説明

アデノシン受容体モジュレーターとしてのベンゾチオフェン

本発明は、一般式(I)〔式中、Rは、場合によってはハロゲンにより置換されているフェニルであるか、または場合によっては低級アルキルにより置換されているピリジン3−もしくは4−イルであるか、またはNR12(ここで、R1およびR2は、それらが結合するN原子とともに、場合によっては−(CH2n−ヒドロキシ、低級アルキル、または低級アルコキシにより置換されている、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペリジニル、またはピペラジニルからなる群から選択される、複素環を形成する)であり、nは0、1、または2である〕で示される化合物、及びその薬学的に許容されうる酸付加塩に関する。一般式(I)の化合物は、A2A−レセプターに対して良好な親和性を有することが示され、それゆえこのレセプターに関連する疾患の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式
【0002】
【化7】

【0003】
(式中、Rは、場合によってはハロゲンにより置換されているフェニルであるか、または場合によっては低級アルキルにより置換されているピリジン3−もしくは4−イルであるか、または−NR12(ここで、R1およびR2は、それらが結合するN原子とともに、場合によっては−(CH2n−ヒドロキシ、低級アルキル、もしくは低級アルコキシにより置換されている、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペリジニル、もしくはピペラジニルからなる群から選択される、複素環を形成する)であり、nは0、1、または2である)の化合物、および薬学的に許容されうるその酸付加塩に関する。
【0004】
一般式Iの化合物がアデノシン受容体リガンドであることは驚きをもって理解されている。特に、本発明の化合物は、A2A−受容体に対する良好な親和性、ならびにA1−およびA3受容体に対する高い選択性を有している。
【0005】
アデノシンは、特定の細胞表面受容体と相互作用することによって、幅広い生理学的機能を調節する。アデノシン受容体の創薬ターゲットとしての潜在性が最初に検討されたのは1982年であった。アデノシンは、構造的および代謝的に、生理活性ヌクレオチドアデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)、および環状アデノシン一リン酸(cAMP)に;生化学メチル化剤であるS−アデノシル−L−メチオーネ(SAM)に;ならびに構造的に補酵素NAD、FAD、および補酵素Aに;ならびにRNAに関連する。アデノシンおよびこれらの関連化合物はともに、細胞代謝の多くの面の制御、および異なる中枢神経系活動の調節において重要である
【0006】
アデノシンの受容体は、A1、A2A、A2B、およびA3受容体に分類され、Gタンパク質共役型受容体の族に属している。アデノシンによるアデノシン受容体の活性化により、情報伝達機構が起動する。これらのメカニズムは、Gタンパク質と結合した受容体に依存する。各アデノシン受容体のサブタイプは従来、セカンドメッセンジャーとしてcAMPを利用するアデニル酸シクラーゼのエフェクターシステムによって特徴化されてきた。Giタンパク質と共役したA1およびA3受容体は、アデニル酸シクラーゼを阻害し、細胞のcAMPレベルを減少させるのに対し、A2AおよびA2B受容体はG5タンパク質と共役し、アデニル酸シクラーゼを活性化させ、細胞のcAMPレベルを増加させる。A1受容体システムには、ホスホリパーゼCの活性化、ならびにカリウムおよびカルシウムの両イオンチャネルの調節が含まれることは知られている。A3サブタイプは、そのアデニル酸シクラーゼとの関係に加えて、さらにホスホリパーゼCを刺激し、それによりカルシウムイオンチャネルを活性化させる。
【0007】
1受容体(326−328個のアミノ酸)は、哺乳類の中では、多様な種(イヌ科動物、ヒト、ラット、イヌ、ニワトリのひな、ウシ、モルモット)から、90から95%の配列一致をもってクローニングされる。A2A受容体(409−412個のアミノ酸)は、イヌ科動物、ラット、ヒト、モルモット、およびマウスからクローニングされる。A2B受容体(332個のアミノ酸)はヒトおよびマウスからクローニングされたが、ヒトA1およびA2A受容体とヒトA2B受容体は45%の相同性を有する。A3受容体(317−320個のアミノ酸)はヒト、ラット、イヌ、ウサギ、およびヒツジからクローン化される。
【0008】
