説明

インサート金属板の加飾装置

【課題】膨出形状のインサート金属板に対して、経済的に、且つ、良好に加飾できるようにする。
【解決手段】第1金型1と、第2金型2とが設けられ、第1金型1のコア凸部3と第2金型2との間にキャビティ空間Vが設けられ、第1金型1と第2金型2とは、膨出形状に成形されたインサート金属板20とインサート金属板20の膨出側の面の加飾に用いる加飾シートSとを沿わせたプレス対象材21を、キャビティ空間Vに配置して挟圧することで、インサート金属板20に加飾できるように構成してあるインサート金属板の加飾装置であって、金型温度を調整する温度調整機構Tが設けられ、コア凸部3の少なくとも一部を、第1金型1のベース部1Aと別部材で、且つ、第2金型2より熱膨張率の高い膨張性第1素材B1を用いて構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1金型と、第2金型とが設けられ、前記第1金型のコア凸部と前記第2金型との間にキャビティ空間が設けられ、前記第1金型と第2金型とは、膨出形状に成形されたインサート金属板と前記金属板の膨出側の面の加飾に用いる加飾シートとを沿わせたプレス対象材を、前記キャビティ空間に配置して挟圧することで、前記インサート金属板に加飾できるように構成してあるインサート金属板の加飾装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインサート金属板の加飾技術としては、予め、所期の形状に成形したインサート金属板をキャビティ空間にセットした状態で、金属板の裏面側に金型のゲートから溶融樹脂を射出することでインサート金属板の裏面に樹脂を密着させて一体化を図り(例えば、特許文献1参照)、その後、金型から取り出したインサート金属体と樹脂との複合品の金属表面に、別工程で加飾を実施していた。
この方法によれば、成形工程と加飾工程とを個別に実施するから手間がかかり、更なる効率化が望まれる。そこで、射出成形の際に、インサート金属板の表面側に加飾シートを配置しておき、裏面側に注入する樹脂の圧力でインサート金属板の表面に加飾層を転写することで両工程を統合し、加飾の効率化を図ることが、発明者らによって考えられている(例えば、特願2009−272836号参照)。
しかしながら、上述のようなインサート成形においては、金型の製作費用が高くなり易いことから、通常の射出成形用金型で樹脂成形のみを実施し、それとは別工程で前記金属板への加飾を行っておき、その後に、成形樹脂と前記金属板との一体化を図ることが検討されている。
ここでは、それらの工程の中で、膨出形状に成形されたインサート金属板の膨出側の面への加飾について言及する。
上述のような技術背景から通常に考え得るこの種のインサート金属板の加飾装置としては、図11に示すように、インサート金属板20の膨出凸面形状に沿う形状に形成した第2金型2と、インサート金属板20の膨出凹面形状に沿う形状にコア凸部3を形成した第1金型1とを設け、両金型1,2の挟圧によって、加飾シートSの加飾層Saと、インサート金属板20とを一体化できるように構成するものが挙げられる。
また、第1金型(コア凸部も含む)と第2金型とは、同一材料で形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−200453号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したインサート金属板の加飾装置によれば、第1金型と第2金型との挟圧によってインサート金属板と加飾層との一体化を図るものであるから、インサート金属板が平板の場合には、どの部分においても前記挟圧が板面に対して直角に作用するから、インサート金属板と加飾層とは充分に挟圧されて、良好に加飾することができる。
しかし、ここで対象として挙げているインサート金属板は、膨出形状に成形されているものであるから、金属板には立ち上がり部が存在し、平板の場合とは挟圧環境が異なる。即ち、前記立ち上がり部は、金型の挟圧方向に対して傾斜状態となるから、インサート金属板と加飾層との挟圧が不足しやすくなる。
その結果、金属板の立ち上がり部において加飾層の密着がわるくなり易い問題点があった。
この問題を解消するには、傾斜していても強い挟圧を確保する必要があり、金型に真空圧転写機構を組み込んだり、前記立ち上がり部に直角に当接するスライド型等を組み込むことが必要となり、結果的には装置コストが高額になってしまう。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、膨出形状のインサート金属板に対して、経済的に、且つ、良好に加飾できるインサート金属板の加飾装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、第1金型と、第2金型とが設けられ、
前記第1金型のコア凸部と前記第2金型との間にキャビティ空間が設けられ、
