説明

イソブチレン型モノマーの交互コポリマーを含有する水系フィルム形成組成物

【課題】流動制御添加剤として使用するためのイソブチレン型モノマーを含むコポリマーを提供すること。
【解決手段】反応性官能基を含むポリマー性バインダー、該ポリマー性バインダーの官能基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する架橋剤、ならびにドナーモノマー由来およびアクセプターモノマー由来の交互残基を含む少なくとも30モル%の残基を含むコポリマー流動制御剤、を含む硬化性の水性フィルム形成組成物が提供される。このコポリマーは、少なくとも15モル%のイソブチレン型ドナーモノマーを含む。着色したフィルム形成組成物から沈積したベースコート、および該ベースコート上に適用された透明トップコートを含む多成分複合コーティング組成物もまた、提供される。このトップコートは、上記のフィルム形成組成物から沈積される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.発明の分野)
本発明は、一般に、水系(waterborne)フィルム形成組成物におけるエチレン性不飽和モノマーのコポリマーの使用に関する。さらに具体的には、本発明は、イソブチレン型モノマーを含むコポリマーを含む水系フィルム形成組成物コポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の説明)
容易には同種重合しないモノマーは互いと急速な共重合反応をし得ることが、しばしば観察される。最も代表的な状況は、強力な電子供与モノマーが、強力な電子受容モノマーと混ぜ合わされる場合に生じ、規則的な交互コポリマーがフリーラジカル開始後に生じる。無水マレイン酸は、強力な電子受容モノマーの広く使用される例である。スチレンおよびビニルエーテルは、電子供与モノマーの代表的な例である。無水マレイン酸−スチレンのような系は、電荷移動錯体を形成することが公知であり、開始前に交互配列にてモノマーを配置する傾向がある。フリーラジカル開始剤の適用は、交互コポリマーを形成するために共に順番に並んだモノマーを「結合する」(Cowie、Alternating Copolymers、Plenum、New York(1985))。
【0003】
米国特許第2,378,629号(Hanford)および同第4,151,336号(Sackmannら)は、中等度な電子供与モノマー(例えば、ジイソブチレン)が、強力な電子受容モノマー(例えば、無水マレイン酸)と共重合される場合でさえも、交互コポリマーが生じることをさらに開示する。
【0004】
中等度な電子供与モノマー(例えば、イソブチレン)が中等度な電子受容モノマー(例えば、アクリル酸エステル)と共重合される場合、電子供与モノマーモノマーの乏しい組み込みが生じる。例えば、イソブチレン(IB)およびアクリルモノマーのフリーラジカル共重合は、多くて20〜30%のIBを含みかつIBの分解性鎖移動に起因して低分子量を有する、コポリマーを生じた。IBのこのような共重合の例は、米国特許第2,411,599号(Sparksら)および同第2,531,196号(Brubakerら)に開示されている。
【0005】
アクリルモノマーおよびIB系モノマーのコポリマーを作製するための能力は、当該分野において所望される。例えば、多くの特許は、コーティング組成物においてIB含有ポリマーを使用するための潜在能力を現す。例えば、米国特許第6,114,489号(Vicariら)は、官能性アクリル樹脂結合剤;アクリル結合剤の官能性と反応し得る共反応剤;デガッサー;ならびに高分鎖ポリエステル流動平滑化剤(flow and leveling agent)を含むコーティング組成物を開示する。IBは、長いモノマーリストの一部として、アクリルバインダーにおいて使用するための潜在的共モノマーとして示唆される。米国特許第5,552,487号(Clarkら)は、反応官能基を有するコポリマーおよびコポリマーの反応官能基と反応し得る適切な架橋剤を含む粉末コーティング組成物を開示する。このコポリマーは、官能性モノマーを他のモノマーと共重合することによって生成され、イソブチレンは、潜在的な共モノマーとして列挙された多くのうちの一つである。イソブチレン系共モノマーを使用する可能性を現す多くの特許のうち2つだけは、本明細書中で参照されるが、実際には、だれもこのようなコポリマーの実施例を示しも開示もしない。
【0006】
イソブチレン系モノマー含有コポリマーの例をほとんど見出すことができないという事実は、イソブチレンがアクリルモノマーおよびメタクリルモノマーと一般的に非反応性であることに原因がある。モノマーの反応性比は、Alfrey−Price Q−e値(Robert Z.Greenley,Polymer Handbook,第14版,Brandrup,ImmergutおよびGulke編,Wiley & Sons,New York,NY,pp.309−319(1999))を使用して計算できる。これらの計算は、式IおよびIIを使用して実行され得る:
I r=(Q/Q)exp{−e(e−e)}
II r=(Q/Q)exp{−e(e−e)}
ここで、rおよびrは、モノマー1および2の各反応性比であり、そしてQおよびQならびにeおよびeは、各モノマーの各反応性値および極性値である(Odian,Principals of Polymerization,第3版,Wiley−Interscience,New York,NY,Chapter 6,pp.452−467および489−491(1991))。表1は、イソブチレンに対する選択モノマーの算出反応性比を示す:
(表1)
モノマー r(イソブチレン) r
アクリル酸メチル 0.10 13.67
メタクリル酸グリシジル 0.08 34.17
メタクリル酸 0.09 39.71。
【0007】
高分子化学の当業者が理解できるように、rが0の近くであり、そしてrが10以上の値を有するとき、モノマー2は、両方のモノマーに対して反応性であり、そしてモノマー1は、いずれのモノマーに対しても反応性ではない。言い換えれば、相当な量の両モノマーを有するコポリマーを調製することは、非常に困難である。イソブチレン系モノマー含有コポリマーを含むコーティング組成物の例がほとんど見出すことができないことは、これらのモノマーが共重合する傾向にないので、驚くべきことではない。
【0008】
モノマー(例えば、プロピレン、イソブチレン、およびスチレン)と共重合することによって生成されるアクリル酸エステルまたはアクリロニトリルコポリマーのいくつかの例は、Lewis酸(例えば、アルキルアルミニウムハロゲン化物)の存在下で達成され、1:1の交互コポリマーを生じた。Lewis酸対アクリル酸エステルの濃度比が0.9であり、そしてIB濃度がアクリルエステルの濃度より大きい場合に、交互コポリマーは、得られた(非特許文献1)。金属ハロゲン化物は、モノマーとの錯体形成により、モノマーの反応性を変える。電子供与モノマー−電子受容モノマー−金属ハロゲン化物錯体は、交互コポリマーを導く(Mashitaら、Polymer、第36巻、番号15、2973〜2982頁(1995)。
【0009】
IBおよびアクリル酸メチル(MA)のコポリマーはまた、開始系としてエチルアルミニウムセスキクロライドおよび2−メチルペンタノイルペルオキシドを使用することにより、得られた。得られたコポリマーは、EtAlClの存在下(MAに対して10モル%)にて、低い(Kuntzら、J.Polym.Sci.Polym.Chem.,16,1747(1978))かまたは高い(Florjanczykら、Makromol.Chem.,183,1081(1982))アイソタクチシティーを有する交互構造を有していた。
【0010】
アクリル酸エステルとのIBコポリマーを製造する他の方法には、ハロゲン化アルキルホウ素が関与しており、これは、交互コポリマーを形成する際に、ハロゲン化アルキルアルミニウムよりもずっと活性が高いことが見出された。得られるコポリマーは、エラストマーであり、これは、引っ張り強度および熱分解温度が高く、特に、高温において、オイル耐性が良好である(Mashitaら、Polymer,36,2983(1995))。
【0011】
Matyjaszewskiらの米国特許第5,807,937号は、原子移動ラジカル重合(ATRP)プロセスを使用してイソブチレンおよびアクリル酸メチルの交互コポリマーを製造する方法を開示している。この方法には、その重合プロセスの錯体レドックス開始段階および生長段階を実行するために、配位子(例えば、2,2’−ビピリジル)と共に、適当なATRP開始剤(例えば、臭化1−フェニルエチル)および適当な遷移金属塩(例えば、CuBr)を使用する必要がある。
【0012】
IBおよびアクリル酸エステルの量が比較的に高い(≧30mol%)コポリマーは、Lewis酸またはATRP開始系を使用したとき、フリーラジカル重合によってのみ得られた。このようなプロセスから生じる重合体には、その遷移金属塩および/またはLewis酸残渣を除去してその重合体を商業的に有用にするために、費用および時間のかかる洗浄が必要である。
【0013】
コーティング組成物(例えば、液体コーティングおよび粉末コーティング)は、広範な種々の用途(例えば、自動車、電気器具、および産業市場を含む)において使用される。コーティングは、それらが全体にわたって適用される基材に装飾品質および/または腐食保護を提供するために、しばしば使用される。対応して、適用されたコーティングは、代表的に、少なくとも連続的な欠陥を含まない表面を有することを必要とされる。自動車産業は、自動車透明トップコート組成物を用いる場合には、使用されるコーティングの滑らかさに関して特に厳しい要件を有する。
【0014】
コーティング組成物は、代表的に、硬化されたコーティングの外観を改善するために、流動制御剤(流動改変剤ともいう)を含む。流動制御剤は、界面活性特性を有し、そしてその硬化サイクルの間に、塗布されたコーティングの流動およびレベリングを変更することによって、硬化されたコーティングの外観を改善すると考えられる。官能基(例えば、カルボン酸基および/またはヒドロキシル基)を含む流動制御剤が公知であり、そして外観を強化することに加えて、コーティングが塗布される基材へのコーティングの接着を改善し得、そして/または引き続いて適用されたコーティングの接着もしくは適合性を改善し得る。
【0015】
コーティング組成物は、代表的に、オニウム特性(例えば、外観および/または耐腐食性)を最小のフィルム厚で提供することを要求される。例えば、自動車産業において、透明トップコートは、代表的に、50ミクロン(2ミル)以下の硬化されたフィルム厚を有することを要求される。より薄いフィルム厚で塗布されるコーティングに関連する利点としては、例えば、材料費の減少およびコーティングしたウェアの重量増加の減少(これは、航空機産業において特に所望される)が挙げられる。しかし、塗布されたコーティング組成物のフィルムが構築されるにつれ、得られた硬化されたコーティングの外観は、代表的に、測定されたより低い光沢値によって実証されるように、損なわれる。
【0016】
より低いフィルム構築のコーティングの適用に加えて、近年における調査および開発は、コーティング組成物の環境的衝撃、特に、それらの使用の間、揮発性器官の空気中への関連する流出を減少することに関した。従って、より低い揮発性有機物含有量(VOC)(例えば、水系コーティングおよび高固体コーティング)を有するコーティングに対する興味が、増加している。適用されるコーティングの流動およびレベリングを高め得る溶媒の非存在において、流動制御剤は、水系(waterborne)フィルム形成組成物の大部分において重要な成分である。
【0017】
コポリマーと混ぜられたルイス酸および/または遷移金属を含むコポリマー組成物は、商業的に使用される場合に、例えば、コーティングにおける場合、多くの欠点を有し得る。第一に、いくつかのルイス酸および遷移金属は、有毒であり、そしてそれらが、コポリマーから浸出し、そして環境に入る場合、有害な環境的効果を有する。第二に、コーティング適用において、ルイス酸および遷移金属は、UV光に暴露される場合、乏しい安定性を導き得か、または単純にコーティングを変色させる。他の適用において、ルイス酸および遷移金属は、処方物における他の成分と反応し得、所望されない特性(例えば、所定の処方物についての短縮された貯蔵寿命)を生じる。
【0018】
流動制御添加剤として使用するためのイソブチレン型モノマーを含むコポリマーを提供することが、所望される。しかし、このようなコポリマーは、ルイス酸および/または遷移金属を触媒として使用しては作製されない可能性があり、そしてコーティング組成物におけるルイス酸および/または遷移金属の使用に関連するいかなる欠点をも克服するために、好ましくは、ルイス酸および/または遷移金属を実質的に含まない。
【非特許文献1】Hirookaら、J.Polym.Sci.Polym.Chem.、11、1281(1973)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
硬化可能な水性フィルム形成組成物であって、その組成物は、以下:
(a)2つ以上の反応性官能基を含むポリマー性バインダー;
(b)(a)のその反応性官能基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する硬化剤;および
(c)コポリマー流動制御剤であって、そのコポリマー流動制御剤は、少なくとも30モル%の以下:
−[DM−AM]−
の交互構造単位を有する残基を含み、ここで、DMは、ドナーモノマー由来の残基を表し、AMは、アクセプターモノマー由来の残基を表し、そのコポリマーの少なくとも15モル%が、以下の構造(I):
【化1】


を有するドナーモノマーを含み、ここで、Rは、直鎖または分枝鎖のC〜Cアルキルであり、Rは、メチル、直鎖、環状または分枝鎖のC〜C20アルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルからなる群より選択される、コポリマー流動制御剤、
を含む、組成物。
(項目2)
上記コポリマーの少なくとも15モル%が、アクセプターモノマーとしてアクリルモノマーを含む、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目3)
上記コポリマーが、少なくとも1つの塩の基または塩形成基を含む、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目4)
上記コポリマーが、ヒドロキシル官能基を含む、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目5)
上記コポリマーが、マレエートモノマーセグメントおよびフマレートモノマーセグメントを実質的に含まない、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目6)
上記コポリマー組成物が、ルイス酸および遷移金属を実質的に含まない、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目7)
上記ドナーモノマーが、必要に応じて、スチレン、置換したスチレン、メチルスチレン、置換したスチレン、ビニルエーテル、およびビニルピリジンと組み合わせて、イソブチレン、ジイソブチレン、ジペンテン、およびイソプレノールからなる群から選択される1つ以上である、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目8)
上記構造Iのドナーモノマーが、イソブチレン、ジイソブチレン、ジペンテン、イソプレノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目9)
上記構造Iドナーモノマーの基Rが、ヒドロキシ、エポキシ、カルボン酸、エーテル、カルバメート、およびアミドからなる群から選択される1つ以上の官能基を含む、項目1に記載のフィルム形成組成物。
(項目10)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記アクセプターモノマーが、以下の構造(II):
【化2】


によって記載される1つ以上を含み、ここで、Wは、−CN、−X、および−C(=O)−Yからなる群より選択され、ここで、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NR、および−ORからなる群より選択され、Rは、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、および直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキルオールからなる群より選択され、Rは、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(カプロラクトン)、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、アルキルオール、アリール、アルカリールおよびアラルキル、直鎖または分枝鎖のC〜C20のフルオロアルキル、フルオロアリール、フルオロアルカリル、およびフルオロアラルキル、ならびにポリシロキサンラジカルからなる群より選択され、そしてRは、二価の直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル連結基であり、そしてXは、ハライドである、組成物。
(項目11)
項目2に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記アクリルモノマーは、以下の構造(III):
【化3】


