説明

アルミナチタネート多孔質構造体

本発明は、対応する単純な酸化物に基づいて、Al23と、TiO2と、Fe23、Cr23、MnO2、La23、Y23、Ga23を含む群から選ばれる元素M2の少なくとも1種の酸化物と、ZrO2、Ce23、HfO2を含む群から選ばれる元素M3の少なくとも1種の酸化物と、そして所望によりMgO、CoOのうちから選ばれる元素M1の少なくとも1種の酸化物と、所望によりSiO2と、を含む酸化物セラミック材料を含む多孔質構造体に関するものであり、当該材料は対応する単純な酸化物又はその前駆物質の1つの反応焼結により、又は当該組成を有する焼結した粒子の熱処理により得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒担体や粒状媒体フィルタなどの多孔質構造体に関し、そのフィルタ作用のある部分及び/又は活性部分を構成する材料がチタン酸アルミニウムを基礎材料としている多孔質構造体に関する。本発明によるセラミックフィルタ又は担体の基礎材料を構成しているセラミック材料は、主に、元素Al、Tiの酸化物から構成される。多孔質構造体は通常、ハニカム構造を有し、特にディーゼルタイプの内燃機関の排気管路で用いられる。
【0002】
以下においては、便宜上及びセラミック分野の慣行に従い、前記元素を含む酸化物を、対応する簡単な酸化物、例えばAl23又はTiO2、を参照して説明することにする。とりわけ、以下の説明においては、特に断らない限り、本発明による酸化物を構成する種々の元素の比率は、対応する簡単な酸化物の重量を参照することにより、説明する化学組成中に存在している酸化物の合計に対する重量百分率として示される。
【0003】
以下においては、本発明が関連する分野である、ガソリン又はディーゼル内燃機関に由来する排ガス中に含まれる汚染物質を除去するためのフィルタ又は触媒担体という特定の分野における用途と利点を説明する。現在のところ、排ガスを浄化するため構造体は全て、一般にハニカム構造を有する。
【背景技術】
【0004】
知られているように、粒状媒体フィルタは、使用中にフィルタ機能を発揮する(煤が蓄積する)のと再生する(煤を除去する)のとの一連の段階にさらされる。フィルタ機能を発揮する段階の間は、エンジンにより放出された煤粒子はフィルタ内部に保持され堆積する。再生段階の間は、煤粒子は、そのフィルタ特性を回復するようにフィルタ内部で焼き尽くされる。従って、フィルタを構成する材料の低温と高温の両方における機械的強度特性がそのような用途にとって最も重要なものであることが理解される。同様に、材料は、ことに一部の再生段階が十分に制御されない場合は1000℃を軽く超えて局所的に上昇しかねない温度に、それを取り付けた車両の全寿命にわたって耐えるのに十分安定である構造を持たなくてはならない。
【0005】
現在のところ、フィルタは主として、多孔質セラミック材料、特に炭化ケイ素又はコージェライトで製作されている。このタイプの炭化ケイ素触媒フィルタは、例えば、ヨーロッパ特許出願公開第816065号明細書、同第1142619号明細書、同第1455923号明細書、あるいは国際公開第2004/090294号パンフレット、同第2004/065088号パンフレットに記載されている。このようなフィルタは、熱機関により発生する煤をフィルタ除去する用途にとって理想的である、熱伝導率に優れ、且つ多孔質の特性、特に平均細孔サイズと細孔サイズ分布、を有する化学的に不活性なフィルタ構造体を得るのを可能にする。
【0006】
ところが、この材料に特有の欠点がなおもいくらか残っており、すなわち第一の欠点は、3×10-6-1より大きな、SiCの幾分大きい熱膨張率に起因するものであり、これは大きな一体式のフィルタを製造するのを可能にせず、また、フィルタを分割して、例えばヨーロッパ特許出願公開第1455923号明細書に記載されているような、セメントを使って一緒に結合されるいくつかのハニカムエレメントにすることを必要とする場合が非常に多い。経済的な本質のものである第二の欠点は、特にフィルタの再生段階を次々と行う際の、ハニカム構造体の十分な熱機械的強度を確保する、焼結のための一般に2100℃を超える極めて高い焼成温度によるものである。このような温度は、特別な設備の設置を必要とし、最終的に得られるフィルタの経費をかなり増加させる。
