アルミニウムと炭素材料との間の効率的なAl−C共有結合を形成する方法
【課題】 既存の問題点であるアルミニウムと炭素材料の接合に関する問題を解決し、電気アーク又は電気化学的方法を用いて、重さが軽く力学的強度に優れた炭素材料−アルミニウム複合体を製造した。
【解決手段】 本発明は、電気化学的方法を用いてアルミニウム−炭素材料のAl−C共有結合を形成する方法を提供する。上記方法は、陽極と、炭素材料の連結された陰極とで構成され、電解液で満たされた電気化学装置に電位を印加して、陰極に連結された炭素材料の表面をアルミニウムでメッキする段階を含むことができる。更に、本発明は、上記電気化学装置に電位を印加し炭素材料の表面をアルミニウムでメッキして共有結合を形成したアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法、及び上記方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体を提供する。
【解決手段】 本発明は、電気化学的方法を用いてアルミニウム−炭素材料のAl−C共有結合を形成する方法を提供する。上記方法は、陽極と、炭素材料の連結された陰極とで構成され、電解液で満たされた電気化学装置に電位を印加して、陰極に連結された炭素材料の表面をアルミニウムでメッキする段階を含むことができる。更に、本発明は、上記電気化学装置に電位を印加し炭素材料の表面をアルミニウムでメッキして共有結合を形成したアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法、及び上記方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気アーク又は電気化学的方法を用いてAl−C共有結合を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムは、調理場で使われるホイル(foil)から、使い捨て食器、窓、自動車、航空機、及び宇宙船に至るまで生活の中で多用途に使われている。アルミニウムの特性としては、鉄の重量の1/3程度と軽く、他の金属と合金化した場合に優れた強度を持つ。また、アルミニウムの表面には化学的に安定した酸化膜が存在して、水分や酸素などによる腐食の進行を防止するため、化学的に安定している。
【0003】
このような理由からアルミニウムは自動車や航空機などに使われてきた。特に、自動車に使われる場合、アルミニウムホイールは既存の鉄製ホイールに比べて軽いため、自重を減らすことができると共に、車体の軽量化によって燃費減少にも寄与できるという一挙両得の効果がある。しかし、このようなアルミニウムは、引張強度が鉄に比べて約40%程度しかないため、構造用材として使用する場合は構造用アルミニウム管や板材の厚みが非常に厚くなって、結局、過多な材料及び材料費が必要となるといった問題が発生することになる。
【0004】
上記のような問題点を改善するために、引張強度に優れた、炭素材料とアルミニウムの接合体及び複合材料を製造するための研究が活発である。その例として、特許文献1は、炭素繊維とアルミニウムを接着剤で一体化させて構造用材に適した接合材料を製造する方法を提供する。しかし、この方法は、接着剤を用いることからアルミニウムと炭素材料との界面における結合力に限界があって、これらの成形のためには変形が不可避であるため接着力が落ちるなどの難しさがある。
【0005】
このように中間材を用いて複合体を作る方法の他にも、アルミニウムと炭素材料との直接接合を利用した複合材料に関する研究も活発に進められているが、炭素繊維及び炭素ナノチューブとアルミニウムとの複合材料を製造する方法は、プラズマを用いる方法やメッキ法などがある。
【0006】
プラズマを用いた方法は、アルミニウムと混ざり合った炭素材料を、プラズマの高エネルギーによる瞬間的なアルミニウム溶融で焼結(sintering)する方法である。その例と
して、特許文献2が挙げられる。しかし、プラズマを用いる方法は、装置が高価で、高電流を長時間流すため、生産性が低いという短所がある。
【0007】
電気メッキ法は、複合材料用のメッキ液を製造し、電位を印加して複合材料がメッキされるようにする方法である(特許文献3)。この技術は、 炭素ナノチューブとアルミニ
ウムをメッキ液の中に溶融させ、これら物質が同時に陰極表面に到達して、複合体が形成されるようにする方法であるが、この場合、炭素材料とアルミニウムとの間の結合力を制御することができず、収率が落ちるという点で限界がある。
【0008】
このようにアルミニウムと炭素材料の複合体を形成するにはいくつかの問題点を伴うが、その根本的原因はこれら2つの物質の物理、化学的特性が相異なるためである。その1つ目は、炭素材料、例えば炭素ナノチューブは、チューブ同士のファン・デル・ワールス(Van der waals)力による相互作用のため、分散が容易ではなくて、アルミニウム内に均
一分散させるのが困難であるという点である。2つ目は、炭素材料とアルミニウム基材との間の相異なる表面張力である。表面張力が異なる場合の代表例が水と油であるが、これらの表面張力の差は2〜3倍程度ある。しかし、炭素材料とアルミニウムの場合、最近研究された論文によると、アルミニウムは、その表面エネルギーが955mN/mで、炭素材料の場合は45.3mN/mであることが明らかになった [参考文献:非特許文献1]
。これら材料間の表面張力の差は、約20倍程度あることが明らかになった。即ち、これは、2つの物質がよく混ざらないということである。また、これら2つの物質は、密度も顕著に異なるため、溶融時もよく混ざらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許出願公開第2003−46378号明細書
【特許文献2】特開2006−315893号公報(2006.11.24.)
【特許文献3】特開2007−70689号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.M. Molina et al. international Journal of adhesion Adhesives 27 (2007) 394-401, S. Nuriel, L. Liu, A.H. Barber, H.D. Wagner. Direct measurement of multiwall nanotube surface tension, Chemical Physics Letters 404 (2005) 263-266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、電気アーク又は電気化学的方法を用いて、既存の問題点であるアルミニウムと炭素材料の接合に関する問題を解決した。電気アーク方法は、試料内部で炭素材料とアルミニウムとの間に生じる電気アーク(arc)と電気の流れにより発生する高熱によりA
l−C共有結合を誘導する。電気化学的方法は、炭素材料にある炭素が、電位差によって還元されるアルミニウムと反応してAl−C共有結合を形成する。
【0012】
本発明の目的は、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、電気アークを印加して共有結合を形成したアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法、及び上記方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、電気化学的方法を用いて共有結合を形成したアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法、及び上記方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的を達成するために、本発明は、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供する。
本発明は、(i)炭素材料の欠陥及び機能化を誘導する段階;(ii)上記機能化された炭素材料をアルミニウムと混合する段階;及び(iii)上記混合物に電気アークを印加してAl−C共有結合を誘導する段階;を含む、アルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供する。
【0015】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブか
らなる群より選ばれる1種又は2種以上の物質を用いることができる。
現在、入手可能な炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μm、長さが10nm乃至10cmと知られている。即ち、炭素ナノチューブは、現在まで報告された資料(Science292,2462[2001])から一番小さい直径が0.4nmと知られており、炭素繊維は商用化された製品の直径が最大16μmと知られている(Taiwan Carbon Technology Co)。本発
明では炭素材料として、多重壁炭素ナノチューブは直径10乃至20nm、長さ10乃至20μmのものを用い、NK炭素ナノチューブは直径40乃至60nm、長さ20μm前後のものを用いた。炭素繊維(東レ)は直径7乃至8μm、長さ5mmのものを用いた。但し、本発明の方法においては、炭素材料の大きさにいかなる制限も受けない。
【0016】
上記(i)段階では、炭素材料の欠陥及び機能化を誘導するために酸処理を行うことができる。酸処理には、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、又は硝酸と硫酸の混合物を
含む酸を用いることができる。炭素ナノチューブの場合は、sp2混成結合を成す円筒状
の構造を持つ。しかし、この構造は表面がなめらかで他の物質との結合は難しい。従って、複合体に使われる炭素ナノチューブとして、マトリックスと結合できるように傷のような欠陥を作ったものを用いる。また、機能化とは、結合に対して特定の反応性を有する−OH、−COOH、−CHOなどの作用基などを炭素材料に付着させて反応性を高めることである。
【0017】
上記(i)段階では、炭素材料の欠陥及び機能化を誘導するためにマイクロウェーブ処理を行うことができる。マイクロウェーブ処理には溶媒として、エチレングリコール(ethylene glycol)、硝酸(HNO3)、及び硫酸(H2SO4)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いることができる。マイクロウェーブ処理の時間は1分乃至10分であり得る。
【0018】
上記(i)段階では、炭素材料の欠陥及び機能化を誘導するためにプラズマ処理を行うことができる。プラズマ処理には、酸素、アルゴン、及びヘリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合ガスを用いることができる。電力は、50W乃至1000Wを使用でき、処理時間は1分乃至1時間であり得る。
【0019】
上記(i)段階で炭素材料の欠陥及び機能化を誘導するための方法の例として、酸処理、マイクロウェーブ処理、又はプラズマ処理を挙げているが、これらに限るものではない。本発明に使われた用語‘機能化’とは、炭素材料に欠陥を形成して、官能基又は作用基を付けることを意味する。
【0020】
上記(ii)段階では、炭素材料とアルミニウムを混合するために、ボールミリング(ball milling)又は液体内超音波分散処理を行うことができる。炭素材料とアルミニウムの混合比率は、0.1乃至50wt%であり得る。混合されたアルミニウム及び炭素材料の粉末を鋼鉄容器にボールと共に入れて、不活性気体雰囲気の下でボールミリングを行う。液体内超音波分散処理の場合は、エタノール又は脱イオン水に炭素材料とアルミニウム粒子を分散した後、乾燥及びフィルタリングして得ることができる。
【0021】
上記(iii)段階では、炭素材料とアルミニウムの混合物にパルス電流を印加して、アーク放電を誘導できる。
本発明の他の態様として、本発明は、(i)炭素材料に欠陥及び機能化を誘導する段階;(ii)上記機能化された炭素材料をアルミニウムと混合する段階;及び(iii)上記アルミニウムと炭素材料の混合物に電気アークを印加してAl−C共有結合を誘導する段階;を含む、アルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法を提供する。
【0022】
また、炭素材料の反応性を増加させるために、上述したように、酸処理、マイクロウェ
ーブ処理又はプラズマ処理などによって、炭素材料に欠陥及び機能化を誘導することができる。ボールミリングする条件、液体内での超音波分散処理、パルス電流印加、及び炭素材料に関する内容は上記の通りである。
【0023】
本発明のまた他の態様として、本発明の上記方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体を提供する。
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供する。
【0024】
本発明は、(i)陽極と、炭素材料が連結された陰極とで電気化学装置を構成する段階;(ii)上記電気化学装置に、有機溶媒、溶解補助剤、還元剤、及びアルミニウム化合物を含有した電解液を満たす段階;及び(iii)上記電気化学装置に電位を印加して、上記陰極に連結された炭素材料の表面をアルミニウムでメッキする段階;を含む、アルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供する。
【0025】
上記電気化学装置として、電気化学用電池(cell)を使用してもよい。
上記炭素材料には、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の物質を用いることができる。
【0026】
現在、入手可能な炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μm、長さが10nm乃至10cmと知られている。即ち、炭素ナノチューブは、現在まで報告された資料(Science292、2462[2001])から一番小さい直径は0.4nmと知られており、炭素繊維は商用化された製品の直径が最大16μmと知られている(Taiwan Carbon Technology Co)。本発
明では炭素材料として、多重壁炭素ナノチューブは直径10乃至20nm、長さ10乃至20μmのものを用い、NK炭素ナノチューブは直径40乃至60nm、長さ20μm前後のものを用いた。炭素繊維(東レ)は直径7乃至8μm、長さ5mmのものを用いた。但し、本発明の方法においては、炭素材料の大きさにいかなる制限も受けない。
【0027】
