説明

イオノマー膜

【課題】面の2つの直交方向xyでサイズ変動が減少し、同時に水性アルコール液中の安定性テストに付した後に一体性を残している(パー)フッ素化イオノマーからなる膜を得る。
【解決手段】そのスルホニック基が短い側鎖(SSC)の末端にあり、そのイオノマーが、
− 700〜1600 g/eqの当量;
− 式:-O-CF2-CF2-SO3-M+(式中、Mは水素またはアルカリ金属である)の側鎖;
を有するスルホニック(パー)フッ素化イオノマーから形成されるイオノマー膜であって、その膜は、
− 105℃で1時間真空乾燥したイオノマー膜を、脱イオン水中に100℃で30分間浸漬した後で測定し、面の2つの直交方向xyで、15%より低いサイズ変動;
− アルコールを40重量%含有する水/エタノール混液中、50℃の温度で22時間浸漬した後に残存する一体性
の組み合わされた性質を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホニック(sulphonic)基を短い側鎖(SSC)の末端に有し、15%より低い、好ましくは10%より低い、面の2つの直交方向xyにおけるサイズ変動が減少した(パー)フッ素化イオノマーからなる、電気化学電池、好ましくは燃料電池に使用される膜に関する。
【0002】
その他、本発明の膜は、次のテスト:寸法12 cm×20 cmの膜を、アルコールを40重量%含有する水/エタノール混液中に50℃の温度で22時間浸漬して、一体性(integral)が残る、良好な物理的安定性を有する。これは、膜がテストの終わりに、単一片として残り、断片が形成されないことを意味する。
【背景技術】
【0003】
短い側鎖(SSC)を有するスルホニックモノマーから得られるイオノマーが、従来技術で知られている。例えば、米国特許第4,358,545号(特許文献1)および米国特許第4,940,525号(特許文献2)を参照。そこでの(パー)フッ素化ポリマーの側鎖は、一般式:-O-(CFRIf)bI-(CF2)aISO2ZI
(式中、
− ZIは各種の意味、ことにハロゲンであり;
− aIおよびbIは、0〜2の範囲の整数であり、但し、aI+bIは0ではない;
− RfIはF、Cl、C1-C10パーフルオロアルキルまたはクロロフルオロアルキルから選択される)
のタイプを有する(上記米国特許第4,940,525号参照)。
ZIが例えばフッ素のようなハロゲンのとき、スルホニルフルオライド基-SO2Fは、加水分解によりスルホニック基-SO3Hに変換できる。
【0004】
米国特許第4,610,762号(特許文献3)では、例えば、-SO2F基を-SO3Hへの変換によって、イオン交換基に変換しうる基を含有する基を記述している。この特許での膜の製造法は、110℃より低い沸点を有し、約1.55〜2.97 g/cm3の密度を有する分散溶媒中でのポリマー分散液を原料とし、支持体上にフィルムを形成することからなる。分散液の塗布後に、分散剤を除去し、ポリマーの熱可塑性により約150℃〜380℃の温度で、支持体上での処理が行なわれる。
【0005】
この特許の実施例中では、該方法は、コポリマー TFE/CF2=CF-O-(CF2)2COOCH3について例示され、最後の熱処理で、コポリマーがアルミニウムシート上で溶融され、コーティングを形成している。この実施例によれば、コポリマー TFE/CF2=CF-O-(CF2)2SO2Fを最初に作り、次いで押出し、得られたフィルムを加圧下で接着し、コポリマー TFE/CF2=CF-O-(CF2)2COOCH3で被覆されたアルミニウムシートにしている。アルミニウムシートは除去され、得られたフィルムを加水分解し、酸性官能基-SO3Hを形成している。膜のサイズ安定性は、この先行技術の中には挙げられてさえいない。
【0006】
米国特許第4,666,648号(特許文献4)は、溶液あるいは分散液中のポリマーを基体の表面でキャストすることによる膜の製造を記述している。支持体は、最終の膜が乾燥された後に溶解される材料か、または低い表面エネルギーを有する材料で形成される。ポリマーが溶液または分散液で支持体上に堆積された後に、好ましくは110℃より低い温度で乾燥が行なわれる。この特許で、膜のサイズ安定性は何も述べられていない。そのうえ、本出願人が行なった試験によれば、この方法で作られた膜は、上記の物理的安定性試験に合格しないことが分かった。従って、これらの膜の電気化学電池での寿命は制限される。
【特許文献1】米国特許第4,358,545号
【特許文献2】米国特許第4,940,525号
【特許文献3】米国特許第4,610,762号
【特許文献4】米国特許第4,666,648号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
