説明

イグニッションスイッチの操作規制装置

【課題】消費電力の低減及び装置全体の小型化を図ることができる、イグニッションスイッチの操作規制装置を提供する。
【解決手段】車両のイグニッションスイッチの操作規制装置であるロック装置(100)は、操作ノブ(101)に連動するロータシャフト(102)内でその径方向に移動可能なストッパピース(105)を備え、そのストッパピースの外周部がシャフトケース(103)の壁部に係止することで回転操作が規制される。また、保持ソレノイド(110)に係合するリンク(117)の係止部(117b)がストッパピースの外周部に対向するように配置される。通電状態の保持ソレノイドにより保持されたリンクの係止部に、操作ノブへの操作に伴って連動するストッパピースの外周部が当接しながらロータシャフト内に退避して係止状態が解除される。ロック機構のアクチュエータとして保持ソレノイドを用いることができ、消費電力の低減が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のイグニッションスイッチへの回転操作を規制する操作規制装置(ロック装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、利用者が携帯する電子キーとの間の無線通信を用いて、エンジンの始動等の操作の許否を制御する電子キーシステムが普及している。この電子キーシステムが搭載された車両では、利用者が携帯する電子キーからのIDコードを車載機側の認証手段が受信し、予め登録されたIDコードと比較してこれらが一致する場合に、イグニッションスイッチへの回転操作を規制しているロック装置のロック状態が解除される。
【0003】
従来、車両のイグニッションスイッチに連結される操作規制装置であるロック装置は、イグニッションスイッチの切り換えを操作するための操作ノブがLOCK(ロック)位置からACC(アクセサリ)位置へ回転操作されるのを規制する第1のロック機構(ノブロック)と、車両のシフトレバーがP(パーキング)ポジション以外のN(ニュートラル)またはD(ドライブ)ポジションに切り換えられている場合に、操作ノブをACC位置からLOCK位置へ戻す操作を規制する第2のロック機構(キーインターロック機構)とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ロック装置における上述の第1のロック機構は、励磁状態でプランジャを引き込む吸引タイプの第1のソレノイドを非通電状態にすることでLOCK位置からACC位置への回転操作を規制し、電子キーの認証が成立したときには第1のソレノイドを通電状態にすることで、回転操作の規制を解除するように構成されている。
【0005】
第2のロック機構は、第1のソレノイドと同様の吸引タイプの第2のソレノイドを用い、この第2のソレノイドを通電状態とすることで操作ノブの回転操作を規制している(キーインターロック状態)。そして、シフトレバーがPポジションのときに第2のソレノイドを非通電状態にすることでACC位置からLOCK位置への回転操作を許可するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−295089号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のロック装置によれば、操作ノブの回転操作を規制するアクチュエータとして吸引タイプのソレノイドを必要としていた。しかし、吸引タイプのソレノイドは、通電状態でプランジャを引き込むように稼動するため、消費電力が比較的大きく十分な発熱対策が必要とされる。また、第1及び第2のロック機構それぞれについて2つのソレノイドを用いているため、装置全体の大型化を招くという課題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、消費電力の低減及び装置全体の小型化を図ることができる、イグニッションスイッチの操作規制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]上記目的を達成するため本発明は、車両のイグニッションスイッチの回転操作を規制する操作規制装置であって、利用者に回転操作される操作ノブと、前記操作ノブと一体に連動するロータ部材と、前記ロータ部材を回転可能に収容するケース部材と、前記ロータ部材内で当該ロータ部材の径の一方向に沿って移動可能であり、前記ケース部材の壁部に係止することにより、前記ロータ部材の回転を規制するストッパ部材と、前記ストッパ部材を常時前記ロータ部材の前記径方向外側に向けてばね力を付与するスプリングと、通電状態でプランジャを保持するソレノイドと、前記プランジャに対して回動可能に係合し、前記ソレノイドが通電状態のときにその回動が保持されるとともに、前記操作ノブが操作されるのに伴って連動する前記ストッパ部材の外周部に当接することで当該ストッパ部材を前記ばね力に抗して前記ロータ部材内に退避させ前記ケース部材の壁部への係止状態を解除するリンク部材と、を備える。
