説明

イオンセンサー、再生時期の判定方法、軟化器、イオン分析装置及びイオン分析方法

【解決課題】被処理水の水質又は水温が変動しても測定値が安定しており且つメンテナンスが簡便なイオンセンサーを提供することにある。また、携帯性があるイオン分析装置又は安価であり且つ連続監視が可能なイオン分析装置を提供することにある。
【解決手段】処理水(試料水)が通水されるイオン交換体層、該イオン交換体層に通水される前の該処理水(試料水)の電気化学的測定値を測定する第一電極、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定する第二電極、及び該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該処理水(試料水)の電気化学的測定値の比を計算し、該比が設定値になると再生時期告知信号を発信する演算部(該比からイオン濃度を算出する演算部及び表示部)を有するイオンセンサー(イオン分析装置)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟化器の再生時期、逆浸透膜装置の再生時期又は電気式脱イオン装置の再生時期を判定するための再生時期の判定方法、該判定方法を実施するためのイオンセンサー及び該イオンセンサーを用いる軟化器、並びに飲料水、地下水、河川水、各種用水、各種排水等の試料水中のイオン濃度を分析するための分析方法及びその分析方法を実施するためのイオン分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボイラー等のスケールの生成を防止する目的で、ボイラー用水等中の硬度成分(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を除去、あるいは、硬度成分をナトリウムイオンにイオン交換することを軟化処理という。該軟化処理を行うための軟化器としては、ナトリウムイオン形の強酸性陽イオン交換樹脂が充填されている充填層に、被処理水を通水し、硬度成分及びナトリウムイオンの、該イオン交換樹脂との吸着選択性の差を利用して、硬度成分を該イオン交換樹脂に吸着させ、硬度成分と当量のナトリウムイオンを被処理水に溶出させる装置が、一般に使用される。
【0003】
該軟化器で軟化処理を連続して行う場合、該充填層のイオン交換樹脂への硬度成分の吸着量が、該充填層のイオン交換樹脂の貫流容量を超えると、硬度成分が処理水にリークしてしまう。そのため、硬度成分のリークが始まる前に、軟化処理を中断し、塩化ナトリウム水溶液を、該充填層に通液し、該イオン交換樹脂の再生を行わなければならない。
【0004】
そして、該充填層に充填されている該イオン交換樹脂を有効に利用し、再生剤として用いる塩化ナトリウム水溶液の使用量を低減させるためには、処理水への硬度成分のリークを連続的に監視し、リークしても許容される硬度成分濃度内(一般に、1mgCaCO/L以下)で、硬度成分を検出し、自動再生を起動させるか、又は再生を促す警報を発信するイオンセンサーが必要となる。
【0005】
例えば、特開昭60−150840号公報(特許文献1)には、軟化器の樹脂水系の任意間隔の上流側・下流側に位置して設けられる二対の電極A・Bと、前記二対の電極A・B及びコントロールバルブと信号線にて連結され、コントロールバルブからの再生終了又は通水開始タイミング信号と同期して前記二対の電極A・B間の抵抗の差を読み取り、その値S1を記憶し、さらに通水中における前記二対の電極A・B間の抵抗の差S2を連続して測定し、抵抗差S1とS2の比較値が設定値Mを超えた時点で樹脂交換時期信号を出力するように構成された比較器からなるセンサーが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−150840号公報(請求項1、図面)
【0007】
しかし、特許文献1に記載されているイオンセンサーには、被処理水の水質又は水温の変動により、測定値が不安定になるという問題があった。また、軟化器と一体になっているため、メンテナンスが煩雑になるという問題もあった。
【0008】
また、該軟化器のイオン交換樹脂の再生時期の監視方法としては、硬度によって発色する発色指示薬を用いる方法がある。しかし、該発色指示薬を用いる方法は、定期的に処理水を採取して、手動で行う必要があるため、連続監視を行うことができないので、実用的ではない。
【0009】
これらのことから、被処理水の積算通水量により監視し又は通水量に全く関係なく単に一定期間の経過経過により、該軟化器の再生が行われているのが現状である。そして、これらの方法では、被処理水の水質変動を見越した安全率をもって、再生が行われるため、該充填層に充填されている該イオン交換樹脂にナトリウムイオン形が残存しているにもかかわらず、再生が行われる。そのため、余分な再生剤が使用されることになり、また、再生剤排水量も多くなっていた。
【0010】
ところで、地下水、河川水、水道水、工業用水、各種純水装置の処理水等では、携帯性のあるイオン分析装置で、簡便に水中のイオン濃度分析を行いたいというニーズがあり、特に、工業用水、各種純水装置の処理水等では、コンパクト、安価且つ連続監視可能なイオン分析装置のニーズがある。
【0011】
水中のイオンの濃度を測定する方法としては、原子吸光法による分析又はイオンクロマトグラフィーによる分析が挙げられる。しかし、いずれも方法に用いられる分析装置も、大きな分析装置が必要なため携帯性がなく、また、該分析装置は高価であり、更には、一般にバッチ測定のため、連続監視が困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の課題は、被処理水の水質又は水温が変動しても測定値が安定しており且つメンテナンスが簡便なイオンセンサーを提供することにある。また、本発明の課題は、携帯性があるイオン分析装置又は安価であり且つ連続監視が可能なイオン分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、イオン交換体が充填されているイオン交換体層に処理水(試料水)を通水しつつ、該処理水(試料水)及び該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定して得られる、該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該処理水(試料水)の電気化学的測定値の比は、処理水(試料水)の水質又は水温が変動しても安定しているので、上記課題を満たすイオンセンサー及びイオン分析装置を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、処理水が通水されるイオン交換体層、該イオン交換体層に通水される前の該処理水の電気化学的測定値を測定する第一電極、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定する第二電極、及び該第二電極で測定される該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該第一電極で測定される該処理水の電気化学的測定値の比を計算し、該比が設定値になると再生時期告知信号を発信する演算部を有するイオンセンサーを提供するものである。
【0015】
また、本発明(2)は、処理水の水質の監視計器として、前記本発明(1)記載のイオンセンサーを有する軟化器である。
【0016】