短い側鎖(SSC)の末端にスルホニック基を有し、面の2つの直交方向xyでサイズ変動が減少、すなわち15%より低く、同時に上記のような水性アルコール液中の安定性試験に付した後に一体性を残している(パー)フッ素化イオノマーを含む膜を入手可能にする必要性が感じられた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人は、上記の技術的問題点を解決するイオノマー膜を見出した。
本発明の課題は、
− 700〜1,600 g/eq、好ましくは750〜1,200 g/eqの当量;
− 式:-O-CF2-CF2-SO3-M+(式中、Mは水素またはアルカリ金属である)の側鎖;
− 105℃で1時間真空乾燥し、寸法12×20 cmを有するイオノマー膜を、脱イオン水中に100℃で30分間浸漬した後で測定し、面の2つの直交方向xyで、15%より低く、好ましくは10%よりも低いサイズ変動;
− アルコールを40重量%含有する水/エタノール混液中、50℃の温度で22時間浸漬した後に残存する一体性(膜寸法:12×20 cm)
を有する、短い側鎖(SSC)の末端にスルホニック基をもったスルホニック(パー)フッ素化イオノマーで形成されたイオノマー膜を提供することである。
【0009】
本発明の膜は、以下に示される方法で入手可能である。
本発明の膜を製造するために使用することができる(パー)フッ素化イオノマーは、次のユニット:
(A) 少なくとも1つのエチレン不飽和を有する、1以上のフッ素化モノマーに由来するモノマーユニット;
(B) 式CF2=CF-O-CF2CF2SO2Fを有する、-SO2F基をイオノマーが上記の範囲の当量を有するような量で含むフッ素化モノマーユニット
を有するイオノマーから、-SO3H基を得るために-SO2F基を加水分解することにより得られる。
【0010】
フッ素化モノマー(A)は、
− ビニリデンフルオライド(VDF);
− C2-C8パーフルオロオレフィン、好ましくはテトラフルオロエチレン(TFE);
− C2-C8クロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-フルオロオレフィン、例えばクロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびブロモトリフルオロエチレン;
− CF2=CFORf1の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)(ここで、Rf1はC1-C6(パー)フルオロアルキル、例えばトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、ペンタフルオロプロピルである);
− CF2=CFOXのパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル(ここで、Xは1以上のエーテル基を有するC1-C12パーフルオロ-オキシアルキル、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルである)
から選択される。
【0011】
本発明のスルホニックフッ素化イオノマーは、任意に、式:
R1R2C=CH-(CF2)m-CH=CR5R6 (I)
(式中、
m=2〜10、好ましくは4〜8であり、
R1、R2、R5、R6は互いに等しいかまたは異なって、HまたはC1-C5アルキル基である)
のビス-オレフィンに由来するモノマーユニットを0.01モル%〜2モル%含むことができる。
【0012】
本発明の膜は、モノマー(A)としてTFEを含むのが好ましい。
スルホニック基の前駆基を含むイオノマーの加水分解は、2つの工程からなり、
第1工程は塩基性の環境下で、第2工程は酸性の環境下で行なわれ、酸型-SO3Hの官能基を有するイオノマーを得る。
【0013】
スルホニル前駆基-SO2Fは、次の工程:
− -SO2F型の-SO3-Me+型(ここで、Meはアルカリ金属である)への塩化;
− -SO3-Me+型の-SO3H型への酸性化
によりスルホニック基-SO3Hに変換できる。
【0014】
第1工程は、例えば、イオノマー性のポリマーを、KOHを10重量%含む水溶液と、60℃〜80℃の温度で、2時間よりも長い時間、-SO2F基の消失(IR分析)および-SO3-Me+基の形成まで混合することより行なわれる。この塩化工程の最後に、イオノマーを、好ましくは25℃よりも高くない温度で、水洗する。酸性化工程は、例えば、塩化されたイオノマーを、室温で20重量%のHClを含む水溶液中に移し、少なくとも30分間撹拌を続けることにより行なわれる。最後に、上記の方法により、水洗される。
【0015】
モノマー(B)は、米国特許第3,560,568号に記載された方法により製造される。
本発明の膜は、5μm〜500μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは15〜60μmの範囲の厚さを有する。
