説明

アライメント装置及び方法

【課題】基板とマスクとを精度よく重ね合わせるためのアライメント装置及び方法を提供する。
【解決手段】メタルマスク2のマスクマーク2aは、ガラス基板1の基板マーク1aより面積が大きく形成されている。ガラス基板1とメタルマスク2とを重ねて配置した状態で、カメラ4A、4Bにより、基板マーク1a、1aと基板角度マーク1b、1bとマスクマーク2a、2aとを測定用画像として取得し、この測定用画像から基板マーク1a、1aの中心点の座標値と、マスクマーク2a、2aの中心点の座標値をエッジ計測により算出し、これら座標値からそれぞれを結ぶ線分L11、L12の各中心点座標値P11、P21を算出し、座標差分値を求め、この座標差分値を補正値として用いてガラス基板1とメタルマスク2との位置合わせを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板とマスクとを精度よく重ね合わせるためのアライメント装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マスクを使用して基板にパターンを形成する方法がある。例えば、有機ELディスプレイの製造工程においては、メタルマスクをガラス基板に重ねて有機EL層を蒸着により成膜するという手法が用いられている。具体的には、このメタルマスクには、画素(RGB対応のサブピクセル)の大きさに準じた小さな孔が複数開いており、このメタルマスクをガラス基板に重ねた状態で、この孔から画素部分にめがけてRGBの有機色素を蒸着し、有機EL層をガラス基板に成膜している。そして、RGBの3色について、R色素・G色素・B色素を、画素ピッチ分だけ順次メタルマスクをずらしながら3回蒸着することにより、ガラス基板表面に対する有機EL層の成膜が行われる。
【0003】
そして、高精細の有機ELディスプレイを製造するためには、精度良く蒸着を行う必要があり、そのためには、ガラス基板とメタルマスクとの位置合わせ(アライメント)を精度良く行うことが重要となる。
【0004】
このガラス基板とメタルマスクとの位置合わせを精度良く行うアライメント装置としては、例えば、特許文献1に示されている。なお、以下において括弧内の符号は特許文献1に記載されたものである。
【0005】
このアライメント装置(100)においては、次のようにしてガラス基板(1)と成膜用マスク(2)とのアライメントを行っている。すなわち、ガラス基板(1)には、その対角線上の両端付近に、一対の基板用マーク(1a)が対向して記されており、更にそれぞれの基板用マーク(1a)の近傍には平行基準マーク(1b)がそれぞれ記されている。この平行基準マーク(1b)は、基板用マーク(1a)と平行基準マーク(1b)とを結ぶ仮想線L1とL2とが平行となる位置に記されている。他方、成膜用マスク(2)にも、その対角線上の両端付近に一対のマスク用マーク(2a)が対向して記されており、水平方向に張力が加えられた状態でマスクフレーム(3)上に配置されている。そして成膜用マスク(2)上にガラス基板(1)が載置された状態で、2台のカメラ10、10により、それぞれ、基板用マーク(1a)、平行基準マーク(1b)及びマスク用マーク(2a)を撮影し、この撮影された画像から、基板用マーク(1a)及びマスク用マーク(2a)の座標値を算出する。この算出された座標値から、基板用マーク(1a、1a)同士とマスク用マーク(2a、2a)同士のそれぞれの中心座標値を算出した後、それぞれの中心座標値の座標差分値を求め、この座標差分値を補正値として、ガラス基板(1)と成膜用マスク(2)との位置合わせを行っている。
【0006】
ここで、近年のパターン高精細化のため、成膜用マスク(2)は非常に薄く形成され、単にマスクフレーム(3)に載置しただけでも成膜用マスク(2)は撓むことがある。そこで、このアライメント装置(100)においては、成膜用マスク(2)に対し水平方向に張力を加え、引き伸ばした状態でマスクフレーム(3)に固定し成膜用マスク(2)の撓みを防止している。更に、成膜用マスク(2)に張力が加えられると、マスク用マーク(2a)の位置にずれが生じることから、上記のように中心座標値の座標差分値を求めることにより、ずれが生じた場合でも成膜用マスク(2)とガラス基板(1)との位置合わせを精度良く行えるようにしている。このように、このアライメント装置(100)においては、成膜用マスク(2)の撓みを防止しつつ、マスク用マーク(2a)にずれが生じた場合でも精度良くアライメントが行えるようにしている。
【0007】
しかしながら、このアライメント装置(100)においては、マスク用マーク(2a)をカメラ10が認識しづらくなり、マスク用マーク(2a)の座標を誤認識してしまうことがある。具体的に説明すると、このアライメント装置(100)においては、マスク用マーク(2a)と基板用マーク(1a)とを一致させることにより、ガラス基板(1)と成膜用マスク(2)とのアライメントを行うように構成されているが、実際に一致させようとしているのは、それぞれのマークの中心点の座標値である。従って、このアライメント装置(100)においては、カメラによりマスク用マーク(2a)と基板用マーク(1a)とを撮影した後、この撮影画像をもとにしてそれぞれの中心点の座標値を決定する必要がある。この中心点の座標値を決定する方法は、この特許文献1に具体的に開示されていないが、正規化相関法が多用される。この正規化相関法においては、100回程度の画像上の目標点の計測を行い、正規分布に当てはめたときに3σ(σ:標準偏差)が予め定めた精度範囲に入るか否かで可否判断を行う。また、座標点の決定は、各計測毎に画像面上にて登録モデルを走査させながら、そのモデルと面積比率が一致する点をスコアリングして評価する手法(モデルベースサーチ)が汎用的である。
