説明

アリールカルベン反応性中間体を使用する表面官能化

(a)基材を、置換基が本明細書に記載されたとおりである式(III)または(IV)の化合物であるカルベン前駆体と接触させる工程;(b)前記カルベン前駆体からカルベン反応性中間体を発生させて基材と反応させて表面を官能化し、それにより活性化基材を生じる工程;および(c)(b)において得られる活性化基材を更に官能化する工程を包含する、官能性表面を有する基材の製造方法。工程(c)において、活性化基材を色および/または他の所望の活性導入用ジアゾニウム塩で処理することにより、および/または過酸化水素で処理して殺菌基材を製造することにより更に官能化し得る。本発明は更に表面官能化工程における使用に関するカルベン前駆体化合物、およびカルベン前駆体化合物の製造方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリールカルベンを反応性中間体として使用する基材の表面官能化方法に関する。本発明は、特に、着色し、かつ/または殺菌活性を有する基材製造用ポリマーまたは無機基材の表面官能化方法に関する。本発明の方法は、殺菌活性が再生可能である殺菌性基材の製造に使用され得る。本発明は、更に表面官能化方法において使用するカルベン前駆体化合物、および所定の前駆体化合物の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
共有結合変性を通じて天然および合成ポリマーを着色するのに使用される色素は、最も一般的には発色種に結合した反応性が高い基の存在に依存する。例としては、染料のプロシオン(Procion)およびギバクロン(Gibacron)領域(基材上の求核性残基とクロロトリアジン残基との反応性に依存する)および染料のレマゾール(Remazol)領域(ポリマーにおける適切な反応性基用求核性受容体としてのビニルスルホニル残基に依存する)が挙げられる。これらの両方の染料の反応性種は好ましい基材を有し、必要とされる求核特性を有さなければならない。このタイプの方策の開発はまだ続いている。しかしながら、基材における求核官能性(通常ヒドロキシルまたはアミノ基)の要求に加えて、このアプローチは一般的に生じる結合形成に激しい条件、例えば高温または強塩基性媒体を要求する。
【0003】
更に、種々の天然および合成ポリマーの染色および他の表面変性プロセスへの適用に関して、不活性前駆体からあまり過酷でない条件下において反応性が高いカルベンまたはナイトレン種を生じる、代わりの技術を研究した。カルベンおよびナイトレンのケミストリーはよく示されており、これらの反応性物質(reactive entity)は多くのタイプの官能基と共有結合を形成することが知られている。必要とされるカルベンまたはナイトレンの生成とそれらの固体表面との反応との両方に関する異なるアプローチを使用する、有機固体の表面変性へのこれらの種の適用が報告されている。
【0004】
フランス国特許第1500512号は、カルベンが有機固体と接触することを可能にすることを記述している。好ましい表面変性方法は、揮発カルベンがポリマーと接触することを可能にすることである。しかしながら、このアプローチに固有の限界が存在する。揮発性(すなわち、低分子量)カルベン、かつ比較的高温に安定なカルベンしか適用できない。
【0005】
ジアゾ化合物から発生させられるカルベンの好適な反応性染料としての適用が重要な限界、例えば必要とされるジアゾ前駆体の発生の容易さ(D.R.Braybrook等、J.Photochem.Photobiol A:Chem、1993、70、171)およびカルベン発生プロセスへの染料の安定性、を有することが解った。
【0006】
つい最近、着色へのペンダント活性側鎖を帯びる(carry)カルベンの使用がWO 00/26180に開示された。
【0007】
抗メチシリン黄色ブドウ球菌(Methicillin Resistant Staphylococcus Aureus)(「ゴールデンスタフ(Golden Staph)」)および他の耐性菌の急増が世界中の人口における持続性細菌感染の大きな増加の原因となった。このことは手術における主な問題、特に術後回復が病院の環境でもたらされる感染により困難になることがわかっている。しかしながら、細菌感染の問題は単に医学的応用にのみ限られず、産業が細菌感染の拡大を制御するように圧力が増加されている。例えば、欧州連合において、欧州殺生物性製品指令(98/9/EC)が、抗菌剤を使用して有害細菌に対して一般住民を保護することが可能な欧州産業による注意義務を制定している。
【0008】
防汚ポリマーにおけるハロゲン化フラノンおよびイソチアゾロンの潜在性がWO 99/01514に開示された。この研究において、有機防汚剤を押出可能なポリマーと混合し、防汚性を試験した。しかしながら、この技術の限界は、高価な殺菌剤のバルク分散に依存することであり、狭い範囲のポリマーに限られ、ポリマーが「リプライム(reprime)」され得ないことである。
【0009】
これらの限界は、フラノンの共有結合によりある程度取り組まれてきた。例えば、ポリマータイプの小さな試料でのプラズマ活性化の使用がWO 96/01294に記述されており、ここで生物学的効率が示されている。
【0010】
別の方策は、再生可能な殺菌ポリマーに基づいている。例えば、米国特許第5490983号は殺菌剤用の固定化N−ハラミン(N−halamine)に関する。溶液におけるこれらの化合物の消毒特性が長年知られている(例えば浄水および織物)。米国特許第5490983号の記述は、ポリマーの形態の殺菌剤の固定化に関係し、このポリマーの殺菌活性は概ね再生可能である。しかしながら、一つの固有の問題は、再生技術が塩素を必要とすることである。これは有毒ガスであり、この化合物の使用を最小にする多大な努力が全ての産業にわたって行われている。従って、米国特許第5490983号の技術は本質的に適用が制限されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のものを含む細菌の成長および拡散を制御する既存技術およびポリマー基材へ色を導入する既存技術の限界は、有毒物質の使用および長い合成手順、高価な殺菌剤のバルク分散依存、狭い範囲のポリマーへの制限、殺菌剤の漏出が活性の損失の原因であるため殺菌活性が「リプライム」し得ないこと、および官能化され得るポリマー基材の範囲および形態の点での制限された適用性を含む。本発明はこれらの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は、
(a)基材を以下の式(III)
【化1】

(式中、
A はアリールまたはヘテロ環アリールであり、
p は1、2、3、4または5であり、
は水素、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロアリール、置換または非置換C〜C10アルコキシ、置換または非置換C〜C10アルキルアミノ、置換または非置換ジ(C〜C10)アルキルアミノ、置換または非置換C〜C10アルキルチオ、および非置換または置換および任意にN(R)、OまたはSが割り込んでいてもよいC〜C10アルキル(式中、RはHまたはC〜Cアルキルである。)から選択され、
Q は−N(Z)(Z)および−CH−V−(W−R)から選択され、
およびZ は独立して、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロアリール、置換または非置換C〜C10アルコキシ、置換または非置換C〜C10アルキルアミノ、置換または非置換ジ(C〜C10)アルキルアミノ、置換または非置換C〜C10アルキルチオ、非置換または置換および任意にN(R)、OまたはSが割り込んでいてもよいC〜C10アルキル(式中、RはHまたはC〜Cアルキルである。)から選択され、
V は−alk、−O−alk−、−alk−O−または−O−alk−O−(式中、alkはC〜C10アルキレンである。)であり、
W は以下の式(a)〜(c)
【化2】

(式中、XはO、SまたはNHである。)の一種類の官能基であり、かつ
R はH、非置換または置換C〜Cアルキル、非置換または置換アリールおよび非置換または置換ヘテロアリールから選択され、かつ
n は1、2または3である。)
の化合物および以下の式(IV)
【化3】

