説明

イソフラボン−ペプチド共役体およびその使用

本発明は、イソフラボンまたはイソフラボン-グリコシドおよびこれらの化合物と共有結合するアミノ酸、2〜5個のアミノ酸を有するペプチドもしくはペプチド誘導体からなる薬学的に活性な化合物、ならびにこれらの化合物の薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、ならびに医薬組成物(特に血小板凝集の治療および腫瘍の治療のための)の製造のためのこれらの物質の使用に関する。
従って、本発明の適用領域は、医療および医薬業界である。
本発明の化合物は一般式(I):
(I)X-Pep
[式中、
- Xはイソフラボンまたはイソフラボン-グリコシドであり、そして
- PePはアミノ酸または2〜5個のアミノ酸を有するペプチドもしくはペプチド誘導体であり、
- XとPepの間に共有結合または結合のリンカー系が存在する]
を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソフラボンまたはイソフラボン-グリコシドおよびこれらと共有結合により結合したアミノ酸、2〜5個のアミノ酸を有するペプチドもしくはペプチド誘導体からなる薬学的に活性な化合物、およびこれらの化合物の薬学的に許容可能な塩または溶媒和物、および医薬組成物(特に血小板凝集の治療のためのまたは腫瘍治療のための)の製造のためのこれらの物質の使用に関する。
【0002】
従って、本発明の適用領域は、医療および医薬業界である。
【背景技術】
【0003】
イソフラボン(時々イソフラボノイドとも呼ばれる)は、多くの場合に黄色に着色されたイソフラボンに由来する植物色素の群を形成する。本発明の範囲内において、イソフラボンにはそれらのグリコシドもまた含まれる。最も良く知られているイソフラボンには、特に、イソフラボン、ダイゼイン、ゲニステイン、プルネチン、ビオカニンA、オロボール(Orobol)、サンタル(Santal)、グリシテイン、プラテンセイン、ホルモノネチン、ゲニスチン、6”-O-マロニルゲニスチン、6”-O-アセチルゲニスチン、ダイジン(Daidzin)、6”-O-マロニルダイジン、6”-O-アセチルダイジン、グリシチン(Glycitin)、オノニン(Ononin)およびシスソトリン(Sissotrin)、そしてさらには ゲニスチン、ダイジン、6”O-マロニルグリシチンおよび6”-O-アセチルグリシチンが含まれる。ゲニステインのマロニル-グルコシドが大豆中のイソフラボンの大部分を構成する。発酵大豆製品においては、イソフラボンは主にそれぞれのアグリコン形態のゲニステイン、ダイゼインおよびグリシテインで存在している。
【0004】
いくつかのイソフラボンに関しては、例えば草食動物においてエストロゲン作用を示すことが知られている。他のイソフラボンに関しても、ヒトまたは他の哺乳動物において抗酸化作用を有すると考えられているが、このような作用についてはいまだに証明されていない。同様に、イソフラボンが抗発癌性、抗アテローム発生性、抗骨粗鬆症および/または脂質低下作用を有するかどうか、そして場合によってはこれらのうちのいずれを有するかについても意見の分かれるところである。すなわち、多くの場合に、現在まで、純粋なイソフラボンの投与により(場合により通常の薬学的なキャリアー物質および補助物質とともに)イソフラボンに起因する作用を再現することをできていない。特に、高用量の投与にもかかわらずゲニステインの抗酸化作用を達成すること、およびヒトの標的細胞における高濃度のゲニステインの証明に達することはできていない。
【0005】
例えば、周知のように、イソフラボン、特にゲニステインは用量に依存して血小板凝集を阻害する(1)。その際、血小板の機能におけるイソフラボンの影響は複雑な性質によるものであり:一方、特にゲニステインは種々の膜受容体(アデノシン受容体、フォン・ヴィレブランド因子)を遮断し(2、3)、その特有の化学構造により、特にトロンボキサンA2受容体を遮断する(4)。他方、ゲニステインは、細胞内の代謝過程の調節(シクロオキシゲナーゼの代謝におけるチロシンキナーゼの阻害(5)、ホスホジエステラーゼの阻害によるcAMPの調節(6)、過酸化物(ホスホリパーゼCおよびアラキドン酸代謝の重要な作用物質としての)の細胞内アベイラビリティーの減少(7、8))により血小板凝集を阻害する。
【0006】
ゲニステインは大豆から得られるイソフラボンである。種々の研究により、悪性細胞の増殖における、例えば造血器腫瘍(例えば白血病およびリンパ腫)、黒色腫、および上皮性腫瘍、例えば乳癌、肺癌、前立腺癌および頭頚部扁平上皮癌の増殖におけるゲニステインの阻害効果が示されている(1−5)。
【0007】
ゲニステインの増殖阻害活性は、その増殖抑制作用およびアポトーシス促進作用に基づく(6)。しかしながら、この活性は、細胞培養系におけるゲニステインの細胞取り込みが制限されているために、比較的高い濃度(インビボではほとんど達成され得ない)においてのみ見られる(7)。
【0008】
イソフラボンまたはイソフラボン-グリコシドと短鎖ペプチドとの相乗的医薬組成物を製造することが、すでに提案されている(特許文献1)。これらの組成物においては、イソフラボンのアベイラビリティーが細胞取り込みの改善により著しく増加した。しかしながら、このためには、比較的高い基質(特にペプチド)濃度が必要である。一方では、経口投与の場合には、使用されるペプチドが胃腸の通過において部分的に分解し、他方では、ペプチドの血漿半減期が分の範囲であり、それはアベイラビリティーを減少させ、望ましくない副作用を引き起こす。例えば、そのような副作用は、グルタミン酸(Glu-Gluの分解生成物としての)に関して中枢神経障害において説明されてきた。これは、投与後の血漿レベルの正確な制御(例えば、特定の疾患の治療に不可欠である)を実現することができないという結果を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】PCT/DE2006/001795明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、上記の欠点を取り除くか、または少なくとも軽減することである。様々な使用可能性に加えて、特にゲニステイン誘導体の薬剤として使用可能な化合物が提供されるべきであり、その際、改善された細胞内アベイラビリティーにより、例えば、ゲニステインまたはイソフラボン/短鎖ペプチドの組成物よりも優れた血小板凝集阻害、あるいは改善された抗腫瘍活性が達成されるべきである。可能な限り、イソフラボンのさらなる使用分野もまた開発されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1に記載の化合物、請求項10記載の医薬組成物、および請求項11または14〜16のいずれか1つに記載の前記化合物の使用により解決される。他の請求項は本発明の好ましい形態および実施態様である。
【0012】
非常に驚くべきことに、式(I)
(I)X-Pep
[式中、Xはイソフラボンまたはイソフラボン-グリコシドであり、PePはアミノ酸または2〜5個のアミノ酸を有するペプチドもしくはペプチド誘導体であり、XとPepの間に共有結合が存在するか、または好適なリンカー系(例えばエチレングリコール、エタノールアミン、より高級なその同属体、または対応のポリエチレングリコール誘導体)により結合が形成される]
で表される化合物、およびこれらの化合物の薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物が、化合物のイソフラボン成分の生体、特に哺乳動物における作用を増強するか、またはまずは初めて生物学的作用を生じさせることが見出された。
【0013】
好ましい実施態様において、化合物Iの成分Xはイソフラボンまたはイソフラボン-グリコシド、一般式(II):
【0014】
【化1】