【0010】
[2]また、前記操作ノブは、回転操作とともにその回転軸方向における第1位置から第2位置への押圧操作が可能とされ、前記操作ノブが押圧操作された前記第2位置で当該操作ノブの回転操作を許容するインターロック手段を更に備え、前記ロータ部材の外周部に、前記ソレノイドが通電されることにより保持される前記リンク部材に阻止されて前記操作ノブが前記第1位置から前記第2位置へ押圧操作されるのを規制する突起部が形成されている。
【0011】
[3]また、前記リンク部材は、前記ソレノイドが通電状態のとき前記ロータ部材側に回動して保持されるように設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の操作規制装置によれば、操作ノブの回転操作を規制するアクチュエータとしてプランジャを稼働させない保持タイプのソレノイドを使用するため、消費電力の低減を図ることができる。また、2つのロック機構に使用されるソレノイドを共有するため、装置全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、車両に搭載される電子キーシステムの実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明に係る操作規制装置の実施の形態であるロック装置の構成を示す図である。
【図3】図3(a)は、非通電状態にある保持ソレノイドを示す図である。図3(b)は、通電状態にある保持ソレノイドを示す図である。
【図4】図4は、図2に示されたA−A位置における断面図である。
【図5】図5は、図2に示されたB−B位置におけるインターロックユニットの断面図である。
【図6】図6(a)は、操作ノブがLOCK位置にあるときのロック装置を示す図である。図6(b)は、図6(a)に示されたC−C位置における断面図である。
【図7】図7(a)は、エンジン始動のロックが解除された状態で操作ノブが押圧操作されたときのロック装置を示す図である。また、図7(b)は、図7(a)に示されたC−C位置における断面図である。
【図8】図8(a)は、エンジン停止がロックされた状態のときのロック装置を示す図である。また、図8(b)は、図8(a)に示されたB−B位置におけるインターロックユニットの断面図である。
【図9】図9(a)は、エンジン停止のロックが解除された状態のときのロック装置を示す図である。また、図9(b)は、図9(a)に示されたB−B位置におけるインターロックユニットの断面図である。
【図10】図10(a)は、操作ノブがLOCK位置にあるときのロック装置を示す図である。また、図10(b)は、図10(a)に示されたC−C位置における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(電子キーシステムの構成)
図1は、車両に搭載される電子キーシステム1の実施の形態を示すブロック図である。電子キーシステム1は、車両側の認証装置10と利用者が携帯する電子キー20との間で近距離無線通信を行い、電子キー20に記憶されたIDコードの認証が成立した場合にドアの開閉やエンジンの始動等の操作を許可するシステムである。電子キー20による認証が成立すれば、利用者はキーを用いなくても車両に搭乗して運転等することができるとともに、電子キー20を携帯していなければ外部から不正な解錠操作は極めて困難であるため、利用者に対する利便性の向上と高い防犯性の両立が図られている。
【0015】
電子キーシステム1において認証装置10は、電子キー20の認証手段として車両に設置される制御装置であり、室内用送受信部11と、室外用送受信部12と、認証ECU(ECU:Electronic Control Unit)13とを備えて構成されている。
【0016】
認証装置10において、室内用送受信部11は、室内用送受信アンテナ11aを介して電子キー20からのRF無線信号を受信し復調するとともに、通信制御コード等のデータをRF信号に変調して室内用送受信アンテナ11aから送信する。同じく室外用送受信部12は、室外用送受信アンテナ12aを介して、電子キー20からのRF無線信号を受信し復調するとともに、通信制御コード等のデータをRF信号に変調して室外用送受信アンテナ12aから車外に送信する。
【0017】
