アジュバント活性を有する複合体
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー、及び(i)病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、又は(ii)ガンに対する薬理学的活性を有する物質、又は(iii)抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質を含む複合体は、病原生物又はガンに対する免疫を誘発すること及び/又は治療すること、そして抗原又は免疫原に対する免疫を誘発するために有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
イントロダクション
本発明は、アジュバント特性を有する複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
病原生物への曝露に対する防御免疫は、免疫応答の2つの異なるアームの統合によって達成される。それらは、自然応答及び抗原特異的(適応とも呼ばれる)応答である。自然免疫応答は、侵入する病原体からの幅広いキューを検出及び応答することによって、感染の後直ぐ(数分以内)に働く。対照的に、適応免疫応答は、効果的になるために時間を要するが(2週間まで)、それは、病原体の完全な排除及び免疫記憶の生成のために必要である優れた抗原特異性を提供する。自然免疫系による病原体の抗原に独立的な認識は、免疫エフェクター及び制御機構の即座の可動化へ導き、宿主に3つの重要なサバイバルアドバンテージ(survival advantages)を提供する:
(i)免疫応答(自然及び適応性の両方)の迅速な開始、及び抗原認識のために必要な炎症及び共刺激環境(co-stimulatory environment)の生成。
(ii)適応応答の成熟化の間に病原体を抑制するための第1ラインの防御の確立。
(iii)特定の感染因子に対する防御にとって最も効果的である細胞性又は体液性エレメントの免疫応答に向けて適応免疫応答を指揮すること。
【0003】
従って、ワクチン接種の全般的な目的は抗原特異的免疫の活性化であるが、ワクチンは、第1に且つ効果的に自然免疫応答の病原体検出機構を活性化すること無しに、この目的を最適に成し遂げることはできない。
【0004】
多くのワクチンは抗原及びアジュバントを含む。それらは、それらが同時に投与される抗原のin vivo免疫原性を高めるそれらの作用能力によって広く定義される。従って、アジュバントは、殆どの好結果なワクチン、特に殺された病原体及び/又は組換え抗原の分離したフラクションを含む病原体のサブユニットに基づくワクチンの重要成分に相当する。しかし、自然免疫機構並びに抗原プロセシング及び提示の詳細の益々の理解の結果、新規且つより高性能なアジュバントが要求される。したがって、従来型と新規なアジュバントは現在、送達システムとして働くものと免疫ポテンシエーターとして働くものに次第に分離されている。送達システムの主な機能は、ワクチン成分を抗原提示細胞に局在化させることである一方、免疫ポテンシエーターはToll様受容体を含む特定の受容体を介して抗原提示細胞を直接的に活性化する。
【0005】
感染因子と殆どの認可されたワクチン、特に生きた弱毒化及び死んだ全細胞プロダクトは、総合免疫応答を活性化するために必要な成分の全てを含むことに留意することが重要である。それはこのようなワクチンに使用される病原体が微粒子形態(細胞全体として)に関連抗原の全てを有し、それはまた多くの強い免疫モジュレーター(immune modulator)、即ち病原生物関連分子パターン(pathogen associated molecular pattern)を有するからである。しかし、ワクチン開発における動向は、このような製品から高度に精製された組換えタンパク質として生産されるより安全かつより明確なサブユニットワクチンへと移動する。残念ながら、このような組換え抗原は、それらが本質的な免疫増強活性を欠くため、多くの場合十分に免疫原性でない。従って、サブユニットワクチン開発におけるチャレンジは、自然感染又は全病原体細胞ワクチン手法を模倣するために十分であろう自然免疫応答の活性化のための選択シグナルを再導入することである。サブユニットワクチンの効能を改良するために使用される送達システムと免疫ポテンシエーターは、全細胞ワクチンよりも安全且つより効果的、低コストであるべきである。
【0006】
“送達システム”及び“アジュバント”という用語は、ワクチンに関して一般的に同義的に使用されるが、明確な区別が多くの場合成され得、各々の役割が明確に定義される。ワクチンのリストに含まれる“アジュバント”は、多くの微粒子送達システム、例えば、エマルジョン、リポソーム、イスコム(iscom)、ウイルス様粒子及びミクロ粒子(これらの原理的作用様式は、免疫応答の誘発を担う主要な抗原提示細胞への抗原の送達(delivery)を促進することである。しかし、それらは弱い免疫モジュレーターであり、従ってそれらの有効性は免疫ポテンシエーターの添加によって顕著に改良される必要がある。他に特定されない限り、“アジュバント”という用語はここにおいて免疫ポテンシエーターを表すために使用される。免疫ポテンシエーターとしての新規かつ改良されたアジュバントの開発に対する主なハードルは、新規ワクチンはそれらが臨床用途のために許容可能であるならば、最小数の有害作用を有しなければならないため、安全性である。結果として、多くのアジュバントが広く前臨床的及び臨床的に評価されてきたが、アルミニウム源(総称的に“アラム(alum)”と呼ばれる)のみが北アメリカにおいてワクチンアジュバントとしての使用のために首尾よく認可された。アラムは、細胞障害性CD8 T細胞免疫を生成することにおいて十分でない。それは、優先的に、Th1バイアス免疫応答よりもTh2バイアス免疫を誘発する。
【0007】
免疫増強アジュバントとしての多くの自然病原体関連分子パターン分子(natural pathogen-associated molecular pattern molecules)の使用のための概念の実証は動物において確立されたが、将来への動向は合成アナログを設計することである。これは主に、十分に確立されかつ標準化された合成免疫ポテンシエーターに付随するより低い製造コスト及びより小さな規制ハードルに起因する。
【0008】
幾つかの合成ポリアニオン性ポリマーが致死量の髄膜ウイルスでチャレンジされたマウスを保護すること、及びネズミ腹腔マクロファージがin vitroでカルボキシレートコポリマー又はその塩に曝露された時に水疱性口内炎ウイルスを抑制する因子を産生したことが早くも1968年に示された(Merigan & Finkelstein. Interferon stimulating and in vivo antiviral effects of various synthetic anionic polymers. Virology 1968; 35: 363-374)。
【0009】
より最近、アルギナート(海藻から単離されたポリマー)がTNF−α、IL−1及びIL−6の放出を誘発することが示された(Otterlei M et al. Induction of cytokine production from human monocytes stimulated with alginate. J. Immunother. 1991; 10: 286-291)。アルギナートの1−4−βマンヌロン酸部分もCD14/Toll様受容体4媒介機構を介して単球からのTNF−αの放出を誘発した。リグニン誘導体及びフコイダンもマクロファージからのTNF−α放出をイリシット(illicit)する(Sorimachi K et al. Secretion of TNF-αfrom macrophages following induction with a lignin derivative. Cell Biol. Int 1995; 19: 833-838; Heinzelmann et al. Modulation of LPS-induced monocyte activation by heparin-binding protein and fucoidan. Infect. Immun. 1998; 66: 5842-5847)。硫酸化フカン(sulphated fucan)及びデキストラン硫酸塩もブタオザルに注入された時、IL−6、IL−8、MCP−1、M−CSF及びG−CSFの循環レベルを顕著に上昇することが示された(Sweeney EA et al. Mobilization of stem/progenitor cells by sulphated polysaccharides does not require selection presence. Proc. Natl. Acad. Sci. 2000; 6: 6544-6549)。
【0010】
ケモカインは、TNF−α、IL−1及びIL−6を含む誘導性炎症性(inducible proinflammatory)のケモアトラクティブサイトカインの異種群である。MIP−1α及びMIP−1βを含むβ−ケモカインは、単球、好酸球、好塩基球、及びリンパ球のための化学誘引物質として働く(Luster AD. Chemokines - chemotactic cytokines that mediate inflammation. New Eng. J. Med. 1998; 338: 436-446)。ケモカインのそれらの各受容体への結合は、イノシトール三リン酸の生成、細胞内カルシウム放出及びプロテインキナーゼCの活性化を含む細胞活性化のカスケードへと導く。従って、ケモカインは走化性を制御する細胞機構を活性化する。従って、それらは白血球のそれらが蓄積する領域への補充及び局所免疫応答の生成における重要な役割を担う。
【0011】
しかし、上記のポリマーによる炎症性サイトカインの過剰放出は、それらがヒトに安全に投与されるには毒性が強過ぎることを示した。従って、多くのポリマーが免疫モジュレート特性を有することが示されたが、それらの自然源からの単離、単離の再現性、研究所における合成ポリマーの合成、及びそれらが動物に投与された場合のポリマーの毒性に付随した問題のために、それらはヒトにおける治療用途のためには有効に開発されなかった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本発明は、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと
(i)病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、又は
(ii)ガンに対する薬理学的活性を有する物質、又は
(iii)抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質
を含む複合体を提供する。
【0013】
本発明はまた薬学的に好適なキャリアと混合又はそれとともに本発明の複合体を含む薬学的製剤を提供する。
【0014】
本発明は、薬剤としての使用のための本発明の複合体を更に提供する。
【0015】
本発明はまた、病原生物による感染の治療における使用及び/又は病原生物に対する免疫応答を誘発するための複合体を提供し、その複合体は、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー及び病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を含む。
【0016】
本発明はさらに、病原生物による感染をこのような治療を必要とする被験体において治療する方法を提供し、これはアクリル酸及びその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の治療有効量を被験体に投与することを含む。
【0017】
本発明はさらに、病原生物に対する免疫応答をその必要性のある被験体において誘発する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の有効量を被験体に投与することを含む。
【0018】
本発明はさらに、ガンの治療における使用のための複合体を提供し、その複合体はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーとガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む。
【0019】
本発明はさらに、このような治療の必要な被験体においてガンを治療する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーとガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の治療有効量を被験体に投与することを含む。
【0020】
本発明はさらに、ガンに対する免疫応答をその必要のある被験体において誘発する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分離症分布のポリマーとガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の有効量を被験体に投与することを含む。
【0021】
本発明はさらに、抗原又は免疫原に対する免疫応答を誘発するための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質を含む複合体を提供する。
【0022】
本発明はさらに、被験体において抗原又は免疫原に対する免疫応答を誘発する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと抗原又は免疫原を含む複合体の有効量を被験体に投与することを含む。
【0023】
本発明はさらに、病原生物による感染の治療及び/又は病原生物に対する免疫応答を誘発するための病原生物に対する薬理学的活性を有する物質との使用のための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを提供する。
【0024】
本発明はさらに、病原生物による感染をそのような治療の必要な被験体において治療する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと病原生物に対する薬理学的活性を有する物質の治療有効量を被験体に投与することを含む。
【0025】
本発明はさらに、病原生物に対する免疫応答をその必要のある被験体において誘発する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと病原生物に対する薬理学的活性を有する物質の有効量を被験体に投与することを含む。
【0026】
本発明はさらに、抗原又は免疫原に対する免疫応答を誘発するために、抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質との使用のための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを提供する。
【0027】
本発明はさらに、抗原又は免疫原に対する免疫応答をそのような治療の必要な被験体において誘発する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと抗原又は免疫原の治療有効量を被験体に投与することを含む。
【0028】
本発明はさらに、ガンの治療及び/又はガンに対する免疫応答を誘発するために、ガンに対する薬理学的活性を有する物質との使用のための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを提供する。
【0029】
本発明はさらに、そのような治療の必要な被験体においてガンを治療する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーとガンに対する薬理学的活性を有する物質の治療有効量を被験体に投与することを含む。
【0030】
本発明はさらに、ガンに対する免疫応答をその必要性のある被験体において誘発する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーとガンに対する薬理学的活性を有する物質の有効量を被験体に投与することを含む。
【0031】
本発明はさらに、ワクチンの製造における免疫増強アジュバントとしての使用のためのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを提供する。
【0032】
本発明はさらに、それに対して免疫が誘発されるべき抗原又は免疫原を含むワクチンの製造における免疫増強アジュバントとしての使用のためのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを提供する。
【0033】
ワクチンの製造のための方法において、本発明はさらに、免疫増強アジュバントとしてのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーの使用を含む改良を提供する。
【0034】
定義
“アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー”という用語はここにおいて、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマー、例えばここに記載されるポリマーの1つは、例えばメタクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマー、例えばポリメタクリル酸又はその塩、例えばそのナトリウム塩を表す。該ポリマーはアクリル酸(例えば、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はその塩)のホモポリマー又はコポリマーのいずれかであり得る。
【0035】
該ポリマーは、狭い分子量分布、特に1,7以下の、例えば1.6以下の、例えば1.5以下の、例えば1.4以下の、例えば1.2以下の、例えば1.7未満の、例えば1.6未満の、例えば1.5未満の、例えば1.4未満の、例えば1.2未満の多分散性を有する。一般的に、多分散性が低い方がより良い。したがって、1.2未満の多分散性が一般的に好ましい。
【0036】
ポリマーは一般的に、血液中に存在する場合、糸球体装置を介した濾過をポリマーが殆ど又は全く受けないで、ポリマーが腎臓通過後の循環する血液中に実質的に残留するような分子量を有する。大きな分子の腎臓濾過(糸球体濾過としても知られる)は、とりわけ分子のサイズ及び形状(これは部分的に分子量に依存する)の関数である。一般的に、任意の特定ポリマーについて、それ以下で腎臓濾過が起こり、それよりも上で殆ど又は全く腎臓濾過が起こらない、境界分子量又は狭い範囲の分子量が存在する。任意の特定ポリマーについての境界分子量は、例えば放射標識されたポリマーを使用する標準試験によって測定され得る。
【0037】
一般的な基準として、該ポリマーは一般的に例えば100,000以下、例えば100,00未満、例えば80,00以下、例えば75,000以下、例えば65,000以下、例えば55,000以下、例えば45,000以下の分子量を有する。該ポリマーは一般的に4,000以上、例えば5,000以上、例えば10,000以上、例えば20,000以上、例えば30,000以上、例えば40,000以上の分子量を有する。ポリマーは、上記に与えられる高い方の分子量値のいずれかと上記に与えられる低い方の分子量値のいずれかを組み合わせる範囲内の分子量を有し得る。このような範囲の例は、80,000〜4,000、75,000〜5,000、65,000〜10,000、55,000〜10,000、及び45,000〜10,000の範囲を含むがこれらに限定されるのではない。更なる例は、50,000〜4,000、例えば40,000〜25,000の範囲を含む。45,000〜10,000の範囲の分子量が好まれ得る。
【0038】
“PMAA−Na”という用語はここでポリメタクリル酸、ナトリウム塩を表す。そうでないと示されない限り、それは実施例A1〜A4に記載されるように調製されるポリメタクリル酸、ナトリウム塩を表す。
【0039】
“複合体”という用語はここで、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーとここに定義されるもう1つの物質間の結合を表し、成分間の結合は、主として例えば任意の1つ以上のイオン、静電、ファンデルワールス力を含む非共有結合である。本発明に従った複合体は、大部分が成分間の非共有結合を含むが、それにもかかわらず幾らかの共有結合が存在し得る。
【0040】
本発明の詳細な説明
上記に開示されるように、本発明は病原生物による感染の治療における、ガンの治療における及び/又は免疫増強アジュバントとしてのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーの種々の使用に関し、そしてまたアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと(i)病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、又は(ii)ガンに対する薬理学的活性を有する物質、又は(iii)抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質を含む複合体に関する。
【0041】
本発明は、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーが、主要なヒト組織マクロファージ、即ち抗原提示細胞からベータケモカインMIP−1α及びMIP−1β及びインターフェロン−γの放出を、また毒性量の炎症性サイトカインの放出を誘発しないで、誘発したという我々の観察に基づく。該ポリマーは高濃度においてヒト細胞に対して毒性がなかった。試験されたポリマーはここに記載される方法に従って作製された。以下の理論に拘束されるのではないが、我々は上記の観察がアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーがToll様受容体を含む細胞表面の受容体を刺激することによってTh1免疫増強アジュバントとして働くための、即ち、抗原の免疫刺激特性を増強する物質として働くための可能性を有することを示すと考える。
【0042】
実際我々は、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーが本当にTh1免疫増強アジュバントとして働くことを実証した。抗原、即ちツベルクリン精製タンパク質誘導体BPと、ここに記載されるように作製されたメタクリル酸ナトリウム塩ホモポリマー(PMAA−Na)を含む複合体は、ツベルクリン抗原自体がしたよりも大きいTリンパ球増殖を引き起こし、そしてまたツベルクリン抗原単独がしたよりも多くTリンパ球からのインターフェロン−γ分泌を増加した。
【0043】
従って、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーは、従来のワクチンにおいて使用される抗原及び/又は免疫原、例えば、それに対して治療及び/又は防御ワクチン投与が望まれる生物から直接的に又は間接的に由来する抗原及び免疫原と結合して免疫増強アジュバントとして使用され得る。このような抗原及び免疫原は、例えば、天然源から得られる抗原及び/又は免疫原、即ち関連性のある生物に直接的に由来する、及びサブユニット抗原及び免疫原、及び組換えDNA技術及び/又は化学合成によって作製される抗原及び免疫原(抗原及び免疫原は関連性のある生物に間接的に由来する)である。該ポリマーは、適切な抗原及び/又は免疫原と共にワクチン組成物中に配合され得る。キャリア及び賦形剤が存在し得、送達システムアジュバントであり得る。該ポリマー並びに抗原及び/又は免疫原は本発明の複合体の形態で使用され得、又は同時投与され得る(以下参照)。
【0044】
ワクチン及びこのようなワクチンにおける使用のための抗原及び免疫原の例は、ジフテリア、破傷風、チフス、百日咳、麻疹、風疹、耳下腺炎、ポリオ、H.インフルエンザ(例えばタイプB)、髄膜炎、A型肝炎、B型肝炎、コレラ、狂犬病、(種々の)脳炎、黄熱及びインフルエンザ、並びにこのようなワクチンにおける使用に使用される及び適した抗原及び免疫原を含むがこれらに限定されるのではない。このような抗原及び免疫原は本発明に従って使用され得る。
【0045】
しかし、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーは、同時投与される抗原及び免疫原に免疫増強効果を有するだけでなく、それは同時投与される抗原又は免疫原が無くても病原生物、例えば、排他的ではないが主に細胞内生物である病原生物、特にマクロファージ起源の細胞及び/又は樹状細胞を含む他の抗原提示細胞中で大部分において存在し且つ持続する生物に対する防御Th1免疫応答を促進する能力も有する。これは該ポリマーと病原生物、(例えば、排他的ではないが主に細胞内生物である病原生物、特にマクロファージ起源の細胞及び/又は樹状細胞を含む他の抗原提示細胞中で存在し且つ持続する病原生物)に対する薬理学的活性を有する物質(ここでは“薬剤”と呼ばれる)、特にこのような生物を殺す、そうでなければ崩壊する物質を投与することによって達成され得る。生物を殺す及び崩壊することは、結果として抗原性物質の放出を生じる。該ポリマーの存在は、この変化したミクロ環境にリクルートされた樹状細胞が放出された抗原を吸収し処理するため、抗原に対する免疫応答を増強する。樹状細胞は次いで、エフェクター細胞障害性T−リンパ球応答の生成を促進するCD4+T細胞の活性化を開始する。これらの応答の幾つかは、残存する慢性的に感染した細胞中で持続する任意の生物及びまたこのような細胞の環境中の生物に対して治療的に向けられる。他のエフェクター細胞障害性T細胞応答は、将来的再感染に対する防御ワクチンベースの応答を提供することができる。従って、薬理学的治療、治療ワクチン投与及び防御ワクチン投与が達成される。
【0046】
従って、本発明はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー、病原生物による感染の治療における病原生物に対する薬理学的活性を有する物質との使用のための、及び/又は病原生物に対する免疫応答を誘発するための該ポリマーに関する。本発明はまたそのような治療の必要な被験体において病原生物による感染を治療する方法及び/又は病原生物に対する免疫応答を誘発する方法に関し、これはアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を被験体に投与することを含む。
【0047】
該ポリマー及び薬理学的活性物質は好ましくは本発明の複合体の形態であり、又は代替的に同時投与され得る(以下参照)。
【0048】
病原体(これに対して免疫応答が誘発される)は、主として細胞内で複製及び/又は存続するもの、特に組織ベースのマクロファージ及び例えば樹状細胞などの他の抗原提示細胞中で複製及び/又は生存するものである。このような生物並びにこのような生物によって引き起こされる疾患及び障害は、以下を含む:
a)白癬;輪癬;鵞口瘡;マラセチア感染(でん風、マラセチア毛包炎、脂漏性皮膚炎、及びスキタリジウム症を含む);外耳道真菌症;及び角膜真菌症を含む、表在性真菌症を引起す生物。
【0049】
b)Candida albicans、Candida tropicalis及びCandida glabrataを含む侵入性及び慢性真菌感染を引き起こすCandida種;Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus及びAspergillus nigerを含むAspergillus種;Cryptococcus neoformans;例えばAbsidia、Rhizopus及びRhizomucor種によって引き起こされるムコール症;Fusarium種;Trichosporon種;ブラストミセス症;Sporothrix種;Sporotrichum種;例えばHistoplasma capsulatum var. capsulatumによって引き起こされるヒストプラズマ症;例えば、Histoplasma capsulatum var. duboisiiによって引き起こされるアフリカヒストプラズマ症;例えばBlastomyces dermatitidisによって引き起こされるブラストミセス症;例えばCoccidioides immitisによって引き起こされるコクシジオイデス症;例えばParacoccidiodes brasiliensisによって引き起こされるパラコクシジオイデス症;及びPenicillium marneffeiによって引き起こされる感染。
【0050】
c)例えば結核菌、異型結核菌、及びライ菌などのマイコバクテリウムファミリーのメンバーによって引き起こされる、例えば結核及びハンセン病等のマイコバクテリア疾患を引き起こす生物。
【0051】
d)例えばSchitosoma haematobium、Schistosoma mansoni、Schistosoma japonicum、Schistosoma intercalatum及びSchistosoma mekongi等の住血吸虫症を引き起こすSchistosomaファミリーのメンバー。
【0052】
e)例えばセロタイプA、B、C及びDのサルモネラファミリーのメンバー等のチフス及びパラチフス熱を引き起こす生物。
【0053】
f)例えばToxoplasma gondiiなどのトキソプラズマ症を引き起こす生物。
【0054】
g)例えばTrypanosoma brucei gambiense又はTrypanosoma brucei gambienseなどのヒトアフリカ・トリパノソーマ症を引き起こす生物。
【0055】
h)例えばTrypanosoma cruziなどのアメリカ・トリパノソーマ症を引き起こす生物。
【0056】
i)例えばPlasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium ovale及びPlasmodium malariaeなどのマラリアを引き起こす生物。
【0057】
j)例えばHIV−1及びHIV−2並びにHTLV―I及びHTLV−IIなどのHIV及びHTLV感染を引き起こす生物。
【0058】
k)Pneumocystis carinii感染を引き起こす生物。
【0059】
l)例えば内臓型(例えば、カラアザール)又は皮膚型(例えば、L.donovani及びL.mexicana)のリーシュマニア症を引き起こす生物。
【0060】
このような疾患及び障害を治療するために使用される薬理学的活性物質(薬剤)は当該技術分野においてよく知られている(例えば、Principles and Pranctice of Infectious Diseases. by Mandell G.L、Bennett J.E., & Dolin R. Fifth Edition. Churchill Livingstone.(2000).Manson’s Tropical Diseases. by Cook & Zumla. Twenty−first Edition. Saunders. (2003)、そして更なる薬剤が開発されている。
【0061】
病原生物に対する薬理学的活性を有する物質の例は、クロトリマゾール、フルシトシン、フルコナゾール、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ピラジナミド、シプロフロキサシン、リファンピシン、チアセタゾン、サイクロセリン、クロファジミン、ダプソーン、ロチオナミド(rothionamide)、メトリフォネート、オキサムニキン、プラジカンテル、コ-トリモキサゾール、ピリメタミン、スルファドキシン、スピラマイシン、メラルソプロール、ニフルティモックス、アモジアキン、クロロキン、メフロキン、プリマキン、プログアニル、キニン、ジドブジン、エファビレンツ、インジナビル、リバビリン、ビダラビン、ラバミソール及びアシクロビルを含むがこれらに限定されない。
【0062】
生成される生物に対する免疫が効果的な“第2ライン”の防御を提供するため、本発明のこの側面に従った使用に関して、治療は好結果的、(即ち、被験体を治療すること又は完全に生物を除去すること)である必要はない。任意の残留生物は、生成されるエフェクター細胞障害性T−リンパ球応答によって除去される(なぜなら、それらは残る慢性的感染細胞中に生存する任意の生物に対して治療的に向けられるからである)。必要であるのは、幾らかの生物が殺され、それによって抗原を放出することである。本発明の利点の1つは、たとえ治療が生物を完全に除去しなくても、エフェクター細胞障害性T−リンパ球応答の誘発が将来的再感染に対する防御ワクチンベース応答を提供することである。従って、薬理学的治療、治療用ワクチン及び防御ワクチンが達成される。
【0063】
同一の考察がガンに適用する。アクリル酸又はその塩由来の狭い分子量分布のポリマーとガンに対する薬理学的活性を有する物質、特にトランスフォームされた、即ち癌性細胞を殺す又は部分的に殺す、そうでなければ崩壊する細胞障害剤を含む本発明の複合体の使用。細胞を殺すこと又は崩壊は抗原性物質の放出を結果として生じ、その幾らかはマクロファージ及び抗原提示細胞によって非自己抗原として“見られる”。該ポリマーの存在は、この変化したミクロ環境中にリクルートされた樹状細胞が放出された抗原を吸収し且つ処理するため、抗原に対する免疫応答を増強する。樹状細胞は次いでフェクター細胞障害性T−リンパ球応答の生成を促進するCD4+T細胞の活性を開始する。これらの応答の幾つかは他のガン細胞に対して治療的に向けられ、従ってガンの再発及び任意の残留ミクロ転移の増殖に対する防御ワクチンベースの応答を提供する。これらの応答は多数のマクロファージ及び抗原提示細胞が存在するガンについて最も大きい。これはリンパ腫及び白血病において特にそうである。従って、薬理学的治療、治療ワクチン、及び防御ワクチンが達成される。
【0064】
ガンに対する薬理学的活性を有する物質は当該技術分野においてよく知られており、そして新たな活性剤が開発されている(例えば、Cancer: Principles and practice of oncology. V.T. DeVita, S Hellman & S.A. Rosenburg, Published by Lippincott Williams & Wilkins, 6tth Edition, 2001を参照)。抗癌剤の例は、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アムサクリン、アザシチジン、ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ヒドロキシウレア、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトザントロン、トレスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びクリサンタスペース(crisantaspase)を含むがこれらに限定されない。
【0065】
上記に示されるように、一般的に該ポリマー、病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、又はガンに対する薬理学的活性を有する物質(どちらも“薬剤”と呼ばれる)が本発明の複合体の形態で投与されることが好ましい。このような複合体は薬剤のみよりも抗原提示細胞によってより効果的に吸収され、それはまた、薬剤が生物を殺し抗原が放出されるときにポリマーがその場で直ぐにTh1免疫応答を増強するミクロ環境を生成することができるように、薬剤とポリマーの両方が同時に同一細胞中に存在することを確実にする。しかし、該ポリマー及び薬剤は同一の薬学的製剤又は別個の製剤において同時投与され得る。後者の場合、1つの製剤が他方の前に投与され得るが、一般的に2つの製剤を実質的に同時に投与することが好ましい。
【0066】
一般的に、該ポリマー並びに抗原及び/又は免疫原を本発明の複合体の形態で投与することも好ましい。しかし、該ポリマー並びに抗原及び/又は免疫原は同一の薬学的製剤又は別個の製剤において同時投与され得る。後者の場合1つの製剤は他方の前に投与され得るが、一般的に2つの製剤は実質的に同時に投与することが好ましい。
【0067】
本発明の複合体は、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと
(i)病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、又は
(ii)ガンに対する薬理学的活性を有する物質、又は
(iii)抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質
を含む。
【0068】
病原生物、病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、ガンに対する薬理学的活性を有する物質、並びに抗原及び免疫原は例えば上記のものである。
【0069】
本発明の複合体、即ちアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーは、該複合体と薬学的に適したキャリアを含む薬学的製剤の形態であり得る。製剤は、成分、特に物質(i)、(ii)及び(iii)の性質に依存して、従来の薬学的製剤又はワクチン或いは両方であり得、又はとしてみなされ得る。免疫応答を誘発する使用が目的とされる場合、送達システムアジュバント、例えばアルムも存在し得る。
【0070】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーが、該物質を有する複合体の形態において投与される代わりに、上記に定義される物質(i)、(ii)又は(iii)と同時投与される場合、該ポリマー及び物質(i)、(ii)又は(iii)は同一の薬学的製剤中に配合され得、又はそれらは別個の製剤中に配合され得、それぞれの場合において薬学的に適したキャリアと混合される。別個の製剤である場合、1つは他方の前に投与され得るが、2つの製剤を実質的に同時に投与することが好ましくあり得る。
【0071】
上記に示すように、本発明は病原生物によって引き起こされる疾患及び障害並びにガンの従来の薬学的治療とこのような疾患、障害及びガンに対する免疫応答の誘発の両方を包含する。そのような必要性のある被験体において誘発される免疫応答は好ましくは治療的及び/又は予防免疫応答であることが理解される。治療的免疫応答は、疾患又は障害の治療において援助する。このような応答は短期の応答であり得る。予防免疫応答は、例えば疾患又は障害の再発又は後の感染又は再感染、或いはガンのミクロ転移の移転の増殖及び広がりに対するより長期間の保護を提供する。このような応答は多くの場合治療的且つ予防“ワクチン接種”と呼ばれる。
【0072】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと病原生物に対する薬理学的活性を有する物質の病原生物によって引き起こされた疾患の治療と同時に免疫応答を誘発することにおける使用はリーシュマニア症のケースで例証された。リーシュマニア症に起因する感染は、例えば内臓型(例えば、カラアザール)又は皮膚型であり得る。内臓リーシュマニア症は散在性原生動物感染である。長年の間、従来の療法は28日間の静脈又は筋肉注射による毎日一度与えられる5価のアンチモニから成る。しかし、1990年からインドにおける大規模のアンチモニ治療の失敗が有効な抗リーシュマニア症剤としてアンフォテリシンBデオキシコレートB(AmB)の導入へと導いた。97%の長期治癒率がアンフォテリシンBの毎日、又はより典型的には一日おきの静脈投与(0.75〜1mg/kg/日の投与量で全体で15〜20の注入)によって得られた。これらの治療の長期経過は、高い病院の負荷と相当の費用が伴う。結果としてこれは、多くの場合起こる付随した悪影響のため、治療計画の不従順又は放棄へ多くの場合導く。
【0073】
アンフォテリシンBの脂質ベース複合体は、組織ベースのマクロファージ中に蓄積する。それらはヒトマクロファージ中で増殖し得る多数の酵母及びカビに対して非常に効果的であることが示された。アンフォテリシンBの脂質配合物は、内臓リーシュマニア症に対する高い効力を有し、それらは5〜10日間与えられた場合90%よりも高い治癒率を結果生じることが示された。Sundar等は短期コース、即ち1.5mg/kg/日の注入で毎日投与されるリポソームアンフォテリシンB(AmBisome;Gilead Science)を用いた5日間の治療が、患者の93%を治癒したことを示した。別の追跡試験において、リポソームアンフォテリシンBの5mg/kgの一回の全投与注入が患者の91%を治療した。有害なイベントは殆ど無かった(Sundar, S et al. Treatment of Indian visceral leishmaniasis with single or daily infusion of low dose liposomal amphotericin B: a randomised trial. Brit. Med. J. 2001; 323: 419-422. Sundar, S. et al. Single-dose liposomal amphotericin B in the treatment of visceral leishmaniasis in India: a multicenter study. Clin. Inf. Dis. 2003: 37; 800-804)。従って、単回投与リポソームアンフォテリシンB治療はインドにおける内臓リーシュマニア症の治療において安全且つ効果的と考えられ得る。しかし、単回投与でさえ治療は高価であり、現実的な不都合は脂質ベースアンフォテリシンB配合物が、特に内臓リーシュマニア症の多くの事例が起こる熱帯の高温において長期間の保存中安定でないことである。
【0074】
リーシュマニア症における回復及び寄生体クリアランスを促進する免疫応答は、インターフェロンガンマ媒介Th−1応答が優位を占める。マクロファージはリーシュマニアを効率的に摂食するが、それらは該生物の摂食によって活性化されない;結果として炎症性ケモカイン、炎症性サイトカイン、及びインターフェロンγは放出されない。マクロファージと対照的に、樹状細胞はリーシュマニア寄生体を吸収し、成熟し、次いで細胞免疫応答の発達を促進する。動物モデルにおいて、感染したマクロファージが活性化され得る場合、寄生体の殺傷が続くことが示された。従って、2つの異なるプロセス、即ち抗原プロセシング及び細胞成熟/活性化が効果的な細胞ワクチン応答のために組み合わせられなければならない。微生物によって実証されるように、抗原性成分及び樹状細胞活性化/成熟成分の両方を保持する物質は、樹状細胞をTh1媒介応答へと進ませ得る。脂質ベースアンフォテリシンB配合物は免疫調節性又はアジュバント活性を有しない。
【0075】
本発明に従ったポリ(メタクリル酸、ナトリウム塩)(PMAA−Na)とアンフォテリシンBの複合体が実施例で詳細に説明されるように調製され試験された。複合体は以下の特有の性質を有することが示された。
a)それは静脈投与後のアンフォテリシンBの肝臓、脾臓、リンパ節への効果的な器官送達を可能にする。これらは、動物及びヒトにおいてリーシュマニアによって主に感染される器官である。
b)それは静脈に与えられた場合、アンフォテリシンBのリーシュマニア感染したマクロファージへの効果的な細胞内送達を可能にする。
c)アンフォテリシンB−ポリ(メタクリル酸、ナトリウム塩)複合体は、リーシュマニア無鞭毛体が生残り、増殖し、残存する細胞内細胞小器官中に蓄積し、これはリーシュマニア無鞭毛体の細胞内殺傷を促進する。
d)内臓リーシュマニア症の動物モデルにおけるin vivo試験は、臨床グレードのアンフォテリシンB、商業的なリポソームアンフォテリシンB製剤AmBisome及びアンフォテリシンB−ポリ(メタクリル酸、ナトリウム塩)製剤の抗リーシュマニア活性は互いに顕著に異ならないことを示した。アンフォテリシンB−ポリ(メタクリル酸、ナトリウム)製剤は、内臓リーシュマニア症の動物モデルにおいて商業的リポソームアンフォテリシンB製剤AmBisomeと同程度効果的であった。
e)ポリ(メタクリル酸、ナトリウム塩)は組織マクロファージ中のアンフォテリシンBから放出され、それは次いでβ−ケモカイン及びインターフェロン−γの放出を促進する。これは局所Th1アジュバント応答を生成する。
f)ケモカイン及びサイトカイン発現の局所誘発は、自然免疫システムの細胞の該サイトへのリクルートメント及び活性化を促進する。これは未成熟樹状細胞及びCD4+Tリンパ球を含む。これらはマクロファージを刺激して更なるTNF−α、IL−1β及びIL−6を産生させる。
g)自然免疫システムの活性化は、樹状細胞が成熟し、組織からそれらの新たに放出された抗原が提示される局所リンパ節に移動することを誘発する。これは結果としてCD4+T細胞応答及びエフェクターCD8+T細胞応答の誘発及び生成を生じる。
h)従って、抗原提示細胞中のリーシュマニアの殺傷及びTh1促進アジュバントの直ぐ近くにおけるリーシュマニア抗原の後のアベイラビリティーは感染したマクロファージを細胞ワクチンへ変換する。
i)抗原提示細胞の近接性、アンフォテリシンBの殺傷活性によるリーシュマニア抗原の放出、及び適切且つ局所のTh1サイトカイン/ケモカイン環境の同時促進のため、細胞免疫応答は顕著に促進される。
j)同時発生の疾患の治療及び治療エフェクター細胞免疫応答、即ちワクチン接種の生成は、個体が感染した器官に対する長期の防御免疫を生成する。
k)従って、疾患の治療及び治療ワクチン接種は同時且つ外部アジュバント又は外部源のリーシュマニア抗原を投与する必要なく達成される。
l)単回投与治療は、典型的に15〜20の投与を必要とするアンフォテリシンBと異なって効果的である。
m)製剤は、商業的に利用可能であるリポソームアンフォテリシンB製剤よりも特に熱帯で見られるより高い周囲温度でより安定である。
n)ヒトにおいて静脈投与された場合によく見られるフリーアンフォテリシンの毒性は、該製剤が使用される場合最小限に下げられる。
o)アンフォテリシンB及びPMAA−Na間の複合体を形成することによって、薬剤の化学的誘導体化が回避される。結果として、リーシュマニア種に対するアンフォテリシンBの効力は、変化又は低下されない。これは、アンフォテリシンBの糖部分におけるアミノ基に特に関連する(この基がこの薬剤の薬理学的活性を媒介することにおいて重要であるため)。糖部分のアミンは、その反応性のために結合点として以前に使用された(Conover C.D. et al. Utility of poly (ethylene glycol) conjugation to create prodrugs of amphotericin B. Bioconjugate Chem. 2003; 14: 661-666)。
【0076】
上記のように、本発明は本発明複合体、即ち薬学的に適したキャリアと混合又はそれとともに、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを含む薬学的製剤を提供する。
【0077】