【0015】
[R1、R2、R3、R4、R5およびR6基はそれぞれ独立して以下:水素、ヒドロキシ、メトキシまたはグリコシド(Glc)を意味することができ、その際、化合物Iにおける基1〜6のうちの1つがPep基(上記の意味を有する)で置換される]
の物質からなるか、または前記物質の薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物から形成される。好ましい連結位置はR2およびR5である。
【0016】
式IIにおけるグリコシドは一般式III
【0017】
【化2】

【0018】
[式中、RはR1、R2、R3、R4、R5およびR6とは独立して、水素、アセチルおよびマロニルからなる群から選択される]
を有する。
【0019】
特に好ましいのは、成分Xがイソフラボン、ダイゼイン、ゲニステイン、プルネチン、ビオカニンA、オロボール、サンタル、グリシテイン、プラテンセイン、ホルモノネチン、ゲニスチン、6”-O-マロニルゲニスチン、6”-O-アセチルゲニスチン、ダイジン、6”-O-マロニルダイジン、6”-O-アセチルダイジン、グリシチン、オノニンまたはシスソトリンから形成される上記のような本発明化合物である。
【0020】
【表1】

【0021】
別の好ましい実施態様において、成分Xは2〜3個のOH基を含み、これはモノサッカライド、ジサッカライド、メチルまたはスルフェートを含まないか、またはモノサッカライド、ジサッカライド、メチルまたはスルフェートで完全にもしくは部分的に置換される(モノサッカライドは酢酸、マロン酸、桂皮酸、クマル酸、コーヒー酸またはフェルラ酸で部分的にアシル化されたモノサッカライドを含み、ジサッカライドは、酢酸、マロン酸、桂皮酸、クマル酸、コーヒー酸またはフェルラ酸で部分的にアシル化されたジサッカライドを含む)。
【0022】
特に好ましい実施態様において、Xはゲニステイン、ゲニスチン、ダイゼインまたはダイジンからなり、好ましくはゲニステインである。
【0023】
化合物X-Pep (I)のペプチド残基は、好ましくは2〜5個のアミノ酸を有するペプチドまたはペプチド誘導体からなり、この場合に、少なくとも2個のアミノ酸はpH=7で負に帯電する側鎖を含む。
【0024】
好ましい実施態様において、成分Pepは、配列DD、EE、DE、EDを有するペプチドの群から選択されるジペプチドからなり、D=アスパラギン酸であり、E=グルタミン酸である。驚くべきことに、このように短いペプチド成分およびその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物が、特にゲニステイン、ゲニスチン、ダイゼインおよびダイジンと組み合わされた場合に、非常に強力な相乗作用を示すことが判明した。上記のジペプチドのうち、グルタミン酸ジペプチド(配列EEのペプチド)が特に好ましい。ゲニステインと結合したグルタミン酸ジペプチドを用いると、インビトロおよびヒトのインビボにおいて、ゲニステインと比較して、血小板凝集阻害効果の特に顕著な増加、および腫瘍増大抑制における特に顕著な増加を観測することができた。
【0025】
別の好ましい実施態様において、成分Pepは、以下の配列:
DDDDD, DDDDE, DDDED, DDDEE, DDEDD, DDEDE, DDEED, DDEEE, DEDDD, DEDDE, DEDED, DEDEE, DEEDD, DEEDE, DEEED, DEEEE, EDDDD, EDDDE, EDDED, EDDEE, EDEDD, EDEDE, EDEED, EDEEE, EEDDD, EEDDE, EEDED, EEDEE, EEEDD, EEEDE, EEEED, EEEEE,
DDDD, DDDE, DDED, DDEE, DEDD, DEDE, DEED, DEEE, EDDD, EDDE, EDED, EDEE, EEDD, EEDE, EEED, EEEE,
DDD, DDE, DED, DEE, EDD, EDE, EED, EEE;
を有するペプチドの群から選択されるペプチド(D=アスパラギン酸であり、E=グルタミン酸である)からなる。
【0026】
基本的に、共有結合されたXおよびPepの可能な組み合わせの全てが本発明の化合物として好適である。例えば、種々の使用分野に関して、イソフラボンゲニステインが配列EEのペプチドもしくはペプチド誘導体と共有結合した化合物(E=グルタミン酸)が有効であることが示された。
【0027】
基本的に、XおよびPep間の共有結合は、本発明化合物内で任意の形態で、好ましくは、カルバメート-、エーテル-またはエステル結合を介して形成される。特に、ペプチドが、そのN末端のアミノ基を介して、またはそのC末端のカルボキシル基を介して、またはそれから還元により得られる第一級ヒドロキシ官能基を介して、直接、R1〜R6のうちの1箇所に位置するXのヒドロキシル基と、共有結合のカルバメート-、エーテル-またはエステル結合の形成下で連結されるか、あるいは2つの官能基を連結する好適なリンカー系を介して連結されるのが有効であることが実証された。リンカー系として好適なのは、エチレングリコール、エタノールアミン、より高級なその同属体または対応するポリエチレングリコール誘導体である。
【0028】
特に有利な実施態様において、共有結合はアミド、エーテルまたはカルボン酸エステルによって形成され、前記結合はXのR2またはR5を介して形成されるのが好ましい。
【0029】
本発明はさらに、人体又は他の哺乳動物の生体の医学的適応症の治療および/または予防のための医薬組成物の製造への、これらの化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の使用が含まれる。
【0030】
この場合に、好ましい医学的適応症には、血栓塞栓性の疾患、心血管疾患、血管疾患および血管異常、血小板数および/または血小板凝集の亢進に関連する疾患、代謝性疾患および癌疾患の予防および治療が含まれる。
【0031】
その際、特に好ましい医学的適応症には、高血圧(Hypertonie)、高コレステロール血症、心筋梗塞および再梗塞、他の器官の梗塞および再梗塞、卒中発作、肺塞栓、下肢静脈血栓症、動脈硬化性血管疾患(arteriosklerotische Gefaeserkrankungen)、血小板数および血小板凝集の亢進によって引き起こされる疾患、糖尿病、高ホモシステイン血症(Hyperhomocysteinaemie)、悪性腫瘍、および/または骨粗鬆症の予防および治療、ならびに血栓症の術前および術後予防が含まれる。