認証ECU13は、CPU、メモリ14及び通信インタフェース等をユニット化したマイクロコンピュータとして構成され、車両のメインECU900と通信可能に接続している。また、認証ECU13のメモリ14には、当該車両の識別情報であるIDコードが予め記憶されている。認証ECU13は、認証装置10内部において室内用送受信部11及び室外用送受信部12と接続しており、これらを含む認証装置10全体の統括制御を行っている。
【0018】
認証装置10は、上述したように認証ECU13を介して車両のメインECU900と通信可能に接続している。また、メインECU900には、エンジンECU910と、自動変速装置920と、イグニッションスイッチ200と、本発明に関わるロック装置100に備えられる後述の保持ソレノイド110とが電気的に接続されている。なお、自動変速装置920にはシフトレバー921が接続されており、シフトレバー921の切り換えポジションの情報が自動変速装置920を介してメインECU900に入力される。
【0019】
次に、電子キーシステム1において電子キー20は、キーECU21と、受信部23と、送信部24と、電池25とを備えて構成される。キーECU21は、CPU、メモリ22等を備えてなるマイクロコンピュータからなり、電子キー20内部において、受信部23、送信部24及び電池25が接続されている。
【0020】
受信部23は、車両側の認証装置10から送信されてくる通信制御コード等のRF無線信号を受信アンテナ23aを介して受信し、復調した信号をキーECU21に送る。送信部24は、認証装置10からの指令に応じて、または定期的にキーECU21に予め記憶されたIDコードその他通信制御コード等をRF信号に変調して送信アンテナ12aから認証装置10へ送信する。
【0021】
かかる電子キー20は、上述したキーECU21、受信部23及び送信部24等の素子を1つのパッケージに一体化した小型のICチップとして形成される。なお、ICチップ化された電子キー20は、車両の正規キー(機械式施錠装置の用に供するものに限定しない)に埋め込まれて用いられる。また、利用者個人のIDカードや携帯電話等の多機能携帯端末機器に搭載して使用されるものであってもよい。
【0022】
(ロック装置の構成)
図2は、本発明に係る操作規制装置の実施の形態であるロック装置100の構成を示す図である。なお、図2においては、ロック装置100の内部構造を示すため、シャフトケース103の一部を破断し、またロータシャフト102の一部を断面(ハッチング部)で表している(以下、図6(a)、(a)及び図7(a)において同じ。)。
【0023】
ロック装置100は、車両のイグニッションスイッチ200に対する回転操作の規制及び許可を制御する装置である。図2に示されるようにロック装置100は、利用者が回転操作する操作ノブ101と、操作ノブ101と一体に回転するロータ部材としてのロータシャフト102と、ロータシャフト102を回転可能に収容するケース部材としての円筒状のシャフトケース103と、保持ソレノイド110と、インターロックユニット120とを備えている。また、ロータシャフト102と同軸において一体に回転する延長シャフト104には、イグニッションスイッチ200の操作軸が連結しており、操作ノブ101が回転操作されることによりイグニッションスイッチ200の接点位置が切り換えられる。
【0024】
操作ノブ101と一体をなすロータシャフト102は、シャフトケース103内に回転可能に、かつ、操作ノブ101の回転操作軸方向に沿って一定の範囲(待機位置から押圧位置)で移動可能に収容されている。また、ロータシャフト102は、シャフトケース103内で抜け止された状態で図示しないスプリングにより操作ノブ101を突出させる方向に付勢されている。すなわち、操作ノブ101は、シャフトケース103から突出する第1の位置(待機位置)から、スプリングの弾性反発力に抗して押し込まれた第2の位置(押圧位置)への押圧操作が可能とされている。正規の電子キー10を携帯する利用者がエンジン始動の際にイグニッションスイッチ200をACCに切り換える場合と、エンジン停止の際にACCからLOCKへ切り換えるときには、操作ノブ101が上述の第2の位置(押圧位置)に押圧操作されることにより、これらの回転操作が許容されることとなる。
【0025】
図3(a)は、非通電状態にある保持ソレノイド110を示す図であり、図3(b)は、通電状態にある保持ソレノイド110を示す図である。保持ソレノイド110は、軸方向に移動可能なプランジャ111と、本体ケース112の内部に励磁コイル113を有して構成されている。プランジャ111には、プランジャ111を本体ケース112側に押し戻す方向に弾性反発力を常時作用させるスプリング114が係合している。
【0026】