本発明の薬学的製剤は、静脈内、動脈内、リンパ循環中、リンパ節中、経口、腹腔内、局所、口内、直腸、皮膚の表面への、皮内、皮下、筋肉内、関節スペースへの、鼻腔内、硝子体内、又は肺、器官への直接的、器官の周り、器官への注射による、又は器官を通る直接的注入の投与に適した形態であり得る。本発明は、このようなルートのいずれかによる本発明に従ったポリマーの複合体の投与を含む。本発明の薬学的製剤は、デポ又は貯蔵製剤、又はエアゾール製剤の形態であり得る。上記及び他のルートの投与のため適切な配合物は当該技術分野において公知である(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences by E.W. Martinを参照)また、Wang, Y. J. and Hanson, M. A., Journal of Parenteral Science and Technology, Technical Report No. 10, Supp. 42: 2S, 1988を参照。
【0078】
本発明の、即ちアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーの複合体は、“結合した微粒子(particulate associated)”であり得る。このような微粒子は、当該技術分野に公知のエマルジョン、均質化、及びスプレー乾燥工程によって作製され得る。このような配合物のレビューのために、例えばHanes J, Cleland JL & Langer R, Adanced Drug Delivery Reviews 28 (1997) 97-119を参照。このような本発明の微粒子結合複合体を含む薬学的組成物は、肺又は鼻ルートで粘膜に、摂取によって、又は非粘膜腸管外ルートによって、特に皮下に、又は筋肉内に、投与され得る。
【0079】
脂質形態の本発明の薬学的製剤において、該ポリマーの濃度は、例えば0.1〜2,500μg/ml、例えば1〜500μg/mlであり得る。他の配合物は、例えば脂質製剤に基づいて計算される類似量のポリマーを含み得る。
【0080】
本発明は、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー並びにこのようなポリマーと抗原又は免疫原或いは病原生物又はガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体に関する。該ポリマーは、アクリル酸由来(例えばアクリル酸若しくはメタクリル酸又はその塩由来)のユニットを含むホモポリマー又はコポリマーであり得る。アクリル酸由来のユニットを含む幾つかのポリマーは公知である。上記のように、該ポリマーは一般的に狭い分子量分布を有するべきである。多分散性は、例えば1.7以下、例えば1.6以下、例えば1.5以下、例えば1.4以下、例えば1.2以下、例えば1.7未満、例えば1.6未満、例えば1.5未満、例えば1.4未満、例えば1.2未満である。一般的に多分散性が低い程よい。従って、1.2未満の多分散性が一般的に好ましい。従って、1.2未満の多分散性が一般的に好ましい。
【0081】
該ポリマーは一般的に、血液中に存在する場合、糸球体装置を介した濾過をポリマーが殆ど又は全く受けないで、ポリマーが腎臓通過の間及び後の循環する血液中に実質的に残留するような分子量を有する。大きな分子の腎臓濾過(糸球体濾過としても知られる)は、とりわけ分子のサイズ及び形状(これは部分的に分子量に依存する)の関数である。一般的に、任意の特定ポリマーについて、それよりも低いと腎臓濾過が起こり、それよりも上で殆ど又は全く腎臓濾過が起こらない、境界分子量又は狭い範囲の分子量が存在する。任意の特定ポリマーについての境界分子量は、例えば放射標識されたポリマーを使用する標準試験によって測定され得る。
【0082】
一般的な基準として、該ポリマーは一般的に例えば100,000以下、例えば100,00未満、例えば80,000以下、例えば75,000以下、例えば65,000以下、例えば55,000以下、例えば45,000以下の分子量を有する。該ポリマーは一般的に4,000以上、例えば5,000以上、例えば10,000以上、例えば20,000以上、例えば30,000以上、例えば40,000以上の分子量を有する。ポリマーは、上記に与えられる高い方の分子量値のいずれかと上記に与えられる低い方の分子量値のいずれかを組み合わせる範囲内の分子量を有し得る。このような範囲の例は、80,000〜4,000、75,000〜5,000、65,000〜10,000、55,000〜10,000、及び45,000〜10,000の範囲を含むがこれらに限定されるのではない。更なる例は、50,000〜4,000、例えば40,000〜25,000の範囲を含む。45,000〜10,000の範囲の分子量が一般的に好まれ得る。
【0083】
該ポリマー又は複合体は、循環血液中に適切な時間存続するべきことが一般的に望まれる。当業者に知られるように、適切な時間は多くの要因(複合体の場合、該ポリマーにコンプレックスを形成した物質の性質を含む)に依存する。例としては、該ポリマー又は複合体は、数時間循環中に存続し得、例えば24時間まで、例えば約4〜6時間から約24時間までである。
【0084】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマーは、ユニット(I);
【0085】
【化1】
【0086】
(式中、Rは水素及びC1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C7〜C18アラルキル、C7〜C18アルカリール、C6〜C18アリール、カルボン酸、C2〜C18アルコキシカルボニル、C2〜C18アルカミノカルボニル、又は炭素バックボーン中のヘテロ原子で、又は炭素バックボーンに結合したヘテロ原子で置換されたC1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C7〜C18アラルキル、C7〜C18アルカリール、C6〜C18アリール、カルボン酸、C2〜C18アルコキシカルボニル、C2〜C18アルカミノカルボニルから成る群から選択され、R1は、水素、C1〜C6アルキル基から選択される);及びその塩、例えばアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩又はアンモニウム塩、
を含むポリマーであり得る。
【0087】
好ましくは、Rは水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アラルキル、C1〜C6アルカリール、C1〜C6アルキルアミド及びC1〜C6アルキルイミドから成る群から選択される。好ましくは、Rは水素、又はメチルである。好ましくはR1は、Rから独立して、水素又はメチルである。特にRは水素であり、R1はメチルである。
【0088】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含むブロックコポリマーの例は、ユニット(II)
【0089】
【化2】
【0090】
(式中、R、R1及びR2は、上記のように定義される;R3は、C1〜C18アルキレン、C2〜C18アルケニレン、C7〜C18アラルキレン、C7〜C18アルカリーレン及びC6〜C18アリーレンから成る群から選択される;Lはブロックを連結する2価のリンカーである;m及びnは各々1又は1よりも大きい整数である。)
を含むブロックコポリマーを含む。
【0091】
好ましくは、Rは水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アラルキル及びC1〜C6アルカリール、C2〜C8アルコキシカルボニル、C2〜C8アルカミノカルボニルから成る群から選択される。最も好ましいRは水素及びメチルから選択される。
【0092】
好ましいR1は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、又はこれらの異性体から成る群から選択される。最も好ましいR1は、水素及びメチルから選択される。
【0093】
好ましいR2は、結合から選択される、又は少なくとも1つの炭素原子又は少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
【0094】
R2が結合でない場合、R2は、CR1に2価の基を介して結合し、好ましくはカルボニル、C1〜C18アルキレン基及び/又はC6〜C18アリーレン基(これらは1つ以上のヘテロ原子で置換され得る)を含む。好ましいR2は、C1〜C6アルキレン、C6〜C12アリーレン、C1〜C12オキシアルキレン及びカルボニル−C1〜C6アルキレンから成る群から選択される基を含む。R2がアルキレン基を含む場合、それは分岐を有する、直鎖、又は環状、1つ以上のアルキル基で置換され又は置換されないであり得、好ましくは、メチレン、1,2−エチレン、1,3−プロピレン、ヘキシレン又はオクチレンである。R2がアリーレン基を含む場合、好ましくは、それはベンジレン、トリレン又はキシリレンである。
【0095】
好ましくは、R3基(これは同一又は異なり得る)は、C1〜C6アルキレン基、好ましくは1,2-アルキレン、及びC6〜C12アリーレン基、最も好ましくはメチレン、エチレン、1,2プロピレン及び1,3−プロピレンから成る群から選択される。好ましくは全てのR3は、同一であり、最も好ましくは全てが1,2-エチレン又は1,2−プロピレンである。
【0096】
Lは好ましくはC1〜C18アルキレン又はC6〜C18アリーレン基(これらは1つ以上のヘテロ原子で置換及び/又は中断され得る)を含む。好ましいLは、C1〜C6アルキレン、C6〜C12アリーレン、C1〜C12オキシアルキレン及びC1〜C6アシルから成る群から選択される基を含む。Lがアルキレン基を含む場合、それは分枝を有する、直鎖、環状、1つ以上のアルキル基で置換され又は置換されないであり得、好ましくはメチレン、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、tert‐ブチレン、sec‐ブチレン、ヘキシレン、又はオクチレンである。Lがアリーレン基を含む場合、それは好ましくはベンジレン、トリレン又はキシリレンである。最も好ましくは、Lは−CORa基(ここでRaはC1〜C6アルキレン又はC6〜C12アリーレン、好ましくはメチレン、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、tert‐ブチレン、及びsec‐ブチレンから成る群から選択される。
【0097】
ポリマーはユニット(I)を組み込むホモポリマーであり得、或いは他のポリマー、オリゴマー若しくはモノマーユニットを組み込むコポリマー又はブロックコポリマーであり得、例えば上記のユニット(II)を含むブロックコポリマーである。例えば、ホモポリマー又はコポリマー又はブロックコポリマー中に組み込まれた更なるポリマーユニットは、アクリルポリマー、アルキレンポリマー、ウレタンポリマー、アミドポリマー、ポリペプチド、多糖及びエステルポリマーを含み得る。好ましくはポリマーがヘテロポリマーである場合、更なるポリマー成分はポリエチレングリコール、ポリアコニット酸、又はポリエステルを含む。
【0098】
例えばユニット(I)又は(II)を有するポリマーはまた、例えば前駆体ポリマーの可溶化を可能にする及び/又は本発明に従って使用されるポリマー中の遊離アクリル酸基(従って塩形成基)の数の制御を可能にする更なるユニットを含み得る。例えば、ユニット(I)を含むポリマーは、構造(III)又は(IV)
【0099】
【化3】
【0100】
【化4】
【0101】
(式中、R、R1、R2及びR3、L、m及びnは上記に定義され、R4、R5及びR6は、独立的に各々R、R1及びR2と同一の基から選択される;Qはポリマーを作製するために使用される条件下で切断されない、又は実質的に切断されない基を表す;pは、1又は1よりも大きい整数を表す。所望される場合、Qはターゲティング基であり得、即ちポリマーを細胞タイプ(例えば、マクロファージ)又は器官(例えば肝臓)に標的化する基であり得る。)
を有し得る。
【0102】
Qは、例えばC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アルカリール、C1〜C12アルコキシ、C1〜C12ヒドロキシアルキル、C1〜C12アルキルアミノ、C1〜C12アルカノイル、C1〜C12アミノアルキル、又はアミン、ヒドロキシル若しくはチオール基で置換されたC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アルカリール、C1〜C12アルコキシ、C1〜C12ヒドロキシアルキル、C1〜C12アルキルアミノ、C1〜C12アルカノイルから成る群から選択され得る。好ましくはQはアミノ基、例えばC1〜C12ヒドロキシアルキルアミノ基、例えば2−ヒドロキシプロピルアミノ又はヒドロキシエチルアミノ部分を含む。
【0103】
基Qは水性溶液中のポリマーのための可溶化基であり得る。たとえば、該ポリマーは水溶性ポリアクリルアミドホモ又はコポリマー、好ましくはポリメタクリルアミド又はポリエタクリルアミドホモ又はコポリマーであり得る。更に、基Qがポリマーが作製される条件下で基Qが切断されない(又は基Qの大部分が切断されない)場合、基Qの存在は、ポリマー中の遊離アクリル酸基(従って、塩形成基)の数の制御を可能にする。例えば、前駆体ポリマー中の脱離基X含有ユニットの数に対するQ含有ユニットの割合は、選択され得る。脱離基X含有ユニットの数に対するQ含有ユニットの相対的割合は、ポリマープロダクト中のアクリル酸又は塩基の数を決定する。以下に記載されるように、ポリマーのポリアニオン性質は、その生物学的活性に影響し得る。従って、ポリマーのイオン性質を操作する能力は所望の特性を有するポリマーの作製において有用である。
【0104】
本発明に従った使用のためのポリマー(例えば本発明の複合体を形成するため)は、例えばポリメタクリル酸、例えば1.7以下、例えば1.6以下、例えば1.5以下、例えば1.4以下、例えば1.2以下、例えば1.7未満、例えば1.6未満、例えば1.5未満、例えば1.4未満、例えば1.2未満の多分散性を有するポリメタクリル酸であり得る。一般的により低い多分散性がよい。従って、1.2未満の多分散性が一般的に好ましい。該ポリマーの分子量は一般的に上記の定義セクションで説明される通りである。このようなポリメタクリル酸及びその塩、並びにそれらの生産の例はここにおける実施例中に与えられる。このようなポリメタクリル酸及びその塩は、本発明の実施において特に有用であり得る。
【0105】
我々は主要な組織マクロファージ、即ちここに記載されるように作製されたポリメタクリル酸ナトリウム塩(PMAA−Na)によって誘発された抗原提示細胞からのβケモカイン及びインターフェロンγの放出が、同様の狭い分子量分布を有するメタクリル酸ナトリウム塩ホモポリマーの商業的に入手可能なサンプルでは見られなかったことを見出した。組織マクロファージからのケモカイン及びサイトカインの放出における観察された違いは、ここに記載されるように調製されたPMAA−Naと商業的に入手可能なPMAA−Na間の構造的相違であるかもしれないことを示唆する。ここに記載されるように調製されたPMAA−NaのMnは商業的サンプルの1つと類似した(即ち、Mn〜22kg/モル)ため、分子量の影響に起因する免疫学的効果ではないようである。PMAA−Naはポリアニオンである。ポリアニオンの生物学的効果は分子量、電荷密度、及びタクチシティ(tacticity)などの構造特性に依存し得ることが示唆される(Ottenbrite, R., et al., Biological activity of poly(carboxylic acid) polymers., in Polymeric Drugs, L. Donaruma and O. Vogl, Editors. 1978, Academic Press: New York. P. 263-304)。上記及び以下の本発明に従って使用されるポリマーの生物学的活性に関する仮説に拘束されるのではないが、我々はその生物学的データは、記載される特有の生物学的性質を有するPMAA−Naを結果生じる構造的詳細を与えるのは調製方法であり得ることを示すと考える。
【0106】
ここにおける実施例で使用されるポリマーは、水酸化ナトリウムを用いてポリ(N−メタクリルオキシスクシンイミド)(PMOSu)の加水分解によって作製されたポリメタクリル酸、ナトリウム塩である。このような方法及び同様の方法(特に前駆体ポリマーの加水分解を必要とする)は、本発明に従った使用のためのその及び他のポリマーの作製に有用であり得る。
【0107】
例えば、本発明に従った使用のためのポリマーは、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基、例えばナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、又はリチウム塩基などの塩基性薬剤を用いた前駆体ポリマーの加水分解を含む方法によって作製され得る。このような塩基は、例えば水酸化物、炭酸塩、又は炭酸水素塩、例えば水酸化ナトリウムであり得る。前駆体ポリマーは、PMOSuであり得、それは他の適切な前駆体ポリマー、例えば以下に記載される前駆体ポリマーであり得る。加水分解は適切な溶媒中で実施される。前駆体ポリマーは一般的に疎水性分子であるため、反応は一般的に有機溶媒、例えばDMF、DMSO、DMPU又はジメチルアセトアミド中で実施される。加水分解は、例えば周囲温度及び圧力及び緩やかな加熱、例えば40〜60℃で例えば2〜16時間などマイルドな条件下で実施され得、又はより強い条件が使用され得る。
【0108】
このような方法によって作製されるポリマーはここに説明されるように作製されるPMAA−Naによって実証される生物学的特性の幾らか又は全てに類似する生物学的特性を有し得る。
【0109】
ここに記載されるPMAA−Naの作製における前駆体ポリマーとして使用されるPOMSuはWO01/18080及びここにおける実施例A4に記載されるように、原子移動ラジカル重合法、特に銅媒介方法を用いたメタクリルオキシスクシンイミドの均質重合によって作製された。作製のためのこのような方法は、本発明に従った使用のためのその及び他の前駆体ポリマーの作製のために有用であり得るが、本発明はこのような方法、このような方法によって作製される前駆体ポリマー、このような前駆体ポリマーから作製されるポリマーに限定されるのではない。
【0110】
本発明に従った使用のためのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマーは、アクリル酸由来のユニットにおけるアクリレートカルボン酸の水素原子の代わりに加水分解によって切断されて酸を与え得る(例えば、マイルドな加水分解による切断)基を有する対応する前駆体ポリマーの加水分解によって作製され得る。加水分解によって切断され得る基は、例えば適切な脱離基、例えば電子吸引基、アシレーティング基であり、これらは好ましくはカルボキシレート活性化であり、一般的にN−スクシンイミジル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、パラニトロフェニル、ジニトロフェニル、N−フタルイミド、N−ボルニル、シアノメチル、ピリジル、トリクロロトリアジン、5−クロロキノリノ、及びイミダゾリル基から成る群から選択され、好ましくはN−スクシンイミジル又はイミダゾリル基であり、特にN−スクシンイミジル基である。
【0111】
加水分解は例えば上記に記載の塩基性薬剤、例えば水酸化ナトリウムを用いて実施され得、そして例えば周囲温度、圧力、及び緩やかな加熱(例えば40〜60℃)で例えば2〜16時間のマイルドな条件下で実施され得る。
【0112】
上記のユニット(I)又は(II)を含むポリマーは、WO01/18080に記載のポリマー(“前駆体ポリマー”)若しくは類似するポリマー又はWO03/059973に記載のポリマー、若しくは類似するポリマーから作製され得る。このような前駆体ポリマーは、以下のユニット(Ia)を含むポリマー及びユニット(IIa)を含むポリマーを含む。
【0113】
【化5】
【0114】
【化6】
【0115】
(式中、R、R1、R2、R3、L、m及びnは上記に定義されるとおりであり、Xは脱離基、例えばアシレーティング基を表し、これは好ましくはカルボキシレート活性化であり、一般的にN−スクシンイミジル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、パラニトロフェニル、ジニトロフェニル、N−フタルイミド、N−ボルニル、シアノメチル、ピリジル、トリクロロトリアジン、5−クロロキノリノ、及びイミダゾリル基から成る群から選択され、Xは好ましくはN−スクシンイミジル又はイミダゾリル基を表す。)
基Qを含むユニットを含むポリマー、即ちユニット(III)を含むポリマー又はユニット(IV)を含むポリマーは対応する前駆体ポリマー(IIIa)又は(IVa)から作製され得る。
【0116】
【化7】
【0117】
【化8】
【0118】
(式中、R、R1、R2、及びR3、R4、R5及びR6、L、Q、X、m、n及びpは上記に定義される通りである。m、n及びpは各々500までの整数を示し得、好ましくはm、n及びpの合計は約500以下である。
【0119】
前駆体ポリマー、特に本発明に従った使用のためのポリマーを加水分解による切断によって与えるために適した脱離基を含む前駆体ポリマーは、任意の適切な方法、特に狭い分子量分布のポリマー特に狭い分子量分布、たとえば1.7以下、例えば1.6以下、例えば1.5以下、例えば1.4以下、例えば1.2以下、例えば1.7未満、例えば1.6未満、例えば1.5未満、例えば1.4未満、例えば1.2未満を有するポリマーの作製を可能にする任意の方法によって作製され得る。一般的により低い多分散性がよりよい。従って、1.2未満の多分散性が一般的に好ましい。該ポリマーは一般的に上記の定義セクションに記載される分子量を有する。
【0120】
所望の多分散性を有するポリマー前駆体は原子移動ラジカル重合法、例えば銅媒介原子移動ラジカル重合によって作製され得、又はフリーラジカル重合を含む他の方法が使用され得る。このような方法は、WO01/18080及びWO03/059973に記載される。例が以下に与えられる。本発明はまた、このような方法に従って得られ得るアクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマーも提供する。しかし、本発明はこのような方法によって作製されるポリマーに限定されるのではない。アクリル酸原子を含むユニットを含むポリマー(特に上記に記載の多分散性を有する)を作製するのに適した任意の方法が使用され得る。
【0121】
重合が原子移動ラジカル重合によって行われる場合、適切なラジカルイニシエーターが利用される。このようなイニシエーターは、アルキルハライド、好ましくはアルキルブロマイドを通常含む。特に、イニシエーターは2−ブロモ−2−メチル−(2−ヒドロキシエチル)プロパノエートである。重合はまた、Cu(I)錯体を含む重合メディエーターの存在下で行われる。このような錯体は、通常キレーティングリガンドによってキレート化されるCu(I)Br錯体である。典型的なメディエーターは、Cu(I)Br(Bipy)2、Cu(I)(Bipy)、Cu(I)Br(ペンタメチルジエチレン)、Cu(I)Br[メチル]6トリス(2−アミノエチル)アミン]及びCu(I)Br(N,N’,N’’,N’’’−ペンタメチルジエチレントリアミン)である。
【0122】
反応は適切な溶媒の存在下で起こる。このような溶媒は一般的に非プロトン性溶媒であり、例えばテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びスルホラン、並びにこれらの混合物である。代替的に水が使用され得る。特に好ましい溶媒は、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミド並びにこれらの混合物である。
【0123】
本発明の複合体の生物学的特性に関し、我々は本発明の複合体を作製する異なる方法が複合体の特性に影響し得ることを見出した。予め成形されたポリマーと抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質間の複合体を形成するよりもむしろ、抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質の存在下でポリマーを形成するために、ポリマー前駆体を特にマイルドな条件下で加水分解することによって本発明の複合体を形成することが有利であると思われる。
【0124】
抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質の存在下でのポリマー前駆体の加水分解は、一般的に抗原、免疫原又は物質が実質的に悪影響を受けないような条件下で実施されるべきであり、例えば加水分解は一般的にマイルドな条件下で実施されるべきである。例えば条件は、抗原、免疫原又は物質が実質的に分解、低下、又はそうでなければ関連する活性の損失が引き起こされないものであるべきである。
【0125】
例えば、抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質の存在下でのポリマー前駆体の加水分解は、塩基性薬剤、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基、例えばナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム又はリチウム塩基を用いて実施され得る。このような塩基は、例えば水酸化物、炭酸塩又は炭酸水素塩、例えば、水酸化ナトリウムであり得る。加水分解は、適切な溶媒、例えば有機溶媒、例えばDMF、DMSO、DMPU又はジメチルアセトアミド中で実施される。加水分解は、例えば周囲温度、圧力、及び穏やかな加熱(例えば40〜60℃)のマイルドな条件下で実施され得る。反応は例えば2〜16時間実施され得る。
【0126】
例えば上記に記載されるように、抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質の存在下でポリマー前駆体を加水分解することによって本発明に従った使用のためのポリマーを作製することによる本発明の複合体を作製する方法は、複合体がこのような方法によって得られ得るため本発明の一部である。
【0127】
本発明の複合体において、該ポリマーと病原生物又は抗原又はガンに対する薬理学的活性を有する物質の間の結合は、主に非共有(即ち、イオン又はファンデルワールス結合)であるが、薬理学的活性物質又は抗原の幾つかの分子は該ポリマーに共有結合で結合し得ることが考えられる。共有結合の程度は薬理学的活性物質又は抗原の性質及び該ポリマーの性質に依存し得る。
【0128】
上記に記載されるように、“複合体”という用語は該ポリマーと病原生物又は抗原又はガンに対する薬理学的活性を有する物質の間の結合を表すためにここで使用され、主に非共有であるが幾らかの共有結合を含み得る。
【0129】
本発明の複合体は、酸性基を有する高分子電解質である。脱プロトン化の程度は、複合体の環境によって変化し得る。本発明の複合体は塩の形態であり得る。塩は例えば1価、2価、3価、4価対イオンを有し得る。1価対イオンは、例えばアルカリ金属イオン、例えばナトリウム若しくはカリウムイオン又はアンモニウムイオンであり得る。2価対イオンは、例えばアルカリ土類金属イオン、例えばカルシウム又はマグネシウムイオンであり得る。他の対イオンは遷移金属のイオン、例えば鉄、スズなどを含む。1タイプ以上の対イオンが存在及び該ポリマーと結合し得る。更に塩形成基の数及び割合は、例えば上記に記載されるような適切なポリマー前駆体などの使用によって制御され得る。該ポリマーは酸性基、従って負の電荷を有するため、該ポリマーを有する複合体を形成する物質又は作用物質は一般的に反対の電荷に起因する静電力を含む非共有的相互作用による直接的複合体の形成を可能にするための正の電荷を保持することができることが理解される。例えば複合体形成に使用される物質又は作用物質は、塩基性、陽イオン性又は両イオン性の性質を有し得、又はこのような性質を有するように適合され得る。代替的に、特に、所望の物質又は作用物質が、例えば基Qとの結合を介して複合体を形成することができるように、基Qの適切な選択によって該ポリマー組成を変えることが可能である。
【0130】
本発明の一実施形態において、本発明の複合体中に又は抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質と結合して使用されるポリマーは、1.4未満、好ましくは1.2未満の多分散性を有するポリメタクリル酸(PMAA)又はその塩、例えばナトリウム塩である。該ポリマーの分子量は一般的に上記定義セクションに記載の通りである。ここにおける実施例に記載される又は実質的に記載されるようにポリマーを作製すること、例えば前駆体ポリマー、例えばN−スクシンイミド脱離基を有する前駆体ポリマーを水酸化ナトリウムを用いて加水分解することは有利であり得る。抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質を有する複合体をポリマーの作製時(in situ)に形成することが有利であり得る。
【0131】
本発明は特に、病原生物に対する、例えばリーシュマニアに対する薬理学的活性を有する物質、例えばアンフォテラシンBを含む本発明の複合体を含む本発明に複合体、及びこのような複合体を含む薬学的製剤、例えば上記に記載の薬学的製剤、及び病原生物によって引き起こされる疾患又は障害の治療及び/又は上記の病原生物に対する免疫応答を誘発することにおけるこのような複合体の種々の使用に関する。複合体のポリマー成分はアクリル酸又はその塩、例えば上記のポリマー、例えば上記のポリメタクリル酸ポリマー又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーである。
【0132】
本発明は特に、アンフォテリシンB及び上記のポリメタクリル酸ポリマー又はその塩、特にここにおける実施例に記載されるように作製されたPMAAポリマー又はその塩を含む複合体を提供し、そのような複合体を含む薬学的製剤、例えば上記の薬学的製剤を提供する。本発明はまた、上記のようにリーシュマニア症を治療すること及び/又はリーシュマニア症を引き起こす病原生物に対する免疫応答を誘発すること(リーシュマニア症に対する治療的及び/又は予防ワクチン接種を達成することを含む)におけるこのような複合体の種々の使用を提供する。
【0133】
リーシュマニア症を治療及び/又はリーシュマニア症を引き起こす病原生物に対する免疫応答を誘発すること(リーシュマニア症に対する治療用及び/又は予防用ワクチン接種を達成することを含む)のための代替的方法において、本発明のポリマーと病原生物に対する、例えばリーシュマニア症に対する薬理学的活性を有する物質、例えばアンフォテリシンBは上記に一般的用語で説明されるように、別個の製剤で同時投与され得る。1つの製剤は他方の前に投与され得るが、一般的に2つの製剤を実質的に同時に投与することが好ましい。
【0134】
以下の非制限的実施例は本発明を例証する。
【実施例】
【0135】
実施例A1:化学合成:メタクリル酸ナトリウム塩ホモポリマーの調製:
ポリ(メタクリル酸、ナトリウム塩)(PMAA−Na)2は、水酸化ナトリウムを用いてポリ(N−メタクリルオキシスクシンイミド(PMOSu)1の加水分解によって調製された(スキーム1)。
【0136】
PMOSu1は、原子移動ラジカル重合(ATRP)手法を用いてメタクリルオキシスクシンイミド3(スキーム2)の重合によって以前に合成された(Brocchini S. J., and Godwin A., “Uniform molecular weight precursors”, 国際公開番号WO01/18080A1&EP99307152.1(2001年3月15日))。
【0137】
【数1】
【0138】
実施例A2:PMOSu1の合成
【0139】
【数2】
【0140】
メタクリルオキシスクシンイミド3の合成。ジクロロメタン(12ml)中のN−ヒドロキシスクシンイミド(6.6g、57mmol)に、温度を5℃よりも低く維持しながら、トリエチルアミン(5.8g、57mmol)のジクロロメタン溶液(12ml)と同時に塩化メタクリロイルのジクロロメタン(12ml)溶液を滴下した。添加の完了後、反応混合液は更に1時間撹拌され、次いで水性炭酸水素ナトリウム(0.1M)及び水(3回)で洗浄された。有機相は次いで分離され、硫酸マグネシウムで乾燥された。溶媒はプロダクトを白色固体(これはエチルアセテート:ヘキサンから再結晶された)として残すために除去された。質量8g、m.p.=102℃(1H,500MHz,DMSO−d6):2.00(3H,s,CH3)、2.84(4H,s(CH2)2)、6.09(1H,s,=CH2),6.34(1H,s,=CH2)。
【0141】
均質重合:この反応はスキーム2に示される。モノマー3で56%の好ましい重量濃度でDMSOを溶媒として用いる典型的銅媒介重合において、銅(I)ブロマイド(31.3mg、0.2mmol)、2−2’−ビピリジン(Bpy)(68.3mg、0.4mmol)及びモノマー3(2.00g、10.9mmol)が、丸底フラスコに添加され、これは次いでセプタムでシールされた。次いでフラスコ中にDMSO(1.3g)が注入された。結果生じるブラウン混合物は、溶液が形成されるまで緩やかに加熱され、次いで約5分間アルゴンでパージされた。DMSO(0.2g)中の2−ブロモ−2−メチル−(2−ヒドロキシエチル)プロパネエート4(46.1mg、0.2mmol)のアルゴンでパージされた溶液は、次いで混合物中に注入され、フラスコはオイルバス中で100℃に加熱された。数分後、反応混合物は粘性になり、10〜15分後熱から離され、急速に冷却された。ポリマープロダクトは、粗製プロダクト混合物を溶解するために7〜8mlのDMSOの添加によって分離され、これはPMOSu1を白色固体として沈殿させるために撹拌されたアセトン溶液(100ml)にゆっくりと添加された。アセトン溶液は、銅種及びリガンドの溶解に起因して、ポリマー1の沈殿時に緑色になった。原子吸収分析は、ポリマー1中の銅含量をDMF中の28.0mg/mlの濃度における場合に0.153ppmであると示した。DMSO反応溶液からアセトン中へのポリマー1の沈殿は、ポリマープロダクトから銅を除くための銅媒介重合において典型的に使用されてきたアルミナクロマトグラフィーへの実行可能な代替を提供し得る。ポリマー1の分離された収量は、1.78g(89%)であった。数平均分子量は22,700g/モルであり多分散性指数は1.20であった。PMOSu1についての見かけの分子量及び分子量分布はGibson133屈折率検出器に連結したWaters StyragelHR4及びHR3(7.3×300mm)カラム、ポリ(メチルメタクリレート)PMMA校正標準及び0.1%LiCl溶出剤を有するDMFを使用して測定された。
【0142】
重合は、異なる分子量を有する狭いMWD PMOSu1を与えるために、異なる割合のモノマー3及びイニシエーター4を用いて実施された。これらの実験は表1に列挙され、メタクリルオキシスクシンイミド3において2〜6gの範囲の反応スケールで実施された。これらのDMSO中の均質重合条件はおよそ数分でポリマー1を与えた(例えば、表1の実験6は、狭いMWDポリマー1の相当の収量を与えるために2分後に冷やされた)。
【0143】
メタクリルオキシスクシンイミド3における溶液の均質性を33〜91%の範囲の溶媒重量率に維持するために、80〜130℃の範囲の温度で重合が実施された。好ましい溶媒はDMSOであったが、DMFを用いて同様の結果が得られた。極性溶媒(DMSO又はDMF)に対するモノマー3の重量割合は重合の結果に非常に重要であった。DMSO中で56%未満の重量割合のモノマー3(例えば50及び41%)は、ポリマーのより低い収率を結果生じた(各々、52及び40%)。DMSO中の60%よりも高いモノマー3重量濃度において、重合溶液は固化した。DMF中でも同様に、モノマーの重量濃度は重合反応の結果に非常に重要であったが、DMFにおける最大収量は、DMSOにおけるよりも低かった。ポリマー1の50%収率はモノマー3:DMFの重量割合61%において分離された。反応が33%のモノマー3の重量割合で実施された場合、ポリマーは分離されなかった。より高いモノマー重量濃度において(75%よりも高い)反応混合物は固化した。
【0144】
【表1】
【0145】
(a)初期モノマーと初期イニシエーター濃度の比
(b)DMSOを用いた希釈及び急速な冷却によって2.5分後に反応を停止した。
(B)沈殿重合:THF、酢酸エチル、トルエン及びアセトンなどの溶媒中のモノマー3の銅媒介重合はまた、狭いMWDポリマー1を与えた。ポリマーの分子量に依存して収率は10〜95%の範囲であった。より高い分子量のポリマー1(25,000g/モルまで)がTHFと炭酸エチレンなどの混合溶媒系中に得られた。10,000g/モルよりも高い分子量において収率は時々、重合がDMSO又はDMF中で実施された場合に見られたものよりも低かった。例証的な0.5gモノマー1を使用する銅媒介重合は、70℃で16時間以上THF中で実施され、表2に列挙される。これらのTHF反応で使用される銅キレートレジェンドは、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)であった。さらなる沈降反応がイニシエーターとして使用される2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸(BMA)と共に表3中に列挙される。
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
aプロダクトは直接的に濾過され洗浄された。
b新たに蒸留されたTHF
【0149】
実施例A3:PMAA−Na2を与えるためのPMOSu1の加水分解(スキーム1)
PMOSu1(1.00g、Mn=24,800g/モル、Mw/Mn=1.20、DMF溶出剤、PMMA標準)はDMF(5.0ml)中に溶解され、次いで2Mの水性水酸化ナトリウム(6.0ml)が撹拌下で滴下され、ポリマーの幾らかの沈殿を生じた。反応容器は直ぐに温かくなり、均質な溶液が直ぐに続いた。溶液は次いで24時間70℃に加熱され、その後更なる水が添加された(約50ml)。希釈された溶液は次いで再生セルロース膜(MWCO2000、SpectraPor)を用いて水に対して透析された。透析された溶液の凍結乾燥は、白色固体プロダクトPMAA−Na2(0.3g)を生じた。GPC(PBS溶出剤、PMAA−Na標準)Mn=22,000g/モル及びMw/Mn=1.28;FT−IR(ATR)1675cm−1、1547cm−1、1194cm−1。
【0150】
PMAA−Na2についての分子量値は、1由来の任意のポリマーについての繰り返しユニットの数を知るための重合度(DP)を測定するために使用され得る。この実施例においてPMAA Na2の繰り返しユニットの分子量は108であり、このサンプルについてのDPは約203であった(即ち、22,000g/モル÷108g/モル)。これは、PMOSu1についてのDPが203であることを意味し、PMOSu1の繰り返しユニットの分子量が183g/モルであるため、従って、この実施例におけるPMOSu1の平均分子量の絶対数は、37,149g/モル(即ち、183g/モル□203)であった。狭いMWD PMOSu1のDPについての203の値は同様の様式で1由来のポリマーの絶対分子量を測定するために使用され得る。
【0151】
実施例A4:PMOSu1の加水分解
PMOSu1(200mg、Mn=32,200g/モル、Mw/Mn=1.24、DMF溶出剤、PMMA標準)はDMSO(2ml)中に撹拌下で溶解された。1M水性水酸化ナトリウム(2.2ml)を滴下した。典型的に、幾らかの沈殿が生じた。更なる水(23ml)が水酸化ナトリウムの添加に続いて直ぐに添加され、混合溶液は室温で1時間撹拌された。結果生じる反応溶液は次いで44mlに希釈され、Visking透析膜(MWCO7000、Medicell International)を使用して1Lの水に対して24時間透析された。透析の間、水は6回代えられた。透析された溶液は0.2μmフィルターを通して濾過され、次いで0.2gのPMAA−Naプロダクト2を得るために凍結乾燥された。GPC(トリプル検出、NaNO3 0.2M/10% CH3CN)Mn=35,700g/モル及びMw/Mn=1.18)。
【0152】
調製されたPMAA−Na2の各沈殿は、1H核磁気共鳴及びフーリエ変換赤外分光法を用いて特徴付けられ、所望のプロダクトと一致することが見出された。
【0153】
実施例A5:PMAA−Na2を与えるための加水分解が続くAIBNを用いたフリーラジカル重合によるPMOSu1の合成
アセトン(30.0ml)中のメタクリルオキシスクシンイミド3(3g)及びAIBN(0.135g)のアルゴンでパージされた溶液は、閉じた容器の中で24時間50℃に加熱された。形成された白い沈殿物は、濾過によって単離され、DMSO(6.0ml)中に溶解され、急速に撹拌しているアセトン中で再沈殿された。濾過による単離の後、真空で乾燥し、DMSO(4.8ml)中の乾燥したPMOSu1の幾らかは、1N水酸化ナトリウム(5.2ml)及び水(56ml)と混合された。結果生じる溶液は、室温で1時間撹拌され、その後それは新たな水を用いて105mlに希釈され、Visking透析膜(MWCO 7000、Medicell International)を用いて5Lの水に対して24時間透析された。5Lの水は、6回代えられた。透析された溶液は、0.2μmのフィルターを通して濾過され、次いで凍結乾燥され、固体プロダクトとしてPMAA−Na2(0.56g)を与えた;Mw 26、100 Da、Mn 15,200g/モル、Mw/Mn 1.7(SEC 0.2M水性NaNO3/10%CH3CN、PMAA−Na標準物)。
【0154】
実施例A6:PMAA−Na2を与えるための、加水分解が続く4,4’−アゾビス(シアノ吉草酸)を用いたフリーラジカル重合による、PMOSu1の合成
圧力管はメタクリルオキシスクシンイミド3(0.5−1.0g)、4,4’−アゾビス(シアノ吉草酸)(15−30重量%)及び溶媒(例えば、アセトン、新たに蒸留されたTHF又はトルエンと炭酸エチレンを含むこれら溶媒の混合物)でチャージされ及び結果生じる溶液はシールされアルゴンを用いて15分間パージされた。シールされたフラスコは次いで70〜120℃で0.25〜2.5時間加熱された。実施例の反応条件については表4を参照。PMOSu1は、濾過によって白色沈殿物として単離され、真空で乾燥され、PMMA標準物を使用してDMF中でGPCが測定された。
【0155】
【表4】
【0156】
実施例B:合成ブロックコポリマーPEG−PMOSu6及びブロックコポリマーPEG−PMAA−Na7を与えるためのその加水分解
重合及び加水分解反応はスキーム3に示され、例は以前に記載される(Brocchini S. J and Godwin A. “Block Copolymers.” 国際特許公開番号WO/059973及びPedone et al, information rich biomedical polymer library, J. Mat. Chem., 2003, 13, 2825-2837)。
【0157】
【数3】
【0158】
スキーム3.ブロックコポリマーPEG−PMOSu6及びPEG−PMAA−Na7の合成
【0159】
(A)マクロイニシエーター5の調製
PEGマクロイニシエーター5は、Jankova等(Macromolecules (1998), 31, 538-541)の手順によって調製された。15mlの無水CH2Cl2中のトリエチルアミン(12.5×10−3モル、1.265g、1.75ml)は、冷却器、滴下漏斗、ガスインレット及び磁気スターラーを備えた250mlの三つ口丸底フラスコに添加された。0℃に冷却した後、10mlのCH2Cl2中の2,2−ブロモイソブチリルブロマイド(12.5×10−3モル、2,847g、1.55ml)が添加され、混合液は窒素でパージされた。次いで50mlのCH2Cl2中のモノメトキシキャップされたPEG(Mn=2,000g/モル)(5×10−3モル、10g)が窒素下で1時間滴下された。PEGは以前にトルエン中で共沸蒸留によって乾燥され、残留トルエンは真空中で除去された。反応混合物の温度は室温まで上げられ、反応は18時間継続した。溶液は濾過され、溶媒の半分が真空下で蒸発し、プロダクトが冷たいエーテル中で析出した。析出物は無水エタノール中で再結晶化された(冷蔵庫で一晩保存された)。マクロイニシエーター5は濾過され、冷エーテルで洗浄され、真空下で乾燥された。粗製プロダクトは80mlの水中に4g溶解させることによって精製された。過剰なi−BuBrを加水分解するために、溶液のpHはpH8に上げられた。次いで溶液はCH2Cl2(70ml)で抽出された。安定なエマルジョンが得られ、完全な相分離のために数時間が必要であった。溶媒は真空中で除去された。プロダクトは熱EtOH中で溶解され、結晶化するために冷蔵庫中に置かれた。次いでそれは濾過されエーテルで洗浄され、真空下で乾燥された。精製されたプロダクト5は白色であった。置換度は、H MNRスペクトルで計算された。この手順はPEG5000及びPEG10000由来のPEGマクロイニシエーター5を調製するためにも使用された。
【0160】
(B)ブロックPEG−PMOSu6の代表的な調製
モノマー3(WO01/18080中で合成される)の混合物、炭酸エチレン及びビピリジンはセプタムでシールされたチューブ中に配置され、それは5分間アルゴンでパージされCuBrが添加された。混合物は溶液(濃い茶色)を形成するために緩やかに加熱され更に30分間アルゴンでパージされた。次いで炭酸エチレン中の表5において特定されるモノマーと相対的な量のPEGマクロイニシエーター5溶液(エチレンカーボン及び5の両方を液化されるために緩やかに加熱される)は、10分間アルゴンでパージされ、アルゴンで洗浄されたシリンジでモノマー溶液に添加された。混合溶液はオイルバス中に配置され、撹拌された。反応は空気への曝露、冷却及びDMFでの希釈によって停止された。次いで溶液はアルミナ及びメタノール中で沈殿したポリマーで充填されたカラムを通過させた。PEG−PMOSu6沈殿物は濾過され、エーテルで洗浄され、真空下で乾燥された。PEG−PMOSu6は白色粉末として得られた。表5は、分子量2000g/モルのPEG由来のミクロイニシエーター5を用いて実施された重合の重合条件、収率及び分子量特性を示す。
【0161】
【表5】
【0162】
1EC=炭酸エチレン
2ゲル浸透クロマトグラフィーはPMMA標準物を有するDMF溶出剤を使用した。
3反応混合物は1時間アルゴンでパージされた。
【0163】
(C)分子量2000g/モルのポリ(エチレングリコール)由来のPEG−PMMA−Na7の合成の詳細な例
銅(I)ブロマイド(31.2mg、0.2mmol)、bpy(68.4mg、0.4mmol)及びN−メタクリルオキシスクシンイミド3(3.67g、20mmol)及び炭酸エチレン(2g)は丸底フラスコに添加され、それは次いでセプタムでシールされた。結果生じる茶色混合物は、溶液が形成されるまで緩やかに加熱され、次いで約15分間アルゴンでパージされた。炭酸エチレン(0.6g)中のPEG2000−マクロイニシエーター5(430mg、0.2mmol)のアルゴンでパージされた溶液は、次いで混合物中に注入され、フラスコはオイルバス中で1時間80℃に加熱された。粘性のある反応混合物は次いで熱から離され、急速に冷却された。結果生じる粗製のポリマープロダクトはDMF(8ml)中に溶解され、結果生じる溶液は、撹拌されたメタノール(500ml)にゆっくりと添加され白色固体としてPEG−PMOSu6(Mn=37,160g・モル−1 Mw/Mn=1.32 SEC(DMF 0.1% LiCl))を析出した。1H NMR(DMSO−d6)δ1.38(br、3H、CH3)、2.42(br m、2H、CH2C)、2.78(br、4H、CH2CH2)、3.50(s、4H、OCH2CH2O)。