【0032】
本発明はさらに、人体または他の哺乳動物の生体の医学的適応症の治療および/または予防のための医薬組成物の製造への、上記の化合物および作用物質の組み合わせの使用に関する。
【0033】
さらに本発明は、少なくとも1種の本発明化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の、哺乳動物での医薬組成物における作用物質のアベイラビリティーを改善するための当該医薬組成物への添加剤としての使用を含む。
【0034】
本発明は特に、食品添加剤としての、発酵槽またはバイオリアクターにおける細胞の保護のための添加剤としての、動物用飼料としての、および農薬としての、本発明化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の使用を含む。
【0035】
特に、ヒトの血小板凝集またはヒトの悪性細胞の増殖の減少(例えば、造血器腫瘍、例えば白血病およびリンパ腫、固形癌、例えば黒色腫、上皮性腫瘍、例えば乳癌、肺癌、胃腸癌(例えば膵臓)、および特に胃癌、大腸癌および前立腺癌および頭頚部扁平上皮癌の減少)のための、本発明化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物の使用が好ましい。
【0036】
さらに本発明には、以下の段階:
a)イソフラボン、ダイゼイン、ゲニステイン、プルネチン、ビオカニンA、オロボール、サンタル、グリシテイン、プラテンセイン、ホルモノネチン、ゲニスチン、6”-O-マロニルゲニスチン、6”-O-アセチルゲニスチン、ダイジン、6”-O-マロニルダイジン、6”-O-アセチルダイジン、グリシチン、オノニンおよびシスソトリンから成る群から選択される作用物質および/または該作用物質の薬学的に許容可能な溶媒和物もしくは塩を用意すること(作用物質は場合により保護された側基を有する)、
b)2〜5アミノ酸長を有するペプチドもしくはペプチド誘導体を用意するか、またはアミノ酸および/または該ペプチドまたはアミノ酸の溶媒和物もしくは塩を用意すること(少なくとも1つのアミノ酸が保護された側基を有し、ペプチドまたはアミノ酸のN末端が保護されるか、および/またはペプチドもしくはアミノ酸のC末端が固相に連結する)、
c)好ましくはカルボキシル基またはヒドロキシル基の活性化のために、a)の物質をb)の物質および活性化剤と混合すること、
を含む、化合物Iの製造方法が含まれる。
【0037】
例えば、前記の製造は以下により達成される:
a)
1.樹脂上での固相合成および樹脂からの分離による、少なくとも1つの(OtBu)保護-側基およびBoc-保護N末端を有する好適な長さおよび配列のペプチドの製造
2.HATUを用いるXと保護されたジペプチドとのカップリング
3.tBu/Boc脱保護
4.精製。
b)
1.樹脂上での固相合成および樹脂からの分離による、少なくとも1つの(OtBu)保護-側基およびBoc-保護N末端を有する好適な長さおよび配列のペプチドの製造
2.HATUを用いるBocXと保護されたジペプチドとのカップリング
3.tBu/Boc脱保護
4.精製。
c)
1.樹脂上での固相合成による、少なくとも1つの(OtBu)保護-側基およびFmoc-保護N末端を有する好適な長さおよび配列のペプチドの製造、およびそれに続くFmocの切断
2.BocXおよびトリホスゲンとの反応
3.樹脂からの分離
4.tBu/Boc脱保護
5.精製。
またはd)
0.N末端がFmocで保護されたアミノ酸の樹脂への結合(アミノ酸はアリルエステル保護側基を有する)
1.A)樹脂でのアリルエステルの分離、B)HATU使用下での遊離酸基のBocXとのカップリング
2.A)Fmocの切断、B)場合により、少なくとも1つの他の好ましくはN末端Boc保護アミノ酸(tBU保護側基を有する)の、固相に結合したN末端への結合
3.樹脂からの分離
4.tBu/Boc脱保護
5.精製。
またはe)
1.樹脂上での固相合成による、少なくとも1つの(OtBu)保護側基およびFmoc-保護N末端を有する好適な長さおよび配列のペプチドの製造、およびそれに続くFmoc切断
2.エーテル結合性エタノールアミン-X-共役体の製造
3.2つの断片の結合
4.脱保護
5.精製。
【0038】
本発明の出発点は、式(I)の新規化合物が細胞ペプチド輸送系により、非常に効率的に細胞に輸送されるという驚くべき発見である。これにより、これらの化合物のより低い濃度でも、特に、ヒト血小板凝集および腫瘍およびこれらに関連する適応症の予防、治療および軽減において生理学的効果を引き起こせることが保証される。従って、対応する純粋なイソフラボンまたはイソフラボン-グリコシドを使用するよりもかなり少ない量が必要である。
【0039】
特に、化合物成分XおよびPepは、それらの共有結合により、好ましい形態で相乗的に協同して作用する。その際、他の作用物質との追加的な相乗効果が生じ得る。
【0040】
この場合に、哺乳動物、特にヒトへの投与において、処理された哺乳動物の生理学的状態の薬学的に所望の変化を引き起こすことができる物質が、作用物質である。特に、薬剤の薬学的に有効な成分が作用物質であり、特に本発明化合物の作用物質成分Xも作用物質である。さらに、単数形で記載される物質が本発明の範囲内にある限り、従って、いくつかの好適な物質の混合物もまた特に言及しない限り考えられる。従って、本発明はまた、作用物質が式(I)の化合物の2つまたはそれ以上の混合物である、その医薬組成物に関する。さらに、本発明において、作用物質およびペプチドもしくは共有結合により生じる本発明化合物にはまた、それぞれの薬学的に許容可能な塩または溶媒和物も含まれる。
【0041】
本発明の範囲内において、ペプチドという語句には、20個の遺伝子コードアミノ酸から、または天然には存在しないアルファ、ベータおよびガンマアミノ酸からなることができる直鎖状または分岐状のペプチドが含まれる。本発明の範囲内において、ペプチド誘導体は、主鎖および/または側鎖において、少なくとも1つの直鎖状、環状または分岐状のハロゲン-またはヒドロキシ-またはアミンで置換されるかまたは置換されていない飽和または脂肪族のアルキル-、アルキルエーテル-、アルキルチオエーテル-、アルコキシ-、アシル-またはアリール基(該基は1〜20個の炭素原子を含む)で修飾されたペプチドである。