【0007】
観点を変えれば、コージェライトフィルタが知られており、価格が安いため長い間使用されてはいるが、現時点では、そのような構造体では特に、フィルタがコージェライトの融点より高い温度に局所的にさらされかねない制御が不十分な再生サイクルの間に、問題が生じかねないことが知られている。これらのホットスポットの影響は、フィルタの効率が部分的に失われることから最も深刻な場合の完全な破壊に至るまでの範囲に及ことがある。更に、コージェライトの化学的不活性は、一連の再生中に到達する温度において不十分であり、その結果それはフィルタ機能を発揮する段階中に構造体に蓄積した潤滑剤、燃料、油その他の残留物に由来する物質と反応するとともにそれらによって腐食されやすく、この現象も構造体の特性が急速に劣化する原因になりかねない。
【0008】
上記のような欠点は、例えば、国際公開第2004/011124号パンフレットに記載されており、この文献はそれらを改善するために、ムライト(10〜40wt%)で補強されたチタン酸アルミニウム(60〜90wt%)を基礎材料とする、耐久性の向上したフィルタを提案している。
【0009】
別の態様によれば、ヨーロッパ特許出願公開第1559696号明細書により、1000℃と1700℃の間で酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化マグネシウムを反応焼結させることにより得られるハニカムフィルタを製造するのに粉末を用いることが提案されている。焼結後に得られる材料は、2相、すなわちチタン、アルミニウム及びマグネシウムを含有している擬板チタン石構造のAl2TiO5タイプの主相と、Nay1-yAlSi38タイプの二次的な長石相、の混合物の形をとる。
【0010】
しかし、本出願人が行った実験からは、チタン酸アルミニウムタイプの多孔質材料を基礎材料とするそのような構造体の性能を、特に例えばそれらを粒状媒体フィルタタイプの高温用途で直接使用することができるようにするのに適した熱的安定性、熱膨張率を獲得するように、保証することは現時点では困難であることが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願公開第816065号明細書
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願公開第1142619号明細書
【特許文献3】ヨーロッパ特許出願公開第1455923号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/090294号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2004/065088号パンフレット
【特許文献6】ヨーロッパ特許出願公開第1455923号明細書
【特許文献7】国際公開第2004/011124号パンフレット
【特許文献8】ヨーロッパ特許出願公開第1559696号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
よって、本発明の目的は、特にフィルタ及び/又は触媒の多孔質構造体、一般的にはハニカム構造体、を製造するのに使用するのをより有利にするように、実質的に改善された上記のとおりの特性を有する、酸化物材料を含む多孔質構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
より正確に言うと、本発明は、セラミック材料を含む多孔質構造体であって、当該セラミック材料の化学組成が、酸化物に基づくwt%で表して、
・25%より多く52%未満のAl23
・26%より多く55%未満のTiO2
・合計で20%未満の、MgO及びCoOから選ばれる元素M1の少なくとも1種の酸化物、
・合計で1%より多く20%未満の、Fe23、Cr23、MnO2、La23、Y23及びGa23により形成される群から選ばれる元素M2の少なくとも1種の酸化物、
・合計で1%より多く25%未満の、ZrO2、Ce23及びHfO2により形成される群から選ばれる元素M3の少なくとも1種の酸化物、
・20%未満のSiO2
を含み、当該組成は、
・10%未満のMgO、
・1%より多く20%未満のFe23
・1%より多く10%未満のZrO2
