説明

インクジェット塗布装置、インクジェット塗布装置のインク液滴調整方法

【課題】インクの液滴量調整を自動化し、作業効率を向上させることで生産性を上げ、ひいては製品の低価格化を実現するインクジェット塗布装置、インク液滴の調整方法、及び表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 予め各ノズル毎に作成されている印加電圧に対する液滴量(電圧対液滴量情報)を取得し、実際に基板上に噴射されたインクの着弾径から液滴量を算出し、更に電圧対液滴量情報を参照して電圧を算出する。そして、この電圧値をアナログ信号にするためにDA設定値に変換後、DAコンバータでアナログ信号に変換し、変換後の信号を3端子レギュレータの電圧基準端子に入力して、この出力電圧をスイッチング回路に供給する。これにより基板上に噴射されたインク量が変化すると、アクチュエータに供給する電圧を自動滴に修正して、所望の液滴量を出力する電圧を供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを微細な液滴にして、基板の所定のエリアに噴射するインクジェット方式を用いるインクジェット塗布装置、インクジェット塗布装置のインク液滴調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ(PC)や携帯電話などの発達に伴い薄型表示装置への需要が増加している。現在主流となっている液晶ディスプレイや、この液晶ディスプレイに代わる次世代表示装置の有力候補として有機EL(electroluminescence)ディスプレイなどが注目されている。
【0003】
ここで図5を参照して、上記有機ELディスプレイ等の薄型表示装置を作製するためのインクジェット塗布装置の一構成例を説明する。
【0004】
このインクジェット塗布装置101は、インク塗布ボックス102と、インク補給ボックス103を有し、このインク塗布ボックス102とインク補給ボックス103は互いに隣接して配置され、共に架台104の上面に固定されている。
【0005】
インク塗布ボックス102の内部には、Y軸方向移動テーブル105、X軸方向移動テーブル106、及び基板107が順次積層されている。
【0006】
X軸方向移動テーブル106は、Y軸方向移動テーブル105上をY軸方向に移動し、基板107は、X軸方向移動テーブル106上をX軸方向に移動する。またY軸方向移動テーブル105を挟む両側には1組のコラム111が立設され、このコラム111に横架するようにX軸方向スライド板112が設けられている。このX軸方向スライド板112には、基板107面上にインクを噴射する塗布ヘッドユニット113がX軸方向に滑動可能に垂設されている。この塗布ヘッドユニット113の先端には、塗布ヘッド115が設けられている。
【0007】
図6を参照して、この塗布ヘッド115の構成を説明する。図6は塗布ヘッドの断面模式図である。この塗布ヘッド115は、複数のノズル151a、151b、151cと、これらノズルに連通して設けられるインク室152と、これら複数のインク室152を収容する流路ユニット153と、インク室152を封じるように設けられるダイヤフラム154と、このダイヤフラム154を介してインク室152上に配置されるアクチュエータ155を少なくとも備えている。
【0008】
このアクチュエータ155に電圧を印加するとアクチュエータ155が変形し、ダイヤフラム154を介してインク室152の容積を変化する。アクチュエータ155が収縮した場合は、図示しないインク流路を介してインクタンク118からインクがインク室152に供給され、ダイヤフラム154が膨張するとノズル151a、151b、151cからインクが噴射される。
【0009】
このとき上記したX軸及びY軸方向移動テーブル105、106の移動やインクの噴射タイミングの制御を架台104に内臓される制御部120で制御することにより、基板107上の所望のエリア(画素又はセル)にインクを噴射することができる。
【特許文献1】特開平10−138509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、有機ELディスプレイ等の薄型表示装置に求められる特性のひとつとして、表示領域全域における均一な明るさが求められている。発光層材料(インク)をインクジェット(以下、I/J方式)を用いて供給する場合、均一な明るさを実現するためには、画素内における乾燥後のインクの形状を表示領域全域においてできる限り同一にすることが必要である。そのためには各画素へのインクの液滴量を厳密に揃える必要がある。
