説明

インクジェットヘッドの研磨装置及びインクジェットヘッドの製造方法

【課題】インク吐出口を開口させたインクジェットヘッドマニホールドのインク吐出面の加工精度を向上させることで、インクジェットヘッドによる印刷品質を高める。
【解決手段】本発明のインクジェットヘッドの研磨装置71は、水平面に沿って研削面76aを回転変位させつつ自転する砥石76と、後にオリフィスプレート3が接合されるインクジェットヘッドマニホールド2を固定するためのヘッド固定部材73と、ヘッド固定部材保持機構74とを備える。上記のヘッド固定部材73は、固定したインクジェットヘッドマニホールド2のインク吐出面2eを摺接させる状態で砥石76の研削面76a上に載置される。また、ヘッド固定部材保持機構74は、インクジェットヘッドマニホールド2の固定されたヘッド固定部材73の重心位置を、砥石76における研削面76a上の回転中心から偏らせた位置で、ヘッド固定部材73を自転可能に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドの製造時に用いられるインクジェットヘッドの研磨装置及びこの研磨装置を用いて製造することの可能なインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク流路形成用の開口部を設けた複数の金属平板を拡散接合により積層一体化したインクジェットヘッドマニホールドを有するインクジェットヘッドが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この種のインクジェットヘッドは、インク吐出口の開口するインクジェットヘッドマニホールド上のインク吐出面と、例えば、オリフィスとなるインク吐出孔を備えたオリフィスプレートと、を互いに位置合せしつつ接合することで、微細なインク粒子を吐出させるインク吐出経路が構成される。
【0004】
上記のインクジェットヘッドのインク吐出面は、例えば積層された複数の金属平板の端面で構成されているので、その表面には凹凸があらわれることになる。したがって、インクジェットヘッドマニホールド上のこのインク吐出面とオリフィスプレートとは、インク吐出面を平滑に研磨したうえで互いに接合される。
【0005】
ここで、現行の研磨方法では、例えば作業者がインクジェットヘッドマニホールドを人為的に保持しつつインク吐出面を、高速に回転する例えば円板状の砥石表面に押圧することなどで、インク吐出面の研磨が行われている。
【特許文献1】特開2006−231688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の研磨方法では、インクジェットヘッドマニホールドのインク吐出面を作業者が砥石側に人為的に押し付ける不安定な作業に起因して、インク吐出面の各部における砥石側への接触圧が不均一になる。また、インクジェットヘッドマニホールドを作業者が固定的に保持する上記の研磨方法では、回転方向の移動量が大きく研削能力の高い砥石の外周側と回転方向の移動量が小さく研削能力の低い砥石の内周側とに対し、インク吐出面全体が、常に同じ位置で摺動(摺接)することになるため、砥石の外周側と内周側とでインク吐出面の研磨が不均衡に進行することなど懸念される。
【0007】
したがって、従来の研磨方法では、上述したようにインク吐出面の加工精度が低いため、インクの吐出経路を構成するオリフィスプレートとインク吐出面とを適切な状態で接合することが困難となる。この場合、オリフィスプレートからのインクの吐出が阻害され、結果的に印刷品質の低下を招くことになる。
【0008】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、インク吐出口を開口させたヘッド本体のインク吐出面の加工精度を向上させることで、インクジェットヘッドによる印刷品質を高めることができるインクジェットヘッドの研磨装置及びインクジェットヘッドの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るインクジェットヘッドの研磨装置は、インクの流路を内部に備えると共にインク吐出口の開口したインク吐出面を有しかつ前記インク吐出口とつながるインク吐出孔の穿孔されたオリフィス部材が接合されるヘッド本体の前記インク吐出面を研磨するインクジェットヘッドの研磨装置であって、水平面に沿って研削面を回転変位させつつ自転する砥石と、前記ヘッド本体が固定されると共にこの固定されたヘッド本体の前記インク吐出面を前記砥石の前記研削面上に摺接させる状態で当該研削面上に載置されるヘッド固定部材と、前記ヘッド本体を固定して前記砥石の前記研削面上に載置された前記ヘッド固定部材の重心位置を、前記砥石における前記研削面上の回転中心から偏らせた位置で、前記ヘッド固定部材を自転可能に保持するヘッド固定部材保持機構と、を具備することを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明では、回転中の砥石の研削面とヘッド本体のインク吐出面との摺動時にヘッド固定部材に作用するモーメントにより、砥石の回転中心から偏らせたヘッド固定部材の重心位置を基準として、ヘッド固定部材と共にヘッド本体を、砥石の研削面上で自転(回転)させることができる。したがって、本発明によれば、インク吐出面と砥石の研削面との間の摺接(摺動)位置を常に変位させつつ研磨を行えるので、インク吐出面の研磨が局部的に進行することなどを回避でき、インク吐出面全体を均一に研磨することが可能となる。これにより、インクの吐出経路を構成するオリフィス部材と平坦に研磨されたこのインク吐出面とを適切な状態で接合できるので、オリフィス部材のインク吐出孔からのインクの吐出が好適に行われ、インクジェットヘッドによる印刷品質を向上させることができる。
