アンテナ
【課題】主ビームの方向を変化させることが可能であり、かつ、小型化が可能なアンテナを提供する。
【解決手段】アンテナ100は、放射器1と、反射器2と、位置調整部3とを備える。位置調整部3(円筒体)の内壁21には放射器1(ループ素子11および無給電素子12)が取り付けられる。位置調整部3の外壁22には反射器2が取り付けられる。反射器2をZ方向にスライドさせるだけでアンテナ100の主ビームの方向を変更させることができる。1つの円筒体(位置調整部3)の内壁および外壁に放射器1および反射器2がそれぞれ取り付けられるので、アンテナを小型化することができる。
【解決手段】アンテナ100は、放射器1と、反射器2と、位置調整部3とを備える。位置調整部3(円筒体)の内壁21には放射器1(ループ素子11および無給電素子12)が取り付けられる。位置調整部3の外壁22には反射器2が取り付けられる。反射器2をZ方向にスライドさせるだけでアンテナ100の主ビームの方向を変更させることができる。1つの円筒体(位置調整部3)の内壁および外壁に放射器1および反射器2がそれぞれ取り付けられるので、アンテナを小型化することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナに関し、特に主ビーム方向を変更することが可能なアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
主ビームの方向を変更させることが可能なアンテナが従来から知られている。たとえば特開2006−165672号公報(特許文献1)は、複数のループ状アンテナ素子と、その複数のアンテナ素子を結合する結合線路と、その結合線路に給電する給電部とを備える双ループアンテナを開示する。このアンテナにおいては、複数のアンテナ素子の間隔を調整することにより、給電部に対して一方の側に位置するアンテナ素子の給電位相は進み位相となり、給電部に対して他方の側に位置するアンテナ素子の給電位相は遅れ位相となる。このように複数のアンテナ素子に給電することにより主ビームの方向を変化させることが可能になる。
【0003】
一方、アンテナが大型化するとアンテナの設置場所が制限されるため、アンテナは小型であることが好ましい。たとえば特開2002−84131号公報(特許文献2)は、小型化が可能なUHF(Ultra High Frequency)アンテナを開示する。このUHFアンテナは、ほぼ半円筒の形状を有する放射導体と、その放射導体を後方から覆うように配置される反射導体とを備える。反射導体の形状はほぼ半円筒である。反射導体の中心軸は放射導体の中心軸と同一である。
【特許文献1】特開2006−165672号公報
【特許文献2】特開2002−84131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2006−165672号公報(特許文献1)に開示されるアンテナの場合、複数のアンテナ素子が必要である。また、給電位相を遅れ位相とするための遅延線路を結合線路に接続する必要がある。よって、上記のアンテナの場合にはサイズが大きくなる可能性が高い。
【0005】
一方、特開2002−84131号公報(特許文献2)に開示されるUHFアンテナの場合、主ビームの方向を変化させることができない。よって、このUHFアンテナは電波の受信状態が良好な場所に設置されなければならないので、設置場所が制限される。
【0006】
本発明の目的は、主ビームの方向を変化させることが可能であり、かつ、小型化が可能なアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は要約すれば、アンテナであって、放射器と、反射器と、放射器および反射器が取り付けられ、かつ、放射器および反射器の少なくとも一方の取付位置を所定方向に沿って調整可能な位置調整部とを備える。
【0008】
好ましくは、所定方向は、アンテナの設置状態におけるアンテナの上下方向である。
より好ましくは、位置調整部は、放射器の取付位置を固定するとともに反射器の取付位置を調整可能である。
【0009】
好ましくは、位置調整部は、絶縁性を有する円筒体である。所定の方向は、円筒体の中心軸に沿った方向である。
【0010】
より好ましくは、放射器は、円筒体の内壁に沿って曲げられた状態で内壁に取り付けられる。反射器は、円筒の外壁に沿って曲げられた状態で外壁に取り付けられる。
【0011】
より好ましくは、放射器は、ループ素子を含む。
好ましくは、位置調整部は、第1の主表面を有する第1の絶縁基板と、第1の主表面に沿った方向に移動可能であり、かつ、第1の主表面に平行な第2の主表面を有する第2の絶縁基板とを含む。放射器は、第1の主表面上に形成される。反射器は、第2の主表面上に形成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、主ビームの方向を変化させることが可能であり、かつ、小型化が可能なアンテナを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0014】
<全体構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るアンテナ100の設置例を説明する図である。図1を参照して、アンテナ100は収納容器200に収納された状態で電柱300の頂上(天辺)に設置される。収納容器200の直径は電柱300の直径とほぼ同じである。このため収納容器200を電柱300に取り付けても収納容器200が目立ちにくくなる。よって電柱300の美感が損なわれるのを防ぐことができる。
【0015】
なお、図1には詳細に示していないが、センタ側にテレビ放送局等から送信される電波(たとえば地上デジタル放送波)を受信するための受信アンテナ(図示せず)が設けられ、伝送線路を介して端末にテレビ放送信号を伝送するCATV施設において、伝送線路140の途中に再送信装置120が設けられる。再送信装置120は、伝送線路140を介して、電力の大きさが所望の値以下であるテレビ放送信号をアンテナ100に供給する。アンテナ100はこのテレビ放送信号を斜め下方の地域へ再送信する。
【0016】
ここで、一般家庭400の周囲には大きな建物あるいは山(いずれも図示せず)があるため、アンテナ410はテレビ放送局等から送信される電波を直接受信することができない。しかし、アンテナ410がアンテナ100からの電波を受信することでユーザはテレビ番組を視聴することが可能になる。アンテナ410が受信した電波はテレビ受像機420に送られる。テレビ受像機420はアンテナ410が受信した電波に対して所定の処理を行なうことにより映像および音声を再生する。
【0017】
アンテナ100が電波を送信する方向は、アンテナ100が電柱300の頂上に設置された後に作業員によって調整される。アンテナ100はアンテナ100の下方に電波を送信する。これにより、テレビ放送局等から送信される電波を直接受信することができない地域(一般家庭400を含む)において、ユーザはテレビ番組を視聴することが可能になる。
【0018】
