説明

アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムを用いた成形用材料ペレットの製造方法

【課題】アルミニウム蒸着層を有する難リサイクル材の積層フィルムを用い、成形用材料ペレットを効率よく、安定的に製造する方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムに、アルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂フィルム又は熱可塑性樹脂の粉砕品を配合し、溶融混練押出機により溶融混合し、ペレットに成形するペレットの製造方法であって、(1)前記アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムが、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂の中から選ばれる少なくとも2層からなり、かつ、いずれか1層がアルミニウム蒸着層を有する、(2)前記アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムの量をA質量部、これに配合する熱可塑性樹脂の量をB質量部とした場合、A/Bが10%以上である、(3)溶融混練押出機として、混練単軸押出機と、それに直列に配置した多軸高混練押出機とを用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム蒸着層を有する難リサイクル材の積層フィルムを用い、建築資材、物流資材(パレット)、農業・園芸資材、雑貨などの成形材料として有用な成形用材料ペレットを、効率よく、安定的に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の再利用、環境保護の観点から、不用になった製品を回収し再利用する、いわゆるリサイクル化の検討が盛んに行われている。
ところで、食品や菓子あるいは薬品等を包装するフィルムにおいては、高ガスバリア性と高遮光性が求められることが多い。従来、このような要求を満足するものとしては、PP、PET、PA等の各種プラスチックフィルムに、アルミニウムを真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングした、アルミニウム蒸着フィルムや、アルミニウム箔をPEやPPなどのヒートシール可能なフィルムと貼り合わせた積層フィルムが用いられてきた。
【0003】
一般に、内側にはヒートシール性の良い(低温シールが可能で、かつシール強度が強い)ポリエチレン又は無延伸ポリプロピレンが使用され、外側に使用されるアルミニウム蒸着(以下、蒸着を「VM」と略記することがある。)フィルムには、無延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)等のフィルムが使用される。前記のアルミニウム蒸着フィルムと内側のヒートシール性フィルムとの貼り合わせ方法としては、ポリエチレン樹脂等を用いた押出ラミネート法も採用されているが、主流は、室温で貼り合わせるドライラミネート法である。
例えば、スナック菓子用袋においては、内側からCPP/VM−PET、CPP/VM−PA/PE、又はCPP−VM/OPPで構成されており、一方、レトルト食品、長期保存品、医薬品包装材等においては、VMフィルムと易ヒートシール性フィルムとの組合わせ、CPP/VM−PET/VM−PA/VM−OPP等、遮光性、吸湿性、酸素ガスバリア性、耐熱性などの要求を満たすアルミニウム蒸着層を有する4層以上の積層フィルムも実用化されている。そして、これらの積層フィルムにおけるアルミニウム蒸着層においては、アルミニウム粒子がナノメートルレベルの粒子として存在していることが知られている。
【0004】
しかしながら、低温ヒートシール可能フィルムに、このような融点の高いPETやPAフィルムにアルミニウム蒸着したフィルムを貼り合わせた積層フィルムの場合、リサイクルを目的とした分別は困難であり、したがって、アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムは、押出機フィルターメッシュの目詰り、溶融温度の違いによる未溶融物生成による目詰りに起因する圧力上昇等の発現により、難リサイクル材として知られている。
そこで、特許文献1には、アルミニウム蒸着フィルムを積層したプラスチックフィルムと同等のガスバリア性及び遮光性(紫外線非透過性)を有し、リサイクルが可能で、省資源化に寄与する積層フィルムとして、ガスバリア性フィルム/銀インキを印刷したフィルムを積層することにより、アルミニウム蒸着フィルムを積層したフィルムの代替フィルムとして成るリサイクルに適した積層プラスチックフィルムが開示されており、そして前記ガスバリア性フィルムとして、シリカ蒸着ポリエステルフィルム又はポリ塩化ビニリデンコート品が用いられている。
前記特許文献1に記載の技術による積層フィルムは、アルミニウム蒸着フィルムを積層したプラスチックフィルムと同等のガスバリア性及び遮光性を有し、リサイクル可能で、省資源化に寄与するとされているが、アルミニウム蒸着フィルムを積層したフィルムに比べて、コスト高になり、当該積層フィルムは広く用いられる傾向はなく、アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムの難リサイクル材としての問題点は未解決である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−145972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下になされたものであり、アルミニウム蒸着層を有する難リサイクル材の積層フィルムを用い、建築資材、農業土木資材、物流資材(パレット)などの成形材料として有用な成形用材料ペレットを効率よく、安定的に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