【0164】
ブロックPEG−PMOSu6の加水分解が実施された。PEG−PMAA−Na塩へのこの加水分解は2M NaOH(0.6ml)を10mlの丸底フラスコ中のDMF(0.5ml)中のブロックコポリマー前駆体(0.1g、0.54mmol)の撹拌された溶液へゆっくりと滴下することによって実施された。反応混合物は16時間60℃に加熱され、更なる水(5.0ml)が添加された。希釈溶液は次いでViskingチュービング(MWCO12,000〜14,000)を用いて透析され、透析物は凍結乾燥され、白色固体プロダクト(PEG2000−PMAA−Na塩7(95%収率)Mn=34,110g・モル−1、Mw/Mn=1.34(トリプル検出−SEC;NaNO3 0.2M/10%CH3CN)を与えた。1H−NMR(D2O)δ0.85〜0.96(br s、3H、CH3)1.60、1.88(br、m、2H、CH2)及び3.58(s、4H、OCH2CH2O)PEG2000−ブロックに結合したヒンダードエステルが加水分解されなかったことを確証する。
【0165】
(D)分子量5000g/モルのポリ(エチレングリコール)由来のPEG−PMMA−Na7の合成の詳細な例
銅(I)ブロマイド(10.4mg、0.072mmol)、2,2’−ビピリジン(bpy、22.6mg、0.145mmol)及びN−メタクリルオキシスクシンイミド(2.0g、10.8mmol)及びPEG5000−マクロイニシエーター5(362mg、0.072mmol)及び炭酸エチレン(2.362g)はシュレンクフラスコに添加され、それは次いで隔膜でシールされた。結果生じる茶色混合物は凍結融解法によってガス抜きされた。混合物はオイルバス中で2時間110℃に加熱された。粘性にある反応混合物は次いで熱処理から除かれ、急速に冷却された。結果生じる粗製ポリマープロダクトは次いでDMF(8ml)中に溶解された。結果生じる溶液は、撹拌されたメタノール/ジエチルエーテル(2:1v/v、300ml)にゆっくりと添加され、白色固体(1.8g、76%)としてPEG−PMOSu6を沈殿した(1.8g、76%)Mn=32,860g・モル−1 Mw/Mn=1.36(SEC(DMF0.1%LiCl)。1H NMR(DMSO−d6)δ1.38(br、3H、CH3)、2.24(br m、2H、CH2C)、2.78(br、4H、CH2CH2)、3.50(s、4H、OCH2CH2O)。
【0166】
PEG−PMOSu6の加水分解は10mlの丸底フラスコ中のDMF(0.5ml)中のブロックポリマー前駆体6(0.1g、0.54mmol)の撹拌された溶液に2M NaOH(0.6ml)を1滴ずつゆっくりと添加することによって行われた。反応混合物は、60℃に16時間加熱され、更なる水(5.0ml)が添加された。希釈溶液は次いでビスキングチュービング(MWCO 12,000−14,000)を用いて透析され、透析物は白色固体プロダクトPEG5000−PMAA−Na塩としてPEG−PMAA−Na塩7を与えるために凍結乾燥された(75%収率);Mn=29,360g・モル−1 Mw/Mn=1.28(トリプル検出−SEC;NaNO3 0.2M/10%CH3CN)。1H−NMR(D2O)δ0.87〜0.97(br s、3H、CH3)1.63、1.89(br、m、2H、CH2)及び3.58(s、4H、OCH2CH2O)はPEG5000−ブロックに結合したヒンダードエステルが加水分解されなかったことを確証する。
【0167】
実施例C)アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の調製:
実施例C1:ポリマー、PMOSu(40mg)はDMSO(0.4ml)中に溶解され、該溶液はアンフォテリシンB(“薬剤”)(50mg)を含むバイアルに添加された。撹拌下、1M水性水酸化ナトリウム(0.44ml)が結果生じる薬剤混合物に滴下された。典型的に幾らかの沈殿が見られた。更なる水(4.7ml)は水酸化ナトリウムの添加に直ぐ続いて添加され、結果生じる混合物は室温で1時間撹拌された。反応溶液は次いで8.8mlに希釈され、ビスキング透析膜(MWCO7000、Medicell International)を用いて24時間水(1L)に対して透析された。透析中、水は6回代えられた。透析された溶液は0.2μmフィルターで濾過され、次いで0.9gの黄色固体プロダクトを得るために凍結乾燥された。FT−IR(ATR)1676cm−1、1568cm−1、1404cm−1、1070cm−1、1021cm−1。
【0168】
調製物中の薬剤及びポリマーの存在は、1H NMR及びFT−IR分光法によって確認された。調製物中のアンフォテリシンBの重量パーセント(wt%)は、Bristol−Myers Squibb Pharmaceuticals Ltd.から得たアンフォテリシンBを用いて作製された校正曲線に対する419.5nmにおけるUV分光法を用いて推定された。実施例C1におけるwt%は44〜48%であると推定された。
【0169】
それらの生物学的評価の前に、メタクリル酸ナトリウム塩ホモ−ポリマー及びコポリマーの水溶液は活性炭又はポリミキシンBカラムを用いてエンドトキシンを除去するために処理された。エンドトキシンレベルはリムルス試験(limulus amebocyte lysate (LAL) assay)を用いて測定され、記載される実験に使用された化合物は、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含んだ。これは注射用水についての欧州共同体基準である。
【0170】
D)初代細胞に対するメタクリル酸ナトリウム塩ホモポリマー及びコポリマーの細胞障害性
全ての実験は初代ヒト細胞で実施された。
【0171】
実施例D1:ヒト赤血球:
ヒト赤血球の2%v/v溶液はRPMI 1640中で調製された。PMAA−Na(“薬剤”)のストック溶液はRPMI 1640中で調製された。TritonX−100の1%溶液は100%細胞溶解のためのポジティブリファレンスとして使用された。デキストラン及びポリ−L−リシンは各々ネガティブ及びポジティブコントロールとして使用された。サンプル及び赤血球の等量は96ウェルマイクロタイター(microtitre)プレート中にアリコートされ、37℃でインキュベートされた。1時間及び24時間の後、各サンプルは遠心分離され(2,000g、10分)上清は96ウェルマイクロタイタープレートに添加された。吸光度は分光計を用いて490nmで測定された。溶解(lysis)の程度はTritonX−100によって引き起こされた100%溶解のパーセントとして表された。図1に示されるように、1時間又は24時間後、2,000μg/mlまでの濃度で、3人のドナー(A,B,C)からのヒト赤血球を用いて、PMAA−Naに顕著な毒性は見られなかった。
【0172】
実施例D2:ヒト全血:
ヒト全血の2%v/v溶液はRPMI 1640中にドナーDから調製された。PMAA−Na(“薬剤”)のストック溶液は、RPMI 1640中に調製された。Triton X−100の1%溶液は、100%細胞溶解のためのポジティブリファレンスとして使用された。デキストラン及びポリ−L−リシンは、各々ネガティブ及びポジティブコントロールとして使用された。等量のサンプル及び全血は96ウェルマイクロタイタープレート中にアリコートされ、37℃でインキュベートされた。1時間、6時間及び24時間後、各サンプルは遠心分離され(500g、10分)そして上清が96ウェルマイクロタイタープレートに添加された。吸光度は分光計を用いて490nmで測定された。溶解の程度は、Triton X−100によって引き起こされる100%溶解のパーセントとして表された。図2に示されるように、1時間後又は6時間後又は24時間後に、500μg/mlの濃度までのヒト全血を用いて、PMAA−Naに顕著な毒性は見られなかった。
【0173】
実施例D3
a)単球由来マクロファージ
単球は一人のドナーからの新鮮な血液から分離され、RPIM 1640、20mM L−グルタミン、ペニシリン(200IU/ml)、ストレプトマイシン(200μg/ml)及び10%ヒト血清中で培養され、1×106細胞/mlの密度でプレートされた。単球はさらに3日の粘着性によって単球由来マクロファージ(MDMs)に分化させた。PMAA−Na含有培地が次いで0〜2,000μg/mlの濃度範囲で細胞に添加された。細胞はチアゾリルブルー(MTT、Sigma、5mg/ml)の添加の前に71時間インキュベートされた。細胞培養物の生存率は任意の化合物の存在無しで増殖した細胞の生存率のパーセントで表された。デキストラン及びポリ(L−リシン)は各々ネガティブ及びポジティブコントロールとして使用された。PMAA−Naは、図3aに示されるようにMTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて試験された最高濃度2,000μg/mlにおいてMDMsに対して毒性でなかった。
【0174】
b)腹腔組織マクロファージ
ヒト腹膜細胞はRPMI 1640培地、20mM L−グルタミン、10%混合ドナーのヒト血清、200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシン中で培養され、それらの密度は1×106細胞/mlに調節された。PMAA−Na含有培地は次いで0〜2,000μg/mlの濃度範囲で細胞に添加された。細胞はMTTの添加前に71時間インキュベートされた。細胞の生存率は、任意の化合物の存在無しで増殖した細胞の生存率のパーセントとして表された。デキストラン及びポリ(L−リシン)は各々ネガティブ及びポジティブコントロールとして使用された。PMAA−Naは、500μg/mlまで腹腔マクロファージに対して毒性でなかった。500μg/m〜2,000μg/mlの間で、図3bに示されるように、中程度の量の毒性がMTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて見られた。
【0175】
E)抗凝血活性:
実施例E1:抗凝血活性は、プロトロンビン時間(PT)、カオリン部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン時間(TT)、フィブリノゲン及び抗Xa活性の測定として測定された。化合物はホスフェート緩衝生理食塩水溶液に溶解され、血漿/ベロナールバッファー(1:1)と50:50で混合され、試験された。抗Xa活性はヘパリン
/ml(HEP(Xa)(V/ml)のユニットとして表された。PMAA−Naは、APTT及びTTを延長したがPTに影響しなかった。抗Xaアッセイはネガティブであった。従って、これら分子の抗凝血活性は、“ヘパリン様”活性ではなかった(表6を参照)。
【0176】
【表6】
【0177】
連続携行式腹膜透析(CAPD)の患者からの腹膜細胞は各化合物及び36時間のインキュベーション後に収穫された培養上清と培養された。炎症性ケモカイン及び炎症性サイトカインはEIA(R&D Systems)によって測定された。
【0178】
実施例F1:
3人のドナー(A、B及びC)からのヒト腹膜細胞は、PMAA−Na(500μg/ml)と培養され、36時間後に収穫された培養上清はMIP−1βについて分析された。全ての試薬及びPMAA−Naは、リムルス試験(Pyrotell, Associates of Cape Cod, US)を用いて測定されるように、<0.06エンドトキシンユニット/ml(EU/ml)を含んだ。
これは注射用水についての欧州共同体基準値である。図4に示されるように、PMAA−Naの存在下でMIP−1βの有意な放出があった。
【0179】
実施例F2:
2人のドナー(A及びB)からのヒト腹膜細胞はPMAA−Na(500μg/ml及び2,000μg/ml)と培養され、36時間後に収穫された培養上清はTNF−αについて分析された。全ての試薬及びPMAA−Naは、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含んだ。図5に示される様に、両方の濃度においてPMAA−Naの存在下でTNF−αの有意な放出があった。
【0180】
実施例F3:
ヒト腹膜細胞はPMAA−Na(500μg/ml)と培養され、36時間後に収穫された培養上清は炎症性ケモカインMIP−1α、MIP−1β及びIL−8、並びに炎症性サイトカインTNF−α、IL−1β及びIL−6について分析された。全ての試薬及びPMAA−Naは、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含んだ。3人までの異なるヒトドナー(A、B及びC)からの細胞での結果が図6に示される。組織抗原提示細胞からのこれらのケモカイン及びサイトカインの放出は、ヒトにおける薬理学的Th1応答を促進するレベルであったが、ヒトにおいて顕著な有害副作用を引き起こすのに十分高くはなかった。
【0181】
実施例F4:
血液由来単球由来マクロファージは、2,000μg/mlまでの濃度のPMAA−Naと培養された。全ての試薬及びPMAA−Naは、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含んだ。MIP−1βの放出は見られなかった。3人の異なるヒトドナー(A、B及びC)からの細胞での結果が図7に示される。従って、マクロファージ起源の細胞及び組織ボディーベースコンパートメントからの他の抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)と比較した血液単球起源の細胞上にPMAA−Naの特異な免疫調節効果が存在する。
【0182】
G)商業的に入手可能なPMAA−NaのTh1アジュバント活性の欠如
実施例G1:
ヒト腹腔マクロファージは、MWt’s範囲(Mn=1,300、22,100及び129,000g/モル)且つ狭い分子量分布の商業的に入手可能なPMAA−Na(Polymer Standards Service, Germany)と培養された。全ての試薬及びPMAA−Naは<0.06エンドトキシンユニット/mlを含んだ。商業的に入手可能なPMAA−Naの1つは、我々のPMAA−Na(Mn=22,000g/モル)の合成調製物と同等のMWtを有した。培養上清は36時間後に収穫された。MIP−1βの放出は無かった。図8は、2人のヒトドナー(A及びB)からの個別結果を示す。
【0183】
実施例G2:
ヒト腹腔マクロファージは、MWt’sの範囲(Mn=1,300、22,100及び129、000g/モル)且つ狭い分子量分布の商業的に入手可能なPMAA−Na(Polymer Standards Service, Germany)と培養された。商業的に入手可能なPMAA−Naの1つは我々のPMAA−Na(Mn=22,000g/モル)の合成調製物と同等のMWtを有した。全ての試薬及びPMAA−Naは<0.06エンドトキシンユニット/mlを有した。培養上清は36時間後に収穫された。TNF−αの放出は無かった。図9は、2人のヒトドナー(A及びB)からの個別結果を示す。
【0184】
H)初代ヒト細胞に対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の細胞障害性
実施例H1:赤血球
方法は実施例D1について記載される通りであった。臨床グレードのアンフォテリシンB及びアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(どちらも図において“薬剤”と呼ばれる)間で比較が行われた。試験のための化合物のストック溶液はMGM中に調製された。ヒト赤血球溶血は、3人の異なるドナー(A、B及びC)において、1時間(図10)、6時間(図11)及び24時間(図12)のインキュベーション後に測定された。1時間のインキュベーションの後、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物について毒性は見られなかった。6時間のインキュベーションの後、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性は、臨床グレードのアンフォテリシンBのものよりも顕著に低かった。インキュベーション時間が24時間に増加された場合、臨床グレードのアンフォテリシンBの毒性は100%に上昇したが、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性には更なる上昇は存在しなかった。
【0185】
実施例H2:赤血球
方法は実施例H1について記載される通りであった。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(“薬剤”)による赤血球溶血度は、1時間及び24時間のインキュベーション後に、1,000μg/mlまでの濃度について測定された。結果は図13に示される。
【0186】
実施例H3:末梢血単核細胞:
末梢血単核細胞(PBMCs)はRPMI培地、10%混合ドナーヒト血清、200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシン(1×105細胞における)中に懸濁され、37℃で5%CO2を有する96ウェルの組織培養プレート中で培養された。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(“薬剤”)を含有する培地は、100μl/ウェルの終量において0〜70μg/mlの濃度範囲で細胞に添加された。細胞はMTT(5mg/ml)の添加の前に、1日又は2日又は6日間インキュベートされた。MTT溶液は1時間後に除去され、MTT結晶を溶解するためにDMSO(100μl)が添加された。光学密度はプレートリーダー(Molecular Devices, Wokingham, UK)を用いて550nmで測定された。細胞培養物の生存率は、任意の化合物の存在なしで増殖した細胞の生存率のパーセントとして表された。デキストラン及びポリ(L−リシン)は、各々ネガティブ及びポジティブコントロールとして使用された。化合物は、1日の培養の後、2日の培養の後、6日の培養の後、MTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて試験された最高濃度70μg/mlにおいて末梢血単核細胞に対して毒性が無かった。図14は、3人までの代表的ヒトドナーからの個別結果を示す。各ドナーからの結果は図14における線グラフとして示される。
【0187】
実施例H4:単球由来マクロファージ:
単球由来マクロファージ(MDM)細胞は、密度勾配遠心法により1人のドナーからの新鮮な血液から分離され、RPMI 1640、20mM L−グルタミン、ペニシリン(250IU/ml)、ストレプトマイシン(250μg/ml)及び10%ヒト血清を含むマクロファージ増殖培地(MGM)において培養された。それらは1×106細胞/mlの密度でプレートされ、3日間MDMに分化された。該化合物(“薬剤”)を含有する培地は次いで125μg/mlの濃度まで細胞に添加された。細胞はMTTの添加前2日又は3日の間インキュベートされた。細胞生存率は、任意の化合物の存在無しで増殖した細胞の生存率のパーセントとして表された。デキストラン及びポリ(L−リシン)は、各々ネガティブ及びポジティブコントロールとして使用された。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物は、図15に示されるように、培養の2日及び3日後のMTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて試験された125μg/mlまでの濃度の全てにおいて臨床グレードのアンフォテリシンBよりも低毒性であった。
【0188】
J)アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の前鞭毛期リーシュマニアに対する抗リーシュマニア活性の測定
実施例J1:
前鞭毛期メキシコリーシュマニアがこれら実験に使用された。それらは、15%ウシ胎児血清(56℃で1時間熱不活性化された)及びゲンタマイシン(1mg/100ml)の添加されたSchneider’s Drosophila増殖培地(Invitorogen)中に維持された。寄生体濃度は2×106寄生体/mlに調節された。試験化合物の二倍希釈物は、増殖培地における所望の終濃度の2倍で調製された。等量の薬剤及び寄生体サスペンジョンは次いで96ウェルプレート中で混合され、26℃で24時間インキュベートされた。ここで、MTT(5mg/ml)が添加され、プレートはさらに24時間26℃でインキュベートされた。プレートは次いで遠心分離され(2000g、5分)、上清は廃棄され、ペレットは100μlDMSO中に再懸濁された。吸光度は分光計を用いて570nmで測定された。結果は、コントロールウェル中の前鞭毛期を複製する未処理のODを用いて測定される100%生存率の前鞭毛期のパーセント生存率として表された。
【0189】
前鞭毛期メキシコリーシュマニアについての臨床グレードアンフォテリシンBの50%致死量(LD50)は、0.14μg/mlであった(図16、差込み)。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについての臨床グレードアンフォテリシンBの90%致死量(LD90)は、1.49μg/mlであった(図16、差込み)。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いた3つの実験からの結果は図16に示される。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについてのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の50%致死量(LD50)は、0.10〜0.19μg/mlであった(図16)。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについてのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の90%致死量(LD90)は、1.02〜1.49μg/mlであった(図16)。前鞭毛期メキシコリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の活性は重量毎重量ベースで臨床グレードアンフォテリシンBのものと同様であった。
【0190】
実施例J2:
前鞭毛期ドノバンリーシュマニアがこれらの実験のために使用された。それらは、ウシ胎児血清(56℃で1時間熱不活性化された)及びゲンタマイシン(1mg/100ml)の添加されたSchneider’s Growth Media199中に維持された。寄生体濃度は2×106寄生体/mlに調節された。試験化合物の2倍希釈物は、増殖培地における所望最終濃度の二倍で調製された。等量の薬剤及び寄生体懸濁液が次いで96ウェルプレート中で混合され、26℃で24時間インキュベートされた。今回、MTT(5mg/ml)が添加され、プレートは26℃でさらに24時間インキュベートされた。該プレートは次いで遠心分離され(2000g、5分)、上清は廃棄され、ペレットは100μl DMSO中に再懸濁された。吸光度は分光計を用いて570nmで測定された。結果は、コントロールウェル中の前鞭毛期を複製する未処理のODを用いて測定される100%生存率を有する前鞭毛期のパーセント生存率として表された。
【0191】
前鞭毛期ドノバンリーシュマニアについての臨床グレードアンフォテリシンBの50%致死量(LD50)は0.08μg/mlであった(図17、差込み)。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアについての臨床グレードアンフォテリシンBの90%致死量(LD90)は1.91μg/mlであった(図17、差込み)。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いた3つの実験からの結果は図17に示される。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアについてのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の50%致死量(LD50)は、0.10〜0.17μg/mlであった(図17)。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアについてのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の90%致死量(LD90)は、0.98〜1.28μg/ml(図17)であった。従って、前鞭毛期ドノバンリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の活性は、重量毎重量ベースで臨床グレードアンフォテリシンBのものと同様であった。
【0192】
K)無鞭毛期リーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の抗リーシュマニア活性の測定
無鞭毛期メキシコリーシュマニアは、10%ヒト血清(56℃で1時間熱不活性化された)及び200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640(Invitrogen)中に維持されたヒト単球由来のマクロファージを感染するために使用された。細胞は106細胞/mlでLab−Tek Chamber Slides(Nunc)中にプレートされ、37℃/5%CO2において3日間インキュベートされた。培地は次いでチャンバスライドから吸引され、等量の新しい培地が添加して戻され、ここにおいて無鞭毛期の濃度は5:1の寄生体:細胞感染比率を与えるように調節されている。細胞は次いで、マクロファージの感染が確立されることを可能とするために、32℃で20時間インキュベートされた。培地は次いでチャンバスライドから吸引され、試験化合物の二倍希釈物と置換された。細胞は次いで32℃で72時間インキュベートされた。PBSでの洗浄の後、チャンバは分離され、スライドは乾燥させられ、次いでメタノール中に固定された。各スライドは次いでギエムザで染色され、顕微鏡で調べられた。全体で250細胞が感染した及び感染していない細胞の数の測定のためにカウントされた。
【0193】
感染指数は寄生体/細胞の平均数×感染した細胞のパーセントとして計算された。細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアの増殖の50%抑制は、0.14μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図19a)又は0.45μg/mlのAmbisome(図19b)と比較して、0.18〜0.32μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(図18)で達成された。細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアの増殖の90%抑制は、0.95μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB又は3.89μg/mlのAmbisomeと比較して、1.18〜1.55μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いて達成された。
【0194】
図19及び20のグラフは、臨床グレードアンフォテリシンB及びAmbisome(リポソームアンフォテリシンB,Gilead Sciences, Great Abingdon, Cambridge, UK)とアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアに対する相対活性の傾きを比較する。それらはアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物のキリングカーブ(killing curve)は、Ambisomeのキリングカーブよりも急であることを実証する。
【0195】
実施例K2:
無鞭毛期ドノバンリーシュマニアは、10%ヒト血清(56℃で1時間熱不活性された)、200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシンを添加したRPIM 1640(Invitrogen)中に維持されたヒト単球由来のマクロファージを感染するために使用された。細胞は106細胞/mlでLab−Tek Chamber Slides(Nunc)中にプレートされ、37℃/5%CO2で3日間インキュベートされた。培地は次いでチャンバスライドから吸引され、等量の新たな培地が添加して戻され、ここにおいて無鞭毛期の濃度は5:1の寄生体:細胞感染比率を与えるように調節されている。細胞は次いで、マクロファージの感染が確立されることを可能にするために、32℃で20時間インキュベートされた。培地は次いでチャンバスライドから吸引され、試験化合物の二倍希釈物と置換された。細胞は次いで32℃で72時間インキュベートされた。PBSで洗浄したのち、チャンバは分離され、スライドは乾燥させられ、次いでメタノール中で固定された。各スライドは、次いでギエムザで染色され、顕微鏡で調べられた。全体で250細胞が感染した及び感染していない細胞の数を測定するためにカウントされた。
【0196】
感染指数は寄生体/細胞の平均数×感染した細胞のパーセントとして計算された。細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの増殖の50%抑制は、0.54μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)又は1.96μg/mlのAmbisome(図22b)と比較して0.30〜0.71μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(図21)で達成された。細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの増殖の90%抑制は、2.31μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB又は>8μg/mlのAmbisomeと比較して、2.18〜3.18μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いて達成された。
L)アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物のインターフェロンγ放出、Th1アジュバント活性
【0197】
実施例L1:
マクロファージ及び樹状細胞を含むヒト腹膜細胞は、各化合物と共にマクロファージ増殖培地中で培養された。全ての試薬及び化合物は、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含有した。培養上清は24時間後に収穫された。インターフェロンγは、EIAによって測定された。腹腔マクロファージからのTh1促進サイトカイン、インターフェロンγの放出は、図23に示されるように、コントロールのみ、臨床グレードアンフォテリシンB、商業的PMAA−Na又はPMAA−Naの細胞と比較してアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(100μg/ml)の存在下で有意により高かった。エンドトキシンの無いアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いたインターフェロンγ放出のレベルは、ヒトにおいて薬理学的Th1応答を促進するために十分であるが、ヒトにおいて顕著な有害副作用を引き起こす程高くはない。
【0198】
実施例L2:
このセクションに記載される実験の目的は、抗原及びPMAA−Naの調製物もTh1ヘルパー応答を刺激するかどうかを確証するためである。
【0199】
ツベルクリン−PMAA−Naは以下のように作製された。実施例A1〜A4に記載されるように調製されたホモポリマー、PMAA−Na(30mg)、は、ツベルクリン精製タンパク質誘導体BP(10ml、100,000ユニット/ml、Evans Vaccines)に添加され、結果生じる溶液は室温で1.5時間撹拌された。溶液は次いでビスキング透析膜(MWCO 7000、Medicell International)を用いて1リットルの水に対して透析された(水を6回代えながら)。透析された溶液は、0.2μmフィルターで濾過され、オフホワイトの固体プロダクト(20mg)を得るために凍結乾燥された。TF−IR(ATR)1648cm−1、1545cm−1、1450cm−1、1398cm−1、1259cm−1。
【0200】
PBMCsは次いでFicoll−Paqueを用いて全血から分離され、10%ヒト血清、200μg/mlペニシリン及び200 IU/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640中に再懸濁された。リムルス試験(Pyrotell, Associates of Cape Cod, US)を用いて測定されたように、全ての試薬及び化合物は、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含有した。細胞(105細胞/ウェル)及び各化合物は一対(in duplicate)で混合され、37℃/5%CO2で4日間インキュベートされた。[3H]−チミジン(比活性20〜30Ci/mmol;Amersham Biosciences, UK)が1μCi/ウェルで更に18時間添加された。細胞は次いで収穫され、液体シンチレーションカウンターを用いて増殖が測定された。結果は平均カウント/分(cpm)±semとして表された。図24aは、それらが1μg/mlのツベルクリン−PMAA−Na調製物と培養された場合、Tリンパ球の有意に上昇した増殖が存在したことを示す。それらが10μg/mlのツベルクリン−PMAA−Na調製物(P=0.001)と培養された場合、Tリンパ球のより更なる増殖が存在した。
【0201】
図24bは、ドナーBについての結果を示す。10μg/mlのツベルクリン抗原(P=0.002)とよりも10μg/mlのツベルクリン−PMAA−Na調製物とでは有意な更なるTリンパ球増殖が存在した。これはツベルクリン−PMAA−Na調製物が、ツベルクリン抗原そのものよりも有意により多くのTリンパ球増殖を引き起こすことを示す。
【0202】
実施例L3:インターフェロンγ分泌細胞についてのELISpotアッセイ
ヒトPBMCsは単離され、10%ヒト血清、200μg/mlペニシリン及び200 IU/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640中に2×105細胞/ウェルに調節された。全ての試薬及び化合物は<0.06エンドトキシンユニット/mlを含有した。PBMCs及び化合物はヒトインターフェロンγモノクローナル抗体(R&D Systems UK)でコートされたELISpot PVDF−バックドマイクロプレート(backed microplate)のウェル中で混合された。刺激されていない細胞がネガティブコントロールとして使用され、組換えヒトインターフェロンγがポジティブコントロールとして使用された。プレートは24時間37℃/5%CO2でインキュベートされた。次いで、製造者の指示書に従いマイクロプレートを確立し、インターフェロンγについての陽性スポットの数を数えた。各スポットは1つのインターフェロンγ分泌細胞を示した。図25はツベルクリンPPD−PMAA−Na調製物が、初代ヒトTリンパ球からのインターフェロンγの放出を刺激することにおいてツベルクリン抗原のみよりも有意により効果的であったことを示す。Tリンパ球からのインターフェロンγ分泌のこの上昇は、50μg/mlのツベルクリンPPD−PMAA−Na調製物及び100μg/mlのツベルクリンPPD−PMAA−Na調製物で見られた。
【0203】
M)内臓リーシュマニア症のマウスモデルにおけるドノバンリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の抗リーシュマニア活性の測定
無鞭毛期ドノバンリーシュマニア種(MHOM/ET/67/L82)は、重篤に感染したドナーSyrian Hamster−Mesocritetus auratusの脾臓から集められた。7.5〜10×107の無鞭毛期/ml含有接種源が調製された。特定病原体フリーであるメスBALB/cマウス(20g)は、0日目に、200μL(1.5〜2×107無鞭毛期に等しい)を用いて静脈から感染された。感染の最終点は、14日目に一つのマウスにおける感染のレベルを調べるための顕微鏡読み、及び感染後21日目に総寄生体負荷量を測定するためのギエムザ染色された肝臓のインプレッションによって評価された。
【0204】
以下の化合物は以下の投薬計画に従って静脈投与された:
a)感染後、未処理のコントロール。
b)感染後、14、16及び18日目、0.5mg/kgのブランクリポソーム。
c)感染後、14、16及び18日目、8mg/kgのPMAA−Na。
d)感染後、14、16及び18日目、1mg/kgの臨床グレートアンフォテリシンB。
e)感染後、14、16及び18日目、0.5mg/kgのAmBisome。
f)感染後、14、16及び18日目、0.5mg/kgのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物。
g)感染後、14、16及び18日目、1mg/kgのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物。
h)感染後、14、16及び18日目、2mg/kgのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物。
【0205】
各グループに5動物存在した。PMAA−Naの静脈注入及びアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物のためのキャリア溶液は、5%デキストロースであった。すべての薬剤調製物は0.2μLシリンジフィルターを用いて濾過された。静脈注入量は注入毎200μLであった。
【0206】
マウスのグループは毒性の測定として処置の前後に計量され、パーセント重量変化が示された。感染後21日(これは処置完了後3日であった)に、寄生体負荷量は10%ギエムザで染色されたメタノール固定された肝臓インプレッションスライドから顕微鏡で測定された。無鞭毛期/500肝臓細胞の数は顕微鏡でカウントされ、結果は未処理コントロールのパーセントとして表された。
【0207】
図26は、ブランクリポソーム及びPMAA−Naが抗リーシュマニア活性を有さないことを示す。コントロールと比較して、無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの臨床グレードアンフォテリシンB、Ambisome、1mg/kgのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物、2mg/kgのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物による有意なキリング活性が存在した(P<0.0001)。臨床グレードアンフォテリシンB,Ambisome及びアンフォテリシンB−PMAA−Na(2mg/kg)の抗リーシュマニア活性は、互いに有意に相違しなかった(P<0.05)。従って、これらの結果はアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物が、内臓リーシュマニア症のこの動物モデルにおいてAmbisomeと同程度に有効であることを示す。
【0208】
実施例N:PMAA−Na合成
異なる分子量のPMAA−Naコンストラクトの生成−
PMAA−Na前駆体(PMOSu)の合成の間、19kD〜37kDの範囲の分子量を有する幾つかのポリマーを生成するために、重合条件は実施例Aに記載される様に変更された。分子量及び多分散性指数はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて確立された。
【0209】
異なる分子量のPMAA−Naコンストラクトの初代ヒト細胞(赤血球溶血及び末梢血単核細胞(PBMCs))についての毒性はMTTアッセイによって確立された。PMAA−Naコンストラクトは、1時間、5時間及び24時間のインキュベーション後、2mg/mlの濃度で赤血球溶血を引き起こさなかった(図27参照)。更に、それらは1日及び2日間のインキュベーションの後、2mg/mlで末梢血単核細胞に対して毒性でなかった(図28参照)。これらの結果は、作製されたPMAA−Naコンストラクトの分子量によって影響されなかった。
【0210】
実施例O:保存時のアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体の安定性:
凍結乾燥されたアンフォテリシンB−PMAA−Naは4ヶ月間アルゴン下4℃で保存された。それはまた、5%デキストロース中に1mg/mlの濃度で溶解され、アルゴン下で7ヶ月間4℃で保存された。この期間の終りに、アンフォテリシンB−PMAA−Na複合体の安定性が、それをヒト赤血球とインキュベートすることによって測定された。以前の実験はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体はアンフォテリシンBよりも遥かに毒性が低いことを示した。従ってこのアッセイは、数ヶ月間の複合体の保存の後に繰返された。
【0211】
実験は以前に記載されるように行われた。新たに調製された臨床グレードアンフォテリシンBが比較のためのリファレンスとして使用された。インキュベーションは1時間及び6時間行われた。図29は、アンフォテリシンB−PMAA−Na複合体は保存後に赤血球に対して毒性が無かったことを示す。従って、複合体は、それが凍結乾燥された粉末として4ヶ月間保存された場合、及びまたそれが5%デキストロース中に4℃で7ヶ月間保存された場合、安定である。
【0212】
保存後の複合体の抗リーシュマニア活性も上記実施例J1及びK1に記載されるように測定された。図30は、アンフォテリシンB−PMAA−Naのフリー前鞭毛期リーシュマニア及び細胞内無鞭毛期に対する抗リーシュマニア活性を示す。アンフォテリシンB−PMAA−Naの活性は、4℃で4ヶ月間の粉末での保存によって影響されなかった。アンフォテリシンB−PMAA−Naの活性は5%デキストロース中の4℃で7ヶ月間の保存によって影響されなかった。
【0213】
実施例P:クリプトコッカスネオフォルマンス
National Collection of Pathogenic FungiからのCryptococcus neoformans mucoidal strains var neoformans 3003及びvar gattii 3216が試験された。var neoformansの非ムコイド臨床分離株及びver gattiiの非ムコイド臨床分離株も試験された。該生物は、32℃で5%CO2で加湿されたチャンバ中のクロラムフェニコール(Oxoid,UK)を添加したサブロー(Sabouraud)デキストロース寒天プレート上に維持された。
【0214】
菌株は、滅菌水に懸濁される前に48時間サブローデキストロース寒天上で継代培養され、それらの濃度は4×104コロニー形成単位(CFU)/mlに調節された。サンプルの二倍希釈物は、×2酵母窒素ベース(YNB、Anachem)中の所望の終濃度の二倍で作製された。等量のサンプル及び酵母懸濁物は、次いで96ウェルの平底プレートに添加され、32℃でインキュベートされた。3日のインキュベーションの後、プレートは、酵母をウェルに亘って均一に分散させるために、全体的に振盪され、濁度が分光計を用いて測定された(490nm)。100%生存率は、コントロールウェルにおける未処理酵母の光学密度を用いて定義された。
【0215】
初代ヒトマクロファージの感染のために、クリプトコッカス株は、それらにカプセルを形成させるために、10%ヒト血清を添加したYNB中で48時間5%CO2の存在下で継代培養された。腹腔ヒトマクロファージ又は単球由来のマクロファージ(〜750,000)は、チャンバスライド(Lab−Tek,USA)上にプレートされ、24時間付着された。酵母細胞は、スピンダウンされ、洗浄され、そして10%ヒト血清及び2%グルコース(後者は酵母の増殖を促進する)を添加したRPMI中に再懸濁された。この懸濁物は、マクロファージの15倍濃度で添加され、感染が5%CO2で加湿されたチャンバ中で37℃で〜21時間進行された。培地は次いで吸引され、マクロファージはPBSで洗浄された。試験サンプルの二倍希釈物は次いで10%ヒト血清を添加したRPMI中に添加され、3日間5%CO2で加湿されたチャンバ中37℃でインキュベートされた。培地は吸引され、全ての細胞外cryptococciを除去するためにマクロファージはPBSで徹底的に洗浄された。チャンバは除去され、スライドはメタノール及び熱を用いた固定の前に乾燥させられ、次いでグラム染色された。感染した及び感染していないマクロファージの数及びグラム陽性酵母CFUの数がカウントされた。結果は感染指数として表され、これはCFU/感染した細胞のパーセントの平均数として計算された。
【0216】
図31(i)及び(ii)は、Cryptococcus neoformans var neoformansについての結果を示し、図31(iii)及び(iv)は、Cryptococcus neoformans var gattiについての結果を示す。アンフォテリシンB(0.9〜1.4μg/ml)及びアンフォテリシンB−PMAA−Na(1.6〜2.7μg/ml)についてのLD50は同様である。図32(i)及び(ii)は、Cryptococcus neoformans var neoformansについての結果を示し、図32(iii)及び(iv)は、これらの生物がヒト単球由来マクロファージを感染した場合のCryptococcus neoformans var gattiについての結果を示す。実施された8つの実験の全てにおいてアンフォテリシンB及びアンフォテリシンB−PMAA−NaについてのLD50は同様であった。Cryptococcus neoformans var neoformansの場合、アンフォテリシンBについてのLD50は0.9〜1.4μg/mlであり、アンフォテリシンB−PMAA−Naについてのそれは同様に1.6〜2.7μg/mlであった。Cryptococcus neoformas var gattiについて、アンフォテリシンBのLD50は0.06〜1.0μg/mlであり、アンフォテリシンB−PMAA−Naのそれは0.1〜0.5μg/mlで同様であった。従って、複合体はアンフォテリシンBのみと同程度にcryptococciに対して活性である。
【0217】
実施例Q:Candida sp.
