説明

インクジェット記録ヘッド、及びインクジェット記録ヘッドの作製方法

【課題】 (1)基板の変形を抑え、吐出口の位置ズレを低減でき、(2)機械的強度の高く、ハンドリング及びマウント時の破損を回避できる、良好な印字を可能にする高精細且つ高速な記録を行うことが可能な長尺にできるインクジェット記録ヘッド及びその新規な作製方法を提供すること。
【解決手段】 インクジェット記録ヘッドの作製方法において、(a)該基板裏面に、開口部を有するマスク層を形成する工程(b)開口部よりエッチングを行い、開口部サイズよりも大きいサイズのエッチング底部を有する溝を形成する工程(c)該溝から露出した基板をエッチングし、基板に貫通孔を形成すると共に、隣接する溝を連通し、梁と共通液室を形成する工程を含むことを特徴とする記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出させて被記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッド及びその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクを加熱して気泡を生成させ、この気泡の生成に基づいてインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着させて画像形成を行う、インクジェット記録方式(特開昭54ー51837に記載)は、高速記録が可能であり、また比較的記録品位も高く、低騒音であるという利点を有している。この方法はカラー画像記録が比較的容易であって、普通紙等にも記録でき、装置の小型化も容易であり、さらに、記録ヘッドにおける吐出口を高密度に配設することができるので、高解像度、高品位の画像を高速で記録することができるといった多くの優れた利点を有している。この方法を用いた記録装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等における情報出力手段として用いることができる。前記、記録装置の一例の概略を次に示す。
【0003】
まず、図14に示すように記録ヘッド1401は記録ユニット1402に装着される。次に、図13に示すように記録ユニット1301はインクカートリッジ1302と共にキャリッジ1303に装着される。前記キャリッジはガイド軸1306、ベルト1304、記録装置制御部1311により制御され、記録ヘッドよりインクを吐出させながら被記録物に記録を行う。
【0004】
このようなインクジェット記録方式の記録ヘッドの一般的構造は、インクを吐出するために設けられた吐出口と、これに連通してインクが満たされたインク路とこのインク路中に設けられた熱エネルギーを発生する為の電気熱変換素子(以下、発熱体と記す)を具備している。発熱体は、発熱抵抗層とそれをインクから保護する上部の保護層と蓄熱するための下部の蓄熱層を具備している。これに電極配線を介してパルス的に通電(駆動パルスの印加)がなされることによって熱エネルギーを発生し、熱エネルギーの作用を受けた液体が過熱されて気泡を発生し、この気泡発生に基づく作用力によって、記録ヘッド部先端の吐出口から液滴が形成され、この液滴が被記録部材に付着して情報の記録が行われる。
【0005】
近年、データ量の多い画像情報を被記録部材に出力する要求が高まり、高精細且つ高速な記録が望まれてきている。高精細な画像を出力するには小液滴を安定に吐出することとなるが、このためには高密度、且つ高精度に吐出口を形成する必要がある。
【0006】
その形成方法として、特開平5-330066,及び特開平6-286149に示されたインクジェット記録ヘッドの吐出口の製造方法が提案されており、また、特開平10-146979にて前記の吐出口の形成方法においてインク供給口部上部のオリフィスプレートにリブ構造を有する形成方法が提案されている。
【0007】
これらのインクジェット記録ヘッドは発熱体が形成された基板に対して、垂直方向にインク液滴が吐出するものであり、「サイドシュータ型」インクジェット記録ヘッドと称する構造を有する。
【0008】
「サイドシュータ型」インクジェット記録ヘッドにおいて、高精細するに伴い吐出口の間隔が短くなり、これによりインク流路は狭くなる。インク流路が狭くなると発泡後にインクがインク流路に満たすに要する時間(リフィル時間)が長くなる為、発熱体とインク供給口との距離を短くする必要がある。インク供給口と発熱体との距離を制御できる方法として、アルカリ水溶液によるシリコンの結晶方位面に応じたエッチング速度差を利用するシリコン結晶異方性エッチングが知られている。この方法では、一般的に、基板として方位面が(100)のシリコンウエハを用いて基板裏面よりシリコン結晶異方性エッチングを行い精度良くインク供給口の開口幅を形成し、発熱体とインク供給口との距離の制御を行う。より高精度な開口幅を提供する為に、特開平10-181032では表面に形成した犠牲層と異方性エッチングを組み合せたインク供給口の作製方法が提案されている。
【0009】
高精細インクジェット記録ヘッドを形成する上、このようなアルカリ水溶液を用いたシリコン結晶異方性エッチングは、インク供給口を精度良く作製でき有用な技術となっている。
【特許文献1】特開昭54ー51837号公報
【特許文献2】特開平5-330066号公報
【特許文献3】特開平6-286149号公報
【特許文献4】特開平10-146979号公報
【特許文献5】特開平10-181032号公報
【特許文献6】特開平2−112832号公報
【特許文献7】特開平2−112833号公報
【特許文献8】特開平2−112834号公報
