説明

インクジェット捺染方法及び捺染物

【課題】汚れた衣服や色落ちし易い衣服と共に洗濯しても、布帛が有するカチオン性物質の部分、特に画像領域以外の領域に対しても汚れや染着などが選択的に染着することが起こらない捺染物が得られるインクジェット捺染方法の提供。
【解決手段】布帛にインクジェット記録を行うインクジェット捺染方法において、少なくとも熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含む布帛に対して、アニオン性基を有する分散剤及び顔料を含有する顔料インクを用いてインクジェット記録を行う記録工程と、該工程でインクジェット記録が行われた布帛に対して、上記含窒素カチオン性物質に結合するアニオン性化合物を付与する後処理工程と、該後処理工程の後に、インクジェット記録がされた布帛のインクを加熱定着させる加熱工程とを有することを特徴とするインクジェット捺染方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料インクを用いたインクジェット捺染方法及び該捺染方法により得られた捺染物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット記録方法を利用した捺染方法においては、染料インクが用いられてきた。染料には各種の色合いの鮮やかな色素化合物があることから、染料インクを用いることで、色調の優れた鮮明な図柄を、布帛に現出することができるという利点がある。しかしながら、染料インクを用いる場合には、染色工程後に、繊維への染料の定着を目的として、染料インクに含まれる染料に応じた方法によって布帛に対して後処理を施さなければない。このため、工程数やコストの増加につながり、また、廃液処理が不可欠であるなど、生産性の問題や環境汚染に対する考慮も必要となるという問題がある。
【0003】
これに対して、顔料インクを用いる場合には、一般に染料インクを用いる場合に比べて色調や鮮明性などに劣るものの、顔料の耐光性や耐水性が優れていることから、堅牢性が良い捺染物が得られるという利点がある。また、インクジェット記録方法を利用した捺染に顔料インクを用いる場合は、染料インクを用いる場合と比較すると、布帛に対する煩雑な後処理が不要であるといった利点もある。このようなことから、現在、顔料インクを用いるインクジェット捺染方法が注目されている。
【0004】
ところで、インクジェット記録方法で広く用いられている記録媒体としては、一般に、シリカ、アルミナなどの無機微粒子や水溶性高分子を含有するインク受容層を有するものが用いられている。このインク受容層の存在は、インクジェット記録画像の品質を向上させる。しかしながら、記録媒体が布帛である場合に上記した技術を応用すると、布帛が持つ風合いが損なわれ、また、得られる捺染物は、画像の濃度が不十分であり、洗濯堅牢性に劣ったものとなる。
【0005】
これに対し、特許文献1では、記録媒体として布帛を用いる場合に、布帛に疎水性低分子化合物とカチオン樹脂を付与し、その後、顔料インクを用いて画像形成する方法が提案されている。この方法を用いることで、布帛の風合いを損なわずに、高濃度の捺染物を得ることができるとされている。しかし、本発明者らの検討によれば、上記捺染物は、洗濯堅牢性に対して下記のような新たな問題を有する。すなわち、上記捺染物を汚れた衣服や色落ちのし易い衣服などと共に洗濯すると、汚れや染料などが、上記の処理で使用したカチオン性物質に対して選択的に染着してしまう場合がある。
【0006】
また、特許文献2では、含窒素カチオン性物質を布帛の画像形成領域に付与し、該領域へアニオン性基を有する顔料インクを用いたインクジェット記録の後、画像上に熱可塑性の疎水性樹脂を付与するインクジェット捺染方法を提案している。当該方法によれば、洗濯堅牢性が十分にあり、画像形成外への汚染がほとんどない捺染物が得ることができる。しかしながら、本発明者らの検討によれば、この方法においても、捺染物の洗濯堅牢性に問題がある場合を見出した。上記の方法では含窒素カチオン性物質を布帛の画像形成領域に付与しているが、含窒素カチオン性物質が布帛の画像形成領域以外の部分に付与された場合には、上記と同様の問題が生じる。すなわち、このような画像形成領域以外の部分にカチオン性物質が付与された場合に、得られた捺染物を汚れた衣服や色落ちのし易い衣服などと共に洗濯すると、この部分に汚れや染着などが選択的に染着することが生じる。このことは、上記の方法でこの問題を解決するためには、布帛への含窒素カチオン性物質の付与を、布帛の画像形成領域に一致するようにして行わなければならないことを意味する。このため、上記方法で良好な捺染物を得る際の製品の歩留り低下が懸念される。
【0007】
【特許文献1】特開2001−140174公報
【特許文献2】特開2005−320663公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、カチオン性物質を含む布帛に顔料インクを用いてインクジェット記録を行うインクジェット捺染方法において、特に下記の点を改善することにある。すなわち、布帛が有するカチオン性物質、特に画像領域以外の領域に対しても汚れや染着などが選択的に染着する部分染着が起こらない捺染物が得られるインクジェット捺染方法を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、該捺染方法により得られる上記の優れた捺染物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的は以下の手段によって達成される。すなわち、本発明は、布帛にインクジェット記録を行うインクジェット捺染方法において、少なくとも熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含む布帛に対して、アニオン性基を有する分散剤及び顔料を含有する顔料インクを用いてインクジェット記録を行う記録工程と、該工程でインクジェット記録が行われた布帛に対して、上記含窒素カチオン性物質に結合するアニオン性化合物を付与する後処理工程と、該後処理工程の後に、インクジェット記録が行われた布帛のインクを加熱定着させる加熱工程とを有することを特徴とするインクジェット捺染方法である。