なお、本実施の形態では、アンテナ100はUHFアンテナであり、特に地上デジタル放送用のアンテナである。ただしアンテナ100の使用周波数帯はUHF帯に限定されるものではなく、より高い周波数帯(たとえばGHz帯)でもよいし、より低い周波数帯(たとえばVHF(Very High Frequency)帯)でもよい。
【0019】
図2は、図1のアンテナ100の構成を説明する図である。図2を参照して、アンテナ100は、放射器1と、反射器2と、位置調整部3とを備える。
【0020】
放射器1は、ループ素子11と、放射器1のインピーダンス調整のために設けられる無給電素子12とを含む。ただしループ素子11のみを放射器1として用いてもよい。給電素子としてループ素子を用いることにより、放射器1の利得を高めることが可能になる。
【0021】
位置調整部3は、絶縁性を有し、かつ、円筒状に形成される。位置調整部3(円筒体)の内壁21には、その内壁21に沿うように放射器1(ループ素子11および無給電素子12)が取り付けられる。位置調整部3の外壁22には、その外壁22に沿うように反射器2が取り付けられる。放射器1はたとえば絶縁体のテープ等により位置調整部3の内壁21に固定されてもよいし、位置調整部3の内部に充填される充填材により位置調整部3の内壁21に固定されてもよい。
【0022】
反射器2にはボルト5を通すための穴が2箇所に設けられる。位置調整部3の2箇所にZ方向に沿ったスライド溝4が形成される。反射器2は、その穴がスライド溝4と重なるように位置調整部3に取り付けられる。
【0023】
ボルト5は反射器2の穴およびスライド溝4に通され、位置調整部3の内側においてナット6と結合される。これにより反射器2をZ方向にスライドさせることが可能になるとともに、Z方向の任意の位置において反射器2を固定することができる。
【0024】
なおZ方向とは円筒の中心軸15に沿った方向である。特にアンテナ100を図1に示すように設置した状態には中心軸15の方向はアンテナ100の上下方向に沿った方向となり、Z方向はアンテナ100の下方となる。また、図2においてX方向とは放射器1の中心を通り、かつ、Z方向と垂直な方向である。Y方向とはX方向およびZ方向に垂直な方向である。
【0025】
反射器2をZ方向にスライドさせることによって、アンテナ100の主ビームの方向を変更することが可能になる。特に反射器2の中心位置を放射器1の中心位置よりも下方にずらした場合、放射器1から送信された電波が反射器2で反射するとその電波はアンテナ100の斜め下方に向かって進む。すなわち図1に示すようにアンテナ100の斜め下方に電波を送信することが可能になる。
【0026】
さらに、本実施の形態によれば、反射器2をZ方向にスライドさせるだけでアンテナ100の主ビームの方向を変更させることができる。つまり本実施の形態によれば、複数の給電素子に対して位相差給電を行なう場合に比較して、アンテナの構成を簡単にしながら主ビームの方向を変化させることができる。
【0027】
さらに、本実施の形態によれば、1つの円筒体(位置調整部3)の内壁および外壁に放射器1および反射器2がそれぞれ取り付けられるので、アンテナを小型化することができる。
【0028】
図3は、図2に示す放射器1の展開図である。図3において放射器1(ループ素子11および無給電素子12)は仮想の平面A上に展開される。なお図3に示すY方向およびZ方向は図2に示すY方向およびZ方向とそれぞれ同じである。また、この平面Aはループ素子11のアンテナ主表面に対応する。
【0029】
次に放射器1の寸法について説明する。なお、以下に示す寸法は一例であって、放射器1の寸法は放射器1に求められる性能等に応じて適切に設定することができる。
【0030】
ループ素子11は正方形であり、その1辺の長さは約144mmである。ループ素子11の幅は約12mmである。ループ素子11は給電点FD1,FD2を有する。給電点FD1と給電点FD2との間には約10mmの隙間が形成される。
【0031】
無給電素子12のY方向の長さは約180mmであり、無給電素子12のZ方向の長さは約189mmである。無給電素子12の幅は約15mmである。無給電素子12とループ素子11との間隔(Y方向)は約3mmである。給電点FD1,FD2側における無給電素子12とループ素子11との間隔は約9mmである。給電点FD1(FD2)から最も遠い側における無給電素子12とループ素子11との間隔は約6mmである。
【0032】
<放射器の特性>
図4は、図2に示すアンテナ100の構成要素のうち放射器1のみをX方向、Y方向およびZ方向に沿って見た図である。図4および図2を参照して、X方向に沿って見た場合の放射器1のZ方向の寸法は約189mmである。図2に示すように放射器1(ループ素子11および無給電素子12)は円筒体の内壁に沿うように曲げられてその内壁に取り付けられる。よってZ方向に沿って見た場合、放射器1の形状は円周の一部(ほぼ半円)となる。なお、この円の直径は約115mmである。
【0033】
次に放射器の特性として、利得、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)、前後比、半値幅、および指向性を説明する。なお、指向性を説明する場合には放射器1の放射方向が重要となる。そこで、放射器1の放射方向の理解が容易になるように、放射器1の水平面、および、垂直面についてまず説明する。
【0034】
図5は、ループ素子11のアンテナ主表面、水平面および垂直面の位置関係を説明するための図である。図5において、X方向、Y方向およびZ方向は図2のX方向、Y方向およびZ方向とそれぞれ同じである。
【0035】
電波Sはその電界の方向が水平である水平偏波である。なお、多くの場合、テレビ電波は水平偏波である。
【0036】
YZ平面はループ素子11のアンテナ主表面に対応する。XY平面は電波Sの電界と平行な面であり、かつ、YZ平面と直交する。ZX平面はYZ平面およびXY平面の両方に垂直である。以後、XY平面を「水平面」と称し、ZX平面を「垂直面」と称することにする。
【0037】
図6は、放射器1の利得を示す図である。図6において周波数の範囲は470〜710MHzの範囲である。この範囲は日本における地上デジタル放送の周波数帯に含まれる。470〜710MHzの範囲において放射器1の利得はほぼ0(dB)以上となる。なお利得が高いほど放射器の性能は優れている。
【0038】
ここで、以後説明する図においても周波数の範囲は470〜710MHzの範囲である。このため周波数の範囲に関する説明は以後繰返さない。
【0039】
図7は、放射器1のVSWRを示す図である。VSWRが低いほど放射器の性能は優れている。図7を参照して、470〜710MHzの周波数範囲においてVSWRはほぼ2以下となる。
【0040】
図8は、放射器1の前後比および半値幅を示す図である。前後比とは基準点の方向(角度0度)の放射強度と、基準点の方向に対し180度±60度の範囲の方向の放射強度との比である。半値幅とは、放射強度(放射電力)が最大値の1/2になる角度幅である。
【0041】