を有し、そして当該材料は、対応する単純な酸化物の反応焼結又はそれらの前駆物質の1つの反応焼結によって得られ、あるいは上記組成を満足する焼結した粒子の熱処理により得られる、セラミック材料を含む多孔質構造体に関する。
【0014】
既に説明したように、上記配合中において、上記材料の酸化物を構成している種々の元素の比率は、対応する単純な酸化物の重量を参照して、当該化学組成中に存在している酸化物の合計に対するwt%でもって示される。とは言え、本発明との関連において、上述の関係において元素M1、M2及びM3は対応する単純な酸化物の形でもって表されてはいるが、これは固体化学において伝統的なものであり、それらは通常、少なくとも大部分は、本発明による材料中に別のより複雑な形態でもって存在しており、そして特に混合酸化物中に含まれていてよく、とりわけチタン酸アルミニウムタイプの相中に含まれていてよい、ということは明らかである。
【0015】
好ましくは、多孔質構造体は前記セラミック材料により形成される。
【0016】
更に、本発明による前記多孔質構造体は、前記組成中に存在している酸化物の合計に基づくモル%で表して、a’−t+2m1+m2が−6と6の間であるような組成を満足し、ここでは、
・aはAl23の含有量(モル%)であり、
・sはSiO2の含有量(モル%)であり、
・a’=a−0.37sであり、
・tはTiO2の含有量(モル%)であり、
・m1はM1の酸化物の合計の含有量(モル%)であり、
・m2はM2の酸化物の合計の含有量(モル%)である。
【0017】
好ましくは、Al23は化学組成の30%より多くに相当する。好ましくは、Al23は化学組成の51%未満又は50%未満に相当し、これらの百分率の含有量は酸化物に基づく重量で与えられる。
【0018】
好ましくは、TiO2は化学組成の50%未満、あるいは45%未満であり、この百分率の含有量は酸化物に基づく重量で与えられる。
【0019】
好ましくは、存在する場合、M1の酸化物は化学組成の1.5%より多くに相当し、非常に好ましくは2%より多くに相当する。好ましくは、M1の酸化物は化学組成の6%未満に相当し、これらの百分率は酸化物に基づく重量で与えられる。
【0020】
好ましくは、M1はまさしくMgである。
【0021】
好ましくは、M2の酸化物は化学組成の1.5%より多く、非常に好ましくは2%より多く、更には3%より多くに相当する。好ましくは、M2の酸化物は合計で化学組成の20%未満、非常に好ましくは15%未満に相当し、これらの百分率は酸化物に基づく重量で与えられる。
【0022】
好ましくは、M2はまさしくFeである。やはり好ましくは、別の実施形態として、元素M2は、Fe23の含有量が1.0%より多い、あるいは更に1.5%より多いままであることを条件に、鉄とランタンとの組み合わせにより構成されてもよい。
【0023】
そのような実施形態では、Fe23(又はFe23種とLa23種の重量含有量の合計)は化学組成の1%より多く、非常に好ましくは1.5%より多くに相当する。好ましくは、Fe23(又はFe23+La23の重量含有量の合計)は化学組成の20%未満、非常に好ましくは18%未満、あるいは更には15%未満に相当し、これらの百分率は酸化物に基づく重量で与えられる。
【0024】
一つの実施形態において、上記組成は鉄とマグネシウムを含み、そして所望に応じランタンを含む。この場合、対応する酸化物のFe23とMgO、そして所望に応じLa23は、合計した重量で表して、当該化学組成の1%より多く、更には1.5%より多く、非常に好ましくは2%より多くに相当する。好ましくは、Fe23とMgO、そして所望に応じLa23は、一緒になって、当該化学組成の18%未満、非常に好ましくは15%未満に相当し、これらの百分率は酸化物に基づく重量によるものである。
【0025】
3の酸化物は合計して、上記化学組成の1%より多くに相当し、この百分率は酸化物に基づく重量で与えられる。好ましくは、M3の酸化物は合計して、上記化学組成の10%未満、非常に好ましくは8%未満に相当する。
【0026】
好ましくは、M3はまさしくZrである。やはり好ましくは、別の実施形態として、元素M3はジルコニウムとセリウムとの組み合わせにより構成されてもよい。
【0027】
