又はクエン酸のいずれかで加工されたポテトチップで見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図10】フレークを作る工程又はチップを加工する工程に塩化カルシウム及びリン酸を加えた場合のポテトチップで見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図11】ポテトチップにおけるアクリルアミドのレベルに対するアスパラギナーゼ及び緩衝化の影響を示すグラフ。
【図12】ローズマリーを含有する油で揚げたポテトチップで見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図13】遊離チオールを有するアクリルアミド低減剤への酸化剤又は還元剤の添加の影響を示すグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱加工された食品におけるアクリルアミドの量を減らす方法に関するものであり、有意に低下したレベルのアクリルアミドを有する食品の生産を可能にする。さらに具体的には、本発明は、a)加工食品を作製する際、2以上のアクリルアミド還元剤の組み合わせを添加すること、及びb)ポテトフレーク、又は加工食品を作製するのに使用されるその他の中間生産物を生産する間に種々のアクリルアミド低減剤を使用することに関する。
【0002】
本出願は、双方共、2003年2月21日に出願された同時係属米国特許出願10/372/738号及び同時係属米国特許出願10/372/154号の一部継続出願である2004年8月30日に出願された同時係属米国特許出願10/929,922号及び2004年8月31日に出願された同時係属米国特許出願10/931/021号の一部継続出願である。米国特許出願10/372/154号は、2002年9月19日に出願された同時係属米国特許出願10/247/504号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0003】
化学物質アクリルアミドは、長い間、水処理、油回収の向上、製紙、凝集剤、濃厚剤、鉱石加工及び耐久プレス加工布への産業的用途でポリマーの形態にて使用されている。アクリルアミドは、白色の結晶固体として関わり、無臭であり、水への溶解性が高い(30℃にて2155g/L)。アクリルアミドの同義語には、2−プロペンアミド、エチレンカルボキサミド、アクリル酸アミド、ビニルアミド及びプロペン酸アミドが挙げられる。アクリルアミドは、分子量71.08、25mmHgにて融点84.5℃、及び沸点125℃である。
【0004】
つい最近、多種多様な食品で、アクリルアミドモノマーの存在について陽性であることが調べられた。アクリルアミドは特に、高温で加熱された又は高温で加工された炭水化物食品に主として見出されている。アクリルアミドについて陽性であることが調べられた食品の例には、コーヒー、シリアル、クッキー、ポテトチップ、クラッカー、フライドポテト、パン及びロールパン並びに肉のから揚げが挙げられる。加熱せず、茹でた食品における検出不能なレベルに比べて、一般に、相対的に低い含量のアクリルアミドは、加熱したタンパク質が豊富な食品に見出され、一方、相対的に高い含量のアクリルアミドは、炭水化物が豊富な食品に見出される。種々の同様に加工された食品で見出されるアクリルアミドの報告されたレベルは、ポテトチップでの330〜2,300(μg/kg)の範囲、フライドポテトでの300〜1,100(μg/kg)の範囲、コーンチップの120〜180(μg/kg)の範囲、及び種々の朝食シリアルにおける検出不能〜1,400(μg/kg)の範囲のレベルが挙げられる。
【0005】
アクリルアミドは、アミノ酸及び還元糖の存在から形成されると現在考えられている。たとえば、生野菜で一般に見出されるアミノ酸である遊離アスパラギンと遊離還元糖との間の反応によって、揚げた食品で見出されるアクリルアミドの大半は説明されると考えられている。アスパラギンは、生のジャガイモで見られる遊離アミノ酸すべてのおよそ40%の割合を占め、高タンパクのライ麦で見られる遊離アミノ酸すべてのおよそ18%の割合を占め、小麦で見られる遊離アミノ酸すべてのおよそ14%の割合を占める。
【0006】
アスパラギン以外のアミノ酸からのアクリルアミドの形成は可能であるが、確実性の程度は未だ確認されていない。たとえば、グルタミン、メチオニン、システイン及びアスパラギン酸を前駆体として調べることから一部のアクリルアミドの形成が報告されている。
しかしながら、ストックのアミノ酸におけるアスパラギン不純物の可能性のために、これらの知見を確認するのは困難である。それにもかかわらず、アスパラギンは、アクリルアミド形成の最大原因であるアミノ酸前駆体として同定されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
食品中のアクリルアミドは最近発見された現象なので、形成の正確なメカニズムは確認されていない。しかしながら、アクリルアミド形成の最も可能性の高い経路には、メイラード反応が関与すると今や考えられる。メイラード反応は、食品加工において最も重要な化学反応の1つとして食品化学で長いこと認識されており、食品の風味、色及び栄養価に影響を及ぼしうる。メイラード反応は、熱、水分、還元糖及びアミノ酸を必要とする。
【0008】
メイラード反応には、多数の中間体とともに一連の複雑な反応が関与するが、一般に、関与する3つの工程として説明される。メイラード反応の第1の工程には、遊離アミノ基(遊離アミノ酸及びタンパク質、もしくは遊離アミノ酸又はタンパク質に由来)の還元糖(たとえば、グルコース)との化合が関与し、アマドリ又はヘインズの再構成生成物が形成される。第2の工程には、デオキシオソン、分裂又はシュトレッカーの分解を含む、異なった別の経路を介したアマドリ又はヘインズの再構成生成物の分解が関与する。脱水、脱離、環化、分裂及び断片化を含む複雑な一連の反応は、芳香のある中間体及び芳香のある化合物を生じる。メイラード反応の第3の工程は、褐色の、窒素を含むポリマー及びコポリマーの形成を特徴とする。アクリルアミドの形成に可能性の高い経路としてメイラード反応を用いて、図1は、アスパラギン及びグルコースから出発したアクリルアミドの形成のための推定される経路を簡略化して説明する。
【0009】
アクリルアミドはヒトに有害であると定められているわけではないが、食品におけるその存在は、特に高いレベルでは望ましくない。前に記したように、加熱した又は熱で加工した食品で相対的に高い濃度のアクリルアミドが見出される。そのような食品中のアクリルアミドの低減は、アクリルアミドを形成する前駆体化合物を低減する又は除くこと、食品の加工中アクリルアミドの形成を阻害すること、食品中でいったん形成されたアクリルアミドモノマーを分解する又は反応させること、或いは消費する前に製品からアクリルアミドを取り除くことによって達成すればよい。当然のことながら、各食品は、上記の選択肢を達成するために独特の難題を提示する。たとえば、粘着片として薄く切り、調理される食品は、調理の際、独特の特徴を食品に与える細胞構造を物理的に破壊することなく、種々の添加剤と容易に混合されなくてもよい。特定の食品に対するその他の加工上の必要条件によって同様に、アクリルアミドの低減戦略が相容れなくなり、又は非常に困難になる。
【0010】
例証として、図2は、生の貯蔵されたジャガイモから揚げたポテトチップを作る周知の従来技術の方法を説明する。約80%以上の水を含有する生のジャガイモは先ず、皮むき工程21に進む。生のジャガイモから皮をむいた後、ジャガイモはスライス工程22に輸送される。スライス工程22における各ジャガイモ細片の厚さは、最終製品の所望の厚さに依存する。従来技術における例には、ジャガイモを約0.053インチにスライスすることが関与する。次いで、これらの細片を洗浄工程23に運び、その際、各細片上の表面デンプンを水で取り除く。次いで、洗浄したジャガイモ細片を調理工程24に運ぶ。調理工程24には通常、連続揚げ鍋にて、たとえば、177℃でおよそ2.5分間、細片を揚げることが関与する。調理工程は一般に、チップの水分レベルを2重量%まで低減する。たとえば、典型的なポテトチップはおよそ1.4重量%の水分で揚げ鍋を出る。調理したポテトチップを次いで、味付け工程25に運び、そこで、回転ドラム中にて調味料が塗布される。最後に、味付けされたチップは、包装工程26に進む。この包装工程26は普通、チップを1以上の垂直形態に向け、満たす1以上の秤量装置及び柔軟性のある包装に包
装するための密封機に、味付けしたチップを搬送することを含む。いったん包装されると、製品は流通し始め、消費者によって購入される。
【0011】
上述のポテトチップ加工工程の数における軽微な調整によって、最終製品の特徴における有意な変化を生じることができる。たとえば、洗浄工程23において細片の滞留時間を延長することは、ジャガイモの風味、色及び質感を持つ最終製品を提供する細片からの化合物の浸出を生じうる。調理工程24にて滞留時間を延ばすこと又は加熱温度を上げることは、水分含量の低下と共にチップでメイラード褐色化レベルの増加を生じうる。揚げる前にジャガイモ細片に成分を組み入れることが所望であれば、チップの細胞構造を破壊することなく、又は有益な化合物を細片から浸出させることなく、細片の内部部分に添加された成分の吸収を提供するメカニズムを確立することが必要であってもよい。
【0012】
最終製品でアクリルアミドのレベルを低減することに独特の難題を表す加熱食品の別の例証として、スナックもまた、パン生地から作られる。用語「加工したスナック」は、元来の且つ変化させていないデンプンの出発物質以外の何かをその出発成分として使用するスナック食品を意味する。たとえば、加工されたスナックには、脱水したジャガイモを出発物質として使用するポテトチップ及びマサフラワーを出発物質として使用するコーンチップが挙げられる。ここでは、脱水ジャガイモ製品は、ジャガイモ粉、ポテトフレーク、ジャガイモ顆粒又は脱水ジャガイモが存在するその他の形態でありうることが言及される。本出願でこれらの用語のいずれかが使用される場合、これらの変形物すべてが含まれることが理解される。
【0013】
図2に戻って参照して、加工されたポテトチップは、皮むき工程21、スライス工程22又は洗浄工程23を必要としない。代わりに、加工されたポテトチップは、たとえば、ポテトフレークで出発し、それを水及びその他成分と混合してパン生地を形成する。次いで、このパン生地を板状にし、調理工程に進む前に切断する。調理工程には、揚げること又は焼くことが関与してもよい。次いで、チップは味付け工程及び包装工程に進む。ジャガイモのパン生地の混合は、ほかの成分の容易な添加に役立つ。逆に、たとえば、ジャガイモ細片のような生の食品へのそのような成分の添加は、製品の細胞構造への成分の浸透を可能にするメカニズムが見出されることを必要とする。しかしながら、混合工程における成分の添加は、成分がパン生地の板状特性及び最終的なチップの特徴に悪影響を及ぼす可能性があることを考慮して行わなければならない。
【0014】
加熱した食品又は熱加工した食品の最終製品におけるアクリルアミドのレベルを下げる1以上の方法を開発することが望ましい。理想的にはそのような加工は、最終製品の質及び特徴に悪影響を及ぼすことなく、最終製品でアクリルアミドを実質的に減らす又は除くべきである。さらに、該方法は、実施するのに容易であり、好ましくは、加工全体に対するコストがほとんどかからない、又はかからない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
提案された本発明には、食品におけるアクリルアミドの低減が関与する。発明の工程では、還元剤を使用して遊離チオールを有する、たとえば、システインのようなアクリルアミド低減剤の効果を拡大する。態様の1つでは、たとえば、アスコルビン酸、塩化第1スズ、亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸ナトリウムのような還元剤と併せて、アクリルアミド低減剤としてシステインを使用する。
【0016】
還元剤は、遊離チオールを有するアクリルアミド低減剤の効果を拡大することができ、それによって、高いレベルのアクリルアミド低減剤によって顕著でありうる異風味を最低限にとどめる。従って、本発明は、最終製品の質及び特徴を高める手段を提供する。さらに、アクリルアミド低減のそのような方法は、一般に実施するのが容易である。本発明の
上記及び追加の特徴並びに利点は、以下に記載される詳細な説明で明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を特徴付ける新規の特徴が添付のクレームで述べられる。しかしながら、本発明自体は、使用の好ましい形態、さらなる目的及びその利点と同様に、以下の図面と併せて読まれた場合、説明的実施態様の上記詳細な説明を参照して最良に理解されるであろう。
【0018】
熱で加工された食品におけるアクリルアミドの形成は、炭素源及び窒素源を必要とする。炭素は炭水化物源によって供給され、窒素はタンパク質源又はアミノ酸源から供給されることが仮定されている。たとえば、コメ、小麦、トウモロコシ、大麦、ダイズ、ジャガイモ及びカラス麦のような多数の植物由来の食品成分はアスパラギンを含有し、その他アミノ酸成分を有する主として炭水化物である。通常、そのような食品成分は小さなアミノ酸のプールを有し、それはアスパラギンに加えてその他のアミノ酸を含有する。
