説明

アンギュラピンを有する金型装置

【課題】金型装置に自己診断機能を持たせ、最悪でもアンギュラピンの破損にとどめ、キャビティの破損を少なく抑えることを可能にした自己診断型金型装置を提供すること。
【解決手段】射出成形に使用される金型11の内部に備えられたスライド部品12を開閉させるためのアンギュラピン13に、ピン軸方向にのびた非貫通の縦穴16と横穴17とからなる細穴を設ける。その細穴に金型を介して外部より圧空を供給するレギュレータ21と、供給している圧空の圧力を監視する流量センサ又は圧力センサ22を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形に使用される金型装置、金型装置の主要部となる金型、及びその金型に取り付けられるアンギュラピンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、アンギュラピンを備えた金型装置が開示されている。その金型装置においては、固定側コアに対し可動側コアが移動して組み合わされる。それと同時に、可動側コアのスライド部品が、固定側コアのアンギュラピンに案内されるように構成されている。
【0003】
この種の金型装置によると、射出成形機において大アンダカット部を成形することができる。しかし、上述したスライド部品に所謂カジリが発生した場合、アンギュラピンが折れ、スライド部品が正規位置まで戻らず、成形品を取り出すためのエジェクタピンによって金型のキャビティを大破させてしまう虞がある。
【0004】
また特許文献2では、アンギュラピンに歪ゲージやピエゾ素子などのセンサを埋め込み、アンギュラピンにかかる力を測定するように構成している。しかしながら、この種のセンサは、熱によるドリフトが発生するため、高温になる金型では実現困難である。また、センサの取付部の加工や組み立てが困難である。さらに、スライド部品にセンサを配置するため、センサ自体の耐久性に問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平1−235619号公報
【特許文献2】特開平9−109199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故に本発明の課題は、エアを供給するための穴を有するアンギュラピンを提供することにある。
【0007】
本発明の他の課題は、前記アンギュラピンを取り付けた金型を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の課題は、前記金型を用いた自己診断型金型装置を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに別の課題は、金型装置に自己診断機能を持たせることで、最悪でもアンギュラピンの破損にとどめ、キャビティの破損を少なく抑えることを可能にした自己診断型金型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の一態様によれば、射出成形に使用される金型の内部に備えられたスライド部品を開閉させるためのアンギュラピンであって、ピン軸方向にのびた非貫通の縦穴と、前記縦穴に対し交差する方向にのびて前記縦穴につながった横穴とを有することを特徴とするアンギュラピンが得られる。
【0011】
本発明の実施の他の態様によれば、上述したアンギュラピンを取り付けたことを特徴とする金型が得られる。
【0012】
本発明の実施のさらに他の態様によれば、上述した金型と、前記アンギュラピンの前記縦穴と前記横穴とに前記金型を介して外部より圧空を供給する圧空供給装置と、前記圧空の圧力及び流量の少なくとも一方を監視する監視装置とを含むことを特徴とする自己診断型金型装置が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金型装置に自己診断機能を持たせることで、最悪でもアンギュラピンの破損にとどめ、キャビティの破損を少なく抑えることを可能にした自己診断型金型装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照して、本発明の一実施例に係る金型装置について説明する。
【0015】
図示の金型装置は射出成形機に使用されるものであり、金型11を含んでいる。金型11は、その内部でスライド可能なスライド部品12と、スライド部品12を開閉駆動するための細長いアンギュラピン13とを備えている。
【0016】
アンギュラピン13は、金型11の一部とスライド部品12とに連通するようにそれぞれ形成した貫通孔14、15に挿通されている。アンギュラピン13は、軸方向にのびた縦穴16と、縦穴16に対し交差する方向にのびかつ縦穴16につながった横穴17とを有している。縦穴16は上端が開口しているが、下端は非貫通のものである。以下では、縦穴16と横穴17とを合わせて細穴と呼ぶ。なお、図示例では、横穴17は縦穴16に対し直交しかつアンギュラピン13を径方向に貫通している。