また、プランジャ111には、その移動軸に直交する方向に延びる係合ピン115が一体的に形成されている。そして、支持軸116を中心に回動可能に設けられたリンク117の一端部である軸係合部117aが、プランジャ111の係合ピン115に係合している。リンク117は、支持軸116付近で折れ曲がる略L字の形状を有しており、例えばガラス繊維を含むPBT(ポリブチレンテレフタレート)等による強化樹脂部材から一体に形成される。リンク117の軸係合部117aとは反対側の他端部は、操作ノブ101に対向する側がロータシャフト102に向けて傾斜するテーパ面117cを有してなる係止部117bが形成されている。
【0027】
保持ソレノイド110の本体ケース112内部に設けられている励磁コイル113は、そのN極またはS極の磁極が磁性体からなるプランジャ111の端部と当接する位置及び向きに配置されている。保持ソレノイド110が非通電の状態では、励磁コイル113に電流が供給されないので磁界が発生せず、磁性体からなるプランジャ111の移動を拘束しない。このため、保持ソレノイド110が非通電状態のときには、プランジャ111に作用するスプリング114の弾性反発力に抗してリンク117の回動が許容される(図3(a)参照)。一方、保持ソレノイド110が通電状態となり励磁コイル113に電流が供給されると、プランジャ111は励磁コイル113が発生する磁力により励磁コイル113に吸着されてその位置に保持される。このため、保持ソレノイド110が通電状態のときには、プランジャ111に係合するリンク117の回動も保持される(図3(b)参照)。
【0028】
図4は、図2に示されたA−A位置における断面図である。図4に示されるように、ロータシャフト102には、ロータシャフト102の径の一方向に沿って刳り抜かれた縦長の溝孔102aが形成されている。
【0029】
また、ロータシャフト102のA−A位置で、溝孔102aの方向に対し反時計回り方向に約55度(LOCK位置からACC位置への回転操作に相当する角度)傾いたロータシャフト102の外周部に突起部102bが形成されている。
【0030】
ロータシャフト102の溝孔102aには、ストッパ部材としてのストッパピース105が移動可能に挿入されている。ストッパピース105は、肉厚で略板状の部材からなり、その長手方向の一側面部にスプリング106が収容されるスプリング収容部105aが縦溝状に切り欠かれて形成されている。
【0031】
スプリング収容部105aに収容されるスプリング106は、例えばコイルスプリングからなり、一端がストッパピース105の段部105dに係止され、他端がロータシャフト102の溝孔102aに形成された段部102cに係止されている。ストッパピース105がロータシャフト102の溝孔102aに挿入された状態では、スプリング収容部105aに圧縮された状態で収容されたスプリング106のばね力である弾性反発力が作用して、ストッパピース105が常時ロータシャフト102の径方向外側に向けて付勢される。また、ストッパピース105の外周部の一部がシャフトケース103の内壁に当接して、ストッパピース105が抜け止される。
【0032】
また、ストッパピース105の外周部において、操作ノブ101とは軸方向反対側の隅である略2/3程度が切欠かれることにより係止溝105bが形成されている。これに対し、ストッパピース105の外周部で上述の係止溝105b以外の略1/3程度の部分が凸部105cとして形成されている。
【0033】
操作ノブ101がLOCK位置にあり、かつ、押圧操作されていない第1の位置(待機位置)において、リンク部材117は、図2に示されるように、その端部である係止部117bが、ストッパピース105の外周部である凸部105cの押圧移動する側に隣接して対向するように設けられる。さらに言えば、スプリング114の弾性反発力が下向きに作用したリンク117の係止部117bが、シャフトケース103の開口103aに臨んで位置するストッパピース105の係止溝105bに入り込んで係止する位置関係になるように、保持ソレノイド110、リンク117等が配設されている。
【0034】
次に、インターロックユニット120の構成を説明する。図5は、図2に示されたB−B位置におけるインターロックユニット120の断面図である。図5に示されるように、インターロックユニット120は、操作ノブ101の延長シャフト104を中心部に貫通させて操作ノブ101と一体に回転するロータ121と、ロータ121の径の一方向に沿って刳り抜かれた縦長の溝孔121aに移動可能に挿入されたストッパプレート123と、ストッパプレート123を常時、ロータ121の径方向外側に向けて付勢するスプリング124とを備え、これらが円筒状のロータケース125内に回転可能に収容されている。
【0035】
B−B位置におけるロータケース125の内周壁には、ロータ121がイグニッションスイッチ200のACC位置からON位置に相当する位置でストッパプレート123の外周部123cを挿入させる内溝125aとが形成されている。