【0019】
「熱で加工される」によって、食物成分の混合物のような食物の構成成分が少なくとも80℃の温度で加熱される食物又は食物成分を意味する。好ましくは、食物又は食物成分の熱加工は、約100℃〜205℃の間で生じる。食物成分は、最終的な食品の形成前に高い温度で別々に加工されてもよい。熱で加工された食物成分の例は、ポテトフレークであり、それは、ジャガイモを170℃と同じくらいの温度に暴露する工程で生のジャガイモから形成される(用語「ポテトフレーク」、「ジャガイモ顆粒」及び「ジャガイモ粉」は本明細書では相互交換可能に使用され、ジャガイモを基にした脱水製品を示すことを意味する)。その他の熱で加工されら食物成分の例には、加工カラス麦、半ゆでライス及び乾燥ライス、調理した大豆製品、コーンマサ、炒ったコーヒー豆及び炒ったカカオ豆が挙げられる。或いは、生の食物成分は、最終の食品の調製に使用され、最終の食品の製造には、熱加熱工程が含まれる。最終の食品が熱加熱工程から生じる原料の加工の一例は、約100℃〜約205℃の間の温度で揚げる工程によって生のジャガイモ細片からポテトチップの製造、又は同様の温度で揚げられるフライドポテトの製造である。
(アクリルアミドの形成におけるアミノ酸の影響)
しかしながら、本発明によれば、還元糖の存在下、アミノ酸アスパラギンを加熱した場合、アクリルアミドの有意な形成が生じることが見出されている。グルコースのような還元糖の存在下、リジンやアラニンのようなその他のアミノ酸を加熱することは、アクリルアミドの形成につながらない。しかし、驚くべきことに、アスパラギンと糖の混合物へのその他のアミノ酸の添加は、形成されたアクリルアミドの量を増減させることができる。
【0020】
還元糖の存在下でアスパラギンを加熱した場合のアクリルアミドの急速な形成を立証したので、熱で加工された食品におけるアクリルアミドの低減は、アスパラギンを不活化することによって達成される。「不活化すること」によって、アスパラギンからのアクリルアミドの形成を妨害する別の化学物質への変換又はそれへの結合によって、アクリルアミド形成の経路に沿って食物からアスパラギンを取り除く又はアスパラギンを非反応性にすることを意味する。
I.アクリルアミド形成に対するシステイン、リジン、グルタミン及びグリシンの影響
アスパラギンがグルコースと反応してアクリルアミドを形成するので、その他の遊離アミノ酸の濃度を高めることが、アスパラギンとグルコースの間の反応に影響を及ぼし、アクリルアミドの形成を減らす可能性がある。この実験については、pH7.0のリン酸ナトリウム緩衝液中で、アスパラギン溶液(0.176%)及びグルコース溶液(0.4%)を調製した。モル基準でグルコースと同じ濃度でほかの4種のアミノ酸、グリシン(GLY)、リジン、グルタミン(GLN)及びシステイン(CYS)を添加した。実験計画は、添加したアミノ酸の可能性のある組み合わせが重複することなくすべて調べられるように完全因子性だった。アクリルアミドを測定する前に溶液を120℃にて40分間加熱
した。以下の表1は、濃度及び結果を示す。
【0021】
表1 アクリルアミド形成に対するシステイン、リジン、グルタミン及びグリシンの影響
【0022】
【表1】
【0023】
上記表に示されるように、ほかのアミノ酸なしでグルコースとアスパラギンは1679ppbのアクリルアミドを形成した。添加したアミノ酸は3種の効果を有した。
1)システインはアクリルアミドの形成をほとんど除いた。システインによる処理はすべて25ppb未満のアクリルアミドを有した(98%の低下)。
【0024】
2)リジン及びグリシンは、アクリルアミドの形成を低下させたが、システインほどではなかった。グルタミンとシステインを含まない、リジン及びグリシン、もしくはリジン又はグリシンによる処理はすべて220ppb未満のアクリルアミドを有した(85%の低下)。
【0025】
3)驚くべきことに、グルタミンはアクリルアミドの形成を5378ppbに高めた(200%の上昇)。グルタミンにシステインを加えてもアクリルアミドを形成しなかった。グリシンとリジンをグルタミンに加えると、アクリルアミドの形成を低減した。
【0026】
これらの試験は、システイン、リジン及びグリシンがアクリルアミド形成の低減に有効であることを実証している。しかしながら、グルタミンの結果は、必ずしもアミノ酸すべてがアクリルアミド形成の低減に有効ではないことを明らかにしている。単独ではアクリルアミド形成を加速するアミノ酸(たとえば、グルタミン)とのシステイン、リジン又はグリシンの組み合わせは同様に、アクリルアミドの形成を低下させることができる。
II.異なった濃度及び温度でのシステイン、リジン、グルタミン及びメチオニンの効果
上記で報告したように、システイン及びリジンは、グルコースと同じ濃度で添加した場合、アクリルアミドを減らした。以下の質問に答えるべく、フォローアップ実験を計画した。
【0027】
1)さらに低い濃度のシステイン、リジン、グルタミン及びメチオニンはアクリルアミドの形成にどのように影響するのか?
2)溶液を120℃及び150℃で加熱した場合、添加されたシステイン及びリジンの効果は同じなのか?
pH7.0のリン酸ナトリウム緩衝液中で、アスパラギン(0.176%)及びグルコース(0.4%)の溶液を調製した。2種類の濃度のアミノ酸(システイン(CYS)、リジン(LYS)、グルタミン(GLN)又はメチオニン(MET))を添加した。2種類の濃度は、グルコースのモル当たり、0.2モル及び1.0モルのアミノ酸だった。試験の半分で溶液2mLを120℃で40分間加熱し、別の半分で2mLを150℃で15分間加熱した。加熱後、GC−MSにてアクリルアミドを測定し、結果を表2に示した。対照は、添加アミノ酸のないアスパラギンとグルコースの溶液だった。
【0028】
表2 アクリルアミドのレベルに対するアミノ酸の温度及び濃度の影響
【0029】
【表2】
【0030】
システイン及びリジンによる試験では、対照は、120℃での40分後、1332ppbのアクリルアミドを形成し、150℃15分後では、3127ppbのアクリルアミドを形成した。システイン及びリジンは、120℃及び150℃でアクリルアミドの形成を低減し、アクリルアミドの低減は、添加したシステイン又はリジンの濃度にほぼ比例する。
【0031】
グルタミン及びメチオニンによる試験では、対照は、120℃での40分後、1953ppbのアクリルアミドを形成し、150℃15分後では、3866ppbのアクリルアミドを形成した。グルタミンは、120℃及び150℃でアクリルアミドの形成を増加させた。グルコースのモル当たり0.2モルのメチオニンはアクリルアミド形成に影響を与えなかった。グルコースのモル当たり1.0モルのメチオニンは50%未満、アクリルアミド形成を低下させた。
III.グルコースとアスパラギンの溶液におけるアクリルアミド形成に対する19種のアミノ酸の影響
4種のアミノ酸(リジン、システイン、メチオニン及びグルタミン)のアクリルアミド形成に対する影響を上で記載した。15種の追加のアミノ酸を調べた。pH7.0のリン酸ナトリウム緩衝液中で、アスパラギン(0.176%)及びグルコース(0.4%)の溶液を調製した。15種のアミノ酸は、モル基準でグルコースと同一濃度にて添加した。対照は、ほかのアミノ酸を含まないアスパラギンとグルコースの溶液を含有した。溶液を120℃で40分間加熱した後、GC−MSによってアクリルアミドを測定した。結果を
以下の表3に示す。
【0032】
表3 アクリルアミド形成に対するその他のアミノ酸の影響
【0033】
【表3】
【0034】
上記の表で見られるように、アクリルアミド形成の低減においてシステイン、リジン又はグリシンほど有効なアミノ酸は追加の15アミノ酸中にはなかった。追加のアミノ酸中で9種が対照の22〜78%の間のレベルにアクリルアミドを減らした一方で、6種のアミノ酸は、対照の111〜150%のレベルにアクリルアミドを増やした。
【0035】
以下の表4は、アミノ酸すべてに関する結果を要約し、それらの有効性の順に列記した。システイン、リジン及びグリシンは有効な阻害剤であり、対照で形成されたものの15%未満の量でアクリルアミドを形成した。次の9種のアミノ酸はあまり有効な阻害剤ではなく、対照で形成されたものの22〜78%の間で総アクリルアミド形成を有した。次の7種のアミノ酸は、アクリルアミドを増加させた。グルタミンがアクリルアミドの最大の増加を起こし、対照の320%を示した。
【0036】
表4 19種のアミノ酸の存在下でのアクリルアミドの形成
【0037】
【表4】
【0038】
IV.750ppmの添加L−システインによるポテトフレーク
750ppm(100万分の1)の添加L−システインと共に試験用ポテトフレークを製造した。対照のポテトフレークは添加L−システインを含有しなかった。ガラス製バイアルに3gのポテトフレークを量り取った。きつくフタを閉めた後、バイアルを120℃にて15分間又は40分間加熱した。GC−MSによって10億分の1単位(ppb)でアクリルアミドを測定した。
【0039】
表5 システインによる時間経過でのアクリルアミドの低減
【0040】
【表5】
【0041】
V.焼いた加工ポテトチップ
上記結果を考えて、システイン又はリジンを加工スナック食品、この場合、焼いた加工ポテトチップのための製法に加えた本発明の好ましい実施態様が開発されている。この製品を作製する工程を図3Aに示す。パン生地調製工程30においてポテトフレーク、水及びその他の成分を組み合わせてパン生地を形成する(本明細書では、用語「ポテトフレーク」と「ジャガイモ粉」は相互交換可能に使用され、粒度にかかわりなく、どちらも乾燥フレーク又は粉末の調製物すべてを包含することを意図する)。板状加工工程31では、パン生地をシータに通し、パン生地が平らにされ、次いで個別の小片に切断される。調理行程32では、特定された色及び水分に達するまで、切断した小片を焼く。次いで、得られたチップに味付け工程33にて味付けを行い、包装工程34で包装に入れられる。
【0042】
上述の工程を使用することによって、本発明の第1の実施態様が明らかにされる。この実施態様を説明するために、対照バッチと3種の濃度のシステイン又は1種の濃度のリジンいずれかが添加された試験バッチの比較が行われる。
【0043】
表6 アクリルアミドのレベルに対するリジン及び種々の濃度のシステインの影響
【0044】
【表6】
【0045】
すべてのバッチで、乾燥した成分を先ず一緒に混合し、次いで油を各乾燥混合物に加え、混合した。パン生地への添加に先立ってシステイン又はリジンを水に溶解した。板状加工前のパン生地の水分レベルは40〜50重量%であった。パン生地を板状加工し、0.020〜0.030インチの間の厚さを作り、チップの大きさに切断し、焼いた。
【0046】
調理した後、ハンターL−A−Bの尺度に従って、水分、油及び色に関する試験を行った。仕上げ製品におけるアクリルアミドのレベルを得るために試料を調べた。表6は、これらの解析の結果を示す。
【0047】
対照のチップでは、最終調理後のアクリルアミドのレベルは1030ppbだった。調べたすべてのレベルでのシステイン及びリジンの添加は双方共、最終的なアクリルアミド
のレベルを有意に低下させた。図4は、グラフの形態にて得られたアクリルアミドのレベルを示す。この図では、各試料で検出されたアクリルアミドのレベルは影付き棒402によって示される。各棒は、直下に適当な試験を示す標識を有し、図の左側のアクリルアミドに関する尺度について目盛りが決められている。製造されたチップの水分レベルも各試験で示され、単一点404として見られる。点404の値は、図の右側に示される水分の比率についての尺度で目盛りが決められている。線406は、視認性を高めるために個々の点404を接続する。アクリルアミドのレベルに対するさらに低い水分の顕著な効果のために、アクリルアミド低減剤の活性を適切に評価するために水分レベルを有することが重要である。本明細書で使用するとき、アクリルアミド低減剤は、アクリルアミドの含量を減らす添加剤である。
【0048】
パン生地にシステイン又はリジンを添加することは、仕上げ製品に存在するアクリルアミドのレベルを有意に低下させる。システイン試料は、添加されたシステインの量にほぼ直接比例してアクリルアミドのレベルが低下することを示している。しかしながら、製造工程にアミノ酸を添加することからの最終製品の特徴(たとえば、色及び質感)への付随的な影響について考慮しなければならない。
【0049】
添加したシステイン、リジン、及び2つのアミノ酸それぞれとCaCl2との組み合わせを用いて追加の試験を行った。これらの試験は、上記試験で記載したのと同様の手順を用いたが、種々のレベルの還元糖及び種々の量の添加したアミノ酸及びCacl2を用いた。以下の表7において、ロット1のポテトフレークは0.81%の還元糖を有し(表のこの部分は上記で示した試験の結果を再現している)、ロット2は1.0%及びロット3は1.8%の還元糖を有した。
【0050】
表7 種々の濃度のシステイン、リジン、還元糖の効果
【0051】
【表7】
【0052】
この表のデータで示されるように、システイン又はリジンのいずれかの添加は、調べた還元糖の各レベルでアクリルアミドのレベルにおいて有意な改善を提供する。この試験が最高レベルの還元糖と共に行われたという事実にもかかわらず。リジンと塩化カルシウムの組み合わせは、生成されたアクリルアミドのほぼ完全な排除を提供した。