【0010】
また、本発明の別の実施態様は、上記した本発明のインクジェット捺染方法によって製造されたことを特徴とする捺染物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、例えば、前処理液で予め処理して得られる熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含む布帛に対して、顔料インクを用いてインクジェット記録を行うインクジェット捺染方法に関するが、以下の効果を有する。すなわち、本発明によれば、カチオン性物質を含む布帛を使用しているにもかかわらず、得らた捺染物を洗濯した際に、このカチオン性物質に汚れや染料などが選択的に染着する「部分染着」を生じることがなく、風合に優れた捺染物の提供が可能となる。また、本発明によれば、該捺染方法により得られる上記の優れた品質の捺染物を歩留りよく経済的に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明のインクジェット捺染方法は、少なくとも、以下に記載する各工程を有することを特徴とする。
(1)少なくとも熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含む布帛に対して、アニオン性基を有する分散剤及び顔料を含有する顔料インクを用いてインクジェット記録を行う記録工程。
(2)該記録工程でインクジェット記録が行われた布帛に対して、上記含窒素カチオン性物質に結合するアニオン性化合物を付与する後処理工程。
(3)該後処理工程の後に、インクジェット記録が行われた布帛のインクを加熱定着させるための加熱工程。
【0013】
上記したように、本発明では、先ず、少なくとも熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含む布帛に対して、アニオン性基を有する分散剤及び顔料又はアニオン性基を有する顔料を含有するインクを用いてインクジェット記録を行う。本発明の特徴は、その後、後処理工程で、インクジェット記録が行われた布帛に対して、上記含窒素カチオン性物質に結合するアニオン性化合物を付与することにある。後処理工程でアニオン性化合物を布帛に付与する目的は、インクジェット記録後の布帛上のイオン性を打ち消すことで、捺染物を洗濯した際に、布帛が有する含窒素カチオン性物質に対して染料や汚れなどの部分染着が生じることを防ぐことにある。本発明では、さらに、後処理工程の後に、インクジェット記録が行われた布帛を加熱するが、これによって、熱可塑性樹脂と、布帛、分散剤及び顔料との接着性を高めることができる。以下、各工程について、順に説明する。
【0014】
本発明では、先ず、捺染対象の布帛として、予め熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含む布帛を用意する。布帛のうち、熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含む領域としては、勿論画像形成領域であってもよいし、布帛全体であってもよい。具体的な処理の方法としては、少なくとも熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含有する前処理液で布帛を処理することで、布帛に熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含むものとする。処理の方法としては、前処理液を水溶性のものとして、スプレーやローラーや刷毛などによって布帛に付与させることなどが挙げられる。また、前処理液をインクジェット記録方法により布帛に付与させることもできる。以下、上記の処理に使用する熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質について説明する。
【0015】
本発明では、熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含む布帛を使用するが、該布帛は、例えば、上記のような処理を予めすることで得られる。以下、これらの材料について説明する。熱可塑性樹脂としては、後述するインクを加熱定着させる加熱工程で布帛を加熱した場合に、熱によって軟化し、その後に固化して樹脂被膜を形成できる被膜形成能を有するものを使用する。さらに、該被膜中にインク中の顔料や分散剤などを良好な状態で固定でき、しかも、形成される被膜が布帛の風合いを損なうことのない柔軟性に富んだものとなるようなものが挙げられる。
【0016】
