イオン注入方法及びイオン注入装置
【課題】ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行う場合に、プラズマを利用した工程及びアニール工程で発生しやすい面内不均一パターンに対応した形状に対応した2次元イオン注入量面内分布を実現する。
【解決手段】イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するに際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成する。
【解決手段】イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するに際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入に関し、より詳しくは、イオン注入装置のイオン注入量コントロールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、導電性を変化させる目的、ウエハの結晶構造を変化させる目的などのため、半導体ウエハにイオンを入射する工程が標準的に実施されている。この工程で使用される装置は、イオン注入装置と呼ばれ、イオン源によってイオン化され、その後加速されたイオンビームを形成する機能と、そのイオンビームをビームスキャン、ウエハスキャン、またはそれらの組み合わせにより、半導体ウエハ全面に照射する機能を持つ。
【0003】
半導体製造工程では、ウエハ全面に同一性能の半導体チップを作成する目的から、通常、ウエハ面内に均一な条件を作り込む必要がある。イオン注入工程においても、ウエハの全領域で注入されるイオン注入量が均一になるように、イオン注入装置をコントロールすることが通常である。
【0004】
ところが、いくつかの半導体製造工程では、原理的にウエハ面内に均一な条件を作り込むことが困難になってきている。特に最近、半導体チップの微細化が飛躍的に進んでおり、その困難性が増すとともに、その不均一性の程度も増している。このような条件下で、それ以外の工程で、ウエハ面内で均一な条件を作り込むと、結果的にウエハ全面に同一性能の半導体チップを作成することができなくなる。例えばイオン注入工程で、ウエハ全領域で通常通りの面内イオン注入量が均一なイオン注入を行うと、結果として生じる半導体チップの電気的特性が同一でなくなり、同一性能の半導体チップの作成が不可能になる。
【0005】
そこで、他の半導体製造工程でウエハ面内に均一な条件を作り込むことが出来ない場合に、そのウエハ面内2次元不均一性に対応して、イオン注入装置を用いてウエハ全面にイオンビームを照射する工程において、意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成し、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正することが考えられる。その際に重要なことは、イオン注入工程においては、半導体製造工程の特性上、ステップ回転注入が許容される場合と、許容されない場合があることである。ウエハのステップ回転については、特許文献1に記載されている。
【0006】
イオン注入装置を用いてウエハ全面にイオンビームを照射する工程において、意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成し、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する場合において、ステップ回転注入が許容されないイオン注入工程を用いるべき場合も考えられるので、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現することが重要である。
【0007】
また、言うまでもなく、他の半導体製造工程でウエハ面内に均一な条件を作り込むことが出来ない場合に、どのような面内パターンのウエハ面内不均一性が発生するかも、重要である。
【0008】
ここで、半導体製造工程でウエハ面内不均一性が発生しやすい工程は、プラズマを利用した工程及びアニール工程であることが知られている。これらの工程では、その面内不均一パターンは、同心円形状、偏芯形状、あるいは楕円形状であることが多い。従って、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現する場合、その目的面内不均一パターンとしては、同心円形状、偏芯形状、楕円形状が求められる。
【0009】
また、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性は、その工程の種類や、その工程で用いる条件によってその不均一性の程度が変化する。従って、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現する場合、その注入量補正程度について、補正量強度程度の大きさを変えられることが求められる。
【0010】
また、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性において、その面内不均一パターンが偏芯形状になる場合、その偏芯形状型ウエハ面内不均一性が発現する理由は、主としてプラズマの空間分布や、アニール時の温度分布であることが多い。例えば、プラズマの空間分布は、プラズマ作成用ガス導入口位置、導入ガス流量、プラズマ用高周波電圧コイル位置、プラズマ用高周波電圧コイル数、コンダクタンス空間分布、真空ポンプ位置などで決まるが、それらは一般に複雑で、かつ装置状態によって変化する。アニール時の温度分布についても同様に、複雑かつ装置状態で変化するので、ウエハ内での偏芯形状の中心位置は一定ではない。従って、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に不均一な偏芯形状の2次元イオン注入量面内分布を実現する場合、その偏芯中心位置は、ウエハ内の任意の位置に設定できることが求められる。
【0011】
また、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性において、その面内不均一パターンが楕円形状になる場合、その楕円形状型ウエハ面内不均一性が発現する理由も、偏芯形状と同様に、複雑かつ装置状態によって変化する。従って、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に不均一な楕円形状の2次元イオン注入量面内分布を実現する場合、その楕円の長軸方向にも、設定の自由度が必要である。
【0012】
ここでイオン注入装置には何種類かのタイプがある。例えば、ウエハを固定し、イオンビームを2次元的にスキャンする方式のイオン注入装置であれば、ウエハのステップ回転を用いることなく、同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を実現することは比較的容易である。しかし、最近はウエハ半径が大きくなり、2次元面内にイオンビームを満遍なくスキャンすることが非常に難しくなってきたので、このタイプのイオン注入装置は用いられなくなっている。
【0013】
本発明は、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに打ち込むイオン注入装置に関する。
【0014】
イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、ウエハのステップ回転を用いることなく、意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現する方法として、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量の異なる領域を重ね合わす方法が特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平7−240388号公報
【特許文献2】特開2003−86530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献2のイオン注入方法では、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量分布を重ね合わすので、ウエハ面内に実現できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状になってしまうので、他の半導体製造工程の2次元不均一パターンとして良く発生する、同心円形状、偏芯形状、楕円形状には対応できない。
【0017】
本発明の課題は、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する目的で、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行う場合に、他の半導体製造工程、例えばプラズマを利用した工程及びアニール工程で発生しやすい面内不均一パターンに対応した形状に対応した2次元イオン注入量面内分布を実現化することである。
【0018】
本発明の具体的な課題は、以下の内容を実現できるようにすることである。
【0019】
イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、ウエハのステップ回転を用いることなく同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現化すること。
【0020】
上記の各種形状において、イオン注入面内補正量強度の大きさを変えられること。
【0021】
偏芯形状においては、その偏芯中心位置をウエハ面内の任意の位置に設定できること。
【0022】
楕円形状においては、その長軸方向をビーム走査方向、およびウエハ走査方向のいずれにも設定できること。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、イオンビームを走査し、ビームスキャン方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに打ち込む装置に適用される。
【0024】
本発明の第1の態様によれば、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入方法が提供される。
第1の態様によるイオン注入方法においては、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いる。
第1の態様によるイオン注入方法においてはまた、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ特性関数を用いるようにしても良い。
第1の態様によるイオン注入方法においてはまた、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いるようにしても良い。
第1の態様によるイオン注入方法においては更に、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ特性関数を用いるようにしても良い。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査する制御系を備え、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、前記制御系は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入装置が提供される。
【0026】
第1の態様によるイオン注入方法においては、その変更態様として、前記速度制御に際し、ウエハ面内で任意の地点を設定し、その地点を回転中心とみなし、その回転中心に関して、前記等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成するようにしても良い。
上記変更態様によるイオン注入方法においては、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の補正量分布を用いるようにしても良い。
上記変更態様によるイオン注入方法においてはまた、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の特性関数を用いるようにしても良い。
上記変更態様によるイオン注入方法においてはまた、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いるようにしても良い。
上記変更態様によるイオン注入方法においてはまた、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の特性関数を用いるようにしても良い。
第2の態様によるイオン注入装置においては、その変更態様として、前記制御系が、ウエハ面内で任意の地点を設定し、その地点を回転中心とみなし、その回転中心に関して、前記等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成するようにしても良い。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための楕円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入方法が提供される。
第3の態様によるイオン注入方法においては、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用いるようにしても良い。
【0028】
第3の態様によるイオン注入方法においてはまた、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる特性関数を用いるようにしても良い。
第3の態様によるイオン注入方法においてはまた、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向でウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数が異なる補正量分布を用いるようにしても良い。
第3の態様によるイオン注入方法においてはまた、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向でウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数が異なる特性関数を用いるようにしても良い。
【0029】
本発明の第4の態様によれば、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査する制御系を備え、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、前記制御系は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための楕円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入装置が提供される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、ウエハのステップ回転を用いることなく同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を得るイオン注入方法を実現化することができる。
【0031】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、ウエハのステップ回転を用いることなく同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を得るイオン注入装置が実現化できる。
【0032】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に得られる同心円形状、偏芯形状、楕円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布の面内補正量強度の大きさを変えることにより、他の半導体製造工程の面内不均一性の大きさに対応可能なイオン注入方法を得ることができる。
【0033】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に得られる同心円形状、偏芯形状、楕円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布の面内補正量強度の大きさを変えることにより、他の半導体製造工程の面内不均一性の大きさに対応できる機能を有するイオン注入装置が実現化できる。
【0034】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に得られる偏芯形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布の偏芯中心位置をウエハ面内の任意の位置に設定することにより、他の半導体製造工程の偏芯形状型面内不均一性に対応できるイオン注入方法を得ることができる。
【0035】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に得られる偏芯形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布の偏芯中心位置をウエハ面内の任意の位置に設定することにより、他の半導体製造工程の偏芯形状型面内不均一性に対応できる機能を有するイオン注入装置が実現化できる。
【0036】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に得られる楕円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布の楕円長軸方向をビーム走査方向、およびウエハ走査方向のいずれにも設定できることにより、他の半導体製造工程の楕円形状型面内不均一性に対応できるイオン注入方法を得ることができる。