【特許文献9】特開平2−114472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、高精細且つ高速に印字を行うには、特開平5-330066、特開平6-286149の製造方法において、吐出口数を増やし、印字出力幅を大きく取るヘッド構造とする必要がある。すなわち、図1に示す吐出口数を増やした長尺のインクジェット記録ヘッド(以下、長尺ヘッドと記す。)となる。吐出口数を増やすとインク供給口の開口長は吐出口数に対応して長くなり、基板の機械的強度が低下しインクジェット記録ヘッドを製造する上で基板の変形や破損等の問題が生じる。樹脂よりなるオリフィスプレートにリブを立てる構造を提案する特開平10-146979の作製方法では、オリフィスプレートがインクにて膨潤する際のオリフィスプレートの変形を防止することは可能であるが、樹脂が無機材料からなる基板と比べ、ヤング率が2桁から5桁程度小さく、ハンドリングに必要なインクジェット記録ヘッドの機械的強度は基板に因ることになり、長尺化に対応した機械的強度の改善を見込むことは困難である。長尺化に伴う機械的強度の低下で起きる基板の変形や破損等の問題点を以下に具体的に説明する。
(1)膜応力による基板の変形
基板上には、蓄熱層、発熱抵抗層、保護層、配線電極、及びオリフィスプレートが形成されている。このような複数の層からなる基板は、各層の薄膜応力により基板内に圧縮または引っ張り応力が生じる。例えば、引っ張り応力の場合には長尺化するに従い図2(ヘッドの基板部のみを簡略して示す。)に示すように、インク供給口を形成したことで応力が開放され、インク供給口中心から幅方向に曲げモーメントが発生し、インク供給口の幅がヘッドの端部と中心部とで差が生まれ吐出口の位置が所望の位置からズレることになる。このズレは、インク供給口の長さに依存する為、長尺になるに従い、ズレ量が増す。印刷を行う際にこのズレが大きくなると、吐出口のズレに対応した印字ムラや、画像の歪み等の印字不良が見られることとなる。
(2)ハンドリングによる基板の破損
基板上に一括形成した複数のインクジェット記録ヘッドをチッピングし流路部材に貼る上述の工程では、長尺化した個々のインクジェット記録ヘッドをハンドリングし流路部材の所定の位置にアライメントする必要がある。インク供給口が長尺となる場合、図1の正面図の上の側と下の側はインク供給口で分離しており、長尺のインク供給口を有するヘッドの端部の基板(図1の左右の上下が接続された部分)のみでヘッド構造を保持している。インクジェット記録ヘッドをハンドリングするに際に、ヘッドの一部を掴むと曲げモーメントが発生し、前記のヘッドの端面に応力が集中し、破損する事となる。長尺化するにつれインクジェット記録ヘッドの機械的強度が低下し製造歩留まりもそれにつれて低下する。
(3)流路部材接合時の熱応力による基板の変形、破損
ヘッドをカートリッジタンクに取り付けるには、基板上に一括形成した複数のインクジェット記録ヘッドをチッピングし、ヘッドの吐出エレメント毎に分け、マウント用の流路部材に接着し、カートリッジホルダに組み込む。インクジェット記録装置では、一般に、吐出エレメントを流路部材に接合する接着剤として、耐インク性のある為に熱硬化性接着剤が採用されている。また、流路部材は加工の容易で、低価格な樹脂が採用されている。吐出エレメントと樹脂製の流路部材を熱硬化性接着剤を使用して貼り合わせる場合、吐出エレメントと流路部材の熱膨張率の差から常温時に戻ったとき、熱応力が吐出エレメント中に発生する。これにより、図3(図1のC−C断面の模式図)に示すように吐出口が平面性を保てなくなり、吐出方向に角度が生じる様になる。インク供給口を長尺にすると吐出エレメントの機械的強度が低下し、熱応力により吐出エレメントの基板が変形する事でオリフィスプレートが変形を起こす。
【0011】
以上のような問題点から、印字を行う際にこのズレが大きくなると、吐出口の角度ズレに対応した印字ムラや、画像の歪み等の印字不良が見られることとなる。さらに、熱応力が基板の降伏応力を超えた場合には、基板が割れる場合がある。
【0012】
インクジェット記録ヘッドを長尺にするに伴いインク供給口も同様に長尺にする方法では、製造歩留まりの低下や印字不良が発生する。これらの問題点を解決する方法として、基板にシリコン(100)基板を用い、基板の裏面にエッチング用のマスクを形成しシリコン結晶異方性エッチングより、複数のインク供給口を形成するサイドシュータ型インクジェット記録ヘッド構成が考えられる。図4に複数のインク供給口(図中破線で示す)からなるインクジェット記録ヘッドの例を示す。図4(a)は上面図であり、図4(b)はD−D断面の模式図である。この構成においては、図4(b)から明らかなように、仮に基板下面で50μmの梁幅を形成しても、シリコン異方性エッチングにより(111)面と(100)面との成す角度である54.7°でシリコンが裏面よりエッチングされ梁形状が逆台形となり、基板表面での梁幅が940μm程度に広がる。この結果、表面の梁の中心に位置する発熱体とインク供給口の距離は400μmを超える事となり、この発熱体でのリフィル時間は極めて遅く、実用的な印字速度を得ることができなくなり、高速な印字を行うことはできない。
【0013】
高精細なインクジェット記録ヘッドを形成するには、サイドシュータ型構造で且つ、シリコン結晶異方性エッチングのインク供給口の形成方法を用いる必要があるが、ヘッドを長尺にして高速印字を達成する方法は困難であった。高速印字を行うには、リフィル時間を短くでき、且つインク供給口を長尺する必要があり、この結果、製造歩留まりや印字不良が発生し、良好なインクジェット記録ヘッドを形成することができない。