1およびA2A受容体のサブタイプは、アデノシンのエネルギー供給の制御において、代償的な役割を演じることが意図されている。ATPの代謝生成物であるアデノシンは細胞から拡散し、局所的に作用してアデノシン受容体を活性化させ、酸素需要を減少させる(A1)か、あるいは酸素供給を増加させ(A2A)、その結果組織中のエネルギー供給および需要の均衡を回復する。両サブタイプの作用は組織に対する利用可能な酸素量を増加させること、および短期間の酸素の不均衡により引き起こされる細胞に対する損傷を防ぐことである。内因性アデノシンの重要な機能の一つは、低酸素症、虚血状態、低血圧症、および発作状態などの外傷期間中の損傷を防ぐことである
【0009】
さらに、ラットA3受容体を発現する肥満細胞に対するアデノシン受容体アゴニストの結合によって、イノシトール三リン酸および細胞内カルシウム濃度を増加し、それにより抗原誘発炎症媒介物質分泌を増強することが知られている。したがって、A3受容体は、喘息の発作およびその他のアレルギー反応を媒介する役割を演じる。
【0010】
アデノシンは神経調節物質であり、生理学的脳機能の多くの面を調節する。エネルギー代謝と神経活動の間の中枢連結である内因性アデノシンは、行動状態および(病理)生理学的状況に応じて変化する。エネルギー需要の増加、および利用可能なエネルギーの減少という状況下(たとえば、低酸素症、低血糖症、および/または過剰な神経活動)において、アデノシンは強力な保護フィードバックメカニズムを与える。アデノシン受容体との相互作用は、てんかん、睡眠、運動障害(パーキンソンまたはハンチントン病)、アルツハイマー病、うつ病、精神分裂病または耽溺などの多くの神経系および精神医学疾患における治療的措置のための有望なターゲットの実例となる。神経伝達物質の放出の増加は、低酸素症、虚血状態、および発作などの外傷を伴う。これらの神経伝達物質は、脳障害または個体の死を引き起こす神経変性および神経死に対して、最終的にはその原因となる。アデノシンの中枢抑制効果を模倣するアデノシンA1アゴニストは、したがって神経保護薬として有用となりうる。アデノシンは、興奮神経からグルタミン酸の放出を抑制し、神経発火を抑制し、内因性痙攣防止薬として意図されてきた。したがって、アデノシンアゴニストはてんかん防止薬として使用してもよい。アデノシンアンタゴニストはCNSの活動を刺激し、向知性薬として効果的であることが証明されてきた。選択的A2aアンタゴニストは、たとえばアルツハイマー病などの多様な形態の痴呆の治療および脳卒中などの神経変性障害の治療において治療可能性を有している。アデノシンA2a受容体アンタゴニストは、綿状体のGABA作動性神経の活動を調節し、なめらかでよく調整された運動を規制し、パーキンソン病の症状に対する治療の可能性を与える。アデノシンはさらに、鎮静、催眠、精神分裂病、不安、疼痛、呼吸、うつ病、および薬物耽溺(アンフェタミン、コカイン、オピオイド、エタノール、ニコチン、カンナビノイド)に関係する多くの生理学的過程にも関与する。したがって、アデノシン受容体に作用する薬剤は、鎮静剤、筋肉弛緩剤、抗精神病薬、抗不安薬、鎮痛剤、呼吸促進剤、抗うつ剤として、ならびに薬物乱用を治療する上で、治療可能性を有している。これらの薬剤は、ADHD(注意欠陥多動性障害)の治療にも使用しうる。
【0011】
心臓血管系におけるアデノシンの重要な役割の一つは心臓保護薬としてである。内因性アデノシンの濃度は、虚血状態および低酸素症に応答して増加し、外傷の間およびその後の心臓組織を保護する(プレコンディショニング)。A1受容体に作用することによって、アデノシンA1アゴニストは、心筋の虚血状態および再潅流により引き起こされる損傷から保護することが可能である。アドレナリン作用に対するA2a受容体の調節機能の影響は、冠状動脈疾病および心不全などの様々な障害に関与する。A2aアンタゴニストは、急性心筋虚血状態期間などの抗アドレナリン作動性反応の増強が望まれる状況においては、治癒上の利点となりうる。A2a受容体に対する選択的アンタゴニストは、上室性不整脈を終結させる際のアデノシンの有効性を向上させることも可能である。
【0012】
アデノシンは、レニンの放出、糸球体ろ過率、および腎血流量などの腎臓機能の多くの面を調節する。アデノシンの腎臓への影響と拮抗する化合物は、腎臓保護剤としての可能性を有している。さらに、アデノシンA3および/またはA2Bアンタゴニストは、喘息およびその他のアレルギー反応の処置、あるいは/ならびに糖尿病および肥満の治療において有用となりうる。
【0013】
多くの文書がアデノシン受容体についての現在の知識について記述しているが、後述の出版物がその例である。
【0014】
【表1】