図8に示されるように、前後比(実線で示す)は470〜710MHzの周波数範囲においてほぼ0(dB)である。半値幅(破線で示す)は470〜710MHzの周波数範囲において、ほぼ45度から60度までの範囲の値となる。
【0042】
図9は、水平面上での放射器1の指向性を示す図である。図9を参照して、0度の方向は放射器1の放射強度が最大になる方向であり、本実施の形態における「主ビームの方向」に対応する。
【0043】
放射器1が図3に示すように平面上に形成されている場合には、放射器1の指向性は0度および180度方向に強く、90度方向および270度方向に弱い。このため指向性を示す図形はいわゆる「8の字形」となる。しかし本実施の形態では位置調整部3の中心軸15の軸を中心に放射器1を曲げているため、放射器1は水平面における90度方向および270度方向にも指向性を有する。なお、放射器1は470MHz、590MHz、710MHzの各周波数においてほぼ同じ指向性を有する。
【0044】
図10は、垂直面上での放射器1の指向性を示す図である。図10において0度および180度の方向は水平面における0度および180度の方向にそれぞれ対応する。90度および270度の方向は図2に示す放射器1の上方および下方にそれぞれ対応する。本実施の形態においては特に270度から0度までの1/4円の範囲における指向性が重要となる。この範囲における指向性は470MHz、590MHz、710MHzの各周波数においてほぼ同じである。
【0045】
<アンテナの特性(チルトなし)>
図11は、図2に示す放射器1および反射器2をX方向、Y方向およびZ方向に沿って見た図である。なお、図11は、反射器2をZ方向に移動させていない状態を示す。この状態ではX方向から見ると反射器2の中心は放射器の中心と一致する。この状態を「チルトなし」と以後称する。また、X方向から見たときに反射器2の中心が放射器1の中心に対してZ方向にずれた状態を「チルト付き」と以後称することにする。
【0046】
図11を参照して、放射器1のZ方向の寸法は約189mmであるのに対し反射器2のZ方向の寸法は約200mmである。また、反射器2は放射器1を後方から覆うように配置される。図2に示すように反射器2は円筒体の外壁に沿うように曲げられてその外壁に取り付けられる。よってZ方向に沿って見た場合、反射器2の形状は円周の一部となる。なお、この円の直径は約170mmである。
【0047】
図12は、アンテナ100(チルトなし)の正面方向の利得を示す図である。なお正面方向とは図2のX方向に対応する。図12および図6を参照して、反射器2を放射器1の後方に設けることにより、470〜710MHzの周波数範囲において利得が約1〜2(dB)程度高くなっていることが分かる。
【0048】
図13は、アンテナ100(チルトなし)の正面方向のVSWRを示す図である。図13および図7を参照して、530〜710MHzの周波数範囲では反射器2の有無によるVSWRの変化はほとんど生じない。なお、図7と比較すると図13では470〜530MHzの周波数範囲においてVSWRが少し高くなっているが、この範囲におけるVSWRの値は実用面で特に問題ないレベルである。
【0049】
図14は、アンテナ100(チルトなし)の正面方向の前後比および半値幅を示す図である。図14および図8を参照して、反射器2を放射器1の後方に設けることによって前後比と半値幅とがともに大きくなることが分かる。図14は、反射器2によってアンテナ100の正面方向の指向性が強くなることを示す。
【0050】
図15は、水平面上でのアンテナ100(チルトなし)の指向性を示す図である。図16は、垂直面上でのアンテナ100(チルトなし)の指向性を示す図である。図15および図16を参照して、アンテナ100の正面方向(0度方向)の指向性がアンテナ100の後方(180度)の指向性に比べて強いことが分かる。図15および図16からも反射器2を放射器1の後方に設けることによってアンテナ100の正面方向の指向性が強くなることが分かる。
【0051】
<アンテナの特性(チルト付き)>
図17は、アンテナ100(チルト付き)をX方向、Y方向およびZ方向に沿って見た図である。X方向から見ると分かるように、反射器2の中心OBは放射器1の中心OAに対して約80mmだけ放射器1の下方(Z方向)にずれている。
【0052】
図18は、アンテナ100(チルト付き)の正面、かつ、斜め下方での利得を示す図である。図18および図12を参照して、反射器2を放射器1の下方に移動させることにより、470〜710MHzの周波数範囲における利得が高くなっていることが分かる。つまり、図18は反射器2を放射器1の下方に移動させることによって、主ビームの方向が放射器1の斜め下方(すなわちアンテナ100の斜め下方)にチルトしていることを示す。
【0053】
図19は、水平面上でのアンテナ100(チルト付き)の指向性を示す図である。図19および図15を参照して、反射器2を放射器1の下方に移動させても水平面上での指向性にはほとんど変化がないことが分かる。
【0054】
図20は、垂直面上でのアンテナ100(チルト付き)の指向性を示す図である。図20および図16を参照して、反射器2を放射器1の下方に移動させることによりアンテナ100の放射強度が最大となる方向が0度方向からアンテナ100の下方約30度の方向(約330度方向)に変化していることが分かる。この結果はアンテナ100の下方約30度方向に主ビームの方向が傾いていることを示す。
【0055】
以上のように本実施の形態によれば、反射器2を放射器1に対してアンテナ100の上下方向に移動させるだけで主ビームの方向を調整することが可能になる。
【0056】
<変形例>
本実施の形態のアンテナ100の設置場所は特に電柱の頂上に限定されるものではない。本実施の形態のアンテナ100は、小型であり、かつ、主ビームの方向を変化させることができるという利点を有する。このため、本実施の形態のアンテナ100は様々な場所に設置可能である。
【0057】
図21は、本実施の形態のアンテナの第1の変形例を示す図である。図21を参照して、アンテナ100は収納容器200に収納される。収納容器200は取付部材210によって建物の壁面320に取り付けられる。
【0058】
たとえばアンテナ100は、高い建物の陰となり、かつ、テレビ放送局等から送信される電波を直接受信できない地域にテレビ放送信号を再送信する。たとえばその建物の屋上にはテレビ放送局等から送信される電波を受信するための受信アンテナ(図示せず)が設けられる。その受信アンテナからアンテナ100までテレビ放送信号を伝送する伝送線路140の途中には再送信装置120が設けられる。再送信装置120は伝送線路140を介して、電力の大きさが所望の値以下であるテレビ放送信号をアンテナ100に供給する。アンテナ100はこのテレビ放送信号を建物の陰となる地域へ再送信する。
【0059】
図22は、本実施の形態のアンテナの第2の変形例を示す図である。図22を参照して、アンテナ100Aは円筒状に曲げられていない点で図2に示すアンテナ100と異なる。また、アンテナ100Aを収納する収納容器200Aの形状は直方体である。なお図21に示す変形例と同様に収納容器200Aは取付部材210によって建物の壁面320に取り付けられる。