Candida albicans (ATCC 90028)及びCandida glabrata(ATCC 90030)が使用された。それぞれの場合において、菌株は5%CO2で加湿されたチャンバ中のクロラムフェニコール(Oxoid, UK)を添加したサブローデキストロース寒天プレート上に32℃で維持された。それは、その濃度が2×105CFU/mlに調節される前に、48時間サブローデキストロース寒天上で継代培養された。サンプルの二倍希釈物は、×2酵母窒素ベース(YNB、Anachem)中の所望終濃度の二倍において作製された。等量のサンプル及び酵母懸濁物が96ウェル平底プレートに添加され、32℃でインキュベートされた。1日後、プレートは、酵母の増殖をウェルに亘って均一に分散させるために全体に振盪された。濁度が分光計を用いて測定された(490nm)。100%生存率は、コントロールウェルにおける未処理酵母の光学密度を用いて確立された。
【0218】
図33(i)は、Candida albicansについての結果を示し、図33(ii)は、Candida glabrataについての結果を示す。アンフォテリシンB(0.9〜1.8μg/ml)及びアンフォテリシンB−PMAA−Na(1.6〜2.3μg/ml)についてのLD50は同様である。従って、複合体はアンフォテリシンBのみと同程度のCandida sp.に対する活性がある。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】図1はRPMI中のPMAA−Naと細胞のインキュベーション後の赤血球の溶血を示す。ヒト赤血球の2%v/v溶液はPMAA−Na(“薬剤”)の溶液とRPMI1640培地中で37℃で1時間と24時間インキュベートされた。1時間後又は24時間後、2,000μg/mlの濃度までのPMAA−Naについて有意な毒性は見られなかった。図は3人のヒトドナー(A、B及びC)についての結果を示す。図1aは、ドナーAについて得た結果を示し、図1bはドナーCについて得た結果を示し、そして図1cはドナーBについての結果である。1時間のインキュベーションの後に得た結果は丸で示され、24時間のインキュベーション後の結果は菱形で示される。
【図2】図2は、RPMI中でのPMAA−Naとのインキュベーション後の全血中の赤血球溶血を示す。ヒト全血(ドナーD)の2%v/v溶液はRPMI1640中でPMAA−Na(“薬剤”)の溶液とインキュベートされた。1時間後(クロスで示される)、6時間後(三角で示される)又は24時間後(丸で示される)、500μg/mlの濃度までのヒト全血を用いたPMAA−Naについて有意な毒性は見られなかった。
【図3】図3は、ヒト単球由来マクロファージ(図3a)及び初代ヒト腹腔マクロファージ(図3b)に対してPMAA−Naの毒性が無いことを示す。図3aは、単球由来マクロファージが0〜2,000μg/mlの濃度範囲に亘るPMAA−Naを含有する培地でインキュベートされた場合に得られた結果を示す。細胞はチアゾリルブルー(MTT、Sigma 5mg/ml)に添加前に71時間インキュベートされた。PMAA−Naを用いて得られた結果は黒四角、コントロールとして使用されるポリ(L−リシン)での結果は丸で示される。PMAA−NaはMTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて試験された最高濃度2,000μg/mlにおいてMDMsに対して毒性でなかった。図3bは、ヒト腹膜細胞が0〜2,000μg/mlの濃度範囲に亘るPMAA−Naで培養された場合に得られた結果を示す。細胞はMTTの添加前に71時間インキュベートされた。PMAA−Naを用いて得られた結果は黒四角で示され、コントロールとして使用されるポリ(L−リシン)での結果は丸で示される。500μg/mlまででPMAA−Naは腹腔マクロファージに対して毒性でない。500μg/ml〜2,000μg/mlで、中程度の量の毒性が、MTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて見られた。
【図4】図4は、エンドトキシンフリーPMAA−Naによるヒト腹腔マクロファージからのMIP―1βの放出を示す。3ドナー(A、B及びC)からのヒト腹膜細胞はエンドトキシン−フリーPMAA−Na(500μg/ml)と共に培養され、36時間後に収穫された培養上清はMIP−1βについて分析された。全ての試薬及びPMAA−Naは、<0.06エンドトキシンユニット/ml(EU/ml)を含有した。図4aは、ドナーAについて得られた結果を示し、図4bは、ドナーBについてそして図4cはドナーCについてである。PMAA−Naの存在下でMIP−1βの有意な放出が存在した。
【図5】図5は、エンドトキシンフリーPMAA−Naによるヒト腹腔マクロファージからのTNF−αの放出を示す。2ドナー(A及びB、それぞれ図5a及び5b)からのヒト腹膜細胞はエンドトキシンフリーPMAA−Na(500μg/ml及び2,000μg/ml)と共に培養され、36時間後に収穫された培養上清はTNF−αについて分析された。両方の濃度においてPMAA−Naの存在下TNF−αの有意な放出が存在した。
【図6】図6は、培地コントロール又はPMAA−Naとインキュベートされた単一ドナーのヒト腹腔マクロファージからのケモカイン及びサイトカインの放出を示す。ヒト腹膜細胞はPMAA−Na(500μg/ml)と培養され、36時間後に収穫された培養上清は炎症性ケモカインMIP−1α、MIP−1β及びIL−8、並びに炎症性サイトカインTNF−α、IL−1β及びIL−6について分析された。3人の異なるヒトドナー(A、B及びC)からの細胞を用いた結果が示される。培地コントロールを用いて得た結果は白ブロックで、PMAA−Naを用いたものは黒ブロックで示される。MIP−1αの放出は図6aに、TNF−αは図6bに、MIP−1βは図6cにIL−8及び炎症性サイトカインTNF−α、IL−1βは図6dに、IL−8は図6eに、IL−6は図6fに示される。組織抗原提示細胞からのこれらのケモカイン及びサイトカインの放出は、ヒトにおける薬理学的Th1応答を促進するレベルであったが、ヒトにおける顕著な有害副作用を引き起こすほど高くなかった。
【図7】図7は、エンドトキシン−フリーPMAA−Naによるヒト単球由来マクロファージからのMIP−1βの放出を示す。単球由来マクロファージは100μg/ml、500μg/ml及び2,000μg/mlの濃度でPMAA−Naと培養された。3人の異なるヒトドナーA、B及びCからの細胞を用いた結果は、各々図7a、7b及び7cに示される。MIP−1βの放出は見られなかった。従って、組織ボディーベースコンパートメントからの起源のマクロファージの細胞と比較して血液単球起源の細胞に対してPMAA−Naの異なる免疫調節効果が存在する。
【図8】図8は、商業的に入手可能なPMAA−Naによるのではなく、PMAA−Naによるヒト腹腔マクロファージからのMIP−1βの放出を示す。ヒト腹腔マクロファージはMWt’sの範囲(Mn=1,300、22,100及び129,000g/モル)且つ狭い分子量分布の商業的に入手可能なPMAA−Na(Polymer Standards Service,Germany)及びここで説明されるように作製されたPMAA−Naと共に培養された。商業的に入手可能なPMAA−Naの1つは実施例A1〜A4に記載されるように調製されたPMAA−Naと同等のMWtを有した(Mn=22,000g/モル)(図中、PMAA−Na)。各場合において、500μg/mlのPMAA−Naが使用された。培養上清は36時間後に収穫された。MIP−1βの放出は無かった。図8a及び8bは、各々2人のヒトドナーA及びBからの個別の結果を示す。
【図9】図9は、商業的に入手可能なPMAA−Naによるのではなく、PMAA−Naによるヒト腹腔マクロファージからのTNF−αの放出を示す。ヒト腹腔マクロファージはMWt’sの範囲(Mn=1,300、22,100及び129,000g/モル)且つ狭い分子量分布の商業的に入手可能なPMAA−Na(Polymer Standards Service, Germany)、及びここに記載されるように作製されたPMAA−Naと共に培養された。商業的に入手可能なPMAA−Naの1つは我々のPMAA−Naの合成調製物と同様のMWtを有した(Mn=22,000g/モル)(図においてPMAA−Na)。各場合において500μg/mlのPMAA−Naが使用された。培養上清は36時間後に収穫された。TNF−αの放出はなかった。図9a及び9bは各々二人のヒトドナーA及びBからの別個の結果を示す。
【図10】図10、11及び12はアンフォテリシンB又はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体とのインキュベーション後の赤血球溶血を示す。方法は図1について記載した通りであった。臨床グレートアンフォテリシンB(アンフォB、結果は白四角として示される)と実施例Cに記載されるように調製されるアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体(アンフォB−PMAA−Na、結果は白丸として示される)の間の比較がなされた。試験のための化合物のストック溶液はMGM中で調製された。ヒト赤血球溶血は1時間(図10)、6時間(図11)及び24時間(図12)のインキュベーション後に測定された。各場合において3人の異なるドナー(A、B及びC)から得た細胞が使用された。各ラインは一人のドナーからの結果を示す。図10a、10b及び10cは、各々ドナーA、B及びCの細胞との1時間インキュベーションの結果を示す。図11a、11b及び11cは各々ドナーA、B及びCの細胞との6時間インキュベーションの結果を示す。図12a、12b及び12cは、各々、ドナーA、B及びCの細胞との24時間インキュベーションの結果を示す。1時間インキュベーションの後アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物について毒性は見られなかった。6時間インキュベーションの後、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性は、臨床グレードアンフォテリシンBのものよりも有意に低かった。インキュベーション時間が24時間の増加した場合、臨床グレードアンフォテリシンBの毒性は100%に上昇したが、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性に更なる上昇は無かった。
【図11】図10、11及び12はアンフォテリシンB又はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体とのインキュベーション後の赤血球溶血を示す。方法は図1について記載した通りであった。臨床グレートアンフォテリシンB(アンフォB、結果は白四角として示される)と実施例Cに記載されるように調製されるアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体(アンフォB−PMAA−Na、結果は白丸として示される)の間の比較がなされた。試験のための化合物のストック溶液はMGM中で調製された。ヒト赤血球溶血は1時間(図10)、6時間(図11)及び24時間(図12)のインキュベーション後に測定された。各場合において3人の異なるドナー(A、B及びC)から得た細胞が使用された。各ラインは一人のドナーからの結果を示す。図10a、10b及び10cは、各々ドナーA、B及びCの細胞との1時間インキュベーションの結果を示す。図11a、11b及び11cは各々ドナーA、B及びCの細胞との6時間インキュベーションの結果を示す。図12a、12b及び12cは、各々、ドナーA、B及びCの細胞との24時間インキュベーションの結果を示す。1時間インキュベーションの後アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物について毒性は見られなかった。6時間インキュベーションの後、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性は、臨床グレードアンフォテリシンBのものよりも有意に低かった。インキュベーション時間が24時間の増加した場合、臨床グレードアンフォテリシンBの毒性は100%に上昇したが、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性に更なる上昇は無かった。
【図12】図10、11及び12はアンフォテリシンB又はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体とのインキュベーション後の赤血球溶血を示す。方法は図1について記載した通りであった。臨床グレートアンフォテリシンB(アンフォB、結果は白四角として示される)と実施例Cに記載されるように調製されるアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体(アンフォB−PMAA−Na、結果は白丸として示される)の間の比較がなされた。試験のための化合物のストック溶液はMGM中で調製された。ヒト赤血球溶血は1時間(図10)、6時間(図11)及び24時間(図12)のインキュベーション後に測定された。各場合において3人の異なるドナー(A、B及びC)から得た細胞が使用された。各ラインは一人のドナーからの結果を示す。図10a、10b及び10cは、各々ドナーA、B及びCの細胞との1時間インキュベーションの結果を示す。図11a、11b及び11cは各々ドナーA、B及びCの細胞との6時間インキュベーションの結果を示す。図12a、12b及び12cは、各々、ドナーA、B及びCの細胞との24時間インキュベーションの結果を示す。1時間インキュベーションの後アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物について毒性は見られなかった。6時間インキュベーションの後、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性は、臨床グレードアンフォテリシンBのものよりも有意に低かった。インキュベーション時間が24時間の増加した場合、臨床グレードアンフォテリシンBの毒性は100%に上昇したが、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性に更なる上昇は無かった。
【図13】図13は、アンフォテリシンB−PMAA−Na複合体とのインキュベーション後の一人のドナーにおける赤血球溶血を示す。方法は図11について記載される通りであり、アンフォテリシンB−PMAA−Na複合体は実施例Cに記載されるように調製された。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(“薬剤”)による赤血球溶血の程度は、1,000μg/mlまでの濃度について、1時間及び24時間のインキュベーション後に測定された。1時間のインキュベーション後に得られた結果は、白四角として示され、24時間のインキュベーション後の結果は黒丸である。
【図14】図14はPBMN細胞を用いた1、2及び6日の培養後にアンフォテリシンB−PMAA−Naの毒性が無いことを示す。RPMI培地におけるPBMCsは0〜70μg/mlの濃度範囲に亘る実施例Cにおいて記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体(“薬剤”)を含有する培地を用いて培養された。細胞はMTT(5mg/ml)の添加前に1日又は2日、又は6日間インキュベートされた。化合物は、1日の培養、2日の培養、6日の培養後MTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて試験された70μg/mlの最高濃度におけるPBMCsにおいて毒性がなかった。図14は、3人の代表的ヒトドナーからの個別結果を示す。各ラインは一人のドナーを示す。図14a、14b及び14cは、各々1日、2日、及び6日間のインキュベーション後の結果を示す。
【図15】図15は、単球由来マクロファージを用いた2日及び3日培養後のアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体の毒性を示す。単球由来マクロファージ(MDM)は、濃度125μg/mlまでの化合物(“薬剤”)を含有する培地と共に培養された。細胞はMTTの添加前2日又は3日間インキュベートされた。アンフォテリシンBを用いて得られた結果は白丸で示され、実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いた結果は白四角として示される。図15aは、2日の培養後に得られた結果を示し、図15bは2日の培養後の結果である。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物は2日と3日の両方の培養の後MTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて試験された濃度125μg/mlまでの全てにおいて臨床グレートアンフォテリシンBよりも毒性が低かった。
【図16】図16は、アンフォテリシン又はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体で処理された前鞭毛期メキシコリーシュマニア(Leishmania mexicana promastigote)の生存率を示す。これらの実験に使用された前鞭毛期メキシコリーシュマニアは、15%ウシ胎児血清(56℃で1時間熱不活性化された)及びゲンタマイシン(1mg/100ml)を添加したSchneider‘s Drosophila生育培地(Invitrogen)中に維持された。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについての臨床グレートアンフォテリシンの50%致死量(LD50)は、0.14μg/mlであった(図16d)。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについての臨床グレードアンフォテリシンBの90%致死量(LD90)は、1.49μg/ml)であった(図16d)。実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いた3つの実験からの結果は図16a、16b及び16cに示される。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについてのアンフォテリシンB−PMAA−Naの50%致死量(LD50)は、0.10〜0.19μg/mlであった(図16a、16b及び16c)。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについてのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の90%致死量(LD90)は、1.02〜1.49μg/mlであった(図16a、16b及び16c)。前鞭毛期メキシコリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の活性は重量毎重量ベースで臨床グレードアンフォテリシンBのものと同様であった。
【図17】図17は、アンフォテリシン又はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体で処理された前鞭毛期ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani promastigote)の生存率を示す。これら実験に使用された前鞭毛期ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovania promastigote)は、15%ウシ胎児血清(56℃で1時間熱不活性化された)及びゲンタマイシン(1mg/100ml)を添加したSchneider’s Growth Media199中に維持された。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアについての臨床グレートアンフォテリシンBの50%致死量(LD50)は、0.08μg/mlであった(図17d)。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアのついての臨床グレードアンフォテリシンBの90%致死量(LD90)は、1.91μg/mlであった(図17d)。実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いた3つの実験からの結果は図17a、17b及び17cに示される。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の50%致死量(LD50)は、0.10〜0.17μg/mlであった(図17a、17b及び17c)。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の90%致死量(LD90)は、0.98〜1.28μg/mlであった(図17a、17b及び17c)。従って、前鞭毛期ドノバンリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の活性は、重量毎重量ベースで臨床グレードアンフォテリシンBのものと同様であった。
【図18】図18は、ヒト単球由来マクロファージにおけるアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体による細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアの増殖の抑制を示す。無鞭毛期メキシコリーシュマニアは、10%ヒト血清(56℃で1時間熱不活性化された)及び200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640(Invitrogen)中に維持されたヒト単球由来マクロファージを感染させるために使用された。感染指数は寄生体/細胞の平均数×感染した細胞のパーセントとして計算された。実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いた4つの実験の結果は、図18a〜18dに示される。臨床グレードアンフォテリシンBを用いた抑制は図19aに示され、AmBiosome(Gliead Sciences)を用いたものは図19bである。細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニア増殖の50%抑制は、0.l4μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図19a)又は0.45μg/mlのAmbisome(図19b)と比較して、0.18〜0,32μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物で達成された(図18a〜18d)。細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニア増殖の90%抑制は、0.95μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図19a)又は3.89μg/mlのAmBisome(図19b)と比較して1.18〜1.55μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いて達成された。
【図19】図19は、臨床グレードアンフォテリシンB又はAmBiosome(リポソームアンフォテリシンB,Gilead Sciences, Great Abingdon,Cambridge, UK)を用いた対応する抑制を示す。無鞭毛期メキシコリーシュマニアは、10%ヒト血清(56℃で1時間熱不活性化された)及び200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640(Invitrogen)中に維持されたヒト単球由来マクロファージを感染させるために使用された。感染指数は寄生体/細胞の平均数×感染した細胞のパーセントとして計算された。実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いた4つの実験の結果は、図18a〜18dに示される。臨床グレードアンフォテリシンBを用いた抑制は図19aに示され、AmBiosome(Gliead Sciences)を用いたものは図19bである。細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニア増殖の50%抑制は、0.l4μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図19a)又は0.45μg/mlのAmbisome(図19b)と比較して、0.18〜0,32μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物で達成された(図18a〜18d)。細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニア増殖の90%抑制は、0.95μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図19a)又は3.89μg/mlのAmBisome(図19b)と比較して1.18〜1.55μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いて達成された。
【図20】図20は、AmBiosomeと比較したアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体によるヒトマクロファージ中の細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアの増殖の阻害を示す。図20に示されるグラフは、実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体(白四角として示される;IC50=0.3μg/ml)とAmBisome(リポソームアンフォテリシンB,Gilead Sciences, Great Abingdon、Cambridge、UK)(黒丸として示される;IC50=1.7μg/ml)の細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアに対する相対活性の傾きを比較する。それは、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物のキリングカーブは、AmBisomeについてのキリングカーブよりも急勾配であることを実証する。
【図21】図21及び22は、臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)及びAmBiosome(Gilead Sciences、上記の通り)(図22b)による、ヒト単球由来マクロファージにおけるアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体による細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニア増殖の抑制を示す(4実験、図21a〜21bに示される)。無鞭毛期ドノバンリーシュマニアは、10%ヒト血清(56℃で1時間熱不活性化された)及び200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640(Invitrogen)中に維持されたヒト単球由来マクロファージを感染するために使用された。感染指数は寄生体/細胞の平均数×感染した細胞のパーセントとして計算された。細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの増殖の50%抑制は、0.54μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)又は1.96μg/mlのAmBisome(図22b)と比較して、0.30〜0.71μg/mlの実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物で達成された(図21a〜21b)。細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの増殖の90%抑制は、2.31μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)又は>8μg/mlのAmbisome(図22b)と比較して、2.18〜3.18μg/mlの実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いて達成された(図21a〜21d)。
【図22】図21及び22は、臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)及びAmBiosome(Gilead Sciences、上記の通り)(図22b)による、ヒト単球由来マクロファージにおけるアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体による細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニア増殖の抑制を示す(4実験、図21a〜21bに示される)。無鞭毛期ドノバンリーシュマニアは、10%ヒト血清(56℃で1時間熱不活性化された)及び200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640(Invitrogen)中に維持されたヒト単球由来マクロファージを感染するために使用された。感染指数は寄生体/細胞の平均数×感染した細胞のパーセントとして計算された。細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの増殖の50%抑制は、0.54μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)又は1.96μg/mlのAmBisome(図22b)と比較して、0.30〜0.71μg/mlの実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物で達成された(図21a〜21b)。細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの増殖の90%抑制は、2.31μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)又は>8μg/mlのAmbisome(図22b)と比較して、2.18〜3.18μg/mlの実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いて達成された(図21a〜21d)。
【図23】図23は、24時間の異なる化合物との培養後のヒト腹腔マクロファージからのインターフェロンγの放出を示す。ヒト腹膜細胞は、示される濃度における各化合物とマクロファージ増殖培地中で培養された。使用された化合物は、実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体、臨床グレードアンフォテリシンB、商業的PMAA−Na及び実施例A1〜A4に記載されるように調製されたPMAA−Naであった。全ての試薬及び化合物は<0.06エンドトキシンユニット/mlを含有した。培養上清は、24時間後に収穫された。インターフェロンγはEIA(R&D systems)によって測定された。腹腔マクロファージからのTh1促進サイトカイン、インターフェロンγの放出はコントロールのみ、臨床グレードアンフォテリシンB,商業的PMAA−Na又はPMAA−Naの細胞と比較してアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(100μg/ml)の存在下でより有意に高かった。
【図24】図24はツベルクリンPMAA−Na複合体を用いたインキュベーション後の細胞のPMBC増殖を示す。PBMCsは、10%ヒト血清、200μg/mlペニシリン及び200 IU/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640中に再懸濁された。ツベルクリンPMAA−Na複合体(ツベルクリンPPD−PMAA−Naとも呼ばれる)は実施例L2に記載されるように調製された。全ての試薬及び化合物は、リムルス試験(Pyrotell, Associates of Cape Cod, US)を用いて測定されるように<0.06エンドトキシンユニット/mlを含有した。細胞(105細胞/ウェル)及び各化合物(示される濃度のツベルクリンPPD及びツベルクリン−PMAA−Na)は一対(in duplicate)で混合され、37℃/5%CO2で4日間インキュベートされた。[3H]−チミジン(比活性20〜30Ci/mmol;Amersham Bioosciences, UK)は、更なる18時間に1μCi/ウェルで添加された。細胞は次いで収穫され、液体シンチレーションカウンターを用いて増殖が測定された。結果は平均カウント/分(cpm)±semとして表された。図24aは、ツベルクリン−PMAA−Na調製物とドナーAの細胞の6日のインキュベーション後のPBMC増殖について得られた結果を示す。図24aは、それらが1μg/mlのツベルクリン−PMAA−Na調製物と培養された場合、有意に上昇したTリンパ球の増殖が存在したことを示す。それらが10μg/mlのツベルクリン−PMAA−Na調製物と培養された場合、より更なるTリンパ球の増殖が存在した(P=0.001)。図24bは、ツベルクリンPPD及びツベルクリン−PMAA−Na調製物とドナーBの細胞の5日のインキュベーション後のPBMC増殖についての結果を示す。10μg/mlのツベルクリン抗原よりも10μg/mlのツベルクリン−PMAA−Na調製物を用いて有意により多くTリンパ球が増殖した(P=0.002)。これは、ツベルクリン−PMAA−Na調製物がツベルクリン抗原自体よりも有意により多くのTリンパ球増殖を引き起こすことを示す。
【図25】図25は、ドナーAからの抗原で24時間刺激されたヒトPMBCsによるIFN−γの産生を示す。ヒトPBMCsは、単離され、10%ヒト血清、200μg/mlペニシリン及び200 IU/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640中で2×105細胞/ウェルに調節された。全ての試薬及び化合物は、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含有した。PBMCs及び化合物(示される濃度の、ツベルクリン及び実施例L2に記載されるように調製されたツベルクリン−PMAA−Na複合体(ツベルクリンPPD−PMAA−Naとも呼ばれる))は、ヒトインターフェロンγモノクローナル抗体(R&D Systems,UK)でコートされたELISpotPVDF−バックドマイクロプレートのウェル中で混合された。刺激されていない細胞は、ネガティブコントロールとして使用され、組換えヒトインターフェロンγはポジティブコントロールとして使用された。プレートは37℃/5%CO2で24時間インキュベートされた。次いで製造者の指示書に従って、マイクロプレートを確立し、インターフェロンγについての陽性スポットの数がカウントされた。図25はIFN−γを産生する細胞の数を示す。図25はツベルクリンPPD−PMAA−Na調製物が初代ヒトTリンパ球からのインターフェロンγ放出を刺激することにおいてツベルクリン抗原のみよりも有意により効果的であったことを示す。Tリンパ球からのインターフェロンγの分泌におけるこの上昇は、50μg/mlのツベルクリンPPD−PMAA−Na調製物及び100μg/mlのツベルクリンPPD−PMAA−Na調製物について見られた。
【図26】図26は、臨床グレードアンフォテリシンB,AmBisome又はアンフォテリシンB−PMAA−Na、未処理コントロール及びコントロールとしてのブランクリポソームを用いた静脈処理後のマウスの肝臓マクロファージにおける無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの生存を示す。種々の化合物が図26に示される濃度で使用された。無鞭毛期/500肝臓細胞の数が顕微鏡でカウントされ、結果が未処理コントロールのパーセントとして表された。コントロールと比較して、実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体の1mg/kgの無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの有意なキリング活性(P<0.0001)が存在した。これらの結果はアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物が内臓リーシュマニアのこの動物モデルにおいて効果的であることを示す。
【図27】赤血球についての異なる分子量のPMAA−Naコンストラクトの毒性はMTTアッセイを用いて確立された。図27a〜27cは異なる分子量を有し且つ実施例Nに記載されるように作製されたPMAA−Naコンストラクトが一人のドナーの赤血球に対して毒性がないことを示す。各場合において、PMAA−Naコンストラクトの濃度はμg/mlで与えられ、赤血球の溶血はパーセントで与えられる。四角は分子量19kDaのPMAA−Naコンストラクトを用いて得た結果を示し、三角は28kDaのPMAA−Naコンストラクトを用いた結果、そして逆三角は37kDaのPMAA−Naコンストラクトを用いた結果である(n=3)。図27aはPMAA−Naコンストラクトとの1時間のインキュベーション後の赤血球(RBCs)の溶血を示し、図27bは5時間後のRBCsの溶血を示し、図27cは24時間後のRBCsの溶血を示す。PMAA−Naコンストラクトは1時間、5時間及び24時間インキュベーションの後2mg/mlの濃度で赤血球溶血を引き起こさなかった。これらの結果は作製されたPMAA−Naコンストラクトの分子量によって影響されなかった。
【図28】異なる分子量のPMAA−Naコンストラクトの末梢血単核細胞(PMBCs)に対する毒性がMTTアッセイを用いて確立された。図28a及び28bにおいて、実施例Nに記載されるように作製されたPMAA−Naコンストラクトの濃度は、PMBCsのパーセントに対してプロットされた。四角は分子量19kDaのPMAA−Naコンストラクトを用いて得られた結果を示し、三角は28kDaのPMAA−Naコンストラクトを用いた結果、そして丸は37kDaのPMAA−Naコンストラクトを用いた結果である(n=3)。図28aは、PMAA−Naコンストラクトを用いた1日間のインキュベーション後のPMBCsの生存率を示し、図28bは該コンストラクトを用いた2日間のインキュベーション後のPMBCsの生存率を示す。使用されたコンストラクトは1日及び2日のインキュベーションの後2mg/mlにおいて末梢血単核細胞に対して毒性でなかった。結果は作製されたPMAA−Naコンストラクトの分子量によって影響されなかった。
【図29】図29は、異なる条件下でのアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体の保存の赤血球に対するその毒性についての影響を示す。図29aは、実施例Cに記載されるように調製され且つ凍結乾燥粉末として4℃で4ヶ月間保存されたPMAA−Na複合体の赤血球(RBCs)に対する毒性がないことを示す。複合体は種々の濃度で1時間RBCsとインキュベートされ、RBCsの溶血パーセントが測定された。図29aは、アンフォテリシンB−PMAA−Na複合体が、凍結乾燥粉末として4℃で4ヶ月間の保存の後、赤血球に対して毒性がなかったことを示す。図29bは、実施例Cに従って調製され、4℃で7ヶ月間5%デキストロース中に保存されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体が1時間RBCsとインキュベートされた場合に得られた結果を示す。溶血はパーセントとして示される。新たに調製された、臨床グレードアンフォテリシンBが比較のためのリファレンスとして使用された。インキュベーションが1時間及び6時間行われた;1時間のインキュベーションについての結果が示される。図29bは、アンフォテリシンB−PMAA−Na複合体が4℃で7ヶ月間の5%デキストロース中の保存の後、赤血球に対して毒性がないことを示す。
【図30】図30は、異なる条件下で保存されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体による前鞭毛期及び無鞭毛期リーシュマニアの抑制を示す。図30aは、実施例Cに従って調製され、且つ4ヶ月間4℃で凍結乾燥粉末として保存されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体によるMDMs中の細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアの増殖の抑制を示す。感染指数は複合体の濃度に対してプロットされた。LD50は0.21μg/mlであった。図30bは、実施例Cに従って調製され、且つ7ヶ月間4℃で5%デキストロース中に保存されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体によるMDMs中の細胞内無鞭毛期との2日間のインキュベーション後の前鞭毛期メキシコリーシュマニアの生存率を示す。パーセント生存率は、複合体の濃度に対してプロットされた。新たに調製された臨床グレードアンフォテリシンBが比較のためのリファレンスとして使用された。複合体のLD50は0.4μg/mlであり、アンフォテリシンBのLD50は0.3μg/mlであった。複合体を用いて得られた結果は黒四角によって示され、アンフォテリシンBでの結果は白丸である。アンフォテリシンB−PMAA−Naの活性は、凍結乾燥粉末として4℃で4ヶ月間、4℃で7ヶ月間の5%デキストロース中の保存によって影響されなかった。
【図31】図31は、ヒト単球由来マクロファージを感染したCryptococcus neoformansの種々の株の抑制を示す。抑制は、アンフォテリシンB(白丸)を比較のためのリファレンスとして用いて、実施例Cに記載されるように調製された種々の濃度のアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体(黒四角)を3日間用いた後測定された。感染した及び感染していないマクロファージの数及びグラム陽性酵母CFUの数が数えられた。結果はCFU/感染細胞のパーセントの平均数として計算された感染指数として表された。LD50値がまた測定された。図31aは、C.neoformans var neoformans臨床分離株1の抑制を示し、図31bは、C.neoformans var neoformans NCPF 3003の抑制を示し、図31cは、C.neoformans var gattii臨床分離株の抑制を示し、図31dは、C.neoformanc var gattii臨床分離株の抑制を示す。アンフォテリシンB(0.9〜1.4μg/ml)及びアンフォテリシンB−PMAA−Na(1.6〜2.7μg/ml)についてのLD50は類似する。従って、複合体はアンフォテリシンBのみと同程度にcryptococciに対して活性である。
【図32】図32は、ヒト単球由来マクロファージを感染した種々のCryptococcus neoformans株の生存率を示す。生存率は、アンフォテリシンB(白丸)を比較のためのリファレンスとして用いて、実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を種々の濃度を3日間使用した後(黒四角)、測定された。図32aは、C.neoformans var neoformans NCPF 3003についての結果を示し、図32bは、C.neoformans var neoformans臨床分離株についての結果を示し、図32cは、C.neoformans var gatti NCPF 3216についての結果を示し、図32dはC.neoformans var gatti臨床分離株についての結果を示す(それらの生物がヒト単球由来マクロファージを感染したとき)。アンフォテリシンB及びアンフォテリシンB−PMAA−NaについてのLD50は、実施された4実験の全てにおいて同様であり、また図31a〜31dに示される4実験と同様でもあった。C.neoformans var neoformansの場合、アンフォテリシンBについてのLD50は0.9〜1.4μg/mlであり、アンフォテリシンB−PMAA−Naについてのそれは同様に1.6〜2.7μg/mlであった。C.neoformans var gattiについて、アンフォテリシンBについてのLD50は、0.06〜1.0μg/mlであり、アンフォテリシンB−PMAA−Naについてのそれは同様に0.1〜0.5μg/mlであった。従って、複合体はアンフォテリシンB単独と同程度にcryptococciに対して活性である。
【図33】図33aは、Candida albicans ATCC 90028の生存率を示し、図33bはCandida glabrata ATCC 90030の生存率を示す(種々の濃度のアンフォテリシンB(リファレンス)又はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いた1日の処理後)。生存率はパーセントとして表される。生存率は分光計(490nm)を用いて測定される濁度によって測定された。100%生存率はコントロールウェル中の未処理酵母の光学密度を用いて確立された。アンフォテリシンB(0.9〜1.8μg/ml)及び実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体についてのLD50(1.6〜2.3μg/ml)は、Candida albicansについて同様であり(図33a)、図33bはCandida glabrataについての結果を示す。従って、該複合体はアンフォテリシンB単独と同程度にCandida種に対して活性である。
【技術分野】
【0001】
イントロダクション
本発明は、アジュバント特性を有する複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
病原生物への曝露に対する防御免疫は、免疫応答の2つの異なるアームの統合によって達成される。それらは、自然応答及び抗原特異的(適応とも呼ばれる)応答である。自然免疫応答は、侵入する病原体からの幅広いキューを検出及び応答することによって、感染の後直ぐ(数分以内)に働く。対照的に、適応免疫応答は、効果的になるために時間を要するが(2週間まで)、それは、病原体の完全な排除及び免疫記憶の生成のために必要である優れた抗原特異性を提供する。自然免疫系による病原体の抗原に独立的な認識は、免疫エフェクター及び制御機構の即座の可動化へ導き、宿主に3つの重要なサバイバルアドバンテージ(survival advantages)を提供する:
(i)免疫応答(自然及び適応性の両方)の迅速な開始、及び抗原認識のために必要な炎症及び共刺激環境(co-stimulatory environment)の生成。
(ii)適応応答の成熟化の間に病原体を抑制するための第1ラインの防御の確立。
(iii)特定の感染因子に対する防御にとって最も効果的である細胞性又は体液性エレメントの免疫応答に向けて適応免疫応答を指揮すること。
【0003】
従って、ワクチン接種の全般的な目的は抗原特異的免疫の活性化であるが、ワクチンは、第1に且つ効果的に自然免疫応答の病原体検出機構を活性化すること無しに、この目的を最適に成し遂げることはできない。
【0004】
多くのワクチンは抗原及びアジュバントを含む。それらは、それらが同時に投与される抗原のin vivo免疫原性を高めるそれらの作用能力によって広く定義される。従って、アジュバントは、殆どの好結果なワクチン、特に殺された病原体及び/又は組換え抗原の分離したフラクションを含む病原体のサブユニットに基づくワクチンの重要成分に相当する。しかし、自然免疫機構並びに抗原プロセシング及び提示の詳細の益々の理解の結果、新規且つより高性能なアジュバントが要求される。したがって、従来型と新規なアジュバントは現在、送達システムとして働くものと免疫ポテンシエーターとして働くものに次第に分離されている。送達システムの主な機能は、ワクチン成分を抗原提示細胞に局在化させることである一方、免疫ポテンシエーターはToll様受容体を含む特定の受容体を介して抗原提示細胞を直接的に活性化する。
【0005】
感染因子と殆どの認可されたワクチン、特に生きた弱毒化及び死んだ全細胞プロダクトは、総合免疫応答を活性化するために必要な成分の全てを含むことに留意することが重要である。それはこのようなワクチンに使用される病原体が微粒子形態(細胞全体として)に関連抗原の全てを有し、それはまた多くの強い免疫モジュレーター(immune modulator)、即ち病原生物関連分子パターン(pathogen associated molecular pattern)を有するからである。しかし、ワクチン開発における動向は、このような製品から高度に精製された組換えタンパク質として生産されるより安全かつより明確なサブユニットワクチンへと移動する。残念ながら、このような組換え抗原は、それらが本質的な免疫増強活性を欠くため、多くの場合十分に免疫原性でない。従って、サブユニットワクチン開発におけるチャレンジは、自然感染又は全病原体細胞ワクチン手法を模倣するために十分であろう自然免疫応答の活性化のための選択シグナルを再導入することである。サブユニットワクチンの効能を改良するために使用される送達システムと免疫ポテンシエーターは、全細胞ワクチンよりも安全且つより効果的、低コストであるべきである。
【0006】
“送達システム”及び“アジュバント”という用語は、ワクチンに関して一般的に同義的に使用されるが、明確な区別が多くの場合成され得、各々の役割が明確に定義される。ワクチンのリストに含まれる“アジュバント”は、多くの微粒子送達システム、例えば、エマルジョン、リポソーム、イスコム(iscom)、ウイルス様粒子及びミクロ粒子(これらの原理的作用様式は、免疫応答の誘発を担う主要な抗原提示細胞への抗原の送達(delivery)を促進することである。しかし、それらは弱い免疫モジュレーターであり、従ってそれらの有効性は免疫ポテンシエーターの添加によって顕著に改良される必要がある。他に特定されない限り、“アジュバント”という用語はここにおいて免疫ポテンシエーターを表すために使用される。免疫ポテンシエーターとしての新規かつ改良されたアジュバントの開発に対する主なハードルは、新規ワクチンはそれらが臨床用途のために許容可能であるならば、最小数の有害作用を有しなければならないため、安全性である。結果として、多くのアジュバントが広く前臨床的及び臨床的に評価されてきたが、アルミニウム源(総称的に“アラム(alum)”と呼ばれる)のみが北アメリカにおいてワクチンアジュバントとしての使用のために首尾よく認可された。アラムは、細胞障害性CD8 T細胞免疫を生成することにおいて十分でない。それは、優先的に、Th1バイアス免疫応答よりもTh2バイアス免疫を誘発する。
【0007】
免疫増強アジュバントとしての多くの自然病原体関連分子パターン分子(natural pathogen-associated molecular pattern molecules)の使用のための概念の実証は動物において確立されたが、将来への動向は合成アナログを設計することである。これは主に、十分に確立されかつ標準化された合成免疫ポテンシエーターに付随するより低い製造コスト及びより小さな規制ハードルに起因する。
【0008】
幾つかの合成ポリアニオン性ポリマーが致死量の髄膜ウイルスでチャレンジされたマウスを保護すること、及びネズミ腹腔マクロファージがin vitroでカルボキシレートコポリマー又はその塩に曝露された時に水疱性口内炎ウイルスを抑制する因子を産生したことが早くも1968年に示された(Merigan & Finkelstein. Interferon stimulating and in vivo antiviral effects of various synthetic anionic polymers. Virology 1968; 35: 363-374)。
【0009】
より最近、アルギナート(海藻から単離されたポリマー)がTNF−α、IL−1及びIL−6の放出を誘発することが示された(Otterlei M et al. Induction of cytokine production from human monocytes stimulated with alginate. J. Immunother. 1991; 10: 286-291)。アルギナートの1−4−βマンヌロン酸部分もCD14/Toll様受容体4媒介機構を介して単球からのTNF−αの放出を誘発した。リグニン誘導体及びフコイダンもマクロファージからのTNF−α放出をイリシット(illicit)する(Sorimachi K et al. Secretion of TNF-αfrom macrophages following induction with a lignin derivative. Cell Biol. Int 1995; 19: 833-838; Heinzelmann et al. Modulation of LPS-induced monocyte activation by heparin-binding protein and fucoidan. Infect. Immun. 1998; 66: 5842-5847)。硫酸化フカン(sulphated fucan)及びデキストラン硫酸塩もブタオザルに注入された時、IL−6、IL−8、MCP−1、M−CSF及びG−CSFの循環レベルを顕著に上昇することが示された(Sweeney EA et al. Mobilization of stem/progenitor cells by sulphated polysaccharides does not require selection presence. Proc. Natl. Acad. Sci. 2000; 6: 6544-6549)。
【0010】
ケモカインは、TNF−α、IL−1及びIL−6を含む誘導性炎症性(inducible proinflammatory)のケモアトラクティブサイトカインの異種群である。MIP−1α及びMIP−1βを含むβ−ケモカインは、単球、好酸球、好塩基球、及びリンパ球のための化学誘引物質として働く(Luster AD. Chemokines - chemotactic cytokines that mediate inflammation. New Eng. J. Med. 1998; 338: 436-446)。ケモカインのそれらの各受容体への結合は、イノシトール三リン酸の生成、細胞内カルシウム放出及びプロテインキナーゼCの活性化を含む細胞活性化のカスケードへと導く。従って、ケモカインは走化性を制御する細胞機構を活性化する。従って、それらは白血球のそれらが蓄積する領域への補充及び局所免疫応答の生成における重要な役割を担う。
【0011】
しかし、上記のポリマーによる炎症性サイトカインの過剰放出は、それらがヒトに安全に投与されるには毒性が強過ぎることを示した。従って、多くのポリマーが免疫モジュレート特性を有することが示されたが、それらの自然源からの単離、単離の再現性、研究所における合成ポリマーの合成、及びそれらが動物に投与された場合のポリマーの毒性に付随した問題のために、それらはヒトにおける治療用途のためには有効に開発されなかった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本発明は、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと
(i)病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、又は
(ii)ガンに対する薬理学的活性を有する物質、又は
(iii)抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質
を含む複合体を提供する。
【0013】
本発明はまた薬学的に好適なキャリアと混合又はそれとともに本発明の複合体を含む薬学的製剤を提供する。
【0014】
本発明は、薬剤としての使用のための本発明の複合体を更に提供する。
【0015】
本発明はまた、病原生物による感染の治療における使用及び/又は病原生物に対する免疫応答を誘発するための複合体を提供し、その複合体は、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー及び病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を含む。