【0008】
そして、このアライメント装置(100)は、上述したように、ガラス基板(1)と成膜用マスク(2)とを重ねた状態で、ガラス基板(1)側から、基板用マーク(1a)、平行基準マーク(1b)及びマスク用マーク(2a)をカメラ(10)により撮像し、最終的には、上記正規化相関法により基板用マーク(1a)の中心点の座標とマスク用マーク(2a)の中心点の座標とを求め、各中心点を一致させるように構成している。
【0009】
また、上述したように、カメラ(10)から見て、マスク用マーク(2a)は、ガラス基板(1)の裏面側に位置し、一般的には画像上、マスク用マーク(2a)は黒っぽく撮像され基板用マーク(1a)は白っぽく撮像されるが、このアライメント装置(100)においては、図9に示すように、アライメントする前に、既に基板用マーク(1a)とマスク用マーク(2a)とが重なっている場合が生じ、重なった部分が灰色っぽく撮像されてしまう。更に、図9に示すように、従来においては、一致させるマーク同士、すなわち、マスク用マーク(2a)と基板用マーク(1a)とは、略同じ大きさに形成されているのが一般的であるため、重なっている部分があると、マスク用マーク(2a)の全体に占めるこの重なり部分の大きさの割合が相対的に大きくなりがちである。
【0010】
この場合、上述したような正規化相関法を用い、画像面上にて登録モデルを走査させながら、そのモデルと面積比率が一致する点をスコアリングしてマスク用マーク(2a)の中心点の座標を決定すると、この重なった部分と重なっていない部分の画像上の明暗が異なるため、中心点の座標値を認識しづらく、その結果アライメント精度の低下となり、繰り返しアライメントを行う必要が生じて処理時間の遅延となる等の問題があった。
【0011】
【特許文献1】特開2004−303559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、基板とマスクとのアライメントの際に、マーク同士が重なっていた場合であっても、各マークの中心点の座標を正確に取得でき、アライメントに要する時間を短縮化するとともに、アライメントの精度の向上を図ることが出来るアライメント装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、基板とマスクとを重ねる際の位置合わせを行うアライメント装置であって、上記基板は、その一角の近傍に形成された基板マークと、この基板マークの近傍に形成された基板角度マークと、を有し、更に、上記基板マークと上記基板角度マークとが、上記基板の中心点に対し点対称であり、かつ、上記基板マークと上記基板角度マークとを結ぶ仮想線同士が平行となるよう上記一角の対角近傍にも形成されており、上記マスクは、その一対の対角のそれぞれの近傍に形成されたマスクマークを有し、上記マスクマークは、上記基板マークをそっくり取り込み可能な形状であるとともに、上記基板マークより面積が大きく形成されてなり、上記アライメント装置は、上記基板と上記マスクとを重ねて配置した状態で、上記基板側から上記基板マークと上記基板角度マークと上記マスクマークとを測定用画像として取得する画像取得手段と、上記基板マーク、上記基板角度マーク及び上記マスクマークから取得した測定用画像から、それぞれのエッジを計測することによりそれぞれの中心点の座標値を算出し、この算出した上記基板マークの中心点同士を結ぶ第1線分上の第1中心点座標値と、上記マスクマークの中心点同士を結ぶ第2線分上の第2中心点座標値と、を算出する座標値算出手段と、上記第1中心点座標値と上記第2中心点座標値との座標差分値を算出する補正値算出手段と、上記座標差分値を補正値として用い、上記基板と上記マスクとの位置合わせを行う位置補正手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、基板とマスクとを重ねる際の位置合わせを行うアライメント方法であって、上記基板は、その一角の近傍に形成された基板マークと、この基板マークの近傍に形成された基板角度マークと、を有し、更に、上記基板マークと上記基板角度マークとが、上記基板の中心点に対し点対称であり、かつ、上記基板マークと上記基板角度マークとを結ぶ仮想線同士が平行となるよう上記一角の対角近傍にも形成されており、上記マスクは、その一対の対角のそれぞれの近傍に形成されたマスクマークを有し、上記マスクマークは、上記基板マークをそっくり取り込み可能な形状であるとともに、上記基板マークより面積が大きく形成されてなり、上記アライメント方法は、上記基板と上記マスクとを重ねて配置した状態で、上記基板側から上記基板マークと上記基板角度マークと上記マスクマークとを測定用画像として取得する画像取得工程と、上記基板マーク、上記基板角度マーク及び上記マスクマークから取得した測定用画像から、それぞれのエッジを計測することによりそれぞれの中心点の座標値を算出し、この算出した上記基板マークの中心点同士を結ぶ第1線分上の第1中心点座標値と、上記マスクマークの中心点同士を結ぶ第2線分上の第2中心点座標値と、を算出する座標値算出工程と、上記第1中心点座標値と上記第2中心点座標値との座標差分値を算出する補正値算出工程と、上記座標差分値を補正値として用い、上記基板と上記マスクとの位置合わせを行う位置補正工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
上記基板としては、透明のガラス基板、アクリル基板等が適用可能である。また、上記マスクとしては、金属製のいわゆるメタルマスクやその他の素材を使用したマスクが適用可能であり、このマスクには、基板にパターンを形成するためのスリットが設けられており、基板へのパターン形成は、このマスクを基板に重ねることにより行われる。基板に形成されるパターンの位置は予め決まっているので、マスクと基板を重ねる際に、パターンが基板の所定の位置に形成されるよう、位置合わせ(アライメント)が必要となる。このアライメントをするために、基板には基板マーク及び基板角度マークが形成されており、他方、マスクにはマスクマークが形成されている。
