説明

アレーアンテナの制御装置及びアレーアンテナ装置

アレーアンテナ装置(100)は、送信された無線信号を受信するための励振素子(A0)と、2つの非励振素子(A1,A2)と、各非励振素子(A1,A2)にそれぞれ接続された2つの可変リアクタンス素子(12−1,12−2)とを備えて構成され、それらに設定するリアクタンス値を変化させてその指向特性を変化させる。アンテナコントローラ(10)は受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られるように、2つの可変リアクタンス素子(12−1,12−2)に対して第1のリアクタンス値セットを設定する第1の場合と、それらに対して第2のリアクタンス値セットを設定する第2の場合のうち、各無線信号の各無線信号の信号品質に基づいて1つのリアクタンス値セットを選択して設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、アレーアンテナの制御装置及びアレーアンテナ装置に関し、特に、空間的ダイバーシティを実現する3素子以上の複数素子を有するアレーアンテナの制御装置及びアレーアンテナ装置に関する。
【背景技術】
無線通信のブロードバンド化に伴い、ノートパソコンやPCMCIAカードなどのユーザ端末装置に搭載するアンテナ装置も高機能及び高性能が求められるようになってきた。必要とされる機能として、例えば、到来する無線信号からマルチパスフェージングを除去することが挙げられる。マルチパスフェージングは、ひとつの信号源から送信された波動が複数の経路を伝搬し、受信点において信号が同振幅かつ逆位相でキャンセルされるときに、激しいレベル低下が発生する現象である。屋外無線基地局において受信する場合には、マルチパスの経路による到来波の角度広がりは比較的狭い。しかし、ユーザ端末装置がある室内環境においては、360度全方位に広がるマルチパス波の到来が生じる。
当該明細書において引用する、先行技術である特許文献及び非特許文献は以下の通りである。
(1)日本国特許出願公開2002−118414号公報(以下、特許文献1という。)。
(2)T.Ohira et al.,“Electronically steerable passive array radiator antennas for low−cost analog adaptive beamforming,”2000 IEEE International Conference on Phased Array System & Technology pp.101−104,Dana point,California,May 21−25,2000(以下、非特許文献1という。)。
(3)大平孝ほか,“エスパアンテナの等価ウェイトベクトルとその勾配に関する基本的定式化”,電子情報通信学会技術研究報告,電子情報通信学会発行,AP2001−16,SAT2001−3,p.15−20,2002年5月(以下、非特許文献2という。)。
(4)青山直樹ほか,“アンテナ素子間の相互結合を用いたCOFDMの簡易ダイバーシティ受信方式”,電子情報通信学会総合大会講演論文集,電子情報通信学会発行,B−5−224,p.695,2002年3月27日−30日(以下、非特許文献3という。)。
(5)大平孝ほか,“エスパアンテナの等価ウェイトベクトルとアレーファクタ表現式”,電子情報通信学会技術研究報告,AP2000−44,p.7−14,2002年7月(以下、非特許文献4という。)。
(6)M.Murase et al.,“Propagation and antenna measurements using antenna switching and random field measurements”,IEEE Transactions on Vehicular Technology,Vol.43,No.3,pp.537−541,August 1994(以下、非特許文献5という。)。
(7)新井宏之,“新アンテナ工学”,pp.151−155,総合電子出版社,1996年4月9日第1版発行(以下、非特許文献6という。)。
(8)A.J.Rustako et al.,“Performance of feedback and switch space diversity 900MHz FM mobile radio systems with Rayleigh fading”,IEEE Transactions on Communication,Vol.COM−21,pp.1257−1268,November 1973(以下、非特許文献7という。)。
(9)A.Afrashteh et al.,“Performance of a novel selection diversity technique in an experimental TDMA system for digital portable radio communications”,Conference Record Globecom ’88 Hollywood,pp.810−814,November 1988(以下、非特許文献8という。)。
(10)Y.Akaiwa,“Antenna selection diversity for framed digital signal transmission in mobile radio channel”,Proceeding of 39th IEEE Vehicle Technology Conference,pp.470−473,1989(以下、非特許文献9という。)。
(11)J.G.Proakis,“Digital communications”,3rd Edition,McGra w−Hill,New York,1995(以下、非特許文献10という。)。
(12)太郎丸真ほか,“エスパアンテナのリアクタンス空間から等価ウェイトベクトル空間への写像に関する考察”,電子情報通信学会研究技術報告,電子情報通信学会発行,RCS2002−179,pp.43−48,2002年10月(以下、非特許文献11という。)。
(13)大平孝ほか,“リアクタンスダイバーシティのための2素子エスパアンテナの基本理論”,電子情報通信学会研究技術報告,電子情報通信学会発行,AP2002−93,pp.13−18,2002年10月(以下、非特許文献12という。)。
ところで、携帯型端末装置やPCカード等に搭載されるには、当該アンテナ装置は、小型軽量であること、民生コンシューマ品として受け入れられるコストであること、かつ、バッテリ駆動に耐えうる低消費電力動作であること、などの制約が課せられる。以上の制約を満たすアンテナ装置として、例えば、特許文献1や非特許文献1,2,4において、電子制御導波器アレーアンテナ装置(Electronically Steerable Passive Array Radiator Antenna)が提案されている。
この電子制御導波器アレーアンテナ装置は、無線信号が給電される励振素子と、この励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられ、無線信号が給電されない6個の非励振素子と、この非励振素子にそれぞれ接続された可変リアクタンス素子とから成るアレーアンテナを備え、上記可変リアクタンス素子のリアクタンス値をそれぞれ変化させることにより、当該アレーアンテナの指向特性を変化させることができる。なお、例えば、アンテナ素子間隔が波長の1/10という狭間隔である2素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置であっても空間ダイバーシティ効果が得られるという数値シミュレーション例が報告されている(非特許文献3参照。)。
特許文献1及び非特許文献3に示されたアンテナ装置は、設定されるリアクタンス値を決定するために、リアクタンス値を微細に(ほぼ連続的に)変化させる適応制御処理を行っている。この適応制御処理では、複雑な処理アルゴリズムと、それを実行するためのコントローラとを必要とし、さらに、上記コントローラは、可変容量ダイオードに設定するリアクタンス値信号を発生するための制御電圧発生用DAコンバータを必要とするので、アンテナ装置の構成が複雑になり、装置の大きさとコストとが増大する。
非特許文献3に示されたアンテナ装置は、図51に示すように、所定の間隔dで並置されてなる2つのアンテナ素子A0,A1を備えて構成され、非励振素子であるアンテナ素子A1に例えば可変容量ダイオードである可変リアクタンス素子12が接続されている。このとき、可変リアクタンス素子12への制御電圧を変化することにより、図52に示すように、可変リアクタンス素子12のリアクタンス値X1を変化させることができるが、励振素子であるアンテナ素子A0の給電ポートにおける入力インピーダンスZinも変化するという問題点があった。すなわち、当該2素子のアンテナ装置では、装荷するリアクタンス値の変化に対してアンテナ装置の入力インピーダンスの変化が大きく、給電系まで含めた整合設計がきわめて難しいという問題点があった。
なお、2素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置において、リアクタンスを2状態に制御し、これらのうちの受信電力の高い方を選択する制御方法については、例えば非特許文献12において開示されているが、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置についてはその制御方法は複雑であり、確立されていなかった。
また、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置において、小型・軽量であって、薄型のアレーアンテナ装置が望まれていた。
本発明の第1の目的は以上の問題点を解決し、3素子以上の電子制御導波器アレーアンテナ装置において、従来技術に比較してハードウエア構成や制御がきわめて簡単であり、マルチパスフェージングが存在するときのアンテナ利得を大きく改善することができ、しかも可変リアクタンス素子の素子値の変化に伴ってアンテナの入力インピーダンスを実質的に変化させることがないアレーアンテナの制御装置を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置において、小型・軽量であって、薄型のアレーアンテナ装置を提供することにある。
【発明の開示】
第1の発明に係るアレーアンテナの制御装置は、送信された無線信号を受信するための励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数本の非励振素子と、上記各非励振素子にそれぞれ接続された複数個の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子に設定するリアクタンス値を変化させることにより、上記各非励振素子を導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御装置である。ここで、上記アレーアンテナの制御装置は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られるように、複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する複数の場合のうち、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質に基づいて、所定の選択基準に従って、上記複数組のリアクタンス値セットのうちの1つのセットを選択して上記複数個の可変リアクタンス素子に設定する制御手段を備えたことを特徴とする。
上記アレーアンテナの制御装置において、上記複数の場合は、好ましくは、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナの入力インピーダンスが実質的に変化しないように、複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する場合である。
また、上記アレーアンテナの制御装置において、上記各無線信号の信号品質は、好ましくは、信号強度と、信号電力と、信号対雑音比と、信号に対する干渉雑音を含む雑音の比と、搬送波信号対雑音比と、ビット誤り率と、フレーム誤り率と、パケット誤り率とのうちのいずれか1つを用いて評価される。
さらに、上記アレーアンテナの制御装置において、上記選択基準は、好ましくは、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が所定のしきい値以上であることである。もしくは、上記選択基準は、好ましくは、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が、信号電力と、信号対雑音比と、信号に対する干渉雑音を含む雑音の比と、搬送波信号対雑音比とのうちのいずれか1つの場合において、当該信号品質が最大値となるリアクタンス値セットを選択することである。とって代わって、上記選択基準は、好ましくは、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が、ビット誤り率と、フレーム誤り率と、パケット誤り率とのうちのいずれか1つの場合において、当該信号品質が最小値となるリアクタンス値セットを選択することである。
またさらに、上記アレーアンテナの制御装置において、上記制御手段は、好ましくは、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が所定のしきい値未満となったとき、上記複数組のリアクタンス値セットの中から任意に1つのリアクタンス値セットを選択し、当該選択したリアクタンス値セットにおいて上記信号品質が所定の選択基準に達するまで上記選択の処理を繰り返す。もしくは、上記制御手段は、好ましくは、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が所定のしきい値未満となったとき、上記複数組のリアクタンス値セットの中から所定の順序で1つのリアクタンス値セットを選択し、当該選択したリアクタンス値セットにおいて上記信号品質が所定の選択基準に達するまで上記選択の処理を繰り返す。とって代わって、上記制御手段は、好ましくは、上記しきい値を所定の範囲で変化させながら上記複数の場合を切り換え、上記各無線信号の信号品質が所定の選択基準を満足するときのしきい値を上記しきい値として設定する。
また、上記アレーアンテナの制御装置において、上記アレーアンテナは、好ましくは、偶数本の非励振素子と偶数個の可変リアクタンス素子とを備え、上記偶数本の非励振素子は、少なくとも1本の第1の組の非励振素子と、少なくとも1本の第2の組の非励振素子とからなり、上記偶数個の可変リアクタンス素子は、上記第1の組の各非励振素子にそれぞれ接続された第1の組の可変リアクタンス素子と、上記第2の組の各非励振素子にそれぞれ接続された第2の組の可変リアクタンス素子とからなる。ここで、上記複数の場合は、上記第1及び第2の組の可変リアクタンス素子に対して第1のリアクタンス値セットを設定する第1の場合と、上記第1及び第2の組の可変リアクタンス素子に対して第2のリアクタンス値セットを設定する第2の場合とを含む。また、上記制御手段は、上記第1と第2の場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号品質に基づいて、リアクタンス値セットを選択して上記第1及び第2の組の可変リアクタンス素子に設定する。
ここで、上記アレーアンテナは、好ましくは、第1と第2の非励振素子を備え、上記第1のリアクタンス値セットは上記第1と第2の非励振素子に対して設定されるリアクタンス値Xa,Xbからなり、上記第2のリアクタンス値セットは上記第1と第2の非励振素子に対して設定されるリアクタンス値Xb,Xaからなる。
さらに、上記アレーアンテナの制御装置において、上記アレーアンテナは、好ましくは、上記励振素子から所定の間隔だけ離れてかつ互いに実質的に同一の角度間隔で設けられた複数本の非励振素子を備え、上記複数の場合は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られるように、各リアクタンス値を循環して得られた複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する場合を含む。
また、上記アレーアンテナの制御装置において、上記アレーアンテナは、好ましくは、上記励振素子から所定の間隔だけ離れてかつ互いに実質的に同一の角度間隔で設けられた複数本の非励振素子を備え、上記複数の場合は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナの入力インピーダンスが実質的に変化しないように、各リアクタンス値を循環して得られた複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する場合を含む。
さらに、上記アレーアンテナの制御装置において、上記アレーアンテナは、好ましくは、上記励振素子の位置を通過する対称線を対称軸として線対称で設けられた少なくとも1対の非励振素子を含み、上記対称線上に位置し又は対称線を対称軸として線対称で設けられた複数本の非励振素子を備え、上記複数の場合は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られるように、上記線対称で設けられた少なくとも1対の非励振素子のリアクタンス値を入れ替えて得られた複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する少なくとも2つの場合を含む。
またさらに、上記アレーアンテナの制御装置において、上記アレーアンテナは、好ましくは、上記励振素子の位置を通過する対称線を対称軸として線対称で設けられた少なくとも1対の非励振素子を含み、上記対称線上に位置し又は対称線を対称軸として線対称で設けられた複数本の非励振素子を備え、上記複数の場合は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナの入力インピーダンスが実質的に変化しないように、上記線対称で設けられた少なくとも1対の非励振素子のリアクタンス値を入れ替えて得られた複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する少なくとも2つの場合を含む。
また、上記アレーアンテナの制御装置において、好ましくは、受信される無線信号の信号電力が所定の信号電力を超える事象の累積確率であるCDF値が所定値であるときに、ダイバーシティ利得が実質的に最大となるように上記複数組のリアクタンス値セットが設定される。とって代わって、好ましくは、受信される無線信号の信号電力が所定の信号電力を超える事象の累積確率であるCDF値が所定値であるときに、ダイバーシティ利得が所定値以上となるように上記複数組のリアクタンス値セットが設定される。
さらに、上記アレーアンテナの制御装置において、上記アレーアンテナは、好ましくは、1本の励振素子と、上記励振素子を挟設しかつ上記励振素子とともに一直線上に設けられた2本の非励振素子とを備える。ここで、好ましくは、上記励振素子と上記各非励振素子との間の距離を、受信される無線信号の波長の0.1倍から0.35倍までの間の長さのうちの1つの長さに設定する。さらに、上記アレーアンテナは、好ましくは、互いに平行な第1の面と第2の面とを有する誘電体基板と、上記誘電体基板の第2の面のうちの所定の第1の領域上に形成された接地導体と、上記誘電体基板の第1の面上であって、上記第1の領域に対向する領域から突出するように所定の長さを有しかつ互いに所定の間隔を有するように形成され、それぞれ上記励振素子と上記2本の非励振素子として動作する3本のストリップ導体とを備える。
第2の発明に係るアレーアンテナ装置は、1本の励振素子と、上記励振素子を挟設しかつ上記励振素子とともに一直線上に設けられた2本の非励振素子と、上記各非励振素子にそれぞれ接続された2個の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子に設定するリアクタンス値を変化させることにより、上記各非励振素子を導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナ装置である。ここで、上記アレーアンテナ装置は、互いに平行な第1の面と第2の面とを有する誘電体基板と、上記誘電体基板の第2の面のうちの所定の第1の領域上に形成された接地導体と、上記誘電体基板の第1の面上であって、上記第1の領域に対向する領域から突出するように所定の長さを有しかつ互いに所定の間隔を有するように形成され、それぞれ上記励振素子と上記2本の非励振素子として動作する3本のストリップ導体とを備える。さらに、好ましくは、上記励振素子と上記各非励振素子との間の距離を、受信される無線信号の波長の0.1倍から0.35倍までの間の長さのうちの1つの長さに設定される。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の好ましい実施形態に係るアレーアンテナの制御装置の構成を示すブロック図である。
図2は、図1のアレーアンテナ装置100の詳細構成を示す斜視図である。
図3は、図2のA−A’線における縦断面図である。
図4は、好ましい実施形態に係るアレーアンテナ装置における可変リアクタンス素子12−1,12−2への制御電圧に対するリアクタンス値と入力インピーダンス値を示すグラフである。
図5は、本発明に係る第2の好ましい実施形態であるアレーアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図6は、図5の誘電体基板20の下部の詳細構成を示す斜視図である。
図7は、本発明に係る第1の実装例である、携帯型パーソナルコンピュータ200に搭載された図4のアレーアンテナ装置を示す斜視図である。
図8は、本発明に係る第2の実装例である、PCカード211に搭載された図1のアレーアンテナ装置を示す斜視図である。
図9は、本発明に係る第3の好ましい実施形態であるアレーアンテナ装置の構成を示す平面図である。
図10は、図9のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、波長λで正規化されたアンテナ素子間隔d/λに対する励振素子の自己アドミタンスの実数部Re(y00)を示すグラフである。
図11は、図9のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、波長λで正規化されたアンテナ素子間隔d/λに対する励振素子の自己アドミタンスの虚数部Im(y00)を示すグラフである。
図12は、図9のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、波長λで正規化されたアンテナ素子間隔d/λに対する非励振素子の自己アドミタンスの実数部Re(y11)を示すグラフである。
図13は、図9のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、波長λで正規化されたアンテナ素子間隔d/λに対する非励振素子の自己アドミタンスの虚数部Im(y11)を示すグラフである。