上記(ii)段階で、有機溶媒は、非プロトン性エーテル系列であって、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルエーテル(dimethyl ether)、ジエチルエーテル(diethyl ether)、t−ブチルエーテル(t-butyl ether)、イソアミルエーテル(iso-amyl ether)、フェニルエーテル(phenyl ether)、メチル−t−ブチルエーテル(methyl-t-butyl
ether)、イオン性液体系列としてエチルピリジニウムハライド(Ethylpyridinium halide)、N−(1−ブチル)ピリジニウムハライド(N-(1-butyl)pyridinium halide)、1−メチル−3−エーテルイミダゾリウムハライド(1-methyl-3-ethylimidazolium halide)、及びトリメチルフェニルアンモニウムハライド(Trimethylphenylammonium halide)からなる群より選ばれる何れか1種又は2種以上の混合物を用いることができる。但し、上記有機溶媒はこれに限定されるものではない。電解液を製造するための有機溶媒の条件としては、まずアルミニウムが還元される電位である−1.67 V(vs SHE)よりも低い電位で分解されずに耐えられなくてはならず、高濃度アルミニウム溶液を作るために、アルミニウム化合物をよく溶かすことができるよう極性の性質がなければならず、ルイス酸が、アルミニウムイオンを配位できるルイス塩基でなければならない。
【0028】
上記(ii)段階で、電解液を高濃度にするための溶解補助剤としては、これらに限定されはしないが、芳香族炭化水素系列としてのベンゼン(benzene)、フェノール(phenol)、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)及びメシチレン(mesitylene)からなる群より選ばれる何れか1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0029】
上記(ii)段階で、アルミニウムの析出を加速化させるための還元剤としては、これらに限定されはしないが、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)、水素化リチウ
ム(LiH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)及び塩化リチウム(LiCl)か
らなる群より選ばれる何れか1つを用いることができる。
【0030】
上記(ii)段階で、アルミニウムメッキのためのアルミニウム化合物としては、これらに限定されはしないが、アルミニウムハライド(AlXx)系又は有機アルミニウム化合物を用いることができる。
【0031】
上記電位は、有機溶媒が分解されない電位以上、アルミニウムが還元されることができる電位以下であり得る。従って、上記電位は、用いられる有機溶媒によって変わることがあり、例えば、有機溶媒が非プロトン性エーテル系列のテトラヒドロフラン(THF)の場合は−5V以上、アルミニウムが還元され得る電位である−1.67V(vs SHE
)以下、また有機溶媒がイオン性液体系列のエチルピリジニウムハライドの場合は−10V以上、−1.67V(vs SHE)以下を印加することができる。
【0032】
本発明の他の態様として、本発明は、(i)陽極と、炭素材料が連結された陰極とで電気化学装置を構成する段階;(ii)上記電気化学装置に、有機溶媒、溶解補助剤、還元剤及びアルミニウム化合物を含有した電解液を満たす段階;及び(iii)上記電気化学装置に電位を印加し、陰極に連結された炭素材料の表面をアルミニウムでメッキしてアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する段階;を含む、アルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法を提供する。
【0033】
上記(ii)段階で使われる有機溶媒、溶解補助剤、還元剤及びアルミニウム化合物の例、(iii)段階で印加される電位の条件、及び炭素材料に関する内容は上記の通りである。
【0034】
本発明のまた他の態様として、本発明の上記方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体を提供する。
本発明は、電気アーク又は電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料との間のAl−C共有結合を誘導する方法を提供する。
【0035】
本発明は、(i)炭素材料に欠陥及び機能化を誘導する段階;(ii)上記機能化された炭素材料をアルミニウムと混合する段階;及び(iii)上記混合物に電気アークを印加してAl−C共有結合を誘導する段階;を含む、アルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供する。
【0036】
また、本発明は、(i)陽極と、炭素材料が連結された陰極とで電気化学装置を構成する段階;(ii)上記電気化学装置に有機溶媒、溶解補助剤、還元剤及びアルミニウム化合物を含有した電解液を満たす段階;及び(iii)上記電気化学装置に電位を印加して、上記陰極に連結された炭素材料の表面をアルミニウムでメッキする段階;を含む、アルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供する。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、電気アーク又は電気化学的方法を用いて、既存の問題点であるアルミニウムと炭素材料の接合に関する問題を解決した。電気アーク方法は、試料内部で炭素材料とアルミニウムとの間に生じる電気アークと電気の流れにより発生する高熱によりAl−C共有結合を誘導する。電気化学的方法は、炭素材料にある炭素が、電位差により還元されるアルミニウムと反応してAl−C共有結合を形成する。本発明によって製造された炭素材料−アルミニウム複合体は、重さが軽く、力学的強度に優れているため、現在使われる自動車部品やアルミニウムホイールに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の望ましい実施例による、電気アークを用いたアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合のための工程に関するフローチャートである。
【図2】本発明の望ましい実施例により、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導する前と後の光学写真である。
【図3】本発明の望ましい実施例により、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後の電子顕微鏡分析結果である。
【図4】本発明の望ましい実施例により、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後の試片断面の電子顕微鏡分析結果である。
【図5】本発明の望ましい実施例により、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後のラマン分析結果である。
【図6】本発明の望ましい実施例により、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導する前と後のX線回折分析結果である。
【図7】本発明の望ましい実施例により、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後の硬度測定分析結果である。
【図8】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導するための装置を概略的に示した図面である。
【図9】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導するための工程に関するフローチャートである。
【図10】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導する前と後の電子顕微鏡写真である。
【図11】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後のEDSマッピング分析結果である。
【図12】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導する前と後のラマン分析結果である。
【図13】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後のアルミニウム2pのXPS分析結果である。
【図14】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いて電位別にアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後のX線回折分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の構成要素及び技術的特徴を、次の実施例を通してより詳しく説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を詳しく説明するためだけのものであって、本発明の構成要素の技術的範囲を、実施例に例示したものに限定しようとするものではない。本発明に引用された文献は、本発明の明細書に参照として統合される。
【0040】
実施例
実施例1:電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料との間にAl−C共有結合を誘導する工程
本発明に関する具体的な例は、図1に示された実験工程に従う。炭素材料には、多重壁炭素ナノチューブ(ILJIN Nanotech製品、CM95)、NK炭素ナノチューブ(nanokarbon製品、hellow CNT75)、炭素繊維(東レ製品(日本)、T300)を用いた。多重壁炭素ナノチ
ューブは直径10〜20nm、長さ10〜20μmのものを、NK炭素ナノチューブは直径40〜60nm、長さ20μmのものを用いた。
【0041】
1−1−1.酸処理による炭素材料の機能化誘導
上記炭素ナノチューブは、70%硝酸(HNO3)に10分乃至3時間、水槽型反応器
(ドイツ Bangbelin electronic、RK106)で超音波反応させて機能化を誘導した。NK炭素ナノチューブは、機能化された製品を購買した。炭素繊維は、硫酸(H2SO4)と硝酸(HNO3)を1:1で混ぜたものに2時間超音波反応して機能化を誘導した。
【0042】
1−1−2.マイクロウェーブ処理による炭素材料の機能化誘導
マイクロウェーブを用いた機能化誘導方法では、エチレングリコール(ethylene glycol)又は硝酸(HNO3)を溶媒として、また塩素酸ナトリウム(NaClO3)を酸化促
進剤として用い、上記溶媒に多重壁炭素ナノチューブを分散した。マイクロウェーブ処理は、電子レンジ(大宇エレクトロニクス、KR-U20AB)を用いて3分間行われた。但し、処理時間は1分から6分まで可能である。
【0043】
1−1−3.プラズマ処理による炭素材料の機能化誘導
プラズマ処理では、多重壁炭素ナノチューブに常圧で消費電力500Wを用いてプラズマを形成し、ガス原料として酸素500sccm及びヘリウム300sccmを用いた。プラズマ処理をA−tech system製品を用いて5分間行うことにより、欠陥及
び機能化を誘導した。
【0044】
1−2.電気アークを用いたAl−C共有結合の誘導
アルミニウム微細粉末を用い、炭素材料として多重壁炭素ナノチューブ、NK炭素ナノチューブ、又は炭素繊維を用いた。アルミニウム粒子は、SAMCHUN化学より購買した製品を使用した。機能化された上記炭素材料をそれぞれのアルミニウム粉末と比率1〜30wt%でボールミリングした。アルミニウムの酸化を防ぐために、坩堝内をアルゴン(Ar)ガスで充填した。酸素及び水分を十分除去した坩堝を安全に密封した後、50rpm乃至400rpmでボールミリングすることができる。ボールミリングは1〜24時間可能である。
【0045】
回収されたアルミニウムの中に混合された炭素材料をそれぞれ3.8gずつ、直径2cmの黒鉛モールドに入れて、10-2〜10-6torrの真空雰囲気を形成した。そして、30MPa〜2000MPaの圧力でそれぞれの試料を加圧してから温度を上げた。上記温度は、常温乃至1000℃にすることができる。それから、パルス電流を印加し、アーク放電を誘導して炭素材料とアルミニウムのAl−C共有結合を誘導した。
【0046】
実施例2:電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料との間のAl−C共有結合を誘導した後の試料観察
図2は、電気アークを用いてアルミニウムとそれぞれの炭素材料とのAl−C共有結合を誘導する前と後の試料をデジタルカメラ(ニコン、koolpix-3700)で撮影したものである。
【0047】
図2の(a)は、多重壁炭素ナノチューブとアルミニウムとを混合する前の写真である。図2の(b)は、図1の(a)の試料を混合してから、電気アークを用いてアルミニウムと多重壁炭素ナノチューブとの接合を誘導した後の写真である。写真観察の結果、炭素ナノチューブが外部より見えないことから、アルミニウム基材から抜け出てこないことが確認できる。見かけ密度の測定結果は2.63g/cm3であったが、これは一般のアルミ
ニウムよりも低い値であって、これから多重壁炭素ナノチューブがアルミニウム基材内に含まれていることが予想できる。
【0048】
図2の(c)は、NK炭素ナノチューブとアルミニウムとを混合する前の写真である。NK炭素ナノチューブは、直径が一般の多重壁炭素ナノチューブよりも大きくて、見かけ体積がアルミニウムよりも大きいことが観察できる。図2の(d)は、図2の(c)の試料を混合してから、電気アークを用いてアルミニウムとNK炭素ナノチューブとの接合を誘導した後の写真である。図2の(a) 及び(b)の結果と同様に、アルミニウムの中のNK炭素ナノチューブが抜け出てこないことが確認できる。見かけ密度の測定結果は2.68g/cm3であったが、これも図2の(a) 及び(b)と同様の結果を示す。
【0049】
図2の(e)は、炭素繊維とアルミニウムとを混合する前の写真である。見かけ体積は、炭素繊維がアルミニウムよりも大きいことが観察できる。図2の(f)は、図2の(e)の試料に電気アークを発生させた結果である。上述の他の炭素材料の結果と同様に、炭素繊維が外部に抜け出てこないことが確認できる。見かけ密度の測定結果は2.55g/cm3であったが、これも図2の(a)及び(b)と同様の結果を示すため、炭素繊維がアルミニウムの内に含まれていることが分かる。
【0050】
実施例3:電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料との間のAl−C共有結合を誘導した後の表面の電子顕微鏡写真分析