【0037】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに打ち込むイオン注入装置において、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に得られる楕円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布の楕円長軸方向をビーム走査方向、およびウエハ走査方向のいずれにも設定できることにより、他の半導体製造工程の楕円形状型面内不均一性に対応できる機能を有するイオン注入装置が実現化できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明が適用され得るイオン注入装置の一例を説明するための概略構成図である。
【図2】図1のイオン注入装置のウエハ周りの一例を側面方向から拡大して示す概略図である。
【図3】イオンビーム走査機能とウエハ走査機能について説明するための図である。
【図4】従来行われてきたウエハ面内均一性注入について説明するための図である。
【図5】本発明による、ウエハ面内に同心円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得るイオン注入方法の第1の例について説明するための図である。
【図6】本発明による、ウエハ面内に同心円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得るイオン注入方法の第2の例について説明するための図である。
【図7】本発明による、ウエハ面内に同心円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得るイオン注入方法の第3の例について説明するための図である。
【図8】本発明による、ウエハ面内に偏芯形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得るイオン注入方法の第1の例について説明するための図である。
【図9】本発明による、ウエハ面内に偏芯形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得る注入方法の第2の例について説明するための図である。
【図10】本発明による、ウエハ面内に偏芯形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得る注入方法の第3の例について説明するための図である。
【図11】本発明による、ウエハ面内に楕円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得る注入方法の一例について説明するための図である。
【図12】従来行われてきた、ウエハ面内不均一性注入について説明するための図である。
【図13】本発明による、ウエハ面内不均一性注入について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ここで、図1を参照して、本発明が適用され得るイオン注入装置の概略構成について説明する。本発明が適用され得るイオン注入装置は、イオン源1から引出電極2により引き出したイオンビームがウエハ7に至るビームライン上を通るようにするために、該ビームラインに沿って、質量分析磁石装置3、質量分析スリット4、ビームスキャナー5、ウエハ処理室(イオン注入室)を配設している。ウエハ処理室内には、ウエハ7を保持するホルダ8を備えたメカニカルスキャン装置が配設される。イオン源1から引き出されたイオンビームは、ビームラインに沿ってウエハ処理室のイオン注入位置に配置されたホルダ8上のウエハ7に導かれる。
【0040】
イオンビームは、ビームラインの途中で、ビームスキャナー5を用いて往復走査され、パラレルレンズ6の機能により平行化された後、ウエハ7まで導かれる。
本発明が適用されるイオン注入装置では、イオンビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハ7に打ち込む。図1では、ウエハ7は図面に対して垂直な方向に走査されると考えて良い。
【0041】
図2は、図1のイオン注入装置のウエハ周りの一例を拡大して示す概略図である。図2では、イオンビームは、図面に対して垂直な方向に走査され、ホルダ8上に保持されているウエハ7に照射される。ホルダ8は昇降装置9により図内矢印方向に往復駆動され、その結果、ホルダ8上に保持されているウエハ7もまた、図内矢印方向に往復駆動される。すなわち、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハ7をメカニカルに走査することにより、イオンをウエハ7の全面に打ち込むことができる。本発明では使用しないが、後述される従来技術との比較説明を理解し易くするために、ウエハのステップ回転注入に使用される回転装置10も図示している。
【0042】
ここで、図3を参照して、イオンビーム走査機能とウエハ走査機能について説明する。図3では、走査されるウエハ7と走査されるイオンビーム、及び昇降装置9のみを示し、ホルダと回転装置は示していない。この例では、イオンビームは横方向に走査され、ウエハ7は図示される最上位置と最下位置との間を往復するように縦方向に走査される。図3に示すように、イオンビームの走査領域はウエハ7の直径を超え、メカニカルにウエハ7を走査する領域は、ウエハ7がイオンビームを通り抜けるよう制御される。
ビームスキャナー5によるイオンビーム走査機能、昇降装置9によるウエハ走査機能は、これらを制御するため制御装置(図示せず)により実現される。ビームスキャナー5、昇降装置9、少なくともこれらを制御する機能を持つ制御装置は、まとめて制御系と呼ぶことができる。
【0043】
本発明が適用されうるイオン注入装置は、いままで説明してきたように、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに打ち込む装置であるが、ウエハに注入されるイオン注入量を考える際には、イオンビームとウエハとの相対運動が問題となるので、理解の便宜上、あたかもウエハが静止していると仮定し、イオンビームの注入領域およびビーム走査速度を相対的に考えれば良い。
【0044】
図4は、従来行われてきたウエハ面内均一性注入について説明するための図である。従来行われてきた、標準的なウエハ面内均一性注入では、ウエハ面上横方向の注入イオン量均一性を確保するために、イオンビームの走査速度はほぼ一定に保たれる。また、ウエハ面上縦方向の注入イオン量均一性を保つために、そのメカニカル走査速度は、ほぼ一定に保たれる。
【0045】
ここで、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに打ち込む装置において、ウエハ面内に意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成する方法を説明する。
通常、イオンビーム走査方向のビーム走査速度またはメカニカル走査方向のウエハ走査速度の一方を制御し、さらに、図2に示された回転装置10を用いて、ステップ回転注入を行うことによってウエハ面内に意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成する手法が知られている。この場合、ビーム走査速度制御、乃至ウエハ走査速度制御を直線乃至矩形的に行っても、ステップ回転注入が回転対称性を持っているので、同心円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布が実現できる。
【0046】
ところが、イオン注入工程においては、半導体製造工程の特性上、ステップ回転注入が許容されない場合があるので、そのようなステップ回転注入が、許容されないイオン注入過程においては、この手法は採用できないため、ウエハ面内に意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成することはできない。
【0047】
また、このようなステップ回転注入を用いると、必然的に回転対称となるので、ウエハ面内に偏芯形状、乃至楕円形状の意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成することはできない。
【0048】
ここで、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、ステップ回転注入を用いることなくウエハ面内に意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成する方法として、イオンビーム走査方向のビーム走査速度及びメカニカル走査方向のウエハ走査速度を制御して、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量分布を重ね合わす手法がある。
【0049】
ここで、図12を参照して、上記イオンビーム走査方向のビーム走査速度及びメカニカル走査方向のウエハ走査速度を制御して、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量分布を重ね合わす手法について、さらに詳しく述べる。
図12のように、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量分布を重ね合わすと、確かにウエハ面内に不均一な2次元イオン注入量分布を実現化することはできる。ところが、ウエハ面内に実現化できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状になってしまうので、他の半導体製造工程の2次元不均一パターンとして良く発生する、同心円形状、偏芯形状、楕円形状には対応できない。
【0050】
また、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、相互に関連させて注入を行う場合でも、その関連が明確に定まっていない場合には、狙い通りの意図的な不均一な2次元イオン注入量面内分布、特に他の半導体製造工程の2次元不均一パターンとして良く発生する、同心円形状、偏芯形状、楕円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現することは出来ない。
【0051】
本発明では、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに打ち込む装置において、ステップ回転注入を用いることなくウエハ面内に意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成する場合に、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、それぞれあらかじめ定めた方式を用いて、相互に関連させて、ウエハ面内に同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成し、他の半導体製造工程の2次元不均一パターンとして良く発生する、同心円形状、偏芯形状、楕円形状に対応する。
【0052】
ここで図13を参照して、本発明で使用する、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、それぞれあらかじめ定めた方式を用いて、相互に関連させて、ウエハ面内に同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を実現化する方法を概念的に説明する。図13では、概念的な説明として、同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を実現化する方法を例示しているが、偏芯形状、楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を実現化する場合においても、概念的には同様である。
【0053】
既に図12で説明したように、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量分布を重ね合わす場合、及び、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、相互に関連させて注入を行う場合においてその関連が明確に定まっていない場合には、ウエハ面内に実現化できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状になってしまう。この四角形状は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、それぞれあらかじめ定めた方式を用いて、相互に関連させて、意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成する場合にのみ、その影響を排除し、図13に示しているような、ウエハ面内で、連続的でなめらかな曲線形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を実現化することができる。特に図13に概念的に示したように、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残らない、同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を実現化することができる。
【0054】
さらに、ここで、図5を参照して、まず、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、相互に関連させて、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11を作成するイオン注入方法について、その詳細な内容を説明する。既に図4で説明したように、ウエハ7に注入されるイオン注入量を考える際には、理解の便宜上、あたかもウエハ7が静止しているとし、ビーム走査速度とウエハ走査速度を相対的に考えれば良いので、図5でも、理解の便宜上、あたかもウエハ7が静止しているとして図示している。
【0055】
本発明では、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差(以下、「2次関数型」と称する)を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いるという、あらかじめ定めた方式を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量を相互に関連させて、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11を作成する。
【0056】
既に図13で説明したように、図5に示している同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11は、連続的でなめらかなイオン注入量面内分布である。図5は、その等高線分布を模式的に示したものであり、境界線を境に内部と外部が分けられることを表すものではない。
【0057】
また、2次関数型のビーム走査速度補正量及びウエハ走査速度補正量は、図5に示したようにウエハ中央部で補正量が小さくなるようにしても良いし、図6に示したようにウエハ中央部で補正量が大きくなるようにしても良い。なお、図5において、ビーム走査領域、ウエハ走査領域のそれぞれに対応して示され、ビーム走査速度、ウエハ走査速度についてそれらの補正量分布を示す曲線は、横軸が走査領域で縦軸が走査速度である。これは、後述される図6〜図11においても同様である。
【0058】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いると、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11が作成できる理由を説明する。ここで、イオンビーム走査方向の平面座標をX座標、メカニカル走査方向の平面座標をY座標として説明するが、平面内の座標の取り方はこれに限らず、イオンビーム走査方向の平面座標をY座標、メカニカル走査方向の平面座標をX座標としても、同様の議論が成り立つ。
【0059】
本発明が適用されうるイオン注入装置は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に制御しているので、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量の積I(x)×J(y)で表され、この積を用いて後述する制御関数(あるいは特性関数)を導き出すことができる。また、イオン注入量面内分布D(x,y)はウエハX座標及びウエハY座標の関数として、ウエハX座標及びウエハY座標に関連付けられる。この場合、一般的には、イオン注入量面内分布D(x,y)はウエハ中心からの距離の関数ではないので、ウエハ中心からの距離とは直接的には関連付けられない。
【0060】
イオンビーム走査方向のビーム走査速度及びメカニカル走査方向のウエハ走査速度を制御して、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量分布を重ね合わす手法では、それぞれの補正量を相互に関連させてはいない。そのため、上記イオン注入量面内分布D(x,y)は、上記一般的記述通り、ウエハX座標及びウエハY座標のみに関連付けられ、ウエハ中心からの距離には直接的には関連づけられず、ウエハ面内に実現化できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状になってしまう。その結果、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成することはできない。
【0061】
ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成するためには、ウエハ中心からの距離をrとしたときに、イオン注入量面内分布D(x,y)が、ウエハ中心からの距離rの関数として、ウエハ中心からの距離rに直接的に関連づけられる必要がある。
【0062】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いるということは、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)に対して、相互に関連付けて、以下の補正量を与えることになる。すなわち、I(x)=A±Bx2、J(y)=A±By2である。ここで、A、Bは定数である。