【0016】
基板マーク、基板角度マーク及びマスクマークは、いずれもアライメントに必要なマークであることから、その形状はどのような形状でも適用可能であるが、それぞれのマークを識別し易くするために、各マークの形状は異なっている方が良い。例えば、基板マークが十字形状で、基板角度マークが正方形で、マスクマークが円形状という風に形成すればそれぞれを識別し易いので好適である。
【0017】
また、基板及びマスクの形状としては、例えば、正方形状、長方形状等、基板とマスクとのアライメントが可能であり、かつ基板の所定の位置にパターンが形成可能であれば、その形状はどのような形状でも良い。
【0018】
また、上記マークは、基板とマスクとを重ねた状態で、CCDカメラ等の画像取得手段で測定用画像として取得されるため、基板マーク及び基板角度マークと、マスクマークとは、基板とマスクを重ねた際に対応する位置に形成されている必要がある。例えば、基板もマスクも共に正方形状である場合、基板マーク及び基板角度マークとが基板の左上の角近傍に形成されていれば、マスクマークも、マスクと基板とを重ねた際に左上の角近傍に形成されている必要がある。更に、これらマークは、対角近傍にも点対称に設けられている。すなわち、上記のような場合には、左上の角の対角である右下の角の近傍にもこれらマークは基板あるいはマスクの中心点に対し点対称に形成されている。
【0019】
なお、上記画像取得手段は、基板とマスクとを重ねたときに、基板マーク、基板角度マーク及びマスクマークの全てが一の測定用画像として取得出来れば、CCDカメラやCMOSカメラ等種々の画像取得手段が適用可能である。
【0020】
ここで、従来においては、この測定用画像に基づいて、上述した正規化相関法を用い、画像面上にて登録モデルを走査させながら、そのモデルと面積比率が一致する点をスコアリングして各マークの中心点の座標を決定していたが、本発明においては、マスクマークの面積を基板マークの面積より大きく形成するとともに、従来のような正規化相関法ではなく、各マークのエッジを計測し、各マークの中心点の座標を決定している。本発明において、マスクマークは、基板マークをそっくり取り込み可能な形状であるとともに、基板マークより面積が大きく形成されてなり、更に、いわゆるエッジ計測により各マークの中心点の座標を決定するとしたのは以下のような理由からである。
【0021】
すなわち、アライメント前において、基板マークとマスクマークとが既に重なっている場合があり、また、従来においては、基板マークとマスクマークとは略同じ大きさに形成されているのが一般的であるため、このように重なっている部分があると、マスクマーク全体の面積に占めるこの重なり部分の面積の割合が相対的に大きくなりやすい。このような場合に、上述した正規化相関法により、マスクマークの中心点の座標を求めるとした場合、重なった部分と重なっていない部分の画像上の明暗が異なるため、マスクマークの中心点の座標値を認識しづらく、その結果アライメントに多くの時間を要していた。
【0022】
そこで、本発明においては、従来のように面積比率が一致する点をスコアリングしてマスクマークの中心点の座標値を求めるのではなく、マスクマークのエッジ、すなわち輪郭を計測することにより、その中心点の座標値を求めることとした。このエッジ計測によれば、カメラ等により撮像した各マークの画像から、明部と暗部との境目のデータを微分二値化処理して多数のエッジ点、すなわち各マークの輪郭上の点の座標データを取り込み、このエッジ点の座標データから各マークの中心点の座標値を求める。このエッジ計測によれば、基板マークとマスクマークとが多少重なっていたとしても、すなわち、マスクマークのエッジが隠れる部分が多少存在しても、マスクマークの中心点の座標値は求められが、精度よく中心点の座標値を求めるためには、なるべくエッジが隠れる部分は少ない方がよい。そこで、本発明においては、マスクマークを、基板マークをそっくり取り込み可能な形状で形成するとともに、マスクマークの面積を基板マークの面積より大きくし、マスクマークのエッジの隠れる部分を少なくするようにして、マスクマークの中心点の座標値を精度良く決定可能とした。
【0023】
なお、この前記基板マーク、基板角度マーク及びマスクマークは、メカアライメントにて基板又はマスクをアライメント開始位置に載置する際、前記画像取得手段において一視野(一画像)内にて全てを認識可能となるように形成される。更に、本発明のアライメント方法における基板及び/又はマスクの移動後も、夫々のマークは、前記同様に一視野内にある必要がある。各マークの座標決定の精度を担保するためである。メカアライメントによっては、本発明のアライメント開始段階でマスクマークと基板マーク及び/又は基板角度マークとが重なっている場合がある。この場合、マスクマークのエッジ部が隠蔽されることとなり、当該マークのエッジ計測による座標点の決定精度が低下する。よって、本発明においては、マスクマークの認識に必要なエッジ部の全情報の内、基板マーク及び/又は基板角度マークにより隠蔽されて取得できない情報の割合が、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下となるように、適宜基板マークおよび基板角度マーク並びにそれらのマークの間隔が決定される。
【0024】
