アルカリ媒体中におけるアンモニア及びエタノールを酸化するためのカーボンファイバー電極触媒、ならびに水素生成、燃料電池および精製プロセスへのその適用
アルカリ媒体中におけるアンモニア及びエタノールの酸化に有用な電極触媒。本電極触媒は、カーボン支持体、OHに対して強い親和性を有する第1のめっき層、及びアンモニア又はエタノールの酸化に対して強い親和性を有する第2のめっき層を含む。カーボン支持体は、カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ及びカーボンマイクロスフェア等の材料から選択される場合がある。第1のめっき層は、ロジウム、ルテニウム、ニッケル及びパラジウム、並びにこれらの組み合わせから選択される。第2のめっき層は、白金、インジウム及びこれらの組み合わせから選択される。又、本明細書に記載の1つ以上の電極触媒、塩基性電解質、及びアンモニア又はエタノールを含む、水素を生成するための電解セルも提供する。又、本明細書に記載の電極触媒を利用するアンモニア燃料電池及びエタノール燃料電池も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2005年10月14日に出願された、表題「Carbon fiber−electrocatalysts for the Oxidation of Ammonia and Ethanol in Alkaline Media and their Application to Hydrogen Production,Fuel Cells,and Purification Processes」の米国仮出願第60/726,884号(この全体が、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アルカリ媒体中におけるアンモニア及びエタノールの酸化のための新規の電極触媒が必要とされる理由は、以下の通りである。第一には、アンモニア及び/又はエタノールの電解のための連続電解セルが存在しないためであり、第二には、現在利用可能な電極が何れも、表面妨害による電極の被毒を克服できないためであり、第三には、カーボンファイバー及び/又はカーボンナノチューブの強レート(hard rate)性能を保証する手順が存在しないためである。従って、連続電解セル中でアンモニア及び/又はエタノールの電解に使用することができる新規の電極触媒が必要とされている。更には、表面妨害による電極の被毒を克服することができる電極も必要とされている。そして最後に、カーボンファイバー及び/又はカーボンナノチューブの強レート性能を保証する新規の手順も必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(要旨)
本明細書では、アルカリ媒体中におけるアンモニア及びエタノールの酸化に有用な電極触媒を提供する。本明細書に記載の電極触媒は、カーボン支持体、OHに対して強い親和性を有する第1のめっき層、並びにアンモニア又はエタノールの酸化に対して強い親和性を有する第2のめっき層を含む。カーボン支持体は、カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ、及びカーボンマイクロスフェア等の材料から選択される場合がある。第1のめっき層は、ロジウム、ルテニウム、ニッケル及びパラジウム、並びにこれらの組み合わせから選択される。第2のめっき層は、白金、イリジウム、及びこれらの組み合わせから選択される。白金:イリジウムの組み合わせを使用する場合は、白金:イリジウムの比率が、約99.99:0.01〜約50:50の範囲となる場合がある。幾つかの実施形態において、白金:イリジウムの比率は、約95:5〜約70:30である。他の実施形態において、白金:イリジウムの比率は、約80:20〜約75:25である。第1のめっき層は、少なくとも約2mg/cmの被覆率を有するのが好ましい。幾つかの実施形態において、合計めっき被覆率は、約4mg/cm〜約10mg/cmの範囲にある。
【0004】
又、水素を生成するための電解セルも提供する。一般的に、電解セルは、本明細書に記載の1つ以上の電極触媒、塩基性電解質、及びアンモニアを含む。第2の実施形態において、電解セルは、本明細書に記載の1つの以上の電極触媒、塩基性電解質、及びエタノールを含む。幾つかの実施形態において、塩基性電解質は、必要とされる化学量論的割合よりも過剰に添加される。幾つかの実施形態において、塩基性電解質は、約3M〜約7Mの範囲の濃度を有する。アンモニアは、約0.01M〜約5Mの範囲の濃度で本電解セル中に存在する場合がある。幾つかの実施形態において、アンモニアは、約1M〜約2Mの範囲の濃度で電解セル中に存在する。
【0005】
一実施形態において、アンモニア電解セルは、本明細書に記載の電極触媒を含む1つの電極、及びアルカリ媒体中における水素の発生に対して活性を有する第2の電極を含む。本実施形態において、第2の電極は、白金、レニウム、パラジウム及びラネーニッケル、又は当業者に既知の他の電極から選択される場合がある。別の実施形態において、アンモニア電解セルは、本明細書に記載の電極触媒を有する2つの電極を含む。
【0006】
又、本明細書に記載の電極触媒をアノードとして利用する燃料電池も提供する。カソードは、ニッケル、白金黒、及び他の適切な電極から選択される場合がある。一実施形態において、燃料はアンモニアであり、塩基性電解質の濃度は、アンモニアの濃度よりも約2倍〜約5倍高い。別の実施形態において、塩基性電解質の濃度は、アンモニアの濃度よりも約3倍高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本明細書では、アルカリ媒体における種々の化学品の電解のために開発されてきた担持カーボンファイバー(ナノチューブ又はカーボンファイバー)上に電着した貴金属(層状)で製造されている電極触媒を提供する。本明細書で提供する電極触媒は、表面被覆効果をなくし、反応に対してクリーンな活性表面領域を維持する。
【0008】
一実施形態において、本明細書で提供する電極触媒は、開発した触媒をアノード又はカソードとして使用して、アルカリ媒体中においてアンモニア溶液から水素を生成するために、電解セル中で使用される。別の実施形態において、本明細書で提供する電極触媒は、開発した触媒をアノード又はカソードとして使用して、アルカリ媒体中でエタノール溶液から水素を生成するために、電解セル中で使用される。別の実施形態において、本明細書で提供する電極触媒は、開発した触媒をアノードとして使用して、アンモニア燃料電池中で使用される。別の実施形態において、本明細書で提供する電極触媒は、開発した触媒をアノードとして使用して、エタノール燃料電池中で使用される。更に別の実施形態において、本明細書で提供する電極触媒は、開発した触媒を使用して、アンモニアで汚染された排出物をアンモニアの酸化によって浄化する、電気化学処理プロセスで使用される。当業者であれば、本明細書で提供する電極触媒の更なる用途を認識するであろう。
【0009】
本明細書では又、アルカリ媒体中においてエタノール及びアンモニアを電解するための連続電解セルも提供する。この電力発電システムは、アンモニア及び/又はエタノール電解セル、並びにプロトン交換膜燃料電池及び/又はアルカリ型燃料電池により統合される。
【0010】
本発明では又、カーボンファイバー及びナノ−チューブ電極を調製する手順も提供する。本明細書に記載の手順によって、ファイバーとナノチューブの電子導電率が、電極用の金属基板のレベルまで増大する。
【0011】
本明細書に記載の電極触媒を含む電極は、特にアルカリ媒体中における、アンモニア酸化及び/又はエタノールの酸化に特に有用である。これらの触媒は、以下の用途に特に有用である:即ち、触媒をアノード又はカソードとして使用してアルカリ媒体中においてアンモニア又はエタノール溶液から水素を生成するための電解セル、触媒をアノードとして使用するアンモニア及び/又はエタノール燃料電池、検出部の一部として触媒を使用するアンモニア濃度/活性測定用センサー、触媒を使用して、アンモニアに汚染された排出物をアンモニアの酸化によって浄化する電気化学処理プロセス。
【0012】
本明細書に記載の方法によれば、前記電極触媒は2層に沈着される。第1の層は、OHに対して強い親和性を有する金属を含む。例としては、Rh、Ru、Ni及びPdが含まれる。好ましい材料はRhである。第1層の被覆率は、ファイバーの完全なめっきを保証するために少なくともファイバーの2mg/cmでなければならない。第2の層は、アンモニア及び/又はエタノールの酸化に対して強い親和性を有する1つ以上の金属を含む。例としては、Pt及びIrが含まれる。これらの材料のモノメタル沈着及び/又はバイメタル沈着が行われる場合がある。PtとIrの比率は、100%Pt:0%Ir〜80%Pt:20%Irの範囲にあってよい。
【0013】
本明細書に記載の電極触媒を含む電極は、水素の生成用の電解セルに有用である。本電解セルは、a)1つ以上の電極触媒、b)アルカリ溶液、即ち塩基性電解質、及びc)アンモニアを含む。他の実施形態において、本電解セルは、a)1つ以上の電極触媒、b)アルカリ溶液、即ち塩基性電解質、及びc)エタノールを含む。塩基性電解質は、電極触媒と適合し、アンモニア又はエタノールと反応せず、且つ高導電率を有する何れかのアルカリ電解物であってよい。殆どの実施形態において、塩基性電解質は、必要とされる化学量論的割合よりも過剰に添加される。幾つかの一実施形態において、塩基性電解質は、添加したアンモニアの量よりも化学量論的に約3倍量のレベルで添加される。幾つかの実施形態において、電解質は水酸化カリウムであり、これは、約3M〜約7Mの濃度で使用される場合がある。幾つかの実施形態において、水酸化カリウムは約5Mのレベルで添加される。適切な塩基性電解質の別の例としては、同様の濃度レベルの水酸化ナトリウムがある。水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムが、使用される場合があるアルカリ電解物の例であるが、当業者に既知のその他多くのアルカリ電解物が使用される場合もある。
【0014】
本明細書に記載の電解セルのアンモニアは、アンモニア溶液であり、このアンモニアの供給源は特に限定されない。電解セルのアンモニア(即ち、水酸化アンモニウム)は水に溶解される場合があり、これは、使用するための準備ができるまで保存された後、セルに直接供給してもよい。このアンモニアは、高圧で、液化ガスとして保存された後、使用する準備ができてから、水と電解質と組み合わせる場合がある。このアンモニアは又、電解質溶液中に溶解した硫安等があるがこれに限定されない適切なアンモニウム塩から得る場合もある。アンモニアは、約0.01M〜約5Mの濃度で存在する場合がある。幾つかの実施形態において、電解セル中のアンモニア濃度は、室温にて約1M〜約2Mとなる。温度が高くなるほど、アンモニアの濃度を高くするのが望まれる場合がある。