【0036】
スプリング124は、例えばコイルスプリングからなり、一端がストッパプレート123の一端に形成された段部123aに係止され、他端がロータ121の溝孔121aに形成された段部121bに係止されている。
【0037】
ストッパプレート123の中心部には、操作ノブ101の延長シャフト104を貫通させるカム孔123bが形成されている。このカム孔123bに係合する延長シャフト104の幅(ストッパプレート123の移動方向に沿う断面長手方向における幅)は、操作ノブ101が押圧操作されていない第1の位置(待機位置)でカム孔123bに係合する箇所を起点に操作ノブ101側に行くに従って次第に広くなるように斜めに形成されている(図2の破線部を参照)。
【0038】
すなわち、ストッパプレート123には、段部123aと段部121bとの間に圧縮された状態で収容されるスプリング124のばね力である弾性反発力が作用し、図5に示されるように操作ノブ101がACC位置からON位置に相当する位置で押圧操作されていない第1の位置(待機位置)のときには、ストッパプレート123の外周部123cがロータケース125の内溝125aに挿入して係止されている。これにより、操作ノブ101のACC位置からON位置に相当する位置からの回転操作が規制される。その一方で、操作ノブ101が押圧操作された第2の位置(押圧位置)では、延長シャフト104がイグニッションスイッチ200側に移動し、次第に幅が広くなる延長シャフト104にカム孔123bが係合しながらストッパプレート123がロータケース125の中心部に向けて退避移動する。その結果、ストッパプレート123の外周部123cとロータケース125の内溝125aとの係止状態が解除され、操作ノブ101の回転操作が許容される。
【0039】
(ロック装置のノブロック動作)
次に、本実施の形態のロック装置100の動作を説明する。ここで、図6(a)は、車両のエンジンが停止し操作ノブ101がLOCK位置にあるときのロック装置100を示す図である。また、図6(b)は、図6(a)に示されたC−C位置における断面図である。
【0040】
エンジン停止の車両において、正規の電子キー20を携帯する利用者が搭乗しておらず、認証装置10が車両のIDコードを認証できない場合には、メインECU900は保持ソレノイド110を非通電にしてエンジン始動のロック状態を維持する。保持ソレノイド110が非通電状態のときには、プランジャ111に係合するリンク117の回動は拘束されないが、上述したようにスプリング114の弾性反発力によりリンク117の係止部117bが、ストッパピース105の係止溝105bに入り込んで係止される。
【0041】
エンジン始動のロック状態で、操作ノブ101が矢印TF方向に回転操作されると、ロータシャフト102及びストッパピース105が操作ノブ101と共に一体に連動する。このとき、非通電状態の保持ソレノイド110によりリンク117の回動は拘束されず、スプリング114によりリンク117が押し下げされる力よりも、スプリング106によるストッパピース105を押し上げる力のほうが大きく設定されているため、リンク117の係止部117bのテーパ面117dと移動するストッパピース105のテーパ面105eとが当接しながらリンク117の係止部117bがストッパピース105に乗り上げられる。
【0042】
すなわち、このロック状態のときには、図4のA−A断面に示されるようにストッパピース105の外周部(凸部105c)がシャフトケース103の開口103a側に留まり、仮に操作ノブ101をACC位置へ回転操作しようとしても、ストッパピース105の凸部105cがシャフトケース103の壁部である開口103aのエッジに当接するため、操作ノブ101の回転操作が規制されることとなる。
【0043】
なお、エンジン始動がロックされた状態で、操作ノブ101を矢印P方向に押圧操作しないままACC位置へ回転操作しようとした場合には、図10に示されるように、シャフトケース103の開口103bのエッジに操作ノブ101に圧入してあるピン107が当接するため、同じく回転操作が規制されたままとなる。
【0044】
次に、図7(a)は、エンジン始動のロックが解除された状態で操作ノブ101が押圧操作されたときのロック装置100を示す図である。また、図7(b)は、図7(a)に示されたC−C位置における断面図である。
【0045】
正規の電子キー20を携帯する利用者が車両に搭乗し、認証装置10が車両のIDコードを認証した場合には、メインECU900は保持ソレノイド110を通電状態にしてエンジン始動のロック状態を解除する。保持ソレノイド110が通電状態のときには、プランジャ111が励磁コイル113に吸着されるため、プランジャ111に係合するリンク117の回動が保持される。