【0016】
本発明はさらに、病原生物による感染をこのような治療を必要とする被験体において治療する方法を提供し、これはアクリル酸及びその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の治療有効量を被験体に投与することを含む。
【0017】
本発明はさらに、病原生物に対する免疫応答をその必要性のある被験体において誘発する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の有効量を被験体に投与することを含む。
【0018】
本発明はさらに、ガンの治療における使用のための複合体を提供し、その複合体はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーとガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む。
【0019】
本発明はさらに、このような治療の必要な被験体においてガンを治療する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーとガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の治療有効量を被験体に投与することを含む。
【0020】
本発明はさらに、ガンに対する免疫応答をその必要のある被験体において誘発する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分離症分布のポリマーとガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の有効量を被験体に投与することを含む。
【0021】
本発明はさらに、抗原又は免疫原に対する免疫応答を誘発するための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質を含む複合体を提供する。
【0022】
本発明はさらに、被験体において抗原又は免疫原に対する免疫応答を誘発する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと抗原又は免疫原を含む複合体の有効量を被験体に投与することを含む。
【0023】
本発明はさらに、病原生物による感染の治療及び/又は病原生物に対する免疫応答を誘発するための病原生物に対する薬理学的活性を有する物質との使用のための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを提供する。
【0024】
本発明はさらに、病原生物による感染をそのような治療の必要な被験体において治療する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと病原生物に対する薬理学的活性を有する物質の治療有効量を被験体に投与することを含む。
【0025】
本発明はさらに、病原生物に対する免疫応答をその必要のある被験体において誘発する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと病原生物に対する薬理学的活性を有する物質の有効量を被験体に投与することを含む。
【0026】
本発明はさらに、抗原又は免疫原に対する免疫応答を誘発するために、抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質との使用のための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを提供する。
【0027】
本発明はさらに、抗原又は免疫原に対する免疫応答をそのような治療の必要な被験体において誘発する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと抗原又は免疫原の治療有効量を被験体に投与することを含む。
【0028】
本発明はさらに、ガンの治療及び/又はガンに対する免疫応答を誘発するために、ガンに対する薬理学的活性を有する物質との使用のための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを提供する。
【0029】
本発明はさらに、そのような治療の必要な被験体においてガンを治療する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーとガンに対する薬理学的活性を有する物質の治療有効量を被験体に投与することを含む。
【0030】
本発明はさらに、ガンに対する免疫応答をその必要性のある被験体において誘発する方法を提供し、この方法はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーとガンに対する薬理学的活性を有する物質の有効量を被験体に投与することを含む。
【0031】
本発明はさらに、ワクチンの製造における免疫増強アジュバントとしての使用のためのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを提供する。
【0032】
本発明はさらに、それに対して免疫が誘発されるべき抗原又は免疫原を含むワクチンの製造における免疫増強アジュバントとしての使用のためのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを提供する。
【0033】
ワクチンの製造のための方法において、本発明はさらに、免疫増強アジュバントとしてのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーの使用を含む改良を提供する。
【0034】
定義
“アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー”という用語はここにおいて、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマー、例えばここに記載されるポリマーの1つは、例えばメタクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマー、例えばポリメタクリル酸又はその塩、例えばそのナトリウム塩を表す。該ポリマーはアクリル酸(例えば、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はその塩)のホモポリマー又はコポリマーのいずれかであり得る。
【0035】
該ポリマーは、狭い分子量分布、特に1,7以下の、例えば1.6以下の、例えば1.5以下の、例えば1.4以下の、例えば1.2以下の、例えば1.7未満の、例えば1.6未満の、例えば1.5未満の、例えば1.4未満の、例えば1.2未満の多分散性を有する。一般的に、多分散性が低い方がより良い。したがって、1.2未満の多分散性が一般的に好ましい。
【0036】
ポリマーは一般的に、血液中に存在する場合、糸球体装置を介した濾過をポリマーが殆ど又は全く受けないで、ポリマーが腎臓通過後の循環する血液中に実質的に残留するような分子量を有する。大きな分子の腎臓濾過(糸球体濾過としても知られる)は、とりわけ分子のサイズ及び形状(これは部分的に分子量に依存する)の関数である。一般的に、任意の特定ポリマーについて、それ以下で腎臓濾過が起こり、それよりも上で殆ど又は全く腎臓濾過が起こらない、境界分子量又は狭い範囲の分子量が存在する。任意の特定ポリマーについての境界分子量は、例えば放射標識されたポリマーを使用する標準試験によって測定され得る。
【0037】
一般的な基準として、該ポリマーは一般的に例えば100,000以下、例えば100,00未満、例えば80,00以下、例えば75,000以下、例えば65,000以下、例えば55,000以下、例えば45,000以下の分子量を有する。該ポリマーは一般的に4,000以上、例えば5,000以上、例えば10,000以上、例えば20,000以上、例えば30,000以上、例えば40,000以上の分子量を有する。ポリマーは、上記に与えられる高い方の分子量値のいずれかと上記に与えられる低い方の分子量値のいずれかを組み合わせる範囲内の分子量を有し得る。このような範囲の例は、80,000〜4,000、75,000〜5,000、65,000〜10,000、55,000〜10,000、及び45,000〜10,000の範囲を含むがこれらに限定されるのではない。更なる例は、50,000〜4,000、例えば40,000〜25,000の範囲を含む。45,000〜10,000の範囲の分子量が好まれ得る。
【0038】
“PMAA−Na”という用語はここでポリメタクリル酸、ナトリウム塩を表す。そうでないと示されない限り、それは実施例A1〜A4に記載されるように調製されるポリメタクリル酸、ナトリウム塩を表す。
【0039】
“複合体”という用語はここで、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーとここに定義されるもう1つの物質間の結合を表し、成分間の結合は、主として例えば任意の1つ以上のイオン、静電、ファンデルワールス力を含む非共有結合である。本発明に従った複合体は、大部分が成分間の非共有結合を含むが、それにもかかわらず幾らかの共有結合が存在し得る。
【0040】
本発明の詳細な説明
上記に開示されるように、本発明は病原生物による感染の治療における、ガンの治療における及び/又は免疫増強アジュバントとしてのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーの種々の使用に関し、そしてまたアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと(i)病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、又は(ii)ガンに対する薬理学的活性を有する物質、又は(iii)抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質を含む複合体に関する。
【0041】
本発明は、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーが、主要なヒト組織マクロファージ、即ち抗原提示細胞からベータケモカインMIP−1α及びMIP−1β及びインターフェロン−γの放出を、また毒性量の炎症性サイトカインの放出を誘発しないで、誘発したという我々の観察に基づく。該ポリマーは高濃度においてヒト細胞に対して毒性がなかった。試験されたポリマーはここに記載される方法に従って作製された。以下の理論に拘束されるのではないが、我々は上記の観察がアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーがToll様受容体を含む細胞表面の受容体を刺激することによってTh1免疫増強アジュバントとして働くための、即ち、抗原の免疫刺激特性を増強する物質として働くための可能性を有することを示すと考える。
【0042】
実際我々は、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーが本当にTh1免疫増強アジュバントとして働くことを実証した。抗原、即ちツベルクリン精製タンパク質誘導体BPと、ここに記載されるように作製されたメタクリル酸ナトリウム塩ホモポリマー(PMAA−Na)を含む複合体は、ツベルクリン抗原自体がしたよりも大きいTリンパ球増殖を引き起こし、そしてまたツベルクリン抗原単独がしたよりも多くTリンパ球からのインターフェロン−γ分泌を増加した。
【0043】
従って、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーは、従来のワクチンにおいて使用される抗原及び/又は免疫原、例えば、それに対して治療及び/又は防御ワクチン投与が望まれる生物から直接的に又は間接的に由来する抗原及び免疫原と結合して免疫増強アジュバントとして使用され得る。このような抗原及び免疫原は、例えば、天然源から得られる抗原及び/又は免疫原、即ち関連性のある生物に直接的に由来する、及びサブユニット抗原及び免疫原、及び組換えDNA技術及び/又は化学合成によって作製される抗原及び免疫原(抗原及び免疫原は関連性のある生物に間接的に由来する)である。該ポリマーは、適切な抗原及び/又は免疫原と共にワクチン組成物中に配合され得る。キャリア及び賦形剤が存在し得、送達システムアジュバントであり得る。該ポリマー並びに抗原及び/又は免疫原は本発明の複合体の形態で使用され得、又は同時投与され得る(以下参照)。
【0044】
ワクチン及びこのようなワクチンにおける使用のための抗原及び免疫原の例は、ジフテリア、破傷風、チフス、百日咳、麻疹、風疹、耳下腺炎、ポリオ、H.インフルエンザ(例えばタイプB)、髄膜炎、A型肝炎、B型肝炎、コレラ、狂犬病、(種々の)脳炎、黄熱及びインフルエンザ、並びにこのようなワクチンにおける使用に使用される及び適した抗原及び免疫原を含むがこれらに限定されるのではない。このような抗原及び免疫原は本発明に従って使用され得る。
【0045】
しかし、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーは、同時投与される抗原及び免疫原に免疫増強効果を有するだけでなく、それは同時投与される抗原又は免疫原が無くても病原生物、例えば、排他的ではないが主に細胞内生物である病原生物、特にマクロファージ起源の細胞及び/又は樹状細胞を含む他の抗原提示細胞中で大部分において存在し且つ持続する生物に対する防御Th1免疫応答を促進する能力も有する。これは該ポリマーと病原生物、(例えば、排他的ではないが主に細胞内生物である病原生物、特にマクロファージ起源の細胞及び/又は樹状細胞を含む他の抗原提示細胞中で存在し且つ持続する病原生物)に対する薬理学的活性を有する物質(ここでは“薬剤”と呼ばれる)、特にこのような生物を殺す、そうでなければ崩壊する物質を投与することによって達成され得る。生物を殺す及び崩壊することは、結果として抗原性物質の放出を生じる。該ポリマーの存在は、この変化したミクロ環境にリクルートされた樹状細胞が放出された抗原を吸収し処理するため、抗原に対する免疫応答を増強する。樹状細胞は次いで、エフェクター細胞障害性T−リンパ球応答の生成を促進するCD4+T細胞の活性化を開始する。これらの応答の幾つかは、残存する慢性的に感染した細胞中で持続する任意の生物及びまたこのような細胞の環境中の生物に対して治療的に向けられる。他のエフェクター細胞障害性T細胞応答は、将来的再感染に対する防御ワクチンベースの応答を提供することができる。従って、薬理学的治療、治療ワクチン投与及び防御ワクチン投与が達成される。
【0046】
従って、本発明はアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー、病原生物による感染の治療における病原生物に対する薬理学的活性を有する物質との使用のための、及び/又は病原生物に対する免疫応答を誘発するための該ポリマーに関する。本発明はまたそのような治療の必要な被験体において病原生物による感染を治療する方法及び/又は病原生物に対する免疫応答を誘発する方法に関し、これはアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を被験体に投与することを含む。
【0047】
該ポリマー及び薬理学的活性物質は好ましくは本発明の複合体の形態であり、又は代替的に同時投与され得る(以下参照)。
【0048】
病原体(これに対して免疫応答が誘発される)は、主として細胞内で複製及び/又は存続するもの、特に組織ベースのマクロファージ及び例えば樹状細胞などの他の抗原提示細胞中で複製及び/又は生存するものである。このような生物並びにこのような生物によって引き起こされる疾患及び障害は、以下を含む:
a)白癬;輪癬;鵞口瘡;マラセチア感染(でん風、マラセチア毛包炎、脂漏性皮膚炎、及びスキタリジウム症を含む);外耳道真菌症;及び角膜真菌症を含む、表在性真菌症を引起す生物。
【0049】
b)Candida albicans、Candida tropicalis及びCandida glabrataを含む侵入性及び慢性真菌感染を引き起こすCandida種;Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus及びAspergillus nigerを含むAspergillus種;Cryptococcus neoformans;例えばAbsidia、Rhizopus及びRhizomucor種によって引き起こされるムコール症;Fusarium種;Trichosporon種;ブラストミセス症;Sporothrix種;Sporotrichum種;例えばHistoplasma capsulatum var. capsulatumによって引き起こされるヒストプラズマ症;例えば、Histoplasma capsulatum var. duboisiiによって引き起こされるアフリカヒストプラズマ症;例えばBlastomyces dermatitidisによって引き起こされるブラストミセス症;例えばCoccidioides immitisによって引き起こされるコクシジオイデス症;例えばParacoccidiodes brasiliensisによって引き起こされるパラコクシジオイデス症;及びPenicillium marneffeiによって引き起こされる感染。
【0050】
c)例えば結核菌、異型結核菌、及びライ菌などのマイコバクテリウムファミリーのメンバーによって引き起こされる、例えば結核及びハンセン病等のマイコバクテリア疾患を引き起こす生物。
【0051】
d)例えばSchitosoma haematobium、Schistosoma mansoni、Schistosoma japonicum、Schistosoma intercalatum及びSchistosoma mekongi等の住血吸虫症を引き起こすSchistosomaファミリーのメンバー。
【0052】
e)例えばセロタイプA、B、C及びDのサルモネラファミリーのメンバー等のチフス及びパラチフス熱を引き起こす生物。
【0053】
f)例えばToxoplasma gondiiなどのトキソプラズマ症を引き起こす生物。
【0054】
g)例えばTrypanosoma brucei gambiense又はTrypanosoma brucei gambienseなどのヒトアフリカ・トリパノソーマ症を引き起こす生物。
【0055】
h)例えばTrypanosoma cruziなどのアメリカ・トリパノソーマ症を引き起こす生物。
【0056】
i)例えばPlasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium ovale及びPlasmodium malariaeなどのマラリアを引き起こす生物。
【0057】
j)例えばHIV−1及びHIV−2並びにHTLV―I及びHTLV−IIなどのHIV及びHTLV感染を引き起こす生物。
【0058】
k)Pneumocystis carinii感染を引き起こす生物。
【0059】
l)例えば内臓型(例えば、カラアザール)又は皮膚型(例えば、L.donovani及びL.mexicana)のリーシュマニア症を引き起こす生物。
【0060】
このような疾患及び障害を治療するために使用される薬理学的活性物質(薬剤)は当該技術分野においてよく知られている(例えば、Principles and Pranctice of Infectious Diseases. by Mandell G.L、Bennett J.E., & Dolin R. Fifth Edition. Churchill Livingstone.(2000).Manson’s Tropical Diseases. by Cook & Zumla. Twenty−first Edition. Saunders. (2003)、そして更なる薬剤が開発されている。
【0061】
病原生物に対する薬理学的活性を有する物質の例は、クロトリマゾール、フルシトシン、フルコナゾール、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ピラジナミド、シプロフロキサシン、リファンピシン、チアセタゾン、サイクロセリン、クロファジミン、ダプソーン、ロチオナミド(rothionamide)、メトリフォネート、オキサムニキン、プラジカンテル、コ-トリモキサゾール、ピリメタミン、スルファドキシン、スピラマイシン、メラルソプロール、ニフルティモックス、アモジアキン、クロロキン、メフロキン、プリマキン、プログアニル、キニン、ジドブジン、エファビレンツ、インジナビル、リバビリン、ビダラビン、ラバミソール及びアシクロビルを含むがこれらに限定されない。
【0062】
生成される生物に対する免疫が効果的な“第2ライン”の防御を提供するため、本発明のこの側面に従った使用に関して、治療は好結果的、(即ち、被験体を治療すること又は完全に生物を除去すること)である必要はない。任意の残留生物は、生成されるエフェクター細胞障害性T−リンパ球応答によって除去される(なぜなら、それらは残る慢性的感染細胞中に生存する任意の生物に対して治療的に向けられるからである)。必要であるのは、幾らかの生物が殺され、それによって抗原を放出することである。本発明の利点の1つは、たとえ治療が生物を完全に除去しなくても、エフェクター細胞障害性T−リンパ球応答の誘発が将来的再感染に対する防御ワクチンベース応答を提供することである。従って、薬理学的治療、治療用ワクチン及び防御ワクチンが達成される。
【0063】
同一の考察がガンに適用する。アクリル酸又はその塩由来の狭い分子量分布のポリマーとガンに対する薬理学的活性を有する物質、特にトランスフォームされた、即ち癌性細胞を殺す又は部分的に殺す、そうでなければ崩壊する細胞障害剤を含む本発明の複合体の使用。細胞を殺すこと又は崩壊は抗原性物質の放出を結果として生じ、その幾らかはマクロファージ及び抗原提示細胞によって非自己抗原として“見られる”。該ポリマーの存在は、この変化したミクロ環境中にリクルートされた樹状細胞が放出された抗原を吸収し且つ処理するため、抗原に対する免疫応答を増強する。樹状細胞は次いでフェクター細胞障害性T−リンパ球応答の生成を促進するCD4+T細胞の活性を開始する。これらの応答の幾つかは他のガン細胞に対して治療的に向けられ、従ってガンの再発及び任意の残留ミクロ転移の増殖に対する防御ワクチンベースの応答を提供する。これらの応答は多数のマクロファージ及び抗原提示細胞が存在するガンについて最も大きい。これはリンパ腫及び白血病において特にそうである。従って、薬理学的治療、治療ワクチン、及び防御ワクチンが達成される。
【0064】
ガンに対する薬理学的活性を有する物質は当該技術分野においてよく知られており、そして新たな活性剤が開発されている(例えば、Cancer: Principles and practice of oncology. V.T. DeVita, S Hellman & S.A. Rosenburg, Published by Lippincott Williams & Wilkins, 6tth Edition, 2001を参照)。抗癌剤の例は、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アムサクリン、アザシチジン、ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ヒドロキシウレア、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトザントロン、トレスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びクリサンタスペース(crisantaspase)を含むがこれらに限定されない。
【0065】
上記に示されるように、一般的に該ポリマー、病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、又はガンに対する薬理学的活性を有する物質(どちらも“薬剤”と呼ばれる)が本発明の複合体の形態で投与されることが好ましい。このような複合体は薬剤のみよりも抗原提示細胞によってより効果的に吸収され、それはまた、薬剤が生物を殺し抗原が放出されるときにポリマーがその場で直ぐにTh1免疫応答を増強するミクロ環境を生成することができるように、薬剤とポリマーの両方が同時に同一細胞中に存在することを確実にする。しかし、該ポリマー及び薬剤は同一の薬学的製剤又は別個の製剤において同時投与され得る。後者の場合、1つの製剤が他方の前に投与され得るが、一般的に2つの製剤を実質的に同時に投与することが好ましい。
【0066】
一般的に、該ポリマー並びに抗原及び/又は免疫原を本発明の複合体の形態で投与することも好ましい。しかし、該ポリマー並びに抗原及び/又は免疫原は同一の薬学的製剤又は別個の製剤において同時投与され得る。後者の場合1つの製剤は他方の前に投与され得るが、一般的に2つの製剤は実質的に同時に投与することが好ましい。
【0067】
本発明の複合体は、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと
(i)病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、又は
(ii)ガンに対する薬理学的活性を有する物質、又は
(iii)抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質
を含む。
【0068】
病原生物、病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、ガンに対する薬理学的活性を有する物質、並びに抗原及び免疫原は例えば上記のものである。
【0069】
本発明の複合体、即ちアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーは、該複合体と薬学的に適したキャリアを含む薬学的製剤の形態であり得る。製剤は、成分、特に物質(i)、(ii)及び(iii)の性質に依存して、従来の薬学的製剤又はワクチン或いは両方であり得、又はとしてみなされ得る。免疫応答を誘発する使用が目的とされる場合、送達システムアジュバント、例えばアルムも存在し得る。
【0070】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーが、該物質を有する複合体の形態において投与される代わりに、上記に定義される物質(i)、(ii)又は(iii)と同時投与される場合、該ポリマー及び物質(i)、(ii)又は(iii)は同一の薬学的製剤中に配合され得、又はそれらは別個の製剤中に配合され得、それぞれの場合において薬学的に適したキャリアと混合される。別個の製剤である場合、1つは他方の前に投与され得るが、2つの製剤を実質的に同時に投与することが好ましくあり得る。
【0071】
上記に示すように、本発明は病原生物によって引き起こされる疾患及び障害並びにガンの従来の薬学的治療とこのような疾患、障害及びガンに対する免疫応答の誘発の両方を包含する。そのような必要性のある被験体において誘発される免疫応答は好ましくは治療的及び/又は予防免疫応答であることが理解される。治療的免疫応答は、疾患又は障害の治療において援助する。このような応答は短期の応答であり得る。予防免疫応答は、例えば疾患又は障害の再発又は後の感染又は再感染、或いはガンのミクロ転移の移転の増殖及び広がりに対するより長期間の保護を提供する。このような応答は多くの場合治療的且つ予防“ワクチン接種”と呼ばれる。
【0072】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと病原生物に対する薬理学的活性を有する物質の病原生物によって引き起こされた疾患の治療と同時に免疫応答を誘発することにおける使用はリーシュマニア症のケースで例証された。リーシュマニア症に起因する感染は、例えば内臓型(例えば、カラアザール)又は皮膚型であり得る。内臓リーシュマニア症は散在性原生動物感染である。長年の間、従来の療法は28日間の静脈又は筋肉注射による毎日一度与えられる5価のアンチモニから成る。しかし、1990年からインドにおける大規模のアンチモニ治療の失敗が有効な抗リーシュマニア症剤としてアンフォテリシンBデオキシコレートB(AmB)の導入へと導いた。97%の長期治癒率がアンフォテリシンBの毎日、又はより典型的には一日おきの静脈投与(0.75〜1mg/kg/日の投与量で全体で15〜20の注入)によって得られた。これらの治療の長期経過は、高い病院の負荷と相当の費用が伴う。結果としてこれは、多くの場合起こる付随した悪影響のため、治療計画の不従順又は放棄へ多くの場合導く。
【0073】
アンフォテリシンBの脂質ベース複合体は、組織ベースのマクロファージ中に蓄積する。それらはヒトマクロファージ中で増殖し得る多数の酵母及びカビに対して非常に効果的であることが示された。アンフォテリシンBの脂質配合物は、内臓リーシュマニア症に対する高い効力を有し、それらは5〜10日間与えられた場合90%よりも高い治癒率を結果生じることが示された。Sundar等は短期コース、即ち1.5mg/kg/日の注入で毎日投与されるリポソームアンフォテリシンB(AmBisome;Gilead Science)を用いた5日間の治療が、患者の93%を治癒したことを示した。別の追跡試験において、リポソームアンフォテリシンBの5mg/kgの一回の全投与注入が患者の91%を治療した。有害なイベントは殆ど無かった(Sundar, S et al. Treatment of Indian visceral leishmaniasis with single or daily infusion of low dose liposomal amphotericin B: a randomised trial. Brit. Med. J. 2001; 323: 419-422. Sundar, S. et al. Single-dose liposomal amphotericin B in the treatment of visceral leishmaniasis in India: a multicenter study. Clin. Inf. Dis. 2003: 37; 800-804)。従って、単回投与リポソームアンフォテリシンB治療はインドにおける内臓リーシュマニア症の治療において安全且つ効果的と考えられ得る。しかし、単回投与でさえ治療は高価であり、現実的な不都合は脂質ベースアンフォテリシンB配合物が、特に内臓リーシュマニア症の多くの事例が起こる熱帯の高温において長期間の保存中安定でないことである。
【0074】
リーシュマニア症における回復及び寄生体クリアランスを促進する免疫応答は、インターフェロンガンマ媒介Th−1応答が優位を占める。マクロファージはリーシュマニアを効率的に摂食するが、それらは該生物の摂食によって活性化されない;結果として炎症性ケモカイン、炎症性サイトカイン、及びインターフェロンγは放出されない。マクロファージと対照的に、樹状細胞はリーシュマニア寄生体を吸収し、成熟し、次いで細胞免疫応答の発達を促進する。動物モデルにおいて、感染したマクロファージが活性化され得る場合、寄生体の殺傷が続くことが示された。従って、2つの異なるプロセス、即ち抗原プロセシング及び細胞成熟/活性化が効果的な細胞ワクチン応答のために組み合わせられなければならない。微生物によって実証されるように、抗原性成分及び樹状細胞活性化/成熟成分の両方を保持する物質は、樹状細胞をTh1媒介応答へと進ませ得る。脂質ベースアンフォテリシンB配合物は免疫調節性又はアジュバント活性を有しない。
【0075】
本発明に従ったポリ(メタクリル酸、ナトリウム塩)(PMAA−Na)とアンフォテリシンBの複合体が実施例で詳細に説明されるように調製され試験された。複合体は以下の特有の性質を有することが示された。
a)それは静脈投与後のアンフォテリシンBの肝臓、脾臓、リンパ節への効果的な器官送達を可能にする。これらは、動物及びヒトにおいてリーシュマニアによって主に感染される器官である。
b)それは静脈に与えられた場合、アンフォテリシンBのリーシュマニア感染したマクロファージへの効果的な細胞内送達を可能にする。
c)アンフォテリシンB−ポリ(メタクリル酸、ナトリウム塩)複合体は、リーシュマニア無鞭毛体が生残り、増殖し、残存する細胞内細胞小器官中に蓄積し、これはリーシュマニア無鞭毛体の細胞内殺傷を促進する。
d)内臓リーシュマニア症の動物モデルにおけるin vivo試験は、臨床グレードのアンフォテリシンB、商業的なリポソームアンフォテリシンB製剤AmBisome及びアンフォテリシンB−ポリ(メタクリル酸、ナトリウム塩)製剤の抗リーシュマニア活性は互いに顕著に異ならないことを示した。アンフォテリシンB−ポリ(メタクリル酸、ナトリウム)製剤は、内臓リーシュマニア症の動物モデルにおいて商業的リポソームアンフォテリシンB製剤AmBisomeと同程度効果的であった。
e)ポリ(メタクリル酸、ナトリウム塩)は組織マクロファージ中のアンフォテリシンBから放出され、それは次いでβ−ケモカイン及びインターフェロン−γの放出を促進する。これは局所Th1アジュバント応答を生成する。
f)ケモカイン及びサイトカイン発現の局所誘発は、自然免疫システムの細胞の該サイトへのリクルートメント及び活性化を促進する。これは未成熟樹状細胞及びCD4+Tリンパ球を含む。これらはマクロファージを刺激して更なるTNF−α、IL−1β及びIL−6を産生させる。
g)自然免疫システムの活性化は、樹状細胞が成熟し、組織からそれらの新たに放出された抗原が提示される局所リンパ節に移動することを誘発する。これは結果としてCD4+T細胞応答及びエフェクターCD8+T細胞応答の誘発及び生成を生じる。
h)従って、抗原提示細胞中のリーシュマニアの殺傷及びTh1促進アジュバントの直ぐ近くにおけるリーシュマニア抗原の後のアベイラビリティーは感染したマクロファージを細胞ワクチンへ変換する。
i)抗原提示細胞の近接性、アンフォテリシンBの殺傷活性によるリーシュマニア抗原の放出、及び適切且つ局所のTh1サイトカイン/ケモカイン環境の同時促進のため、細胞免疫応答は顕著に促進される。
j)同時発生の疾患の治療及び治療エフェクター細胞免疫応答、即ちワクチン接種の生成は、個体が感染した器官に対する長期の防御免疫を生成する。
k)従って、疾患の治療及び治療ワクチン接種は同時且つ外部アジュバント又は外部源のリーシュマニア抗原を投与する必要なく達成される。
l)単回投与治療は、典型的に15〜20の投与を必要とするアンフォテリシンBと異なって効果的である。
m)製剤は、商業的に利用可能であるリポソームアンフォテリシンB製剤よりも特に熱帯で見られるより高い周囲温度でより安定である。
n)ヒトにおいて静脈投与された場合によく見られるフリーアンフォテリシンの毒性は、該製剤が使用される場合最小限に下げられる。
o)アンフォテリシンB及びPMAA−Na間の複合体を形成することによって、薬剤の化学的誘導体化が回避される。結果として、リーシュマニア種に対するアンフォテリシンBの効力は、変化又は低下されない。これは、アンフォテリシンBの糖部分におけるアミノ基に特に関連する(この基がこの薬剤の薬理学的活性を媒介することにおいて重要であるため)。糖部分のアミンは、その反応性のために結合点として以前に使用された(Conover C.D. et al. Utility of poly (ethylene glycol) conjugation to create prodrugs of amphotericin B. Bioconjugate Chem. 2003; 14: 661-666)。
【0076】
上記のように、本発明は本発明複合体、即ち薬学的に適したキャリアと混合又はそれとともに、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを含む薬学的製剤を提供する。
【0077】
本発明の薬学的製剤は、静脈内、動脈内、リンパ循環中、リンパ節中、経口、腹腔内、局所、口内、直腸、皮膚の表面への、皮内、皮下、筋肉内、関節スペースへの、鼻腔内、硝子体内、又は肺、器官への直接的、器官の周り、器官への注射による、又は器官を通る直接的注入の投与に適した形態であり得る。本発明は、このようなルートのいずれかによる本発明に従ったポリマーの複合体の投与を含む。本発明の薬学的製剤は、デポ又は貯蔵製剤、又はエアゾール製剤の形態であり得る。上記及び他のルートの投与のため適切な配合物は当該技術分野において公知である(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences by E.W. Martinを参照)また、Wang, Y. J. and Hanson, M. A., Journal of Parenteral Science and Technology, Technical Report No. 10, Supp. 42: 2S, 1988を参照。
【0078】
本発明の、即ちアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーの複合体は、“結合した微粒子(particulate associated)”であり得る。このような微粒子は、当該技術分野に公知のエマルジョン、均質化、及びスプレー乾燥工程によって作製され得る。このような配合物のレビューのために、例えばHanes J, Cleland JL & Langer R, Adanced Drug Delivery Reviews 28 (1997) 97-119を参照。このような本発明の微粒子結合複合体を含む薬学的組成物は、肺又は鼻ルートで粘膜に、摂取によって、又は非粘膜腸管外ルートによって、特に皮下に、又は筋肉内に、投与され得る。
【0079】
脂質形態の本発明の薬学的製剤において、該ポリマーの濃度は、例えば0.1〜2,500μg/ml、例えば1〜500μg/mlであり得る。他の配合物は、例えば脂質製剤に基づいて計算される類似量のポリマーを含み得る。
【0080】
本発明は、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー並びにこのようなポリマーと抗原又は免疫原或いは病原生物又はガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体に関する。該ポリマーは、アクリル酸由来(例えばアクリル酸若しくはメタクリル酸又はその塩由来)のユニットを含むホモポリマー又はコポリマーであり得る。アクリル酸由来のユニットを含む幾つかのポリマーは公知である。上記のように、該ポリマーは一般的に狭い分子量分布を有するべきである。多分散性は、例えば1.7以下、例えば1.6以下、例えば1.5以下、例えば1.4以下、例えば1.2以下、例えば1.7未満、例えば1.6未満、例えば1.5未満、例えば1.4未満、例えば1.2未満である。一般的に多分散性が低い程よい。従って、1.2未満の多分散性が一般的に好ましい。従って、1.2未満の多分散性が一般的に好ましい。
【0081】
該ポリマーは一般的に、血液中に存在する場合、糸球体装置を介した濾過をポリマーが殆ど又は全く受けないで、ポリマーが腎臓通過の間及び後の循環する血液中に実質的に残留するような分子量を有する。大きな分子の腎臓濾過(糸球体濾過としても知られる)は、とりわけ分子のサイズ及び形状(これは部分的に分子量に依存する)の関数である。一般的に、任意の特定ポリマーについて、それよりも低いと腎臓濾過が起こり、それよりも上で殆ど又は全く腎臓濾過が起こらない、境界分子量又は狭い範囲の分子量が存在する。任意の特定ポリマーについての境界分子量は、例えば放射標識されたポリマーを使用する標準試験によって測定され得る。
【0082】
一般的な基準として、該ポリマーは一般的に例えば100,000以下、例えば100,00未満、例えば80,000以下、例えば75,000以下、例えば65,000以下、例えば55,000以下、例えば45,000以下の分子量を有する。該ポリマーは一般的に4,000以上、例えば5,000以上、例えば10,000以上、例えば20,000以上、例えば30,000以上、例えば40,000以上の分子量を有する。ポリマーは、上記に与えられる高い方の分子量値のいずれかと上記に与えられる低い方の分子量値のいずれかを組み合わせる範囲内の分子量を有し得る。このような範囲の例は、80,000〜4,000、75,000〜5,000、65,000〜10,000、55,000〜10,000、及び45,000〜10,000の範囲を含むがこれらに限定されるのではない。更なる例は、50,000〜4,000、例えば40,000〜25,000の範囲を含む。45,000〜10,000の範囲の分子量が一般的に好まれ得る。
【0083】
該ポリマー又は複合体は、循環血液中に適切な時間存続するべきことが一般的に望まれる。当業者に知られるように、適切な時間は多くの要因(複合体の場合、該ポリマーにコンプレックスを形成した物質の性質を含む)に依存する。例としては、該ポリマー又は複合体は、数時間循環中に存続し得、例えば24時間まで、例えば約4〜6時間から約24時間までである。
【0084】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマーは、ユニット(I);
【0085】
【化1】
【0086】
(式中、Rは水素及びC1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C7〜C18アラルキル、C7〜C18アルカリール、C6〜C18アリール、カルボン酸、C2〜C18アルコキシカルボニル、C2〜C18アルカミノカルボニル、又は炭素バックボーン中のヘテロ原子で、又は炭素バックボーンに結合したヘテロ原子で置換されたC1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C7〜C18アラルキル、C7〜C18アルカリール、C6〜C18アリール、カルボン酸、C2〜C18アルコキシカルボニル、C2〜C18アルカミノカルボニルから成る群から選択され、R1は、水素、C1〜C6アルキル基から選択される);及びその塩、例えばアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩又はアンモニウム塩、
を含むポリマーであり得る。
【0087】
好ましくは、Rは水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アラルキル、C1〜C6アルカリール、C1〜C6アルキルアミド及びC1〜C6アルキルイミドから成る群から選択される。好ましくは、Rは水素、又はメチルである。好ましくはR1は、Rから独立して、水素又はメチルである。特にRは水素であり、R1はメチルである。
【0088】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含むブロックコポリマーの例は、ユニット(II)
【0089】
【化2】
【0090】
(式中、R、R1及びR2は、上記のように定義される;R3は、C1〜C18アルキレン、C2〜C18アルケニレン、C7〜C18アラルキレン、C7〜C18アルカリーレン及びC6〜C18アリーレンから成る群から選択される;Lはブロックを連結する2価のリンカーである;m及びnは各々1又は1よりも大きい整数である。)
を含むブロックコポリマーを含む。
【0091】
好ましくは、Rは水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アラルキル及びC1〜C6アルカリール、C2〜C8アルコキシカルボニル、C2〜C8アルカミノカルボニルから成る群から選択される。最も好ましいRは水素及びメチルから選択される。
【0092】
好ましいR1は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、又はこれらの異性体から成る群から選択される。最も好ましいR1は、水素及びメチルから選択される。
【0093】
好ましいR2は、結合から選択される、又は少なくとも1つの炭素原子又は少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
【0094】
R2が結合でない場合、R2は、CR1に2価の基を介して結合し、好ましくはカルボニル、C1〜C18アルキレン基及び/又はC6〜C18アリーレン基(これらは1つ以上のヘテロ原子で置換され得る)を含む。好ましいR2は、C1〜C6アルキレン、C6〜C12アリーレン、C1〜C12オキシアルキレン及びカルボニル−C1〜C6アルキレンから成る群から選択される基を含む。R2がアルキレン基を含む場合、それは分岐を有する、直鎖、又は環状、1つ以上のアルキル基で置換され又は置換されないであり得、好ましくは、メチレン、1,2−エチレン、1,3−プロピレン、ヘキシレン又はオクチレンである。R2がアリーレン基を含む場合、好ましくは、それはベンジレン、トリレン又はキシリレンである。
【0095】
好ましくは、R3基(これは同一又は異なり得る)は、C1〜C6アルキレン基、好ましくは1,2-アルキレン、及びC6〜C12アリーレン基、最も好ましくはメチレン、エチレン、1,2プロピレン及び1,3−プロピレンから成る群から選択される。好ましくは全てのR3は、同一であり、最も好ましくは全てが1,2-エチレン又は1,2−プロピレンである。
【0096】
Lは好ましくはC1〜C18アルキレン又はC6〜C18アリーレン基(これらは1つ以上のヘテロ原子で置換及び/又は中断され得る)を含む。好ましいLは、C1〜C6アルキレン、C6〜C12アリーレン、C1〜C12オキシアルキレン及びC1〜C6アシルから成る群から選択される基を含む。Lがアルキレン基を含む場合、それは分枝を有する、直鎖、環状、1つ以上のアルキル基で置換され又は置換されないであり得、好ましくはメチレン、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、tert‐ブチレン、sec‐ブチレン、ヘキシレン、又はオクチレンである。Lがアリーレン基を含む場合、それは好ましくはベンジレン、トリレン又はキシリレンである。最も好ましくは、Lは−CORa基(ここでRaはC1〜C6アルキレン又はC6〜C12アリーレン、好ましくはメチレン、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、tert‐ブチレン、及びsec‐ブチレンから成る群から選択される。
【0097】
ポリマーはユニット(I)を組み込むホモポリマーであり得、或いは他のポリマー、オリゴマー若しくはモノマーユニットを組み込むコポリマー又はブロックコポリマーであり得、例えば上記のユニット(II)を含むブロックコポリマーである。例えば、ホモポリマー又はコポリマー又はブロックコポリマー中に組み込まれた更なるポリマーユニットは、アクリルポリマー、アルキレンポリマー、ウレタンポリマー、アミドポリマー、ポリペプチド、多糖及びエステルポリマーを含み得る。好ましくはポリマーがヘテロポリマーである場合、更なるポリマー成分はポリエチレングリコール、ポリアコニット酸、又はポリエステルを含む。
【0098】
例えばユニット(I)又は(II)を有するポリマーはまた、例えば前駆体ポリマーの可溶化を可能にする及び/又は本発明に従って使用されるポリマー中の遊離アクリル酸基(従って塩形成基)の数の制御を可能にする更なるユニットを含み得る。例えば、ユニット(I)を含むポリマーは、構造(III)又は(IV)
【0099】
【化3】
【0100】
【化4】
【0101】
(式中、R、R1、R2及びR3、L、m及びnは上記に定義され、R4、R5及びR6は、独立的に各々R、R1及びR2と同一の基から選択される;Qはポリマーを作製するために使用される条件下で切断されない、又は実質的に切断されない基を表す;pは、1又は1よりも大きい整数を表す。所望される場合、Qはターゲティング基であり得、即ちポリマーを細胞タイプ(例えば、マクロファージ)又は器官(例えば肝臓)に標的化する基であり得る。)
を有し得る。
【0102】
Qは、例えばC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アルカリール、C1〜C12アルコキシ、C1〜C12ヒドロキシアルキル、C1〜C12アルキルアミノ、C1〜C12アルカノイル、C1〜C12アミノアルキル、又はアミン、ヒドロキシル若しくはチオール基で置換されたC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アルカリール、C1〜C12アルコキシ、C1〜C12ヒドロキシアルキル、C1〜C12アルキルアミノ、C1〜C12アルカノイルから成る群から選択され得る。好ましくはQはアミノ基、例えばC1〜C12ヒドロキシアルキルアミノ基、例えば2−ヒドロキシプロピルアミノ又はヒドロキシエチルアミノ部分を含む。
【0103】
基Qは水性溶液中のポリマーのための可溶化基であり得る。たとえば、該ポリマーは水溶性ポリアクリルアミドホモ又はコポリマー、好ましくはポリメタクリルアミド又はポリエタクリルアミドホモ又はコポリマーであり得る。更に、基Qがポリマーが作製される条件下で基Qが切断されない(又は基Qの大部分が切断されない)場合、基Qの存在は、ポリマー中の遊離アクリル酸基(従って、塩形成基)の数の制御を可能にする。例えば、前駆体ポリマー中の脱離基X含有ユニットの数に対するQ含有ユニットの割合は、選択され得る。脱離基X含有ユニットの数に対するQ含有ユニットの相対的割合は、ポリマープロダクト中のアクリル酸又は塩基の数を決定する。以下に記載されるように、ポリマーのポリアニオン性質は、その生物学的活性に影響し得る。従って、ポリマーのイオン性質を操作する能力は所望の特性を有するポリマーの作製において有用である。
【0104】
本発明に従った使用のためのポリマー(例えば本発明の複合体を形成するため)は、例えばポリメタクリル酸、例えば1.7以下、例えば1.6以下、例えば1.5以下、例えば1.4以下、例えば1.2以下、例えば1.7未満、例えば1.6未満、例えば1.5未満、例えば1.4未満、例えば1.2未満の多分散性を有するポリメタクリル酸であり得る。一般的により低い多分散性がよい。従って、1.2未満の多分散性が一般的に好ましい。該ポリマーの分子量は一般的に上記の定義セクションで説明される通りである。このようなポリメタクリル酸及びその塩、並びにそれらの生産の例はここにおける実施例中に与えられる。このようなポリメタクリル酸及びその塩は、本発明の実施において特に有用であり得る。
【0105】
我々は主要な組織マクロファージ、即ちここに記載されるように作製されたポリメタクリル酸ナトリウム塩(PMAA−Na)によって誘発された抗原提示細胞からのβケモカイン及びインターフェロンγの放出が、同様の狭い分子量分布を有するメタクリル酸ナトリウム塩ホモポリマーの商業的に入手可能なサンプルでは見られなかったことを見出した。組織マクロファージからのケモカイン及びサイトカインの放出における観察された違いは、ここに記載されるように調製されたPMAA−Naと商業的に入手可能なPMAA−Na間の構造的相違であるかもしれないことを示唆する。ここに記載されるように調製されたPMAA−NaのMnは商業的サンプルの1つと類似した(即ち、Mn〜22kg/モル)ため、分子量の影響に起因する免疫学的効果ではないようである。PMAA−Naはポリアニオンである。ポリアニオンの生物学的効果は分子量、電荷密度、及びタクチシティ(tacticity)などの構造特性に依存し得ることが示唆される(Ottenbrite, R., et al., Biological activity of poly(carboxylic acid) polymers., in Polymeric Drugs, L. Donaruma and O. Vogl, Editors. 1978, Academic Press: New York. P. 263-304)。上記及び以下の本発明に従って使用されるポリマーの生物学的活性に関する仮説に拘束されるのではないが、我々はその生物学的データは、記載される特有の生物学的性質を有するPMAA−Naを結果生じる構造的詳細を与えるのは調製方法であり得ることを示すと考える。
【0106】
ここにおける実施例で使用されるポリマーは、水酸化ナトリウムを用いてポリ(N−メタクリルオキシスクシンイミド)(PMOSu)の加水分解によって作製されたポリメタクリル酸、ナトリウム塩である。このような方法及び同様の方法(特に前駆体ポリマーの加水分解を必要とする)は、本発明に従った使用のためのその及び他のポリマーの作製に有用であり得る。
【0107】
例えば、本発明に従った使用のためのポリマーは、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基、例えばナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、又はリチウム塩基などの塩基性薬剤を用いた前駆体ポリマーの加水分解を含む方法によって作製され得る。このような塩基は、例えば水酸化物、炭酸塩、又は炭酸水素塩、例えば水酸化ナトリウムであり得る。前駆体ポリマーは、PMOSuであり得、それは他の適切な前駆体ポリマー、例えば以下に記載される前駆体ポリマーであり得る。加水分解は適切な溶媒中で実施される。前駆体ポリマーは一般的に疎水性分子であるため、反応は一般的に有機溶媒、例えばDMF、DMSO、DMPU又はジメチルアセトアミド中で実施される。加水分解は、例えば周囲温度及び圧力及び緩やかな加熱、例えば40〜60℃で例えば2〜16時間などマイルドな条件下で実施され得、又はより強い条件が使用され得る。
【0108】
このような方法によって作製されるポリマーはここに説明されるように作製されるPMAA−Naによって実証される生物学的特性の幾らか又は全てに類似する生物学的特性を有し得る。
【0109】
ここに記載されるPMAA−Naの作製における前駆体ポリマーとして使用されるPOMSuはWO01/18080及びここにおける実施例A4に記載されるように、原子移動ラジカル重合法、特に銅媒介方法を用いたメタクリルオキシスクシンイミドの均質重合によって作製された。作製のためのこのような方法は、本発明に従った使用のためのその及び他の前駆体ポリマーの作製のために有用であり得るが、本発明はこのような方法、このような方法によって作製される前駆体ポリマー、このような前駆体ポリマーから作製されるポリマーに限定されるのではない。
【0110】
本発明に従った使用のためのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマーは、アクリル酸由来のユニットにおけるアクリレートカルボン酸の水素原子の代わりに加水分解によって切断されて酸を与え得る(例えば、マイルドな加水分解による切断)基を有する対応する前駆体ポリマーの加水分解によって作製され得る。加水分解によって切断され得る基は、例えば適切な脱離基、例えば電子吸引基、アシレーティング基であり、これらは好ましくはカルボキシレート活性化であり、一般的にN−スクシンイミジル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、パラニトロフェニル、ジニトロフェニル、N−フタルイミド、N−ボルニル、シアノメチル、ピリジル、トリクロロトリアジン、5−クロロキノリノ、及びイミダゾリル基から成る群から選択され、好ましくはN−スクシンイミジル又はイミダゾリル基であり、特にN−スクシンイミジル基である。
【0111】
加水分解は例えば上記に記載の塩基性薬剤、例えば水酸化ナトリウムを用いて実施され得、そして例えば周囲温度、圧力、及び緩やかな加熱(例えば40〜60℃)で例えば2〜16時間のマイルドな条件下で実施され得る。
【0112】
上記のユニット(I)又は(II)を含むポリマーは、WO01/18080に記載のポリマー(“前駆体ポリマー”)若しくは類似するポリマー又はWO03/059973に記載のポリマー、若しくは類似するポリマーから作製され得る。このような前駆体ポリマーは、以下のユニット(Ia)を含むポリマー及びユニット(IIa)を含むポリマーを含む。
【0113】
【化5】
【0114】
【化6】
【0115】
(式中、R、R1、R2、R3、L、m及びnは上記に定義されるとおりであり、Xは脱離基、例えばアシレーティング基を表し、これは好ましくはカルボキシレート活性化であり、一般的にN−スクシンイミジル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、パラニトロフェニル、ジニトロフェニル、N−フタルイミド、N−ボルニル、シアノメチル、ピリジル、トリクロロトリアジン、5−クロロキノリノ、及びイミダゾリル基から成る群から選択され、Xは好ましくはN−スクシンイミジル又はイミダゾリル基を表す。)
基Qを含むユニットを含むポリマー、即ちユニット(III)を含むポリマー又はユニット(IV)を含むポリマーは対応する前駆体ポリマー(IIIa)又は(IVa)から作製され得る。
【0116】
【化7】
【0117】
【化8】
【0118】
(式中、R、R1、R2、及びR3、R4、R5及びR6、L、Q、X、m、n及びpは上記に定義される通りである。m、n及びpは各々500までの整数を示し得、好ましくはm、n及びpの合計は約500以下である。
【0119】