また、本発明(3)は、軟化器の再生時期、逆浸透膜装置の再生時期又は電気式脱イオン装置の再生時期の判定方法であって、該軟化器、該逆浸透膜装置又は該電気式脱イオン装置の処理水をイオン交換体層に通水しながら、該イオン交換体層に通水される前の該処理水の電気化学的測定値を測定すると同時に、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定し、該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該処理水の電気化学的測定値の比を計算し、計算を行う毎に該比と設定値を対比して、該比が該設定値になった時を再生時期と判定する再生時期の判定方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(4)は、試料水が通水されるイオン交換体層、該イオン交換体層に通水される前の該試料水の電気化学的測定値を測定する第一電極、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定する第二電極、該第二電極で測定される該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該第一電極で測定される該試料水の電気化学的測定値の比を計算し、該比から該試料水中のイオン濃度を算出する演算部、及び該イオン濃度を表示する表示部を有するイオン分析装置を提供するものである。
【0018】
また、本発明(5)は、試料水をイオン交換体層に通水しながら、該イオン交換体層に通水される前の該試料水の電気化学的測定値を測定すると同時に、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定し、該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該試料水の電気化学的測定値の比を計算し、該比から該試料水中のイオン濃度を算出するイオン分析方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被処理水の水質又は水温が変動しても測定値が安定しており且つメンテナンスが簡便なイオンセンサーを提供することができる。また、本発明によれば、携帯性があるイオン分析装置又は安価であり且つ連続監視が可能なイオン分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のイオンセンサーは、処理水が通水されるイオン交換体層、該イオン交換体層に通水される前の該処理水の電気化学的測定値を測定する第一電極、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定する第二電極、及び該第二電極で測定される該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該第一電極で測定される該処理水の電気化学的測定値の比を計算し、該比が設定値になると再生時期告知信号を発信する演算部を有するイオンセンサーである。
【0021】
本発明のイオンセンサーについて、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態例のイオンセンサーの模式的な断面図であり、図2は、イオンセンサー1を用いる軟水供給システム20の模式図である。図1中、イオンセンサー1は、通水方向に対して、空隙12を残し、イオン交換体11が充填されてイオン交換体層3が形成されているセンサー容器2、該空隙12に設置される第一電極4、該イオン交換体層3に設置される第二電極5及び該第一電極4と該第二電極5のそれぞれに電気的に繋がっている演算部6を有する。該イオンセンサー1には、処理水9を該センサー容器2に導入する処理水導入管7及び該イオン交換体層3に通水された処理水を排出する処理水排出管8が配設されている。該演算部6には、再生時期告知信号を発信するための信号線10が付されている。また、該イオン交換体層3に充填されている該イオン交換体11は、測定対象イオン種によって初期イオン形が適宜選択されるが、軟化器の処理水を対象とする場合には、ナトリウム形の陽イオン交換体である。
【0022】
図2中、軟水供給システム20は、ナトリウム形陽イオン交換体が充填されている軟化器16、イオンセンサー1、及び再生時に再生液を該軟化器に供給する再生液供給器13を有する。該再生液供給器13は、制御部を有している。該軟水供給システム20には、該軟化器16の上流側に繋がり被処理水18を該軟化器16に供給するための被処理水供給管14、該軟化器16の下流側に繋がり処理水9を排出するための処理水排出管15及び該被処理水供給管14から分岐し該再生液供給部13に繋がる再生液供給管17が配設され、更に、該被処理水供給管14中の該再生液供給管17の分岐点に、該再生液供給器13の制御部と電気的に繋がっている切替バルブ19が付設されている。そして、該イオンセンサー1の該処理水導入管7が、該処理水排出管15から分岐するようにして、該処理水排出管15に繋がっており、該イオンセンサー1の該信号線10が、該再生液供給器13の制御部に、電気的に繋がっている。
【0023】
該イオンセンサー1を作動させながら、該軟化システム20で行われる被処理水18の軟化処理について説明する。軟化処理中は、連続的に被処理水18が該軟化器16で軟化処理されるので、連続的に該処理水9が、該処理水導入管7から該イオンセンサー1に供給される。供給された該処理水9は、先ず、該センサー容器2の該空隙12に導入され、次いで、該イオン交換体層3に通水され、該処理水排出管8から排出される。この時、該第一電極4では、該処理水9の電気化学的測定値が測定され、該第二電極5では、該イオン交換体層3の電気化学的測定値が測定される。該第一電極4で測定される該処理水9の電気化学的測定値(以下、電気化学的測定値C1とも記載する。)及び該第二電極5で測定される該イオン交換体層3の電気化学的測定値(以下、電気化学的測定値C2とも記載する。)の値は、電気信号として、該演算部6に送られる。該電気信号を受け取った該演算部6は、該電気化学的測定値C2に対する該電気化学的測定値C1の比を計算する。軟化処理中、該演算部6は、連続して該第一電極4及び該第二電極5から送られてくる該電気化学的測定値C1及び該電気化学的測定値C2の値から、該比を連続して計算し、計算毎に該差と予め設定された設定値との対比を行う。
【0024】
そして、該軟化器16に充填されているイオン交換体が吸着した該被処理水18中の硬度イオンの量が、該軟化器16に充填されているイオン交換体の貫流容量を超えると、該処理水9への該硬度イオンのリークが始まる。該硬度イオンのリークが始まると、該イオンセンサー1では、該硬度イオンと該イオン交換体層3の該イオン交換体11のナトリウムイオンとのイオン交換による、該イオン交換体11への該硬度イオンの吸着が始まる。該イオン交換体11が該硬度イオンを吸着すると、該イオン交換体11の電気化学的測定値が大きく変化する。そして、該硬度イオンのリーク量が一定量になると、該比が該設定値に達する。そして、該比が該設定値に達すると、該演算部6は、該信号線10を通じて、再生時期告知信号を発信する。
【0025】
該再生時期告知信号を受け取った、該再生液供給部13の制御部は、該切替バルブ19を切り替えて、該被処理水18の通水を止めると共に、該再生液供給管17から、該軟化器16への再生液の供給を開始し、該軟化器16のイオン交換体の再生に必要な量の再生液を供給するまで、再生液の供給を続ける。再生の間、該再生液は、該軟化器16を経て、該イオンセンサー1にも供給されるので、該イオンセンサー1中の該イオン交換体11も同時にナトリウム形に再生される。そして、再生終了後、該再生液供給器13の制御部は、該切替バルブ19を切り替えて、再び該被処理水18を、該軟化器16に通水することにより、軟化処理が再開され、該イオンセンサー1による監視が再開される。
【0026】
このようにして、該イオンセンサー1により、該処理水9への硬度イオンのリークが、連続的に監視される。そして、該イオンセンサー1を用いることにより、該軟化処理システム20による軟化処理及び再生が行われる。
【0027】
なお、本発明において、再生とは、例えば、軟化器、逆浸透膜装置又は電気式脱イオン装置等の該被処理水の処理を行う装置(言い換えると、該処理水を排出する装置)の性能を回復させる操作を指し、例えば、該被処理水の処理を行う装置が、軟化器の場合、例えば、食塩水等を該軟化器に供給し、該軟化器に充填されているカチオン交換樹脂を、ナトリウム等の一価のカチオン形にする操作を指し、逆浸透膜装置の場合、例えば、酸又はアルカリ薬液を該逆浸透膜装置に供給して化学洗浄を行う操作、又は該逆浸透膜装置の逆浸透膜エレメントの交換を行う操作を指し、電気式脱イオン装置の場合、例えば、酸又はアルカリ薬液を該電気式脱イオン装置に供給して化学洗浄を行う操作、又は食塩水等を該電気式脱イオン装置に供給して、該電気式脱イオン装置に充填されているカチオン交換樹脂を、ナトリウム等の一価のカチオン形にする操作を指す。