【0063】
このように、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いる場合、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、D(x,y)=(A±Bx2)×(A±By2)と表される。この式を展開し、微小項を無視すると、D(x,y)=A×{A±B(x2+y2)}と変形できる。ここで、ウエハ中心からの距離rは、ウエハX座標及びウエハY座標とr2= x2+y2の関係があるので、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、D(r)=A×{A±B(r2)}に変形できる。
【0064】
このように、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いる場合、数学的には、イオン注入量面内分布はD(r)として、ウエハ中心からの距離rの関数となり、ウエハ中心からの距離rに直接的に関連付けられるので、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布が作成できることになる。
【0065】
ここで、図7を参照して、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、相互に関連させて、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11を作成する、別のイオン注入方法について説明する。本発明では、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差(以下、「コサイン型」と称する)を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いるという、あらかじめ定めた方式を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量を相互に関連させて、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11を作成する。
【0066】
既に図13で説明したように、図7に示している同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11は、連続的でなめらかなイオン注入量面内分布である。図7は、その等高線分布を模式的に示したものであり、境界線を境に内部と外部が分けられることを表すものではない。また、コサイン型のビーム走査速度補正量及びウエハ走査速度補正量は、図7に示したようにウエハ中央部で補正量が小さくなるようにしても良いし、逆にウエハ中央部で補正量が大きくなるようにしても良い。
【0067】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、コサイン型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いると、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11が作成できる理由を説明する。余弦関数は数学的にテーラー展開を実施することができる。テーラー展開の項数は無限に存在するが、余弦関数でのその主要項は展開第1項と第2項であり、それ以外の項は、微小項として無視することができる。その場合、余弦関数cos(ax)=1-(ax)2/2という制御関数(あるいは特性関数)にすることができる。
【0068】
従って、本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、コサイン型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いるということは、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)に対して、相互に関連付けて、前記2次関数型の補正量とよく似た補正量分布を用いることに相当し、前述の議論と同様に、結果的にウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布が作成できることになる。
【0069】
本発明で示した補正量以外の他のタイプの補正量を用いる場合には、ウエハ面内に実現化できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状の影響が必ず残ってしまうので、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成することはできない。
【0070】
本発明によるイオン注入方法では、2次関数型の補正量を用いる場合には、その二乗に比例する項の比例定数と定数項を、コサイン型の補正量を用いる場合にはウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数を、それぞれ変更することによって、ウエハ面内に意図的に作成する同心円形状の不均一2次元イオン注入量面内分布において、イオン注入面内補正量強度を変更することができる。
【0071】
以上により、本発明により、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入する装置において、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する目的で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に制御し、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行う場合に、ウエハ面内でイオン注入量の角度方向依存性がないように、等方的な同心円形状のイオン注入量分布を実現することができる。
【0072】
次に、図8を参照して、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、相互に関連させて、ウエハ面内に偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布12を作成するイオン注入方法について説明する。既に図4で説明したように、ウエハ7に注入されるイオン注入量を考える際には、理解の便宜上、あたかもウエハ7が静止しているとし、ビーム走査速度とウエハ走査速度を相対的に考えれば良いので、図8でも、理解の便宜上、あたかもウエハ7が静止しているものとして図示している。
【0073】
本発明では、ウエハ面内で任意の地点を設定し、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、2次関数型の補正量を定め、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の補正量分布を用いるという、あらかじめ定めた方式を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量を相互に関連させて、ウエハ面内に偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布12を作成する。
【0074】
既に図13で概念的に説明したように、図8に示している偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布12は、連続的でなめらかなイオン注入量面内分布である。図8は、その等高線分布を模式的に示したものであり、境界線を境に内部と外部が分けられることを表すものではない。
【0075】
また、ビーム走査速度補正量及びウエハ走査速度補正量は、図8に示したように偏芯形状の中心で補正量が小さくなるようにしても良いし、その逆に、偏芯形状の中心で補正量が大きくなるようにしても良い。
【0076】
また、2次関数型の補正量を定める代わりに、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、コサイン型の補正量を定め、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いても良い。この場合、コサイン型のビーム走査速度補正量及びウエハ走査速度補正量は、偏芯形状の中心で補正量が小さくなるようにしても良いし、その逆に、偏芯形状の中心で補正量が大きくなるようにしても良い。
【0077】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ面内で任意の地点を設定し、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、2次関数型またはコサイン型補正量を用い、かつ、2次関数型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の補正量分布を用い、コサイン型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いると、ウエハ面内に偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布12が作成できる理由を説明する。ここで、イオンビーム走査方向の平面座標をX座標、メカニカル走査方向の平面座標をY座標として説明するが、平面内の座標の取り方はこれに限らず、イオンビーム走査方向の平面座標をY座標、メカニカル走査方向の平面座標をX座標としても、同様の議論が成り立つ。また、説明の便宜上、最初に2次関数型の場合を説明する。
【0078】
既に説明したように、本発明が適用されうるイオン注入装置は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に制御しているので、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量の積I(x)×J(y)で表される。
【0079】
ここで、ウエハ面内で設定する任意の地点を(x0,y0)とし、この設定された任意の地点(x0,y0)を偏芯形状の中心として、その周りに偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成するためには、その任意の地点(x0,y0)からの距離をrとしたときに、イオン注入量面内分布D(x,y)が、その任意の地点(x0,y0)からの距離rの関数として、その任意の地点(x0,y0)からの距離rに直接的に関連付けられる必要がある。
【0080】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ面内で任意の地点を設定し、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いるということは、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)に対して、相互に関連付けて、以下の補正量を与えることになる。すなわち、I(x)=A±B(x-x0)2、J(y)=A±B(y-y0)2である。ここで、A、Bは定数である。
【0081】
このように、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ面内で任意の地点(x0,y0)を設定し、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点(x0,y0)からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いる場合、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、D(x,y)={A±B(x-x0)2}×{A±B(y-y0)2}と表される。この式を展開し、微小項を無視すると、D(x,y)=A×(A±B((x-x0)2+(y-y0)2)と変形できる。ここで、ウエハ面内の任意の地点(x0,y0)からの距離rは、ウエハX座標及びウエハY座標とr2= (x-x0)2+(y-y0)2の関係があるので、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、D(r)=A×(A±B(r2))に変形できる。
【0082】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ面内で任意の地点を設定し、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、コサイン型補正量を用いる場合についても、余弦関数をテーラー展開し、その主要項たる展開第1項と第2項以外の項を、微小項として無視すると、2次関数型補正量と同様の議論が展開できる。
【0083】
このように、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ面内で任意の地点を設定し、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、2次関数型またはコサイン型補正量を用い、かつ、2次関数型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の補正量分布を用い、コサイン型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いる場合、数学的には、イオン注入量面内分布はD(r)として、ウエハ面内の任意の地点からの距離rの関数となり、ウエハ面内の任意の地点からの距離rに直接的に関連付けられるので、ウエハ面内に偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布が作成できることになる。
【0084】
本発明で示した補正量以外の他のタイプの補正量を用いる場合には、ウエハ面内に実現化できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状の影響が必ず残ってしまうので、ウエハ面内に偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成することはできない。
【0085】
本発明によるイオン注入方法では、2次関数型の補正量を用いる場合には、その二乗に比例する項の比例定数と定数項を、コサイン型の補正量を用いる場合にはウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数を、それぞれ変更することによって、ウエハ面内に意図的に作成する偏芯形状の不均一2次元イオン注入量面内分布において、イオン注入面内補正量強度を変更することができる。
【0086】
本発明によるイオン注入方法では、偏芯形状の中心位置は、ウエハ面内での任意の地点に設定することができる。すなわち、イオンビーム走査方向の平面座標をX座標、メカニカル走査方向の平面座標をY座標とした場合、図8のようにX軸、Y軸以外に設定することもできるし、図9のようにX軸上に設定することもできるし、図10のようにY軸上に設定することもできる。
【0087】
以上のように、本発明により、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入する装置において、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する目的で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に制御し、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行う場合に、ウエハ面内で任意の地点を設定し、その地点を回転中心とみなした場合にイオン注入量のその地点からの角度方向依存性がないように、その回転中心に対して等方的な同心円形状のイオン注入量分布、すなわちウエハに対して偏芯形状のイオン注入量分布を実現することができる。
【0088】
次に、図11を参照して、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、相互に関連させて、ウエハ面内に楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布13を作成するイオン注入方法について説明する。既に図4で説明したように、ウエハ7に注入されるイオン注入量を考える際には、理解の便宜上、あたかもウエハ7が静止しているとし、ビーム走査速度とウエハ走査速度を相対的に考えれば良いので、図11でも、理解の便宜上、あたかもウエハ7が静止しているものとして図示している。
【0089】
本発明では、ウエハ中心からの距離を変数として、2次関数型の補正量を定め、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用いるという、あらかじめ定めた方式を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量を相互に関連させて、ウエハ面内に楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布13を作成する。
【0090】
既に図13で概念的に説明したように、図11に示している偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布13は、連続的でなめらかなイオン注入量面内分布である。図11は、その等高線分布を模式的に示したものであり、境界線を境に内部と外部が分けられることを表すものではない。
【0091】
また、ビーム走査速度補正量及びウエハ走査速度補正量は、図11に示したようにウエハ中心で補正量が小さくなるようにしても良いし、その逆に、ウエハ中心で補正量が大きくなるようにしても良い。
【0092】
また、2次関数型の補正量を定める代わりに、ウエハ中心からの距離を変数として、コサイン型の補正量を定め、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ中心位置からの距離に比例する項の比例定数が異なる補正量分布を用いても良い。この場合、コサイン型のビーム走査速度補正量及びウエハ走査速度補正量は、ウエハ中心で補正量が小さくなるようにしても良いし、その逆に、ウエハ中心で補正量が大きくなるようにしても良い。