【0015】
本発明の目的は、式Iの化合物自体、アデノシンA2受容体に関連する疾病の処置用医薬の製造のための式Iの化合物およびその製薬上許容されうる塩の使用、その製造、本発明の化合物を基礎とした医薬およびその製造、ならびにアデノシンシステムの調節を基礎とする病気、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、神経保護、精神分裂病、不安、疼痛、呼吸障害、うつ病、薬物耽溺、例えば、アンフェタミン、コカイン、オピオイド、エタノール、ニコチン、カンナビノイド、または喘息、アレルギー反応、低酸素症、虚血状態、発作、および物質乱用の制御または防止の際の式Iの化合物の使用に関する。さらに、本発明の化合物は、鎮静剤、筋肉弛緩剤、抗精神病薬、抗てんかん剤、抗痙攣剤、ならびに冠状動脈疾患および心不全などの障害のための心臓保護薬として有用となりうる。本発明のもっとも好ましい適応症は、A2A受容体アンタゴニスト
活性を基礎とするものであり、また中枢神経系の機能障害、たとえば、アルツハイマー病、ある種のうつ病、薬物耽溺、神経保護、およびパーキンソン病、ならびにADHDの治療または予防を含むものである。
【0016】
本明細書において使用される用語である「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含有する飽和直鎖状または分岐鎖状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、2−ブチル、t−ブチルなどを表している。好ましい低級アルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する基である。
【0017】
「ハロゲン」という用語は、塩素、ヨウ素、フッ素、および臭素を意味する。
【0018】
「低級アルコキシ」という用語は、アルキル残基が上記のように定義されていて、かつ酸素原子を介して結合している基を意味している。
【0019】
「薬学的に許容されうる酸付加塩」という用語は、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、P−トルエンスルホン酸などの無機酸および有機酸との塩を包含する。
【0020】
本出願の好ましい化合物は、Rがチオモルホリニルである、式Iの化合物、たとえば次の化合物である。
チオモルホリン−4−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド。
【0021】
さらに好ましいのは、Rがモルホルニルである式Iの化合物、たとえば次の化合物である。
モルホリン−4−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド。
【0022】
さらに好ましいのは、Rが、場合によってはヒドロキシ、メトキシ、または−CH2OHにより置換されているピペリジニルである化合物、たとえば次の化合物である。
ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド、
4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド、
4−メトキシ−ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド、または
4−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド。
【0023】
さらに好ましいのは、Rがメチルによって置換されているピペラジニルである化合物、たとえば次の化合物である。
4−メチル−ピペラジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド。
【0024】
さらに好ましい化合物群は、Rが場合によってはハロゲンによって置換されているフェニルであり、または場合によっては低級アルキルによって置換されているピリジン3−もしくは4−イルである化合物、たとえば次の化合物である。
N−(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−6−メチル−ニコチンアミド、
N−(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−2−メチル−イソニコチンアミド、または
4−フルオロ−N−(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−ベンズアミド。
【0025】
本発明の式Iの化合物及びその薬学的に許容されうる塩は、当業界で既知の方法により、たとえば下記の方法であって、
a)式
【0026】
【化8】

【0027】
の化合物を式
【0028】
【化9】

【0029】
の化合物と反応させ、式
【0030】
【化10】

【0031】
の化合物とすること(式中、Rは場合によっては、ハロゲンにより置換されているフェニルであるか、または場合によっては低級アルキルにより置換されているピリジン3−もしくは4−イルである)、または
(b)式
【0032】
【化11】

【0033】
の化合物を式HNR12の化合物と反応させ、式
【0034】
【化12】

【0035】
の化合物とすること(式中、R1およびR2は、それらが結合するN原子とともに、場合によっては−(CH2n−ヒドロキシ、低級アルキル、もしくは低級アルコキシにより置換されている、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペリジニル、もしくはピペラジニルからなる群から選択される、複素環を形成する)と、
所望であれば、得られる化合物を薬学的に許容されうる酸付加塩に転換することとを含む方法により調製することができる。
【0036】
式Iの化合物は、変形方法a)およびb)ならびに後述のスキーム1に従って調製してもよい。さらに10個の実施例をより詳細に説明する。
【0037】
【化13】