【0016】
本発明のさらなる課題は、本発明の膜の製造方法を提供することであり、該方法は次の工程:
1) 酸の形態または塩化された形態にある上記で定義された(パー)フッ素化イオノマーを、そのイオノマーの濃度が、0.5重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜25重量%含む液状分散液を製造し;
2) 1)で得られた分散液を、本発明の方法で採用される条件下で不活性である支持体の表面に堆積させて層またはフィルムを形成し;
3) 任意に、分散液中の当初の溶媒に対して、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の溶媒を除去して支持体上に粗膜を得;
4) 130℃〜280℃、好ましくは140℃〜180℃の温度でアニールして支持体上に膜を得;
5) その膜を支持体から分離させる
ことを含む。
【0017】
不活性支持体とは、膜の製造に使用される条件下で、化学的および物理的に実質的に未変化である材料を意味する。
【0018】
(パー)フッ素化イオノマーを含む液状分散液を製造する工程1)において、溶媒は、C1-C3、好ましくはC3アルコール類、例えばn-プロパノールおよび/またはイソ-プロパノール;または該C1-C3アルコール類の混合物、好ましくは水との混合物から選択される。その製造の間に、上記の溶媒に加えて、水および/または上記のアルコール類と混和性である他の有機溶媒も使用できる。
【0019】
該任意の溶媒の例は、次の:ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール(EG)、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)、トリエチルホスフェート(TEP)、2-エトキシエタノール(2EE)、N,N'-ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリル(AN)およびプロピレンカーボネート(PC)、鎖の末端の一方または両方に1つの水素原子を有するフルオロポリオキシアルケン類であり、好ましくは、そのフルオロポリオキシアルケン類は、80℃〜120℃の沸点を有する。
溶液および/または分散液でのイオノマーは、先行技術で公知である。例えば、欧州第1,004,615号および米国特許第4,433,082号を参照。
【0020】
工程2)において、溶液または分散液でのポリマーの堆積は、先行技術で公知の方法を用いて行なわれる。例えば、それは、ブラシコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、ナイフキャスティング、キスロールコーティング、セリグラフィー、インクジェット、フローコーティング等により行なうことができる。
【0021】
工程2)において、不活性支持体は、いずれのタイプでもよく、好ましくは非多孔性で平滑な表面を有し、工程4)の温度で15分間測定したときに、面の2つの方向xyの各々におけるサイズ変動が、2%より高くなく、好ましくは1%より高くないものである。本支持体は、本方法の熱処理の間に、実質的に未変化の機械的特性を示すものが好ましい。例えば、支持体は、非多孔性PTFE、ポリイミド、特に商品名カプトン(登録商標)で販売されているポリイミド、MFA、PFA、PETのようなポリエステルである。
【0022】
工程3)において、溶媒の除去は、一般に25℃〜95℃の温度で好ましくは大気圧で、上記限度内の残留溶媒含量になるまで操作することにより行なわれる。例えば、65℃では30〜45分の時間が、溶媒除去に必要とされる。工程3)において、溶媒除去は、温度を最終の熱処理工程4)で使用される温度まで徐々に上げて行なうことも任意である。
【0023】
工程4)での熱処理は、一般に15分より長くかつ好ましくは10時間より短い時間の間で行なわれる。一般的に、温度が高けれ高いほど、処理時間は短くなる。
工程5)において、支持体表面から膜の分離は、先行技術で公知の方法、例えば、一般的に室温(25℃)で、乾燥操作または水に浸漬して行なわれる。
【0024】
本出願人は、本発明の方法で得ることができる膜は、同じイオノマー組成を有する膜を押出で作ったものと比較して、面の2つの直交方向xyでのサイズ変動がより制限されていることを示すことを予想外にかつ意外にも見出した。
【0025】
本発明の膜を製造するために使用されるイオノマーの製造は、塊、懸濁、エマルジョンのラジカル重合により行なわれ得る。例えば、水性エマルジョンまたはマイクロエマルジョン重合が挙げられる。これらの重合において使用できる界面活性剤は、(パー)フッ素化されており、例えば、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロノナン酸もしくはパーフルオロデカン酸の塩類(以下で定義されるとおり)またはそれらの混合物など、NH4+またはアルカリ金属カチオンで塩化された酸末端基(例えば、COOH、SO3H)を有し、1つのHまたはCl原子を任意に含んでいてもよい(パー)フッ素化された他の末端基を有する(パー)フルオロポリエーテル類である。パーフルオロポリエーテル系界面活性剤の数平均分子量は、一般に300〜1,800で、好ましくは350〜750の範囲である。