【0014】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、
(1)基板の変形を抑え、吐出口の位置ズレを低減でき、
(2)機械的強度の高く、ハンドリング及びマウント時の破損を回避できる、
良好な印字を可能にする高精細且つ高速な記録を行うことが可能な長尺にできるインクジェット記録ヘッド及びその新規な作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成する本発明のインクジェット記録ヘッド及びその作製方法は、共通液室と、インクを加熱して気泡を発泡させインクを吐出させる発熱抵抗体を有する基板と、該基板上に設けられた吐出口を有するオリフィスプレートを備え、該オリフィスプレートの吐出口から基板に対して垂直方向にインク液滴を吐出するインクジェット記録ヘッドの作製方法において、
(a)該基板裏面に、開口部を有するマスク層を形成する工程
(b)開口部よりエッチングを行い、開口部サイズよりも大きいサイズのエッチング底部を有する溝を形成する工程
(c)該溝から露出した基板をエッチングし、基板に貫通孔を形成すると共に、隣接する溝を連通し、梁と共通液室を形成する工程
を含むことを特徴とする記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法とすることである。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の、共通液室と、インクを加熱して気泡を発生させインクを吐出させる発熱抵抗体を有する基板と、該基板上に設けられた吐出口を有するオリフィスプレートとを備え、該オリフィスプレートの吐出口から該基板面に対し垂直方向にインク液滴を吐出するインクジェット記録ヘッドにおいて、表面開口幅よりも裏面総開口幅を狭くし、前記基板の共通液室内に梁を設けることにより、第1に、基板の変形を抑え、吐出口の位置ずれを低減でき、第2に、基板の機械的強度の高く、ハンドリング及びマウント時の破損を回避できる、高精細且つ高速な記録を行うことが可能な長尺にできる、インクジェット記録ヘッドを得ることができた。
【0017】
また、基板裏面側に梁を設けることでインク供給口は各発熱体に対し共通となり、リフィル時間が各インク流路で一様となり、吐出の周波数特性が均一となった。
【0018】
また、基板裏面側に梁を形成したことで流路部材との接着面積を広げることができ、接着強度が向上した。
【0019】
また、表面開口幅よりも裏面総開口幅を狭くできたので、流露部材との接着面積を広げることができ、接着強度が向上した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明のインクジェット記録ヘッド及びその作製方法を説明する。
【0021】
本発明のインクジェット記録ヘッドを図5乃至7に示す。図5,6,7は、夫々本発明のインクジェット記録ヘッドの斜視図、図5のA−A断面図、図5のB−B断面図である。インクジェット記録ヘッドは、基板501と、発熱体508と、インク流路506と、吐出口507を有するオリフィスプレート502からなり、基板の表面には共通液室503からインク流路506へインクを供給する為に開口部を設けることでインク供給口504が形成されている。さらに、基板501の裏面側に梁505を設けてあり、この梁によりインクジェット記録ヘッドに長尺なインク供給口を設けることに伴う機械的強度の低下を抑え、基板を変形し難くし、基板の変形に伴う吐出口の位置ずれを低減することができる。
【0022】
この場合、梁が形成されていないインクジェット記録ヘッドに比べて、より機械的強度の低下を抑えることができる。
【0023】
また、図7を見ても明らかなように、梁が基板裏面側に形成されることにより、基板表面は共通液室となり、これによりインク供給口も共通となり、各発熱体へのインクのリフィルのずれや低下が無い。
【0024】
図8を用いて流路部材とインクジェット記録ヘッドとの接着時の効果を詳細に説明する(梁形状及び基板は原理を説明する為に模式的に示してある)。図8(a)は本発明のインクジェット記録ヘッドの基板及び梁の構造を示す図6と同様の断面模式図である。図8(b)は本発明のインクジェト記録ヘッドを説明する為の、梁が基板厚み方向の中心付近にある断面比較図ある。発明が解決しようとする課題にて記載した流路部材接合時の熱応力による基板801、802の変形、破損に関して、貼り合わせた後に樹脂からなる流路部材805はシリコン基板に対し熱膨張率が大きく、常温時に戻ったとき収縮する。これにより、流路部材とヘッドとの界面にせん断応力が発生する。
【0025】
本発明のインクジェット記録ヘッドでは、図8(a)に示すように、梁803を構成する面の一つが基板801の裏面と同一平面にあり接着面積が広く、せん断応力に強くなる。これに対し梁804が基板厚の中心位置に配置される場合には、図8(a)に比べ接着面積が小さくなりせん断応力に弱い。
【0026】
また、梁が裏面側にある為、流路部材805との接着面積を広く取れ、せん断応力の有無によらず流路部材との接着強度を上げることができる。この場合、流路部材と接着する梁の幅は制御できる。さらに、図5、図6、図7に示すように、従来のシリコン方位面が(100)の基板を用いたインクジェット記録ヘッドに比べ、共通液室の側面がV字に折れ曲がる形状をとり、裏面開口部の寸法を狭くできるので、裏面の接着面積を広く取れる。
【0027】
以上より本発明のインクジェット記録ヘッドは、良好な印字を可能にする高精細且つ高速な記録を行うことが可能なインクジェット記録ヘッドとなる。