【0011】
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法は、インクの流路を内部に有すると共にインク吐出口の開口するインク吐出面を備えたヘッド本体を作製するヘッド本体作製工程と、水平面に沿って研削面を回転変位させつつ自転する砥石における前記研削面上の回転中心から偏らせた位置に、前記作製されたヘッド本体の前記インク吐出面を摺接させた状態で、前記ヘッド本体を回転させつつそのインク吐出面を研磨する研磨工程と、前記インク吐出面が研磨された前記ヘッド本体の前記インク吐出面に、前記インク吐出口とつながるインク吐出孔が穿孔されたオリフィス部材を接合する接合工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インク吐出口を開口させたヘッド本体のインク吐出面の加工精度を向上させることで、インクジェットヘッドによる印刷品質を高めることが可能なインクジェットヘッドの研磨装置及びインクジェットヘッドの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法を用いて作製されたインクジェットヘッド1の外観を示す斜視図である。また、図2は、このインクジェットヘッド1を示す平面(上面)図であり、図3は、インクジェットヘッド1の底面図である。さらに、図4は、このインクジェットヘッド1の構造を示す分解斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のインクジェットヘッド1は、いわゆるピエゾ方式を採用するインクジェットヘッドであって、ヘッド本体(ヘッド筐体)としての金属製のインクジェットヘッドマニホールド2を備えている。このインクジェットヘッドマニホールド2は、図3及び図4に示すように、インクの流路を内部に備える共にインク吐出口37の開口するインク吐出面2eを有する。
【0015】
インクジェットヘッドマニホールド2は、図1に示すように、複数の種類(図4に示す例では大別して9種類)の金属製の第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29を複数枚(例えば、25〜250枚)積層して構成されている。これらの第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29は、厚さが例えば0.02mm〜0.2mmの金属製(例えば、SUS304など)の板材から構成されており、これらを拡散接合などによって互いに圧着することで、ブロック状に形成されている。また、第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29に開口されたインク流路は、例えばエッチング加工やブラスト加工によって形成されている。第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29の外形は、エッチング加工やブラスト加工の他、打ち抜き加工によっても成形することができる。
【0016】
また、インクジェットヘッドマニホールド2の底面のインク吐出面2eには、図3及び図4に示すように、個々のインク吐出口37と各々つながる複数のインク吐出孔3a(直径、例えば0.01mm〜0.1mm)の穿孔されたオリフィスプレート3(オリフィス部材)が、上記した拡散接合などによって接合されている。このオリフィスプレート3は、例えば厚さ0.05mm〜0.2mmで形成されており、その構成材料としては、インクジェットヘッドマニホールド2と同一の材料(例えば、SUS304など)が適用されている。インク吐出孔3aは、図3、図4に示すように、オリフィスプレート3上に例えば一列に配置されている。このインク吐出孔3aは、例えばパンチング加工、レーザ加工、エッチング加工などによって形成されている。
【0017】
本実施形態のインクジェットヘッド1では、上記のインク吐出口37が開口するインクジェットヘッドマニホールド2上のインク吐出面2eと、インク吐出孔3aを備えたオリフィスプレート3と、が互いに位置合せされた状態で接合されていることで、微細なインク粒子を吐出させるインク吐出経路が構成される。ここで、本実施形態のインクジェットヘッド1において、オリフィスプレート3の表面(外側面)のインク吐出孔3aの開口部分を避けた領域に(インク吐出孔3aを含むインクの吐出経路を塞がないようにして)、撥水皮膜をコーティングしてもよい。このような撥水加工を行った場合、インク吐出孔3a周辺でのインクの溜まりが抑制され、これにより、インク吐出不良の発生を抑えることができる。
【0018】
また、インクジェットヘッドマニホールド2の各側面で構成されるヘッド押圧面2c、2dには、図1〜図4に示すように、一対の振動板(箔)4が、拡散接合などによって接合されている。また、振動板4は、インクジェットヘッドマニホールド2と同一の材料(例えば、SUS304など)から構成されており、例えば厚さ0.01mm〜0.05mmで形成されている。また、振動板4は、レーザ加工やエッチング加工などによって加工成形されている。このような各振動板4は、一対のヘッド押圧面2c、2d側からインクジェットヘッドマニホールド2を挟んだ状態で押圧力を付与する。
【0019】