【0011】
しかし、全てのアクチュエータ155に同じ電圧を印加した場合、図7に示すように各ノズル151a、151b、151cから噴射されるインクの液滴量は均一にはならない。それは、アクチュエータの特性ばらつきや、製造時のノズル形状のばらつきや、更にはインク室内に発生した気泡や混入したゴミの影響等に起因する液滴量ばらつきを完全に無くすことができないためである。
【0012】
そこで従来は、図8に示すように、アクチュエータ155に所望の電圧を供給するために、図示していない電圧源からの電源電圧を可変抵抗VR1と固定抵抗R1で構成される抵抗分圧回路121で分圧し、可変抵抗VR1を手動で調整することで、所望の電圧をスイッチング回路122を介してアクチュエータ155に供給していた。
【0013】
しかしながらこの方法は、ノズルが数個の場合は手動でも対応できるが、将来、大型ディスプレイを製造するためにノズル数が数百個に増えた場合は、液適量の調節に時間と手間が掛かるという問題がある。実際に64個のノズルを備える塗布ヘッド3個をインクジェット塗布装置に搭載してノズル調整を行ったところ、塗布時間が数分であるのに対して、液滴量測定を含めた調整時間には数時間を要した。
【0014】
また、作業者の手作業による調整は、作業者の感覚に頼ることから調整ばらつきが発生し易く、品質を安定化させることが難しいという問題もある。
【0015】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、インクの液滴量の調整を自動化し、作業効率を向上させることで生産性を上げ、ひいては製品の低価格化を実現するインクジェット塗布装置、インクジェット塗布装置のインク液滴調整方法を提供することにある。
【0016】
また第2の目的は、各画素に対して噴射するインクの液滴量を均一化することで、インクの筋ムラ等を低減して、高品質な表示装置を製造するインクジェット塗布装置、インクジェット塗布装置のインク液滴調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1記載の本発明に係るインクジェット塗布装置は、複数のノズルを有し、このノズルに設けられたアクチュエータに電圧を印加して、変動した変位をインク液室に伝達し、各ノズルからインクの液滴を噴射させる塗布ヘッドを備えるインクジェット塗布装置であって、アクチュエータに印加する電圧の変化量に対するインクの液滴量が電圧対液滴量情報として予め記憶されている第1の記憶手段と、複数のノズルのうち、電圧補正対象として選択されたノズルから噴射された液適量を取得して、この液滴量に対する電圧値を電圧対液滴量情報を参照して算出する電圧算出手段(液滴量/電圧変換部)と、算出されたこの電圧値と、予め設定されている所望液滴量に対する電圧値を比較し、その電圧差分量ΔVを算出する電圧差分量算出手段(液滴量/電圧変換部)と、電圧差分量ΔVの変化量に対するDA設定値をアナログ信号に変換し、このアナログ信号を基準電圧として3端子レギュレータに供給するアナログ信号供給手段(電圧/DA設定値変換部、DAコンバータ)と、3端子レギュレータの出力電圧を、電圧補正対象のノズルのアクチュエータに供給するスイッチング手段(スイッチング回路)とを備えることを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の本発明に係るインクジェット塗布装置のインク液滴調節方法は、複数の各ノズルに設けられたアクチュエータの変位をインク液室に伝達し、各ノズルから均一なインクの液滴量を噴射させるインクジェット塗布装置のインク液滴調整方法であって、アクチュエータに印加する電圧の変化量に対するインクの液滴量を対応付けてなる電圧対液滴量情報を読み込む第1工程と、電圧補正対象のノズルから噴射されたインクの液滴量を取得し、この液滴量に対する電圧量を電圧対液滴量情報から読み出す第2工程と、第2工程で読み出された電圧値と、予め設定されている所望液滴量に対応する基準電圧値をそれぞれ読み込み、この電圧値とこの基準電