【0015】
本明細書に記載の電極触媒を含む電極は、電解セルのアノードとして使用される場合もあれば、アノードとカソードの両方として使用される場合もある。一実施形態において、電解セルは、a)本明細書に記載の電極触媒を含む少なくとも1つの電極、b)約3M〜約7Mの濃度の水酸化カリウム、及びc)約0.5M〜2Mの濃度のアンモニアを有する。別の実施形態において、電解セルは、a)本明細書に記載の電極触媒を含む2つの電極、2)約5Mの水酸化カリウム、及び3)約1Mのアンモニアを有する。電解セルの他の実施形態において、本明細書に記載の電極触媒を含む電極は、アノード又はカソードとしてのみ使用され、他方は、アルカリの媒体中における水素の発生に対して活性を有する何れかの電極から選択される場合がある。このような電極の例としては、白金、レニウム、パラジウム、並びにラネーニッケル等の貴金属が含まれるが、これらに限定されない。更に他の適切な電極は、当業者であれば容易に決定することができよう。
【0016】
本電解セルは広範な温度で動作することができる。一般的に、本明細書に記載の電解セルは、約20℃〜約70℃で動作する場合がある。一実施形態において、電解セルは周囲温度にて動作する。別の実施形態において、電解セルは、約60℃〜約70℃の温度範囲で動作する。別の実施形態において、電解セルは、約20℃〜約60℃の温度範囲で動作する。別の実施形態において、電解セルは約30℃〜約70℃の温度範囲で動作する。別の実施形態において、電解セルは約30℃〜約60℃の温度範囲で動作する。別の実施形態において、電解セルは約40℃〜約50℃の温度範囲で動作する。更に別の実施形態において、大気圧より高い圧力が使用され、70℃を超える高温で使用できるようにする。
【0017】
水素を生成するために電解セルに印加する電流密度は、約25mA/cm2〜約500mA/cm2の範囲にある場合がある。幾つかの実施形態において、電流密度は、約50mA/cm2〜約100mA/cm2の範囲にある。幾つかの実施形態において、電流密度は、約25mA/cm2〜約50mA/cm2の範囲にある。幾つかの実施形態において、電流密度は、約50mA/cm2〜約500mA/cm2の範囲にある。幾つかの実施形態において、電流密度は、約100mA/cm2〜約400mA/cm2の範囲にある。幾つかの実施形態において、電流密度は、約200mA/cm2〜約300mA/cm2の範囲にある。
【0018】
又、水素ガスを調製する方法も提供され、この方法は、上記の電解セル中でアンモニアを酸化することを含む。電解セルを使用して水素ガスを調製する場合は、塩基性電解質の化学量論的過剰量が使用される。幾つかの実施形態において、塩基性電解質は、アンモニアの量よりも少なくとも3倍のレベルで存在する。幾つかの実施形態において、電解セルの電解質はKOHである。幾つかの実施形態において、電解セル中のアルカリ電解物及びアンモニアの濃度は、それぞれ5M及び1Mである。電解セルでは、電解セルの温度及び電流密度が、生成する水素の量に影響する。適切な温度及び電流密度は上述の通りである。
【0019】
アンモニアを電解セル中で使用する場合、本明細書に記載の電解セルでは、水素と窒素ガスの両方が生成される。従って、アンモニアの酸化によって生成される窒素ガスを回収することによって、水素ガスを生成するのと同じ方法が、窒素ガスの生成に適用される場合がある。
【0020】
本明細書に記載の電極触媒は又、アンモニア燃料電池にも応用できる。アンモニウム燃料電池は、本明細書に記載の触媒を含む電極であるアノード、カソード、アンモニア及び塩基性の(即ち、アルカリ溶液)電解質を有する。ニッケル及び白金黒は、適切なカソードの非限定的な2つの例であるが、当業者に既知の他のカソードが使用される場合もある。燃料電池は、ほぼ室温、例えば約20℃〜25℃、最大約70℃までの何れかの温度で動作する場合がある。幾つかの実施形態において、燃料電池は室温にて動作する。幾つかの実施形態において、燃料電池中で使用する塩基性電解質は、何れかの適切な塩基性電解質である場合があり、例えばアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物等の無機水酸化物である場合がある。適切な塩基性電解質には、本明細書に記載の触媒に悪影響を及ぼさず、アンモニアと反応せず、良導電性を有するアルカリ媒体がある。幾つかの実施形態において、アルカリ電解物は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである。一実施形態において、電解質は水酸化カリウムである。燃料電池の中で使用する塩基性電解質の量は、アンモニアの量に対して化学量論的に過剰な量である。幾つかの実施形態において、アルカリ電解物の濃度は、アンモニアの濃度よりも少なくとも約3倍高い。一実施形態において、塩基性電解質及びアンモニアの濃度は、それぞれ約5M及び約1Mである。燃料電池に使用するアンモニアは、液体又は、水又は塩基性媒体に溶解した状態のガス状のアンモニアであってもよければ、又は塩基性媒体の中で溶解した適切なアンモニウム塩であってもよい。
【0021】
本発明の電極触媒は又、アンモニアの検出用のセンサーとしても有用である。
開発した触媒の存在下におけるアンモニア(低濃度でも)の酸化中にアノードで収集された実電流レスポンスを見れば、これらの触媒がアンモニア電気化学センサーの理想的な触媒であることがわかる。これらの電気化学的センサーは、試料中の痕跡量のアンモニア汚染を検出するために使用される場合がある。
【0022】
本発明の電極触媒のアンモニアの強い活性は、たとえアンモニア濃度が低くても、汚染された排出物からアンモニアを除去するプロセスに有用である。従って、汚染された排出物からアンモニア汚染物質を除去する方法であって、前記方法が、汚染された排出物中のアンモニア汚染を酸化するために本明細書に記載の電極触媒を使用することを含む、方法も提供する。本方法においては、電解セルを調製し、本明細書に記載の電極触媒を含む少なくとも1つの電極を使用し、排出物中のアンモニア汚染物質を酸化する。この排出物は連続的な流れとして供給される場合があり、アンモニアは、排出物から電気化学的に除去し、浄化した排出物は放出されるか、他の用途のために保存される。
【0023】
貴金属上で、相当量の電流密度がアンモニアの酸化から得ることができるが、この電極は全く可逆的ではない。同様の状況が、アルカリの媒体中におけるエタノールの電解酸化で生じる。更に、電極の活性化は表面の被覆率によって制限される。図1及び2には、サイクリックボルタンメトリー実験中の両反応(アルカリ媒体中におけるエタノール及びアンモニア電解酸化)の電極の不活化を示す。
【0024】
本出願では、これらの両方の問題、即ち可逆性及び不活化を克服するアンモニア及びエタノールの酸化に対して活性を有する電極のための新規の設計及び製法を提案する。
【0025】
エタノール及びアンモニアの電解からの連続的なin−situ水素発生装置の開発:水素は、燃料電池を使用する発電のための主な燃料供給源であるが、その効果的な保存及び輸送は技術的に困難であると言える。現在の水素生成コストでは、分散型発電の燃料電池技術は、従来の石油燃料電力システムと比較した時に、経済的な競争力がない。(分散型水素の)現在の技術では、H2の1kg当たり5ドル〜6ドルのコストで水素を生成することができる。この生成コストの高さは、一部に、生成物の分離/精製コストが高いこと、動作温度及び圧力が高いことによる。現在の技術を使用すれば、水素は、アルコールと炭化水素の部分酸化、触媒的水蒸気改質、又は熱改質によって得ることができる。しかしながら、これらのプロセスは全て高温で行い、このプロセスによって、水素生成物から除去しなくてはならない副産物として大量のCOxを生成する。これらのCOx副産物の殆どは、燃料電池触媒の被毒を引き起こし、燃料電池性能の劣化を招く。燃料ストリームからこれらを除去すると、このプロセスが、複雑で、大規模且つ高価なものになってしまう。現在では、純粋な水素を得る最もクリーンな方法は、水の電解によるものである。水の電解中では、電気的な力(通常太陽電池による)で、水分子を破壊し、純酸素と水素の両方を生成する。このプロセスの不都合な点は、水素を生成するためには大量の電力が必要であるということである。水の酸化のための理論的なエネルギー消費量は、生成する(25℃にて)H2の1モル当たり66W−時である。従って、太陽エネルギーを使用する($/kWh 0.2138のコストで)場合、水の電解によって生成する水素の理論的なコストは、H2の1kg当たり7ドルと見積もられる。
【0026】
同時係属中の米国特許出願第10/962,894号では、アルカリ媒体中でアンモニアを電解酸化することができる電解セルが開示される。しかしながら、記載のセルはバッチセルであった。本出願では、アンモニアとエタノールの電解酸化のための連続電解セルについて説明する。
【0027】
カーボンファイバーとナノチューブの低い電子導電率:カーボンファイバーとナノチューブのめっきは困難な技術である。この問題の殆どは、これらの材料が、比較的低い電子導電率を有することにあり、そのため、表面におけるコーティング力が乏しくなる(例えば、容易に剥離する)。ファイバーの電子導電率は、電気的接続からの長さに沿って減少するため、電気的接点に最も近い先端部に比べると、電気接続点から最も遠い接点では転送する電流が小さくなる。
【0028】
本明細書には、カーボンファイバーとナノチューブのための電気めっき手順を記載し、これによってこれらの問題を克服する。即ち、電極に一定の電流分布を供給し、コーティングの接着性も高め、それによって電極の耐久性を増強する。
【0029】
アンモニア及びエタノール酸化用電極触媒:担持カーボンファイバー(ナノチューブ又はカーボンファイバー)上に電着された貴金属(層状)で製造されている電極触媒が、アルカリ媒体中における種々の化学品の電解のために開発されてきた。本発明は、表面被覆効果を排除し、反応のためのクリーンな活性表面領域を提供する。
【0030】
Gerisherによって提案された機序によれば、アルカリ媒体中におけるアンモニア電解中に生じる表面妨害は、元素の窒素の存在によるものであると考えられている。
【0031】
【化1】
式中、Mは電極上の活性部位を表す。
【0032】