【0060】
なお収納容器200,200Aの地面からの高さは特に限定されないが、たとえば図1の電柱300の高さと同程度(あるいはそれ以上)である。
【0061】
図23は、図22のアンテナ100Aの構成例を示す図である。図23を参照して、位置調整部3は、絶縁基板31,32を含む。絶縁基板31の主表面31Aには放射器1(ループ素子11、無給電素子12)が形成される。絶縁基板32の主表面32Aには反射器2が形成される。なお、反射器2は絶縁基板32において主表面32Aと反対側の面に形成されてもよい。
【0062】
絶縁基板31には複数の穴4Aが形成される。ボルト5はこの穴4Aに通されて図示しないナットと結合される。主表面31A,32Aは平行である。複数の穴4Aのうちのボルト5が通る穴を変えることによって絶縁基板32は絶縁基板31の主表面31Aに沿った方向に移動可能となる。これにより放射器1に対して反射器2を上下方向に移動させることができる。
【0063】
また、本実施の形態のアンテナの放射器および反射器の形状は図2に示すように限定されるものではない。
【0064】
図24は、図2に示す放射器1の変形例を示す図である。図24を参照して、放射器1Aは、導体の棒(管でもよい)を円形に曲げて形成されるループ素子である。このようなループ素子も本実施の形態のアンテナ100の放射器として用いることができる。
【0065】
図25は、本実施の形態のアンテナ100に含まれる反射器の第1の変形例を示す図である。図26は、本実施の形態のアンテナ100に含まれる反射器の第2の変形例を示す図である。図25および図26を参照して、反射器2Aは、無給電素子12と同様にループ状に形成される。反射器2Bは、たとえば中抜き加工が施された板状の導体である。なお複数の導体棒を等間隔で並べ、その複数の棒の一方端同士を導体で接続するとともに、その複数の棒の他方端同士を導体で接続することにより反射器2Bが形成されてもよい。これらの反射器も本実施の形態のアンテナ100の反射器として用いることができる。
【0066】
なお、本実施の形態においては反射器を所定の方向に移動可能としたが、放射器を移動可能としてもよいし、放射器および反射器の両方を移動可能としてもよい。この場合にもアンテナ100による効果と同様の効果を得ることができる。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態に係るアンテナ100の設置例を説明する図である。
【図2】図1のアンテナ100の構成を説明する図である。
【図3】図2に示す放射器1の展開図である。
【図4】図2に示すアンテナ100の構成要素のうち放射器1のみをX方向、Y方向およびZ方向に沿って見た図である。
【図5】ループ素子11のアンテナ主表面、水平面および垂直面の位置関係を説明するための図である。
【図6】放射器1の利得を示す図である。
【図7】放射器1のVSWRを示す図である。
【図8】放射器1の前後比および半値幅を示す図である。
【図9】水平面上での放射器1の指向性を示す図である。
【図10】垂直面上での放射器1の指向性を示す図である。
【図11】図2に示す放射器1および反射器2をX方向、Y方向およびZ方向に沿って見た図である。
【図12】アンテナ100(チルトなし)の正面方向の利得を示す図である。
【図13】アンテナ100(チルトなし)の正面方向のVSWRを示す図である。
【図14】アンテナ100(チルトなし)の正面方向の前後比および半値幅を示す図である。
【図15】水平面上でのアンテナ100(チルトなし)の指向性を示す図である。
【図16】垂直面上でのアンテナ100(チルトなし)の指向性を示す図である。
【図17】アンテナ100(チルト付き)をX方向、Y方向およびZ方向に沿って見た図である。
【図18】アンテナ100(チルト付き)の正面、かつ、斜め下方での利得を示す図である。
【図19】水平面上でのアンテナ100(チルト付き)の指向性を示す図である。
【図20】垂直面上でのアンテナ100(チルト付き)の指向性を示す図である。
【図21】本実施の形態のアンテナの第1の変形例を示す図である。
【図22】本実施の形態のアンテナの第2の変形例を示す図である。
【図23】図22のアンテナ100Aの構成例を示す図である。
【図24】図2に示す放射器1の変形例を示す図である。
【図25】本実施の形態のアンテナ100に含まれる反射器の第1の変形例を示す図である。
【図26】本実施の形態のアンテナ100に含まれる反射器の第2の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1,1A 放射器、2,2A,2B 反射器、3 位置調整部、4 スライド溝、4A 穴、5 ボルト、6 ナット、11 ループ素子、12 無給電素子、15 中心軸、21 内壁、22 外壁、31,32 絶縁基板、31A,32A 主表面、100,100A アンテナ、120 再送信装置、140 伝送線路、200,200A 収納容器、210 取付部材、300 電柱、320 壁面、400 一般家庭、410 アンテナ、420 テレビ受像機、A 平面、FD1,FD2 給電点、OA,OB 中心、S 電波。
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナに関し、特に主ビーム方向を変更することが可能なアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
主ビームの方向を変更させることが可能なアンテナが従来から知られている。たとえば特開2006−165672号公報(特許文献1)は、複数のループ状アンテナ素子と、その複数のアンテナ素子を結合する結合線路と、その結合線路に給電する給電部とを備える双ループアンテナを開示する。このアンテナにおいては、複数のアンテナ素子の間隔を調整することにより、給電部に対して一方の側に位置するアンテナ素子の給電位相は進み位相となり、給電部に対して他方の側に位置するアンテナ素子の給電位相は遅れ位相となる。このように複数のアンテナ素子に給電することにより主ビームの方向を変化させることが可能になる。
【0003】
一方、アンテナが大型化するとアンテナの設置場所が制限されるため、アンテナは小型であることが好ましい。たとえば特開2002−84131号公報(特許文献2)は、小型化が可能なUHF(Ultra High Frequency)アンテナを開示する。このUHFアンテナは、ほぼ半円筒の形状を有する放射導体と、その放射導体を後方から覆うように配置される反射導体とを備える。反射導体の形状はほぼ半円筒である。反射導体の中心軸は放射導体の中心軸と同一である。
【特許文献1】特開2006−165672号公報
【特許文献2】特開2002−84131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2006−165672号公報(特許文献1)に開示されるアンテナの場合、複数のアンテナ素子が必要である。また、給電位相を遅れ位相とするための遅延線路を結合線路に接続する必要がある。よって、上記のアンテナの場合にはサイズが大きくなる可能性が高い。