前記第1金型と第2金型とは、膨出形状に成形されたインサート金属板と前記インサート金属板の膨出側の面の加飾に用いる加飾シートとを沿わせたプレス対象材を、前記キャビティ空間に配置して挟圧することで、前記インサート金属板に加飾できるように構成してあるインサート金属板の加飾装置であって、
金型温度を調整する温度調整機構が設けられ、
前記コア凸部の少なくとも一部を、前記第1金型のベース部と別部材で、且つ、前記第2金型より熱膨張率の高い膨張性第1素材を用いて構成してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記温度調整機構によって金型温度の温度調整を行うことができ、例えば、金型の温度を高めて熱膨張させることが可能となる。
また、前記コア凸部の少なくとも一部を前記第2金型より熱膨張率の高い膨張性第1素材を用いて構成してあるから、金型の温度上昇に伴って、コア凸部に第2金型より大きな熱膨張が発生する。第1金型と第2金型とによって挟圧されている環境下で、コア凸部は、さらに第2金型側に熱膨張力を作用させることができる。
従って、インサート金属板の膨出側とは反対側の面(以後、「裏面」という)を、前記コア凸部の熱膨張によって押圧することができる。その結果、インサート金属板の立ち上がり部においても、コア凸部の熱膨張力を前記裏面に垂直(又は、ほぼ垂直)に作用させて、インサート金属板と加飾シートとを強く挟圧することができるようになる。
よって、膨出形状のインサート金属板に対して、全体的に良好な加飾を施すことができる。更には、金型に大掛かりな機構を組み込むことなく、コア凸部の少なくとも一部に熱膨張率の高い第1素材を用いるだけの構成によって装置を構成できるから、コストアップを抑え、経済性を向上させることができる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記コア凸部は、前記膨張性第1素材による第1膨張部と、前記膨張性第1素材より熱膨張率の低い膨張性第2素材による第2膨張部とを備えているところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、第1膨張部と第2膨張部との熱膨張率の差を利用して、加飾シートとインサート金属板とからなるプレス対象材に対して、熱膨張による押圧力の大きさを部分的に異ならせて作用させることができるようになる。
即ち、第1膨張部と第2膨張部との配置によって、第1膨張部に対応するプレス対象材部分には強い押圧力を作用させ、第2膨張部に対応するプレス対象材部分には弱い押圧力を作用させることが可能となる。その結果、プレス対象材に対して作用させる押圧力の分布を、自由にコントロールすることが可能となり、インサート金属板への加飾のバリエーションをより豊富にすることができる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記第1膨張部は、前記コア凸部の少なくとも外縁の立ち上がり部位に位置し、前記第2膨張部は、前記立ち上がり部位を除く前記コア凸部の中央側の部位に位置しているところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、外縁部分が立ち上がっていて全体に偏平な膨出形状のインサート金属板への加飾を行うのに、特に加飾品質の向上を図ることが可能となる。
即ち、コア凸部の中央側の部位は、偏平な形状であるから、金型どうしの挟圧が面に垂直(又はほぼ垂直)に作用し易く、それ以上の大きな押圧力を作用させる必要はないことから、その部分には、膨張力の小さな第2膨張部が対応できる。
一方、インサート金属板の外縁の立ち上がり部は、金型どうしの挟圧が作用し難いのを、前記第1膨張部からの大きな膨張力によって補うことができ、前記プレス対象材の全域を、加飾に好ましい状態で挟圧することができる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記温度調整機構は、電熱ヒータと、エアークーラーとを備えて構成してあるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、型締め後に、前記プレス対象材の加飾を行う時には、電熱ヒータの迅速な加熱によって、コア凸部を速やかに熱膨張させて、短時間でインサート金属板への加飾を行うことができる一方、型からプレス対象材を取り外す時には、エアークーラーの極低温のエアーを使用できるから、迅速な徐冷によって速やかに型抜きを行うことができ、加飾工程の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】加飾手順を示す加飾装置の断面図
【図2】加飾手順を示す加飾装置の断面図
【図3】加飾手順を示す加飾装置の断面図
【図4】加飾手順を示す加飾装置の断面図
【図5】加飾手順を示す加飾装置の断面図
【図6】コア凸部の熱膨張を示す説明図
【図7】加飾手順を示す加飾装置の断面図
【図8】加飾手順を示す加飾装置の断面図
【図9】別実施形態のコア凸部を示す説明図
【図10】別実施形態のコア凸部を示す説明図