図14は、図9のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、波長λで正規化されたアンテナ素子間隔d/λに対する、励振素子と非励振素子との間の結合アドミタンスの実数部Re(y01)を示すグラフである。
図15は、図9のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、波長λで正規化されたアンテナ素子間隔d/λに対する、励振素子と非励振素子との間の結合アドミタンスの虚数部Im(y01)を示すグラフである。
図16は、図9のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、波長λで正規化されたアンテナ素子間隔d/λに対する、2つの非励振素子間の結合アドミタンスの実数部Re(y12)を示すグラフである。
図17は、図9のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、波長λで正規化されたアンテナ素子間隔d/λに対する、2つの非励振素子間の結合アドミタンスの虚数部Im(y12)を示すグラフである。
図18は、本発明に係る第4の好ましい実施形態であるアレーアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
図19は、図18のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、可変リアクタンス素子12−2のリアクタンス値の半値x1に対する、アレーアンテナ装置の入力インピーダンスZinの実数部Re(Zin)を示すグラフである。
図20は、図18のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、可変リアクタンス素子12−2のリアクタンス値の半値x1に対する、アレーアンテナ装置の入力インピーダンスZinの虚数部Im(Zin)を示すグラフである。
図21は、図18のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、振幅指向特性を示すグラフである。
図22は、図18のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、位相指向特性を示すグラフである。
図23は、実施例に係る2波到来環境モデルを示す平面図である。
図24は、図18のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、フェージング劣化の累積確率分布を示すグラフである。
図25は、図18のアレーアンテナ装置に係るシミュレーション結果であって、波長λで正規化されたアンテナ素子間隔d/λに対する、ダイバーシティ利得を示すグラフである。
図26は、本発明に係る第1の変形例であるアレーアンテナ装置の平面図である。
図27は、本発明に係る第2の変形例であるアレーアンテナ装置の平面図である。
図28は、本発明に係る第3の変形例であるアレーアンテナ装置の平面図である。
図29は、本発明に係る第4の変形例であるアレーアンテナ装置の平面図である。
図30は、本発明に係る第5の変形例であるアレーアンテナ装置の平面図である。
図31は、本発明に係る第6の変形例であるアレーアンテナ装置の平面図である。
図32は、本発明に係る第7の変形例であるアレーアンテナ装置の平面図である。
図33は、本発明に係る第3の実装例である、携帯電話機204に搭載されたアレーアンテナ装置212を示す斜視図である。
図34は、本発明に係る第4の実装例である、LANPCカード205に搭載されたアレーアンテナ装置210を示す斜視図である。
図35は、本発明に係る第5の好ましい実施形態であるアレーアンテナ装置100Aを示す平面図である。
図36は、図35のアレーアンテナ装置100Aの実験結果であって、VSWRの周波数特性を示すグラフである。
図37は、図35のアレーアンテナ装置100A及び2素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置の実験結果であって、入力インピーダンスを示すスミスチャートである。
図38は、図35のアレーアンテナ装置100Aの実験を行う受信機側の測定システムを示す斜視図である。
図39は、図35のアレーアンテナ装置100Aの実験環境のレイアウトを示す平面図である。
図40は、図35のアレーアンテナ装置100Aの実験結果であって、ダイバーシティ利得を示す、規格化した受信電力に対するCDF値のグラフである。
図41は、本発明に係る第6の好ましい実施形態であるアレーアンテナ装置100Bを示す平面図である。
図42は、図41のアレーアンテナ装置100Bの計算機シミュレーションにおいて用いる伝搬モデルを示す斜視図である。
図43は、図41のアレーアンテナ装置100Bの計算機シミュレーション結果であって、無限地板の基板を用いかつリアクタンス値x=0のときにリアクタンス値xを変化したときの等価ウェイトw,w,wの複素平面を示すグラフである。
図44は、図41のアレーアンテナ装置100Bの計算機シミュレーション結果であって、無限地板の基板を用いかつリアクタンス値x=−30[Ω]のときにリアクタンス値xを変化したときの等価ウェイトw,w,wの複素平面を示すグラフである。
図45は、図41のアレーアンテナ装置100Bの計算機シミュレーション結果であって、無限地板の基板を用いかつリアクタンス値x=−30[Ω]のときにリアクタンス値xを変化したときの等価ウェイトw,w,wの複素平面を示すグラフである。
図46は、図41のアレーアンテナ装置100Bの計算機シミュレーション結果であって、プリント基板を用いかつリアクタンス値x=0のときにリアクタンス値xを変化したときの等価ウェイトw,w,wの複素平面を示すグラフである。
図47は、図41のアレーアンテナ装置100Bの計算機シミュレーション結果であって、プリント基板を用いかつリアクタンス値x=−30[Ω]のときにリアクタンス値xを変化したときの等価ウェイトw,w,wの複素平面を示すグラフである。
図48は、図41のアレーアンテナ装置100Bの計算機シミュレーション結果であって、プリント基板を用いかつリアクタンス値x=−60[Ω]のときにリアクタンス値xを変化したときの等価ウェイトw,w,wの複素平面を示すグラフである。
図49は、図41のアレーアンテナ装置100Bなどの計算機シミュレーション結果であって、平均信号対雑音電力比(平均E/N)に対するリアクタンスダイバーシティ受信時のビット誤り率(BER)を示すグラフである。
図50は、本発明の変形例に係る可変リアクタンス素子12−1,12−2に印加される制御電圧に対する入力インピーダンスZin及びリアクタンス値X1,X2の特性において設定可能な3つの状態P1,P2,P3を示すグラフである。
図51は、従来技術に係る2素子のアレーアンテナ装置の構成を示すブロック図である。
図52は、図51のアレーアンテナ装置における可変リアクタンス素子12−1への制御電圧に対するリアクタンス値X1及び入力インピーダンスZinを示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
第1の好ましい実施形態
図1は、本発明の第1の好ましい実施形態に係るアレーアンテナの制御装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、アレーアンテナの制御装置は、1つの励振素子A0と、可変リアクタンス素子12−1が装荷された第1の非励振素子A1と、可変リアクタンス素子12−2が装荷された第2の非励振素子A2とを備えてなる3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置で構成されたアレーアンテナ装置100と、アンテナコントローラ10とを備える。ここで、アンテナコントローラ10は、アレーアンテナ装置100で受信された無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナ装置100の入力インピーダンスZinが実質的に変化しないように、2つの可変リアクタンス素子12−1,12−2に対して第1のリアクタンス値セット(Xa,Xb)を設定する第1の場合(ここで、可変リアクタンス素子12−1に対してリアクタンス値Xaが設定され、可変リアクタンス素子12−2に対してリアクタンス値Xbが設定される。)と、2つの可変リアクタンス素子12−1,12−2に対して第2のリアクタンス値セット(Xb,Xa)を設定する第2の場合(ここで、可変リアクタンス素子12−1に対してリアクタンス値Xbが設定され、可変リアクタンス素子12−2に対してリアクタンス値Xaが設定される。)とのうち、上記第1と第2の場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して2つの可変リアクタンス素子12−1,12−2に設定することを特徴としている。
図2は、図1のアレーアンテナ装置100の詳細構成を示す斜視図である。図1及び図2に示すように、アレーアンテナ装置100は、接地導体11上に垂直に設けられた励振素子A0及び2本の非励振素子A1,A2から構成され、励振素子A0と非励振素子A1とは、互いに平行に、かつ距離dで離間して配置され、励振素子A0と非励振素子A2とは、互いに平行に、かつ距離dで離間して配置され、これら3本のアンテナ素子A2,A0,A1が一直線上に並置されている。励振素子A0及び非励振素子A1,A2の各長さは、所望波の波長λの約1/4になるように構成され、また、上記アンテナ間隔dは、例えば、波長λの0.1倍乃至0.35倍になるように構成される。励振素子A0の給電点は同軸ケーブル1を介して低雑音増幅器(LNA)2に接続される。また、非励振素子A1は可変リアクタンス素子12−1に接続され、非励振素子A2は可変リアクタンス素子12−2に接続され、可変リアクタンス素子12−1,12−2の各リアクタンス値はそれぞれ、アンテナコントローラ10からのペアケーブル5−1,5−2を介して伝送されるリアクタンス値信号によって設定される。
図3は、図2のA−A’線におけるアレーアンテナ装置100の縦断面図である。図3に示すように、励振素子A0は接地導体11と電気的に絶縁され、かつ同軸ケーブル1の中心導体1aに接続される。非励振素子A1は、可変リアクタンス素子12−1を介して、接地導体11に対して高周波的に接地され、また、非励振素子A2は、可変リアクタンス素子12−2を介して、接地導体11に対して高周波的に接地される。各可変リアクタンス素子12−1,12−2の動作を説明すると、例えば励振素子A0と非励振素子A1,A2の長手方向の長さが実質的に同一であるとき、例えば、可変リアクタンス素子12−1がインダクタンス性(L性)を有するときは、可変リアクタンス素子12−1は延長コイルとなり、非励振素子A1の電気長が励振素子A0に比較して長くなり、反射器として働く。一方、例えば、可変リアクタンス素子12−1がキャパシタンス性(C性)を有するときは、可変リアクタンス素子12−1は短縮コンデンサとなり、非励振素子A1の電気長が励振素子A0に比較して短くなり、導波器として働く。また、可変リアクタンス素子12−2が接続された非励振素子A2も同様に動作する。ここで、可変リアクタンス素子12−1,12−2として、例えば可変容量ダイオードを用いることができる。
従って、図1のアレーアンテナ装置100において、各非励振素子A1,A2に接続された可変リアクタンス素子12−1,12−2の各リアクタンス値を変化させることにより、アレーアンテナ装置100の平面指向特性を変化させることができる。
図1のアレーアンテナの制御装置において、アレーアンテナ装置100は無線信号を受信し、上記受信された無線信号は同軸ケーブル1を介して低雑音増幅器(LNA)2に入力されて増幅され、次いで、ダウンコンバータ(D/C)3は増幅された無線信号を所定の中間周波数の信号(IF信号)に低域変換する。さらに、A/D変換器4は、アナログ信号であるIF信号をディジタル信号に変換して受信信号yとして出力する。受信信号yは、アンテナコントローラ10に入力されるとともに、復調器(図示せず。)に入力されて復調された信号に変換される。アンテナコントローラ10は、アレーアンテナ装置100で受信された無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナ装置100の入力インピーダンスZinが実質的に変化しないように、2つの可変リアクタンス素子12−1,12−2に対して第1のリアクタンス値セット(Xa,Xb)を設定する第1の場合と、2つの可変リアクタンス素子12−1,12−2に対して第2のリアクタンス値セット(Xb,Xa)を設定する第2の場合とのうち、上記第1と第2の場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して2つの可変リアクタンス素子12−1,12−2に設定する。
ここで、第1と第2のリアクタンス値セット(Xa,Xb),(Xb,Xa)は、図4に示すように設定される。すなわち、アレーアンテナ装置100の入力インピーダンスZinが実質的に変化しない2つの状態P1,P2(このときの入力インピーダンスZin=Zinopt)を予め測定し、これら2つの状態P1,P2にそれぞれ対応する第1と第2のリアクタンス値セット(Xa,Xb),(Xb,Xa)を予め測定してアンテナコントローラ10内のリアクタンス値セットメモリ(図示せず。)に格納しておく。そして、アンテナコントローラ10は、2つの状態P1,P2のうち、各状態P1,P2の場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して2つの可変リアクタンス素子12−1,12−2に設定する。
この好ましい実施形態のアレーアンテナの制御装置によれば、そのハードウエア構成が簡易であって、かつ、マルチパスフェージングが存在するときのアンテナ利得を単純な1ビットバイナリ制御(すなわち、第1及び第2のリアクタンス値セット(Xa,Xb),(Xb,Xa)のいずれかを選択する制御)で大きく改善する効果が得られるので、ラップトップ端末装置やPCカードなどの民生コンシューマ端末装置に搭載できるダイバーシティアンテナとして用いることができる。この制御方法(1ビット制御)は、可変容量ダイオードを連続的に制御する方式において必要な制御電圧発生用DAコンバータが不要となるので、アンテナ装置のさらなる小型化と低コスト化が図れる。また、上記の1ビットバイナリ制御により、アレーアンテナ装置100の入力インピーダンスZinを実質的にほとんど変化させないようにできる。
なお、以上の好ましい実施形態においては、第1と第2のリアクタンス値セット(Xa,Xb),(Xb,Xa)を用いているが、本発明はこれに限らず、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつアレーアンテナ装置100の入力インピーダンスが実質的に変化しないように設定することができる、2組のリアクタンス値セット(Xa,Xb),(Xc,Xd)(ここで、Xa≠Xd,Xb≠Xc)を用いてもよい。
第2の好ましい実施形態
図5は、本発明に係る第2の好ましい実施形態であるアレーアンテナ装置の構成を示す斜視図である。この第2の好ましい実施形態では、図1の励振素子A0及び非励振素子A1,A2が、誘電体基板20の一方の面上にプリントされたストリップ導体として形成されたことを特徴としている。励振素子A0及び非励振素子A1,A2が形成された誘電体基板20は、例えば厚さ約1mmのガラスエポキシ樹脂、テフロン(登録商標)又はアルミナセラミックなどから構成されたプリント配線基板であって、励振素子A0及び非励振素子A1,A2は公知のプリント配線基板のプロセス技術により形成されている。また、誘電体基板20は接地導体11上に垂直に設けられる。
ここで、励振素子A0は、所定の長さhを有したストリップ導体のアンテナ素子として誘電体基板20上に形成され、各非励振素子A1,A2は、長さhを有し、かつ励振素子A0に対して距離d1を有して平行なストリップ導体のアンテナ素子として誘電体基板20上に形成されている。ここで、長さhは、送受信される無線信号の波長の約1/4の長さに設定される。
図6は、図5の誘電体基板20の下部の詳細構成を示す斜視図である。誘電体基板20において、励振素子A0と非励振素子A1が形成された面とは反対側の面に、互いに離間して4つの電極21乃至24が形成されている。励振素子A0の下端(接地導体11に近い方の端部)は、誘電体基板20を貫通したスルーホール導体25を介して電極21と電気的に接続される。電極22は接地導体11と電気的に接続される。さらに、電極21は、LNA2に接続された同軸ケーブル1の中心導体1aに接続され、電極22は同軸ケーブル1の外部導体1bに接続される。非励振素子A1の下端は、誘電体基板20を貫通したスルーホール導体26を介して電極24に接続され、この電極24は、可変容量ダイオードD1のカソードに接続される。可変容量ダイオードD1は、可変リアクタンス素子12の一例である。可変容量ダイオードD1のアノードは電極23に接続され、電極23はまた接地導体11と電気的に接続される。さらに、電極23及び24はそれぞれ、例えば数kΩ乃至数十kΩの高周波電流阻止用抵抗41,42及びペアケーブル5−1を介して当該アレーアンテナ装置の指向特性を制御するアンテナコントローラ10の印加バイアス電圧端子(図示せず。)に接続されている。
以上のように構成されたアレーアンテナ装置においては、アンテナコントローラ10からのリアクタンス値信号に含まれる印加バイアス電圧が、ペアケーブル5−1を介して可変容量ダイオードD1の両端に印加され、このとき、印加バイアス電圧を変化することにより可変容量ダイオードD1の接合容量値、すなわちリアクタンス値を変化させることができる。アンテナコントローラ10は可変電圧直流電源の機能を有し、非励振素子A1に接続された可変容量ダイオードD1に印加する逆バイアス電圧を変化させることにより、可変容量ダイオードD1の接合容量を変化させ、これにより、非励振素子A1の電気長を、励振素子A0に比較して変化させ、また、同様に非励振素子A2の電気長を励振素子A0に比較して変化させることにより、当該アレーアンテナ装置の平面指向特性を変化させることができる。
以上のように構成された第2の好ましい実施形態に係るアレーアンテナ装置によれば、制御が簡単であってその制御により入力インピーダンスが実質的に変化しないことに加えて、励振素子A0と非励振素子A1,A2が形成された誘電体基板20を接地導体11上に設けたので、従来のダイバーシティアンテナに比較して構造が簡単であって、励振素子A0や非励振素子A1,A2を容易にかつ高精度で形成することができるアレーアンテナ装置を提供することができる。また、誘電体基板20上にストリップ導体にてなる励振素子A0と非励振素子A1,A2を形成しているので、プリント配線基板の形成技術で容易にアンテナ素子を形成することができ、製造工程がきわめて簡単になるという特有の利点を有する。
第1の実装例
図7は、本発明に係る第1の実装例である、携帯型パーソナルコンピュータ200に搭載されたアレーアンテナ装置を示す斜視図である。この実装例では、携帯型パーソナルコンピュータ200は、上部筐体201と下部筐体202とからなる折りたたみ型の筐体を有し、好ましい実施形態のアレーアンテナ装置210は、上部筐体201上に固定されるか、又は上部筐体201上に向きが可動であるように装着されることが可能である。アレーアンテナ装置210は、図5と同様に、誘電体基板上にプリントされて形成された1/4波長モノポール型のアレーアンテナ装置として図示されている。アレーアンテナ装置210において接地導体は図示されていないが、接地導体は上部筐体201に装着されていてもよく、又は上部筐体201が金属製の場合は上部筐体201が接地導体として利用されてもよい。なお、図7に示された実装例の制御装置として、上述のアンテナコントローラ10を用いることができる。
第2の実装例
図8は、本発明に係る第2の実装例である、PCカード211に搭載されたアレーアンテナ装置を示す斜視図である。この実装例では、接地導体として動作するPCカード211の本体上に設けられた、図1と同様の、1/4波長モノポール型のアレーアンテナ装置を図示している。PCカード211は、図7と同様の携帯型パーソナルコンピュータ200の下部筐体202に設けられたPCカードスロット203に挿入されて、PC200のアンテナとして動作することが可能である。なお、図8に示された実装例の制御装置として、上述のアンテナコントローラ10を用いることができる。
第3及び第4の好ましい実施形態
図9は、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置の解析モデルとして用いる、第3の好ましい実施形態に係るアレーアンテナ装置の平面図である。
図9において、図9の上下方向の高さλg/2(ここで、λgは受信する所望波の管内波長である。)の矩形接地導体11aが裏面に形成されてなる誘電体基板20のおもて面上に、3本のマイクロストリップ導体を互いに間隔dで離間して互いに平行に形成してマイクロストリップ線路を形成し、その先端をλ/4(ここで、λは受信する所望波の自由空間波長である。)だけ接地導体11aが形成されていない面上まで延在させることにより非励振素子A2、励振素子A0及び非励振素子A1を形成した。ここで、マイクロストリップ線路の接地部分である接地導体11aが、モノポールアンテナにおいての地板として機能する。なお、マイクロストリップ線路の給電部に完全導体の接地導体11aを置いたのは、解析に用いたシミュレータの仕様によるものである。
誘電体基板20の材料常数には、BTレジン/熱硬化PPO等の高周波用プリント基板を想定し、比誘電率ε=3.4、誘電体損失tanδ=0.003と設定した。また、誘電体基盤20の厚さを0.6mmとしている。さらに、アンテナ素子A0,A1,A2の導体部及び接地導体11aの材料にはAuを想定し、その導電率には実測値に近い、σ=3.3×10[S/m]を設定した。マイクロストリップ線路の幅は、マイクロストリップ導体の特性インピーダンスが50[Ω]となる、1.42[mm]に設定した。その他のパラメータは図9に示した通りである。なお、図中のλgは基板誘電率から求められる実効波長を示す。
次いで、図9の解析モデルを用いたときの電磁界解析結果(アドミタンス行列表示)について以下に説明する。
電子制御導波器アレーアンテナ装置においてリアクタンス値を変更した場合のアレー指向性は、後述する等価ウェイトベクトル法で導きだすことができる。等価ウェイトベクトルは、アンテナを回路的に取り扱い、そのアドミタンス行列より導出される。電磁界シミュレータから導出されたアドミタンス行列から、素子間隔に対するアドミタンス値の変化を示す表現式を導出することで、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置の基本構造式を得ることができる。
そこで、素子間隔をパラメータとして、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置のアドミタンス行列の表現式を導出する。素子間隔は波長で規格化した値で表している。計算は素子間隔d=0.1λ〜0.35λの範囲で行った。3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置を3端子回路網として見て、そのアドミタンス行列を求める。3端子回路網のY行列は、次式で表される。