【0042】
化合物により実現される薬学的または治療的作用は、作用物質または作用物質成分Xがイソフラボンまたはイソフラボン-グリコシドからなる場合には、特に、抗酸化剤の作用でもある。本発明化合物により初めて、これまでは推測されるかまたは高濃度においては記載されてきた、治療された哺乳動物、特にヒトの標的細胞における、作用物質の薬学的に許容可能な濃度でのイソフラボンの抗酸化作用の達成が可能となる。従って、本発明化合物により初めて、これまでは推測されるだけだったイソフラボンおよびイソフラボン-グリコシドの有益な作用を再現可能に達成することができる薬剤が提供される。従って、イソフラボン、イソフラボン-グリコシドおよびその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を、正確に理解され、均質で、再現可能な状態を有する、ペプチド含有医薬組成物において、初めて使用することができる。
【0043】
作用物質の量および/またはペプチドの量それぞれ単独は、薬学的または治療的作用の生成に十分ではない場合が、特に好ましい。
【0044】
特に好ましいのは、哺乳動物、特にヒトにおける過酸化水素のアベイラビリティーを減少させる上記のタイプのうちの1つの本発明化合物である。過酸化水素は、哺乳動物、特にヒトの数多くの疾患の発症の発生因子であるか、または少なくとも促進因子である。従来のイソフラボン組成物の場合には、特にヒトにおいて、過酸化水素のアベイラビリティーを減少させること、およびその疾患促進作用または疾患を引き起こす作用を除去することができない。特に、これまでは、イソフラボンおよびイソフラボン-グリコシドゲニステイン、ダイゼイン、ゲニスチンおよび/またはダイジンの投与により、ヒトまたは他の哺乳動物の体細胞において過酸化水素のアベイラビリティーを再現可能に減少させることができなかった。本発明化合物は初めてこれを是正するものである。
【0045】
さらに、血小板凝集の阻害のため、高血圧、高コレステロール血症、高ホモシステイン血症、糖尿病、心筋梗塞、卒中発作、動脈硬化性血管疾患、悪性腫瘍および骨粗鬆症の予防および/または治療のために適合された上記のタイプの本発明化合物が好ましい。
【0046】
好ましくは、本発明の医薬組成物に本発明の化合物は、哺乳動物、特にヒトでの投与において血小板凝集を阻害するのに十分なの量で存在する。このような作用は特に、上記作用物質および/または(複数の)上記作用物質の生理学的に許容可能な濃度の使用下において、場合により慣用の薬学的な助剤およびキャリアーとともにダイゼイン、ダイジン、ゲニステインおよび/またはゲニスチンを投与した場合には、再現可能に得ることができない。従って、本発明の医薬組成物は、有利には、慣用のアセチルサリチル酸および/またはクロピドグレルを含有する医薬組成物の代替物として好適である。本発明の医薬組成物により、アセチルサリチル酸および/またはクロピドグレルをベースとする作用物質を有する慣用の医薬組成物の公知の副作用なしで、所望の治療効果を得ることができ、特に、治療されたヒトまたは他の哺乳動物の血液における血小板凝集を阻害することができる。
【0047】
上記の物質、特にゲニステインを用いると、特に哺乳動物、例えばヒトにおける血小板凝集の阻害のために好適な本発明化合物を製造することができる。このような本発明組成物を用いると、特に、慣用のアセチルサリチル酸および/またはクロピドグレルをベースとする血小板凝集阻害剤の使用と関連して発現する望ましくない副作用および治療の失敗(Therapieversagen)を防ぐこと、または少なくとも減少させることができる。
【0048】
治療的有効性は、特に抗酸化作用、特に哺乳動物における過酸化水素のアベイラビリティーの減少、および特に好ましくは血小板凝集の阻害を含むか、またはこれらからなる。
【0049】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、経口または非経口での使用のために作られる。さらに、本発明の医薬組成物は特に錠剤、糖剤、ジュースまたは他の液剤の形態で存在することができる。本発明の医薬組成物は、好ましくは薬学的に許容可能なキャリアー物質および助剤として水およびグルコースを含有することができる。当業者であれば刊行物「Fiedler, H.P., Lexikon der Hilfsstoffe fuer Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete, 4. Auflage, Aulendorf: ECV-Editio-Kantor-Verlag, 1996」の別の好適な助剤およびキャリアー物質を見出すことができるだろう。
【0050】
好ましくは、本発明の組成物は、固体または液体の剤形、特に散剤、粉薬、顆粒剤、錠剤、特にフィルムコート錠、トローチ、サシェ剤(Sachets)、カシェ剤、糖剤、カプセル剤、軟膏、クリーム、ヒドロゲル、パスタ剤、パッチ剤(Pflaster)、液剤、乳剤(特に水中油型の)、懸濁液、例えば、ローション剤、注射および注入調製物として製剤化される。
【0051】
調製の方法に応じて、本発明の医薬調合物は、場合により、特に選択された量で化合物を含む。通常、本発明の調合物は、これまでに知られた。場合により調製に依存した量で鉄も含む。本発明の医薬組成物が作用物質としての本発明化合物を含む場合に、その量は投与単位あたり(例えば錠剤あたり)少なくとも1 mgであり、好ましくは投与単位あたり500 mg以下である。特に好ましくは、本発明の組成物は、投与単位あたり(特に錠剤あたり)全体として10 mg〜500 mgの化合物を含み、錠剤形態での投与には10 mg〜500 mgの量が好ましい。非経口で使用される溶液で投与する場合に、本発明化合物の濃度は少なくとも0.1 mg/mlおよび好ましくは100 mg/ml以下、特に好ましくは10〜50 mg/mlである。
【0052】