【0005】
一方、特開2002−84131号公報(特許文献2)に開示されるUHFアンテナの場合、主ビームの方向を変化させることができない。よって、このUHFアンテナは電波の受信状態が良好な場所に設置されなければならないので、設置場所が制限される。
【0006】
本発明の目的は、主ビームの方向を変化させることが可能であり、かつ、小型化が可能なアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は要約すれば、アンテナであって、放射器と、反射器と、放射器および反射器が取り付けられ、かつ、放射器および反射器の少なくとも一方の取付位置を所定方向に沿って調整可能な位置調整部とを備える。
【0008】
好ましくは、所定方向は、アンテナの設置状態におけるアンテナの上下方向である。
より好ましくは、位置調整部は、放射器の取付位置を固定するとともに反射器の取付位置を調整可能である。
【0009】
好ましくは、位置調整部は、絶縁性を有する円筒体である。所定の方向は、円筒体の中心軸に沿った方向である。
【0010】
より好ましくは、放射器は、円筒体の内壁に沿って曲げられた状態で内壁に取り付けられる。反射器は、円筒の外壁に沿って曲げられた状態で外壁に取り付けられる。
【0011】
より好ましくは、放射器は、ループ素子を含む。
好ましくは、位置調整部は、第1の主表面を有する第1の絶縁基板と、第1の主表面に沿った方向に移動可能であり、かつ、第1の主表面に平行な第2の主表面を有する第2の絶縁基板とを含む。放射器は、第1の主表面上に形成される。反射器は、第2の主表面上に形成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、主ビームの方向を変化させることが可能であり、かつ、小型化が可能なアンテナを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0014】
<全体構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るアンテナ100の設置例を説明する図である。図1を参照して、アンテナ100は収納容器200に収納された状態で電柱300の頂上(天辺)に設置される。収納容器200の直径は電柱300の直径とほぼ同じである。このため収納容器200を電柱300に取り付けても収納容器200が目立ちにくくなる。よって電柱300の美感が損なわれるのを防ぐことができる。
【0015】
なお、図1には詳細に示していないが、センタ側にテレビ放送局等から送信される電波(たとえば地上デジタル放送波)を受信するための受信アンテナ(図示せず)が設けられ、伝送線路を介して端末にテレビ放送信号を伝送するCATV施設において、伝送線路140の途中に再送信装置120が設けられる。再送信装置120は、伝送線路140を介して、電力の大きさが所望の値以下であるテレビ放送信号をアンテナ100に供給する。アンテナ100はこのテレビ放送信号を斜め下方の地域へ再送信する。
【0016】
ここで、一般家庭400の周囲には大きな建物あるいは山(いずれも図示せず)があるため、アンテナ410はテレビ放送局等から送信される電波を直接受信することができない。しかし、アンテナ410がアンテナ100からの電波を受信することでユーザはテレビ番組を視聴することが可能になる。アンテナ410が受信した電波はテレビ受像機420に送られる。テレビ受像機420はアンテナ410が受信した電波に対して所定の処理を行なうことにより映像および音声を再生する。
【0017】
アンテナ100が電波を送信する方向は、アンテナ100が電柱300の頂上に設置された後に作業員によって調整される。アンテナ100はアンテナ100の下方に電波を送信する。これにより、テレビ放送局等から送信される電波を直接受信することができない地域(一般家庭400を含む)において、ユーザはテレビ番組を視聴することが可能になる。
【0018】
なお、本実施の形態では、アンテナ100はUHFアンテナであり、特に地上デジタル放送用のアンテナである。ただしアンテナ100の使用周波数帯はUHF帯に限定されるものではなく、より高い周波数帯(たとえばGHz帯)でもよいし、より低い周波数帯(たとえばVHF(Very High Frequency)帯)でもよい。
【0019】
図2は、図1のアンテナ100の構成を説明する図である。図2を参照して、アンテナ100は、放射器1と、反射器2と、位置調整部3とを備える。
【0020】
放射器1は、ループ素子11と、放射器1のインピーダンス調整のために設けられる無給電素子12とを含む。ただしループ素子11のみを放射器1として用いてもよい。給電素子としてループ素子を用いることにより、放射器1の利得を高めることが可能になる。
【0021】
位置調整部3は、絶縁性を有し、かつ、円筒状に形成される。位置調整部3(円筒体)の内壁21には、その内壁21に沿うように放射器1(ループ素子11および無給電素子12)が取り付けられる。位置調整部3の外壁22には、その外壁22に沿うように反射器2が取り付けられる。放射器1はたとえば絶縁体のテープ等により位置調整部3の内壁21に固定されてもよいし、位置調整部3の内部に充填される充填材により位置調整部3の内壁21に固定されてもよい。
【0022】
反射器2にはボルト5を通すための穴が2箇所に設けられる。位置調整部3の2箇所にZ方向に沿ったスライド溝4が形成される。反射器2は、その穴がスライド溝4と重なるように位置調整部3に取り付けられる。
【0023】
ボルト5は反射器2の穴およびスライド溝4に通され、位置調整部3の内側においてナット6と結合される。これにより反射器2をZ方向にスライドさせることが可能になるとともに、Z方向の任意の位置において反射器2を固定することができる。
【0024】
なおZ方向とは円筒の中心軸15に沿った方向である。特にアンテナ100を図1に示すように設置した状態には中心軸15の方向はアンテナ100の上下方向に沿った方向となり、Z方向はアンテナ100の下方となる。また、図2においてX方向とは放射器1の中心を通り、かつ、Z方向と垂直な方向である。Y方向とはX方向およびZ方向に垂直な方向である。
【0025】
反射器2をZ方向にスライドさせることによって、アンテナ100の主ビームの方向を変更することが可能になる。特に反射器2の中心位置を放射器1の中心位置よりも下方にずらした場合、放射器1から送信された電波が反射器2で反射するとその電波はアンテナ100の斜め下方に向かって進む。すなわち図1に示すようにアンテナ100の斜め下方に電波を送信することが可能になる。
【0026】
さらに、本実施の形態によれば、反射器2をZ方向にスライドさせるだけでアンテナ100の主ビームの方向を変更させることができる。つまり本実施の形態によれば、複数の給電素子に対して位相差給電を行なう場合に比較して、アンテナの構成を簡単にしながら主ビームの方向を変化させることができる。
【0027】