(式中、
各AおよびB は同一または異なっており、アリールまたはヘテロアリール環であり、
各QおよびQ は同一または異なっており、−N(Z)(Z)または−CH−V−(W−R)(式中、Z、Z、V、W、Rおよびnは上記式(III)に関して定義されたとおりである。)であり、かつ
各pおよびr は同一または異なっており、1、2、3、4または5である。)
の化合物から選択されるカルベン前駆体と接触させる工程;
(b)該カルベン前駆体からカルベン反応性中間体を発生させて基材と反応させ、表面を官能化させ、それにより活性化基材を生じる工程;および
(c)(b)において得られる活性化基材を更に官能化する工程
を包含する、官能化表面を有する基材の製造方法を提供する。
【0013】
上記に記述したように本発明の工程(c)において、工程(b)において得られる活性化基材を更に官能化する。これに関連して使用される「官能化」は、所望の物理的または化学的特性を示す(別の)化学官能基の、共有結合によるまたは水素結合を介する結合による導入を意味する。
【0014】
活性化基材は、更に活性化基材をジアゾニウム塩で処理することにより官能化され得る。更にまたは代わりに、活性化基材を更に活性化基材を過酸化水素、好ましくは水性過酸化水素で処理することにより官能化してもよい。
【0015】
典型的に、色の導入に関して、工程(c)は工程(b)において得られる活性化基材をジアゾニウム塩で処理し、それによりジアゾ結合着色基材を形成する工程に関する。ジアゾニウム塩は所望の色、例えばシアン、マゼンタ、黄色、黒色、赤色、緑色、青色または橙色が得られるように選択され得る。典型的にはジアゾニウム塩はタイプArNの塩であり、Arは置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換ヘテロアリールであり、アリールまたはヘテロアリール環はAr基のどの位置が置換または非置換であってもよい。典型的にはArは置換または非置換フェニルである。例としてはファストブラックK(fast black K)塩[2,5−ジメトキシ−4−((4−ニトロフェニル)ジアゼニル)ベンゼンジアゾニウムクロリド]または4−N,N−ジメチルアミノベンゼンジアゾニウムクロリドが挙げられる。
【0016】
代わりに、工程(b)において得られる活性化基材をそれ自体官能化して所望の活性を基材に与えるジアゾニウム塩で処理してもよい。従って、特定の所望の活性の導入に関して、工程(c)は工程(b)における活性化基材を官能性ジアゾニウム塩で処理する工程を含み、その官能性は所望の活性を与え得る。所望の活性は、例えば、特定の疎水性または親水性であり得る。
【0017】
殺菌活性の導入に関して、上記方法の工程(c)は工程(b)において得られる活性化基材を過酸化水素で処理して殺菌ポリマー基材を生じる工程を含む。
【0018】
工程(b)において得られる活性化基材をジアゾニウム塩と過酸化水素の両方で処理してもよい。従って、色および殺菌活性の導入に関して、上記本発明の方法の工程(c)は、(d) 工程(b)において得られる活性化基材をジアゾニウム塩で処理し、それによりジアゾ結合着色基材を形成する工程、および(e) 工程(d)において得られるジアゾ結合着色基材を過酸化水素で処理する工程、を包含してもよい。
【0019】
代わりに、殺菌活性および別の所望の活性の導入に関して、上記本発明の方法の工程(c)は、(d’) 工程(b)において得られる活性化基材を官能性が所望の活性を与える官能性ジアゾニウム塩で処理する工程、および(e’) 工程(c)において得られるジアゾ結合基材を過酸化水素で処理する工程、を包含してもよい。
【0020】
典型的には、式(IV)のQが−N(Z)(Z)である場合、Qもまた−N(Z)(Z)である(式中、Zは上記定義したとおりでありQおよびQに関して同一でも異なっていてもよく、Zは上記定義したとおりでありQおよびQに関して同一でも異なっていてもよい。)。
【0021】
典型的には、式(IV)のQが−CH−V−(W−R)の場合、Qもまた−CH−V−(W−R)である(式中、V、W、Rおよびnは上記のとおりでありQおよびQに関して同一でも異なっていてもよい。)。
【0022】
典型的には、式(III)のQは−N(Z)(Z)であり、かつ式(IV)のQおよびQはどちらも−N(Z)(Z)である(式中、Zは上記のとおりでありQおよびQに関して同一または異なっていてもよく、Zは上記の通りでありQおよびQに関して同一または異なっていてもよい。)。
【0023】
典型的には、ZはC〜Cアルキルである。典型的にはZはC〜Cアルキルである。ZおよびZは同一のC〜Cアルキルであってもよい。典型的には、pは1である。典型的には、rは1である。
【0024】
一態様において、式(III)のQおよび式(IV)のQおよびQはどちらも−CH−V−(W−R)である(式中、V、W、Rおよびnは上記のとおりであり、QおよびQに関して同一または異なっていてもよい。)。典型的にはVは−O−alk−である(式中、alkはC〜C10アルキレンである。)。典型的にはWは式(c)の官能基である。典型的にはRは置換または非置換フェニルである。典型的にはnは1である。
【0025】
典型的にはAはフェニルである。典型的にはBはフェニルである。
【0026】
一態様において、本発明は
(a)基材を
以下の式(I)
【化4】

(式中、
各AおよびB は同一または異なっており、アリールまたはヘテロアリール環であり、
n は1〜3の整数であり、
y は0または1〜5の整数であり、
z は0または1〜5の整数であり、
但し、yおよびz は両方とも0ではなく、
V は−alk、−O−alk−、−alk−O−または−O−alk−O−(式中、alkはC〜C10アルキレンである。)であり、
W は以下の式(a)〜(c)
【化5】

(式中、XはO、SまたはNHである。)
の一種類の官能基であり、かつ
R はH、非置換または置換C〜Cアルキル、非置換または置換アリールおよび非置換または置換ヘテロアリールから選択される。)
の化合物および
式(II)
【化6】

(式中、
R は(CHN(R)(R)であり、
はC〜Cアルキルであり、
はフェニルであり、
m は1〜4の整数であり、かつ
X はNである。)
の化合物
から選択されるジアリールカルベン前駆体と接触させる工程;
(b)ジアリールカルベン前駆体からカルベン反応性中間体を発生させて基材と反応させ、表面を機能化させ、それにより活性化基材を生じる工程;および
(c)工程(b)において得られる活性化基材を水性過酸化水素で処理して殺菌ポリマー基材を生じる工程
を包含する殺菌ポリマー基材の製造方法を提供する。この態様において、典型的には、ジアリールカルベン前駆体は式(I)の化合物である。典型的には、yは1〜5の整数であり、zは1〜5の整数である。
【0027】
本発明の方法は、非常に安価かつポリマーの表面のみが変性されるという技術的バルク利点を提供し、これに限定される訳ではないが天然および合成ポリマーおよび無機固体を含む広範囲の基材に適用され得る。ジアゾ結合着色基材の着色は滲出せず、かつ殺菌基材の殺菌活性は再生可能である(すなわち、ポリマーが過酸化水素溶液での処理により何度も再活性され得る。)。
【0028】
ジアリールカルベン前駆体を使用する基材表面官能化のベーシックな技術がWO 00/26180に記述されている。この開示は主として基材を着色するための種々のポリマー基材の表面官能化に関係する。
【0029】
本発明の方法は、他には不活性基材、例えばポリマーを、ジアゾニウム塩の添加により、過酸化水素の添加または官能基(例えば発色団)の添加により殺菌剤の結合を可能にする表面官能性を有する活性化基材に転化する。本発明の関連で、殺菌活性は、次の活性化基材の新たな過酸化水素での再処理により再生可能である。官能性が基材表面に限られているという事実は有利である。なぜならポリマーのバルクが効果的にシールされ、従って、機械的強度を含むポリマーのバルク特性が、表面に与えられる殺菌性、色または他の特性による影響を受けないままであるからである。
【0030】
本発明による処理基材は、上記式(III)または(IV)のジアリールカルベン前駆体から発生されるカルベン反応性中間体と反応可能であるいずれの天然または合成基材であってもよい。この基材は、典型的には、これらに限定される訳ではないが、セルロース、ポリグリコシド、ポリペプチドポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリケトン、ポリオレフィン、ゴム、ポリスチレニクス、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリビニルおよびそれらのコポリマーを含む天然または合成ポリマー;またはこれらに限定される訳ではないが、シリカ、アルミナ、チタニア、ガラス、および炭素の同素体、例えばダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素、グラファイト、フラーレンおよびナノチューブを含む無機材料である。
【0031】
ポリマーを含有する基材において、ポリマー基材の分子量は最終生成物の特定の効用により選択され得る。例えば、本発明により処理されるポリマー基材が殺菌特性を有する場合、ポリマー基材の分子量は殺菌最終生成物の特定の効用により選択され得る。一態様において、基材はエチレンまたはプロピレンのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、シリカ、コットン、シルクおよびウールから選択される。本発明の一態様において、ポリマー基材は表面積が広い形態、例えばパウダーまたはビーズである。
【0032】
ポリマーはホモポリマーまたはコポリマー、例えばブロックコポリマーであり得る。従って、ポリマーは同一または異なるモノマーユニットから誘導され得る。
【0033】
ポリマーは、例えば無機材料との混合物により変性されていてもよい。従って、この基材はポリマーと無機材料の両方を含有、例えばポリマーと無機材料、例えば無機充填材との混合物であってもよい。この基材は、例えば前記一種類以上のポリマーと前記一種類以上の無機材料との混合物を含有してもよい。このタイプの変性ポリマーは、例えば半導体応用における使用に好適である。ポリマーがコーティング剤または結合剤として半導体と使用される場合、加熱時のそれらの異なる挙動による技術的問題が生じ得る。ポリマーの無機充填材の混入は、ポリマーの熱特性の変更に役立ち、半導体との使用によりふさわしくする。
【0034】
式(I)のジアリールカルベン前駆体は新規化合物である。従って、本発明は更に式(I)
【化7】