このような布帛に付与するのに好適な熱可塑性樹脂としては、通常の顔料捺染に用いられているエラストマーの乳化物(エマルション)が挙げられる。樹脂としては、例えば、アクリル共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂又は塩化ビニルなどが挙げられる。これらの中でもアクリル共重合樹脂が特に好ましい。さらに、本発明で使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、−35℃以上45℃以下、特には、−25℃以上20℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が−35℃未満の樹脂では、得られる捺染物の画像の耐摩耗性が不十分な場合がある。一方、45℃よりも高いガラス転移温度の樹脂を用いると、樹脂被覆層の布帛に対する接着性や布帛が持つ風合いが悪くなる場合がある。また、布帛における熱可塑性樹脂の量は、十分な被膜形成能と布帛の風合いとの兼ね合いで決定する必要がある。例えば、熱可塑性樹脂と含窒素カチオン性物質とを含有する前処理液をスプレーなどで布帛に予め付与する場合には、前処理液中における熱可塑性樹脂の含有量を下記のように調整することが好ましい。具体的には、上記熱可塑性樹脂の含有量が、0.5質量%以上7質量%以下、さらには、3質量%以上5質量%以下の前処理液を使用することが好ましい。この場合に、前処理液中における熱可塑性樹脂の含有量が、0.5質量%未満であると十分な被膜形成能が発揮されず、上記効果が十分に得られない場合がある。一方、前処理液中における含有量が7質量%を超えると、このような前処理液で処理すると布帛が持つ風合いが損なわれる場合がある。
【0017】
本発明において使用する含窒素カチオン性物質としては、例えば、その構造中に窒素を含むカチオン性樹脂やカチオン系界面活性剤などが挙げられる。カチオン性樹脂の具体例としては、以下のものが挙げられる。ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレートなど又はこれらの変性物。ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドアミンなど又はこれらの変性物。ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ジシアンジアミドポリアルキル・ポリアルキレンポリアミン縮合物など又はこれらの変性物。ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、アクリルアミド・ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジメチルアミンエピクロルヒドリン重縮合物など又はこれらの変性物。これらは、1種又は2種以上を適宜に選択して用いることができる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
【0018】
また、カチオン系界面活性剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。ラウリルアミン、ステアリルアミン又はロジンアミンなどの塩酸塩や酢酸塩などの1級、2級又は3級アミン塩型の化合物など。ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、塩化セチルトリメチルアンモニウム又は塩化ベンザルコニウムなどの第4級アンモニウム塩型の化合物など。アミノ酸型両性界面活性剤又はベタイン型化合物などを等電点以下に調整したものなど、あるpH領域においてカチオン性を示す両性界面活性剤など。これらは、1種又は2種以上を適宜に選択して用いることができる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
【0019】
上記に挙げたような含窒素カチオン性物質には、それ自身が有色で変色しやすいものもある。本発明においては、上記した含窒素カチオン性物質の中でも特に、無色で変色しにくく、後述する後処理工程で使用するアニオン性化合物との反応性が高いものを使用することが好ましい。第4級アンモニウム塩型化合物は、無色で変色しにくく、アニオン性化合物との反応性が高い含窒素カチオン性物質であるので、特に本発明に好適である。上記のような含窒素カチオン性物質を有する布帛に、アニオン性基を有する分散剤及び顔料、又はアニオン性基を有する顔料を含有する顔料インクを用いてインクジェット記録した場合に、下記の効果が得られる。すなわち、含窒素カチオン性物質を有する布帛に、上記いずれかのインクでインクジェット記録を行った場合には、アニオン性基を有する分散剤及び顔料、又はアニオン性基を有する顔料の捕捉性を向上させることができる。この結果、高濃度で優れた洗濯堅牢性を有する捺染物が得られる。
【0020】
また、布帛における含窒素カチオン性物質の量としては少なくとも、インク中のアニオン性基を有する分散剤及び顔料、又はアニオン性基を有する顔料の捕捉が十分に行われる程度とすることが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂と含窒素カチオン性物質とを含有する前処理液をスプレーなどで布帛に予め付与する場合には、前処理液中における含窒素カチオン性物質の含有量を下記のように調整することが好ましい。具体的には、前処理液中における上記含窒素カチオン性物質の含有量は、0.05質量%以上5質量%以下、さらには0.1質量%以上1質量%以下であることが好ましい。上記含窒素カチオン性物質の含有量が、0.05質量%未満であると少な過ぎて上記効果が十分に得られない場合がある。一方、前処理液中における上記含窒素カチオン性物質の含有量が5質量%を超えても、さらなる性能向上が期待できず、経済的でない。
【0021】