さらに、本実施の形態によれば、1つの円筒体(位置調整部3)の内壁および外壁に放射器1および反射器2がそれぞれ取り付けられるので、アンテナを小型化することができる。
【0028】
図3は、図2に示す放射器1の展開図である。図3において放射器1(ループ素子11および無給電素子12)は仮想の平面A上に展開される。なお図3に示すY方向およびZ方向は図2に示すY方向およびZ方向とそれぞれ同じである。また、この平面Aはループ素子11のアンテナ主表面に対応する。
【0029】
次に放射器1の寸法について説明する。なお、以下に示す寸法は一例であって、放射器1の寸法は放射器1に求められる性能等に応じて適切に設定することができる。
【0030】
ループ素子11は正方形であり、その1辺の長さは約144mmである。ループ素子11の幅は約12mmである。ループ素子11は給電点FD1,FD2を有する。給電点FD1と給電点FD2との間には約10mmの隙間が形成される。
【0031】
無給電素子12のY方向の長さは約180mmであり、無給電素子12のZ方向の長さは約189mmである。無給電素子12の幅は約15mmである。無給電素子12とループ素子11との間隔(Y方向)は約3mmである。給電点FD1,FD2側における無給電素子12とループ素子11との間隔は約9mmである。給電点FD1(FD2)から最も遠い側における無給電素子12とループ素子11との間隔は約6mmである。
【0032】
<放射器の特性>
図4は、図2に示すアンテナ100の構成要素のうち放射器1のみをX方向、Y方向およびZ方向に沿って見た図である。図4および図2を参照して、X方向に沿って見た場合の放射器1のZ方向の寸法は約189mmである。図2に示すように放射器1(ループ素子11および無給電素子12)は円筒体の内壁に沿うように曲げられてその内壁に取り付けられる。よってZ方向に沿って見た場合、放射器1の形状は円周の一部(ほぼ半円)となる。なお、この円の直径は約115mmである。
【0033】
次に放射器の特性として、利得、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)、前後比、半値幅、および指向性を説明する。なお、指向性を説明する場合には放射器1の放射方向が重要となる。そこで、放射器1の放射方向の理解が容易になるように、放射器1の水平面、および、垂直面についてまず説明する。
【0034】
図5は、ループ素子11のアンテナ主表面、水平面および垂直面の位置関係を説明するための図である。図5において、X方向、Y方向およびZ方向は図2のX方向、Y方向およびZ方向とそれぞれ同じである。
【0035】
電波Sはその電界の方向が水平である水平偏波である。なお、多くの場合、テレビ電波は水平偏波である。
【0036】
YZ平面はループ素子11のアンテナ主表面に対応する。XY平面は電波Sの電界と平行な面であり、かつ、YZ平面と直交する。ZX平面はYZ平面およびXY平面の両方に垂直である。以後、XY平面を「水平面」と称し、ZX平面を「垂直面」と称することにする。
【0037】
図6は、放射器1の利得を示す図である。図6において周波数の範囲は470〜710MHzの範囲である。この範囲は日本における地上デジタル放送の周波数帯に含まれる。470〜710MHzの範囲において放射器1の利得はほぼ0(dB)以上となる。なお利得が高いほど放射器の性能は優れている。
【0038】
ここで、以後説明する図においても周波数の範囲は470〜710MHzの範囲である。このため周波数の範囲に関する説明は以後繰返さない。
【0039】
図7は、放射器1のVSWRを示す図である。VSWRが低いほど放射器の性能は優れている。図7を参照して、470〜710MHzの周波数範囲においてVSWRはほぼ2以下となる。
【0040】
図8は、放射器1の前後比および半値幅を示す図である。前後比とは基準点の方向(角度0度)の放射強度と、基準点の方向に対し180度±60度の範囲の方向の放射強度との比である。半値幅とは、放射強度(放射電力)が最大値の1/2になる角度幅である。
【0041】
図8に示されるように、前後比(実線で示す)は470〜710MHzの周波数範囲においてほぼ0(dB)である。半値幅(破線で示す)は470〜710MHzの周波数範囲において、ほぼ45度から60度までの範囲の値となる。
【0042】
図9は、水平面上での放射器1の指向性を示す図である。図9を参照して、0度の方向は放射器1の放射強度が最大になる方向であり、本実施の形態における「主ビームの方向」に対応する。
【0043】
放射器1が図3に示すように平面上に形成されている場合には、放射器1の指向性は0度および180度方向に強く、90度方向および270度方向に弱い。このため指向性を示す図形はいわゆる「8の字形」となる。しかし本実施の形態では位置調整部3の中心軸15の軸を中心に放射器1を曲げているため、放射器1は水平面における90度方向および270度方向にも指向性を有する。なお、放射器1は470MHz、590MHz、710MHzの各周波数においてほぼ同じ指向性を有する。
【0044】
図10は、垂直面上での放射器1の指向性を示す図である。図10において0度および180度の方向は水平面における0度および180度の方向にそれぞれ対応する。90度および270度の方向は図2に示す放射器1の上方および下方にそれぞれ対応する。本実施の形態においては特に270度から0度までの1/4円の範囲における指向性が重要となる。この範囲における指向性は470MHz、590MHz、710MHzの各周波数においてほぼ同じである。
【0045】
<アンテナの特性(チルトなし)>
図11は、図2に示す放射器1および反射器2をX方向、Y方向およびZ方向に沿って見た図である。なお、図11は、反射器2をZ方向に移動させていない状態を示す。この状態ではX方向から見ると反射器2の中心は放射器の中心と一致する。この状態を「チルトなし」と以後称する。また、X方向から見たときに反射器2の中心が放射器1の中心に対してZ方向にずれた状態を「チルト付き」と以後称することにする。
【0046】
図11を参照して、放射器1のZ方向の寸法は約189mmであるのに対し反射器2のZ方向の寸法は約200mmである。また、反射器2は放射器1を後方から覆うように配置される。図2に示すように反射器2は円筒体の外壁に沿うように曲げられてその外壁に取り付けられる。よってZ方向に沿って見た場合、反射器2の形状は円周の一部となる。なお、この円の直径は約170mmである。
【0047】
図12は、アンテナ100(チルトなし)の正面方向の利得を示す図である。なお正面方向とは図2のX方向に対応する。図12および図6を参照して、反射器2を放射器1の後方に設けることにより、470〜710MHzの周波数範囲において利得が約1〜2(dB)程度高くなっていることが分かる。
【0048】
図13は、アンテナ100(チルトなし)の正面方向のVSWRを示す図である。図13および図7を参照して、530〜710MHzの周波数範囲では反射器2の有無によるVSWRの変化はほとんど生じない。なお、図7と比較すると図13では470〜530MHzの周波数範囲においてVSWRが少し高くなっているが、この範囲におけるVSWRの値は実用面で特に問題ないレベルである。
