説明

アームの関節

【課題】低コストで軽量・コンパクトなアームの関節を提供する。
【解決手段】直交する2つの回転軸L1、L2周りに相対回転可能に連結された第1リンク1、第2リンク2と、第1リンク1側の回転軸である2本の差動入力軸5a、5bを独立駆動する駆動手段A、Bと、差動入力軸5a、5bの端部に固定され、駆動手段A、Bの駆動制御信号として、各軸の回転角度情報を計測する回転角度センサ30a、30bとを備えたアームの関節であって、駆動手段A、Bが、回転軸の並進方向と回転方向に移動自在に支持され、かつ所定の位置に弾性的に保持されたウォーム12a、12bと、それと係合する一対のウォームホイール11a、11bとを備え、アームの外部環境への衝突または接触による衝撃力を、弾性的に保持されたウォーム12a、12bの並進移動により吸収緩和し、回転角度センサ30a、30bの出力信号に基づき、衝突を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームの関節に関し、特に外部環境(人間・構造物等)との接触および衝突を、特別なセンサを用いることなく検出でき、さらにその衝突力を吸収緩和できる軽量・コンパクトなアーム、特にロボットアームの関節に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットは産業分野のみならず、医療・福祉や家事等のサービス分野などに進出しつつある。このような場所で使用されるロボットは、ロボットが人と作業空間を共有する為、人とロボットの接触や衝突といった双方の干渉を想定せざるを得ない環境となっており、これらに対する安全を確保することが重要となる。
【0003】
一方、このような環境下にあって、産業用ロボットアームに代表される従来のロボットアームは、手先位置精度確保の為、剛性の高い部材と剛性の高いアクチュエータ(減速比の高いギアを用いたモータなど)を組み合わせて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
その為、外部環境(人間・構造物等)が急にロボットアームの予定軌道内に進入した場合、ロボットアームは、ノンバックドライバブルな機構である為、外部環境と接触したときの衝撃力及び接触力の瞬時の緩和が困難であった。この為、人体の安全性を確保する上で改善を必要とするものであった。このようなロボットアームにおいて、外部環境との接触に対する安全性を確保する技術として、さまざまなものが提案されている。
【0005】
例えば、ロボットアーム手先が外部環境(人間・構造物等)に衝突または接触したことを、手首部に設けられた力センサにより検知し、その力の入力(大きさ、方向)に応じて各関節のモータを位置制御し、制御的にバネのような柔軟性を実現する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実公平4―29990号公報
【特許文献2】特開平2−300808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ロボットアームでは、ロボットアーム手先部以外の部分への衝突及び接触には反応できないという課題があった。
【0007】
これに対し、ロボットアーム表面に圧力センサ等を設け、ロボットアーム手先部以外の部分への衝突または接触を検知できるようにしたものもあるが、何れの場合もセンサ入力に基づきモータを制御している為、衝突に対する応答性に限界があり、また電磁波等による誤動作の可能性も高く、確実な動作を期待できないという課題があった。
【0008】
さらに、衝突を検知する為に上記のような特別なセンサを必要としており、センサ配線の断線による誤動作や、ロボットアームの重量増加、コストアップの原因にもなっていた。
【0009】
そこで本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、外部環境との接触及び衝突に対し、応答性良くその力を吸収緩和し、かつ衝突を検知する為の特別なセンサを必要しない、低コストで軽量かつコンパクトなアームの関節を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明のアームの関節は、直交する2つの回転軸周りに相対回転可能に連結された第1リンク、第2リンクと、前記第1リンク側の回転軸である2本の差動入力軸と、前記第2リンク側の回転軸である1本の差動出力軸と、前記差動入力軸の回転速度の和、または相対差を取り出して、前記差動出力軸を前記直交する2つの軸周りに回転させる差動歯車機構と、前記差動入力軸を独立して駆動する一対の駆動手段と、前記差動入力軸の夫々端部に固定され、前記一対の駆動手段の駆動制御信号として、前記夫々の差動入力軸の回転角度情報を計測する一対の回転角度センサと、を備えたアームの関節であって、前記一対の駆動手段が、回転軸の並進方向と回転方向に移動自在に支持され、かつ所定の位置に弾性的に保持された一対のウォームと、それと係合する一対のウォームホイールとを備え、前記アームの外部環境への衝突または接触による衝撃力を、前記弾性的に保持された一対のウォームの並進移動により吸収緩和するとともに、前記回転角度センサの出力信号に基づき、衝突を検知することを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、アームが人間や構造物などの外部環境と接触及び衝突した場合、弾性支持されたウォームがその回転軸方向に並進することにより、衝突力を迅速かつ弾性的に吸収緩和することができる。さらに、アームの関節角制御用に設けられた回転角度センサを衝突検知センサとして兼用することにより、アームの低コスト化、軽量化と迅速な衝突検知を行うことができる。
【0012】
