説明

インゴットの円筒研削方法及びその方法で用いられる固定アダプタ

【課題】インゴットの平坦面にコーン状の疑似端部を簡単に装脱着することができ、研削加工工程時間を削減し、製品歩留まりの低下を抑制することができる円筒研削方法、及びその方法で用いられる固定アダプタを提供することを目的とする。
【解決手段】インゴットの平坦面に、コーン状の疑似端部を接合し、インゴットのコーン状の端部と疑似端部を把持して前記直胴部を研削する円筒研削方法であって、前記疑似端部と前記インゴットの平坦面を接合するための固定アダプタを、前記インゴットの平坦面に吸着させ、前記固定アダプタの疑似端部装着手段により前記固定アダプタに前記疑似端部を装着させることで、前記インゴットの平坦面に前記コーン状の疑似端部を接合し、前記コーン状の端部と疑似端部を保持して前記インゴットの直胴部を研削することを特徴とするインゴットの円筒研削方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の直胴部と該直胴部の一端がコーン状の端部であり、他端が平坦面であるインゴットの直胴部を研削する円筒研削方法において、インゴットの平坦面に、コーン状の疑似端部を接合し、インゴットのコーン状の端部と疑似端部を把持して直胴部を研削する円筒研削方法、及びその際に使用するインゴットの平坦面とコーン状の疑似端部とを接合するための固定アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
CZ法等によって引き上げられたシリコン単結晶インゴットは円筒状の直胴部にコーン状の端部(トップ部およびテール部)を有している。引き上げられた直後のインゴットの直胴部は完全な円筒形ではなく、均一な直径を有していない。そのため、インゴットは所定の径となるように外周面に研削加工が施される。そして、ブロックの切断工程にて、内周刃スライサー、外周刃スライサー、バンドソー等によって、コーン状の端部が切り離され円筒状の直胴部のみとされる。さらに、直胴部は必要に応じて複数のブロックに切断される。その後、ワイヤソー等によって、多数枚のシリコンウェーハにスライス切断される。
【0003】
円筒状のインゴットの外周面を研削する研削装置としては、円筒研削装置が最も一般的である。
図6に一般的な円筒研削装置の一例の概略図を示す。
この円筒研削装置10は、インゴット7を保持するためのクランプ9、9’、インゴット7を研削する研削ホイール8等を具備している。クランプ9、9’はその軸周りに回転可能となっている。
【0004】
また、クランプ9、9’の内側は、インゴット7のコーン状の端部を保持することができるように、コーン状の凹部(不図示)が形成されている。このクランプ9、9’から回転駆動力を伝達してインゴット7を軸周りに回転させるとともに、インゴット7に対し、回転する円盤状の砥石を有する研削ホイール8をその回転軸方向へ送り込むと同時にクランプ9、9’の回転軸方向にも送る、いわゆるトラバース動させることにより、インゴット7の直胴部7aを研削するように構成されている。
【0005】
ところで、シリコン単結晶インゴットの引上げにおいて、インゴットの一方の端部であるトップ部7bはインゴット7を無転位化するために直胴部7aが成長する前に必ず作られる。一方、他方の端部であるテール部は、インゴット7の引上げの途中で有転位化した場合等、完全に作られないことがある。
【0006】
このように、テール部が完全に作られないインゴット7の直胴部7aを円筒研削する場合には、まず、有転位化した部分を切断する等してインゴット7の端部を平坦面7cにした後、その平坦面7cにコーン状あるいは半球状等の疑似端部5’を接着剤等により接着して固定し、クランプ9、9’で疑似端部5’とヘッド部7bを保持して直胴部7aの円筒研削が行われる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−263434号公報
【特許文献2】特開2001−259975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、円筒研削終了後に疑似端部を取り外す際、疑似端部は強固に接着されているため簡単には取り外せず、接着面近傍を切断していた。その切断のため、及び疑似端部を接着剤で接着させるために時間が掛かり、研削加工の工数時間が増大するという問題があった。