【0028】
該イオンセンサー1に通水される該処理水9は、軟化器、逆浸透膜装置又は電気式脱イオン装置の処理水である。該軟化器としては、ボイラー水等の供給水を得るために用いられ、イオン交換体が充填されており、水道水、工業用水、地下水、河川水等の硬度成分のナトリウムイオンへの置換を行うものであれば、特に制限されない。また、逆浸透膜装置としては、逆浸透膜を備え、該逆浸透膜により、被処理水中のイオンの除去を行う逆浸透膜装置であれば、特に制限されない。また、該電気式脱イオン装置としては、純水・超純水の製造等に用いられ、脱塩室にイオン交換樹脂が充填されており、電場の作用で連続的に被処理水中のイオンの除去を行うものであれば、特に制限されない。
【0029】
該イオン交換体層3を形成する該イオン交換体11としては、陽イオン交換体であれば、特に制限されず、強酸性の陽イオン交換体又は弱酸性の陽イオン交換体のいずれでもよい。また、該イオン交換体層3の形状としては、特に制限されず、例えば、粒状のイオン交換体を充填したものであっても、あるいは、有機多孔質イオン交換体を、該イオン交換体層3が形成されるように充填したものであってもよい。該有機多孔質イオン交換体は、イオン交換体層全体が繋がっているので、イオンの移動が速く、吸着イオンが変化した時に応答が速く、また、イオン移動がイオン交換体層全体に亘って平均的に行われる。そのため、該イオン交換体層3が、該有機多孔質イオン交換体の成形体の充填物であることが、イオンセンサーの精度が高くなる点で好ましい。また、該イオン交換体11の初期イオン形は、処理対象イオン種によって適宜選択されるが、軟化器、逆浸透膜装置又は電気式脱イオン装置の処理水を対象とする場合には、ナトリウム形である。
【0030】
該イオン交換体層3に充填されているイオン交換体が、粒状のイオン交換体の場合について説明する。該粒状のイオン交換体のイオン交換基の種類及び該イオン交換基が導入されている基材の種類は、特に制限されない。該粒状のイオン交換体の平均粒径は、好ましくは0.01〜1mm、特に好ましくは0.05〜0.2mmであり、該粒状のイオン交換体のイオン交換容量は、好ましくは0.1〜5mg当量/g乾燥イオン交換体、特に好ましくは0.1〜4mg当量/g乾燥イオン交換体である。該粒状のイオン交換体の平均粒径又はイオン交換容量が、上記範囲にあることにより、イオンセンサーの精度が高くなる。該粒状のイオン交換体の平均粒径が、0.01mm未満だと、通水抵抗が大きくなり易く、また、1mmを超えると、処理水とイオン交換体の接触効率が悪くなり易く、迅速な応答が得難くなる。また、該粒状のイオン交換体のイオン交換容量が、0.1当量/g乾燥イオン交換体未満だと、処理水中の吸着対象イオンの捕捉が不十分となり易く、また、5mg当量/g乾燥イオン交換体を超えると、電気化学的測定値の変化が緩慢となり易い。
【0031】
該イオン交換体層3に充填されているイオン交換体が、有機多孔質イオン交換体の場合について説明する。該有機多孔質イオン交換体は、複数のマクロポアが接合し、該マクロポア同士の接合部にメソポアが形成されている連続気泡構造を有しており、該連続気泡構造の内壁に、イオン交換基が導入されている。該連続気泡構造の該メソポアは、接合する該マクロポア同士の共通の開口であり、該有機多孔質内に液体を流せば、該マクロポアと該メソポアで形成される気泡内が流路となる。該マクロポア同士の重なりは、1個のマクロポアで1〜12個、多くのものは3〜10個であるので、該連続気泡構造は3次元網目構造である。該連続気泡構造を形成する骨格部分の材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料はポリマー材料を構成する全構成単位に対して、5モル%以上の架橋構造単位を含むことが好ましい。架橋構造単位が5モル%未満であると、機械的強度が不足してしまう。
【0032】
該有機多孔質体イオン交換体のイオン交換基の種類及び該イオン交換基が導入されている基材の種類は、特に制限されない。該有機多孔質イオン交換体の基材としては、種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルベンジルクロライド等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化オレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー;スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。これらのポリマーは、単独のモノマーを重合させて得られるホモポリマーでも、複数のモノマーを重合させて得られるコポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
【0033】
該有機多孔質イオン交換体の連続気泡構造に形成されているメソポアの平均半径は、好ましくは0.01〜50μm、特に好ましくは0.1〜10μmである。
【0034】
該有機多孔質イオン交換体の全細孔容積は、好ましくは1〜50ml/g、特に好ましくは2〜30ml/gであり、該有機多孔質イオン交換体のイオン交換容量は、好ましくは0.1〜5mg当量/g乾燥イオン交換体、特に好ましくは0.1〜4mg当量/g乾燥イオン交換体である。該有機多孔質イオン交換体の全細孔容積又はイオン交換容量が、上記範囲にあることにより、イオンセンサーの精度が高くなる。該有機多孔質イオン交換体の全細孔容積が、1ml/g未満だと、通水抵抗が大きくなり易く、また、50ml/gを超えると、処理水とイオン交換体の接触効率が悪くなり易く、迅速な応答が得難くなる。また、該有機多孔質イオン交換体のイオン交換容量が、0.1当量/g乾燥イオン交換体未満だと、処理水中の吸着対象イオンの捕捉が不十分となり易く、また、5mg当量/g乾燥イオン交換体を超えると、電気化学的測定値の変化が緩慢となり易い。
【0035】
該有機多孔質体の製造方法の一例を以下に示す。該有機多孔質体は、イオン交換基を有さない油溶性モノマー、界面活性剤及び水を混合し、更に必要に応じて重合開始剤を混合し、油中水滴型エマルジョンを調製し、これを重合させて製造される。
【0036】
該イオン交換基を有さない油溶性モノマーとは、カルボン酸基、スルホン酸基等のイオン交換基を有さず、水に対する溶解性が低い、親油性のモノマーを指す。これらモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上の組み合わせであってもよい。ただし、本発明においては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、1〜90モル%、好ましくは3〜80モル%とすることが、後の工程でイオン交換基量を多く導入するに際して必要な機械的強度が得られる点で好ましい。
【0037】
該界面活性剤は、イオン交換基を有さない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば、特に制限はなく、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。これら界面活性剤は、1種単独または2種類以上の組み合わせであってもよい。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。該界面活性剤の添加量は、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、該油溶性モノマーと該界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択される。