次に、本発明のアームの関節は、中間リンクを介して連結された第1リンク、第2リンクと、一端が前記第1リンクに回転自在に支持され、他端が前記中間リンクに回転自在に連結された互いに同一直線上にある第1a軸、第1b軸と、一端が前記中間リンクに回転自在に支持され、他端が前記第2リンクに固定された第2軸と、前記第1a軸、第1b軸の一端に向かい合って固定された一対の第1傘歯車と、前記第1a軸、第1b軸a軸、第1b軸の中間に固定され、前記第1傘歯車を夫々駆動するウォームホイールと、前記一対の第1傘歯車と係合し、これらの回転方向、速度に基づき自転または公転する第2傘歯車と、前記夫々のウォームホイールに係合し、回転軸の並進方向と回転方向に移動自在に支持され、かつ所定の位置に弾性的に保持された一対のウォームと、前記夫々のウォームを回転駆動し、前記第1リンク内に並設して設けられた一対の駆動源と、前記第1a軸、第1b軸の他端に固定され、前記一対の駆動源の駆動制御信号として、前記第1a軸、第1b軸の回転角度情報を計測する一対の回転角度センサと、を備えたアームの関節であって、前記アームの外部環境への衝突または接触による衝撃力を、前記弾性的に保持された一対のウォームの並進移動により吸収緩和するとともに、前記回転角度センサの出力信号に基づき、衝突を検知することを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、アームが人間や構造物などの外部環境と接触及び衝突した場合、弾性支持されたウォームがその回転軸方向に並進することにより、衝突力を迅速かつ弾性的に吸収緩和することができる。さらに、アームの関節角制御用に設けられた回転角度センサを衝突検知センサとして兼用することにより、アームの低コスト化、軽量化と迅速な衝突検知を行うことができる。
【0014】
また、前記アームの関節における衝突の検知が、前記第1回転角度センサの出力信号から得られる前記第1a軸、第1b軸の夫々の回転角加速度Aθa、Aθbの少なくとも一方が、通常動作時に前記第1a軸、第1b軸に発生可能な最大回転角加速度以上であるか否かに基づき行われてもよい。
【0015】
このような構成によれば、アームが動作中に外部環境に接触または衝突した場合に第1a軸、第1b軸に発生する回転角加速度は、通常アームを駆動する際に当該軸に発生する回転角加速度に比べ、非常に大きなものとなる。その為、第1a軸、第1b軸の回転角
加速度Aθa、Aθbの少なくとも一方が、通常動作時に第1a軸、第1b軸に発生可能な最大回転角加速度以上であるか否かにより、確実かつ迅速に衝突を検知することができる。
【0016】
また、前記アームの関節における衝突の検知が、前記第1回転角度センサの出力信号から得られる前記第1a軸、第1b軸の夫々の回転角度変位Δθa、Δθbの少なくとも一方が、ゼロであるか否かに基づき判断してもよい。
【0017】
このような構成によれば、アームが動作中に外部環境に接触または衝突した場合、第1a軸、第1b軸が外部環境によりその回転が規制されると、その回転角度変位Δθa、Δθbの少なくも一方は、ゼロになる。その為、回転角度変位Δθa、Δθbの少なくとも一方が、ゼロであるか否かにより、確実に衝突を検知することができる。
【0018】
また、前記アームの関節における衝突の検知が、前記第1回転角度センサの出力信号から得られる前記第1a軸、第1b軸の夫々の回転角速度Vθa、Vθbの少なくとも一方が、ゼロであるか否かに基づき判断してもよい。
【0019】
このような構成によれば、アームが動作中に外部環境に接触または衝突した場合、第1a軸、第1b軸は外部環境によりその回転が規制されるため、その回転角速度Vθa、Vθbの少なくとも一方は、ゼロになる。その為、回転角速度Vθa、Vθbの少なくも一方が、ゼロであるか否かにより、確実に衝突を検知することができる。
【0020】
次に、本発明のアームの関節は、中間リンクを介して連結された第1リンク、第2リンクと、一端が前記第1リンクに回転自在に支持され、他端が前記中間リンクに回転自在に連結された互いに同一直線上にある第1a軸、第1b軸と、一端が前記中間リンクに回転自在に支持され、他端が前記第2リンクに固定された第2軸と、前記第1a軸、第1b軸の一端に向かい合って固定された一対の第1傘歯車と、前記第1a軸、第1b軸a軸、第1b軸の中間に固定され、前記第1傘歯車を夫々駆動するウォームホイールと、前記一対の第1傘歯車と係合し、これらの回転方向、速度に基づき自転または公転する第2傘歯車と、前記夫々のウォームホイールに係合し、回転軸の並進方向と回転方向に移動自在に支持され、かつ所定の位置に弾性的に保持された一対のウォームと、前記夫々のウォームを回転駆動し、前記第1リンク内に並設して設けられた一対の駆動源と、前記第1a軸、第1b軸の他端に固定され、前記一対の駆動源の駆動制御信号として、前記第1a軸、第1b軸の回転角度情報を計測する一対の第1回転角度センサと、前記駆動源の端部に固定され、前記一対の駆動源の駆動制御信号として、前記駆動源の回転角度情報を計測する一対の第2回転角度センサと、を備えたアームの関節であって、前記アームの外部環境への衝突または接触による衝撃力を、前記弾性的に保持された一対のウォームの並進移動により吸収緩和するとともに、前記第1回転角度センサの出力信号と第2回転角度センサの出力信号とに基づき、衝突を検知することを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、アームが人間や構造物などの外部環境と接触及び衝突した場合、弾性支持されたウォームがその回転軸方向に並進することにより、衝突力を迅速かつ弾性的に吸収緩和することができる。さらに、アームの関節角度制御用として設けられた第1回転角度センサ、第2回転角度センサを衝突検知センサと兼用し、その出力値を用いて衝突したかどうかを判断することができる。これにより、衝突を検知する為の特別なセンサが必要なくなり、アームの低コスト化、軽量化と迅速な衝突検知を行うことができる。
【0022】
また、前記アームの関節における衝突の検知が、前記第1回転角度センサの出力信号から得られる前記第1a軸、第1b軸の夫々の実回転角度θa、θbと、前記第2回転角度
センサの出力信号から得られる前記第1a軸、第1b軸の夫々の駆動回転角度θam、θbmとの差分(θa―θam)、(θa−θbm)の少なくとも一方が、ゼロであるか否かに基づき判断してもよい。
【0023】
このような構成によれば、アームが動作中に外部環境に接触または衝突した場合、外部環境により第1a軸、第1b軸の回転が規制されると、第1a軸、第1b軸一端に固定された第1回転角度センサから得られる第1a軸、第1b軸の夫々の回転角度θa、θbの少なくとも一方は、衝突時点の角度に規制される。この時、衝突時点の角度に規制されている第1a軸、第1b軸に固定されたウォームホイールも、その回転が規制されることになるが、それと係合するウォームは、その回転軸に沿って摺動可能なため、並進を行いながら回転を継続する。この時、ウォームを駆動する夫々の駆動源も回転を継続することになる。その結果、駆動回転角度θam、θbmの少なくとも一方は、回転角度θa、θbと異なる値となり、その差分(θa―θam)、(θa−θbm)の少なくとも一方も、ゼロ以外の値をとる為、衝突を検知することができる。