また、接着面近傍でインゴットを切断することにより、インゴットの一部でロスが発生し、製品歩留まりが大幅に低下するという問題もあった。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、インゴットの平坦面にコーン状の疑似端部を簡単に装脱着することができ、研削加工工数時間を削減し、製品歩留まりの低下を抑制することができる円筒研削方法、及びその方法で用いられる固定アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、円筒状の直胴部と該直胴部の一端がコーン状の端部であり、他端が平坦面であるインゴットの前記直胴部を研削する円筒研削方法において、前記インゴットの平坦面に、コーン状の疑似端部を接合し、前記インゴットのコーン状の端部と疑似端部を把持して前記直胴部を研削する円筒研削方法であって、前記疑似端部と前記インゴットの平坦面を接合するための固定アダプタを、前記インゴットの平坦面に吸着させ、前記固定アダプタの疑似端部装着手段により前記固定アダプタに前記疑似端部を装着させることで、前記インゴットの平坦面に前記コーン状の疑似端部を接合し、前記コーン状の端部と疑似端部を保持して前記インゴットの直胴部を研削することを特徴とするインゴットの円筒研削方法を提供する(請求項1)。
【0011】
このように、前記疑似端部と前記インゴットの平坦面を接合するための固定アダプタを、前記インゴットの平坦面に吸着させ、前記固定アダプタの疑似端部装着手段により前記固定アダプタに前記疑似端部を装着させることで、前記インゴットの平坦面に前記コーン状の疑似端部を接合し、前記コーン状の端部と疑似端部を保持して前記インゴットの直胴部を研削することで、固定アダプタ及び疑似端部を容易に装脱着でき、研削加工の工程時間を短縮することができる。また、固定アダプタ及び疑似端部を再利用できるので製造コストを低減することができ、インゴットの切断ロスも発生しないため製品の歩留りの低下を抑制することができる。
【0012】
このとき、前記インゴットの平坦面に吸着する前記アダプタの吸着面の中央部に空間を設けることで密閉空間を形成し、該空間を広げて減圧することによって、前記アダプタと前記インゴットの平坦面とを吸着させることができる(請求項2)。
【0013】
このように、前記インゴットの平坦面に吸着する前記アダプタの吸着面の中央部に空間を設けることで密閉空間を形成し、該空間を広げて減圧することによって、前記アダプタと前記インゴットの平坦面とを吸着させることで、インゴットの研削時には固定アダプタとインゴットの接合強度を十分保ちつつ、固定アダプタを低コストでより容易に装脱着させることができる。
【0014】
またこのとき、前記疑似端部装着手段として、ネジを用いることができる(請求項3)。
このように、前記疑似端部装着手段として、ネジを用いることでインゴットの研削時には固定アダプタと疑似端部の接合強度を十分保ちつつ、疑似端部をより容易に装脱着させることができる。
【0015】
また本発明では、円筒状の直胴部と該直胴部の一端がコーン状の端部であり、他端が平坦面であるインゴットの前記平坦面にコーン状の疑似端部を接合し、前記コーン状の端部と疑似端部を把持して前記インゴットの直胴部を研削する円筒研削方法において用いられる、前記インゴットの平坦面と、前記コーン状の疑似端部とを接合するための固定アダプタであって、少なくとも、前記インゴットの平坦面と吸着する端面を有するアダプタ本体と、前記インゴットの平坦面と前記アダプタ本体とを吸着させる吸着手段と、前記疑似端部を前記アダプタ本体に装着させる装着手段とを具備し、前記吸着手段により前記インゴットの平坦面に前記アダプタ本体を吸着し、前記装着手段により前記アダプタ本体に前記疑似端部を装着させることで前記インゴットの平坦面に前記疑似端部を接合するものであることを特徴とする固定アダプタを提供する(請求項4)。
【0016】
このように、本発明の固定アダプタは、少なくとも、前記インゴットの平坦面と吸着する端面を有するアダプタ本体と、前記インゴットの平坦面と前記アダプタ本体とを吸着させる吸着手段と、前記疑似端部を前記アダプタ本体に装着させる装着手段とを具備し、前記吸着手段により前記インゴットの平坦面に前記アダプタ本体を吸着し、前記装着手段により前記アダプタ本体に前記疑似端部を装着させることで前記インゴットの平坦面に前記疑似端部を接合するので、固定アダプタ及び疑似端部を容易に装脱着させ、研削加工の工程時間を短縮することができる。また、固定アダプタ及び疑似端部を再利用できるので製造コストを低減することができ、インゴットの切断ロスも発生しないため製品の歩留りの低下を抑制することができる。
【0017】
このとき、前記アダプタ本体の吸着面は中央部に空間を有し、前記吸着面の外周にOリングが配設され、前記吸着手段は前記吸着するインゴットの平坦面に対して前後動自在な移動板を有し、前記吸着面、前記Oリング及び前記移動板で形成される密閉された前記空間を、前記移動板を前記インゴットの平坦面に対し後方に移動させることによって広げて該密閉空間内を減圧し、前記アダプタ本体を前記インゴットの平坦面に吸着させることができる(請求項5)。