【図11】通常考え得る加飾装置を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0016】
図8は、本発明のインサート金属板加飾装置の一実施形態品(以後、単に加飾装置Q)によって加飾された成形品Zを示し、例えば、携帯電話等の電子機器の外装材として使用することができる。当該成形品Zは、厚みの薄いインサート金属板(以後、単に金属板という)20の表面に一体的に加飾シートSによる加飾が施されている。ここでは説明を割愛するが、裏面側に樹脂品を一体化する場合もある。
【0017】
前記金属板20は、例えば、アルミニウム、又は、マグネシウム等を主成分として構成してあり、図1〜7に示すように、表面側に膨出する形状で、角をまるめた矩形のお盆を伏せた形状に成形(例えば、プレス成形)してある。便宜上、外縁部分を、立ち上がり部20aといい、その内側の偏平な部分を偏平部20bという。
お盆を伏せた形状の上面が成形品Zの表面にあたり、上述のとおり前記加飾シートSによる加飾層Saが形成されている(図8参照)。金属板20の表面には、加飾層Saが形成され易いように予め接着剤の塗付等の表面処理(不図示)がなされているか、加飾層Saが接着し易いシート(不図示)が予め貼り付けられる。
加飾層Saにおいては、例えば、文字やデザインマークや色彩等の加飾が施されている。本実施形態においては、加飾層Saは、金属板20の表面の全域を覆う状態に設けられている。
【0018】
前記加飾装置Qは、図3に示すように、第1金型1と、第2金型2とが設けられ、前記第1金型1のコア凸部3と前記第2金型2との間にキャビティ空間Vが設けられ、前記第1金型1と第2金型2とは、前記金属板20と前記加飾シートSとを沿わせたプレス対象材21を、前記キャビティ空間Vに配置して挟圧することで、前記インサート金属板20に加飾できるように構成してある。
【0019】
前記第1金型1は、図1〜5に示すように、固定側のベース部1Aと、ベース部1Aにネジ部材10で固定された前記コア凸部3とを備えて構成してあり、前記コア凸部3の表面が、前記金属板20の裏面形状に対応する形状のキャビティ面3Aとして構成してある。
また、前記ベース部1Aにおけるコア凸部3より外側の部分には、前記加飾シートSを仮保持するための吸引スリット1aが、全周にわたって形成してある。
更には、ベース部1Aには、金型温度を調整する温度調整機構Tが埋設状態に設けられている。具体的には、中央部分に、電熱ヒータT1が、その外側を囲む配置でエアークーラーT2がそれぞれ設けてある。
【0020】
尚、ベース部1Aにおける前記コア凸部3を取り付けてある部分は、図6に示すように、その周りより低い座繰り部1bとして形成してあり、その座繰り部1b内に、前記コア凸部3の下端部が入り込む状態に固定されている。更には、座繰り部1bの外縁部と、コア凸部3の外縁部との間には、図に示すような隙間11が形成してある。この隙間11は、前記コア凸部3の熱膨張を吸収できる幅寸法に設定してあり、コア凸部3が、横方向に線膨張する際に、ベース部1Aがその線膨張を阻害しないように構成されている。
【0021】
また、前記ネジ部材10は、図1〜5に示すように、コア凸部3の平面中央部の一個所のみを前記ベース部1Aに固定するように設けてあり、コア凸部3の横方向の線膨張が、どの放射線方向にも同条件で発生するように考慮してある。
【0022】
因みに、前記第1金型1のベース部1Aは、第2金型2と同じ材料で構成してあり、例えば、S55C、プリハードン鋼、炭素鋼、クロム鋼、チタン等の材料で構成することができる。線膨張係数は、(8.5〜12)×10-6/℃程度である。
【0023】
前記コア凸部3は、図6に示すように、熱膨張率の異なる二種類の金属素材を使い分けて構成してある。
その一つは、前記第1金型1のベース部1Aや前記第2金型2より熱膨張率の高い膨張性第1素材B1であり、他の一つは、膨張性第1素材B1より熱膨張率の低い膨張性第2素材B2である。
当該実施形態においては、前記金属板20の偏平部20bに対応するコア凸部3の中央側の表層部位を、前記膨張性第2素材B2を使用した第2膨張部3bとして構成してあり、前記金属板20の立ち上がり部20aに対応するコア凸部3の立ち上がり部位と、前記第2膨張部3bの下に位置する部位とを、前記膨張性第1素材B1を使用した第1膨張部3aとして一体に構成してある。
因みに、前記膨張性第1素材B1は、金型としての機能を発揮する必要があることから、前記金属板20よりも高度が高い素材を使用してあり、例えば、SUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼を一例として挙げられる。この場合、線膨張係数は、(17〜19)×10-6/℃程度である。
一方、前記膨張性第2素材B2についても、金型としての機能を発揮する必要があることから、前記金属板20よりも高度が高い素材を使用してある。当該実施形態においては、前記第1金型1のベース部1Aや、第2金型2と同じ材料で構成してある。