によって記載される1つ以上であり、ここで、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NR、および−ORからなる群より選択され、Rは、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、および直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキルオールからなる群より選択され、Rは、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、アルキルオール、アリール、アルカリールおよびアラルキル、直鎖または分枝鎖のC〜C20のフルオロアルキル、フルオロアリールおよびフルオロアラルキル、ならびにポリシロキサンラジカルからなる群より選択され、そしてRは、二価の直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル連結基である、組成物。
(項目12)
項目11に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、Yは、ヒドロキシ、アミド、オキサゾリン、アセトアセテート、ブロックイソシアネート、カルバメート、およびアミンからなる群より選択される少なくとも1つの官能基を含む、フィルム形成組成物。
(項目13)
上記塩の基が、カルボン酸塩、アミン塩、4級アンモニウム、4級ホスホニウム、および3級スルホニウムからなるクラスから選択される、項目3に記載のフィルム形成組成物。
(項目14)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記コポリマーは、250〜100,000の分子量を有する、組成物。
(項目15)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記コポリマーは、4未満の多分散性指数を有する、組成物。
(項目16)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記交互構造単位は、少なくとも50モル%のコポリマーを含む、組成物。
(項目17)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記アクセプターモノマーは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリルアミド、クロロトリフルオロエチレン、グリシジルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、およびn−ブトキシメチルアクリルアミドからなる群より選択される1つ以上である、組成物。
(項目18)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記コポリマーは、以下の一般式VII:
【化4】


の他のエチレン性不飽和モノマーから誘導される1つ以上の残基を含み、ここで、R、RおよびRは、独立して、H、CF、1〜20個の炭素原子の直鎖または分枝鎖のアルキル、アリール、2〜10個の炭素原子の不飽和の直鎖または分枝鎖のアルケニルまたはアルキニル、ハロゲンで置換された2〜6個の炭素原子の不飽和の直鎖または分枝鎖のアルケニル、C〜Cシクロアルキル、ヘテロシクリルおよびフェニルからなる群から選択され、Rは、H、C〜Cアルキル、およびCOOR15からなる群から選択され、ここで、R15は、H、アルカリ金属、C〜Cアルキル基、グリシジルおよびアリールからなる群から選択される、組成物。
(項目19)
上記他のエチレン性不飽和モノマーが、メタクリルモノマーおよびアリルモノマーからなる群から選択される1つ以上である、項目18に記載のフィルム形成組成物。
(項目20)
項目1に記載のフィルム形成組成物であって、成分(a)および(b)は、実質的に疎水性であり、ポリマー微粒子を含む水性分散体として調製され、その微粒子は、高せん断条件下で成分(a)および(b)を一緒に混合することによって調製され、ここで、そのフィルム形成組成物が、周囲の温度において、ほぼ連続したフィルムを形成し得る、組成物。
(項目21)
上記ポリマーバインダー(a)の官能基が、ヒドロキシル、カーバメート、ブロックイソシアネート、1級アミン、2級アミン、アミド、尿素、ウレタン、ビニルおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目20に記載のフィルム形成組成物。
(項目22)
項目20に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記ポリマーバインダー(a)は、カルバメート官能基を含む、組成物。
(項目23)
項目20に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記ポリマーバインダー(a)は、以下の反応物:
(1)後に塩基で少なくとも部分的に中和されて、カルボン酸塩の基を形成する、少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和モノマー;および
(2)酸官能基を含まない、少なくとも1つの重合可能な官能基含有エチレン性不飽和モノマー、
の反応生成物を含む、組成物。
(項目24)
反応物(1)が、カルボン酸基含有エチレン性不飽和モノマーを含む、項目23に記載のフィルム形成組成物。
(項目25)
反応物(1)が、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目24に記載のフィルム形成組成物。
(項目26)
反応物(1)が、50mgKOH/gまでの酸価を提供するのに十分な量で上記ポリマーバインダー(a)中に存在する、項目23に記載のフィルム形成組成物。
(項目27)
項目23に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、反応物(2)は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1個のヒドロキシアルキル官能性モノマーを含む、組成物。
(項目28)
反応物(2)が、エチレン性不飽和のβ−ヒドロキシエステル官能性モノマーを含む、項目23に記載のフィルム形成組成物。
(項目29)
項目28に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、エチレン性不飽和のβ−ヒドロキシエステル官能性モノマーは、以下:
(1)エチレン性不飽和エポキシ官能性モノマーおよび少なくとも5個の炭素原子を有する飽和カルボン酸;および
(2)エチレン性不飽和酸官能性モノマーおよびそのエチレン性不飽和酸官能性モノマーと重合可能でない少なくとも5個の炭素原子を含むエポキシ化合物、
からなる群から選択される反応物の反応生成物を含む、組成物。
(項目30)
上記ポリマーバインダー(a)が形成される上記反応物が、反応物(3)として、(1)および(2)とは異なる少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和モノマーをさらに含む、項目23に記載のフィルム形成組成物。
(項目31)
反応物(3)が、ビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目30に記載のフィルム形成組成物。
(項目32)
上記ポリマーバインダー(a)の酸価が、0〜50mgKOH/gの範囲である、項目23に記載のフィルム形成組成物。
(項目33)
上記ポリマーバインダー(a)が、上記分散体の全樹脂固体重量に基づいて、55〜99重量%の範囲の量で分散体中に存在する、項目23に記載のフィルム形成組成物。
(項目34)
上記架橋剤(b)が、ブロックイソシアネート、アミノプラスト樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目20に記載のフィルム形成組成物。
(項目35)
上記架橋剤(b)が、3,5−ジメチルピラゾールで可逆的にブロックされた1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートである、項目34に記載のフィルム形成組成物。
(項目36)
上記架橋剤(b)が、上記分散体の全樹脂固体重量に基づいて、1〜45重量%の範囲の量で分散体中に存在する、項目20に記載のフィルム形成組成物。
(項目37)
少なくとも1つの親水性架橋剤をさらに含む、項目20に記載のフィルム形成組成物。
(項目38)
項目37に記載のフィルム形成組成物であって、ここで、上記親水性架橋剤が、親水性修飾したブロックポリイソシアネート、アミノプラスト樹脂、トリカルバモイルトリアジン化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目37に記載のフィルム形成組成物。
(項目39)
上記親水性架橋剤が、上記組成物中に存在する樹脂固体の全重量に基づいて、70重量%までの量で、フィルム形成組成物中に存在する、項目37に記載のフィルム形成組成物。
(項目40)
多成分複合コーティング組成物であって、その組成物は着色したフィルム形成組成物から沈積したベースコートおよびそのベースコート上に塗布された透明トップコート組成物を含み、その透明トップコートは、有機溶媒を実質的に含まないフィルム形成組成物から沈積され、そのトップコートフィルム形成組成物は、硬化可能な水性フィルム形成組成物を含み、その組成物は、以下:
(a)2つ以上の反応性官能基を含むポリマー性バインダー;
(b)(a)のその反応性官能基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する硬化剤;および
(c)コポリマー流動制御剤であって、そのコポリマー流動制御剤は、少なくとも30モル%の以下:
−[DM−AM]−
の交互構造単位を有する残基を含み、ここで、DMは、ドナーモノマー由来の残基を表し、AMは、アクセプターモノマー由来の残基を表し、そのコポリマーの少なくとも15モル%が、以下の構造(I):
【化5】


を有するドナーモノマーを含み、ここで、Rは、直鎖または分枝鎖のC〜Cアルキルであり、Rは、メチル、直鎖、環状または分枝鎖のC〜C20アルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルからなる群より選択される、コポリマー流動制御剤、
を含む、多成分複合コーティング組成物。
(項目41)
上記コポリマーの少なくとも15モル%が、アクセプターモノマーとしてアクリルモノマーを含む、項目40に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目42)
上記コポリマーが、少なくとも1つの塩の基または塩形成基を含む、項目40に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目43)
上記コポリマーが、ヒドロキシル官能基を含む、項目40に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目44)
上記コポリマーが、マレエートモノマーセグメントおよびフマレートモノマーセグメントを実質的に含まない、項目40に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目45)
上記コポリマー組成物が、ルイス酸および遷移金属を実質的に含まない、項目40に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目46)
上記ドナーモノマーが、必要に応じて、スチレン、置換したスチレン、メチルスチレン、置換したスチレン、ビニルエーテル、およびビニルピリジンと組み合わせて、イソブチレン、ジイソブチレン、ジペンテン、およびイソプレノールからなる群から選択される1つ以上である、項目40に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目47)
上記構造Iのドナーモノマーが、イソブチレン、ジイソブチレン、ジペンテン、イソプレノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目40に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目48)
上記構造Iのドナーモノマーの基Rが、ヒドロキシ、エポキシ、カルボン酸、エーテル、カルバメート、およびアミドからなる群から選択される1つ以上の官能基を含む、項目40に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目49)
項目40に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、上記アクセプターモノマーが、以下の構造(II):
【化6】


によって記載される1つ以上を含み、ここで、Wは、−CN、−X、および−C(=O)−Yからなる群より選択され、ここで、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NR、および−ORからなる群より選択され、Rは、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、および直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキルオールからなる群より選択され、Rは、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(カプロラクトン)、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、アルキルオール、アリール、アルカリールおよびアラルキル、直鎖または分枝鎖のC〜C20のフルオロアルキル、フルオロアリール、フルオロアルカリルおよびフルオロアラルキル、ならびにポリシロキサンラジカルからなる群より選択され、そしてRは、二価の直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル連結基であり、そしてXは、ハライドである、多成分複合コーティング組成物。
(項目50)
項目41に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、上記アクリルモノマーは、以下の構造(III):
【化7】


によって記載される1つ以上のものであり、ここで、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NR、および−ORからなる群より選択され、Rは、H、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、および直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキルオールからなる群より選択され、Rは、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル、アルキルオール、アリール、アルカリールおよびアラルキル、直鎖または分枝鎖のC〜C20のフルオロアルキル、フルオロアリールおよびフルオロアラルキル、ならびにポリシロキサンラジカルからなる群より選択され、そしてRは、二価の直鎖または分枝鎖のC〜C20のアルキル連結基である、多成分複合コーティング組成物。
(項目51)
項目50に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、Yは、ヒドロキシ、アミド、オキサゾリン、アセトアセテート、ブロックイソシアネート、カルバメート、およびアミンからなる群より選択される少なくとも1つの官能基を含む、多成分複合コーティング組成物。
(項目52)
上記塩の基が、カルボン酸塩、アミン塩、4級アンモニウム、4級ホスホニウム、および3級スルホニウムからなるクラスから選択される、項目42に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目53)
項目40に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、上記コポリマーは、250〜100,000の分子量を有する、多成分複合コーティング組成物。
(項目54)
項目40に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、上記コポリマーは、4未満の多分散性指数を有する、多成分複合コーティング組成物。
(項目55)
項目40に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、上記交互構造単位は、少なくとも50モル%のコポリマーを含む、多成分複合コーティング組成物。
(項目56)
項目40に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、上記アクセプターモノマーは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリルアミド、クロロトリフルオロエチレン、グリシジルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、およびn−ブトキシメチルアクリルアミドからなる群より選択される1つ以上である、多成分複合コーティング組成物。
(項目57)
項目40に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、上記コポリマーは、以下の一般式VII:
【化8】


の他のエチレン性不飽和モノマーから誘導される1つ以上の残基を含み、ここで、R、RおよびRは、独立して、H、CF、1〜20個の炭素原子の直鎖または分枝鎖のアルキル、アリール、2〜10個の炭素原子の不飽和の直鎖または分枝鎖のアルケニルまたはアルキニル、ハロゲンで置換された2〜6個の炭素原子の不飽和の直鎖または分枝鎖のアルケニル、C〜Cシクロアルキル、ヘテロシクリルおよびフェニルからなる群から選択され、Rは、H、C〜Cアルキル、およびCOOR15からなる群から選択され、ここで、R15は、H、アルカリ金属、C〜Cアルキル基、グリシジルおよびアリールからなる群から選択される、多成分複合コーティング組成物。
(項目58)
上記他のエチレン性不飽和モノマーが、メタクリルモノマーおよびアリルモノマーからなる群から選択される1つ以上である、項目57に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目59)
項目40に記載の多成分複合コーティング組成物であって、成分(a)および(b)は、実質的に疎水性であり、ポリマー微粒子を含む水性分散体として調製され、その微粒子は、高せん断条件下で成分(a)および(b)を一緒に混合することによって調製され、
ここで、そのフィルム形成組成物が、周囲の温度において、ほぼ連続したフィルムを形成し得る、多成分複合コーティング組成物。
(項目60)
上記ポリマーバインダー(a)の官能基が、ヒドロキシル、カーバメート、ブロックイソシアネート、1級アミン、2級アミン、アミド、尿素、ウレタン、ビニルおよびそれらの混合物からなる群から選択される、項目59に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目61)
項目59に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、上記ポリマーバインダー(a)は、カルバメート官能基を含む、多成分複合コーティング組成物。
(項目62)
項目59に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、上記ポリマーバインダー(a)は、以下:
(1)後に塩基で少なくとも部分的に中和されて、カルボン酸塩の基を形成する、少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和モノマー;および
(2)酸官能基を含まない、少なくとも1つの重合可能な官能基含有エチレン性不飽和モノマー、
の反応生成物を含む、多成分複合コーティング組成物。
(項目63)
反応物(1)が、カルボン酸基含有エチレン性不飽和モノマーを含む、項目62に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目64)
反応物(1)が、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目63に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目65)
反応物(1)が、50mgKOH/gまでの酸価を提供するのに十分な量で上記ポリマーバインダー(a)中に存在する、項目62に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目66)
項目62に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、反応物(2)は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1個のヒドロキシアルキル官能性モノマーを含む、多成分複合コーティング組成物。
(項目67)
反応物(2)が、エチレン性不飽和のβ−ヒドロキシエステル官能性モノマーを含む、項目62に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目68)
項目67に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、エチレン性不飽和のβ−ヒドロキシエステル官能性モノマーは、以下:
(1)エチレン性不飽和エポキシ官能性モノマーおよび少なくとも5個の炭素原子を有する飽和カルボン酸;および
(2)エチレン性不飽和酸官能性モノマーおよびそのエチレン性不飽和酸官能性モノマーと重合可能でない少なくとも5個の炭素原子を含むエポキシ化合物、
からなる群から選択される反応物の反応生成物を含む、多成分複合コーティング組成物。
(項目69)
上記ポリマーバインダー(a)が形成される上記反応物が、反応物(3)として、(1)および(2)とは異なる少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和モノマーをさらに含む、項目59に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目70)
反応物(3)が、ビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目69に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目71)
上記ポリマーバインダー(a)の酸価が、0〜50mgKOH/gの範囲である、項目59に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目72)
上記ポリマーバインダー(a)が、上記分散体の全樹脂固体重量に基づいて、55〜99重量%の範囲の量で分散体中に存在する、項目59に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目73)
上記架橋剤(b)が、ブロックイソシアネート、アミノプラスト樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目59に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目74)
上記架橋剤(b)が、3,5−ジメチルピラゾールで可逆的にブロックされた1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートである、項目73に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目75)
上記架橋剤(b)が、上記分散体の全樹脂固体重量に基づいて、1〜45重量%の範囲の量で分散体中に存在する、項目59に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目76)
上記トップコートフィルム形成組成物が、少なくとも1つの親水性架橋剤をさらに含む、項目59に記載の多成分複合コーティング組成物。
(項目77)
項目76に記載の多成分複合コーティング組成物であって、ここで、上記親水性架橋剤が、親水性修飾したブロックポリイソシアネート、アミノプラスト樹脂、トリカルバモイルトリアジン化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される、多成分複合コーティング組成物。
(項目78)
上記親水性架橋剤が、上記トップコートフィルム形成組成物中に存在する樹脂固体の全重量に基づいて、70重量%までの量で、トップコートフィルム形成組成物中に存在する、項目76に記載の多成分複合コーティング組成物。
(発明の要旨)
本発明は、硬化可能な水性(水系)フィルム形成組成物に関し、この組成物は、以下を含有する:
(a)2つ以上の反応性官能基を含むポリマー結合剤;
(b)(a)の反応性官能基と反応性である少なくとも2つの官能基を有する、架橋剤;および
(c)少なくとも30mol%の以下の交互構造単位を有する残基を含む、コポリマー流動制御剤:
−[DM−AM]−
ここで、DMは、ドナーモノマーに由来の残基を示し、そしてAMは、アクセプターモノマーに由来の残基を示す。このコポリマーは、少なくとも15mol%のドナーモノマー(イソブチレン型モノマー)を含有し、これは、以下の構造(I)であり:
【0020】
【化9】