(式中、
各AおよびB は同一または異なっており、アリールまたはヘテロアリール環であり、 n は1〜3の整数であり、
y は0または1〜5の整数であり、
z は0または1〜5の整数であり、
但し、zおよびy は両方とも0ではなく、
V は−alk、−O−alk−、−alk−O−、または−O−alk−O−(式中、alkはC〜C10−アルキレンである。)であり、
W は以下の式(a)〜(c)
【化8】

(式中、XはO、SまたはNHである。)の一種類の官能基であり、かつ
R はH、非置換または置換C〜Cアルキル、非置換または置換アリール、および非置換または置換ヘテロアリールから選択される。)
の化合物であって、4,4’−ビス(N−アセチル−2−アミノエチル)ジフェニルジアゾメタンではない化合物も提供する。
【0035】
典型的には、zとyは両方とも1いうわけではない。
【0036】
式(I)の一態様において、yは1〜5の整数であり、zは1〜5の整数である。
【0037】
〜C10アルキル基は、非置換または置換、直鎖または分枝鎖飽和炭化水素基である。典型的には、C〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルもしくはヘキシル、またはC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、t−ブチル、s−ブチルもしくはn−ブチルである。アルキル基が置換されている場合、典型的には、非置換C〜Cアルキル、アリール、シアノ、アミノ、C〜C10アルキルアミノ、ジ(C〜C10)アルキルアミノ、アミド、ヒドロキシ、ハロ、カルボキシ、C〜Cアルコキシ、ハロアルキル、スルホン酸、メルカプト基(すなわち、チオール、−SH)、C〜C10チオエーテルおよびスルホニルから選択される一種類以上の置換基を有する。置換アルキル基の例としては、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキルおよびアルコキシアルキル基が挙げられる。
【0038】
アリール基は、典型的には6〜14個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子を環部分に含む、置換または非置換、単環または二環式芳香族基である。例としては、フェニル、ナフチル、インデニルおよびインダニル基が挙げられる。アリール基は非置換または置換である。上記アリール基が置換されている場合、典型的には、非置換C〜Cアルキル、非置換アリール、シアノ、アミノ、アミド、ヒドロキシ、ハロ、カルボキシ、C〜Cアルコキシ、ハロアルキル、スルホン酸およびスルホニルから選択される一種類以上の置換基を有する。典型的には、0、1、2または3個の置換基を有する。
【0039】
アルキレン基は、非置換または置換、直鎖または分枝鎖飽和二価炭化水素基である。典型的には、C〜Cアルキレン、例えばC〜Cアルキレンである。好ましくはC〜Cアルキレン、例えばメチレン、エチレン、i−プロピレン、n−プロピレン、t−ブチレン、s−ブチレンまたはn−ブチレンである。更にペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレンおよびそれらの種々の分枝鎖異性体であってもよい。
【0040】
ヘテロアリール基は、典型的には5〜10員の単環または二環式ヘテロ芳香族環である。一般的には、O、S、N、P、SeおよびSiから選択される少なくとも一種類のヘテロ原子を含む5〜6員環である。例えば、1、2または3個のヘテロ原子を含み得る。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピローリル、オキサゾーリル、オキサジアゾーリル、イソオキサゾーリル、チアジアゾーリル、チアゾーリル、イソチアゾーリル、イミダゾーリル、ピラゾーリル、キノーリルおよびイソキノーリルが挙げられる。ヘテロアリール基は、非置換または置換、例えばアルキルに関して上で述べたものでもよい。典型的には、0、1、2または3個の置換基を有する。
【0041】
本明細書において、語「アミノ」は式−NHの基を意味する。語「C〜C10アルキルアミノ」は式−NHR’(式中、R’は上記C〜C10アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基である。)の基を意味する。語「ジ(C〜C10)アルキルアミノ」は式−NR’R’’(式中、R’およびR’’は同一または異なっており上記C〜C10アルキル基、好ましくは上記C〜Cアルキル基である。)の基を意味する。
【0042】
〜C10アルキルチオ基は、チオ基に結合した前記C〜C10アルキル基である。
【0043】
〜C10アルコキシ基は、酸素原子に結合した前記C〜C10アルキル基である。C〜Cアルコキシ基は、酸素原子に結合した前記C〜Cアルキル基である。C〜Cアルコキシ基は、酸素原子に結合したC〜Cアルキル基である。C〜Cアルコキシ基の例としては、−OMe(メトキシ)、−OEt(エトキシ)、−O(nPr)(n−プロポキシ)、−O(iPr)(イソプロポキシ)、−O(nBu)(n−ブトキシ)、−O(sBu)(sec−ブトキシ)、−O(iBu)(イソブトキシ)、および−O(tBu)(tert−ブトキシ)が挙げられる。
【0044】
アルキレンおよびアルキル基は、一個以上のヘテロ原子またはヘテロ基、例えばS、OまたはN(R)(式中、RはHまたはC〜Cアルキルである。)が割り込んでいてもよい。従って、本明細書中、語句「任意に割り込んでいてもよい」は上記隣接する炭素原子間にヘテロ原子、例えば酸素または硫黄、またはヘテロ基、例えばN(R)(式中、RはHまたはC〜Cアルキルである。)が割り込んでいないかまたは割り込んでいる、C〜C10アルキル基またはアルキレン基に言及する。
【0045】
例えば、C〜C10アルキル基、例えばn−ブチルは、ヘテロ基N(R)が以下のように割り込んでいてもよい:−CHN(R)CHCHCH、−CHCHN(R)CHCH、または−CHCHCHN(R)CH。同様に、アルキレン基、例えばn−ブチレンは、ヘテロ基N(R)が以下のように割り込んでいてもよい:−CHN(R)CHCHCH−、−CHCHN(R)CHCH−、または−CHCHCHN(R)CH−。
【0046】
水素結合が置換基Qおよび/またはQの過酸化物への結合に関係すると考えられている。ジアゾ化合物およびその誘導カルベンの反応性は、芳香環における電子供与または電子吸引基を含むことにより変更され得る。
【0047】
式(III)において各基Qは、環Aの可能な位置を占め得る。式(IV)において各基Qおよび各基Qは、それぞれ環AおよびBの可能な位置を占め得る。パラメータ「p」が1である場合、Aは環の位置においてQにより一置換されている。例えば、Aがフェニル基である場合、位置2、3、4、5および6のいずれにおいて置換されていてもよい。パラメータ「p」が2である場合、Aは二つの位置おいてQにより二置換されている。例えば、Aがフェニル基である場合、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−二置換され得る。パラメータ「p」が3である場合、Aは三つの位置においてQにより三置換されている。例えば、Aがフェニル基である場合、2,3,4−、2,4,5−または3,4,5−三置換され得る。同様に、パラメータ「r」が1である場合、Bは環の位置においてQにより一置換されている。例えば、Bがフェニル基である場合、位置2、3、4、5および6のいずれにおいて置換されていてもよい。パラメータ「r」が2である場合、Bは二つの位置おいてQにより二置換されている。例えば、Bがフェニル基である場合、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−二置換され得る。パラメータ「r」が3である場合、Bは三つの位置においてQにより三置換されている。例えば、Bがフェニル基である場合、2,3,4−、2,4,5−または3,4,5−三置換され得る。
【0048】
式(I)において、各鎖−[CH−V−(W−R)]は、環AおよびBにおける可能な位置を占め得る。パラメータ「y」が1である場合、Bは環の位置において−[CH−V−(W−R)]により一置換されている。例えば、Bがフェニル基である場合、位置2、3、4、5および6のいずれにおいて置換されていてもよい。パラメータ「y」が2である場合、Bは二つの位置おいて−[CH−V−(W−R)]により二置換されている。例えば、Bがフェニル基である場合、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−二置換され得る。パラメータ「y」が3である場合、Bは三つの位置において−[CH−V−(W−R)]により三置換されている。例えば、Bがフェニル基である場合、2,3,4−、2,4,5−または3,4,5−三置換され得る。
【0049】
同様に、パラメータ「z」が1である場合、Aは環の位置において−[CH−V−(W−R)]により一置換されている。例えば、Aがフェニル基である場合、位置2、3、4、5および6のいずれにおいて置換されていてもよい。パラメータ「z」が2である場合、Aは二つの位置おいて−[CH−V−(W−R)]により二置換されている。例えば、Aがフェニル基である場合、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−二置換され得る。パラメータ「z」が3である場合、Aは三つの位置において−[CH−V−(W−R)]により三置換されている。例えば、Aがフェニル基である場合、2,3,4−、2,4,5−または3,4,5−三置換され得る。
【0050】
パラメータ「n」は−W−Rにより示される部分に条件を付け、従って、式(I)、(Ia)、(III)および(IV)の化合物中に存在する水素結合している基Wの数を明確にする。nが2または3である場合、鎖−[CH−V−(W−R)]における部分−V−(W−R)は、例えば、−(CR’−CR’(W−R)、−O−(CR’−CR’(W−R)、−(CR’−C(W−R)または−O−(CR’−C(W−R)(式中、pは0または1〜10の整数であり、各R’は独立してHまたはC〜Cアルキルである。)により示され得る。
【0051】
一態様において、式(I)および式(III)の化合物は以下の式(Ia)
【化9】