【0038】
式中、R、R1、およびR2は上記定義された通りであり、
DPPAはアジ化ジフェニルホスホリル、
DMFはジメチルホルムアミドであり
DMAPは4−ジメチルアミノピリジンである。
【0039】
スキーム1に従って、式IAおよび式IBの化合物を後述のとおり調製する。
【0040】
4−メトキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(7)を、次の文献に従って、二工程で、3−フルオロアニシジンから調製する。
Tetrahedron Lett. (1992), 33(49), 7499-7502.
【0041】
7−ブロモ−4−メトキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(6)を、文献(Eur. Pat. Appl. (1993), 72pp. EP 568289, CAN 120: 298461)に従って、4−メトキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−カルボン酸メチルエステルを、0〜20℃でクロロホルム中の臭素で処理することにより調製する。
【0042】
式(4)の化合物、4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−カルボン酸を次のとおり調製する。7−ブロモ−4−メトキシーベンゾ〔b〕チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(6)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、およびK2CO3の懸濁液を、20℃のジオキサン中のアルゴン下で、約60分間撹拌する。その後、フェニルボロン酸およびNa2CO3を添加し、その混合物を一晩かけて約100℃まで熱する。冷却、ろ過、および塩酸によるpH1までの酸性化の後、式(4)の生成物を沈殿させ、その不純物をろ過して取り除き、真空で乾燥させる。
【0043】
さらに、20℃のアルゴン雰囲気下で、4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−カルボン酸(4)を少量ずつ塩化チオニルの撹拌溶液に添加する。反応を還流下で1時間加熱し、その後冷却し、蒸発乾固させる。粗残渣をその後小容量のアセトン中で懸濁し、0℃でアジ化ナトリウムを添加し、1時間撹拌する。これに続き、反応を氷に注ぎ、エーテルにより2度抽出し、MgSO4により乾燥させ、ろ過し、溶媒を蒸発させる。アジ化アシルをその後、1、2−ジクロロエタン中に取り、ベンジルアルコールを添加し、その混合物を一晩かけて、85℃まで加熱した。冷却後、反応混合物を蒸発乾固させ、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。これによって、純粋な(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(5)を得た。
【0044】
式(2)の化合物、(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミンを下記のように調製する。
【0045】
エチレングリコールおよびジオキサン中の(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(5)の撹拌溶液をNaOHと一緒に還流下で約4時間加熱した。冷却および水の添加後、混合物をEtOAcにより抽出し、合わせた抽出物をブラインにより洗浄し、Na2SO4により乾燥させ、ろ過し、蒸発させる。その後、粗残渣をシリカゲルでのクロマトグラフィーにかける。
【0046】
式IAの化合物の調製
THFおよびジエチルイソプロピルアミン中の(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミン(2)の溶液を、アルゴン雰囲気下約−10℃で、一緒に撹拌する。これに、ゆっくりとジクロロメタン中の式RC(O)Cl(式中、Rは場合によってはハロゲンにより置換されているフェニルであるか、または場合によっては低級アルキルにより置換されているピリジン3−もしくは4−イルである)の化合物を添加し、その混合物を一晩かけて20℃まで撹拌する。反応を再び0℃まで冷却し、その後メタノールを添加し、その混合物を30分間撹拌して20℃とする。その後、混合物を蒸発乾固させ、シリカゲルでのクロマトグラフィーにかける。
【0047】
式IBの化合物の調製
スキームIに従って、式IBの化合物を次の方法により調製する。ジオキサン中の(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(5)の撹拌溶液を、式HNR12(式中、R1およびR2は、それらが結合するN原子とともに、場合によっては−(CH2n−ヒドロキシ、低級アルキル、もしくは低級アルコキシにより置換されている、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペリジニル、もしくはピペラジニルからなる群から選択される、複素環を形成する)の化合物と一緒に、アルゴン雰囲気下の還流で約68時間加熱した。反応の冷却後、溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルでのクロマトグラフィーにかける。その後、分留生成物を合わせ、蒸発させ真空下で乾燥させる。そうして、式IBの化合物を得る。
【0048】
化合物の単離と精製
本明細書中に記載の化合物および中間体の単離と精製を、所望であれば、任意の適切な分離または精製手順、たとえばろ過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、厚層クロマトグラフィー、分取用低圧もしくは高圧液体クロマトグラフィー、またはこれらの手順の組み合わせなどにより、達成できる。適切な分離および単離手順の具体的な説明として、下記の調製および実施例を参照できる。しかし、もちろん、その他の等価の分離および単離手順も使用可能である。
【0049】
式Iの化合物の塩
式Iの化合物を、たとえば、残基Rが脂肪族化合物または芳香族アミン基などの塩基性基を含有する場合、塩基性とすることができる。その場合、式Iの化合物を対応する酸付加塩に転換することができる。
【0050】
転換は、少なくとも適切な酸、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、および有機酸、たとえば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などの化学量論的量により処理することにより達成する。典型的には、遊離塩基を、ジエチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、エタノールもしくはメタノールなどの不活性有機溶媒中に溶解し、そして酸を同じ溶媒に添加する。温度は0〜50℃の間に維持する。結果として得られる塩は自然に沈殿し、あるいはより少量の極性溶媒で溶液中に生じさせてもよい。
【0051】
式Iの塩基性化合物の酸付加塩は、少なくとも適切な塩、たとえば、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、アンモニアなどの化学量論的当量により処理することにより、対応する遊離塩基に転換してもよい。
【0052】
式Iの化合物およびその薬学的に使用可能な付加塩は、有益な薬理学的特質を有している。とりわけ、本発明の化合物はアデノシン受容体リガンドであり、アデノシンA2A受容体に対する高い親和性とA1およびA3受容体に対する良好な選択性を有していることが見いだされている。化合物は下記の試験に従って調査した。
【0053】
ヒトアデノシンA2A受容体
ヒトアデノシンA2A受容体を、セムリキ森林ウィルス発現系を使用して、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞内に、組み替え体として発現させた。細胞を採取し、遠心分離によって2度洗浄し、ホモジネートし、再度遠心分離によって洗浄した。最終的に洗浄した細胞膜ペレットを、NaCl 120mM、KCL5mM、CaCl2 2mMおよびMgCl210mMを含有するTris(50mM)緩衝液(pH7.4)(緩衝液A)中に懸濁させた。〔3H〕−SCH−58261(Dionisotti et al., 1997, Br J Pharmacol 121,353; 1nM)結合アッセイを、緩衝液A200μlの最終容量中の細胞膜タンパク質2.5μg、Ysi−poly−1−lysine SPAビーズ0.5mg、およびアデノシンデアミナーゼ0.1Uの存在下で、96穴プレート内で行われた。非特異的結合は、キサンチンアミンコンジナー(XAC; 2μM)を使用して測定した。化合物は、10μM〜0.3nMまでの10個の濃度で試験した。全てのアッセイを2重に行い、少なくとも2回繰り返した。アッセイプレートを遠心分離に先立って室温で1時間培養し、その後リガンドとの結合を、Packard Topcountのシンチレーション計数器を使用して測定した。IC50値を、非直線状曲線適応プログラムを使用して、Ki値をCheng−Prussof式を使用して計算した。
【0054】
2A受容体に対する良好な親和性を下記の表において示す。好ましい化合物は、pKi>6.4を示している。
【0055】
【表2】