本発明においては、布帛が含有する熱可塑性樹脂と含窒素カチオン性物質の含有量は、これらの質量比率(熱可塑性樹脂:含窒素カチオン性物質)が、140:1乃至1:10となるようにすることが好ましい。すなわち、前処理液中における含有量(質量%)の比率が、(熱可塑性樹脂の含有量)/(含窒素カチオン性物質の含有量)=0.1以上140以下であることが好ましい。本発明者らの検討によれば、この場合に上記した本発明の効果が顕著に得られる。従って、布帛の処理にあたっては、熱可塑性樹脂と含窒素カチオン性物質が、上記範囲で含有されている布帛の前処理液を使用することが好ましい。また、必要であれば、布帛の前処理液に、他の添加剤、例えば、pH調整剤、浸透剤又は架橋剤などを添加させたものを使用してもよい。
【0022】
上記したような成分からなる布帛の処理液を布帛に付与する方法としては、例えば、パッド法、スプレー法、プリント法又はコーティング法などの公知のいずれの方法でもよく、特に限定されるものではない。
【0023】
本発明で用いる布帛の素材は、従来公知のいずれのものでもよい。例えば、綿、絹、麻、レーヨン、アセテート、ナイロン若しくはポリエステル繊維からなる布帛や、これらの繊維の2種以上からなる混紡布帛などを布帛の素材として用いることができる。
【0024】
本発明のインクジェット捺染方法では、上記のような熱可塑性樹脂と含窒素カチオン性物質とを含む布帛に対して、アニオン性基を有する分散剤及び顔料、又はアニオン性基を有する顔料を含有するインクでインクジェット記録を行う。本発明の捺染方法では、従来公知のインクジェット記録用のものの中から、上記の構成を有するインクを選択して用いればよい。例えば、アニオン性基を含有する顔料であって、且つ、自己分散性を有する顔料を含有するインクを使用することができるが、この場合には、必ずしも分散剤は必要としない。分散剤によって液媒体中に顔料を分散してなるインクを使用する場合には、顔料とアニオン性基を有する分散剤によって顔料を分散してなるインクを用いることができる。これらのインクは、顔料などの成分を溶解或いは分散させるための、水又は水及び水溶性有機溶剤を含む液媒体を含有するものであることが好ましい。また、本発明で使用するインクは、その他に、pH調整剤、防黴剤、界面活性剤又は樹脂などの各種添加剤が適宜に含有されたものであってもよい。以下に、本発明で使用するインクの各成分について説明する。
【0025】
<インクの構成>
(インクの液媒体など)
上記液媒体に使用する水溶性有機溶剤の好適なものとしては、例えば、グリコール類、グリコールエーテル類又は含窒素溶剤などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を適宜に選択して用いることができる。また、界面活性剤としては、例えば、以下に挙げるようなものを用いることができる。脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類及びアルキルアリルスルホン酸塩類などの陰イオン界面活性剤を挙げることができる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類及びポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤を挙げることができる。これらの界面活性剤は、1種又は2種以上を適宜に選択して用いることができる。
【0026】
(顔料)
上記顔料としては、例えば、以下のものを用いることができる。ブラックインクに用いられる顔料としては、カーボンブラックを用いることができ、具体的には、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック又はチャンネルブラックなどのカーボンブラックを用いることができる。これらは、1種又は2種以上を適宜に選択して用いることができる。勿論、下記に列挙するような市販のカーボンブラックや、新たに調製されたカーボンブラックも用いることができる。
【0027】
レイヴァン:7000、5750、5250、5000ULTRA、3500、2000、1500、1250、1200、1190ULTRA−II、1170、1255(以上コロンビア製)。ブラックパールズL、リーガル:400R、330R、660R、モウグルL、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、ヴァルカンXC−72R(以上キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック:6、5、4A、4(以上デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学製)。
【0028】