【0038】
該重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。該重合開始剤は水溶性であっても油溶性であっても良く、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素-塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム-酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。ただし、場合によっては、開始剤を添加しなくても加熱のみや光照射のみで重合が進行する系もあるため、そのような系では開始剤の添加は不要である。
【0039】
該イオン交換基を有さない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、該油溶性モノマー、該界面活性剤及び該油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法等が挙げられる。必要に応じて公知の沈殿剤を混合してもよい。
【0040】
エマルジョンを形成させるための混合装置としては、被処理物を混合容器に入れ、該混合容器を傾斜させた状態で公転軸の周りに公転させながら自転させることで、被処理物を攪拌混合する、所謂遊星式攪拌装置と称されるものが挙げられる。この遊星式攪拌装置は、例えば、特開平6-71110号公報や特開平11-104404号公報等に開示されているような装置である。本装置の原理は、混合容器を公転させながら自転させることにより、その遠心力作用を利用して該被処理物中の比重の重い成分を外側に移動させ攪拌すると共に、混入する気体をその反対方向に押し出して脱泡するものである。更に、該容器は公転しながら自転しているため、該容器内の該被処理物にらせん状に流れ(渦流)が発生し、攪拌作用を高める。該装置の運転は、大気圧下で行われても良いが、脱泡を短時間で完全に行うために、減圧下で行われることが好ましい。
【0041】
また、混合条件は、目的のエマルジョン粒径や分布を得ることができる公転及び自転回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。好ましい公転回転数は、回転させる容器の大きさや形状にもよるが、約500〜2000回転/分である。また、好ましい自転回転数は、公転回転数の1/3前後の回転数である。攪拌時間も内容物の性状や容器の形状、大きさによって大きく変動するが、一般に0.5〜30分、好ましくは1〜20分の間で設定する。更に、用いられる容器の形状は、底面直径に対し、充填物の高さが0.5〜5となるよう、充填物を収容可能な形状が好ましい。なお、上記油溶性成分と水溶性成分の混合比は、質量比で(油溶性成分)/(水溶性成分)=2/98〜50/50、好ましくは5/95〜30/70の範囲で任意に設定される。
【0042】
このようにして得られた油中水滴型エマルジョンの重合には、モノマーの種類、開始剤系により様々な条件が選択される。例えば、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよく、開始剤として過酸化水素-塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、0〜30℃で1〜48時間重合させればよい。重合終了後、内容物を取り出し、必要であれば、未反応モノマーと界面活性剤除去を目的で、イソプロパノール等の溶剤で抽出して有機多孔質体を得る。すなわち、油中水滴型エマルジョンのうち、油分が重合して骨格構造を形成し、水滴部分が気泡部を形成することになる。
【0043】
このようにして得た有機多孔質体に、イオン交換基を導入し、有機多孔質イオン交換体を得る。前記有機多孔質体に、イオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、有機多孔質体がスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法、有機多孔質体にラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、スチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法、同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。なお、導入するイオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基が挙げられる。
【0044】
該イオン交換体層3は、通水方向に対して平行方向の該イオン交換体層3の長さ、すなわち、厚みが、全範囲に亘って一定であれば、形状は特に制限されず、また、該イオン交換体層3の厚みは、特に制限されないが、実用上好ましくは1〜50mm、特に好ましくは3〜20mmである。
【0045】
該第一電極4は、該処理水9の電気化学的測定値を測定するための電極であり、該第二電極5は、該処理水9を通水している際の該イオン交換体層3の電気化学的測定値を測定するための電極である。図1では、該第一電極4は、該センサー容器2中の該イオン交換体層3が充填されていない該空隙12に設置される旨記載したが、該第一電極4が設置される箇所は、これに限定されるものではなく、該イオン交換体層3に通水される前の該処理水9の電気化学的測定値が測定できる位置であればよい。従って、本発明のイオンセンサーの他の実施の形態例としては、例えば、図3中(3−1)に示すように、センサー容器2a全体に該イオン交換体層3が形成されており、該第一電極4が、該イオン交換体層3に該処理水9を導入するための該処理水導入管7内に設置され、該第二電極が、該イオン交換体層3に設置されているものや、図3中(3−2)に示すように、該センサー容器2b、2cが2個並列に連結され、一方のセンサー容器2bには、該イオン交換体層3が形成されており、他方のセンサー容器2cには、何も充填されておらず、該第一電極4が、該センサー容器2c内に設置され、該第二電極5が、該センサー容器2bの該イオン交換体層3に設置されているものが挙げられる。なお、図3では、センサー容器、イオン交換体層、第一電極、第二電極、処理水導入管及び処理水排出管のみを記載した。また、該第一電極の設置される箇所は、後述する本発明のイオン分析装置においても同様である。
【0046】
該第一電極4及び該第二電極5では電気化学的測定値が測定されるが、該第一電極4及び該第二電極5で測定される電気化学的測定値とは、例えば、導電率、電気抵抗値、比抵抗、インピーダンス、コンダクタンス、誘電率等の、該処理水9又は該イオン交換体層3の導電性、すなわち、イオンの移動度又は輸率に相関のある電気化学的測定値のいずれかを指す。そして、該イオンセンサー1の製造にあたっては、該処理水9又は該イオン交換体層3の導電性に相関のある電気化学的測定値のうちのいずれかが選択され、その電気化学的測定値を測定するための該第一電極4及び該第二電極5が設置される。従って、該第一電極4及び該第二電極5は、例えば、該処理水9及び該イオン交換体層3の導電率を測定して、該イオンセンサー1による監視を行う場合は、導電率測定用の電極であり、また、電気抵抗値で監視を行う場合は、電気抵抗値測定用の電極であり、比抵抗で監視を行う場合は、比抵抗測定用の電極であり、インピーダンスで監視を行う場合は、インピーダンス測定用の電極であり、コンダクタンスで監視を行う場合は、コンダクタンス測定用の電極である。
【0047】
該第一電極4の数は、特に制限されず、1であっても、2以上であってもよい。また、同様に、該第二電極5の数は、特に制限されず、1であっても、2以上であってもよい。
【0048】
該第一電極4及び該第二電極5は、測定する電気化学的測定値に応じて適宜選択され、例えば、交流2電極式導電率計では、2点1対の電極が用いられる。従って、該第一電極4又は該第二電極5としては、1つの棒状の電極部材に固定されたものが挙げられ、この場合、該電極部材を該空隙12又は該イオン交換体層3に差し込むことにより、該第一電極4又は該第二電極5が設置される。また、該第二電極5は、該第二電極5の2点間に、該イオン交換体層3を挟み込むようにして固定されて構成される。