圧値を比較して、その電圧差分量ΔVを算出する第3工程と、予め記憶されている電圧差分量の変化量に対するDA設定値の変化量を対応付けた電圧対DA設定情報を読み込む第4工程と、電圧対DA設定情報を参照して、第3工程で算出された電圧差分量ΔVに対するDA設定値を読み出す第5工程と、第5工程で読み出したこのDA設定値をアナログ信号に変換する第6工程と、このアナログ信号を3端子レギュレータの基準電圧に入力する第7工程と、3端子レギュレータから出力された出力電圧を、電圧補正対象のノズルのアクチュエータに供給する第8工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、インクの液滴量の調整を自動化することができるので、作業効率を向上させることができる。その結果、生産性が上がるので製品の低価格化を実現することができる。
【0020】
また、従来の作業者の手動による調整に比べて調整分解能を微細化することができるので、手動時よりも精密な調整が可能となり、液滴量のばらつきが原因で発生していた筋ムラを低減することができる。これによりパネルの品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0022】
図1は、本発明のインクジェット塗布装置に設けられる電圧補正制御部1の構成を示すブロック図である。
【0023】
この電圧補正制御部1は、アクチュエータの特性ばらつき、ノズル形状のばらつき、気泡やゴミ等がインク室やノズル付近に混入することなどが原因で各ノズルから噴射される液滴量がばらついた場合、その他経時的変化により液滴量が変化した場合でも、自動的に各ノズルに印加する電圧を補正して、常に所望の液滴量を噴射させることができる機能部である。
【0024】
具体的な構成は、図1に示すように、ノズル液滴量情報2と、液滴量/電圧変換部3と、電圧/DA設定値変換部4と、可変電源部5とからなり、可変電源部5はDAコンバータ6と、3端子レギュレータ7を備えている。
【0025】
3端子レギュレータ7の出力には、スイッチング回路122、及びアクチュエータ155が接続されている。尚、本実施の形態において、従来構成と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0026】
ここでノズル液滴量情報2とは、アクチュエータ155に印加する電圧に対するインクの液滴量を対応付けてなる情報である。具体的には、アクチュエータ155に印加する電圧Vを段階的に上昇させたときに、ノズルから噴射されるインクの液滴量Qを測定して、この印加電圧に対する液滴量を関連付けてデータベース化したものである。測定結果はデータベース化することに限らず、グラフ化、若しくは直線近似化してもよい。
【0027】
図2(a)は、このノズル液滴量情報2を模式化した図である。同図に示すようにノズル液滴量情報2は、電圧に対して液滴量がほぼ直線状を有する。ノズルのインク液滴特性は、図3に示すように、その製造時のバラツキにより個々に異なることから、本実施の形態においてはノズル液滴量情報2を、各ノズル毎に測定して測定結果を取得し、これを図示していない第1の記憶手段である記憶装置(例えば、ハードディスクなど)に予め記憶させておく。尚、本実施の形態においては、図2(a)に示した特性の変化量(即ち、直線近似の傾き)を利用して後工程の電圧算出を行う。
【0028】
液滴量/電圧変換部3は、実際に基板107上に噴射されたインクの着弾径Dを測定して、この着弾径Dに対する液滴量を算出する機能部である。またその一方で、電圧補正対象であるノズルのノズル液滴量情報2を記憶装置から読み込み、ノズル液滴量情報2の変化量(直線近似の傾き)に算出した液滴量を乗算して電圧値Vを算出する。
【0029】
また、算出された電圧値Vと、予め設定されている所望液滴量に対する電圧値を比較し、その電圧差分量ΔVも算出する。ここで電圧差分量ΔV=0の場合は電圧補正は行わず、電圧差分量ΔVが生じた場合に電圧差分量ΔVを電圧/DA設定値変換部4に出力する。
【0030】
電圧/DA設定値変換部4は、液滴量/電圧変換部3から電圧差分量ΔVを取得し、予め記憶装置に記憶されている電圧対DA設定値情報(電圧値に対するDA設定値を対応付けた情報)を参照して、この電圧差分量ΔVに対するDA設定値を読み出し、読み出したDA設定値を可変電源部5に出力する。