【0018】
このように、前記アダプタ本体の吸着面は中央部に空間を有し、前記吸着面の外周にOリングが配設され、前記吸着手段は前記吸着するインゴットの平坦面に対して前後動自在な移動板を有し、前記吸着面、前記Oリング及び前記移動板で形成される密閉された前記空間を、前記移動板を前記インゴットの平坦面に対し後方(離間方向)に移動させることによって広げて該密閉空間内を減圧し、前記アダプタ本体を前記インゴットの平坦面に吸着させれば、インゴットの研削時には固定アダプタとインゴットの接合強度を十分保ちつつ、固定アダプタを低コストでより容易に装脱着させることができる。
【0019】
またこのとき、前記疑似端部を前記アダプタ本体に装着させる装着手段として、前記アダプタ本体と疑似端部とを螺合するネジを設け、該ネジにより前記疑似端部を前記アダプタ本体に装着することができる(請求項6)。
【0020】
このように、前記疑似端部を前記アダプタ本体に装着させる装着手段として、前記アダプタ本体と疑似端部とを螺合するネジを設け、該ネジにより前記疑似端部を前記アダプタ本体に装着することで、インゴットの研削時には固定アダプタと疑似端部の接合強度を十分保ちつつ、疑似端部を容易に装脱着させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、円筒状の直胴部と該直胴部の一端がコーン状の端部であり、他端が平坦面であるインゴットの前記直胴部を研削する円筒研削方法において、前記インゴットの平坦面に、コーン状の疑似端部を接合し、前記インゴットのコーン状の端部と疑似端部を把持し、前記疑似端部と前記インゴットの平坦面を接合するための本発明の固定アダプタを、前記インゴットの平坦面に吸着させ、前記固定アダプタの疑似端部装着手段により前記固定アダプタに前記疑似端部を装着させることで、前記インゴットの平坦面に前記コーン状の疑似端部を接合し、前記コーン状の端部と疑似端部を保持して前記インゴットの直胴部を研削するので、固定アダプタ及び疑似端部を容易に装脱着でき、作業時間を短縮することができる。また、インゴットと疑似端部の接合部分を切断する必要もないため、固定アダプタ及び疑似端部を再利用できるので製造コストを低減することができ、インゴットの切断ロスも発生しないため製品の歩留りの低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来、円筒状の直胴部と該直胴部の一端がコーン状の端部であり、他端が平坦面であるインゴットの直胴部を円筒研削する場合、そのインゴットの平坦面にコーン状の疑似端部を接着剤等により接着して固定し、クランプでインゴットの疑似端部と他方のヘッド部を保持して直胴部の円筒研削が行われいた。
【0023】
しかし、円筒研削終了後に疑似端部を取り外す際、疑似端部は強固に接着されているため簡単には取り外せず、接着面近傍を切断していた。その切断のため、及び疑似端部を接着剤で接着させるために時間が掛かり、研削加工の工数時間が増大するという問題があった。
また、インゴットと疑似端部の接着面近傍で切断することにより、インゴットの一部でロスが発生し、製品歩留まりが低下するという問題もあった。
【0024】
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、インゴットと疑似端部を接合するための固定アダプタをインゴットの平坦面に吸着させる際、固定アダプタの吸着面の中心部に空間を形成し、その空間内を減圧することによって吸着させれば、取り外し時に接合面近傍を切断する必要もなく、接合強度を十分に保って吸着できる一方、簡単に装脱着できることに想到した。そして、これらを実施するための最良の形態について精査し、本発明を完成させた。
【0025】
図2は本発明の円筒研削方法で使用することができる円筒研削装置の一例を示す概略図である。
図2に示すように、円筒研削装置10は、研削する円筒状のインゴット7を保持するための一対のクランプ9、9’と、インゴット7の直胴部7aを研削する砥石を有する研削ホイール8が設けられている。
【0026】
また、クランプ9、9’の内側には円錐状の凹部が形成されており、インゴット7のコーン状のヘッド、テール部を把持できるようになっている。また、クランプ9、9’は軸周りに回転可能であり、クランプ9、9’によって保持されたインゴット7を軸周りに回転できるようになっている。
【0027】
また、研削ホイール8は、その軸周りに高速回転可能である。また、研削ホイール8は軸方向に前後動自在であり、前進することでインゴットの直胴部7aに当接して研削するようになっている。また、インゴットの直胴部7aに沿って移動可能となっており、トラバース研削が可能となっている。そして、インゴット7をクランプ9、9’により軸周りに回転させながら、研削ホイール8を前記のようにトラバース動させインゴット7の直胴部7aを研削していくものとなっている。