前駆体ポリマー、特に本発明に従った使用のためのポリマーを加水分解による切断によって与えるために適した脱離基を含む前駆体ポリマーは、任意の適切な方法、特に狭い分子量分布のポリマー特に狭い分子量分布、たとえば1.7以下、例えば1.6以下、例えば1.5以下、例えば1.4以下、例えば1.2以下、例えば1.7未満、例えば1.6未満、例えば1.5未満、例えば1.4未満、例えば1.2未満を有するポリマーの作製を可能にする任意の方法によって作製され得る。一般的により低い多分散性がよりよい。従って、1.2未満の多分散性が一般的に好ましい。該ポリマーは一般的に上記の定義セクションに記載される分子量を有する。
【0120】
所望の多分散性を有するポリマー前駆体は原子移動ラジカル重合法、例えば銅媒介原子移動ラジカル重合によって作製され得、又はフリーラジカル重合を含む他の方法が使用され得る。このような方法は、WO01/18080及びWO03/059973に記載される。例が以下に与えられる。本発明はまた、このような方法に従って得られ得るアクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマーも提供する。しかし、本発明はこのような方法によって作製されるポリマーに限定されるのではない。アクリル酸原子を含むユニットを含むポリマー(特に上記に記載の多分散性を有する)を作製するのに適した任意の方法が使用され得る。
【0121】
重合が原子移動ラジカル重合によって行われる場合、適切なラジカルイニシエーターが利用される。このようなイニシエーターは、アルキルハライド、好ましくはアルキルブロマイドを通常含む。特に、イニシエーターは2−ブロモ−2−メチル−(2−ヒドロキシエチル)プロパノエートである。重合はまた、Cu(I)錯体を含む重合メディエーターの存在下で行われる。このような錯体は、通常キレーティングリガンドによってキレート化されるCu(I)Br錯体である。典型的なメディエーターは、Cu(I)Br(Bipy)2、Cu(I)(Bipy)、Cu(I)Br(ペンタメチルジエチレン)、Cu(I)Br[メチル]6トリス(2−アミノエチル)アミン]及びCu(I)Br(N,N’,N’’,N’’’−ペンタメチルジエチレントリアミン)である。
【0122】
反応は適切な溶媒の存在下で起こる。このような溶媒は一般的に非プロトン性溶媒であり、例えばテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びスルホラン、並びにこれらの混合物である。代替的に水が使用され得る。特に好ましい溶媒は、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミド並びにこれらの混合物である。
【0123】
本発明の複合体の生物学的特性に関し、我々は本発明の複合体を作製する異なる方法が複合体の特性に影響し得ることを見出した。予め成形されたポリマーと抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質間の複合体を形成するよりもむしろ、抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質の存在下でポリマーを形成するために、ポリマー前駆体を特にマイルドな条件下で加水分解することによって本発明の複合体を形成することが有利であると思われる。
【0124】
抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質の存在下でのポリマー前駆体の加水分解は、一般的に抗原、免疫原又は物質が実質的に悪影響を受けないような条件下で実施されるべきであり、例えば加水分解は一般的にマイルドな条件下で実施されるべきである。例えば条件は、抗原、免疫原又は物質が実質的に分解、低下、又はそうでなければ関連する活性の損失が引き起こされないものであるべきである。
【0125】
例えば、抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質の存在下でのポリマー前駆体の加水分解は、塩基性薬剤、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基、例えばナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム又はリチウム塩基を用いて実施され得る。このような塩基は、例えば水酸化物、炭酸塩又は炭酸水素塩、例えば、水酸化ナトリウムであり得る。加水分解は、適切な溶媒、例えば有機溶媒、例えばDMF、DMSO、DMPU又はジメチルアセトアミド中で実施される。加水分解は、例えば周囲温度、圧力、及び穏やかな加熱(例えば40〜60℃)のマイルドな条件下で実施され得る。反応は例えば2〜16時間実施され得る。
【0126】
例えば上記に記載されるように、抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質の存在下でポリマー前駆体を加水分解することによって本発明に従った使用のためのポリマーを作製することによる本発明の複合体を作製する方法は、複合体がこのような方法によって得られ得るため本発明の一部である。
【0127】
本発明の複合体において、該ポリマーと病原生物又は抗原又はガンに対する薬理学的活性を有する物質の間の結合は、主に非共有(即ち、イオン又はファンデルワールス結合)であるが、薬理学的活性物質又は抗原の幾つかの分子は該ポリマーに共有結合で結合し得ることが考えられる。共有結合の程度は薬理学的活性物質又は抗原の性質及び該ポリマーの性質に依存し得る。
【0128】
上記に記載されるように、“複合体”という用語は該ポリマーと病原生物又は抗原又はガンに対する薬理学的活性を有する物質の間の結合を表すためにここで使用され、主に非共有であるが幾らかの共有結合を含み得る。
【0129】
本発明の複合体は、酸性基を有する高分子電解質である。脱プロトン化の程度は、複合体の環境によって変化し得る。本発明の複合体は塩の形態であり得る。塩は例えば1価、2価、3価、4価対イオンを有し得る。1価対イオンは、例えばアルカリ金属イオン、例えばナトリウム若しくはカリウムイオン又はアンモニウムイオンであり得る。2価対イオンは、例えばアルカリ土類金属イオン、例えばカルシウム又はマグネシウムイオンであり得る。他の対イオンは遷移金属のイオン、例えば鉄、スズなどを含む。1タイプ以上の対イオンが存在及び該ポリマーと結合し得る。更に塩形成基の数及び割合は、例えば上記に記載されるような適切なポリマー前駆体などの使用によって制御され得る。該ポリマーは酸性基、従って負の電荷を有するため、該ポリマーを有する複合体を形成する物質又は作用物質は一般的に反対の電荷に起因する静電力を含む非共有的相互作用による直接的複合体の形成を可能にするための正の電荷を保持することができることが理解される。例えば複合体形成に使用される物質又は作用物質は、塩基性、陽イオン性又は両イオン性の性質を有し得、又はこのような性質を有するように適合され得る。代替的に、特に、所望の物質又は作用物質が、例えば基Qとの結合を介して複合体を形成することができるように、基Qの適切な選択によって該ポリマー組成を変えることが可能である。
【0130】
本発明の一実施形態において、本発明の複合体中に又は抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質と結合して使用されるポリマーは、1.4未満、好ましくは1.2未満の多分散性を有するポリメタクリル酸(PMAA)又はその塩、例えばナトリウム塩である。該ポリマーの分子量は一般的に上記定義セクションに記載の通りである。ここにおける実施例に記載される又は実質的に記載されるようにポリマーを作製すること、例えば前駆体ポリマー、例えばN−スクシンイミド脱離基を有する前駆体ポリマーを水酸化ナトリウムを用いて加水分解することは有利であり得る。抗原若しくは免疫原又は病原生物若しくはガンに対する薬理学的活性を有する物質を有する複合体をポリマーの作製時(in situ)に形成することが有利であり得る。
【0131】
本発明は特に、病原生物に対する、例えばリーシュマニアに対する薬理学的活性を有する物質、例えばアンフォテラシンBを含む本発明の複合体を含む本発明に複合体、及びこのような複合体を含む薬学的製剤、例えば上記に記載の薬学的製剤、及び病原生物によって引き起こされる疾患又は障害の治療及び/又は上記の病原生物に対する免疫応答を誘発することにおけるこのような複合体の種々の使用に関する。複合体のポリマー成分はアクリル酸又はその塩、例えば上記のポリマー、例えば上記のポリメタクリル酸ポリマー又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーである。
【0132】
本発明は特に、アンフォテリシンB及び上記のポリメタクリル酸ポリマー又はその塩、特にここにおける実施例に記載されるように作製されたPMAAポリマー又はその塩を含む複合体を提供し、そのような複合体を含む薬学的製剤、例えば上記の薬学的製剤を提供する。本発明はまた、上記のようにリーシュマニア症を治療すること及び/又はリーシュマニア症を引き起こす病原生物に対する免疫応答を誘発すること(リーシュマニア症に対する治療的及び/又は予防ワクチン接種を達成することを含む)におけるこのような複合体の種々の使用を提供する。
【0133】
リーシュマニア症を治療及び/又はリーシュマニア症を引き起こす病原生物に対する免疫応答を誘発すること(リーシュマニア症に対する治療用及び/又は予防用ワクチン接種を達成することを含む)のための代替的方法において、本発明のポリマーと病原生物に対する、例えばリーシュマニア症に対する薬理学的活性を有する物質、例えばアンフォテリシンBは上記に一般的用語で説明されるように、別個の製剤で同時投与され得る。1つの製剤は他方の前に投与され得るが、一般的に2つの製剤を実質的に同時に投与することが好ましい。
【0134】
以下の非制限的実施例は本発明を例証する。
【実施例】
【0135】
実施例A1:化学合成:メタクリル酸ナトリウム塩ホモポリマーの調製:
ポリ(メタクリル酸、ナトリウム塩)(PMAA−Na)2は、水酸化ナトリウムを用いてポリ(N−メタクリルオキシスクシンイミド(PMOSu)1の加水分解によって調製された(スキーム1)。
【0136】
PMOSu1は、原子移動ラジカル重合(ATRP)手法を用いてメタクリルオキシスクシンイミド3(スキーム2)の重合によって以前に合成された(Brocchini S. J., and Godwin A., “Uniform molecular weight precursors”, 国際公開番号WO01/18080A1&EP99307152.1(2001年3月15日))。
【0137】
【数1】
【0138】
実施例A2:PMOSu1の合成
【0139】
【数2】
【0140】
メタクリルオキシスクシンイミド3の合成。ジクロロメタン(12ml)中のN−ヒドロキシスクシンイミド(6.6g、57mmol)に、温度を5℃よりも低く維持しながら、トリエチルアミン(5.8g、57mmol)のジクロロメタン溶液(12ml)と同時に塩化メタクリロイルのジクロロメタン(12ml)溶液を滴下した。添加の完了後、反応混合液は更に1時間撹拌され、次いで水性炭酸水素ナトリウム(0.1M)及び水(3回)で洗浄された。有機相は次いで分離され、硫酸マグネシウムで乾燥された。溶媒はプロダクトを白色固体(これはエチルアセテート:ヘキサンから再結晶された)として残すために除去された。質量8g、m.p.=102℃(1H,500MHz,DMSO−d6):2.00(3H,s,CH3)、2.84(4H,s(CH2)2)、6.09(1H,s,=CH2),6.34(1H,s,=CH2)。
【0141】
均質重合:この反応はスキーム2に示される。モノマー3で56%の好ましい重量濃度でDMSOを溶媒として用いる典型的銅媒介重合において、銅(I)ブロマイド(31.3mg、0.2mmol)、2−2’−ビピリジン(Bpy)(68.3mg、0.4mmol)及びモノマー3(2.00g、10.9mmol)が、丸底フラスコに添加され、これは次いでセプタムでシールされた。次いでフラスコ中にDMSO(1.3g)が注入された。結果生じるブラウン混合物は、溶液が形成されるまで緩やかに加熱され、次いで約5分間アルゴンでパージされた。DMSO(0.2g)中の2−ブロモ−2−メチル−(2−ヒドロキシエチル)プロパネエート4(46.1mg、0.2mmol)のアルゴンでパージされた溶液は、次いで混合物中に注入され、フラスコはオイルバス中で100℃に加熱された。数分後、反応混合物は粘性になり、10〜15分後熱から離され、急速に冷却された。ポリマープロダクトは、粗製プロダクト混合物を溶解するために7〜8mlのDMSOの添加によって分離され、これはPMOSu1を白色固体として沈殿させるために撹拌されたアセトン溶液(100ml)にゆっくりと添加された。アセトン溶液は、銅種及びリガンドの溶解に起因して、ポリマー1の沈殿時に緑色になった。原子吸収分析は、ポリマー1中の銅含量をDMF中の28.0mg/mlの濃度における場合に0.153ppmであると示した。DMSO反応溶液からアセトン中へのポリマー1の沈殿は、ポリマープロダクトから銅を除くための銅媒介重合において典型的に使用されてきたアルミナクロマトグラフィーへの実行可能な代替を提供し得る。ポリマー1の分離された収量は、1.78g(89%)であった。数平均分子量は22,700g/モルであり多分散性指数は1.20であった。PMOSu1についての見かけの分子量及び分子量分布はGibson133屈折率検出器に連結したWaters StyragelHR4及びHR3(7.3×300mm)カラム、ポリ(メチルメタクリレート)PMMA校正標準及び0.1%LiCl溶出剤を有するDMFを使用して測定された。
【0142】
重合は、異なる分子量を有する狭いMWD PMOSu1を与えるために、異なる割合のモノマー3及びイニシエーター4を用いて実施された。これらの実験は表1に列挙され、メタクリルオキシスクシンイミド3において2〜6gの範囲の反応スケールで実施された。これらのDMSO中の均質重合条件はおよそ数分でポリマー1を与えた(例えば、表1の実験6は、狭いMWDポリマー1の相当の収量を与えるために2分後に冷やされた)。
【0143】
メタクリルオキシスクシンイミド3における溶液の均質性を33〜91%の範囲の溶媒重量率に維持するために、80〜130℃の範囲の温度で重合が実施された。好ましい溶媒はDMSOであったが、DMFを用いて同様の結果が得られた。極性溶媒(DMSO又はDMF)に対するモノマー3の重量割合は重合の結果に非常に重要であった。DMSO中で56%未満の重量割合のモノマー3(例えば50及び41%)は、ポリマーのより低い収率を結果生じた(各々、52及び40%)。DMSO中の60%よりも高いモノマー3重量濃度において、重合溶液は固化した。DMF中でも同様に、モノマーの重量濃度は重合反応の結果に非常に重要であったが、DMFにおける最大収量は、DMSOにおけるよりも低かった。ポリマー1の50%収率はモノマー3:DMFの重量割合61%において分離された。反応が33%のモノマー3の重量割合で実施された場合、ポリマーは分離されなかった。より高いモノマー重量濃度において(75%よりも高い)反応混合物は固化した。
【0144】
【表1】
【0145】
(a)初期モノマーと初期イニシエーター濃度の比
(b)DMSOを用いた希釈及び急速な冷却によって2.5分後に反応を停止した。
(B)沈殿重合:THF、酢酸エチル、トルエン及びアセトンなどの溶媒中のモノマー3の銅媒介重合はまた、狭いMWDポリマー1を与えた。ポリマーの分子量に依存して収率は10〜95%の範囲であった。より高い分子量のポリマー1(25,000g/モルまで)がTHFと炭酸エチレンなどの混合溶媒系中に得られた。10,000g/モルよりも高い分子量において収率は時々、重合がDMSO又はDMF中で実施された場合に見られたものよりも低かった。例証的な0.5gモノマー1を使用する銅媒介重合は、70℃で16時間以上THF中で実施され、表2に列挙される。これらのTHF反応で使用される銅キレートレジェンドは、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)であった。さらなる沈降反応がイニシエーターとして使用される2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸(BMA)と共に表3中に列挙される。
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
aプロダクトは直接的に濾過され洗浄された。
b新たに蒸留されたTHF
【0149】
実施例A3:PMAA−Na2を与えるためのPMOSu1の加水分解(スキーム1)
PMOSu1(1.00g、Mn=24,800g/モル、Mw/Mn=1.20、DMF溶出剤、PMMA標準)はDMF(5.0ml)中に溶解され、次いで2Mの水性水酸化ナトリウム(6.0ml)が撹拌下で滴下され、ポリマーの幾らかの沈殿を生じた。反応容器は直ぐに温かくなり、均質な溶液が直ぐに続いた。溶液は次いで24時間70℃に加熱され、その後更なる水が添加された(約50ml)。希釈された溶液は次いで再生セルロース膜(MWCO2000、SpectraPor)を用いて水に対して透析された。透析された溶液の凍結乾燥は、白色固体プロダクトPMAA−Na2(0.3g)を生じた。GPC(PBS溶出剤、PMAA−Na標準)Mn=22,000g/モル及びMw/Mn=1.28;FT−IR(ATR)1675cm−1、1547cm−1、1194cm−1。
【0150】
PMAA−Na2についての分子量値は、1由来の任意のポリマーについての繰り返しユニットの数を知るための重合度(DP)を測定するために使用され得る。この実施例においてPMAA Na2の繰り返しユニットの分子量は108であり、このサンプルについてのDPは約203であった(即ち、22,000g/モル÷108g/モル)。これは、PMOSu1についてのDPが203であることを意味し、PMOSu1の繰り返しユニットの分子量が183g/モルであるため、従って、この実施例におけるPMOSu1の平均分子量の絶対数は、37,149g/モル(即ち、183g/モル□203)であった。狭いMWD PMOSu1のDPについての203の値は同様の様式で1由来のポリマーの絶対分子量を測定するために使用され得る。
【0151】
実施例A4:PMOSu1の加水分解
PMOSu1(200mg、Mn=32,200g/モル、Mw/Mn=1.24、DMF溶出剤、PMMA標準)はDMSO(2ml)中に撹拌下で溶解された。1M水性水酸化ナトリウム(2.2ml)を滴下した。典型的に、幾らかの沈殿が生じた。更なる水(23ml)が水酸化ナトリウムの添加に続いて直ぐに添加され、混合溶液は室温で1時間撹拌された。結果生じる反応溶液は次いで44mlに希釈され、Visking透析膜(MWCO7000、Medicell International)を使用して1Lの水に対して24時間透析された。透析の間、水は6回代えられた。透析された溶液は0.2μmフィルターを通して濾過され、次いで0.2gのPMAA−Naプロダクト2を得るために凍結乾燥された。GPC(トリプル検出、NaNO3 0.2M/10% CH3CN)Mn=35,700g/モル及びMw/Mn=1.18)。
【0152】
調製されたPMAA−Na2の各沈殿は、1H核磁気共鳴及びフーリエ変換赤外分光法を用いて特徴付けられ、所望のプロダクトと一致することが見出された。
【0153】
実施例A5:PMAA−Na2を与えるための加水分解が続くAIBNを用いたフリーラジカル重合によるPMOSu1の合成
アセトン(30.0ml)中のメタクリルオキシスクシンイミド3(3g)及びAIBN(0.135g)のアルゴンでパージされた溶液は、閉じた容器の中で24時間50℃に加熱された。形成された白い沈殿物は、濾過によって単離され、DMSO(6.0ml)中に溶解され、急速に撹拌しているアセトン中で再沈殿された。濾過による単離の後、真空で乾燥し、DMSO(4.8ml)中の乾燥したPMOSu1の幾らかは、1N水酸化ナトリウム(5.2ml)及び水(56ml)と混合された。結果生じる溶液は、室温で1時間撹拌され、その後それは新たな水を用いて105mlに希釈され、Visking透析膜(MWCO 7000、Medicell International)を用いて5Lの水に対して24時間透析された。5Lの水は、6回代えられた。透析された溶液は、0.2μmのフィルターを通して濾過され、次いで凍結乾燥され、固体プロダクトとしてPMAA−Na2(0.56g)を与えた;Mw 26、100 Da、Mn 15,200g/モル、Mw/Mn 1.7(SEC 0.2M水性NaNO3/10%CH3CN、PMAA−Na標準物)。
【0154】
実施例A6:PMAA−Na2を与えるための、加水分解が続く4,4’−アゾビス(シアノ吉草酸)を用いたフリーラジカル重合による、PMOSu1の合成
圧力管はメタクリルオキシスクシンイミド3(0.5−1.0g)、4,4’−アゾビス(シアノ吉草酸)(15−30重量%)及び溶媒(例えば、アセトン、新たに蒸留されたTHF又はトルエンと炭酸エチレンを含むこれら溶媒の混合物)でチャージされ及び結果生じる溶液はシールされアルゴンを用いて15分間パージされた。シールされたフラスコは次いで70〜120℃で0.25〜2.5時間加熱された。実施例の反応条件については表4を参照。PMOSu1は、濾過によって白色沈殿物として単離され、真空で乾燥され、PMMA標準物を使用してDMF中でGPCが測定された。
【0155】
【表4】
【0156】
実施例B:合成ブロックコポリマーPEG−PMOSu6及びブロックコポリマーPEG−PMAA−Na7を与えるためのその加水分解
重合及び加水分解反応はスキーム3に示され、例は以前に記載される(Brocchini S. J and Godwin A. “Block Copolymers.” 国際特許公開番号WO/059973及びPedone et al, information rich biomedical polymer library, J. Mat. Chem., 2003, 13, 2825-2837)。
【0157】
【数3】
【0158】
スキーム3.ブロックコポリマーPEG−PMOSu6及びPEG−PMAA−Na7の合成
【0159】
(A)マクロイニシエーター5の調製
PEGマクロイニシエーター5は、Jankova等(Macromolecules (1998), 31, 538-541)の手順によって調製された。15mlの無水CH2Cl2中のトリエチルアミン(12.5×10−3モル、1.265g、1.75ml)は、冷却器、滴下漏斗、ガスインレット及び磁気スターラーを備えた250mlの三つ口丸底フラスコに添加された。0℃に冷却した後、10mlのCH2Cl2中の2,2−ブロモイソブチリルブロマイド(12.5×10−3モル、2,847g、1.55ml)が添加され、混合液は窒素でパージされた。次いで50mlのCH2Cl2中のモノメトキシキャップされたPEG(Mn=2,000g/モル)(5×10−3モル、10g)が窒素下で1時間滴下された。PEGは以前にトルエン中で共沸蒸留によって乾燥され、残留トルエンは真空中で除去された。反応混合物の温度は室温まで上げられ、反応は18時間継続した。溶液は濾過され、溶媒の半分が真空下で蒸発し、プロダクトが冷たいエーテル中で析出した。析出物は無水エタノール中で再結晶化された(冷蔵庫で一晩保存された)。マクロイニシエーター5は濾過され、冷エーテルで洗浄され、真空下で乾燥された。粗製プロダクトは80mlの水中に4g溶解させることによって精製された。過剰なi−BuBrを加水分解するために、溶液のpHはpH8に上げられた。次いで溶液はCH2Cl2(70ml)で抽出された。安定なエマルジョンが得られ、完全な相分離のために数時間が必要であった。溶媒は真空中で除去された。プロダクトは熱EtOH中で溶解され、結晶化するために冷蔵庫中に置かれた。次いでそれは濾過されエーテルで洗浄され、真空下で乾燥された。精製されたプロダクト5は白色であった。置換度は、H MNRスペクトルで計算された。この手順はPEG5000及びPEG10000由来のPEGマクロイニシエーター5を調製するためにも使用された。
【0160】
(B)ブロックPEG−PMOSu6の代表的な調製
モノマー3(WO01/18080中で合成される)の混合物、炭酸エチレン及びビピリジンはセプタムでシールされたチューブ中に配置され、それは5分間アルゴンでパージされCuBrが添加された。混合物は溶液(濃い茶色)を形成するために緩やかに加熱され更に30分間アルゴンでパージされた。次いで炭酸エチレン中の表5において特定されるモノマーと相対的な量のPEGマクロイニシエーター5溶液(エチレンカーボン及び5の両方を液化されるために緩やかに加熱される)は、10分間アルゴンでパージされ、アルゴンで洗浄されたシリンジでモノマー溶液に添加された。混合溶液はオイルバス中に配置され、撹拌された。反応は空気への曝露、冷却及びDMFでの希釈によって停止された。次いで溶液はアルミナ及びメタノール中で沈殿したポリマーで充填されたカラムを通過させた。PEG−PMOSu6沈殿物は濾過され、エーテルで洗浄され、真空下で乾燥された。PEG−PMOSu6は白色粉末として得られた。表5は、分子量2000g/モルのPEG由来のミクロイニシエーター5を用いて実施された重合の重合条件、収率及び分子量特性を示す。
【0161】
【表5】
【0162】
1EC=炭酸エチレン
2ゲル浸透クロマトグラフィーはPMMA標準物を有するDMF溶出剤を使用した。
3反応混合物は1時間アルゴンでパージされた。
【0163】
(C)分子量2000g/モルのポリ(エチレングリコール)由来のPEG−PMMA−Na7の合成の詳細な例
銅(I)ブロマイド(31.2mg、0.2mmol)、bpy(68.4mg、0.4mmol)及びN−メタクリルオキシスクシンイミド3(3.67g、20mmol)及び炭酸エチレン(2g)は丸底フラスコに添加され、それは次いでセプタムでシールされた。結果生じる茶色混合物は、溶液が形成されるまで緩やかに加熱され、次いで約15分間アルゴンでパージされた。炭酸エチレン(0.6g)中のPEG2000−マクロイニシエーター5(430mg、0.2mmol)のアルゴンでパージされた溶液は、次いで混合物中に注入され、フラスコはオイルバス中で1時間80℃に加熱された。粘性のある反応混合物は次いで熱から離され、急速に冷却された。結果生じる粗製のポリマープロダクトはDMF(8ml)中に溶解され、結果生じる溶液は、撹拌されたメタノール(500ml)にゆっくりと添加され白色固体としてPEG−PMOSu6(Mn=37,160g・モル−1 Mw/Mn=1.32 SEC(DMF 0.1% LiCl))を析出した。1H NMR(DMSO−d6)δ1.38(br、3H、CH3)、2.42(br m、2H、CH2C)、2.78(br、4H、CH2CH2)、3.50(s、4H、OCH2CH2O)。
【0164】
ブロックPEG−PMOSu6の加水分解が実施された。PEG−PMAA−Na塩へのこの加水分解は2M NaOH(0.6ml)を10mlの丸底フラスコ中のDMF(0.5ml)中のブロックコポリマー前駆体(0.1g、0.54mmol)の撹拌された溶液へゆっくりと滴下することによって実施された。反応混合物は16時間60℃に加熱され、更なる水(5.0ml)が添加された。希釈溶液は次いでViskingチュービング(MWCO12,000〜14,000)を用いて透析され、透析物は凍結乾燥され、白色固体プロダクト(PEG2000−PMAA−Na塩7(95%収率)Mn=34,110g・モル−1、Mw/Mn=1.34(トリプル検出−SEC;NaNO3 0.2M/10%CH3CN)を与えた。1H−NMR(D2O)δ0.85〜0.96(br s、3H、CH3)1.60、1.88(br、m、2H、CH2)及び3.58(s、4H、OCH2CH2O)PEG2000−ブロックに結合したヒンダードエステルが加水分解されなかったことを確証する。
【0165】
(D)分子量5000g/モルのポリ(エチレングリコール)由来のPEG−PMMA−Na7の合成の詳細な例
銅(I)ブロマイド(10.4mg、0.072mmol)、2,2’−ビピリジン(bpy、22.6mg、0.145mmol)及びN−メタクリルオキシスクシンイミド(2.0g、10.8mmol)及びPEG5000−マクロイニシエーター5(362mg、0.072mmol)及び炭酸エチレン(2.362g)はシュレンクフラスコに添加され、それは次いで隔膜でシールされた。結果生じる茶色混合物は凍結融解法によってガス抜きされた。混合物はオイルバス中で2時間110℃に加熱された。粘性にある反応混合物は次いで熱処理から除かれ、急速に冷却された。結果生じる粗製ポリマープロダクトは次いでDMF(8ml)中に溶解された。結果生じる溶液は、撹拌されたメタノール/ジエチルエーテル(2:1v/v、300ml)にゆっくりと添加され、白色固体(1.8g、76%)としてPEG−PMOSu6を沈殿した(1.8g、76%)Mn=32,860g・モル−1 Mw/Mn=1.36(SEC(DMF0.1%LiCl)。1H NMR(DMSO−d6)δ1.38(br、3H、CH3)、2.24(br m、2H、CH2C)、2.78(br、4H、CH2CH2)、3.50(s、4H、OCH2CH2O)。
【0166】
PEG−PMOSu6の加水分解は10mlの丸底フラスコ中のDMF(0.5ml)中のブロックポリマー前駆体6(0.1g、0.54mmol)の撹拌された溶液に2M NaOH(0.6ml)を1滴ずつゆっくりと添加することによって行われた。反応混合物は、60℃に16時間加熱され、更なる水(5.0ml)が添加された。希釈溶液は次いでビスキングチュービング(MWCO 12,000−14,000)を用いて透析され、透析物は白色固体プロダクトPEG5000−PMAA−Na塩としてPEG−PMAA−Na塩7を与えるために凍結乾燥された(75%収率);Mn=29,360g・モル−1 Mw/Mn=1.28(トリプル検出−SEC;NaNO3 0.2M/10%CH3CN)。1H−NMR(D2O)δ0.87〜0.97(br s、3H、CH3)1.63、1.89(br、m、2H、CH2)及び3.58(s、4H、OCH2CH2O)はPEG5000−ブロックに結合したヒンダードエステルが加水分解されなかったことを確証する。
【0167】
実施例C)アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の調製:
実施例C1:ポリマー、PMOSu(40mg)はDMSO(0.4ml)中に溶解され、該溶液はアンフォテリシンB(“薬剤”)(50mg)を含むバイアルに添加された。撹拌下、1M水性水酸化ナトリウム(0.44ml)が結果生じる薬剤混合物に滴下された。典型的に幾らかの沈殿が見られた。更なる水(4.7ml)は水酸化ナトリウムの添加に直ぐ続いて添加され、結果生じる混合物は室温で1時間撹拌された。反応溶液は次いで8.8mlに希釈され、ビスキング透析膜(MWCO7000、Medicell International)を用いて24時間水(1L)に対して透析された。透析中、水は6回代えられた。透析された溶液は0.2μmフィルターで濾過され、次いで0.9gの黄色固体プロダクトを得るために凍結乾燥された。FT−IR(ATR)1676cm−1、1568cm−1、1404cm−1、1070cm−1、1021cm−1。
【0168】
調製物中の薬剤及びポリマーの存在は、1H NMR及びFT−IR分光法によって確認された。調製物中のアンフォテリシンBの重量パーセント(wt%)は、Bristol−Myers Squibb Pharmaceuticals Ltd.から得たアンフォテリシンBを用いて作製された校正曲線に対する419.5nmにおけるUV分光法を用いて推定された。実施例C1におけるwt%は44〜48%であると推定された。
【0169】
それらの生物学的評価の前に、メタクリル酸ナトリウム塩ホモ−ポリマー及びコポリマーの水溶液は活性炭又はポリミキシンBカラムを用いてエンドトキシンを除去するために処理された。エンドトキシンレベルはリムルス試験(limulus amebocyte lysate (LAL) assay)を用いて測定され、記載される実験に使用された化合物は、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含んだ。これは注射用水についての欧州共同体基準である。
【0170】
D)初代細胞に対するメタクリル酸ナトリウム塩ホモポリマー及びコポリマーの細胞障害性
全ての実験は初代ヒト細胞で実施された。
【0171】
実施例D1:ヒト赤血球:
ヒト赤血球の2%v/v溶液はRPMI 1640中で調製された。PMAA−Na(“薬剤”)のストック溶液はRPMI 1640中で調製された。TritonX−100の1%溶液は100%細胞溶解のためのポジティブリファレンスとして使用された。デキストラン及びポリ−L−リシンは各々ネガティブ及びポジティブコントロールとして使用された。サンプル及び赤血球の等量は96ウェルマイクロタイター(microtitre)プレート中にアリコートされ、37℃でインキュベートされた。1時間及び24時間の後、各サンプルは遠心分離され(2,000g、10分)上清は96ウェルマイクロタイタープレートに添加された。吸光度は分光計を用いて490nmで測定された。溶解(lysis)の程度はTritonX−100によって引き起こされた100%溶解のパーセントとして表された。図1に示されるように、1時間又は24時間後、2,000μg/mlまでの濃度で、3人のドナー(A,B,C)からのヒト赤血球を用いて、PMAA−Naに顕著な毒性は見られなかった。
【0172】
実施例D2:ヒト全血:
ヒト全血の2%v/v溶液はRPMI 1640中にドナーDから調製された。PMAA−Na(“薬剤”)のストック溶液は、RPMI 1640中に調製された。Triton X−100の1%溶液は、100%細胞溶解のためのポジティブリファレンスとして使用された。デキストラン及びポリ−L−リシンは、各々ネガティブ及びポジティブコントロールとして使用された。等量のサンプル及び全血は96ウェルマイクロタイタープレート中にアリコートされ、37℃でインキュベートされた。1時間、6時間及び24時間後、各サンプルは遠心分離され(500g、10分)そして上清が96ウェルマイクロタイタープレートに添加された。吸光度は分光計を用いて490nmで測定された。溶解の程度は、Triton X−100によって引き起こされる100%溶解のパーセントとして表された。図2に示されるように、1時間後又は6時間後又は24時間後に、500μg/mlの濃度までのヒト全血を用いて、PMAA−Naに顕著な毒性は見られなかった。
【0173】
実施例D3
a)単球由来マクロファージ
単球は一人のドナーからの新鮮な血液から分離され、RPIM 1640、20mM L−グルタミン、ペニシリン(200IU/ml)、ストレプトマイシン(200μg/ml)及び10%ヒト血清中で培養され、1×106細胞/mlの密度でプレートされた。単球はさらに3日の粘着性によって単球由来マクロファージ(MDMs)に分化させた。PMAA−Na含有培地が次いで0〜2,000μg/mlの濃度範囲で細胞に添加された。細胞はチアゾリルブルー(MTT、Sigma、5mg/ml)の添加の前に71時間インキュベートされた。細胞培養物の生存率は任意の化合物の存在無しで増殖した細胞の生存率のパーセントで表された。デキストラン及びポリ(L−リシン)は各々ネガティブ及びポジティブコントロールとして使用された。PMAA−Naは、図3aに示されるようにMTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて試験された最高濃度2,000μg/mlにおいてMDMsに対して毒性でなかった。
【0174】
b)腹腔組織マクロファージ
ヒト腹膜細胞はRPMI 1640培地、20mM L−グルタミン、10%混合ドナーのヒト血清、200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシン中で培養され、それらの密度は1×106細胞/mlに調節された。PMAA−Na含有培地は次いで0〜2,000μg/mlの濃度範囲で細胞に添加された。細胞はMTTの添加前に71時間インキュベートされた。細胞の生存率は、任意の化合物の存在無しで増殖した細胞の生存率のパーセントとして表された。デキストラン及びポリ(L−リシン)は各々ネガティブ及びポジティブコントロールとして使用された。PMAA−Naは、500μg/mlまで腹腔マクロファージに対して毒性でなかった。500μg/m〜2,000μg/mlの間で、図3bに示されるように、中程度の量の毒性がMTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて見られた。
【0175】
E)抗凝血活性:
実施例E1:抗凝血活性は、プロトロンビン時間(PT)、カオリン部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン時間(TT)、フィブリノゲン及び抗Xa活性の測定として測定された。化合物はホスフェート緩衝生理食塩水溶液に溶解され、血漿/ベロナールバッファー(1:1)と50:50で混合され、試験された。抗Xa活性はヘパリン
/ml(HEP(Xa)(V/ml)のユニットとして表された。PMAA−Naは、APTT及びTTを延長したがPTに影響しなかった。抗Xaアッセイはネガティブであった。従って、これら分子の抗凝血活性は、“ヘパリン様”活性ではなかった(表6を参照)。
【0176】
【表6】
【0177】
連続携行式腹膜透析(CAPD)の患者からの腹膜細胞は各化合物及び36時間のインキュベーション後に収穫された培養上清と培養された。炎症性ケモカイン及び炎症性サイトカインはEIA(R&D Systems)によって測定された。
【0178】
実施例F1:
3人のドナー(A、B及びC)からのヒト腹膜細胞は、PMAA−Na(500μg/ml)と培養され、36時間後に収穫された培養上清はMIP−1βについて分析された。全ての試薬及びPMAA−Naは、リムルス試験(Pyrotell, Associates of Cape Cod, US)を用いて測定されるように、<0.06エンドトキシンユニット/ml(EU/ml)を含んだ。
これは注射用水についての欧州共同体基準値である。図4に示されるように、PMAA−Naの存在下でMIP−1βの有意な放出があった。
【0179】
実施例F2:
2人のドナー(A及びB)からのヒト腹膜細胞はPMAA−Na(500μg/ml及び2,000μg/ml)と培養され、36時間後に収穫された培養上清はTNF−αについて分析された。全ての試薬及びPMAA−Naは、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含んだ。図5に示される様に、両方の濃度においてPMAA−Naの存在下でTNF−αの有意な放出があった。
【0180】
実施例F3:
ヒト腹膜細胞はPMAA−Na(500μg/ml)と培養され、36時間後に収穫された培養上清は炎症性ケモカインMIP−1α、MIP−1β及びIL−8、並びに炎症性サイトカインTNF−α、IL−1β及びIL−6について分析された。全ての試薬及びPMAA−Naは、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含んだ。3人までの異なるヒトドナー(A、B及びC)からの細胞での結果が図6に示される。組織抗原提示細胞からのこれらのケモカイン及びサイトカインの放出は、ヒトにおける薬理学的Th1応答を促進するレベルであったが、ヒトにおいて顕著な有害副作用を引き起こすのに十分高くはなかった。
【0181】
実施例F4:
血液由来単球由来マクロファージは、2,000μg/mlまでの濃度のPMAA−Naと培養された。全ての試薬及びPMAA−Naは、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含んだ。MIP−1βの放出は見られなかった。3人の異なるヒトドナー(A、B及びC)からの細胞での結果が図7に示される。従って、マクロファージ起源の細胞及び組織ボディーベースコンパートメントからの他の抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)と比較した血液単球起源の細胞上にPMAA−Naの特異な免疫調節効果が存在する。
【0182】
G)商業的に入手可能なPMAA−NaのTh1アジュバント活性の欠如
実施例G1:
ヒト腹腔マクロファージは、MWt’s範囲(Mn=1,300、22,100及び129,000g/モル)且つ狭い分子量分布の商業的に入手可能なPMAA−Na(Polymer Standards Service, Germany)と培養された。全ての試薬及びPMAA−Naは<0.06エンドトキシンユニット/mlを含んだ。商業的に入手可能なPMAA−Naの1つは、我々のPMAA−Na(Mn=22,000g/モル)の合成調製物と同等のMWtを有した。培養上清は36時間後に収穫された。MIP−1βの放出は無かった。図8は、2人のヒトドナー(A及びB)からの個別結果を示す。
【0183】
実施例G2:
ヒト腹腔マクロファージは、MWt’sの範囲(Mn=1,300、22,100及び129、000g/モル)且つ狭い分子量分布の商業的に入手可能なPMAA−Na(Polymer Standards Service, Germany)と培養された。商業的に入手可能なPMAA−Naの1つは我々のPMAA−Na(Mn=22,000g/モル)の合成調製物と同等のMWtを有した。全ての試薬及びPMAA−Naは<0.06エンドトキシンユニット/mlを有した。培養上清は36時間後に収穫された。TNF−αの放出は無かった。図9は、2人のヒトドナー(A及びB)からの個別結果を示す。
【0184】
H)初代ヒト細胞に対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の細胞障害性
実施例H1:赤血球
方法は実施例D1について記載される通りであった。臨床グレードのアンフォテリシンB及びアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(どちらも図において“薬剤”と呼ばれる)間で比較が行われた。試験のための化合物のストック溶液はMGM中に調製された。ヒト赤血球溶血は、3人の異なるドナー(A、B及びC)において、1時間(図10)、6時間(図11)及び24時間(図12)のインキュベーション後に測定された。1時間のインキュベーションの後、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物について毒性は見られなかった。6時間のインキュベーションの後、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性は、臨床グレードのアンフォテリシンBのものよりも顕著に低かった。インキュベーション時間が24時間に増加された場合、臨床グレードのアンフォテリシンBの毒性は100%に上昇したが、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性には更なる上昇は存在しなかった。
【0185】
実施例H2:赤血球
方法は実施例H1について記載される通りであった。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(“薬剤”)による赤血球溶血度は、1時間及び24時間のインキュベーション後に、1,000μg/mlまでの濃度について測定された。結果は図13に示される。
【0186】
実施例H3:末梢血単核細胞:
末梢血単核細胞(PBMCs)はRPMI培地、10%混合ドナーヒト血清、200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシン(1×105細胞における)中に懸濁され、37℃で5%CO2を有する96ウェルの組織培養プレート中で培養された。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(“薬剤”)を含有する培地は、100μl/ウェルの終量において0〜70μg/mlの濃度範囲で細胞に添加された。細胞はMTT(5mg/ml)の添加の前に、1日又は2日又は6日間インキュベートされた。MTT溶液は1時間後に除去され、MTT結晶を溶解するためにDMSO(100μl)が添加された。光学密度はプレートリーダー(Molecular Devices, Wokingham, UK)を用いて550nmで測定された。細胞培養物の生存率は、任意の化合物の存在なしで増殖した細胞の生存率のパーセントとして表された。デキストラン及びポリ(L−リシン)は、各々ネガティブ及びポジティブコントロールとして使用された。化合物は、1日の培養の後、2日の培養の後、6日の培養の後、MTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて試験された最高濃度70μg/mlにおいて末梢血単核細胞に対して毒性が無かった。図14は、3人までの代表的ヒトドナーからの個別結果を示す。各ドナーからの結果は図14における線グラフとして示される。
【0187】
実施例H4:単球由来マクロファージ:
単球由来マクロファージ(MDM)細胞は、密度勾配遠心法により1人のドナーからの新鮮な血液から分離され、RPMI 1640、20mM L−グルタミン、ペニシリン(250IU/ml)、ストレプトマイシン(250μg/ml)及び10%ヒト血清を含むマクロファージ増殖培地(MGM)において培養された。それらは1×106細胞/mlの密度でプレートされ、3日間MDMに分化された。該化合物(“薬剤”)を含有する培地は次いで125μg/mlの濃度まで細胞に添加された。細胞はMTTの添加前2日又は3日の間インキュベートされた。細胞生存率は、任意の化合物の存在無しで増殖した細胞の生存率のパーセントとして表された。デキストラン及びポリ(L−リシン)は、各々ネガティブ及びポジティブコントロールとして使用された。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物は、図15に示されるように、培養の2日及び3日後のMTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて試験された125μg/mlまでの濃度の全てにおいて臨床グレードのアンフォテリシンBよりも低毒性であった。
【0188】
J)アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の前鞭毛期リーシュマニアに対する抗リーシュマニア活性の測定
実施例J1:
前鞭毛期メキシコリーシュマニアがこれら実験に使用された。それらは、15%ウシ胎児血清(56℃で1時間熱不活性化された)及びゲンタマイシン(1mg/100ml)の添加されたSchneider’s Drosophila増殖培地(Invitorogen)中に維持された。寄生体濃度は2×106寄生体/mlに調節された。試験化合物の二倍希釈物は、増殖培地における所望の終濃度の2倍で調製された。等量の薬剤及び寄生体サスペンジョンは次いで96ウェルプレート中で混合され、26℃で24時間インキュベートされた。ここで、MTT(5mg/ml)が添加され、プレートはさらに24時間26℃でインキュベートされた。プレートは次いで遠心分離され(2000g、5分)、上清は廃棄され、ペレットは100μlDMSO中に再懸濁された。吸光度は分光計を用いて570nmで測定された。結果は、コントロールウェル中の前鞭毛期を複製する未処理のODを用いて測定される100%生存率の前鞭毛期のパーセント生存率として表された。
【0189】
前鞭毛期メキシコリーシュマニアについての臨床グレードアンフォテリシンBの50%致死量(LD50)は、0.14μg/mlであった(図16、差込み)。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについての臨床グレードアンフォテリシンBの90%致死量(LD90)は、1.49μg/mlであった(図16、差込み)。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いた3つの実験からの結果は図16に示される。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについてのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の50%致死量(LD50)は、0.10〜0.19μg/mlであった(図16)。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについてのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の90%致死量(LD90)は、1.02〜1.49μg/mlであった(図16)。前鞭毛期メキシコリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の活性は重量毎重量ベースで臨床グレードアンフォテリシンBのものと同様であった。
【0190】
実施例J2:
前鞭毛期ドノバンリーシュマニアがこれらの実験のために使用された。それらは、ウシ胎児血清(56℃で1時間熱不活性化された)及びゲンタマイシン(1mg/100ml)の添加されたSchneider’s Growth Media199中に維持された。寄生体濃度は2×106寄生体/mlに調節された。試験化合物の2倍希釈物は、増殖培地における所望最終濃度の二倍で調製された。等量の薬剤及び寄生体懸濁液が次いで96ウェルプレート中で混合され、26℃で24時間インキュベートされた。今回、MTT(5mg/ml)が添加され、プレートは26℃でさらに24時間インキュベートされた。該プレートは次いで遠心分離され(2000g、5分)、上清は廃棄され、ペレットは100μl DMSO中に再懸濁された。吸光度は分光計を用いて570nmで測定された。結果は、コントロールウェル中の前鞭毛期を複製する未処理のODを用いて測定される100%生存率を有する前鞭毛期のパーセント生存率として表された。
【0191】
前鞭毛期ドノバンリーシュマニアについての臨床グレードアンフォテリシンBの50%致死量(LD50)は0.08μg/mlであった(図17、差込み)。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアについての臨床グレードアンフォテリシンBの90%致死量(LD90)は1.91μg/mlであった(図17、差込み)。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いた3つの実験からの結果は図17に示される。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアについてのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の50%致死量(LD50)は、0.10〜0.17μg/mlであった(図17)。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアについてのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の90%致死量(LD90)は、0.98〜1.28μg/ml(図17)であった。従って、前鞭毛期ドノバンリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の活性は、重量毎重量ベースで臨床グレードアンフォテリシンBのものと同様であった。
【0192】
K)無鞭毛期リーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の抗リーシュマニア活性の測定
無鞭毛期メキシコリーシュマニアは、10%ヒト血清(56℃で1時間熱不活性化された)及び200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640(Invitrogen)中に維持されたヒト単球由来のマクロファージを感染するために使用された。細胞は106細胞/mlでLab−Tek Chamber Slides(Nunc)中にプレートされ、37℃/5%CO2において3日間インキュベートされた。培地は次いでチャンバスライドから吸引され、等量の新しい培地が添加して戻され、ここにおいて無鞭毛期の濃度は5:1の寄生体:細胞感染比率を与えるように調節されている。細胞は次いで、マクロファージの感染が確立されることを可能とするために、32℃で20時間インキュベートされた。培地は次いでチャンバスライドから吸引され、試験化合物の二倍希釈物と置換された。細胞は次いで32℃で72時間インキュベートされた。PBSでの洗浄の後、チャンバは分離され、スライドは乾燥させられ、次いでメタノール中に固定された。各スライドは次いでギエムザで染色され、顕微鏡で調べられた。全体で250細胞が感染した及び感染していない細胞の数の測定のためにカウントされた。
【0193】
感染指数は寄生体/細胞の平均数×感染した細胞のパーセントとして計算された。細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアの増殖の50%抑制は、0.14μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図19a)又は0.45μg/mlのAmbisome(図19b)と比較して、0.18〜0.32μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(図18)で達成された。細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアの増殖の90%抑制は、0.95μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB又は3.89μg/mlのAmbisomeと比較して、1.18〜1.55μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いて達成された。
【0194】
図19及び20のグラフは、臨床グレードアンフォテリシンB及びAmbisome(リポソームアンフォテリシンB,Gilead Sciences, Great Abingdon, Cambridge, UK)とアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアに対する相対活性の傾きを比較する。それらはアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物のキリングカーブ(killing curve)は、Ambisomeのキリングカーブよりも急であることを実証する。
【0195】
実施例K2:
無鞭毛期ドノバンリーシュマニアは、10%ヒト血清(56℃で1時間熱不活性された)、200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシンを添加したRPIM 1640(Invitrogen)中に維持されたヒト単球由来のマクロファージを感染するために使用された。細胞は106細胞/mlでLab−Tek Chamber Slides(Nunc)中にプレートされ、37℃/5%CO2で3日間インキュベートされた。培地は次いでチャンバスライドから吸引され、等量の新たな培地が添加して戻され、ここにおいて無鞭毛期の濃度は5:1の寄生体:細胞感染比率を与えるように調節されている。細胞は次いで、マクロファージの感染が確立されることを可能にするために、32℃で20時間インキュベートされた。培地は次いでチャンバスライドから吸引され、試験化合物の二倍希釈物と置換された。細胞は次いで32℃で72時間インキュベートされた。PBSで洗浄したのち、チャンバは分離され、スライドは乾燥させられ、次いでメタノール中で固定された。各スライドは、次いでギエムザで染色され、顕微鏡で調べられた。全体で250細胞が感染した及び感染していない細胞の数を測定するためにカウントされた。
【0196】
感染指数は寄生体/細胞の平均数×感染した細胞のパーセントとして計算された。細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの増殖の50%抑制は、0.54μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)又は1.96μg/mlのAmbisome(図22b)と比較して0.30〜0.71μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(図21)で達成された。細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの増殖の90%抑制は、2.31μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB又は>8μg/mlのAmbisomeと比較して、2.18〜3.18μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いて達成された。