原材料として、難リサイクル材のアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムを用い、これに、所定の割合の熱可塑性樹脂フィルム、粉砕品を配合し、溶融混練して成形用材料ペレットを製造するに際し、混練物中にアルミニウム蒸着層由来のナノメートルレベルのアルミニウム粒子が存在することにより、意外にも、サージング現象が抑えられ、成形用材料ペレットが安定的に生産できることを見出した。
また、難リサイクル材のアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムには、各種のフィルム間に接着剤層や、アルミニウム蒸着層の上面及び下面にオーバーコート層やアンダーコート層を有し、これらは各樹脂及びアルミニウムに対する接着機能を有しており、高温・高圧・高剪断力下で溶融混練する際に、アルミニウム粒子と接着剤、フィルムと接着剤、印刷インキとフィルムなどは、ナノレベルで均一に分散することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]難リサイクル材であるアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムに、アルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂フィルム又は熱可塑性樹脂の粉砕品を配合し、溶融混練押出機により溶融混練し、ペレットに成形する成形用材料ペレットの製造方法であって、
(1)前記アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムが、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム及びポリエステル系樹脂フィルムの中から選ばれる少なくとも2層からなり、かつ前記積層フィルムのいずれか1層がアルミニウム蒸着層を有すること、
(2)前記アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムの量をA質量部、これに配合するアルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂の量をB質量部とした場合、(A/B)×100が10%以上であること、及び
(3)溶融混練押出機として、第一混練単軸押出機と、それに直列に配置した第二多軸高混練押出機とを用いて溶融混練すること、
を特徴とするアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムを用いた成形用材料ペレットの製造方法、
[2]ポリオレフィン系樹脂フィルムを構成する素材が、高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリプロピレン又はポリ4−メチルペンテン−1であり、ポリアミド系樹脂フィルムを構成する素材が、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン610、又はナイロン12であり、ポリエステル系樹脂フィルムを構成する素材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、又はポリエチレン2,6−ナフタレートである上記[1]項に記載の成形用材料ペレットの製造方法、
[3]アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムに配合するアルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂が、上記[2]項に記載のポリオレフィン系樹脂フィルムを構成する素材、ポリアミド系樹脂フィルムを構成する素材及びポリエステル系樹脂フィルムを構成する素材の中から選ばれる少なくとも1種である上記[1]又は[2]項に記載の成形用材料ペレットの製造方法、及び
[4]成形用材料ペレットが、建築資材、物流資材、農業・園芸資材及び雑貨の中から選ばれる少なくとも1種の成形材料として用いられる、上記[1]〜[3]項のいずれかに記載の成形用材料ペレットの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アルミニウム蒸着層を有する難リサイクル材の積層フィルムを用い、建築資材、農業・土木資材、物流資材(パレット)、農業・園芸用資材、雑貨などの成形材料として有用な成形用材料ペレットを効率よく、安定的に製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における成形用材料ペレットの製造方法を説明するための工程模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の成形用材料ペレットの製造方法について説明する。
本発明の成形用材料ペレットの製造方法は、難リサイクル材であるアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムに、アルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂フィルム又は熱可塑性樹脂の粉砕品を配合し、溶融混練押出機により溶融混練し、ペレットに成形する成形用材料ペレットの製造方法であって、