【0024】
また、前記一対のウォームが、その回転軸に対する並進方向の移動に対し、相対移動速度に応じた抵抗を発生する速度抵抗手段をさらに備えてもよい。
【0025】
このような構成によれば、アームが外部環境に接触または衝突した際、さらに、ウォームが速度抵抗手段を備えるため、その回転軸方向に並進することで、速度抵抗手段によるエネルギー消散作用をも利用することができるので、衝突力をより吸収することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上述べたように本発明によれば、外部環境との接触及び衝突に対する応答性が良く、衝突力を迅速かつ弾性的に吸収緩和し、衝突を検知する為の特別なセンサを必要しない、低コストで軽量かつコンパクトなアームの関節を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0028】
(実施の形態1)
まず、図1、図2を参照しながら、本発明の実施の形態1におけるアームの関節について説明する。なお、ここではアームの関節、特にロボットアームの関節について説明を行うが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々のアームの関節に適用が可能である。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態1におけるロボットアームの関節の概略断面図である。また、図2は、図1に示す駆動手段Aを側面から見た場合の主要構造断面図である。
【0030】
図1に示すようにロボットアームの関節は、第1リンクとしての第1アーム1と第2リンクとしての第2アーム2が、中間リンクとしての中間アーム3を介して連結されている。中間アーム3は、軸受け4を介して第1アーム1に回転自在に支持され、同一軸線L1上にあって対向する差動入力軸としての第1a軸5a、第1b軸5bに対し、軸受け6を介して回転自在に連結されている。また第2アーム2は、第1a軸5a、第1b軸5bの軸線L1と直交する軸線L2上にあって、中間アーム3に軸受け7を介して回転自在に支持されている差動出力軸としての第2軸8の端部に剛に固定結合されている。
【0031】
さらに、第1a軸5a、第1b軸5b、第2軸8の一端には、差動歯車機構Cを構成する第1の傘歯車9a、9b、第2の傘歯車10がそれぞれ固定されている。なお、第1の
傘歯車9a、9bと第2の傘歯車10は、ともに同一形状、同一寸法に形成されている。また、第2の傘歯車10は、第1の傘歯車9a、9bの双方と噛み合う位置に配置され、第2軸8と一体的に形成されており、その端部に形成されたネジ部(不図示)を利用して、第2アーム2と一体的に剛結合されている。また、第1a軸5a、第1b軸5bの中間部付近には、ウォームホイール11a、11bがそれぞれ剛に固定されている。
【0032】
一方、前記第1アーム1内には駆動手段Aと駆動手段Bとが並列に収納されている。なお、駆動手段A、駆動手段Bは同一のものであるので、ここでは図1、図2を用いて駆動手段Aについて説明する。
【0033】
12aは、それぞれウォームホイール11aと係合するウォームである。ウォーム12aは、軸線L1と直交する軸線L3a上にあって、第1アーム1(支持壁17a、18a)に対し、軸受け13aを介して回転自在に支持されている駆動シャフト14aに回転方向が規制された状態で結合されている。すなわち、ウォーム12aは、駆動シャフト14aに対し、例えばキー状の結合(不図示)により並進方向の移動が許容された状態で結合されている。なお、ウォーム12a、12b及びウォームホイール11a、11bは、ともに同一モジュール、同一歯数、同一径であり、歯のねじり方向も同一方向(図は左ねじ)に形成されている。
【0034】
駆動シャフト14aの一端部には、ギア19aが剛に結合されている。支持壁17a、18aとウォーム12aとの間には、それぞれバネ16aが残留圧縮復元力を保持して内部に駆動シャフト14を挿入した状態で設けられており、その支持壁17a、18b側端部には、各バネを受止するバネ座15aが挿入されている。すなわち、ウォーム12aは、その両端面に働くバネ16aの残留圧縮復元力により、駆動シャフト14a上における所定駆動位置へ、弾性的に保持(センタリング)されている。バネ16aとしては、コイルバネが好適であるが、これに限定されるものではなく、その他に例えば、板バネ、皿バネ、渦巻きバネ等を使用してもよい。なお、このバネ16aの初期圧縮量は、ウォーム12aが軸線L3a方向へ並進移動した際も残留圧縮復元力が保持される程度に設定することが望ましい。
【0035】
21aは、駆動源であり、本実施の形態では公知の駆動用モータとバックラッシのない減速機構とにより構成されている。駆動源21aは、第1アーム1の支持壁26aに固定されており、その出力軸22a端部には、駆動シャフト14a端部に剛結合されたギア19aと係合するギア20aが剛に結合されている。すなわち、駆動源21aによる駆動力はギア20a、ギア19aを介して、駆動シャフト14aに伝達される。
【0036】
また、図1に示す23は、駆動源21a、21bを制御する制御装置、24は、操作指令を入力する為の入力部である。入力部24は、外部に構成される上位制御装置(図示せず)からの操作指令が入力される。また、ロボットアームを遠隔操縦可能に構成する場合は、入力部24として、各種入力デバイスなどを備える。入力デバイスとしては、例えば、公知のキー入力装置、ゲームパッド、ジョイステック、タッチパネルなどを使用することができる。
【0037】
制御装置23は、プログラムに基づいて各種機能を実行する中央処理装置(CPU)、各種プログラムなどを記憶している読み出し専用リードオンリーメモリ(ROM)と、データを一時格納する書き換え可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、外部とのデータの入出力を行う入出力部とを備えている。これにより、制御装置23は、入力部24から得た操作指令情報と、第1a軸5a、第1b軸5b端部に連結結合された回転角度センサ30a、30bから得た各軸の回転角度情報(回転角度、回転角速度等)とに基づいて、各種プログラムを実行しつつ、モータドライバ(不図示)を介して駆動源21a、21