【0028】
また、共通液室をシリコン異方性エッチングにより形成することで、共通液室を構成する面の一部が、シリコン結晶方位の(111)面よりなる。(111)面のアルカリ水溶液のエッチング速度が遅いことから、共通液室がアルカリ性のインクに対して腐蝕され難くなり、耐蝕性に優れた共通液室となる。
【0029】
本発明のインクジェット記録ヘッドの作製方法の特徴を図9を用いて詳細に説明する。基板901の表面にパッシベイション層902を設け、裏面にマスク層905、開口部906を形成する。発熱体及び発熱体を駆動する為の電気的な配線(図示せず)、樹脂層903、オリフィスプレート904を設ける。次に、開口部906よりエッチングすると逆テーパー溝907(エッチング開口部より、エッチング底部の幅が広い溝)が形成される。次に、共通液室形成用エッチングを行うと、逆テーパー溝が連通され、梁を有する共通液室が形成される。
【0030】
共通液室形成後、パッシベイション層の一部、樹脂層を除去すると、インク供給口が形成される。
【0031】
この場合、各逆テーパー溝は、逆テーパー溝を形成する際に連通されてもかまわない。共通液室形成用エッチングの前に予め逆テーパー溝を連通さておくと、共通液室形成用エッチングの時間を短くすることができ、梁が共通液室形成用エッチングでエッチングされる量を低減することができる。
【0032】
本発明のインクジェット記録ヘッドでは、梁、共通液室の形成において逆テーパー溝を形成し、該溝より共通液室形成用エッチングを行う。よって、図12に示すように表面開口幅1201に対して、裏面総開口幅1202を狭くとることができる。よって、第1に、インクジェット記録ヘッドの強度を増すことができる。第2に、流路部材との接着面積を増すことができる。
【0033】
マスク層は、逆テーパー溝形成用エッチング、共通液室形成用エッチングに対して耐性を有する材料から選択される。例えば熱酸化膜によるマスク層を用いることができる。また、他の無機マスク材、若しくは有機マスク材を用いても構わない。
【0034】
逆テーパー溝形成用エッチングには、ウエットエッチング、プラズマエッチング、スパッタエッチング、反応性イオンエッチング、イオンミーリング、エキシマレーザーやYAGレーザー等を用いたレーザーアブレイション、サンドブラスト等の何れかを用いることができる。
【0035】
これらの場合、エッチングとエッチング保護膜膜形成を交互に繰り返しても良いし、エッチングのみを行ってもよい。
【0036】
逆テーパー溝形成において、エッチングとエッチング保護膜形成を繰り返すエッチングを用いる場合、エッチング、エッチング保護膜形成のサイクルタイムを制御することにより、溝の形状を制御することができる。また、ガス流量、エッチングパワー、チャンバー圧力、基板温度等のいずれかを制御することで溝の形状を制御することができる。
【0037】
この場合、エッチング保護膜形成ガス導入時間/(エッチングガス導入時間+エッチング保護膜形成ガス導入時間)の割合がエッチング形状を大きく左右する。この場合、該割合が30%以下の条件で、逆テーパー溝を得ることができる。この場合、該割合が小さくなるほど、エッチング底部の幅が広くなり、顕著な逆テーパー形状となる。
【0038】
共通液室形成用エッチングには、アルカリ水溶液からなるエッチャントによるシリコン結晶異方性エッチングを用いることができ、例えばKOH、EDP、TMAH、ヒドラジン等の結晶面によるエッチング速度差を生じるエッチング液を用いることができる。
【0039】
共通液室形成用エッチングにシリコン結晶異方性エッチングを用いることで、インク供給口の幅の精度を保つことができる。共通液室形成エッチングにより、基板の各溝より露出した部分がエッチングされ、連通し、共通液室を形成する。
【0040】
共通液室形成用エッチングの際に、パッシベイション層と流路となる部材とオリフィスプレートを含むメンブレンが共通液室内に露出される。パッシベイション層は共通液室形成用エッチングに対して少なくともエッチング耐性を有する材料からなる。また、逆テーパー溝がパッシベイション層に到達する場合には、パッシベイション層は斜方エッチングに対してもエッチング耐性を有する必要がある。パッシベイション層の形成方法としては、従来公知の技術たとえば蒸着法やスパッタ法、化学気相成長、メッキ法、薄膜塗布法等の薄膜作製技術を用いることが可能である。
【0041】
共通液室形成用エッチングにより前記連通された共通液室を形成する方法として、パッシベイション下部に所望のインク供給口寸法となる寸法の犠牲層を設ける方法が用いることができる。この場合、共通液室形成エッチング用のエッチング液に対し等方性エッチングする材料より犠牲層を選択することで、共通液室形成エッチング時に犠牲層と犠牲層下部のシリコンが同時にエッチングされる。パッシベイション層下に開口長を決定する犠牲層を設け、該犠牲層上にパッシベイション層を形成することにより、基板裏面側からエッチングする場合、基板の厚み、基板内の結晶欠陥、OFの角度バラツキ、及びエッチング液の濃度バラツキ等により生じる開口長バラツキを回避することができる。すなわち、犠牲層のパターンによりインク供給口の大きさを制御することが可能となる。また、図10に示すように、犠牲層1002のエッチングとともに、表面の梁を速やかにエッチングしてしまうことができる。これにより、犠牲層なしの場合に比べて、より大きいサイズの梁1007を作製することも可能である。
【0042】