【0046】
図6(a)に示されるように、エンジン始動のロックが解除された状態で操作ノブ101が矢印TF方向に回転操作されると、ロータシャフト102及びストッパピース105が操作ノブ101と共に一体に連動し、このとき、図6(b)に示すように、ストッパピース105のテーパ面105eがリンク117の係止部117bのテーパ面117dに接触する。その結果、ストッパピース105は、操作ノブ101の回転操作に伴って、回動が保持されたリンク117の係止部117bのテーパ面117dにストッパピース105のテーパ面105eを当接させながらロータシャフト102の溝孔102aの中心部側に移動する。このため、図7(b)に示されるように、ストッパピース105の凸部105cが開口103aから退避し、ストッパピース105とシャフトケース103の壁部との係止状態が解除される。その結果、操作ノブ101の矢印TFで示すACC方向への回転操作が許容される。
【0047】
(ロック装置のキーインターロック動作)
次に、本実施の形態のロック装置100において、稼働中のエンジンを停止する際に作動するキーインターロックの動作を説明する。図8(a)は、エンジン停止がロックされたキーインターロック状態のときのロック装置100を示す図である。また、図8(b)は、図8(a)に示されたB−B位置におけるインターロックユニット120の断面図である。
【0048】
メインECU900は、エンジンが稼働中のときにシフトレバー921がP(パーキング)ポジション以外のN(ニュートラル)またはD(ドライブ)ポジションにあるのを検知している間、保持ソレノイド110を通電状態にしてエンジン停止のキーインターロック状態を維持する。
【0049】
このキーインターロック状態において、イグニッションスイッチ200のACCまたはONに相当する回転操作位置に操作ノブ101があるときには、図8(a)に示されるように、ロータシャフト102の突起部102bのインターロックユニット120側にその係止部117bが位置してリンク117の回動が保持される。
【0050】
このため、キーインターロック状態においては、ロータシャフト102の突起部102bの移動がリンク117の係止部117bに阻まれて、操作ノブ101を押圧操作することができなくなる。その結果、図8(b)に示されるように、インターロックユニット120内において、ストッパプレート123の外周部123cと第2の内溝125bとの係止状態が維持され、操作ノブ101をACC位置からLOCK位置側へ回動操作することが規制される。
【0051】
次に、図9(a)は、エンジン停止のキーインターロックが解除された状態のときのロック装置100を示す図である。また、図9(b)は、図9(a)に示されたB−B位置におけるインターロックユニット120の断面図である。
【0052】
メインECU900は、エンジンが稼働中にシフトレバー921がP(パーキング)ポジションに切り換えられたのを検知すると、保持ソレノイド110を非通電状態にしてエンジン停止のキーインターロック状態を解除する。キーインターロックが解除された状態では、非通電状態の保持ソレノイド110によりリンク117の回動は保持されないため、操作ノブ101の矢印P方向への押圧操作が許容される。このとき、図9(a)に示されるように、リンク117の係止部117bのテーパ面117cと移動する突起部102bとが当接しながらリンク117の係止部117bが突起部102bに乗り上げられる。
【0053】
操作ノブ101が第2の位置(押圧位置)へ押圧操作されると、インターロックユニット120において、連動する延長シャフト104にストッパプレート123のカム孔123bが係合しながらストッパプレート123がロータケース125の中心部に向けて退避移動する。その結果、ストッパプレート123の外周部123cとロータケース125の第2の内溝125bとの係止状態が解除され、操作ノブ101をLOCK位置へ戻す矢印TR方向への回転操作が許容される。
【0054】
(実施の形態による効果)
[1]本実施の形態によれば、操作ノブ101に連動するロータシャフト102に移動可能なストッパピース105を設け、ストッパピース105の外周部とシャフトケース103の壁部である開口103aのエッジとを係止させることにより操作ノブ101の回転操作を規制する。また、ストッパピース105の外周部に形成した凸部105cに対し、保持ソレノイド110により保持されるリンク117の端部である係止部117bを対向して配置した。これにより、保持ソレノイド110が通電時には、操作ノブ101の回転操作に伴ってストッパピース105のテーパ面105eがリンク117の係止部117bに当接しながら退避し、ストッパピース105とシャフトケース103の壁部との係止状態が解除される。このように、操作ノブ101のロック制御を行うアクチュエータとして吸着タイプの保持ソレノイド110を用いることにより、ロック装置100の電力消費を抑えることができる。