図3は、本発明の実施例で電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料との間のAl−C共有結合を誘導した後に試料の表面を測定した電子顕微鏡(JEOL, JSM7000F) 写真の
分析資料である。
【0051】
図3の(a)は、多重壁炭素ナノチューブとアルミニウムとのAl−C共有結合を誘導した後に試料の表面を測定した電子顕微鏡写真である。図3の(b)は、多重壁炭素ナノチューブの実験前の電子顕微鏡写真である。これら2枚の写真が同じ倍率で測定されたものであることを考慮して比較分析するとき、多重壁炭素ナノチューブが外部に抜け出てこなかったことが確認できる。
【0052】
図3の(c)及び(d)は、NK炭素ナノチューブとアルミニウムとのAl−C共有結合を誘導する前と後の電子顕微鏡写真である。この結果も同じ倍率で測定されたものであることを考慮して観察したとき、多重壁炭素ナノチューブの実験結果と同様に、NK炭素ナノチューブが外部に抜け出てこなかったことが確認できる。
【0053】
図3の(e)及び(f)は、炭素繊維とアルミニウムとのAl−C共有結合を誘導した後に試料の表面を測定した電子顕微鏡写真である。(e)と(f)は、それぞれ100xと1,000xの倍率で測定された。炭素繊維の直径は7〜8μmで、光学写真で観察で
きる大きさである。従って、100xで炭素繊維は観察できる。しかし、(e)と(f)を観察した結果、本発明の方法により炭素繊維とアルミニウムとのAl−C共有結合が誘導された試料から炭素繊維は観察されなかった。従って、炭素繊維は外部に抜け出てこなかったことが確認できる。
【0054】
実施例4:アルミニウムと多重壁炭素ナノチューブとの間のAl−C共有結合を誘導した後の試片断面の分析
図4の(a)と(b)は、アルミニウムと多重壁炭素ナノチューブとの間のAl−C共有結合を誘導した後に試片の断面を測定した電子顕微鏡(JEOL, JSM7000F)写真である。本実施例では、実際の炭素ナノチューブの存在を写真で確認するために、試片の断面を電子顕微鏡で分析した。分析の結果、多重壁炭素ナノチューブは図4の(b)のように試片の内部に存在することが確認できる。
【0055】
図4の(c)と(d)は、多重壁炭素ナノチューブの存在を具体的に確認するために、アルミニウムを塩酸でエッチングした後に測定したものである。その結果、アルミニウムエッチング液から多重壁炭素ナノチューブの一部分が確認できた。
【0056】
実施例5:電気アークを用いてアルミニウムと共有結合された炭素材料の結晶性を確認するためのラマン分析
アルミニウム基材内部に共有結合された炭素材料の結晶性を確認するために、ラマン分光分析法で測定した。ラマン装備は、ReinshawのInvia Basicモデル
で633nm He/Ne laserを用いた。図5の(a)、(b)、(c)は、多重
壁炭素ナノチューブ、NK炭素ナノチューブ、炭素繊維それぞれと接合したアルミニウムの試片の表面を測定したラマン分析資料である。試料全てのラマン分析資料から、炭素材料の炭素sp2混成結合の結晶振動を示すG−ピークの振動モードが確認できる。sp2混成結合は、黒鉛(graphite)の結晶性を示す構造であって、炭素ナノチューブや炭素材料などはsp2混成結合によって主骨格がなされている。この結果から、アルミニウム試料
の内に共有結合されている炭素材料の結晶性が、電気アークによるマイクロ接合の過程中に破壊されずにそのまま残っていることが確認できる。
【0057】
実施例6:電気アークによって共有結合されたアルミニウム−炭素材料のX線回折分析
アルミニウムと炭素材料との間の共有結合がなされたかどうかを確認するために、X線回折分析資料を用いて分析した。X線回折分析装置としては、ドイツのBRUKER A
XS社のD8 FOCUS(2.2KW)モデル、Cu Kα 1.54Åビームを用いた。 図6
は、アルミニウムと炭素材料とのAl−C共有結合を誘導する前と後のX線回折資料である。
【0058】
図6の(a)は、多重壁炭素ナノチューブとアルミニウムとを混合した後に測定したX線回折分析資料である。X線回折分析資料から、アルミニウムの結晶のピークが確認できる。図6の(b)は、(a)の試料を電気アーク接合した後に測定したX線回折分析資料である。この資料から、31.11゜(二重)、40.0゜、55.0゜のアルミニウムカーバイド(Al4C3)の回折ピークが確認できる。この結果から、多重壁炭素ナノチューブとアルミニウムとの間の共有結合が形成されていることが確認できる。
【0059】
図6の(c)と(d)は、NK炭素ナノチューブの電気アーク接合前と後のX線回折分析資料である。NK炭素ナノチューブからも、上述の多重壁炭素ナノチューブと同様に、電気アーク接合後にアルミニウムカーバイドのX線回折ピークが発見された。よって、NK炭素ナノチューブにも炭素とアルミニウムとの間の結合が形成されたことが確認できる。
【0060】
図6の(e)と(f)は、炭素繊維に関するX線回折分析資料である。この資料からも上述のような現状が生じることを確認した。
実施例7:電気アークによってアルミニウムと炭素材料が共有結合された試料の硬度分析
本実施例では、アルミニウム内部に共有結合された炭素材料の機械的硬度を測定した。図7は、炭素材料が含まれたアルミニウム試片の硬度値を示したデータである。硬度は、ビッカース硬度計(日本国AKASHI製品、MVK-H2)を用いてそれぞれの試片を5回ずつ異なる位置で測定した。測定された硬度の平均値を棒グラフに、誤差範囲と共に示した。硬度は、多重壁炭素ナノチューブが最も高く表れた。本発明での硬度は一般的に用いられるアルミニウム(A356-T6)に比べ、多重壁炭素ナノチューブを添加した時に3倍以上増加し
た。それ以下はNK炭素ナノチューブ、炭素繊維の順であった。多重壁炭素ナノチューブと炭素繊維の引張強度の値は、それぞれ63GPa(参考資料:http://en.wikipedia.Org/wiki/ Carbon#nanotube)と3.5Gpa(参考資料:Toray industries)であった。NK炭素ナノチューブは、多重壁炭素ナノチューブよりも直径が大きく欠陥が多いことを考慮するとき、引張強度がより小さいことと予想される。上述の資料と本発明の実施例により測定された実験値とを比較するとき、一貫した結果を確認することができる。従って、炭素材料は、アルミニウム基材内でアルミニウムと共有結合されて、強度に大きい影響を及ぼすことが確認できる。
【0061】
実施例8:電気化学的方法を用いたAl−C共有結合の誘導工程
本実施例は、電気化学的方法を用いて炭素材料とアルミニウムとの共有結合を形成する方法を提供するものである。
【0062】
8−1.電解液の製造
電解液を製造するための有機溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)を用い、電解液を高濃度にするためにベンゼンを添加した。電解液の活性を高めるために水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)を添加した。また、アルミニウム化合物としては、高純
度で水分を含まない塩化アルミニウム(AlCl3)を用いた。電解液を作る作業は全て
、水分のない、アルゴンガスを満たしたグローブボックスの中で行われた。
【0063】
8−2.電気化学的方法を用いたAl−C共有結合の形成過程
図8は電気化学的方法のための装置を図式化したものであり、図9は電気化学的方法に関する全体的な過程を示すフローチャートである。以下、図8及び図9を参照しながら、本発明による電気化学的方法について説明する。
【0064】
電気化学装置は、大きさ15mlのバイアルを用いた。まず、炭素ナノチューブに電位を供給する電子収集装置としては銅フィルムを用い、効果的な電位印加のために酸洗浄して酸化層を除去した。酸で洗浄された銅を再び蒸溜水できれいに洗浄した後、アセトンでその水分を除去した。図8から分かるように、15mlのバイアルの下部には、酸で洗浄された銅フィルムを敷いた。
【0065】
その次の過程として、銅フィルムの上にNK炭素ナノチューブを入れた。NK炭素ナノチューブは、電極として機能する電子を効果的にアルミニウムイオンに伝達して伝導性を高められるように、1000℃で1時間アルゴン雰囲気で熱処理した。
【0066】
上記のような過程の後、高伝導性のNK炭素ナノチューブが相対側の電極に接しないようにするために、電気化学装置にイオン交換膜(CELGARDE)を覆った。
相対側の電極としては、電気的且つ化学的安全性に優れた白金網を用いた。白金網をイオン交換膜に接しない程度に入れ、バイアルを密封した。密封されたバイアルに0.5mm前後の穴をあけて、真空チャンバーを真空にした。真空の中で保管してNK炭素ナノチューブと電気化学装置内の水分を全て除去し、アルゴンで満たした。
【0067】
それから、基準電極を洗浄した後に電気化学装置に入れた。全ての作業の後、電気化学装置に電解液を入れた。テトラヒドロフランが分解されない電位である−5V以上、アルミニウムが還元され得る電位である−1.67V(vs SHE)以下を印加して、アル
ミニウムと炭素材料とのAl−C共有結合を誘導した。20分程度維持した後に電子顕微鏡で測定した結果、アルミニウムが炭素ナノチューブを覆い被さっている様子が確認された。
【0068】
実施例9:電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料との間のAl−C共有結合を誘導した後の電子顕微鏡写真分析
本実施例では、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料との間のAl−C共有結合を誘導する前と後を電子顕微鏡(JEOL, JSM7000F)で観察した。
【0069】
図10は、NK炭素ナノチューブのAl−C共有結合を誘導する前と後の電子顕微鏡写真である。図10の(a)は、NK炭素ナノチューブのAl−C共有結合を誘導する前の電子顕微鏡写真である。図10の(b)と(c)は、それぞれ−4Vと−5V vs Ag/AgCl Ref.でAl−C共有結合を誘導した後の電子顕微鏡写真である。Al−
C共有結合の誘導前を示した図10の(a)と、誘導後を示した図10の(b)及び(c)とを観察した時、NK炭素ナノチューブの表面上をアルミニウムと予想される半透明の物体が覆い被さっているのが確認できる。
【0070】
図11は、−3Vの電気化学反応でAl−C共有結合を誘導した後のEDS(Energy dispersive X-ray spectroscopy)マッピング分析資料である。EDSには、日本電子社の電子顕微鏡(JSM7000Fモデル)に附属物として装着されている装備を用いた。分析の結果、それはアルミニウムであると確認され、これにより、図10の(b)及び(c)においてNK炭素ナノチューブを覆い被さっている物体は、アルミニウムであることが確認できる。
【0071】
実施例10:電気化学的方法によってアルミニウムと共有結合された炭素材料の結晶性を確認するためのラマン分析
本実施例では、電気化学的方法による炭素ナノチューブのAl−C共有結合誘導後の結晶性を確認するためにラマン分析を行った。ラマン装備としては、ReinshawのInvia Basic モデルで633nm He/Ne laserを用いた。図12の(a)と(b)は、それぞれAl−C共有結合の誘導前と後のラマン分析資料である。ラマン分析資料から、Al−C共有結合後も炭素材料のsp2混成結合の結晶振動を示すG−
ピークが観察されることを確認できる。従って、Al−C共有結合後も炭素ナノチューブの結晶性がそのまま残っていることが確認できる。
【0072】
実施例11:電気化学的方法によって共有結合されたアルミニウム−炭素材料のXPS分析
本実施例では、アルミニウムと炭素ナノチューブとの間のAl−C共有結合を分析するために、化学結合分析装備であるXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)(VG-microtech, ESCA2000)を用いて分析した。図13は、アルミニウム2pのXPS分析資料である。XPSは、測定対象表面の数ナノ以内の領域を測定するという点を考慮するとき、アルミニウム表面の酸化膜、及び内部のAl−C共有結合層を分析することができる。この結果から、炭素ナノチューブとアルミニウムとの間のAl−C共有結合が形成されていることが確認できる。
【0073】
実施例12:電気化学的方法によって共有結合されたアルミニウム−炭素材料のX線回折分析
図14は、電位別に電気化学反応した後のX線回折分析資料である。グラフ下部分から、電気化学反応が行われていない炭素ナノチューブ、電位−2V〜−5Vの順で示されている。−4Vからアルミニウムの金属結晶ピークが38.5゜、44.7゜、65.1゜、78.2゜で表れた。これと共に31゜付近で表れるX線回折を観察できるが、これはAl−C共有結合を意味するアルミニウムカーバイド(aluminum carbide)である。この結果、電気化学的方法によってアルミニウムと炭素が共有結合を形成できることを確認した。
【0074】
本発明によって製造された炭素材料−アルミニウム複合体は、重さが軽く、力学的強度に優れているため、現在使われている自動車部品やアルミニウムホイールに適用可能で、乗用車中心のアルミニウムホイール市場を商用車や大型トラックにまで拡大できるであろうと期待される。そればかりか、高強度が求められる航空機、宇宙船、船舶などの素材としても活用が期待される。また、炭素材料−アルミニウム複合体の高熱伝導性により、コンピュータ部品や各種冷却器部品などに応用可能であろうと予想される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気アーク又は電気化学的方法を用いてAl−C共有結合を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムは、調理場で使われるホイル(foil)から、使い捨て食器、窓、自動車、航空機、及び宇宙船に至るまで生活の中で多用途に使われている。アルミニウムの特性としては、鉄の重量の1/3程度と軽く、他の金属と合金化した場合に優れた強度を持つ。また、アルミニウムの表面には化学的に安定した酸化膜が存在して、水分や酸素などによる腐食の進行を防止するため、化学的に安定している。
【0003】
このような理由からアルミニウムは自動車や航空機などに使われてきた。特に、自動車に使われる場合、アルミニウムホイールは既存の鉄製ホイールに比べて軽いため、自重を減らすことができると共に、車体の軽量化によって燃費減少にも寄与できるという一挙両得の効果がある。しかし、このようなアルミニウムは、引張強度が鉄に比べて約40%程度しかないため、構造用材として使用する場合は構造用アルミニウム管や板材の厚みが非常に厚くなって、結局、過多な材料及び材料費が必要となるといった問題が発生することになる。