VI.スライスし、揚げたポテトチップにおける試験
ジャガイモ細片から作製したポテトチップによっても類似の結果を達成することができる。しかしながら、細片の完全性を破壊するので、上記で説明した実施態様と同様には、所望のアミノ酸をジャガイモ細片と単純に混合することはできない。実施態様の1つでは、アミノ酸がジャガイモ細片の細胞構造に移動できるのに十分な時間、所望のアミノ酸を含有する水溶液にジャガイモ細片を浸漬する。たとえば、このことは、図2で説明した洗浄工程23の間に行うことができる。
【0053】
以下の表8は、上記図2の工程23で記載された洗浄処理に1重量%のシステインを添加した結果を示す。洗浄はすべて室温にて指示した時間行い、対照処理は水に何も加えなかった。次いで、178℃で指示した時間、綿実油にてチップを揚げた。
【0054】
表8 ジャガイモ細片の洗浄水におけるシステインのアクリルアミドに対する影響
【0055】
【表8】
【0056】
この表に示されるように、1重量%濃度のシステインを含有する水溶液にて厚さ0.53インチのジャガイモ細片を15分間浸漬することは、100〜200ppbのオーダーで最終製品のアクリルアミドのレベルを下げるのに十分である。
【0057】
本発明は、システインをトルティーヤチップ用のコーンパン生地(又はマサ)に添加することによっても実証される。システインが製粉の間に生産されるマサで均一に分布するように溶解したL−システインを調理したコーンに加えた。600ppmのL−システインの添加は、対照製品における190ppbからL−システイン処理製品の75ppbにアクリルアミドを減らした。
【0058】
追加の成分の付随する効果、たとえば、食品の色、味及び質感について調整が行われる限り、本明細書で開示される本発明と共にいかなる数のアミノ酸も使用することができる。示される例はすべてα−アミノ酸(NH2−基がα−炭素原子に結合する)を利用するが、出願者は、β−及びγ−アミノ酸は一般に食品添加物としては使用されないが、β−又はγ−アミノ酸のようなその他の異性体を使用できることを予想している。本発明の好ましい実施態様は、システイン、リジン及びグリシン、もしくはシステイン、リジン又はグリシンを使用する。しかしながら、ほかのアミノ酸、たとえば、ヒスチジン、アラニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、フェニルアラニン、バリン及びアルギニンも使用することができる。そのようなアミノ酸及び特に、システイン、リジン及びグリシンは相対的に安価であり、食品添加物として一般に使用される。最終食品中でアクリルアミドの量を減らすために、これらの好ましいアミノ酸を単独で又は併用で使用することができる。さらに、食品の出発物質に市販のアミノ酸を添加すること、又は遊離アミノ酸を高いレベルで含有する別の食物成分を添加することのいずれかによって加熱前の食品にアミノ酸を添加することができる。たとえば、カゼインは遊離リジンを含有し、ゼラチンは遊離グリシンを含有する。従って、出願者が、アミノ酸を食品処方に添加することを指し示す場合、アミノ酸は、市販のアミノ酸として、又は食物中の天然のアスパラギンのレベルより高い濃度のアミノ酸を有する食品として添加してもよいことが理解される。
【0059】
許容可能なレベルにアクリルアミドのレベルを下げるために添加されるべきアミノ酸の量は、幾つかの方法で表現することができる。商業的に許容できるようにするために、添加されるアミノ酸の量は、そのように処理されていない製品に比べて少なくとも20パーセント(20%)アクリルアミド生成の最終レベルを減らすのに十分であるべきである。さらに好ましくは、アクリルアミド生成のレベルを35パーセント〜95パーセント(35〜95%)の範囲内の量に減らすべきである。一層さらに好ましくは、アクリルアミド生成のレベルを50パーセント〜95パーセント(50〜95%)の範囲内の量に減らすべきである。システインを使用する好ましい実施態様では、少なくとも100ppmの添加がアクリルアミドを低減するのに有効でありうることが決定されている。しかしながら、システイン添加の好ましい範囲は、100ppm〜10,000ppmの間であり、最
も好ましい範囲は約1,000ppmの量である。リジンやグリシンのようなその他の有効なアミノ酸を用いた好ましい実施態様では、製品に存在する還元糖に対する添加されたアミノ酸のモル比、少なくとも0.1モルのアミノ酸対1モルの還元剤(0.1:1)が、アクリルアミド形成を低減するのに有効であることが判っている。さらに好ましくは、添加されたアミノ酸対還元糖のモル比は、0.1:1〜2:1の間であるべきであり、最も好ましい比は約1:1である。
【0060】
精選したアミノ酸が見出されたアクリルアミドの量を低減するメカニズムはは現在判っていない。可能性のあるメカニズムには、少ないアクリルアミドを創る反応物質と前駆体の希釈体との競合、及び分解するためのアクリルアミドとの反応メカニズムが挙げられる。可能性のあるメカニズムには、(1)メイラード反応の阻害、(2)グルコース及びその他の還元糖の消費及び(3)アクリルアミドとの反応が挙げられる。遊離チオール基を持つシステインは、メイラード反応の阻害剤として作用する。アクリルアミドは、メイラード反応によりアスパラギンから形成されると考えられているので、システインは、メイラード反応及びアクリルアミドの形成の速度を減らすべきである。リジン及びグリシンは、グルコース及び還元糖と迅速に反応する。リジン及びグリシンによってグルコースが消費されれば、アスパラギンと反応してアクリルアミドを形成するグルコースが減る。アミノ酸のアミノ基は、アクリルアミドの二重結合と反応することができる、ミカエル付加。システインの遊離チオールもアクリルアミドの二重結合と反応することができる。
【0061】
アミノ酸の添加によって最終製品における特徴、たとえば、色、味及び質感に有害な変化を起こしうることを理解すべきである。本発明に係る製品の特徴におけるこれらの変化は種々のその他の手段によって補填することができる。たとえば、ポテトチップにおける色の特徴は、出発物質における糖類の量を調節することによって調整することができる。風味の特徴の一部は、最終製品に種々の風味剤を添加することによって変えることができる。製品の物理的質感は、たとえば、膨脹剤又は種々の乳化剤の添加によって調整することができる。
アクリルアミド形成における二価及び三価のカチオンの影響
本発明の別の実施態様には、スナック食品を調理すること又は熱で加工することに先立ってスナック食品の製法に二価又は三価のカチオンを添加することによってアクリルアミドの生成を減らすことが関与する。化学者は、カチオンが単独では存在しないが、同一価数を有するアニオンの存在下で見出されることを理解するであろう。本明細書では二価又は三価のカチオンを含有する塩を参照するが、それは、水におけるアスパラギンの溶解性を低下させることによってアクリルアミドの形成を減らすと考えられている塩に存在するカチオンである。これらのカチオンはまた、本明細書では少なくとも2つの価数を持つカチオンと呼ばれる。興味深いことに、単一価数のカチオンは、本発明での使用では有効ではない。アニオンとの組み合わせで少なくとも2つの価数を有するカチオンを含有する適当な化合物の選択では、関連する因子は、水への溶解性、食品の安全性及び特定の食品の特徴に対する少なくとも変更である。本明細書では個々の塩としても考察するが、種々の塩の組み合わせを使用することができる。
【0062】
化学者は、ほかの元素と組み合わせる能力の尺度として原子の価数を口にする。具体的には、二価の原子は、ほかの原子と二価のイオン結合を形成する能力を有するが、三価の原子は、ほかの原子と三価のイオン結合を形成することができる。カチオンは、陽性に荷電されたイオンであり、すなわち、1以上の電子を失ってそれに陽性の電荷を与える。次いで、二価又は三価のカチオンは、それぞれ2又は3のイオン結合に対して利用性を有する陽性に荷電したイオンである。
【0063】
アクリルアミド形成に対する二価又は三価のカチオンの影響を調べるために単純なモデル系を使用することができる。1:1モルの調製物でアスパラギンとグルコースを加熱す
ることは、アクリルアミドを生成することができる。添加された塩の有無でアクリルアミド含量を定量的に比較することは、アクリルアミド形成を促進する又は阻害する塩の能力を測定することになる。2種の試料調製及び加熱の方法を用いた。方法の1つには、乾燥化合物を混合し、等量の水を加え、ゆるくフタをしたバイアルで加熱することが関与した。調理条件を再現して、水のほとんどが逃れるにつれて加熱中に試薬が濃縮した。濃いシロップとタールを生産することができ、アクリルアミドの回収を困難にする。これらの試験は以下の実施例1及び2に示される。
【0064】
加圧容器を用いた第2の方法によってさらに制御された実験ができる。試験成分の溶液を化合させ、加圧下で加熱した。食品で見られる濃度にて試験成分を添加することができ、緩衝液は、食品に共通するpHを再現することができる。これらの試験では、以下の実施例3に示すように、水が逃れることはなく、アクリルアミドの回収は簡略化される。
I.二価、三価のカチオンはアクリルアミドを減らすが、一価はそうではない
L−アスパラギン・一水和物(0.15g、1ミリモル)、グルコース(0.2g、1ミリモル)及び水(0.4mL)を含有する20mLのガラス製バイアルをアルミホイルで覆い、20℃/分で40℃から220℃まで加熱し、220℃で2分間保持し、20℃/分で220℃から40℃まで冷却するようにプログラムしたガスクロマトグラフィ(GC)のオーブンで加熱した。残留物を水で抽出し、ガスクロマトグラフィ質量分光計(GC−MS)を用いてアクリルアミドについて分析した。分析によって約10,000ppb(10億分の1)のアクリルアミドが見出された。L−アスパラギン・一水和物(0.13g、1ミリモル)、グルコース(0.2g、1ミリモル)、無水塩化カルシウム(0.1g、1ミリモル)及び水(0.4mL)を含有する2本の追加バイアルを加熱し、分析した。分析によって、7ppb及び30ppbのアクリルアミドが見出され、99%を超える減少だった。
【0065】
カルシウム塩がアクリルアミドの形成を強く抑えるという驚くべき結果を考えて、塩のさらなるスクリーニングを行い、同様の結果を生成する二価及び三価のカチオン(マグネシウム、アルミニウム)を同定した。以下の表9に見られるように、一価のカチオン、すなわち、0.1/0.2gの重炭酸ナトリウム及び炭酸アンモニウム(カルバミン酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウム)による同様の結果は、アクリルアミド形成を高めたことが言及される。
【0066】
【表9】
【0067】
II.塩化カルシウム及び塩化マグネシウム
第2の実験では、上述と同様の試験を行ったが、無水塩化カルシウムを使用する代わりに、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムのそれぞれ2種の異なる希釈を使用した。以下の1つとL−アスパラギン・一水和物(0.15g、1ミリモル)及びグルコース(0.2g、1ミリモル)を含有するバイアルを混合した:
0.5mLの水(対照)
0.5mLの10%塩化カルシウム溶液(0.5ミリモル)
0.05mLの10%塩化カルシウム溶液(0.05ミリモル)と0.45mLの水
0.5mLの10%塩化マグネシウム溶液(0.5ミリモル)又は
0.05mLの10%塩化マグネシウム溶液(0.05ミリモル)と0.45mLの水。2つずつの試料を、実施例1に記載したように加熱し、分析した。以下の表10にて結果を平均・要約した。
【0068】
表10 アクリルアミドに対する塩化カルシウム及び塩化マグネシウムの影響
【0069】
【表10】
【0070】
(3) なし
III.pHおよび緩衝効果
上述のように、この試験は容器からの水の喪失には関与しないが、加圧下で行われた。2mLの緩衝化ストック溶液(15mMのアスパラギン、15mMのグルコース、500mMのリン酸塩又は酢酸塩)及び0.1mMの塩溶液(1000mM)を含有するバイアルを、20℃/分で40℃から150℃に加熱し、150℃で2分間保持するようにプログラムされたガスクロマトグラフィのオーブン中に置かれたパールボンベで加熱した。ボンベをオーブンから取り出し、10分間冷却した。内容物を水で抽出し、GC−MS法にてアクリルアミドについて分析した。pH及び緩衝液の各組み合わせについて、塩を添加しないで、3つの異なった塩と同様に、対照を操作した。2回行った試験の結果を以下の表11で平均・要約した。
【0071】
表11 二価/三価のカチオンによるアクリルアミドの低下に対するpH及び緩衝液の影響
【0072】
【表11】
【0073】
使用した3種の塩について、最大の低下は、pH7の酢酸塩及びpH5.5のリン酸塩で生じた。小さな低下しか見られなかったのはpH5.5の酢酸塩及びpH7のリン酸塩であった。
IV.塩化カルシウムを増やすとアクリルアミドが減る