【0028】
図3(A)は本発明の円筒研削方法での円筒研削対象であるインゴット7を示した概略図である。図3に示すように、インゴット7は円筒状の直胴部7aと、その直胴部7aの一端がコーン状の端部7b(ヘッド部)、他端が平坦面7cを有している。このようなインゴット7の平坦面7cに本発明の固定アダプタを介して、図4に示すような、コーン状の疑似端部5を接合させることで円筒研削装置10のクランプ9、9’によって把持することができる両端がコーン形状を有するインゴットとなる(図3(B))。
【0029】
また、図4に示すように、疑似端部5は内部に固定アダプタが収容できるように形成されており、疑似端部5のコーン形状の底部が固定アダプタに装着されてインゴット7の平坦面7cと接合できる形状となっている。
【0030】
図1は本発明の固定アダプタの一例を示す断面図である。
図1に示すように、固定アダプタ1は、少なくとも、インゴットの平坦面7cと吸着する端面を有するアダプタ本体2と、インゴット7とアダプタ本体2とを吸着させる吸着手段3と、疑似端部5をアダプタ本体2に装着させる装着手段4を有している。
【0031】
また、吸着手段3によってインゴットの平坦面7cにアダプタ本体2を吸着させ、装着手段によってアダプタ本体2に疑似端部5を装着させることで、インゴット7の平坦面7cに疑似端部5を接合できるようになっている。
このような構成であれば、簡単に疑似端部5をインゴット7の平坦面7cに接合できるし、例えば、疑似端部5の接合をミスした場合でも容易に疑似端部を外して接合工程をやり直しすることができる。
【0032】
そして、このような固定アダプタ1を用いて、インゴット7の平坦面7cに疑似端部5を接合させ、インゴット7のコーン状の端部7bと疑似端部5を円筒研削装置10のクランプ9、9’で把持して、研削ホイール8でインゴット7の直胴部7aを円筒研削することができる。このように円筒研削することにより、固定アダプタ1及び疑似端部5を容易に装脱着でき、研削加工の工程時間を短縮することができる。また、インゴット7と疑似端部5の接合部分を切断する必要もないし、さらに固定アダプタ1及び疑似端部5を再利用できるので製造コストを大幅に低減することができる。また、インゴットの切断ロスも発生しないため製品の歩留りの低下を抑制することができる。
【0033】
このとき、図1に示すように、アダプタ本体2の吸着面14は中央部に空間11を有し、吸着面の外周にOリング6が配設され、吸着手段3は吸着するインゴット7の平坦面7cに対して前後動自在な移動板12を有し、アダプタ本体2の吸着面14、Oリング6及び移動板12で形成される密閉された空間11を、移動板12をインゴット7の平坦面7cに対し後方に移動させることによって広げて該密閉空間内を減圧し、アダプタ本体2をインゴット7の平坦面7cに吸着させるものとすることができる。
【0034】
このように、アダプタ本体2の吸着面は中央部に空間11を有し、吸着面14の外周にOリング6が配設され、吸着手段3は吸着するインゴット7の平坦面7cに対して前後動自在な移動板12を有し、アダプタ本体2の吸着面14、Oリング6及び移動板12で形成される密閉された空間11を、移動板12をインゴット7の平坦面7cに対し後方に移動させることによって広げて該密閉空間内を減圧し、アダプタ本体2をインゴット7の平坦面7cに吸着させることで、インゴットの研削時には固定アダプタ2とインゴット7の接合強度を十分保ちつつ、固定アダプタ2を低コストでより容易に装着させることができる。また、移動板12をインゴット7の平坦面7cに対し前方に移動させることで、容易に固定アダプタ1を脱着することができる。
【0035】
ここで、特に限定されることはないが、移動板12を前後動させるための構成として、図1に示すように、アダプタ本体2の中心部に設けたネジと螺合するネジ13を移動板12に延設し、ネジ13を左右に回すことで、移動板12を前後動可能な構成とすることができる。
【0036】
またこのとき、図1及び図4に示すように、疑似端部5をアダプタ本体2に装着させる装着手段として、アダプタ本体2と疑似端部5とを螺合するネジ4、4’を設け、該ネジ4、4’により疑似端部5をアダプタ本体2に装着するものとすることができる。
このように、疑似端部5をアダプタ本体2に装着させる装着手段として、アダプタ本体2と疑似端部5とを螺合するネジ4、4’を設け、該ネジ4、4’により疑似端部5をアダプタ本体2に装着すれば、インゴット7の研削時には固定アダプタ2と疑似端部5の接合強度を十分保ちつつ、疑似端部5を容易に装脱着させることができる。
【0037】
次に本発明の円筒研削方法について説明する。