【0004】
上記のような問題点を改善するために、引張強度に優れた、炭素材料とアルミニウムの接合体及び複合材料を製造するための研究が活発である。その例として、特許文献1は、炭素繊維とアルミニウムを接着剤で一体化させて構造用材に適した接合材料を製造する方法を提供する。しかし、この方法は、接着剤を用いることからアルミニウムと炭素材料との界面における結合力に限界があって、これらの成形のためには変形が不可避であるため接着力が落ちるなどの難しさがある。
【0005】
このように中間材を用いて複合体を作る方法の他にも、アルミニウムと炭素材料との直接接合を利用した複合材料に関する研究も活発に進められているが、炭素繊維及び炭素ナノチューブとアルミニウムとの複合材料を製造する方法は、プラズマを用いる方法やメッキ法などがある。
【0006】
プラズマを用いた方法は、アルミニウムと混ざり合った炭素材料を、プラズマの高エネルギーによる瞬間的なアルミニウム溶融で焼結(sintering)する方法である。その例と
して、特許文献2が挙げられる。しかし、プラズマを用いる方法は、装置が高価で、高電流を長時間流すため、生産性が低いという短所がある。
【0007】
電気メッキ法は、複合材料用のメッキ液を製造し、電位を印加して複合材料がメッキされるようにする方法である(特許文献3)。この技術は、 炭素ナノチューブとアルミニ
ウムをメッキ液の中に溶融させ、これら物質が同時に陰極表面に到達して、複合体が形成されるようにする方法であるが、この場合、炭素材料とアルミニウムとの間の結合力を制御することができず、収率が落ちるという点で限界がある。
【0008】
このようにアルミニウムと炭素材料の複合体を形成するにはいくつかの問題点を伴うが、その根本的原因はこれら2つの物質の物理、化学的特性が相異なるためである。その1つ目は、炭素材料、例えば炭素ナノチューブは、チューブ同士のファン・デル・ワールス(Van der waals)力による相互作用のため、分散が容易ではなくて、アルミニウム内に均
一分散させるのが困難であるという点である。2つ目は、炭素材料とアルミニウム基材との間の相異なる表面張力である。表面張力が異なる場合の代表例が水と油であるが、これらの表面張力の差は2〜3倍程度ある。しかし、炭素材料とアルミニウムの場合、最近研究された論文によると、アルミニウムは、その表面エネルギーが955mN/mで、炭素材料の場合は45.3mN/mであることが明らかになった [参考文献:非特許文献1]
。これら材料間の表面張力の差は、約20倍程度あることが明らかになった。即ち、これは、2つの物質がよく混ざらないということである。また、これら2つの物質は、密度も顕著に異なるため、溶融時もよく混ざらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国特許出願公開第2003−46378号明細書
【特許文献2】特開2006−315893号公報(2006.11.24.)
【特許文献3】特開2007−70689号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.M. Molina et al. international Journal of adhesion Adhesives 27 (2007) 394-401, S. Nuriel, L. Liu, A.H. Barber, H.D. Wagner. Direct measurement of multiwall nanotube surface tension, Chemical Physics Letters 404 (2005) 263-266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、電気アーク又は電気化学的方法を用いて、既存の問題点であるアルミニウムと炭素材料の接合に関する問題を解決した。電気アーク方法は、試料内部で炭素材料とアルミニウムとの間に生じる電気アーク(arc)と電気の流れにより発生する高熱によりA
l−C共有結合を誘導する。電気化学的方法は、炭素材料にある炭素が、電位差によって還元されるアルミニウムと反応してAl−C共有結合を形成する。
【0012】
本発明の目的は、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、電気アークを印加して共有結合を形成したアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法、及び上記方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、電気化学的方法を用いて共有結合を形成したアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法、及び上記方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的を達成するために、本発明は、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供する。
本発明は、(i)炭素材料の欠陥及び機能化を誘導する段階;(ii)上記機能化された炭素材料をアルミニウムと混合する段階;及び(iii)上記混合物に電気アークを印加してAl−C共有結合を誘導する段階;を含む、アルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供する。
【0015】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブか
らなる群より選ばれる1種又は2種以上の物質を用いることができる。
現在、入手可能な炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μm、長さが10nm乃至10cmと知られている。即ち、炭素ナノチューブは、現在まで報告された資料(Science292,2462[2001])から一番小さい直径が0.4nmと知られており、炭素繊維は商用化された製品の直径が最大16μmと知られている(Taiwan Carbon Technology Co)。本発
明では炭素材料として、多重壁炭素ナノチューブは直径10乃至20nm、長さ10乃至20μmのものを用い、NK炭素ナノチューブは直径40乃至60nm、長さ20μm前後のものを用いた。炭素繊維(東レ)は直径7乃至8μm、長さ5mmのものを用いた。但し、本発明の方法においては、炭素材料の大きさにいかなる制限も受けない。
【0016】
上記(i)段階では、炭素材料の欠陥及び機能化を誘導するために酸処理を行うことができる。酸処理には、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、又は硝酸と硫酸の混合物を
含む酸を用いることができる。炭素ナノチューブの場合は、sp2混成結合を成す円筒状
の構造を持つ。しかし、この構造は表面がなめらかで他の物質との結合は難しい。従って、複合体に使われる炭素ナノチューブとして、マトリックスと結合できるように傷のような欠陥を作ったものを用いる。また、機能化とは、結合に対して特定の反応性を有する−OH、−COOH、−CHOなどの作用基などを炭素材料に付着させて反応性を高めることである。
【0017】
上記(i)段階では、炭素材料の欠陥及び機能化を誘導するためにマイクロウェーブ処理を行うことができる。マイクロウェーブ処理には溶媒として、エチレングリコール(ethylene glycol)、硝酸(HNO3)、及び硫酸(H2SO4)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いることができる。マイクロウェーブ処理の時間は1分乃至10分であり得る。
【0018】
上記(i)段階では、炭素材料の欠陥及び機能化を誘導するためにプラズマ処理を行うことができる。プラズマ処理には、酸素、アルゴン、及びヘリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合ガスを用いることができる。電力は、50W乃至1000Wを使用でき、処理時間は1分乃至1時間であり得る。
【0019】
上記(i)段階で炭素材料の欠陥及び機能化を誘導するための方法の例として、酸処理、マイクロウェーブ処理、又はプラズマ処理を挙げているが、これらに限るものではない。本発明に使われた用語‘機能化’とは、炭素材料に欠陥を形成して、官能基又は作用基を付けることを意味する。
【0020】
上記(ii)段階では、炭素材料とアルミニウムを混合するために、ボールミリング(ball milling)又は液体内超音波分散処理を行うことができる。炭素材料とアルミニウムの混合比率は、0.1乃至50wt%であり得る。混合されたアルミニウム及び炭素材料の粉末を鋼鉄容器にボールと共に入れて、不活性気体雰囲気の下でボールミリングを行う。液体内超音波分散処理の場合は、エタノール又は脱イオン水に炭素材料とアルミニウム粒子を分散した後、乾燥及びフィルタリングして得ることができる。
【0021】
上記(iii)段階では、炭素材料とアルミニウムの混合物にパルス電流を印加して、アーク放電を誘導できる。
本発明の他の態様として、本発明は、(i)炭素材料に欠陥及び機能化を誘導する段階;(ii)上記機能化された炭素材料をアルミニウムと混合する段階;及び(iii)上記アルミニウムと炭素材料の混合物に電気アークを印加してAl−C共有結合を誘導する段階;を含む、アルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法を提供する。
【0022】
また、炭素材料の反応性を増加させるために、上述したように、酸処理、マイクロウェ
ーブ処理又はプラズマ処理などによって、炭素材料に欠陥及び機能化を誘導することができる。ボールミリングする条件、液体内での超音波分散処理、パルス電流印加、及び炭素材料に関する内容は上記の通りである。
【0023】
本発明のまた他の態様として、本発明の上記方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体を提供する。
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供する。
【0024】
本発明は、(i)陽極と、炭素材料が連結された陰極とで電気化学装置を構成する段階;(ii)上記電気化学装置に、有機溶媒、溶解補助剤、還元剤、及びアルミニウム化合物を含有した電解液を満たす段階;及び(iii)上記電気化学装置に電位を印加して、上記陰極に連結された炭素材料の表面をアルミニウムでメッキする段階;を含む、アルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供する。
【0025】
上記電気化学装置として、電気化学用電池(cell)を使用してもよい。
上記炭素材料には、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の物質を用いることができる。
【0026】
現在、入手可能な炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μm、長さが10nm乃至10cmと知られている。即ち、炭素ナノチューブは、現在まで報告された資料(Science292、2462[2001])から一番小さい直径は0.4nmと知られており、炭素繊維は商用化された製品の直径が最大16μmと知られている(Taiwan Carbon Technology Co)。本発
明では炭素材料として、多重壁炭素ナノチューブは直径10乃至20nm、長さ10乃至20μmのものを用い、NK炭素ナノチューブは直径40乃至60nm、長さ20μm前後のものを用いた。炭素繊維(東レ)は直径7乃至8μm、長さ5mmのものを用いた。但し、本発明の方法においては、炭素材料の大きさにいかなる制限も受けない。
【0027】
上記(ii)段階で、有機溶媒は、非プロトン性エーテル系列であって、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルエーテル(dimethyl ether)、ジエチルエーテル(diethyl ether)、t−ブチルエーテル(t-butyl ether)、イソアミルエーテル(iso-amyl ether)、フェニルエーテル(phenyl ether)、メチル−t−ブチルエーテル(methyl-t-butyl
ether)、イオン性液体系列としてエチルピリジニウムハライド(Ethylpyridinium halide)、N−(1−ブチル)ピリジニウムハライド(N-(1-butyl)pyridinium halide)、1−メチル−3−エーテルイミダゾリウムハライド(1-methyl-3-ethylimidazolium halide)、及びトリメチルフェニルアンモニウムハライド(Trimethylphenylammonium halide)からなる群より選ばれる何れか1種又は2種以上の混合物を用いることができる。但し、上記有機溶媒はこれに限定されるものではない。電解液を製造するための有機溶媒の条件としては、まずアルミニウムが還元される電位である−1.67 V(vs SHE)よりも低い電位で分解されずに耐えられなくてはならず、高濃度アルミニウム溶液を作るために、アルミニウム化合物をよく溶かすことができるよう極性の性質がなければならず、ルイス酸が、アルミニウムイオンを配位できるルイス塩基でなければならない。
【0028】
上記(ii)段階で、電解液を高濃度にするための溶解補助剤としては、これらに限定されはしないが、芳香族炭化水素系列としてのベンゼン(benzene)、フェノール(phenol)、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)及びメシチレン(mesitylene)からなる群より選ばれる何れか1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0029】
上記(ii)段階で、アルミニウムの析出を加速化させるための還元剤としては、これらに限定されはしないが、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)、水素化リチウ
ム(LiH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)及び塩化リチウム(LiCl)か
らなる群より選ばれる何れか1つを用いることができる。
【0030】
上記(ii)段階で、アルミニウムメッキのためのアルミニウム化合物としては、これらに限定されはしないが、アルミニウムハライド(AlXx)系又は有機アルミニウム化合物を用いることができる。
【0031】
