説明

アルミニウム基材の塗膜形成方法

本発明は、(1)アルミニウム基材の表面に、光輝材を含有する熱硬化性ポリエステル樹脂粉体光輝性ベース塗料(a)を塗装し、焼付する工程、次いで(2)熱硬化性アクリル樹脂粉体クリヤー塗料(b)を塗装し、焼付けて、光輝性を有する複層塗膜を形成する工程を含むアルミニウム基材の塗膜形成方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、アルミニウム基材に光輝性を有する複層塗膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
チューブ、タイヤなどの取付け部材である自動車用ホイールとしてスチールホイール、アルミニウムホイールなどが使用されている。そのうち、軽量性、防食性およびデザイン性などにすぐれたアルミニウムホイールが多く用いられている。
このアルミニウムホイール等のアルミニウム基材には、保護と美観のために、通常、例えば、プライマー塗料を必要に応じて塗装後、熱硬化性有機溶剤型着色ベース塗料を塗装し、次いで熱硬化性アクリル樹脂系有機溶剤型クリヤー塗料を塗装する方法によって、複層塗膜が形成されている。
このような複層塗膜形成工程において、使用される有機溶剤型塗料から排出される有機溶剤の地球環境に与える影響が問題とされている。
また、有機溶剤を全く含まない粉体塗料を適用した複層塗膜形成工程として、金属基材上に、エポキシ樹脂系粉体塗料を塗装し、必要に応じて加熱後、熱硬化性アクリル樹脂系粉体塗料等の粉体塗料を塗装し、加熱して複層塗膜を形成する方法が公知である(特開平11−300271号参照)。しかし、この方法は、複層塗膜の各塗膜間の層間付着性の向上が要望されており、又光輝性を有する塗膜を得るものではなかった。
【発明の開示】
本発明の目的は、アルミニウム基材表面に、層間付着性、耐食性、耐候性等に優れ、且つ光輝性を有する複層塗膜を得ることができ、しかも有機溶剤を全く排出しない複層塗膜形成方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく、鋭意研究した。その結果、アルミニウム基材表面に、光輝材を含有する熱硬化性ポリエステル樹脂粉体光輝性ベース塗料(a)及び熱硬化性アクリル樹脂粉体クリヤー塗料(b)を、この順で、それぞれ塗装、焼付けることによって、有機溶剤を全く排出することなく、層間付着性、耐食性、耐候性等に優れた光輝性を有する複層塗膜を得ることができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき、完成されたものである。
本発明は、以下の塗膜形成方法を提供する。
1.(1)アルミニウム基材の表面に、光輝材を含有する熱硬化性ポリエステル樹脂粉体光輝性ベース塗料(a)を塗装し、焼付ける工程、次いで
(2)熱硬化性アクリル樹脂粉体クリヤー塗料(b)を塗装し、焼付けて、光輝性を有する複層塗膜を形成する工程を含むアルミニウム基材の塗膜形成方法。
2.上記粉体光輝性ベース塗料(a)が含有する光輝材が、樹脂コーティングしたアルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレーク、マイカ、金属チタンフレーク、アルミナフレーク、シリカフレーク、グラファイト、ステンレス鋼フレーク、板状酸化鉄及び雲母状酸化鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種の光輝材である上記項1に記載の塗膜形成方法。
3.上記粉体光輝性ベース塗料(a)が、基体樹脂としてカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を、且つ架橋剤としてβ−ヒドロキシアルキルアミドを、含有する塗料である上記項1に記載の塗膜形成方法。
4.上記ポリエステル樹脂が、酸価10〜100KOHmg/樹脂1g程度のポリエステルポリカルボン酸樹脂である上記項3に記載の塗膜形成方法。
5.上記ポリエステル樹脂が、重量平均分子量500〜50,000程度のポリエステルポリカルボン酸樹脂である上記項3に記載の塗膜形成方法。
6.上記ポリエステル樹脂が、軟化温度50〜140℃程度のポリエステルポリカルボン酸樹脂である上記項3に記載の塗膜形成方法。