Gerisherの提案による機序は正確ではなく、この反応が生じるために電極上でOHを吸着する必要があるということを、本発明者等は2つの独立した方法により実証した。更に、電極は活性部位に吸着されたOHによって不活化する。
【0033】
分子モデリングの結果、活性Pt部位におけるOH−の吸着は強く(化学吸着)、これは以下の反応式によって表すことができる。
【0034】
【化2】
図3には、OHと白金クラスターの間の結合を示す。このシステムは密度汎関数法(Density functional Method)を使用してモデル化した。計算はB3PW91及びLANL2DZ法、及び基底系(basis set)をそれぞれ使用して行った。Pt−OHクラスターの結合エネルギーは、−133.24kcal/molと高く、これにより、Ptクラスター活性部位のOHの化学吸着が確認できる。
【0035】
更に、回転ディスク電極(RDE)の微視的モデル化の結果並びに実験結果から、OHの吸着は強力であり、触媒の不活化の原因となることが示されている。
【0036】
図4では、KOH溶液のベースラインとOHの存在下における同溶液とが比較されている。この曲線より、Hg/HgO電極に対して約−0.7Vで現われる第1の酸化ピークは、OH−の電気吸着と関係があることが示されている。
【0037】
図5には、OH−の電気吸着の実験結果と予測結果(微視的なモデリングによる)の比較を示す。この結果から、このモデルで実験結果をかなりよく予測することができることが示されている。更に、電極の表面におけるOHの吸着による表面妨害の発現が見られた(吸着物による印加電位に伴うθ減衰反応の活性部位に注意)。もし表面が清浄であれば、(被覆なしのモデルの結果を参照)、OH−の電気吸着は、より高い電位で継続し、且つより速くなるであろう。
【0038】
実験結果をモデリング結果と集計して、本出願の発明者は、アルカリ媒体中のアンモニアの電解酸化のために、以下の機序を提案する。第一に、アンモニア分子が電極に接近すると共にOHの吸着が起こり、それは表面上で吸着する。アンモニアの酸化により、OH吸着物の幾つかは水分子の形態で表面から放出される。しかしながら、OHの吸着がより強く、OHイオンが、電極の表面へより速く移動するため、これは最終的に電位の増加に伴って不活化される。電極上でOHとNH3の吸着の間で競合があるであろう。この機序の結果は、以下に示す本提案の反応で要約するが、図6でも要約している。
【0039】
【化3】
この機序は、低電位(SHEに対して負)におけるアルカリ溶液中の他の化学品の電解酸化まで拡大することができる。例えば、エタノールの電解酸化まで拡大されている。本提案の機序により、明らかに優れた電極の設計が期待できる。使用する材料は、NH3及び/又はエタノール又は他の対象となる化学品の吸着を高めることになる(又、アルカリ媒体中の水の電解を高めることができる)。少なくとも2つの材料の組み合わせが必要である。材料の内の1つは、OHによって吸着される可能性が他方よりも高いものであり、これは対象となる化学品の電解酸化に利用可能な活性部位を残すことになる(例えば、NH3及び/又はエタノール)。
【0040】
連続電解セル:エタノール及びアンモニアから水素をin−situにて生成する連続電解セルを、本出願において指定し、試験する。水素は100%の感応電流効率で、両方のプロセスで生成する。何れの場合も、カソードで生じる反応は、アルカリ媒体中における水の還元である。
【0041】
【化4】
カーボンファイバー及びカーボンナノチューブ電極の設計:カーボンファイバー及びカーボンナノチューブの電子導電率は、異なる層における沈着によって増強した。触媒の第1の層は、OHの吸着に対して極めて高い活性を有するのに対して、第2の層は、対象となる化学品の吸着に対して極めて高い活性を有する材料で製造されている(例えば、アンモニア及び/又はエタノール)。
【0042】
電極の調製:図7には、めっき中に(及び電極の動作中においても)カーボンファイバーの電子導電率を増大させるために使用する手順の概略図を示す。ファイバーはチタンガーゼで包み、それゆえ、種々の地点で金属と電気的に接触した。この改良により、ファイバーはどの地点でも容易且つ均質にめっきされた。このファイバー中の任意の地点における電子導電率は、Tiガーゼの電子導電率(極めて高い)と同じであった。
【0043】
図8には、めっき前後の電極の走査型電子顕微鏡写真を示す。ファイバーの電子導電率を増加させ、OH吸着のための遊離基板とするため、Rhの第1の層を電極に沈着させた(OHはPtよりもRhに対して高い親和性を有する)。Ptからなる第2の層を電極にめっきした。このPt層は、全てのRh部位を被覆したわけではなく、Rhの表面を好ましいOH吸着剤として機能させたままにした。
【0044】
電極の性能:図9には、異なる電極組成によるアンモニアの電解酸化のためのサイクリックボルタンメトリー性能を示す。Rhのみでめっきしたカーボンファイバーは、反応に対して活性を有さないのに対して、Ptのみでめっきした場合には、電極が活性を有するものの、被毒しやすいことに留意されたい。一方、電極を層状にめっきして製造する場合は、まず、Rhを沈着させた後、Ptからなる第2の層を沈着させると、電極が活性を維持する。このことは、前項に記載の機序によって説明される。図9では、電極を調製する新しい手順及び製法によって、表面妨害に対処できることが示されている。
【0045】
図10には、アンモニアの電解酸化に対する種々の合計負荷量の影響を示す。この結果から、最も低い負荷量による触媒が、アンモニアの電解酸化に対してより効率的であることが示唆される。これは、プロセスの経済面に対して有益である(より安価な触媒)。触媒を追加しても、反応に対して実際に活性を有さない層を何層も形成するに過ぎない。
【0046】
図11には、アルカリ溶液中におけるアンモニアの電解酸化の触媒組成物の影響を示す。電極の組成と電極の性能上に差は見られない。これは基本的に、Rhの第1の層が電極にめっきされている限り、表面妨害が回避されることによるものである。更に、Ptのめっきを追加すると、表面全体において完全には活性を示さないPtの島状成長を引き起こすことになる(図8のSEM図を参照)。
【0047】
図12には、電極の性能に対するアンモニア濃度の影響を示す。アンモニア濃度の影響は、電極性能に対しては無視できる程度のものである。これは、活性Pt部位が連続反応に必要とされるNH3を既に吸着してしまっているためである。
【0048】
図13には、アンモニアの電解酸化に対するOHの濃度の影響を示す。OHの濃度が高いほど、反応速度が早くなる。但し、OHの濃度とは無関係に、電極が連続した活性(被毒なし)を維持することに留意されたい。
【0049】
図14には、エタノールの電解酸化に関する電極の評価を示す。アルカリ媒体中におけるエタノールの連続した電解酸化は、表面妨害がなく達成される。このことは、本発明がこの化学物質に対しても有効であることを示している。
【0050】
連続電解セル:アルカリ媒体中においてアンモニア及び/又はエタノールを連続電解するプロトタイプシステムを構築した。カソードでは、100%の感応電流効率でH2が連続して生成される。このセルの設計寸法は小さく(4×4cm)、少ないエネルギー及び消費電力で相当量のH2を生成することができる。このセルのカソードでH2が生成されると、H2が雲状に観察される。H2は相当量生成されており、このことは、in−situにおいてH2を生成するための本セルの使用を実証している。図15には、アンモニア電解セルのエネルギー収支及び電力収支を示す。本セルは、市販の水電解槽よりも性能が優れている。本セルのエネルギー及び電力収支の両方によって、本セルがPEM H2燃料電池の一部のエネルギーを利用して動作することができ、更に本システム(アンモニア電解セル/PEM燃料電池)が幾らかの正味エネルギーを提供することが示唆される。この配置は、水素保存量を最小限にするために使用することができる。
【0051】
一例として、システムは1日当たり480kgのH2を生成する。電力システムの建設には、合計100万ドルの設備投資が必要となる。分散型電源の現行の技術(天然ガス改質及び水電解)と比べた、アンモニア連続電解セルを使用したH2生成に関する経済分析の比較を行った。アンモニア連続電解装置では、1kg当たり2ドル未満で水素を生成することができる。in−situ水素生成の他の技術と比べると、経費削減はかなりのものである。米国科学アカデミーから提供された数字を使用すると、本アンモニア連続電解セルでは、天然ガス水蒸気改質法を使用して生成するよりも約20%安価にH2を生成し、且つ水電解法を使用して生成するよりも約57%安価にH2を生成した。
【0052】
電極の調製
手順は2つの手順に分割される。第1の手順は電極の構築である。電極の構築概略図を図7に示す。めっきの手順は、1.第1層のめっき、及び2.第2層のめっきの2つの手順から構成される。
【0053】
第1層のめっき:この手順は、OHに対して強い親和性を示す材料でカーボンファイバー又はカーボンナノチューブをめっきすることからなる。例としては、Rh、Ru、Ni及びPdが含まれるが、これらに限定されない。好ましい一実施形態においては、Rhが使用される。第1層の被覆が、ファイバーを完全にめっきする必要がある。幾つかの実施形態において、第1層の被覆率は、ファイバーの完全なめっきを保証するために少なくともファイバーのmg/cmとする。他の実施形態において、第1層の被覆率は、ファイバーの2.5、3.0及び3.5mg/cm等である場合がある。
【0054】
第2層のめっき:この手順は、アンモニア及び/又はエタノールの酸化に対して強い親和性を有する材料で電極をめっきすることからなる。例としては、Pt及びIrが含まれる。これらの材料のモノメタル沈着(monometallic deposition)及び/又はバイメタル沈着(bimetallic deposition)が行われる場合がある。PtとIrの比率は、100%Pt:0%Ir〜80%Pt:20%Irの範囲にあってよい。
【0055】
表Iには、電解セルのアノード及びカソードのめっき条件を要約する。ロジウムをめっきした後、その電極を秤量する。重量はロジウムの負荷量に相当する。次いで、白金をロジウムの上に沈着させる。この手順後、この電極を再び測定する。この測定値が、合計負荷量に相当することになる。白金の負荷量は、ロジウムの前回の測定値から合計負荷量を減算して得る。次いで、白金/ロジウムの関係は、固定負荷量の割合として計算される。負荷量はファイバーの長さに依存するため、別の測定も計算しなければならない。10cmのファイバーの重量は39.1mgであることが知られている。ファイバーの重量が知られていることから(手順1にて計算)、それに比例して、各電極で使用されている全ファイバーの長さも知ることができる。