例えば、マスクマークが円形、基板マークが十字形、基板角度マークが正方形とした場合には(後述する図2、図3参照)、基板マークと基板角度マークとの対向する辺の間の距離がマスクマークの直径に比して大きい場合には、マスクマークが基板マークと基板角度マークとの双方に一度に重なることはないが、一方、この辺の間の距離が上記直径に比して小さい場合には、基板マークと基板角度マークとの双方に一度に重なる場合があり、この場合、基板マークと基板角度マークとの双方によりマスクマークのエッジが隠されてしまうこととなる。つまり、基板マークと基板角度マークとの間の距離と、マスクマークの大きさと、により、マスクマークのエッジが基板マーク及び/又は基板角度マークにより隠れてしまう部分の面積、長さが決定付けられることとなるので、本発明においては、この部分が最大25%以下になるよう、上記距離と上記大きさを設定するようにしている。
【0025】
また、本発明においては、基板とマスクとのアライメントは、基板マーク同士を結ぶ第1線分上の第1中心点座標値と、マスクマーク同士を結ぶ第2線分上の第2中心点座標値と、を算出し、それぞれの中心点座標値の座標差分値を算出し、この座標差分値を補正値として用いることにより行う。最初から基板とマスクとが所定の位置に重ねられれば、基板マーク及びマスクマークのそれぞれの中心点座標値は一致し、座標差分値はゼロとなるが、位置ずれがあれば座標差分値はゼロとはならない。この座標差分値を算出しゼロとすることによりアライメントを行う。この際に、位置ずれは、基板と水平面な面をXY平面としたならば、XY方向における位置ずれと、基板の中心点を中心軸とする軸心回りの方向における位置ずれがあるので、これら双方の位置ずれを補正するように行われる。
【0026】
また、上記位置補正手段は、上記第1線分と上記第2線分とが一致するように上記基板と上記マスクとの位置合わせを行うようにしてもよい。
【0027】
また、水平方向に張力を加えて上記マスクを配置可能なマスクフレームを有するようにしてもよい。
【0028】
また、上記座標値算出手段は、上記測定用画像を上記画像取得手段が座標系に対し傾斜角を有して取得した場合において、その傾斜角を補正してから上記各座標値を算出するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように本発明によれば、従来のように正規化相関法によりマスクマークの中心点の座標値を求めるのではなく、マスクマークの面積を基板マークの面積より大きく形成するとともに、いわゆるエッジ計測によりマスクマークの中心点の座標を決定することにより、基板とマスクとのアライメントを行うこととした。このため、基板をマスクに取り付けた時に、従来のように、最初から基板マークとマスクマークとが重なっていた場合であっても、マスクマークの中心点の座標値を精度良く決定することが可能となり、その結果、アライメント時間の短縮化、およびアライメントの精度の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図1は本発明のアライメント装置の概略構成を示すブロック図、図2はガラス基板の平面図、図3はメタルマスクの平面図である。
【0032】
本実施形態におけるアライメント装置は、有機ELディスプレイの製造の際の有機EL層の真空蒸着工程における、ガラス基板とメタルマスクとのアライメントを想定した構成となっている。
【0033】
図1において、アライメント装置100は、2台のカメラ4A、4B、カメラI/F5、搬送駆動部6、制御部7、画像処理部8及び保持部9を有しており、ガラス基板1とメタルマスク2とのアライメント、すなわち位置合わせを行う。
【0034】
ガラス基板1は、図2に示すように透明な正方形の基板であり、図中破線で示す対角線L1の一端、すなわち図2中左上部の角の近傍には、基板マーク1aが記されており、更に基板マーク1aの近傍には、基板角度マーク1bが記されている。一方、対角線L1の他端、すなわち図2中右下部の角の近傍にも基板マーク1aと基板角度マーク1bが記されている。図2中、L3、L4は、基板マーク1aの中心点と基板角度マーク1bの中心点とを結ぶ仮想線であり、仮想線L3、L4が平行になるよう基板マーク1aと基板角度マーク1bは対向してガラス基板1に記されている。更に、基板マーク1aと基板角度マーク1bは、ガラス基板1の中心点P1、すなわち対角線L1、L2の交点に対し、点対称に対向してガラス基板1に記されている。なお、対角線L1、L2及び仮想線L3、L4は、ガラス基板1に直接記されている実線ではなく、計算により求められる仮想的な線である。
【0035】
メタルマスク2は、例えば、ステンレス、チタン、ニッケル等の材料で形成されたマスクであり、図3に示すように、複数のスリットにより形成されたマスクパターン2bを有する。また、メタルマスク2は、上記ガラス基板1より一回り大きな正方形のマスクであり、図中破線で示す対角線L5の両端、すなわち一対の対角のそれぞれの近傍には、マスクマーク2aが対向して設けられている。このマスクマーク2aは、円形状の孔により形成されており、対角線L5、L6の交点であるメタルマスク2の中心点P2に対し、点対称に対向してメタルマスク2に設けられている。なお、後述するように、このマスクマーク2aは、ガラス基板1をメタルマスク2に重ねた状態をカメラ4A、4Bで撮影した場合において、基板マーク1aと基板角度マーク1bと一緒に撮影される位置に設けられる。
【0036】
また、メタルマスク2は、正方形状の筒形構造に形成されたマスクフレーム3により、水平方向に張力を加えられた状態で配置されている。このように張力を加えて配置したことから、メタルマスク2に撓みが生ずるのを防止できる。
【0037】