L)アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物のインターフェロンγ放出、Th1アジュバント活性
【0197】
実施例L1:
マクロファージ及び樹状細胞を含むヒト腹膜細胞は、各化合物と共にマクロファージ増殖培地中で培養された。全ての試薬及び化合物は、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含有した。培養上清は24時間後に収穫された。インターフェロンγは、EIAによって測定された。腹腔マクロファージからのTh1促進サイトカイン、インターフェロンγの放出は、図23に示されるように、コントロールのみ、臨床グレードアンフォテリシンB、商業的PMAA−Na又はPMAA−Naの細胞と比較してアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(100μg/ml)の存在下で有意により高かった。エンドトキシンの無いアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いたインターフェロンγ放出のレベルは、ヒトにおいて薬理学的Th1応答を促進するために十分であるが、ヒトにおいて顕著な有害副作用を引き起こす程高くはない。
【0198】
実施例L2:
このセクションに記載される実験の目的は、抗原及びPMAA−Naの調製物もTh1ヘルパー応答を刺激するかどうかを確証するためである。
【0199】
ツベルクリン−PMAA−Naは以下のように作製された。実施例A1〜A4に記載されるように調製されたホモポリマー、PMAA−Na(30mg)、は、ツベルクリン精製タンパク質誘導体BP(10ml、100,000ユニット/ml、Evans Vaccines)に添加され、結果生じる溶液は室温で1.5時間撹拌された。溶液は次いでビスキング透析膜(MWCO 7000、Medicell International)を用いて1リットルの水に対して透析された(水を6回代えながら)。透析された溶液は、0.2μmフィルターで濾過され、オフホワイトの固体プロダクト(20mg)を得るために凍結乾燥された。TF−IR(ATR)1648cm−1、1545cm−1、1450cm−1、1398cm−1、1259cm−1。
【0200】
PBMCsは次いでFicoll−Paqueを用いて全血から分離され、10%ヒト血清、200μg/mlペニシリン及び200 IU/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640中に再懸濁された。リムルス試験(Pyrotell, Associates of Cape Cod, US)を用いて測定されたように、全ての試薬及び化合物は、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含有した。細胞(105細胞/ウェル)及び各化合物は一対(in duplicate)で混合され、37℃/5%CO2で4日間インキュベートされた。[3H]−チミジン(比活性20〜30Ci/mmol;Amersham Biosciences, UK)が1μCi/ウェルで更に18時間添加された。細胞は次いで収穫され、液体シンチレーションカウンターを用いて増殖が測定された。結果は平均カウント/分(cpm)±semとして表された。図24aは、それらが1μg/mlのツベルクリン−PMAA−Na調製物と培養された場合、Tリンパ球の有意に上昇した増殖が存在したことを示す。それらが10μg/mlのツベルクリン−PMAA−Na調製物(P=0.001)と培養された場合、Tリンパ球のより更なる増殖が存在した。
【0201】
図24bは、ドナーBについての結果を示す。10μg/mlのツベルクリン抗原(P=0.002)とよりも10μg/mlのツベルクリン−PMAA−Na調製物とでは有意な更なるTリンパ球増殖が存在した。これはツベルクリン−PMAA−Na調製物が、ツベルクリン抗原そのものよりも有意により多くのTリンパ球増殖を引き起こすことを示す。
【0202】
実施例L3:インターフェロンγ分泌細胞についてのELISpotアッセイ
ヒトPBMCsは単離され、10%ヒト血清、200μg/mlペニシリン及び200 IU/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640中に2×105細胞/ウェルに調節された。全ての試薬及び化合物は<0.06エンドトキシンユニット/mlを含有した。PBMCs及び化合物はヒトインターフェロンγモノクローナル抗体(R&D Systems UK)でコートされたELISpot PVDF−バックドマイクロプレート(backed microplate)のウェル中で混合された。刺激されていない細胞がネガティブコントロールとして使用され、組換えヒトインターフェロンγがポジティブコントロールとして使用された。プレートは24時間37℃/5%CO2でインキュベートされた。次いで、製造者の指示書に従いマイクロプレートを確立し、インターフェロンγについての陽性スポットの数を数えた。各スポットは1つのインターフェロンγ分泌細胞を示した。図25はツベルクリンPPD−PMAA−Na調製物が、初代ヒトTリンパ球からのインターフェロンγの放出を刺激することにおいてツベルクリン抗原のみよりも有意により効果的であったことを示す。Tリンパ球からのインターフェロンγ分泌のこの上昇は、50μg/mlのツベルクリンPPD−PMAA−Na調製物及び100μg/mlのツベルクリンPPD−PMAA−Na調製物で見られた。
【0203】
M)内臓リーシュマニア症のマウスモデルにおけるドノバンリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の抗リーシュマニア活性の測定
無鞭毛期ドノバンリーシュマニア種(MHOM/ET/67/L82)は、重篤に感染したドナーSyrian Hamster−Mesocritetus auratusの脾臓から集められた。7.5〜10×107の無鞭毛期/ml含有接種源が調製された。特定病原体フリーであるメスBALB/cマウス(20g)は、0日目に、200μL(1.5〜2×107無鞭毛期に等しい)を用いて静脈から感染された。感染の最終点は、14日目に一つのマウスにおける感染のレベルを調べるための顕微鏡読み、及び感染後21日目に総寄生体負荷量を測定するためのギエムザ染色された肝臓のインプレッションによって評価された。
【0204】
以下の化合物は以下の投薬計画に従って静脈投与された:
a)感染後、未処理のコントロール。
b)感染後、14、16及び18日目、0.5mg/kgのブランクリポソーム。
c)感染後、14、16及び18日目、8mg/kgのPMAA−Na。
d)感染後、14、16及び18日目、1mg/kgの臨床グレートアンフォテリシンB。
e)感染後、14、16及び18日目、0.5mg/kgのAmBisome。
f)感染後、14、16及び18日目、0.5mg/kgのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物。
g)感染後、14、16及び18日目、1mg/kgのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物。
h)感染後、14、16及び18日目、2mg/kgのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物。
【0205】
各グループに5動物存在した。PMAA−Naの静脈注入及びアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物のためのキャリア溶液は、5%デキストロースであった。すべての薬剤調製物は0.2μLシリンジフィルターを用いて濾過された。静脈注入量は注入毎200μLであった。
【0206】
マウスのグループは毒性の測定として処置の前後に計量され、パーセント重量変化が示された。感染後21日(これは処置完了後3日であった)に、寄生体負荷量は10%ギエムザで染色されたメタノール固定された肝臓インプレッションスライドから顕微鏡で測定された。無鞭毛期/500肝臓細胞の数は顕微鏡でカウントされ、結果は未処理コントロールのパーセントとして表された。
【0207】
図26は、ブランクリポソーム及びPMAA−Naが抗リーシュマニア活性を有さないことを示す。コントロールと比較して、無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの臨床グレードアンフォテリシンB、Ambisome、1mg/kgのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物、2mg/kgのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物による有意なキリング活性が存在した(P<0.0001)。臨床グレードアンフォテリシンB,Ambisome及びアンフォテリシンB−PMAA−Na(2mg/kg)の抗リーシュマニア活性は、互いに有意に相違しなかった(P<0.05)。従って、これらの結果はアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物が、内臓リーシュマニア症のこの動物モデルにおいてAmbisomeと同程度に有効であることを示す。
【0208】
実施例N:PMAA−Na合成
異なる分子量のPMAA−Naコンストラクトの生成−
PMAA−Na前駆体(PMOSu)の合成の間、19kD〜37kDの範囲の分子量を有する幾つかのポリマーを生成するために、重合条件は実施例Aに記載される様に変更された。分子量及び多分散性指数はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて確立された。
【0209】
異なる分子量のPMAA−Naコンストラクトの初代ヒト細胞(赤血球溶血及び末梢血単核細胞(PBMCs))についての毒性はMTTアッセイによって確立された。PMAA−Naコンストラクトは、1時間、5時間及び24時間のインキュベーション後、2mg/mlの濃度で赤血球溶血を引き起こさなかった(図27参照)。更に、それらは1日及び2日間のインキュベーションの後、2mg/mlで末梢血単核細胞に対して毒性でなかった(図28参照)。これらの結果は、作製されたPMAA−Naコンストラクトの分子量によって影響されなかった。
【0210】
実施例O:保存時のアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体の安定性:
凍結乾燥されたアンフォテリシンB−PMAA−Naは4ヶ月間アルゴン下4℃で保存された。それはまた、5%デキストロース中に1mg/mlの濃度で溶解され、アルゴン下で7ヶ月間4℃で保存された。この期間の終りに、アンフォテリシンB−PMAA−Na複合体の安定性が、それをヒト赤血球とインキュベートすることによって測定された。以前の実験はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体はアンフォテリシンBよりも遥かに毒性が低いことを示した。従ってこのアッセイは、数ヶ月間の複合体の保存の後に繰返された。
【0211】
実験は以前に記載されるように行われた。新たに調製された臨床グレードアンフォテリシンBが比較のためのリファレンスとして使用された。インキュベーションは1時間及び6時間行われた。図29は、アンフォテリシンB−PMAA−Na複合体は保存後に赤血球に対して毒性が無かったことを示す。従って、複合体は、それが凍結乾燥された粉末として4ヶ月間保存された場合、及びまたそれが5%デキストロース中に4℃で7ヶ月間保存された場合、安定である。
【0212】
保存後の複合体の抗リーシュマニア活性も上記実施例J1及びK1に記載されるように測定された。図30は、アンフォテリシンB−PMAA−Naのフリー前鞭毛期リーシュマニア及び細胞内無鞭毛期に対する抗リーシュマニア活性を示す。アンフォテリシンB−PMAA−Naの活性は、4℃で4ヶ月間の粉末での保存によって影響されなかった。アンフォテリシンB−PMAA−Naの活性は5%デキストロース中の4℃で7ヶ月間の保存によって影響されなかった。
【0213】
実施例P:クリプトコッカスネオフォルマンス
National Collection of Pathogenic FungiからのCryptococcus neoformans mucoidal strains var neoformans 3003及びvar gattii 3216が試験された。var neoformansの非ムコイド臨床分離株及びver gattiiの非ムコイド臨床分離株も試験された。該生物は、32℃で5%CO2で加湿されたチャンバ中のクロラムフェニコール(Oxoid,UK)を添加したサブロー(Sabouraud)デキストロース寒天プレート上に維持された。
【0214】
菌株は、滅菌水に懸濁される前に48時間サブローデキストロース寒天上で継代培養され、それらの濃度は4×104コロニー形成単位(CFU)/mlに調節された。サンプルの二倍希釈物は、×2酵母窒素ベース(YNB、Anachem)中の所望の終濃度の二倍で作製された。等量のサンプル及び酵母懸濁物は、次いで96ウェルの平底プレートに添加され、32℃でインキュベートされた。3日のインキュベーションの後、プレートは、酵母をウェルに亘って均一に分散させるために、全体的に振盪され、濁度が分光計を用いて測定された(490nm)。100%生存率は、コントロールウェルにおける未処理酵母の光学密度を用いて定義された。
【0215】
初代ヒトマクロファージの感染のために、クリプトコッカス株は、それらにカプセルを形成させるために、10%ヒト血清を添加したYNB中で48時間5%CO2の存在下で継代培養された。腹腔ヒトマクロファージ又は単球由来のマクロファージ(〜750,000)は、チャンバスライド(Lab−Tek,USA)上にプレートされ、24時間付着された。酵母細胞は、スピンダウンされ、洗浄され、そして10%ヒト血清及び2%グルコース(後者は酵母の増殖を促進する)を添加したRPMI中に再懸濁された。この懸濁物は、マクロファージの15倍濃度で添加され、感染が5%CO2で加湿されたチャンバ中で37℃で〜21時間進行された。培地は次いで吸引され、マクロファージはPBSで洗浄された。試験サンプルの二倍希釈物は次いで10%ヒト血清を添加したRPMI中に添加され、3日間5%CO2で加湿されたチャンバ中37℃でインキュベートされた。培地は吸引され、全ての細胞外cryptococciを除去するためにマクロファージはPBSで徹底的に洗浄された。チャンバは除去され、スライドはメタノール及び熱を用いた固定の前に乾燥させられ、次いでグラム染色された。感染した及び感染していないマクロファージの数及びグラム陽性酵母CFUの数がカウントされた。結果は感染指数として表され、これはCFU/感染した細胞のパーセントの平均数として計算された。
【0216】
図31(i)及び(ii)は、Cryptococcus neoformans var neoformansについての結果を示し、図31(iii)及び(iv)は、Cryptococcus neoformans var gattiについての結果を示す。アンフォテリシンB(0.9〜1.4μg/ml)及びアンフォテリシンB−PMAA−Na(1.6〜2.7μg/ml)についてのLD50は同様である。図32(i)及び(ii)は、Cryptococcus neoformans var neoformansについての結果を示し、図32(iii)及び(iv)は、これらの生物がヒト単球由来マクロファージを感染した場合のCryptococcus neoformans var gattiについての結果を示す。実施された8つの実験の全てにおいてアンフォテリシンB及びアンフォテリシンB−PMAA−NaについてのLD50は同様であった。Cryptococcus neoformans var neoformansの場合、アンフォテリシンBについてのLD50は0.9〜1.4μg/mlであり、アンフォテリシンB−PMAA−Naについてのそれは同様に1.6〜2.7μg/mlであった。Cryptococcus neoformas var gattiについて、アンフォテリシンBのLD50は0.06〜1.0μg/mlであり、アンフォテリシンB−PMAA−Naのそれは0.1〜0.5μg/mlで同様であった。従って、複合体はアンフォテリシンBのみと同程度にcryptococciに対して活性である。
【0217】
実施例Q:Candida sp.
Candida albicans (ATCC 90028)及びCandida glabrata(ATCC 90030)が使用された。それぞれの場合において、菌株は5%CO2で加湿されたチャンバ中のクロラムフェニコール(Oxoid, UK)を添加したサブローデキストロース寒天プレート上に32℃で維持された。それは、その濃度が2×105CFU/mlに調節される前に、48時間サブローデキストロース寒天上で継代培養された。サンプルの二倍希釈物は、×2酵母窒素ベース(YNB、Anachem)中の所望終濃度の二倍において作製された。等量のサンプル及び酵母懸濁物が96ウェル平底プレートに添加され、32℃でインキュベートされた。1日後、プレートは、酵母の増殖をウェルに亘って均一に分散させるために全体に振盪された。濁度が分光計を用いて測定された(490nm)。100%生存率は、コントロールウェルにおける未処理酵母の光学密度を用いて確立された。
【0218】
図33(i)は、Candida albicansについての結果を示し、図33(ii)は、Candida glabrataについての結果を示す。アンフォテリシンB(0.9〜1.8μg/ml)及びアンフォテリシンB−PMAA−Na(1.6〜2.3μg/ml)についてのLD50は同様である。従って、複合体はアンフォテリシンBのみと同程度のCandida sp.に対する活性がある。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】図1はRPMI中のPMAA−Naと細胞のインキュベーション後の赤血球の溶血を示す。ヒト赤血球の2%v/v溶液はPMAA−Na(“薬剤”)の溶液とRPMI1640培地中で37℃で1時間と24時間インキュベートされた。1時間後又は24時間後、2,000μg/mlの濃度までのPMAA−Naについて有意な毒性は見られなかった。図は3人のヒトドナー(A、B及びC)についての結果を示す。図1aは、ドナーAについて得た結果を示し、図1bはドナーCについて得た結果を示し、そして図1cはドナーBについての結果である。1時間のインキュベーションの後に得た結果は丸で示され、24時間のインキュベーション後の結果は菱形で示される。
【図2】図2は、RPMI中でのPMAA−Naとのインキュベーション後の全血中の赤血球溶血を示す。ヒト全血(ドナーD)の2%v/v溶液はRPMI1640中でPMAA−Na(“薬剤”)の溶液とインキュベートされた。1時間後(クロスで示される)、6時間後(三角で示される)又は24時間後(丸で示される)、500μg/mlの濃度までのヒト全血を用いたPMAA−Naについて有意な毒性は見られなかった。
【図3】図3は、ヒト単球由来マクロファージ(図3a)及び初代ヒト腹腔マクロファージ(図3b)に対してPMAA−Naの毒性が無いことを示す。図3aは、単球由来マクロファージが0〜2,000μg/mlの濃度範囲に亘るPMAA−Naを含有する培地でインキュベートされた場合に得られた結果を示す。細胞はチアゾリルブルー(MTT、Sigma 5mg/ml)に添加前に71時間インキュベートされた。PMAA−Naを用いて得られた結果は黒四角、コントロールとして使用されるポリ(L−リシン)での結果は丸で示される。PMAA−NaはMTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて試験された最高濃度2,000μg/mlにおいてMDMsに対して毒性でなかった。図3bは、ヒト腹膜細胞が0〜2,000μg/mlの濃度範囲に亘るPMAA−Naで培養された場合に得られた結果を示す。細胞はMTTの添加前に71時間インキュベートされた。PMAA−Naを用いて得られた結果は黒四角で示され、コントロールとして使用されるポリ(L−リシン)での結果は丸で示される。500μg/mlまででPMAA−Naは腹腔マクロファージに対して毒性でない。500μg/ml〜2,000μg/mlで、中程度の量の毒性が、MTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて見られた。
【図4】図4は、エンドトキシンフリーPMAA−Naによるヒト腹腔マクロファージからのMIP―1βの放出を示す。3ドナー(A、B及びC)からのヒト腹膜細胞はエンドトキシン−フリーPMAA−Na(500μg/ml)と共に培養され、36時間後に収穫された培養上清はMIP−1βについて分析された。全ての試薬及びPMAA−Naは、<0.06エンドトキシンユニット/ml(EU/ml)を含有した。図4aは、ドナーAについて得られた結果を示し、図4bは、ドナーBについてそして図4cはドナーCについてである。PMAA−Naの存在下でMIP−1βの有意な放出が存在した。
【図5】図5は、エンドトキシンフリーPMAA−Naによるヒト腹腔マクロファージからのTNF−αの放出を示す。2ドナー(A及びB、それぞれ図5a及び5b)からのヒト腹膜細胞はエンドトキシンフリーPMAA−Na(500μg/ml及び2,000μg/ml)と共に培養され、36時間後に収穫された培養上清はTNF−αについて分析された。両方の濃度においてPMAA−Naの存在下TNF−αの有意な放出が存在した。
【図6】図6は、培地コントロール又はPMAA−Naとインキュベートされた単一ドナーのヒト腹腔マクロファージからのケモカイン及びサイトカインの放出を示す。ヒト腹膜細胞はPMAA−Na(500μg/ml)と培養され、36時間後に収穫された培養上清は炎症性ケモカインMIP−1α、MIP−1β及びIL−8、並びに炎症性サイトカインTNF−α、IL−1β及びIL−6について分析された。3人の異なるヒトドナー(A、B及びC)からの細胞を用いた結果が示される。培地コントロールを用いて得た結果は白ブロックで、PMAA−Naを用いたものは黒ブロックで示される。MIP−1αの放出は図6aに、TNF−αは図6bに、MIP−1βは図6cにIL−8及び炎症性サイトカインTNF−α、IL−1βは図6dに、IL−8は図6eに、IL−6は図6fに示される。組織抗原提示細胞からのこれらのケモカイン及びサイトカインの放出は、ヒトにおける薬理学的Th1応答を促進するレベルであったが、ヒトにおける顕著な有害副作用を引き起こすほど高くなかった。
【図7】図7は、エンドトキシン−フリーPMAA−Naによるヒト単球由来マクロファージからのMIP−1βの放出を示す。単球由来マクロファージは100μg/ml、500μg/ml及び2,000μg/mlの濃度でPMAA−Naと培養された。3人の異なるヒトドナーA、B及びCからの細胞を用いた結果は、各々図7a、7b及び7cに示される。MIP−1βの放出は見られなかった。従って、組織ボディーベースコンパートメントからの起源のマクロファージの細胞と比較して血液単球起源の細胞に対してPMAA−Naの異なる免疫調節効果が存在する。
【図8】図8は、商業的に入手可能なPMAA−Naによるのではなく、PMAA−Naによるヒト腹腔マクロファージからのMIP−1βの放出を示す。ヒト腹腔マクロファージはMWt’sの範囲(Mn=1,300、22,100及び129,000g/モル)且つ狭い分子量分布の商業的に入手可能なPMAA−Na(Polymer Standards Service,Germany)及びここで説明されるように作製されたPMAA−Naと共に培養された。商業的に入手可能なPMAA−Naの1つは実施例A1〜A4に記載されるように調製されたPMAA−Naと同等のMWtを有した(Mn=22,000g/モル)(図中、PMAA−Na)。各場合において、500μg/mlのPMAA−Naが使用された。培養上清は36時間後に収穫された。MIP−1βの放出は無かった。図8a及び8bは、各々2人のヒトドナーA及びBからの個別の結果を示す。
【図9】図9は、商業的に入手可能なPMAA−Naによるのではなく、PMAA−Naによるヒト腹腔マクロファージからのTNF−αの放出を示す。ヒト腹腔マクロファージはMWt’sの範囲(Mn=1,300、22,100及び129,000g/モル)且つ狭い分子量分布の商業的に入手可能なPMAA−Na(Polymer Standards Service, Germany)、及びここに記載されるように作製されたPMAA−Naと共に培養された。商業的に入手可能なPMAA−Naの1つは我々のPMAA−Naの合成調製物と同様のMWtを有した(Mn=22,000g/モル)(図においてPMAA−Na)。各場合において500μg/mlのPMAA−Naが使用された。培養上清は36時間後に収穫された。TNF−αの放出はなかった。図9a及び9bは各々二人のヒトドナーA及びBからの別個の結果を示す。
【図10】図10、11及び12はアンフォテリシンB又はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体とのインキュベーション後の赤血球溶血を示す。方法は図1について記載した通りであった。臨床グレートアンフォテリシンB(アンフォB、結果は白四角として示される)と実施例Cに記載されるように調製されるアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体(アンフォB−PMAA−Na、結果は白丸として示される)の間の比較がなされた。試験のための化合物のストック溶液はMGM中で調製された。ヒト赤血球溶血は1時間(図10)、6時間(図11)及び24時間(図12)のインキュベーション後に測定された。各場合において3人の異なるドナー(A、B及びC)から得た細胞が使用された。各ラインは一人のドナーからの結果を示す。図10a、10b及び10cは、各々ドナーA、B及びCの細胞との1時間インキュベーションの結果を示す。図11a、11b及び11cは各々ドナーA、B及びCの細胞との6時間インキュベーションの結果を示す。図12a、12b及び12cは、各々、ドナーA、B及びCの細胞との24時間インキュベーションの結果を示す。1時間インキュベーションの後アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物について毒性は見られなかった。6時間インキュベーションの後、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性は、臨床グレードアンフォテリシンBのものよりも有意に低かった。インキュベーション時間が24時間の増加した場合、臨床グレードアンフォテリシンBの毒性は100%に上昇したが、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性に更なる上昇は無かった。
【図11】図10、11及び12はアンフォテリシンB又はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体とのインキュベーション後の赤血球溶血を示す。方法は図1について記載した通りであった。臨床グレートアンフォテリシンB(アンフォB、結果は白四角として示される)と実施例Cに記載されるように調製されるアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体(アンフォB−PMAA−Na、結果は白丸として示される)の間の比較がなされた。試験のための化合物のストック溶液はMGM中で調製された。ヒト赤血球溶血は1時間(図10)、6時間(図11)及び24時間(図12)のインキュベーション後に測定された。各場合において3人の異なるドナー(A、B及びC)から得た細胞が使用された。各ラインは一人のドナーからの結果を示す。図10a、10b及び10cは、各々ドナーA、B及びCの細胞との1時間インキュベーションの結果を示す。図11a、11b及び11cは各々ドナーA、B及びCの細胞との6時間インキュベーションの結果を示す。図12a、12b及び12cは、各々、ドナーA、B及びCの細胞との24時間インキュベーションの結果を示す。1時間インキュベーションの後アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物について毒性は見られなかった。6時間インキュベーションの後、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性は、臨床グレードアンフォテリシンBのものよりも有意に低かった。インキュベーション時間が24時間の増加した場合、臨床グレードアンフォテリシンBの毒性は100%に上昇したが、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性に更なる上昇は無かった。
【図12】図10、11及び12はアンフォテリシンB又はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体とのインキュベーション後の赤血球溶血を示す。方法は図1について記載した通りであった。臨床グレートアンフォテリシンB(アンフォB、結果は白四角として示される)と実施例Cに記載されるように調製されるアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体(アンフォB−PMAA−Na、結果は白丸として示される)の間の比較がなされた。試験のための化合物のストック溶液はMGM中で調製された。ヒト赤血球溶血は1時間(図10)、6時間(図11)及び24時間(図12)のインキュベーション後に測定された。各場合において3人の異なるドナー(A、B及びC)から得た細胞が使用された。各ラインは一人のドナーからの結果を示す。図10a、10b及び10cは、各々ドナーA、B及びCの細胞との1時間インキュベーションの結果を示す。図11a、11b及び11cは各々ドナーA、B及びCの細胞との6時間インキュベーションの結果を示す。図12a、12b及び12cは、各々、ドナーA、B及びCの細胞との24時間インキュベーションの結果を示す。1時間インキュベーションの後アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物について毒性は見られなかった。6時間インキュベーションの後、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性は、臨床グレードアンフォテリシンBのものよりも有意に低かった。インキュベーション時間が24時間の増加した場合、臨床グレードアンフォテリシンBの毒性は100%に上昇したが、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の毒性に更なる上昇は無かった。
【図13】図13は、アンフォテリシンB−PMAA−Na複合体とのインキュベーション後の一人のドナーにおける赤血球溶血を示す。方法は図11について記載される通りであり、アンフォテリシンB−PMAA−Na複合体は実施例Cに記載されるように調製された。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(“薬剤”)による赤血球溶血の程度は、1,000μg/mlまでの濃度について、1時間及び24時間のインキュベーション後に測定された。1時間のインキュベーション後に得られた結果は、白四角として示され、24時間のインキュベーション後の結果は黒丸である。
【図14】図14はPBMN細胞を用いた1、2及び6日の培養後にアンフォテリシンB−PMAA−Naの毒性が無いことを示す。RPMI培地におけるPBMCsは0〜70μg/mlの濃度範囲に亘る実施例Cにおいて記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体(“薬剤”)を含有する培地を用いて培養された。細胞はMTT(5mg/ml)の添加前に1日又は2日、又は6日間インキュベートされた。化合物は、1日の培養、2日の培養、6日の培養後MTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて試験された70μg/mlの最高濃度におけるPBMCsにおいて毒性がなかった。図14は、3人の代表的ヒトドナーからの個別結果を示す。各ラインは一人のドナーを示す。図14a、14b及び14cは、各々1日、2日、及び6日間のインキュベーション後の結果を示す。
【図15】図15は、単球由来マクロファージを用いた2日及び3日培養後のアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体の毒性を示す。単球由来マクロファージ(MDM)は、濃度125μg/mlまでの化合物(“薬剤”)を含有する培地と共に培養された。細胞はMTTの添加前2日又は3日間インキュベートされた。アンフォテリシンBを用いて得られた結果は白丸で示され、実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いた結果は白四角として示される。図15aは、2日の培養後に得られた結果を示し、図15bは2日の培養後の結果である。アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物は2日と3日の両方の培養の後MTTアッセイ及びトリパンブルーアッセイを用いて試験された濃度125μg/mlまでの全てにおいて臨床グレートアンフォテリシンBよりも毒性が低かった。
【図16】図16は、アンフォテリシン又はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体で処理された前鞭毛期メキシコリーシュマニア(Leishmania mexicana promastigote)の生存率を示す。これらの実験に使用された前鞭毛期メキシコリーシュマニアは、15%ウシ胎児血清(56℃で1時間熱不活性化された)及びゲンタマイシン(1mg/100ml)を添加したSchneider‘s Drosophila生育培地(Invitrogen)中に維持された。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについての臨床グレートアンフォテリシンの50%致死量(LD50)は、0.14μg/mlであった(図16d)。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについての臨床グレードアンフォテリシンBの90%致死量(LD90)は、1.49μg/ml)であった(図16d)。実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いた3つの実験からの結果は図16a、16b及び16cに示される。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについてのアンフォテリシンB−PMAA−Naの50%致死量(LD50)は、0.10〜0.19μg/mlであった(図16a、16b及び16c)。前鞭毛期メキシコリーシュマニアについてのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の90%致死量(LD90)は、1.02〜1.49μg/mlであった(図16a、16b及び16c)。前鞭毛期メキシコリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の活性は重量毎重量ベースで臨床グレードアンフォテリシンBのものと同様であった。
【図17】図17は、アンフォテリシン又はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体で処理された前鞭毛期ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani promastigote)の生存率を示す。これら実験に使用された前鞭毛期ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovania promastigote)は、15%ウシ胎児血清(56℃で1時間熱不活性化された)及びゲンタマイシン(1mg/100ml)を添加したSchneider’s Growth Media199中に維持された。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアについての臨床グレートアンフォテリシンBの50%致死量(LD50)は、0.08μg/mlであった(図17d)。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアのついての臨床グレードアンフォテリシンBの90%致死量(LD90)は、1.91μg/mlであった(図17d)。実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いた3つの実験からの結果は図17a、17b及び17cに示される。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の50%致死量(LD50)は、0.10〜0.17μg/mlであった(図17a、17b及び17c)。前鞭毛期ドノバンリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の90%致死量(LD90)は、0.98〜1.28μg/mlであった(図17a、17b及び17c)。従って、前鞭毛期ドノバンリーシュマニアに対するアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物の活性は、重量毎重量ベースで臨床グレードアンフォテリシンBのものと同様であった。
【図18】図18は、ヒト単球由来マクロファージにおけるアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体による細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアの増殖の抑制を示す。無鞭毛期メキシコリーシュマニアは、10%ヒト血清(56℃で1時間熱不活性化された)及び200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640(Invitrogen)中に維持されたヒト単球由来マクロファージを感染させるために使用された。感染指数は寄生体/細胞の平均数×感染した細胞のパーセントとして計算された。実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いた4つの実験の結果は、図18a〜18dに示される。臨床グレードアンフォテリシンBを用いた抑制は図19aに示され、AmBiosome(Gliead Sciences)を用いたものは図19bである。細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニア増殖の50%抑制は、0.l4μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図19a)又は0.45μg/mlのAmbisome(図19b)と比較して、0.18〜0,32μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物で達成された(図18a〜18d)。細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニア増殖の90%抑制は、0.95μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図19a)又は3.89μg/mlのAmBisome(図19b)と比較して1.18〜1.55μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いて達成された。
【図19】図19は、臨床グレードアンフォテリシンB又はAmBiosome(リポソームアンフォテリシンB,Gilead Sciences, Great Abingdon,Cambridge, UK)を用いた対応する抑制を示す。無鞭毛期メキシコリーシュマニアは、10%ヒト血清(56℃で1時間熱不活性化された)及び200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640(Invitrogen)中に維持されたヒト単球由来マクロファージを感染させるために使用された。感染指数は寄生体/細胞の平均数×感染した細胞のパーセントとして計算された。実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いた4つの実験の結果は、図18a〜18dに示される。臨床グレードアンフォテリシンBを用いた抑制は図19aに示され、AmBiosome(Gliead Sciences)を用いたものは図19bである。細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニア増殖の50%抑制は、0.l4μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図19a)又は0.45μg/mlのAmbisome(図19b)と比較して、0.18〜0,32μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物で達成された(図18a〜18d)。細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニア増殖の90%抑制は、0.95μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図19a)又は3.89μg/mlのAmBisome(図19b)と比較して1.18〜1.55μg/mlのアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物を用いて達成された。
【図20】図20は、AmBiosomeと比較したアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体によるヒトマクロファージ中の細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアの増殖の阻害を示す。図20に示されるグラフは、実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体(白四角として示される;IC50=0.3μg/ml)とAmBisome(リポソームアンフォテリシンB,Gilead Sciences, Great Abingdon、Cambridge、UK)(黒丸として示される;IC50=1.7μg/ml)の細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアに対する相対活性の傾きを比較する。それは、アンフォテリシンB−PMAA−Na調製物のキリングカーブは、AmBisomeについてのキリングカーブよりも急勾配であることを実証する。
【図21】図21及び22は、臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)及びAmBiosome(Gilead Sciences、上記の通り)(図22b)による、ヒト単球由来マクロファージにおけるアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体による細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニア増殖の抑制を示す(4実験、図21a〜21bに示される)。無鞭毛期ドノバンリーシュマニアは、10%ヒト血清(56℃で1時間熱不活性化された)及び200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640(Invitrogen)中に維持されたヒト単球由来マクロファージを感染するために使用された。感染指数は寄生体/細胞の平均数×感染した細胞のパーセントとして計算された。細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの増殖の50%抑制は、0.54μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)又は1.96μg/mlのAmBisome(図22b)と比較して、0.30〜0.71μg/mlの実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物で達成された(図21a〜21b)。細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの増殖の90%抑制は、2.31μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)又は>8μg/mlのAmbisome(図22b)と比較して、2.18〜3.18μg/mlの実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いて達成された(図21a〜21d)。
【図22】図21及び22は、臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)及びAmBiosome(Gilead Sciences、上記の通り)(図22b)による、ヒト単球由来マクロファージにおけるアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体による細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニア増殖の抑制を示す(4実験、図21a〜21bに示される)。無鞭毛期ドノバンリーシュマニアは、10%ヒト血清(56℃で1時間熱不活性化された)及び200 IU/mlペニシリン及び200μg/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640(Invitrogen)中に維持されたヒト単球由来マクロファージを感染するために使用された。感染指数は寄生体/細胞の平均数×感染した細胞のパーセントとして計算された。細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの増殖の50%抑制は、0.54μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)又は1.96μg/mlのAmBisome(図22b)と比較して、0.30〜0.71μg/mlの実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物で達成された(図21a〜21b)。細胞内無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの増殖の90%抑制は、2.31μg/mlの臨床グレードアンフォテリシンB(図22a)又は>8μg/mlのAmbisome(図22b)と比較して、2.18〜3.18μg/mlの実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いて達成された(図21a〜21d)。
【図23】図23は、24時間の異なる化合物との培養後のヒト腹腔マクロファージからのインターフェロンγの放出を示す。ヒト腹膜細胞は、示される濃度における各化合物とマクロファージ増殖培地中で培養された。使用された化合物は、実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体、臨床グレードアンフォテリシンB、商業的PMAA−Na及び実施例A1〜A4に記載されるように調製されたPMAA−Naであった。全ての試薬及び化合物は<0.06エンドトキシンユニット/mlを含有した。培養上清は、24時間後に収穫された。インターフェロンγはEIA(R&D systems)によって測定された。腹腔マクロファージからのTh1促進サイトカイン、インターフェロンγの放出はコントロールのみ、臨床グレードアンフォテリシンB,商業的PMAA−Na又はPMAA−Naの細胞と比較してアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物(100μg/ml)の存在下でより有意に高かった。
【図24】図24はツベルクリンPMAA−Na複合体を用いたインキュベーション後の細胞のPMBC増殖を示す。PBMCsは、10%ヒト血清、200μg/mlペニシリン及び200 IU/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640中に再懸濁された。ツベルクリンPMAA−Na複合体(ツベルクリンPPD−PMAA−Naとも呼ばれる)は実施例L2に記載されるように調製された。全ての試薬及び化合物は、リムルス試験(Pyrotell, Associates of Cape Cod, US)を用いて測定されるように<0.06エンドトキシンユニット/mlを含有した。細胞(105細胞/ウェル)及び各化合物(示される濃度のツベルクリンPPD及びツベルクリン−PMAA−Na)は一対(in duplicate)で混合され、37℃/5%CO2で4日間インキュベートされた。[3H]−チミジン(比活性20〜30Ci/mmol;Amersham Bioosciences, UK)は、更なる18時間に1μCi/ウェルで添加された。細胞は次いで収穫され、液体シンチレーションカウンターを用いて増殖が測定された。結果は平均カウント/分(cpm)±semとして表された。図24aは、ツベルクリン−PMAA−Na調製物とドナーAの細胞の6日のインキュベーション後のPBMC増殖について得られた結果を示す。図24aは、それらが1μg/mlのツベルクリン−PMAA−Na調製物と培養された場合、有意に上昇したTリンパ球の増殖が存在したことを示す。それらが10μg/mlのツベルクリン−PMAA−Na調製物と培養された場合、より更なるTリンパ球の増殖が存在した(P=0.001)。図24bは、ツベルクリンPPD及びツベルクリン−PMAA−Na調製物とドナーBの細胞の5日のインキュベーション後のPBMC増殖についての結果を示す。10μg/mlのツベルクリン抗原よりも10μg/mlのツベルクリン−PMAA−Na調製物を用いて有意により多くTリンパ球が増殖した(P=0.002)。これは、ツベルクリン−PMAA−Na調製物がツベルクリン抗原自体よりも有意により多くのTリンパ球増殖を引き起こすことを示す。
【図25】図25は、ドナーAからの抗原で24時間刺激されたヒトPMBCsによるIFN−γの産生を示す。ヒトPBMCsは、単離され、10%ヒト血清、200μg/mlペニシリン及び200 IU/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640中で2×105細胞/ウェルに調節された。全ての試薬及び化合物は、<0.06エンドトキシンユニット/mlを含有した。PBMCs及び化合物(示される濃度の、ツベルクリン及び実施例L2に記載されるように調製されたツベルクリン−PMAA−Na複合体(ツベルクリンPPD−PMAA−Naとも呼ばれる))は、ヒトインターフェロンγモノクローナル抗体(R&D Systems,UK)でコートされたELISpotPVDF−バックドマイクロプレートのウェル中で混合された。刺激されていない細胞は、ネガティブコントロールとして使用され、組換えヒトインターフェロンγはポジティブコントロールとして使用された。プレートは37℃/5%CO2で24時間インキュベートされた。次いで製造者の指示書に従って、マイクロプレートを確立し、インターフェロンγについての陽性スポットの数がカウントされた。図25はIFN−γを産生する細胞の数を示す。図25はツベルクリンPPD−PMAA−Na調製物が初代ヒトTリンパ球からのインターフェロンγ放出を刺激することにおいてツベルクリン抗原のみよりも有意により効果的であったことを示す。Tリンパ球からのインターフェロンγの分泌におけるこの上昇は、50μg/mlのツベルクリンPPD−PMAA−Na調製物及び100μg/mlのツベルクリンPPD−PMAA−Na調製物について見られた。
【図26】図26は、臨床グレードアンフォテリシンB,AmBisome又はアンフォテリシンB−PMAA−Na、未処理コントロール及びコントロールとしてのブランクリポソームを用いた静脈処理後のマウスの肝臓マクロファージにおける無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの生存を示す。種々の化合物が図26に示される濃度で使用された。無鞭毛期/500肝臓細胞の数が顕微鏡でカウントされ、結果が未処理コントロールのパーセントとして表された。コントロールと比較して、実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体の1mg/kgの無鞭毛期ドノバンリーシュマニアの有意なキリング活性(P<0.0001)が存在した。これらの結果はアンフォテリシンB−PMAA−Na調製物が内臓リーシュマニアのこの動物モデルにおいて効果的であることを示す。
【図27】赤血球についての異なる分子量のPMAA−Naコンストラクトの毒性はMTTアッセイを用いて確立された。図27a〜27cは異なる分子量を有し且つ実施例Nに記載されるように作製されたPMAA−Naコンストラクトが一人のドナーの赤血球に対して毒性がないことを示す。各場合において、PMAA−Naコンストラクトの濃度はμg/mlで与えられ、赤血球の溶血はパーセントで与えられる。四角は分子量19kDaのPMAA−Naコンストラクトを用いて得た結果を示し、三角は28kDaのPMAA−Naコンストラクトを用いた結果、そして逆三角は37kDaのPMAA−Naコンストラクトを用いた結果である(n=3)。図27aはPMAA−Naコンストラクトとの1時間のインキュベーション後の赤血球(RBCs)の溶血を示し、図27bは5時間後のRBCsの溶血を示し、図27cは24時間後のRBCsの溶血を示す。PMAA−Naコンストラクトは1時間、5時間及び24時間インキュベーションの後2mg/mlの濃度で赤血球溶血を引き起こさなかった。これらの結果は作製されたPMAA−Naコンストラクトの分子量によって影響されなかった。
【図28】異なる分子量のPMAA−Naコンストラクトの末梢血単核細胞(PMBCs)に対する毒性がMTTアッセイを用いて確立された。図28a及び28bにおいて、実施例Nに記載されるように作製されたPMAA−Naコンストラクトの濃度は、PMBCsのパーセントに対してプロットされた。四角は分子量19kDaのPMAA−Naコンストラクトを用いて得られた結果を示し、三角は28kDaのPMAA−Naコンストラクトを用いた結果、そして丸は37kDaのPMAA−Naコンストラクトを用いた結果である(n=3)。図28aは、PMAA−Naコンストラクトを用いた1日間のインキュベーション後のPMBCsの生存率を示し、図28bは該コンストラクトを用いた2日間のインキュベーション後のPMBCsの生存率を示す。使用されたコンストラクトは1日及び2日のインキュベーションの後2mg/mlにおいて末梢血単核細胞に対して毒性でなかった。結果は作製されたPMAA−Naコンストラクトの分子量によって影響されなかった。
【図29】図29は、異なる条件下でのアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体の保存の赤血球に対するその毒性についての影響を示す。図29aは、実施例Cに記載されるように調製され且つ凍結乾燥粉末として4℃で4ヶ月間保存されたPMAA−Na複合体の赤血球(RBCs)に対する毒性がないことを示す。複合体は種々の濃度で1時間RBCsとインキュベートされ、RBCsの溶血パーセントが測定された。図29aは、アンフォテリシンB−PMAA−Na複合体が、凍結乾燥粉末として4℃で4ヶ月間の保存の後、赤血球に対して毒性がなかったことを示す。図29bは、実施例Cに従って調製され、4℃で7ヶ月間5%デキストロース中に保存されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体が1時間RBCsとインキュベートされた場合に得られた結果を示す。溶血はパーセントとして示される。新たに調製された、臨床グレードアンフォテリシンBが比較のためのリファレンスとして使用された。インキュベーションが1時間及び6時間行われた;1時間のインキュベーションについての結果が示される。図29bは、アンフォテリシンB−PMAA−Na複合体が4℃で7ヶ月間の5%デキストロース中の保存の後、赤血球に対して毒性がないことを示す。