(式中、各y、V、WおよびRは上記のとおりである。)
の化合物である。
【0052】
別の態様において、式(I)または式(III)の化合物は以下の式(Ib)
【化10】

(式中、各V、WおよびRは上記のとおりである。)
の化合物である。
【0053】
式(III)または(IV)のカルベン前駆体化合物の好ましい例は、1−{2−[4−(ジアゾ−フェニル−メチル)−ベンジルオキシ]−エチル}−3−フェニルウレア(以降、化合物XIII)である。この化合物は、以下のスキーム1において示される様に製造され得る。4−ブロモメチルベンゾフェノン(D.D.Tanner等、J.Org.Chem.、1980年、第45巻、5177頁により製造され得る。)を最初にエタノールアミンと結合する。生じるベンゾフェノンをドライジクロロメタンにおけるフェニルイソシアネートでの処理により尿素化合物に転化し得る。この尿素化合物を還流メタノールにおけるヒドラジンハイドレートでの一晩の処理、続く溶媒の除去およびジクロロメタン中への抽出によりヒドラゾンに転化し得る。ヒドラゾンの対応するジアゾジアリールカルベン前駆体への酸化をエーテル中で酸化水銀、または他の好適な酸化剤を使用して都合よく行い得る。
【化11】

【0054】
式(III)または(IV)(式中、Qおよび/またはQは上記のとおり−CH−V−(W−R)である。)のカルベン前駆体化合物は、市販の出発原料または既知の技術により容易に合成され得る出発原料からスキーム1に示す方法と類似の方法により製造され得る。
【0055】
式(II)のジアリールカルベン前駆体はWO 00/26180で知られている。式(II)の化合物の好ましい例は、4−([N−エチル−N−フェニル−2−アミノエチル]オキシメチル)フェニルフェニルジアゾメタン(以降、化合物XVI)である。この化合物は以下のスキーム2に示されるように製造され得る。
【化12】

【0056】
式(III)または(IV)の化合物の好ましい例は、ビス−4,4’−N,N−ジメチルアミノジフェニルジアゾメタン(以降、化合物3)である。この化合物は以下のスキーム3に示されるように製造され得る。ミヒラーケトン(1)を、エタノール中、ヒドラジンハイドレートとの反応により既知のヒドラゾン(2)に転化し得る。このヒドラゾンはテトラヒドロフラン中で黄色酸化水銀を使用してジアゾメタン(3)に酸化され得る。
【化13】

【0057】
式(III)または(IV)(式中、Qおよび/またはQは上記のとおり−N(Z)(Z)である。)のカルベン前駆体化合物は、市販の出発原料または既知の技術により容易に合成され得る出発原料からスキーム3に示される方法に類似の方法により製造され得る。
【0058】
スキーム3に示される方法は、キーとなる中間体2の新しい製造手順を含む。この化合物2の製造手順は、文献の実験記録(S.Huenig等、Eur.J.Org.Chem、2002年、第10巻、1603−1613頁)の実質的な簡易化および改良を示す。
【0059】
従って、本発明は更に式(VII)または(VIII)
【化14】

(式中、
A はアリールまたはヘテロアリール環であり、
B はアリールまたはヘテロアリール環であり、
p は1、2、3、4または5であり、
r は1、2、3、4または5であり、
は水素、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロアリール、置換または非置換C〜C10アルコキシ、置換または非置換C〜C10アルキルアミノ、置換または非置換ジ(C〜C10)アルキルアミノ、置換または非置換C〜C10アルキルチオ、および非置換または置換および任意にN(R)、OまたはSが割り込んでいてもよいC〜C10アルキル(式中、RはHまたはC〜Cアルキルである。)から選択され、
Q は−N(Z)(Z)であり、
はQと同一または異なっており、−N(Z)(Z)であり、
およびZ は独立して非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロアリール、置換または非置換C〜C10アルコキシ、置換または非置換C〜C10アルキルアミノ、置換または非置換ジ(C〜C10)アルキルアミノ、置換または非置換C〜C10アルキルチオ、および非置換または置換および任意にN(R)、OまたはSが割り込んでいてもよいC〜C10アルキル(式中、RはHまたはC〜Cアルキルである。)から選択される。)
の化合物の製造方法であって、式(V)または(VI)
【化15】

(式中、A、B、Q、Q、p、rおよびRは上記のとおりである。)
の化合物を熱および溶媒の存在下においてヒドラジンで処理する工程を包含する方法も提供する。
【0060】
典型的には、ヒドラジンはヒドラジンハイドレートの形態で使用される。好適な溶媒を用いる(例えば、極性プロトン性溶媒、例えばアルコール)。典型的には、溶媒はエタノールである。反応を、加熱しながら、典型的には使用される溶媒の還流温度において行う。例えば、溶媒がエタノールである場合、反応を温度78℃以上、例えば温度80℃において好適に行う。
【0061】
次に、式(VII)および(VIII)の生じる化合物を、それぞれ上記のとおり式(III)および(IV)のカルベン前駆体化合物に転化し得る。従って、一態様において、上記のとおりの方法は更に式(VII)または(VIII)の化合物を酸化してそれぞれ式(III)または(IV)
【化16】