そして、図1に示すように、張力を加えた状態でメタルマスク2をマスクフレーム3に配置し、このメタルマスク2の上にガラス基板1が重ねて配置される。なお、重ねた際にガラス基板1がメタルマスク2の所定の位置に配置されればよいが、所定の位置に配置されていない場合には、ガラス基板1あるいはメタルマスク2を動かして、位置補正する必要があるので、動かし易いように、ガラス基板1とメタルマスク2とは、微小間隙を介して重ねて配置されるのが好適である。
【0038】
カメラ4A、4Bは、CCDカメラ、CMOSカメラ等からなり、図1に示すようにメタルマスク2とガラス基板1とを重ねて配置した状態において、基板マーク1a、基板角度マーク1b及びマスクマーク2aの全てが位置する側、すなわち図2に示す対角線L1の両端付近の上方に対向して2台配置される。この2台のカメラ4A、4Bは、カメラI/F5を介して制御部7と接続される。このカメラ4A、4Bは、基板マーク1a、基板角度マーク1b及びマスクマーク2aを測定用画像として取得する画像取得手段として機能する。
【0039】
搬送駆動部6は、ガラス基板1をメタルマスク2上方において保持する保持部9を、2次元のXY軸方向への移動及び水平方向の回転動作をさせるための動力源であり、サーボモータ等から構成されている。なお、保持部9は、ここではガラス基板1を保持するとしているが、保持部9の作用によりガラス基板1とメタルマスク2とのアライメントが可能な構成であれば、保持部9はガラス基板1を保持するものである必要はない。例えば、マスクフレーム3を保持し、マスクフレーム3を動かすことによりメタルマスク2を動かし、アライメントをするような機構のものであってもよい。なお、制御部7の制御のもと、搬送駆動部6が保持部9を所定の位置に移動させることにより、ガラス基板1とメタルマスク2との位置合わせを行う位置補正手段となる。
【0040】
制御部7は、搬送駆動部6と、画像処理部8と、カメラI/F5を介してカメラ4A、4Bと、それぞれ接続されており、アライメント装置100全体の動作制御をしている。
【0041】
画像処理部8は、座標値算出手段81、補正値算出手段82及び記憶部83を備えている。座標値算出手段81は、カメラ4A、4Bが撮影した画像から基板マーク1a、基板角度マーク1b及びマスクマーク2aの中心点の座標値を算出するとともに、基板マーク1a同士を結ぶ線分の中心点座標値と、マスクマーク2a同士を結ぶ線分の中心点座標値とを算出するよう構成されている。補正値算出手段82は、上記算出された中心点座標値のそれぞれから位置補正すべき補正値を算出するよう構成されている。記憶部83は、カメラ4A、4Bが撮影した上記画像を一時的に保存するように構成されており、基板マーク1aと基板角度マーク1bとの距離値等が予め記憶されている。
【0042】
図4(a)は、メタルマスク2にガラス基板1を重ねて配置した状態、すなわちカメラ4A、4Bにより、アライメント前の基板マーク1a、基板角度マーク1b及びマスクマーク2aから取得された測定用画像を示す平面図であり、(b)は図4(a)におけるA1部分の拡大図である。
【0043】
図4(a)においては、ガラス基板1とメタルマスク2との間には位置ずれが生じており、基板マーク1aとマスクマーク2aとが一致していないが、マスクマーク2aのエッジ20aが基板マーク1aにより一部隠れている(図中21a)。本実施形態においては、基板マーク1aは縦横辺が共に500μmの十字形状、基板角度マーク1bは500μm角の正方形、マスクマーク2aは直径が1、500〜1、600μmの円形状のマークから形成されている。
【0044】
また、基板マーク1aと基板角度マーク1bとの距離は、1、700μmである。カメラ4A、4Bに対して、メタルマスク2は基板1の裏面側に位置するため、基板マーク1a及び基板角度マーク1bは共に、カメラ4A、4Bにより白っぽく撮像され、一方、マスクマーク2aは黒っぽく撮像される。このカメラ4A、4Bにより撮像されたそれぞれの画像から、明部と暗部との境目のデータを微分二値化処理して多数のエッジ点、すなわち各マーク1a、1bおよび2aの輪郭上の点の座標データを取り込み、このエッジ点の座標データから各マークの中心点の座標値を求める。
【0045】
この際に、マスクマーク2aに関しては、エッジ20aのうち一部21aが基板マーク1aに隠されているが、このエッジ計測によれば、基板マーク1aとマスクマーク2aとが多少重なっていたとしても、マスクマーク2aの中心点の座標値は求められる。この中心点の座標値の求め方としては、特開平7−225843号公報に記載の方法等種々の公知のエッジ計測を用いた中心点の座標値の算出方法が適用可能である。
【0046】
また、本実施形態においては、なるべくマスクマーク2aのエッジ20aが基板マーク1aや基板角度マーク1bによって隠されないよう、基板マーク1aと基板角度マーク1bとの距離及び各マーク1a、1b、2aの大きさを調整している。すなわち、図4(b)に示すように、マスクマーク2aは、基板マーク1aも基板角度マーク1bも共にそっくり取り込めるくらいの大きさの円形状に形成している。特に、基板マーク1aとマスクマーク2aとが、アライメント前から重なる可能性が高いことから、図のようにマスクマーク2aの面積を基板マーク1aの面積に対し大きくしている。
【0047】
なお、この基板マーク1aの面積は、マスクマーク2aの面積の10〜20%であるのが好適である。マスクマーク2aの中心点の座標を求めるうえでは、基板マーク1aの面積が小さければ小さいほど、マスクマーク2aのエッジ20aが隠れる割合を少なく出来るので、基板マーク1aの面積はなるべく小さいほうがよい。しかしながら、基板マーク1aの面積があまりにも小さいと、今度は、基板マーク1aの中心点の座標を求めるうえで精度が落ちてしまう。すなわち、あまり基板マーク1aの面積が小さいと基板マーク1aから取得されるエッジ点のデータが少なくなるので、マスクマーク2aの面積に対する基板マーク1aの面積は上記のように設定するのが好適である。