(1)前記アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムが、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム及びポリエステル系樹脂フィルムの中から選ばれる少なくとも2層からなり、かつ前記積層フィルムのいずれか1層がアルミニウム蒸着層を有すること、
(2)前記アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムの量をA質量部、これに配合するアルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂の量をB質量部とした場合、(A/B)×100が10%以上であること、及び
(3)溶融混練押出機として、第一混練単軸押出機と、それに直列に配置した第二多軸高混練押出機とを用いて溶融混練すること、
を特徴とする。
【0012】
[原材料]
本発明の成形用材料ペレットの製造方法においては、原材料として、難リサイクル材のアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムが用いられる。
(積層フィルムの構成)
当該積層フィルムは、ヒートシール性に優れるポリオレフィン系樹脂フィルムと、他のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム及びポリエステル系樹脂フィルムの中から選ばれる少なくとも2層からなり、かつ前記積層フィルムのいずれか1層がアルミニウム蒸着層を有する。
【0013】
<ポリオレフィン系樹脂フィルム>
ポリオレフィン系樹脂フィルムの素材として用いられるポリオレフィン系樹脂としては、特に制限はなく、例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1などのα−オレフィンの単独重合体やこれらの共重合体、あるいはこれらと他の共重合可能な不飽和単量体との共重合体などが挙げられる。代表例としては、高密度、中密度、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのポリエチレン類、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体やランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ジエン化合物共重合体などのポリプロピレン類、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1などを挙げることができるが、これらの中でポリプロピレン系樹脂が好ましい。
本発明における、ポリオレフィン系樹脂としては、特に高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレン及びポリ4−メチルペンテン−1などを挙げることができる。
【0014】
<ポリアミド系樹脂フィルム>
本発明において、ポリアミド系樹脂フィルムを構成する素材として用いられるポリアミド系樹脂としては、脂肪族型ポリアミド系樹脂が好ましく、例えばナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン610、ナイロン12などを挙げることができる。
【0015】
<ポリエステル系樹脂フィルム>
本発明において、ポリエステル系樹脂フィルムを構成する素材として用いられるポリエステル系樹脂としては、芳香族型ポリエステル系樹脂が好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、PETとグリコールとの共重合体(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリエチレン−2,6−ジナフタレート(PEN)などを挙げることができる。これらの中で、経済性及び性能などの観点から、PET樹脂が多用されている。このPETには結晶性PET、及び共重合非晶性PETがあり、いずれもフィルムの素材として使用できるが、特に二軸延伸処理された結晶性のPETフィルムが、当該アルミニウム蒸着層を有する難リサイクル材の積層フィルムに多用されている。
【0016】
<アルミニウム蒸着層を有するフィルム>
本発明の成形用材料ペレットの製造方法においては、難リサイクル材のアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムを原材料として用いるが、前記アルミニウム蒸着層は、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム及びポリエステル系樹脂フィルムの中のいずれか1層に設けられる。アルミニウムの蒸着は、一般に真空蒸着法、スパッタリング法又はイオンプレーティング法などを用いて行われるが、操作性、及び経済性の観点から、真空蒸着法が好ましく採用される。アルミニウム蒸着されるフィルムとしては、耐熱性及び強度の観点から、無延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸結晶性ポリプロピレンフィルム、前述した各種の二軸延伸ナイロンフィルム、又は二軸延伸PETフィルムを挙げることができる。アルミニウム蒸着層の厚みは、通常20〜150nm、好ましくは40〜80nmである。
【0017】
次に、本発明の成形用材料ペレットの製造方法について、添付図面に従って説明する。
図1は、本発明における成形用材料ペレットの製造方法を説明するための工程模式図である。
[成形用材料ペレットの製造方法]