【化17】

(式中、A、B、Q、Q、p、rおよびRは上記のとおりである。)
のカルベン前駆体化合物を製造する工程を包含する。
【0062】
好適な酸化剤を使用し得る。典型的には、酸化剤は非プロトン性極性溶媒(例えばテトラヒドロフラン(THF)またはエーテル)中の酸化水銀である。より典型的には、この酸化は塩基(例えば金属水酸化物および硫酸ナトリウム)の存在下において行われる。金属水酸化物は、典型的には、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化カリウムである。金属水酸化物の飽和溶液を通常使用する。金属水酸化物に関して使用される溶媒は、好適には極性プロトン性溶媒、例えばアルコール、例えばエタノールである。式(VII)または(VIII)の化合物の溶液に関して使用される溶媒は、好適には極性プロトン性溶媒、例えばテトラヒドロフランである。
【0063】
従って、製造される式(III)または(IV)のカルベン前駆体化合物は、カルベン前駆体として本発明の上記のとおりの官能性表面を有する基材の製造方法の工程(a)において使用され得る。
【0064】
本明細書における「カルベン反応性中間体」は形式上二価の炭素原子を含有する反応性種を意味する。カルベン反応性中間体は、基材との不可逆性共有結合反応を生じる条件下における処理により式(III)または(IV)のカルベン前駆体から発生される。一般的に、カルベンは、基材およびあらかじめ吸着されたカルベン前駆体化合物を加熱または照射することにより発生される。なぜなら、式(II)または(IV)のカルベン前駆体は通常強い色調(赤〜橙色)であり、カルベンの形成および割り込みは脱色により最も容易に観測されるからである。
【0065】
本発明の方法により製造される着色基材は、非滲出着色ポリマー(そのような例は食品および飲料のパッケージである。)の製造に関する染料産業において使用され得る。それらは特定の波長吸収特性、例えば紫外線または赤外線吸収を与えるために使用され得る。基材がフォトクロミズムを示す能力をコンタクトレンズの医療市場において利用し得る。蛍光マーカーの導入がセキュリティータギング用途を可能にする。本発明により製造される着色基材は、表面からの滲出がわずかであるか全くない不可逆着色ができ、このことはそれらの使用に関連する重要な実用面での利点である。
【0066】
本発明の方法により製造される殺菌ポリマー基材は多くの異なる分野において使用され得るが、それらは特に細菌感染、ウィルス感染または真菌感染の発生がリスクである状況において有用性を有する。例えば、それらは医療、産業、ケータリング、家庭、公衆衛生または軍事用途を有し得る。過酸化水素ベースの殺菌剤は無味無臭であり、従って、塩素ベースの殺生物剤との多くの関連で好ましい。
【0067】
殺菌ポリマー基材は、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌、並びにウィルスを含む広範囲の微生物に対して有効である。細菌の具体例としてはS.AureusおよびE.Coliが挙げられる。
【0068】
本発明の方法により製造される殺菌ポリマー基材の下流使用の具体例としては、浄水システム(小規模と産業の両方)における使用、水濾過システム(例えば家庭および軍隊使用の、非常時適用および災害救助における水濾過カートリッジ)における使用、空気清浄システム(例えば航空機、呼吸器および環境保護製品における空気再循環システム)における使用、医療装置および軍隊備品および衣服(例えば手術衣、手術用マスクおよび手術器具)における使用、および医療用具(例えばインプラント、ステントおよびカテーテル)における使用が挙げられる。
【0069】
本発明の方法により製造される殺菌ポリマー基材は使用後多くの場合過酸化水素での処理により再生でき、このことはその使用に関連する重要な実用面での利点である。再生は、基材の水性過酸化水素での簡単な再洗浄により達成され得る。
【0070】
この方法は、発色および殺菌用途から他の化学的反応性官能性を含むように拡張できる。この方法を使用して、例えば特定の疎水性または親水性表面を有する基材を製造し得る。
【0071】
本発明を更に以下の実施例において説明する。
【実施例】
【0072】
実施例1:1−{2−[4−(ジアゾ−フェニル−メチル)−ベンジルオキシ]−エチル}−3−フェニルウレア(XIII)の製造
【0073】
4−(アミノエトキシメチル)ベンゾフェノンハイドロクロリド(X)
ドライエタノールアミン(1.0g、16.4mmol)のドライTHF(5ml)溶液に水素化ナトリウム(0.7g、60%鉱物油分散体、16.4mmol)を数部において5分間にわたって添加した。ドライTHF(5ml)の別のアリコートを添加し、生じる混合物を1時間撹拌した。この混合物に4−ブロモメチルベンゾフェノン(IX)(4.5g、16.4mmol)ドライTHF(25ml)溶液を添加した。生じる混合物を、真空中で濃縮する前に18時間撹拌しておいた。残留物をクロロホルムと水との間に分配し、有機層を回収し、水で洗い、次に2M HClで抽出した。真空中で濃縮する前に組み合わせた酸性抽出物をクロロホルムで一度洗った。残留物を9:1 クロロホルム:メタノール混合物に溶解し、硫酸ナトリウム上で乾燥した後に真空中で濃縮し、(X)(2.6g、55%)を淡黄色固体として生じた。これを更なる精製無く使用した。
【0074】
1−[4−ベンゾイル−ベンジルオキシエチル]−3−フェニルウレア(XI)
(X)(3.49g、12mmol)のドライDCM(10ml)における撹拌懸濁液にドライトリエチルアミン(10ml)を添加した。0.25時間の撹拌後、フェニルイソシアネート(2.14g、18mmol)のドライDCM(10ml)溶液を一部において添加した。この混合物を更に16時間撹拌し、次に水(10ml)でクエンチした。有機相を回収し、連続的に水、2M HCl、および水で洗った。有機層をMgSO上で乾燥し、フラッシュクロマトグラフィーによりシリカゲル上で2:1 ガソリン40/60:エチルアセテートで抽出して精製し(R=0.1)、(XI)(3.01g、67%)を白色固体として生じた。m.p.129〜132℃;δ(DMSO−d,200MHz)3.39(q,2H,J=5.1Hz,NHC),3.58(t,2H,J=5.0Hz,OCCH),4.65(s,2H,OCAr),6.32(t,1H,J=5.2Hz CHC(O)NHAr),6.90(t,1H,J=7.3Hz,4’’−),7.24(t,2H,J=7.4Hz,3’’−,5’’−),7.44(d,2H,J=7.6Hz,2’’−,6’’−),7.56(m,4H,3−,5−,3’−,5’−),7.70(m,5H,2−,4−,6−,2’’−,6’’−)8.63(s,1H,CHNHC(O)NAr)ppm;δ(DMSO−d,400MHz)39.9(CHNH),70.4(CHO),72.1(ArO),118.4(2’’−,6’’−),121.9(4’’−),128.1(2−,6−,2’−,6’−),129.4(3’’−,5’’−),130.4,130.6(3−,5−,3’−,5’−),133.5(4’−),136.9,138.0(1−,1’’−),141.3(4−),144.4(1’’−),156.1(N(H)(O)NH),196.3(Ar(O))ppm;νmax 3431(N−Hstr),1724((R(H)N)C=Ostr),1658(ArC=Ostr)cm−1;m/z 375[M+H](5%),397[M+Na](10%),433[M+MeCN+NH(100%);測定値375.1703,C2323理論値375.1709.
【0075】
1−{2−[4−(ヒドラゾノ−フェニル−メチル)−ベンジルオキシ]−エチル}−3−フェニルウレア(XII)
(XI)(0.7g、1.9mmol)のメタノール(10ml)溶液をヒドラジンハイドレート(1.9g、38mmol)で処理した。生じる溶液を加熱して16時間穏やかに還流し、冷却し、かつ真空中で濃縮した。残留物をDCMと水との間で分配し、有機層を回収し、水で洗浄し、かつMgSO上で乾燥した。真空中での濃縮は(XII)(0.7g、99%)を濃い濁った白色油として生じた。δ(CDCl,200MHz)3.47(m,2H,N(H)CCH),3.61(m,2H,OCCH),4.43,4.52(s,2H,ArCO),5.49(s,2H,NN),6.55(m,1H,CHC(O)),6.99(m,1H,4’’−),7.22(m,7H,3−,3’−,3’’−,4’−,5−,5’−,5’’−),7.46(m,6H,2−,2’−,2’’−,6−,6’−,6’’−),7.80(m,1H,ArNC(O))ppm;νmax 3435(N−Hstr),1734((R(H)N)C=Ostr)cm−1;m/z 389[M+H](15%),447[M+MeCN+NH(100%);測定値389.1973、C2325理論値389.1978.
【0076】
1−{2−[4−ジアゾ−フェニル−メチル)−ベンジルオキシ]−エチル}−3−フェニルウレア(XIII)
黄色酸化水銀(0.18g、0.8mmol)、硫酸ナトリウム(0.14g、1mmol)および飽和KOHエタノール溶液(1ml)の勢いよく撹拌されている混合物に、(XII)(0.27g、0.7mmol)のTHF(10ml)溶液を添加した。この混合物を暗所で16時間撹拌し、次にセライトパッドを通じて濾過した。濾液を回収し、真空中で濃縮して(XIII)(0.27g、100%)を暗赤色固体として生じた。m.p.111〜115℃、136℃において脱色。δ(CDCl,200MHz)3.43(m,2H,CHNH),3.69(m,2H,CHO),4.49(s,2H,ArCO),5.80(bs,1H,CHC(O)),7.02(m,1H,4’’−),7.41−7.44(m,13H,Ar−),7.44(s,1H,ArNC(O))ppm;δ(CDCl,400MHz)40.3(NH),62.4(CHO),68.0(ArO),120.3(4’’−),123.2(4’−),125.0,125.8,126.5,126.7(2−,2’−,2’’−,6−,6’−,6’’−),128.9,129.1,129.2,129.3(1−,1’−,3−,3’−,3’’−,5−,5’−,5’’−),135.0,138.9(4−,1’’−),156.5(NH(O)NH)ppm;νmax 3344(N−Hstr),2042(RC=N=N),1658((R(H)N)C=Ostr)cm−1;m/z 445[M+MeCN+NH(100%).
【0077】
参照例1:4−([N−エチル−N−フェニル−2−アミノエチル]オキシメチル)フェニルフェニルジアゾメタン(XVI)の製造
【0078】
4−([N−エチル−N−フェニル−2−アミノエチル]オキシメチル)ベンゾフェノン(XIV)
THF(20cm)中の2−(N−エチルアニリノ)エタノール(3.03g、18.4mmol、1.2当量)をNaH(60%分散油、524mg、13.1mmol、1.4当量)で処理し、20℃において1時間撹拌した。次に4−ブロモメチルベンゾフェノン(IX)(4.21g、15.3mmol)を添加し、72時間撹拌を続けた。過剰の溶媒を真空中で除去し、残留物をDCMで希釈し、水およびNaHCO溶液(飽和)で洗い、乾燥(MgSO)し、かつ溶媒を真空下で除去した。生じるオイルを石油(bp40〜60℃):EtOAc(9:1)で溶出してフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、所望の生成物(XIV)を黄色油(4.36g、80%)として与えた(R=0.54(4:1、石油:EtOAc)(測定値:C,78.34;H,6.86;N,5.29。C2425NO理論値 C,80.19;H7.01;N,3.90%))。νmax(フィルム/cm−1 1658(s),1598(s),1506(s);δ(200MHz;CDCl)1.22(3H,t,J7,C),3.49(2H,q,J7,CCH),3.58−3.79(4H,m,OCN)、4.66(2H,s,ArCO),6.69−6.79(3H,m,NRに対してo−およびp−のAr),7.28(2H,dd,J7,7,NRに対してm−のAr),7.46−7.68(5H,m,Ar),7.80−7.88(4H,m,C=Oに対してo−のAr);δ(50.3MHz;CDCl)12.2(),45.5(NCH),50.1(NCHO),68.5(NCHO),72.2(ArO),111.8(NRに対してo−のArH),115.8(NRに対してp−のArH),127.0,128.3,129.3,130.0および130.3(C=Oに対してo−およびm−のArHおよびNRに対してm−のArH),132.4(C=Oに対してp−のArH),136.8および137.7(4°ArC=O),143.2(4°ArCHO),147.7(4°ArNR),196.4(=O);m/z(APCI)360([M+H],30%);HRMS C2426N理論値360.1963;測定値360.1963.
【0079】
4−([N−エチル−N−フェニル−2−アミノエチル]オキシメチル)ベンゾフェノンヒドラゾン(XV)
上記ベンゾフェノン(701mg、1.95mmol)をヒドラジンハイドレートと反応させてヒドラゾン(XV)を無色のオイル(710mg、97%)として生じた。νmax(フィルム)/cm−1 1598(s),1506(s);δ(500MHz;CDCl)1.27および1.31(3H,2*t,J7,C),3.52および3.57(2H,2*q,J7,CCH),3.60−3.87(4H,m,NCO),4.63および4.71(2H,2*s,ArCO)5.57(2H,br s,NN),6.76−6.87(3H,m,Nrに対してo−およびp−のAr),7.30−7.42(7H,m,Ar),7.53−7.64(4H,m,C=Nに対してo−のAr);δ(125.8MHz;CDCl)12.0(),45.1および45.2(NCH),49.8(NCHO),67.8および68.1(OCHN),72.6および72.7(ArO),111.5および111.6(NRに対してo−のArH),115.5および115.6(NRに対してp−のArH),126.2,127.1,127.7,127.8,128.1,128.5,128.6,128.9,129.0および129.1(ArH),131.9および132.8(4°ArCHO),137.7,137.8,138.3および138.9(4°ArC=N),147.5(4°ArNR),148.1(C=NNH);m/z(APCI)374([M+H],5%),357(5%),209(100%).
【0080】
4−([N−エチル−N−フェニル−2−アミノエチル]オキシメチル)フェニルフェニルジアゾメタン(XVI)
上記ベンゾフェノンヒドラゾン(701mg、1.88mmol)を酸化水銀および硫酸ナトリウムと反応させてジアゾメタン(XVI)を紫色液体(690mg、99%)として生じた(測定値:C,78.06;H,6.89;N,12.36。C2425O理論値C,77.60;H,6.78;N,11.31%)。νmax(フィルム)/cm−1 2037(s),1559(m);δ(500MHz;CDCl)1.26−1.32(3H,m,C),3.50−3.80(6H,m,NCCHおよびNCO),4.65(2H,s,ArCO),6.78−6.86(3H,m NRに対してo−およびp−のAr),7.28−7.65(11H,m,Ar);δ(125.8MHz;CDCl)12.1(),45.3(NCH),50.0(NCHO),67.9(OCHN),72.8(ArO),111.7(NRに対してo−のArH),115.6(NRに対してp−のArH),125.0,125.5,126.3,128.3,128.4,128.7,129.0,129.1および129.2(4°ArおよびArH),135.7(4°ArCHO),147.7(4°ArNR);m/z(APCI)344([M−N,20%),209(100).
【0081】
実施例2:官能性ポリマービーズ/パウダーの製造
【0082】
実施例1記載の化合物(XIII)、または比較例1記載の化合物(XVI)のドライTHF溶液に所望のポリマーを添加し、この混合物を真空中で濃縮した。生じる暗赤色ステンドポリマー(stained polymer)を回収し、ヒートガンを使用して上記暗赤色着色が消えるまで加熱した。生じる固体を円筒濾紙に置き、アセトンで12時間ソックスレー抽出した。固体を回収し、乾燥して官能性ポリマーを生じた。
【0083】
【表1】