【0026】
マイクロエマルジョン重合は、当該技術で周知である。
特に、イオノマー製造は、反応媒体中に界面活性剤として、下記式のものが使用される水性エマルジョンを用いて行なわれる。
Rf-X1-M+
(式中、
− X1は-COO、-SO3であり、
− MはH、NH4またはアルカリ金属から選択され、
− Rfは、(パー)フルオロポリエーテル鎖を表し、好ましくは、数平均分子量が約230〜約1,800、より好ましくは300〜750の範囲であり、該(パー)フルオロポリエーテル鎖は、次の:
a) -(C3F6O)-;
b) -(CF2CF2O)-;
c) -(CFL0O)-(ここで、L0=-F、-CF3である);
d) -CF2(CF2)z'CF2O-(ここで、z'は整数1または2である);
e) -CH2CF2CF2O-
の1以上から選択される繰り返しユニットからなる。
【0027】
Rfは単官能性で、(パー)フルオロオキシアルキル末端基T、例えばCF3O-、C2F5O-、C3F7O-を有し、パーフルオロアルキル末端基において、1つのフッ素原子は1つの塩素または水素原子で任意に置換されていてもよい。これらの末端基の例は、Cl(C3F6O)-、H(C3F6O)-である。ユニットa)のC3F6Oは、-CF2-CF(CF3)O-または-CF(CF3)CF2O-である。
水性エマルジョン重合は、当該技術で周知である。
【0028】
上記の式において、Rfは、好ましくは、次の構造の1つを有する。
1) T-(CF2O)a-(CF2CF2O)b-CF2-
b、aは整数であり、aが0でないとき、b/aは0.3〜10の間(端を含む)、aは0でない整数である;
2) T-(CF2-(CF2)z'-CF2O)b'-CF2-
b'およびz'は整数であり、z'は1または2の整数である;
3) T-(C3F6O)r-(C2F4O)b-(CFL0O)t-CF2-
r、b、tは整数であり、bが0でないとき、r/bは0.5〜2.0の範囲であり、tが0でないとき、(r+b)/tは10〜30の範囲である、
さらに、a、b、b'、r、tは整数であり、それらの和は、Rfが上記の値の数平均分子量を有するような値である。
【0029】
Rfが、次の式:
T-(CF2CF(CF3)O)m(CF2O)n-CF2-
(式中、
m、nは整数であり、
m/nは1〜30の範囲であり、
T = -OCF3または-OCF2Clである)
を有する化合物が、より好ましい。
【0030】
(パー)フルオロポリエーエルRfは、先行技術で公知の方法を用いて得ることが出来る。例えば、参照としてここに組み込まれる次の特許:米国特許第3,665,041号、米国特許第2,242,218号、米国特許第3,715,378号および欧州特許第239,123号を参照。ヒドロキシ末端で官能化されたフルオロポリエーテル類は、例えば、欧州第148,482号、米国特許第3,810,874号により得られ、それから、末端官能基が、ここに示された方法で得られる。
【0031】
連鎖移動剤が、重合において用いられる。例えば、米国特許第5,173,553号による、アルカリもしくはアルカリ土類金属ヨウ化物および/または臭化物である。好ましくは、炭化水素、アルコール類のような水素を含む連鎖移動剤、特に、酢酸エチルおよびエタンが用いられる。
【0032】
本発明の方法で使用される重合開始剤は、例えば、アンモニウムおよび/またはカリウムおよび/またはナトリウムパースルフェートのような無機のラジカル開始剤が好ましく、任意に第1鉄、第1銅もしくは銀の塩と組み合わせてもよい。重合反応器中に開始剤を供給する操作は、連続的な方法で、または重合の初めに単回添加によって出来る。
重合反応は、一般的に、25℃〜70℃、好ましくは50℃〜60℃の範囲の温度で、30バール(3 MPa)までで、好ましくは8バール(0.8 MPa)より高い圧力下で行なわれる。
【0033】
モノマー(B)は、連続的方法でまたは段階的に重合反応器中に供給される。
重合が完了した後、イオノマーは、電解質の添加または凍結による凝固のような慣用の方法で単離される。
上記のように、本発明の膜は、電気化学電池、特に燃料電池において、使用することができる。
【実施例】
【0034】
以下の実施例は、本発明を限定するためにではなく、本発明を説明するために示される。
実施例
特徴付け
当量測定