本発明の成形用材料ペレットの製造方法は、難リサイクル材のアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムに、下記の(a)〜(d)工程を施して、成形用材料ペレットを製造する。
((a)工程)
この(a)工程は、難リサイクル材として搬入されたロール巻きのフィルム又はシート1を、10〜30cm角程度のさいの目状物(小立方体)3に切断する工程である。この場合、切断機としては、例えばギロチンカッター2などを用いることができる。
【0018】
((b)工程)
この(b)工程は、前記(a)工程で切断された複数のさいの目状物3をベルトコンベア4上に分散して乗せ、該ベルトコンベア4により、グラッシュミキサーを備えたゲレーション装置5に投入すると共に、熱可塑性樹脂フィルム、粉砕品、及び必要に応じて酸化防止剤、例えばフェノール系やリン系酸化防止剤を投入する。
前記熱可塑性樹脂の投入量は、得られるペレットの用途や、成形法などによって調整される。一般に蒸着フィルム用樹脂の流動性は低く、射出成形用ペレットには高流動性が要求されるために流動性の良い熱可塑性樹脂フィルムやシート、成形品の粉砕物等を分散してベルトコンベア4上に乗せ、ゲレーション装置5に投入する。
前記5に投入されるさいの目状物3の量(アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムの量)をA質量部、熱可塑性樹脂の量をB質量部とした場合、(A/B)×100が10%以上であることを要し、好ましくは20%以上になるように、運転条件、熱可塑性樹脂、酸化防止剤の添加量などで調整する。
【0019】
前記(A/B)×100が10%未満であれば、溶融温度の高いアルミニウム蒸着PETやPAが溶融する前に、熱可塑性樹脂が先に溶融してしまい、だま状(未溶融状態)になり、溶融混練押出機からの押出量が安定しない、いわゆるサージング現象が発生してしまい、ダイから吐出するストランド径が大きく変動し、ダイス出口において、冷却後、通常3mmのストランド径が1mm以下になった時点で、切れてしまい、運転不能になってしまう。
なお、アルミニウム蒸着層を有する積層フィルム中のアルミニウム含有量は、通常0.2〜0.4質量%程度である。
また、前記のサージング現象とは、押出機内で樹脂とシリンダーバレルやスクリューとの間でスティック・スリップ現象を生じ、圧力が大きく変動して、時間あたりの吐出量がばらつく現象のことである。
【0020】
<熱可塑性樹脂>
当該(b)工程において、ゲレーション装置5に投入され、アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムに所定の割合で配合されるアルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂フィルムとしては、特に制限はなく、各種の樹脂を用いることができるが、射出成形用ペレットの製造には、アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムの各層を構成する素材の中で、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレンを用いることが好ましい。
また、当該熱可塑性樹脂としては、例えば前述したポリオレフィン系樹脂以外に、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
この熱可塑性樹脂の形状については、特に制限はなく、フィルム、シート、成形品の粉砕物など、いずれであってもよい。
【0021】
当該(b)工程においては、グラッシュミキサーの高速回転刃による剪断摩擦熱によって、ゲレーション装置中の内容物は120℃前後まで昇温し、水分が蒸発すると共に、半ゲル化状態となり、減容化すると同時に顆粒状化する。
【0022】
((c)工程)
この(c)工程は、前記(b)工程において半ゲル化状態となっているゲレーション装置5中の内容物を該ゲレーション装置に接続されているベント12付き第一混練単軸押出機6に供給し、溶融混練する工程である。
前記第一混練単軸押出機6における溶融混練温度は、通常240〜290℃程度である。
【0023】
((d)工程)
この(d)工程は、前記(c)工程で用いる第一混練単軸押出機6では、充分な混練が得られず、溶融混練物の均質分散化が不充分であるので、この溶融混練物を、該第一混練単軸押出機6に直列に配置したベント12付き第二多軸高混練押出機7に供給し、高剪断力を付与して溶融混練物の充分な均質化を図る。次いで該第二多軸高混練押出機7のダイ14から押出されたストランド8を水槽9にて冷却したのち、ストランドカッター10で所定の長さに切断して、成形用材料ペレットを製造する工程である。なお、図中、符号13及び13'は異物を除去するためのスクリーンメッシュであり、15は、粉、ヒゲ、小径(2.5mm未満)、長すぎるもの(4mm超のもの)などの規格外ペレットを系外に取り出し、規格品ペレットをペレット収容器11に収容させるための分篩機である。
ここで、工程の簡略化のため、前記(c)工程で用いる第一混練単軸押出機6を省略して、混練効果の良好な第二多軸高混練押出機7のみによる混練及び造粒を行うことが考えられる。しかしながら、本願発明のように、ゲレーション設備の摩擦熱でさいの目状フィルムをサイズ、形状の不揃いの顆粒化とし、これを直接混練、造粒することが可能で、リサイクル用設備に適当な、ゲレーション装置付二軸押出機は市販されていないのが実情である。即ち、同一押出量で比較した場合、二軸押出機はスクリュー径が一軸押出機のそれに比べて小さく、強度上無理があり、価格的にも約2倍もするのが実情である。仮に上記のように、サイズ、形状の不揃いの顆粒化されたリサイクル材料を直接二軸押出機に供給したとしても、供給部においてブリッジ現象や詰まりを生じ、安定的な食い込み・吐出が困難である。これに対し、単軸押出機ではスクリュー径も大きく、サイズ、形状の不揃いの顆粒化されたリサイクル材料を供給しても食い込みが安定し、次工程の二軸混練押出機に安定的に溶融材料を供給でき、しかも安価に入手可能である。このような観点からも、本願発明の第一混練単軸押出機6と第二多軸高混練押出機7の組み合わせは望ましい。