犠牲層に用いる材料として、シリコン結晶異方性エッチングに用いるエッチャントにて等方性エッチングできる材料であり、且つ薄膜形成できる材料であれば半導体、絶縁体、金属等様々な材料を利用できる。例えば、半導体であれば、多結晶シリコン、多孔質シリコン等、金属ではアルミニウム、絶縁体ではZnO等のアルカリ水溶液に容易に溶解可能な材料が好ましい。特に、多結晶シリコン膜はLSIプロセスとの適合性に優れており、プロセス再現性が高く犠牲層に好適である。犠牲層の厚みとしては薄膜形成可能な厚みであればよく、例えば、犠牲層に数百オングストローム程度の多結晶シリコンを用いた場合には、犠牲層の等方性エッチングと基板の異方性エッチングを同時に行うことができる。
【0043】
本発明のインクジェット記録ヘッドは、気泡連通吐出方式において有効な構成となる。ここに記載した気泡連通吐出方式とは、吐出のためにインクを加熱することにより生成される膜沸騰による気泡を、吐出口近傍で外気に連通させて吐出を行うインクジェット記録方式であり、特開平2−112832号、特開平2−112833号、特開平2−112834号、特開平2−114472号等において提案されている方式である。連通吐出方式によれば、吐出口近傍への気泡成長を急激にしかも確実に行うことができるので、上記非遮断状態のインク路によるリフィル性も手伝って、高安定高速記録を達成できる。また、気泡と大気とを連通させることによって、気泡の消泡過程が無くなり、キャビテーションによるヒータや基板の損傷を防止することもできる。また、気泡連通吐出方式の基本的な作用として、気泡が生成される部位より吐出出口側にあるインクは原理的に全てインク液滴となって吐出されるということがある。この為、吐出インク量は、吐出出口から上記気泡生成部位までの距離等、記録ヘッドの構造によって定めることができる。この結果、上記気泡連通吐出方式によれば、インク温度の変化等の影響をそれほど受けずに吐出量の安定した吐出を行うことが可能となる。
【0044】
サイドシュータ型インクジェット記録ヘッドは、オリフィスプレートの厚さによりインク吐出口と発熱体との距離を容易に制御できる。気泡連通吐出方式では前記距離が吐出インク量を決定する重要な因子の一つであることより、本発明のインクジェット記録ヘッドは、気泡連通吐出方式に好適な構造となる。
【0045】
(第1実施例)−逆テーパー溝−
本実施例にて、図5に示した本発明のインクジェット記録ヘッドの本発明の第1の作製方法を説明する。
【0046】
以下、本実施例の作製工程を図9の工程断面図を用いて説明する。尚、図9は図5におけるB−B線で切断したときの断面図として示されている。また、図面中、発熱体及び発熱体に通電(駆動パルスの印加)する為の配線、及び各発熱体へのインク流路は省略し、基板の幅方向に梁を形成する工程のみを記載してある。
【0047】
基板として結晶方位面が(100)で厚みが625μmのシリコン製の基板901を用いた。基板を酸化ガスにて熱酸化し、基板表面及び裏面に熱酸化膜を形成した。次いで、先ほど基板に形成された熱酸化膜のうち、基板表面のインク供給口にあたる部分と基板裏面の一部分をバッファード弗酸で除去し、開口部906を有するマスク層905を形成した。続いて窒化シリコン膜をLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法にて形成し、パッシベイション層902を形成した。基板裏面に形成された窒化シリコン膜はCFガスを用いた反応性イオンエッチングにより除去した。この後、図9(a)に示すように、後工程にて除去することによりインク流路となる樹脂層903を設け、さらに樹脂層上部に吐出口を有するオリフィスプレート904を設けた。
【0048】
SFガス、Cガスを用いた反応性イオンエッチングを行い、逆テーパー溝907を形成した。この場合、エッチング形状が逆テーパーになるように、C4F8ガス導入時間/(SF6ガス導入時間+C4F8ガス導入時間)を約10%とした。
【0049】
次に、シリコン結晶異方性エッチングを行った。TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液により逆テーパー溝から露出したシリコン基板をエッチングすると、梁908を有する共通液室909及びインク供給口910が形成された。
【0050】
最後にインク供給口を通じてパッシベイション層902をCFガスを用いた反応性イオンエッチングにより除去し、さらに樹脂層903を樹脂層の溶媒にて溶解除去してインク流路を形成し、本発明の図5に示すインクジェット記録ヘッドを作製することができた(図9(d))。
【0051】
比較の為、本実施例と吐出エレメント寸法が等しい、梁を有さない、図1に示す従来例のインクジェット記録ヘッドを作製した。図1のインク供給口の幅方向に基板が破損するまで荷重を与える破壊試験を行った。この時の破損した荷重と等しい荷重を本発明のインクジェット記録ヘッドに加えたところ、基板の破損は見られなかった。
【0052】
本発明のインクジェット記録ヘッドでは梁908を構成する面の一つが基板901の裏面と同一平面にある為、梁を有さない記録ヘッドと比べて接着面積が広く流路部材との接着強度も向上していた。
【0053】
本発明のインクジェット記録ヘッドにより印字を行ったところ、インク供給口から発熱体までの距離が略等しく、各ヘッドでのリフィル時間がほとんど差のない、リフィル特性に関し均一な周波数特性を得ることができた。
【0054】
以上より本発明のインクジェット記録ヘッドは、良好な印字を可能にする高精細且つ高速な記録を行うことが可能なインクジェット記録ヘッドであった。
【0055】
(第2実施例)−犠牲層+逆テーパー溝−