【0049】
該演算部6は、下記式(1):
(k×C1)/C2 (1)
により、該電気化学的測定値C2に対する該電気化学的測定値C1の比を計算する演算部である。なお、上記式(1)中のkの値は、該イオンセンサー1に通水される該処理水9の性状により適宜選択され、前記式(1)により、硬度イオンの変化が顕著に現れる値が選択される。
【0050】
該演算部6で、該比と対比される該設定値は、該イオンセンサー1に通水される該処理水9の性状により適宜選択される。
【0051】
該処理水導入管7には、該処理水9を該イオンセンサー1に供給するたのポンプが取り付けられていてもよい。
【0052】
上記では、該イオンセンサー1が用いられる軟化処理システムは、該差又は該比が該設定値に達すると、該演算部6が該再生告知信号を発信し、該再生告知信号が該再生液供給器13の制御部に伝えられ、自動的に再生が開始される該軟化処理システム20である旨を説明したが、これに制限されるものではない。例えば、該イオンセンサー1が用いられる軟化処理システムとしては、該演算部6からの該再生告知信号を受け取ると音を発する警告ブザー又は点灯する警告灯が設置され、該警告ブザー又は該警告灯の警告により、該警告を知ったものにより、手動で再生が行われるような軟化処理システムであってもよい。
【0053】
本発明の軟化器は、処理水の水質の監視計器として、本発明のイオンセンサーを有する軟化器である。本発明の軟化器としては、例えば、図1に示す軟化システムが挙げられる。
【0054】
本発明の再生時期の判定方法は、軟化器の再生時期、逆浸透膜装置の再生時期又は電気式脱イオン装置の再生時期の判定方法であって、該軟化器、該逆浸透膜装置又は該電気式脱イオン装置の処理水をイオン交換体層に通水しながら、該イオン交換体層に通水される前の該処理水の電気化学的測定値(電気化学的測定値C1)を測定すると同時に、該イオン交換体層の電気化学的測定値(電気化学的測定値C2)を測定し、得られる該電気化学的測定値C1及び該電気化学的測定値C2の値から、該電気化学的測定値C2に対する該電気化学的測定値C1の比を計算し、計算を行う毎に設定値と対比して、該比が該設定値になった時を再生時期と判定する再生時期の判定方法である。
【0055】
本発明の再生時期の判定方法に係る軟化器、逆浸透膜装置、電気式脱イオン装置、処理水、イオン交換体層、イオン交換体層に充填されるイオン交換体、処理水の電気化学的測定値、イオン交換体層の電気化学的測定値、イオン交換体層の電気化学的測定値に対する処理水の電気化学的測定値の比及びその計算式、並びに設定値は、前記本発明のイオンセンサーに係る軟化器、逆浸透膜装置、電気式脱イオン装置、処理水、イオン交換体層、イオン交換体層に充填されるイオン交換体、処理水の電気化学的測定値、イオン交換体層の電気化学的測定値、イオン交換体層の電気化学的測定値に対する処理水の電気化学的測定値の比及びその計算式、並びに設定値と同様である。
【0056】
本発明の再生時期の判定方法において、該処理水の電気化学的測定値を測定する方法としては、特に制限されず、例えば、本発明のイオンセンサーに係る第一電極を用いる方法が挙げられる。また、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定する方法としては、特に制限されず、例えば、本発明のイオンセンサーに係る第二電極を用いる方法が挙げられる。
【0057】
そして、該電気化学的測定値C1及び該電気化学的測定値C2の測定を行う毎に、該電気化学的測定値C2に対する該電気化学的測定値C1の比を計算し、該比と該設定値との対比を行い、該比が該設定値に達した時を該再生時期と判定する。
【0058】
本発明の再生時期の判定方法により、該軟化器、該逆浸透膜装置又は該電気式脱イオン装置が再生時期に達したと判断されると、該軟化器、該逆浸透膜装置又は該電気式脱イオン装置による被処理水の処理を中止し、該軟化器、該逆浸透膜装置又は該電気式脱イオン装置の再生処理を開始する。
【0059】
本発明のイオンセンサーは、該比を連続的に計算できるので、本発明の再生時期の判定方法を実施するための監視計器として好適に用いられる。
【0060】
本発明のイオン分析装置は、試料水が通水されるイオン交換体層、該イオン交換体層に通水される前の該試料水の電気化学的測定値を測定する第一電極、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定する第二電極、該第二電極で測定される該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該第一電極で測定される該試料水の電気化学的測定値の比を計算し、該比から該試料水中のイオン濃度を算出する演算部、及び該イオン濃度を表示する表示部を有するイオン分析装置である。
【0061】
本発明のイオン分析装置に係るイオン交換体層、試料水の電気化学的測定値、、第一電極、イオン交換体層の電気化学的測定値、第二電極、並びにイオン交換体層の電気化学的測定値に対する試料水の電気化学的測定値の比及びその計算式は、前記本発明のイオンセンサーに係るイオン交換体層、試料水の電気化学的測定値、第一電極、イオン交換体層の電気化学的測定値、第二電極、並びにイオン交換体層の電気化学的測定値に対する試料水の電気化学的測定値の比及びその計算式と同様である。
【0062】
本発明のイオン分析装置は、分析対象となるイオン(以下、分析対象イオンとも記載する。)及び該分析対象となるイオン以外のイオン(以下、分析非対象イオンとも記載する。)を含有する試料水の分析において、該分析対象イオンの基準イオンに対する選択係数と該分析非対象イオンの基準イオンに対する選択係数との差(該分析対象イオンの基準イオンに対する選択係数−該分析非対象イオンの基準イオンに対する選択係数)が、0.5以上であり、且つ該分析対象イオンの種類がわかっている場合に、該試料水中の該分析対象イオンの濃度を分析するために用いられる。なお、一般に、選択係数に係る基準イオンとしては、任意のイオン種を選択することができるが、本発明においては、該選択係数に係る基準イオンは、分析対象イオンが陽イオンの場合は、リチウムイオンであり、分析対象イオンが陰イオンの場合は、水酸化物イオンである。
【0063】
なお、該分析対象イオン又は該分析非対象イオンの基準イオンに対する選択係数について説明すると、AイオンのBイオンに対する選択係数とは、下記式(2):
=(q・C)/(q・C) (2)
(式中、KはAイオンのBイオンに対する選択係数を示し、qは液相と平衡にあるイオン交換体相のAイオン濃度(当量/L)を示し、qは液相と平衡にあるイオン交換体相のBイオン濃度(当量/L)を示し、Cはイオン交換体相と平衡にある液相のAイオン濃度(当量/L)を示し、Cはイオン交換体相と平衡にある液相のBイオン濃度(当量/L)を示す。)
により求められる値である。そして、本発明においては、該Aイオンが、該分析対象イオン又は該分析非対象イオンであり、該Bイオンが、基準イオン、すなわち、リチウムイオン又は水酸化物イオンである。
【0064】
多価の陽イオンのリチウムイオンに対する選択係数と1価の陽イオンのリチウムイオンに対する選択係数との差は、通常、0.5以上であるので、該試料水としては、分析対象イオンとして多価の陽イオンを、分析非対象イオンとして1価の陽イオンを含有するものが挙げられる。この場合、該試料水に含有される分析対象イオンとしては、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、バリウムイオン(Ba2+)、鉛イオン(Pb2+)、スズイオン(Sn2+)、ニッケルイオン(Ni2+)、カドミウムイオン(Cd2+)、銅イオン(Cu2+)、コバルトイオン(Co2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、ウラニルイオン(UO2+)等の多価の陽イオンが挙げられ、また、該試料水に含有される分析非対象イオンとしては、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、チタンイオン(Ti)、銀イオン(Ag)、セシウムイオン(Cs)、ルビジウムイオン(Rb)、アンモニウムイオン(NH)、水素イオン(H)、リチウムイオン(Li)等の1価の陽イオンが挙げられる。