従って、上記の粒子の組成において、本発明のこの他方の好ましい実施形態によれば、ZrO2含有量が1%より多いままであることを条件に、ZrO2(M3はZr)をZrO2とCeO2との組み合わせ(この場合はM3はZrとCeとの組み合わせである)に置き換えることができる。このような場合、例えば、前記材料は1wt%より多く10wt%未満の(ZrO2+CeO2)を含み、(ZrO2+CeO2)は当該組成中の当該2つの酸化物の重量による含有量の合計である。
【0028】
言うまでもなく、ここでの説明との関連において、当該組成はそれでもなお、そのほかの化合物を不可避の不純物の形でもって含むことが可能である。特に、本発明による構造体を製造するためのプロセスに1種類のジルコニウム含有反応物だけが最初に導入される場合であっても、その反応物は通常、不可避の不純物の形で少量のハフニウムを含むことが知られており、それは時には導入されるジルコニウムの合計量の最大で1又は2モル%になることがある。
【0029】
例えば、材料は、酸化物に基づくwt%で表して次の化学組成物、すなわち、35%より多く50%未満のAl23、26%より多く50%未満のTiO2、6%未満のMgO、2%より多く15%未満のFe23、2%より多く8%未満のZrO2、及び0.5%より多く15%未満のSiO2、を有することができる。
【0030】
存在する酸化物の全てのものの重量による含有量に加えて、本発明による構造体はまた、そのほかの微量元素を含有してもよい。特に、構造体はケイ素を、対応する酸化物SiO2に基づき0.1wt%と20wt%の間の量で含有してもよい。例えば、SiO2は、化学組成の0.1%より多く、特に0.5%より多くあるいは1%より多く、さもなければ2%より多く、実際には3%より多くあるいは5%より多くに相当する。例えば、SiO2は、化学組成の18%未満、特に15%未満、あるいは12%未満又は10%未満に相当し、これらの百分率は酸化物に基づく重量により与えられる。
【0031】
多孔質構造体は、例えばホウ素や、Ca、Sr、Na、K、Baタイプのアルカリ金属又はアルカリ土類金属などの、他の元素を含有してもよく、存在するこれらの元素の合計量は、多孔質構造体中に存在する元素に対応する全ての酸化物の重量による含有量に加えて、対応する酸化物B23、CaO、SrO、Na2O、K2O、BaOに基づいて、10wt%未満、例えば5wt%未満、又は4wt%未満、あるいは3wt%未満であるのが好ましい。対応する酸化物の重量に基づく、各微量元素の百分率の含有量は、例えば4%未満、又は3%未満、あるいは1%未満である。
【0032】
本発明の一つの可能性のある実施形態によれば、本発明による多孔質構造体は、酸化物に基づくwt%で表して、以下の化学組成、すなわち、
・25%より多く52%未満のAl23
・26%より多く55%未満のTiO2
・1%より多く20%未満のFe23
・20%未満のSiO2
・10%未満のMgOあるいは2%未満のMgO、
・1%より多く10%未満のZrO2、及び
・所望により、合計で2%より多く13%未満の、B23、CaO、Na2O、K2O、SrO及びBaOにより形成される群から選ばれる少なくとも1種の酸化物、
を有する。
【0033】
上記の化学組成において、Fe23は、Fe23とLa23との組み合わせと、同じ比率でもって置き換えてもよい。
【0034】
同様に、これまでに説明したものと組み合わせることができる別の実施形態によれば、上記化学組成において、ZrO2を、ZrO2とCeO2との組み合わせと、同じ比率でもって置き換えてもよい。
【0035】
本発明の別の可能性のある実施形態によれば、本発明による多孔質構造体は、酸化物に基づくwt%で表して、以下の化学組成、すなわち、
・35%より多く51%未満のAl23、例えば38%と50%の間のAl23
・26%より多く45%未満のTiO2
・1%より多く20%未満のFe23又は(Fe23+La23)の組み合わせ、
・所望により、0.1%より多く20%未満のSiO2
・2%未満のMgOあるいは1%未満のMgO、
・1%より多く10%未満のZrO2、及び
・所望により、合計で2%より多く13%未満の、B23、CaO、Na2O、K2O、SrO及びBaOにより形成される群から選ばれる少なくとも1種の酸化物、
を有する。
【0036】