【0056】
式Iの化合物および式Iの化合物の薬学的に許容されうる塩は、医薬、たとえば医薬製剤の形態で使用することができる。医薬製剤は、たとえば、錠剤、コーティング錠剤、糖衣錠、硬および軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤、または懸濁剤の形態で経口投与することができる。しかし、投与は、たとえば坐剤形態で直腸から、たとえば注射液の形態で非経口的に行うこともできる。
【0057】
式Iの化合物は、薬学的に不活性の無機または有機担体により処理し、医薬製剤を製造することができる。乳糖、コーンスターチまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩などは、たとえば錠剤、コーティング錠剤、糖衣錠、硬ゼラチンカプセル剤などの担体として使用することができる。軟ゼラチンカプセル剤に適した担体としては、たとえば植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオールなどがある。しかし、活性物質の性質によっては、軟ゼラチンカプセル剤の場合、担体は通常不要である。液剤およびシロップの製造に適した担体としては、たとえば水、ポリオール、グリセロール、植物油などがある。坐剤に適した担体としては、天然油、硬化油、ワックス、脂肪、半液体および液体ポリオールなどがある。
【0058】
さらに、医薬製剤は、保存料、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香料、浸透圧を変化させる塩、緩衝液、マスキング剤、酸化防止剤を含有できる。これらはさらに、その他の治療上有益な物質を含有できる。
【0059】
式Iの化合物またはその薬学的に許容されうる塩と、治療上不活性の担体とを含有する医薬も本発明の目的であり、同様にその製造方法(これは、式Iの一つ以上の化合物および/または薬学的に許容されうる酸付加塩、ならびに所望であればその他の治療上有用な一つ以上の物質を、治療上不活性な一つ以上の担体と一緒に、ガレヌス製剤にすることを含む)も本発明の目的である。
【0060】
本発明の方法によると、式Iの化合物ならびに薬学的に許容されうる塩は、アデノシン受容体のアンタゴニストの活動に基づく疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、神経保護、精神分裂病、不安、疼痛、呼吸障害、うつ病、喘息、アレルギー反応、低酸素症、虚血状態、発作、および物質乱用などの制御または防止において有用である。さらに、本発明の化合物は、鎮静剤、筋肉弛緩剤、抗精神病薬、抗てんかん薬、抗痙攣薬、心臓保護薬として、ならびに対応する医薬の製造のために有用となりうる。
【0061】
本発明の最も好ましい適応症は、中枢神経系障害、たとえばある種の抑うつ性障害、神経保護、およびパーキンソン病の治療または予防などを含むものである。
【0062】
投与量は広い範囲で変化し、もちろん各々の個々の症例における個人の要件に応じて調節することが必要である。経口投与の場合、成人に対する投与量は、一般式Iの化合物またはその薬学的に許容されうる塩の対応量の一日当たり約0.01〜1000mgの間で変更できる。一日の投与量は、単回用量または分割服用量で投与してもよく、さらに、その上限を超えることも、それが示されている場合は可能である。
【0063】
【表3】