モデル系の結果に続いて、加熱する前に塩化カルシウムをポテトフレークに添加する小規模な実験室試験を行った。3mLの0.4%、2%又は10%の塩化カルシウム溶液を3gのポテトフレークに加えた。対照は、3mLの脱イオン水と混合した3gのポテトフレークだった。フレークを混合して、相対的に均一なペーストを形成し、次いで密封したガラス製バイアル中で120℃にて40分間加熱した。加熱後、GC−MSによってアクリルアミドを測定した。加熱する前、対照のポテトフレークは46ppbのアクリルアミドを含有していた。試験結果は、以下の表4に反映される。
【0074】
表12 アクリルアミド低下に対する塩化カルシウム溶液の強度の影響
【0075】
【表12】
【0076】
上記の結果を考えて、加工スナック食品、この場合、焼いて加工したポテトチップの製法にカルシウム塩を添加する試験を実施した。焼いて加工したポテトチップを作製する方法は、図3Bに示す工程から成る。パン生地調製工程35では、ポテトフレークを、水、カチオン/アニオン対(この場合、塩化カルシウム)及びその他成分と混ぜ合わせ、それを十分に混合してパン生地を形成する(本明細書では再び、用語「ポテトフレーク」は粒度にかかわりなく、乾燥ポテトフレーク、顆粒又は粉末の調製物すべてを包含することを意図する)。板状加工/切断工程36では、パン生地を平らにするシータにパン生地を通し、次いで個々の小片に切断する。調理工程37では、形成された小片を調理して特定の色及び水分にする。次いで、得られたチップを味付け工程38にて味付けし、包装工程39にて包装する。
【0077】
第1の試験では、加工したポテトチップを2バッチ用意し、表13で与えられるレシピに従って調理した;2つのバッチ間における唯一の差異は、試験バッチが塩化カルシウムを含有するということだった。双方のバッチで、先ず、乾燥成分を一緒に混合し、次いで各乾燥混合物に油を加え、混合した。塩化カルシウムはパン生地に加える前に水に溶解した。板状加工前のパン生地の水分は40〜45重量%だった。パン生地を板状にして厚さ0.020〜0.030インチの間にし、チップの大きさに切断し、焼いた。
【0078】
調理の後、ハンターのL−a−b尺度に従って、水分、油及び色を調べた。仕上げ製品におけるアクリルアミドのレベルを得るために試料を調べた。以下の表13は、これらの分析の結果を示す。
【0079】
表13 チップにおけるアクリルアミドに対するCaCl2の影響
【0080】
【表13】
【0081】
これらの結果が示すように、ほぼ1:125の塩化カルシウム対ポテトフレークの重量比でパン生地に添加した塩化カルシウムは、仕上げ製品に存在するアクリルアミドのレベルを有意に低下させ、最終的なアクリルアミドのレベルを1030ppbから160ppbに低下させた。従って、最終製品における油及び水の比率は、塩化カルシウムの添加に
よって影響を受けないと思われる。しかしながら、使用する量によっては、CaCl2は、製品の味、質感及び色に変化を起こしうることが言及される。
【0082】
アクリルアミドを低下させるために食品に添加される二価又は三価のカチオンのレベルは多数の方法によって表現することができる。商業的に許容できるようにするために、添加されるカチオンの量は、少なくとも20%アクリルアミド生成の最終レベルを低下させるのに十分であるべきである。さらに好ましくは、アクリルアミド生成のレベルは、35〜95%の範囲の量、低下させるべきである。一層さらに好ましくは、アクリルアミド生成のレベルは、50〜95%の範囲の量、低下させるべきである。異なった方式でこれを表現するには、添加すべき二価又は三価のカチオンの量を、食品に存在する遊離アスパラギンのモルに対するカチオンのモル比として与えることができる。二価又は三価のカチオンの、モル対遊離アスパラギンのモル比は、少なくとも1:5であるべきである。さらに好ましくは、該比は、少なくとも1:3、一層さらに好ましくは1:2である。現在好ましい実施態様では、カチオンのモル対アスパラギンのモル比は、約1:2〜1:1の間である。カルシウムより製品の味への影響が小さいマグネシウムの場合、カチオンのモル対アスパラギンのモル比は、2:1ほど高くてもよい。
【0083】
上記と同様の手順を用いたが、異なったレベルの還元糖及び種々の量の塩化カルシウムを含有する別のロットのポテトフレークによって追加の試験を行った。以下の表14では、0.8%の還元糖を有するチップは、上記で示した試験を再現している。
【0084】
表14 種々のレベルの還元糖に対するCaCl2及びカチオンレベルの影響
【0085】
【表14】
【0086】
この表で見られるように、CaCl2の添加は、添加したCaCl2対ポテトフレークの重量比が1:250より低くても一貫して最終製品のアクリルアミドのレベルを低下させる。
【0087】
この追加成分の付随的影響に対する調整が行われる限り、本明細書で開示される本発明と共に、二価又は三価のカチオンを形成するいかなる数の塩(又は前記別の方法、少なく
とも2つの価数を持つカチオンを生成する)も使用することができる。アクリルアミドのレベルを低下させる効果は、それと対を成すアニオンではなく二価又は三価のカチオンに由来すると思われる。価数以外のカチオン/アニオン対への限定は、食品における許容性、たとえば、安全性、溶解性、並びに味、色、匂い、外見及び質感に対するそれらの影響に関係する。たとえば、カチオンの有効性は直接、溶解性に関係する。酢酸アニオン又は塩化物アニオンを含む塩のような溶解性の高い塩は、最も好ましい添加物である。炭酸アニオン又は水酸化物アニオンを含む塩のような溶解性の低い塩は、リン酸若しくはクエン酸を添加することによって、又はデンプン系食品の細胞構造を破壊することによってさらに溶解性を高めることができる。示唆されるカチオンには、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、銅、及び亜鉛が挙げられる。これらのカチオンの好適な塩には、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸カルシウム、酢酸カルシウム、EDTAナトリウムカルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、ラクトビオン酸カルシウム、酸化カルシウム、プロピオン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ステロイル乳酸カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム6水和物、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ミョウバンアンモニウム、ミョウバンカリウム、ミョウバンナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化鉄、グルコン酸鉄、クエン酸アンモニウム鉄、ピロリン酸鉄、フマル酸鉄、乳酸鉄、硫酸鉄、塩化銅、グルコン酸銅、硫酸銅、グルコン酸亜鉛、酸化亜鉛、及び硫酸亜鉛が挙げられる。1以上の適当なカチオンの組み合わせによって必要条件は最も満たされると考えられているが、本発明の現在好ましい実施態様は塩化カルシウムを使用する。たとえば、カルシウム塩、特に塩化カルシウムのような多数の塩は相対的に安価であり、食品として一般に使用される。塩化カルシウムをクエン酸カルシウムと併用して使用することができ、それによってCaCl2の付随する味への影響を減らす。さらに、1以上のマグネシウム塩との併用でいかなる数のカルシウム塩も使用することができる。当業者は、必要とされる塩の特定の処方が、該当する食品及び最終製品の所望の特徴によって調整されることを理解するであろう。
【0088】
最終製品の特徴における変化、たとえば、色、味及び整合性における変化は、種々の手段によって調整することができることを理解すべきである。たとえば、ポテトチップにおける色の特徴は、出発物質において糖類の量を調節することによって調整することができる。風味の特徴の一部は、最終製品に種々の風味剤を添加することによって変えることができる。製品の物理的質感は、たとえば、膨脹剤又は種々の乳化剤の添加によって調整することができる。
パン生地作製における作用剤の併用
本発明の上記詳細な実施態様では、二価若しくは三価のカチオン又は数種のアミノ酸のうちの1つのような単一の作用剤によるアクリルアミドの低下に着目し、調理されたスナックで見出されるアクリルアミドの量を低下させた。本発明のその他の実施態様には、たとえば、塩化カルシウムとその他の作用剤のような種々の作用剤の併用が関与し、チップの風味を大きく変えることなく、アクリルアミドの大きな低下を提供する。
I.塩化カルシウム、クエン酸、リン酸の併用
本発明は、カルシウムイオンが酸性pHにてアクリルアミド含量をさらに効果的に低下させることを見出した。以下に示す試験において、酸の存在下での塩化カルシウムの添加を検討し、酸のみの試料と比較した。
【0089】
表15 アクリルアミドに対する、リン酸又はクエン酸とCaCl2との併用の影響
【0090】
【表15】
【0091】
上記表15に見られるように、リン酸のみの添加はアクリルアミド形成を73%低下させたが、CaCl2と酸の添加はアクリルアミドのレベルを93%落とした。図5は、これらの結果をグラフの形態で示す。この図では、対照のアクリルアミドのレベル502は極めて高い(1191)が、リン酸のみを添加した場合、有意に落ち、塩化カルシウムと酸を添加した場合、さらに低い。一方、種々のチップにおける水分レベル504は、作用剤を添加したチップではやや低いが、同一範囲内にとどまった。従って、塩化カルシウムと酸はアクリルアミドを効果的に低下させることができることが実証された。
【0092】
ジャガイモのパン生地への添加物として塩化カルシウムとリン酸を用いてさらなる試験を行った。ポテトフレークの0、0.45及び0.90重量%に相当する3種の異なったレベルの塩化カルシウムを使用した。フレークの0、0.05又は0.1重量%に相当する3種の異なったレベルのリン酸と、これらを組み合わせた。さらに、これらのレベルの組み合わせすべてを表すわけではないが、0.2、1.07及び2.0%に相当するフレーク中の3種のレベルの還元糖を調べた。各試験物をパン生地に混合し、形状を整え、調理してポテトチップを形成した。油揚げ温度、揚げ時間及び板状の厚さは、それぞれ、305F、16秒及び0.64mmで一定に維持した。明瞭にするために、結果を3つの分かれた表(16A、16B及び16C)で提示し、各表は、ポテトフレーク中の糖のレベルの1つを示す。さらに、塩化カルシウム又はリン酸を含まない対照が左側にあるように試験を配置する。表の範囲内で、塩化カルシウム(CC)の各レベルを一緒にまとめ、リン酸(PA)における変動がそれに続く。
【0093】
表16A アクリルアミドのレベルに対するCaCl2/リン酸の影響−0.2%の還元糖
【0094】
【表16A】
【0095】
この試験で最低レベルの還元糖では、生成されるアクリルアミドのレベルは通常、期待どおり、さらに低い範囲であることが分かる。糖のこのレベルでは、塩化カルシウム単独でアクリルアミドのレベルを対照の1/4未満まで落とし、リン酸の添加で得られる追加的利益は少なかった。以下の表で示す、中間的な範囲内での還元糖では、塩化カルシウムの組み合わせは、対照の367ppbからセル12の69ppbにアクリルアミドのレベルを低下させた。この低下の一部が、セル12のやや高い水分含量(2.77対対照の2.66)に起因する可能性があるが、塩化カルシウム及びリン酸のレベルを半分にしてもアクリルアミドを有意に低下させることによってさらなる支持が示される。これはセル6で示され、アクリルアミドの有意な減少及び対照よりも低い水分含量を有する。
【0096】
表16B アクリルアミドのレベルに対するCaCl2/リン酸の影響−1.07%の還元糖
【0097】
【表16B】
【0098】
表16C アクリルアミドのレベルに対するCaCl2/リン酸の影響−2.07%の還元糖
【0099】
【表16C】
【0100】
これら3つの表から分かるように、アクリルアミドのレベルを低下させるのに必要な塩化カルシウムとリン酸のレベルは、期待したとおり、還元糖のレベルが上昇するにつれて高くなる。図6は、上記3つの表に相当するグラフであり、棒602はアクリルアミドのレベルを示し、点604は水分レベルを示す。結果は再び、ジャガイモで利用される還元糖のレベルによって群に分け、各群内では、最初の1つとして下方への一般的な動きがあり、次いで、幾つかのアクリルアミド低減剤を用いて、アクリルアミドのレベルを低下させる。
【0101】
数日後、上記3つの表と同じ手順で、同じ3種のレベルの塩化カルシウム及び4種のレベルのリン酸(0、0.025、0.05及び0.10%)と共に、1.07%の還元糖
のポテトフレークのみを用いて別の試験を行った。結果は表17にて以下で示す。図7は、表の結果をグラフで示し、アクリルアミドレベルは棒702として表現し、左側の表示で目盛りを合わせ、水分比率は点704として表現し、図の右側の表示で目盛りを合わせた。塩化カルシウムの量が増えるにつれて、たとえば、表全体を左から右に移動するにつれて、アクリルアミドは減少する。同様に、各レベルの塩化カルシウムについては、たとえば、カルシウムの1レベルの範囲内で左から右へ移動すると、アクリルアミドのレベルは一般に低下する。
【0102】
表17 アクリルアミドのレベルに対するCaCl2/リン酸の影響−1.07%の還元糖