新規誘導体Glu-Glu-ゲニステイン(I, X = ゲニステイン、Pep = Glu-Glu)は、例えば2つのグルタミン酸残基により、細胞のペプチド輸送系を介して、非常に効果的に細胞内に輸送される。これにより、非常に低い濃度のGlu-Glu-ゲニステインであっても生理学的効果、例えばアポトーシス(生理学的な細胞死)の誘導を引き起こすことが保証される。
【0053】
本発明を以下の実施例および図によりさらに説明するが、本発明の対象はこれらの実施例および図に限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
<実施例1> Glu-Glu-ゲニステインの抗腫瘍効果
新規誘導体Glu-Glu-ゲニステインは、2つのグルタミン酸残基により、細胞のペプチド輸送系を介して、非常に効果的に細胞内に輸送することができる。これにより、非常に低い濃度のGlu-Glu-ゲニステインであっても生理学的効果、例えばアポトーシス(生理学的な細胞死)の誘導を引き起こせることが予測される。
【0055】
目的
・新規ゲニステイン誘導体Glu-Glu-ゲニステインの改善された抗腫瘍活性を、ゲニステインと比較して、ヒト腫瘍の8つの選択された細胞株において実証する。
・予備試験において最初に、アポトーシス誘導、細胞毒性および増殖抑制のレベルについて効果を調べる。
【0056】
手順
・細胞株:
乳癌:MCF-7、MDA 435
結腸癌:SW-620、SW-480
悪性黒色腫:A-375、SK-Mel-13
皮膚扁平上皮細胞癌:SCC-12、SCC-13
・細胞を均一な増殖(対数期)が得られるまで2〜3週間前培養する。
・実施すべき実験のために、細胞を6ウェルプレートに播種する(1ウェルあたりそれぞれ200,000細胞)。24時間後に処理を行う。
・予備実験において、最初に、5つの異なる濃度のGlu-Glu-ゲニステインおよびゲニステインを使用する。増殖および細胞死における作用を顕微鏡で評価する。観察時間:4h、8h、24h、48h、72h、6日目。コンフルエンスおよび剥がれた細胞の割合を増殖プロトコールにおいて記録する。この増殖プロトコールに基づいて2つの好適な濃度を選択する。
・場合により、変更した条件を用いる第二のパイロット実験を行う。
・アポトーシスの測定:播種の24時間前に、細胞に新しい培養培地を与える。決定した条件で細胞を6ウェルプレートに播種する(通常、1ウェルあたり200,000細胞)。24時間後に処理を行う。使用する濃度および処理時間は予備実験の結果に合わせる。増殖および効果を毎日少なくとも1x顕微鏡で確認し、記録する。インキュベーション時間の経過後に、6ウェルプレートの遠心分離を行い、細胞ペレットを溶解させる。抗ヒストンおよび抗DNA抗体を用いて、サンドイッチELISAを行うことにより、DNA断片化の程度を明らかにすることができる(Cell Death Detection ELISA、Roche社製)。アポトーシスは、未処理コントロールに対する相対値で表す。
・細胞毒性の測定:播種の24時間前に、細胞に新しい培養培地を与える。決定した条件で細胞を6ウェルプレートに播種する(通常、1ウェルあたり200,000細胞)。24時間後に処理を行う。使用する濃度および処理時間は予備実験の結果に合わせる。増殖および効果を毎日少なくとも1x顕微鏡で確認し、記録する。インキュベーション時間の経過後に、細胞培養上清を回収する。これにおいて、酵素的な検出方法を用いて、乳酸デヒドロゲナーゼの活性を測定する(LDH-release-assay、Roche社製)。細胞毒性は、未処理コントロールに対する相対値で表す。
・増殖アッセイ:播種の24時間前に、細胞に新しい培養培地を与える。細胞を低密度で6ウェルプレートに播種する(通常、1ウェルあたり50,000細胞)。24時間後に処理を行う。細胞増殖の測定を、処理後0、1、2、3、5、7日目の時間点に行う。細胞数の測定のために、接着した細胞を固定化し、クリスタル・バイオレットで染色する。染色強度を測光的に測定する。細胞増殖を増殖曲線で表す。
・一連の3つの実験(アポトーシス、細胞毒性および細胞増殖)全てにおいて、以下のアプローチを実施する:a)未処理のコントロール、b)ゲニステイン、濃度1、c)ゲニステイン、濃度2、d)Glu-Glu、濃度2、e)Glu-Glu-ゲニステイン、濃度1、f)Glu-Glu-ゲニステイン、濃度2。全ての実験はそれぞれ三重の値を用いて行う。一連の実験全体を1x繰り返す。
・結果をファジーシステム(Leibniz system)の数学を用いて評価し、最終報告を作成する。
【0057】
代表的な癌細胞株の使用および抗腫瘍療法のために必要な細胞の機能的カスケードの試験により、腫瘍療法の分野におけるGlu-Glu-ゲニステインの機能に関する説得力ある情報が得られる。
【0058】
<実施例2>
本発明の化合物により、改善した細胞内アベイラビリティーのために、ゲニステインより優れた血小板凝集の阻害が達成される。これはジペプチドGlu-Gluの結合により達成され、これにより、ペプチド模倣体としてのGen-Glu-Gluを、血小板の膜の特異的なオリゴペプチドトランスポーターを介して細胞内へ大量に輸送することができる。
【0059】
実験
・多血小板血漿(PRP)をDMSOに溶解した種々の濃度のゲニステインと混合する:0、25、50、100、200μM。続いて、コラーゲンが誘導する凝集を、コラーゲン1μg/mlの添加下で凝集測定により測定する。開始の有効ゲニステイン濃度(約50μM)の評価および同定。
・予め測定された開始の有効濃度、例えば、0、25、50、75μMの範囲内における、上記のようなゲニステインvs Gen-Glu-Gluの試験。コラーゲン誘導性凝集の阻害に関するGen-Glu-Gluの優位性を示す。
【0060】
第二の実験の繰り返し(ただし100倍濃度、すなわち0、2.5、5、7.5 mMの無作用のジペプチドAla-Alaを予め添加した後)。今回、ペプチドトランスポーターが過剰のAla-Alaにより遮断されるので、特異的なGen-Glu-Gluの効果の拮抗作用が示される。
【0061】
<実施例3> 本発明化合物の製造
C末端修飾:
a)異性体1:
4.TCP樹脂上における固相合成および樹脂からの分離によるBocGlu(OtBu)Glu(OtBu)OHの製造
5.HATUを用いるゲニステインの保護ジペプチドへの結合
6.tBu/Boc脱保護
7.精製。
【0062】
【化3】