官能化工程中に使用される化合物1または2対ポリマーの重量−重量比;アンバーライトXAD−4非イオン性吸収剤(Aldrich 21,648−8);超高分子量ポリエチレンパウダー(Aldrich 43,426−4);ポリテトラフルオロエチレンビーズ(Aldrich 18,247−8);(SorbsilTM60H(40〜60μM)シリカゲル)。
【0084】
実施例3:官能性ポリマーへの過酸化水素の負荷
【0085】
過酸化水素負荷方法
必要とされるポリマーの試料を50%水性過酸化水素に1時間懸濁し、ポリマーを濾過により回収し、水1〜1.5lで洗い、回収し、ヨウ化カリウム10%水性酢酸溶液で処理した。5分間置いた後、1%水性でんぷん溶液を添加し、懸濁液を1時間放置した。生じる暗青色溶液をチオ硫酸ナトリウムで無色の終点まで滴定した。この混合物を更に1時間放置し、溶液の別の青色着色を更にチオ硫酸ナトリウムで滴定した。
【0086】
【表2】

【0087】
実施例4:過酸化水素官能性ポリマーの安定性
【0088】
過酸化水素官能性ポリマーの安定性試験方法
実施例3に記述される官能性ポリマーBの試料(50mg)を50%水性過酸化水素中で18時間懸濁した。ポリマーを濾過により回収し、水1〜1.5lで洗い、コック付瓶に回収し、暗い戸棚中室温にて貯蔵した。規則的な時間間隔において試料10mgを回収し、上記手順を使用して過酸化水素負荷を試験した。
【0089】
【表3】