【0064】
製造手順
1.項目1、2、3および4を混合し、精製水で造粒する。
2.顆粒を50℃で乾燥させる。
3.顆粒を適切な粉末装置に通す。
4.項目5を添加して、3分間混合し、適切な圧縮機で圧縮する。
【0065】
【表4】

【0066】
製造手順
1.項目1、2および3を適切なミキサーで30分間混合する。
2.項目4および5を添加して、3分間混合する。
3.適切なカプセルに充填する。
【0067】
後述の調製および実施例は本発明を説明するが、その範囲を限定することを意図するものではない。
【0068】
実施例1
チオモルホリン−4−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド
ジオキサン(5ml)中の(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(200mg、0.513mmol)の撹拌溶液を、チオモルホリン(10eq.、5.13mmol)と一緒に、アルゴン下の還流で68時間加熱した。反応の冷却後、溶媒を蒸発させ、残渣をヘプタン/EtOAc(1:2)で溶離するシリカゲルでのクロマトグラフィーにより分離した。その後、分留生成物を合わせて、蒸発させ60℃の真空下で乾燥し、淡褐色固体MS:m/e=383.2(M−H)である、標記の純粋な生成物(94mg、収率47%)を得た。
【0069】
実施例2
モルホリン−4−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド
上記実施例1に記載した方法により、モルホリンを(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−カルバミン酸ベンジルエステルと反応させることにより、淡褐色固体(収率58%)の標記化合物MS:m/e=369.3(M+H+)を得た。
【0070】
実施例3
ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド
上記実施例1に記載した方法により、ピペリジンを(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−カルバミン酸ベンジルエステルと反応させることにより、淡褐色固体(収率62%)の標記化合物MS:m/e=365.1(M−H)を得た。
【0071】
実施例4
4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド
上記実施例1に記載した方法により、4−ヒドロキシ−ピペリジンを(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−カルバミン酸ベンジルエステルと反応させることにより、淡褐色固体(収率54%)の標記化合物MS:m/e=381.2(M−H)を得た。
【0072】
実施例5
4−メトキシ−ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド
上記実施例1に記載した方法により、4−メトキシ−ピペリジンを(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−カルバミン酸ベンジルエステルと反応させることにより、淡褐色固体(収率54%)の標記化合物MS:m/e=395.3(M−H)を得た。
【0073】
実施例6
4−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド
上記実施例1に記載した方法により、4−ピペリジン−メチルアルコールを(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−カルバミン酸ベンジルエステルと反応させることにより、淡黄色固体(収率53%)の標記化合物MS:m/e=395.2(M−H)を得た。
【0074】
実施例7
4−メチル−ピペラジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド
上記実施例1に記載した方法により、N−メチル−ピペリジンを(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−カルバミン酸ベンジルエステルと反応させることにより、淡黄色泡状体(収率46%)の標記化合物MS:m/e=380.2(M−H)を得た。
【0075】
実施例8
N−(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−6−メチル−ニコチンアミド
THF(8ml)およびジエチルイソプロピルアミン(0.147ml、2.2eq.)中の(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミン(100mg、0.392mmol)の溶液をともに、アルゴン雰囲気下、−10℃で撹拌した。これに、ゆっくりとジクロロメタン(5ml)中の6−メチル−塩化ニコチニル塩酸塩(83mg、0.431mmol、1.1eq)を添加し、その混合物を一晩かけて20℃まで撹拌した。反応を再び0℃まで冷却し、その後メタノールを添加し(1.2ml)、その混合物を30分間撹拌して20℃とした。その後、混合物を蒸発乾固させ、ヘプタン/EtOAcのグラジエント(1:1〜1:8)で溶離するシリカゲルでのクロマトグラフィーにより分離した。その後、分留生成物を貯留し、蒸発させ、黄色固体MS:m/e=375.4(M+H+)である、標記化合物(83mg、収率57%)を得た。
【0076】
実施例9
N−(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−2−メチル−イソニコチンアミド
上記実施例8に記載した方法により、2−メチル−イソニコチニルクロリド塩酸塩を(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミンと反応させることにより、淡黄色固体(収率27%)の標記化合物MS:m/e=375.4(M+H+)を得た。
【0077】
実施例10
4−フルオロ−N−(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−ベンズアミド
THF(5ml)中の(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミン(100mg、392mmol)の溶液をトリエチルアミン(0.049ml、0.9eq.)およびDMAP(5mg、0.1eq.)とともに、アルゴン雰囲気下、0℃で撹拌した。これに、ゆっくりと4−フルオロベンゾイルクロリド(0.038ml、314mmol、0.8eq)を添加して、その混合物を2時間かけて20℃まで撹拌した。その後、混合物を蒸発乾固させ、ヘプタン/EtOAcのグラジエント(6:1〜2:1)で溶離するシリカゲルでのクロマトグラフィーにより分離した。分留生成物を貯留し、蒸発させ、黄色固体MS:m/e=378.3(M+H+)である、標記化合物(74mg、収率50%)を得た。
【0078】
中間体
実施例11
(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミン
エチレングリコールおよびジオキサン中の(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル(1.7g、4.36mmol)の撹拌溶液を2N NaOH(20ml、9.1eq)とともに、還流下で4時間加熱した。冷却および水(20ml)の添加後、混合物をEtOAc(3×25ml)で抽出し、合わせた抽出物をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させた。その後、粗残渣を、MeOH中のジクロロメタン/2N NH3(99:1)で溶離するシリカゲルでのクロマトグラフィーにより分離した。これにより、赤色ゴム状物MS:m/e=256.2(M+)である、標記化合物(668mg、収率60%)を得た。
【0079】
実施例12
(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−カルバミン酸ベンジルエステル
20℃のアルゴン雰囲気下で、4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−カルボン酸(300mg、1.06mmol)を、少量ずつ塩化チオニルの撹拌溶液(1.3ml)に添加した。反応を還流下で1時間加熱し、その後冷却し、蒸発乾固させた。未精製残渣をその後、小容量のアセトン中で懸濁させ、アジ化ナトリウム(75mg、1.15mmol、1.1eq.)を0℃で添加し、1時間撹拌した。これに続き、反応を氷に注ぎ、エーテルにより2度抽出し、MgSO4により乾燥させ、ろ過し、溶媒を蒸発させた。アジ化アシルをその後、1、2−ジクロロエタン中に取り、ベンジルアルコールを添加し、その混合物を一晩かけて、85℃に加熱した。冷却後、反応混合物を蒸発乾固させ、ジオクロロメタン/ヘプタン(3:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。これによって、黄色油状物MS:m/e=390.3(M+H+)である、純粋な標記化合物(332mg、収率81%)を得た。
【0080】
実施例13
4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−カルボン酸
20℃のジオキサン(40ml)中、アルゴン雰囲気下で、7−ブロモ−4−メトキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(5g、16.6mmol)をビス(トリフェニルフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(350mg、0.496mmol)およびK2CO3(4.88g、49.8mmol、3eq.)とともに、60分間撹拌した。その後、フェニルボロン酸(2.16g、17.4mmol、1.05eq.)および2N NaCO3(80ml)を添加して、その混合物を一晩かけて100℃まで加熱した。冷却、ろ過、およびc HCl水溶液によるpH1への酸性化後、生成物を沈殿させ、その不純物をろ過して取り除き、50℃の真空下で乾燥させ、淡褐色固体、MS m/z=282.9(M−H)である、標記化合物(3.16g、収率67%)を得た。
【0081】
実施例14
7−ブロモ−4−メトキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル
文献に従って、4−メトキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−カルボン酸メチルエステルを、0〜20℃でクロロホルム中の臭素によって処理することにより、オフホワイト色固体(m.p.112℃)である、標記化合物を調製した。
文献:Bridges, Alexander; Schwartz, C.Eric; Littlefield, Bruce A.Eur. Pat. Appl. (1993), 72pp. EP 568289, CAN 120: 298461.
【0082】
実施例15
4−メトキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル
文献に従って、二工程で、3−フルオロアニシジンから、オフホワイト色固体(m.p.74℃)である、標記化合物を調製した。
文献:Bridges, Alexander J.; Lee, Arthur; Maduakor, Emmanuel C.; Schwartz, C.Eric; Tetrahedron Lett. (1992), 33(49), 7499-7502.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】