【0093】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、2次関数型またはコサイン型補正量を用い、かつ、2次関数型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用い、コサイン型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数が異なる補正量分布を用いると、ウエハ面内に楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布13が作成できる理由を説明する。ここで、イオンビーム走査方向の平面座標をX座標、メカニカル走査方向の平面座標をY座標として説明するが、平面内の座標の取り方はこれに限らず、イオンビーム走査方向の平面座標をY座標、メカニカル走査方向の平面座標をX座標としても、同様の議論が成り立つ。また、説明の便宜上、最初に2次関数型の場合を説明する。
【0094】
既に説明したように、本発明が適用されうるイオン注入装置は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に制御しているので、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量の積I(x)×J(y)で表される。
【0095】
ウエハ面内に楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成するためには、イオン注入量面内分布D(x,y)が、楕円形状の平面方程式を満たす必要がある。
【0096】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用いるということは、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)に対して、相互に関連付けて、以下の補正量を与えることになる。すなわち、I(x)=A±Bx2、J(y)=A±Cy2である。ここで、A、B、Cは定数である。
【0097】
このように、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用いる場合、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、D(x,y)=(A±Bx2)×(A±Cy2)と表される。この式を展開し、微小項を無視すると、D(x,y)=A×(A±(Bx2+Cy2))に変形できる。ここで、楕円形状の平面方程式は、Bx2+Cy2であるので、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、楕円形状を表していると言える。
【0098】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、コサイン型補正量を用いる場合についても、余弦関数をテーラー展開し、その主要項たる展開第1項と第2項以外の項を、微小項として無視すると、2次関数型補正量と同様の議論が展開できる。
【0099】
このように、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、2次関数型またはコサイン型補正量を用い、かつ、2次関数型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用い、コサイン型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数が異なる補正量分布を用いる場合、数学的には、イオン注入量面内分布D(x,y)は楕円形状を平面方程式と関連付けて表すことができるので、ウエハ面内に楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布が作成できることになる。
【0100】
本発明で示した補正量以外の他のタイプの補正量を用いる場合には、ウエハ面内に実現化できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状の影響が必ず残ってしまうので、ウエハ面内に楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成することはできない。
【0101】
本発明によるイオン注入方法では、2次関数型の補正量を用いる場合には、その二乗に比例する項の比例定数と定数項を、コサイン型の補正量を用いる場合にはウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数を、それぞれ変更することによって、ウエハ面内に意図的に作成する楕円形状の不均一2次元イオン注入量面内分布において、イオン注入面内補正量強度を変更することができる。
【0102】
本発明によるイオン注入方法では、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で設定する比例定数の大小関係に限定はないので、楕円形状の長軸方向は、図11のようにイオンビーム走査方向にも設定できるし、あるいはウエハ走査方向にも設定できる。
【0103】
以上のように、本発明により、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入する装置において、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する目的で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に制御し、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行う場合に、ウエハ面内で楕円形状のイオン注入量分布を実現することができる。
【0104】
以上をまとめると、本発明により、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、ウエハのステップ回転を用いることなく同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現化することができる。
【0105】
なお、上記の実施例及びそれらに付随する説明はあくまでも実施例であって限定を意図するものではなく、その他の例として、以下のような例が考えられる。
例えば、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法を用いたイオン注入工程において、それぞれのイオン注入工程では、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行い、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する場合に、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響を残すことなく、一定のイオン注入面内補正量強度を持った等方的な同心円形状のイオン注入量分布を実現するイオン注入量を実現することができるようなイオン注入工程を複数個実現化することができる。
【0106】
具体的には、上記イオン注入工程において、それぞれのイオン注入工程では、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行い、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する場合に、イオンビームに対するウエハ回転角が0度から179度の間で異なる、複数個のイオン注入工程で、イオン注入量面内分布の強度を同一に保ちながら、ウエハ面内で任意の地点を設定し、その地点を回転中心とみなした場合にイオン注入量のその地点からの角度方向依存性がないように、その回転中心に対して等方的な同心円形状のイオン注入量分布を実現するイオン注入工程が実現化できる。
この場合、ウエハ回転角方向に、時計回り、反時計回りの区別なく、常に、等方的な同心円形状のイオン注入量分布を実現するイオン注入量を実現することができる。
【0107】
一方、イオンビームに対するウエハ回転角が0度から179度の間に代えて、イオンビームに対するウエハ回転角が−179度から0度の間で異なる、複数個のイオン注入工程においても、同様の効果が得られる。
【0108】
また、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法を用いたイオン注入工程において、それぞれのイオン注入工程では、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行い、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する場合に、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響を残すことなく、偏芯形状のイオン注入量分布を実現するイオン注入量を実現することができるようなイオン注入工程を実現化することができる。
【0109】
既に説明したように、偏芯形状の中心位置は、ウエハ面内の任意位置に設定でき、かつ、そのイオン注入面内補正量強度も、それぞれのイオン注入工程で一定にすることができるので、本発明によるイオン注入方法を用いると、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法を用いたイオン注入工程において、それぞれのイオン注入工程では、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行い、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する場合に、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響を残すことなく、一定のイオン注入面内補正量強度を持ち、ウエハ面内で空間的に同一の位置に偏芯形状の中心を持つ、偏芯形状のイオン注入量分布を実現するイオン注入量を実現することができるようなイオン注入工程を複数個実現化することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 イオン源
2 引出電極
3 質量分析磁石装置
4 質量分析スリット
5 ビームスキャナー
6 パラレルレンズ
7 ウエハ
8 ホルダ
9 昇降装置
10 回転装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入に関し、より詳しくは、イオン注入装置のイオン注入量コントロールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、導電性を変化させる目的、ウエハの結晶構造を変化させる目的などのため、半導体ウエハにイオンを入射する工程が標準的に実施されている。この工程で使用される装置は、イオン注入装置と呼ばれ、イオン源によってイオン化され、その後加速されたイオンビームを形成する機能と、そのイオンビームをビームスキャン、ウエハスキャン、またはそれらの組み合わせにより、半導体ウエハ全面に照射する機能を持つ。
【0003】
半導体製造工程では、ウエハ全面に同一性能の半導体チップを作成する目的から、通常、ウエハ面内に均一な条件を作り込む必要がある。イオン注入工程においても、ウエハの全領域で注入されるイオン注入量が均一になるように、イオン注入装置をコントロールすることが通常である。
【0004】
ところが、いくつかの半導体製造工程では、原理的にウエハ面内に均一な条件を作り込むことが困難になってきている。特に最近、半導体チップの微細化が飛躍的に進んでおり、その困難性が増すとともに、その不均一性の程度も増している。このような条件下で、それ以外の工程で、ウエハ面内で均一な条件を作り込むと、結果的にウエハ全面に同一性能の半導体チップを作成することができなくなる。例えばイオン注入工程で、ウエハ全領域で通常通りの面内イオン注入量が均一なイオン注入を行うと、結果として生じる半導体チップの電気的特性が同一でなくなり、同一性能の半導体チップの作成が不可能になる。
【0005】
そこで、他の半導体製造工程でウエハ面内に均一な条件を作り込むことが出来ない場合に、そのウエハ面内2次元不均一性に対応して、イオン注入装置を用いてウエハ全面にイオンビームを照射する工程において、意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成し、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正することが考えられる。その際に重要なことは、イオン注入工程においては、半導体製造工程の特性上、ステップ回転注入が許容される場合と、許容されない場合があることである。ウエハのステップ回転については、特許文献1に記載されている。
【0006】
イオン注入装置を用いてウエハ全面にイオンビームを照射する工程において、意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成し、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する場合において、ステップ回転注入が許容されないイオン注入工程を用いるべき場合も考えられるので、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現することが重要である。
【0007】
また、言うまでもなく、他の半導体製造工程でウエハ面内に均一な条件を作り込むことが出来ない場合に、どのような面内パターンのウエハ面内不均一性が発生するかも、重要である。
【0008】
ここで、半導体製造工程でウエハ面内不均一性が発生しやすい工程は、プラズマを利用した工程及びアニール工程であることが知られている。これらの工程では、その面内不均一パターンは、同心円形状、偏芯形状、あるいは楕円形状であることが多い。従って、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現する場合、その目的面内不均一パターンとしては、同心円形状、偏芯形状、楕円形状が求められる。
【0009】
また、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性は、その工程の種類や、その工程で用いる条件によってその不均一性の程度が変化する。従って、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現する場合、その注入量補正程度について、補正量強度程度の大きさを変えられることが求められる。
【0010】
また、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性において、その面内不均一パターンが偏芯形状になる場合、その偏芯形状型ウエハ面内不均一性が発現する理由は、主としてプラズマの空間分布や、アニール時の温度分布であることが多い。例えば、プラズマの空間分布は、プラズマ作成用ガス導入口位置、導入ガス流量、プラズマ用高周波電圧コイル位置、プラズマ用高周波電圧コイル数、コンダクタンス空間分布、真空ポンプ位置などで決まるが、それらは一般に複雑で、かつ装置状態によって変化する。アニール時の温度分布についても同様に、複雑かつ装置状態で変化するので、ウエハ内での偏芯形状の中心位置は一定ではない。従って、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に不均一な偏芯形状の2次元イオン注入量面内分布を実現する場合、その偏芯中心位置は、ウエハ内の任意の位置に設定できることが求められる。
【0011】
また、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性において、その面内不均一パターンが楕円形状になる場合、その楕円形状型ウエハ面内不均一性が発現する理由も、偏芯形状と同様に、複雑かつ装置状態によって変化する。従って、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に不均一な楕円形状の2次元イオン注入量面内分布を実現する場合、その楕円の長軸方向にも、設定の自由度が必要である。
【0012】
ここでイオン注入装置には何種類かのタイプがある。例えば、ウエハを固定し、イオンビームを2次元的にスキャンする方式のイオン注入装置であれば、ウエハのステップ回転を用いることなく、同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を実現することは比較的容易である。しかし、最近はウエハ半径が大きくなり、2次元面内にイオンビームを満遍なくスキャンすることが非常に難しくなってきたので、このタイプのイオン注入装置は用いられなくなっている。
【0013】
本発明は、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに打ち込むイオン注入装置に関する。
【0014】
イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、ウエハのステップ回転を用いることなく、意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現する方法として、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量の異なる領域を重ね合わす方法が特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平7−240388号公報
【特許文献2】特開2003−86530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献2のイオン注入方法では、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量分布を重ね合わすので、ウエハ面内に実現できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状になってしまうので、他の半導体製造工程の2次元不均一パターンとして良く発生する、同心円形状、偏芯形状、楕円形状には対応できない。