bを駆動制御する。また、制御装置23は、回転角度センサ30a、30bから得た第1a軸5a、第1b軸5bの回転角度情報に基づいて、第1アーム1に対する第2アームの位置、姿勢を検知することができる。回転角度センサ30a、30bには、例えば、抵抗素子と摺動タップから構成されるポテンショメータ、符号板とフォトセンサとから構成される光学式エンコーダ、ホール素子や磁気抵抗素子とN、S2極着磁の回転磁石とを用いた磁気式エンコーダなどを使用することができる。特に、光学式エンコーダや磁気式エンコーダは出力がディジタル信号である為、ノイズに強く、回転角度と回転角速度を検出することができる。また、ポテンショメータの場合は、例えばコンダクティブ(導電)プラスチック型ポテンショメータを使用することが望ましい。コンダクティブプラスチック型ポテンショメータは、角度分解能が高く、耐摩耗性にも優れ、高速追従性にも優れている。
【0038】
以上のように構成されたロボットアームの関節について、図1、図2を用いて、以下その基本的な動作を説明する。
【0039】
まず、第1アーム1に対して、第2アーム2を旋回する場合、すなわち図1のピッチ方向(P)に旋回する場合について説明する。この場合は、駆動源21aと21bの出力軸22a、22bを同一方向へ同回転数で回転させる。すると、ギア20a、20b、ギア19a、19bを介して駆動軸14a、14bは、それぞれ同方向に同角度で回転する。この時、例えば、図2に示すようにウォーム12a、12bがC方向に回転しているとすると、ウォーム12a、12bの歯のねじり方向により、ウォームホイール11a、11bはD方向に回転する。ウォームホイール11a、11bは、第1a軸5a、第1b軸5bに剛結合されている為、その先端に同じく剛結合されている第1の傘歯車9a、9bは、互いに同方向に同角度で回転する。この時、第1傘歯車9a、9bと係合する第2傘歯車10は、いずれの方向へも回転できず、第2軸8と第2傘歯車10と第1傘歯車9a、9bとが一体となって、軸線L1周りで公転する。すなわち、第1アーム1に対して、第2アーム2は軸線L1周りにピッチ方向(P)、紙面手前側に旋回することになる。またこの場合、駆動源21a、22bとの出力軸22a、22bの回転数が相対的に異なると、第2傘歯車10は、第1アーム1の軸線L1周りで公転するだけでなく、第2アームの軸線L2周りで自転し、図1に示すようにピッチ方向(P)の旋回に加え、ロール方向(R)の回転も行う。
【0040】
次に、第1アーム1に対して、第2アームを回転する場合、すなわち図1のロール方向(R)に回転する場合について説明する。この場合は、駆動源21aと21bの出力軸22a、22bを逆方向へ同回転数で回転させる。すると、ギア20a、20b、ギア19a、19bを介して駆動軸14a、14bは、それぞれ逆方向に同回転数で回転する。この時、例えば、図2に示すようにウォーム12aがC方向に、12bがC方向と逆方向に回転しているとすると、ウォーム12a、12bの歯のねじり方向により、ウォーム11aはD方向に、ウォーム11bはD方向と逆方向に回転する。ウォームホイール11a、11bは、第1a軸5a、第1b軸5bに剛結合されている為、その先端に同じく剛結合されている第1の傘歯車9a、9bは、互いに逆方向に同回転数で回転する。この時、第1傘歯車9a、9bと係合する第2傘歯車10は、軸線L2周りで自転する。すなわち、第1アーム1に対して、第2アーム2はロール方向(R)に回転することになる。この場合においても、駆動源21aと21bとの出力軸22a、22bの回転数が相互に異なると、第2傘歯車10は軸線L2周りで自転するだけでなく、軸線L1周りを公転し、第1アーム1に対する第2アーム2の回転に旋回が伴う。
【0041】
この時、第1a軸5a、第1b軸5b端部に剛に連結結合された回転角度センサ30a、30bにより取得される、第1a軸5a、第1b軸5bの回転角度がそれぞれθa、θbであったとすると、第2アーム2の第1アーム1に対する旋回角度θp、回転角度θr
は、下式(1)、(2)となる。
【0042】
θp=1/2(θa+θb)・・・・(1)
θr=1/2(θa―θb)・・・・(2)
ここで、第1a軸5a、第1b軸5bの回転、すなわち、第1傘歯車9a、9bの回転が同方向、同回転角度であった場合、回転角度θa、θbは、θa=θbとなるので、式(1)、式(2)より、第2アーム2は第1アーム1に対して、旋回角度θp=θa=θb、回転角度θr=0の動作を行うことになる。一方、第1a軸5a、第1b軸5bの回転、すなわち、第1傘歯車9a、9bの回転が逆方向、同回転角度であった場合、回転角度θa、θbは、θa=―θbとなるので、式(1)、式(2)より、第2アーム2は第1アーム1に対して、旋回角度θp=0、回転角度θr=θa=―θbの動作を行う。また何れの場合も、回転角度θa、θbに相対角度差がある場合は、式(1)、式(2)から求められる角度に基づき、第2アーム2は第1アーム1に対して旋回しつつ回転を行うことになる。
【0043】
なお、式(1)、式(2)は、第1a軸5a、第1b軸5bの回転、すなわち、第1傘歯車9a、9bの回転角度θa、θbと、第2アーム2の第1アーム1に対する旋回角度θp、回転角度θrとの関係を表す式であるが、回転角速度、回転角加速度に関しても同様の関係式が成り立つ。
【0044】
次に、図3、図4を参照しながら、本発明の構成上の特徴であるロボットアーム関節における衝突力の吸収緩和動作について説明する。
【0045】
まず第1の例として、図3を用いて、軸線L1(以下、旋回軸)、L2(以下、回転軸)に垂直な衝突力Fが第2アーム先端2aに負荷された場合の衝突力の吸収緩和動作について説明する。
【0046】
図3(a)は、本実施の形態におけるロボットアームの関節を示す模式図である。同図に示すように、第2アーム2の先端2aに衝突力F(旋回軸L1及び回転軸L2に対して垂直方向)が負荷された場合には、この衝突力Fにより、旋回軸L1周りに回転トルクOが発生する。この回転トルクOは、図3(b)に示すように、第2傘歯車10、第1傘歯車9a、9b、第1a軸5a、第1b軸5b等を通じて、第1a軸5a、第1b軸5bと剛に結合されているウォームホイール11a、11bに回転力として伝達される。この回転力は、図3(c)に示すように、ウォームホイール11a(b)とウォーム12a(b)の噛み合い部を通じて、ウォーム12a(b)に並進力Pを発生させる。この時、この並進力Pが必要以上の力であった場合は、ウォーム12a(b)が軸線L3a(b)方向に摺動し、その両端に配置されたバネ16a(b)の弾性作用により、その力が吸収緩和される。