〔式中、Rは、場合によってはハロゲンにより置換されているフェニルであるか、または場合によっては低級アルキルにより置換されているピリジン3−もしくは4−イルであるか、または−NR12(ここで、R1およびR2は、それらが結合するN原子とともに、場合によっては−(CH2n−ヒドロキシ、低級アルキル、または低級アルコキシにより置換されている、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペリジニル、またはピペラジニルからなる群から選択される、複素環を形成する)であり、nは0、1、または2である〕の化合物、および薬学的に許容されうるその酸付加塩。
【請求項2】
Rがチオモルホリニルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項3】
化合物がチオモルホリン−4−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミドである、請求項2に記載の式Iの化合物。
【請求項4】
Rがモルホリニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
化合物がモルホリン−4−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミドである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Rが場合によってはヒドロキシ、メトキシ、または−CH2OHにより置換されているピペリジニルである、請求項1に記載の化合物
【請求項7】
化合物が、
ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド、
4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド、
4−メトキシ−ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド、または
4−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミドである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Rがメチルにより置換されているピペラジニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
化合物が4−メチル−ピペラジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミドである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Rが場合によってはハロゲンにより置換されているフェニルであるか、または場合によっては低級アルキルにより置換されているピリジン3−もしくは4−イルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
化合物が、
N−(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−6−メチル−ニコチンアミド、
N−(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−2−メチル−イソニコチンアミド、または
4−フルオロ−N−(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−ベンズアミドである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1〜11に記載の式Iの化合物を調製する方法であって、
a)式
【化2】