【0031】
本実施の形態においては、インクジェット塗布装置の自動化を図るために、ノズル液滴量情報2、液滴量/電圧変換部3、電圧/DA設定値変換部4の信号処理工程は全てデジタル信号で処理する。しかし3端子レギュレータはアナログ信号を用いることから、DAコンバータ6でデジタル信号をアナログ信号に変換する。ここで液滴量/電圧変換部3の出力電圧とDAコンバータ6に互換性がない場合には、このように電圧/DA設定値変換部4を設けることで、差分電圧値ΔVを3端子レギュレータの使用電圧範囲に属するように電圧を変換する必要がある。
【0032】
即ち、電圧/DA設定値変換部4は、液滴量/電圧変換部3で算出された差分電圧値ΔVを、後段に接続されている3端子レギュレータ7に供給するときに、そのままの電圧値では供給できないので、3端子レギュレータの供給電圧に見合う電圧に変換する機能部である。またDA設定値とは、例えば8ビット又は16ビットのデジタル信号からなる値である。
【0033】
ここで図2(b)は、電圧対DA設定情報をグラフ化した模式図である。同図に示すように、電圧に対するDA設定値もほぼ直線状を有する。
【0034】
可変電源部5に内臓されるDAコンバータ6は、取得したDA設定値をアナログ信号に変換して、これを3端子レギュレータ7に出力する機能部である。
【0035】
3端子レギュレータ7は、上記アナログ信号を基準電圧として取得し、この基準電圧をもとに電圧を生成して、その出力電圧をスイッチング回路122に供給する。スイッチング回路122は、上記機能部の作用により新たに電圧補正された電圧量V+ΔVをアクチュエータ155に出力する。
【0036】
上記構成によれば、予め各ノズル毎に印加電圧に対する液滴量(電圧対液滴量情報)を作成して記憶させておき、実際に基板上にインクが噴射されると、このインクの着弾径から液滴量を算出して、この液滴量に対する電圧値を電圧対液滴量情報を参照して算出する。そして、この電圧値をアナログ信号にするためにDA設定値に変換後、DAコンバータでアナログ信号に変換し、変換後のアナログ信号を3端子レギュレータの基準電圧に入力して、この出力電圧をスイッチング回路に供給する。これにより基板上に噴射されたインク量が変化すると、アクチュエータに供給する電圧を自動的に修正して、所望の液滴量を出力する電圧を供給することができる。その結果、従来、手動で行っていたインクの液滴量の調整作業を自動化することができるので、作業効率を従来よりも飛躍的に向上させることができる。また、生産性を向上させることができるので、製品の低価格化を実現することが可能になる。
【0037】
次に、本発明のインクジェット塗布装置のインク液滴調整方法を説明する。
【0038】
まず、図1に示すインクジェット塗布装置に試し撃ち用基板を設定する。
【0039】
次いで、制御部120の指令により、塗布ヘッド115からインクを噴射させ、基板に着弾したインクの着弾径をCCDカメラ8で撮像し、これを画像処理して液滴量を算出する。この算出方法は、例えば、着弾径に対する液滴量換算表を予め作成しておき、この表をもとに着弾径に対する液滴量を算出すればよい。
【0040】
上記測定方法により印加電圧と液滴量を関連付けた電圧対液滴量情報を作成して記憶装置に記憶させる。また、この測定を全ノズルに対しても行い、各ノズル毎のノズル液滴量情報2を記憶装置に記憶させる。
【0041】
次に、インクジェット塗布装置に製品用のガラス基板を設定する。
【0042】
制御部120の指令により、ノズルからインクを噴射させ、基板107に着弾したインクの着弾径をCCDカメラ8で撮像し、これを画像処理してインクの液滴量を算出する。
【0043】
次いで、液滴量/電圧変換部3は、インクが噴射されたノズルの電圧対液滴量情報を読み込む。そして前工程で算出された液滴量に対する電圧を算出する。この算出は、ノズルが有する固有の変化量(直線近似の傾き)に上記液滴量を乗算して求める。そして、求めた電圧値と、予め設定されている所望液滴量と噴射する電圧値を比較して、その電圧差分量ΔVを算出する。算出された電圧差分量ΔVを電圧/DA設定値変換部4に出力する。
【0044】