【0047】
また、衝突力Fが免荷された後は、バネ16a、16bの圧縮復元力によるウォーム12a、12bのセンタリング作用により、ウォーム12a、12bは元の噛み合い位置に自動的に復帰し、これにより第2アーム2は第1アーム1に対して、衝突前の姿勢に自動的に復帰する。
【0048】
次に第2の例として、図4を用いて、回転軸L2周りの衝撃トルクTが、第2アームに負荷された場合の衝突力の吸収緩和動作について説明する。
【0049】
図4(a)は、図3(a)と同様、本実施の形態におけるロボットアームの関節を示す模式図である。同図に示すように、第2アーム2に衝突トルクT(軸線L2周り)が負荷された場合には、図4(b)に示すように、第2傘歯車10、第1傘歯車9a、9b、第
1a軸5a、第1b軸5b等を通じて、第1a軸5a、第1b軸5bと剛に結合されているウォームホイール11a、11bに、それぞれ回転力O、O’として伝達される。この内、回転力O’は、図4(c)に示すように、ウォームホイール11aとウォーム12aの噛み合い部を通じて、ウォーム12aに並進力P’を発生させる。この時、この並進力P’が必要以上の力であった場合は、ウォーム12aが軸線L3a方向に摺動し、その両端に配置されたバネ16aの弾性作用によって、その力が吸収緩和される。なお、回転力Oに対するウォーム11bの吸収緩和動作は、先に説明した第1の例(図3(c))と同様であるので説明を省略する。
【0050】
また、衝突トルクMが免荷された後は、第1の例と同様、バネ16a、16bの圧縮復元力によるウォーム12a、12bのセンタリング作用により、ウォーム12a、12bは元の噛み合い位置に自動的に復帰し、これにより第2アーム2は第1アーム1に対して、衝突前の姿勢に自動的に復帰する。
【0051】
なおここでは、衝突力の吸収緩和動作として、第1の例及び第2の例を用いて説明したが、本発明はこれに限定される訳ではなく、例えば、衝突力と衝突トルクが同時に負荷される場合であっても、同様の動作により衝撃力及び衝撃トルクを吸収緩和できる。
【0052】
また、第2アーム2と外部環境との衝突を、後述する衝突検知方法により検出し、駆動源21a、22bを停止、すなわちモータへの通電を遮断した場合も、モータが慣性エネルギーを有していることから、モータとギア等を介して連結されているウォーム12a、12bには暫く回転力が働く。しかしながら、この時、ウォーム12a、12bは、回転しながら軸線L3a、L3bに沿って摺動する為、モータの慣性エネルギーは、ウォーム12a、12bの両端に配置されたバネ16a、16bの弾性作用により吸収緩和される。その結果、モータの慣性により、衝突した外部環境に対し、さらに力を加えることを防止できる。
【0053】
また、本実施の形態で説明したウォーム12a、12bに替えて、図5に示すような、駆動シャフト14a(b)との間に速度抵抗手段としての粘性物質32を封入したウォーム31a(b)を用いても良い。粘性物質32としては、好ましくはゲル状の物質や高粘性のオイル状物質が利用可能である。粘性物質32は、駆動シャフト14a(b)とウォーム31a(b)間の相対速度に応じた抵抗力を発生する物質である。このような構成とすることにより、ロボットアームが外部環境に接触または衝突した際、その衝突力をバネ16a(b)による弾性作用に加え、粘性物質32の粘性によるエネルギー消散作用をも利用して吸収緩和できる。また、衝突力Fや衝突トルクT等の免荷時にバネ16a(b)に蓄積されていた弾性エネルギーが瞬時に解放されることがないので、より安全であるという利点がある。
【0054】
次に、図6を参照しながら、ロボットアーム関節の衝突検知動作について説明する。図6は、本発明の実施の形態1におけるロボットアーム関節の関節角度制御用として設けられた、回転角度センサ30a、30bを用いた衝突検知動作を説明するフローチャートである。
【0055】
図6(a)は、衝突検知動作の第一の例を示すフローチャートである。図6(a)に示すように、まずロボットアームの入力部24に対し、
目標値などの操作指令を入力する(S100)。
【0056】
次に、制御装置23は、入力部24から得た操作指令情報と、第1a軸5a、第1b軸5b端部に連結結合された回転角度センサ30a、30bから得た各軸の回転角度情報(回転角度、回転角速度等)とに基づいて、ロボットアーム関節の駆動源21a、21bを
駆動制御する(S102)。
【0057】
次に、制御装置23は、ロボットアーム関節の第1a軸5a、第1b軸5bの端部に剛に連結結合された回転角度センサ30a、30bの出力値から、第1a軸5a、第1b軸5bそれぞれの回転角加速度θ"a、θ"bを演算し、監視する(S104)。
【0058】
次に、制御装置23は、上記回転角加速度AθaまたはAθbが閾値以上であるかどうかを判断する(S106)。制御装置23は、前記回転角加速度AθaまたはAθbが閾値を超える場合は、外部環境との「衝突あり」と判断し、ロボットアーム関節の駆動源21a、21bの駆動を直ちに停止する(S110)。一方、制御装置23は、前記回転角加速度AθaおよびAθbの何れも閾値を越えない場合は、外部環境との「衝突なし」と判断する。
【0059】
なお、この閾値は、駆動源21a、21bの最大出力、および駆動源21a、21bの各モータから第1a軸5a、第1b軸5bまでの間の動力伝達系の減速比から算出される、第1a軸5a、第1b軸5bの最大回転角加速度以上の値が設定されていることが望ましい。ロボットアームが動作中に外部環境に接触または衝突した場合に第1a軸5a、第1b軸5bに発生する回転角加速度は、通常ロボットアームを駆動する際に発生する回転角加速度に比べ、非常に大きなものとなる。その為、上記のように閾値設定を行っておくことにより、確実に衝突を検知することができる。
【0060】
さらに、制御装置23は、外部環境との「衝突なし」と判断したときには、回転角度センサ30a、30bの出力値から、操作指令が満足されたかどうかを判断し、満足された場合は、ロボットアーム関節の駆動源21a、21bの駆動を停止し、動作を停止する(S110)。一方、操作指令が満足されていない場合は、S102に戻り、引き続き関節の駆動制御を続行する。
【0061】