【0024】
このようにして得られた成形用材料ペレットは、溶融混練物中に、アルミニウム蒸着層由来のナノメートルレベルのアルミニウム粒子が存在することにより、前述したサージング現象が抑制され、安定した径を有するものとなる。
当該成形用材料ペレットは、通常径が2.5〜4mm程度で、長さが3〜4mm程度である。
【0025】
(成形用材料ペレットの物性)
前記のようにして製造された成形用材料ペレットの物性は下記のとおりである。
(1)MFR
JIS K 7210に準じて測定したMFRは、8〜12g/10minの範囲にある。
(2)密度
JIS K 7112に準じて測定した密度は、0.940〜0.980g/cm3の範囲にある。
(3)引張強度
JIS K 7113に準じて測定した引張強度は、23MPa以上である。
(4)引張伸度
JIS K 7113に準じて測定した引張伸度は、80%以上である。
(5)曲げ弾性率
JIS K 7203に準じて測定した曲げ弾性率は、850MPa以上である。
(6)曲げ強度
JIS K 7203に準じて測定した曲げ強度は、25MPa以上である。
(7)アイゾット衝撃強度(試験片2号A)
JIS K 7110に準じて測定したアイゾット衝撃強度は、3.5kJ/m2以上である。
【0026】
(成形用材料ペレットの用途)
前述のようにして製造された成形用材料ペレットは、例えば溶融流延法(キャスティング法)、溶融押出法(エキストルージョン法)、インフレーション法、射出成形法、カレンダー法などの成形方法により、フィルム、シート、板状体、構造体などに成形して、各種用途、例えば建築資材、物流資材、農業・園芸資材及び雑貨などに用いることができるが、特に建築資材、物流資材(パレット)などに好適に用いられる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0028】
<各例で得られたペレットの特性値>
各例で得られた成形用材料ペレットの特性値として、MFR、密度、引張強度、引張伸度、曲げ弾性率、曲げ強度及びアイゾット衝撃強度(試験片2号A)を、明細書本文に記載の方法に従って測定した。
また、物性測定用の各試験片は、テスト金型を日本製鋼所製射出成形機「JSWJ50EII」に取り付け、シリンダー温度230℃の条件で成形することにより作製した。
【0029】
なお、実施例及び比較例における成形用材料ペレットの作製には、前記図1の工程模式図で示す製造装置を使用した。この図1におけるベント12付き第一混練単軸押出機6は、[エレマ社製、機種名「PC−1512TVE」]であり、ベント12付き第二多軸高混練押出機7は、[東芝機械(株)製、機種名「TEM70」]である。
また、実施例及び比較例における成形用材料ペレットの生産量は500kg/hrを目標とし、難リサイクル材であるアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムの98%(該積層フィルム中の水分や異物などによるため)が成形用材料ペレットに寄与するものとする。
【0030】
実施例1
難リサイクル材であるアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムとして、低密度ポリエチレン製フィルム層/ナイロン6製フィルム層/結晶性ポリプロピレン製フィルム層/アルミニウム蒸着層を有する二軸延伸PET製フィルム層を含む、ロール巻状の難リサイクル性積層フィルムを用意した。なお、前記アルミニウム蒸着層の上面及び下面には、それぞれオーバーコート層及びアンダーコート層が設けられており、またアルミニウム蒸着層を有する二軸延伸PET製フィルム層は、接着剤層を介して、結晶性ポリプロピレン製フィルム層に接合されている。さらに、当該アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムは印刷が施されてなるものであった。
【0031】
次に、前述したロール巻き状の難リサイクル性積層フィルムを、図1の工程模式図で示される製造装置を用いて、下記のように処理して、成形用材料ペレットを製造した。
まず、難リサイクル材として搬入されたロール巻き状の前記のアルミニウム蒸着層を有する積層フィルム1を、10〜30cm角程度のさいの目状物(小立方体)3にギロチンカッター2を用いて切断した。
次いで、ベルトコンベア4上に、前記のアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムのさいの目状物、アルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂印刷フィルムのさいの目状物を手作業で均一に分散して乗せ、該ベルトコンベア4により、アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムのさいの目状物90kg/hr、アルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂印刷フィルムのさいの目状物450kg/hrの速度で、グラッシュミキサーを備えたゲレーション装置5に投入した。なお、(A/B)×100の値は20%であった。この際、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤を、それぞれ適宜量投入した。