ここで、相反定理、並びにアンテナ構造の対称性により、上記式(1)中のYパラメータには、次式の等号関係が成り立っている。
11=y22 (2)
01=y02=y10=y20 (3)
12=y21 (4)
これらのパラメータは、その物理的意味からそれぞれ、以下のように呼び表すこととする。
(1)y00:励振素子の自己アドミタンス。
(2)y11:非励振素子の自己アドミタンス。
(3)y01:励振素子と非励振素子との間の結合アドミタンス。
(4)y12:2つの非励振素子の間の結合アドミタンス。
図10乃至図17に、y00〜y12の各アドミタンス値を、上述の解析モデルの条件下で電磁界シミュレーションを行い、多項式フィッティング(近似)した結果を示す。またそれぞれの表現式を次式に示す。表現式は、素子間隔d=0.1λ〜0.35λの範囲内で有効である。


次いで、上記で求めたアドミタンス行列Yから、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンス2zin(なお、受信時は、出力インピーダンスとなる。)を導く。なお、定式化では、図18に示す第4の好ましい実施形態に係る等価ダイポールモデル(素子長=1/2λ)で行った。このため、係数は全て2倍となっている。図18において、励振素子A0は、2本のアンテナ素子A0a,A0bを備えて構成され、この2本のアンテナ素子A0a,A0bの給電ポートには、無線送信機13の、出力インピーダンスzを有する電圧2vの発振源13が接続される。また、非励振素子A1は、2本のアンテナ素子A1a,A1bを備えて構成され、そのアンテナポートには、リアクタンス値j2xの可変リアクタンス素子12−1が接続される。さらに、非励振素子A2は、2本のアンテナ素子A2a,A2bを備えて構成され、そのアンテナポートには、リアクタンス値j2xの可変リアクタンス素子12−2が接続される。
以上のように構成された3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスZin=2zinは次式で表される。