電圧/DA設定値変換部4は、既に印加されている電圧値Vに、今回取得した電圧差分量ΔVを加算して補正電圧値V+ΔVを得る。その一方で、予め記憶装置に記憶されている電圧対DA設定値情報を読み込み、この電圧対DA設定値情報をもとに補正電圧値V+ΔVをDA設定値に換算する。換算されたDA設定値は、可変電源部5のDAコンバータ6に出力する。
【0045】
DAコンバータ6は、このDA設定値をアナログ信号に変換して、3端子レギュレータ7の基準電圧用の入力端子に出力する。
【0046】
3端子レギュレータ7は、入力端子に入力されたアナログ信号を基準電圧として出力電圧を生成して、この出力電圧をスイッチング回路122に供給する。
【0047】
スイッチング回路122は、この出力電圧と、別途入力される噴射タイミングを制御する噴射信号(on_sig,off_sig)の制御に基づき、補正された新たな電圧値をアクチュエータ155に供給する。
【0048】
アクチュエータ155は、スイッチング回路122から出力されるパルス信号がONになると電荷をチャージし膨張する。これによりインク室が圧迫されてノズルから所望の液滴量のインクが噴射される。一方、パルス信号がOFFになるとチャージされた電荷が放電され噴射が停止する。
【0049】
従って、上記の電圧補正制御を行うことにより、アクチュエータに印加する印加電圧を逐次補正することができるので、常に一定液滴量のインクをノズルから噴射させることができる。
【0050】
次に、上記電圧補正制御を含む表示装置の製造方法を説明する。
【0051】
まず、インクジェット塗布装置に製品用のガラス基板を設定する。複数のノズル151を有する塗布ヘッドユニット113からインクが基板に対して噴射される。基板107はX軸方向移動テーブル106に吸着固定されており、塗布ヘッドユニット113がインクを噴射している間、X軸方向移動テーブル106はX方向にスキャンし、一列塗布が終了するとY軸方向移動テーブル105が塗布した幅分だけシフトして、2列目のインク塗布が開始される。
【0052】
これを繰り返すことで基板上のセルに対し、インクが格子状に塗布されていく。この格子状のインクをCCDカメラで撮影し、電圧補正制御部1で画像処理する。この処理結果をもとに逐次液滴量をチェックし、液滴量が所望の液滴量から外れた場合には、上述の電圧補正制御を行って、常に一定のインクが噴射されるように調整しながら表示装置を製造する。
【0053】
尚、本実施の形態においては、図1に示した液滴量/電圧変換部3と電圧/DA設定値変換部4を制御部120に内蔵させる構成にしたが、例えば、電圧補正制御部1の全体を制御部120に収容するようにしてもよいし、一部を装置の外部に設置するようにしてもよい。
【0054】
また本実施の形態においては、ノズル液滴量情報2を製品製造前のインク試し撃ち時に1回測定し、これを記憶装置にプロファイルとして保存しているが、この情報は一定期間経過毎に更新したり、逐次新しい情報に更新するようにしてもよい。
【0055】
特にアクチュエータ155は、経年変化により徐々に液滴量が低下していくため、一定期間経過後に更新した方が電圧の補正が行い易い。
【0056】
また本実施の形態においては、基板107に噴射されたインクの着弾径Dを測定する機能として、図3に示すように、基板107表面の状態を撮像するCCDカメラ8を設けた。これにより着弾径を撮像し画像解析することで液滴量の算出が簡便化できる。このような構成により、液滴量の測定から所望の液滴量の噴射まで、ファインチューニングを完全に自動化することができる。しかし撮像方法はCCDカメラ8に限らず、着弾径又は液滴量を精密に測定できるものであれば、その手段は特に問わない。
【0057】
以上のように本発明によれば、インクの液滴量調整を自動化することができる。これにより作業効率を向上させることができるので、生産性を上げることが期待できる。また生産性の向上により製品の低価格化を実現することが可能になる。
【0058】
また、上記構成によれば、各画素に対して噴射するインクの液滴量を均一化することができるので、インクの筋ムラ等を低減することができる。その結果、高品質な表示装置を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のインクジェット塗布装置に設けられる電圧補正制御部の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、電圧(V)と液滴量(Q)の関係を示す電圧対液滴量情報の模式的な図であり、(b)は、電圧(V)とDA設定値の関係を示す電圧対DA設定値情報の模式的な図である。