【0049】
図14は、アンテナ100(チルトなし)の正面方向の前後比および半値幅を示す図である。図14および図8を参照して、反射器2を放射器1の後方に設けることによって前後比と半値幅とがともに大きくなることが分かる。図14は、反射器2によってアンテナ100の正面方向の指向性が強くなることを示す。
【0050】
図15は、水平面上でのアンテナ100(チルトなし)の指向性を示す図である。図16は、垂直面上でのアンテナ100(チルトなし)の指向性を示す図である。図15および図16を参照して、アンテナ100の正面方向(0度方向)の指向性がアンテナ100の後方(180度)の指向性に比べて強いことが分かる。図15および図16からも反射器2を放射器1の後方に設けることによってアンテナ100の正面方向の指向性が強くなることが分かる。
【0051】
<アンテナの特性(チルト付き)>
図17は、アンテナ100(チルト付き)をX方向、Y方向およびZ方向に沿って見た図である。X方向から見ると分かるように、反射器2の中心OBは放射器1の中心OAに対して約80mmだけ放射器1の下方(Z方向)にずれている。
【0052】
図18は、アンテナ100(チルト付き)の正面、かつ、斜め下方での利得を示す図である。図18および図12を参照して、反射器2を放射器1の下方に移動させることにより、470〜710MHzの周波数範囲における利得が高くなっていることが分かる。つまり、図18は反射器2を放射器1の下方に移動させることによって、主ビームの方向が放射器1の斜め下方(すなわちアンテナ100の斜め下方)にチルトしていることを示す。
【0053】
図19は、水平面上でのアンテナ100(チルト付き)の指向性を示す図である。図19および図15を参照して、反射器2を放射器1の下方に移動させても水平面上での指向性にはほとんど変化がないことが分かる。
【0054】
図20は、垂直面上でのアンテナ100(チルト付き)の指向性を示す図である。図20および図16を参照して、反射器2を放射器1の下方に移動させることによりアンテナ100の放射強度が最大となる方向が0度方向からアンテナ100の下方約30度の方向(約330度方向)に変化していることが分かる。この結果はアンテナ100の下方約30度方向に主ビームの方向が傾いていることを示す。
【0055】
以上のように本実施の形態によれば、反射器2を放射器1に対してアンテナ100の上下方向に移動させるだけで主ビームの方向を調整することが可能になる。
【0056】
<変形例>
本実施の形態のアンテナ100の設置場所は特に電柱の頂上に限定されるものではない。本実施の形態のアンテナ100は、小型であり、かつ、主ビームの方向を変化させることができるという利点を有する。このため、本実施の形態のアンテナ100は様々な場所に設置可能である。
【0057】
図21は、本実施の形態のアンテナの第1の変形例を示す図である。図21を参照して、アンテナ100は収納容器200に収納される。収納容器200は取付部材210によって建物の壁面320に取り付けられる。
【0058】
たとえばアンテナ100は、高い建物の陰となり、かつ、テレビ放送局等から送信される電波を直接受信できない地域にテレビ放送信号を再送信する。たとえばその建物の屋上にはテレビ放送局等から送信される電波を受信するための受信アンテナ(図示せず)が設けられる。その受信アンテナからアンテナ100までテレビ放送信号を伝送する伝送線路140の途中には再送信装置120が設けられる。再送信装置120は伝送線路140を介して、電力の大きさが所望の値以下であるテレビ放送信号をアンテナ100に供給する。アンテナ100はこのテレビ放送信号を建物の陰となる地域へ再送信する。
【0059】
図22は、本実施の形態のアンテナの第2の変形例を示す図である。図22を参照して、アンテナ100Aは円筒状に曲げられていない点で図2に示すアンテナ100と異なる。また、アンテナ100Aを収納する収納容器200Aの形状は直方体である。なお図21に示す変形例と同様に収納容器200Aは取付部材210によって建物の壁面320に取り付けられる。
【0060】
なお収納容器200,200Aの地面からの高さは特に限定されないが、たとえば図1の電柱300の高さと同程度(あるいはそれ以上)である。
【0061】
図23は、図22のアンテナ100Aの構成例を示す図である。図23を参照して、位置調整部3は、絶縁基板31,32を含む。絶縁基板31の主表面31Aには放射器1(ループ素子11、無給電素子12)が形成される。絶縁基板32の主表面32Aには反射器2が形成される。なお、反射器2は絶縁基板32において主表面32Aと反対側の面に形成されてもよい。
【0062】
絶縁基板31には複数の穴4Aが形成される。ボルト5はこの穴4Aに通されて図示しないナットと結合される。主表面31A,32Aは平行である。複数の穴4Aのうちのボルト5が通る穴を変えることによって絶縁基板32は絶縁基板31の主表面31Aに沿った方向に移動可能となる。これにより放射器1に対して反射器2を上下方向に移動させることができる。
【0063】
また、本実施の形態のアンテナの放射器および反射器の形状は図2に示すように限定されるものではない。
【0064】
図24は、図2に示す放射器1の変形例を示す図である。図24を参照して、放射器1Aは、導体の棒(管でもよい)を円形に曲げて形成されるループ素子である。このようなループ素子も本実施の形態のアンテナ100の放射器として用いることができる。
【0065】
図25は、本実施の形態のアンテナ100に含まれる反射器の第1の変形例を示す図である。図26は、本実施の形態のアンテナ100に含まれる反射器の第2の変形例を示す図である。図25および図26を参照して、反射器2Aは、無給電素子12と同様にループ状に形成される。反射器2Bは、たとえば中抜き加工が施された板状の導体である。なお複数の導体棒を等間隔で並べ、その複数の棒の一方端同士を導体で接続するとともに、その複数の棒の他方端同士を導体で接続することにより反射器2Bが形成されてもよい。これらの反射器も本実施の形態のアンテナ100の反射器として用いることができる。
【0066】
なお、本実施の形態においては反射器を所定の方向に移動可能としたが、放射器を移動可能としてもよいし、放射器および反射器の両方を移動可能としてもよい。この場合にもアンテナ100による効果と同様の効果を得ることができる。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態に係るアンテナ100の設置例を説明する図である。
【図2】図1のアンテナ100の構成を説明する図である。
【図3】図2に示す放射器1の展開図である。
【図4】図2に示すアンテナ100の構成要素のうち放射器1のみをX方向、Y方向およびZ方向に沿って見た図である。
【図5】ループ素子11のアンテナ主表面、水平面および垂直面の位置関係を説明するための図である。
【図6】放射器1の利得を示す図である。
【図7】放射器1のVSWRを示す図である。
【図8】放射器1の前後比および半値幅を示す図である。