【0103】
【表17】
【0104】
II.システインを伴った塩化カルシウム/クエン酸
本発明によって行われたコーンチップにおける以前の試験の一部では、所望のレベルにアクリルアミドのレベルをもたらすのに必要な塩化カルシウム及びリン酸の量は、不愉快な風味を生じた。チップにおいてアクリルアミドのレベルを低くすることが示されているシステインのジャガイモパン生地への添加が、アクリルアミドのレベルを低く保持しつつ、塩化カルシウム及び酸の量を許容可能な味レベルに低くできるかどうかを明らかにするために、以下の試験を計画した。この試験では、(i)第1の実験で0.106%のCaCl2、0.084%のクエン酸及び0.005%のL−システイン、(ii)第2の実験で0.106%のCaCl2、0.084%のクエン酸、しかし、システインなし、並びに第3の実験で0.053%のCaCl2、0.042%のクエン酸及び0.005%のL−システインの比率にて、3種の作用剤をマサ(パン生地)に加えた。各実験を2回設定し、再び行い、双方の結果を以下に示した。マサは約50%が水分なので、これらの比を固形物のみにすれば、その濃度は約2倍である。さらに、各試験では、試行の一部は、もとのチップ重量の約10%のナチョチーズで味付けした。この試験の結果を以下の表18に示す。この表では、チップの各カテゴリー、たとえば、普通のチップ、対照について、最初に試行した実験の結果をアクリルアミド#1に与え、第2の実験の結果をアクリルアミド#2として与え2つの平均をアクリルアミド平均として与えた。第1の実験で1つの水分レベルのみを利用し、値を示した。
【0105】
表18 コーンチップにおけるアクリルアミドに対するCaCl2/クエン酸を伴ったシステインの影響
【0106】
【表18】
【0107】
0.106%のCaCl2と0.084%のクエン酸を組み合わせた場合、システインの添加はアクリルアミドの生成をおよそ半分に減らす。ナチョで味付けしたチップでは、このセットの試験では、システインの添加はアクリルアミドのさらなる低下を提供しないと思われたが、塩化カルシウムとクエン酸だけでアクリルアミドの生成を80.5ppbから54ppbに減らした。
【0108】
図8は、上記の表と同じデータをグラフで提示する。実験が行われた各種のチップ(たとえば、普通のチップ、対照)については、2本の棒802がアクリルアミドの結果を示す。第1の実験のアクリルアミドの結果802aは各種チップの左に示し、第2の実験のアクリルアミドの結果802bは右に示す。双方のアクリルアミドの結果は、グラフの左の表示に目盛りを合わせる。単一の水分レベルは、点804として示し、アクリルアミドのグラフに重ね、グラフの右での表示に目盛りを合わせる。
【0109】
上記試験が完了した後、2つの異なったレベルの還元糖を含有するポテトフレークを用いて加工したポテトチップを同様に調べた。コーンチップで使用した濃度を加工したポテトチップに当てはめるには、ポテトフレーク、ジャガイモデンプン、乳化剤及び添加した糖の合計を固形物とみなした。固形物を基にしたコーンチップと同じ濃度が得られるようにCaCl2、クエン酸及びシステインの量を調整した。しかしながら、この試験では、高いレベルの塩化カルシウム及びクエン酸を使用した場合、高いレベルのシステインも使用した。さらに、試験の還元糖の低い部分にて、システインの有無でリン酸と組み合わせた塩化カリウムの使用と比較した。結果を表19に示す。
【0110】
これらから我々は、1.25%の還元糖のポテトフレークで、塩化カルシウム、クエン酸及びシステインの併用は、上記第1レベルにてアクリルアミドの形成を1290ppbから対照図の半分未満である594ppbに低下させたことを見ることができる。作用剤のさらに高いレベルの組み合わせを使用することは、アクリルアミドの形成を対照量の半
分未満、306ppbに低下させた。
【0111】
同一のポテトフレークを用いて、リン酸と塩化カルシウムだけでアクリルアミドの形成を同じ1290ppbから366ppbに低下させたが、リン酸と塩化カルシウムに添加した少量のシステインは、アクリルアミドをさらに188ppbに低下させた。
【0112】
最終的に、2%の還元糖を有するポテトフレークでは、塩化カルシウム、クエン酸及びシステインの添加は、アクリルアミドの形成を1420ppbから半分未満の665ppbに低下させた。
【0113】
表19 ポテトチップにおけるアクリルアミドのレベルに対するCaCl2/酸を伴ったシステインの影響
【0114】
【表19】
【0115】
図9は、この実験の結果をグラフで実証する。結果は先ず還元糖のレベルで群分けし、次いで、添加したアクリルアミド低減剤の量で群分けして示す。前のグラフと同様に、アクリルアミドのレベルを表す棒902は、グラフの左側の表示に従って目盛りを合わせ、水分レベルを表す点904は、グラフの右側の表示に従って目盛りを合わせる。
【0116】
上記実験は、アクリルアミド低減剤は別々に使用されてもよいが、組み合わせて追加の利益を提供できることを示している。この追加の利益を用いて、食品中でのアクリルアミドのますます低下したレベルを達成することができ、又はそれら食品の質感の嗜好に有意な変化を生じることなく、アクリルアミドの低いレベルを達成することができる。示された特定の実施態様は、クエン酸又はリン酸と組み合わせた塩化カルシウム及びシステインと、組み合わせたこれらを開示しているが、当業者は、組み合わせには、その他のカルシウム塩、そのほかの二価又は三価のカチオンの塩、その他の食品等級の酸、並びに仕上げた食品中でアクリルアミドを低下させることが示されたその他の任意のアミノ酸を使用すればよいことを実感するであろう。さらに、これは、ポテトチップ及びコーンチップで実
証されているが、当業者は、たとえば、クッキーやクラッカー等のようなアクリルアミドの形成の対象となるその他の加工食品で、作用剤の同一の組み合わせを使用できることを理解するであろう。
ポテトフレークの製造に添加されるアクリルアミドを減少させる作用剤
塩化カルシウムと酸の添加は、ポテトフレークと共に製造される、揚げた及び焼いたスナック食品においてアクリルアミドを低下させることが示されている。酸の存在はpHを低下させることによってその効果を達成すると考えられている。塩化カルシウムが、遊離アスパラギンからのカルボキシル基の喪失、それに続くアミン基の喪失を妨害してアクリルアミド形成を妨害するのかどうかは判っていない。アミン基の喪失は、一般にスナックの脱水の終わりに向かって生じる高温を必要とすると思われる。カルボキシル基の喪失は水の存在下、低温で起きると考えられる。
【0117】
ポテトフレークは、一連の水及び蒸気の調理(従来)又は蒸気調理のみ(ジャガイモの暴露された表面からの浸出を減らす)のいずれかによって作製される。調理されたジャガイモは次いで、つぶされ、ドラムで乾燥される。これらのフレークから作製された製品は非常に高いレベルのアクリルアミドを獲得しうるが、フレークの分析は、フレークにおける非常に低いアクリルアミドのレベル(100ppb未満)を示している。
【0118】
酸によるパン生地pHの低下若しくはパン生地への塩化カルシウムの添加が、カルボキシル基の喪失を妨害し、次いで、フレーク製造工程間のこれら添加物の導入が、(a)カルボキシルの喪失を減らすのでスナック食品の脱水の間、アミンの喪失割合を減らす、又は(b)いかなるメカニズムであれ、妨害添加物がスナック食品に脱水されるパン生地中に上手く分布することを保証する、という仮説が立てられた。前者は、起きるのであれば、後者よりもアクリルアミドに対する大きな影響である可能性が高い。
【0119】
加工された食品でアクリルアミドの形成を抑える別の可能性のある添加物は、アスパラギナーゼである。アスパラギナーゼは、アスパラギンをアスパラギン酸とアンモニアに分解することが知られている。スライスしたジャガイモからポテトチップを作るのにこの酵素を利用することはできないが、ジャガイモ(食品成分)を調理し、つぶすことによってフレークを作る工程は、細胞壁を破壊し、アスパラギナーゼが作用する機会を提供する。好ましい実施態様では、食品等級のアスパラギナーゼとして純粋な形態で、アスパラギナーゼを食品成分に添加する。
【0120】
本発明者は以下のセットの実験を計画し、ポテトフレークによって作製される製品におけるアクリルアミドのレベルを低下することにおける、ポテトフレークの製造中に添加される種々の作用剤の有効性を検討した。
I.ポテトフレークを作製するのに使用される塩化カルシウム及びリン酸
このシリーズの試験は、ポテトフレークの製造中にCaCl2及びリン酸、もしくはCaCl2又はリン酸を添加した場合のアクリルアミドのレベル低下を評価するように計画された。試験はまた、これらの添加物が、パン生地を作製する後期にそれらが添加された場合と同じ効果を有するかどうかも扱った。
【0121】
この試験については、ジャガイモは20%の固形物及び1%の還元糖を含んだ。ジャガイモを16分間調理し、添加した成分とともにつぶした。バッチすべてに、13.7gの乳化剤及び0.4gのクエン酸を加えた。6バッチ中4つが、2つ(ジャガイモ固形物の0.2%及び0.4%)のレベル中の1つで添加したリン酸を有し、4バッチ中の3つに、2つ(ジャガイモ固形物重量の0.45%及び0.90%)のレベル中の1つでのCaCl2を加えた。ジャガイモを乾燥し、所定のサイズに粉砕した後、様々な測定を行い、各バッチをパン生地にした。パン生地は、4629gのポテトフレーク及びジャガイモデンプン、56gの乳化剤、162gの液体スクロース及び2300mLの水を用いた。さ
らに、フレーク製造中、リン酸又はCaCl2を添加しなかった2つのバッチのうち、パン生地として所定のレベルのこれら添加物を加えた双方のバッチを作った。パン生地は、厚さ0.64mmでロール状にして、小片に切断し、350°Fで20秒間揚げた。表20は、これら種々のバッチについての試験の結果を示す。
【0122】
表20 アクリルアミドのレベルに対するフレーク又はパン生地に添加したCaCl2/リン酸の影響
【0123】
【表20】
【0124】
上記の結果及び添付の図10のグラフから分かるように、アクリルアミドのレベルは、リン酸だけをフレーク調製物に添加した試験Cで最高であり、塩化カルシウムとリン酸を組み合わせて使用した場合、最低だった。
II.ポテトフレーク作製において使用されたアスパラギナーゼ
アスパラギナーゼは、アスパラギンをアスパラギン酸とアンモニアに分解する酵素である。アスパラギン酸はアクリルアミドを形成しないので、本発明者らは、アスパラギナーゼ処理は、ポテトフレークが加熱される際のアクリルアミドの形成を低下させるはずであると推論した。
【0125】
以下の試験を行った。金属製の乾燥鍋にて2gの標準ポテトフレークを35mLの水と
混合した。鍋にフタをして100℃にて60分間加熱した。冷却した後、5mLの水における250単位のアスパラギナーゼを添加し、アスパラギナーゼの量は計算した必要量よりも有意に高い。対照については、酵素なしの5mLの水とポテトフレークを混合した。アスパラギナーゼと共にポテトフレークを室温で1時間保持した。酵素処理の後、ポテトフレークのスラリーを60℃にて一晩乾燥した。乾燥したポテトフレークの入った鍋にフタをして、120℃にて40分間加熱した。ガスクロマトグラフィ、臭素化誘導体の質量分光計にてアクリルアミドを測定した。対照のフレークは、11,036ppbのアクリルアミドを含有したが、アスパラギナーゼ処理したフレークは117ppbのアクリルアミドを含有し、98%を超える低下だった。
【0126】
この第1の試験に続いて、酵素が有効であるためには、アスパラギナーゼの添加に先立ってポテトフレークと水を調理することが必要なのか否かを検討した。これを調べるために、以下の実験を行った。
【0127】
4つの方法のうちの1つでポテトフレークを調製した。4つの群のそれぞれでは、2gのポテトフレークを35mLの水と混合した。対照の予備処理群では、(a)ポテトフレークと水を混合してペーストを形成した。(b)群では、高速でのバイオホモゲナイザーN133/1281−0で25mLの水によってポテトフレークを均質化した。(c)群では、ポテトフレークと水を混合し、フタをして60℃にて60分間加熱した。(d)群では、ポテトフレークと水を混合し、フタをして100℃にて60分間加熱した。各予備処理群、(a)、(b)、(c)及び(d)について、フレークを分割し、予備処理群の半分をアスパラギナーゼで処理し、残りの半分を、アスパラギナーゼを加えない対照とした。
【0128】
40mLの脱イオン水に1000単位を溶解することによってアスパラギナーゼ溶液を調製した。アスパラギナーゼは、Erwinia chrysanthemiに由来し、シグマA−2925 EC.3.5.1.1だった。試験ポテトフレークのスラリー(a)、(b)、(c)及び(d)のそれぞれに5mLのアスパラギナーゼ溶液を添加した。5mLの脱イオン水を対照のポテトフレークスラリー(a)に添加した。スラリーはすべて室温で1時間放置し、試験はすべて2回行った。ポテトフレークスラリーを含有するフタをしない鍋を60℃で一晩放置して乾燥させた。鍋にフタをした後、ポテトフレークスラリーを120℃にて40分間加熱した。ガスクロマトグラフィ、臭素化誘導体の質量分光計にてアクリルアミドを測定した。
【0129】