ここで、Rは、直鎖または分枝C〜Cアルキルである;Rは、1個またはそれ以上のメチル、直鎖、環状または分枝C〜C20アルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルである。特定の実施形態において、このコポリマーの少なくとも15mol%は、アクリル酸モノマーを、アクセプターモノマーとして含有する。このコポリマーは、水分散性において補助するように、少なくとも1つの塩基または塩形成基を含み得る。このコポリマー組成物は、ルイス酸および遷移金属を実質的に含まない。
【0021】
着色フィルム形成組成物から沈着したベースコートおよびこのベースコート上に塗布された透明トップコートを含む多成分複合コーティング組成物もまた、提供される。このトップコートは、上記フィルム形成組成物から沈着される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
操作実施例以外において、または他のように示されない限りは、本明細書中および特許請求の範囲において使用される、成分、反応条件などの量に言及するすべての数字または表現は、すべての場合に用語「約(およそ)」により修飾されると理解されるべきである。種々の数値範囲が、本特許出願において開示される。これらの範囲は連続的であるので、これらの数または表現は、最小値と最大値との間のどの値をも包含する。他のように明示的に示されない限り、本明細書中で特定される種々の数的範囲は、近似値である。
【0023】
本発明の硬化可能フィルム形成組成物は、当業者に公知なように、コーティング適用(特に、自動車適用)において有用な任意の水系組成物であり得る。ポリマー結合剤(b)として適切な、特に有用なポリマーフィルム形成樹脂は、アクリルポリマー、アルキドを含むポリエステル、およびポリウレタンである。一般に、これらのポリマーは、当業者に公知の任意の方法によって作製される、これらの型の任意のポリマーであり得、この方法において、ポリマーは、水分散可能または水乳化可能であり、そして好ましくは、限定された水溶性を有する。ポリマー結合剤(a)の官能基は、ヒドロキシル、カルバメート、ブロックされたイソシアネート、第一級アミン、第二級アミン、アミド、尿素、ウレタン、ビニルおよびこれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0024】
適切なアクリルポリマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸の1つ以上のアルキルエステルの、必要に応じて1つ以上の他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーと一緒になった、コポリマーが挙げられる。アクリル酸またはメタクリル酸の有用なアルキルエステルとしては、アルキル基中に1〜30個、好ましくは4〜18個の炭素原子を含む脂肪族アルキルエステルが挙げられる。非限定的な例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。適切な他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、ビニル芳香族化合物(例えば、スチレンおよびビニルトルエン);ニトリル(例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル);ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデン(例えば、塩化ビニルおよびフッ化ビニリデン);ならびにビニルエステル(例えば、酢酸ビニル)が挙げられる。
【0025】
アクリルコポリマーは、ヒドロキシル官能基を含み得、この官能基は、コポリマーを生成するために使用される反応物中に1つ以上のヒドロキシル官能性モノマーを含めることによって、このポリマー中にしばしば取り込まれる。有用なヒドロキシル官能性モノマーとしては、ヒドロキシアルキル基中に代表的には2〜4個の炭素原子を有する、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレート(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、カプロラクトンおよびヒドロキシアルキルアクリレートのヒドロキシ官能性付加物、ならびに対応するメタクリレート、そして以下に記載されるβ−ヒドロキシエステル官能性モノマー)が挙げられる。アクリルポリマーはまた、N−(アルコキシメチル)アクリルアミドおよびN−(アルコキシメチル)メタアクリルアミドを用いて調製され得る。
【0026】
β−ヒドロキシエステル官能性モノマーは、エチレン性不飽和のエポキシ官能性モノマーと約13〜約20個の炭素原子を有するカルボン酸とから、またはエチレン性不飽和の酸官能性モノマーと少なくとも5個の炭素原子を含むエポキシ化合物(これは、エチレン性不飽和の酸官能性モノマーと重合不能である)とから、調製され得る。
【0027】
β−ヒドロキシエステル官能性モノマーを調製するために使用される有用なエチレン性不飽和のエポキシ官能性モノマーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、1:1(モル濃度)の、ヒドロキシ官能性モノエポキシド(例えば、グリシドール)とのエチレン性不飽和モノイソシアネートの付加物、ならびに重合可能なポリカルボン酸(例えば、マレイン酸)のグリシジルエーテル。グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートが好ましい。カルボン酸の例としては、飽和カルボン酸(例えば、イソステアリン酸)および不飽和の芳香族カルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
β−ヒドロキシエステル官能性モノマーを調製するために使用される有用なエチレン性不飽和の酸官能性モノマーとしては、以下が挙げられる:モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸);ジカルボン酸(例えば、イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸);ならびにジカルボン酸のモノエステル(例えば、モノブチルマレエートおよびモノブチルイタコネート)。エチレン性不飽和の酸官能性モノマーおよびエポキシ化合物は、代表的に、1:1の当量比で反応する。このエポキシ化合物は、不飽和酸官能性モノマーとの、遊離ラジカルによって開始される重合に関与するエチレン不飽和を含まない。有用なエポキシ化合物としては、好ましくは約8〜30個の炭素原子を含む、1,2−ペンタンオキシド、スチレンオキシドおよびグリシジルエステルまたはグリシジルエーテル(例えば、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルおよびパラ−(第三級ブチル)フェニルグリシジルエーテル)が挙げられる。好ましいグリシジルエステルは、以下の構造:
【0029】
【化10】