【0017】
本発明の課題は、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する目的で、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行う場合に、他の半導体製造工程、例えばプラズマを利用した工程及びアニール工程で発生しやすい面内不均一パターンに対応した形状に対応した2次元イオン注入量面内分布を実現化することである。
【0018】
本発明の具体的な課題は、以下の内容を実現できるようにすることである。
【0019】
イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、ウエハのステップ回転を用いることなく同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現化すること。
【0020】
上記の各種形状において、イオン注入面内補正量強度の大きさを変えられること。
【0021】
偏芯形状においては、その偏芯中心位置をウエハ面内の任意の位置に設定できること。
【0022】
楕円形状においては、その長軸方向をビーム走査方向、およびウエハ走査方向のいずれにも設定できること。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、イオンビームを走査し、ビームスキャン方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに打ち込む装置に適用される。
【0024】
本発明の第1の態様によれば、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入方法が提供される。
第1の態様によるイオン注入方法においては、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いる。
第1の態様によるイオン注入方法においてはまた、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ特性関数を用いるようにしても良い。
第1の態様によるイオン注入方法においてはまた、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いるようにしても良い。
第1の態様によるイオン注入方法においては更に、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ特性関数を用いるようにしても良い。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査する制御系を備え、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、前記制御系は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入装置が提供される。
【0026】
第1の態様によるイオン注入方法においては、その変更態様として、前記速度制御に際し、ウエハ面内で任意の地点を設定し、その地点を回転中心とみなし、その回転中心に関して、前記等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成するようにしても良い。
上記変更態様によるイオン注入方法においては、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の補正量分布を用いるようにしても良い。
上記変更態様によるイオン注入方法においてはまた、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の特性関数を用いるようにしても良い。
上記変更態様によるイオン注入方法においてはまた、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いるようにしても良い。
上記変更態様によるイオン注入方法においてはまた、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の特性関数を用いるようにしても良い。
第2の態様によるイオン注入装置においては、その変更態様として、前記制御系が、ウエハ面内で任意の地点を設定し、その地点を回転中心とみなし、その回転中心に関して、前記等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成するようにしても良い。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための楕円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入方法が提供される。
第3の態様によるイオン注入方法においては、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用いるようにしても良い。
【0028】
第3の態様によるイオン注入方法においてはまた、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる特性関数を用いるようにしても良い。
第3の態様によるイオン注入方法においてはまた、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向でウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数が異なる補正量分布を用いるようにしても良い。
第3の態様によるイオン注入方法においてはまた、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向でウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数が異なる特性関数を用いるようにしても良い。
【0029】
本発明の第4の態様によれば、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査する制御系を備え、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、前記制御系は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための楕円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入装置が提供される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、ウエハのステップ回転を用いることなく同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を得るイオン注入方法を実現化することができる。
【0031】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、ウエハのステップ回転を用いることなく同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を得るイオン注入装置が実現化できる。
【0032】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に得られる同心円形状、偏芯形状、楕円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布の面内補正量強度の大きさを変えることにより、他の半導体製造工程の面内不均一性の大きさに対応可能なイオン注入方法を得ることができる。
【0033】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に得られる同心円形状、偏芯形状、楕円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布の面内補正量強度の大きさを変えることにより、他の半導体製造工程の面内不均一性の大きさに対応できる機能を有するイオン注入装置が実現化できる。
【0034】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に得られる偏芯形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布の偏芯中心位置をウエハ面内の任意の位置に設定することにより、他の半導体製造工程の偏芯形状型面内不均一性に対応できるイオン注入方法を得ることができる。
【0035】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に得られる偏芯形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布の偏芯中心位置をウエハ面内の任意の位置に設定することにより、他の半導体製造工程の偏芯形状型面内不均一性に対応できる機能を有するイオン注入装置が実現化できる。
【0036】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に得られる楕円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布の楕円長軸方向をビーム走査方向、およびウエハ走査方向のいずれにも設定できることにより、他の半導体製造工程の楕円形状型面内不均一性に対応できるイオン注入方法を得ることができる。
【0037】
本発明によれば、イオンビームを走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに打ち込むイオン注入装置において、ウエハのステップ回転を用いることなく意図的に得られる楕円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布の楕円長軸方向をビーム走査方向、およびウエハ走査方向のいずれにも設定できることにより、他の半導体製造工程の楕円形状型面内不均一性に対応できる機能を有するイオン注入装置が実現化できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明が適用され得るイオン注入装置の一例を説明するための概略構成図である。
【図2】図1のイオン注入装置のウエハ周りの一例を側面方向から拡大して示す概略図である。
【図3】イオンビーム走査機能とウエハ走査機能について説明するための図である。
【図4】従来行われてきたウエハ面内均一性注入について説明するための図である。
【図5】本発明による、ウエハ面内に同心円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得るイオン注入方法の第1の例について説明するための図である。
【図6】本発明による、ウエハ面内に同心円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得るイオン注入方法の第2の例について説明するための図である。
【図7】本発明による、ウエハ面内に同心円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得るイオン注入方法の第3の例について説明するための図である。
【図8】本発明による、ウエハ面内に偏芯形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得るイオン注入方法の第1の例について説明するための図である。
【図9】本発明による、ウエハ面内に偏芯形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得る注入方法の第2の例について説明するための図である。
【図10】本発明による、ウエハ面内に偏芯形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得る注入方法の第3の例について説明するための図である。
【図11】本発明による、ウエハ面内に楕円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を意図的に得る注入方法の一例について説明するための図である。
【図12】従来行われてきた、ウエハ面内不均一性注入について説明するための図である。
【図13】本発明による、ウエハ面内不均一性注入について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ここで、図1を参照して、本発明が適用され得るイオン注入装置の概略構成について説明する。本発明が適用され得るイオン注入装置は、イオン源1から引出電極2により引き出したイオンビームがウエハ7に至るビームライン上を通るようにするために、該ビームラインに沿って、質量分析磁石装置3、質量分析スリット4、ビームスキャナー5、ウエハ処理室(イオン注入室)を配設している。ウエハ処理室内には、ウエハ7を保持するホルダ8を備えたメカニカルスキャン装置が配設される。イオン源1から引き出されたイオンビームは、ビームラインに沿ってウエハ処理室のイオン注入位置に配置されたホルダ8上のウエハ7に導かれる。
【0040】
イオンビームは、ビームラインの途中で、ビームスキャナー5を用いて往復走査され、パラレルレンズ6の機能により平行化された後、ウエハ7まで導かれる。
本発明が適用されるイオン注入装置では、イオンビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハ7に打ち込む。図1では、ウエハ7は図面に対して垂直な方向に走査されると考えて良い。
【0041】
図2は、図1のイオン注入装置のウエハ周りの一例を拡大して示す概略図である。図2では、イオンビームは、図面に対して垂直な方向に走査され、ホルダ8上に保持されているウエハ7に照射される。ホルダ8は昇降装置9により図内矢印方向に往復駆動され、その結果、ホルダ8上に保持されているウエハ7もまた、図内矢印方向に往復駆動される。すなわち、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハ7をメカニカルに走査することにより、イオンをウエハ7の全面に打ち込むことができる。本発明では使用しないが、後述される従来技術との比較説明を理解し易くするために、ウエハのステップ回転注入に使用される回転装置10も図示している。
【0042】
ここで、図3を参照して、イオンビーム走査機能とウエハ走査機能について説明する。図3では、走査されるウエハ7と走査されるイオンビーム、及び昇降装置9のみを示し、ホルダと回転装置は示していない。この例では、イオンビームは横方向に走査され、ウエハ7は図示される最上位置と最下位置との間を往復するように縦方向に走査される。図3に示すように、イオンビームの走査領域はウエハ7の直径を超え、メカニカルにウエハ7を走査する領域は、ウエハ7がイオンビームを通り抜けるよう制御される。
ビームスキャナー5によるイオンビーム走査機能、昇降装置9によるウエハ走査機能は、これらを制御するため制御装置(図示せず)により実現される。ビームスキャナー5、昇降装置9、少なくともこれらを制御する機能を持つ制御装置は、まとめて制御系と呼ぶことができる。
【0043】
本発明が適用されうるイオン注入装置は、いままで説明してきたように、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに打ち込む装置であるが、ウエハに注入されるイオン注入量を考える際には、イオンビームとウエハとの相対運動が問題となるので、理解の便宜上、あたかもウエハが静止していると仮定し、イオンビームの注入領域およびビーム走査速度を相対的に考えれば良い。
【0044】
図4は、従来行われてきたウエハ面内均一性注入について説明するための図である。従来行われてきた、標準的なウエハ面内均一性注入では、ウエハ面上横方向の注入イオン量均一性を確保するために、イオンビームの走査速度はほぼ一定に保たれる。また、ウエハ面上縦方向の注入イオン量均一性を保つために、そのメカニカル走査速度は、ほぼ一定に保たれる。
【0045】
ここで、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに打ち込む装置において、ウエハ面内に意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成する方法を説明する。
通常、イオンビーム走査方向のビーム走査速度またはメカニカル走査方向のウエハ走査速度の一方を制御し、さらに、図2に示された回転装置10を用いて、ステップ回転注入を行うことによってウエハ面内に意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成する手法が知られている。この場合、ビーム走査速度制御、乃至ウエハ走査速度制御を直線乃至矩形的に行っても、ステップ回転注入が回転対称性を持っているので、同心円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布が実現できる。
【0046】
ところが、イオン注入工程においては、半導体製造工程の特性上、ステップ回転注入が許容されない場合があるので、そのようなステップ回転注入が、許容されないイオン注入過程においては、この手法は採用できないため、ウエハ面内に意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成することはできない。
【0047】
また、このようなステップ回転注入を用いると、必然的に回転対称となるので、ウエハ面内に偏芯形状、乃至楕円形状の意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成することはできない。
【0048】
ここで、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、ステップ回転注入を用いることなくウエハ面内に意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成する方法として、イオンビーム走査方向のビーム走査速度及びメカニカル走査方向のウエハ走査速度を制御して、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量分布を重ね合わす手法がある。