【0063】
a)異性体2:
4.TCP樹脂上における固相合成および樹脂からの分離によるBocGlu(OtBu)Glu(OtBu)OHの製造
5.HATUを用いるBocゲニステインの保護ジペプチドへの結合
6.tBu/Boc脱保護
7.精製。
【0064】
【化4】

【0065】
c)異性体3:
1.樹脂での固相合成による、少なくとも1つの(OtBu)-保護側基およびFmoc-保護N末端を有する好適な長さおよび配列のペプチドの製造、およびそれに続くFmoc切断
2.エーテル結合したエタノールアミン-X-共役体の製造
3.2つの断片の結合
4.脱保護
5.精製。
【0066】
【化5】

【0067】
N末端修飾:
6.固相合成およびそれに続くFmoc切断によるHGlu(OtBu)Glu(OtBu)TCPの製造
7.Bocゲニステインおよびトリホスゲンとの反応
8.樹脂からの分離
9.tBu/Boc脱保護
10.精製。
【0068】
【化6】

【0069】
側鎖の修飾:
6.TCP樹脂におけるFmocGlu(OAll)OHの結合
7.A)樹脂上でのアリルエステルの切断、B)HATUの使用下での遊離酸基とBocゲニステインとの結合
8.A)Fmoc切断、B)BocGlu(OtBu)OHの結合
9.樹脂からの分離
10.tBu/Boc脱保護
11.精製。
【0070】
【化7】

【0071】
略語
【表2】

【0072】
<実施例4>
7, 4’-ジ-(tert-ブチルオキシカルボニルオキシ)-ヒドロキシ-3-フェニル-4H-クロメン-4-オンの製造
【0073】
【化8】

【0074】
8.1 g(29.7 mmol)のゲニステイン1のDCM溶液に、4.9 mL(2当量)のピリジンおよび13.05 g(60.7 mmol、2.1当量)のジ-tert-ブチル-ジカルボネートを添加し、混合物を室温で30分間撹拌する。溶剤を除去し、油状残渣を2回トルエンと共に蒸発させるする。得られる固体をその後高真空で乾燥する。
【0075】
収量:13 gの白色非晶質の固体の形態にある2(通常、約30%まで3回反応させたゲニステインからなる)。
【0076】
<実施例5>
5-(2-アミノエトキシ)-7-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンの製造
【0077】
【化9】

【0078】
2(8 g、17.01 mmol)、N-Boc-エタノールアミン(4.11 g 25.5 mmol、1.5当量)およびトリフェニルホスフィン(6.69 g、25.5 mmol、1.5当量)のDCM溶液を-15℃に冷却し、その後、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(5.159 g、25.5 mmol、1.5当量)のDCM溶液を5分かけて滴加する。混合物をRTにし、一晩撹拌する。反応混合物をDCMで希釈し、水で2回洗浄し、その後硫酸ナトリウムで乾燥する。溶剤を除去し、残渣を3回トルエンと共に蒸発させる。得られる残渣をできるだけ少量のDCMで溶解し、ジエチルエーテルの添加により析出させる。
【0079】
収量:3およびTris-Bocゲニステインからなる10.9 gの白色固体。
【0080】
中間生成物3(5.4 g)を10 mLのメタノールに溶解し、RTで30 mLの飽和メタノール性HCl(1.25 mol/l)で処理する。間もなく黄色の固体の沈殿が始まり、それを12時間後に吸引ろ過する。減圧下で乾燥することによりHCl塩としての純粋な4が得られ、これはさらに精製することなく変換される。
【0081】
収量:鮮やかな黄色の微粉末としての4が1.4 g。
【0082】
<実施例6>
5-(2-GluGlu-2-アミノエトキシ)-7-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オンの製造
【0083】
【化10】