【0048】
このように、従来のように、正規化相関法ではなく、エッジ計測により各マーク1a、1b、2aの中心点の座標を求めることとしたことから、アライメント前からマスクマーク2aに基板マーク1aが重なっていたとしても、マスクマーク2aの中心点の座標が精度よく取得することが可能となる。
【0049】
このように構成されたアライメント装置100の動作を図5〜図8を参照して説明する。
【0050】
図5は図4における測定用画像の傾きを補正するための説明図、図6はマスクマーク2aと基板マーク1aの座標値を求めるための説明図、図7はマスクマーク2aの座標値と基板マーク1aの座標値からアライメントを行う方法を示す説明図、図8はアライメント動作を示す動作フロー図である。
【0051】
図1に示すように、図示しない搬送手段により、ガラス基板1が搬送されて、マスクフレーム3にセットされたメタルマスク2の上方に配置されると、図8に示すアライメント動作がスタートする。
【0052】
この動作がスタートすると、まず、制御部7の動作制御のもと、カメラ4A及びカメラ4Bのそれぞれにより、基板マーク1a、基板角度マーク1b及びマスクマーク2aの撮影が開始される(S100、S200)。この画像は図4(a)に示すように、測定用画像測定用画像(図中、A1、A2部分)として撮影され、カメラI/F5によって画像処理部8での処理が可能な形態に変換され、制御部7を介して画像処理部8に入力される。
【0053】
画像処理部8において、各カメラ4A、4Bのそれぞれのカメラ視野の全てのマーク、すなわち、基板マーク1a、基板角度マーク1b及びマスクマーク2aの全てが検出されたかを調べ(S101、S201)、全てのマークが検出されるまでカメラ4A、4Bによる撮影を続けるが(S101のN、S201のN)、全てのマーク1a、1b、2aが検出された場合には(S101のY、S201のY)、それぞれのマーク1a、1b、2aから座標値算出手段81が各座標値を算出する(S102、S202)。
【0054】
この各座標値は、それぞれのマーク、すなわち、基板マーク1a、基板角度マーク1b及びマスクマーク2aのそれぞれの中心点における座標値である。この中心点は、上述したエッジ計測により求められる。
【0055】
上述のようにして、基板マーク1a、基板角度マーク1b及びマスクマーク2aの各座標値が算出されると、次に、画像処理部8において、カメラ位置補正が必要か否かを調べる(S103、S203)。各マーク1a、1b、2aは、通常カメラ4A、4Bの取り付け向きに影響を受け、カメラ視野を基準に考えると各マーク1a、1b、2aが図5のように傾いている場合があり、傾いている場合には、その傾斜角θを求めて、傾きを補正する(S104、S204)。
【0056】
この傾斜角θの求め方を図5を参照して説明する。図5において、実線で示された各マーク1a、1b、2aが、カメラ4A、4Bにより撮像された測定用画像である。この図5においては、仮想線L3がカメラ座標系に対し傾斜角θの傾きを有しており、各マーク1a、1b及び2aが、カメラ座標系に対し傾斜角θ分傾いている。
【0057】
このように各マーク1a、1b、2aが、カメラ座標系に対し傾いて撮像された場合には、この傾きを補正する。ここで、傾斜角θは次のようにして算出される。基板マーク1aの座標値が(X1、X2)、基板角度マーク1bの座標値が(X2、Y2)であり、基板マーク1aの座標値(X1、Y1)を補正の基準座標とすると、傾斜角θは、以下の式1により求められる。
<式1>
θ=arctan(Y1−Y2)/(X1−X2)
【0058】
カメラ座標系において、傾斜角θ成分を補正、すなわち、各マーク1b、2aの座標値を基板マーク1aを中心軸として図5の矢印の方向にθだけ回転させると、各マーク1a、1b、及び2aは、図5の破線で示された座標、位置関係となる。そして、上記補正後カメラ座標系の各マーク1a、1b及び2aの座標値を算出する(S105、S205)。なお、上記θを求めた結果、θ=0であれば、各マーク1a、1b、2aはカメラ座標系に対し傾いていないので、上記補正は行わず、上記S105、S205の処理も行わず、次の処理S300に移行する(S103のN、S203のN)。
【0059】
次に、カメラ座標系から基板座標系に変換する(S300)。上記により求めた各マーク1a、1b、及び2aの座標値は、カメラ4A、4Bのそれぞれが独自に有する座標系による座標値であるので、後述する基板マーク1a同士を結ぶ線分L11の中心点P11と、マスクマーク2a同士を結ぶ線分L12の中心点P21の各座標値を求めるためには、カメラ座標系を基板座標系に変換する必要がある。この座標系の変換の仕方について図6を参照して説明する。
【0060】
ガラス基板1における基板マーク1a、1a同士の相対的な位置関係は変化しないので、ガラス基板1をXY座標系として、双方間のX方向及びY方向の距離を予め記憶部83に記憶させておき、基板座標系における基板マーク1a、1aのそれぞれの座標値も予め記憶させておく。例えば、ガラス基板1における基板マーク1a、1a同士の距離を、X方向にXs、Y方向にYsとし、一の基板マーク1aを通る直線と、他の基板マーク1aを通る直線とが直交する点を基板座標系の原点Os〔0、0〕とすると、各基板マーク1a、1aの基板座標系における座標は、それぞれ〔0、Ys〕、〔Xs、0〕となる。一方、カメラ座標系により算出された各マーク1a、1b及び2aの各座標値を、基板マーク1a、1aの座標値がそれぞれ〔0、Ys〕、〔Xs、0〕となるように変換すれば、カメラ座標系により求めた各座標値は、基板座標系における各座標値に変換される。
【0061】