【0090】
実施例5:官能性ポリマーへの過酸化水素の負荷の再生可能性
【0091】
過酸化水素官能性ポリマーの再生可能性試験方法
必要とされるポリマーの試料(0.05g)を50%水性過酸化水素(2ml)中で18時間懸濁した。このポリマーを濾過により回収し、水1〜1.5lで洗い、回収し、ヨウ化カリウム10%酢酸溶液および水で処理した。5分間置いた後、1%水性でんぷん溶液を添加し、懸濁液を1時間放置した。過酸化水素のポジティブ試験は暗青色溶液の形成であった。次にこの混合物を無色になるまでチオ硫酸ナトリウムでクエンチし、ポリマーを濾過し、水1〜1.5lで洗った。次にこのポリマーを新しい50%水性過酸化水素(2ml)で再懸濁し、サイクルを繰り返した。
【0092】
上記手順を実施例3に記載のポリマー試料BおよびFを使用して行った。結果を以下の表4に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
実施例6:バイオアッセイ
【0095】
バイオアッセイ方法
選択された生物体が植え付けられた寒天プレートに10mm穴を開けた。これらの穴に20μlの溶解した寒天を添加した。セットする時ポリマー試料をこの穴に添加してポリマーの薄層を製造した。次にこの穴を別の50μlの溶解寒天でシールし、このプレートを37℃において一晩インキュベートし、抑制ゾーンの直径を測定した。
【0096】
二種類の異なる微生物ステインで得られる結果を以下の表5および6に提示する。
【0097】
(a) S Aureus
【表5】

【0098】
【表6】

【0099】
実施例7:ビス−4,4’−N,N−ジメチルアミノジフェニルジアゾメタン(3)の製造
【0100】
ビス−4,4’−N,N−ジメチルアミノジフェニルジアゾメタン(3)を製造し、ポリマーをスキーム4に示されるように官能化した。
【化18】

【0101】
4,4−ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンヒドラゾン(2)
ミヒラーケトン(5.0g、19mmol)のエタノール(10ml)における懸濁液をヒドラジンハイドレート(5.0ml、100mmol)で処理した。生じる混合物を加熱して穏やかな還流を72時間行い、冷却し、かつ真空中で濃縮した。残留物を2−プロパノール(50ml)で希釈し、生じる固体を濾過により回収し、かつ真空中で乾燥して2(4.8g、91%)をベージュ固体として生じた。m.p.151〜152℃;δ(d−DMSO,200MHz)2.89(s,2H,2xNC),2.97(s,2H,2xNC),5.81(br s,2H,NN),6.64(d,2H,J=8.9Hz,3−,5−),6.86(d,2H,J=8.8Hz,3’−,5’−),7.05(d,2H,J=8.8Hz,2’−,6’−),7.22(d,2H,J=8.9Hz,2−,6−)ppm;δ(d−DMSO,200MHz)40.9(4xN),112.6(3−,5−),113.2(3’−,5’−),121.1(1−),127.8(2−,6−),128.7(1’−),130.3(2’−,6’−),150.6(ArC=NNH)ppm;νmax 1626,1545,1350,1180cm−1;ms 283([M+H],100%),305([M+Na],10%).
【0102】
ビス−4,4’−N,N−ジメチルアニリンジアゾメタン(3)
黄色酸化水銀(0.46g、2.1mmol)、硫酸ナトリウム(0.35g、2.5mmol)およびエタノール(3ml)における飽和水酸化カリウムの激しく撹拌されている混合物にテトラヒドロフラン(10ml)における2(0.5g、1.8mmol)の溶液を添加した。この混合物を暗所において18時間撹拌し、次にセライトパッドを通じて濾過した。濾液を回収し、真空中で濃縮して3(0.5g、100%)を暗緑色固体として生じた。m.p.94℃(低下);δ(CDCl,200MHz)2.96(s,12H,4xNC),6.81(d,4H,J=6.8Hz,3−,3’−,5−,5’−),7.17(d,4H,J=6.8Hz,2−,2’−,6−,6’−)ppm;δ(CDCl,200MHz)149.1(4−,4’−),132.7(1−,1’−),126.8(3−,3’−,5−,5’−),114.0(2−,2’−,6−,6’−),41.1(4xN)ppm;νmax 2020(ArC=N=N),1606,1519,1356cm−1
【0103】
実施例8:ポリマービーズ/パウダー/織物(4a〜q)の官能化
【0104】
3のトルエンまたはテトラヒドロフラン(10ml)溶液(表1)に所望のポリマーを添加し、この混合物を真空中で濃縮した。ポリマーを回収し、真空中で110℃に15分間加熱した。生じる固体をアセトンで6時間ソックスレー抽出し、固体を回収し、乾燥して官能性ポリマー4a〜qを生じた(表7)。
【0105】
【表7】

表7 官能化工程の間に使用されるジアゾメタン対ポリマーの比。ポリマーにおいてジアゾ吸収に関して使用される溶媒。アンバーライトXAD−4。架橋ポリスチレン。超高分子量ポリエチレン。表面変性超高分子量ポリエチレン。ポリエチレン。ポリプロピレン。ナイロン−610。標準の編まれたコットン。シルケット加工織コットン。ポリ(エチレンテレフタレート)。
【0106】
実施例9:ポリマーの着色
【0107】
(i)ファストブラック着色ポリマー6a〜6r
【0108】
ポリマー4a〜rをファストブラックK塩5の0.1Mアセトン溶液中に18時間官能性ポリマーを浸すことにより着色した。次にこのポリマーを濾過により回収し、アセトンで洗って対応するジアゾポリマー6a〜rを供給した(表2、スキーム5)。
【化19】

【0109】
(ii)4−N,N−ジメチルアミノベンゼンジアゾニウム着色ポリマー
【0110】
4−N,N−ジメチルアミノベンゼンジアゾニウムクロリド(7)の製造
N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン(1.0g、7.3mmol)のエタノール(10ml)における氷冷溶液に濃塩酸(0.72ml、7.3mmol)および亜硝酸イソアミル(1.6ml、12mmol)を添加した。この混合物を10分間撹拌し、次にジエチルエーテル(50ml)で希釈した。生じる固体を濾過し、ジエチルエーテルで洗った。真空中で乾燥して6(1.1g、77%)を暗緑色固体として生じた。δ(d−DMSO,200MHz)3.29(s,6H,2xNC),7.10(d,2H,J=7.8Hz,3−,5−),8.30(d,2H,J=7.8Hz,2−,6−)ppm;δ(d−DMSO,200MHz)157.0(4−),134.9(2−,6−),114.8(3−,5−),89.91(1−),41.4(2xN)ppm.
【0111】
4−N,N−ジメチルアミノベンゼンジアゾニウム着色UHMWPE(8)
UHMWPE4cを7の1Mメタノール溶液に18時間浸した。このポリマーを濾過により回収し、アセトン、水およびメタノールで洗って対応するジアゾポリマー8を供給した(表8)。
【化20】

【0112】
【表8】

【0113】
実施例10:官能性ポリマー(9a〜s、10)への過酸化水素の結合
【0114】
過酸化水素(50%水性溶液、10ml)を含むフラスコに官能性ポリマー(4a〜fまたは8)を添加し、この混合物を室温において暗所中16時間おいておいた。このポリマーを濾過により分離し、固体を水(1〜1.5l)で洗って過酸化水素付加物を生じた(スキーム7)。
【化21】

【0115】
酸化剤負荷の測定方法
必要とされるポリマーの試料を50%水性過酸化水素中で18時間懸濁した。ポリマーを濾過し、水で洗い、回収し、かつ10%水性ヨウ化カリウム(0.1M)酢酸溶液で処理した。5分間置いた後、1%水性でんぷん溶液を添加し、懸濁液を1時間放置した。生じる暗青色溶液をチオ硫酸ナトリウムで無色の終点まで滴定した。混合物を1時間放置し、この溶液の別の青色着色を別の着色が存在しなくなるまでチオ硫酸ナトリウムで更に滴定した(表9)。
【0116】
【表9】