一対のこの振動板4の個々の外側面には、図1〜図4に示すように、所定形状の導体パターンが形成された一対のFPC(Flexible Printed Circuit)5が、接着剤などによって接合されている。さらに、このFPC5各外側面には、接着剤(例えば、メチルシアノアクリレートやエポキシ系、アクリル系の接着剤)などを用いて圧電素子6が接合(貼着)されている。圧電素子6は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの材質で構成されたピエゾ素子であって例えば0.2mm〜2mmの厚さを有する。これらの圧電素子6には、各インク吐出孔3aにそれぞれ対応する複数の電極が、蒸着などの方法で形成されており、これらの電極は、FPC5に形成された導体パターンとそれぞれ電気的に接続されている。すなわち、圧電素子6をFPC5を介して電気的に駆動することで振動板4が振動し、この際生じるポンプ作用によってインク吐出孔3aからインクが吐出することになる。
【0020】
また、図4に示すように、上述した第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29のうちで、中央部に配置される第5流路形成積層板25から一方の積層方向に積層される第6流路形成積層板26〜第9流路形成積層板29は、インク吐出孔3aの例えば奇数列の流路を形成するように配置されている。また、第5流路形成積層板25から他方の積層方向に積層される第4流路形成積層板24〜第1流路形成積層板21は、インク吐出孔3aの例えば偶数列の流路を形成するように配置されている。
【0021】
ここで、上記構成に代えて、第5流路形成積層板25から一方に積層される第6流路形成積層板26〜第9流路形成積層板29が、インク吐出孔3aの偶数列の流路を形成し、第5流路形成積層板25から他方に積層される第4流路形成積層板24〜第1流路形成積層板21が、インク吐出孔3aの奇数列の流路を形成するものであってもよい。そして、このようにして形成される奇数列の流路と偶数列の流路とで、図3に示すように、インク吐出孔3aが、オリフィスプレート3上に一列に配置される。
【0022】
上記したように、中央部に配置される第1流路形成積層板25には、インク供給流路31、インク溜め部32、空気抜き孔40、インク吐出口37を形成するための開口部が設けられている。また、第5流路形成積層板25の両外側に配置される第6流路形成積層板26及び第4流路形成積層板24には、インク供給流路31、インク溜め部32、空気抜き孔40を形成するための開口部と、下側インク流路36を形成するための開口部とが設けられている。
【0023】
ここで、インク溜め部32の内壁上部32aは、空気抜き孔40に向けて上り勾配となる傾斜面で形成されている。また、インク供給流路31は、インク供給口2aから一旦インク溜め部32の下方に延び、次いで上方に延びてインク溜め部32の底部に接続されるサイフォン構造を採っている。さらに、インク供給流路31と空気抜き孔40とは、インク溜め部32の長手方向の両側端部に接続されるように設けられている。
【0024】
また、上記第6流路形成積層板26及び第4流路形成積層板24のそれぞれの外側に配置される第7流路形成積層板27及び第3流路形成積層板23には、下側インク流路36と、上側共通インク流路33とを形成するための開口部が設けられている。さらに、第7流路形成積層板27及び第3流路形成積層板23のそれぞれの外側に配置される第8流路形成積層板28及び第2流路形成積層板22には、下側インク流路36と、上側個別インク流路34とを形成するための開口部が設けられている。また、最も外側に配置される第9流路形成積層板29及び第1流路形成積層板21には、上下方向インク流路35を形成するための開口部が設けられている。
【0025】
このように構成された所定枚数の第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29を、所定の順序で積層一体化することで、インクジェットヘッドマニホールド2内には、インク供給流路31からインク吐出口37に至るインクの流路が、積層方向中央部から両側に向けて形成されると共に、図3及び図4に示すように、インクジェットヘッドマニホールド2の上側に、インク供給口2a、空気抜き口2bが開口した状態となる。また、積層一体化されたこれらの積層板の端面で、上述したインク吐出口37を開口させたインク吐出面2eが構成される。
【0026】
インクジェットヘッドマニホールド2へのインクの供給は、図4に示すように、インク供給口2aから行われる。このインク供給口2aから供給されたインクは、インク供給流路31を通って、インク溜め部32に導入され、このインク溜め部32から、上側共通インク流路33、上側個別インク流路34、上下方向インク流路35、下側インク流路36をこの順で通過して、インク吐出口37内にまで充填される。
【0027】
また、上記のようにインクジェットヘッドマニホールド2内にインクが充填された状態で、FPC5を介して圧電素子6に駆動信号が加わると、駆動信号が加わった部分の圧電素子6が変形することで対応する部分の振動板4が振動し、さらにこれに対応する部分の上下方向インク流路35内のインクを押圧し、オリフィスプレート3の対応するインク吐出孔3aから所定量のインクが吐出されることになる。
【0028】
ここで、上記したインク供給流路31は、サイフォン構造で構成されているため、インク供給口2aから供給されるインク供給量及び供給圧が仮に安定していなくとも、インク溜め部32内のインクの状態を安定に保つことができ、インク吐出不良の発生を抑制することができる。また、インク溜め部32には、上述したように、空気抜き孔40が設けられており、インク溜め部32の内壁上部32aは、空気抜き孔40に向けて上り勾配となる傾斜面とされているので、インク溜め部32内に進入した空気を、速やかにこの空気抜き孔40から排出させることができ、これにより、インクの吐出が阻害されてしまうことを防止できる。