以下の表21に示すように、すべての予備処理について、アスパラギナーゼ処理は、98%を超えてアクリルアミドの形成を抑えた。酵素を添加する前、均質化も加熱もしなかったポテトフレークでは、アスパラギナーゼの有効性が高まった。ポテトフレークでは、さらに細胞構造を損傷する処理をすることなく、アスパラギンはアスパラギナーゼに接近可能である。とりわけ、ポテトフレークを処理するのに使用したアスパラギナーゼの量は、極めて過剰だった。ポテトフレークが1%のアスパラギンを含有するのであれば、2gのポテトフレークに125単位のアスパラギナーゼを1時間添加することは、酵素のおよそ50倍過剰である。
【0130】
表21 アスパラギンの有効性に対するポテトフレークの予備処理の影響
【0131】
【表21】
【0132】
ポテトフレークの製造中でのアスパラギナーゼの添加がフレークから作製される調理した製品でアクリルアミドの低下を提供するかどうか、及びフレークを作製するのに使用される、つぶしたジャガイモを酵素活性にとって好ましいpH(たとえば、pH=8.6)に緩衝化することがアスパラギナーゼの有効性を高めるかどうかを評価するために、別の試験を計画した。緩衝化は、4gの水酸化ナトリウムを1リットルの水に加えて10モルの溶液を形成した、水酸化ナトリウム溶液によって行った。
【0133】
2バッチのポテトフレークを対照とし、一方を緩衝化し、他方を緩衝化しなかった。追加の2バッチのポテトフレークにアスパラギナーゼを添加し、再び一方を緩衝化し、他方を緩衝化しなかった。アスパラギナーゼはシグマケミカルから入手し、水対酵素、8対1の比率で水と混合した。アスパラギナーゼを添加した2バッチについては、酵素を添加した後、つぶしたものをフタのある容器中で40分間保持して脱水をできるだけ抑え、およそ36℃で保持した。次いで、つぶしたものをドラム乾燥機で加工し、フレークを製造した。前に示した手順に従って、ポテトフレークを使用してジャガイモのパン生地を作製し、結果を以下の表22に示した。
【0134】
表22 ポテトチップにおけるアクリルアミドのレベルに対するアスパラギナーゼ及び緩衝化の影響
【0135】
【表22】
【0136】
表22に示すように、緩衝液なしでのアスパラギナーゼの添加は、仕上げたチップにおけるアクリルアミドの生成を768ppbから54ppbに減らし、減少率は93%だった。緩衝液の使用は、アクリルアミドの形成に所望の効果を有するとは思えなかった;むしろ、緩衝化された溶液の使用によって、対照及びアスパラギナーゼ実験の双方でさらに大量のアクリルアミドを形成することができた。それでも、アスパラギナーゼは、アクリ
ルアミドのレベルを1199ppbから111ppbに減らし、減少率は91%だった。図11は、表22の結果をグラフの形態で示す。前の図面のように、棒1002は、各実験についてのアクリルアミドのレベルを表し、グラフの左側の表示に従って目盛りを合わせ、点1104は、チップにおける水分レベルを表し、グラフの右側の表示に従って目盛りを合わせる。
【0137】
また、試料において試験を行い、遊離アスパラギンについてチェックし、酵素に活性があるかどうかを測定した。結果を表23にて以下に示す。
表23 酵素処理したフレークにおける遊離アスパラギンに関する試験
【0138】
【表23】
【0139】
緩衝化しなかった群では、アスパラギナーゼの添加によって遊離アスパラギンは1.71から0.061に減り、減少率は96.5%だった。緩衝化した群では、アスパラギナーゼの添加によって遊離アスパラギンは2.55から0.027に減り、減少率は98.9%だった。
【0140】
最後にモデル系にて、各群の試料フレークを評価した。このモデル系では、各試料からの少量のフレークを水と混合して、水に対しておよそ50%のフレークの溶液を形成した。この溶液を試験管にて120℃で40分間加熱した。次いで、アクリルアミドの形成について試料を分析し、結果を表24に示した。各カテゴリーについて2回行った結果を並べて示す。モデル系では、緩衝化していないフレークへのアスパラギナーゼの添加によってアクリルアミドは平均993.5ppbから83ppbに減り、減少率は91.7%だった。緩衝化したフレークへのアスパラギナーゼの添加によってアクリルアミドは平均889.5ppbから平均64.5ppbに減り、減少率は92.7%だった。
【0141】
表24 アクリルアミドに対するアスパラギナーゼのモデル系の影響
【0142】
【表24】
【0143】
揚げ油に添加したローズマリー抽出物
別の試験において、加工ポテトチップの揚げ油にローズマリー抽出物を添加した影響を調べた。この試験では、等しく加工したポテトチップを、添加物を有さない(対照)油又は、500、750、1,000若しくは1,500ppmの4つのうち1つで添加したローズマリー抽出物を有する油のいずれかで揚げた。以下の表25はこの試験の結果を与
える。
【0144】
表25 アクリルアミドに対するローズマリーの影響
【0145】
【表25】
【0146】
対照のチップにおけるアクリルアミドの平均レベルは1133.5ppbであった。500ppmのローズマリーの揚げ油への添加によってアクリルアミドは840ppbに減り、減少率は26%であったが、ローズマリーを750ppmに増やすと、アクリルアミドの形成はさらに775ppbに減り、減少率は31.6%だった。しかしながら、ローズマリーを1,000ppmに増やすと、影響を有さず、ローズマリーを1,500ppmに増やすと、アクリルアミドの形成を引き起こし、1608ppbに増え、増加率は41.9%だった。
【0147】
図12は、ローズマリー実験の結果をグラフで明らかにしている。前の例のように、棒1202はアクリルアミドのレベルを示し、グラフの左側の分割に目盛りを合わせ、点1204は、チップにおける水分量を示し、グラフの右側の分割に目盛りを合わせる。
【0148】
熱で加工された加工食品で使用することができるアクリルアミド低減剤の知見に開示された試験結果を加えてきた。二価及び三価のカチオン並びにアミノ酸は、熱で加工された加工食品におけるアクリルアミドの発生を減らすのに有効であることが示されてきた。これらの作用剤は個々に使用することができるが、互いに併用して、又はその有効性を高める酸と併用して使用することができる。作用剤の併用を利用して、単独の作用剤で達成できるものよりさらに、熱加工された食品におけるアクリルアミドの発生を下げることができ、又は、併用を利用して食品の味及び質感を過度に変えることなく低レベルのアクリルアミドを達成することができる。アスパラギナーゼは、加工食品における有効なアクリルアミド低減剤として調べられてきた。これらの作用剤は、加工食品のためのパン生地に添加した場合にだけ有効でありうるのではなく、製造中の中間産物、たとえば、乾燥ポテトフレーク又はその他の乾燥ジャガイモ製品にも作用剤を添加することができる。中間産物に添加された作用剤による利点は、パン生地に添加されたものと同様に有効でありうる。アクリルアミド形成に対する遊離チオールを有するアクリルアミド低減剤の影響
本発明の別の実施態様には、調理又は熱加工に先立ってスナック食品のパン生地に遊離チオール化合物を持つ低減剤を添加することによってアクリルアミドの生成を減らすことが関与する。本明細書で使用するとき、遊離チオール化合物は、遊離チオールを有するアクリルアミド低減剤である。前に考察したように、システインの遊離チオールはアクリルアミドの炭素二重結合と反応し、メイラード反応の阻害剤として作用することができると考えられている。
【0149】
遊離チオールがアクリルアミドの低下の原因でありうることを確認するために試験を行った。等モル基準にて5種の遊離チオール化合物を調製し、各化合物は、0.4%のアスパラギン(30.3ミリモル)及び0.8%のグルコース(44.4ミリモル)と共に、pH7.0を有する0.5Mリン酸ナトリウム緩衝液中で、1リットル当たり6.48ミリモルの濃度を有した。遊離チオール化合物を有さない対照試料も調製した。6種の溶液
を120℃にて40分間加熱した。次いで、アクリルアミドの濃度について溶液を測定した。結果を以下の表26に示す。
【0150】
表26 分解を介したアクリルアミドの減少に対する遊離チオール化合物の影響
【0151】
【表26】
【0152】
上記の実験は、アクリルアミドを減少させるのは遊離チオール基であることを裏付けている。遮断したアミノ基を有するN−アセチル−L−システインがシステインとほぼ同様に有効なので、システインの遊離アミノ基はアクリルアミドの減少に寄与しない。カルボキシル基を有さないN−アセチル−システアミンがアクリルアミドの減少でシステインとほぼ同様に有効なので、システインのカルボキシル基はアクリルアミドの減少に寄与しない。中間位でシステインを伴ったトリペプチドであるグルタチオンは、システインと同等であった。ジチオスレイトールはチオール基を2つ有するが、ジチオスレイトールによるアクリルアミドは、チオール基1つの化合物に類似した。ジチオスレイトールにおける2つのチオール基は反応してジスルフィドを形成する可能性があるので、ジチオスレイトールは、ほかのチオール含有化合物よりも等モル基準で有効ではなかった。
【0153】
上記表6によって例示されるような実験は、アクリルアミドの減少が、システインのような遊離チオールの添加された濃度にほぼ比例することを示した。しかしながら、システインのような遊離チオール化合物の添加による、最終製品の色、味及び質感のような特徴に対する付随的影響を考慮しなければならない。高レベルのシステインは、たとえば、最終製品において望ましくない異風味を付与しうる。従って、システインのような遊離チオール化合物の有効性を高める又は拡大する添加物が望ましく、そのような添加物は、より低い濃度のチオール化合物によって同じレベルのアクリルアミドの減少を可能とするからである。還元剤をシステインのような遊離チオール化合物に加えた場合、アクリルアミドの減少が強まることが発見されている。還元剤は、酸化還元化学において、電子供与体である化合物であることが知られ、酸化剤は電子受容体であることが知られている。
アクリルアミドの分解におけるシステイン+還元剤の影響
単純なモデル系を用いて、還元剤の添加による遊離チオール化合物の強化された有効性を調べることができる。pH7.0を有する0.5モルのリン酸ナトリウム緩衝液中で、遊離チオール(1.114ミリモルのシステイン)及びアクリルアミド(0.0352ミリモル)を含む対照試料溶液を調製した。溶液を120℃で40分間加熱した。添加したアクリルアミドの回収は21%だった。従って、還元剤を含まない対照試料でのアクリルアミド減少の量は79%だった。たとえ、システイン対アクリルアミドのモル比が30を
超えたとしても、アクリルアミドのすべてがシステインと反応するわけではなかった。
【0154】
次いで、遊離チオール化合物及び還元剤によって試験を行った。pH7.0を有する0.5モルのリン酸ナトリウム緩衝液中で、135ppmの遊離チオール化合物(1.114ミリモルのシステイン)、2500ppbのアクリルアミド(0.0352ミリモル)及び約305ppmの還元剤(1.35ミリモルの塩化第一スズ・2水和物)を含む溶液を調製した。120℃で40分間加熱した後、添加したアクリルアミドの回収は、4%未満であると測定された。従って、還元剤を含有する試料によるアクリルアミドの減少量は、96%を超え、遊離チオール単独、又は対照試料をさらに17%超えた。
アクリルアミドの分解におけるシステイン+酸化剤の影響
次いで、還元剤の代わりに酸化剤を添加することによって試験を行った。pH7.0を有する0.5モルのリン酸ナトリウム緩衝液中で、135ppmの遊離チオール化合物(1.114ミリモルのシステイン)、2500ppbのアクリルアミド(0.0352ミリモル)及び235ppmの酸化剤(1.35ミリモルのデヒドロアスコルビン酸)を含む溶液を調製した。120℃で40分間加熱した後、添加したアクリルアミドの回収は、約27%であると測定された。従って、酸化剤を含有する試料によるアクリルアミドの減少量は、約73%であり、システインの対照試料により達成される減少より少ない。従って、アクリルアミドの分解は酸化剤の添加によって悪化した。
【0155】
2500ng/mL又は2500ppbのアクリルアミドを有するアクリルアミド溶液と共にその他の酸化剤及び還元剤によってさらなる試験を行った。結果は、以下の表27に提供される。
【0156】
表27 アクリルアミドに対するシステインを伴った酸化剤及び還元剤の影響
【0157】
【表27】
【0158】
図13は、アクリルアミド低減剤への酸化剤又は還元剤の添加の理論化された影響をグ
ラフで説明する。理論に束縛されることなく、還元剤1304は、システインを還元されたチオール1306の形態に保持することによってシステインの有効性を高める又は拡大すると考えられている。上記で考察したように、システインの遊離チオールはアクリルアミドの二重結合と反応すると考えられている。デヒドロアスコルビン酸のような酸化剤1302は、システインのチオール1306を不活性のシステインのジスルフィド(シスチン)1308に変換し得る。本発明の実施態様の1つでは、約+0.2〜−0.2ボルトの間の標準的な還元電位(E°)を有する還元剤が使用される。
ポテトフレークによる還元剤を伴ったチオールの向上した効果