【0056】
表IIには、めっき浴の一般的な条件を要約する。めっきの全体的な手順中に、ファイバー及び/又はナノチューブへの化学種の輸送を増強するために、溶液を混合した。表IIIには、幾つかの電極組成、長さ及び貴金属の負荷量の例を示す。
【0057】
要約すると、電極は、貴金属の第1層でめっきされたカーボンファイバー及び/又はカーボンナノチューブ基板から構成される。この金属は、OHに対して強い親和性を有する。次いで、電極を、アンモニア及び/又はエタノールに対して強い親和性を有する貴金属でめっき(モノメタル沈着(single deposition)及び/又はバイメタル沈着)を行った。
【0058】
【表1】
電解セル
電解セルのアノードを、上述の手順を使用して構築した。このアノードは2層の材料でめっきしたカーボンファイバーから構成される。第1の層は、OHに対して親和性を有する金属で製造されており、第2の層は、アンモニア及び/又はエタノールに対して親和性を有する1つ以上の金属で製造されている。
【0059】
カソードはアノードと同様に作成した。このカソードは、全く同じ方法で構築できると考えられ、或いはカーボンファイバーから、及び/又はニッケルでめっきされたカーボンナノチューブから構成されてもよい。
【0060】
このファイバーは金属ガーゼ上に置く(包む)。溶液のアルカリ媒体と同様に、酸性の沈着浴のための何れの不活性材料も使用できると考えられる。好ましい実施形態において、金属ガーゼはチタンである。
【0061】
本セルの筐体は、何れかの非伝導性ポリマーで製造することができる。例としては、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、アクリル等が含まれる。好ましい実施形態において、筐体はテフロン(登録商標)である。本セルのガスケットはテフロン(登録商標)製である。
【0062】
本セルの電極(アノード及びカソード)は、媒体の強アルカリ条件に耐える膜又はセパレーターによって分離する必要がある。例としては、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、及び/又は燃料電池等級のアスベストが含まれる。好ましい実施形態において、セパレーターはポリプロピレンである。
【0063】
開発したアノードは、アンモニア及び/又はエタノール電解セルにて、水素のin−situ生成に使用することができる。これは又、アルカリ媒体中のアンモニア及び/又はエタノール燃料電池で使用することもできる。驚くべきことに、チタン基板上のPt−Rh電極で行われた以前の試験では、本出願において得られた活性を示さなかった。本明細書に記載のカーボンファイバー及び/又はカーボンナノチューブでの電極の沈着は、アルカリ媒体中におけるアンモニア及び/又はエタノールの酸化に対して優れた活性を示す。
【0064】
本明細書に記載した実施例は、単に例示を目的としたものであり、本発明の適用範囲を制限することを目的としたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】Ti基板のPt電極におけるアンモニアのサイクリックボルタンメトリーを示す。−0.2Vを超える電位の後の電流密度の減少は、表面妨害によるものである。
【図2】Ti基板のPt−Rh(種々の組成)及びRh電極におけるエタノールのサイクリックボルタンメトリーを示す。SHEに対して0Vを超える電位の後の電流密度の減少は、表面妨害による。
【図3】白金クラスターにおけるOHの吸着を示す。
【図4】Pt電極におけるアンモニアの電解酸化の実験結果を示す。実験は、回転するディスク電極上で行った。アンモニアの酸化とKOH溶液のベースラインの比較によると、第1の酸化ピークは、電極の表面におけるOH−の吸着によることが示唆されている。
【図5】OHの電気吸着の微視的なモデリングの結果を示す。この結果によれば、これらの部位が利用可能な場合、OHの吸着は更に高い酸化電流を発生し続けることが示唆されている。
【図6】Pt電極におけるアンモニアの電解酸化機序の図を示す。NH3がPt表面に達すると、NH3はOH−の電気吸着と競合する。Pt上ではOH−の電気吸着がより速いため、電極の活性部位がOH吸着物で飽和し、その結果、電極の不活化を招く。
【図7】めっき中に(及び電極の動作中においても)カーボンファイバーの電子導電率を増大させるために使用する手順の概略図を示す。
【図8】めっきの前後のカーボンファイバーのSEM写真を示す。
【図9】25℃におけるアンモニア(1M MH3)及び1M KOH溶液のサイクリックボルタンメトリー性能を示す。種々の組成を有するカーボンファイバー電極の性能の比較。
【図10】25℃におけるアンモニア(1M NH3)及び1M KOH溶液のサイクリックボルタンメトリー性能を示す。電極の負荷量の比較。低負荷量:ファイバー1cm当たり貴金属総量5mg、高負荷量:カーボンファイバー1cm当たり貴金属10mg。
【図11】25℃におけるアンモニア(1M NH3)及び1M KOH溶液のサイクリックボルタンメトリー性能を示す。低負荷量(ファイバー1cm当たり貴金属総量5mg)における種々の電極組成の比較。高Rh、低Pt(80%Rh、20%Pt)、低Rh、高Pt(20%Rh、80%Pt).
【図12】25℃におけるアンモニア(1M NH3)及び1M KOH溶液のサイクリックボルタンメトリー性能を示す。アンモニア濃度の影響。NH3の濃度は、電極の動力学に影響を及ぼさない。
【図13】25℃におけるアンモニア(1M NH3)及び1M KOH溶液のサイクリックボルタンメトリー性能を示す。OH濃度の影響。OHの濃度が高くなるほど、動力学が早くなる。
【図14】25℃におけるエタノール(1Mエタノール)及び1M KOH溶液のサイクリックボルタンメトリー性能を示す。この結果によると、電極はエタノールの連続電解酸化に対しても活性を有することが示唆されている。
【図15】アンモニア電解セルのエネルギー収支(a)及び電力収支(b)を示す。エネルギー消費量は少ない(市販の水電解槽よりも遥かに少ない)。これによって、本技術の実行可能性が実証される。
【図16】Ti基板のPt−Rh電極におけるアンモニア電解酸化のサイクリックボルタンメトリーを示す。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2005年10月14日に出願された、表題「Carbon fiber−electrocatalysts for the Oxidation of Ammonia and Ethanol in Alkaline Media and their Application to Hydrogen Production,Fuel Cells,and Purification Processes」の米国仮出願第60/726,884号(この全体が、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アルカリ媒体中におけるアンモニア及びエタノールの酸化のための新規の電極触媒が必要とされる理由は、以下の通りである。第一には、アンモニア及び/又はエタノールの電解のための連続電解セルが存在しないためであり、第二には、現在利用可能な電極が何れも、表面妨害による電極の被毒を克服できないためであり、第三には、カーボンファイバー及び/又はカーボンナノチューブの強レート(hard rate)性能を保証する手順が存在しないためである。従って、連続電解セル中でアンモニア及び/又はエタノールの電解に使用することができる新規の電極触媒が必要とされている。更には、表面妨害による電極の被毒を克服することができる電極も必要とされている。そして最後に、カーボンファイバー及び/又はカーボンナノチューブの強レート性能を保証する新規の手順も必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(要旨)
本明細書では、アルカリ媒体中におけるアンモニア及びエタノールの酸化に有用な電極触媒を提供する。本明細書に記載の電極触媒は、カーボン支持体、OHに対して強い親和性を有する第1のめっき層、並びにアンモニア又はエタノールの酸化に対して強い親和性を有する第2のめっき層を含む。カーボン支持体は、カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ、及びカーボンマイクロスフェア等の材料から選択される場合がある。第1のめっき層は、ロジウム、ルテニウム、ニッケル及びパラジウム、並びにこれらの組み合わせから選択される。第2のめっき層は、白金、イリジウム、及びこれらの組み合わせから選択される。白金:イリジウムの組み合わせを使用する場合は、白金:イリジウムの比率が、約99.99:0.01〜約50:50の範囲となる場合がある。幾つかの実施形態において、白金:イリジウムの比率は、約95:5〜約70:30である。他の実施形態において、白金:イリジウムの比率は、約80:20〜約75:25である。第1のめっき層は、少なくとも約2mg/cmの被覆率を有するのが好ましい。幾つかの実施形態において、合計めっき被覆率は、約4mg/cm〜約10mg/cmの範囲にある。
【0004】
又、水素を生成するための電解セルも提供する。一般的に、電解セルは、本明細書に記載の1つ以上の電極触媒、塩基性電解質、及びアンモニアを含む。第2の実施形態において、電解セルは、本明細書に記載の1つの以上の電極触媒、塩基性電解質、及びエタノールを含む。幾つかの実施形態において、塩基性電解質は、必要とされる化学量論的割合よりも過剰に添加される。幾つかの実施形態において、塩基性電解質は、約3M〜約7Mの範囲の濃度を有する。アンモニアは、約0.01M〜約5Mの範囲の濃度で本電解セル中に存在する場合がある。幾つかの実施形態において、アンモニアは、約1M〜約2Mの範囲の濃度で電解セル中に存在する。
【0005】
一実施形態において、アンモニア電解セルは、本明細書に記載の電極触媒を含む1つの電極、及びアルカリ媒体中における水素の発生に対して活性を有する第2の電極を含む。本実施形態において、第2の電極は、白金、レニウム、パラジウム及びラネーニッケル、又は当業者に既知の他の電極から選択される場合がある。別の実施形態において、アンモニア電解セルは、本明細書に記載の電極触媒を有する2つの電極を含む。
【0006】