を含み、ここで、Rは、約4〜約26個の炭素原子を含む炭化水素ラジカルである。好ましくは、Rは、約8〜約10個の炭素原子を有する分枝炭化水素基(例えば、ネオペンタノエート、ネオヘプタノエートまたはネオデカノエート)である。適切なカルボン酸のグリシジルエステルとしては、VERSATIC ACID 911およびCARDURA
E(これらは各々、Shell Chemical Co.から市販される)が挙げられる。
【0030】
カルバメート官能基は、アクリルモノマーとカルバメート官能性ビニルモノマー(例えば、メタクリル酸のカルバメート官能性アルキルエステル)とを共重合することにより、またはヒドロキシル官能性アクリルポリマーと低分子量カルバメート官能性物質(例えば、アルコールまたはグリコールエーテルから誘導され得る)とをカルバモイル交換反応を介して反応させることにより、アクリルポリマーに含まれ得る。この反応において、アルコールまたはグリコールエーテルから誘導された低分子量カルバメート官能性物質は、アクリルポリオールのヒドロキシル基と反応して、カルバメート官能性アクリルポリマーおよび元のアルコールまたはグリコールエーテルを生じる。アルコールまたはグリコールエーテルから誘導された低分子量カルバメート官能性物質は、アルコールまたはグリコールエーテルを、触媒の存在下で尿素と反応させることにより調製され得る。適切なアルコールとしては、低分子量の脂肪族アルコール、脂環式アルコール、および芳香族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、および3−メチルブタノール)が挙げられる。適切なグリコールエーテルとしては、エチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。プロピレングリコールメチルエーテルおよびメタノールは、最も頻繁に使用される。他の有用なカルバメート官能性モノマーは、米国特許第5,098,947号(本明細書中に参考として援用される)に開示される。他の有用なカルバメート官能性モノマーは、米国特許第5,098,947号(本明細書中に参考として援用される)に開示される。
【0031】
アミド官能基は、ポリマーの調製において官能性モノマーを適切に使用することにより、または当業者に公知の技術を使用して他の官能基をアミド基に変換することにより、アクリルポリマーに導入され得る。同様に、他の官能基は、利用可能な場合官能性モノマーまたは必要な場合は変換反応を適切に使用して、所望の場合に組み込まれ得る。
【0032】
アクリルポリマーは、水性乳化重合技術により調製され得、そして水性コーティング組成物の調製において直接使用され得るか、または酸基もしくはアミン基のような塩形成し得る基を用いて有機溶液重合技術により調製され得る。塩基または酸を用いてこれらの基を中和する際、このポリマーは、水性媒体に分散され得る。一般的に、当該分野で認識された量のモノマーを利用する、当業者に公知のこのようなポリマーを製造する任意の方法が使用され得る。
【0033】
アクリルポリマーに加えて、コーティング組成物中のポリマーバインダー(a)として適切なポリマーフィルム形成樹脂は、アルキド樹脂またはポリエステルであり得る。このようなポリマーは、多価アルコールとポリカルボン酸との縮合により公知の様式で調製され得る。適切な多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールが挙げられるが、これらに限定されない。適切なポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、およびトリメリット酸が挙げられるが、これらに限定されない。上述のポリカルボン酸に加えて、無水物のような酸の機能的等価体(存在する場合)またはメチルエステルのような酸の低級アルキルエステルが使用され得る。風乾アルキド樹脂を生成することが所望される場合、適切な乾性油脂肪酸が使用され得、そして例えば、亜麻仁油、ダイズ油、トールオイル、脱水ひまし油、または桐油から誘導されたものが挙げられる。
【0034】
カルバメート官能基は、ポリエステルを形成する際に使用されるポリ酸およびポリオールと反応し得るヒドロキシアルキルカルバメートを最初に形成することにより、ポリエステルに組み込まれ得る。ヒドロキシアルキルカルバメートは、ポリエステル上の酸官能基と縮合して、末端カルバメート官能基を生じる。カルバメート官能基はまた、カルバモイル交換反応プロセス(アクリルポリマーへのカルバメート基の組み込みに関連して上で記載したものと同様)を介して、ポリエステル上の末端ヒドロキシ基と低分子量カルバメート官能性物質とを反応させることにより、またはイソシアン酸とヒドロキシ官能性ポリエステルとを反応させることにより、ポリエステルに組み込まれ得る。
【0035】
他の官能基(例えば、ブロックイソシアネート、1級アミン、2級アミン、アミド、ウレア、およびウレタン)は、所望の官能基を生じるために、利用可能な場合官能性反応物、または必要な場合変換反応を適切に使用して、所望の場合にポリエステルまたはアルキド樹脂に組み込まれ得る。このような技術は、当業者に公知である。
【0036】
ポリウレタンはまた、本発明のフィルム形成組成物においてポリマーバインダー(a)として使用され得る。使用され得るポリウレタンの中には、ポリマーポリオールがあり、これは一般的に、上述のようなポリエステルポリオールまたはアクリルポリオールとポリイソシアネートとを、OH/NCO当量比が、1:1より多くなり、その結果遊離ヒドロキシル基が生成物中に存在するように反応させることにより調製される。ポリウレタンポリオールを調製するために使用される有機ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートもしくは芳香族ポリイソシアネート、またはこれら2つの混合物であり得る。ジイソシアネートが好ましいが、より多価のポリイソシアネートが、ジイソシアネートの代わりに使用され得るか、またはジイソシアネートと合わせて使用され得る。適切な芳香族ジイソシアネートの例は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネートである。適切な脂肪族ジイソシアネートの例は、直鎖脂肪族ジイソシアネート(例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)である。また、脂環式ジイソシアネートが使用され得る。例としては、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。適切な多価ポリイソシアネートの例は、1,2,4−ベンゼントリイソシアネートおよびポリメチレンポリフェニルイソシアネートである。ポリエステルと同様に、アミンのような塩基で中和する際に水性媒体への分散を可能にする未反応のカルボン酸基を有するポリウレタンが、調製され得る。
【0037】
末端および/またはペンダントのカルバメート官能基は、ポリイソシアネートと末端/ペンダントカルバメート基を含むポリマーポリオールとを反応させることにより、ポリウレタンに組み込まれ得る。あるいは、カルバメート官能基は、ポリイソシアネートとポリオールおよびヒドロキシアルキルカルバメートまたはイソシアン酸とを別の反応物として反応させることによりポリウレタンに組み込まれ得る。カルバメート官能基はまた、ヒドロキシル官能性ポリウレタンと低分子量カルバメート官能性物質とを、アクリルポリマーへのカルバメート基の組み込みに関して上で記載されるプロセスと同様のカルバモイル交換反応プロセスを介して反応させることによりポリウレタンに組み込まれ得る。さらに、イソシアネート官能性ポリウレタンは、ヒドロキシアルキルカルバメートと反応して、カルバメート官能性ポリウレタンを生じ得る。
【0038】
他の官能基(例えば、ブロックイソシアネート、1級アミン、2級アミン、アミドおよび尿素)は、利用可能な場合に官能性反応物、または所望の官能基を得るために必要な場合は変換反応を適切に使用して、所望の場合にポリウレタンに組み込まれ得る。このような技術は、当業者に公知である。
【0039】
本発明の水系コーティング組成物は、カチオン性でも、アニオン性でも、非イオン性でもよいが、代表的にはアニオン性である。適切な水系コーティング組成物は、米国特許第4,403,003号に開示されており、ここでこれらの組成物を調製する際に使用されるポリマー樹脂組成物は、本発明の実施においてポリマーバインダー(a)として使用され得る。また、米国特許第4,147,679号に従って調製されるような水ベースのポリウレタンは、ポリマーバインダー(a)として本発明のコーティング組成物において使用され得る。さらに、アクリル材料およびポリエステルおよび/またはポリウレタン材料のブレンドの水性分散を、ホモジェナイザーを使用する高圧技術により微粒子形態で調製することは可能である。この技術は、本発明のコーティング組成物を調製するために好ましく使用され、そして米国特許第5,071,904号(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0040】
この技術において、ポリマーバインダー(a)は、水性媒体中の混合物を形成することにより調製されたポリマー微粒子を含むラテックスである。この混合物は、エチレン性不飽和モノマーまたはエチレン性不飽和モノマーの混合物を、30重量%より多くの実質的に疎水性のポリマーと共に含む。重量%は、エチレン性不飽和モノマーおよび疎水性ポリマーの総重量に基づく。最も好ましくは、疎水性ポリマーは、ポリマー骨格中にアクリルまたはビニルの繰り返し単位を本質的に含まず、そしてポリスチレン標準を使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより決定した場合に約300より大きい数平均分子量を有する。疎水性ポリマーは、好ましくはポリエステルまたはポリウレタンである。モノマーおよび疎水性ポリマーは、ホモジェナイザーを使用する高圧技術により、次いで、エチレン性不飽和モノマーを重合して水性媒体中で安定に分散されるポリマー微粒子を形成することにより、微粒子まで粒状化される。これらの微粒子は、ミクロゲルを形成するように内部で架橋され得る。
【0041】
ポリマーバインダー(a)は、一般的に、フィルム形成組成物中の樹脂固形物の総重量に基づいて、約55〜99重量%の量、代表的には約55〜90重量%の量、より頻繁には約55〜約85重量%の量でフィルム形成組成物中に存在する。
【0042】
上述のように、本発明の水系フィルム形成組成物は、(b)ポリマーバインダー(a)の官能基と反応性の少なくとも2つの官能基を有する架橋剤をさらに含む。適切な架橋剤としては、アミノプラスト、ポリイソシアネート、ポリ酸、無水物、およびその混合物が挙げられる。有用なアミノプラスト樹脂は、アミノ基またはアミド基を有する物質とのホルムアルデヒドの付加生成物に基づく。アルコールおよびホルムアルデヒドとメラミン、尿素またはベンゾグアナミンとの反応から得られた縮合生成物は、最も一般的であり、そして本明細書において好ましい。使用されるアルデヒドは最も頻繁にはホルムアルデヒドであるが、他の同様の縮合生成物は、他のアルデヒド(例えば、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、フルフラール、グリオキサール、など)から作製され得る。
【0043】
他のアミンおよびアミドの縮合生成物もまた使用され得る(例えば、トリアジン、ジアジン、トリアゾール、グアナジン、グアナミンならびにこのような化合物のアルキル置換誘導体およびアリール置換誘導体(アルキル置換およびアリール置換の尿素ならびにアルキル置換メラミンおよびアリール置換のメラミンを含む)のアルデヒド重合体)。このような化合物の非限定的例としては、N,N’−ジメチル尿素、ベンゾウレア、ジシアンジアミド、ホルムグアナミン(formaguanamine)、アセトグアナミン、グリコールウリル、アメリン(ammeline)、3,5−ジアミノトリアゾール、トリアミノピリミジン、2−メルカプト−4,6−ジアミノピリミジンおよび式C(NHCOXR)(ここで、Xは窒素、酸素または炭素であり、そしてRは、1〜12個の炭素原子を有する低級アルキル基または低級アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシル)の混合物である)のカルバモイルトリアジンが挙げられる。このような化合物およびそれらの調製は、米国特許第5,084,541号(本明細書に参考として援用される)に詳細に記載される。
【0044】
アミノプラスト樹脂は、好ましくは、メチロールまたは類似のアルキロール基を含み、そしてほとんどの場合、これらのアルキロール基の少なくとも一部は、アルコールとの反応によってエーテル化される。以下を含む任意の一価アルコールが、この目的のために使用される:メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ならびにベンジルアルコールおよび他の芳香族アルコール、環式アルコール(例えば、シクロヘキサノール)、グリコールのモノエーテル、およびハロゲン置換アルコールまたは他の置換アルコール(例えば、3−シクロプロパノールおよびブトキシエタノール)。好ましいアミノプラスト樹脂は、メタノールまたはブタノールで、部分的にアルキル化されている。
【0045】
ポリイソシアネート架橋剤は、種々のイソシアネート含有物質から調製され得る。最も多くは、このポリイソシアネートは、ブロックされたポリイソシアネートである。適切なポリイソシアネートの例としては、以下のジイソシアネートから調製されるトリマーが挙げられる:トルエンジイソシアネート、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの異性体混合物、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよび4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアネート。さらに、種々のポリオール(例えば、ポリエステルポリオール)のブロックされたポリイソシアネートプレポリマーもまた、使用され得る。適切なブロッキング剤の例としては、高温でブロックしない物質(例えば、メタノールを含む低級脂肪族アルコール、メチルエチルケトオキシムのようなオキシム、カプロラクタムのようなラクタム、および3,5−ジメチルピラゾールのようなピラゾール)が挙げられる。
【0046】
本発明の水性の硬化可能なフィルム形成組成物中の架橋剤としての使用に適切なポリカルボン酸の例としては、米国特許第4,681,811号の第6欄45行〜第9欄54行に記載されるものが挙げられる。適切なポリ無水物としては、米国特許第4,798,746号の第10欄16〜50行および米国特許第4,732,790号の第3欄41〜57行に開示されるものが挙げられる。
【0047】
一般に、架橋剤(b)は、フィルム形成組成物中の樹脂固体の総重量に基づいて、約1〜45重量%、代表的には約10〜約45重量%、そして最もしばしば、約15〜45重量%の範囲の量で存在する。
【0048】
本発明の1実施形態において、本発明のフィルム形成組成物は、架橋剤と反応するように適合された官能基を有する化合物(a)としてポリマー微粒子を含む、少なくとも1つの熱硬化性水性分散物を含む。特に、成分(a)および(b)は、実質的に疎水性であり、そしてフロー制御剤(c)の組み込みの前またはそれと同時に、高剪断条件下で成分(a)および(b)を一緒に混合することによって調製される、ポリマー微粒子を含む水性分散物として、調製される。このフィルム形成組成物は、周囲温度でほぼ連続したフィルムを形成し得る。
【0049】
本明細書中で使用する場合、用語「分散物」は、微粒子が、例えば、ラテックス中の、微細に分割された粒子として水全体に分散され得ることを意味する。本明細書中で参考として援用される、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary(第12版、1993)の435頁を参照のこと。分散物の均一性は、以下に考察される、湿潤剤、分散剤または乳化剤(界面活性剤)の添加によって、増大され得る。
【0050】
ポリマー微粒子は、高剪断条件下で以下を混合することによって調製される:(a)反応性官能基(例えば、酸官能基)を有する、少なくとも1つの実質的に疎水性のポリマー結合剤;および(b)ポリマー結合剤(a)の官能基と反応性の官能基を含む、少なくとも1つの疎水性架橋剤。本明細書中で使用する場合、句「酸官能性」とは、ポリマー結合剤(a)が、水溶液中に、化学反応において塩基にプロトンを渡し得る基;塩基と反応して塩を形成し得る物質;またはヒドロニウムイオン(H)を生じる化合物を含むことを意味する。Hawley’sの15頁およびK.Whittenら、General Chemistry(1981)の192頁(これらは、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0051】
用語「実質的に疎水性」とは、本明細書中で使用する場合、このように記載される物質が、本質的に水と適合性でないか、水に対する親和性を有さないか、そして/または従来の混合手段を使用して水中に溶解し得ないことを意味する。すなわち、有機成分および水と、この物質のサンプルとを混合する際に、この物質のほとんどは、有機相中に存在し、そして別個の水相が観察される。Hawley’s Condensed Chemical Dictionary(第12版、1993)の618頁を参照のこと。
【0052】
代表的に、疎水性ポリマー結合剤の(a)の酸価は、50より低く、しばしば、酸価は25より低く、そしてより頻繁には10〜20の範囲である。樹脂中の酸官能基の量は、酸価によって測定され得る。本明細書中および特許請求の範囲で使用する場合、「酸価」とは、樹脂中の酸官能基を中和するために必要な、固体1グラムあたりのKOHのミリグラム数(mg KOH/g)の数をいう。疎水性ポリマーが実質的に疎水性であるためには、この疎水性ポリマーは、従来の分散技術を使用して水中で安定な分散物を形成させるのに十分な、酸官能基もイオン性官能基も含んではならない。また、疎水性ポリマーの酸価が0である場合、適切な界面活性剤は、高応力技術を適用することによって、水性媒体中のポリマーを安定に分散するために使用され得る。アニオン性、カチオン性および非イオン性の界面活性剤が、本発明の水性分散物中での使用に適切であり、アニオン性界面活性剤が好ましい。適切なアニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸のジメチルエタノールアミン塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、エトキシル化ノニルフェノールスルフェートの塩、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー界面活性剤もまた使用され得る。上記の界面活性剤は、代表的に、分散物中の総樹脂固体重量に基づいて、2重量%未満、好ましくは1重量%未満の量で、分散物中に存在する。
【0053】
低い酸価を有する疎水性ポリマーは、他の親水性成分(例えば、ヒドロキシル基またはポリ(エチレンオキシド)基)を、水性媒体中のポリマーの分散性を達成するのに十分な量で含む場合、水分散性であるとみなされ得る。しかし、本発明の目的のために、このようなポリマーは、それらの酸価に関わらず水分散性である場合、実質的に疎水性であるとみなされないことが、理解されるべきである。