【0055】
[2]また、本実施の形態によれば、操作ノブ101がACC相当の回転操作位置において、保持ソレノイド110に係合するリンク117の係止部117bと対向するように、ロータシャフト102の外周面に突起部102bを設けた。保持ソレノイド110が通電時には、回動が保持されたリンク117の係止部117bに突起部102bの移動が阻まれて、操作ノブ101の押圧操作が規制される。かかるキーインターロック制御を行うアクチュエータとして上述のロック制御を行う保持ソレノイド110を用いて共有化したので、1つの保持ソレノイドでノブロックとキーインターロックの2つの機能を備えたロック装置100全体の小型化が図られる。
【0056】
以上、本発明に好適な実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で種々の変形、応用が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…電子キーシステム、
10…認証装置、11…室内用送受信部、11a…室内用送受信アンテナ、12…室外用送受信部、12a…室外用送受信アンテナ、13…認証ECU、14…メモリ、
20…電子キー、
21…キーECU、22…メモリ、23…受信部、23a…受信アンテナ、24…送信部、24a…送信アンテナ、25…電池、
100…ロック装置、
101…操作ノブ、102…ロータシャフト、102a…溝孔、102b…突起部、102c…段部、103…シャフトケース、103a…開口、103b…開口、104…延長シャフト、105…ストッパピース、105a…スプリング収容部、105b…係止溝、105c…凸部、105d…段部、105e…テーパ面、106…スプリング、107…
ピン、110…保持ソレノイド、111…プランジャ、112…本体ケース、113…励磁コイル、114…スプリング、115…係合ピン、116…支持軸、117…リンク、117a…軸係合部、117b…係止部、117c…テーパ面、117d…テーパ面
120…インターロックユニット、
121…ロータ、121a…溝孔、121b…段部、123…ストッパプレート、123a…段部、123b…カム孔、123c…外周部、124…スプリング、125…ロータケース、125a…内溝、
200…イグニッションスイッチ、
900…メインECU、910…エンジンECU、920…自動変速装置、921…シフトレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のイグニッションスイッチの回転操作を規制する操作規制装置であって、
利用者に回転操作される操作ノブと、
前記操作ノブと一体に連動するロータ部材と、
前記ロータ部材を回転可能に収容するケース部材と、
前記ロータ部材内で当該ロータ部材の径の一方向に沿って移動可能であり、前記ケース部材の壁部に係止することにより、前記ロータ部材の回転を規制するストッパ部材と、
前記ストッパ部材を常時前記ロータ部材の前記径方向外側に向けてばね力を付与するスプリングと、
通電状態でプランジャを保持するソレノイドと、
前記プランジャに対して回動可能に係合し、前記ソレノイドが通電状態のときにその回動が保持されるとともに、前記操作ノブが操作されるのに伴って連動する前記ストッパ部材の外周部に当接することで当該ストッパ部材を前記ばね力に抗して前記ロータ部材内に退避させ前記ケース部材の壁部への係止状態を解除するリンク部材と、を備える、操作規制装置。
【請求項2】
前記操作ノブは、回転操作とともにその回転軸方向における第1位置から第2位置への押圧操作が可能とされ、
前記操作ノブが押圧操作された前記第2位置で当該操作ノブの回転操作を許容するインターロック手段を更に備え、
前記ロータ部材の外周部に、前記ソレノイドが通電されることにより保持される前記リンク部材に阻止されて前記操作ノブが前記第1位置から前記第2位置へ押圧操作されるのを規制する突起部が形成されている、請求項1に記載の操作規制装置。
【請求項3】
前記リンク部材は、前記ソレノイドが通電状態のとき前記ロータ部材側に回動して保持されるように設けられている、請求項1または2に記載の操作規制装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−81783(P2012−81783A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227160(P2010−227160)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】