の化合物を、式
【化3】


の化合物と反応させ、式
【化4】


の化合物とすること(式中、Rは場合によってはハロゲンにより置換されているフェニルであるか、または場合によっては低級アルキルにより置換されているピリジン3−もしくは4−イルである)、あるいは
b)式
【化5】


の化合物を、式HNR12の化合物と反応させ、式
【化6】


の化合物とすること(式中、R1およびR2は、それらが結合するN原子とともに、場合によっては−(CH2n−ヒドロキシ、低級アルキル、または低級アルコキシにより置換されている、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペリジニル、またはピペラジニルからなる群から選択される、複素環を形成する)と、
所望であれば、得られる化合物を薬学的に許容されうる酸付加塩に転換することとを含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法、または等価の方法により調製される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の一つ以上の化合物と、薬学的に許容されうる添加剤とを含有する医薬。
【請求項15】
アデノシン受容体に関係する疾患の処置のための、請求項14に記載の医薬。
【請求項16】
疾患の処置のための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項17】
アデノシンA2A受容体に関係する疾患の処置のための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物の対応する医薬の製造のための使用。
【請求項18】
本明細書に記載の発明。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】


〔式中、Rは、場合によってはハロゲンにより置換されているフェニルであるか、または場合によっては低級アルキルにより置換されているピリジン3−もしくは4−イルであるか、または−NR12(ここで、R1およびR2は、それらが結合するN原子とともに、場合によっては−(CH2n−ヒドロキシ、低級アルキル、または低級アルコキシにより置換されている、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペリジニル、またはピペラジニルからなる群から選択される、複素環を形成する)であり、nは0、1、または2である〕の化合物、および薬学的に許容されうるその酸付加塩。
【請求項2】
Rがチオモルホリニルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項3】
化合物がチオモルホリン−4−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミドである、請求項2に記載の式Iの化合物。
【請求項4】
Rがモルホリニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
化合物がモルホリン−4−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミドである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Rが場合によってはヒドロキシ、メトキシ、または−CH2OHにより置換されているピペリジニルである、請求項1に記載の化合物
【請求項7】
化合物が、
ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド、
4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド、
4−メトキシ−ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミド、または
4−ヒドロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミドである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Rがメチルにより置換されているピペラジニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
化合物が4−メチル−ピペラジン−1−カルボン酸(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−アミドである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Rが場合によってはハロゲンにより置換されているフェニルであるか、または場合によっては低級アルキルにより置換されているピリジン3−もしくは4−イルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
化合物が、
N−(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−6−メチル−ニコチンアミド、
N−(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−2−メチル−イソニコチンアミド、または
4−フルオロ−N−(4−メトキシ−7−フェニル−ベンゾ〔b〕チオフェン−2−イル)−ベンズアミドである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1〜11に記載の式Iの化合物を調製する方法であって、
a)式
【化2】


の化合物を、式
【化3】


の化合物と反応させ、式
【化4】


の化合物とすること(式中、Rは場合によってはハロゲンにより置換されているフェニルであるか、または場合によっては低級アルキルにより置換されているピリジン3−もしくは4−イルである)、あるいは
b)式
【化5】


の化合物を、式HNR12の化合物と反応させ、式
【化6】


の化合物とすること(式中、R1およびR2は、それらが結合するN原子とともに、場合によっては−(CH2n−ヒドロキシ、低級アルキル、または低級アルコキシにより置換されている、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペリジニル、またはピペラジニルからなる群から選択される、複素環を形成する)と、
所望であれば、得られる化合物を薬学的に許容されうる酸付加塩に転換することとを含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法、または等価の方法により調製される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の一つ以上の化合物と、薬学的に許容されうる添加剤とを含有する医薬。
【請求項15】
アデノシン受容体に関係する疾患の処置のための、請求項14に記載の医薬。
【請求項16】
アデノシンA2A受容体に関係する疾患の処置のための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物の対応する医薬の製造のための使用。

【公表番号】特表2006−500313(P2006−500313A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−554670(P2003−554670)
【出願日】平成14年12月4日(2002.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2002/013704
【国際公開番号】WO2003/053954
【国際公開日】平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】