【0054】
実質的に疎水性のポリマー結合剤(a)は、上記のモノマーを使用して調製されたアクリルポリマーであり得る。
【0055】
特定の実施形態において、ポリマー結合剤(a)は、予め形成され、そして疎水性架橋剤(b)(以下に詳細に考察される)と合わされ、そして水性媒体に添加されて、プレエマルジョン混合物を形成する。一般に、中和剤が、水性媒体と合わされて分散を促進する前に、ポリマー/架橋剤混合物に添加される。あるいは、ポリマー結合剤(a)は、疎水性架橋剤(b)の存在下で、フリーラジカルによって開始される重合によって形成される。ポリマー結合剤(a)が、疎水性架橋剤(b)の存在下で調製される場合、最終反応生成物は、従来のフリーラジカル重合条件下で予め形成された場合と同じ組成、特徴および物理的特性を有するとみなされることを、理解すべきである。
【0056】
ホモ重合および共重合するエチレン性不飽和モノマーならびに/または他の付加重合モノマー、そして予め形成されたポリマーについて適切な方法は、ポリマーの分野の当業者に周知であり、そしてそのさらなる考察は、本開示を鑑みて必要ではないと考える。例えば、エチレン性不飽和モノマーの重合は、水性もしくは有機性の溶媒中(例えば、キシレン、メチルイソブチルケトンおよびn−ブチルアセテート)、エマルジョン中、または水性分散物中で、バルクで実施され得る。Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、Vol.1(1963)の305頁。重合は、適切な開始剤系(これは、ベンゾイルペルオキシドまたはアゾビスイソブチロニトリルのようなフリーラジカル開始剤を代表的に含む)によって、もたらされ得る。分子量は、溶媒もしくは重合媒体、開始剤もしくはモノマーの濃度、温度および鎖転位剤の使用の選択によって、制御され得る。さらなる情報が必要な場合、このような重合方法は、本明細書中で参考として援用される、Kirk−Othmer、Vol.1の203〜205頁、259〜297頁および305〜307ページに開示される。
【0057】
予め形成された疎水性ポリマー結合剤(a)の数平均分子量は、約500〜約100,000の範囲、そして好ましくは約1,000〜10,000の範囲であり得る。他に示されない限り、分子量とは、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、標準としてポリスチレンを使用したゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるような、数平均分子量として示される。
【0058】
疎水性ポリマー結合剤(a)のガラス転移温度(T)は、代表的には、100℃未満、しばしば50℃未満、よりしばしば35℃未満、さらによりしばしば30℃未満、そして最もしばしば25℃未満である。疎水性ポリマー結合剤(a)のTはまた、代表的には、少なくとも−50℃、しばしば少なくとも−25℃、よりしばしば少なくとも−20℃、さらによりしばしば少なくとも−10℃、そして最もしばしば少なくとも0℃である。疎水性ポリマー結合剤(a)のTは、上記の範囲を含むこれらの値のいずれかの組み合わせの範囲の間に及び得る。
【0059】
微粒子はまた、疎水性ポリマー結合剤(a)の官能基と反応性である官能基を含む、少なくとも1つの疎水性架橋剤(b)を含む。本発明の熱硬化性分散物における使用に適した疎水性架橋剤の選択は、成分(a)に関係した反応性官能基に依存する。
【0060】
適切な疎水性架橋剤としては、上記に開示されたものが挙げられる。所望の場合、疎水性架橋剤の混合物が使用され得る。
【0061】
上記のように、ポリマー性微粒子の分散物は、高度の剪断条件下で上記の成分(a)および成分(b)を一緒に混合することによって調製される。本明細書中で使用される場合、用語「高度の剪断条件」とは、高度の応力(stress)技術(例えば、以下に詳細に論じられる、液体−液体衝突(impingement)技術)だけでなく、機械的手段による高速剪断も含むことを意味する。所望の場合、エマルジョン前の混合物に応力を掛ける任意の様式は、必要な粒子サイズ分布を達成するために十分な応力が適用される限り、利用され得る。
【0062】
一般的に、分散物は次のように調製される。疎水性ポリマー結合剤(a)および疎水性架橋剤(b)および、所望の場合、他の成分(例えば、中和剤、外殻(external)界面活性剤、触媒、流動添加物など)が、撹拌の下で水と一緒に混合されて、半安定化O/W(oil−in−water)プレエマルジョン混合物を形成する。成分(c)は、この時点でこのプレエマルジョンに添加され得る。このプレエマルジョン混合物は、外殻界面活性剤を使用して安定化され得るが、本発明の目的のためには、このことは望ましくない。次いで、このプレエマルジョン混合物は、十分な応力に供されて、均一な微粒子サイズのポリマー性微粒子の形成をもたらす。次いで、残留する有機溶媒が、低温(すなわち、40℃未満)での減圧蒸留の下で共沸混合物として除去されて、実質的に有機溶媒のない、安定したポリマー性微粒子の分散物を生じる。
【0063】
本発明の適用のために、疎水性架橋剤(b)と一緒になった、前もって形成された、実質的に疎水性なポリマー結合剤(a)(または疎水性ポリマー結合剤(a)を調製するために使用される、エチレンの不飽和モノマー)は、有機成分といわれる。この有機成分はまた、一般的に、他の有機的な種を含む。
【0064】
本発明のこの実施形態の分散物は、代表的に、O/Wエマルジョンとして調製される。すなわち、水性媒体は、ポリマー性微粒子が有機相として懸濁される、途切れのない相を提供する。
【0065】
一般的に、水性媒体はもっぱら水である。しかし、いくつかのポリマー系について、分散されるポリマーの粘度を低下させるのを助け得る、少量の不活性有機溶媒もまた含むことが所望され得る。代表的に、本発明の水性分散物中に存在する有機溶媒の量は、分散物の総重量に基づき、20%重量未満、普通は5重量%未満、そして最もしばしば2重量%未満である。例えば、有機相が25℃で1000センチポアズより大きい、Brookfield粘度またはW Grander Holdt粘度を有する場合、いくつかの溶媒が使用され得る。有機成分中に組み込まれ得る適切な溶媒の例は、キシレン、メチルイソブチルケトンおよび酢酸n−ブチルである。
【0066】
上記のように、混合物は、好ましくは、MassachusettsのNewtonにあるMircofluidics Corporationから入手可能である、MICROFLUIDIZER(登録商標)エマルジョン形成機(emulsifier)の使用により、適切な応力に供される。このMICROFLUIDIZER(登録商標)高圧衝突エマルジョン形成機は、米国特許第4,533,254号に詳細に記載される(これは、本明細書中で参考として援用される)。このデバイスは、高圧ポンプ(約1.4×10kPa(20,000psi)に達する)およびエマルジョン形成が起こる相互作用チャンバからなる。このポンプは、水性媒体中の反応物の混合物を、チャンバ内へと加圧し、このチャンバ内で、少なくとも2つの流れ(stream)へと分裂され、これらの流れは、少なくとも2つの溝(slit)を通して非常に高粘度で通過しそして衝突して、小さな粒子の形成を生じる。一般的に、このプレエマルジョン混合物は、約3.5×10kPa(5,000psi)と約1×10kPa(15,000psi)との間の圧力で、エマルジョン形成機を通される。複数回の通過は、より小さな平均粒子サイズ、および粒子サイズ分布のより狭い範囲を生じ得る。前述のMICROFLUIDIZER(登録商標)エマルジョン形成機を使用する場合、応力は、論じられたように、液体−液体衝突によって適用される。上記のように、プレエマルジョン混合物に応力を適用する他の様式は、必要な粒子サイズ分布を達成するために十分な応力が適用される限り、利用され得る。例えば、応力を適用する1つの代替手段は、超音波エネルギーの使用である。
【0067】
応力は、単位面積あたりの力として記される。MICROFLUIDIZER(登録商標)エマルジョン形成機がプレエマルジョン混合物に応力を掛けて粒子化させる正確な機構は完全には理解されていないが、応力が1つより多くの様式で及ぼされることが理論付けられる。応力が及ぼされる1つの様式が剪断によるものであること;すなわち、この力は1つの相または平面を隣接の並列の面へと平行に移動するようなものであると、考えられる。応力はまた、大量の圧縮の応力として、全ての側面から及ぼされ得る。この例では、応力は、全く剪断なしに及ぼされ得る。強力な応力を生じるさらなる様式は、キャビテーションである。キャビテーションは、液体内の圧力が気化を生じさせるのに十分に減じられる場合に生じる。気化泡の形成および破裂は、短時間の期間にわたって激しく生じ、そして強い応力を生じる。いずれかの特定の理論によって束縛されることを意図しないが、剪断およびキャビテーションの両方がプレエマルジョン形成混合物を粒子化させる応力を生じるのに寄与することが、考えられる。
【0068】
上記に論じられるように、実質的に疎水性のポリマー結合剤(a)は、代替的に、疎水性架橋剤(b)の存在下で調製され得る。この方法が使用される場合、疎水性ポリマー結合剤(a)および疎水性架橋剤(b)を調製するために使用される、重合可能なエチレンの不飽和モノマーは、代表的に、界面活性剤と混ぜられ、そして水性媒体と共に混合されて、プレエマルジョン混合物を形成する。流動制御剤(c)は、プレエマルジョン中に存在しても存在しなくてもよい。次いで、このプレエマルジョン混合物は、上記に論じられたような高応力条件に供されて、微粒子を形成する。次いで、各粒子内の重合可能な種は、水性媒体中で安定に分散されるポリマー性微粒子を生じるのに十分な条件下で、重合される。
【0069】
代表的に、界面活性剤または分散物は、分散を安定化するために存在する。界面活性剤は、通常、微粒子の形成の前に、上記の有機成分が水性媒体中へと混合される場合に存在する。あるいは、界面活性剤は、微粒子が形成された直後の時点に媒体中に導入され得る。しかし、界面活性剤は、粒子形成プロセスの重要な部分であり得、そしてしばしば必要な分散安定性を達成するのに必要である。界面活性剤はまた、乳化された粒子を凝集物を形成することから防ぐために使用され得る。
【0070】
上記に論じられるような、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤は、本発明の水性分散物における使用に適しており、アニオン性界面活性剤が好ましい。当業者に周知の他の材料もまた、本明細書中での使用に適している。一般的に、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤の両方が一緒に使用され、そして界面活性剤の量は、総固形物に基づくパーセントで、約1%〜約10%にわたり、好ましくは2%未満にわたる。
【0071】
疎水性架橋剤の存在下でエチレンの不飽和モノマーのポリマー化を行うために、通常、フリーラジカル開始剤が存在する。水溶性開始剤および油溶性開始剤の両方が使用され得る。水溶性開始剤の例としては、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、ペルオキシ二硫酸カリウムおよび過酸化水素が挙げられる。油溶性開始剤の例としては、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジラウリルペルオキシドおよび2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)が挙げられる。一般的に、反応は、20℃〜80℃にわたる温度で実施される。ポリマー化は、バッチまたは連続プロセスのいずれかで実施され得る。ポリマー化を実施するのに必要な時間の長さは、10分〜6時間にわたり得る。ポリマー性微粒子が形成されるプロセスは、米国特許第5,071,904号に詳細に記載される(これは、本明細書中で参考として援用される)。
【0072】
一旦、微粒子が形成され、重合プロセスが完了すると、得られる生成物は、いくらかの有機溶媒を含み得る水性媒体中のポリマー性微粒子の安定な分散物である。有機溶媒は、代表的に、減圧蒸留によって、40℃未満の温度で除去される。最終生成物は、有機溶媒を実質的に含まない、安定な分散物であり、ここで、実質的に疎水性のポリマー性結合剤(a)および実質的に疎水性の架橋剤(2)の両方が、各粒子を含む。「安定に分散した」とは、静置した際に、ポリマー性微粒子が、沈降も、凝集も、凝固もしないことを意味する。上記のように、ポリマー性微粒子分散物の非常に重要な局面は、粒子サイズが均一で小さいことである。一般的に、微粒子は、約0.01ミクロン〜約10ミクロンの平均範囲の直径を有する。好ましくは、重合後の粒子の平均直径は、約0.05マイクロメートル〜約0.5マイクロメートルの範囲である。粒径は、粒径分析器(例えば、Coulterから市販される、Coulter N4機器)を用いて測定され得る。
【0073】
本発明のフィルム形成組成物がポリマー性微粒子の水性分散物を含む場合、フィルム形成組成物は、一種以上の親水性架橋剤をさらに含み得、この親水性架橋剤は、ポリマー性微粒子の官能基と反応して、フィルム形成組成物のさらなる硬化を提供するように適合される。適切な架橋剤の非限定的な例としては、ブロックドポリイソシアネート(blocked polyisocyanate)およびアミノプラスト樹脂が挙げられ、これらは、一般的に上記され、親水性に改変されるか、そうでなければ、水溶性もしくは水分散性であるように適合される。フィルム形成組成物に使用される親水性架橋剤または架橋剤の混合物は、ポリマー性微粒子と関連する官能性に依存する。最もしばしば、ポリマー性微粒子は、親水性に改変したヒドロキシ官能性および/またはカルバメート官能性であり、そして使用される場合、親水性架橋剤は、ブロックドポリイソシアネートまたはアミノプラストである。
【0074】
親水性架橋剤としての使用に適切な親水性ブロックドポリイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの3,5−ジメチルピラゾールブロックド親水性改変イソシアヌレート(England,LancashireのBaxenden Chemicals,Ltd.からBI 7986として市販される)である。例示的な適切なアミノプラスト樹脂は、メチロールまたは同様なアルキロール基を含むものであり、その一部は、低級アルコール(好ましくは、メタノール)との反応によってエステル化されて、水溶性/水分散性アミノプラスト樹脂(例えば、部分的にメチル化されたアミノプラスト樹脂CYMEL 385(Cytec Industries,Inc.))を提供する。好ましい親水性架橋剤としては、親水性改変されたブロックドポリイソシアネートが挙げられる。
【0075】
使用される場合、親水性架橋剤は、代表的に、フィルム形成組成物中の全樹脂固形物に基づいて、少なくとも10重量%、しばしば、少なくとも10重量%〜少なくとも20重量%、よりしばしば少なくとも20重量%〜少なくとも30重量%の範囲の量で、フィルム形成組成物中に存在する。親水性架橋剤はまた、代表的に、フィルム形成組成物中の全樹脂固形物に基づいて、70重量%未満〜60重量%未満、しばしば、60重量%未満〜50重量%未満、よりしばしば、50重量%未満〜40重量%未満の範囲の量で、フィルム形成組成物中に存在する。親水性架橋剤は、これらの値の任意の組合せの間の範囲の量(列記された範囲を含む)で、フィルム形成組成物中に存在し得る。
【0076】
本発明の硬化性水性フィルム形成組成物は、さらに、コポリマー流動制御剤(c)を含む。
【0077】
本明細書中で使用する「コポリマー」との用語は、合成コポリマーだけでなく、そのコポリマーの合成に伴うがそこに共有結合的には組み込まれていない開始剤、触媒および他の要素に由来の残渣を含むことを意味する。このコポリマー組成物の一部と見なされるこのような残渣および他の要素は、典型的には、容器間または溶媒間または分散媒体間で移動したときにコポリマーと共に残るように、そのコポリマーと混合される。
【0078】
本明細書中で使用する「実質的に含まない」との用語は、ある物質が偶発的な不純物として存在することを含むことを意味する。言い換えれば、その物質は、指定組成物に意図的に加えられるのではなく、目的組成物の成分の一部として不純物として繰り入れられるので、少量レベルまたは僅かなレベルで存在し得る。
【0079】
「ドナーモノマー」および「アクセプターモノマー」との用語は、本願全体にわたって使用される。本発明に関して、「ドナーモノマー」との用語は、エチレン性二重結合における電子密度が比較的に高い重合可能エチレン性不飽和基を有するモノマーを意味し、また、「アクセプターモノマー」との用語は、エチレン性二重結合における電子密度が比較的に低い重合可能エチレン性不飽和基を有するモノマーを意味する。この概念は、the
Alfrey−Price Q−eスキームにより、ある程度数量化されている(Robert Z.Greenley,Polymer Handbook,Fourth Edition,Brandrup,Immergut and Gulke,editors,Wiley & Sons,New York,NY,pp.309−319(1999))。本明細書中で列挙した全てのe値は、特に明記しない限り、the Polymer Handbookで見られるものである。
【0080】
このQ−eスキームでは、Qは、モノマーの反応性を反映し、そしてeは、モノマーの極性(これは、所定モノマーの重合可能エチレン性不飽和基の電子密度を意味する)を示す。正のe値は、あるモノマーが、無水マレイン酸(これは、3.69のe値を有する)の場合のように、比較的に電子密度が低く、アクセプターモノマーであることを意味する。低いまたは負のe値は、あるモノマーが、ビニルエチルエーテル(これは、−1.80のe値を有する)の場合のように、比較的に電子密度が高く、ドナーモノマーであることを意味する。
【0081】
本明細書中で言及する「強力なアクセプターモノマー」とは、2.0より高いe値を備えたモノマーを含むことを意味する。「中程度のドナーモノマー」との用語は、0.5より高いe値を備えたモノマーから2.0のe値を備えたモノマーまで(それらのモノマーを含めて)を含むことを意味する。逆に、「強力なドナーモノマー」との用語は、−1.5より低いe値を備えたモノマーを含むことを意味し、また、「中程度のドナーモノマー」との用語は、0.5未満のe値を備えたモノマーから−1.5のe値を備えたモノマーまでを含むことを意味する。
【0082】
成分(c)のコポリマー中に、少なくとも30mol%、多くの場合、少なくとも40mol%、典型的には、少なくとも50mol%、ある場合には、少なくとも60mol%、他の場合には、少なくとも75mol%のコポリマー残基は、以下の構造の交互モノマー残基単位を有するドナーモノマー−アクセプターモノマー対の交互配列から誘導される:
−[DM−AM]−
ここで、DMは、ドナーモノマーに由来の残基を示し、そしてAMは、アクセプターモノマーに由来の残基を示す。このコポリマーは、DMおよびAMの100%交互コポリマーであり得る。さらに特定すると、このコポリマーの少なくとも15mol%は、ドナーモノマーを含有し、これは、以下の構造を有する:
【0083】
【化11】