【0065】
また、カリウムイオンのリチウムイオンに対する選択係数とナトリウムイオンのリチウムイオンに対する選択係数との差は、0.5以上であるため、該試料水としては、該分析対象としてカリウムイオンを、該分析非対象イオンとしてナトリウムイオンを含有するものが挙げられる。この場合、該試料水は、カリウムイオンとの関係において、上記式(2)の選択係数が0.5以上となる分析非対象イオンであれば、含有することができる。
【0066】
多価の陰イオンの水酸化物イオンに対する選択係数と1価の陰イオンの水酸化物イオンに対する選択係数との差は、通常、0.5以上であるので、該試料水としては、分析対象イオンとして多価の陰イオンを、分析非対象イオンとして1価の陰イオンを含有するものが挙げられる。この場合、該試料水に含有される分析対象イオンとしては、硫酸イオン(SO2−)、リン酸イオン(PO3−)等の多価の陰イオンが挙げられ、また、1価の陰イオンとしては、硝酸イオン(NO)、亜硝酸イオン(NO)、重炭酸イオン(HCO)、水酸化物イオン(OH)等の1価の陰イオンが挙げられる。
【0067】
本発明のイオン分析装置は、分析対象イオンの基準イオンに対する選択係数と分析非対象イオンの基準イオンに対する選択係数との差が同程度であれば、2種以上の分析対象イオンを含有する試料水中の該分析対象イオンの濃度を分析することができ、その場合、それらの分析対象イオンの合計濃度が分析される。
【0068】
なお、該試料水が、該分析対象イオンのみ、すなわち、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、鉛イオン、スズイオン、ニッケルイオン、カドミウムイオン、銅イオン、コバルトイオン、亜鉛イオン、ウラニルイオン、カリウムイオン、硫酸イオン又はリン酸イオンのみを含有する場合、該分析非対象イオンの濃度は「0」であるので、該分析対象イオンの基準イオンに対する選択係数と該分析非対象イオンの基準イオンに対する選択係数との差は、0.5以上である。従って、該試料水としては、該分析対象イオンのみを含有するものが挙げられる。
【0069】
該試料水としては、地下水、河川水、水道水又は工業用水、あるいは、軟化器、逆浸透膜装置又は電気式脱イオン装置の処理水等が挙げられる。
【0070】
本発明のイオン分析装置に係るイオン交換体層には、イオン交換体が充填されており、該イオン交換体としては、分析対象が陽イオンの場合、陽イオン交換体であれば、特に制限されず、強酸性の陽イオン交換体又は弱酸性の陽イオン交換体のいずれでもよく、分析対象が陰イオンの場合、陰イオン交換体であれば、特に制限されず、強塩基の陰イオン交換体又は弱塩基性の陰イオン交換体のいずれでもよい。また、該イオン交換体層は、粒状のイオン交換体を充填したものであっても、あるいは、有機多孔質イオン交換体を、該イオン交換体層の形状に切り出した有機多孔質イオン交換体の成形体を充填したものであってもよい。該有機多孔質イオン交換体は、イオン交換体層全体が繋がっているので、イオンの移動が速く、吸着イオンが変化した時に応答が速く、また、イオン移動がイオン交換体層全体に亘って平均的に行われる。そのため、該イオン交換体層が、該有機多孔質イオン交換体の成形体の充填物であることが、イオン分析装置の精度が高くなる点で好ましい。
【0071】
本発明のイオン分析装置に係るイオン交換体層に充填される粒状のイオン交換体のうち、イオン交換基が陽イオン交換基である粒状の陽イオン交換体は、前記本発明のイオンセンサーに係る粒状のイオン交換体(陽イオン交換体)と、また、本発明のイオン分析装置に係るイオン交換体層に充填される有機多孔質イオン交換体のうち、イオン交換基が陽イオン交換基である有機多孔質陽イオン交換体は、前記本発明のイオンセンサーに係る有機多孔質イオン交換体(陽イオン交換体)と同様である。また、本発明のイオン分析装置に係るイオン交換体層に充填される粒状のイオン交換体のうち、イオン交換基が陰イオン交換基である粒状の陰イオン交換体は、粒状のイオン交換体に導入されているイオン交換基が陰イオン交換基である以外は、本発明のイオンセンサーに係る粒状のイオン交換体と同様である。また、本発明のイオン分析装置に係るイオン交換体層に充填されている有機多孔質イオン交換体のうち、イオン交換基が陰イオン交換基である有機多孔質陰イオン交換体は、有機多孔質体に導入されているイオン交換基が陰イオン交換基である以外は、本発明のイオンセンサーに係る有機多孔質イオン交換体と同様である。該有機多孔質陰イオン交換体に係るイオン交換基としては、四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基が挙げられる。また、四級アンモニウム基を導入する方法としては、有機多孔質体がスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法、有機多孔質体をクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法、有機多孔質体にラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法、同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。
【0072】
本発明のイオン分析装置に係る演算部は、先ず、下記式(1):
(k×C1)/C2 (1)
により、該試料水が通水されている際の該イオン交換体層の電気化学的測定値C2に対する該イオン交換体層に通水される前の該試料水の電気化学的測定値C1の比を計算し、次いで、該比から該試料水中のイオン濃度を算出する演算部である。該演算部において、該比から該試料水中のイオン濃度を算出する方法としては、該比を、該演算部に記憶されている検量線と対比し、該試料水中のイオン濃度を算出する方法、該比と該比に対応する該試料水のイオン濃度とが、1対1で関連づけられているデータベースを検索し、該試料水のイオン濃度を算出する方法等が挙げられる。なお、上記式(1)中のkの値は、本発明のイオン分析装置に通水される該試料水の性状により適宜選択される。
【0073】
本発明のイオン分析装置に係る表示部としては、特に制限されず、該演算部で算出されたイオン濃度を表示するディスプレイ、又は該イオン濃度を印字する印字装置が挙げられる。
【0074】
本発明のイオン分析方法は、試料水をイオン交換体層に通水しながら、該イオン交換体層に通水される前の該試料水の電気化学的測定値(電気化学的測定値C1)を測定すると同時に、該イオン交換体層の電気化学的測定値(電気化学的測定値C2)を測定し、得られる該電気化学的測定値C2に対する該電気化学的測定値C1の比を計算し、該比から該試料水中のイオン濃度を算出するイオン分析方法である。
【0075】
本発明のイオン分析方法係る試料水、イオン交換体層、イオン交換体層に充填されるイオン交換体、試料水の電気化学的測定値、イオン交換体層の電気化学的測定値、イオン交換体層の電気化学的測定値に対する試料水の電気化学的測定値の比及びその計算式、並びにイオン濃度の算出方法は、本発明のイオン分析装置に係る試料水、イオン交換体層、イオン交換体層に充填されるイオン交換体、試料水の電気化学的測定値、イオン交換体層の電気化学的測定値、イオン交換体層の電気化学的測定値に対する試料水の電気化学的測定値の比及びその計算式、並びにイオン濃度の算出方法と同様である。
【0076】