前記ゲレーション装置5においては、グラッシュミキサーの高速回転による摩擦熱によって、ゲレーション装置5中の内容物は120℃程度に昇温し、水分が蒸発すると共に、半ゲル化状態となり、減容化し、顆粒状となった。
次に、この半ゲル化状態となっているゲレーション装置5中の内容物を該ゲレーション装置に接続されているベント12付き第一混練単軸押出機6に供給し、溶融混練した。前記第一混練単軸押出機6における溶融混練温度は、240〜290℃程度であった。
この第一混練単軸押出機6では、充分な混練が得られず、溶融混練物の均質化が不充分で実用に供する物性が得られないので、この溶融混練物を、該第一混練単軸押出機6に直列に配置したベント12付き第二多軸高混練押出機7に、スクリーンメッシュ13'を通して異物を取り除き供給し、高剪断力を付与して溶融混練物の充分な微細化、分散化による均質化を図った。次いで該第二多軸高混練押出機7のダイ14から押出されたストランド8を水槽9にて冷却したのち、ストランドカッター10で所定の長さに切断後、分篩機15にかけて、規格外品を系外へ取り出し、規格品をペレット収容器11に収容し、成形用材料ペレットを製造した。
【0032】
この場合、第二多軸高混練押出機7のダイ14から押出されたストランド8は、切れることなく、水槽9で冷却されて、ストランドカッター10で所定の長さに切断され、成形用材料ペレットが約500kg/hrの速度で安定的に得られた。
これは、溶融混練物中に、アルミニウム蒸着層由来のナノメートルレベルのアルミニウム粒子が存在することにより、サージング現象が抑制され、第二多軸高混練押出機7のダイ14からの吐出量の変動がないので、ストランドの切断が生じなかったことによる。
【0033】
得られた成形用材料ペレットの物性は、以下のとおりである。
MFR:9.5g/10min、密度:0.954g/cm3、引張強度:29.7MPa、引張伸度:100%、曲げ弾性率:865MPa、曲げ強度:29.7MPa、アイゾット衝撃強度:4.1kJ/m2であった。
【0034】
実施例2
実施例1において、ゲレーション装置5に投入するアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムのさいの目状物(小立方体)3の投入速度を90kg/hrから232kg/hrに変更すると共に、アルミニウム蒸着層を有しない印刷された結晶性ポリプロピレンフィルムのさいの目状物のゲレーション装置5への投入速度を450kg/hrから291kg/hrに変更し、(A/B)×100の値を約80%にした以外は、実施例1と同様な操作を行うことにより、成形用材料ペレットが約500kg/hrの速度で、安定的に得られた。
この場合も実施例1と同様に、溶融混練物中にアルミニウム蒸着層由来のナノメートルレベルのアルミニウム粒子が存在することにより、サージング現象が抑制され、第二多軸高混練押出機7のダイ14からの吐出量の変動がないので、ストランドの切断が生じなかったことによる。
【0035】
得られた成形用材料ペレットの物性は、以下のとおりである。
MFR:10.9g/10min、密度:0.948g/cm3、引張強度:27.8MPa、引張伸度:100%、曲げ弾性率:895MPa、曲げ強度:31.0MPa、アイゾット衝撃強度:4.5kJ/m2であった。
【0036】
比較例1
実施例1で使用したアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムと同様の層構成を有するものの、アルミニウム蒸着層は含んでいない積層フィルムとして低密度ポリエチレンフィルム層/ナイロン6製フィルム層/結晶性ポリプロピレンフィルム層/二軸延伸PET製フィルム層からなるロール巻状の積層フィルムを用意した。
なお、前記結晶性ポリプロピレンフィルム層と、ナイロン6製フィルム層間及び二軸延伸PET製フィルム層間はそれぞれ接着剤を介して結晶性ポリプロピレンフィルム層に接合されている。さらに、積層フィルムには印刷が施されてなるものであった。
実施例1のアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムのさいの目状物の代わりに、上で用意したロール巻状の積層フィルムを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
ゲレーション装置5においては、グラッシュミキサーの高速回転による摩擦熱によってゲレーション装置5の内容物は120℃程度に昇温し、水分が蒸発すると共に、半ゲル化状態となり、減容化し、顆粒状となった。
しかしながら、サージング現象により、第一混練単軸押出機から第二多軸高混練押出機への供給量の変動が著しく、第二多軸高混練押出機7のダイ14からの吐出量の変動が生じ、ダイ14からのストランド径が変動し、水冷される前に細くなったストランドの切断が起こり、成形用材料ペレットの安定生産ができなかった。
本例は、実施例1及び2と異なり、溶融混練物中に、アルミニウム蒸着層由来のナノメートルレベルのアルミニウム粒子が存在しないため、第一混練押出機内で、ポリオレフィン系樹脂と、PET及びPAとの融点差を解消できず、だま状(溶融したポリオレフィン中に未溶融のPET、PAが存在)となりサージング現象が生じたものと思われる。
なお、得られたペレットの物性評価は実施しなかった。
【0037】
比較例2
実施例1において、溶融混練押出機として、第一混練単軸押出機に直列に配置した第二多軸高混練押出機を用いることなく、上記第一混練単軸押出機のみを用いた以外は、実施例1と同様な操作を行ったところ、下記に示すサージング現象が生じ、成形用材料ペレットの安定した生産が不可能であった。