【0029】
次に、本実施形態に係るインクジェットヘッド1の製造方法について説明する。ここでは、まず、インクジェットヘッドマニホールド2の製造方法を図5及び図6に基づき説明する。なお、上述した第1流路形成積層板21〜第9流路形成積層板29は、以下、積層板65として説明を行う。上記の図5は、積層板65どうしを拡散接合するための熱圧着装置55を概略的に示す図であり、また、図6は、積層板65を形成するための母材プレート50を示す斜視図である。
【0030】
図5に示すように、熱圧着装置55は、複数の積層板65を熱圧着により積層一体化したインクジェットヘッドマニホールド2を作製するための装置である。熱圧着装置55は、高温真空炉56と、この高温真空炉56の床上に設置された金属製の支え台57と、この支え台57上に設置されたあて板58と、このあて板58上に配置された複数の積層板65を上方から支え台57側に押圧するあて板59を備えた金属製の圧着冶具63と、この圧着冶具63を駆動するアクチュエータ64と、一対の金属製の位置決めピン61、62と、で主に構成される。
【0031】
ここで、上記した図1、図2及び図5に示すように、金属製(本実施形態ではSUS304製)の複数の積層板65の各々には、一対の貫通穴(位置決め穴)7、8が形成されている。この貫通穴7、8は、積層板65の積層一体化後インクの流路になる開口部(インク供給流路31及びインク溜め部32など)と同一のステージで形成され、このインク流路形成用の開口部との相対的な位置精度が確保されている。ここで、上記した位置決めピン61、62は、積層板65の貫通穴7、8に対し挿抜自在に嵌合される。
【0032】
つまり、熱圧着装置55では、貫通穴7、8に位置決めピン61、62を挿通させた状態で、熱圧着により積層板65どうしを拡散接合する。なお、積層板65の貫通穴7、8の内壁面と位置決めピン61、62とが拡散現象により接合してしまうことなどを抑制するために、位置決めピン61、62の外周面に例えばアルミナ層などを形成することが好ましい。
【0033】
高温真空炉56は、その炉内を最大1300℃程度まで昇温させることが可能である。また、高温真空炉56では、その炉内に接続されたターボ分子ポンプ(図示せず)などを通じて10-1〜10-10Pa程度の真空度を得ることができる。さらに、高温真空炉56は、炉内を窒素などの不活性ガス雰囲気にすることも可能である。
【0034】
支え台57の上面に設けられたあて板58、及び圧着冶具63の下端部に設けられたあて板59は、熱圧着時の金属材料間での拡散現象により、支え台57(又は圧着冶具63)と積層板65とが接合してしまうことを防止するために設けられている。つまり、あて板58、59は、例えば析出硬化型ステンレス鋼などで形成されている。また、本実施形態では、支え台57上には、上述したように、位置決めピン61、62を挿通させた状態で、複数の積層板65が搭載されることになる。ここで、あて板59には、圧着冶具63が下降して支え台57上のこれら積層板65を熱圧着する際に、積層板65の上方から突出する位置決めピン61、62の形状を避けるように一対の凹部60が設けられている。
【0035】
したがって、熱圧着装置55を用いて、実際に積層板65どうしを接合する場合には、まず、酸浸漬などによる洗浄処理により、SUS304製の各積層板65の表層にあるクロムの酸化膜(不動態皮膜)を除去する。次に、図5に示すように、各積層板65の一対の貫通穴7、8に対し、位置決めピン61、62を挿通させることで、複数の積層板65どうしをその板面に沿った方向に位置決めする。
【0036】
次いで、貫通穴7、8に位置決めピン61、62を挿通させた状態の複数の積層板65を熱圧着装置55における高温真空炉56内の支え台57上に載置する。さらに、位置決めピン61、62の外形部分(例えばアルミナ層)を貫通穴7、8の内壁面に接触させることにより位置決めされた複数の積層板65を、所定温度に加熱しつつ、さらに圧着冶具63を通じて加圧し、当該積層板65どうしを拡散接合する。この熱圧着時の条件は、例えば、加熱温度950℃〜1050℃、圧力0.5〜2kg/cm2、炉内の真空度を0.0001Paとし、この状態を2時間維持し、この後さらに24時間かけて除冷処理を行う。これにより、インクジェットヘッドマニホールド2が作製される。
【0037】
ここで、上述した態様では、積層板65の本体部分(製品部分)どうしを直接積層する製法について例示したが、これに代えて、図6に示すように、積層板65の外側にあるブランク部(捨て部材)51、52を有する状態の積層板65どうしを積層一体化するようにしてもよい。図6に示すように、積層板65は、例えばSUS304製の母材プレート50を加工成形することで得られる。詳細には、非製品部分であるブランク部51、52は、各積層板65の外形部分のさらに外側に配置され且つ積層板65どうしの拡散接合後に除去されるものであって、積層板65と一体で加工成形される。このようなブランク部51、52は、積層板65本体を例えばハンドリングする場合などに有用となる。なお、ブランク部51、52と積層板65とのつなぎ部分に、ハーフエッチングなどによって切れ込みを入れておくことで、積層板65の積層一体化後、ブランク部51、52を容易に除去して、インクジェットヘッドマニホールド2を得ることができる。
【0038】