上記の化学組成において、Fe23は、Fe23とLa23との組み合わせと、同じ比率でもって置き換えてもよい。
【0037】
同様に、これまでに説明したものと組み合わせることができる別の実施形態によれば、上記化学組成において、ZrO2を、ZrO2とCeO2との組み合わせと、同じ比率でもって置き換えてもよい。
【0038】
そのような化学組成は、酸化物に基づくwt%で表して、
・1%と18%の間のFe23又は(Fe23+La23)、
・3%と18%の間のSiO2、及び
・1%と8%の間のZrO2又は(ZrO2+CeO2)、
を有するのが好ましい。
【0039】
ここでの説明が不必要に冗長にならないように、上記の本発明による材料の組成の様々な好ましい実施形態間の本発明による全ての可能性のある組み合わせを報告はしない。しかしながら、もちろん、上で説明した最初の及び/又は好ましい値と範囲の全ての可能性のある組み合わせを想定することができ、そしてそれらはここでの説明の中で出願人によって説明されていると見なされなければならない(特に2つ、3つ又はそれ以上の組み合わせ)。
【0040】
本発明による多孔質構造体は更に、チタン、アルミニウム、M2から選ばれる少なくとも1つの元素、M3から選ばれる少なくとも1つの元素、そして所望によりM1から選ばれる元素を含む固溶体タイプの酸化物相と、酸化チタンTiO2及び/又は酸化ジルコニウムZrO2及び/又は酸化セリウムCeO2及び/又は酸化ハフニウムHfO2から本質的になる少なくとも1つの相と、及び所望により少なくとも1つのケイ酸塩相、を主として含むことができ、あるいはそれらにより形成することができる。
【0041】
好ましくは、本発明による多孔質構造体は、チタン、アルミニウム、鉄、ジルコニウム、そして所望によりマグネシウムを含む固溶体タイプの酸化物相と、酸化チタンTiO2及び/又は酸化ジルコニウムZrO2から本質的になる少なくとも1つの相と、及び所望により少なくとも1つのケイ酸塩相、を主として含むことができ、あるいはそれらにより形成することができる。
【0042】
上記のケイ酸塩相は、材料の総重量の0〜45%の範囲にあることができる比率で存在することができる。一般的に、上記のケイ酸塩相は主としてシリカとアルミナからなり、ケイ酸塩相中のシリカの重量比率は34%より大きい。
【0043】
可能性のある別の実施形態によれば、
・Al23は48wt%と54wt%の間に相当することができ、
・TiO2は35wt%と48wt%の間、例えば38wt%と45wt%の間に相当することができ、
・Fe23又は(Fe23+La23)は1wt%と8wt%の間、例えば2wt%と6wt%の間に相当することができ、
・SiO2は1wt%未満、あるいは0.5wt%未満の比率で存在し、
・ZrO2(又はZrO2+CeO2)は3wt%未満であり、
・MgOは1wt%と8wt%の間、例えば2wt%と6wt%の間に相当することができる。
【0044】
本発明による多孔質構造体を構成する材料は、当該分野で普通に使用される任意の技術により得ることができる。
【0045】
第一の変形実施形態によれば、構造体を構成する材料は、通常のやり方でもって直接得てもよく、所望の組成を得るためのしかるべき比率で初期反応物を単純に混合し、その後加熱し固体状態で反応させる(反応焼結)ことにより得てもよい。
【0046】
上記の反応物は、例えば、単純な酸化物のAl23、TiO2でよく、そして所望により、構造体中に、例えば固溶体の形でもって、存在しやすい元素のその他の酸化物でよい。本発明によれば、例えば上記元素の炭酸塩、水酸化物又はその他の有機金属化合物の形をした、当該酸化物の任意の前駆物質を使用することも可能である。「前駆物質」という用語は、多くの場合熱処理の前の段階で、すなわち一般に1000℃未満、あるいは800℃未満、更には500℃未満の加熱温度で、分解して対応する単純な酸化物になる物質を意味するものと解される。
【0047】
本発明による構造体を製造する別の方法によれば、当該反応物は、上述の化学組成に対応しそして上記の単純な酸化物から得られる焼結された粒子である。初期の反応物の混合物を予備焼結し、すなわちそれを、チタン酸アルミニウムタイプの構造の少なくとも1つの主相を含む焼結された粒子を形成するよう単純な酸化物が反応するのを可能にする温度に加熱する。この実施形態によれば、前述の酸化物の前駆物質を使用することも可能である。この場合もやはり、上述のように、前駆物質の混合物を焼結し、すなわちそれを、チタン酸アルミニウムタイプの構造を有する少なくとも1つの相を主として含む焼結された粒子を形成するよう前駆物質が反応するのを可能にする温度に加熱する。