カラーインクに用いられる有機顔料としては、具体的には、以下に挙げるものを用いることができる。トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー及びピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー及びピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン及びチオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド及びキナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系顔料。ペリレンレッド及びペリレンスカーレットなどのペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー及びイソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ及びベンズイミダゾロンレッドなどのイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド及びピランスロンオレンジなどのピランスロン系顔料。インジゴ系顔料。縮合アゾ系顔料。チオインジゴ系顔料。ジケトピロロピロール系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド又はジオキサジンバイオレットなど。これらは、1種又は2種以上を適宜に選択して用いることができる。
【0029】
また、上記有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、以下のものを用いることができる。C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117など。また、C.I.ピグメントイエロー:120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185など。C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61、71など。C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192など。C.I.ピグメントレッド:215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272など。C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50など。C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64など。C.I.ピグメントグリーン:7、36など。C.I.ピグメントブラウン:23、25、26など。
【0030】
(分散剤)
本発明で使用するインクを構成する顔料と共に用いる分散剤としては、アニオン性基を有するものが好適であり、アニオン系界面活性剤又はアニオン性基を有する高分子分散剤などを用いることができる。例えば、アニオン性基を有する高分子分散剤であり、具体的には、スチレン−アクリル酸共重合体などを挙げることができる。
【0031】
(アニオン性基を有する顔料)
本発明で使用するインクを構成するアニオン性基を有する顔料は、顔料粒子の表面にアニオン性基を結合してなるものが好適である。アニオン性基としては、−COOM、−SO3M、及び−PO3HMからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる(式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表わす。)。上記した官能基は、顔料粒子の表面に直接結合していても、又は他の原子団を介して化学的に結合していてもよい。上記他の原子団は、例えば、炭素原子数1乃至12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基、又は置換若しくは未置換のナフチレン基等が挙げられる。このような自己分散型カーボンブラックは、例えば、国際公開第97/47699号パンフレットに記載されている。本発明では、上記イオン性基の中でも、−COOMがカーボンブラック粒子の表面に、直接又は他の原子団を介して化学的に結合した顔料を用いることが特に好ましい。
【0032】
<後処理工程及び加熱工程>
次に、本発明のインクジェット捺染方法を特徴づける後処理工程と、それに続く最終工程の加熱工程について説明する。後処理工程では、インクジェット記録が行われた布帛にアニオン性化合物を付与するが、アニオン性化合物に、布帛に含有されている先に説明したような含窒素カチオン性物質に結合するものを使用する。先述したように、本発明では、このようなアニオン性化合物を布帛に付与することで、布帛のイオン性を打ち消し、これによって捺染物を洗濯した場合に生じることのあった部分染着の問題を解決する。以下、後処理工程に使用するアニオン性化合物について説明する。本発明の後処理工程で用いるアニオン性化合物としては、例えば、下記に挙げるようなアニオン性樹脂やアニオン系界面活性剤などを用いることができる。本発明で用いることのできるアニオン性樹脂の具体例としては、ポリアクリル酸若しくはその塩、ポリメタクリル酸若しくはその塩、アルギン酸若しくはその塩、ペクチン、マレイン酸共重合体、ポリリン酸又は硫酸ポバールなどが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を適宜に選択して用いることができる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
【0033】
本発明で使用することのできるアニオン系界面活性剤の具体例は、以下のものが挙げられる。アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩又はアルキルリン酸塩など。ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸エステル塩又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩など。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル硫酸エステル又はポリオキシエチレアルキルリン酸エステルなど。これらは、1種又は2種以上を適宜に選択して用いることができる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