次に、このようにして作製されたインクジェットヘッドマニホールド2に対しオリフィスプレート3を接合する前に、図7〜図11に示す本実施形態に係るインクジェットヘッドの研磨装置71を用いてインク吐出面2eを研磨する研磨方法について詳述する。ここで、図7は、研磨装置71の外観を示す斜視図であり、図8は、その平面(上面)図である。また、図9は、研磨装置71の垂直断面図であり、図10は、図7に示す研磨装置71をA方向からみた矢視図である。さらに、図11は、図8に示す研磨装置71のB−B断面図である。なお、上記の図9においては、インクジェットヘッドマニホールド2の図示を省略している。
【0039】
まず、上記の研磨装置71の構造について説明する。すなわち、研磨装置71は、図7に示すように、グラインダ機構72と、インクジェットヘッドマニホールド2が固定されるヘッド固定部材73と、ヘッド固定部材73を保持するヘッド固定部材保持機構74と、から主に構成される。グラインダ機構72は、例えば矩形状に構成された基台75及びこの基台75上に回転可能に支持された円板状の砥石76を備える。砥石76は、グラインダ機構72が備える駆動機構から駆動力を付与されて、図7、図8及び図10に示すように、当該砥石76上面の研削面76aを水平面に沿って回転変位させつつ(矢印S1方向に)自転する。また、砥石76は、研削面76aの全面を基台75の上部に露出させ、かつ基台75上に設けられた砥石収容部75a内に砥石76本体の底面及び側面が収容された状態で配置されている。
【0040】
ヘッド固定部材73は、インクジェットヘッドマニホールド2が固定されると共にこの固定されたインクジェットヘッドマニホールド2のインク吐出面2eを砥石76の研削面76a上に摺接させる状態で当該研削面76a上に載置される。詳述すると、ヘッド固定部材73は、図7、図8に示すように、鉛直方向に所定の厚みを有しこの鉛直方向からみた概略的な形状が略三角形(三角形の各角部を切り落とした形状)に構成されている。また、図8、図10及び図11に示すように、ヘッド固定部材73の上記三角形の各辺部を各々有する各側面には、互いに異なる方向に向けて配置されることになる複数(三つ)のヘッド本体固定面73aが設けられている。これらヘッド本体固定面73aは、その底部が砥石76の研削面76a上に載置された状態では、研削面76aに対し各々鉛直方向に起立した垂直な面をなす。
【0041】
ここで、インクジェットヘッドマニホールド2は、上述したように、複数の積層板65を積層一体化して構成されている。このため、インクジェットヘッドマニホールド2には、これら複数の積層板65の互いの位置決めに用いられる位置決め穴、つまり上記図5に示した位置決めピン61、62を挿通させた一対の貫通穴7、8が形成されている。また、インクジェットヘッドマニホールド2は、積層一体化された複数の積層板65の端面(エッチングなどで加工成形された端面)でインク吐出面2eが構成されている。このため、(研磨前の)インク吐出面2eには、少なくともミクロンオーダの凹凸(段差)が生じている。したがって、インク吐出面2eにオリフィスプレート3を拡散接合する前に、インク吐出面2eを平滑に(例えば鏡面仕上げに)研磨する必要がある。
【0042】
さらに、インク吐出面2eを研磨する場合には、インクジェットヘッドマニホールド2におけるインクジェットプリンタへの取り付けのための基準面(本実施形態では、図7D中のインクジェットヘッドマニホールド2のヘッド押圧面2c)とインク吐出面2eとが設計上定めた所定の角度(本実施形態では90°)をなすように、インク吐出面2eを研磨する必要がある。ここで、本実施形態の研磨装置71では、上述したヘッド押圧面2cに対するインク吐出面2eの直角度を例えば1mm程度に抑えることが可能である。つまり、このようなインクジェットヘッドマニホールド2は、インク吐出面2eと直交する位置決め用の基準面としてヘッド押圧面2cを有すると共にこのヘッド押圧面2c(基準面)に各々開口する一対の位置決め用の貫通穴7、8を備える。
【0043】
また、ヘッド固定部材73の上記した各ヘッド本体固定面73aには、図10、図11に示すように、一対の雌ねじ(ねじ穴)77、78がそれぞれ形成されている。また、ヘッド固定部材73は、ヘッド位置決め部材として機能する段付きねじ87、88を有する。段付きねじ87、88には、その頭部よりも小径の円柱部87a、88aと雌ねじ77、78に締結される雄ねじ87b、88bとが設けられている。すなわち、雌ねじ77、78にねじ止めされる段付きねじ87、88は、三箇所のヘッド本体固定面73aにヘッド押圧面2c(基準面)を各々当接させた三つのインクジェットヘッドマニホールド2の各インク吐出面2eが同一平面をなすように、貫通穴7、8に円柱部87a、88aを嵌合させつつこれらのインクジェットヘッドマニホールド2の位置決めを行う。
【0044】
さらに詳述すると、インクジェットヘッドマニホールド2がヘッド固定部材73に固定された状態においてヘッド本体固定面73aに対しインク吐出面2eが直角な面をなすように、一対の雌ねじ77、78の位置が設定されている。また、雌ねじ77、78及び段付きねじ87、88を通じて、ヘッド固定部材73のヘッド本体固定面73aにインクジェットヘッドマニホールド2がねじ止めされた際には、図10、図11に示すように、インクジェットヘッドマニホールド2の底部側(インク吐出面2e側)が、ヘッド固定部材73の底部側(砥石76の研削面76aに載置される側)よりも僅かに突出する状態で、インクジェットヘッドマニホールド2は、ヘッド固定部材73に固定される。これにより、インクジェットヘッドマニホールド2の固定されたヘッド固定部材73を砥石76の研削面76a上に載置することでインク吐出面2eを研磨することが可能となる。また、図9〜図11に示すように、ヘッド固定部材73には、各ヘッド本体固定面73aと直交する方向にフランジ状に突出する突出部73bが設けられている。この突出部73bは、インクジェットヘッドマニホールド2の上端面(インク供給口2aや空気抜き口2bが開口する面)を当接させるための位置決め部として機能する。