ここで、Rは、直鎖または分枝C〜Cアルキルである;Rは、1個またはそれ以上のメチル、直鎖、環状または分枝C〜C20アルキル、アルケニル、アリール、アルカリールおよびアラルキルである。さらに、特定の実施形態において、このコポリマーの少なくとも15mol%は、アクセプターモノマーとして、アクリルモノマーを含有する。
【0084】
このコポリマーは、構造Iで記載された中程度のドナーモノマーおよび中程度のアクセプターモノマー(これは、アクリルモノマーである)の交互残基の実質的部分を取り込む。構造Iで記載されたモノマーとして含まれ得るモノマーおよびアクリルモノマーの公開されているe値の非限定的なリストを、表2に示す。
【0085】
(表2)
選択モノマーのAlfrey−Price e値
モノマー e値
構造1のモノマー
イソブチレン −1.20
ジイソブチレン 0.49
アクリルモノマー
アクリル酸 0.88
アクリルアミド 0.54
アクリロニトリル 1.23
アクリル酸メチル 0.64
アクリル酸エチル 0.55
アクリル酸ブチル 0.85
アクリル酸ベンジル 1.13
アクリル酸グリシジル 1.28

Polymer Handbook,Fourth Edition(1999)
Rzaevら、Eur.Polym.J.,Vol.24,No.7,pp.981−985(1998)。
【0086】
特定の実施形態において、コポリマー成分(c)は、マレエートモノマー残基およびフマレートモノマー残基(これらは、典型的には、2.0より高いe値を有する)を実質的に含まない。これらの種類の多官能性モノマーは、そのコポリマーに対して、あまりに多くの官能基を提供する。これは、例えば、このコポリマーの過度な官能基の性質に起因して熱硬化性組成物が短い寿命を有し得るコーティングにおいて、問題を引き起こし得る。
【0087】
さらに、本発明のコポリマー成分(c)は、遷移金属およびルイス酸(これらは、上述のように、中程度のドナーモノマーおよび中程度のアクセプターモノマーの交互コポリマーを製造するために、従来技術で使用されている)を実質的に含まない。本発明は、コポリマー成分(c)を調製する際に、遷移金属またはルイス酸の補助剤を使用せず、従って、重合後にそれらを除去する必要がなく、得られたコポリマー組成物は、遷移金属またはルイス酸を含有するものに固有の欠点がない。
【0088】
任意の適切な供与体モノマーが、本発明のフィルム形成組成物において使用される共重合体(c)を調製するために使用され得る。使用され得る適切なドナーモノマーには、強力なドナーモノマーおよびより頻繁には中程度(mild)のドナーモノマーが挙げられる。本発明のコポリマーは、式Iで記載された中程度のドナーモノマー(例えば、イソブチレンおよびジイソブチレン、ジペンテンおよびイソプレノール)を含有し、さらに、他の適切な中程度のドナーモノマーを含有し得る。構造Iのドナーモノマーは、官能基を有し得る。例えば、構造IのドナーモノマーのR基としては、1つ以上の官能基(例えば、ヒドロキシ、エポキシ、カルボン酸、エーテル、カーバメート、およびアミド)が挙げられ得る。
【0089】
構造Iの中程度のドナーモノマーは、このコポリマー組成物中にて、少なくとも15mol%、ある場合には、少なくとも25mol%、典型的には、少なくとも30mol%、ある場合には、少なくとも35mol%のレベルで存在している。構造Iの中程度のドナーモノマーは、このコポリマー組成物中にて、50mol%まで、ある場合には、47.5mol%まで、典型的には、45mol%まで、ある場合には、40mol%までのレベルで、存在している。使用される構造Iの中程度のドナーモノマーのレベルは、このコポリマー組成物内に組み込まれる特性により、決定される。構造1の中程度のドナーモノマーに由来の残基は、このコポリマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0090】
成分(c)のコポリマーにおいて使用され得る他の適切なドナーモノマーには、エチレン、ブテン、スチレン、置換スチレン、メチルスチレン、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルピリジン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびジビニルナフタレンが挙げられるが、これらに限定されない。ビニルエステルには、カルボン酸のビニルエステルが挙げられ、これらには、酢酸ビニル、酪酸ビニル、3,4−ジメトキシ安息香酸ビニルおよび安息香酸ビニルが挙げられるが、これらに限定されない。他のドナーモノマーの使用は任意であり、他のドナーモノマーが存在しているとき、それらは、このコポリマー組成物の少なくとも0.01mol%、しばしば、少なくとも0.1mol%、典型的には、少なくとも1mol%、ある場合には、少なくとも2mol%のレベルで存在している。これらの他のドナーモノマーは、25mol%まで、ある場合には、20mol%まで、典型的には、10mol%まで、ある場合には、5mol%までで存在し得る。使用される他のドナーモノマーのレベルは、このコポリマー組成物に組み込まれる特性により、決定される。他のドナーモノマーに由来の残基は、このコポリマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0091】
このコポリマー(c)は、そのコポリマー鎖に沿って、交互ドナーモノマー−アクセプターモノマー単位の一部として、アクセプターモノマーを含有する。任意の適切なアクセプターモノマーが使用され得る。このドナーの調製において使用されるようなアクセプターモノマーは、ルイス酸と解釈されるべきではなく、触媒としてのその使用は、上記のように本発明において所望ではないことが理解される。適切なアクセプターモノマーには、強力なアクセプターモノマーおよび中程度のアクセプターモノマーが挙げられる。適切なアクセプターモノマーの非限定的な種類には、構造(II)で記載されるものがある:
【0092】
【化12】

ここで、Wは、−CN、−Xおよび−C(=O)−Yからなる群から選択され、ここで、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NRおよび−ORからなる群から選択され、Rは、H、直鎖または分枝C〜C20アルキル、および直鎖または分枝C〜C20アルキルオールからなる群から選択され、Rは、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、直鎖または分枝C〜C20アルキル、アルキルオール、アリールおよびアラルキル、直鎖または分枝C〜C20フルオロアルキル、フルオロアリールおよびフルオロアラルキル、ポリシロキサンラジカルからなる群から選択され、Rは、二価直鎖または分枝C〜C20アルキル連結基であり、そしてXは、ハロゲン化物である。
【0093】
このコポリマー組成物に含まれる種類の中程度のアクセプターモノマーは、アクリルアクセプターモノマーである。適切なアクリルアクセプターモノマーには、構造(III)で記載されたものが挙げられる:
【0094】
【化13】

ここで、Yは、−NR、−O−R−O−C(=O)−NRおよび−ORからなる群から選択され、Rは、H、直鎖または分枝C〜C20アルキル、および直鎖または分枝C〜C20アルキルオールからなる群から選択され、Rは、H、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、直鎖または分枝C〜C20アルキル、アルキルオール、アリールおよびアラルキル、直鎖または分枝C〜C20フルオロアルキル、フルオロアリールおよびフルオロアラルキル、ポリシロキサンラジカルからなる群から選択され、そしてRは、二価直鎖または分枝C〜C20アルキル連結基である。特に有用な種類のアクリルアクセプターモノマーには、構造IIIで記載されたものがあり、ここで、Yは、以下から選択される少なくとも1個の官能基を含む:ヒドロキシ、アミド、オキサゾリン、アセトアセテート、ブロック化イソシアネート、カーバメートおよびアミン。Y基は、カルボン酸塩、アミン塩、四級化アンモニウム、四級化ホスホニウムおよび三元スルホニウムから選択される塩基に変換され得る。
【0095】
本発明の成分(c)において使用され得る適切なアクセプターモノマーの例には、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリルアミド、アクリル酸パーフルオロメチルエチル、アクリル酸パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロブチルエチル、アクリル酸トリフルオロメチルベンジル、パーフルオロアルキルエチル、アクリロキシアルキル末端ポリジメチルシロキサン、アクリロキシアルキルトリス(トリメチルシロキシシラン)、アクリロキシアルキルトリメチルシロキシ末端ポリエチレンオキシド、クロロトリフルオロエチレン、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、およびn−ブトキシメチルアクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
構造IIIのアクリルアクセプターモノマーは、このコポリマー組成物中にて、少なくとも15mol%、ある場合には、少なくとも25mol%、典型的には、少なくとも30mol%、ある場合には、少なくとも35mol%のレベルで存在している。構造IIIのアクリル受容体モノマーは、このコポリマー組成物中にて、50mol%まで、ある場合には、47.5mol%まで、典型的には、45mol%まで、ある場合には、40mol%までのレベルで、存在している。使用される構造IIIのアクリルアクセプターモノマーのレベルは、このコポリマー組成物内に組み込まれる特性により、決定される。構造IIIのアクリルアクセプターモノマーに由来の残基は、このコポリマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0097】
本発明の成分(c)で使用され得る他の適切な中程度のアクセプターモノマーには、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ハロゲン化ビニル、クロトン酸、スルホン酸ビニルアルキルおよびアクロレインが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化ビニルには、塩化ビニルおよびフッ化ビニリデンが挙げられるが、これらに限定されない。他の中程度のアクセプターモノマーの使用は任意であり、他の中程度のアクセプターモノマーが存在しているとき、それらは、このコポリマー組成物の少なくとも0.01mol%、しばしば、少なくとも0.1mol%、典型的には、少なくとも1mol%、ある場合には、少なくとも2mol%のレベルで存在している。これらの他のアクセプターモノマーは、35mol%まで、ある場合には、25mol%まで、典型的には、15mol%まで、ある場合には、10mol%までで存在し得る。使用される他のアクセプターモノマーのレベルは、このコポリマー組成物に組み込まれる特性により、決定される。他のアクセプターモノマーに由来の残基は、このコポリマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0098】
コポリマー(c)は、少なくとも250、多くの場合、少なくとも500、典型的には、少なくとも1,000、ある場合には、少なくとも2,000の分子量を有する。このコポリマーは、1,000,000まで、多くの場合、500,000まで、典型的には、100,000まで、ある場合には、50,000までの分子量を有し得る。特定の用途には、本発明のコポリマーの分子量が25,000を超えない、ある場合には、20,000を超えない、特定の場合には、16,000を超えないことが必要である。このコポリマーの分子量は、そのコポリマー組成物に組み込まれる特性に基づいて、選択される。このコポリマーの分子量は、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、変わり得る。
【0099】
このコポリマーの多分散指数(PDI)は、常に重要である訳ではない。このコポリマーの多分散指数は、通常、4未満、多くの場合、3.5未満、典型的には、3.0未満、ある場合には、2.5未満である。本明細書中および請求の範囲で使用する場合、「多分散指数」は、以下の等式から決定される:(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))。単分散重合体は、1.0のPDIを有する。さらに、本明細書中で使用する場合、MnおよびMwは、ポリスチレン標準を使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィーから決定される。
【0100】
本発明のコポリマー組成物の1実施形態では、ドナーモノマー−アクセプターモノマー対の交互配列は、交互構造IVを有する残基である:
【0101】
【化14】

ここで、R、RおよびWは、上で定義したとおりである。以下のものは、特に好ましい実施形態である:W基を含むモノマー残基は、1種またはそれ以上のアクリルモノマーから誘導され、そしてR基およびR基を含むモノマー残基は、ジイソブチレンおよび/またはイソブチレンから誘導される。本発明のフィルム形成組成物において使用されるコポリマー組成物はまた、他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーを含有し得る。
【0102】
このコポリマー組成物は、組み込んだモノマー残基の全てを交互構造で有し得る。ジイソブチレン(DIIB)およびアクリルモノマー(Ac)の100%交互構造を有するコポリマーセグメントの非限定的な例は、構造Vで示されている:
(V) −Ac−DIIB−Ac−DIIB−Ac−DIIB−Ac−DIIB−Ac−DIIB−Ac−DIIB−Ac−
しかしながら、大ていの場合、このコポリマーは、構造VIで示すように、交互セグメントおよびランダムセグメントを含み、DIIB、Acおよび他のモノマーMのコポリマーである:
【0103】
【化15】

構造VIは、コポリマーが、囲みで示した交互セグメントおよび下線を引いたセグメントで示したランダムセグメントを含み得る実施形態を示す。
【0104】
このコポリマーのランダムセグメントは、交互構造によってこのコポリマー組成物に組み込まれていないドナーモノマー残基またはアクセプターモノマー残基を含み得る。このコポリマー組成物のランダムセグメントは、さらに、他のエチレン性不飽和モノマーに由来の残基を含み得る。本明細書中に記載されるように、ドナーモノマー−アクセプターモノマー対の交互配列から誘導されたポリマーセグメントの全ての言及は、構造VIの囲みで示したもののようなモノマー残基のセグメントを含むことを意味している。
【0105】
他のエチレン性不飽和モノマーには、アクセプターモノマーまたはドナーモノマーには伝統的に分類されない任意の適当なモノマーが挙げられる。
【0106】
他のエチレン性不飽和モノマー、すなわち、構造VIの残基Mは、少なくとも1種のエチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマーから誘導される。本明細書中および請求の範囲で使用する「エチレン性不飽和ラジカル重合可能モノマー」および類似の用語は、ビニルモノマー、アリルモノマー、オレフィン、およびラジカル重合可能でドナーモノマーまたは受容体モノマーには分類されない他のエチレン性不飽和モノマーを含むことを意味する。
【0107】
Mが誘導され得る種類のビニルモノマーには、一般式VIIのモノマーから誘導されたモノマー残基が挙げられるが、これらに限定されない:
【0108】
【化16】