本発明のイオン分析方法において、該試料水の電気化学的測定値を測定する方法としては、特に制限されず、本発明のイオン分析装置に係る第一電極を用いる方法が挙げられる。また、本発明のイオン分析方法において、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定する方法としては、特に制限されず、本発明のイオン分析装置に係る第二電極を用いる方法が挙げられる。
【0077】
本発明のイオン分析装置は、該比を連続的に計算できるので、本発明のイオン分析方法を連続的に実施するための分析装置として好適に用いられる。
【0078】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、イオン交換体層の電気化学的測定値だけではなく、該イオン交換体層に通水される前の処理水(試料水)の電気化学的測定値を測定することにより、安定したイオン濃度の測定ができること、すなわち、該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該処理水(試料水)の電気化学的測定値の比(前記式(1))は、軟化器等の被処理水又はイオンセンサーに導入される該軟化器等の処理水の水質又は水温、あるいは、試料水の水質又は水温の変動の影響を受け難いので、該比を用いることにより、該水質又は該水温が変動しても、安定したイオン濃度の測定を行うことができることを見出した。
【0079】
従って、該比を用いて再生時期の判定を行う本発明のイオンセンサーによれば、本発明のイオンセンサーが設置される軟化器等の被処理水又はイオンセンサーに導入される該軟化器等の処理水の水質又は水温が変動しても、連続的に精度が高い監視を行うことができる。また、該比を用いて再生時期の判定を行う本発明の再生時期の判定方法によれば、簡便であり且つ軟化器等の被処理水又は該軟化器等の処理水の水質又は水温が変動しても、精度が高い再生時期の判定方法を提供できる。
【0080】
また、本発明のイオン分析装置は、構成が簡便であるにもかかわらず、該比を用いてイオン濃度の分析を行う装置なので、試料水に含有されるイオンがわかっている場合は、高い精度でイオン濃度の分析を行うことができる。従って、本発明のイオン分析装置によれば、携帯性があり且つ安価なイオン分析装置を提供できる。例えば、純水又は超純水の製造ラインで品質管理を行うために、従来は、製造ラインから試験サンプルを抜き出し、別室に設置されたイオンクロマトグラフィー装置又は原子吸光分析装置で、イオン濃度の分析を行わなければならなかったが、本発明のイオン分析装置によれば、製造現場でイオン濃度の分析を行うことができる。また、本発明のイオン分析装置によれば、連続的にイオン濃度の分析を行うこともできる。また、本発明のイオン分析方法は、該比を用いてイオン濃度の分析を行うので、試料水に含有されるイオンがわかっている場合は、本発明のイオン分析方法によれば、簡便であり且つ精度の高いイオン濃度の分析方法を提供することができる。
【0081】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
(有機多孔質陽イオン交換体の製造)
スチレン19.2g、ジビニルベンゼン1.0g、アゾビスイソブチロニトリル0.3g及びソルビタンモノオレート1.1gを混合し、均一に溶解させた。次に、得られた混合物を、180mlの純水に添加し、遊星式攪拌装置を用いて、公転=1000rpm、自転=330rpmで、2分間攪拌後、静置し、60℃で24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで12時間、ソックスレー抽出して、未反応のモノマー及びソルビタンモノオレートを除去した。その後、85℃で24時間減圧乾燥し、架橋成分を3.3モル%含有するスチレン/ジビニルベンゼン共重合体の有機多孔質体を得た。
【0083】
上記のようにして得た有機多孔質体を、7.9gを切り出し、ジクロロメタン900mlを加え、35℃で1時間加熱した後、0℃まで氷冷し、クロロスルホン酸42.0gを徐々に加えた。クロロスルホン酸添加終了後、昇温して、35℃で24時間反応させた。その後、メタノールで反応物を洗浄し、更に水洗し、有機多孔質陽イオン交換体を得た。該有機多孔質陽イオン交換体のイオン交換容量は、4.6mg当量/g乾燥イオン交換体であった。また、SEM観察の結果、該有機多孔質陽イオン交換体が、平均径が100μのマクロポアの大部分が重なり合った、三次元網目構造の連続気泡構造を有していることが確認された。また、水銀圧入法で、マクロポアとマクロポアの接合部、すなわち、メソポアの直径の平均値及び全細孔容積を求めたところ、メソポアの直径の平均値は29.0μm、全細孔容積は8.6ml/gであった。
【0084】
(イオン濃度測定セルの作成)
上記のようにして得た該有機多孔質陽イオン交換体を、外径15mm、厚さ15mmの円筒状に成形した。得られた成形体を、図4中、内径15mm、長さ30mmの円筒状のセンサー容器32の下流側に、空隙の長さ39が15mmとなるように充填した。この時、イオン交換体層33の厚みは15mmであった。更に、図4に示すように、該イオン交換体層33に通水される前の試料水40の導電率を測定するための導電率計34、該イオン交換体層33の導電率を測定するための導電率計35、試料水導入管37及び試料水排出管38を設置し、イオン濃度測定セル31を作成した。
・導電率計34、35には、温度補償機能のないMH−8(オルガノ社製)を用いた。
【0085】
(イオン濃度の検量線の作成)
塩化ナトリウム100mg/L水溶液を調製し、硬度0mgCaCO/Lのブランク水(検量線作成用試料水A)とした。次いで、該ブランク水に、塩化カルシウムを加え、硬度が1.0mgCaCO/Lの検量線作成用試料水B、2.5mgCaCO/Lの検量線作成用試料水C及び5.0mgCaCO/Lの検量線作成用試料水Dを準備した。各検量線作成用試料水A〜D(試料水40)を、該イオン濃度測定セル31に、それぞれ、通水速度60L/hで通水し、通水温度を熱交換器で、それぞれ、10℃、20℃及び30℃に調節した時の該検量線作成用試料水A〜Dの導電率C1及びイオン交換体層33の導電率C2を、該導電率計34及び該導電率計35で測定した。その測定値及びその測定値から求めたイオン交換体層の導電率C2に対する検量線作成用試料水A〜Dの導電率C1の比(C1/C2)を表1に示す。また、該比を基に作成した検量線を図5に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
実施例1の結果、(C1/C2)の値は、試料水中のカルシウムイオンの濃度変化に応じて変化しており、また、同一のカルシウム濃度の時の(C1/C2)の値は、測定温度が異なっても、ほぼ同一であった。この結果は、該イオン濃度測定セル31を備えるイオン分析装置、すなわち、本発明に係るイオン分析装置は、試料水の温度が変化しても、安定して試料水中のイオン濃度の分析を行えることを示す。
【0088】
(イオン濃度の測定)
原子吸光分析装置による硬度分析結果が、それぞれ、0.5mgCaCO/L及び2.2mgCaCO/Lである試料水を、該イオン濃度測定セル31で測定したところ、(C1/C2)の値は、それぞれ、0.398及び0.424であり、図5の検量線から読み取られる硬度は、0.5mgCaCO/L及び2.2mgCaCO/Lであった。
【0089】
(実施例2)
図6に示すように、活性炭ろ過フィルター41(PF−CB、オルガノ社製)、熱交換器42及び軟化器43(SAT−105B、オルガノ社製)を、この順番で直列に接続し、該軟化器43の処理水の出口配管46からの分岐管に、実施例1で得られたイオン濃度測定セル31を取り付けた。次いで、該活性炭ろ過フィルター41の入口から硬度120mgCaCO/Lの井水を、通水速度60L/hで315時間通水した。通水中の該軟化器の処理水40の導電率C1及びイオン交換体層33の導電率C2を、該導電率計34及び該導電率計35で測定し、その測定値及びその測定値から求めたイオン交換体層の導電率C2に対する該軟化器の処理水の導電率C1の比(C1/C2)を表2並びに図7〜図10に示す。また、該導電率を測定した時の該軟化器の処理水40の硬度を調べるために、該軟化器の処理水40をサンプリングし、原子吸光分析装置により硬度を測定した。その結果を表2に示す。