ポリマー約1gを150℃で40時間乾燥する。280℃の温度で圧力成形して、乾燥粉末から約100μmの薄いフィルムを得る。このようにして得られるフィルムを80℃で24時間、10重量%のKOHで処理し、次いで脱イオン水で洗浄し、次いで室温で24時間、20重量%のHClで処理する。最後に、脱イオン水で洗浄する。この方法で、フィルムのスルホニル基はスルホン酸基に変換される。
酸型のポリマーフィルムを105℃で、一定の重量になるまで乾燥し秤量する。次いで、フィルムを水性アルコールまたは水溶液中に懸濁し、滴定された過剰のNaOH溶液を加え、それを、滴定されたHCl溶液で逆滴定する。当量は、グラムで表されるフィルムの重量と滴定される酸基の当量数の間の比で決定される。
【0035】
膜のサイズ変動の測定
膜を、その領域が四角になるように切断する。
膜を、最初、真空下、105℃で1時間、乾燥する。膜のサイズを測定する。次いで、膜を100℃で30分間、脱イオン水中で水和する。水から取り出した後、膜のサイズを測定する。
2つの直交する方向のサイズ変動は、真空下、105℃で1時間乾燥後、開始サイズを参照としたパーセントとして計算される。
【0036】
水性アルコール溶液中、50℃での膜の物理的安定性試験
膜の物理的安定性は、50℃の温度で、アルコールを40重量%含む水/エタノール混液中に浸漬して測定される。22時間後に、膜の最終外観を観測する。
【0037】
分散液粘度の測定
粘度(ブックフィールド)は、ローター番号4を用い、60 rpm、25℃で測定されるSynchro Electric(登録商標)LVTモデル粘度計により決定される。
【0038】
実施例1
SO3H型のイオノマーの製造
22 Lオールクレーブ中に、次の反応物を導入する。
− 脱イオン水11.5 L;
− 式CF2=CF-O-CF2CF2-SO2Fのモノマー980 g;
− 数平均分子量521を有し、式:
CF2ClO(CF2CF(CF3)O)n(CF2O)mCF2COOK(式中、n/m=10である)
のカリウムで塩化された酸末端基を有するフルオロポリオキシアルキレンの5重量%の水溶液3,100 g。
【0039】
540 rpmで撹拌下に、オートクレーブを60℃に加熱する。次いで、カリウムパースルフェート(KPS)の6 g/lの濃度を有する水溶液225 mlをオークレーブ中に供給する。圧力をTFEの導入により絶対圧力1.3 MPaにする。反応を4分後に開始する。圧力を、TFEの供給により絶対圧力1.3 MPaに維持する。反応器にTFE 1,000 gを供給後、式:CF2=CF-O-CF2-CF2-SO2Fのスルホニックモノマーの175 gを導入する。次いで、TFE 200 gの供給毎に、同じスルホニックモノマーの175 gを導入する。反応器に供給される全TFE量は4,000 gである。
【0040】
233分後に、TFEの供給を中断して反応を停止し、冷却し、真空下に反応器を排気する。得られるラテックスは28.5重量%の固体成分を有する。このラテックスを冷凍して凝固させ、解凍し、ポリマーを母液から分離し、洗浄水のpHが一定になるまで水で洗浄する。
ポリマーの当量は870 g/eqであり、TFEの85.5モル%およびスルホニックモノマーの14.5モル%の組成物に相当する。
ポリマー部分を洗浄水から分離し、撹拌下に80℃で6時間、20重量%のKOH溶液で処理する。ポリマーの1重量部に対して、KOH溶液の10重量部を加える。最後に、それを、洗浄水のpHが安定するまで脱イオン水で洗浄する。ポリマーの1重量部に対して、20% HCl溶液の10体積部を加え、撹拌下に、室温で2時間維持する。最後に、それを、洗浄水のpHが安定するまで脱イオン水で洗浄する。HCl溶液および続く水での洗浄の追加工程を、さらに2回繰り返す。最後に、SO3H型のポリマーを回収し、80℃で40時間乾燥する。
【0041】
実施例2
イオノマー分散液の製造
実施例1で得られるスルホニックイオノマーの8.6重量%分散液を、H2Oの39 g、イソプロパノールの80 g、n-プロパノールの80 gおよび80℃〜120℃の沸騰範囲および数平均分子量350を有する、式:
CF2H-O(CF2CF2O)m(CF2O)n-CF2H
のフルオロポリオキシアルキレンの1 gから構成される4要素混合物の200 g中にイオノマーの18.8 gを溶解して調製する。溶解は、機械的撹拌装置を備えたガラス容器中、室温で24時間内に行なわれる。最後に、分散液は、ローター番号4を用い、60 rpm、25℃で測定されるSynchro Electric(登録商標)LVTモデル粘度計により決定され、1000 cPのブルックフィールド粘度を有する。
【0042】
実施例3
イオノマー膜の製造