上記電位は、有機溶媒が分解されない電位以上、アルミニウムが還元されることができる電位以下であり得る。従って、上記電位は、用いられる有機溶媒によって変わることがあり、例えば、有機溶媒が非プロトン性エーテル系列のテトラヒドロフラン(THF)の場合は−5V以上、アルミニウムが還元され得る電位である−1.67V(vs SHE
)以下、また有機溶媒がイオン性液体系列のエチルピリジニウムハライドの場合は−10V以上、−1.67V(vs SHE)以下を印加することができる。
【0032】
本発明の他の態様として、本発明は、(i)陽極と、炭素材料が連結された陰極とで電気化学装置を構成する段階;(ii)上記電気化学装置に、有機溶媒、溶解補助剤、還元剤及びアルミニウム化合物を含有した電解液を満たす段階;及び(iii)上記電気化学装置に電位を印加し、陰極に連結された炭素材料の表面をアルミニウムでメッキしてアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する段階;を含む、アルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法を提供する。
【0033】
上記(ii)段階で使われる有機溶媒、溶解補助剤、還元剤及びアルミニウム化合物の例、(iii)段階で印加される電位の条件、及び炭素材料に関する内容は上記の通りである。
【0034】
本発明のまた他の態様として、本発明の上記方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体を提供する。
本発明は、電気アーク又は電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料との間のAl−C共有結合を誘導する方法を提供する。
【0035】
本発明は、(i)炭素材料に欠陥及び機能化を誘導する段階;(ii)上記機能化された炭素材料をアルミニウムと混合する段階;及び(iii)上記混合物に電気アークを印加してAl−C共有結合を誘導する段階;を含む、アルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供する。
【0036】
また、本発明は、(i)陽極と、炭素材料が連結された陰極とで電気化学装置を構成する段階;(ii)上記電気化学装置に有機溶媒、溶解補助剤、還元剤及びアルミニウム化合物を含有した電解液を満たす段階;及び(iii)上記電気化学装置に電位を印加して、上記陰極に連結された炭素材料の表面をアルミニウムでメッキする段階;を含む、アルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法を提供する。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、電気アーク又は電気化学的方法を用いて、既存の問題点であるアルミニウムと炭素材料の接合に関する問題を解決した。電気アーク方法は、試料内部で炭素材料とアルミニウムとの間に生じる電気アークと電気の流れにより発生する高熱によりAl−C共有結合を誘導する。電気化学的方法は、炭素材料にある炭素が、電位差により還元されるアルミニウムと反応してAl−C共有結合を形成する。本発明によって製造された炭素材料−アルミニウム複合体は、重さが軽く、力学的強度に優れているため、現在使われる自動車部品やアルミニウムホイールに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の望ましい実施例による、電気アークを用いたアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合のための工程に関するフローチャートである。
【図2】本発明の望ましい実施例により、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導する前と後の光学写真である。
【図3】本発明の望ましい実施例により、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後の電子顕微鏡分析結果である。
【図4】本発明の望ましい実施例により、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後の試片断面の電子顕微鏡分析結果である。
【図5】本発明の望ましい実施例により、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後のラマン分析結果である。
【図6】本発明の望ましい実施例により、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導する前と後のX線回折分析結果である。
【図7】本発明の望ましい実施例により、電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後の硬度測定分析結果である。
【図8】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導するための装置を概略的に示した図面である。
【図9】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導するための工程に関するフローチャートである。
【図10】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導する前と後の電子顕微鏡写真である。
【図11】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後のEDSマッピング分析結果である。
【図12】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導する前と後のラマン分析結果である。
【図13】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後のアルミニウム2pのXPS分析結果である。
【図14】本発明の望ましい実施例により、電気化学的方法を用いて電位別にアルミニウムと炭素材料のAl−C共有結合を誘導した後のX線回折分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の構成要素及び技術的特徴を、次の実施例を通してより詳しく説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を詳しく説明するためだけのものであって、本発明の構成要素の技術的範囲を、実施例に例示したものに限定しようとするものではない。本発明に引用された文献は、本発明の明細書に参照として統合される。
【0040】
実施例
実施例1:電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料との間にAl−C共有結合を誘導する工程
本発明に関する具体的な例は、図1に示された実験工程に従う。炭素材料には、多重壁炭素ナノチューブ(ILJIN Nanotech製品、CM95)、NK炭素ナノチューブ(nanokarbon製品、hellow CNT75)、炭素繊維(東レ製品(日本)、T300)を用いた。多重壁炭素ナノチ
ューブは直径10〜20nm、長さ10〜20μmのものを、NK炭素ナノチューブは直径40〜60nm、長さ20μmのものを用いた。
【0041】
1−1−1.酸処理による炭素材料の機能化誘導
上記炭素ナノチューブは、70%硝酸(HNO3)に10分乃至3時間、水槽型反応器
(ドイツ Bangbelin electronic、RK106)で超音波反応させて機能化を誘導した。NK炭素ナノチューブは、機能化された製品を購買した。炭素繊維は、硫酸(H2SO4)と硝酸(HNO3)を1:1で混ぜたものに2時間超音波反応して機能化を誘導した。
【0042】
1−1−2.マイクロウェーブ処理による炭素材料の機能化誘導
マイクロウェーブを用いた機能化誘導方法では、エチレングリコール(ethylene glycol)又は硝酸(HNO3)を溶媒として、また塩素酸ナトリウム(NaClO3)を酸化促
進剤として用い、上記溶媒に多重壁炭素ナノチューブを分散した。マイクロウェーブ処理は、電子レンジ(大宇エレクトロニクス、KR-U20AB)を用いて3分間行われた。但し、処理時間は1分から6分まで可能である。
【0043】
1−1−3.プラズマ処理による炭素材料の機能化誘導
プラズマ処理では、多重壁炭素ナノチューブに常圧で消費電力500Wを用いてプラズマを形成し、ガス原料として酸素500sccm及びヘリウム300sccmを用いた。プラズマ処理をA−tech system製品を用いて5分間行うことにより、欠陥及
び機能化を誘導した。
【0044】
1−2.電気アークを用いたAl−C共有結合の誘導
アルミニウム微細粉末を用い、炭素材料として多重壁炭素ナノチューブ、NK炭素ナノチューブ、又は炭素繊維を用いた。アルミニウム粒子は、SAMCHUN化学より購買した製品を使用した。機能化された上記炭素材料をそれぞれのアルミニウム粉末と比率1〜30wt%でボールミリングした。アルミニウムの酸化を防ぐために、坩堝内をアルゴン(Ar)ガスで充填した。酸素及び水分を十分除去した坩堝を安全に密封した後、50rpm乃至400rpmでボールミリングすることができる。ボールミリングは1〜24時間可能である。
【0045】
回収されたアルミニウムの中に混合された炭素材料をそれぞれ3.8gずつ、直径2cmの黒鉛モールドに入れて、10-2〜10-6torrの真空雰囲気を形成した。そして、30MPa〜2000MPaの圧力でそれぞれの試料を加圧してから温度を上げた。上記温度は、常温乃至1000℃にすることができる。それから、パルス電流を印加し、アーク放電を誘導して炭素材料とアルミニウムのAl−C共有結合を誘導した。
【0046】
実施例2:電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料との間のAl−C共有結合を誘導した後の試料観察
図2は、電気アークを用いてアルミニウムとそれぞれの炭素材料とのAl−C共有結合を誘導する前と後の試料をデジタルカメラ(ニコン、koolpix-3700)で撮影したものである。
【0047】
図2の(a)は、多重壁炭素ナノチューブとアルミニウムとを混合する前の写真である。図2の(b)は、図1の(a)の試料を混合してから、電気アークを用いてアルミニウムと多重壁炭素ナノチューブとの接合を誘導した後の写真である。写真観察の結果、炭素ナノチューブが外部より見えないことから、アルミニウム基材から抜け出てこないことが確認できる。見かけ密度の測定結果は2.63g/cm3であったが、これは一般のアルミ
ニウムよりも低い値であって、これから多重壁炭素ナノチューブがアルミニウム基材内に含まれていることが予想できる。
【0048】
図2の(c)は、NK炭素ナノチューブとアルミニウムとを混合する前の写真である。NK炭素ナノチューブは、直径が一般の多重壁炭素ナノチューブよりも大きくて、見かけ体積がアルミニウムよりも大きいことが観察できる。図2の(d)は、図2の(c)の試料を混合してから、電気アークを用いてアルミニウムとNK炭素ナノチューブとの接合を誘導した後の写真である。図2の(a) 及び(b)の結果と同様に、アルミニウムの中のNK炭素ナノチューブが抜け出てこないことが確認できる。見かけ密度の測定結果は2.68g/cm3であったが、これも図2の(a) 及び(b)と同様の結果を示す。
【0049】
図2の(e)は、炭素繊維とアルミニウムとを混合する前の写真である。見かけ体積は、炭素繊維がアルミニウムよりも大きいことが観察できる。図2の(f)は、図2の(e)の試料に電気アークを発生させた結果である。上述の他の炭素材料の結果と同様に、炭素繊維が外部に抜け出てこないことが確認できる。見かけ密度の測定結果は2.55g/cm3であったが、これも図2の(a)及び(b)と同様の結果を示すため、炭素繊維がアルミニウムの内に含まれていることが分かる。
【0050】
実施例3:電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料との間のAl−C共有結合を誘導した後の表面の電子顕微鏡写真分析
図3は、本発明の実施例で電気アークを用いてアルミニウムと炭素材料との間のAl−C共有結合を誘導した後に試料の表面を測定した電子顕微鏡(JEOL, JSM7000F) 写真の
分析資料である。
【0051】
図3の(a)は、多重壁炭素ナノチューブとアルミニウムとのAl−C共有結合を誘導した後に試料の表面を測定した電子顕微鏡写真である。図3の(b)は、多重壁炭素ナノチューブの実験前の電子顕微鏡写真である。これら2枚の写真が同じ倍率で測定されたものであることを考慮して比較分析するとき、多重壁炭素ナノチューブが外部に抜け出てこなかったことが確認できる。
【0052】
図3の(c)及び(d)は、NK炭素ナノチューブとアルミニウムとのAl−C共有結合を誘導する前と後の電子顕微鏡写真である。この結果も同じ倍率で測定されたものであることを考慮して観察したとき、多重壁炭素ナノチューブの実験結果と同様に、NK炭素ナノチューブが外部に抜け出てこなかったことが確認できる。
【0053】
図3の(e)及び(f)は、炭素繊維とアルミニウムとのAl−C共有結合を誘導した後に試料の表面を測定した電子顕微鏡写真である。(e)と(f)は、それぞれ100xと1,000xの倍率で測定された。炭素繊維の直径は7〜8μmで、光学写真で観察で
きる大きさである。従って、100xで炭素繊維は観察できる。しかし、(e)と(f)を観察した結果、本発明の方法により炭素繊維とアルミニウムとのAl−C共有結合が誘導された試料から炭素繊維は観察されなかった。従って、炭素繊維は外部に抜け出てこなかったことが確認できる。
【0054】
実施例4:アルミニウムと多重壁炭素ナノチューブとの間のAl−C共有結合を誘導した後の試片断面の分析
図4の(a)と(b)は、アルミニウムと多重壁炭素ナノチューブとの間のAl−C共有結合を誘導した後に試片の断面を測定した電子顕微鏡(JEOL, JSM7000F)写真である。本実施例では、実際の炭素ナノチューブの存在を写真で確認するために、試片の断面を電子顕微鏡で分析した。分析の結果、多重壁炭素ナノチューブは図4の(b)のように試片の内部に存在することが確認できる。
【0055】
図4の(c)と(d)は、多重壁炭素ナノチューブの存在を具体的に確認するために、アルミニウムを塩酸でエッチングした後に測定したものである。その結果、アルミニウムエッチング液から多重壁炭素ナノチューブの一部分が確認できた。
【0056】
実施例5:電気アークを用いてアルミニウムと共有結合された炭素材料の結晶性を確認するためのラマン分析
アルミニウム基材内部に共有結合された炭素材料の結晶性を確認するために、ラマン分光分析法で測定した。ラマン装備は、ReinshawのInvia Basicモデル
で633nm He/Ne laserを用いた。図5の(a)、(b)、(c)は、多重