【0084】
4(1.22 g、3.49 mmol)のDMF溶液に、Boc-Glu(OtBu)Glu(OtBu)OH(1.1 g、2.59 mmol、0.75当量)およびPPA(DMF中50%、2.14 mL)を添加し、N-エチルジイソプロピルアミンの添加により混合物をpH 8〜9に調節する。12時間RTで撹拌する。
【0085】
反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で3回洗浄し、その後、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥して減圧下で濃縮する。残渣をクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル7:3 → 9:1 → 純粋な酢酸エチル)により精製する。
【0086】
収量:白色の泡状物質として1.04 g(34%)の5。
【0087】
中間生成物5(1.04 g)を5 mLの酢酸エチルで懸濁し、20 mLのエーテルにおけるHCl(2M)と混合すると、混合物が黄色になり、そして透明になる。6時間後、析出した生成物を吸引ろ過し、酢酸エチルおよびジエチルエーテルで洗浄し、その後、高真空で乾燥する。
【0088】
収量:黄色の粉末としてのクロマトグラフ的に純粋な6が820 mg。
【0089】
415 mgの粗製生成物を水に溶解し、凍結乾燥する。
【0090】
収量:黄色の泡状物質の形態にある291 mgの6。
【0091】
<実施例7 生物学的試験>
試験の説明
物質
以下の5つのゲニステイン-Glu-Glu共役体をそれぞれ調べた:
・ゲニステイン-Glu-Gluカルバメート、ゲニステインのC7位におけるOH基を介してC末端が結合する(以下、C1)
・ゲニステイン-Glu-Gluと連結したエーテル、N末端での結合、連結としてのメチル基、ゲニステインのC5位におけるOH基を介しての結合(以下、L2)
・ゲニステイン-Glu-Gluエーテル、C末端がゲニステインのC5位におけるOH基を介して結合(以下、A2)
・ゲニステイン-Gluと連結したエーテル、N末端での結合、C5位におけるOH基を介しての結合(以下、L1)
・ゲニステイン-Gluエーテル、C末端での結合、ゲニステインのC5位におけるOH基を介して結合(以下、A1)
・天然のゲニステイン
・天然ゲニステイン/Glu-Gluの混合物。
【0092】
材料
使用される物質ゲニステイン、Glu-Glu、DMSO、Ala-AlaはSigma-Aldrich社(ミュンヘン)から入手する。測定にはBio/Data Corporation社のPlatelet Aggregation Profiler Model PAP-8E(デジタル曲線作成がコンピューター化された8チャンネルのアグリゴメーター)を使用した。
【0093】
解析前
大径静脈(grosskalibriger Vene)から緩衝化されていないクエン酸塩10%に採血を行った後に、そのように得られた全血について約1500 rpmで10分間遠心分離を行った。それにより得られた多血小板血漿(PRP)を45分間室温で静置する。同時に、同一のサンプルから通常の遠心分離によって、それぞれのブランク値を作成するための低血小板血漿(Plaettchenarmes)血漿を得る。測定には、0.25 mlの容量を有するキュベットを使用する。
【0094】
ゲニステインを含む試験すべき物質および使用するペプチドAla-AlaおよびGlu-Gluについて、ゲニステインおよび試験される結合生成物はDMSOに、Glu-GluおよびAla-AlaはH2Oにおいて、1 mlあたり1 mgの比率でストックソリューションを調製する。
【0095】
予備実験
いくつかの予備実験において、特に、使用した濃度範囲において、1μg/mlコラーゲンの添加後に天然サンプルの通常の凝集挙動(87%の血小板凝集、下記を参照)が、そしてDMSOの添加後に不反応の挙動が示される。クエン酸塩血液サンプルにおいて、230,000μlの血小板を測定した。
【0096】
測定
最初に、天然のゲニステインの凝集阻害作用を測定した:リファレンス(添加なし)において90%の凝集が確認され、これは予備実験とも一致した。ゲニステイン50μMの添加後には82%の血小板の凝集が、ゲニステイン100μMの添加においては50%の凝集が確認され、そして200μMの濃度では血小板凝集のほぼ完全な阻害が確認された。
【0097】
基本的に、結果は自身の以前の研究とも、文献に記載される効果とも一致する。比較可能性の問題については、その際にすでに見解を示している。
【0098】
我々自身の基準においては、今回、50μMの濃度が開始の有効作用濃度として予測される。従って、我々はコラーゲン誘導性の凝集(1μg/mlに対して)に関して5つのゲニステイン誘導体の試験を、50μMの濃度で行った。以下の結果が得られた:
【0099】
【表3】

【0100】
天然ゲニステイン(FA 82%)と比較して、試験した全ての物質の顕著により際立った凝集阻害作用の他に、時間の経過における明らかな解凝集(Desaggreagation)が顕著であり、これは曲線の回帰性またはMAおよびFA間の相違によって認められる。さらに、凝集の速度、いわゆる「スロープ(Slope)」が、特にL2やC1により、天然のゲニステインと比較して明らかに減少する。
【0101】
比較のために、凝集の測定を、ゲニステイン50μMおよび glu-glu 150μMの一種の混合物の添加後に行った。測定は直接行い、すなわち、測定方法にすでに含まれていない限り関連のプレ・インキュベーションなしで行った。ここではまた、MA 56%またはFA 44%という、ゲニステインより優れた効果が確認された(ゲニステイン MA 85%、FA 82%)。
【0102】
【表4】

【0103】
観察された現象が、血小板膜上の特異的なペプチドトランスポーターを介する膜輸送の改善と関連するという仮説を裏付けるために、凝集の新たな測定を、L2の影響下で、ペプチドトランスポーターの基質として機能する10倍モーラー過剰の無作用ジペプチドAla-Alaの添加後に行った(すなわち、L2 50μM/Ala-Ala 500μM):前に観察されたほぼ完全な凝集阻害が部分的に拮抗された。
【0104】
他の試験
さらに、我々は物質L2の凝集阻害特性を調べた。最初に、上昇させた濃度のコラーゲンの添加後50μMの濃度のL2の添加後に凝集を調べた(観察された効果は可逆的?):
【0105】
【表5】

【0106】
種々の濃度のL2、1μg/mlの濃度のコラーゲンの添加後のコラーゲン誘導性の凝集(用量-作用相関?):
【0107】
【表6】

【0108】
ADP 2μM、コラーゲン1μM、リストセチン0.5、1.0、1.5 mg/ml、アドレナリン8μM、アラキドン酸0.5μMの添加後にL2 50μM
【0109】
【表7】

【0110】
<文献>
(1) Gottstein et al, British Journal of Nutrition, (2003), 89, 607-615
(2) Jacobson et al, Adv Exp Med Biol, (2002), 505, 163-71
(3) Mruk et al, Circulation (2002), 101, 324-8
(4) Guerrero et al, Journal of Thrombosis and Haemostasis, (2005),3,369-76
(5) Nakashima et al, Molecular Pharmacology, (1991), 39, 475-80
(6) Beretz et al, Agents Actions (1982), 12, 382-87
(7) Pignatelli et al, Blood, (1998), 91, 484-90
(8) Iuliano et al, European Journal of Biochemistry, (1994), 221, 695-704