上記式(13)中のインピーダンスz00〜z12は、循環性とアンテナ構造の対称性により、次式を用いて計算される。

ここで、detYは、アドミタンス行列Yの行列式の値である。そして、入力インピーダンスZinの変化の度合いを確認するため、2本の非励振素子A1,A2のうちの1本(図18の非励振素子A1)のリアクタンス値X1=2xを0、50、100[Ω]にそれぞれ固定して、非励振素子A2のリアクタンス値の半値xの値を−100〜100[Ω]の範囲内で変化させた。算出される入力インピーダンスZin=2zinの値を、実数成分と虚数成分に分けて、図19及び図20に示した。
本発明者らのシミュレーションによれば、2素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置の場合、入力インピーダンスの変化は素子間隔に依存して40〜100[Ω]程度変化していたのに対して、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置では、図19及び図20に示すように、10[Ω]以下に押さえられている。3素子の構成は、基本的にリアクタンス値の変化に対して、入力インピーダンスの変化幅が小さい。また、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置では、リアクタンス値x1とx2には、同じ値の組み合わせを交互に切り替えて割り当てるため、指向性パターンを切り替えた後の入力インピーダンスの値は一致する。3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置は2素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置に対して、整合設計が行いやすいことが確認できた。
次いで、等価ウェイトベクトル法(アレーファクタ)について以下に説明する。一般に、アレーアンテナの指向性は素子単体の指向性とアレー応答ベクトル(アレーファクタ)の積で表される。3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置のアレーファクタを求めるために、ここでは等価ウェイトベクトル法を用いる(例えば、非特許文献2及び4参照。)。
これは、アレーファクタをステアリングベクトルとウェイトベクトルの内積で表し、そのウェイトベクトルはこのアンテナを送信モードで励振した際の電流ベクトルと等価であるとする方法である。アレーファクタD(φ)を以下のように定義する。ここで、w(w0、w1、w2)は各アンテナ素子A0,A1,A2の等価ウェイトであり、z[Ω]とv[V]は送信給電系の出力インピーダンスと内部電圧であり、x1、x2[Ω]はそれぞれ非励振素子A1,A2にそれぞれ接続された可変リアクタンス素子12−1,12−2のリアクタンス値である。なお、定式化は、図18の等価ダイポールモデルで行うため、全て2倍の係数がつく。
D(φ)=a(φ)・w (18)
ここで、上記式(18)中のa(φ)、wは、それぞれ次式で表される。

w=2z(Y−1+X)−1 (20)
ここで、上記式(20)中のX、uは、それぞれ以下の通りである。
X=diag(2z,j2x,j2x) (21)
=[1 0 0] (22)
上記式(18)で計算できるアレーファクタD(φ)には、給電系とアンテナのインピーダンス不整合による損失も考慮されている。装荷する可変リアクタンス素子12−1,12−2のリアクタンス値2x,2xをパラメータとし、アレーファクタD(φ)を方位角φの関数としてプロットすると、振幅及び位相指向性を得る。方位角は励振素子A0から非励振素子A1を見た方向を0度とした。
図21に、素子間隔d=0.15λの時の振幅指向性を示し、図22にそのときの位相指向性を示す。指向性には対称性があるため、0〜180[度]の範囲内で図示した。
さらに、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置のリアクタンスダイバーシティ効果の確認結果について以下に説明する。
上述したように、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置においても、リアクタンス制御を行うことによってその振幅位相の方位角依存性を変化させることができる。これを適応的に用いることで、フェージングによるレベル低下が生じる条件、すなわち同振幅逆位相状態を回避できる。このことを定量的に確認するため、以下のシミュレーションを行った。
当該シミュレーションは、2素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置の場合と同様、等振幅2波モデルを用いて行った。図23にそのモデル図を示す。干渉性のある2波s,sが等振幅かつランダム位相差で到来する環境に3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置を置いた場合に受信される信号をyとする。yはアレーファクタD(φ)を用いて、次式で表される。なお、2波の到来方位角φとφは360[度]の範囲内で無相関かつランダムであるとする。
y=D(Φ)s+D(Φ)s
=D(Φ)aexp(−jΦ)+D(Φ)aexp(−jΦ
(23)
ここで、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置のリアクタンス値x,xを2状態に制御して、受信電力(y・y)が高くなる方を選択するというアルゴリズムでフェージングを回避するものとする。x、xは、同じ値の組み合わせを交互に切り替えて用いるものとする。
図24に、給電系インピーダンスz=50[Ω](ダイポールモデル換算で100[Ω])、素子間隔d=0.15λとした場合の、フェージング劣化の累積確率分布(CDF曲線)を示す。リアクタンス値は0[Ω]と50[Ω]の2状態に交互に切り替えて制御する。図24のグラフの縦軸は、到来波1波あたりの信号電力aを基準とした、ダイバーシティ受信信号電力が横軸のdB表示値を超える事象の累積確率(CDF値)である。比較のため、等振幅の2つの到来波が存在するモデルにおける無指向性の単一アンテナ装置のフェージングCDFの理論値(次式参照。)を図24に点線で示す。