7.カルボキシル基含有ポリエステル樹脂及びβ−ヒドロキシアルキルアミドの含有割合が、該ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基1個当たり、該β−ヒドロキシアルキルアミドが有する水酸基が1.2〜1.6個程度の範囲となる割合である上記項3に記載の塗膜形成方法。
8.上記粉体クリヤー塗料(b)が、基体樹脂としてエポキシ基含有アクリル樹脂を、且つ架橋剤としてポリカルボン酸及び/又はその無水物を、含有する塗料である上記項1に記載の塗膜形成方法。
9.上記エポキシ基含有アクリル樹脂のエポキシ当量が、200〜800程度である上記項8に記載の塗膜形成方法。
10.上記エポキシ基含有アクリル樹脂の重量平均分子量が、1,000〜10,000程度である上記項8に記載の塗膜形成方法。
11.上記エポキシ基含有アクリル樹脂の軟化温度が、50〜140℃程度である上記項8に記載の塗膜形成方法。
12.エポキシ基含有アクリル樹脂及びポリカルボン酸及び/又はその無水物の含有割合が、該アクリル樹脂が有するエポキシ基1個当たり、該ポリカルボン酸及び/又はその無水物が有するカルボキシル基又はその無水基が0.6〜0.9個程度の範囲となる割合である上記項8に記載の塗膜形成方法。
本明細書において、「平均粒径」とは、塗料粉末、光輝材、顔料等の粒度分布を測定し、得られた結果から求められる小粒径側からの積算値50%の粒度(D50)を意味する。粒度分布は、粒子に光を当てることにより生じる回折又は散乱の強度パターンが、粒子の大きさに依存することに基づいて、測定することができる。粒度分布を測定するための機器としては、一般的な粒度分布計を使用することができる。また、粒度分布計としては、市販品を使用でき、その具体例としては、例えば、マイクロトラック9220FRA(商品名、日機装社製)、マイクロトラックHRA(商品名、日機装社製)、COULTER MULTISIZER(商品名、ベックマンコールター社製)等を挙げることができる。
以下、本発明の塗膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
アルミニウム基材
本発明の塗膜形成方法を適用する被塗物であるアルミニウム基材としては、具体的には、乗用車、オートバイ、トラック、ワゴン車などの自動車用のチューブ、タイヤなどの取付け部材であるアルミニウムホイールなどが挙げられる。
アルミニウム基材は、材質としては、通常、アルミニウムを主成分とし、更にマグネシウム、ケイ素などを含む合金からなっている。
アルミニウム基材としては、軽量性、デザイン性などの目的で、任意の形状に成型加工したものを使用できる。また、ショットブラストした凹凸状の鋳肌面、切削した平滑面などが混在するアルミニウム基材も使用できる。
アルミニウム基材は、本発明の塗膜形成方法を行うのに先立って、クロム酸塩またはリン酸塩などで、その表面をあらかじめ化成処理しておくことが好ましい。また、必要に応じて、プライマー塗料が塗装されていても構わない。
本発明の塗膜形成方法で使用する光輝材を含有する熱硬化性ポリエステル樹脂粉体光輝性ベース塗料(a)及び熱硬化性アクリル樹脂粉体クリヤー塗料(b)の構成成分について、以下に説明する。
光輝材を含有する熱硬化性ポリエステル樹脂粉体光輝性ベース塗料(a)
該光輝性ベース塗料(a)としては、基体樹脂として架橋性官能基であるカルボキシル基を有するポリエステル樹脂を、且つ架橋剤としてβ−ヒドロキシアルキルアミドを含有し、更に光輝材を含有してなる粉体塗料を用いるのが、好ましい。
上記ポリエステル樹脂としては、ポリエステルポリカルボン酸樹脂を好適に使用できる。
ポリエステルポリカルボン酸樹脂としては、酸価が10〜100KOHmg/樹脂1g程度のものが好ましく、20〜80KOHmg/樹脂1g程度のものがより好ましい。また、重量平均分子量は500〜50,000程度であるのが好ましく、1,000〜10,000程度がより好ましい。また、軟化温度は50〜140℃程度であるのが好ましく、60〜120℃程度がより好ましい。
酸価が10KOHmg/樹脂1g未満になると、硬化性が低下し、耐食性、耐候性等の性能が悪くなり、一方、酸価が100KOHmg/樹脂1gを上回ると、塗膜の耐水性、耐候性等が低下するので、いずれも好ましくない。重量平均分子量が500を下回ると、塗膜の耐水性、加工性等が低下し、一方、重量平均分子量が50,000を上回ると、塗膜の平滑性が低下するので、いずれも好ましくない。軟化温度が50℃を下回ると、塗料の耐ブロッキング性が低下し、一方、軟化温度が140℃を上回ると、塗膜の平滑性が低下するので、いずれも好ましくない。