【0117】
実施例11:バイオテスト
【0118】
バイオテスト方法
S.Aureusが植え付けられた寒天プレートに10mm穴を開けた。これらの穴に溶解した寒天20μlを添加した。ポリマー試料を穴に添加する時ポリマーの薄膜が製造されるように添加した。次に穴を別の50μlの溶解寒天でシールし、プレートを37℃において一晩インキュベートし、この後ゾーンを測定した(表10)。
【0119】
S.Aureusを生じるバイオアッセイ
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基材を、以下の式(III)
【化1】

(式中、
A はアリールまたはヘテロアリール環であり、
p は1、2、3、4または5であり、
は水素、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロアリール、置換または非置換C〜C10アルコキシ、置換または非置換C〜C10アルキルアミノ、置換または非置換ジ(C〜C10)アルキルアミノ、置換または非置換C〜C10アルキルチオ、および非置換または置換および任意にN(R)、OまたはSが割り込んでいてもよいC〜C10アルキル(式中、RはHまたはC〜Cアルキルである。)から選択され、
Q は−N(Z)(Z)および−CH−V−(W−R)から選択され、
およびZ は独立して、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロアリール、置換または非置換C〜C10アルコキシ、置換または非置換C〜C10アルキルアミノ、置換または非置換ジ(C〜C10)アルキルアミノ、置換または非置換C〜C10アルキルチオ、および非置換または置換および任意にN(R)、OまたはSが割り込んでいてもよいC〜C10アルキル(式中、RはHまたはC〜Cアルキルである。)から選択され、
V は−alk、−O−alk−、−alk−O−または−O−alk−O−(式中、alkはC〜C10アルキレンである。)であり、
W は以下の式(a)〜(c)
【化2】

(式中、XはO、SまたはNHである。)の一種類の官能基であり、かつ
R はH、非置換または置換C〜Cアルキル、非置換または置換アリールおよび非置換または置換ヘテロアリールから選択され、かつ
n は1、2または3である。)
の化合物および以下の式(IV)
【化3】

(式中、
各AおよびB は同一または異なっており、アリールまたはヘテロアリール環であり、
各QおよびQ は同一または異なっており、−N(Z)(Z)または−CH−V−(W−R)(式中、Z、Z、V、W、Rおよびnは上記式(III)に関して定義されたとおりである。)であり、かつ
各pおよびr は同一または異なっており、1、2、3、4または5である。)
の化合物から選択されるカルベン前駆体と接触させる工程;
(b)該カルベン前駆体からカルベン反応性中間体を発生させて基材と反応させ、表面を官能性にし、それにより活性化基材を生じる工程;および
(c)(b)において得られる活性化基材を更に官能性にする工程
を包含する官能性表面を有する基材の製造方法。
【請求項2】
工程(c)が工程(b)において得られる活性化基材を過酸化水素で処理して殺菌性基材を生じる工程を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(c)が工程(b)において得られる活性化基材をジアゾニウム塩で処理し、それによりジアゾ結合着色基材を形成する工程を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ジアゾニウム塩がArN(式中、Arは非置換または置換アリールおよび非置換または置換ヘテロアリールから選択される。)である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
工程(c)が工程(b)において得られる活性化基材を官能性ジアゾニウム塩で処理し、それによりジアゾ結合基材を形成し、ここでジアゾニウム塩の官能性がジアゾ結合基材に所望の活性を与える工程を包含する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
更に工程(c)において得られるジアゾ結合基材を過酸化水素で処理して殺菌性ジアゾ結合基材を生じる工程を包含する、請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該基材がポリマーを含有する、従前請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該基材が無機材料を含有する、従前請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該基材がポリマーと無機充填材との混合物を含有する、従前請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
該ポリマーがホモポリマーまたはコポリマーである、請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
該ポリマーがポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレニクス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリグリコシド、ポリペプチド、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリケトン、ゴム、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリビニル、セルロースおよびブロックコポリマーから選択される、請求項7〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
該無機材料がシリカ、アルミナ、チタニア、ガラスおよび炭素の同素体から選択される、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
該カルベン前駆体がビス−4,4’−N,N−ジメチルアミノジフェニルジアゾメタンおよび1−{2−[4−(ジアゾ−フェニル−メチル)−ベンジルオキシ]−エチル}−3−フェニルウレアから選択される、従前請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
従前請求項のいずれかに記載の方法により得られ得る基材。
【請求項15】
請求項2または請求項6に記載の方法により得られ得る殺菌性ポリマー基材。
【請求項16】
請求項15記載の殺菌性ポリマー基材を組み込む、浄水システム、水濾過システム、空気清浄システム、衣類、手術用機器または医療装置。
【請求項17】
請求項3〜6のいずれかに記載の方法により得られ得る着色基材。
【請求項18】
請求項17記載の着色基材を組み込む、包装用品、レンズまたはセキュリティータグ。
【請求項19】
式(I)
【化4】

(式中、
各AおよびB は同一または異なっており、アリールまたはヘテロアリール環であり、 n は1〜3の整数であり、
y は0または1〜5の整数であり、
z は0または1〜5の整数であり、
但し、zおよびy は両方とも0ではなく、
V は−alk、−O−alk−、−alk−O−、または−O−alk−O−(式中、alkはC〜C10アルキレンである。)であり、
W は以下の式(a)〜(c)
【化5】

(式中、XはO、SまたはNHである。)
の一種類の官能基であり、かつ
R はH、非置換または置換C〜Cアルキル、非置換または置換アリール、および非置換または置換ヘテロアリールから選択される。)
の化合物であって、4,4’−ビス(N−アセチル−2−アミノエチル)ジフェニルジアゾメタンではない化合物。
【請求項20】
以下の式(Ia)
【化6】

(式中、yは1〜5の整数であり、かつ各V、WおよびRは請求項19において定義されたとおりである。)
の化合物である、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
yが1である、請求項19または20記載の化合物。
【請求項22】
以下の式(Ib)
【化7】

(式中、各V、WおよびRは請求項19において定義されたとおりである。)
の化合物である、請求項19記載の化合物。
【請求項23】
式(VII)または(VIII)
【化8】

【化9】

(式中、
A はアリールまたはヘテロアリール環であり、
B はアリールまたはヘテロアリール環であり、
p は1、2、3、4または5であり、
r は1、2、3、4または5であり、
は水素、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロアリール、置換または非置換C〜C10アルコキシ、置換または非置換C〜C10アルキルアミノ、置換または非置換ジ(C〜C10)アルキルアミノ、置換または非置換C〜C10アルキルチオ、および非置換または置換および任意にN(R)、OまたはSが割り込んでいてもよいC〜C10アルキル(式中、RはHまたはC〜Cアルキルである。)から選択され、
Q は−N(Z)(Z)であり、
はQと同一または異なっており、−N(Z)(Z)であり、かつ
およびZ は独立して非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロアリール、置換または非置換C〜C10アルコキシ、置換または非置換C〜C10アルキルアミノ、置換または非置換ジ(C〜C10)アルキルアミノ、置換または非置換C〜C10アルキルチオ、および非置換または置換および任意にN(R)、OまたはSが割り込んでいてもよいC〜C10アルキル(式中、RはHまたはC〜Cアルキルである。)から選択される。)
の化合物の製造方法であって、熱および溶媒
【化10】

【化11】

(式中、A、B、Q、Q、p、rおよびRは上で定義されたとおりである。)
の存在下において式(V)または(VI)の化合物をヒドラジンで処理する工程を包含する方法。
【請求項24】
更に式(VII)または(VIII)の化合物を酸化してそれぞれ式(III)または(IV)
【化12】

(式中、A、B、Q、Q、p、rおよびRは請求項23において定義されたとおりである。)
のカルベン前駆体化合物を製造する工程を包含する、請求項23記載の方法。

【公表番号】特表2008−526942(P2008−526942A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550850(P2007−550850)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000139
【国際公開番号】WO2006/075183
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(500056231)アイシス・イノベーション・リミテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】ISIS INNOVATION LIMITED
【Fターム(参考)】