【0034】
また、上記アニオン性化合物は、水又は水及び水溶性有機溶剤を含む液媒体とともに後処理液として該布帛に付与することもできる。上記後処理液は、必要であれば、他の添加剤を添加したものであってもよい。
【0035】
アニオン性化合物を布帛に付与する方法としては、上記したような構成の後処理液を用い、これを、パッド法、スプレー法、プリント法又はコーティング法などの公知の方法で付与することが挙げられる。また、後処理液をインクジェット記録方法により布帛に付与させることもできる。勿論、本発明は特に限定されるものではない。
【0036】
本発明のインクジェット捺染方法では、顔料インクでインクジェット記録を行った布帛にアニオン性化合物を付与した後、加熱工程でインクを加熱定着させるが、以下、これについて説明する。布帛上に塗布されたインクを加熱定着させる温度は、使用する熱可塑性樹脂によっても異なるが、例えば、100℃以上200℃以下、より具体的には150℃程度であることが好ましい。また、加熱時間は、特に制限はなく、例えば、1分間以上10分間以下、より具体的には3乃至5分間程度であることが好ましい。また、インクを布帛上に加熱定着させる機械は、特に制限はなく、例えば、ピンテンターや万能プレスなどを挙げることができる。さらに、本発明のインクジェット捺染方法は、上記した工程以外の他の工程も必要により含むことができる。
【0037】
以下、本発明におけるインクジェット記録工程で使用するインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置について説明する。
<インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置>
本発明のインクジェット捺染方法では、先に説明した布帛上に、上記した顔料インクを用いてインクジェット記録方法により画像を形成し、その後、後処理工程及び加熱工程を経て、捺染物を得る。その際、インクジェト記録装置の記録ヘッドを布帛上で走査してインクを所望の位置に付与することによって所望の画像記録を行う。
【0038】
インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置は従来公知のいずれの記録方式のものでもよい。例えば、記録ヘッド内のインクに、記録信号に対応した熱エネルギーを与えることにより、インクの液滴を発生させるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置が挙げられる。
【0039】
以下に、インクジェット記録装置の一例について以下に説明する。先ず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であるヘッド構成の一例を図1及び図2に示す。図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13は、インクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板などと発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は、以下に挙げるもの(16から20)により構成される。酸化シリコン、窒化シリコン又は炭化シリコンなどで形成される保護層16。アルミニウム、金又はアルミニウム−銅合金などで形成される電極17−1及び17−2。HfB2、TaN又はTaAlなどの高融点材料から形成される発熱抵抗体層18。熱酸化シリコン又は酸化アルミニウムなどで形成される蓄熱層19。シリコン、アルミニウム又は窒化アルミニウムなどの放熱性のよい材料で形成される基板20。
【0040】
上記のような構成からなる記録ヘッド13による画像形成は、下記のようにして行われる。先ず、電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生する。この気泡の圧力でメニスカス23が突出し、インク21がヘッド13のノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、記録媒体25に向かって飛翔する。
【0041】
図3は、図1に示した記録ヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図である。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0042】
図4は、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、図示した例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。さらに、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面の水分、塵埃などの除去が行われる。
【0043】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0044】