【0049】
ここで、図12を参照して、上記イオンビーム走査方向のビーム走査速度及びメカニカル走査方向のウエハ走査速度を制御して、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量分布を重ね合わす手法について、さらに詳しく述べる。
図12のように、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量分布を重ね合わすと、確かにウエハ面内に不均一な2次元イオン注入量分布を実現化することはできる。ところが、ウエハ面内に実現化できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状になってしまうので、他の半導体製造工程の2次元不均一パターンとして良く発生する、同心円形状、偏芯形状、楕円形状には対応できない。
【0050】
また、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、相互に関連させて注入を行う場合でも、その関連が明確に定まっていない場合には、狙い通りの意図的な不均一な2次元イオン注入量面内分布、特に他の半導体製造工程の2次元不均一パターンとして良く発生する、同心円形状、偏芯形状、楕円形状の不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現することは出来ない。
【0051】
本発明では、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに打ち込む装置において、ステップ回転注入を用いることなくウエハ面内に意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を作成する場合に、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、それぞれあらかじめ定めた方式を用いて、相互に関連させて、ウエハ面内に同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成し、他の半導体製造工程の2次元不均一パターンとして良く発生する、同心円形状、偏芯形状、楕円形状に対応する。
【0052】
ここで図13を参照して、本発明で使用する、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、それぞれあらかじめ定めた方式を用いて、相互に関連させて、ウエハ面内に同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を実現化する方法を概念的に説明する。図13では、概念的な説明として、同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を実現化する方法を例示しているが、偏芯形状、楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を実現化する場合においても、概念的には同様である。
【0053】
既に図12で説明したように、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量分布を重ね合わす場合、及び、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、相互に関連させて注入を行う場合においてその関連が明確に定まっていない場合には、ウエハ面内に実現化できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状になってしまう。この四角形状は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、それぞれあらかじめ定めた方式を用いて、相互に関連させて、意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成する場合にのみ、その影響を排除し、図13に示しているような、ウエハ面内で、連続的でなめらかな曲線形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を実現化することができる。特に図13に概念的に示したように、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残らない、同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を実現化することができる。
【0054】
さらに、ここで、図5を参照して、まず、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、相互に関連させて、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11を作成するイオン注入方法について、その詳細な内容を説明する。既に図4で説明したように、ウエハ7に注入されるイオン注入量を考える際には、理解の便宜上、あたかもウエハ7が静止しているとし、ビーム走査速度とウエハ走査速度を相対的に考えれば良いので、図5でも、理解の便宜上、あたかもウエハ7が静止しているとして図示している。
【0055】
本発明では、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差(以下、「2次関数型」と称する)を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いるという、あらかじめ定めた方式を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量を相互に関連させて、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11を作成する。
【0056】
既に図13で説明したように、図5に示している同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11は、連続的でなめらかなイオン注入量面内分布である。図5は、その等高線分布を模式的に示したものであり、境界線を境に内部と外部が分けられることを表すものではない。
【0057】
また、2次関数型のビーム走査速度補正量及びウエハ走査速度補正量は、図5に示したようにウエハ中央部で補正量が小さくなるようにしても良いし、図6に示したようにウエハ中央部で補正量が大きくなるようにしても良い。なお、図5において、ビーム走査領域、ウエハ走査領域のそれぞれに対応して示され、ビーム走査速度、ウエハ走査速度についてそれらの補正量分布を示す曲線は、横軸が走査領域で縦軸が走査速度である。これは、後述される図6〜図11においても同様である。
【0058】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いると、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11が作成できる理由を説明する。ここで、イオンビーム走査方向の平面座標をX座標、メカニカル走査方向の平面座標をY座標として説明するが、平面内の座標の取り方はこれに限らず、イオンビーム走査方向の平面座標をY座標、メカニカル走査方向の平面座標をX座標としても、同様の議論が成り立つ。
【0059】
本発明が適用されうるイオン注入装置は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に制御しているので、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量の積I(x)×J(y)で表され、この積を用いて後述する制御関数(あるいは特性関数)を導き出すことができる。また、イオン注入量面内分布D(x,y)はウエハX座標及びウエハY座標の関数として、ウエハX座標及びウエハY座標に関連付けられる。この場合、一般的には、イオン注入量面内分布D(x,y)はウエハ中心からの距離の関数ではないので、ウエハ中心からの距離とは直接的には関連付けられない。
【0060】
イオンビーム走査方向のビーム走査速度及びメカニカル走査方向のウエハ走査速度を制御して、横方向と縦方向に別々に形成したイオン注入ドーズ量分布を重ね合わす手法では、それぞれの補正量を相互に関連させてはいない。そのため、上記イオン注入量面内分布D(x,y)は、上記一般的記述通り、ウエハX座標及びウエハY座標のみに関連付けられ、ウエハ中心からの距離には直接的には関連づけられず、ウエハ面内に実現化できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状になってしまう。その結果、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成することはできない。
【0061】
ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成するためには、ウエハ中心からの距離をrとしたときに、イオン注入量面内分布D(x,y)が、ウエハ中心からの距離rの関数として、ウエハ中心からの距離rに直接的に関連づけられる必要がある。
【0062】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いるということは、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)に対して、相互に関連付けて、以下の補正量を与えることになる。すなわち、I(x)=A±Bx2、J(y)=A±By2である。ここで、A、Bは定数である。
【0063】
このように、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いる場合、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、D(x,y)=(A±Bx2)×(A±By2)と表される。この式を展開し、微小項を無視すると、D(x,y)=A×{A±B(x2+y2)}と変形できる。ここで、ウエハ中心からの距離rは、ウエハX座標及びウエハY座標とr2= x2+y2の関係があるので、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、D(r)=A×{A±B(r2)}に変形できる。
【0064】
このように、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いる場合、数学的には、イオン注入量面内分布はD(r)として、ウエハ中心からの距離rの関数となり、ウエハ中心からの距離rに直接的に関連付けられるので、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布が作成できることになる。
【0065】
ここで、図7を参照して、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、相互に関連させて、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11を作成する、別のイオン注入方法について説明する。本発明では、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差(以下、「コサイン型」と称する)を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いるという、あらかじめ定めた方式を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量を相互に関連させて、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11を作成する。
【0066】
既に図13で説明したように、図7に示している同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11は、連続的でなめらかなイオン注入量面内分布である。図7は、その等高線分布を模式的に示したものであり、境界線を境に内部と外部が分けられることを表すものではない。また、コサイン型のビーム走査速度補正量及びウエハ走査速度補正量は、図7に示したようにウエハ中央部で補正量が小さくなるようにしても良いし、逆にウエハ中央部で補正量が大きくなるようにしても良い。
【0067】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、コサイン型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いると、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布11が作成できる理由を説明する。余弦関数は数学的にテーラー展開を実施することができる。テーラー展開の項数は無限に存在するが、余弦関数でのその主要項は展開第1項と第2項であり、それ以外の項は、微小項として無視することができる。その場合、余弦関数cos(ax)=1-(ax)2/2という制御関数(あるいは特性関数)にすることができる。
【0068】
従って、本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、コサイン型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いるということは、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)に対して、相互に関連付けて、前記2次関数型の補正量とよく似た補正量分布を用いることに相当し、前述の議論と同様に、結果的にウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布が作成できることになる。
【0069】
本発明で示した補正量以外の他のタイプの補正量を用いる場合には、ウエハ面内に実現化できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状の影響が必ず残ってしまうので、ウエハ面内に同心円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成することはできない。
【0070】
本発明によるイオン注入方法では、2次関数型の補正量を用いる場合には、その二乗に比例する項の比例定数と定数項を、コサイン型の補正量を用いる場合にはウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数を、それぞれ変更することによって、ウエハ面内に意図的に作成する同心円形状の不均一2次元イオン注入量面内分布において、イオン注入面内補正量強度を変更することができる。
【0071】
以上により、本発明により、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入する装置において、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する目的で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に制御し、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行う場合に、ウエハ面内でイオン注入量の角度方向依存性がないように、等方的な同心円形状のイオン注入量分布を実現することができる。
【0072】
次に、図8を参照して、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、相互に関連させて、ウエハ面内に偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布12を作成するイオン注入方法について説明する。既に図4で説明したように、ウエハ7に注入されるイオン注入量を考える際には、理解の便宜上、あたかもウエハ7が静止しているとし、ビーム走査速度とウエハ走査速度を相対的に考えれば良いので、図8でも、理解の便宜上、あたかもウエハ7が静止しているものとして図示している。
【0073】
本発明では、ウエハ面内で任意の地点を設定し、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、2次関数型の補正量を定め、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の補正量分布を用いるという、あらかじめ定めた方式を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量を相互に関連させて、ウエハ面内に偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布12を作成する。
【0074】
既に図13で概念的に説明したように、図8に示している偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布12は、連続的でなめらかなイオン注入量面内分布である。図8は、その等高線分布を模式的に示したものであり、境界線を境に内部と外部が分けられることを表すものではない。
【0075】
また、ビーム走査速度補正量及びウエハ走査速度補正量は、図8に示したように偏芯形状の中心で補正量が小さくなるようにしても良いし、その逆に、偏芯形状の中心で補正量が大きくなるようにしても良い。
【0076】
また、2次関数型の補正量を定める代わりに、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、コサイン型の補正量を定め、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いても良い。この場合、コサイン型のビーム走査速度補正量及びウエハ走査速度補正量は、偏芯形状の中心で補正量が小さくなるようにしても良いし、その逆に、偏芯形状の中心で補正量が大きくなるようにしても良い。