本実施例にて、図5に示した本発明のインクジェット記録ヘッドの本発明の第2の作製方法を説明する。
【0056】
以下、本実施例の作製工程を図10の工程断面図を用いて説明する。尚、図10は図5におけるB−B線で切断したときの断面図として示されている。また、図面中、発熱体及び発熱体に通電(駆動パルスの印加)する為の配線、及び各発熱体へのインク流路は省略し、基板の幅方向に梁を形成する工程のみを記載してある。
【0057】
基板として結晶方位面が(100)で厚みが625μmのシリコン製の基板1001を用いた。基板を酸化ガスにて熱酸化し、基板表面及び裏面に熱酸化膜を形成した。次いで、先ほど基板に形成された熱酸化膜のうち、基板表面のインク供給口にあたる部分と基板裏面の一部分をバッファード弗酸で除去し、開口部1007を有するマスク層1006を形成した。次に、基板表面のインク供給口にあたる部分にスパッタリング法で、アルミニウムよりなる犠牲層1002を成膜した。続いて窒化シリコン膜をLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法にて形成し、パッシベイション層1003を形成した。基板裏面に形成された窒化シリコン膜はCF4ガスを用いた反応性イオンエッチングにより除去した。この後、図10(a)に示すように、後工程にて除去することによりインク流路となる樹脂層1004を設け、さらに樹脂層上部に吐出口を有するオリフィスプレート1005を設けた。
【0058】
SFガス、Cガスを用いた反応性イオンエッチングを行い、逆テーパー溝1008を形成した。この場合、エッチング形状が逆テーパーになるように、C4F8ガス導入時間/(SF6ガス導入時間+C4F8ガス導入時間)を約10%とした。
【0059】
次に、シリコン結晶異方性エッチングを行った。TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液により逆テーパー溝から露出したシリコン基板をエッチングすると、梁1009を有する共通液室1010及びインク供給口1011が形成された。
【0060】
このとき、共通液室1010内の基板表面側のシリコンは、犠牲層とともに速やかにエッチングされてしまったので、梁1009を長時間エッチング溶液にさらす必要がなかった。よって、梁1009は、ほぼ結晶方位(111)面で形成でき、略三角形形状で得ることができた。
【0061】
最後にインク供給口を通じてパッシベイション層1003をCFガスを用いた反応性イオンエッチングにより除去し、さらに樹脂層1004を樹脂層の溶媒にて溶解除去してインク流路を形成し、本発明の図5に示すインクジェット記録ヘッドを作製することができた(図10(e))。
【0062】
比較の為、本実施例と吐出エレメント寸法が等しい、梁を有さない、図1に示す従来例のインクジェット記録ヘッドを作製した。図1のインク供給口の幅方向に基板が破損するまで荷重を与える破壊試験を行った。この時の破損した荷重と等しい荷重を本発明のインクジェット記録ヘッドに加えたところ、基板の破損は見られなかった。
【0063】
本発明のインクジェット記録ヘッドでは梁1009を構成する面の一つが基板1001の裏面と同一平面にある為、梁を有さない記録ヘッドと比べて接着面積が広く流路部材との接着強度も向上していた。
【0064】
本発明のインクジェット記録ヘッドにより印字を行ったところ、インク供給口から発熱体までの距離が略等しく、各ヘッドでのリフィル時間がほとんど差のない、リフィル特性に関し均一な周波数特性を得ることができた。
【0065】
以上より本発明のインクジェット記録ヘッドは、良好な印字を可能にする高精細且つ高速な記録を行うことが可能なインクジェット記録ヘッドであった。
【0066】
(第3実施例)−連通逆テーパー溝−
本実施例にて、図5に示した本発明のインクジェット記録ヘッドの本発明の第3の作製方法を説明する。
【0067】
以下、本実施例の作製工程を図11の工程断面図を用いて説明する。尚、図11は図5におけるB−B線で切断したときの断面図として示されている。また、図面中、発熱体及び発熱体に通電(駆動パルスの印加)する為の配線、及び各発熱体へのインク流路は省略し、基板の幅方向に梁を形成する工程のみを記載してある。
【0068】
基板として結晶方位面が(100)で厚みが625μmのシリコン製の基板1101を用いた。基板を酸化ガスにて熱酸化し、基板表面及び裏面に熱酸化膜を形成した。次いで、先ほど基板に形成された熱酸化膜のうち、基板表面のインク供給口にあたる部分と基板裏面の一部分をバッファード弗酸で除去し、開口部1106を有するマスク層1105を形成した。続いて窒化シリコン膜をLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法にて形成し、パッシベイション層1102を形成した。基板裏面に形成された窒化シリコン膜はCFガスを用いた反応性イオンエッチングにより除去した。この後、図11(a)に示すように、後工程にて除去することによりインク流路となる樹脂層1103を設け、さらに樹脂層上部に吐出口を有するオリフィスプレート1104を設けた。
【0069】
SFガス、Cガスを用いた反応性イオンエッチングを行い、逆テーパー溝1107を形成した。この場合、エッチング形状が逆テーパーになり、且つ各逆テーパー溝が連通するように、C4F8ガス導入時間/(SF6ガス導入時間+C4F8ガス導入時間)を約3%とした。
【0070】
次に、シリコン結晶異方性エッチングを行った。TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液により逆テーパー溝から露出したシリコン基板をエッチングすると、梁1108を有する共通液室1109及びインク供給口1110が形成された。