【0045】
また、上記したヘッド固定部材保持機構74は、図7及び図8に示すように、インクジェットヘッドマニホールド2を固定して砥石76の研削面76a上に載置されたヘッド固定部材73の重心位置G2を、砥石76における研削面76a上の回転中心G1から偏らせた位置で、ヘッド固定部材73を自転可能に保持する。このようなヘッド固定部材保持機構74は、ヘッド固定部材73上に凹部として設けられた漏斗状(テーパ状)の穴部73c、アーム部材79、位置規制部材80、重石83などで主に構成される。
【0046】
ヘッド固定部材73に設けられた上記穴部73cは、当該ヘッド固定部材73の重心位置G2の直上に形成されている。具体的には、穴部73cのテーパ状の内壁面73dは、位置規制部材80と摺動する被摺動部となる。位置規制部材80は、ヘッド固定部材73上の穴部73cの漏斗状の内壁面73dと摺動する先端が球状の突起部80aを備える。このような位置規制部材80は、砥石76の研削面76a上でのヘッド固定部材73の位置を上記の突起部80aを通じて規制する。また、位置規制部材80は、シャフト状に構成されており、基端部側には雄ねじ80bが設けられている。
【0047】
アーム部材79は、基端部分79aが片持ちで基台75上に支持され、かつ砥石76の研削面76a上に載置されたヘッド固定部材73の上方で位置規制部材80を連結部材82を通じて保持する。詳細には、アーム部材79の基端部分79aは、基台75の縁部に立設された段付きの支柱81にボルトなどを用いて固定されている。また、アーム部材79は、この基端部分79aと位置規制部材80を保持するアーム本体部分79bとの2ピース構造で構成されおり、基端部分79aとアーム本体部分79bとの間には、ヒンジ部(蝶番)79cが設けられている。アーム部材79の関節部分となるヒンジ部79cは、砥石76の研削面76a上に載置されたヘッド固定部材73側へのアーム部材79の屈曲(基端部分79aに対するアーム本体部分79bの折り曲げ)を可能とする。
【0048】
また、アーム部材79のアーム本体部分79bには、上述した連結部材82をアーム本体部分79bを固定するための雌ねじ79dが三個所に設けられている。さらに、アーム本体部分79bには、シャフト状に形成された位置規制部材80を挿通させるための貫通穴79eが穿孔されている。一方、連結部材82には、雌ねじ79dと締結されるねじ部材82aを挿通させるための段差付きの三つのねじ挿通穴82bと、位置規制部材80の基端部側の雄ねじ80bに締結される雌ねじ82cとが設けられている。すなわち、アーム部材79のアーム本体部分79bの上部には、雌ねじ79d及びねじ部材82aを通じて連結部材82が固定され、さらに、雌ねじ82b及び雄ねじ80bを通じて連結部材82に締結される位置規制部材80は、その先端の球状の突起部80aが、アーム本体部分79bの貫通穴79eを貫通してアーム本体部分79bの底部側から突出する状態で、アーム部材79と一体的に固定されている。このようにして固定された位置規制部材80の先端の突起部80aは、図8に示すように、砥石76における研削面76a上の回転中心G1から偏った位置(G2)に配置される。
【0049】
さらに、重石83は、図9に示すように、アーム部材79上のヒンジ部よりも先端側に位置するアーム本体部分79b上の連結部材82の上側部分に搭載されている。この重石83の自重により、ヒンジ部79cよりも先端側のアーム本体部分79bが、ヒンジ部79cを中心として矢印Z1方向に回転する方向に押圧力を受けることになる。また、この場合、連結部材82を介してアーム部材79と一体的に固定された位置規制部材80先端の突起部80aは、漏斗状の穴部73cの内壁面73dを押圧する。これにより、ヘッド固定部材73に固定されたインクジェットヘッドマニホールド2のインク吐出面2eは、砥石76の研削面76a上に押圧(圧接)されることになる。
【0050】
ここで、本実施形態の研磨装置71では、重石83が搭載されるアーム部材79が、いわゆる片持ち梁で構成され、しかもアーム部材79にヒンジ部79cが設けられているので、重石83の自重(押圧力)をヘッド固定部材73側に効率良く伝達することができる。これにより、砥石76の研削面76a上に圧接されるインク吐出面2eの接触圧の安定化を図ることがきるので、被研削面となるインク吐出面2eの加工精度を向上させることができる。
【0051】
さらに、本実施形態の研磨装置71では、図7〜図9に示すように、位置規制部材80先端の突起部80aと摺動する漏斗状の穴部73cを通じて、砥石76上に載置されたヘッド固定部材73の重心位置G2を、砥石76における研削面76a上の回転中心G1から偏らせた位置で、ヘッド固定部材73が自転可能に保持されている。したがって、図8に示すように、矢印S1方向に自転する砥石76の研削面76aとインクジェットヘッドマニホールド2のインク吐出面2eとの摺動時にヘッド固定部材73に作用する重心位置G2まわりのモーメントによって、ヘッド固定部材73と共にインクジェットヘッドマニホールド2が、砥石76の研削面76a上で矢印S2方向に自転することになる。これにより、回転方向(矢印S1方向)の移動量が大きく研削能力の高い砥石76の外周側と回転方向の移動量が小さく研削能力の低い砥石の内周側とに対し、インク吐出面2eを、常に異なる位置で摺動させる(インク吐出面2eの研削方向をランダムにする)ことができ、砥石76の外周側と内周側とでインク吐出面2eの研磨がアンバランスに進行することなどを回避できる。
【0052】