該ポリエステルポリカルボン酸樹脂としては、多塩基酸と多価アルコールとを上記酸価の範囲になるように適宜反応させて得られた樹脂を使用できる。
上記多塩基酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の芳香族又は脂環族ジカルボン酸化合物を使用できる。また、必要に応じて、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸等のその他のポリカルボン酸化合物等を併用できる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等の2価アルコールを使用できる。また、必要に応じて、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコールを併用できる。
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂の架橋剤であるβ−ヒドロキシアルキルアミドとしては、例えば、β−ヒドロキシエチルアジパミド等を使用できる。
該β−ヒドロキシアルキルアミド架橋剤の含有割合は、該架橋剤が有する水酸基が、該ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基1個当たり、1.2〜1.6個程度の範囲となる割合が好適である。この範囲をはずれると、塗り重ねられるクリヤーコート層との層間付着性が不十分となり、クリヤーコート層との層間で剥がれを生ずることがあるので好ましくない。
熱硬化性ポリエステル樹脂粉体光輝性ベース塗料(a)は、光輝材として、樹脂コーティングしたアルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレーク、マイカ、金属チタンフレーク、アルミナフレーク、シリカフレーク、グラファイト、ステンレス鋼フレーク、板状酸化鉄及び雲母状酸化鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種の光輝材を含有していることが好ましい。
上記光輝材の平均粒径は、通常、2〜100μm程度の範囲であるのが好ましく、3〜80μm程度の範囲であるのがより好ましい。
光輝材の含有割合は、通常、基体樹脂と架橋剤の合計固形分100重量部に対して、1〜50重量部程度とするのが好ましく、2〜40重量部程度とするのがより好ましい。
更に、上記粉体光輝性ベース塗料(a)は、上記光輝材以外に、必要に応じて、公知の各種塗料用添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、有機顔料、無機顔料、炭素系顔料、防錆顔料等の顔料;硬化触媒;紫外線吸収剤;紫外線安定剤;酸化防止剤;表面調整剤;ワキ防止剤等を挙げることができる。
上記有機顔料としては、例えば、キナクリドン等のキナクリドン系、ピグメントレッド等のアゾ系、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系等の顔料を挙げることができる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、バリタ、クレー、タルク、シリカ等を挙げることができる。炭素系顔料としては、例えば、カーボンブラック等を挙げることができる。防錆顔料としては、例えば、ベンガラ、ストロンチウムクロメート、リン酸亜鉛等を挙げることができる。
硬化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、ジエタノールアミン等を挙げることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリシレート系化合物、蓚酸アニリド系化合物などを挙げることができる。紫外線安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物などを挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、有機イオウ系化合物、ホスファイト系化合物などを挙げることができる。