【0071】
このとき、共通液室1109内の基板表面側のシリコンは、逆テーパー溝形成時のエッチングでほぼエッチングされていたので、梁1108を長時間エッチング溶液にさらす必要がなかった。よって、梁1108は、ほぼ結晶方位(111)面で形成でき、略三角形形状で得ることができた。
【0072】
最後にインク供給口を通じてパッシベイション層1102をCFガスを用いた反応性イオンエッチングにより除去し、さらに樹脂層1103を樹脂層の溶媒にて溶解除去してインク流路を形成し、本発明の図5に示すインクジェット記録ヘッドを作製することができた(図11(d))。
【0073】
比較の為、本実施例と吐出エレメント寸法が等しい、梁を有さない、図1に示す従来例のインクジェット記録ヘッドを作製した。図1のインク供給口の幅方向に基板が破損するまで荷重を与える破壊試験を行った。この時の破損した荷重と等しい荷重を本発明のインクジェット記録ヘッドに加えたところ、基板の破損は見られなかった。
【0074】
本発明のインクジェット記録ヘッドでは梁1108を構成する面の一つが基板1101の裏面と同一平面にある為、梁を有さない記録ヘッドと比べて接着面積が広く流路部材との接着強度も向上していた。
【0075】
本発明のインクジェット記録ヘッドにより印字を行ったところ、インク供給口から発熱体までの距離が略等しく、各ヘッドでのリフィル時間がほとんど差のない、リフィル特性に関し均一な周波数特性を得ることができた。
【0076】
以上より本発明のインクジェット記録ヘッドは、良好な印字を可能にする高精細且つ高速な記録を行うことが可能なインクジェット記録ヘッドであった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】従来のインクジェット記録ヘッドの長尺化に伴う課題を説明する正面図である。
【図2】従来のインクジェット記録ヘッドの長尺化に伴う基板の変形を説明する正面図である。
【図3】従来のインクジェット記録ヘッドの長尺化に伴うオリフィスプレートの変形を説明する正面図である。
【図4】従来のインクジェット記録ヘッドの長尺化に伴う課題を説明する正面図(a)と断面図(b)である。
【図5】本発明のインクジェット記録ヘッドを説明する斜視図である。
【図6】本発明のインクジェット記録ヘッドを説明する図5のA−A断面図である。
【図7】本発明のインクジェット記録ヘッドを説明する図5のB−B断面図である。
【図8】本発明のインクジェット記録ヘッドを説明する模式図である。
【図9】本発明の第1のインクジェット記録ヘッドの作製方法を示す工程図である。
【図10】本発明の第2のインクジェット記録ヘッドの作製方法を示す工程図である。
【図11】本発明の第3のインクジェット記録ヘッドの作製方法を示す工程図である。
【図12】本発明のインクジェット記録ヘッドの加工幅を示す模式図である。
【図13】本発明のインクジェット記録ヘッドを装着した記録装置の一例である。
【図14】本発明のインクジェット記録ヘッドを装着した記録ユニットの一例である。
【符号の説明】
【0078】
101、201、301、401、501、601、701、801、802、901、1001、1101 基板
102、202、303、402、504、910、1011 インク供給口
103、304、403、502、602、702、904、1005、1004 オリフィスプレート
104、305、404、507、606 吐出口
302、405、503、603、703、909、1010、1109 共通液室
306 インク液滴
406、506、605、705、1110 インク流路
505、604、704、803、804、908、1009、1108 梁
508、607 発熱体
805 流路部材
902、1003、1102 パッシベイション層
903、1004、1103 樹脂層
905、1006、1105 マスク層
906、1007、1106 開口部
907、1008、1107 逆テーパー溝
1002 犠牲層
1201 表面開口幅
1202 裏面総開口幅
1301、1401 記録ユニット
1302 インクカートリッジ
1303 キャリッジ
1304 ベルト
1305 配線
1306 ガイド軸
1307 給紙ローラー
1308 排紙ローラー
1309 給紙部
1310 排紙部
1311 記録装置制御部
1401 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通液室と、インクを加熱して気泡を発泡させインクを吐出させる発熱抵抗体を有する基板と、該基板上に設けられた吐出口を有するオリフィスプレートを備え、該オリフィスプレートの吐出口から基板に対して垂直方向にインク液滴を吐出するインクジェット記録ヘッドの作製方法において、
(a)該基板裏面に、開口部を有するマスク層を形成する工程
(b)開口部よりエッチングを行い、開口部サイズよりも大きいサイズのエッチング底部を有する溝を形成する工程
(c)該溝から露出した基板をエッチングし、基板に貫通孔を形成すると共に、隣接する溝を連通し、梁と共通液室を形成する工程
を含むことを特徴とする記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項2】
工程(a)の前に、前記基板表面にパッシベイション層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項3】