第一混練単軸押出機のみを用いた場合、(1)異物除去のために用いたスクリーンメッシュ13は、この単軸押出機では混練不足のため、蒸着アルミニウムが微分散できず、目詰りの要因となり、2〜3回/8時間の割合でスクリーンメッシュの交換が必要であった。(2)スクリーンメッシュの交換作業中、押出機内に存在するPET樹脂が結晶化して融点が高くなり、再スタート時は、高温押出を余儀なくされ、サージング現象が生じてしまい、安定的・継続的運転が難しかった。
【0038】
応用例1
実施例1で得られた成形用材料ペレットを用い、以下に示す方法に従って物流資材(パレット)を作製した。
射出成形機 :三菱重工業(株)製、型締1600トン成形機
樹脂温度 :240℃
パレットサイズ、色:1100×1100×150mm、黒色
型式 :片面使用、四方差し
積載荷重 :1000kg用
パレット質量 :13.4kg
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の成形用材料ペレットの製造方法は、アルミニウム蒸着層を有する難リサイクル材の積層フィルムを用い、建築資材、物流資材(パレット)などの成形材料として有用な成形用材料ペレットを効率よく、安定的に製造することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 難リサイクル材として搬入されたロール巻きのフィルム又はシート
2 ギロチンカッター
3 10〜30cm角程度のさいの目状物(小立方体)
4 ベルトコンベア
5 ゲレーション装置
6 第一混練単軸押出機
7 第二多軸高混練押出機
8 ストランド
9 水槽
10 ストランドカッター
11 規格品ペレット収容器
12 ベント
13 スクリーンメッシュ
13' スクリーンメッシュ
14 ダイ
15 分篩機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難リサイクル材であるアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムに、アルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂フィルム又は熱可塑性樹脂の粉砕品を配合し、溶融混練押出機により溶融混練し、ペレットに成形する成形用材料ペレットの製造方法であって、
(1)前記アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムが、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム及びポリエステル系樹脂フィルムの中から選ばれる少なくとも2層からなり、かつ前記積層フィルムのいずれか1層がアルミニウム蒸着層を有すること、
(2)前記アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムの量をA質量部、これに配合するアルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂の量をB質量部とした場合、(A/B)×100が10%以上であること、及び
(3)溶融混練押出機として、第一混練単軸押出機と、それに直列に配置した第二多軸高混練押出機とを用いて溶融混練すること、
を特徴とするアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムを用いた成形用材料ペレットの製造方法。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂フィルムを構成する素材が、高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリプロピレン又はポリ4−メチルペンテン−1であり、ポリアミド系樹脂フィルムを構成する素材が、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン610、又はナイロン12であり、ポリエステル系樹脂フィルムを構成する素材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、又はポリエチレン2,6−ナフタレートである請求項1に記載の成形用材料ペレットの製造方法。
【請求項3】
アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムに配合するアルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂が、請求項2に記載のポリオレフィン系樹脂フィルムを構成する素材、ポリアミド系樹脂フィルムを構成する素材及びポリエステル系樹脂フィルムを構成する素材の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の成形用材料ペレットの製造方法。
【請求項4】
成形用材料ペレットが、建築資材、物流資材、農業・園芸資材及び雑貨の中から選ばれる少なくとも1種の成形材料として用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載の成形用材料ペレットの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−35272(P2013−35272A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−114175(P2012−114175)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(511166758)東和ケミカル株式会社 (1)
【Fターム(参考)】