上記粉体光輝性ベース塗料(a)は、公知の方法、例えば、上記光輝材を除いた成分を配合し、ミキサーでドライブレンドした後、加熱溶融混練し、冷却、粗粉砕、微粉砕、濾過により製造した粉体樹脂混合物に、光輝材をドライブレンド又はボンディング法によって混合する方法により製造できる。ボンディング法による混合方法は、光輝材を、熱融着又は接着剤により、粉体樹脂混合物に結合させて混合する方法である。
上記粉体光輝性ベース塗料(a)の平均粒径は、通常、10〜80μm程度の範囲であるのが好ましく、15〜60μm程度の範囲であるのがより好ましい。
熱硬化性アクリル樹脂粉体クリヤー塗料(b)
該クリヤー塗料(b)としては、基体樹脂として架橋性官能基であるエポキシ基を有するアクリル樹脂を、且つ架橋剤としてポリカルボン酸及び/又はその無水物を含有してなる粉体塗料を用いるのが、好ましい。
エポキシ基含有アクリル樹脂としては、エポキシ当量200〜800程度のものが好ましく、400〜600程度のものがより好ましい。また、重量平均分子量は1,000〜10,000程度であるのが好ましく、2,000〜5,000程度であるのがより好ましい。また、軟化温度は50〜140℃程度であるのが好ましく、60〜100℃程度がより好ましい。
エポキシ当量が200未満になると、塗膜の平滑性、耐候性等が低下し、一方、エポキシ当量が800を上回ると、硬化性が低下して、衝撃性、耐水性、耐候性等が悪くなるので、いずれも好ましくない。重量平均分子量が1,000を下回ると、塗膜の耐水性、耐候性等が低下し、一方、重量平均分子量が10,000を上回ると、塗膜の平滑性が低下するので、いずれも好ましくない。軟化温度が50℃を下回ると、塗料の耐ブロッキング性が低下し、一方、軟化温度が140℃を上回ると、塗膜の平滑性が低下するので、いずれも好ましくない。
該アクリル樹脂としては、グリシジル基含有不飽和モノマーのラジカル同重合体、グリシジル基含有不飽和モノマーとその他の不飽和モノマーとのラジカル共重合体等が挙げられる。
上記グリシジル基含有不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等を挙げることができる。
また、その他の不飽和モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、iso−ブチルアクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキル又はシクロアルキルエステル類;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有不飽和モノマー類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族化合物類;アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。
エポキシ基含有アクリル樹脂の架橋剤であるポリカルボン酸及び/又はその無水物は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物である。ポリカルボン酸及び/又はその無水物としては、具体的には、ドデカン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、ブラシジン酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、エイコサン二酸などの脂肪族酸及びこれらの無水物などが好適である。これらは、1種または2種以上が使用できる。
架橋剤の含有割合は、該アクリル樹脂が有するエポキシ基1個当たり、該ポリカルボン酸及び/又はその無水物が有するカルボキシル基又はその無水基0.6〜0.9個程度の範囲となる割合が好適である。この範囲をはずれると、下層の光輝性ベースコート層との層間付着性が不十分となって、光輝性ベースコート層との層間で剥がれを生じることがあるので好ましくない。
更に、上記粉体クリヤー塗料(b)は、必要に応じて、有機顔料、無機顔料、炭素系顔料等の顔料;硬化触媒;紫外線吸収剤;紫外線安定剤;酸化防止剤;表面調整剤;ワキ防止剤等の各種添加剤を配合することができる。顔料を配合する場合には、透明性を損なわない程度の微量とするのがよい。