図6(b)は、衝突検知動作の第二の例を示すフローチャートである。図6(b)に示すように、まずロボットアームの入力部24に対し、
目標値などの操作指令を入力する(S200)。
【0062】
次に、制御装置23は、入力部24から得た操作指令情報と、ロボットアーム関節の第1a軸5a、第1b軸5b端部に連結結合された回転角度センサ30a、30bから得た各軸の回転角度情報(回転角度、回転角速度等)とに基づいて、ロボットアーム関節の駆動源21a、21bを駆動制御する(2102)。
【0063】
次に、制御装置23は、ロボットアーム関節の第1a軸5a、第1b軸5bの端部に剛に連結結合された回転角度センサ30a、30bの出力値から、第1a軸5a、第1b軸5bそれぞれの関節角度変位Δθa、Δθbを演算し、監視する(S204)。
【0064】
次に、制御装置23は、回転角度センサ30a、30bの出力値から、操作指令が満足されたかどうかを判断する(S206)。この時、操作指令が満足されたと判断した場合は、制御装置23は、ロボットアーム関節の駆動源21a、21bの駆動を停止し、動作を停止する(S210)。
【0065】
一方、操作指令が満足されていないと判断した場合は、制御装置23は、前記回転角度変位Δθa、Δθbの少なくとも一方が、一定時間ゼロであるかどうかを判断する(S208)。この時、前記回転角度変位Δθa、Δθbの少なくとも一方が、一定時間ゼロである場合、制御装置23は、外部環境との「衝突あり」と判断し、ロボットアーム関節の駆動源21a、21bの駆動を直ちに停止する(S110)。一方、前記回転角度変位Δ
θaおよびΔθbとも、一定時間ゼロでない場合は、外部環境との「衝突なし」と判断し、S102に戻り、引き続き関節の駆動制御を続行する。
【0066】
ロボットアームが動作中に外部環境に接触または衝突した場合、第1a軸5a、第1b軸5bが外部環境によりその回転が規制され、その回転角度変位Δθa、Δθbの少なくとも一方はゼロになる。その為、前記回転角度変位を監視することにより、衝突を検知できる。なお、ここでは、監視対象として関節角度変位Δθa、Δθbとしているが、同様の原理により、監視対象を関節角速度Vθa、Vθbに置き換えても良い。
【0067】
以上のように、本実施の形態によれば、ロボットアームが外部環境(人間、構造物など)と接触または衝突した場合、弾性支持されたウォームがその回転軸方向に並進することにより、衝撃力を迅速かつ弾性的に吸収緩和することができる。
【0068】
さらに、本実施の形態によれば、ロボットアームの関節角度制御用として設けられた回転角度センサを衝突検知センサと兼用し、その出力値を用いて衝突したかどうかを判断することができる。これにより、衝突を検知する為の特別なセンサが必要なくなり、ロボットアームの低コスト化、軽量化と迅速な衝突検知を行うことができる。
【0069】
なお、本実施の形態では、ウォーム12a、12bを、駆動シャフト14a、14bに対し、並進方向への移動を許可した状態で結合したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ウォーム12a、12bを駆動シャフトに剛結合し、駆動シャフト14a、14bをその軸方向L3a、L3b方向に並進可能な構成としても良い。なお、この場合は、駆動シャフト14a、14bの並進ストロークに応じて、ギア19a、19bとギア20a、20bの係合状態を維持できるよう、ギア19a、19bの軸方向の歯幅を決定すると良い。
【0070】
なお、本実施の形態では、ロボットアーム自身の外部環境との接触または衝突に関して説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ロボットアームを用いた物品のプレース動作において、プレース時に床等との接触により物品に作用する衝撃力もロボットアームの関節で吸収緩和することができる。これにより、プレース動作時におこる物品の破損を防止することもできる。
【0071】
また、本発明のロボットアームの関節は、例えば、多関節マニピュレータやマジックハンド等、各種のロボットアームの関節として用いることができる。その為、より安全なロボットアームやこれを備えたロボットを提供できるという利点がある。なお、ロボットとしては特に限定されるものではなく、産業用のロボットの他、例えば知能ロボット、医療・福祉ロボット、家事ロボット等の各種のロボットが挙げられる。
【0072】
(実施の形態2)
次に、図7、8を参照しながら、本発明の実施の形態2におけるロボットアームの関節について説明する。図7は、本発明の実施の形態2におけるロボットアーム関節の概略断面図、図8は、同ロボットアーム関節の衝突検知動作を説明するフローチャートである。
【0073】
図7に示す本実施の形態のロボットアーム関節は、実施の形態1の駆動源21a、21bのモータ出力軸22a、22bの反対側に、モータの回転角度情報(回転角度、回転角速度等)を計測する第2回転角度センサ25a、25bをさらに設けたものであり、その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0074】
本実施の形態では、制御装置23は、入力部24から得た操作指令情報と、ロボットアーム関節の第1a軸5a、第1b軸5b端部に連結結合された第1回転角度センサ33a
、33bから得た各軸の回転角度情報(回転角度、回転角速度等)に加え、第2回転角度センサ25a、25bから得た各モータの回転角度情報(回転角度、回転角速度等)とに基づいて、各種プログラムを実行しつつ、モータドライバ(不図示)を介して駆動源21a、21bを駆動制御する。このように駆動源21a、21bの駆動制御に、第2回転角度センサ25a、25bから得た各モータの回転角度情報も用いることにより、より精度の高いロボットアーム関節の駆動制御を行うことが可能となる。
【0075】
なお、第2回転角度センサ25a、25bには、例えば、抵抗素子と摺動タップから構成されるポテンショメータ、符号板とフォトセンサとから構成される光学式エンコーダ、ホール素子や磁気抵抗素子とN、S2極着磁の回転磁石とを用いた磁気式エンコーダなどを使用することができる。特に、光学式エンコーダや磁気式エンコーダは出力がディジタル信号である為、ノイズに強く、回転角度と回転角速度を検出することができる。また、ポテンショメータの場合は、例えばコンダクティブ(導電)プラスチック型ポテンショメータを使用することが望ましい。コンダクティブプラスチック型ポテンショメータは、角度分解能が高く、耐摩耗性にも優れ、高速追従性にも優れている。