又、本明細書に記載の電極触媒をアノードとして利用する燃料電池も提供する。カソードは、ニッケル、白金黒、及び他の適切な電極から選択される場合がある。一実施形態において、燃料はアンモニアであり、塩基性電解質の濃度は、アンモニアの濃度よりも約2倍〜約5倍高い。別の実施形態において、塩基性電解質の濃度は、アンモニアの濃度よりも約3倍高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本明細書では、アルカリ媒体における種々の化学品の電解のために開発されてきた担持カーボンファイバー(ナノチューブ又はカーボンファイバー)上に電着した貴金属(層状)で製造されている電極触媒を提供する。本明細書で提供する電極触媒は、表面被覆効果をなくし、反応に対してクリーンな活性表面領域を維持する。
【0008】
一実施形態において、本明細書で提供する電極触媒は、開発した触媒をアノード又はカソードとして使用して、アルカリ媒体中においてアンモニア溶液から水素を生成するために、電解セル中で使用される。別の実施形態において、本明細書で提供する電極触媒は、開発した触媒をアノード又はカソードとして使用して、アルカリ媒体中でエタノール溶液から水素を生成するために、電解セル中で使用される。別の実施形態において、本明細書で提供する電極触媒は、開発した触媒をアノードとして使用して、アンモニア燃料電池中で使用される。別の実施形態において、本明細書で提供する電極触媒は、開発した触媒をアノードとして使用して、エタノール燃料電池中で使用される。更に別の実施形態において、本明細書で提供する電極触媒は、開発した触媒を使用して、アンモニアで汚染された排出物をアンモニアの酸化によって浄化する、電気化学処理プロセスで使用される。当業者であれば、本明細書で提供する電極触媒の更なる用途を認識するであろう。
【0009】
本明細書では又、アルカリ媒体中においてエタノール及びアンモニアを電解するための連続電解セルも提供する。この電力発電システムは、アンモニア及び/又はエタノール電解セル、並びにプロトン交換膜燃料電池及び/又はアルカリ型燃料電池により統合される。
【0010】
本発明では又、カーボンファイバー及びナノ−チューブ電極を調製する手順も提供する。本明細書に記載の手順によって、ファイバーとナノチューブの電子導電率が、電極用の金属基板のレベルまで増大する。
【0011】
本明細書に記載の電極触媒を含む電極は、特にアルカリ媒体中における、アンモニア酸化及び/又はエタノールの酸化に特に有用である。これらの触媒は、以下の用途に特に有用である:即ち、触媒をアノード又はカソードとして使用してアルカリ媒体中においてアンモニア又はエタノール溶液から水素を生成するための電解セル、触媒をアノードとして使用するアンモニア及び/又はエタノール燃料電池、検出部の一部として触媒を使用するアンモニア濃度/活性測定用センサー、触媒を使用して、アンモニアに汚染された排出物をアンモニアの酸化によって浄化する電気化学処理プロセス。
【0012】
本明細書に記載の方法によれば、前記電極触媒は2層に沈着される。第1の層は、OHに対して強い親和性を有する金属を含む。例としては、Rh、Ru、Ni及びPdが含まれる。好ましい材料はRhである。第1層の被覆率は、ファイバーの完全なめっきを保証するために少なくともファイバーの2mg/cmでなければならない。第2の層は、アンモニア及び/又はエタノールの酸化に対して強い親和性を有する1つ以上の金属を含む。例としては、Pt及びIrが含まれる。これらの材料のモノメタル沈着及び/又はバイメタル沈着が行われる場合がある。PtとIrの比率は、100%Pt:0%Ir〜80%Pt:20%Irの範囲にあってよい。
【0013】
本明細書に記載の電極触媒を含む電極は、水素の生成用の電解セルに有用である。本電解セルは、a)1つ以上の電極触媒、b)アルカリ溶液、即ち塩基性電解質、及びc)アンモニアを含む。他の実施形態において、本電解セルは、a)1つ以上の電極触媒、b)アルカリ溶液、即ち塩基性電解質、及びc)エタノールを含む。塩基性電解質は、電極触媒と適合し、アンモニア又はエタノールと反応せず、且つ高導電率を有する何れかのアルカリ電解物であってよい。殆どの実施形態において、塩基性電解質は、必要とされる化学量論的割合よりも過剰に添加される。幾つかの一実施形態において、塩基性電解質は、添加したアンモニアの量よりも化学量論的に約3倍量のレベルで添加される。幾つかの実施形態において、電解質は水酸化カリウムであり、これは、約3M〜約7Mの濃度で使用される場合がある。幾つかの実施形態において、水酸化カリウムは約5Mのレベルで添加される。適切な塩基性電解質の別の例としては、同様の濃度レベルの水酸化ナトリウムがある。水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムが、使用される場合があるアルカリ電解物の例であるが、当業者に既知のその他多くのアルカリ電解物が使用される場合もある。
【0014】
本明細書に記載の電解セルのアンモニアは、アンモニア溶液であり、このアンモニアの供給源は特に限定されない。電解セルのアンモニア(即ち、水酸化アンモニウム)は水に溶解される場合があり、これは、使用するための準備ができるまで保存された後、セルに直接供給してもよい。このアンモニアは、高圧で、液化ガスとして保存された後、使用する準備ができてから、水と電解質と組み合わせる場合がある。このアンモニアは又、電解質溶液中に溶解した硫安等があるがこれに限定されない適切なアンモニウム塩から得る場合もある。アンモニアは、約0.01M〜約5Mの濃度で存在する場合がある。幾つかの実施形態において、電解セル中のアンモニア濃度は、室温にて約1M〜約2Mとなる。温度が高くなるほど、アンモニアの濃度を高くするのが望まれる場合がある。
【0015】
本明細書に記載の電極触媒を含む電極は、電解セルのアノードとして使用される場合もあれば、アノードとカソードの両方として使用される場合もある。一実施形態において、電解セルは、a)本明細書に記載の電極触媒を含む少なくとも1つの電極、b)約3M〜約7Mの濃度の水酸化カリウム、及びc)約0.5M〜2Mの濃度のアンモニアを有する。別の実施形態において、電解セルは、a)本明細書に記載の電極触媒を含む2つの電極、2)約5Mの水酸化カリウム、及び3)約1Mのアンモニアを有する。電解セルの他の実施形態において、本明細書に記載の電極触媒を含む電極は、アノード又はカソードとしてのみ使用され、他方は、アルカリの媒体中における水素の発生に対して活性を有する何れかの電極から選択される場合がある。このような電極の例としては、白金、レニウム、パラジウム、並びにラネーニッケル等の貴金属が含まれるが、これらに限定されない。更に他の適切な電極は、当業者であれば容易に決定することができよう。
【0016】
本電解セルは広範な温度で動作することができる。一般的に、本明細書に記載の電解セルは、約20℃〜約70℃で動作する場合がある。一実施形態において、電解セルは周囲温度にて動作する。別の実施形態において、電解セルは、約60℃〜約70℃の温度範囲で動作する。別の実施形態において、電解セルは、約20℃〜約60℃の温度範囲で動作する。別の実施形態において、電解セルは約30℃〜約70℃の温度範囲で動作する。別の実施形態において、電解セルは約30℃〜約60℃の温度範囲で動作する。別の実施形態において、電解セルは約40℃〜約50℃の温度範囲で動作する。更に別の実施形態において、大気圧より高い圧力が使用され、70℃を超える高温で使用できるようにする。
【0017】
水素を生成するために電解セルに印加する電流密度は、約25mA/cm2〜約500mA/cm2の範囲にある場合がある。幾つかの実施形態において、電流密度は、約50mA/cm2〜約100mA/cm2の範囲にある。幾つかの実施形態において、電流密度は、約25mA/cm2〜約50mA/cm2の範囲にある。幾つかの実施形態において、電流密度は、約50mA/cm2〜約500mA/cm2の範囲にある。幾つかの実施形態において、電流密度は、約100mA/cm2〜約400mA/cm2の範囲にある。幾つかの実施形態において、電流密度は、約200mA/cm2〜約300mA/cm2の範囲にある。
【0018】
又、水素ガスを調製する方法も提供され、この方法は、上記の電解セル中でアンモニアを酸化することを含む。電解セルを使用して水素ガスを調製する場合は、塩基性電解質の化学量論的過剰量が使用される。幾つかの実施形態において、塩基性電解質は、アンモニアの量よりも少なくとも3倍のレベルで存在する。幾つかの実施形態において、電解セルの電解質はKOHである。幾つかの実施形態において、電解セル中のアルカリ電解物及びアンモニアの濃度は、それぞれ5M及び1Mである。電解セルでは、電解セルの温度及び電流密度が、生成する水素の量に影響する。適切な温度及び電流密度は上述の通りである。
【0019】
アンモニアを電解セル中で使用する場合、本明細書に記載の電解セルでは、水素と窒素ガスの両方が生成される。従って、アンモニアの酸化によって生成される窒素ガスを回収することによって、水素ガスを生成するのと同じ方法が、窒素ガスの生成に適用される場合がある。
【0020】
本明細書に記載の電極触媒は又、アンモニア燃料電池にも応用できる。アンモニウム燃料電池は、本明細書に記載の触媒を含む電極であるアノード、カソード、アンモニア及び塩基性の(即ち、アルカリ溶液)電解質を有する。ニッケル及び白金黒は、適切なカソードの非限定的な2つの例であるが、当業者に既知の他のカソードが使用される場合もある。燃料電池は、ほぼ室温、例えば約20℃〜25℃、最大約70℃までの何れかの温度で動作する場合がある。幾つかの実施形態において、燃料電池は室温にて動作する。幾つかの実施形態において、燃料電池中で使用する塩基性電解質は、何れかの適切な塩基性電解質である場合があり、例えばアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物等の無機水酸化物である場合がある。適切な塩基性電解質には、本明細書に記載の触媒に悪影響を及ぼさず、アンモニアと反応せず、良導電性を有するアルカリ媒体がある。幾つかの実施形態において、アルカリ電解物は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである。一実施形態において、電解質は水酸化カリウムである。燃料電池の中で使用する塩基性電解質の量は、アンモニアの量に対して化学量論的に過剰な量である。幾つかの実施形態において、アルカリ電解物の濃度は、アンモニアの濃度よりも少なくとも約3倍高い。一実施形態において、塩基性電解質及びアンモニアの濃度は、それぞれ約5M及び約1Mである。燃料電池に使用するアンモニアは、液体又は、水又は塩基性媒体に溶解した状態のガス状のアンモニアであってもよければ、又は塩基性媒体の中で溶解した適切なアンモニウム塩であってもよい。