壁炭素ナノチューブ、NK炭素ナノチューブ、炭素繊維それぞれと接合したアルミニウムの試片の表面を測定したラマン分析資料である。試料全てのラマン分析資料から、炭素材料の炭素sp2混成結合の結晶振動を示すG−ピークの振動モードが確認できる。sp2混成結合は、黒鉛(graphite)の結晶性を示す構造であって、炭素ナノチューブや炭素材料などはsp2混成結合によって主骨格がなされている。この結果から、アルミニウム試料
の内に共有結合されている炭素材料の結晶性が、電気アークによるマイクロ接合の過程中に破壊されずにそのまま残っていることが確認できる。
【0057】
実施例6:電気アークによって共有結合されたアルミニウム−炭素材料のX線回折分析
アルミニウムと炭素材料との間の共有結合がなされたかどうかを確認するために、X線回折分析資料を用いて分析した。X線回折分析装置としては、ドイツのBRUKER A
XS社のD8 FOCUS(2.2KW)モデル、Cu Kα 1.54Åビームを用いた。 図6
は、アルミニウムと炭素材料とのAl−C共有結合を誘導する前と後のX線回折資料である。
【0058】
図6の(a)は、多重壁炭素ナノチューブとアルミニウムとを混合した後に測定したX線回折分析資料である。X線回折分析資料から、アルミニウムの結晶のピークが確認できる。図6の(b)は、(a)の試料を電気アーク接合した後に測定したX線回折分析資料である。この資料から、31.11゜(二重)、40.0゜、55.0゜のアルミニウムカーバイド(Al4C3)の回折ピークが確認できる。この結果から、多重壁炭素ナノチューブとアルミニウムとの間の共有結合が形成されていることが確認できる。
【0059】
図6の(c)と(d)は、NK炭素ナノチューブの電気アーク接合前と後のX線回折分析資料である。NK炭素ナノチューブからも、上述の多重壁炭素ナノチューブと同様に、電気アーク接合後にアルミニウムカーバイドのX線回折ピークが発見された。よって、NK炭素ナノチューブにも炭素とアルミニウムとの間の結合が形成されたことが確認できる。
【0060】
図6の(e)と(f)は、炭素繊維に関するX線回折分析資料である。この資料からも上述のような現状が生じることを確認した。
実施例7:電気アークによってアルミニウムと炭素材料が共有結合された試料の硬度分析
本実施例では、アルミニウム内部に共有結合された炭素材料の機械的硬度を測定した。図7は、炭素材料が含まれたアルミニウム試片の硬度値を示したデータである。硬度は、ビッカース硬度計(日本国AKASHI製品、MVK-H2)を用いてそれぞれの試片を5回ずつ異なる位置で測定した。測定された硬度の平均値を棒グラフに、誤差範囲と共に示した。硬度は、多重壁炭素ナノチューブが最も高く表れた。本発明での硬度は一般的に用いられるアルミニウム(A356-T6)に比べ、多重壁炭素ナノチューブを添加した時に3倍以上増加し
た。それ以下はNK炭素ナノチューブ、炭素繊維の順であった。多重壁炭素ナノチューブと炭素繊維の引張強度の値は、それぞれ63GPa(参考資料:http://en.wikipedia.Org/wiki/ Carbon#nanotube)と3.5Gpa(参考資料:Toray industries)であった。NK炭素ナノチューブは、多重壁炭素ナノチューブよりも直径が大きく欠陥が多いことを考慮するとき、引張強度がより小さいことと予想される。上述の資料と本発明の実施例により測定された実験値とを比較するとき、一貫した結果を確認することができる。従って、炭素材料は、アルミニウム基材内でアルミニウムと共有結合されて、強度に大きい影響を及ぼすことが確認できる。
【0061】
実施例8:電気化学的方法を用いたAl−C共有結合の誘導工程
本実施例は、電気化学的方法を用いて炭素材料とアルミニウムとの共有結合を形成する方法を提供するものである。
【0062】
8−1.電解液の製造
電解液を製造するための有機溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)を用い、電解液を高濃度にするためにベンゼンを添加した。電解液の活性を高めるために水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)を添加した。また、アルミニウム化合物としては、高純
度で水分を含まない塩化アルミニウム(AlCl3)を用いた。電解液を作る作業は全て
、水分のない、アルゴンガスを満たしたグローブボックスの中で行われた。
【0063】
8−2.電気化学的方法を用いたAl−C共有結合の形成過程
図8は電気化学的方法のための装置を図式化したものであり、図9は電気化学的方法に関する全体的な過程を示すフローチャートである。以下、図8及び図9を参照しながら、本発明による電気化学的方法について説明する。
【0064】
電気化学装置は、大きさ15mlのバイアルを用いた。まず、炭素ナノチューブに電位を供給する電子収集装置としては銅フィルムを用い、効果的な電位印加のために酸洗浄して酸化層を除去した。酸で洗浄された銅を再び蒸溜水できれいに洗浄した後、アセトンでその水分を除去した。図8から分かるように、15mlのバイアルの下部には、酸で洗浄された銅フィルムを敷いた。
【0065】
その次の過程として、銅フィルムの上にNK炭素ナノチューブを入れた。NK炭素ナノチューブは、電極として機能する電子を効果的にアルミニウムイオンに伝達して伝導性を高められるように、1000℃で1時間アルゴン雰囲気で熱処理した。
【0066】
上記のような過程の後、高伝導性のNK炭素ナノチューブが相対側の電極に接しないようにするために、電気化学装置にイオン交換膜(CELGARDE)を覆った。
相対側の電極としては、電気的且つ化学的安全性に優れた白金網を用いた。白金網をイオン交換膜に接しない程度に入れ、バイアルを密封した。密封されたバイアルに0.5mm前後の穴をあけて、真空チャンバーを真空にした。真空の中で保管してNK炭素ナノチューブと電気化学装置内の水分を全て除去し、アルゴンで満たした。
【0067】
それから、基準電極を洗浄した後に電気化学装置に入れた。全ての作業の後、電気化学装置に電解液を入れた。テトラヒドロフランが分解されない電位である−5V以上、アルミニウムが還元され得る電位である−1.67V(vs SHE)以下を印加して、アル
ミニウムと炭素材料とのAl−C共有結合を誘導した。20分程度維持した後に電子顕微鏡で測定した結果、アルミニウムが炭素ナノチューブを覆い被さっている様子が確認された。
【0068】
実施例9:電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料との間のAl−C共有結合を誘導した後の電子顕微鏡写真分析
本実施例では、電気化学的方法を用いてアルミニウムと炭素材料との間のAl−C共有結合を誘導する前と後を電子顕微鏡(JEOL, JSM7000F)で観察した。
【0069】
図10は、NK炭素ナノチューブのAl−C共有結合を誘導する前と後の電子顕微鏡写真である。図10の(a)は、NK炭素ナノチューブのAl−C共有結合を誘導する前の電子顕微鏡写真である。図10の(b)と(c)は、それぞれ−4Vと−5V vs Ag/AgCl Ref.でAl−C共有結合を誘導した後の電子顕微鏡写真である。Al−
C共有結合の誘導前を示した図10の(a)と、誘導後を示した図10の(b)及び(c)とを観察した時、NK炭素ナノチューブの表面上をアルミニウムと予想される半透明の物体が覆い被さっているのが確認できる。
【0070】
図11は、−3Vの電気化学反応でAl−C共有結合を誘導した後のEDS(Energy dispersive X-ray spectroscopy)マッピング分析資料である。EDSには、日本電子社の電子顕微鏡(JSM7000Fモデル)に附属物として装着されている装備を用いた。分析の結果、それはアルミニウムであると確認され、これにより、図10の(b)及び(c)においてNK炭素ナノチューブを覆い被さっている物体は、アルミニウムであることが確認できる。
【0071】
実施例10:電気化学的方法によってアルミニウムと共有結合された炭素材料の結晶性を確認するためのラマン分析
本実施例では、電気化学的方法による炭素ナノチューブのAl−C共有結合誘導後の結晶性を確認するためにラマン分析を行った。ラマン装備としては、ReinshawのInvia Basic モデルで633nm He/Ne laserを用いた。図12の(a)と(b)は、それぞれAl−C共有結合の誘導前と後のラマン分析資料である。ラマン分析資料から、Al−C共有結合後も炭素材料のsp2混成結合の結晶振動を示すG−
ピークが観察されることを確認できる。従って、Al−C共有結合後も炭素ナノチューブの結晶性がそのまま残っていることが確認できる。
【0072】
実施例11:電気化学的方法によって共有結合されたアルミニウム−炭素材料のXPS分析
本実施例では、アルミニウムと炭素ナノチューブとの間のAl−C共有結合を分析するために、化学結合分析装備であるXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)(VG-microtech, ESCA2000)を用いて分析した。図13は、アルミニウム2pのXPS分析資料である。XPSは、測定対象表面の数ナノ以内の領域を測定するという点を考慮するとき、アルミニウム表面の酸化膜、及び内部のAl−C共有結合層を分析することができる。この結果から、炭素ナノチューブとアルミニウムとの間のAl−C共有結合が形成されていることが確認できる。
【0073】
実施例12:電気化学的方法によって共有結合されたアルミニウム−炭素材料のX線回折分析
図14は、電位別に電気化学反応した後のX線回折分析資料である。グラフ下部分から、電気化学反応が行われていない炭素ナノチューブ、電位−2V〜−5Vの順で示されている。−4Vからアルミニウムの金属結晶ピークが38.5゜、44.7゜、65.1゜、78.2゜で表れた。これと共に31゜付近で表れるX線回折を観察できるが、これはAl−C共有結合を意味するアルミニウムカーバイド(aluminum carbide)である。この結果、電気化学的方法によってアルミニウムと炭素が共有結合を形成できることを確認した。
【0074】
本発明によって製造された炭素材料−アルミニウム複合体は、重さが軽く、力学的強度に優れているため、現在使われている自動車部品やアルミニウムホイールに適用可能で、乗用車中心のアルミニウムホイール市場を商用車や大型トラックにまで拡大できるであろうと期待される。そればかりか、高強度が求められる航空機、宇宙船、船舶などの素材としても活用が期待される。また、炭素材料−アルミニウム複合体の高熱伝導性により、コンピュータ部品や各種冷却器部品などに応用可能であろうと予想される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)炭素材料に欠陥及び機能化を誘導する段階;
(ii)上記機能化された炭素材料をアルミニウムと混合する段階;及び
(iii)上記アルミニウムと炭素材料の混合物に電気アークを印加してAl−C共有結合を誘導する段階;を含む、アルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項2】
(i)段階において、炭素材料を、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、又は硝酸と硫
酸の1:1混合物と超音波反応して、炭素材料に欠陥及び機能化を誘導することを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項3】
(i)段階において、炭素材料を、エチレングリコール(ethylene glycol)、硝酸(H
NO3)及び硫酸(H2SO4)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物に分散
し、1分乃至10分間マイクロウェーブ処理して、炭素材料に欠陥及び機能化を誘導することを特徴とする、 請求項1に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成
する方法。
【請求項4】
(i)段階において、酸素、アルゴン及びヘリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合ガスを使用し、消費電力50乃至1000Wを用いて形成されたプラズマを1分乃至1時間炭素材料に処理して欠陥及び機能化を誘導することを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項5】
(ii)段階において、炭素材料とアルミニウムを混合するために、ボールミリング又は液体内超音波分散処理をすることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項6】
(iii)段階において、アルミニウムと炭素材料の混合物にパルス電流を印加してアーク放電を誘導することを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項7】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の物質であることを特徴とする、請求項1乃至6のうちの何れか一項に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項8】
上記炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μmで、長さが10nm乃至10cmであることを特徴とする、請求項1乃至6のうちの何れか一項に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項9】
(i)炭素材料に欠陥及び機能化を誘導する段階;
(ii)上記機能化された炭素材料をアルミニウムと混合する段階;及び
(iii)上記アルミニウムと炭素材料の混合物に電気アークを印加してAl−C共有結合を誘導する段階;を含む、アルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項10】
(i)段階において、炭素材料を、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、又は硝酸と硫
酸の1:1混合物と超音波反応して、炭素材料に欠陥及び機能化を誘導することを特徴とする、請求項9に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項11】
(i)段階において、炭素材料を、エチレングリコール(ethylene glycol)、硝酸(H
NO3)及び硫酸(H2SO4)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物に分散
し、1分乃至10分間マイクロウェーブ処理して、炭素材料に欠陥及び機能化を誘導することを特徴とする、請求項9に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項12】