図5は、インゴット7の平坦面7cに、図1に示すような、本発明の固定アダプタ1を介して、図4に示すような、疑似端部5を接合する工程を説明するフロー図である。
図5に示すように、本発明の円筒研削方法の被研削対象であるインゴット7は、前述した通り、円筒状の直胴部7aと該直胴部7aの一端がコーン状の端部7bと、他端が平坦面7cを有している。まず、インゴット7の平坦面7cに固定アダプタを吸着させる際の位置決めに使用するためのセンターマーキングを行う(図5(a))。
【0038】
次に、インゴット7の平坦面7cに固定アダプタ1のアダプタ本体2の吸着面を押し当て、吸着手段3のネジ13を回し、固定アダプタ1をインゴットの平坦面7cに吸着させる(図5(b))。
次に、アダプタ本体2の疑似端部装着手段のネジ4と疑似端部5のネジ4’を螺合させ、固定アダプタ1に疑似端部を装着させる(図5(c))。
【0039】
このようにして疑似端部5をインゴット7の平坦面7cに接合した後、円筒研削装置10のクランプ9、9’により、インゴットのコーン状の端部7bと疑似端部5を把持する(図5(d))。
その後、インゴット7をクランプ9、9’により軸周りに回転させながら、研磨ホイール8をトラバース動させインゴット7の直胴部7aを円筒状に研削する。
【0040】
このようにしてインゴット7を円筒研削することにより、固定アダプタ1及び疑似端部5を容易に装脱着でき、研削加工の工程時間を短縮することができる。また、インゴット7と疑似端部5の接合部分を切断する必要もない上に、固定アダプタ1及び疑似端部5を再利用できるので製造コストを低減することができ、切断ロスも発生しないため製品の歩留りの低下を抑制することができる。
【0041】
このとき、インゴット7の平坦面7cに吸着する固定アダプタ1の吸着面の中央部に空間を設けることで密閉空間11を形成し、該空間11を広げて減圧することによって、固定アダプタ1とインゴット7の平坦面7cとを吸着させることができる。
このように、インゴット7の平坦面7cに吸着する固定アダプタ1の吸着面の中央部に空間を設けることで密閉空間11を形成し、該空間11を広げて減圧することによって、固定アダプタ1とインゴット7の平坦面7cとを吸着させることで、インゴット7の研削時には固定アダプタ1とインゴット7の接合強度を十分保ちつつ、固定アダプタ1及び疑似端部5を低コストでより容易に装脱着させることができる。
【0042】
またこのとき、疑似端部装着手段4として、ネジを用いることができる。
このように、疑似端部装着手段4として、ネジを用いることで、インゴット7の研削時には固定アダプタ1と疑似端部5の接合強度を十分保ちつつ、疑似端部5を容易に装脱着させることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施例)
図1に示すような固定アダプタを用い、図4に示すような疑似端部を、図3(A)に示すような直胴部が直径200mmのシリコンインゴットの平坦面に接合させ、図2に示すような円筒研削装置を用い、20本のシリコンインゴットの直胴部の円筒研削を行った。まず、インゴットにセンターマーキングを行い、次に、そのマーキングを位置決め基準にしてインゴットの平坦面に疑似端部を接合させた。その後、インゴットの直胴部の円筒研削を行い、疑似端部及び固定アダプタをインゴットの平坦面から取り外した。
【0045】
そして、インゴットのセンターマーキングから疑似端部及び固定アダプタを取り外しを完了させるまでの工程時間を評価した。
その結果、工程時間は円筒研削時間を除くとインゴット1本当たり平均5分であり、後述する比較例とくらべ、1本あたり約25分短縮することができた。
また、同一の固定アダプタ及び疑似端部を使用して全てのインゴットを円筒研削することができた。
【0046】
このことにより、本発明の固定アダプタを用いた円筒研削方法では、固定アダプタ及び疑似端部を容易に装脱着でき、研削加工の工程時間を短縮することができることが確認できた。
また、固定アダプタ及び疑似端部を再利用できるので、製造コストを低減することができ、また、切断によるインゴットのロスもないため、製品の歩留りの低下を抑制することができることが確認できた。
【0047】
(比較例)
疑似端部を瞬間接着剤で接着した以外、実施例と同様な条件でインゴットを円筒研削し、同様な評価を行った。
その結果、円筒研削時間を除いた工程時間はインゴット1本当たり平均30分であった。
また、疑似端部とインゴットは接着剤により強固に接着されたいたため、疑似端部の取り外し時に接着面近傍を切断する必要があった。そのためインゴット1本当たり平均12mmの切断ロスが発生した。この切断にかかる時間も入れるとさらに時間のロスが生じていることが判った。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る固定アダプタの一例を示した断面図である。