【図9】水平面上での放射器1の指向性を示す図である。
【図10】垂直面上での放射器1の指向性を示す図である。
【図11】図2に示す放射器1および反射器2をX方向、Y方向およびZ方向に沿って見た図である。
【図12】アンテナ100(チルトなし)の正面方向の利得を示す図である。
【図13】アンテナ100(チルトなし)の正面方向のVSWRを示す図である。
【図14】アンテナ100(チルトなし)の正面方向の前後比および半値幅を示す図である。
【図15】水平面上でのアンテナ100(チルトなし)の指向性を示す図である。
【図16】垂直面上でのアンテナ100(チルトなし)の指向性を示す図である。
【図17】アンテナ100(チルト付き)をX方向、Y方向およびZ方向に沿って見た図である。
【図18】アンテナ100(チルト付き)の正面、かつ、斜め下方での利得を示す図である。
【図19】水平面上でのアンテナ100(チルト付き)の指向性を示す図である。
【図20】垂直面上でのアンテナ100(チルト付き)の指向性を示す図である。
【図21】本実施の形態のアンテナの第1の変形例を示す図である。
【図22】本実施の形態のアンテナの第2の変形例を示す図である。
【図23】図22のアンテナ100Aの構成例を示す図である。
【図24】図2に示す放射器1の変形例を示す図である。
【図25】本実施の形態のアンテナ100に含まれる反射器の第1の変形例を示す図である。
【図26】本実施の形態のアンテナ100に含まれる反射器の第2の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1,1A 放射器、2,2A,2B 反射器、3 位置調整部、4 スライド溝、4A 穴、5 ボルト、6 ナット、11 ループ素子、12 無給電素子、15 中心軸、21 内壁、22 外壁、31,32 絶縁基板、31A,32A 主表面、100,100A アンテナ、120 再送信装置、140 伝送線路、200,200A 収納容器、210 取付部材、300 電柱、320 壁面、400 一般家庭、410 アンテナ、420 テレビ受像機、A 平面、FD1,FD2 給電点、OA,OB 中心、S 電波。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射器と、
反射器と、
前記放射器および前記反射器が取り付けられ、かつ、前記放射器および前記反射器の少なくとも一方の取付位置を所定方向に沿って調整可能な位置調整部とを備える、アンテナ。
【請求項2】
前記所定方向は、前記アンテナの設置状態における前記アンテナの上下方向である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記位置調整部は、前記放射器の取付位置を固定するとともに前記反射器の取付位置を調整可能である、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記位置調整部は、絶縁性を有する円筒体であり、
前記所定の方向は、前記円筒体の中心軸に沿った方向である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記放射器は、前記円筒体の内壁に沿って曲げられた状態で前記内壁に取り付けられ、
前記反射器は、前記円筒の外壁に沿って曲げられた状態で前記外壁に取り付けられる、請求項4に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記放射器は、ループ素子を含む、請求項3から5のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記位置調整部は、
第1の主表面を有する第1の絶縁基板と、
前記第1の主表面に沿った方向に移動可能であり、かつ、前記第1の主表面に平行な第2の主表面を有する第2の絶縁基板とを含み、
前記放射器は、前記第1の主表面上に形成され、
前記反射器は、前記第2の主表面上に形成される、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項1】
放射器と、
反射器と、
前記放射器および前記反射器が取り付けられ、かつ、前記放射器および前記反射器の少なくとも一方の取付位置を所定方向に沿って調整可能な位置調整部とを備える、アンテナ。
【請求項2】
前記所定方向は、前記アンテナの設置状態における前記アンテナの上下方向である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記位置調整部は、前記放射器の取付位置を固定するとともに前記反射器の取付位置を調整可能である、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記位置調整部は、絶縁性を有する円筒体であり、
前記所定の方向は、前記円筒体の中心軸に沿った方向である、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記放射器は、前記円筒体の内壁に沿って曲げられた状態で前記内壁に取り付けられ、
前記反射器は、前記円筒の外壁に沿って曲げられた状態で前記外壁に取り付けられる、請求項4に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記放射器は、ループ素子を含む、請求項3から5のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記位置調整部は、
第1の主表面を有する第1の絶縁基板と、
前記第1の主表面に沿った方向に移動可能であり、かつ、前記第1の主表面に平行な第2の主表面を有する第2の絶縁基板とを含み、
前記放射器は、前記第1の主表面上に形成され、
前記反射器は、前記第2の主表面上に形成される、請求項1に記載のアンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
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【図4】
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【図15】
【図16】
【図17】
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【図21】
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【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2008−252264(P2008−252264A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88291(P2007−88291)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】
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