これらの処理をイメージ化したものが図6に示してあり、基板座標系における座標値〔0、Ys〕、〔Xs、0〕の位置に、カメラ座標系で取得した測定用画像C1、C2上の基板マーク1a、1aをそれぞれ配置すれば、各マーク1a、1b及び2aの座標値は、カメラ座標系から基板座標系に変換される。
【0062】
この図6には、基板マーク1aの座標値及びマスクマーク2aの座標値として、それぞれ(Xc3、Yc3)、(Xc4、Yc4)、(Xc1、Yc1)、(Xc2、Yc2)が記載されているが、これらはいずれもカメラ座標系における座標値であり、これらを基板座標系の座標値に変換すると、図7に示すようになる。すなわち、(Xc3、Yc3)が(Xs8、−Ys8)に、(Xc4、Yc4)が(Xs9、−Ys9)に、(Xc1、Yc1)が(Xs5、−Ys5)に、(Xc2、Yc2)が(Xs6、−Ys6)にそれぞれ変換されている。
【0063】
次に、この基板座標系に変換された基板マーク1a、1a及びマスクマーク2a、2aの座標値から、基板マーク1a、1a同士を結ぶ第1線分L11の中心点P11と、マスクマーク2a、2a同士を結ぶ第2線分L12の中心点P21の各中心点座標値を算出する(S301)。
【0064】
ここで、第1線分L11の中心点P11の座標値(Xs10、−Ys10)と第2線分L12の中心点P21の座標値(Xs7、−Ys7)は次式2、3により求められる。
【0065】
<式2>
(Xs10、−Ys10)={(Xs9−Xs8)/2、(−Ys9−(−Ys8))/2}
【0066】
<式3>
(Xs7、−Ys7)={(Xs6−Xs5)/2、(−Ys6−(−Ys5))/2}
【0067】
次に、上記式2及び式3により算出された中心点P11及びP21の座標値が一致するか否かを調べ(S302)、一致していなければ(S302のN)、座標差分値を算出し(S303)、他方、一致していれば(S302のY)、座標差分値=0となるので座標差分値は算出しない。この座標差分値は、X座標方向における位置ずれとY座標方向における位置ずれとして算出される。
【0068】
更に、座標差分値を算出する場合及び座標差分値を算出しない場合のいずれの場合においても、第1線分L11の傾斜角α1と第2線分L12の傾斜角α2とが一致しているか否かを調べる(S304)。図7に示すように、中心点P11及びP21の座標値が一致していたとしても(第1線分L11と破線で示す第2線分L12との交点)、第1線分L11と第2線分L12とは一致していない場合がある。すなわち、一致する中心点を中心軸とする軸心回りの方向における位置ずれがある。この位置ずれがある場合には、図7に示すように基板マーク1aとマスクマーク2aの位置は一致しておらず、第1線分L11及び第2線分L12も一致していないので、この位置ずれ(以下「回転方向の位置ずれ」と言う。)も求める必要がある。
【0069】
そこで、本実施形態においては、X軸に対する第1線分L11の傾斜角α1と、X軸に対する第2線分L12の傾斜角α2とを求めるとともに、各傾斜角のα1、α2の差を求めることにより、上記回転方向の位置ずれを算出するようにしている。この傾斜角α1、α2は次式4、5により求められる。
【0070】
<式4>
α1=arctan{(−Ys9−(−Ys8))/(Xs9−Xs8)}
【0071】
<式5>
α2=arctan{(−Ys6−(−Ys5))/(Xs6−Xs5)}
【0072】
上記式4、5により、傾斜角α1、α2を算出した結果、傾斜角α1、α2が一致しない場合は(S304のN)、傾斜角α1、α2の差である角度差分値を求める(S305)。一方、傾斜角α1、α2が一致した場合は(S304のY)、α1=α2となり、角度差分値を算出する必要はない。
【0073】
次に、最終的に差分値が有るか否かを調べる(S306)。すなわち、座標差分値あるいは角度差分値のいずれか一方でもあれば(S306のY)、アライメントをする必要があるので、ガラス基板1とメタルマスク2とのアライメントを行なう(S307)。他方、いずれの差分値も存在しない場合は(S306のN)、アライメントをする必要がないので処理を終了する。
【0074】
例えば、このアライメントの手順をイメージ化すると、図7に示すs1、s2のようになる。すなわち、中心点P11、P21の座標値に位置ずれが有る場合には、中心点P21と中心点P11とが一致するよう第2線分L12を第1線分L11の方向へ平行移動させる(s1)。次に、傾斜角α1、α2の差を求め、求められた角度差分だけ上記一致させた中心点を中心軸とする軸心周りに第2線分L12を回転させる(s2)。すると、基板マーク1a、1aと、マスクマーク2a、2aとが一致しアライメントの処理が終了する。
【0075】
なお、マスクフレーム3の張力によりメタルマスク2が引き伸ばされた場合等においては、上記アライメントの処理を行っても、基板マーク1a、1aとマスクマーク2a、2aとが一致しない場合がある。しかしながら、このような場合においても、上記アライメントの処理により、第1線分L11と第2線分L12とを一致させれば、メタルマスク2のスリット2bにより形成されたパターンはガラス基板1の所定の位置に配置されることとなるので、第1線分L11と第2線分L12とを一致させれば高精細なアライメントが実現できることとなる。
【0076】
ところで、上述した実施形態においては、有機ELディスプレイの製造の際の有機EL層の真空蒸着工程における、ガラス基板とメタルマスクとのアライメントを想定して説明したが、勿論、真空蒸着の対象としては、この有機EL材料に限定されるものではなく、例えば半導体装置の製造に際して、真空容器内でマスクを用いて基板上に導体パターンを形成するための種々の装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施形態のアライメント装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態のガラス基板の平面図。