【図3】本発明のインクジェット塗布装置の全体構成を示す模式図である。
【図4】ノズル毎の液適量を示す図である。
【図5】従来のインクジェット塗布装置の全体構成を示す図である。
【図6】塗布ヘッドの断面模式図である。
【図7】指令電圧値と液適量の関係を示す図である。
【図8】従来の電圧調整部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
1…電圧補正制御部、2…ノズル液滴量情報、3…液滴量/電圧変換部、4…設定値変換部、5…可変電源部、6…DAコンバータ、7…端子レギュレータ、8…CCDカメラ、101…インクジェット塗布装置、102…インク塗布ボックス、103…インク補給ボックス、104…架台、105…Y軸方向移動テーブル、106…X軸方向移動テーブル、107…基板、111…コラム、112…X軸方向スライド板、113…塗布ヘッドユニット、115…塗布ヘッド、118…インクタンク、120…制御部、121…抵抗分圧回路、122…スイッチング回路、151a,151b,151c…ノズル、152…インク室、153…流路ユニット、154…ダイヤフラム、155…アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有し、当該ノズルに設けられたアクチュエータに電圧を印加して、変動した変位をインク液室に伝達し、前記各ノズルからインクの液滴を噴射させる塗布ヘッドを備えるインクジェット塗布装置であって、
前記アクチュエータに印加する電圧の変化量に対するインクの液滴量が電圧対液滴量情報として予め記憶されている第1の記憶手段と、
前記複数のノズルのうち、電圧補正対象として選択されたノズルから噴射された液適量を取得して、当該液滴量に対する電圧値を前記電圧対液滴量情報を参照して算出する電圧算出手段と、
算出された当該電圧値と、予め設定されている所望液滴量に対する電圧値を比較し、その電圧差分量ΔVを算出する電圧差分量算出手段と、
電圧差分量ΔVの変化量に対するDA設定値をアナログ信号に変換し、このアナログ信号を基準電圧として3端子レギュレータに供給するアナログ信号供給手段と、
前記3端子レギュレータの出力電圧を、前記電圧補正対象のノズルのアクチュエータに供給するスイッチング手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット塗布装置。
【請求項2】
複数の各ノズルに設けられたアクチュエータの変位をインク液室に伝達し、前記各ノズルから均一なインクの液滴量を噴射させるインクジェット塗布装置のインク液滴調整方法であって、
前記アクチュエータに印加する電圧の変化量に対するインクの液滴量を対応付けてなる電圧対液滴量情報を読み込む第1工程と、
電圧補正対象のノズルから噴射されたインクの液滴量を取得し、当該液滴量に対する電圧量を前記電圧対液滴量情報から読み出す第2工程と、
前記第2工程で読み出された電圧値と、予め設定されている所望液滴量に対応する基準電圧値をそれぞれ読み込み、当該電圧値と当該基準電圧値を比較して、その電圧差分量ΔVを算出する第3工程と、
予め記憶されている電圧差分量の変化量に対するDA設定値の変化量を対応付けた電圧対DA設定情報を読み込む第4工程と、
前記電圧対DA設定情報を参照して、前記第3工程で算出された電圧差分量ΔVに対するDA設定値を読み出す第5工程と、
前記第5工程で読み出した当該DA設定値をアナログ信号に変換する第6工程と、
当該アナログ信号を3端子レギュレータの基準電圧に入力する第7工程と、
前記3端子レギュレータから出力された出力電圧を、前記電圧補正対象のノズルのアクチュエータに供給する第8工程と、
を有することを特徴とするインクジェット塗布装置のインク液滴調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−35041(P2006−35041A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216106(P2004−216106)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】