ここで、prob(yy≧P)は受信信号電力yyがP以上となる確率である。特に、深いフェージングが発生している領域、すなわち
prob(yy≧P) ≪1/π (25)
の領域では、次式が漸近線となる。
P=pπ (26)
図24から明らかなように、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置は、単一アンテナに比べて、CDF90%値で5dBのダイバーシティ利得301が得られ、CDF99%値で約10dBのダイバーシティ利得302が得られることがわかる。また、20dBのフェージング劣化が発生する確率も約0.5%に低減し、30dBでは約0.07%と、単一アンテナに対して大きく低減している。
図24において、受信される無線信号の信号電力が所定の信号電力を超える事象の累積確率であるCDF値が例えば90%又は99%などの所定値であるときに、ダイバーシティ利得が所定値以上となりかつ入力インピーダンスZinが実質的に変化しないような第1及び第2のリアクタンス値セットを選択して設定することがより好ましい。さらに、受信される無線信号の信号電力が所定の信号電力を超える事象の累積確率であるCDF値が例えば90%又は99%などの所定値であるときに、ダイバーシティ利得が実質的に最大となるように第1及び第2のリアクタンス値セットを選択して設定することが最も好ましい。
次に、素子間隔とダイバーシティ利得の関係を図25に示す。CDF90%値、並びにCDF99%値ともに、素子間隔0.1λ〜0.35λの範囲内では素子間隔と得られるダイバーシティ利得との間に大きな依存性がない。このことは、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置の実装設計において、公差を厳しく設定する必要がないことを意味する。すなわち、素子間隔を0.1λ〜0.35λの範囲内で設定することが好ましい。
以上説明したように、この好ましい実施形態に係る3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置により、リアクタンス値切り替えによるアンテナ入力インピーダンスの変化を押さえられることが確認できた。リアクタンスを2状態に制御するアルゴリズムで、等振幅2波モデルにおけるダイバーシティ利得を算出した。単一アンテナに対して、累積確率分布90%値で約5dB、99%値で約10dBのダイバーシティ利得が得られることがわかった。素子間隔0.1λ〜0.35λの範囲内において得られるダイバーシティ利得に大きな差はないため、実装の公差を厳しくする必要がなく、コスト面の点でも有利であることがわかった。
すなわち、アンテナ素子間隔には強く依存しないので、アンテナ装置を実装するときに機械的公差を厳密に正確にする必要がなく、折りたたみ展開式構造や柔軟弾性素材によるアンテナ装置の実装にも有効である。このアレーアンテナの制御装置はハードウエア構成が簡易で、かつ、単純な1ビットバイナリ制御で大きなフェージング改善効果が得られるので、ラップトップ端末装置やPCカードなどの民生コンシューマ端末装置に搭載できるダイバーシティアンテナとして用いることができる。
さらに、電子制御導波器アレーアンテナ装置の可変リアクタンス素子は、例えば、安価な可変容量ダイオードで構成されるので、1つの励振素子と2つの非励振素子とを備えた電子制御導波器アレーアンテナ装置は、単極双投RFスイッチによる従来の2素子選択式ダイバーシティアンテナに比べて低コストとなる。また、可変容量ダイオードは常に逆バイアスで動作するので、PINダイオードスイッチのようなオン時の直流電流消費が無い。FETスイッチに比べても、可変容量ダイオードは低コストかつ低損失である。さらに、電子制御導波器アレーアンテナ装置はアンテナ素子間隔を比較的狭くしても動作することからアンテナ装置全体を小型化できる。
以上の好ましい実施形態においては、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置について説明しているが、本発明はこれに限らず、1本の励振素子と、偶数本の非励振素子を備える電子制御導波器アレーアンテナ装置であってもよい。すなわち、当該電子制御導波器アレーアンテナ装置は、送信された無線信号を受信するための励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた偶数本の非励振素子と、上記各非励振素子にそれぞれ接続された偶数個の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子に設定するリアクタンス値を変化させることにより、上記各非励振素子を導波器又は反射器として動作させ、当該電子制御導波器アレーアンテナ装置であるアレーアンテナの指向特性を変化させるものである。ここで、上記偶数本の非励振素子は、少なくとも1本の第1の組の非励振素子と、少なくとも1本の第2の組の非励振素子とからなり、上記偶数個の可変リアクタンス素子は、上記第1の組の各非励振素子にそれぞれ接続された第1の組の可変リアクタンス素子と、上記第2の組の各非励振素子にそれぞれ接続された第2の組の可変リアクタンス素子とからなる。そして、アンテナコントローラ10は、当該電子制御導波器アレーアンテナ装置によって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないように、上記第1及び第2の組の可変リアクタンス素子に対して第1のリアクタンス値セットを設定する第1の場合と、上記第1及び第2の組の可変リアクタンス素子に対して第2のリアクタンス値セットを設定する第2の場合とのうち、上記第1と第2の場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して上記第1及び第2の組の可変リアクタンス素子に設定するように構成してもよい。
第1の変形例
図26は、本発明に係る第1の変形例の電子制御導波器アレーアンテナ装置を示す平面図である。図26において、各非励振素子A1,A2,A3,A4は励振素子A0を中心として半径dの円周15上にあり、非励振素子A2と、励振素子A0と、非励振素子A1とを一直線上に並置してなり、しかも非励振素子A3と、励振素子A0と、非励振素子A4とを一直線上に並置し、アンテナ素子A3,A0,A1により成される角度θ及びアンテナ素子A2,A0,A4により成される角度θを直角に設定している。なお、各アンテナ素子A0−A4は接地導体11上であって、電気的に絶縁されるように立設されている。ここで、例えば、非励振素子A1,A3を第1の組の非励振素子とし、非励振素子A2,A4を第2の組の非励振素子としたとき、非励振素子A1,A3にそれぞれ接続される可変リアクタンス素子12−1,12−3を第1の組の可変リアクタンス素子とし、非励振素子A2,A4にそれぞれ接続される可変リアクタンス素子12−2,12−4を第2の組の可変リアクタンス素子とする。ここで、アンテナコントローラ10は、当該電子制御導波器アレーアンテナ装置によって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないように、上記第1及び第2の組の可変リアクタンス素子に対して第1のリアクタンス値セット(Xa,Xb)を設定する第1の場合(第1の組の可変リアクタンス素子に属する各可変リアクタンス素子に対してリアクタンス値Xaを設定し、第2の組の可変リアクタンス素子に属する各可変リアクタンス素子に対してリアクタンス値Xbを設定する。)と、上記第1及び第2の組の可変リアクタンス素子に対して第2のリアクタンス値セット(Xb,Xa)を設定する第2の場合(第1の組の可変リアクタンス素子に属する各可変リアクタンス素子に対してリアクタンス値Xbを設定し、第2の組の可変リアクタンス素子に属する各可変リアクタンス素子に対してリアクタンス値Xaを設定する。)とのうち、上記第1と第2の場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して上記第1及び第2の組の可変リアクタンス素子に設定する。なお、上記第2のリアクタンス値セットは、(Xc,Xd)であってもよい。さらに、上記の変形例において、θ=90度としているが、本発明はこれに限らず、0<θ<180[度]であってもよい。
第2の変形例
図27は本発明に係る第2の変形例である電子制御導波器アレーアンテナ装置の平面図である。図27において、3本の非励振素子A1,A2,A3は励振素子A0を中心として半径dの円周15上にあり、互いに120°の角度だけ離間して設けられ、3本の非励振素子A1,A2,A3の位置の点を仮想的に上記中心を通過しない直線で結んだとき正三角形を形成する。なお、3本の非励振素子A1,A2,A3にはそれぞれ可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3が装荷されて、その他の構成は上述の好ましい実施形態と同様である。
以上のように構成された電子制御導波器アレーアンテナ装置において、上述の好ましい実施形態及び第1の変形例と同様に、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないような、可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3に対するリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc)を設定することが可能である。ここで、非励振素子A1,A2,A3は励振素子A0を中心として対称な位置に配置されているので、可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3に対するリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc)の設定を、別のリアクタンス値セット(Xb,Xc,Xa)又は(Xc,Xa,Xb)のごとく、各リアクタンス値を循環させて設定しても励振素子A0の給電ポートからアンテナ装置側を見たときの入力インピーダンスは変化しない。従って、アンテナコントローラ10は、当該電子制御導波器アレーアンテナ装置によって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないように、上述のごとく各リアクタンス値を循環して得られた上記3組のリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc),(Xb,Xc,Xa),(Xc,Xa,Xb)をそれぞれ設定する3つの場合のうち、各場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して各可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3に設定する。これにより、各可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3に対して設定するリアクタンス値セットを変化させた場合であっても、所定値以上のダイバーシティを得ることができ、しかも入力インピーダンスを実質的に変化させることがない。
第3の変形例
図28は本発明に係る第3の変形例である電子制御導波器アレーアンテナ装置の平面図である。図28において、4本の非励振素子A1,A2,A3,A4は励振素子A0を中心として半径dの円周15上にあり、互いに90°の角度だけ離間して設けられ、4本の非励振素子A1,A2,A3,A4の位置の点を仮想的に上記中心を通過しない直線で結んだとき正方形(正四角形)を形成する。なお、4本の非励振素子A1,A2,A3,A4にはそれぞれ可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3,12−4が装荷されて、その他の構成は上述の好ましい実施形態や変形例と同様である。
以上のように構成された電子制御導波器アレーアンテナ装置において、上述の好ましい実施形態及び変形例と同様に、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないような、可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3,12−4に対するリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc,Xd)を設定することが可能である。ここで、非励振素子A1,A2,A3,A4は励振素子A0を中心として対称な位置に配置されているので、可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3,12−4に対するリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc,Xd)の設定を、別のリアクタンス値セット(Xb,Xc,Xd,Xa)、(Xc,Xd,Xa,Xb)又は(Xd,Xa,Xb,Xc)のごとく、各リアクタンス値を循環させて設定しても励振素子A0の給電ポートからアンテナ装置側を見たときの入力インピーダンスは変化しない。従って、アンテナコントローラ10は、当該電子制御導波器アレーアンテナ装置によって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないように、上述のごとく各リアクタンス値を循環して得られた上記4組のリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc,Xd)、(Xb,Xc,Xd,Xa)、(Xc,Xd,Xa,Xb)又は(Xd,Xa,Xb,Xc)をそれぞれ設定する4つの場合のうち、各場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して各可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3,12−4に設定する。これにより、各可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3,12−4に対して設定するリアクタンス値セットを変化させた場合であっても、所定値以上のダイバーシティを得ることができ、しかも入力インピーダンスを実質的に変化させることがない。
第2及び第3の変形例に係る発明
第2の変形例では、正三角形の各頂点の位置に励振素子A0を中心として3本の非励振素子A1,A2,A3を対称的に配置し、第3の変形例では、正方形の各頂点の位置に励振素子A0を中心として4本の非励振素子A1,A2,A3、A4を対称的に配置している。以上の2つの変形例を拡張して、正多角形の各頂点の位置に励振素子A0を中心として複数N本の非励振素子A1乃至ANを対称的に配置してもよい。このとき、アンテナコントローラ10は、当該電子制御導波器アレーアンテナ装置によって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないように、各リアクタンス値を循環して得られたN組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定するN個の場合のうち、各場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して各可変リアクタンス素子12−1乃至12−Nに設定する。これにより、各可変リアクタンス素子12−1乃至12−Nに対して設定するリアクタンス値セットを変化させた場合であっても、所定値以上のダイバーシティを得ることができ、しかも入力インピーダンスを実質的に変化させることがない。
なお、この発明においても、上述の好ましい実施形態と同様に、好ましくは、受信される無線信号の信号電力が所定の信号電力を超える事象の累積確率であるCDF値が所定値であるときに、ダイバーシティ利得が実質的に最大となるように複数のリアクタンス値セットを設定してもよい。また、上述の好ましい実施形態と同様に、好ましくは、受信される無線信号の信号電力が所定の信号電力を超える事象の累積確率であるCDF値が所定値であるときに、ダイバーシティ利得が所定値以上となるように複数のリアクタンス値セットを設定してもよい。
第4の変形例
図29は本発明に係る第4の変形例である電子制御導波器アレーアンテナ装置の平面図である。図29において、3本の非励振素子A1,A2,A3は励振素子A0を中心として半径dの円周15上にあり、非励振素子A1と非励振素子A2との間で角度180−θ(0<θ<180)度だけ離間して設けられ、非励振素子A1と非励振素子A3との間で角度180−θ度だけ離間して設けられ、非励振素子A2と非励振素子A3との間で角度2θ度だけ離間して設けられている。このとき、3本の非励振素子A1,A2,A3の位置の点を仮想的に上記中心を通過しない直線で結んだとき二等辺三角形を形成し、非励振素子A2とA3は、非励振素子A1から励振素子A0を通過して延在する線LA1(対称線といい、対称線LA1が上記円周15と交差する点を交差点SA1とする。)を対称軸として線対称の位置に設けられている。なお、3本の非励振素子A1,A2,A3にはそれぞれ可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3が装荷されて、その他の構成は上述の好ましい実施形態と同様である。
以上のように構成された電子制御導波器アレーアンテナ装置において、上述の好ましい実施形態及び変形例と同様に、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないような、可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3に対するリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc)を設定することが可能である。ここで、非励振素子A2,A3は対称線LA1を対称軸として線対称の位置に設けられているので、可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3に対するリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc)の設定を、別のリアクタンス値セット(Xa,Xc,Xb)のごとく、可変リアクタンス素子12−2,12−3の各リアクタンス値を入れ替えても励振素子A0の給電ポートからアンテナ装置側を見たときの入力インピーダンスは変化しない。従って、アンテナコントローラ10は、当該電子制御導波器アレーアンテナ装置によって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないように、上述のごとく入れ替えて得られた上記2組のリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc),(Xa,Xc,Xb)をそれぞれ設定する2つの場合のうち、各場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して各可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3に設定する。これにより、各可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3に対して設定するリアクタンス値セットを変化させた場合であっても、所定値以上のダイバーシティを得ることができ、しかも入力インピーダンスを実質的に変化させることがない。
第5の変形例
図30は本発明に係る第5の変形例である電子制御導波器アレーアンテナ装置の平面図である。この第5の変形例に係る電子制御導波器アレーアンテナ装置は、図29の第4の変形例に比較して、図29の交差点SA1の位置に、可変リアクタンス素子12−4が装荷された非励振素子A4をさらに設けたことを特徴としている。
以上のように構成された電子制御導波器アレーアンテナ装置において、上述の第4の変形例と同様に、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないような、可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3,12−4に対するリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc,Xd)を設定することが可能である。ここで、非励振素子A2,A3は対称線LA1を対称軸として線対称の位置に設けられているので、可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3,12−4に対するリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc,Xd)の設定を、別のリアクタンス値セット(Xa,Xc,Xb,Xd)のごとく、可変リアクタンス素子12−2,12−3の各リアクタンス値を入れ替えても励振素子A0の給電ポートからアンテナ装置側を見たときの入力インピーダンスは変化しない。従って、アンテナコントローラ10は、当該電子制御導波器アレーアンテナ装置によって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないように、上述のごとく入れ替えて得られた上記2組のリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc,Xd),(Xa,Xc,Xb,Xd)をそれぞれ設定する2つの場合のうち、各場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して各可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3,12−4に設定する。これにより、各可変リアクタンス素子12−1,12−2,12−3,12−4に対して設定するリアクタンス値セットを変化させた場合であっても、所定値以上のダイバーシティを得ることができ、しかも入力インピーダンスを実質的に変化させることがない。
第6の変形例
図31は本発明に係る第6の変形例である電子制御導波器アレーアンテナ装置の平面図である。図31において、5本の非励振素子A1,A2,A3,A4,A5は励振素子A0を中心として半径dの円周15上にあり、非励振素子A1と非励振素子A2との間及び非励振素子A1と非励振素子A5との間でそれぞれ角度180−θ(0<θ<θ<180)度だけ離間して設けられ、ここで、対称線LA1と、励振素子A0の位置と非励振素子A2の位置とを結ぶ線との間の角度を所定の角度θで設定され、対称線LA1と、励振素子A0の位置と非励振素子A5の位置とを結ぶ線との間の角度を所定の角度θで設定される。また、対称線LA1と、励振素子A0の位置と非励振素子A3の位置とを結ぶ線との間の角度を所定の角度θで設定され、対称線LA1と、励振素子A0の位置と非励振素子A4の位置とを結ぶ線との間の角度を所定の角度θで設定される。このとき、3本の非励振素子A1,A2,A5の位置の点を仮想的に上記中心を通過しない直線で結んだとき二等辺三角形を形成し、非励振素子A2とA5は、対称線LA1を対称軸として線対称の位置に設けられている。また、3本の非励振素子A1,A3,A4の位置の点を仮想的に上記中心を通過しない直線で結んだとき二等辺三角形を形成し、非励振素子A3とA4は、対称線LA1を対称軸として線対称の位置に設けられている。なお、5本の非励振素子A1乃至A5にはそれぞれ可変リアクタンス素子12−1乃至12−5が装荷されて、その他の構成は上述の好ましい実施形態と同様である。
以上のように構成された電子制御導波器アレーアンテナ装置において、上述の好ましい実施形態及び変形例と同様に、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないような、可変リアクタンス素子12−1乃至12−5に対するリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc,Xd,Xe)を設定することが可能である。ここで、非励振素子A2,A5は対称線LA1を対称軸として線対称の位置に設けられ、非励振素子A3,A4は対称線LA1を対称軸として線対称の位置に設けられているので、可変リアクタンス素子12−1乃至12−5に対するリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc,Xd,Xe)の設定を、別のリアクタンス値セット(Xa,Xe,Xc,Xd,Xb)のごとく、可変リアクタンス素子12−2,12−5の各リアクタンス値を入れ替えてもよいし、また、別のリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xd,Xc,Xe)のごとく、可変リアクタンス素子12−3,12−4の各リアクタンス値を入れ替えてもよいし、さらには、さらに別のリアクタンス値セット(Xa,Xe,Xc,Xd,Xb)のごとく、可変リアクタンス素子12−2,12−5の各リアクタンス値を入れ替えかつ可変リアクタンス素子12−3,12−4の各リアクタンス値を入れ替えてもよい。すなわち、対称線を対称軸として線対称の位置に設けられた各1対の非励振素子に装荷された可変リアクタンス素子のリアクタンス値セットのうちの少なくとも1対の非励振素子に装荷された可変リアクタンス素子のリアクタンス値セットを互い入れ替えてもよい。このように設定しても、励振素子A0の給電ポートからアンテナ装置側を見たときの入力インピーダンスは変化しない。従って、アンテナコントローラ10は、当該電子制御導波器アレーアンテナ装置によって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないように、上述のごとく入れ替えて得られた上記4組のリアクタンス値セット(Xa,Xb,Xc,Xd,Xe),(Xa,Xe,Xc,Xd,Xb),(Xa,Xb,Xd,Xc,Xe),(Xa,Xe,Xc,Xd,Xb)をそれぞれ設定する4つの場合のうち、各場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して各可変リアクタンス素子12−1乃至12−5に設定する。これにより、各可変リアクタンス素子12−1乃至12−5に対して設定するリアクタンス値セットを変化させた場合であっても、所定値以上のダイバーシティを得ることができ、しかも入力インピーダンスを実質的に変化させることがない。
第7の変形例
図32は本発明に係る第7の変形例である電子制御導波器アレーアンテナ装置の平面図である。この第7の変形例に係る電子制御導波器アレーアンテナ装置は、図31の第6の変形例に比較して、図31の交差点SA1の位置に、可変リアクタンス素子12−6が装荷された非励振素子A6をさらに設けたことを特徴としている。この場合においても、第4の変形例と第5の変形例との関係と同様に、非励振素子A1,A6に装荷される可変リアクタンス素子12−1,12−6のリアクタンス値を固定するが、他の可変リアクタンス素子のリアクタンス値を第6の変形例のごとく設定することにより、各可変リアクタンス素子12−1乃至12−5に対して設定するリアクタンス値セットを変化させた場合であっても、所定値以上のダイバーシティを得ることができ、しかも入力インピーダンスを実質的に変化させることがない。
第4乃至第7の変形例に係る発明
第4及び第5の変形例では、二等辺三角形の底辺側の2つの頂点の位置に対称線LA1を対称軸として非励振素子A2,A3が線対称で配置されている。また、第6及び第7の変形例では、二等辺三角形の底辺側の2つの頂点の位置に対称線LA1を対称軸として非励振素子A2,A5が線対称で配置され、さらに、対称線LA1を対称軸として非励振素子A3,A4が線対称で配置されている。さらに、第5及び第7の変形例では、対称線LA1の交差点SA1の位置にそれぞれ、非励振素子A4又はA6がさらに設けられている。以上の4つの変形例及びそれらから変形された例では、1対又は2対の非励振素子が対称線LA1を対称軸として線対称で設けられているが、これを拡張して、3対以上の複数対の非励振素子を対称線LA1を対称軸として線対称で設けてもよい。このとき、アンテナコントローラ10は、当該電子制御導波器アレーアンテナ装置によって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ当該電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスが実質的に変化しないように、線対称に設けられた少なくとも1対の非励振素子に装荷される可変リアクタンス素子の各リアクタンス値を入れ替えて得られた少なくとも2組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する少なくとも2つの場合のうち、各場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して各可変リアクタンス素子に設定する。これにより、各可変リアクタンス素子に対して設定するリアクタンス値セットを変化させた場合であっても、所定値以上のダイバーシティを得ることができ、しかも入力インピーダンスを実質的に変化させることがない。
なお、この発明においても、上述の好ましい実施形態と同様に、好ましくは、受信される無線信号の信号電力が所定の信号電力を超える事象の累積確率であるCDF値が所定値であるときに、ダイバーシティ利得が実質的に最大となるように複数のリアクタンス値セットを設定してもよい。また、上述の好ましい実施形態と同様に、好ましくは、受信される無線信号の信号電力が所定の信号電力を超える事象の累積確率であるCDF値が所定値であるときに、ダイバーシティ利得が所定値以上となるように複数のリアクタンス値セットを設定してもよい。
以上の第4乃至第7の変形例において、非励振素子A1を設けなくても良く、ここで、他の非励振素子に装荷された可変リアクタンス素子のリアクタンス値の制御は上述の通り実行される。以上に説明した第4乃至第7の変形例及びそれらの変形例においては、励振素子A0の位置を通過する対称線LA1を対称軸として線対称で設けられた少なくとも1対の非励振素子を含み、上記対称線LA1上に位置し又は対称線LA1を対称軸として線対称で設けられた複数本の非励振素子を備えて電子制御導波器アレーアンテナ装置が構成され、アンテナコントローラ10は、当該電子制御導波器アレーアンテナ装置によって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナの入力インピーダンスが実質的に変化しないように、上記線対称で設けられた少なくとも1対の非励振素子のリアクタンス値を入れ替えて得られた複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する少なくとも2つの場合のうち、各場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号電力の、より大きい値となるときのリアクタンス値セットを選択して各可変リアクタンス素子に設定する。これにより、各可変リアクタンス素子に対して設定するリアクタンス値セットを変化させた場合であっても、所定値以上のダイバーシティを得ることができ、しかも入力インピーダンスを実質的に変化させることがない。
第3及び第4の実装例
図33は本発明に係る第3の実装例である、携帯電話機204に搭載されたアレーアンテナ装置212を示す斜視図である。この実装例では、携帯電話機204の上部に3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置であるアレーアンテナ装置212を設けている。また、図34は本発明に係る第4の実装例である、LANPCカード205に搭載されたアレーアンテナ装置210を示す斜視図である。この実装例では、LANPCカード205のPC接続端子とは反対側の端面に、上述の好ましい実施形態に係るアレーアンテナ装置210を設けている。
第5の好ましい実施形態
図35は、本発明に係る第5の好ましい実施形態であるアレーアンテナ装置100Aを示す平面図である。この第5の好ましい実施形態に係るアレーアンテナ装置100Aは、図9のアレーアンテナ装置と比較して以下の点が異なる。
(1)誘電体基板20aとして、裏面に接地導体11aを有し、誘電率=2.6、誘電体損失tanδ=0.0008のテフロン基板を用いた。なお、その大きさは縦50[mm]、横50[mm]、厚さ0.6[mm]である。
(2)当該誘電体基板20aにおいて、可変リアクタンス素子12−1,12−2をそれぞれ構成する例えば東芝製JDV2S71EE型である可変容量ダイオード61,62、給電用ストリップ導体50、リアクタンス値信号伝送用ストリップ導体51,52及び各ストリップ導体51,52と各非励振素子A1,A2との間に挿入される例えば10kΩのチップ抵抗71,72とを備えた。
以下、図35を参照して、アレーアンテナ装置100Aの構成について詳述する。図35において、誘電体基板20aの裏面には、概ね図上下側の部分に接地導体11aが形成される一方、そのおもて面には、励振素子A0及び非励振素子A1,A2の各導体パターン(ストリップ導体)が、各素子が裏面の接地導体11aの最上辺から1/4波長だけ突出するようにかつ互いに所定の間隔dだけ離間して互いに平行となるように形成されている。ここで、裏面に接地導体11aが形成されていない部分の励振素子A0及び非励振素子A1,A2の各導体パターンがアンテナ素子として動作する一方、裏面に接地導体11aが形成されている部分の励振素子A0及び非励振素子A1,A2の各導体パターンがマイクロストリップ線路(伝送線路)として動作する。すなわち、励振素子A0の導体パターンが接地導体11aの上辺と立体的に交差する励振素子A0上の点が給電点A0pとなる。
給電用ストリップ導体50は、例えば2段階で段階的に特性インピーダンスが変化するように形成された階段テーパ形状を有し、接地導体11aとによりマイクロストリップ線路を構成する。給電用ストリップ導体50の上端50aは励振素子A0の下端50bに接続され、その接続点が給電接続点A0fを構成する一方、給電用ストリップ導体50の下端50bは無線受信機(図示せず。)に接続された給電ケーブルの心線に接続される。また、リアクタンス値信号伝送用ストリップ導体51は接地導体11aとによりマイクロストリップ線路を構成し、その上端51aはチップ抵抗71を介して非励振素子A1の下端A1eに接続される一方、その下端51bは、図38を参照して後述するように前置増幅器404を介して図1のアンテナコントローラ10を構成するパーソナルコンピュータ401と接続される。同様に、リアクタンス値信号伝送用ストリップ導体52は接地導体11aとによりマイクロストリップ線路を構成し、その上端52aはチップ抵抗72を介して非励振素子A2の下端A2eに接続される一方、その下端52bは、図38を参照して後述するように前置増幅器404を介して図1のアンテナコントローラ10を構成するパーソナルコンピュータ401と接続される。
さらに、非励振素子A1の下端A1e近傍において、誘電体基板20aを厚さ方向に貫通するスルーホールの内周面に導体がメッキしてなるスルーホール導体63が形成され(なお、当該スルーホール内にスルーホール導体を充填してもよい。)、スルーホール導体63の一端は可変容量ダイオード61を介して非励振素子A1の下端A1e近傍に接続されている。また、同様に、非励振素子A2の下端A2e近傍において、誘電体基板20aを厚さ方向に貫通するスルーホールに導体が充填してなるスルーホール導体64が形成され、スルーホール導体64の一端は可変容量ダイオード62を介して非励振素子A2の下端A2e近傍に接続されている。以上のように構成されたアレーアンテナ装置は、小型・軽量であって、薄型である3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置を形成できる。
図36は図35のアレーアンテナ装置100Aの実験結果であって、VSWRの周波数特性を示すグラフである。ここで、VSWRの測定は、可変容量ダイオード61,62にそれぞれリアクタンス値信号である逆バイアス電圧として、V=0[V]、V=25[V]を印加した状態で、3〜7GHzの範囲で行った。図36から明らかなように、測定の結果、当該アレーアンテナ装置100Aは4.5〜7.0GHzの範囲内でVSWR≦3を達成している。
次いで、図35の3素子のアレーアンテナ装置100Aと、従来技術に係る2素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスのリアクタンス値切り替え前後での変化を測定により確認した。図37に、5.2GHzでの3素子のアレーアンテナ装置100Aと、2素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置の入力インピーダンスを、スミスチャート上にプロットした。ここで、3素子のアレーアンテナ装置100Aにおいては、各可変容量ダイオード61,62にそれぞれ印加する逆バイアス電圧VとVの切り替え前後において、50Ωのインピーダンス整合状態がほぼ維持されている。それに対して、図37中の三角形で示すように、より高い逆バイアス電圧V側で50Ωにインピーダンス整合をとった2素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置では、より低い逆バイアス電圧Vに切り替えた時点では、入力インピーダンスZ=39.4−j4.26[Ω](図37中の逆三角形)まで変化した。3素子のアレーアンテナ装置100Aにおいては、切り替え前後でアンテナ入力インピーダンスが一定であることが特徴であるが、そのことを実験によって確認できた。
次いで、第5の好ましい実施形態に係るアレーアンテナ装置100Aを用いた、リアクタンスダイバーシティ効果の測定とその結果について以下に説明する。
図38は図35のアレーアンテナ装置100Aの実験を行う受信機側の測定システムを示す斜視図である。図38において、当該測定システムは車輪付き台車400上に構築しており、試験環境内を一定速度で移動させながら、アレーアンテナ装置100Aの可変リアクタンス値を一定間隔で連続して切り替えて測定することで、フェージング環境での測定結果を得る。当該測定システムにおいては、車輪付き台車400上に、図1のアンテナコントローラ10の主制御部を構成するパーソナルコンピュータ401と、例えばヒューレットパッカード製8349B型(利得20dB)の前置増幅器402と、例えばアドバンテスト製R3371A型のスペクトラムアナライザ403と、2.5の増幅度を有する直流増幅器404と、アレーアンテナ装置100Aとが載置されている。
3素子のアレーアンテナの制御装置100Aの給電接続点A0fから出力される受信した無線信号は、前置増幅器402で増幅した後、スペクトラムアナライザ403に入力する。スペクトラムアナライザ403はゼロスパンモードで動作させ、受信した無線信号の電力強度に比例する電圧出力を取り出し、それをパーソナルコンピュータ401に接続したA/D変換ボードを介してパーソナルコンピュータ401内のハードディスクメモリに格納して記録する。リアクタンス値の切り替えは、パーソナルコンピュータ401に接続したD/A変換ボードによって、A/D変換と同期させて可変容量ダイオード61,62の逆バイアス電圧をV、Vの間で切り替えることで行う。当該実施例では、D/A変換ボードの出力電圧が最大10[V]であるため、直流増幅器404により2.5倍に増幅して3素子のアレーアンテナ装置100A上の可変容量ダイオード61,62と接続している。切り替えの周期は、図38の測定システムの移動速度に対して、リアクタンス値の切り替え前後での測定結果が、ほぼ同時に測定されたものと見なせる値として、1.5ミリ秒間隔で行った。この値は、スペースダイバーシティアンテナとRFスイッチによるランダムフィールド測定法の研究結果を参考に決定した(例えば、非特許文献5及び6参照。)。
図39は図35のアレーアンテナ装置100Aの実験環境のレイアウトを示す平面図である。図39に示すように、5.2GHzの無線送信機410を部屋415の中心においた状態で、図38の受信機側の測定システムを、波線411に沿って一定の速度で移動させて測定した。アレーアンテナ装置100Aの設置高さは送信側、受信側ともに1.2mとした。
図40は図35のアレーアンテナ装置100Aの実験結果であって、ダイバーシティ利得を示す、規格化電力に対するCDF値のグラフである。この実験結果は、図39での試験環境における測定結果より導いた規格化した受信電力[dB]に対するCDF値の曲線を示している。ここで、縦軸のCDF値は3素子のアレーアンテナ装置100Aでの受信電力が、横軸の値より高い値となった場合について導いた累積確率を示している。状態1、状態2はそれぞれ、非励振素子A1,A2に装荷された各可変容量ダイオード61,62への逆バイアス電圧が(V1,V2)=(0,25)[V]、(V1,V2)=(25,0)[V]の場合の累積確率分布曲線である。逆バイアス電圧の切り替え前後で、受信電力のより高い方を選ぶことにより、選択合成した結果の累積確率分布曲線は、実線(ダイバーシティ)で示した。
状態1及び状態2の場合の結果は、図40中のレイリー曲線にほぼ沿っており、図39の試験環境は、直接波の影響の少ないフェージング環境であると予想される。3素子のアレーアンテナ装置100Aのダイバーシティ能力を、ダイバーシティを行わない場合と行った場合の受信電力の差、すなわちダイバーシティ利得で評価する。図40から明らかなように、累積確率分布(CDF値)が90%の場合で比較すると、ダイバーシティ受信によって約4dBのダイバーシティ利得303が得られ、受信電力に改善が見られる。また、よりフェージングの深いCDF値が99%のときでは、約7dBのダイバーシティ利得304が得られた。
以上説明したように、3素子のアレーアンテナ装置100Aによるリアクタンスダイバーシティを提案し、実験により確認した。試作により、平面型3素子のアレーアンテナ装置100Aが誘電体基板20aと2個の可変容量ダイオード61,62によって構築できることを証明した。このことは、平面型3素子のアレーアンテナ装置100Aを低コストで実装できることを示している。また、上述のように、3素子のアレーアンテナ装置100Aにおいては、切り替え前後でアンテナ装置の入力インピーダンスが一定であることが実験によって確認された。ダイバーシティ利得を測定した結果、CDF値が99%時で約7dBのダイバーシティ利得が得られることがわかった。さらには、平面型3素子のアレーアンテナ装置100Aによるダイバーシティ受信が、耐マルチパスフェージング能力を示すことが実験により確認できた。
第6の好ましい実施形態
図41は本発明に係る第6の好ましい実施形態であるアレーアンテナ装置100Bを示す平面図である。この第6の好ましい実施形態に係るアレーアンテナ装置100Bは、図9のアレーアンテナ装置に比較して以下の点が異なる。
(1)誘電体基板20に代えて、図41に基板データを示す誘電体基板20bを備えた。
(2)接地導体11aの上下方向の長さをλgとした。ここで、λgは、誘電体基板20bの誘電率εrから求められる実効波長である。
なお、図41において、tは誘電体基板20bの厚さであり、εrはその誘電率であり、σは誘電体基板20b上に形成される導体の導電率である。
当該好ましい実施形態において用いるアレーアンテナ装置100Bのための制御装置は、図1と同様に構成される。ここで、非励振素子A1及びA2には可変リアクタンス素子12−1,12−2としてそれぞれ可変容量ダイオードが装荷されている。装荷リアクタンスは、可変容量ダイオードのみでは負のリアクタンスしか得られないので、誘導性までを可変範囲とする場合は、必要に応じて直列又は並列にインダクタを接続する。可変容量ダイオードに印加される直流バイアス電圧は、図1のコントローラ10により入れ替わるよう構成されている。つまり、装荷リアクタンス値(x,x)は、(x,x)及び(x,x)の2値に切り換えられ、当該アレーアンテナ装置100Bの指向性が変化する。この好ましい実施形態では、各ダイバーシティ枝の指向性を決定する装荷リアクタンス値を、「枝リアクタンス」という。従って、上記リアクタンス値の定数x、xによって定まる2つの指向性が「ダイバーシティ枝」となる。この好ましい実施形態に係る構成によれば、切り換えによってアンテナのインピーダンスは変化せず、固定定数回路により整合可能である。
この好ましい実施形態において、リアクタンス値の切り換えは、単一の受信回路でアンテナを切り換える、アンテナ切り換えダイバーシティ(例えば、非特許文献7参照。)やアンテナ選択ダイバーシティ(例えば、非特許文献8及び9参照。)のアルゴリズムを用いることができる。以下、後者のアルゴリズムにより制御を行うものとする。一般に無線受信機のアンテナ系でダイバーシティ枝を切り換えると受信無線信号の位相が不連続となり、少なくとも1〜2シンボルの間でビット誤りが発生する。これを回避するために、受信フレームもしくはスロットの先頭部に設けられたプリアンブル区間内で「枝リアクタンス」をx、xの2値に切り換え、RSSI(Receive Signal Strength Indication;受信した電波信号の強さを数値化した値をいう。)が高かった側に枝リアクタンスを固定して当該スロットのデータ区間を受信する。従って、フェージングがスロット長に対して十分遅ければ、検波後選択合成ダイバーシティと同等の特性が得られる。
次いで、この好ましい実施形態に係るアレーアンテナ装置100Bなどを用いた計算機シミュレーションとその結果について以下に説明する。なお、当該計算機シミュレーションでは、マルチパス伝搬環境におけるリアクタンスダイバーシティ受信のビット誤り率特性を、計算機シミュレーションにより評価する。当該計算機シミュレーションにおける諸元を表1に示す。