したがって、本実施形態の研磨工程では、このように構成された研磨装置71を用い、矢印S1方向に自転する砥石76の研削面76a上の回転中心G1から偏らせた位置に、インクジェットヘッドマニホールド2のインク吐出面2eを摺接させた状態で、インクジェットヘッドマニホールド2を回転させつつインク吐出面2eを研磨する。この後、研磨装置71から取り外したインクジェットヘッドマニホールド2の平滑に研磨されたインク吐出面2eに、オリフィスプレート3を拡散接合する。この後、このインクジェットヘッドマニホールド2のヘッド押圧面2c、2dに振動板4を接合し、さらにこの振動板4の外側面にFPC5及び圧電素子6を順次積層(接合)して行くことで、図1に示したインクジェットヘッド1を作製することができる。
【0053】
既述したように、本実施形態に係る研磨装置71を用いたインクジェットヘッド1の製造方法では、インクジェットヘッドマニホールド2のインク吐出面2eと砥石76の研削面76aとの摺動時にヘッド固定部材73に作用するモーメントにより、砥石76の回転中心G1から偏らせたヘッド固定部材73の重心位置G2を基準として、ヘッド固定部材73と共にインクジェットヘッドマニホールド2を、砥石76の研削面76a上で自転(回転)させることができる。したがって、インク吐出面2eと砥石76の研削面76aとの間の摺接(摺動)位置を常に変位させつつ研磨を行えるので、インク吐出面2eの研磨が局部的に進行することなどを回避でき、インク吐出面2e全体を均一に研磨することが可能となる。これにより、インクの吐出経路を構成するオリフィスプレート3と平坦に研磨されたこのインク吐出面2eとを適切な状態で接合できるので、オリフィスプレート3のインク吐出孔3aからのインクの吐出が好適に行われ、インクジェットヘッド1による印刷品質を向上させることができる。
【0054】
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこの実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した実施形態では、構成要素として重石83を有する研磨装置71を例示したが、これに代えて、例えば連結部材82を質量が大きくなるように構成し、重石83の機能を兼用する連結部材を備えた研磨装置を適用してもよい。また、上記実施形態では、鉛直方向からみたヘッド固定部材73の基本形状が略三角形を有していたが、これに代えて、四角形以上の略五角形や略八角形でヘッド固定部材を構成し、このように角数を増加させた略多角形の鉛直方向からみた各辺部にインクジェットヘッドマニホールドを各々固定できるようにすることで、一度に研磨できるインクジェットヘッドマニホールドの数を増加させ、研磨工程の効率化を図ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法により製造されたインクジェットヘッドの外観を示す斜視図。
【図2】図1のインクジェットヘッドを示す平面図。
【図3】図1のインクジェットヘッドの底面図。
【図4】図1のインクジェットヘッドの構造を示す分解斜視図。
【図5】図1のインクジェットヘッドを構成する積層板どうしを拡散接合するための熱圧着装置を概略的に示す図。
【図6】図1のインクジェットヘッドを構成する積層板を形成するための母材プレートを示す斜視図。
【図7】本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの研磨装置を示す斜視図。
【図8】図7の研磨装置の平面図。
【図9】図7の研磨装置の垂直断面図。
【図10】図7の研磨装置をA方向からみた矢視図。
【図11】図7の研磨装置のB−B断面図。
【符号の説明】
【0056】
1…インクジェットヘッド、2…インクジェットヘッドマニホールド、2c,2d…ヘッド押圧面、2e…各インク吐出面、3…オリフィスプレート、3a…インク吐出孔、7,8…貫通穴、21…第1流路形成積層板、22…第2流路形成積層板、23…第3流路形成積層板、24…第4流路形成積層板、25…第5流路形成積層板、26…第6流路形成積層板、27…第7流路形成積層板、28…第8流路形成積層板、29…第9流路形成積層板、31…インク供給流路、37…インク吐出口、65…積層板、71…研磨装置、72…グラインダ機構、73…ヘッド固定部材、73a…ヘッド本体固定面、73c…穴部、73d…内壁面、74…ヘッド固定部材保持機構、76…砥石、76a…研削面、79…アーム部材、79a…基端部分、79b…アーム本体部分、79c…ヒンジ部、80…位置規制部材、80a…突起部、81…支柱、83…重石、G1…砥石の回転中心、G2…ヘッド固定部材の重心位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの流路を内部に備えると共にインク吐出口の開口したインク吐出面を有しかつ前記インク吐出口とつながるインク吐出孔の穿孔されたオリフィス部材が接合されるヘッド本体の前記インク吐出面を研磨するインクジェットヘッドの研磨装置であって、
水平面に沿って研削面を回転変位させつつ自転する砥石と、
前記ヘッド本体が固定されると共にこの固定されたヘッド本体の前記インク吐出面を前記砥石の前記研削面上に摺接させる状態で当該研削面上に載置されるヘッド固定部材と、
前記ヘッド本体を固定して前記砥石の前記研削面上に載置された前記ヘッド固定部材の重心位置を、前記砥石における前記研削面上の回転中心から偏らせた位置で、前記ヘッド固定部材を自転可能に保持するヘッド固定部材保持機構と、
を具備することを特徴とするインクジェットヘッドの研磨装置。
【請求項2】
前記ヘッド固定部材保持機構は、
前記ヘッド固定部材の前記重心位置の直上に設けられた凹部と、