上記粉体クリヤー塗料(b)に配合してもよい各種添加剤の具体例は、前記粉体光輝性ベース塗料(a)において例示したものと同様である。
上記粉体クリヤー塗料(b)は、公知の方法、例えば、上記の成分を配合しミキサーでドライブレンドした後、加熱溶融混練し、冷却、粗粉砕、微粉砕、濾過する方法により製造できる。
上記粉体クリヤー塗料(b)の平均粒径は、通常、10〜80μm程度の範囲であるのが好ましく、15〜60μm程度の範囲であるのがより好ましい。
複層塗膜形成工程
本発明の塗膜形成方法は、必要に応じて化成処理及び/又はプライマー塗装されたアルミニウム基材表面に、熱硬化性ポリエステル樹脂粉体光輝性ベース塗料(a)を塗装、焼付けし、次いで熱硬化性アクリル樹脂粉体クリヤー塗料(b)を塗装、焼付することにより、光輝性ベースコート層及びクリヤーコート層からなる光輝性を有する複層塗膜を形成するものである。
上記光輝性ベース塗料(a)の塗装は、静電粉体塗装により、好適に行うことができる。静電粉体塗装は、それ自体公知の方法、例えば、コロナ帯電粉体塗装、摩擦帯電粉体塗装等で行うことができる。塗装されたベース塗料の焼付は、塗装した熱硬化性粉体塗料が硬化する温度、通常、140〜220℃程度で、10分〜60分程度行われる。
得られる光輝性ベースコート層の膜厚は、焼付後の硬化塗膜として、通常、10〜130μm程度であり、好ましくは30〜100μm程度である。10μm未満では光輝性が損なわれ、また130μmを上回ってもそれ以上の塗膜性能の向上は得られない。
上記クリヤー塗料(b)の塗装は、上記により形成された光輝性ベースコート層の表面に、静電粉体塗装により、好適に行うことができる。静電粉体塗装は、それ自体公知の方法、例えば、コロナ帯電粉体塗装、摩擦帯電粉体塗装等で行うことができる。塗装されたベース塗料の焼付温度としては、通常、140〜220℃程度で、10分〜60分程度行われる。
得られるクリヤーコート層の膜厚は、硬化塗膜として、通常、30〜150μm程度であり、好ましくは50〜100μm程度である。30μm未満では光輝性が損なわれ、また150μmを上回ってもそれ以上の塗膜性能の向上は得られない。
かくして、アルミニウム基材表面に、光輝性ベースコート層及びクリヤーコート層からなる光輝性を有する複層塗膜を、簡便な方法により形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより一層具体的に説明する。尚、各例における「部」は重量基準である。
製造例1 熱硬化性ポリエステル樹脂粉体光輝性ベース塗料の調製
基体樹脂としてポリエステルポリカルボン酸樹脂(商品名「CC7642」、UCB社製、酸価35KOHmg/樹脂1g、重量平均分子量8,500、軟化温度110℃)、架橋剤としてβ−ヒドロキシエチルアジパミド(商品名「XL−552」、EMS社製、水酸基当量84)を、表1に示す量で混合し、ミキサーでドライブレンドした後、加熱溶融混練し、冷却し、粗粉砕し、微粉砕し、ふるい濾過して、粉体樹脂混合物を得た。
上記粉体樹脂混合物に、光輝材として樹脂コーティングアルミニウムフレーク(商品名「PCF−7670A」、東洋アルミニウム(株)製)7部をミキサーでドライブレンドした後、ふるい濾過して熱硬化性ポリエステル樹脂粉体光輝性ベース塗料(1A)〜(1E)を得た。各塗料の平均粒径は、いずれも30μmであった。
表1に、各光輝性ベース塗料の成分組成を示す。

上記表1において、基体樹脂と架橋剤との含有割合は、基体樹脂のカルボキシル基1個当たりの架橋剤の水酸基の個数を示す。
製造例2 エポキシ基含有アクリル樹脂の調製
撹拌機、還流冷却管、窒素吹込管および滴下装置を有する四つ口フラスコを使用して、スチレン150部、ブチルメタアクリレート150部、メチルメタアクリレート350部、グリシジルメタアクリレート350部、キシレン1,000部およびアゾビスイソブチロニトリル20部を反応せしめ、脱溶剤し、粉砕して、固形のアクリル樹脂を得た。得られたグリシジル基含有アクリル樹脂は、重量平均分子量が5,000、軟化温度が65℃、エポキシ当量が450であった。
製造例3 熱硬化性アクリル樹脂粉体クリヤー塗料の調製