51は記録媒体を挿入するための紙給部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録の進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0045】
なお、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピングのときの位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッド65のホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでない。記録ヘッド65が記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動する。この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例によって限定されるものではない。なお、特に断らない限り「部」とは「質量部」であり、「%」とは「質量%」である。
【0047】
<実施例1>
[前処理液1の調製]
先ず、以下の処方にて布帛を処理するための前処理液1を調製した。
・アクリル酸エステル系樹脂(固形分35%エマルション、
商品名:Binder 705(M);大日精化製) 5部
・カチオン系界面活性剤(固形分50%、
商品名:G−50;三洋化成製) 1部
・水 94部
【0048】
[顔料インクの調製]
(顔料分散体)
下記に挙げた各顔料を、それぞれ高分子分散剤とともに水中に分散させ、常法に従って各色の顔料分散体を調製した。上記高分子分散剤として、スチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量7,000)を用いた。各顔料分散体の処方は、顔料/高分子分散剤/水の混合割合が、質量比で、顔料/高分子分散剤/水=10/3/87となるようにした。
【0049】
(顔料の種類)
・シアンインク:C.I.ピグメントブルー15:1
・マゼンタインク:C.I.ピグメントレッド122
・イエローインク:C.I.ピグメントイエロー74
・ブラックインク:カーボンブラック
【0050】
(顔料インク)
上記で得られた各色の顔料分散体を用いて、以下の処方にて各色の顔料インクを調製した。得られた各色の顔料インクの粘度は3mPa・s〜5mPa・s程度であった。
・上記で調製した顔料分散体 60質量%
・グリセリン 5質量%
・ジエチレングリコール 10質量%
・イソプロピルアルコール 10質量%
・水 15質量%
【0051】
[捺染物の製造]
布帛として、綿100%のサテン織物(シルケット加工品)を用い、これに上記で得られた前処理液1をスプレー法で付与した。次いで、乾燥温度80℃で3.5分間乾燥を行った。その後、上記で得られた各色の顔料インクをインクジェット記録装置(商品名:BJ F600;キヤノン製)に搭載して、前処理液1を付与した布帛に記録を行った。
【0052】
次に、上記で記録した布帛に、後処理液をスプレー法で付与した。後処理液には、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム5部を、水95部中に入れて溶解したものを用いた。後処理をした後、直ちに万能プレス(HP−B2S;宮田工機製)を用いて乾燥温度150℃で3.5分間加熱定着を行った。上記のようにして得られた捺染物を実施例1の捺染物とした。
【0053】
<実施例2>
実施例1で使用した顔料分散体に変えて、下記のアニオン性基を有する自己分散性の顔料を用いること以外は実施例1と同様にして、実施例2の捺染物を製造した。
【0054】
(顔料分散体)
先ず、実施例1で使用したと同様の各顔料の粒子表面に、それぞれアニオン性基としてカルボキシル基を結合させて自己分散性顔料を調製した。得られた各顔料を常法に従ってそれぞれ水中に分散させ、本実施例で使用する各色の顔料分散体を調製した。これらの顔料分散体の処方は、顔料/水の混合割合が、質量比で、顔料/水=10/90となるようにした。なお、これらの各顔料分散体には、分散剤は用いられていない。
【0055】
<実施例3>
実施例1における前処理液1に変えて、下記で作製する前処理液2を用いること以外は実施例1と同様にして、実施例3の捺染物を製造した。
【0056】
(前処理液2)
以下の処方にて前処理液2を調製した。
・アクリル酸エステル系樹脂エマルション(固形分35%、
商品名:Binder 705(M);大日精化製) 5部
・カチオン系界面活性剤(固形分30%、
商品名:TM−16;三洋化成製) 1部
・水 94部
【0057】
<実施例4>
実施例2における前処理液1に変えて、上記前処理液2を用いること以外は実施例2と同様にして、実施例4の捺染物を製造した。
【0058】
<比較例1>
布帛に綿100%のサテン織物(シルケット加工品)を用い、これに上記で得られた前処理液1をスプレー法で付与した。次いで、乾燥温度80℃で3.5分間乾燥を行った。その後、実施例1で使用した顔料インクをインクジェット記録装置(商品名:BJ F600;キヤノン製)に搭載して、前処理液1を付与した布帛に記録を行った。その後、後処理を行うことなく、直ちに万能プレス(HP−B2S;宮田工機製)を用いて乾燥温度150℃で3.5分間加熱定着をして、比較例1の捺染物を製造した。
【0059】
<比較例2>
比較例1で使用した顔料インクに変えて、実施例2で使用した顔料インクを用いること以外は比較例1と同様にして、比較例2の捺染物を製造した。
【0060】
<比較例3>
比較例1で使用した前処理液1に変えて、実施例3で使用した前処理液2を用いること以外は比較例1と同様にして、比較例3の捺染物を製造した。