【0021】
本発明の電極触媒は又、アンモニアの検出用のセンサーとしても有用である。
開発した触媒の存在下におけるアンモニア(低濃度でも)の酸化中にアノードで収集された実電流レスポンスを見れば、これらの触媒がアンモニア電気化学センサーの理想的な触媒であることがわかる。これらの電気化学的センサーは、試料中の痕跡量のアンモニア汚染を検出するために使用される場合がある。
【0022】
本発明の電極触媒のアンモニアの強い活性は、たとえアンモニア濃度が低くても、汚染された排出物からアンモニアを除去するプロセスに有用である。従って、汚染された排出物からアンモニア汚染物質を除去する方法であって、前記方法が、汚染された排出物中のアンモニア汚染を酸化するために本明細書に記載の電極触媒を使用することを含む、方法も提供する。本方法においては、電解セルを調製し、本明細書に記載の電極触媒を含む少なくとも1つの電極を使用し、排出物中のアンモニア汚染物質を酸化する。この排出物は連続的な流れとして供給される場合があり、アンモニアは、排出物から電気化学的に除去し、浄化した排出物は放出されるか、他の用途のために保存される。
【0023】
貴金属上で、相当量の電流密度がアンモニアの酸化から得ることができるが、この電極は全く可逆的ではない。同様の状況が、アルカリの媒体中におけるエタノールの電解酸化で生じる。更に、電極の活性化は表面の被覆率によって制限される。図1及び2には、サイクリックボルタンメトリー実験中の両反応(アルカリ媒体中におけるエタノール及びアンモニア電解酸化)の電極の不活化を示す。
【0024】
本出願では、これらの両方の問題、即ち可逆性及び不活化を克服するアンモニア及びエタノールの酸化に対して活性を有する電極のための新規の設計及び製法を提案する。
【0025】
エタノール及びアンモニアの電解からの連続的なin−situ水素発生装置の開発:水素は、燃料電池を使用する発電のための主な燃料供給源であるが、その効果的な保存及び輸送は技術的に困難であると言える。現在の水素生成コストでは、分散型発電の燃料電池技術は、従来の石油燃料電力システムと比較した時に、経済的な競争力がない。(分散型水素の)現在の技術では、H2の1kg当たり5ドル〜6ドルのコストで水素を生成することができる。この生成コストの高さは、一部に、生成物の分離/精製コストが高いこと、動作温度及び圧力が高いことによる。現在の技術を使用すれば、水素は、アルコールと炭化水素の部分酸化、触媒的水蒸気改質、又は熱改質によって得ることができる。しかしながら、これらのプロセスは全て高温で行い、このプロセスによって、水素生成物から除去しなくてはならない副産物として大量のCOxを生成する。これらのCOx副産物の殆どは、燃料電池触媒の被毒を引き起こし、燃料電池性能の劣化を招く。燃料ストリームからこれらを除去すると、このプロセスが、複雑で、大規模且つ高価なものになってしまう。現在では、純粋な水素を得る最もクリーンな方法は、水の電解によるものである。水の電解中では、電気的な力(通常太陽電池による)で、水分子を破壊し、純酸素と水素の両方を生成する。このプロセスの不都合な点は、水素を生成するためには大量の電力が必要であるということである。水の酸化のための理論的なエネルギー消費量は、生成する(25℃にて)H2の1モル当たり66W−時である。従って、太陽エネルギーを使用する($/kWh 0.2138のコストで)場合、水の電解によって生成する水素の理論的なコストは、H2の1kg当たり7ドルと見積もられる。
【0026】
同時係属中の米国特許出願第10/962,894号では、アルカリ媒体中でアンモニアを電解酸化することができる電解セルが開示される。しかしながら、記載のセルはバッチセルであった。本出願では、アンモニアとエタノールの電解酸化のための連続電解セルについて説明する。
【0027】
カーボンファイバーとナノチューブの低い電子導電率:カーボンファイバーとナノチューブのめっきは困難な技術である。この問題の殆どは、これらの材料が、比較的低い電子導電率を有することにあり、そのため、表面におけるコーティング力が乏しくなる(例えば、容易に剥離する)。ファイバーの電子導電率は、電気的接続からの長さに沿って減少するため、電気的接点に最も近い先端部に比べると、電気接続点から最も遠い接点では転送する電流が小さくなる。
【0028】
本明細書には、カーボンファイバーとナノチューブのための電気めっき手順を記載し、これによってこれらの問題を克服する。即ち、電極に一定の電流分布を供給し、コーティングの接着性も高め、それによって電極の耐久性を増強する。
【0029】
アンモニア及びエタノール酸化用電極触媒:担持カーボンファイバー(ナノチューブ又はカーボンファイバー)上に電着された貴金属(層状)で製造されている電極触媒が、アルカリ媒体中における種々の化学品の電解のために開発されてきた。本発明は、表面被覆効果を排除し、反応のためのクリーンな活性表面領域を提供する。
【0030】
Gerisherによって提案された機序によれば、アルカリ媒体中におけるアンモニア電解中に生じる表面妨害は、元素の窒素の存在によるものであると考えられている。
【0031】
【化1】
式中、Mは電極上の活性部位を表す。
【0032】
Gerisherの提案による機序は正確ではなく、この反応が生じるために電極上でOHを吸着する必要があるということを、本発明者等は2つの独立した方法により実証した。更に、電極は活性部位に吸着されたOHによって不活化する。
【0033】
分子モデリングの結果、活性Pt部位におけるOH−の吸着は強く(化学吸着)、これは以下の反応式によって表すことができる。
【0034】
【化2】
図3には、OHと白金クラスターの間の結合を示す。このシステムは密度汎関数法(Density functional Method)を使用してモデル化した。計算はB3PW91及びLANL2DZ法、及び基底系(basis set)をそれぞれ使用して行った。Pt−OHクラスターの結合エネルギーは、−133.24kcal/molと高く、これにより、Ptクラスター活性部位のOHの化学吸着が確認できる。
【0035】
更に、回転ディスク電極(RDE)の微視的モデル化の結果並びに実験結果から、OHの吸着は強力であり、触媒の不活化の原因となることが示されている。
【0036】
図4では、KOH溶液のベースラインとOHの存在下における同溶液とが比較されている。この曲線より、Hg/HgO電極に対して約−0.7Vで現われる第1の酸化ピークは、OH−の電気吸着と関係があることが示されている。
【0037】
図5には、OH−の電気吸着の実験結果と予測結果(微視的なモデリングによる)の比較を示す。この結果から、このモデルで実験結果をかなりよく予測することができることが示されている。更に、電極の表面におけるOHの吸着による表面妨害の発現が見られた(吸着物による印加電位に伴うθ減衰反応の活性部位に注意)。もし表面が清浄であれば、(被覆なしのモデルの結果を参照)、OH−の電気吸着は、より高い電位で継続し、且つより速くなるであろう。
【0038】
実験結果をモデリング結果と集計して、本出願の発明者は、アルカリ媒体中のアンモニアの電解酸化のために、以下の機序を提案する。第一に、アンモニア分子が電極に接近すると共にOHの吸着が起こり、それは表面上で吸着する。アンモニアの酸化により、OH吸着物の幾つかは水分子の形態で表面から放出される。しかしながら、OHの吸着がより強く、OHイオンが、電極の表面へより速く移動するため、これは最終的に電位の増加に伴って不活化される。電極上でOHとNH3の吸着の間で競合があるであろう。この機序の結果は、以下に示す本提案の反応で要約するが、図6でも要約している。
【0039】
【化3】
この機序は、低電位(SHEに対して負)におけるアルカリ溶液中の他の化学品の電解酸化まで拡大することができる。例えば、エタノールの電解酸化まで拡大されている。本提案の機序により、明らかに優れた電極の設計が期待できる。使用する材料は、NH3及び/又はエタノール又は他の対象となる化学品の吸着を高めることになる(又、アルカリ媒体中の水の電解を高めることができる)。少なくとも2つの材料の組み合わせが必要である。材料の内の1つは、OHによって吸着される可能性が他方よりも高いものであり、これは対象となる化学品の電解酸化に利用可能な活性部位を残すことになる(例えば、NH3及び/又はエタノール)。
【0040】
連続電解セル:エタノール及びアンモニアから水素をin−situにて生成する連続電解セルを、本出願において指定し、試験する。水素は100%の感応電流効率で、両方のプロセスで生成する。何れの場合も、カソードで生じる反応は、アルカリ媒体中における水の還元である。
【0041】
【化4】
カーボンファイバー及びカーボンナノチューブ電極の設計:カーボンファイバー及びカーボンナノチューブの電子導電率は、異なる層における沈着によって増強した。触媒の第1の層は、OHの吸着に対して極めて高い活性を有するのに対して、第2の層は、対象となる化学品の吸着に対して極めて高い活性を有する材料で製造されている(例えば、アンモニア及び/又はエタノール)。
【0042】
電極の調製:図7には、めっき中に(及び電極の動作中においても)カーボンファイバーの電子導電率を増大させるために使用する手順の概略図を示す。ファイバーはチタンガーゼで包み、それゆえ、種々の地点で金属と電気的に接触した。この改良により、ファイバーはどの地点でも容易且つ均質にめっきされた。このファイバー中の任意の地点における電子導電率は、Tiガーゼの電子導電率(極めて高い)と同じであった。
【0043】
図8には、めっき前後の電極の走査型電子顕微鏡写真を示す。ファイバーの電子導電率を増加させ、OH吸着のための遊離基板とするため、Rhの第1の層を電極に沈着させた(OHはPtよりもRhに対して高い親和性を有する)。Ptからなる第2の層を電極にめっきした。このPt層は、全てのRh部位を被覆したわけではなく、Rhの表面を好ましいOH吸着剤として機能させたままにした。
【0044】
電極の性能:図9には、異なる電極組成によるアンモニアの電解酸化のためのサイクリックボルタンメトリー性能を示す。Rhのみでめっきしたカーボンファイバーは、反応に対して活性を有さないのに対して、Ptのみでめっきした場合には、電極が活性を有するものの、被毒しやすいことに留意されたい。一方、電極を層状にめっきして製造する場合は、まず、Rhを沈着させた後、Ptからなる第2の層を沈着させると、電極が活性を維持する。このことは、前項に記載の機序によって説明される。図9では、電極を調製する新しい手順及び製法によって、表面妨害に対処できることが示されている。
【0045】