当該計算機シミュレーションでは以下の2つのアンテナモデルを用いる。
(1)無限地板上に設置した、半径1/100波長の円柱形状を有するモノポールアンテナ装置(以下、無限地板モデルという。)。
(2)図41に示す厚さt=0.6mmの高周波用両面プリント基板(以下、プリント基板という。)にてなる誘電体基板20b上に形成した3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置であるアレーアンテナ装置100B(以下、プリント基板モデルという。)。ここで、誘電体基板20b上にストリップ導体にてなるマイクロストリップ線路を形成し、その先端をλ/4(ここで、λは自由空間波長)だけ接地導体11aの最上辺の位置より上方向に延在させている。測定周波数は5.2GHzとした。マイクロストリップ線路の線路幅はストリップ導体の特性インピーダンスが50[Ω]となる値である。従って、各素子A0,A1,A2の下端のポートP0,P1,P2と、モノポール素子を構成する各素子A0,A1,A2の接地導体11aの最上辺における電流はほぼ等しいと仮定する。
当該計算機シミュレーションにおいては、移動局において、リアクタンスダイバーシティ受信を行うものとし、伝搬路は図42に示すジェークス(Jakes)のモデルを仮定した。すなわち、M個の素波が方位角(DOA)φからランダムに到来する。各素波のDOAは0−2πの一様分布とし、各素波の位相と振幅はそれぞれ一様分布及びレイリー分布とした。ここで、h、φをそれぞれ第m番目の素波の伝達関数及びDOAとおく。素波の伝達関数とは、励振素子A0の位置に対するものである。各素波の位相と振幅が与えられれば、受信回路の入力に至る伝達関数は、電子制御導波器アレーアンテナ装置の指向性、枝リアクタンスの関数となり、一般にN+1素子の場合次式により表される。