【0061】
<比較例4>
比較例3で使用した顔料インクに変えて、実施例2で使用した顔料インクを用いること以外は比較例3と同様にして、比較例4の捺染物を製造した。
【0062】
<評価>
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた捺染物を、それぞれ市販の酸性染料であるC.I.アシッドブルー9を5%含有する水溶液中に10分間浸漬した。その後、これらの捺染物を家庭用洗濯機で10分間すすいだ。そして、実施例及び比較例で使用したと同様の何も処理を施していないサテン織物(ブランク)の明度L1*、色度a1*及びb1*と、実施例又は比較例で得た各捺染物の明度L2*、色度a2*及びb2*とを、それぞれ測色した。なお、測色には、測色計(商品名:CM−2022;ミノルタ製)を用いた。各捺染物の明度L2*、色度a2*及びb2*の測色は、捺染物の画像が形成されしていない部分について行った。得られた値から下記の計算式を用いて、染着の程度(ΔE)を算出した。得られたΔEにより、下記の基準に従って部分染着の程度の評価を行った。評価結果を表1に示す。

【0063】
(評価基準)
○:数値(ΔE)が1以下であり、染着が見られない
×:数値(ΔE)が1より大きく、染着が見られる
【0064】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】記録ヘッドの縦断面図である。
【図2】記録ヘッドの縦横面図である。
【図3】図1に示した記録ヘッドをマルチ化した記録ヘッドの外観斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
13:ヘッド
14:ノズル
15:発熱素子基板
16:保護層
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク小滴
25:記録媒体
26:マルチノズル
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
51:紙給部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛にインクジェット記録を行うインクジェット捺染方法において、
少なくとも熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含む布帛に対して、アニオン性基を有する分散剤及び顔料を含有するインクを用いてインクジェット記録を行う記録工程と、
該記録工程でインクジェット記録が行われた布帛に対して、上記含窒素カチオン性物質に結合するアニオン性化合物を付与する後処理工程と、
該後処理工程の後に、インクジェット記録が行われた布帛のインクを加熱定着させる加熱工程とを有することを特徴とするインクジェット捺染方法。
【請求項2】
布帛にインクジェット記録を行うインクジェット捺染方法において、
少なくとも熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含む布帛に対して、アニオン性基を有する顔料を含有するインクを用いてインクジェット記録を行う記録工程と、
該工程でインクジェット記録が行われた布帛に対して、上記含窒素カチオン性物質に結合するアニオン性化合物を付与する後処理工程と、
該後処理工程の後に、インクジェット記録が行われた布帛のインクを加熱定着させる加熱工程とを有することを特徴とするインクジェット捺染方法。
【請求項3】
上記布帛が、熱可塑性樹脂の含有量が、0.5質量%以上7質量%以下である前処理液を用いて処理されている請求項1又は2に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項4】
上記布帛が、含窒素カチオン性物質の含有量が、0.05質量%以上5質量%以下である前処理液を用いて処理されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項5】
上記前処理液が、少なくとも熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質を含み、かつ、該前処理液中における熱可塑性樹脂及び含窒素カチオン性物質の含有量の質量比率が、140:1乃至1:10である請求項3又は4に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項6】
上記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が、−35℃以上45℃以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項7】
上記含窒素カチオン性物質が、カチオン系界面活性剤である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット捺染方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット捺染方法によって製造されたことを特徴とする捺染物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−231617(P2008−231617A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73430(P2007−73430)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】