ここで、R、RおよびRは、独立して、H、CF、1個〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、アリール、2個〜10個の炭素原子を有する不飽和直鎖または分枝アルケニルまたはアルキニル、2個〜6個の炭素原子を有する不飽和直鎖または分枝アルケニル(これは、ハロゲン、C〜Cシクロアルキル、ヘテロシクリルおよびフェニルで置換されている)からなる群から選択され;Rは、H、C〜Cアルキル、COOR15(ここで、R15は、H、アルカリ金属、C〜Cアルキル基、グリシジルおよびアリールからなる群から選択される)からなる群から選択される。
【0109】
残基Mが誘導され得るアルキル基内に1個〜20個の炭素原子を有するアルキルメタクリレートの特定の例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレートだけでなく、官能性メタクリレート(例えば、ヒドロキシアルキルメタクリレート、オキシラン官能性メタクリレートおよびカルボン酸官能性メタクリレート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
残基Mはまた、1個より多いメタクリレート基を有するモノマー(例えば、無水メタクリル酸およびジエチレングリコールビス(メタクリレート))から選択され得る。
【0111】
本明細書中および請求の範囲で使用される「アリルモノマー」とは、置換および/または非置換アリル官能性、すなわち、以下の一般式VIIIにより表わされる1個またはそれ以上のラジカルを含むモノマーを意味する:
(VIII) HC=C(R10)−CH
ここで、R10は、水素、ハロゲン、またはC〜Cアルキル基である。最も一般的には、R10は、水素またはメチルであり、結果的に、一般式VIIは、非置換(メタ)アリルラジカルを表わし、これは、アリルラジカルおよびメタリルラジカルの両方を包含する。アリルモノマーの例としては、(メタ)アリルアルコール;(メタ)アリルエーテル(例えば、メチル(メタ)アリルエーテル);カルボン酸のアリルエステル(例えば、酢酸(メタ)アリル、酪酸(メタ)アリル、3,4−ジメトキシ安息香酸(メタ)アリルおよび安息香酸(メタ)アリル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
本発明のフィルム形成組成物中の成分(c)として使用されるコポリマー組成物は、以下の工程を包含する方法により、調製される:(a)構造(I)の1種またはそれ以上のドナーモノマーを含有するドナーモノマー組成物を提供する工程;(b)1種またはそれ以上のアクセプターモノマーを含有するエチレン性不飽和モノマー組成物を添加する工程。本発明の実施形態では、このエチレン性不飽和モノマー組成物には、構造IIIのモノマーが挙げられる。エチレン性不飽和モノマー組成物は、適切な反応容器中で、遊離ラジカル重合開始剤の存在下で、ドナーモノマー組成物に添加される。モノマー溶液および得られるコポリマー組成物は、好ましくは、マレエート系モノマー、フマレート系モノマー、ルイス酸、および遷移金属を実質的に含まない。
【0113】
本発明の方法の実施形態において、構造Iのモノマーは、アクリルアクセプターモノマーの量に基づいて、モル過剰で存在している。所望の交互構造の形成を促すために、本発明では、任意の過剰量の構造Iのモノマーが使用され得る。構造Iのモノマーの過剰量は、アクリルアクセプターモノマーの量に基づいて、少なくとも10mol%、ある場合には、25mol%まで、典型的には、50mol%まで、ある場合には、100mol%までであり得る。構造Iのモノマーのモル過剰が高すぎるとき、そのプロセスは、商業規模では、経済的ではないかもしれない。
【0114】
本発明の方法のさらなる実施形態において、このアクリルアクセプターモノマーは、そのドナーモノマー組成物とエチレン性不飽和モノマー組成物とを合わせた合計の少なくとも15mol%、ある場合には、17.5mol%、典型的には、少なくとも20mol%、ある場合には、25mol%の量でコポリマー中に存在している。このアクリルアクセプターモノマーは、さらに、ドナーモノマー組成物とエチレン性不飽和モノマー組成物とを合わせた合計の50mol%まで、ある場合には、47.5mol%まで、典型的には、45mol%まで、ある場合には、40mol%までの量で、存在し得る。使用されるアクリルアクセプターモノマーのレベルは、このコポリマー組成物内に組み込まれる特性により、決定される。これらのアクリルアクセプターモノマーは、このモノマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0115】
本発明の方法のエチレン性不飽和モノマー組成物は、Mおよび上記で指定した他のモノマーだけでなく、上記のような他のドナーモノマーを含有し得る。本発明の方法では、他の中程度のアクセプターモノマーの使用は任意である。他の中程度のアクセプターモノマーが存在しているとき、それらは、そのコモノマー組成の少なくとも0.01mol%、しばしば、少なくとも0.1mol%、典型的には、少なくとも1mol%、ある場合には、少なくとも2mol%のレベルで存在している。これらの他のアクセプターモノマーは、35mol%まで、ある場合には、25mol%まで、典型的には、15mol%まで、ある場合には、10mol%までで存在し得る。本明細書中で使用される他のアクセプターモノマーのレベルは、このコポリマー組成物に組み込まれる特性により、決定される。他のアクセプターモノマーに由来の残基は、このコポリマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0116】
他のモノマーMの使用は、任意である。他のモノマーが存在しているとき、それらは、このコポリマー組成物の少なくとも0.01mol%、しばしば、少なくとも0.1mol%、典型的には、少なくとも1mol%、ある場合には、少なくとも2mol%のレベルで存在している。これらの他のモノマーは、35mol%まで、ある場合には、25mol%まで、典型的には、15mol%まで、ある場合には、10mol%までで、存在し得る。使用される他のモノマーのレベルは、このコポリマー組成物内に組み込まれる特性により、決定される。他のモノマーMに由来の残基は、このコポリマー組成物中にて、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、存在し得る。
【0117】
本発明の実施形態では、構造Iのモノマーの過剰量が使用され、構造Iの未反応モノマーは、蒸発により、得られたコポリマー組成物から除去される。未反応モノマーの除去は、典型的には、反応容器に真空を適用することにより、促進される。
【0118】
任意の適切な遊離ラジカル開始剤が、コポリマー(c)を調製するために使用され得る。適切な遊離ラジカル開始剤の例としては、熱遊離ラジカル開始剤、光開始剤およびレドックス開始剤が挙げられるが、これらに限定されない。適切な熱遊離ラジカル開始剤の例としては、過酸化物化合物、アゾ化合物および過硫酸塩化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
適切な過酸化物化合物開始剤の例としては、過酸化水素、過酸化メチルエチルケトン、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジ−t−アミル、過酸化ジクミル、過酸化ジアシル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、過酸化ジアルキル、ヒドロペルオキシド、ペルオキシケタールおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
適切なアゾ化合物の例としては、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(バレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩および2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
コポリマー(c)の調製に置いて、このエチレン性不飽和モノマー組成物および遊離ラジカル重合開始剤は、別々および同時に加えられ、そしてドナーモノマー組成物と混合される。このエチレン性不飽和モノマー組成物および遊離ラジカル重合開始剤は、少なくとも15分間、ある場合には、少なくとも20分間、典型的には、少なくとも30分間、ある場合には、少なくとも1時間の時間にわたって、このドナーモノマー組成物に加えられ得る。このエチレン性不飽和モノマー組成物および遊離ラジカル重合開始剤は、さらに、24時間まで、ある場合には、18時間まで、典型的には、12時間まで、ある場合には、8時間までの時間にわたって、このドナーモノマー組成物に加えられ得る。このエチレン性不飽和モノマーを加える時間は、未反応アクリルアクセプターモノマーよりも適切に過剰な構造Iのドナーモノマーを維持してドナーモノマーアクセプターモノマー交互セグメントの形成を促すのに十分でなければならない。この添加時間は、そのプロセスを商業規模で経済的に実行できなくするほどには長くない。この添加時間は、上で述べたものを含めた任意の範囲の値で、変わり得る。
【0122】
混合後、または添加中および混合中にて、これらのモノマーの重合が起こる。本発明の重合方法は、任意の適切な温度で実行できる。重合に適切な温度は、周囲温度、少なくとも50℃、多くの場合、少なくとも60℃、典型的には、少なくとも75℃、ある場合には、少なくとも100℃であり得る。適切な温度は、300℃まで、多くの場合、275℃まで、典型的には、250℃まで、ある場合には、225℃までとして、記述され得る。この温度は、典型的には、使用するモノマーおよび開始剤から良好な反応性を引き出すのに十分に高い。しかしながら、これらのモノマーの揮発性および対応する分圧により、温度の実用的な上限が生じ、これは、その反応容器の圧力評点により、決定される。その重合温度は、上で述べたものを含めた任意の範囲の値で、変わり得る。
【0123】
本発明の重合方法は、任意の適当な圧力で、実行できる。本発明の方法に適当な圧力は、常圧、少なくとも1psi、多くの場合、少なくとも5psi、典型的には、少なくとも15psi、ある場合には、少なくとも20psiであり得る。重合に適当な圧力は、さらに、200psiまで、多くの場合、175psiまで、典型的には、150psiまで、ある場合には、125psiまでであると記載され得る。この圧力は、典型的には、これらのモノマーおよび開始剤を液相で維持するのに十分に高い。使用する圧力は、使用される反応容器の圧力評点に基づいた実用的な上限を有する。重合温度の間の圧力は、上で述べた値を含めた任意の範囲の値で、変わり得る。
【0124】
生じるコポリマーは、当該技術分野で公知の方法による官能基変換を使用することにより、他の重合体の調製用の出発物質として、利用され得る。これらの方法により導入できる官能基には、カルボン酸、カルボン酸塩、アミン、アミン塩、四級アンモニウム、スルホニウム塩、リン酸塩、エポキシ、ヒドロキシ、アミド、オキサゾリン、アセトアセテート、イソシアネート、カーバメート、チオエーテルおよびスルフィドがある。
【0125】
例えば、アクリル酸メチルを含むコポリマーは、カルボメトキシ基を含有する。これらのカルボメトキシ基は、カルボキシル基に水和できるか、またはアルコールとエステル交換してアルコールの対応するエステルを形成できる。アンモニアを使用して、上述のアクリル酸メチルコポリマーは、アミドに変換できるか、あるいは一級または二級アミンを使用して、対応するN置換アミドに変換できる。同様に、エチレンジアミンのようなジアミンを使用して、本発明の方法の上述のコポリマーをN−アミノエチルアミドに変換できるか、またはエタノールアミンを使って、N−ヒドロキシエチルアミドに変換できる。このN−アミノエチルアミド官能基は、さらに、脱水により、オキサゾリンに変換できる。このN−アミノエチルアミドは、さらに、炭酸プロピレンのような炭酸エステルと反応されて、対応するウレタン官能性コポリマーを形成できる。これらの変換は、そのカルボメトキシ基の全てを変換するように実行できるか、またはそれらのカルボキシメチル基の一部をそのままにして、部分的に実行できる。
【0126】
このコポリマー(c)には、そのコポリマーの調製においてアクリル酸グリシジルを使用することにより直接的に、または官能基変換により間接的に、エポキシ基が導入できる。間接方法の一例には、このコポリマー中の残留不飽和を、過酸(例えば、過酢酸)を使用して、エポキシ基に酸化することがある。あるいは、上記のように加水分解し、そのカルボキシ官能性コポリマーをエピクロロヒドリンに次いでアルカリで処理して、このエポキシ官能性コポリマーを生成することによって、調製できる。これらの変換もまた、完全にまたは部分的に実行できる。得られたエポキシ官能性コポリマーは、さらに、適当な活性水素含有試薬と反応されて、アルコール、アミンまたはスルフィドを形成できる。
【0127】
コポリマーに、ヒドロキシル官能性モノマー(例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル)を使用して直接、または官能基変換により、水酸基が導入できる。上記カルボキシル官能性コポリマーをエポキシで処理することにより、ヒドロキシル官能性重合体が生成できる。適当なエポキシドには、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびグリシジルネオデカノエートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
ヒドロキシル官能性モノマーは、コポリマーの調製において特に好ましい。いずれの理論によっても束縛されることを意図しないが、コポリマー中のヒドロキシル官能基(特に、一級ヒドロキシル官能基)は、基材への適用の際に本発明の硬化性フィルム形成組成物によって示されるたわみ制御および改善された水平化に寄与すると考えられる。
【0129】
上記ヒドロキシル官能性コポリマーは、さらに、反応されて、他のコポリマーを形成できる。例えば、ヒドロキシエチル基を含有するコポリマーは、カルバミル化剤(例えば、カルバミン酸メチル)で処理されて、対応するカーバメート官能性コポリマーを生成できる。ジケテンまたはアセト酢酸t−ブチルを使って、これらの水酸基はまた、アセト酢酸エステルに変換できる。
【0130】
イソシアネート官能性コポリマーもまた、生成できる。2個またはそれ以上の水酸基を含有するコポリマーは、ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート)で処理されて、イソシアネート官能性重合体を生成できる。上記の一級アミン官能性コポリマーは、ホスゲン化されて、イソシアネート官能基を生じることができる。
【0131】
イオン性官能基は、当該分野において公知の任意の手段によって、コポリマー(c)に組み込まれ得る。カルボキシレート基は、コポリマー中のエステル基を加水分解し、次いで、塩基と反応させることによって、導入され得る。アミン塩は、本発明のコポリマーを、アミン官能性アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート)を用いて調製し、次いで、酸でアミノ基をプロトン化することによって、導入され得る。アミン塩はまた、グリシジル官能性コポリマーをアンモニアまたは活性水素含有アミンと反応させ、次いで、酸でプロトン化することによって、導入され得る。四級アンモニウム官能基または三級スルホニウム基は、本発明の方法のエポキシ官能性コポリマーを、プロトン性酸の存在下で、それぞれ三級アミンまたはスルフィドで処理することによって、コポリマーに導入され得る。
【0132】
一般に、コポリマー(c)は、フィルム形成組成物中の樹脂固形物の総重量に基づいて、約0.5〜約10重量%、代表的には、約1〜約10重量%、そしてより頻繁には、約2.5〜約10重量%の範囲の量で存在する。
【0133】
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、添加剤、例えば、硬化したコーティングのすべり特性を改善するためのワックス、脱気添加剤(例えば、ベンゾイン、コーティング特性を改変および最適化するアジュバント樹脂)、酸化防止剤および紫外(UV)光吸収剤を含有し得る。有用な酸化防止剤およびUV光吸収剤の例には、IRGANOXおよびTINUVINの商標でCiba Specialty Chemicalから市販されているものが挙げられる。これらの任意の添加剤は、使用されるとき、代表的には、この熱硬化性組成物の樹脂固形物の全重量に基づいて、20重量%までの量で存在している。
【0134】
いずれの1セットの官能基にも限定されることを望まずに、本発明の硬化性フィルム形成組成物において使用され得る共反応性官能基のいくつかの例が存在する。第一の成分(a)の官能基は、エポキシまたはオキシラン、カルボン酸、ヒドロキシ、アミド、オキサゾリン、アセトアセテート、イソシアネート、メチロール、メチロールエーテル、あるいはカーバメートであり得るが、これらに限定されない。架橋成分(b)は、第一の反応物の官能基に共反応性である、少なくとも2つの官能基を有し、そしてエポキシまたはオキシラン、カルボン酸、ヒドロキシ、イソシアネート、キャップされたイソシアネート、アミン、メチロール、メチロールエーテル、およびβ−ヒドロキシアルキルアミドであり得るが、これらに限定されない。
【0135】
本発明のフィルム形成組成物は、好ましくは、多成分複合コーティング組成物(例えば、「カラープラスクリア」コーティング系であり、これは、少なくとも1つの顔料ベースコートまたは着色ベースコートおよび少なくとも1つのクリアトップコートを備える)において、クリアコート層として使用される。この実施形態において、クリアフィルム形成組成物は、本発明の水性組成物を含有し得る。
【0136】
カラープラスクリア系におけるベースコートのフィルム形成組成物は、コーティングの用途、特に、自動車への用途において有用な、任意の組成物であり得る。ベースコートのフィルム形成組成物は、樹脂製結合剤、および着色剤として働く顔料を含有する。特に有用な樹脂性結合剤は、アクリルポリマー、ポリエステル(アルキドを含む)、およびポリウレタンである。原子移動ラジカル重合を使用して調製されたポリマーもまた、ベースコートにおいて樹脂性結合剤として使用され得る。
【0137】
ベースコート組成物は、溶媒系であっても、水系であってよい。カラー−プラス−クリア組成物中の水系のベースコートは、米国特許第4,403,003号に開示され、これらのベースコートを調製する際に使用される樹脂様組成物は、本発明の実施において使用され得る。また、水系ポリウレタン(例えば、米国特許第4,147,679号に従って調製されるポリウレタン)は、ベースコート中の樹脂様結合剤として使用され得る。さらに、水系コーティング(例えば、米国特許第5,071,904号に記載されるコーティング)は、ベースコートとして使用され得る。
【0138】
ベースコートは、それに色を与える顔料を含有する。適切な顔料は、上で議論された顔料を含む。一般的に、顔料は、コーティング固体の重量に基づいて約1〜80重量%の量でコーティング組成物中に組込まれる。金属顔料は、コーティング固体の重量に基づいて約0.5〜25重量%の量で使用される。
【0139】
所望される場合、ベースコート組成物は、処方された表面コーティングの分野において周知のさらなる物質(上に議論される物質を含む)を含み得る。これらの物質は、コーティング組成物の全重量に基づいて40重量%まで構成し得る。
【0140】
ベースコーティング組成物は、これらが従来の方法(しかし、これらは、大部分、噴霧によって適用される)によって付着する種々の基材に適用され得る。通常のスプレー技術ならびにエアスプレーおよび静電噴霧のための装置ならびに手動方法および自動方法のいずれかは、使用され得る。
【0141】
基材に対するベースコート組成物の適用の間、ベースコートのフィルムは、基材上に形成される。代表的には、ベースコート厚は、約0.01〜5ミル(0.254〜127ミクロン)、好ましくは、0.1〜2ミル(2.54〜50.8ミクロン)厚である。
【0142】
基材に対するベースコートの適用の後、クリアコートが、溶媒が、ベースコート組成物を溶解することなく、ベースコートに適用され得ることを十分保証し、なおベースコートを十分硬化するのに不十分である期間、加熱または空気乾燥することによって、溶媒をベースコートフィルムから追い出すことによって、フィルムは、基材の表面上に形成される。1つを超えるベースコートおよび複数のクリアコートは、最適な外見を作り出すために適用され得る。通常、コーティングの間、以前に適用されたコートは、フラッシュされる。
【0143】
クリアトップコート組成物は、任意の従来のコーティング技術(ブラッシング、噴霧、ディッピング、またはフローリング)によってベースコートされた基材に適用され得るが、スプレー適用が、優秀な光沢に起因して好ましい。任意の公知の噴霧技術(例えば、圧縮された空気噴霧、静電噴霧、および手動方法または自動方法いずれか)が使用され得る。
【0144】
ベースコートに対するクリアコート組成物の適用の後、コートされた基材は、コーティング層を硬化するために加熱され得る。硬化操作において、溶媒を、追い出し、組成物中のフィルム形成物質が、架橋される。加熱操作または硬化操作は、通常、少なくとも周囲温度(遊離ポリイソシアネート架橋剤の場合)〜350°F(周囲温度〜177℃)の範囲の温度で実施されるが、必要な場合、より低い温度またはより高い温度は、架橋機構を活性化するために必要であるので使用され得る。
【0145】
本発明の水性フィルム形成組成物は、垂直に配向された基材に対して適用される場合、改善された垂れ下がり(sag)耐性を示し、成分(c)のコポリマーを含まない従来のフィルム形成組成物と比較する場合、改善されたポップ耐性を示す。
【0146】
本発明は、例示のみであることが意図される、以下の実施例においてより詳細に記載される。なぜなら、種々の改変およびその中のバリエーションが、当業者に明らかであるからである。他に特に示されない限り、全ての部およびパーセンテージは、重量による。
【実施例】
【0147】
(実施例AおよびB)
実施例AおよびBは、本発明に従うイソブチレンまたはジイソブチレンを含むコポリマーの調製物を示す。反応物を、以下に記載されるとおりに合わせた。
【0148】
【化17】