【0048】
本発明によるそのような構造体を製造するための一つの方法は、一般に次のとおりである。すなわち、初めに、所望の組成を得るためのしかるべき比率でもって初期反応物を混合する。
【0049】
当該分野においてよく知られているように、この製造方法は一般に、反応物の初期の混合物をメチルセルロースタイプの有機結合剤及び細孔形成剤、例えばスターチ、グラファイト、ポリエチレン、PMMAなどと混合し、そしてハニカム構造体を押出し加工する工程を可能にするのに必要な流動性が得られるまで水を徐々に加える工程を含む。
【0050】
例えば、この最初の工程の間に、初期の混合物を1〜30wt%の、所望の細孔寸法に応じて選ばれる少なくとも1種の細孔形成剤と混合し、次いで少なくとも1種の有機流動化剤及び/又は有機結合剤と水を加える。
【0051】
この混合の結果、ペーストの形の均質生成物が得られる。この生成物を適切な形状のダイを通して押出す工程が、ハニカム形状の一体品をよく知られた技術を用いて得るのを可能にする。この方法は、この場合、例えば、得られた一体品を乾燥させる工程を含むことができる。この乾燥工程の間に、得られた未焼結のセラミック一体品を通常は、マイクロ波乾燥又は熱乾燥により、化学的に結合していない水の含有量を1wt%未満とするのに十分な時間乾燥させる。粒状媒体フィルタを得るのが求められる場合は、この方法は更に、一体品の各端部のあらゆる他の流路を閉鎖する工程を含むことができる。
【0052】
フィルタ部分がチタン酸アルミニウムを基礎材料としている一体品を焼成する工程は、原則として、1300℃より高く1800℃を超えない、好ましくは1750℃を超えない温度で行われる。この温度は、特に多孔質材料中に存在しているその他の相及び/又は酸化物に応じて、調整される。通常は、焼成工程の間に、一体品の構造体を酸素又は不活性ガスを含有している雰囲気中において1300℃と1600℃の間の温度に加熱する。
【0053】
本発明の利点の一つは、SiCフィルタ(上記のとおり)とは異なり分割の必要なしに、非常に大きくした寸法の一体式構造体を得る可能性にあるとは言うものの、それほど好ましくはないながら一つの実施形態によると、上記方法は所望により、複数の一体品を周知の技術、例えばヨーロッパ特許出願公開第816065号明細書に記載されたものを使って組み立てて、集成したフィルタ構造体にする工程を含んでもよい。
【0054】
本発明による多孔質セラミック材料で製作されたフィルタ構造体は、好ましくはハニカムタイプのものである。それは、10%より大きく、一般には20%と70%の間、あるいは30%と60%の間の好適な細孔率を有し、平均細孔サイズは、Micromeritics 9500装置での水銀ポロシメトリーで測定して、理想的には5μmと60μmの間、特に10μmと20μmの間である。
【0055】
このようなフィルタ構造体は一般に、多孔質材料で形成された壁によって切り離された互いに平行な軸線の多数の隣り合った流路又は通路を含む中央部分を有する。
【0056】
粒状媒体フィルタにおいては、それらの流路は、ガスが多孔質の壁を通過するように、ガスの入口面に開口する入口室とガスの排出面に開口する出口室とを画定するようそれらの端部の一方又は他方をプラグによって閉鎖される。
【0057】
本発明はまた、上に規定した構造体から、一般に少なくとも1種の貴金属、例えばPt及び/又はRh及び/又はPdなどを含み、そして所望によりCeO2、ZrO2又はCeO2−ZrO2などの酸化物を含む、支持されている又は好ましくは支持されていない少なくとも1つの活性触媒相を被着させることによって、好ましくは含浸させることによって得られる、フィルタ又は触媒担体にも関する。触媒担体はやはりハニカム構造を有するが、流路はプラグで閉鎖されず、触媒は流路の細孔に被着される。
【0058】
本発明とその利点は、以下の限定されない例を読むとよりよく理解される。これらの例においては、特に断らない限り、百分率による全ての含有量は重量により与えられる。
【実施例】
【0059】