すなわち、伝達関数h(x,x)と伝達関数h(x,x)の絶対値を比較して大きい方を選択し、受信信号の振幅とする。受信機入力における熱雑音として、加法性白色ガウス雑音(AWGN)を仮定し、その電力密度をNとすればフェージング変動に対する瞬時信号対雑音電力比(E/N)が求まる。ここで、変調方式はBPSKとし、遅延検波による復調を仮定するとビット誤り率(以下、BERという。)Pcは次式で表される(例えば、非特許文献10参照。)。

ここで、
γ=E/N (29)
当該計算機シミュレーションでは、受信スロット(フレーム)毎に各素波のh、φを乱数により発生させて、伝達関数h(x)と伝達関数h(x)、あるいは伝達関数h(x、x)と伝達関数h(x、x)を求め、上記式(28)により受信スロット毎のBERを求めている。つまり、スロット中はフェージング変動が無いものとしており、スロット長に対して十分遅いフェージングを仮定している。
次いで、等価ウェイトベクトルの算出について以下に説明する。まず、等価ウェイトベクトルwを上記式(19)及び式(20)より算出する。アドミタンス行列Yの各要素は表1に示した素子形状と配置から、モーメント法により求めた下記の値を用いた。
(1)無限地板モデルの場合のアドミタンス行列の各要素

(2)プリント基板モデルの場合のアドミタンス行列の各要素

ここで、単位はS(シーメンス、Ω−1)であり、ymnはアドミタンス行列Yのm+1行n+1列の要素を示す。以上より得られた等価ウェイトベクトルwについて、リアクタンス値x又はリアクタンス値xを変化させたときの軌跡を無限地板モデルの場合について、図43乃至図45に示し、プリント基板モデルの場合について図46乃至図48に示す。前者の無限地板モデルの場合においては次式が成立する。
(w)=w (32)
また、後者のプリント基板モデルの場合においては次式が成立する。
(w)=w (33)
非特許文献11より、リアクタンス値x又はリアクタンス値xから等価ウェイトw又はwへの写像は一次変換であるから、これらの軌跡は全て円となり、リアクタンス値x又はxを減じたときの回転方向は全て半時計方向となる。なお、図43乃至図45ではリアクタンス値xに関して、10Ω毎に0から−80Ωまでプロットしている。
次いで、BER特性について以下に説明する。得られた等価ウェイトwを用い、上述した条件により計算機シミュレーションを行った。得られたBER特性を図49に示す。比較のため、十分(10λ)離して設置され理想的に整合された無限地板モデル(モノポールアンテナ)による空間ダイバーシティと、当該モノポールアンテナによるダイバーシティ無しの特性も示している。枝リアクタンス(x,x)は、無限地板モデルについては、(0,−30)[Ω]と(0,−60)[Ω]の場合について、プリント基板モデルについては(0,−70)[Ω]と(0,−110)[Ω]の場合について示した。これらの等価ウェイトを図43において矢印で示した。無限地板モデルでは(0,−60)[Ω]の場合に最も特性が良好で、空間ダイバーシティとほぼ一致した特性が得られた。一方、プリント基板モデルの場合には(0,−110)[Ω]の場合に特性が良好であるが、空間ダイバーシティに対して、BER=10−3において約3dBの劣化が見られた。
以上の結果より、高いダイバーシティ利得を得るためには、ダイバーシティ枝間で等価ウェイトを、複素平面上で離れるように設定すればよいと考えられる。従って、リアクタンスダイバーシティの設計にあたっては、対応する等価ウェイトが互いに複素平面上で離れるよう、枝リアクタンスを設定すれば良い。図43乃至図45から明らかなように、枝リアクタンス(0,−60)、(−60,0)[Ω]の組み合わせは上記基準に沿ったものである。一方、プリント基板モデルにおいては約3dBの劣化が見られる。ただし、劣化要因の1つはインピーダンス不整合によるものであり、簡単な整合回路により容易に改善できる。励振素子A0の等価ウェイトwは当該素子A0の電流をインピーダンス整合時の電流で規格化したものであるから、w=1+j0から離れるほど、VSWRが増加し、利得が次式分[dB]だけ低下することとなる。

図46の(x,x)=(0,−110)[Ω]、(w=0.97−j0.53)に対する利得低下は上記式(34)より1.5dBであるから、適当なインピーダンス整合回路を設けた場合の空間ダイバーシティに対する劣化は残りの1.5dBになり、BER=10−3において10.5dBのダイバーシティ利得となる。
ところで、図49のBER特性のカーブは空間ダイバーシティとほぼ平行になっており、これはダイバーシティ枝としての相関がほぼ0になっていることを示している。従って、残り1.5dBの劣化は、平均利得(電力利得をアジマス全方位で平均した値)が理想的なモノポールアンテナに対して約0.7になっていることを示している。これはプリント基板モデルの誘電体基板20bの誘電体損失tanδ及び導電率による損失のほか、解析モデルの不完全性によるものと考えられる。すなわち、以上の解析では図41の各ポートP0,P1,P2における電流と、モノポールアンテナの素子給電部(接地導体11aの最上辺)が等しいとの仮定(近似)によっているが、実際には3本のストリップ線路間相互の影響により、一般には異なる。
以上より、リアクタンスダイバーシティの設計基準として以下のようにまとめることができる。
(1)ダイバーシティ枝(切り換える2つの指向性)間で、等価ウェイトが複素平面上で互いに離れるようにする。すなわち、複素平面上でのダイバーシティ枝間の距離が最大となるように設定する。
(2)励振素子A0の等価ウェイトが1+j0に近くなるようにすれば、アンテナ装置と給電ケーブルとの間のインピーダンス整合回路を省略できる。
上記(1)は、特定の条件におけるシミュレーションから得られたものであり、普遍性についてはさらなる理論検討を要する。しかしながら、ダイバーシティ枝間で等価ウェイトが近接した場合、両者の指向性も近くなり、枝間の受信レベル相関が高くなってダイバーシティ利得が低下するのは明らかである。従って、上記(1)は少なくとも必要条件である。
以上説明したように、リアクタンス値を2状態に切り換える、バイナリリアクタンスダイバーシティ受信の特性と、リアクタンスの設定基準について評価した。マルチパス伝搬モデルにおけるレイリーフェージング下におけるビット誤り率を、計算機シミュレーションにより評価した。その結果、素子間隔0.1波長、3素子の構成で、無限地板モデルによるモノポールアンテナの場合は12dB、プリント基板モデルによるモノポールアンテナで10.5dBのダイバーシティ利得が得られた。さらに、リアクタンスダイバーシティの設計基準について検討し、等価ウェイトベクトルの枝間の相対関係と、給電素子の等価ウェイト、すなわちインピーダンス整合が重要であることを示した
付録
以下においては、非特許文献11における理論解析を用い、装荷リアクタンス、すなわち枝リアクタンスと等価ウェイトとの関係について理論的に示す。まず、上記式(20)をクラーメルの公式を用いて等価ウェイトベクトルwに関して解くと、次式を得る。

ここで、
V=Y−1+X=(v … v);0≦k≦N (36)
次いで、まず、等角性について以下に説明する。あるkに対して、i≠k(0≦i≦N)なる全てのリアクタンスxを固定した時のリアクタンスxから等価ウェイトベクトルw及びwへの写像は一次変換であり、等角写像である。証明は以下による。
ある行列Vにおいて、リアクタンスxを含む要素は対角要素の第k+1行k+1列のみである。上記式(18)の分母であるdet(V)を第k+1列(1≦k≦N)で展開すると、次式を得る。

ここで、Vmnは行列Vからm行n列を除いた行列を表し、zmnはアドミタンス行列Y−1のm行n列要素を表す。従って、リアクタンスxを含む項は右辺第1項目のみであり、リアクタンスxに関して1次式である。同様に、各xに関しても1次式である。一方、上記式(18)の分子は同様に、第k+1列で展開すると、次式を得ることができ、xを含まない。

一方、各xに関しては1次式となっている。つまり、次式の形式となる。

従って、等価ウェイトwはリアクタンスxからの(複素関数としての)一次変換であり、リアクタンスxからの一次変換でもある。従って、一次変換の性質より、ある特定のリアクタンスを変化させたときの等価ウェイトwの軌跡は円になる。特に、リアクタンスx(0≦i≦N−1,i≠k)を固定してリアクタンスxを変化させたとき、等価ウェイトwは原点を通る円軌跡を描く。
次いで、等価ウェイト軌跡の回転角の共通性について以下に説明する。以上のように、上記式(35)の分母はリアクタンスxの一次式であり、全てのkに対して共通である。一方、分子はi≠kのとき、リアクタンスxの一次式でi=kの場合は、リアクタンスxを含まない。従って、等価ウェイトwは次式の形式で書くことができる。