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
(I)X-Pep
[式中、
- Xはイソフラボンまたはイソフラボン-グリコシドであり、そして
- Pepはアミノ酸または2〜5個のアミノ酸を有するペプチドもしくはペプチド誘導体であり、
- XとPepの間に直接の共有結合が存在するか、または好適なリンカー系(例えばエチレングリコール、エタノールアミン、より高級なその同属体、または対応のポリエチレングリコール誘導体)により結合が形成される]
で表される化合物、およびこれらの化合物の薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
イソフラボンまたはイソフラボン-グリコシドが2〜4個のOH基を含有し、酢酸、マロン酸、桂皮酸、クマル酸、コーヒー酸、フェルラ酸で部分的にアシル化されたモノサッカライドを含むモノサッカライド、または酢酸、マロン酸、桂皮酸、クマル酸、コーヒー酸、フェルラ酸で部分的にアシル化されたジサッカライドを含むジサッカライド、メチルまたはスルフェートで部分的に置換される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xがイソフラボンまたはイソフラボン-グリコシド、一般式(II):
【化1】

[R1、R2、R3、R4、R5およびR6基はそれぞれ独立して以下:水素、ヒドロキシ、メトキシまたはグリコシド(Glc)を意味することができ、化合物Iにおける基1〜6のうちの1つがPep基(上記の意味を有する)で、好ましくは連結位置R2およびR5で置換される]
で表される物質からなるか、または前記物質の薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物から形成される、請求項1または2のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項4】
グリコシドGlcが一般式III
【化2】

[式中、RはR1、R2、R3、R4、R5およびR6とは独立して、水素、アセチルおよびマロニルからなる群から選択される]
を有する、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
イソフラボンまたはイソフラボン-グリコシドがイソフラボン、ダイゼイン、ゲニステイン、プルネチン、ビオカニンA、オロボール、サンタル、グリシテイン、プラテンセイン、ホルモノネチン、ゲニスチン、6”-O-マロニルゲニスチン、6”-O-アセチルゲニスチン、ダイジン、6”-O-マロニルダイジン、6”-O-アセチルダイジン、グリシチン、オノニンおよびシスソトリンからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項6】
イソフラボンがゲニステインである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
Xが以下の式IV〜VII:
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

のうちの1つである、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
ペプチドまたはペプチド誘導体が2〜5個のアミノ酸を含み、そして少なくとも2個のアミノ酸がpH=7で負に帯電する側鎖を含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項9】
ペプチドまたはペプチド誘導体が配列DD、EE、DE、EDを有するペプチドの群から選択されるジペプチドであり、D=アスパラギン酸であり、E=グルタミン酸である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項10】
ペプチドまたはペプチド誘導体が以下の配列:
DDDDD, DDDDE, DDDED, DDDEE, DDEDD, DDEDE, DDEED, DDEEE, DEDDD, DEDDE, DEDED, DEDEE, DEEDD, DEEDE, DEEED, DEEEE, EDDDD, EDDDE, EDDED, EDDEE, EDEDD, EDEDE, EDEED, EDEEE, EEDDD, EEDDE, EEDED, EEDEE, EEEDD, EEEDE, EEEED, EEEEE,
DDDD, DDDE, DDED, DDEE, DEDD, DEDE, DEED, DEEE, EDDD, EDDE, EDED, EDEE, EEDD, EEDE, EEED, EEEE,
DDD, DDE, DED, DEE, EDD, EDE, EED, EEE;
[D=アスパラギン酸であり、E=グルタミン酸である]
を有するペプチドの群から選択される、請求項1〜7のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項11】
イソフラボンがゲニステインであり、ペプチドまたはペプチド誘導体が配列EEを有し、そしてE=グルタミン酸である、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
共有結合がカルバメート-、エーテル-またはエステル結合として形成されることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つに記載される化合物を含む医薬組成物。
【請求項14】
以下の群:
心血管疾患、血小板凝集の亢進に関連する疾患、代謝性疾患、骨疾患または癌疾患、
から選択される医学的適応症の治療および/または予防のための医薬組成物の製造のための、請求項1〜13のいずれか1つに記載される化合物の使用。
【請求項15】
医学的適応症が以下の群:
白血病、リンパ腫、黒色腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、頭頚部扁平上皮癌、大腸癌、
から選択される、請求項14記載の使用。
【請求項16】
医学的適応症が以下の群:
高血圧、高コレステロール血症、心筋梗塞、動脈硬化性血管疾患、卒中発作、血小板凝集の増加により引き起こされる疾患、糖尿病、高ホモシステイン血症、悪性腫瘍、骨粗鬆症、
から選択される、請求項14記載の使用。
【請求項17】
食品添加剤としての、請求項1〜12のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項18】
発酵槽またはバイオリアクターにおける細胞の保護のための添加剤としての、請求項1〜12のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項19】
動物用飼料としての、請求項1〜12のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項20】
農薬としての、請求項1〜12のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項21】
以下の段階:
a)イソフラボン、ダイゼイン、ゲニステイン、プルネチン、ビオカニンA、オロボール、サンタル、グリシテイン、プラテンセイン、ホルモノネチン、ゲニスチン、6”-O-マロニルゲニスチン、6”-O-アセチルゲニスチン、ダイジン、6”-O-マロニルダイジン、6”-O-アセチルダイジン、グリシチン、オノニンおよびシスソトリンから成る群から選択される作用物質および/または該作用物質の薬学的に許容可能な溶媒和物もしくは塩を用意すること、ここで、作用物質は場合により保護された側基を有する、
b)アミノ酸または2〜5アミノ酸長を有するペプチドもしくはペプチド誘導体を用意するか、またはアミノ酸および/または該ペプチドまたはアミノ酸の溶媒和物もしくは塩を用意すること、ここで、少なくとも1つのアミノ酸が保護された側基を有し、そしてペプチドまたはアミノ酸のN末端が保護され、および/またはペプチドもしくはアミノ酸のC末端が固相に連結される、
c)好ましくはカルボキシル基またはヒドロキシル基の活性化のために、a)の物質をb)の物質および活性化剤と混合すること、
を含む、式Iの化合物の製造。

【公表番号】特表2010−515695(P2010−515695A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545063(P2009−545063)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000040
【国際公開番号】WO2008/083678
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(508112232)トロヤノン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】