基体樹脂として製造例2で得たエポキシ基含有アクリル樹脂、硬化剤としてドデカン二酸を、表2に示す量で混合し、ミキサーでドライブレンドした後、加熱溶融混練し、冷却、粗粉砕、微粉砕、ふるい濾過して、熱硬化性アクリル樹脂クリヤー塗料(2A)〜(2E)を得た。各塗料の平均粒径は、いずれも30μmであった。
表2に、各クリヤー塗料の成分組成を示す。

上記表2において、基体樹脂と架橋剤との含有割合は、基体樹脂のエポキシ基1個当たりの架橋剤のカルボキシル基の個数を示す。
【実施例1】
クロム酸クロメート(商品名「AL−1000」、日本パーカライジング社製)で化成処理を施した10×70×150mmのアルミニウム鋳造板(AC4C)に、熱硬化性ポリエステル樹脂粉体光輝性ベース塗料(1A)を、焼付後の硬化膜厚が50μmになるようにコロナ帯電粉体塗装し、160℃で20分間焼き付けした。さらに、その上に熱硬化性アクリル樹脂粉体クリヤー塗料(2A)を、焼付後の硬化膜厚が80μmになるようにコロナ帯電粉体塗装した後に、160℃で20分間焼付けして、光輝性を有する複層塗膜を形成した。
実施例2〜5及び比較例1〜4
熱硬化性ポリエステル樹脂粉体光輝性ベース塗料と熱硬化性アクリル樹脂粉体クリヤー塗料の組合せを、後記表3に示す組合せとした以外は、実施例1と同様にして、実施例又は比較例の光輝性を有する複層塗膜を形成した。
実施例1〜5及び比較例1〜4で得た各塗装板について、以下の性能試験を行った。
(1)塗膜の平滑性
塗装板上の塗膜の平滑性を目視で観察し、評価した。評価基準は、Aが平滑性良好であることを、Bが平滑性やや不良であることを、Cが平滑性不良であることを、それぞれ示す。
(2)層間付着性
塗装板上の塗膜を、カッターナイフで素地に達するようにクロスカットし、大きさ1mm×1mmのゴバン目を100個作り、その表面に粘着テープを貼付し、20℃でそのテープを急激に剥離した。このときのベースコート層とクリヤーコート層との層間の剥離を調べ、層間剥離のない残存ゴバン目塗膜数を数え、下記基準に基づいて、層間付着性を評価した。
A:残存塗膜数100個で層間付着性が良好である、
B:残存塗膜数99〜70個で層間付着性がやや不良である、
C:残存塗膜数69個以下で層間付着性が不良である。
(3)耐水性
塗装板を、40℃の水に240時間浸漬し、引上げ直後の塗膜のフクレ、ツヤビケ等の異常を目視で観察し、下記基準に基づいて、塗膜の耐水性を評価した。
A:塗膜に全く異常がなく、耐水性が良好である、
B:塗膜にフクレ、ツヤビケが少しあり、耐水性がやや不良である、
C:塗膜にフクレ、ツヤビケが多くあり、耐水性が不良である。
次いで、1時間室温で乾燥してから、前記層間付着性試験と同様にして、層間付着性を調べた。
(4)耐食性
塗装板上の塗膜を、カッターナイフで素地に達するようにクロスカットし、ソルトスプレー試験(JIS K5400−9.1)を1,000時間行った。次いで、水洗乾燥してから、クロスカット部分に粘着テープを貼付し、20℃で、そのテープを急激に剥離した後、カット部に生じた塗膜の剥離又はフクレの片側の巾を測定し、下記基準に基づいて、耐食性を評価した。
A:上記巾が2mm以内で、耐食性が良好である、
B:上記巾が2mmを越えており、耐食性がやや不良である、
C:上記巾が10mm以上で、耐食性が不良である。
(5)耐候性
塗装板を、SWOM(スタンダードウェザオメータ)(JIS K5400−9.8.1)で、500時間耐候試験した。次いで、試験後の塗膜の光沢を、JIS K5600−4−7に規定された方法に従って、入射角と受光角とがそれぞれ60度のときの反射率により、測定した。初期(試験前)光沢に対する光沢保持率を下記式により、算出した。
光沢保持率(%)=[(試験後光沢)/(初期光沢)]×100
その後、40℃の水に120時間浸漬し、引上げ直後の塗膜のフクレ等の異常を目視で観察し、下記基準に基づいて、塗膜の耐候性を評価した。
A:塗膜に全く異常がなく、耐候性が良好である、
B:塗膜にフクレが少しあり、耐候性がやや不良である、
C:塗膜にフクレが多くあり、耐候性が不良である。
次いで、1時間室温で乾燥してから、前記層間付着性試験と同様にして、層間付着性を調べた。
実施例1〜5及び比較例1〜4の各複層塗膜の層構成(使用塗料名)及び性能試験結果を、表3に、それぞれ示す。

【発明の効果】
本発明の塗膜形成方法によれば、以下の如き顕著な効果が得られる。
(1)アルミニウム基材表面に、層間付着性、耐食性、耐候性等に優れた光輝性を有する複層塗膜を、簡便な工程で形成できる。