【0077】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ面内で任意の地点を設定し、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、2次関数型またはコサイン型補正量を用い、かつ、2次関数型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の補正量分布を用い、コサイン型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いると、ウエハ面内に偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布12が作成できる理由を説明する。ここで、イオンビーム走査方向の平面座標をX座標、メカニカル走査方向の平面座標をY座標として説明するが、平面内の座標の取り方はこれに限らず、イオンビーム走査方向の平面座標をY座標、メカニカル走査方向の平面座標をX座標としても、同様の議論が成り立つ。また、説明の便宜上、最初に2次関数型の場合を説明する。
【0078】
既に説明したように、本発明が適用されうるイオン注入装置は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に制御しているので、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量の積I(x)×J(y)で表される。
【0079】
ここで、ウエハ面内で設定する任意の地点を(x0,y0)とし、この設定された任意の地点(x0,y0)を偏芯形状の中心として、その周りに偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成するためには、その任意の地点(x0,y0)からの距離をrとしたときに、イオン注入量面内分布D(x,y)が、その任意の地点(x0,y0)からの距離rの関数として、その任意の地点(x0,y0)からの距離rに直接的に関連付けられる必要がある。
【0080】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ面内で任意の地点を設定し、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いるということは、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)に対して、相互に関連付けて、以下の補正量を与えることになる。すなわち、I(x)=A±B(x-x0)2、J(y)=A±B(y-y0)2である。ここで、A、Bは定数である。
【0081】
このように、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ面内で任意の地点(x0,y0)を設定し、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点(x0,y0)からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いる場合、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、D(x,y)={A±B(x-x0)2}×{A±B(y-y0)2}と表される。この式を展開し、微小項を無視すると、D(x,y)=A×(A±B((x-x0)2+(y-y0)2)と変形できる。ここで、ウエハ面内の任意の地点(x0,y0)からの距離rは、ウエハX座標及びウエハY座標とr2= (x-x0)2+(y-y0)2の関係があるので、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、D(r)=A×(A±B(r2))に変形できる。
【0082】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ面内で任意の地点を設定し、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、コサイン型補正量を用いる場合についても、余弦関数をテーラー展開し、その主要項たる展開第1項と第2項以外の項を、微小項として無視すると、2次関数型補正量と同様の議論が展開できる。
【0083】
このように、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ面内で任意の地点を設定し、設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、2次関数型またはコサイン型補正量を用い、かつ、2次関数型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の補正量分布を用い、コサイン型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いる場合、数学的には、イオン注入量面内分布はD(r)として、ウエハ面内の任意の地点からの距離rの関数となり、ウエハ面内の任意の地点からの距離rに直接的に関連付けられるので、ウエハ面内に偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布が作成できることになる。
【0084】
本発明で示した補正量以外の他のタイプの補正量を用いる場合には、ウエハ面内に実現化できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状の影響が必ず残ってしまうので、ウエハ面内に偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成することはできない。
【0085】
本発明によるイオン注入方法では、2次関数型の補正量を用いる場合には、その二乗に比例する項の比例定数と定数項を、コサイン型の補正量を用いる場合にはウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数を、それぞれ変更することによって、ウエハ面内に意図的に作成する偏芯形状の不均一2次元イオン注入量面内分布において、イオン注入面内補正量強度を変更することができる。
【0086】
本発明によるイオン注入方法では、偏芯形状の中心位置は、ウエハ面内での任意の地点に設定することができる。すなわち、イオンビーム走査方向の平面座標をX座標、メカニカル走査方向の平面座標をY座標とした場合、図8のようにX軸、Y軸以外に設定することもできるし、図9のようにX軸上に設定することもできるし、図10のようにY軸上に設定することもできる。
【0087】
以上のように、本発明により、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入する装置において、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する目的で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に制御し、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行う場合に、ウエハ面内で任意の地点を設定し、その地点を回転中心とみなした場合にイオン注入量のその地点からの角度方向依存性がないように、その回転中心に対して等方的な同心円形状のイオン注入量分布、すなわちウエハに対して偏芯形状のイオン注入量分布を実現することができる。
【0088】
次に、図11を参照して、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量を、相互に関連させて、ウエハ面内に楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布13を作成するイオン注入方法について説明する。既に図4で説明したように、ウエハ7に注入されるイオン注入量を考える際には、理解の便宜上、あたかもウエハ7が静止しているとし、ビーム走査速度とウエハ走査速度を相対的に考えれば良いので、図11でも、理解の便宜上、あたかもウエハ7が静止しているものとして図示している。
【0089】
本発明では、ウエハ中心からの距離を変数として、2次関数型の補正量を定め、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用いるという、あらかじめ定めた方式を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量を相互に関連させて、ウエハ面内に楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布13を作成する。
【0090】
既に図13で概念的に説明したように、図11に示している偏芯形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布13は、連続的でなめらかなイオン注入量面内分布である。図11は、その等高線分布を模式的に示したものであり、境界線を境に内部と外部が分けられることを表すものではない。
【0091】
また、ビーム走査速度補正量及びウエハ走査速度補正量は、図11に示したようにウエハ中心で補正量が小さくなるようにしても良いし、その逆に、ウエハ中心で補正量が大きくなるようにしても良い。
【0092】
また、2次関数型の補正量を定める代わりに、ウエハ中心からの距離を変数として、コサイン型の補正量を定め、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ中心位置からの距離に比例する項の比例定数が異なる補正量分布を用いても良い。この場合、コサイン型のビーム走査速度補正量及びウエハ走査速度補正量は、ウエハ中心で補正量が小さくなるようにしても良いし、その逆に、ウエハ中心で補正量が大きくなるようにしても良い。
【0093】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、2次関数型またはコサイン型補正量を用い、かつ、2次関数型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用い、コサイン型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数が異なる補正量分布を用いると、ウエハ面内に楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布13が作成できる理由を説明する。ここで、イオンビーム走査方向の平面座標をX座標、メカニカル走査方向の平面座標をY座標として説明するが、平面内の座標の取り方はこれに限らず、イオンビーム走査方向の平面座標をY座標、メカニカル走査方向の平面座標をX座標としても、同様の議論が成り立つ。また、説明の便宜上、最初に2次関数型の場合を説明する。
【0094】
既に説明したように、本発明が適用されうるイオン注入装置は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に制御しているので、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)を用いて、ビーム走査速度補正量とウエハ走査速度補正量の積I(x)×J(y)で表される。
【0095】
ウエハ面内に楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成するためには、イオン注入量面内分布D(x,y)が、楕円形状の平面方程式を満たす必要がある。
【0096】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用いるということは、ビーム走査速度補正量I(x)とウエハ走査速度補正量J(y)に対して、相互に関連付けて、以下の補正量を与えることになる。すなわち、I(x)=A±Bx2、J(y)=A±Cy2である。ここで、A、B、Cは定数である。
【0097】
このように、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、2次関数型の補正量を用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用いる場合、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、D(x,y)=(A±Bx2)×(A±Cy2)と表される。この式を展開し、微小項を無視すると、D(x,y)=A×(A±(Bx2+Cy2))に変形できる。ここで、楕円形状の平面方程式は、Bx2+Cy2であるので、ウエハ面内座標(x,y)におけるイオン注入量面内分布D(x,y)は、楕円形状を表していると言える。
【0098】
本発明によるイオン注入方法で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、コサイン型補正量を用いる場合についても、余弦関数をテーラー展開し、その主要項たる展開第1項と第2項以外の項を、微小項として無視すると、2次関数型補正量と同様の議論が展開できる。
【0099】
このように、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、2次関数型またはコサイン型補正量を用い、かつ、2次関数型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用い、コサイン型の場合は、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数が異なる補正量分布を用いる場合、数学的には、イオン注入量面内分布D(x,y)は楕円形状を平面方程式と関連付けて表すことができるので、ウエハ面内に楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布が作成できることになる。
【0100】
本発明で示した補正量以外の他のタイプの補正量を用いる場合には、ウエハ面内に実現化できるイオン注入量パターンには、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響が残り、四角形状の影響が必ず残ってしまうので、ウエハ面内に楕円形状の意図的な不均一2次元イオン注入量面内分布を作成することはできない。
【0101】
本発明によるイオン注入方法では、2次関数型の補正量を用いる場合には、その二乗に比例する項の比例定数と定数項を、コサイン型の補正量を用いる場合にはウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数を、それぞれ変更することによって、ウエハ面内に意図的に作成する楕円形状の不均一2次元イオン注入量面内分布において、イオン注入面内補正量強度を変更することができる。
【0102】
本発明によるイオン注入方法では、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で設定する比例定数の大小関係に限定はないので、楕円形状の長軸方向は、図11のようにイオンビーム走査方向にも設定できるし、あるいはウエハ走査方向にも設定できる。
【0103】
以上のように、本発明により、イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入する装置において、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する目的で、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に制御し、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行う場合に、ウエハ面内で楕円形状のイオン注入量分布を実現することができる。
【0104】
以上をまとめると、本発明により、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、ウエハのステップ回転を用いることなく同心円形状、偏芯形状、楕円形状の意図的に不均一な2次元イオン注入量面内分布を実現化することができる。
【0105】
なお、上記の実施例及びそれらに付随する説明はあくまでも実施例であって限定を意図するものではなく、その他の例として、以下のような例が考えられる。
例えば、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法を用いたイオン注入工程において、それぞれのイオン注入工程では、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行い、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する場合に、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響を残すことなく、一定のイオン注入面内補正量強度を持った等方的な同心円形状のイオン注入量分布を実現するイオン注入量を実現することができるようなイオン注入工程を複数個実現化することができる。
【0106】
具体的には、上記イオン注入工程において、それぞれのイオン注入工程では、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行い、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する場合に、イオンビームに対するウエハ回転角が0度から179度の間で異なる、複数個のイオン注入工程で、イオン注入量面内分布の強度を同一に保ちながら、ウエハ面内で任意の地点を設定し、その地点を回転中心とみなした場合にイオン注入量のその地点からの角度方向依存性がないように、その回転中心に対して等方的な同心円形状のイオン注入量分布を実現するイオン注入工程が実現化できる。
この場合、ウエハ回転角方向に、時計回り、反時計回りの区別なく、常に、等方的な同心円形状のイオン注入量分布を実現するイオン注入量を実現することができる。
【0107】