これらの例では、次の原料から試料を作製した。それらの原料とは、
・99.8%のAl23を含みメジアン径d50が約5.2μmのAlmatis CL4400FGアルミナ、
・99.5%のTiO2を含み直径が約0.3μmのTRONOX T−R酸化チタン、
・純度99.7%のElkem Microsilicia Grade 971UのSiO2
・98%より高い純度のFe23
・約97%のCaOを含み、80%より多くの粒子の直径が80μm未満である石灰、
・Societe des Produits Chimiques Harbonnieresにより市販されている、SrCO3を98.5%より多く含む炭酸ストロンチウム、
・Saint−Gobain ZirPro社によりCC10の呼称で市販されている、純度が98.5%より高くメジアン径d50が3.5μmの酸化ジルコニウム、
・99%より高い純度の酸化ランタンLa23
・約99%のCeO2を含み粒子の平均径が20μm未満の酸化セリウム、
である。
【0060】
しかるべき比率で混合した上記の反応物から、本発明による試料と比較用の試料を得た。
【0061】
より正確に言うと、初期の反応物の混合物を混合し、次いで円柱の形にプレスし、そしてその後それらを空気中において表1に示した温度で4時間焼結した。
【0062】
次に、作製した試料を分析した。各例の試料ごとに行った分析の結果を表1に示す。
【0063】
表1において、
1)酸化物に基づくwt%で示した化学組成は、蛍光X線により測定した。
2)耐火製品中に存在する結晶相の特性を、X線回折とマイクロプローブ分析EPMA(電子線マイクロアナリシス)により調べた。こうして得られた結果を基に、各相の重量百分率とその組成を推定することができた。表1において、ATはチタン酸アルミニウムタイプの酸化物の固溶体(主相)を示し、PSはケイ酸塩相の存在を示し、その他の相は少なくとも1つの他の微量相P2の存在を示し、そして「〜」は相が痕跡の形で存在していることを意味している。
3)存在する結晶相の安定性は、最初に存在した結晶相と1100℃で100時間の熱処理後に存在するものとをX線回折により比較することにある試験で測定した。この処理後のコランダムAl23の出現に対応する主ピークの最大強度がAT相の3つの主ピークの最大強度の平均の50%未満にとどまっている場合に、製品は安定であると見なし、そしてそれが30%未満にとどまっている場合に非常に安定であると見なした(このような製品は表1で「yes」と表示されている)。
4)圧縮強度(R)は、10kNのロードセルを装備したLLOYD設備で、作製した試料を1mm/minの速度で圧縮することにより、室温で測定した。
5)密度は、通常の技術(アルキメデス法)により測定した。表1に示した細孔率は、理論密度(粉砕した製品についてヘリウム比重びん法により測定した、多孔質でない材料の予測最大密度)と測定密度との差を百分率として示したものに相当する。
【0064】
【表1】

【0065】
表1のデータから、細孔率特性と機械的強度特性との組み合わせが改善されていることが分かる。すなわち、同じ焼結温度について、この表は、本発明による例の細孔率は比較例のそれと比較できることを示している。同時に、表1に示したように、本発明による例は比較例のものより有意に大きな強度Rを有している。
【0066】
このとおり、本発明の製品は、必要条件に応じて、
・所定の焼結(焼成)温度で、材料の所望される組成に関係してより良好な特性を得ることか、
・あるいは材料の高い細孔率レベルを調節する(特に初期の反応物に細孔形成剤を添加することによって)一方で、良好な機械的一体性を保持すること、
を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物セラミック材料によって形成された多孔質構造体であって、当該酸化物セラミック材料は、酸化物に基づくwt%で表して、下記の組成、すなわち、
・25%より多く52%未満のAl23
・26%より多く55%未満のTiO2
・合計で20%未満の、MgO及びCoOから選ばれる元素M1の少なくとも1種の酸化物、
・合計で1%より多く20%未満の、Fe23、Cr23、MnO2、La23、Y23及びGa23により形成される群から選ばれる元素M2の少なくとも1種の酸化物、