イオノマー膜は、実施例2で製造された分散液の、約10 cmの長さを有するストリップを、50 μmの厚さを有するカプトン支持体上に堆積することにより製造される。ナイフの高さ700 μmにセットした階層化ブライブ(Braive)(登録商標)ナイフにより、連続液層が形成されるように分散液をドラッグする。それを、ほとんどの溶媒を蒸発させることによって、65℃で30分間、ストーブ中で乾燥する。このようにして、粗モノマー膜がカプトン支持体上に形成される。アニール工程は、カプトン支持体上の膜を150℃で3.5時間、ストーブ中に移すことにより行なわれる。最後に、それをオーブンから取り出し、水に浸漬することにより、カプトン支持体をイオノマー膜から除く。次に、寸法12 cm×20 cmを有するシートを得るために膜を切断した。
【0043】
実施例3a
実施例3の膜のサイズ変動
実施例3で得られた膜を、面の2つの直交する方向xyでのサイズ変動を測定するために、上記の試験に付す。試験の最後に、2つの直交する方向でのサイズ変動は、面の各方向に対して8%であることが分かる。
【0044】
実施例3b
実施例3の膜の物理的安定性試験
22時間後、膜はダメージを受けず、試験の最初と同じ物理的特性を示すことが観測される。それゆえ、膜は一体性が残ったままである。
【0045】
実施例4(比較)
支持体から膜を分離し、支持体から分離した膜に最終アニール処理を行なう以外は、実施例3を繰り返す。平坦でなくかつ非均一な厚さを示す膜が得られる。
実施例4a(比較)
サイズ変動は20%より高い。
【0046】
実施例4b(比較)
実施例4(比較)の膜の物理的安定性試験
試験が行なわれ、22時間後に、膜は断片に壊れることが分かる。
【0047】
実施例5(比較)
押出によるイオノマー膜の製造
実施例1のSO2F型のポリマーの一部を150℃で40時間乾燥し、顆粒を得るためにブラベンダー押出機により245℃で押出に付す。次いで、顆粒を250℃で押出し、30 μmの厚さを有するフィルムを得る。
得られるフィルムの一部を80℃で24時間、KOH 10重量%で処理し、脱イオン水で洗浄し、次いで室温で24時間、HCl 20重量%で処理する。最後に、それを脱イオン水で洗浄する。このようにして、フィルムのスルホニル基はスルホン酸基に変換される。次いで、寸法12 cm×20 cmを有するシートに膜を切断した。
【0048】
実施例5a(比較)
実施例5(比較)の膜のサイズ変動
実施例5(比較)で得られる膜を、面の2つの直交する方向xyでのサイズ変動を測定するために、上記の試験に付す。試験の最後に、横方向yでのサイズ変動は18%、縦方向xでのそれは8%であることが分かる。
【0049】
実施例6(比較)
110℃の温度で最終熱処理を行なう以外は、実施例3の方法を用いて膜を製造する。
実施例6b(比較)
実施例6(比較)の膜の物理的安定性試験
試験が行なわれ、22時間後に、膜はほとんど完全に水性アルコール溶媒に溶解することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 700〜1,600 g/eq、好ましくは750〜1,200 g/eqの当量;
− 式:-O-CF2-CF2-SO3-M+(式中、Mは水素またはアルカリ金属である)の側鎖;
− 105℃で1時間真空乾燥したイオノマー膜を、脱イオン水中に100℃で30分間浸漬した後で測定し、面の2つの直交方向xyで、15%より低く、好ましくは10%よりも低いサイズ変動;
− アルコールを40重量%含有する水/エタノール混液中、50℃の温度で22時間浸漬した後に残存する一体性
を有する、短い側鎖(SSC)の末端にスルホニック基をもったスルホニック(パー)フッ素化イオノマーで形成されたイオノマー膜。
【請求項2】
膜を製造するのに使用することができる(パー)フッ素化イオノマーが、次のユニット:
(A) 少なくとも1つのエチレン不飽和を有する、1以上のフッ素化モノマーに由来するモノマーユニット;
(B) 式CF2=CF-O-CF2CF2SO2Fを有する、-SO2F基をイオノマーが上記の範囲の当量を有するような量で含むフッ素化モノマーユニット
を有するイオノマーから、-SO3H基を得るために-SO2F基を加水分解することにより得られる、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
フッ素化モノマー(A)が、
− ビニリデンフルオライド(VDF);
− C2-C8パーフルオロオレフィン、好ましくはテトラフルオロエチレン(TFE);
− C2-C8クロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-フルオロオレフィン、好ましくはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびブロモトリフルオロエチレン;
− CF2=CFORf1の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)(ここで、Rf1はC1-C6(パー)フルオロアルキル、好ましくはトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、ペンタフルオロプロピルである);