・表2中、水温は、該軟化器43に通液される軟化器の被処理水45の温度を指す。
・なお、通水中、通水時間170時間付近で、(C1/C2)の値が急激に変化したため、通水時間186時間で、一旦通水を止め、再生工程を行い、その後、通水を再開した。この時の再生工程は、該軟化器43の入口側に繋がる再生液供給管から、12.5%の食塩水を90L/hで10分間通水する再生処理と、次いで、井水を90L/hで1時間通水するリンス処理により行った。なお、図6では、該再生液供給管の記載を省略した。
・また、通水時間215時間〜260時間の間は、熱交換器42を用いて軟化器43に通水する該軟化器の被処理水45の温度を10℃程度に下げて、通水を行った。
【0090】
【表2】

【0091】
実施例2の結果、(C1/C2)の値は、軟化器の処理水40の硬度が0.007mgCaCO/L未満である通水時間0〜161.7時間及び189.5〜312.3時間の間、軟化器の被処理水45の温度が変化しても、一定であった。特に、通水時間215時間〜260時間の間は、熱交換器42で軟化器の被処理水45の温度を、10℃程度と、大きく変化させたにもかかわらず、(C1/C2)の値は、一定であった。また、(C1/C2)の値は、軟化器の処理水40の硬度が急激に上昇する通水時間171.8時間目に、急激に変化した。これらの結果は、該イオン濃度測定セル31を備えるイオンセンサー、すなわち、本発明に係るイオンセンサーは、軟化器の処理水への硬度成分のリークを監視するイオンセンサーとしての機能を果たし、且つ処理水の温度が変化しても、安定して監視が行えることを示す。
【0092】
一方、イオン交換体層の導電率C2の値は、軟化器の被処理水45の水温の変動の影響を受けている。特に、軟化器の被処理水45の水温を大きく変化させた通水時間215時間〜260時間の間は、イオン交換体層の導電率C2の値が大きく変化している。このことは、処理水の温度が変化するような場合には、イオン交換体層の導電率C2の値では、軟化器の処理水への硬度成分のリークを監視することはできないことを表す。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施の形態例のイオンセンサーの模式的な断面図である。
【図2】イオンセンサー1を用いる軟水供給システム20の模式図である。
【図3】本発明の他の実施の形態例のイオンセンサーの模式図である。
【図4】実施例1に係るイオン濃度測定セルを示す図である。
【図5】実施例1で得られる検量線を示すグラフである。
【図6】実施例2で用いた各機器の配置及び配管を示す図である。
【図7】実施例2において、運転時間と(C1/C2)値又は硬度の関係を示すグラフである。
【図8】実施例2において、運転時間と(C1/C2)又は軟化器の被処理水の水温の関係を示すグラフである。
【図9】実施例2において、運転時間とC1、C2又は硬度の関係を示すグラフである。
【図10】実施例2において、運転時間とC1、C2又は軟化器の被処理水の水温の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0094】
1 イオンセンサー
2、2a、2b、2c、32 センサー容器
3、33 イオン交換体層
4 第一電極
5 第二電極
6 演算部
7 処理水導入管
8 処理水排出管
9 処理水
10 信号線
11 イオン交換体
12 空隙
13 再生液供給器
14 被処理水供給管
15 処理水排出管
16、43 軟化器
17 再生液供給管
18 被処理水
19 切替バルブ
20 軟化処理システム
31 イオン濃度測定セル
34、35 導電率計
37 試料水導入管
38 試料水排出管
39 空隙の長さ
40 試料水(軟化器の処理水)
41 活性炭ろ過フィルター
42 熱交換器
45 軟化器の被処理水
46 処理水の出口配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理水が通水されるイオン交換体層、該イオン交換体層に通水される前の該処理水の電気化学的測定値を測定する第一電極、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定する第二電極、及び該第二電極で測定される該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該第一電極で測定される該処理水の電気化学的測定値の比を計算し、該比が設定値になると再生時期告知信号を発信する演算部を有することを特徴とするイオンセンサー。
【請求項2】
前記イオン交換体層に充填されるイオン交換体が、複数のマクロポアが接合し、該マクロポア同士の接合部にメソポアが形成されている連続気泡構造を有する有機多孔質イオン交換体であることを特徴とする請求項1記載のイオンセンサー。
【請求項3】
処理水の水質の監視計器として、前記請求項1又は2いずれか1項記載のイオンセンサーを有することを特徴とする軟化器。
【請求項4】
軟化器の再生時期、逆浸透膜装置の再生時期又は電気式脱イオン装置の再生時期の判定方法であって、該軟化器、該逆浸透膜装置又は該電気式脱イオン装置の処理水をイオン交換体層に通水しながら、該イオン交換体層に通水される前の該処理水の電気化学的測定値を測定すると同時に、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定し、該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該処理水の電気化学的測定値の比を計算し、計算を行う毎に該比と設定値を対比して、該比が該設定値になった時を再生時期と判定することを特徴とする再生時期の判定方法。
【請求項5】
前記イオン交換体層に充填されるイオン交換体が、複数のマクロポアが接合し、該マクロポア同士の接合部にメソポアが形成されている連続気泡構造を有する有機多孔質イオン交換体であることを特徴とする請求項4記載の再生時期の判定方法。
【請求項6】
試料水が通水されるイオン交換体層、該イオン交換体層に通水される前の該試料水の電気化学的測定値を測定する第一電極、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定する第二電極、該第二電極で測定される該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該第一電極で測定される該試料水の電気化学的測定値の比を計算し、該比から該試料水中のイオン濃度を算出する演算部、及び該イオン濃度を表示する表示部を有することを特徴とするイオン分析装置。
【請求項7】
前記イオン交換体層に充填されるイオン交換体が、複数のマクロポアが接合し、該マクロポア同士の接合部にメソポアが形成されている連続気泡構造を有する有機多孔質イオン交換体であることを特徴とする請求項6記載のイオン分析装置。
【請求項8】
試料水をイオン交換体層に通水しながら、該イオン交換体層に通水される前の該試料水の電気化学的測定値を測定すると同時に、該イオン交換体層の電気化学的測定値を測定し、該イオン交換体層の電気化学的測定値に対する該試料水の電気化学的測定値の比を計算し、該比から該試料水中のイオン濃度を算出することを特徴とするイオン分析方法。
【請求項9】
前記イオン交換体層に充填されるイオン交換体が、複数のマクロポアが接合し、該マクロポア同士の接合部にメソポアが形成されている連続気泡構造を有する有機多孔質イオン交換体であることを特徴とする請求項8記載のイオン分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−192702(P2007−192702A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12037(P2006−12037)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】