一方、イオンビームに対するウエハ回転角が0度から179度の間に代えて、イオンビームに対するウエハ回転角が−179度から0度の間で異なる、複数個のイオン注入工程においても、同様の効果が得られる。
【0108】
また、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法を用いたイオン注入工程において、それぞれのイオン注入工程では、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行い、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する場合に、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響を残すことなく、偏芯形状のイオン注入量分布を実現するイオン注入量を実現することができるようなイオン注入工程を実現化することができる。
【0109】
既に説明したように、偏芯形状の中心位置は、ウエハ面内の任意位置に設定でき、かつ、そのイオン注入面内補正量強度も、それぞれのイオン注入工程で一定にすることができるので、本発明によるイオン注入方法を用いると、イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向にほぼ直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法を用いたイオン注入工程において、それぞれのイオン注入工程では、ウエハのステップ回転を用いることなくイオン注入を行い、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正する場合に、イオンビーム走査方向及びウエハ走査方向の影響を残すことなく、一定のイオン注入面内補正量強度を持ち、ウエハ面内で空間的に同一の位置に偏芯形状の中心を持つ、偏芯形状のイオン注入量分布を実現するイオン注入量を実現することができるようなイオン注入工程を複数個実現化することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 イオン源
2 引出電極
3 質量分析磁石装置
4 質量分析スリット
5 ビームスキャナー
6 パラレルレンズ
7 ウエハ
8 ホルダ
9 昇降装置
10 回転装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、
イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入方法。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差を補正量とすることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項3】
請求項2に記載のイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項4】
請求項1に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項5】
請求項4に記載のイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ特性関数を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項6】
請求項1に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項7】
請求項1に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ特性関数を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のイオン注入方法において、前記等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布は、ウエハ面内でイオン注入量の角度方向依存性が無い等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布であることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項9】
イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査する制御系を備え、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、
前記制御系は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入装置。
【請求項10】
請求項1に記載のイオン注入方法において、
前記速度制御に際し、ウエハ面内で任意の地点を設定し、その地点を回転中心とみなし、その回転中心に関して、前記等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入方法。
【請求項11】
請求項10に記載のイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、
設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の補正量分布を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項12】
請求項10に記載のイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、
設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の特性関数を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項13】
請求項10に記載のイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、
設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項14】
請求項10に記載のイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、
設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の特性関数を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項15】
請求項9に記載のイオン注入装置において、
前記制御系は、ウエハ面内で任意の地点を設定し、その地点を回転中心とみなし、その回転中心に関して、前記等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入装置。
【請求項16】
イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、
イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための楕円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入方法。
【請求項17】
請求項16に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項18】
請求項16に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる特性関数を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項19】
請求項16に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向でウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数が異なる補正量分布を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項20】
請求項16に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向でウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数が異なる特性関数を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項21】
イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査する制御系を備え、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、
前記制御系は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための楕円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入装置。
【請求項22】
請求項1〜8、10〜14、16〜20のいずれか1項に記載のイオン注入方法において、ウエハのステップ回転を用いることなく目的のイオン注入をシングルステップで行うことを特徴とするイオン注入方法。
【請求項1】
イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、
イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入方法。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差を補正量とすることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項3】
請求項2に記載のイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項4】
請求項1に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項5】
請求項4に記載のイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ特性関数を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項6】
請求項1に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ補正量分布を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項7】
請求項1に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で同じ特性関数を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のイオン注入方法において、前記等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布は、ウエハ面内でイオン注入量の角度方向依存性が無い等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布であることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項9】
イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査する制御系を備え、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、
前記制御系は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入装置。
【請求項10】
請求項1に記載のイオン注入方法において、
前記速度制御に際し、ウエハ面内で任意の地点を設定し、その地点を回転中心とみなし、その回転中心に関して、前記等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入方法。
【請求項11】
請求項10に記載のイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、
設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の補正量分布を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項12】
請求項10に記載のイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、
設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が同一の特性関数を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項13】
請求項10に記載のイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、
設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の補正量分布を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項14】
請求項10に記載のイオン注入方法において、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、
設定されたウエハ面内の任意の地点からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で、ウエハ面内の任意の地点からの距離に比例する項の比例定数が同一の特性関数を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項15】
請求項9に記載のイオン注入装置において、
前記制御系は、ウエハ面内で任意の地点を設定し、その地点を回転中心とみなし、その回転中心に関して、前記等方的な同心円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入装置。
【請求項16】
イオンビームを往復走査し、イオンビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査して、イオンをウエハに注入するイオン注入方法において、
イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための楕円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入方法。
【請求項17】
請求項16に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる補正量分布を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項18】
請求項16に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その二乗に比例する項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向で二乗に比例した項の比例定数が異なる特性関数を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項19】
請求項16に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差を補正量とし、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向でウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数が異なる補正量分布を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項20】
請求項16に記載のイオン注入方法において、前記速度制御に際し、イオンビーム走査方向のビーム走査速度補正量とメカニカル走査方向のウエハ走査速度補正量について、ウエハ中心からの距離を変数として、その変数に比例する項の余弦関数値の項と定数項の和乃至差から作成した特性関数を前記制御関数として用い、かつ、イオンビーム走査方向とメカニカル走査方向でウエハ中心からの距離に比例する項の比例定数が異なる特性関数を用いることを特徴とするイオン注入方法。
【請求項21】
イオンビームを往復走査し、ビーム走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルに走査する制御系を備え、イオンをウエハに注入するイオン注入装置において、
前記制御系は、イオンビーム走査方向のビーム走査速度とメカニカル走査方向のウエハ走査速度を同時かつ独立に、速度補正量を規定する別々の制御関数を用いて速度制御して、他の半導体製造工程のウエハ面内不均一性を補正するための楕円形状のウエハ面内イオン注入量分布を生成することを特徴とするイオン注入装置。
【請求項22】
請求項1〜8、10〜14、16〜20のいずれか1項に記載のイオン注入方法において、ウエハのステップ回転を用いることなく目的のイオン注入をシングルステップで行うことを特徴とするイオン注入方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−204006(P2012−204006A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64666(P2011−64666)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000183196)株式会社SEN (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000183196)株式会社SEN (31)
【Fターム(参考)】
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