前記ヘッド固定部材上の前記凹部と摺動する突起部を備え、かつ前記砥石の前記研削面上での前記ヘッド固定部材の位置を前記突起部を通じて規制する位置規制部材と、
を具備することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの研磨装置。
【請求項3】
前記ヘッド固定部材保持機構は、
基端部分が片持ちで支持され、かつ前記砥石の前記研削面上に載置された前記ヘッド固定部材の上方で前記位置規制部材を保持するアーム部材と、
前記アーム部材における前記位置規制部材の保持部分と片持ちで支持された前記基端部分との間に設けられ、前記研削面上に載置された前記ヘッド固定部材側への前記アーム部材の屈曲を可能とするヒンジ部と、
前記アーム部材上の前記ヒンジ部よりも先端側に搭載される重石と、
をさらに具備することを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッドの研磨装置。
【請求項4】
前記ヘッド本体は、前記インク吐出面と直交する位置決め用の基準面及びこの基準面に各々開口する一対の位置決め用の貫通穴を有し、
さらに、前記ヘッド固定部材は、
互いに異なる方向に向けて配置された複数のヘッド本体固定面と、
前記複数のヘッド本体固定面に前記基準面を各々当接させた複数の前記ヘッド本体の各インク吐出面が同一平面をなすように、前記各貫通穴に嵌合しつつこれら複数のヘッド本体の位置決めを行うヘッド位置決め部材と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの研磨装置。
【請求項5】
前記ヘッド本体は、複数の積層板が積層一体化して構成されていると共に、前記一対の貫通穴が、これら複数の積層板の互いの位置決めに用いられることを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッドの研磨装置。
【請求項6】
インクの流路を内部に有すると共にインク吐出口の開口するインク吐出面を備えたヘッド本体を作製するヘッド本体作製工程と、
水平面に沿って研削面を回転変位させつつ自転する砥石における前記研削面上の回転中心から偏らせた位置に、前記作製されたヘッド本体の前記インク吐出面を摺接させた状態で、前記ヘッド本体を回転させつつそのインク吐出面を研磨する研磨工程と、
前記インク吐出面が研磨された前記ヘッド本体の前記インク吐出面に、前記インク吐出口とつながるインク吐出孔が穿孔されたオリフィス部材を接合する接合工程と、
を有することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記研磨工程では、
前記砥石と、
前記ヘッド本体が固定されると共にこの固定されたヘッド本体の前記インク吐出面を前記砥石の前記研削面上に摺接させる状態で当該研削面上に載置されるヘッド固定部材と、
前記ヘッド本体を固定して前記砥石の前記研削面上に載置された前記ヘッド固定部材の重心位置を、前記砥石における前記研削面上の回転中心から偏らせた位置で、前記ヘッド固定部材を自転可能に保持するヘッド固定部材保持機構と、
を備える研磨装置を用いて、前記インク吐出面が研磨される
ことを特徴とする請求項6記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記研磨装置が備える前記ヘッド固定部材保持機構は、
前記ヘッド固定部材の前記重心位置の直上に設けられた凹部と、
前記ヘッド固定部材上の前記凹部と摺動する突起部を備え、かつ前記砥石の前記研削面上での前記ヘッド固定部材の位置を前記突起部を通じて規制する位置規制部材と、
基端部分が片持ちで支持され、かつ前記砥石の前記研削面上に載置された前記ヘッド固定部材の上方で前記位置規制部材を保持するアーム部材と、
前記アーム部材における前記位置規制部材の保持部分と片持ちで支持された前記基端部分との間に設けられ、前記研削面上に載置された前記ヘッド固定部材側への前記アーム部材の屈曲を可能とするヒンジ部と、
前記アーム部材上の前記ヒンジ部よりも先端側に搭載される重石と、
を具備することを特徴とする請求項7記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記ヘッド本体作製工程で作製される前記ヘッド本体は、前記インク吐出面と直交する位置決め用の基準面及びこの基準面に各々開口する一対の位置決め用の貫通穴を有し、
さらに、前記ヘッド固定部材は、
互いに異なる方向に向けて配置された複数のヘッド本体固定面と、
前記複数のヘッド本体固定面に前記基準面を各々当接させた複数の前記ヘッド本体の各インク吐出面が同一平面をなすように、前記各貫通穴に嵌合しつつこれら複数のヘッド本体の位置決めを行うヘッド位置決め部材と、
を備えることを特徴とする請求項7又は8記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記ヘッド本体作製工程で作製される前記ヘッド本体は、複数の積層板が積層一体化して構成されていると共に、前記一対の貫通穴が、これら複数の積層板の互いの位置決めに用いられ、かつ前記複数の積層板の端面で前記インク吐出面が形成されていることを特徴とする請求項9記載のインクジェットヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−56730(P2009−56730A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226721(P2007−226721)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】