図10には、アンモニアの電解酸化に対する種々の合計負荷量の影響を示す。この結果から、最も低い負荷量による触媒が、アンモニアの電解酸化に対してより効率的であることが示唆される。これは、プロセスの経済面に対して有益である(より安価な触媒)。触媒を追加しても、反応に対して実際に活性を有さない層を何層も形成するに過ぎない。
【0046】
図11には、アルカリ溶液中におけるアンモニアの電解酸化の触媒組成物の影響を示す。電極の組成と電極の性能上に差は見られない。これは基本的に、Rhの第1の層が電極にめっきされている限り、表面妨害が回避されることによるものである。更に、Ptのめっきを追加すると、表面全体において完全には活性を示さないPtの島状成長を引き起こすことになる(図8のSEM図を参照)。
【0047】
図12には、電極の性能に対するアンモニア濃度の影響を示す。アンモニア濃度の影響は、電極性能に対しては無視できる程度のものである。これは、活性Pt部位が連続反応に必要とされるNH3を既に吸着してしまっているためである。
【0048】
図13には、アンモニアの電解酸化に対するOHの濃度の影響を示す。OHの濃度が高いほど、反応速度が早くなる。但し、OHの濃度とは無関係に、電極が連続した活性(被毒なし)を維持することに留意されたい。
【0049】
図14には、エタノールの電解酸化に関する電極の評価を示す。アルカリ媒体中におけるエタノールの連続した電解酸化は、表面妨害がなく達成される。このことは、本発明がこの化学物質に対しても有効であることを示している。
【0050】
連続電解セル:アルカリ媒体中においてアンモニア及び/又はエタノールを連続電解するプロトタイプシステムを構築した。カソードでは、100%の感応電流効率でH2が連続して生成される。このセルの設計寸法は小さく(4×4cm)、少ないエネルギー及び消費電力で相当量のH2を生成することができる。このセルのカソードでH2が生成されると、H2が雲状に観察される。H2は相当量生成されており、このことは、in−situにおいてH2を生成するための本セルの使用を実証している。図15には、アンモニア電解セルのエネルギー収支及び電力収支を示す。本セルは、市販の水電解槽よりも性能が優れている。本セルのエネルギー及び電力収支の両方によって、本セルがPEM H2燃料電池の一部のエネルギーを利用して動作することができ、更に本システム(アンモニア電解セル/PEM燃料電池)が幾らかの正味エネルギーを提供することが示唆される。この配置は、水素保存量を最小限にするために使用することができる。
【0051】
一例として、システムは1日当たり480kgのH2を生成する。電力システムの建設には、合計100万ドルの設備投資が必要となる。分散型電源の現行の技術(天然ガス改質及び水電解)と比べた、アンモニア連続電解セルを使用したH2生成に関する経済分析の比較を行った。アンモニア連続電解装置では、1kg当たり2ドル未満で水素を生成することができる。in−situ水素生成の他の技術と比べると、経費削減はかなりのものである。米国科学アカデミーから提供された数字を使用すると、本アンモニア連続電解セルでは、天然ガス水蒸気改質法を使用して生成するよりも約20%安価にH2を生成し、且つ水電解法を使用して生成するよりも約57%安価にH2を生成した。
【0052】
電極の調製
手順は2つの手順に分割される。第1の手順は電極の構築である。電極の構築概略図を図7に示す。めっきの手順は、1.第1層のめっき、及び2.第2層のめっきの2つの手順から構成される。
【0053】
第1層のめっき:この手順は、OHに対して強い親和性を示す材料でカーボンファイバー又はカーボンナノチューブをめっきすることからなる。例としては、Rh、Ru、Ni及びPdが含まれるが、これらに限定されない。好ましい一実施形態においては、Rhが使用される。第1層の被覆が、ファイバーを完全にめっきする必要がある。幾つかの実施形態において、第1層の被覆率は、ファイバーの完全なめっきを保証するために少なくともファイバーのmg/cmとする。他の実施形態において、第1層の被覆率は、ファイバーの2.5、3.0及び3.5mg/cm等である場合がある。
【0054】
第2層のめっき:この手順は、アンモニア及び/又はエタノールの酸化に対して強い親和性を有する材料で電極をめっきすることからなる。例としては、Pt及びIrが含まれる。これらの材料のモノメタル沈着(monometallic deposition)及び/又はバイメタル沈着(bimetallic deposition)が行われる場合がある。PtとIrの比率は、100%Pt:0%Ir〜80%Pt:20%Irの範囲にあってよい。
【0055】
表Iには、電解セルのアノード及びカソードのめっき条件を要約する。ロジウムをめっきした後、その電極を秤量する。重量はロジウムの負荷量に相当する。次いで、白金をロジウムの上に沈着させる。この手順後、この電極を再び測定する。この測定値が、合計負荷量に相当することになる。白金の負荷量は、ロジウムの前回の測定値から合計負荷量を減算して得る。次いで、白金/ロジウムの関係は、固定負荷量の割合として計算される。負荷量はファイバーの長さに依存するため、別の測定も計算しなければならない。10cmのファイバーの重量は39.1mgであることが知られている。ファイバーの重量が知られていることから(手順1にて計算)、それに比例して、各電極で使用されている全ファイバーの長さも知ることができる。
【0056】
表IIには、めっき浴の一般的な条件を要約する。めっきの全体的な手順中に、ファイバー及び/又はナノチューブへの化学種の輸送を増強するために、溶液を混合した。表IIIには、幾つかの電極組成、長さ及び貴金属の負荷量の例を示す。
【0057】
要約すると、電極は、貴金属の第1層でめっきされたカーボンファイバー及び/又はカーボンナノチューブ基板から構成される。この金属は、OHに対して強い親和性を有する。次いで、電極を、アンモニア及び/又はエタノールに対して強い親和性を有する貴金属でめっき(モノメタル沈着(single deposition)及び/又はバイメタル沈着)を行った。
【0058】
【表1】
電解セル
電解セルのアノードを、上述の手順を使用して構築した。このアノードは2層の材料でめっきしたカーボンファイバーから構成される。第1の層は、OHに対して親和性を有する金属で製造されており、第2の層は、アンモニア及び/又はエタノールに対して親和性を有する1つ以上の金属で製造されている。
【0059】
カソードはアノードと同様に作成した。このカソードは、全く同じ方法で構築できると考えられ、或いはカーボンファイバーから、及び/又はニッケルでめっきされたカーボンナノチューブから構成されてもよい。
【0060】
このファイバーは金属ガーゼ上に置く(包む)。溶液のアルカリ媒体と同様に、酸性の沈着浴のための何れの不活性材料も使用できると考えられる。好ましい実施形態において、金属ガーゼはチタンである。
【0061】
本セルの筐体は、何れかの非伝導性ポリマーで製造することができる。例としては、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、アクリル等が含まれる。好ましい実施形態において、筐体はテフロン(登録商標)である。本セルのガスケットはテフロン(登録商標)製である。
【0062】
本セルの電極(アノード及びカソード)は、媒体の強アルカリ条件に耐える膜又はセパレーターによって分離する必要がある。例としては、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、及び/又は燃料電池等級のアスベストが含まれる。好ましい実施形態において、セパレーターはポリプロピレンである。
【0063】
開発したアノードは、アンモニア及び/又はエタノール電解セルにて、水素のin−situ生成に使用することができる。これは又、アルカリ媒体中のアンモニア及び/又はエタノール燃料電池で使用することもできる。驚くべきことに、チタン基板上のPt−Rh電極で行われた以前の試験では、本出願において得られた活性を示さなかった。本明細書に記載のカーボンファイバー及び/又はカーボンナノチューブでの電極の沈着は、アルカリ媒体中におけるアンモニア及び/又はエタノールの酸化に対して優れた活性を示す。
【0064】
本明細書に記載した実施例は、単に例示を目的としたものであり、本発明の適用範囲を制限することを目的としたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】Ti基板のPt電極におけるアンモニアのサイクリックボルタンメトリーを示す。−0.2Vを超える電位の後の電流密度の減少は、表面妨害によるものである。
【図2】Ti基板のPt−Rh(種々の組成)及びRh電極におけるエタノールのサイクリックボルタンメトリーを示す。SHEに対して0Vを超える電位の後の電流密度の減少は、表面妨害による。
【図3】白金クラスターにおけるOHの吸着を示す。
【図4】Pt電極におけるアンモニアの電解酸化の実験結果を示す。実験は、回転するディスク電極上で行った。アンモニアの酸化とKOH溶液のベースラインの比較によると、第1の酸化ピークは、電極の表面におけるOH−の吸着によることが示唆されている。
【図5】OHの電気吸着の微視的なモデリングの結果を示す。この結果によれば、これらの部位が利用可能な場合、OHの吸着は更に高い酸化電流を発生し続けることが示唆されている。
【図6】Pt電極におけるアンモニアの電解酸化機序の図を示す。NH3がPt表面に達すると、NH3はOH−の電気吸着と競合する。Pt上ではOH−の電気吸着がより速いため、電極の活性部位がOH吸着物で飽和し、その結果、電極の不活化を招く。
【図7】めっき中に(及び電極の動作中においても)カーボンファイバーの電子導電率を増大させるために使用する手順の概略図を示す。
【図8】めっきの前後のカーボンファイバーのSEM写真を示す。
【図9】25℃におけるアンモニア(1M MH3)及び1M KOH溶液のサイクリックボルタンメトリー性能を示す。種々の組成を有するカーボンファイバー電極の性能の比較。
【図10】25℃におけるアンモニア(1M NH3)及び1M KOH溶液のサイクリックボルタンメトリー性能を示す。電極の負荷量の比較。低負荷量:ファイバー1cm当たり貴金属総量5mg、高負荷量:カーボンファイバー1cm当たり貴金属10mg。
【図11】25℃におけるアンモニア(1M NH3)及び1M KOH溶液のサイクリックボルタンメトリー性能を示す。低負荷量(ファイバー1cm当たり貴金属総量5mg)における種々の電極組成の比較。高Rh、低Pt(80%Rh、20%Pt)、低Rh、高Pt(20%Rh、80%Pt).