(2)粉体塗料特有の肉持ち感のある仕上がり外観が得られるので、溶剤型塗料とは異なった斬新な外観が得られる。
(3)複層塗膜形成工程であるにも拘わらず、有機溶剤を全く排出することがないので、無公害の塗膜形成方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)アルミニウム基材の表面に、光輝材を含有する熱硬化性ポリエステル樹脂粉体光輝性ベース塗料(a)を塗装し、焼付ける工程、次いで
(2)熱硬化性アクリル樹脂粉体クリヤー塗料(b)を塗装し、焼付けて、光輝性を有する複層塗膜を形成する工程を含むアルミニウム基材の塗膜形成方法。
【請求項2】
上記粉体光輝性ベース塗料(a)が含有する光輝材が、樹脂コーティングしたアルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレーク、マイカ、金属チタンフレーク、アルミナフレーク、シリカフレーク、グラファイト、ステンレス鋼フレーク、板状酸化鉄及び雲母状酸化鉄からなる群より選ばれる少なくとも一種の光輝材である請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
上記粉体光輝性ベース塗料(a)が、基体樹脂としてカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を、且つ架橋剤としてβ−ヒドロキシアルキルアミドを、含有する塗料である請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項4】
上記ポリエステル樹脂が、酸価10〜100KOHmg/樹脂1g程度のポリエステルポリカルボン酸樹脂である請求項3に記載の塗膜形成方法。
【請求項5】
上記ポリエステル樹脂が、重量平均分子量500〜50,000程度のポリエステルポリカルボン酸樹脂である請求項3に記載の塗膜形成方法。
【請求項6】
上記ポリエステル樹脂が、軟化温度50〜140℃程度のポリエステルポリカルボン酸樹脂である請求項3に記載の塗膜形成方法。
【請求項7】
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂及びβ−ヒドロキシアルキルアミドの含有割合が、該ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基1個当たり、該β−ヒドロキシアルキルアミドが有する水酸基が1.2〜1.6個程度の範囲となる割合である請求項3に記載の塗膜形成方法。
【請求項8】
上記粉体クリヤー塗料(b)が、基体樹脂としてエポキシ基含有アクリル樹脂を、且つ架橋剤としてポリカルボン酸及び/又はその無水物を、含有する塗料である請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項9】
上記エポキシ基含有アクリル樹脂のエポキシ当量が、200〜800程度である請求項8に記載の塗膜形成方法。
【請求項10】
上記エポキシ基含有アクリル樹脂の重量平均分子量が、1,000〜10,000程度である請求項8に記載の塗膜形成方法。
【請求項11】
上記エポキシ基含有アクリル樹脂の軟化温度が、50〜140℃程度である請求項8に記載の塗膜形成方法。
【請求項12】
エポキシ基含有アクリル樹脂及びポリカルボン酸及び/又はその無水物の含有割合が、該アクリル樹脂が有するエポキシ基1個当たり、該ポリカルボン酸及び/又はその無水物が有するカルボキシル基又はその無水基が0.6〜0.9個程度の範囲となる割合である請求項8に記載の塗膜形成方法。

【国際公開番号】WO2004/056497
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【発行日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562055(P2004−562055)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016302
【国際出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(591038303)久保孝ペイント株式会社 (3)
【Fターム(参考)】