ポテトフレークの存在下、還元剤の有無にて遊離チオールによるアクリルアミドの減少を比較するために試験を行った。3mLの水と混合された3gのポテトフレークを有する6本のバイアルを用意した。800ppm、400ppm、200ppm及び100ppmの濃度(μgのシステイン/gのポテトフレーク)にてシステインをバイアルに加えた。遊離チオール源の可能性があるカゼインを1%のレベルでバイアルに加えた。6本の試料をそれぞれ120℃にて40分間加熱した。次いで、アクリルアミドの濃度について溶液を測定した。結果を以下の表28に示す。
【0159】
表28 還元剤なしでのアクリルアミドに対する種々の濃度レベルの影響
【0160】
【表28】
【0161】
データは再び、システインの濃度が高くなるにつれて、アクリルアミドの減少も大きくなることを裏付けている。上記試験はまた、1%のカゼインは還元剤なしではアクリルアミドを減少させないことも示している。
【0162】
上記表27に示すように、亜硫酸ナトリウム(還元剤)は、添加したアクリルアミドを減少させるシステインの有効性を高め、遊離チオール又は対照試料をさらに18%超えた。ポテトフレークでアクリルアミドのレベルを低下させることにおけるシステイン及びカゼインの有効性に対する亜硫酸ナトリウムの影響を定めるために試験を行った。3mLの水と混合された3gのポテトフレークを有する5本のバイアルを用意した。400ppm(μgシステイン/ポテトフレーク)の濃度でシステインを2本のバイアルに加えた。カゼインは1%のレベルでバイアル1本に加えた。483ppm(μg亜硫酸ナトリウム/gポテトフレーク)にて亜硫酸ナトリウムを、カゼインのバイアル及びシステインのバイアルのうちの1本に加えた。試料を120℃にて40分間加熱した。次いで、アクリルアミドの濃度について溶液を測定した。結果を以下の表29に示す。
【0163】
表29 還元剤なしでのポテトフレークのアクリルアミドの減少に対する種々の濃度レベルの影響
【0164】
【表29】
【0165】
表28は、1%のカゼインの添加は、還元剤なしではポテトフレークにおけるアクリルアミドのレベルを低下させることができなかったことを示している。しかしながら、表29は、還元剤(483ppmの亜硫酸ナトリウム)の添加が、亜硫酸ナトリウム単独よりもさらに10%のアクリルアミドの減少を生じることを明らかにしている。
【0166】
チオール及び還元剤は、非ポテトフレークの溶液よりもポテトフレークの試料(表28及び29)の方がアクリルアミドのレベルを低下させることにおける有効性が低かった。これを説明する、可能性のある理由が幾つか存在する。たとえば、アクリルアミドは、非ポテトフレーク試料では添加したが、ポテトフレーク試料では形成されなければならなかった。従って、アクリルアミドの形成は、おそらく分解よりも重要である。さらに、ポテトフレークについては条件が最適化されなかった。ポテトフレークのpHは、pH7に調整されなかったが、pH7では、システインのアクリルアミドとの反応性が高まる。
【0167】
実施態様の1つでは、遊離チオール化合物1306は、システイン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−システアミン、還元グルタチオン、ジチオスレイトール及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。実施態様の1つでは、還元剤1304は、塩化第一スズ・2水和物、亜硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸)、アスコルビン酸誘導体の塩、これらの鉄、亜鉛、第一鉄イオン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0168】
本発明の利点の1つは、遊離チオール化合物を還元剤と混合した場合、さらに少ない遊離チオールを使用することによって同一のアクリルアミドの減少を達成できることである。従って、望ましくない異風味を抑えること又は除くことができる。いかなるパン生地ベースのスナック食品においても遊離チオール化合物と還元剤を用いてアクリルアミドの減少を達成することができる。本発明の別の利益は、一部の還元剤に関連する固有の栄養的利益である。たとえば、アスコルビン酸は一般にビタミンCとして知られている。
【0169】
幾つかの実施態様を参照して本発明を特に示し、説明してきたが、本発明の精神及び範
囲から逸脱することなく、遊離チオールと還元剤の添加物の使用による熱加工した食品におけるアクリルアミドの減少への種々のその他のアプローチが行われてもよいことが当業者によって理解されるであろう。たとえば、ジャガイモ及びコーンの製品に関連して工程を開示してきたが、大麦、小麦、ライ麦、コメ、カラス麦、雑穀及びその他のデンプン系穀類から作られる食品、並びにアスパラギン及び還元糖を含むその他の食品、たとえば、サツマイモ、タマネギ及びその他の野菜の加工にも該工程を使用することができる。さらに、工程は、ポテトチップ及びコーンチップで明らかにされたが、多数のその他の加工食品、たとえば、その他の種類のスナックチップ、シリアル、クッキー、クラッカー、ハードプレッツェル、パン及びロールパン、並びに肉の唐揚げのためのパン粉付けの加工に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】アスパラギンとグルコースを出発とするアクリルアミド形成の推定される経路の概略を示す反応機構。
【図2】生のジャガイモ貯蔵物から揚げたポテトフライを作るための周知の従来技術の方法を示すフローチャート。
【図3A】本発明の2つの別々の実施態様に従って加工スナック食品を作る方法を示すフローチャート。
【図3B】本発明の2つの別々の実施態様に従って加工スナック食品を作る方法を示すフローチャート。
【図4】システインとリジンを加えた一連の試験で見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図5】CaCl2をリン酸又はクエン酸と組み合わせた一連の試験で見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図6】種々のレベルの還元糖を有するポテトフレークにCaCl2及びリン酸を加えた一連の試験で見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図7】ポテトフレークにCaCl2及びリン酸を加えた一連の試験で見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図8】コーンチップのためのミックスにCaCl2及びクエン酸を加えた一連の試験で見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図9】システイン、塩化カルシウム、及びリン酸又はクエン酸のいずれかで加工されたポテトチップで見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図10】フレークを作る工程又はチップを加工する工程に塩化カルシウム及びリン酸を加えた場合のポテトチップで見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図11】ポテトチップにおけるアクリルアミドのレベルに対するアスパラギナーゼ及び緩衝化の影響を示すグラフ。
【図12】ローズマリーを含有する油で揚げたポテトチップで見出されたアクリルアミドのレベルを示すグラフ。
【図13】遊離チオールを有するアクリルアミド低減剤への酸化剤又は還元剤の添加の影響を示すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離アスパラギンと単糖とを含有する加工食品の熱加工によって生じるアクリルアミドの量を減らす方法であって、
(a)熱加工される食物用のデンプン系パン生地に遊離チオール化合物を添加する工程と、
(b)前記デンプン系パン生地に還元剤を添加する工程と、
(c)前記食品を熱で加工する工程とを備える方法。
【請求項2】
前記添加工程a)及びb)が、前記還元剤を含まずに前記遊離チオールと共に作製された同一の熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルよりも低い、前記熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルを生じるのに十分である量で、前記遊離チオール化合物及び前記還元剤を添加する請求項1の方法。
【請求項3】
工程a)における前記遊離チオールが、第1のチオール濃度をさらに含み、前記熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルが、前記還元剤を含まずに前記第1の濃度での前記遊離チオールで作製された同一の熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルより低い請求項1の方法。
【請求項4】
前記添加工程a)及びb)が、前記還元剤を含まずに前記遊離チオールと共に作製された同一の熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルよりも少なくともさらに5パーセント低い、前記熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルを生じるのに十分である量で、前記遊離チオール化合物及び前記還元剤を添加する請求項1の方法。
【請求項5】
前記遊離チオール化合物が、システイン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−システアミン、還元グルタチオン、ジ−チオスレイトール、カゼイン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1の方法。
【請求項6】
前記還元剤が、塩化第一スズ・2水和物、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸)、アスコルビン酸誘導体の塩、これらの鉄、亜鉛、第一鉄イオン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1の方法。
【請求項7】
前記遊離チオール化合物がシステインを含み、前記還元剤がアスコルビン酸を含む請求項1の方法。
【請求項8】
前記還元剤が、約+0.2〜約−0.2ボルトの間の標準的な還元電位を含む請求項1の方法。
【請求項9】
工程b)の前記デンプン系パン生地における前記還元剤が2,000ppm未満の濃度で存在する請求項1の方法。
【請求項10】
前記デンプン系パン生地が、ジャガイモ、トウモロコシ、大麦、小麦、ライ麦、コメ、カラス麦及び雑穀から成る群から選択されるデンプン成分を含む請求項1の方法。
【請求項11】
前記熱加工された食品が加工されたポテトチップを含む請求項1の方法。
【請求項12】
前記熱加工された食品が加工されたコーンチップを含む請求項1の方法。
【請求項13】
前記熱加工された食品が朝食用シリアルを含む請求項1の方法。
【請求項14】
前記熱加工された食品がクラッカーを含む請求項1の方法。
【請求項15】
前記熱加工された食品がクッキーを含む請求項1の方法。
【請求項16】
前記熱加工された食品がハードプレッツェルを含む請求項1の方法。
【請求項17】
前記熱加工された食品がパン製品を含む請求項1の方法。
【請求項18】
請求項1の方法によって製造される熱加工した食品。
【請求項19】
加工ポテトチップを調製する方法であって、
a)ポテトフレーク、水、遊離チオール化合物及び還元剤を含むパン生地を調製する工程(その際、前記パン生地の熱加工によって生じるアクリルアミドの量を所定のレベルに低下させるのに十分な量で前記遊離チオール化合物及び前記還元剤を加える)と、
b)前記混合物を板状に加工し、切断して小片を形成する工程と、
c)前記切断された小片を熱加工してポテトチップを形成する工程とを備える方法。
【請求項20】
前記所定のレベルが、同一ではあるが、前記還元剤を含まない方法によって調製されたポテトチップで生じるアクリルアミドのレベルより低い請求項19の方法。
【請求項21】
前記所定のレベルが、同一ではあるが、前記還元剤を含まない方法によって調製されたポテトチップで生じるアクリルアミドのレベルより少なくともさらに5パーセント低い請求項19の方法。
【請求項22】
前記遊離チオール化合物が、システイン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−システアミン、還元グルタチオン、ジチオスレイトール、カゼイン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項19の方法。
【請求項23】
前記還元剤が、塩化第一スズ・2水和物、亜硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸)、アスコルビン酸誘導体の塩、これらの鉄、亜鉛、第一鉄イオン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項19の方法。
【請求項24】
前記遊離チオール化合物がシステインを含み、前記還元剤がアスコルビン酸を含む請求項19の方法。
【請求項25】
前記還元剤が、約+0.2〜約−0.2ボルトの間の標準的な還元電位を含む請求項19の方法。