ここで、aik、bik,cは、アドミタンス行列の逆行列Y−1、信号源インピーダンスz及び装荷リアクタンスx(i≠1)で決まる複素数でリアクタンスxを含まない。特に、k=iの場合はaik’=0である。このとき、上記40の右辺第2項の分母jx+cはリアクタンスxの変化に対して複素平面上の直線を動くから、一次変換の性質より等価ウェイトwの軌跡は原点を通る円となる。ここで、jx+cは全てのkに対して共通なので、等価ウェイトwは1/(jx+c)の軌跡を複素数bikで相似変換と回転を行い、複素数aikで平行移動したものである。従って、軌跡円上の回転角は、全ての等価ウェイトwに対して1/(jx+c)の円軌跡における回転角と回転方向を含めて共通である。つまり、リアクタンスxの適当な変化により等価ウェイトwが軌跡円上を角度θだけ回転すれば、等価ウェイトwも同じ方向に角度θだけ回転する。
他の変形例
図50は、本発明の変形例に係る可変リアクタンス素子12−1,12−2に印加される制御電圧に対する入力インピーダンスZin及びリアクタンス値X1,X2の特性において設定可能な3つの状態P1,P2,P3を示すグラフである。
上記の第1の好ましい実施形態においては、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナの入力インピーダンスが実質的に変化しないように、2組のリアクタンス値セットから1組のリアクタンス値セットを選択する場合について説明しているが、本発明はこれに限らず、図50に示すように、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナの入力インピーダンスが実質的に変化しないように、3組又は以上の組のリアクタンス値セットから1組のリアクタンス値セットを選択するようにしてもよい。
以上の実施形態において、上記アレーアンテナは、励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数本の非励振素子と、上記各非励振素子にそれぞれ接続された複数個の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子に設定するリアクタンス値を変化させることにより、上記各非励振素子を導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアンテナ装置であってもよい。ここで、アンテナコントローラ10は、好ましくは、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、入力インピーダンスが実質的に変化しないことを限定せずに、所定値以上のダイバーシティ利得が得られるように、複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する複数の場合のうち、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質に基づいて、所定の選択基準に従って、上記複数組のリアクタンス値セットのうちの1つのセットを選択して上記複数個の可変リアクタンス素子に設定する。
また、上記複数の場合は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナの入力インピーダンスが実質的に変化しないように、複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する場合である。
さらに、上記各無線信号の信号品質は、信号電力に限らず、信号強度と、信号対雑音比と、信号に対する干渉雑音を含む雑音の比と、搬送波信号対雑音比と、ビット誤り率と、フレーム誤り率と、パケット誤り率とのうちのいずれか1つを用いて評価されてもよい。
また、上記選択基準は、好ましくは、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が所定のしきい値以上であることである。もしくは、上記選択基準は、好ましくは、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が、信号電力と、信号対雑音比と、信号に対する干渉雑音を含む雑音の比と、搬送波信号対雑音比とのうちのいずれか1つの場合において、当該信号品質が最大値となるリアクタンス値セットを選択することである。とって代わって、上記選択基準は、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が、ビット誤り率と、フレーム誤り率と、パケット誤り率とのうちのいずれか1つの場合において、当該信号品質が最小値となるリアクタンス値セットを選択することである。
さらに、アンテナコントローラ10は、好ましくは、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が所定のしきい値未満となったとき、上記複数組のリアクタンス値セットの中から任意に1つのリアクタンス値セットを選択し、当該選択したリアクタンス値セットにおいて上記信号品質が所定の選択基準に達するまで上記選択の処理を繰り返す。もしくは、アンテナコントローラ10は、好ましくは、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が所定のしきい値未満となったとき、上記複数組のリアクタンス値セットの中から所定の順序で1つのリアクタンス値セットを選択し、当該選択したリアクタンス値セットにおいて上記信号品質が所定の選択基準に達するまで上記選択の処理を繰り返す。
さらに、アンテナコントローラ10は、好ましくは、上記しきい値を所定の範囲で変化させながら上記複数の場合を切り換え、上記各無線信号の信号品質が所定の選択基準を満足するときのしきい値を上記しきい値として設定する。
またさらに、アンテナコントローラ10は、好ましくは、現在選択されているリアクタンス値セットの場合における無線信号の信号品質が上記しきい値よりも低い別のしきい値を所定の自然数の回数以上下回ったとき、上記しきい値の設定を行う。さらにもしくは、アンテナコントローラ10は、好ましくは、上記アレーアンテナの制御装置を搭載する無線通信装置の移動が検出されたとき、上記しきい値の設定を行う。また、アンテナコントローラ10は、好ましくは、上記アレーアンテナの制御装置を搭載する無線通信装置の変復調方式が切り換えられたとき、上記しきい値の設定を行う。さらに、アンテナコントローラ10は、好ましくは、上記アレーアンテナの制御装置を搭載する無線通信装置の使用周波数が切り換えられたとき、上記しきい値の設定を行う。またさらに、アンテナコントローラ10は、好ましくは、上記選択基準に従って、上記複数組のリアクタンス値セットのうちの1つのセットを選択して上記複数個の可変リアクタンス素子に設定したとき、所定の期間、そのセットの切り換えを停止する。
以上詳述したように、本発明に係るアレーアンテナの制御装置によれば、送信された無線信号を受信するための励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数本の非励振素子と、上記各非励振素子にそれぞれ接続された複数個の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子に設定するリアクタンス値を変化させることにより、上記各非励振素子を導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御装置である。ここで、上記アレーアンテナの制御装置は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られるように、複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する複数の場合のうち、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質に基づいて、所定の選択基準に従って、上記複数組のリアクタンス値セットのうちの1つのセットを選択して上記複数個の可変リアクタンス素子に設定する制御手段を備える。従って、従来技術に比較して、ハードウエア構成がきわめて簡単であるとともに、きわめて簡単な制御でより大きなダイバーシティ利得を得ることができる。特に、マルチパスフェージングが存在するときのアンテナ利得を単純な1ビット制御で大きく改善する効果が得られるので、ラップトップ端末装置やPCカードなどの民生コンシューマ端末装置に搭載可能なダイバーシティアンテナを実現できる。また、本発明に係る1ビット制御では、可変リアクタンス素子を連続的に制御する従来技術において必要な制御電圧発生用DAコンバータが不要となるので、アンテナ装置のさらなる小型化と低コスト化が図れる。
また、上記アレーアンテナの制御装置において、上記複数の場合は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナの入力インピーダンスが実質的に変化しないように、複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する場合である。従って、従来技術に比較して、ハードウエア構成がきわめて簡単であるとともに、きわめて簡単な制御でより大きなダイバーシティ利得を得ることができる。また、上記アレーアンテナの入力インピーダンスを実質的に変化させることがない。
さらに、本発明に係るアレーアンテナ装置によれば、1本の励振素子と、上記励振素子を挟設しかつ上記励振素子とともに一直線上に設けられた2本の非励振素子と、上記各非励振素子にそれぞれ接続された2個の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子に設定するリアクタンス値を変化させることにより、上記各非励振素子を導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナ装置である。ここで、上記アレーアンテナ装置は、互いに平行な第1の面と第2の面とを有する誘電体基板と、上記誘電体基板の第2の面のうちの所定の第1の領域上に形成された接地導体と、上記誘電体基板の第1の面上であって、上記第1の領域に対向する領域から突出するように所定の長さを有しかつ互いに所定の間隔を有するように形成され、それぞれ上記励振素子と上記2本の非励振素子として動作する3本のストリップ導体とを備える。従って、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置において、小型・軽量であって、薄型のアレーアンテナ装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
以上詳述したように本発明によれば、従来技術に比較して、ハードウエア構成がきわめて簡単であるとともに、きわめて簡単な制御でより大きなダイバーシティ利得を得ることができる。また、上記アレーアンテナの入力インピーダンスを実質的に変化させることがない。特に、マルチパスフェージングが存在するときのアンテナ利得を単純な1ビット制御で大きく改善する効果が得られるので、ラップトップ端末装置やPCカードなどの民生コンシューマ端末装置に搭載可能なダイバーシティアンテナを実現できる。また、本発明に係る1ビット制御では、可変リアクタンス素子を連続的に制御する従来技術において必要な制御電圧発生用DAコンバータが不要となるので、アンテナ装置のさらなる小型化と低コスト化が図れる。さらに、3素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置において、小型・軽量であって、薄型のアレーアンテナ装置を提供できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44】

【図45】

【図46】

【図47】

【図48】

【図49】

【図50】

【図51】

【図52】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信された無線信号を受信するための励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数本の非励振素子と、上記各非励振素子にそれぞれ接続された複数個の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子に設定するリアクタンス値を変化させることにより、上記各非励振素子を導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナの制御装置であって、
上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られるように、複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する複数の場合のうち、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質に基づいて、所定の選択基準に従って、上記複数組のリアクタンス値セットのうちの1つのセットを選択して上記複数個の可変リアクタンス素子に設定する制御手段を備えたことを特徴とするアレーアンテナの制御装置。
【請求項2】
上記複数の場合は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナの入力インピーダンスが実質的に変化しないように、複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する場合であることを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項3】
上記各無線信号の信号品質は、信号強度と、信号電力と、信号対雑音比と、信号に対する干渉雑音を含む雑音の比と、搬送波信号対雑音比と、ビット誤り率と、フレーム誤り率と、パケット誤り率とのうちのいずれか1つを用いて評価されることを特徴とする請求項1又は2記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項4】
上記選択基準は、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が所定のしきい値以上であることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項5】
上記選択基準は、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が、信号電力と、信号対雑音比と、信号に対する干渉雑音を含む雑音の比と、搬送波信号対雑音比とのうちのいずれか1つの場合において、当該信号品質が最大値となるリアクタンス値セットを選択することを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置
【請求項6】
上記選択基準は、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が、ビット誤り率と、フレーム誤り率と、パケット誤り率とのうちのいずれか1つの場合において、当該信号品質が最小値となるリアクタンス値セットを選択することを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置
【請求項7】
上記制御手段は、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が所定のしきい値未満となったとき、上記複数組のリアクタンス値セットの中から任意に1つのリアクタンス値セットを選択し、当該選択したリアクタンス値セットにおいて上記信号品質が所定の選択基準に達するまで上記選択の処理を繰り返すことを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置
【請求項8】
上記制御手段は、上記複数の場合において受信される各無線信号の信号品質が所定のしきい値未満となったとき、上記複数組のリアクタンス値セットの中から所定の順序で1つのリアクタンス値セットを選択し、当該選択したリアクタンス値セットにおいて上記信号品質が所定の選択基準に達するまで上記選択の処理を繰り返すことを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナ制御装置。
【請求項9】
上記制御手段は、上記しきい値を所定の範囲で変化させながら上記複数の場合を切り換え、上記各無線信号の信号品質が所定の選択基準を満足するときのしきい値を上記しきい値として設定することを特徴とする請求項1乃至8のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項10】
上記アレーアンテナは偶数本の非励振素子と偶数個の可変リアクタンス素子とを備え、
上記偶数本の非励振素子は、少なくとも1本の第1の組の非励振素子と、少なくとも1本の第2の組の非励振素子とからなり、
上記偶数個の可変リアクタンス素子は、上記第1の組の各非励振素子にそれぞれ接続された第1の組の可変リアクタンス素子と、上記第2の組の各非励振素子にそれぞれ接続された第2の組の可変リアクタンス素子とからなり、
上記複数の場合は、上記第1及び第2の組の可変リアクタンス素子に対して第1のリアクタンス値セットを設定する第1の場合と、上記第1及び第2の組の可変リアクタンス素子に対して第2のリアクタンス値セットを設定する第2の場合とを含み、
上記制御手段は、上記第1と第2の場合においてそれぞれ受信される各無線信号の信号品質に基づいて、リアクタンス値セットを選択して上記第1及び第2の組の可変リアクタンス素子に設定することを特徴とする請求項1乃至9のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項11】
上記アレーアンテナは、第1と第2の非励振素子を備え、上記第1のリアクタンス値セットは上記第1と第2の非励振素子に対して設定されるリアクタンス値Xa,Xbからなり、上記第2のリアクタンス値セットは上記第1と第2の非励振素子に対して設定されるリアクタンス値Xb,Xaからなることを特徴とする請求項10記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項12】
上記アレーアンテナは、上記励振素子から所定の間隔だけ離れてかつ互いに実質的に同一の角度間隔で設けられた複数本の非励振素子を備え、
上記複数の場合は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られるように、各リアクタンス値を循環して得られた複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する場合を含むことを特徴とする請求項1乃至9のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項13】
上記アレーアンテナは、上記励振素子から所定の間隔だけ離れてかつ互いに実質的に同一の角度間隔で設けられた複数本の非励振素子を備え、
上記複数の場合は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナの入力インピーダンスが実質的に変化しないように、各リアクタンス値を循環して得られた複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する場合を含むことを特徴とする請求項1乃至9のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項14】
上記アレーアンテナは、上記励振素子の位置を通過する対称線を対称軸として線対称で設けられた少なくとも1対の非励振素子を含み、上記対称線上に位置し又は対称線を対称軸として線対称で設けられた複数本の非励振素子を備え、
上記複数の場合は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られるように、上記線対称で設けられた少なくとも1対の非励振素子のリアクタンス値を入れ替えて得られた複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する少なくとも2つの場合を含むことを特徴とする請求項1乃至9のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項15】
上記アレーアンテナは、上記励振素子の位置を通過する対称線を対称軸として線対称で設けられた少なくとも1対の非励振素子を含み、上記対称線上に位置し又は対称線を対称軸として線対称で設けられた複数本の非励振素子を備え、
上記複数の場合は、上記アレーアンテナによって受信される無線信号に基づいて、所定値以上のダイバーシティ利得が得られかつ上記アレーアンテナの入力インピーダンスが実質的に変化しないように、上記線対称で設けられた少なくとも1対の非励振素子のリアクタンス値を入れ替えて得られた複数組のリアクタンス値セットをそれぞれ設定する少なくとも2つの場合を含むことを特徴とする請求項1乃至9のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項16】
受信される無線信号の信号電力が所定の信号電力を超える事象の累積確率であるCDF値が所定値であるときに、ダイバーシティ利得が実質的に最大となるように上記複数組のリアクタンス値セットが設定されたことを特徴とする請求項1乃至15のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項17】
受信される無線信号の信号電力が所定の信号電力を超える事象の累積確率であるCDF値が所定値であるときに、ダイバーシティ利得が所定値以上となるように上記複数組のリアクタンス値セットが設定されたことを特徴とする請求項1乃至15のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項18】
上記アレーアンテナは、1本の励振素子と、上記励振素子を挟設しかつ上記励振素子とともに一直線上に設けられた2本の非励振素子とを備えたことを特徴とする請求項1乃至13のうちのいずれか1つに記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項19】
上記励振素子と上記各非励振素子との間の距離を、受信される無線信号の波長の0.1倍から0.35倍までの間の長さのうちの1つの長さに設定したことを特徴とする請求項18記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項20】
上記アレーアンテナは、
互いに平行な第1の面と第2の面とを有する誘電体基板と、
上記誘電体基板の第2の面のうちの所定の第1の領域上に形成された接地導体と、
上記誘電体基板の第1の面上であって、上記第1の領域に対向する領域から突出するように所定の長さを有しかつ互いに所定の間隔を有するように形成され、それぞれ上記励振素子と上記2本の非励振素子として動作する3本のストリップ導体とを備えたことを特徴とする請求項18又は19記載のアレーアンテナの制御装置。
【請求項21】
1本の励振素子と、上記励振素子を挟設しかつ上記励振素子とともに一直線上に設けられた2本の非励振素子と、上記各非励振素子にそれぞれ接続された2個の可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子に設定するリアクタンス値を変化させることにより、上記各非励振素子を導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナ装置であって、
互いに平行な第1の面と第2の面とを有する誘電体基板と、
上記誘電体基板の第2の面のうちの所定の第1の領域上に形成された接地導体と、
上記誘電体基板の第1の面上であって、上記第1の領域に対向する領域から突出するように所定の長さを有しかつ互いに所定の間隔を有するように形成され、それぞれ上記励振素子と上記2本の非励振素子として動作する3本のストリップ導体とを備えたことを特徴とするアレーアンテナ装置。
【請求項22】
上記励振素子と上記各非励振素子との間の距離を、受信される無線信号の波長の0.1倍から0.35倍までの間の長さのうちの1つの長さに設定したことを特徴とする請求項21記載のアレーアンテナ装置。

【国際公開番号】WO2004/064194
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507977(P2005−507977)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000072
【国際出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】