(i)段階において、酸素、アルゴン及びヘリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合ガスを使用し、消費電力50乃至1000Wを用いて形成されたプラズマを1分乃至1時間炭素材料に処理して欠陥及び機能化を誘導することを特徴とする、請求項9に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項13】
(ii)段階において、炭素材料とアルミニウムを混合するために、ボールミリング又は液体内超音波分散処理をすることを特徴とする、請求項9に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項14】
(iii)段階において、アルミニウムと炭素材料の混合物にパルス電流を印加してアーク放電を誘導することを特徴とする、請求項9に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項15】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の物質であることを特徴とする、請求項9乃至14のうちの何れか一項に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項16】
上記炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μmで、長さが10nm乃至10cmであることを特徴とする、請求項9乃至14のうちの何れか一項に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項17】
請求項9乃至14のうちの何れか一項に記載の方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体。
【請求項18】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の物質であることを特徴とする、請求項17に記載のアルミニウム−炭素材料複合体。
【請求項19】
上記炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μmで、長さが10nm乃至10cmであることを特徴とする、請求項17に記載のアルミニウム−炭素材料複合体。
【請求項20】
(i)陽極と、炭素材料が連結された陰極とで電気化学装置を構成する段階;
(ii)上記電気化学装置に、有機溶媒、溶解補助剤、還元剤及びアルミニウム化合物を含有した電解液を満たす段階;及び
(iii)上記電気化学装置に電位を印加して、陰極に連結された炭素材料の表面をアルミニウムでメッキする段階;を含む、アルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項21】
(ii)段階において、有機溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルエーテル(dimethyl ether)、ジエチルエーテル (diethyl ether)、t−ブチルエーテル(t-butyl ether)、イソアミルエーテル(iso-amyl ether)、フェニルエーテル(phenyl ether)、メチル−t−ブチルエーテル(methyl-t-butyl ether)、エチルピリジニウムハラ
イド(Ethylpiridinium halide)、N−(1−ブチル)ピリジニウムハライド(N-(1-butyl)pyridinium halide)、1−メチル−3−エーテルイミダゾリウムハライド(1-methyl-3-ethylimidazolium halide)、及びトリメチルフェニルアンモニウムハライド(Trimethylphenylammonium halide)からなる群より選ばれる何れか1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項20に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合
を形成する方法。
【請求項22】
(ii)段階において、溶解補助剤は、ベンゼン(benzene)、フェノール(phenol)、
トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、及びメシチレン(mesitylene)からなる群
より選ばれる何れか1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項20に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項23】
(ii)段階において、還元剤は、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)、水素
化リチウム(LiH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、及び塩化リチウム(L
iCl)からなる群より選ばれる何れか1つであることを特徴とする、請求項20に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項24】
(ii)段階において、アルミニウム化合物は、アルミニウムハライド(AlXx)系又は有機アルミニウム化合物であることを特徴とする、請求項20に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項25】
(iii)段階において、電位は、有機溶媒が分解されない電位以上、アルミニウムが還元され得る電位以下であることを特徴とする、請求項20に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項26】
(iii)段階において、電位は、−10V以上−1.67V以下であることを特徴とする、請求項20に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項27】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項20乃至26のうちの何れか一項に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項28】
上記炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μmで、長さが10nm乃至10cmであることを特徴とする、請求項20乃至26のうちの何れか一項に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項29】
(i)陽極と、炭素材料が連結された陰極とで電気化学装置を構成する段階;
(ii)上記電気化学装置に、有機溶媒、溶解補助剤、還元剤及びアルミニウム化合物を含有した電解液を満たす段階;及び
(iii)上記電気化学装置に電位を印加して、陰極に連結された炭素材料の表面をアルミニウムでメッキしてアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する段階;を含む、アルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項30】
(ii)段階において、有機溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルエーテル(dimethyl ether)、ジエチルエーテル (diethyl ether)、t−ブチルエーテル(t-butyl ether)、イソアミルエーテル(iso-amyl ether)、フェニルエーテル(phenyl ether)、メチル−t−ブチルエーテル(methyl-t-butyl ether)、エチルピリジニウムハラ
イド(Ethylpiridinium halide)、N−(1−ブチル)ピリジニウムハライド(N-(1-butyl)pyridinium halide)、1−メチル−3−エーテルイミダゾリウムハライド(1-methyl-3-ethylimidazolium halide)、及びトリメチルフェニルアンモニウムハライド(Trimethylphenylammonium halide)からなる群より選ばれる何れか1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項29に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項31】
(ii)段階において、溶解補助剤は、ベンゼン(benzene)、フェノール(phenol)、
トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、及びメシチレン(mesitylene)からなる群
より選ばれる何れか1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項29に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項32】
(ii)段階において、還元剤は、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)、水素
化リチウム(LiH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、及び塩化リチウム(L
iCl)からなる群より選ばれる何れか1つであることを特徴とする、請求項29に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項33】
(ii)段階において、アルミニウム化合物は、アルミニウムハライド(AlXx)系又は有機アルミニウム化合物であることを特徴とする、請求項29に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項34】
(iii)段階において、電位は、有機溶媒が分解されない電位以上、アルミニウムが還元され得る電位以下であることを特徴とする、請求項29に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項35】
(iii)段階において、電位は、−10V以上−1.67V以下であることを特徴とする、請求項29に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項36】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項29乃至35のうちの何れか一項に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項37】
上記炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μmで、長さが10nm乃至10cmであることを特徴とする、請求項29乃至35のうちの何れか一項に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項38】
請求項29乃至35のうちの何れか一項に記載の方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体。
【請求項39】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項38に記載のアルミニウム−炭素材料複合体。
【請求項40】
上記炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μmで、長さが10nm乃至10cmであることを特徴とする、請求項38に記載のアルミニウム−炭素材料複合体。
【請求項1】
(i)炭素材料に欠陥及び機能化を誘導する段階;
(ii)上記機能化された炭素材料をアルミニウムと混合する段階;及び
(iii)上記アルミニウムと炭素材料の混合物に電気アークを印加してAl−C共有結合を誘導する段階;を含む、アルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項2】
(i)段階において、炭素材料を、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、又は硝酸と硫
酸の1:1混合物と超音波反応して、炭素材料に欠陥及び機能化を誘導することを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項3】
(i)段階において、炭素材料を、エチレングリコール(ethylene glycol)、硝酸(H
NO3)及び硫酸(H2SO4)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物に分散
し、1分乃至10分間マイクロウェーブ処理して、炭素材料に欠陥及び機能化を誘導することを特徴とする、 請求項1に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成
する方法。
【請求項4】
(i)段階において、酸素、アルゴン及びヘリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合ガスを使用し、消費電力50乃至1000Wを用いて形成されたプラズマを1分乃至1時間炭素材料に処理して欠陥及び機能化を誘導することを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項5】
(ii)段階において、炭素材料とアルミニウムを混合するために、ボールミリング又は液体内超音波分散処理をすることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項6】
(iii)段階において、アルミニウムと炭素材料の混合物にパルス電流を印加してアーク放電を誘導することを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項7】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の物質であることを特徴とする、請求項1乃至6のうちの何れか一項に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項8】
上記炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μmで、長さが10nm乃至10cmであることを特徴とする、請求項1乃至6のうちの何れか一項に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項9】
(i)炭素材料に欠陥及び機能化を誘導する段階;