・合計で1%より多く25%未満の、ZrO2、Ce23及びHfO2により形成される群から選ばれる元素M3の少なくとも1種の酸化物、
・20%未満のSiO2
を満足し、当該組成は、
・10%未満のMgO、
・1%より多く20%未満のFe23
・1%より多く10%未満のZrO2
を有し、そして当該材料は、対応する単純な酸化物の反応焼結又はそれらの前駆物質の1つの反応焼結によって得られ、あるいは焼結した粒子の熱処理により得られ、当該組成は、当該組成中に存在している酸化物の全てに基づくモル%で表して、a’−t+2m1+m2が−6と6の間であるようなものであり、この式において、
・aはAl23のモル%での含有量であり、
・sはSiO2のモル%での含有量であり、
・a’=a−0.37sであり、
・tはTiO2のモル%での含有量であり、
・m1はM1の酸化物のモル%での合計含有量であり、
・m2はM2の酸化物のモル%での合計含有量である、
酸化物セラミック材料によって形成された多孔質構造体。
【請求項2】
3がZr又はZrとCeとの組み合わせから選ばれ、前記材料中のZrO2含有量が0.7%より多い、請求項1記載の多孔質構造体。
【請求項3】
1がMgであり、M2がFeを含むかFeであり、M3がZrを含むかZrである、請求項1又は2記載の多孔質構造体。
【請求項4】
2が鉄とランタンとの組み合わせにより構成されている、請求項1〜3の1つに記載の多孔質構造体。
【請求項5】
3がジルコニウムとセリウムとの組み合わせにより構成されている、請求項1〜4の1つに記載の多孔質構造体。
【請求項6】
前記材料が、酸化物に基づくwt%で表して、下記の化学組成、すなわち、
・25%より多く52%未満のAl23
・26%より多く55%未満のTiO2
・10%未満のMgO、
・1%より多く20%未満のFe23又は(Fe23+La23)、
・1%より多く10%未満のZrO2又は(ZrO2+CeO2)、
・20%未満のSiO2
を有する、請求項1〜5の1つに記載の多孔質構造体。
【請求項7】
前記材料が、酸化物に基づくwt%で表して、下記の化学組成、すなわち、
・35%より多く50%未満のAl23
・26%より多く50%未満のTiO2
・6%未満のMgO、
・2%より多く15%未満のFe23又は(Fe23+La23)、
・2%より多く8%未満のZrO2又は(ZrO2+CeO2)、
・0.5%より多く15%未満のSiO2
を有する、請求項6記載の多孔質構造体。
【請求項8】
1%より多くのSiO2を含む、好ましくは3%より多くのSiO2を含む、好ましくは5%より多くのSiO2を含む、請求項1〜7の1つに記載の多孔質構造体。
【請求項9】
前記材料が、チタン、アルミニウム、鉄、ジルコニウムを含み、所望によりマグネシウムを含む、固溶体タイプの相からなる主相と、酸化チタンTiO2及び/又は酸化ジルコニウムZrO2から本質的になる少なくとも1つの相と、及び所望により少なくとも1つのケイ酸塩相、を含む、請求項1〜8の1つに記載の多孔質構造体。
【請求項10】
前記ケイ酸塩相が前記材料の総重量の0〜45%の範囲にあることができる比率で存在している、請求項9記載の多孔質構造体。
【請求項11】
前記ケイ酸塩相が主としてシリカとアルミナからなり、当該ケイ酸塩相中のシリカの重量比率が34%より大きい、請求項10記載の多孔質構造体。
【請求項12】
ハニカムタイプの構造を有し、特に自動車用途向けの触媒担体又はフィルタであって、当該構造体を構成しているセラミック材料の細孔率が10%より大きく、細孔サイズの中心が5μmと60μmの間にある、請求項1〜11の1つに記載の多孔質構造体。

【公表番号】特表2013−505197(P2013−505197A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530316(P2012−530316)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051971
【国際公開番号】WO2011/036397
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(310009890)サン−ゴバン サントル ドゥ ルシェルシェ エ デトゥードゥ ユーロペン (24)
【Fターム(参考)】