【0076】
ロボットアームと外部環境との接触及び衝突に対する、ロボットアーム関節の衝突力の吸収緩和動作については、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略し、相違点である同ロボットアーム関節の衝突検知動作のみ、図8を用いて説明する。以下、実施の形態1と同様の構成要素については、同一符号を付して説明する。
【0077】
以下、図8を参照しながら、ロボットアーム関節の衝突検知動作について説明する。図8は、本発明の実施の形態2におけるロボットアーム関節の関節角度制御用として設けられた第1回転角度センサ33a、33b、及び第2回転角度センサ25a、25bを用いた衝突検知動作を説明するフローチャートである。
【0078】
図8に示すように、まずロボットアームの入力部24に対し、目標値などの操作指令を入力する(S300)。
【0079】
次に、制御装置23は、入力部24から得た操作指令情報と、ロボットアーム関節の第1a軸5a、第1b軸5b端部に連結結合された第1回転角度センサ33a、33bから得た各軸の回転角度情報(回転角度、回転角速度等)と、第2回転角度センサ25a、25bから得た各モータの回転角度情報(回転角度、回転角速度等)とに基づいて、駆動源21a、21bを駆動制御する(S302)。
【0080】
次に、制御装置23は、第2回転角度センサ25a、25bから得た各モータの回転角度情報と、各モータから第1a軸5a、第1b軸5bまでの間に設けられた動力伝達系の減速比とに基づいて、第1a軸5a、第1b軸5bの駆動回転角度θam、θbmを算出する(S304)。
【0081】
次に、制御装置23は、上記で算出した駆動回転角度θam、θbmと第1回転角度センサ33a、33bにより得られた実回転角度の差分を監視する(S306)。
【0082】
次に、制御装置23は、差分(θa−θam)、(θb−θbm)の少なくとも一方がゼロであるか否かを判断する(S308)。この時、差分(θa−θam)、(θb−θbm)の少なくも一方がゼロでない場合は、制御装置23は、ロボットアームと外部環境との「衝突あり」と判断し、ロボットアーム関節の駆動源21a、21bの駆動を直ちに停止する(S312)。
【0083】
一方、差分(θa−θam)および(θb−θbm)ともゼロとなる場合は、制御装置
23は、外部環境との「衝突なし」と判断し、次に操作指令が満足されたかどうかの判断に進む(S310)。
【0084】
そしてここで、操作指令が満足されたと判断された場合は、ロボットアーム関節の駆動源21a、21bの駆動を停止し、動作を停止する(S312)。一方、操作指令が満足されていないと判断された場合は、再びS302に戻り、引き続き関節の駆動制御を続行する。
【0085】
ロボットアームが動作中に外部環境に接触または衝突した場合、第1a軸5a、第1b軸5bが外部環境によりその回転が規制され、第1回転角度センサ33a、33bから出力される第1a軸5a、第1b軸5bの実回転角度θa、θbの少なくとも一方が衝突時点の角度に規制される。この時、衝突時点の角度に規制されている第1a軸5a、第1b軸5bに固定結合されたウォームホイール11a、11bも、その回転が規制されることになるが、それと係合するウォーム12a、12bは、軸線L3a、L3bに沿って摺動可能なため、並進を行いながら回転を継続する。この時、ウォーム12a、12bを駆動する駆動源21a、21bの各モータも回転を継続することになる。その結果、駆動回転角度θam、θbmの少なくとも一方は、実回転角度θa、θbと異なる値となり、その差分(θa−θam)、(θb−θbm)の少なくとも一方も、ゼロ以外の値となる。よってこの差分(θa−θam)、(θb−θbm)を監視することにより、衝突を検知することができる。
【0086】
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1同様、ロボットアームの関節角度制御用として設けられた第1回転角度センサ、第2回転角度センサを衝突検知センサと兼用し、その出力値を用いて衝突したかどうかを判断することができる。これにより、衝突を検知する為の特別なセンサが必要なくなり、ロボットアームの低コスト化、軽量化と迅速な衝突検知を行うことができる。
【0087】
なお、本発明のアームの関節は、実施の形態1同様、例えば、多関節マニピュレータやマジックハンド等、各種のロボットアームの関節として用いることができる。その為、より安全なロボットアームやこれを備えたロボットを提供できるという利点がある。なお、ロボットとしては特に限定されるものではなく、産業用のロボットの他、例えば知能ロボット、医療・福祉ロボット、家事ロボット等の各種のロボットが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係るアームの関節は、衝突に対する応答性が良く、衝突力を迅速かつ弾性的に吸収緩和し、衝突を検知する為の特別なセンサを必要しない、低コストで軽量かつコンパクトなアームの関節として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態1におけるロボットアーム関節の概略断面図
【図2】同ロボットアーム関節の駆動手段A(B)を側面から見た時の主要構造断面図
【図3】同ロボットアーム関節の衝撃吸収動作の第1の例を示す図
【図4】同ロボットアーム関節の衝撃吸収動作の第2の例を示す図
【図5】同ロボットアーム関節の駆動手段A(B)の別の構成例を側面から見た時の主要構造断面図
【図6】同ロボットアーム関節の衝突検知動作を説明するフローチャート
【図7】本発明の実施の形態2におけるロボットアーム関節の概略断面図
【図8】同ロボットアーム関節の衝突検知動作を説明するフローチャート
【符号の説明】
【0090】
1 第1アーム
2 第2アーム
3 中間アーム
4,6,7,13a,13b 軸受け
5a,5b 第1a軸、第1b軸(差動入力軸)
8 第2軸(差動出力軸)
9a,9b 第1傘歯車
10 第2傘歯車
11a,11b ウォームホイール
12a,12b,31a,31b ウォーム
14a,14b 駆動軸
15a,15b バネ座
16a,16b バネ
17a,17b,18a,18b,26a,26b 支持壁
20a,20b,21a,21b ギア
21a,21b 駆動源
22a,22b 出力軸