【図2】本発明に係る円筒研削方法で使用することができる円筒研削装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明に係る円筒研削方法での被研削対象であるインゴットを示す概略図である。(A)疑似端部を接合させる前のインゴット。(B)疑似端部を接合させた後のインゴット。
【図4】本発明に係る円筒研削方法で用いることができる疑似端部の一例を示す概略図である。
【図5】本発明に係る円筒研削方法における、インゴットの平坦面に固定アダプタを介して疑似端部を取付ける様子を説明するフロー図である。
【図6】従来の一般の円筒研削装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0050】
1…固定アダプタ、2…アダプタ本体、3…吸着手段、
4…装着手段、5、5’…疑似端部、6…Oリング、
7…インゴット、7a…胴体部、7b…コーン状端部、
7c…平坦面、8…研削ホイール、9、9’…クランプ、10…円筒研削装置、
11…空間、12…移動板、13…ネジ、14…吸着面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の直胴部と該直胴部の一端がコーン状の端部であり、他端が平坦面であるインゴットの前記直胴部を研削する円筒研削方法において、前記インゴットの平坦面に、コーン状の疑似端部を接合し、前記インゴットのコーン状の端部と疑似端部を把持して前記直胴部を研削する円筒研削方法であって、前記疑似端部と前記インゴットの平坦面を接合するための固定アダプタを、前記インゴットの平坦面に吸着させ、前記固定アダプタの疑似端部装着手段により前記固定アダプタに前記疑似端部を装着させることで、前記インゴットの平坦面に前記コーン状の疑似端部を接合し、前記コーン状の端部と疑似端部を保持して前記インゴットの直胴部を研削することを特徴とするインゴットの円筒研削方法。
【請求項2】
前記インゴットの平坦面に吸着する前記固定アダプタの吸着面の中央部に空間を設けることで密閉空間を形成し、該空間を広げて減圧することによって、前記固定アダプタと前記インゴットの平坦面とを吸着させることを特徴とする請求項1に記載のインゴットの円筒研削方法。
【請求項3】
前記疑似端部装着手段として、ネジを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインゴットの円筒研削方法。
【請求項4】
円筒状の直胴部と該直胴部の一端がコーン状の端部であり、他端が平坦面であるインゴットの前記平坦面にコーン状の疑似端部を接合し、前記コーン状の端部と疑似端部を把持して前記インゴットの直胴部を研削する円筒研削方法において用いられる、前記インゴットの平坦面と、前記コーン状の疑似端部とを接合するための固定アダプタであって、少なくとも、前記インゴットの平坦面と吸着する端面を有するアダプタ本体と、前記インゴットの平坦面と前記アダプタ本体とを吸着させる吸着手段と、前記疑似端部を前記アダプタ本体に装着させる装着手段とを具備し、前記吸着手段により前記インゴットの平坦面に前記アダプタ本体を吸着し、前記装着手段により前記アダプタ本体に前記疑似端部を装着させることで前記インゴットの平坦面に前記疑似端部を接合するものであることを特徴とする固定アダプタ。
【請求項5】
前記アダプタ本体の吸着面は中央部に空間を有し、前記吸着面の外周にOリングが配設され、前記吸着手段は前記吸着するインゴットの平坦面に対して前後動自在な移動板を有し、前記吸着面、前記Oリング及び前記移動板で形成される密閉された前記空間を、前記移動板を前記インゴットの平坦面に対し後方に移動させることによって広げて該密閉空間内を減圧し、前記アダプタ本体を前記インゴットの平坦面に吸着させるものであることを特徴とする請求項4に記載の固定アダプタ。
【請求項6】
前記疑似端部を前記アダプタ本体に装着させる装着手段として、前記アダプタ本体と疑似端部とを螺合するネジを設け、該ネジにより前記疑似端部を前記アダプタ本体に装着するものであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の固定アダプタ。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−279721(P2009−279721A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135754(P2008−135754)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】