− CF2=CFOXのパーフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル(ここで、Xは1以上のエーテル基を有するC1-C12パーフルオロ-オキシアルキル、好ましくはパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルである)
から選択される、請求項1または2に記載の膜。
【請求項4】
スルホニックフッ素化イオノマーが、式:
R1R2C=CH-(CF2)m-CH=CR5R6 (I)
(式中、
m=2〜10、好ましくは4〜8であり、
R1、R2、R5、R6は互いに等しいかまたは異なって、HまたはC1-C5アルキル基である)
のビス-オレフィンに由来するモノマーユニットを0.01モル%〜2モル%含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の膜。
【請求項5】
イオノマーがモノマー(A)としてTFEを含む、請求項1〜4のいずれか1つに記載の膜。
【請求項6】
次の工程:
1) 酸の形態または塩化された形態にある(パー)フッ素化イオノマーを、そのイオノマーの濃度が、0.5重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜25重量%含む液状分散液を製造し;
2) 1)で得られた分散液を、本発明の方法で採用される条件下で不活性である支持体の表面に堆積させて層またはフィルムを形成し;
3) 任意に、使用される分散液中の当初の溶媒に対して、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の溶媒を除去して支持体上に粗膜を得;
4) 130℃〜280℃、好ましくは140℃〜180℃の温度で熱処理して支持体上に膜を得;
5) その膜を支持体から分離させる
ことを含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の複合(composite)膜の製造方法。
【請求項7】
工程1)において、(パー)フッ素化イオノマーを含む液状分散液の製造に使用される溶媒が、C1-C3、好ましくはC3アルコール類、n-プロパノールおよび/またはイソ-プロパノール;または該C1-C3アルコール類の混合物、好ましくは水との混合物から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
分散液が、水および/またはC1-C3アルコール類と混和性のある有機溶媒を使用して製造される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
使用される溶媒が、鎖の末端基の一方または両方に1つの水素原子を有し、80℃〜120℃の沸点を有するフルオロポリオキシアルケン類である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程2)において、不活性支持体が、好ましくは非多孔性でかつ平滑な表面を有し、次の性質:
− 工程4)で採用される温度で15分間測定したときに、面の2つの方向xyの各々におけるサイズ変動が、2%より高くなく、好ましくは1%より高くないものであり;本支持体が、工程4)の熱処理の間に、その機械的特性を実質的に変化させない
性質を有する、請求項6〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
工程3)において、溶媒除去が、25℃〜95℃の温度で、工程3)で示された限度内の残留溶媒含量になるまで操作することにより行なわれる、請求項6〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の膜を含む電気化学電池。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の膜の、電気化学電池における使用。
【請求項14】
電気化学電池が燃料電池である、請求項13に記載の使用。

【公開番号】特開2006−257423(P2006−257423A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71397(P2006−71397)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(503023047)ソルヴェイ ソレクシス エス.ピー.エー. (40)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Solexis S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Turati 12 − MILANO,Italy
【Fターム(参考)】