【0017】
金型11は、貫通穴14に対応した逃げ部18と、逃げ部18に繋がった横孔よりなるエア回路19とを有している。各板部材間及びアンギュラピン13の周囲は、O−リング24,25でシールされている。エア回路19には、圧空供給装置の一部として働くレギュレータ21を通して一定のエア圧力をかけている。また、レギュレータ21と金型11のエア回路19との間に、流量センサ又は圧力センサ22を配置し、エアの漏れを検知するように構成している。
【0018】
さらに図2をも参照して、図1の金型装置の作用について説明する。
【0019】
スライド部品12に所謂カジリが発生し、アンキュラピンが折れた場合を想定する。この場合、アンギュラピン13の細穴からエアが流出する。すると、レギュレータ21とエア回路19との間の配管途中に設けられた監視装置として働く圧カセンサ22で圧力低下が検知される。圧カセンサ22による検知信号は射出成形機へ送られ、これに応じて成形機は動作を停止する。したがって、破損はアンギュラピン13のみにとどまり、エジェクタピン23によるキャビティ26の大破は免れる。具体的には、エジェクタピン23がその上動によりスライド部品12などを破損させることは防止される。
【0020】
ここで、圧力センサ22の閾値はスライド部品12のスライド量とは直接関係しないため、スライド部品の戻り不良を正確に検知できる。また、アンギュラピン13の細穴は空気が通過できるサイズであれは良いため、既存の金型への展開が容易である。例えば直径8mmのアンギュラピン13に対して直径2mmの細穴を形成した場合、断面2次モーメントの低下は0.2%程度ですむ。
【0021】
図1及び図2を参照して説明した金型装置によると、次に列挙したような効果を奏する。
【0022】
1.通常のアンギュラピンに穴を開けるだけで自己診断能力を持たせるため、スライド部品等に特殊な形状をなす、金型の大型化を防ぐことができる。
【0023】
2.既存金型への展開が容易である。
【0024】
3.金型11のエア回路19に圧力センサ22を接続し、工場設備のエア装置を接続するだけで信号を取り出せる。
【0025】
4.スライド部品にカジリが発生した場合、最悪でもアンギュラピンの破損のみに抑えることができる。
【0026】
5.スライド部品が配置される可動側でなく、アンギュラピンのある固定側からスライド部品の状態を監視する構造であるため、信号線の断線に強く、エア配管の折れ等への対策が軽減される。
【0027】
6.アンギュラピンを用いて機械的にスライドの移動量を管理するため、エア漏れの監視のみで確実な位置検出ができる。
【0028】
なお、図1及び図2では監視装置として圧力センサを用いているが、その代わりに流量センサを用いてもよい。もちろん、圧力センサ及び流量センサの両方を備え、圧力及び流量の少なくとも一方からの検知信号に基いて成形機が動作を停止するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、金型に限らず、棒カムを用いたスライド構造においても応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例に係る金型装置の構成説明図である。
【図2】本発明の作用説明図である。
【符号の説明】
【0031】
11 金型
12 スライド部品
13 アンギュラピン
14 貫通孔
15 貫通孔
16 縦穴
17 横穴
18 逃げ部
19 エア回路
21 レギュレータ
22 圧力センサ
23 エジェクタピン
24,25 O−リング
26 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形に使用される金型の内部に備えられたスライド部品を開閉させるためのアンギュラピンであって、ピン軸方向にのびた非貫通の縦穴と、前記縦穴に対し交差する方向にのびて前記縦穴につながった横穴とを有することを特徴とするアンギュラピン。
【請求項2】
請求項1に記載のアンギュラピンを取り付けたことを特徴とする金型。
【請求項3】
請求項2に記載の金型と、前記アンギュラピンの前記縦穴と前記横穴とに前記金型を介して外部より圧空を供給する圧空供給装置と、前記圧空の圧力及び流量の少なくとも一方を監視する監視装置とを含むことを特徴とする自己診断型金型装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−221664(P2008−221664A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64365(P2007−64365)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】