【図30】図30は、異なる条件下で保存されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体による前鞭毛期及び無鞭毛期リーシュマニアの抑制を示す。図30aは、実施例Cに従って調製され、且つ4ヶ月間4℃で凍結乾燥粉末として保存されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体によるMDMs中の細胞内無鞭毛期メキシコリーシュマニアの増殖の抑制を示す。感染指数は複合体の濃度に対してプロットされた。LD50は0.21μg/mlであった。図30bは、実施例Cに従って調製され、且つ7ヶ月間4℃で5%デキストロース中に保存されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体によるMDMs中の細胞内無鞭毛期との2日間のインキュベーション後の前鞭毛期メキシコリーシュマニアの生存率を示す。パーセント生存率は、複合体の濃度に対してプロットされた。新たに調製された臨床グレードアンフォテリシンBが比較のためのリファレンスとして使用された。複合体のLD50は0.4μg/mlであり、アンフォテリシンBのLD50は0.3μg/mlであった。複合体を用いて得られた結果は黒四角によって示され、アンフォテリシンBでの結果は白丸である。アンフォテリシンB−PMAA−Naの活性は、凍結乾燥粉末として4℃で4ヶ月間、4℃で7ヶ月間の5%デキストロース中の保存によって影響されなかった。
【図31】図31は、ヒト単球由来マクロファージを感染したCryptococcus neoformansの種々の株の抑制を示す。抑制は、アンフォテリシンB(白丸)を比較のためのリファレンスとして用いて、実施例Cに記載されるように調製された種々の濃度のアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体(黒四角)を3日間用いた後測定された。感染した及び感染していないマクロファージの数及びグラム陽性酵母CFUの数が数えられた。結果はCFU/感染細胞のパーセントの平均数として計算された感染指数として表された。LD50値がまた測定された。図31aは、C.neoformans var neoformans臨床分離株1の抑制を示し、図31bは、C.neoformans var neoformans NCPF 3003の抑制を示し、図31cは、C.neoformans var gattii臨床分離株の抑制を示し、図31dは、C.neoformanc var gattii臨床分離株の抑制を示す。アンフォテリシンB(0.9〜1.4μg/ml)及びアンフォテリシンB−PMAA−Na(1.6〜2.7μg/ml)についてのLD50は類似する。従って、複合体はアンフォテリシンBのみと同程度にcryptococciに対して活性である。
【図32】図32は、ヒト単球由来マクロファージを感染した種々のCryptococcus neoformans株の生存率を示す。生存率は、アンフォテリシンB(白丸)を比較のためのリファレンスとして用いて、実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を種々の濃度を3日間使用した後(黒四角)、測定された。図32aは、C.neoformans var neoformans NCPF 3003についての結果を示し、図32bは、C.neoformans var neoformans臨床分離株についての結果を示し、図32cは、C.neoformans var gatti NCPF 3216についての結果を示し、図32dはC.neoformans var gatti臨床分離株についての結果を示す(それらの生物がヒト単球由来マクロファージを感染したとき)。アンフォテリシンB及びアンフォテリシンB−PMAA−NaについてのLD50は、実施された4実験の全てにおいて同様であり、また図31a〜31dに示される4実験と同様でもあった。C.neoformans var neoformansの場合、アンフォテリシンBについてのLD50は0.9〜1.4μg/mlであり、アンフォテリシンB−PMAA−Naについてのそれは同様に1.6〜2.7μg/mlであった。C.neoformans var gattiについて、アンフォテリシンBについてのLD50は、0.06〜1.0μg/mlであり、アンフォテリシンB−PMAA−Naについてのそれは同様に0.1〜0.5μg/mlであった。従って、複合体はアンフォテリシンB単独と同程度にcryptococciに対して活性である。
【図33】図33aは、Candida albicans ATCC 90028の生存率を示し、図33bはCandida glabrata ATCC 90030の生存率を示す(種々の濃度のアンフォテリシンB(リファレンス)又はアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体を用いた1日の処理後)。生存率はパーセントとして表される。生存率は分光計(490nm)を用いて測定される濁度によって測定された。100%生存率はコントロールウェル中の未処理酵母の光学密度を用いて確立された。アンフォテリシンB(0.9〜1.8μg/ml)及び実施例Cに記載されるように調製されたアンフォテリシンB−PMAA−Na複合体についてのLD50(1.6〜2.3μg/ml)は、Candida albicansについて同様であり(図33a)、図33bはCandida glabrataについての結果を示す。従って、該複合体はアンフォテリシンB単独と同程度にCandida種に対して活性である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと;
(i)病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、又は
(ii)ガンに対する薬理学的活性を有する物質、又は
(iii)抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質(agent)
を含む複合体。
【請求項2】
該病原生物が、排他的ではないが主として細胞内生物である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
該病原生物が、マクロファージ起源の細胞及び/又は樹状細胞などの他の抗原提示細胞において存在及び/又は持続する細胞内生物である、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
該病原生物が以下の生物から選択される、請求項1に記載の複合体:
a)白癬;輪癬;鵞口瘡を含む表在性真菌症;でん風、マラセチア毛包炎、脂漏性皮膚炎、及びスキタリジウム症(Scytalidium Infection)を含むマラセチア感染;外耳道真菌症;及び角膜真菌症を引き起こす生物;
b)Candida albicans、Candida tropicalis及びCandida glabrataを含む侵入性及び慢性真菌感染を引き起こすCandida種;Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus及びAspergillus nigerを含むAspergillus種;Cryptococcus neoformans;例えばAbsidia、Rhizopus及びRhizomucor種によって引き起こされるムコール症;Fusarium種;Trichosporon種;ブラストミセス症;Sporothrix種;Sporotrichum種;例えばHistoplasma capsulatum var. capsulatumによって引き起こされるヒストプラズマ症;例えばHistoplasma capsulatum var. duboisiiによって引き起こされるアフリカヒストプラズマ症;例えばBlastomyces dermatitidisによって引き起こされるブラストミセス症;例えばCoccidioides immitisによって引き起こされるコクシジオイデス症;例えばParacoccidiodes brasiliensisによって引き起こされるパラコクシジオイデス症;及びPenicillium marneffeiによって引き起こされる感染;
c)例えば結核菌、異型結核菌、及びライ菌などのマイコバクテリウムファミリーのメンバーによって引き起こされる、例えば結核及びハンセン病等のマイコバクテリア症を引き起こす生物;
d)例えばSchitosoma haematobium、Schistosoma mansoni、Schistosoma japonicum、Schistosoma intercalatum及びSchistosoma mekongi等の住血吸虫症を引き起こすSchistosomaファミリーのメンバー;
e)例えばセロタイプA、B、C及びDのサルモネラファミリーのメンバー等のチフス及びパラチフス熱を引き起こす生物;
f)例えばToxoplasma gondiiなどのトキソプラズマ症を引き起こす生物;
g)例えばTrypanosoma brucei gambiense又はTrypanosoma brucei gambienseなどのヒトアフリカ・トリパノソーマ症を引き起こす生物;
h)例えばTrypanosoma cruziなどのアメリカ・トリパノソーマ症を引き起こす生物;
i)例えばPlasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium ovale及びPlasmodium malariaeなどのマラリアを引き起こす生物;
j)HIV及びHTLV感染を引き起こす生物;
k)Pneumocystis carinii感染を引き起こす生物。
【請求項5】
該病原生物がリーシュマニア症を引き起こす、請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
該物質が、請求項2〜5のいずれか1つに定義される生物を殺す又は崩壊することができる、該病原生物に対する薬理学的活性を有する、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
該薬理学的活性物質がアンフォテリシンBである、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
抗原又は免疫原が、結核、破傷風、炭疽、コレラ、ジフテリア、麻疹、耳下腺炎、風疹、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、帯状疱疹、灰白髄炎、狂犬病、痘瘡、黄熱、水痘、帯状疱疹、単純ヘルペス、インフルエンザ又はリーシュマニア症を引き起こす生物から直接的又は間接的に由来する、請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
抗原又は免疫原がインフルエンザ菌タイプB,髄膜炎菌、百日咳菌、肺炎連鎖球菌、又はチフス菌から直接的若しくは間接的に由来する、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
抗原又は免疫原が請求項2〜6のいずれか1つに定義される生物から直接的又は間接的に由来する、請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
抗原又は免疫原が自然源から得られる、又は組換えDNA技術若しくは化学合成、若しくは前記方法のいずれか1つ以上によって作製される、請求項1、請求項9又は請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
ガンに対する薬理学的活性を有する該物質が細胞障害剤である、請求項1に記載の複合体。
【請求項13】
薬学的に好適なキャリアと混合して又はそれとともに、請求項1〜12のいずれか1つに記載の複合体を含む薬学的製剤。
【請求項14】
送達システムアジュバントを含む、請求項13に記載の薬学的製剤。
【請求項15】
薬剤としての使用のための請求項1〜14のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項16】
病原生物による感染の治療における使用及び/又は病原生物に対する免疫応答の誘発のための複合体であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を含む、複合体。
【請求項17】
病原生物による感染をこのような治療の必要な被験体において治療する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー及び該病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の治療有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項18】
該病原生物に対する免疫応答をその必要のある被験体において誘発する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項19】
該病原生物が請求項2〜5のいずれか1つに定義される、請求項16〜18のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項20】
該病原生物に対する薬理学的活性を有する該物質が、請求項6に定義されるものである、請求項16〜18のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項21】
リーシュマニア症の治療及び/又はその臨床的形態のいずれかであるリーシュマニア症を引き起こす生物に対する免疫応答を誘発するための、請求項16〜18のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項22】
リーシュマニア症を引き起こす生物に対する薬理学的活性を有する物質がアンフォテリシンBである、請求項21に記載の複合体又は方法。
【請求項23】
該免疫応答が病原生物に対する治療用及び/又は予防用ワクチン接種を含む、請求項16〜22のいずれかに記載の複合体又は方法。
【請求項24】
ガンの治療における使用のための複合体であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該ガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む、複合体。
【請求項25】
ガンをその治療の必要な被験体において治療する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該ガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の治療有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項26】
ガンに対する免疫応答を、その必要のある被験体において誘発する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該ガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項27】
該ガンに対する薬理学的活性を有する物質が細胞障害剤である、請求項24〜26のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項28】
該免疫応答が該ガンに対する治療用及び/又は予防用ワクチン接種を含む請求項24〜27のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項29】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマーと抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質を含む、該抗原又は免疫原に対する免疫応答を誘発するための複合体。
【請求項30】
抗原又は免疫原に対する免疫応答を被験体において誘発する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該抗原又は免疫原を含む複合体の有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項31】
該抗原又は免疫原がそれに対する防御免疫応答が必要である生物から直接的又は間接的に由来する、請求項10〜12のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項32】
該抗原又は免疫原が請求項8〜11のいずれか1つに定義される、請求項29又は30に記載の複合体又は方法。
【請求項33】
該免疫応答が該病原生物に対する治療用及び/又は予防用ワクチン接種を含む、請求項29〜32のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項34】
該病原生物による感染の治療及び/又は該病原生物に対する免疫応答を誘発するための、病原生物に対する薬理学的活性を有する物質との使用のための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー。
【請求項35】
病原生物による感染をその治療の必要な被験体において治療する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該病原生物に対する薬理学的活性を有する物質の治療有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項36】
該病原生物に対する免疫応答をその必要のある被験体において誘発する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該病原生物に対する薬理学的活性を有する物質の有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項37】
該免疫応答が、該病原生物に対する治療用及び/又は予防用ワクチン接種を含む、請求項34に記載のポリマー又は請求項36記載の方法。
【請求項38】
該病原生物が請求項2〜5のいずれか1つに定義される、請求項34〜37のいずれか1つに記載のポリマー又は方法。
【請求項39】
該病原生物に対する薬理学的活性を有する物質が請求項6に定義される、請求項34〜38のいずれかに記載のポリマー又は方法。
【請求項40】
リーシュマニア症の治療及び/又はその臨床形態のいずれかであるリーシュマニア症を引き起こす生物に対する免疫応答を誘発するための、請求項34〜37のいずれかに記載のポリマー又は方法。
【請求項41】
リーシュマニア症を引き起こす該生物に対する薬理学的活性を有する物質がアンフォテリシンBである、請求項40に記載のポリマー又は方法。
【請求項42】
該抗原又は免疫原に対する免疫応答を誘発するための、抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質との使用のための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー。
【請求項43】
抗原又は免疫原に対する免疫応答をそのような治療の必要な被験体において誘発する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該抗原又は免疫原の治療有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項44】
該抗原又は免疫原が請求項31又は請求項32に定義される、請求項42又は43に記載のポリマー又は方法。
【請求項45】
該免疫応答が治療用及び/又は予防用ワクチン接種を含む、請求項42〜44のいずれか1つに記載のポリマー又は方法。
【請求項46】
該ガンの治療及び/又は該ガンに対する免疫応答を誘発するための、ガンに対する薬理学的活性を有する物質との使用のための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー。
【請求項47】
ガンをその治療の必要な被験体において治療する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該ガンに対する薬理学的活性を有する物質の治療有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項48】
ガンに対する免疫応答をその必要のある被験体において誘発する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該ガンに対する薬理学的活性を有する物質の有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項49】
該免疫応答が治療用及び/又は予防用ワクチン接種を含む、請求項46又は請求項48に記載のポリマー。
【請求項50】
該ポリマー及び他の物質が一緒に又は別個に投与される、請求項34〜49のいずれか1つに記載のポリマー又は方法。
【請求項51】
該ポリマー及び該薬理学的活性物質が別個に投与される場合、それらが実質的に同時に又は一方が他方の前に投与される、請求項50に記載のポリマー又は方法。
【請求項52】
ワクチンの製造における免疫増強アジュバントとしての使用のためのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー。
【請求項53】
それに対して免疫応答が誘発される抗原又は免疫原を含むワクチンの製造における免疫増強アジュバントとしての使用のためのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー。
【請求項54】
ワクチン製造のための方法における、免疫増強アジュバントとしてアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーの使用を含む改良。
【請求項55】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーが、1.7以下の多分散性を有する、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法又はポリマー。
【請求項56】
該ポリマーが1.4未満、例えば1.2未満の多分散性を有する、請求項55に記載の複合体、薬学的製剤、方法又はポリマー。
【請求項57】
血液中に存在する場合に該ポリマーが腎臓を通過する間及び後に実質的に循環血液中に残るような分子量を有する、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法又はポリマー。
【請求項58】
該ポリマーが例えば100.000以下、例えば100,00未満、例えば80,000以下、例えば75,000以下、例えば65,000以下、例えば55,000以下、例えば45,000以下の分子量を有する、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法又はポリマー。
【請求項59】
該ポリマーが4,000以上、例えば約5,000以上、例えば約10,000以上、例えば約20,000以上、例えば約30,000以上、例えば約40,000以上の分子量を有する、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項60】
該ポリマーが、80,000〜4,000、75,000〜5,000、65,000〜10,000、55,000〜10,000、45,000〜10,000、50,000〜4,000、40,000〜25,000又は45,000〜10,000の範囲内の分子量を有する、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項61】
該ポリマーが、ポリマー前駆体の加水分解を含むプロセスによって作製される、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項62】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマーが、アクリル酸由来のユニット中のアクリレートカルボン酸の水素原子の代わりに加水分解によって切断されて酸を与え得る基を有する対応する前駆体ポリマーの加水分解によって作製される、請求項61に記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項63】
加水分解によって切断され得る基が、例えば適切な脱離基、例えば電子吸引基、例えばアシレーティング基であり、これは好ましくは一般的にN−スクシンイミジル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、パラニトロフェニル、ジニトロフェニル、N−フタルイミド、N−ボルニル、シアノメチル、ピリジル、トリクロロトリアジン、5−クロロキノリノ、及びイミダゾリル基から成る群から選択され、好ましくは、N−スクシンイミジル又はイミダゾリル基、そして特にN−スクシンイミジル基であるカルボキシレート活性化である、請求項62に記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項64】
加水分解が塩基性薬剤、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基、例えばナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、又はリチウム塩基であり、このような塩基は、例えば、水酸化物、炭酸塩又は炭酸水素塩、例えば水酸化ナトリウムであり得る、請求項61〜63のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項65】
該ポリマーがポリ(メタクリル酸)又はその塩である、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項66】
該ポリ(N−メタクリルオキシスクシンイミド)(PMOSu)が銅媒介原子移動ラジカル重合法を用いてメタクリルオキシスクシンイミドの均質重合によって作製される、請求項65に記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項67】
該ポリマーが以下のユニット(I):
【化1】
(式中、Rは水素及びC1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C7〜C18アラルキル、C7〜C18アルカリール、C6〜C18アリール、カルボン酸、C2〜C18アルコキシカルボニル、C2〜C18アルカミノカルボニルから成る群から選択される又は炭素バックボーン中のヘテロ原子で置換された、又は炭素バックボーンに結合したC1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C7〜18アラルキル、C7〜C18アルカリール、C6〜C18アリール、カルボン酸、C2〜C18アルコキシカルボニル、C2〜C18アルカミノカルボニルのいずれかであり、R1は、水素とC1〜C6アルキル基から成る群から選択される)である、またはユニット(I)を含む;及びその塩、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩)又はアンモニウム塩)
、或いは該ポリマーが以下のユニット(II):
【化2】
(式中、R、R1及びR2は、上記のように定義される;R3は、C1〜C18アルキレン、C2〜C18アルケニレン、C7〜C18アラルキレン、C7〜C18アルカリーレン及びC6〜C18アリーレンから成る群から選択される;Lはブロックを連結する2価のリンカーである;m及びnは各々1又は1よりも大きい整数である。)
である、又はユニット(II)を含む、請求項1〜64のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項68】
該ポリマーが以下ユニット(III)又は(IV)
【化3】
【化4】
(式中、R、R1、R2及びR3、L、m及びnは上記に定義され、R4、R5及びR6は、独立して各々R、R1及びR2と同一の基から選択される;Qはポリマーを作製するために使用される条件下で切断されない、又は実質的に切断されない基を表す;pは、1又は1よりも大きい整数を表す。所望される場合、Qはターゲティング基であり得、即ち該ポリマーを細胞タイプ(例えば、マクロファージ)又は器官(例えば肝臓)に標的化する基であり得る。)
である、又はユニット(III)又は(IV)を含む、請求項1〜64のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項69】
該ポリマーが原子媒介原子移動ラジカル重合法、例えば、銅媒介原子移動ラジカル重合法を用いてスクシンイミド前駆体の均質重合によって作製される、請求項1〜68のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項70】
該ポリマーを形成するために、ポリマー前駆体を加水分解することを含む方法(ここで、該加水分解は前記請求項のいずれか1つに定義される成分(i)、(ii)又は(iii)の存在下で行われる)によって作製される、前記請求項のいずれかに記載の複合体。
【請求項71】
該加水分解が塩基性薬剤、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基、例えばナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、又はリチウム塩基を用いて行われ、このような塩基は、例えば、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、例えば、水酸化ナトリウムであり得る、請求項70に記載の複合体。。
【請求項72】
リーシュマニア症に対する薬理学的活性を有する物質とアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項73】
該薬理学的活性物質がアンフォテリシンBである、請求項72に記載の複合体。
【請求項74】
該ポリマーが請求項55〜71のいずれか1つに定義されるものである、請求項72又は73に記載の複合体。
【請求項75】
請求項72〜74のいずれか1つに記載の複合体を薬学的に好適なキャリア及び必要に応じて送達システムアジュバントとの混合で含む薬学的製剤。
【請求項76】
その臨床形態のいずれかでのリーシュマニア症の治療における使用のための、請求項72〜74のいずれか1つに記載の複合体又は請求項75に記載の薬学的製剤。
【請求項77】
リーシュマニア症をその治療の必要な被験体において治療する方法であって、請求項72〜74のいずれか1つに記載の複合体又は請求項75に記載の薬学的製剤の治療有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項1】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと;
(i)病原生物に対する薬理学的活性を有する物質、又は
(ii)ガンに対する薬理学的活性を有する物質、又は
(iii)抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質(agent)
を含む複合体。
【請求項2】
該病原生物が、排他的ではないが主として細胞内生物である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
該病原生物が、マクロファージ起源の細胞及び/又は樹状細胞などの他の抗原提示細胞において存在及び/又は持続する細胞内生物である、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
該病原生物が以下の生物から選択される、請求項1に記載の複合体:
a)白癬;輪癬;鵞口瘡を含む表在性真菌症;でん風、マラセチア毛包炎、脂漏性皮膚炎、及びスキタリジウム症(Scytalidium Infection)を含むマラセチア感染;外耳道真菌症;及び角膜真菌症を引き起こす生物;
b)Candida albicans、Candida tropicalis及びCandida glabrataを含む侵入性及び慢性真菌感染を引き起こすCandida種;Aspergillus fumigatus、Aspergillus flavus及びAspergillus nigerを含むAspergillus種;Cryptococcus neoformans;例えばAbsidia、Rhizopus及びRhizomucor種によって引き起こされるムコール症;Fusarium種;Trichosporon種;ブラストミセス症;Sporothrix種;Sporotrichum種;例えばHistoplasma capsulatum var. capsulatumによって引き起こされるヒストプラズマ症;例えばHistoplasma capsulatum var. duboisiiによって引き起こされるアフリカヒストプラズマ症;例えばBlastomyces dermatitidisによって引き起こされるブラストミセス症;例えばCoccidioides immitisによって引き起こされるコクシジオイデス症;例えばParacoccidiodes brasiliensisによって引き起こされるパラコクシジオイデス症;及びPenicillium marneffeiによって引き起こされる感染;
c)例えば結核菌、異型結核菌、及びライ菌などのマイコバクテリウムファミリーのメンバーによって引き起こされる、例えば結核及びハンセン病等のマイコバクテリア症を引き起こす生物;
d)例えばSchitosoma haematobium、Schistosoma mansoni、Schistosoma japonicum、Schistosoma intercalatum及びSchistosoma mekongi等の住血吸虫症を引き起こすSchistosomaファミリーのメンバー;
e)例えばセロタイプA、B、C及びDのサルモネラファミリーのメンバー等のチフス及びパラチフス熱を引き起こす生物;
f)例えばToxoplasma gondiiなどのトキソプラズマ症を引き起こす生物;
g)例えばTrypanosoma brucei gambiense又はTrypanosoma brucei gambienseなどのヒトアフリカ・トリパノソーマ症を引き起こす生物;
h)例えばTrypanosoma cruziなどのアメリカ・トリパノソーマ症を引き起こす生物;
i)例えばPlasmodium falciparum、Plasmodium vivax、Plasmodium ovale及びPlasmodium malariaeなどのマラリアを引き起こす生物;
j)HIV及びHTLV感染を引き起こす生物;
k)Pneumocystis carinii感染を引き起こす生物。
【請求項5】
該病原生物がリーシュマニア症を引き起こす、請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
該物質が、請求項2〜5のいずれか1つに定義される生物を殺す又は崩壊することができる、該病原生物に対する薬理学的活性を有する、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
該薬理学的活性物質がアンフォテリシンBである、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
抗原又は免疫原が、結核、破傷風、炭疽、コレラ、ジフテリア、麻疹、耳下腺炎、風疹、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、帯状疱疹、灰白髄炎、狂犬病、痘瘡、黄熱、水痘、帯状疱疹、単純ヘルペス、インフルエンザ又はリーシュマニア症を引き起こす生物から直接的又は間接的に由来する、請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
抗原又は免疫原がインフルエンザ菌タイプB,髄膜炎菌、百日咳菌、肺炎連鎖球菌、又はチフス菌から直接的若しくは間接的に由来する、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
抗原又は免疫原が請求項2〜6のいずれか1つに定義される生物から直接的又は間接的に由来する、請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
抗原又は免疫原が自然源から得られる、又は組換えDNA技術若しくは化学合成、若しくは前記方法のいずれか1つ以上によって作製される、請求項1、請求項9又は請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
ガンに対する薬理学的活性を有する該物質が細胞障害剤である、請求項1に記載の複合体。
【請求項13】
薬学的に好適なキャリアと混合して又はそれとともに、請求項1〜12のいずれか1つに記載の複合体を含む薬学的製剤。
【請求項14】
送達システムアジュバントを含む、請求項13に記載の薬学的製剤。
【請求項15】
薬剤としての使用のための請求項1〜14のいずれか1つに記載の複合体。
【請求項16】
病原生物による感染の治療における使用及び/又は病原生物に対する免疫応答の誘発のための複合体であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を含む、複合体。
【請求項17】
病原生物による感染をこのような治療の必要な被験体において治療する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー及び該病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の治療有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項18】
該病原生物に対する免疫応答をその必要のある被験体において誘発する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該病原生物に対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項19】
該病原生物が請求項2〜5のいずれか1つに定義される、請求項16〜18のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項20】
該病原生物に対する薬理学的活性を有する該物質が、請求項6に定義されるものである、請求項16〜18のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項21】
リーシュマニア症の治療及び/又はその臨床的形態のいずれかであるリーシュマニア症を引き起こす生物に対する免疫応答を誘発するための、請求項16〜18のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項22】
リーシュマニア症を引き起こす生物に対する薬理学的活性を有する物質がアンフォテリシンBである、請求項21に記載の複合体又は方法。
【請求項23】
該免疫応答が病原生物に対する治療用及び/又は予防用ワクチン接種を含む、請求項16〜22のいずれかに記載の複合体又は方法。
【請求項24】
ガンの治療における使用のための複合体であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該ガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む、複合体。
【請求項25】
ガンをその治療の必要な被験体において治療する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該ガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の治療有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項26】
ガンに対する免疫応答を、その必要のある被験体において誘発する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該ガンに対する薬理学的活性を有する物質を含む複合体の有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項27】
該ガンに対する薬理学的活性を有する物質が細胞障害剤である、請求項24〜26のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項28】
該免疫応答が該ガンに対する治療用及び/又は予防用ワクチン接種を含む請求項24〜27のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項29】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマーと抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質を含む、該抗原又は免疫原に対する免疫応答を誘発するための複合体。
【請求項30】
抗原又は免疫原に対する免疫応答を被験体において誘発する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該抗原又は免疫原を含む複合体の有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項31】
該抗原又は免疫原がそれに対する防御免疫応答が必要である生物から直接的又は間接的に由来する、請求項10〜12のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項32】
該抗原又は免疫原が請求項8〜11のいずれか1つに定義される、請求項29又は30に記載の複合体又は方法。
【請求項33】
該免疫応答が該病原生物に対する治療用及び/又は予防用ワクチン接種を含む、請求項29〜32のいずれか1つに記載の複合体又は方法。
【請求項34】
該病原生物による感染の治療及び/又は該病原生物に対する免疫応答を誘発するための、病原生物に対する薬理学的活性を有する物質との使用のための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー。
【請求項35】
病原生物による感染をその治療の必要な被験体において治療する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該病原生物に対する薬理学的活性を有する物質の治療有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項36】
該病原生物に対する免疫応答をその必要のある被験体において誘発する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該病原生物に対する薬理学的活性を有する物質の有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項37】
該免疫応答が、該病原生物に対する治療用及び/又は予防用ワクチン接種を含む、請求項34に記載のポリマー又は請求項36記載の方法。
【請求項38】
該病原生物が請求項2〜5のいずれか1つに定義される、請求項34〜37のいずれか1つに記載のポリマー又は方法。
【請求項39】
該病原生物に対する薬理学的活性を有する物質が請求項6に定義される、請求項34〜38のいずれかに記載のポリマー又は方法。
【請求項40】
リーシュマニア症の治療及び/又はその臨床形態のいずれかであるリーシュマニア症を引き起こす生物に対する免疫応答を誘発するための、請求項34〜37のいずれかに記載のポリマー又は方法。
【請求項41】
リーシュマニア症を引き起こす該生物に対する薬理学的活性を有する物質がアンフォテリシンBである、請求項40に記載のポリマー又は方法。
【請求項42】
該抗原又は免疫原に対する免疫応答を誘発するための、抗原及び免疫原から選択される1つ以上の作用物質との使用のための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー。
【請求項43】
抗原又は免疫原に対する免疫応答をそのような治療の必要な被験体において誘発する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該抗原又は免疫原の治療有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項44】
該抗原又は免疫原が請求項31又は請求項32に定義される、請求項42又は43に記載のポリマー又は方法。
【請求項45】
該免疫応答が治療用及び/又は予防用ワクチン接種を含む、請求項42〜44のいずれか1つに記載のポリマー又は方法。
【請求項46】
該ガンの治療及び/又は該ガンに対する免疫応答を誘発するための、ガンに対する薬理学的活性を有する物質との使用のための、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー。
【請求項47】
ガンをその治療の必要な被験体において治療する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該ガンに対する薬理学的活性を有する物質の治療有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項48】
ガンに対する免疫応答をその必要のある被験体において誘発する方法であって、アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーと該ガンに対する薬理学的活性を有する物質の有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項49】
該免疫応答が治療用及び/又は予防用ワクチン接種を含む、請求項46又は請求項48に記載のポリマー。
【請求項50】
該ポリマー及び他の物質が一緒に又は別個に投与される、請求項34〜49のいずれか1つに記載のポリマー又は方法。
【請求項51】
該ポリマー及び該薬理学的活性物質が別個に投与される場合、それらが実質的に同時に又は一方が他方の前に投与される、請求項50に記載のポリマー又は方法。
【請求項52】
ワクチンの製造における免疫増強アジュバントとしての使用のためのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー。
【請求項53】
それに対して免疫応答が誘発される抗原又は免疫原を含むワクチンの製造における免疫増強アジュバントとしての使用のためのアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマー。
【請求項54】
ワクチン製造のための方法における、免疫増強アジュバントとしてアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーの使用を含む改良。
【請求項55】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーが、1.7以下の多分散性を有する、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法又はポリマー。
【請求項56】
該ポリマーが1.4未満、例えば1.2未満の多分散性を有する、請求項55に記載の複合体、薬学的製剤、方法又はポリマー。
【請求項57】
血液中に存在する場合に該ポリマーが腎臓を通過する間及び後に実質的に循環血液中に残るような分子量を有する、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法又はポリマー。
【請求項58】
該ポリマーが例えば100.000以下、例えば100,00未満、例えば80,000以下、例えば75,000以下、例えば65,000以下、例えば55,000以下、例えば45,000以下の分子量を有する、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法又はポリマー。
【請求項59】
該ポリマーが4,000以上、例えば約5,000以上、例えば約10,000以上、例えば約20,000以上、例えば約30,000以上、例えば約40,000以上の分子量を有する、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項60】
該ポリマーが、80,000〜4,000、75,000〜5,000、65,000〜10,000、55,000〜10,000、45,000〜10,000、50,000〜4,000、40,000〜25,000又は45,000〜10,000の範囲内の分子量を有する、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項61】
該ポリマーが、ポリマー前駆体の加水分解を含むプロセスによって作製される、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項62】
アクリル酸又はその塩由来のユニットを含むポリマーが、アクリル酸由来のユニット中のアクリレートカルボン酸の水素原子の代わりに加水分解によって切断されて酸を与え得る基を有する対応する前駆体ポリマーの加水分解によって作製される、請求項61に記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項63】
加水分解によって切断され得る基が、例えば適切な脱離基、例えば電子吸引基、例えばアシレーティング基であり、これは好ましくは一般的にN−スクシンイミジル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、パラニトロフェニル、ジニトロフェニル、N−フタルイミド、N−ボルニル、シアノメチル、ピリジル、トリクロロトリアジン、5−クロロキノリノ、及びイミダゾリル基から成る群から選択され、好ましくは、N−スクシンイミジル又はイミダゾリル基、そして特にN−スクシンイミジル基であるカルボキシレート活性化である、請求項62に記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項64】
加水分解が塩基性薬剤、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基、例えばナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、又はリチウム塩基であり、このような塩基は、例えば、水酸化物、炭酸塩又は炭酸水素塩、例えば水酸化ナトリウムであり得る、請求項61〜63のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項65】
該ポリマーがポリ(メタクリル酸)又はその塩である、前記請求項のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項66】
該ポリ(N−メタクリルオキシスクシンイミド)(PMOSu)が銅媒介原子移動ラジカル重合法を用いてメタクリルオキシスクシンイミドの均質重合によって作製される、請求項65に記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項67】
該ポリマーが以下のユニット(I):
【化1】
(式中、Rは水素及びC1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C7〜C18アラルキル、C7〜C18アルカリール、C6〜C18アリール、カルボン酸、C2〜C18アルコキシカルボニル、C2〜C18アルカミノカルボニルから成る群から選択される又は炭素バックボーン中のヘテロ原子で置換された、又は炭素バックボーンに結合したC1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C7〜18アラルキル、C7〜C18アルカリール、C6〜C18アリール、カルボン酸、C2〜C18アルコキシカルボニル、C2〜C18アルカミノカルボニルのいずれかであり、R1は、水素とC1〜C6アルキル基から成る群から選択される)である、またはユニット(I)を含む;及びその塩、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩)又はアンモニウム塩)
、或いは該ポリマーが以下のユニット(II):
【化2】
(式中、R、R1及びR2は、上記のように定義される;R3は、C1〜C18アルキレン、C2〜C18アルケニレン、C7〜C18アラルキレン、C7〜C18アルカリーレン及びC6〜C18アリーレンから成る群から選択される;Lはブロックを連結する2価のリンカーである;m及びnは各々1又は1よりも大きい整数である。)
である、又はユニット(II)を含む、請求項1〜64のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項68】
該ポリマーが以下ユニット(III)又は(IV)
【化3】
【化4】
(式中、R、R1、R2及びR3、L、m及びnは上記に定義され、R4、R5及びR6は、独立して各々R、R1及びR2と同一の基から選択される;Qはポリマーを作製するために使用される条件下で切断されない、又は実質的に切断されない基を表す;pは、1又は1よりも大きい整数を表す。所望される場合、Qはターゲティング基であり得、即ち該ポリマーを細胞タイプ(例えば、マクロファージ)又は器官(例えば肝臓)に標的化する基であり得る。)
である、又はユニット(III)又は(IV)を含む、請求項1〜64のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項69】
該ポリマーが原子媒介原子移動ラジカル重合法、例えば、銅媒介原子移動ラジカル重合法を用いてスクシンイミド前駆体の均質重合によって作製される、請求項1〜68のいずれか1つに記載の複合体、薬学的製剤、方法、又はポリマー。
【請求項70】
該ポリマーを形成するために、ポリマー前駆体を加水分解することを含む方法(ここで、該加水分解は前記請求項のいずれか1つに定義される成分(i)、(ii)又は(iii)の存在下で行われる)によって作製される、前記請求項のいずれかに記載の複合体。
【請求項71】
該加水分解が塩基性薬剤、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基、例えばナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、又はリチウム塩基を用いて行われ、このような塩基は、例えば、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、例えば、水酸化ナトリウムであり得る、請求項70に記載の複合体。。
【請求項72】
リーシュマニア症に対する薬理学的活性を有する物質とアクリル酸又はその塩由来のユニットを含む狭い分子量分布のポリマーを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項73】
該薬理学的活性物質がアンフォテリシンBである、請求項72に記載の複合体。
【請求項74】
該ポリマーが請求項55〜71のいずれか1つに定義されるものである、請求項72又は73に記載の複合体。
【請求項75】
請求項72〜74のいずれか1つに記載の複合体を薬学的に好適なキャリア及び必要に応じて送達システムアジュバントとの混合で含む薬学的製剤。
【請求項76】
その臨床形態のいずれかでのリーシュマニア症の治療における使用のための、請求項72〜74のいずれか1つに記載の複合体又は請求項75に記載の薬学的製剤。
【請求項77】
リーシュマニア症をその治療の必要な被験体において治療する方法であって、請求項72〜74のいずれか1つに記載の複合体又は請求項75に記載の薬学的製剤の治療有効量を該被験体に投与することを含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
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【図33】
【公表番号】特表2007−518732(P2007−518732A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548383(P2006−548383)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000039
【国際公開番号】WO2005/065712
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(503332293)ポリセリックス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000039
【国際公開番号】WO2005/065712
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(503332293)ポリセリックス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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