(ii)上記機能化された炭素材料をアルミニウムと混合する段階;及び
(iii)上記アルミニウムと炭素材料の混合物に電気アークを印加してAl−C共有結合を誘導する段階;を含む、アルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項10】
(i)段階において、炭素材料を、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、又は硝酸と硫
酸の1:1混合物と超音波反応して、炭素材料に欠陥及び機能化を誘導することを特徴とする、請求項9に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項11】
(i)段階において、炭素材料を、エチレングリコール(ethylene glycol)、硝酸(H
NO3)及び硫酸(H2SO4)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物に分散
し、1分乃至10分間マイクロウェーブ処理して、炭素材料に欠陥及び機能化を誘導することを特徴とする、請求項9に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項12】
(i)段階において、酸素、アルゴン及びヘリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合ガスを使用し、消費電力50乃至1000Wを用いて形成されたプラズマを1分乃至1時間炭素材料に処理して欠陥及び機能化を誘導することを特徴とする、請求項9に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項13】
(ii)段階において、炭素材料とアルミニウムを混合するために、ボールミリング又は液体内超音波分散処理をすることを特徴とする、請求項9に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項14】
(iii)段階において、アルミニウムと炭素材料の混合物にパルス電流を印加してアーク放電を誘導することを特徴とする、請求項9に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項15】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の物質であることを特徴とする、請求項9乃至14のうちの何れか一項に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項16】
上記炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μmで、長さが10nm乃至10cmであることを特徴とする、請求項9乃至14のうちの何れか一項に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項17】
請求項9乃至14のうちの何れか一項に記載の方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体。
【請求項18】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の物質であることを特徴とする、請求項17に記載のアルミニウム−炭素材料複合体。
【請求項19】
上記炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μmで、長さが10nm乃至10cmであることを特徴とする、請求項17に記載のアルミニウム−炭素材料複合体。
【請求項20】
(i)陽極と、炭素材料が連結された陰極とで電気化学装置を構成する段階;
(ii)上記電気化学装置に、有機溶媒、溶解補助剤、還元剤及びアルミニウム化合物を含有した電解液を満たす段階;及び
(iii)上記電気化学装置に電位を印加して、陰極に連結された炭素材料の表面をアルミニウムでメッキする段階;を含む、アルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項21】
(ii)段階において、有機溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルエーテル(dimethyl ether)、ジエチルエーテル (diethyl ether)、t−ブチルエーテル(t-butyl ether)、イソアミルエーテル(iso-amyl ether)、フェニルエーテル(phenyl ether)、メチル−t−ブチルエーテル(methyl-t-butyl ether)、エチルピリジニウムハラ
イド(Ethylpiridinium halide)、N−(1−ブチル)ピリジニウムハライド(N-(1-butyl)pyridinium halide)、1−メチル−3−エーテルイミダゾリウムハライド(1-methyl-3-ethylimidazolium halide)、及びトリメチルフェニルアンモニウムハライド(Trimethylphenylammonium halide)からなる群より選ばれる何れか1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項20に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合
を形成する方法。
【請求項22】
(ii)段階において、溶解補助剤は、ベンゼン(benzene)、フェノール(phenol)、
トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、及びメシチレン(mesitylene)からなる群
より選ばれる何れか1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項20に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項23】
(ii)段階において、還元剤は、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)、水素
化リチウム(LiH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、及び塩化リチウム(L
iCl)からなる群より選ばれる何れか1つであることを特徴とする、請求項20に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項24】
(ii)段階において、アルミニウム化合物は、アルミニウムハライド(AlXx)系又は有機アルミニウム化合物であることを特徴とする、請求項20に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項25】
(iii)段階において、電位は、有機溶媒が分解されない電位以上、アルミニウムが還元され得る電位以下であることを特徴とする、請求項20に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項26】
(iii)段階において、電位は、−10V以上−1.67V以下であることを特徴とする、請求項20に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項27】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項20乃至26のうちの何れか一項に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項28】
上記炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μmで、長さが10nm乃至10cmであることを特徴とする、請求項20乃至26のうちの何れか一項に記載のアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する方法。
【請求項29】
(i)陽極と、炭素材料が連結された陰極とで電気化学装置を構成する段階;
(ii)上記電気化学装置に、有機溶媒、溶解補助剤、還元剤及びアルミニウム化合物を含有した電解液を満たす段階;及び
(iii)上記電気化学装置に電位を印加して、陰極に連結された炭素材料の表面をアルミニウムでメッキしてアルミニウムと炭素材料との間の共有結合を形成する段階;を含む、アルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項30】
(ii)段階において、有機溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルエーテル(dimethyl ether)、ジエチルエーテル (diethyl ether)、t−ブチルエーテル(t-butyl ether)、イソアミルエーテル(iso-amyl ether)、フェニルエーテル(phenyl ether)、メチル−t−ブチルエーテル(methyl-t-butyl ether)、エチルピリジニウムハラ
イド(Ethylpiridinium halide)、N−(1−ブチル)ピリジニウムハライド(N-(1-butyl)pyridinium halide)、1−メチル−3−エーテルイミダゾリウムハライド(1-methyl-3-ethylimidazolium halide)、及びトリメチルフェニルアンモニウムハライド(Trimethylphenylammonium halide)からなる群より選ばれる何れか1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項29に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項31】
(ii)段階において、溶解補助剤は、ベンゼン(benzene)、フェノール(phenol)、
トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、及びメシチレン(mesitylene)からなる群
より選ばれる何れか1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項29に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項32】
(ii)段階において、還元剤は、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)、水素
化リチウム(LiH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、及び塩化リチウム(L
iCl)からなる群より選ばれる何れか1つであることを特徴とする、請求項29に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項33】
(ii)段階において、アルミニウム化合物は、アルミニウムハライド(AlXx)系又は有機アルミニウム化合物であることを特徴とする、請求項29に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項34】
(iii)段階において、電位は、有機溶媒が分解されない電位以上、アルミニウムが還元され得る電位以下であることを特徴とする、請求項29に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項35】
(iii)段階において、電位は、−10V以上−1.67V以下であることを特徴とする、請求項29に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項36】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項29乃至35のうちの何れか一項に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項37】
上記炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μmで、長さが10nm乃至10cmであることを特徴とする、請求項29乃至35のうちの何れか一項に記載のアルミニウム−炭素材料複合体を製造する方法。
【請求項38】
請求項29乃至35のうちの何れか一項に記載の方法により製造されたアルミニウム−炭素材料複合体。
【請求項39】
上記炭素材料は、黒鉛、黒鉛繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、及び炭素ナノチューブからなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項38に記載のアルミニウム−炭素材料複合体。
【請求項40】
上記炭素材料は、直径が0.4nm乃至16μmで、長さが10nm乃至10cmであることを特徴とする、請求項38に記載のアルミニウム−炭素材料複合体。
【図1】
【図5】
【図9】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図5】
【図9】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−188756(P2012−188756A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49665(P2012−49665)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【分割の表示】特願2008−191441(P2008−191441)の分割
【原出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508224890)ソンギュングァン ユニバーシティ ファウンデーション フォー コーポレイト コラボレーション (4)
【出願人】(508224904)デユウ スマート アルミニウム カンパニ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【分割の表示】特願2008−191441(P2008−191441)の分割
【原出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508224890)ソンギュングァン ユニバーシティ ファウンデーション フォー コーポレイト コラボレーション (4)
【出願人】(508224904)デユウ スマート アルミニウム カンパニ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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