【図12】25℃におけるアンモニア(1M NH3)及び1M KOH溶液のサイクリックボルタンメトリー性能を示す。アンモニア濃度の影響。NH3の濃度は、電極の動力学に影響を及ぼさない。
【図13】25℃におけるアンモニア(1M NH3)及び1M KOH溶液のサイクリックボルタンメトリー性能を示す。OH濃度の影響。OHの濃度が高くなるほど、動力学が早くなる。
【図14】25℃におけるエタノール(1Mエタノール)及び1M KOH溶液のサイクリックボルタンメトリー性能を示す。この結果によると、電極はエタノールの連続電解酸化に対しても活性を有することが示唆されている。
【図15】アンモニア電解セルのエネルギー収支(a)及び電力収支(b)を示す。エネルギー消費量は少ない(市販の水電解槽よりも遥かに少ない)。これによって、本技術の実行可能性が実証される。
【図16】Ti基板のPt−Rh電極におけるアンモニア電解酸化のサイクリックボルタンメトリーを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン支持体、第1のめっき層、及び第2のめっき層を含む電極触媒であって、
該第1のめっき層が、OHに対して強い親和性を有する金属を含み、
該第2のめっき層が、燃料の酸化に対して強い親和性を有する金属を含む、
電極触媒。
【請求項2】
前記カーボン支持体が、カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ及びカーボンミクロスフェアからなる群から選択される、請求項1に記載の電極触媒。
【請求項3】
前記第1のめっき層が、ロジウム、ルテニウム、ニッケル及びパラジウム、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2何れかに記載の電極触媒。
【請求項4】
前記第1のめっき層がロジウムである、請求項3に記載の電極触媒。
【請求項5】
前記第2のめっき層が白金、イリジウム又はこれらの組み合わせを含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の電極触媒。
【請求項6】
前記燃料がアンモニア及びエタノールからなる群から選択される、請求項1〜5の何れか1項に記載の電極触媒。
【請求項7】
アルカリ媒体中のアンモニア又はエタノールの酸化のための電極触媒であって、
カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ及びカーボンミクロスフェアからなる群から選択されるカーボン支持体、
ロジウム、ルテニウム、ニッケル、パラジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1のめっき層、並びに
白金、イリジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2のめっき層、
を含む、電極触媒。
【請求項8】
前記第1のめっき層が少なくとも約2mg/cmのめっき被覆率を有する、請求項7に記載の電極触媒。
【請求項9】
前記第2のめっき層がモノメタル層である、請求項7に記載の電極触媒。
【請求項10】
前記第2のめっき層がバイメタル層である、請求項8に記載の電極触媒。
【請求項11】
前記バイメタル層が白金及びイリジウムを含み、白金:イリジウムの比率が、約99.99:0.01〜約50:50の範囲にある、請求項10に記載の電極触媒。
【請求項12】
前記白金:イリジウムの比率が、約95:5〜約70:30である、請求項11に記載の電極触媒。
【請求項13】
前記白金:イリジウムの比率が、約80:20〜約75:25である、請求項12に記載の電極触媒。
【請求項14】
約4mg/cm〜約10mg/cmの範囲の合計のめっき被覆率を有する、請求項7に記載の電極触媒。
【請求項15】
水素を生成するための電解セルであって、該セルが、1つ以上の電極触媒、塩基性電解質、及びアンモニアを含み、
該電極触媒が、
カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ及びカーボンミクロスフェアからなる群から選択されるカーボン支持体、
ロジウム、ルテニウム、ニッケル、パラジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1のめっき層、並びに
白金、イリジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2のめっき層、
を含む、電解セル。
【請求項16】
前記塩基性電解質が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の電解セル。
【請求項17】
前記塩基性電解質が必要とされる化学量論的割合よりも過剰に添加される、請求項15に記載の電解セル。
【請求項18】
前記塩基性電解質が、約3M〜約7Mの範囲にある濃度を有する、請求項16に記載の電解セル。
【請求項19】
前記アンモニアが、約0.01M〜約5Mの範囲の濃度で前記セル中に存在する、請求項15に記載の電解セル。
【請求項20】
前記アンモニアが、約1M〜約2Mの範囲の濃度で前記セル中に存在する、請求項19に記載の電解セル。
【請求項21】
前記電極触媒を含む1つの電極、及びアルカリ媒体中における水素の発生に対して活性を有する第2の電極を含む、請求項15に記載の電解セルであって、前記塩基性電解質が、約3M〜約7Mの範囲の濃度を有する水酸化カリウム、及び約0.5M〜約2Mの範囲の濃度を有するアンモニアを含む、電解セル。
【請求項22】
前記第2の電極が、白金、レニウム、パラジウム及びラネーニッケルからなる群から選択される、請求項21に記載の電解セル。
【請求項23】
前記電極触媒を含む2つの電極を含み、前記塩基性電解質が、約5Mの濃度を有する水酸化カリウム、及び約1Mの濃度を有するアンモニアを含む、請求項15に記載の電解セル。
【請求項24】
水素を生成するための電解セルであって、該セルが、1つ以上の電極触媒、塩基性電解質、及びエタノールを含み、
該電極触媒が、
カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ及びカーボンミクロスフェアからなる群から選択されるカーボン支持体、
ロジウム、ルテニウム、ニッケル、パラジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1のめっき層、並びに
白金、イリジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2のめっき層、
を含む、電解セル。
【請求項25】
アノード、カソード、燃料及び塩基性電解質を含む燃料電池であって、
該アノードが、
カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ及びカーボンミクロスフェアからなる群から選択されるカーボン支持体、
ロジウム、ルテニウム、ニッケル、パラジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1のめっき層、
白金、イリジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2のめっき層、
を含み、
該燃料が、アンモニア及びエタノールからなる群から選択され、
該塩基性電解質が、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選択される、
燃料電池。
【請求項26】
前記燃料電池が約20℃〜約70℃の範囲の温度で動作する、請求項25に記載の燃料電池。
【請求項27】
前記カソードがニッケル及び白金黒からなる群から選択される、請求項25又は26の何れかに記載の燃料電池。
【請求項28】
前記燃料がアンモニアであり、前記塩基性電解質の濃度が、該アンモニアの濃度よりも約2倍〜約5倍高い、請求項25〜27の何れか1項に記載の燃料電池。
【請求項29】
前記塩基性電解質の濃度が、前記アンモニアの濃度よりも約3倍高い、請求項28に記載の燃料電池。
【請求項1】
カーボン支持体、第1のめっき層、及び第2のめっき層を含む電極触媒であって、
該第1のめっき層が、OHに対して強い親和性を有する金属を含み、
該第2のめっき層が、燃料の酸化に対して強い親和性を有する金属を含む、
電極触媒。
【請求項2】
前記カーボン支持体が、カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ及びカーボンミクロスフェアからなる群から選択される、請求項1に記載の電極触媒。
【請求項3】
前記第1のめっき層が、ロジウム、ルテニウム、ニッケル及びパラジウム、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2何れかに記載の電極触媒。
【請求項4】
前記第1のめっき層がロジウムである、請求項3に記載の電極触媒。
【請求項5】
前記第2のめっき層が白金、イリジウム又はこれらの組み合わせを含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の電極触媒。
【請求項6】
前記燃料がアンモニア及びエタノールからなる群から選択される、請求項1〜5の何れか1項に記載の電極触媒。
【請求項7】
アルカリ媒体中のアンモニア又はエタノールの酸化のための電極触媒であって、
カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ及びカーボンミクロスフェアからなる群から選択されるカーボン支持体、
ロジウム、ルテニウム、ニッケル、パラジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1のめっき層、並びに
白金、イリジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2のめっき層、
を含む、電極触媒。
【請求項8】
前記第1のめっき層が少なくとも約2mg/cmのめっき被覆率を有する、請求項7に記載の電極触媒。
【請求項9】
前記第2のめっき層がモノメタル層である、請求項7に記載の電極触媒。
【請求項10】
前記第2のめっき層がバイメタル層である、請求項8に記載の電極触媒。
【請求項11】
前記バイメタル層が白金及びイリジウムを含み、白金:イリジウムの比率が、約99.99:0.01〜約50:50の範囲にある、請求項10に記載の電極触媒。
【請求項12】
前記白金:イリジウムの比率が、約95:5〜約70:30である、請求項11に記載の電極触媒。
【請求項13】
前記白金:イリジウムの比率が、約80:20〜約75:25である、請求項12に記載の電極触媒。
【請求項14】
約4mg/cm〜約10mg/cmの範囲の合計のめっき被覆率を有する、請求項7に記載の電極触媒。
【請求項15】
水素を生成するための電解セルであって、該セルが、1つ以上の電極触媒、塩基性電解質、及びアンモニアを含み、
該電極触媒が、
カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ及びカーボンミクロスフェアからなる群から選択されるカーボン支持体、
ロジウム、ルテニウム、ニッケル、パラジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1のめっき層、並びに
白金、イリジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2のめっき層、
を含む、電解セル。
【請求項16】
前記塩基性電解質が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の電解セル。
【請求項17】
前記塩基性電解質が必要とされる化学量論的割合よりも過剰に添加される、請求項15に記載の電解セル。
【請求項18】
前記塩基性電解質が、約3M〜約7Mの範囲にある濃度を有する、請求項16に記載の電解セル。
【請求項19】
前記アンモニアが、約0.01M〜約5Mの範囲の濃度で前記セル中に存在する、請求項15に記載の電解セル。
【請求項20】
前記アンモニアが、約1M〜約2Mの範囲の濃度で前記セル中に存在する、請求項19に記載の電解セル。
【請求項21】
前記電極触媒を含む1つの電極、及びアルカリ媒体中における水素の発生に対して活性を有する第2の電極を含む、請求項15に記載の電解セルであって、前記塩基性電解質が、約3M〜約7Mの範囲の濃度を有する水酸化カリウム、及び約0.5M〜約2Mの範囲の濃度を有するアンモニアを含む、電解セル。
【請求項22】
前記第2の電極が、白金、レニウム、パラジウム及びラネーニッケルからなる群から選択される、請求項21に記載の電解セル。
【請求項23】
前記電極触媒を含む2つの電極を含み、前記塩基性電解質が、約5Mの濃度を有する水酸化カリウム、及び約1Mの濃度を有するアンモニアを含む、請求項15に記載の電解セル。
【請求項24】
水素を生成するための電解セルであって、該セルが、1つ以上の電極触媒、塩基性電解質、及びエタノールを含み、
該電極触媒が、
カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ及びカーボンミクロスフェアからなる群から選択されるカーボン支持体、
ロジウム、ルテニウム、ニッケル、パラジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1のめっき層、並びに
白金、イリジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2のめっき層、
を含む、電解セル。
【請求項25】
アノード、カソード、燃料及び塩基性電解質を含む燃料電池であって、
該アノードが、
カーボンファイバー、カーボンチューブ、カーボンマイクロチューブ及びカーボンミクロスフェアからなる群から選択されるカーボン支持体、
ロジウム、ルテニウム、ニッケル、パラジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1のめっき層、
白金、イリジウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第2のめっき層、
を含み、
該燃料が、アンモニア及びエタノールからなる群から選択され、
該塩基性電解質が、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選択される、
燃料電池。
【請求項26】
前記燃料電池が約20℃〜約70℃の範囲の温度で動作する、請求項25に記載の燃料電池。
【請求項27】
前記カソードがニッケル及び白金黒からなる群から選択される、請求項25又は26の何れかに記載の燃料電池。
【請求項28】
前記燃料がアンモニアであり、前記塩基性電解質の濃度が、該アンモニアの濃度よりも約2倍〜約5倍高い、請求項25〜27の何れか1項に記載の燃料電池。
【請求項29】
前記塩基性電解質の濃度が、前記アンモニアの濃度よりも約3倍高い、請求項28に記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2009−515036(P2009−515036A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535779(P2008−535779)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/040468
【国際公開番号】WO2007/047630
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(506241994)オハイオ ユニバーシティ (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/040468
【国際公開番号】WO2007/047630
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(506241994)オハイオ ユニバーシティ (5)
【Fターム(参考)】
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