工程(a)の前に、前記基板表面側に樹脂層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至2の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項4】
工程(a)の前に、前記基板表面側にオリフィスプレートを形成する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項5】
工程(a)の前に、前記基板表面側に犠牲層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項6】
工程(b)の溝は、反応性イオンエッチングで形成されることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項7】
工程(b)の溝は、炭素、塩素、硫黄、フッ素、酸素、水素、アルゴンのうちの何れかの原子、及び、それらより構成される分子よりなる反応性ガスの何れかを用いるエッチングにより形成されることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項8】
工程(b)の溝は、エッチングとエッチング保護膜形成の繰り返しで形成されることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項9】
工程(b)の溝底部は、隣接する溝どうしで一部が連通して形成されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項10】
エッチング保護膜形成ガス導入時間/(エッチングガス導入時間+エッチング保護膜形成ガス導入時間)が30%以下であることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項11】
工程(c)のエッチングは、結晶異方性エッチングであることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項12】
工程(c)のエッチングは、アルカリ水溶液を用いる結晶異方性エッチングであることを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項13】
工程(c)のエッチングは、KOH、EDP、TMAH、ヒドラジンの何れかのエッチング溶液を用いることを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項14】
工程(c)の後に、パッシベイション層を基板裏面側より除去する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至13の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項15】
工程(c)の後に、樹脂層を基板裏面側より除去する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至14の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項16】
前記基板は、シリコン単結晶体よりなることを特徴とする請求項1乃至15の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項17】
前記梁は、シリコン単結晶体よりなることを特徴とする請求項1乃至16の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項18】
前記梁は、基板下面に形成されることを特徴とする請求項1乃至17の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項19】
前記梁を構成する面の一つは、基板裏面と同一平面に形成されることを特徴とする請求項1乃至18の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項20】
前記梁を構成する二つの面は、シリコン結晶面の(111)面により形成されることを特徴とする請求項1乃至19の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項21】
前記共通液室を構成する面は、シリコン結晶面の(111)面より形成されることを特徴とする請求項1乃至20の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項22】
前記梁の断面形状は、略三角形形状であることを特徴とする請求項1乃至21の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項23】
基板裏面開口群よりなる幅(裏面総開口幅)が、基板表面開口幅よりも狭いことを特徴とする特徴とする請求項1乃至22の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法。
【請求項24】
請求項1乃至23の何れかに記載のインクジェット記録ヘッドの作製方法により作製されるインクジェット記録ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−265198(P2008−265198A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113114(P2007−113114)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】