実施例Aのコポリマーを調製するために、チャージ1を、攪拌子、熱電対、および窒素入口を備える反応容器に添加した。容器を密封し、溶液を、窒素ブランケット下に配置し、150℃まで加熱した。チャージ2を、2.5時間にわたって反応容器に添加した。チャージ2を開始した15分後、チャージ3およびチャージ4を、2時間の期間にわたって開始した。さらなる期間の間、反応容器温度を、140〜160℃に維持し、圧力は、5psi〜62psiまで変化した。チャージ2の終了後、反応混合物を、150℃で2時間維持した。固体を、サンプルを110℃に1時間維持し、重量損失を計算することによって決定した。分子量を、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定し、COOH当量を、0.1Nメタノール性KOHで滴定することによって決定し、プロセスされた固体で2604g/COOHであることを見出した。
【0149】
実施例Bのコポリマーを調製するために、チャージ1を、攪拌子、熱電対、および窒素入口を備える反応容器に添加した。容器を密封し、溶液を、窒素ブランケット下に配置し、150℃まで加熱した。チャージ2を、2.5時間にわたって反応容器に添加した。チャージ2を開始した15分後、チャージ3およびチャージ4を、2時間の期間にわたって開始した。さらなる期間の間、反応温度を、140〜160℃に維持し、圧力は、40psi〜360psiまで変化した。チャージ2の終了後、反応混合物を、140〜160℃で2時間維持した。固体を、サンプルを110℃に1時間維持し、重量損失を計算することによって決定した。分子量を、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィーによって決定し、COOH当量を、0.1Nメタノール性KOHで滴定することによって決定し、プロセスされた固体で2611g/COOHであることを見出した。
【0150】
(実施例C)
この実施例は、硬化可能なフィルム形成組成物中の樹脂性結合剤として使用されるように、アクリル性ラテックスの調製を示す。
【0151】
【化18】

(注釈)
19.90:10.15:30.30:11.00:28.65重量比、メチルイソブチルケトン中64重量%固体で、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、スチレン、アクリル酸、CARDURA E(第3級脂肪族カルボン酸の混合物のグリシジルエステル、Shell Chemical Companyから市販される)から調製されたコポリマー
メチルイソブチルケトン中70%固体での、3,5−ジメチルピラゾールでブロックされた1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート(Baxenden Chemicals Limited,England市販された)
Ciba−Geigy Corporationから入手可能
立体的に妨げられた第3級アミン光安定化剤(Ciba Geigy Corporationから入手可能)
BYK Chemie USAから入手可能
DuPontから60%固体溶液として入手可能
Air Products and Chemicals Co.から入手可能なアセチレン性アルコール界面活性剤
Crucible Chemicalから入手可能な脂肪族炭化水素。
【0152】
チャージ番号1および2を順番に反応フラスコに加え、均質になるまで混合した。チャージ番号4を25℃、350rpmで別々に加熱した。チャージ番号1および2の混合物を1時間かけてチャージ番号4に加えた。添加が完了すると、チャージ番号3をリンスとしてフラスコに加え、そして少なくとも30分間その混合物を保持した。この混合物を、冷却水を用いて、11,500psiにてMicrofluidizer(登録商標)ホモジナイザー(Microfluidics Corporationから入手可能)を通過させた。チャージ番号5を、続けてリンスとしてホモジナイザーに通し、全体の混合物を全蒸留のために設定した。次いで、チャージ番号6を撹拌下(350rpm)でバッチに加えた。窒素による追い出しを開始し、続いて、450〜550mmHgで真空にした。バッチを40℃まで加熱し、必要に応じて温度を上昇させた(最高60℃)。真空を必要に応じて100mmHgより高くにゆっくりと高め、Nを使用して発泡物を制御した。脱イオン水を必要に応じて加え、固形分を46.0+/−1.5%まで調整した。反応生成物を40℃より下まで冷却し、次いで、5ミクロン(ジャケット付)フィルターバッグを通して濾過した。得られた分散物は、約46%の樹脂固形含量、pH8.7、および約1600オングストロームの粒径を有した。
【0153】
(実施例1〜10)
実施例1〜10は、硬化可能フィルム形成組成物の調製を示す。実施例1および6は、コントロールであり、イソブチレン型モノマーのコポリマーを含まない。実施例2〜5は、本発明に従う漸増レベルのジイソブチレン含有コポリマーを使用する、硬化可能フィルム形成組成物の調製を示す。実施例7〜10は、本発明に従う漸増レベルのイソブチレン含有コポリマーを使用する、硬化可能フィルム形成組成物の調製を示す。
【0154】
成分を以下のように混合した。
【0155】
【化19】

*RS/TW:報告された第1の数字は、処方物に加えられた成分の樹脂固形重量であり;報告された第2の数字は、処方物に加えられた成分の全重量である。
1,2Acrylic Latex:実施例Cにおいて調製された水性アクリル樹脂であり、固形含量は、それぞれ、44.5重量%、および49.0重量%である。
Dynol(登録商標)604:Air Products and Chemicals,Inc.から入手可能なエトキシ化アセチレンジオール。
Cymel(登録商標)327:Cytec Industries,Inc.から入手可能な、イソブタノール中の高メチル化、高イミノ含有量メラミンホルムアルデヒド樹脂。
Aerosil(登録商標)200ヒューム状シリカ(Degussa Corporationから入手可能)。
Borchi Gel(登録商標)LW44(Borchersから入手可能)。
#4DINカップを使用して測定した粘度。
【0156】
第1の前混合において、Cymel(登録商標)327を撹拌し、Aerosil(登録商標)200を90:10の比(Cymel(登録商標)327:Aerosil(登録商標)200)で加えた。次いで、混合物を顔料分散ミル(Eigerミル)中で混合し、Hegan値7+を達成する。第2の前混合において、0.2部のドデシルベンゼン硫酸を、ジメチルエタノールアミン(脱イオン水中50%)をゆっくりと加えながら、撹拌した。第3の前混合において、0.24部のBorchi Gel(登録商標)LW44を、前混合物が均一の粘稠度になるまで脱イオン水を加えながら、撹拌した。
【0157】
アクリルラテックスを撹拌下に置き、Dynol(登録商標)604を加えた。混合物を撹拌して、完全な取り込みを確認した。次いで、以下を穏やかな撹拌下で順番に加えた:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、イソブチルアルコール、イソステアリルアルコール、および実施例Aのコポリマー。混合物を再び撹拌し、完全な取り込みを確認した。次いで、以下の成分を、各々の添加後に撹拌しながら別個に加えた:脱イオン水、前混合物1、および前混合物2。前混合物3を使用して、粘度を調製した。
【0158】
【化20】

実施例1〜10のフィルム形成組成物を、2つの別個のセットのプライマー処理されベースコーティングされた鋼基材パネル上に、特性試験のために塗布した。基材上で使用したプライマーは、PPG Industries,Inc.から市販されており、1177225ARおよびGPX05379として同定される。1つのセットのパネルにおいて、基材上で使用されるベースコーティングは、PPG Industries,Inc.から市販されており、EWB Silverとして同定される。第2のセットのパネルにおいて、基材上で使用されるベースコーティングは、PPG Industries,Inc.から市販されており、EWB Blackとして同定される。実施例1〜10のフィルム形成組成物を、約75°F(24℃)の湿度で鋼パネルに対する2つのコーティングにおいてスプレー塗布した。2つのコーティングの間で約90秒の第2のフラッシュ時間、放置した。次いで、得られたコーティングを75°F(24℃)で10分間空気フラッシュし、その後、2段階焼固して、フィルム形成組成物を硬化させた。第1の段階は、10分間176°F(80℃)焼固であり、第2の段階は、293°F(145℃)で22分の焼固であった。
【0159】
コーティングパネルの外観および物理特性を、以下の試験において記載されるように測定した。DOI(画像の鮮明度)を、Hunter LabからのDorigon II(登録商標)DOIメーターを使用して測定した。20°での鏡面光沢およびくもりを、BYK Gardner(登録商標)Haze−光沢メーターによって測定した。より高い光沢およびDOI数は、より良い性能を示す。より高いくもり値は、より高い程度のくもりまたは透明性の欠如を示す。クリアコーティグの滑らかさを、Byk Wavescan Plas(登録商標)機器を使用して測定した。ここでその結果は、長波数および短波数および張力値として報告する。より低い長波数および短波数は、より滑らかなフィルムを示す。より高い張力値もまた、より滑らかなフィルムを示す。硬度をASTM D
2134によって決定した。
【0160】
明度(L)を、MacBeth Color Eye(登録商標)3000 Spectrophotometer(Kollmorgen InstrumentsのMacbeth部門から入手可能)を使用して決定した。明度測定を、湿度試験の前後で実施し、その差(dL)も記録した。0に近いdL値(正または負)は、より良い性能を示す。
【0161】
スポット試験は、Mercedes PBO 27971 Chemical Resistance試験法に基づく。この試験は、BYK Gardner(登録商標)Model 2615 Gradient Ovenを使用する。この勾配オーブンは、1要素あたり1℃の温度差を有し、36℃より高い一定勾配を有する。硬化後、コーティングされた鋼試験パネルを、試験前に室温で少なくとも72時間条件付けする。
【0162】
(硫酸スポット試験)
1%の硫酸溶液を、Multipipette 4780を使用して、25マイクロリットルの液滴として、コーティングされた鋼試験パネルに塗布する。これらの液滴を、液滴間が1センチメートルの距離で塗布する。この手順により、約30℃〜74℃の温度範囲が可能になる。試験パネルを、30分間硫酸液滴に曝露する。その後、液滴を冷水でリンスし、軟らかい紙タオルを用いて注意深く乾燥する。試験パネル上で第1の観察可能な変化の温度を、硫酸スポット耐性として記録する。
【0163】
(水スポット試験)
脱イオン水を、Multipipette 4780を使用して、250マイクロリットルの液滴として塗布する。これらの液滴を、液滴間が2センチメートルの距離で塗布する。初期水スポット試験を、30℃〜74℃の温度範囲で実施する。損傷が観察されない場合、試験を60℃〜104℃の範囲で繰り返す。コーティングされた鋼試験パネルを、30分間水滴に曝露する。その後、液滴を冷水でリンスし、軟らかい紙タオルを用いて注意深く乾燥する。試験パネル上で最初の観察可能な変化の温度を、水スポット耐性として記録する。
【0164】
コーティング試験パネルの引っかき(傷つけ(mar))耐性を、以下の方法を使用して測定した:コーティングパネルの初期20°光沢を測定した。Atlas(登録商標)AATCC Scratch Tester,Model CM−5(Atlas Electrical Devices Company of Chicago,Illinoisから入手可能)を使用して、加重研磨紙によりコーティング表面を直線的に引っかいて、10回の往復摩擦についてコーティングパネルを引っかき試験に供した。使用した研磨紙は、3M 281Q WETORDRYTM PRODUCTIONTM 9−ミクロン研磨紙シートであり、これは、3M Company,St.Paul,Minnesotaから市販されている。次いで、パネルを水でリンスし、注意深く叩いて乾燥した。20°光沢を、各試験パネルの引っかき領域上で測定した。報告される数は、引っかき試験後に保持された初期光沢の%である(すなわち、100% × 引っかき光沢/初期光沢)。引っかいていない試験パネルを、Q Panel Co.により入手可能な風化(weathering)キャビネットにおける、UVA−340電球へのQUV(登録商標)曝露によるシミュレーションされた風化に共した後に、風化後の引っかき耐性(保持された引っかき耐性)を、上記の引っかき試験法を使用して測定した。試験は以下のようであった:70℃で8時間、続いて、50℃で4時間のサイクル(100時間の全曝露時間)。報告される数は、引っかき試験後に保持された初期光沢の%である(すなわち、100 × 保持された引っかき光沢/初期光沢)。
【0165】
硬化フィルムの湿度耐性/基材へのクロスハッチ接着を、ASTM 3359−Bにおいて規定されるように、100%の相対湿度および37.8℃(100°F)で操作する一定湿度チャンバにおいて、240時間後に測定した。評点100は、接着の完全な喪失を意味し、評点0は、接着の損失がないことを意味する。
【0166】
硬化組成物についての試験結果を、以下の表に示す。
【0167】
【表1】

【0168】
【表2】

【0169】
【表3】

【0170】
【表4】

表中のデータは、本発明に従って調製された硬化可能フィルム形成組成物が、他の本質的な特性(例えば、光沢、DOI、傷付け(mar)耐性および酸腐食耐性)を有意に損なうことなく、減少短波スキャン測定によって証明されるように、改善された流れ特性を実証することを示す。
【0171】
本発明は、その特定の実施形態の特定の詳細を参照して記載されている。このような詳細は、それらが添付の特許請求の範囲に含まれる程度を除いて、本発明の範囲に対する限定としてみなされることは意図しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の、組成物。

【公開番号】特開2007−297638(P2007−297638A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175683(P2007−175683)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【分割の表示】特願2003−569690(P2003−569690)の分割
【原出願日】平成15年2月12日(2003.2.12)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】