23 制御装置
24 入力部
25a,25b 第2回転角度センサ
30a,30b 回転角度センサ
32 粘性物質(速度抵抗手段)
33a,33b 第1回転角度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交する2つの回転軸周りに相対回転可能に連結された第1リンク、第2リンクと、
前記第1リンク側の回転軸である2本の差動入力軸と、
前記第2リンク側の回転軸である1本の差動出力軸と、
前記差動入力軸の回転速度の和、または相対差を取り出して、前記差動出力軸を前記直交する2つの軸周りに回転させる差動歯車機構と、
前記差動入力軸を独立して駆動する一対の駆動手段と、
前記差動入力軸の夫々端部に固定され、前記一対の駆動手段の駆動制御信号として、前記夫々の差動入力軸の回転角度情報を計測する一対の回転角度センサと、を備えたアームの関節であって、
前記一対の駆動手段が、回転軸の並進方向と回転方向に移動自在に支持され、かつ所定の位置に弾性的に保持された一対のウォームと、それと係合する一対のウォームホイールとを備え、
前記アームの外部環境への衝突または接触による衝撃力を、前記弾性的に保持された一対のウォームの並進移動により吸収緩和するとともに、前記回転角度センサの出力信号に基づき、衝突を検知することを特徴とするアームの関節。
【請求項2】
中間リンクを介して連結された第1リンク、第2リンクと、
一端が前記第1リンクに回転自在に支持され、他端が前記中間リンクに回転自在に連結された互いに同一直線上にある第1a軸、第1b軸と、
一端が前記中間リンクに回転自在に支持され、他端が前記第2リンクに固定された第2軸と、
前記第1a軸、第1b軸の一端に向かい合って固定された一対の第1傘歯車と、前記第1a軸、第1b軸a軸、第1b軸の中間に固定され、前記第1傘歯車を夫々駆動するウォームホイールと、
前記一対の第1傘歯車と係合し、これらの回転方向、速度に基づき自転または公転する第2傘歯車と、
前記夫々のウォームホイールに係合し、回転軸の並進方向と回転方向に移動自在に支持され、かつ所定の位置に弾性的に保持された一対のウォームと、
前記夫々のウォームを回転駆動し、前記第1リンク内に並設して設けられた一対の駆動源と、
前記第1a軸、第1b軸の他端に固定され、前記一対の駆動源の駆動制御信号として、前記第1a軸、第1b軸の回転角度情報を計測する一対の回転角度センサと、
を備えたアームの関節であって、
前記アームの外部環境への衝突または接触による衝撃力を、前記弾性的に保持された一対のウォームの並進移動により吸収緩和するとともに、前記回転角度センサの出力信号に基づき、衝突を検知することを特徴とするアームの関節。
【請求項3】
前記アームの関節における衝突の検知が、前記第1回転角度センサの出力信号から得られる前記第1a軸、第1bの夫々の回転角加速度Aθa、Aθbの少なくとも一方が、通常動作時に前記第1a軸、第1b軸に発生可能な最大回転角加速度以上であるか否かに基づき行われることを特徴とする請求項1および請求項2のいずれか1項に記載のアームの関節。
【請求項4】
前記アームの関節における衝突の検知が、前記第1回転角度センサの出力信号から得られる前記第1a軸、第1b軸の夫々の回転角度変位Δθa、Δθbの少なくとも一方が、ゼロであるか否かに基づき行われることを特徴とする請求項1および請求項2のいずれか1項に記載のアームの関節。
【請求項5】
前記アームの関節における衝突の検知が、前記第1回転角度センサの出力信号から得られる前記第1a軸、第1b軸の夫々の回転角速度Vθa、Vθbの少なくとも一方が、ゼロであるか否かに基づき行われることを特徴とする請求項1および請求項2のいずれか1項に記載のアームの関節。
【請求項6】
中間リンクを介して連結された第1リンク、第2リンクと、
一端が前記第1リンクに回転自在に支持され、他端が前記中間リンクに回転自在に連結された互いに同一直線上にある第1a軸、第1b軸と、
一端が前記中間リンクに回転自在に支持され、他端が前記第2リンクに固定された第2軸と、
前記第1a軸、第1b軸の一端に向かい合って固定された一対の第1傘歯車と、前記第1a軸、第1b軸a軸、第1b軸の中間に固定され、前記第1傘歯車を夫々駆動するウォームホイールと、
前記一対の第1傘歯車と係合し、これらの回転方向、速度に基づき自転または公転する第2傘歯車と、
前記夫々のウォームホイールに係合し、回転軸の並進方向と回転方向に移動自在に支持され、かつ所定の位置に弾性的に保持された一対のウォームと、
前記夫々のウォームを回転駆動し、前記第1リンク内に並設して設けられた一対の駆動源と、
前記第1a軸、第1b軸の他端に固定され、前記一対の駆動源の駆動制御信号として、前記第1a軸、第1b軸の回転角度情報を計測する一対の第1回転角度センサと、
前記駆動源の端部に固定され、前記一対の駆動源の駆動制御信号として、前記駆動源の回転角度情報を計測する一対の第2回転角度センサと、
を備えたアームの関節であって、
前記アームの外部環境への衝突または接触による衝撃力を、前記弾性的に保持された一対のウォームの並進移動により吸収緩和するとともに、前記第1回転角度センサの出力信号と第2回転角度センサの出力信号とに基づき、衝突を検知することを特徴とするアームの関節。
【請求項7】
前記アームの関節における衝突の検知が、前記第1回転角度センサの出力信号から得られる前記第1a軸、第1b軸の夫々の実回転角度θa、θbと、前記第2回転角度センサの出力信号から得られる前記第1a軸、第1b軸の夫々の駆動回転角度θam、θbmとの差分(θa―θam)、(θa−θbm)の少なくとも一方が、ゼロであるか否かに基づき行われることを特徴とする請求項6記載のアームの関節。
【請求項8】
前記一対のウォームが、その回転軸に対する並進方向の移動に対し、相対移動速度に応じた抵抗を発生する速度抵抗手段をさらに備えたことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアームの関節。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−297809(P2009−297809A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152592(P2008−152592)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】