【図3】本実施形態のメタルマスクの平面図。
【図4】(a)はカメラによって取得される測定用画像を示す平面図、(b)は測定用画像の拡大図。
【図5】図4における測定用画像の傾きを補正するための説明図。
【図6】マスクマークと仮想点の座標値を求めるための説明図。
【図7】マスクマークの座標値と仮想点の座標値とからアライメントを行う方法を示す説明図。
【図8】アライメントの動作を示すフローチャート図。
【図9】従来のアライメント方法を使用した際に、マスクマークと基板マークとが重なった状態を測定用画像としてカメラが取得したときを示す平面図。
【符号の説明】
【0078】
1 ガラス基板
1a 基板マーク
1b 基板角度マーク
2 メタルマスク
2a マスクマーク
20a エッジ
2b スリット
3 マスクフレーム
4A、4B カメラ
5 カメラI/F
6 搬送駆動部
7 制御部
8 画像処理部
81 座標値算出手段
82 補正値算出手段
83 記憶部
9 保持部
L1、L2、L5、L6 対角線
L3、L4 仮想線
L11 第1線分
L12 第2線分
P1 ガラス基板の中心点
P2 メタルマスクの中心点
P11、P21 中心点
α1、α2 傾斜角
C1、C2 測定用画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板とマスクとを重ねる際の位置合わせを行うアライメント装置であって、
上記基板は、
その一角の近傍に形成された基板マークと、
この基板マークの近傍に形成された基板角度マークと、を有し、
更に、上記基板マークと上記基板角度マークとが、上記基板の中心点に対し点対称であり、かつ、上記基板マークと上記基板角度マークとを結ぶ仮想線同士が平行となるよう上記一角の対角近傍にも形成されており、
上記マスクは、
その一対の対角のそれぞれの近傍に形成されたマスクマークを有し、
上記マスクマークは、上記基板マークをそっくり取り込み可能な形状であるとともに、上記基板マークより面積が大きく形成されてなり、
上記アライメント装置は、
上記基板と上記マスクとを重ねて配置した状態で、上記基板側から上記基板マークと上記基板角度マークと上記マスクマークとを測定用画像として取得する画像取得手段と、
上記基板マーク、上記基板角度マーク及び上記マスクマークから取得した測定用画像から、それぞれのエッジを計測することによりそれぞれの中心点の座標値を算出し、この算出した上記基板マークの中心点同士を結ぶ第1線分上の第1中心点座標値と、上記マスクマークの中心点同士を結ぶ第2線分上の第2中心点座標値と、を算出する座標値算出手段と、
上記第1中心点座標値と上記第2中心点座標値との座標差分値を算出する補正値算出手段と、
上記座標差分値を補正値として用い、上記基板と上記マスクとの位置合わせを行う位置補正手段と、を有すること
を特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
上記マスクマークのエッジのうち上記基板マーク及び/又は基板角度マークにより隠れる部分が、上記マスクマークのエッジ全周に対し最大25%以下になるよう、上記マスクマークの面積と、上記基板マーク及び基板角度マーク間の距離とが設定されていることを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項3】
上記位置補正手段は、上記第1線分と上記第2線分とが一致するように上記基板と上記マスクとの位置合わせを行うことを特徴とする請求項1あるいは2に記載のアライメント装置。
【請求項4】
基板とマスクとを重ねる際の位置合わせを行うアライメント方法であって、
上記基板は、
その一角の近傍に形成された基板マークと、
この基板マークの近傍に形成された基板角度マークと、を有し、
更に、上記基板マークと上記基板角度マークとが、上記基板の中心点に対し点対称であり、かつ、上記基板マークと上記基板角度マークとを結ぶ仮想線同士が平行となるよう上記一角の対角近傍にも形成されており、
上記マスクは、
その一対の対角のそれぞれの近傍に形成されたマスクマークを有し、
上記マスクマークは、上記基板マークをそっくり取り込み可能な形状であるとともに、上記基板マークより面積が大きく形成されてなり、
上記アライメント方法は、
上記基板と上記マスクとを重ねて配置した状態で、上記基板側から上記基板マークと上記基板角度マークと上記マスクマークとを測定用画像として取得する画像取得工程と、
上記基板マーク、上記基板角度マーク及び上記マスクマークから取得した測定用画像から、それぞれのエッジを計測することによりそれぞれの中心点の座標値を算出し、この算出した上記基板マークの中心点同士を結ぶ第1線分上の第1中心点座標値と、上記マスクマークの中心点同士を結ぶ第2線分上の第2中心点座標値と、を算出する座標値算出工程と、
上記第1中心点座標値と上記第2中心点座標値との座標差分値を算出する補正値算出工程と、
上記座標差分値を補正値として用い、上記基板と上記マスクとの位置合わせを行う位置補正工程と、を有すること
を特徴とするアライメント方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−7819(P2008−7819A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179517(P2006−179517)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(591065413)トッキ株式会社 (57)
【Fターム(参考)】