【請求項26】
工程a)の前記パン生地における前記還元剤が2,000ppm未満の濃度で存在する請求項19の方法。
【請求項27】
前記熱加工工程c)が焼くことを含む請求項19の方法。
【請求項28】
前記熱加工工程c)が揚げることを含む請求項19の方法。
【請求項29】
請求項19の方法によって製造される加工ポテトチップ。
【請求項30】
ポテトチップを調製する方法であって、
a)生のジャガイモを薄く切ってジャガイモ細片を形成する工程と、
b)遊離チオール化合物と還元剤とを有する溶液で前記ジャガイモ細片をすすぎ、前記ポテトチップにおけるアクリルアミドのレベルを所定のレベルに低下させる工程と、
c)前記ジャガイモ細片を熱加工してポテトチップを形成する工程とを備える方法。
【請求項31】
前記所定のレベルが、同一ではあるが、前記還元剤を含まない方法によって調製されたポテトチップで生じるアクリルアミドのレベルより低い請求項30の方法。
【請求項32】
前記所定のレベルが、同一ではあるが、前記還元剤を含まない方法によって調製されたポテトチップで生じるアクリルアミドのレベルより少なくともさらに5パーセント低い請求項30の方法。
【請求項33】
工程b)における前記遊離チオール化合物が、システイン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−システアミン、還元グルタチオン、ジ−チオスレイトール、カゼイン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項30の方法。
【請求項34】
工程b)における前記還元剤が、塩化第一スズ・2水和物、亜硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸)、アスコルビン酸誘導体の塩、これらの鉄、亜鉛、第一鉄イオン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項30の方法。
【請求項35】
工程b)における前記還元剤が、約+0.2〜約−0.2ボルトの間の標準的な還元電位を含む請求項30の方法。
【請求項36】
前記すすぎ工程b)が、前記還元剤なしで作製された同じ熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルよりも低い、前記熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルを下げる請求項30の方法。
【請求項37】
前記すすぎ工程b)が、同一ではあるが、前記還元剤を含まない方法で調製されたポテトチップで生じるアクリルアミドのレベルより少なくともさらに5%低くアクリルアミドの最終レベルを下げる請求項30の方法。
【請求項38】
前記熱加工工程c)が焼くことを含む請求項30の方法。
【請求項39】
前記熱加工工程c)が揚げることを含む請求項30の方法。
【請求項40】
請求項30の方法によって製造されるポテトチップ。
【請求項1】
遊離アスパラギンと単糖とを含有する加工食品の熱加工によって生じるアクリルアミドの量を減らす方法であって、
(a)熱加工される食物用のデンプン系パン生地に遊離チオール化合物を添加する工程と、
(b)前記デンプン系パン生地に還元剤を添加する工程と、
(c)前記食品を熱で加工する工程とを備える方法。
【請求項2】
前記添加工程a)及びb)が、前記還元剤を含まずに前記遊離チオールと共に作製された同一の熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルよりも低い、前記熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルを生じるのに十分である量で、前記遊離チオール化合物及び前記還元剤を添加する請求項1の方法。
【請求項3】
工程a)における前記遊離チオールが、第1のチオール濃度をさらに含み、前記熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルが、前記還元剤を含まずに前記第1の濃度での前記遊離チオールで作製された同一の熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルより低い請求項1の方法。
【請求項4】
前記添加工程a)及びb)が、前記還元剤を含まずに前記遊離チオールと共に作製された同一の熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルよりも少なくともさらに5パーセント低い、前記熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルを生じるのに十分である量で、前記遊離チオール化合物及び前記還元剤を添加する請求項1の方法。
【請求項5】
前記遊離チオール化合物が、システイン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−システアミン、還元グルタチオン、ジ−チオスレイトール、カゼイン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1の方法。
【請求項6】
前記還元剤が、塩化第一スズ・2水和物、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸)、アスコルビン酸誘導体の塩、これらの鉄、亜鉛、第一鉄イオン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1の方法。
【請求項7】
前記遊離チオール化合物がシステインを含み、前記還元剤がアスコルビン酸を含む請求項1の方法。
【請求項8】
前記還元剤が、約+0.2〜約−0.2ボルトの間の標準的な還元電位を含む請求項1の方法。
【請求項9】
工程b)の前記デンプン系パン生地における前記還元剤が2,000ppm未満の濃度で存在する請求項1の方法。
【請求項10】
前記デンプン系パン生地が、ジャガイモ、トウモロコシ、大麦、小麦、ライ麦、コメ、カラス麦及び雑穀から成る群から選択されるデンプン成分を含む請求項1の方法。
【請求項11】
前記熱加工された食品が加工されたポテトチップを含む請求項1の方法。
【請求項12】
前記熱加工された食品が加工されたコーンチップを含む請求項1の方法。
【請求項13】
前記熱加工された食品が朝食用シリアルを含む請求項1の方法。
【請求項14】
前記熱加工された食品がクラッカーを含む請求項1の方法。
【請求項15】
前記熱加工された食品がクッキーを含む請求項1の方法。
【請求項16】
前記熱加工された食品がハードプレッツェルを含む請求項1の方法。
【請求項17】
前記熱加工された食品がパン製品を含む請求項1の方法。
【請求項18】
請求項1の方法によって製造される熱加工した食品。
【請求項19】
加工ポテトチップを調製する方法であって、
a)ポテトフレーク、水、遊離チオール化合物及び還元剤を含むパン生地を調製する工程(その際、前記パン生地の熱加工によって生じるアクリルアミドの量を所定のレベルに低下させるのに十分な量で前記遊離チオール化合物及び前記還元剤を加える)と、
b)前記混合物を板状に加工し、切断して小片を形成する工程と、
c)前記切断された小片を熱加工してポテトチップを形成する工程とを備える方法。
【請求項20】
前記所定のレベルが、同一ではあるが、前記還元剤を含まない方法によって調製されたポテトチップで生じるアクリルアミドのレベルより低い請求項19の方法。
【請求項21】
前記所定のレベルが、同一ではあるが、前記還元剤を含まない方法によって調製されたポテトチップで生じるアクリルアミドのレベルより少なくともさらに5パーセント低い請求項19の方法。
【請求項22】
前記遊離チオール化合物が、システイン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−システアミン、還元グルタチオン、ジチオスレイトール、カゼイン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項19の方法。
【請求項23】
前記還元剤が、塩化第一スズ・2水和物、亜硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸)、アスコルビン酸誘導体の塩、これらの鉄、亜鉛、第一鉄イオン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項19の方法。
【請求項24】
前記遊離チオール化合物がシステインを含み、前記還元剤がアスコルビン酸を含む請求項19の方法。
【請求項25】
前記還元剤が、約+0.2〜約−0.2ボルトの間の標準的な還元電位を含む請求項19の方法。
【請求項26】
工程a)の前記パン生地における前記還元剤が2,000ppm未満の濃度で存在する請求項19の方法。
【請求項27】
前記熱加工工程c)が焼くことを含む請求項19の方法。
【請求項28】
前記熱加工工程c)が揚げることを含む請求項19の方法。
【請求項29】
請求項19の方法によって製造される加工ポテトチップ。
【請求項30】
ポテトチップを調製する方法であって、
a)生のジャガイモを薄く切ってジャガイモ細片を形成する工程と、
b)遊離チオール化合物と還元剤とを有する溶液で前記ジャガイモ細片をすすぎ、前記ポテトチップにおけるアクリルアミドのレベルを所定のレベルに低下させる工程と、
c)前記ジャガイモ細片を熱加工してポテトチップを形成する工程とを備える方法。
【請求項31】
前記所定のレベルが、同一ではあるが、前記還元剤を含まない方法によって調製されたポテトチップで生じるアクリルアミドのレベルより低い請求項30の方法。
【請求項32】
前記所定のレベルが、同一ではあるが、前記還元剤を含まない方法によって調製されたポテトチップで生じるアクリルアミドのレベルより少なくともさらに5パーセント低い請求項30の方法。
【請求項33】
工程b)における前記遊離チオール化合物が、システイン、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−システアミン、還元グルタチオン、ジ−チオスレイトール、カゼイン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項30の方法。
【請求項34】
工程b)における前記還元剤が、塩化第一スズ・2水和物、亜硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、イソアスコルビン酸(エリトルビン酸)、アスコルビン酸誘導体の塩、これらの鉄、亜鉛、第一鉄イオン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項30の方法。
【請求項35】
工程b)における前記還元剤が、約+0.2〜約−0.2ボルトの間の標準的な還元電位を含む請求項30の方法。
【請求項36】
前記すすぎ工程b)が、前記還元剤なしで作製された同じ熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルよりも低い、前記熱加工食品におけるアクリルアミドの最終レベルを下げる請求項30の方法。
【請求項37】
前記すすぎ工程b)が、同一ではあるが、前記還元剤を含まない方法で調製されたポテトチップで生じるアクリルアミドのレベルより少なくともさらに5%低くアクリルアミドの最終レベルを下げる請求項30の方法。
【請求項38】
前記熱加工工程c)が焼くことを含む請求項30の方法。
【請求項39】
前記熱加工工程c)が揚げることを含む請求項30の方法。
【請求項40】
請求項30の方法によって製造されるポテトチップ。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−521439(P2008−521439A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544461(P2007−544461)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/043302
【国際公開番号】WO2006/076084
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(500208519)フリト−レイ ノース アメリカ インコーポレイテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】FRITO−LAY NORTH AMERICA,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/043302
【国際公開番号】WO2006/076084
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(500208519)フリト−レイ ノース アメリカ インコーポレイテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】FRITO−LAY NORTH AMERICA,INC.
【Fターム(参考)】
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