【0024】
前記第2金型2は、第1金型1に対して遠近離間自在に設けてあり、図1〜5に示すように、第1金型1に対向する面が、前記金属板20の表面形状に対応する形状のキャビティ面2Aとして構成してある。
また、第2金型2は、型締めの際に、キャビティ面2Aに沿って加飾シートSとして転写シート12が配置されるよう構成されている。第1金型1のキャビティ面3Aへの前記金属板20の配置が終了した段階で、金属板20と第2金型2との間に転写シート12が配置される。転写シート12は加飾層(転写層)12aと基体シート12bとで構成されており、加飾層(転写層)12aが金属板20の表面を加飾する。当該転写シート12は、例えば、ロール状の長尺フィルムを当該位置に展開配置するものでも良いし、前記金属板20の外形に合わせてカッティングしたものを配置するものでも良いし、金属板20より大きい任意の形状(例えば、長方形の枝葉シート)でもよい。また、加飾シートとして加飾層と基体シートとが一体となったインサートシートを用い、金属板20の表面をこのインサートシートで加飾するようにしてもよい。
【0025】
また、第2金型2には、前記転写シート12を保持するシート保持機構Hが設けられている。シート保持機構Hは、第2金型2から第1金型1側に出退自在で且つ第2金型2に向けて弾性付勢された第1クランプ4と、第2金型2から第1金型1側に出退自在で且つ第1金型1に向けて弾性付勢された第2クランプ5とを備えて構成してあり、第1クランプ4と第2クランプ5とで前記転写シート12の周部を挟持して、型締めの際に、第2金型2より先に第1金型1に対して前記転写シート12を近接させて、位置ずれの防止を図るように構成されている。
【0026】
次に、金属板20への加飾の手順について説明する。
[1] 第1金型1の所定の位置に、金属板20を配置すると共に、第2金型2と金属板20との間に転写シート12を配置する(図1参照)。
[2] 図2に示すように、第1クランプ4と第2クランプ5とで転写シート12を挟持して保持させた後、第1金型1に第2金型2を近接させて型締めを始める。このとき、転写シート12は、第2金型2の型面2aから所定距離だけ離間した状態で保持されている。
[3] 図3に示すように、型締め中には、金属板20の表面に転写シート12が近接しながら押し付けられて、金属板20の表面に徐々に沿っていく。上述のように、転写シート12を第2金型2の型面2aから所定距離だけ離間した状態で保持することで、型締めが完了する前に、転写シート12を金属板20の表面に沿わせることができ、転写シート12が型締めの際に一気に引き伸ばされて破れるような不具合を抑制することができる。
また、この状態で、第1金型1の吸引スリット1aから吸引を掛けることで、転写シート12が第1金型1に吸着して位置決めされる。
[4] 図4に示すように、型締めを行う。型締めによって、転写シート12と金属板20とは、両金型1,2から挟持圧を受ける。また、型締めに伴っては、前記電熱ヒータT1による加熱も併用される。加熱によって転写シート12の温度が上昇して、金属板20への転写が可能な状態となる。転写シート12の転写可能な温度としては、50〜200℃の範囲が好ましい。
型締め後の加熱状態においては、図6に示すように、前記コア凸部3の熱膨張によって、金属板20の裏面に押圧力が作用する。その際、第2膨張部3bは、膨張の度合が低いのに対して、前記第1膨張部3aは膨張率が大きいから、その膨張圧で金属板20の立ち上がり部20aを、面に垂直(又はほぼ垂直)に強く押圧することができ、傾斜面であるにも拘わらず、転写シート12と金属板20とに強い圧力を作用させて、より確実に加飾することができる。
[5] 図5に示すように、加飾が完了すると、前記温度調整機構Tを電熱ヒータT1からエアークーラーT2に切り替えて冷却すると共に、図7、図8に示すように、型締めの開放を行い、成形品Zを取り外す。また、型締めの開放に伴っては、転写シート12も第2金型2側に移動させた後、シート面に沿って送り出される。
【0027】
本実施形態の加飾装置Qによれば、金型に大掛かりな機構を組み込むことなく、コア凸部3の少なくとも一部に熱膨張率の高い膨張性第1素材B1を用いるだけの構成によって、金属板20の全体に良好な状態に、且つ、経済的に加飾を施すことができるようになる。
【0028】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0029】
〈1〉 前記成形品Zは、先の実施形態で説明した形状、材質に限るものではなく、適宜変更が可能である。要するに、膨出形状に成形された前記金属板20と、その膨出側の面に設けられた加飾層Saとを備えたものであればよい。
従って、金属板20そのものも、先の実施形態で説明した形状や材質に限るものではない。
更には、加飾シートSも、先の実施形態で説明した転写シート12に限るものではない。即ち、加飾シートSは、転写層12aと基体シート12bとで構成され転写シート12に限るものではなく、加飾シートSそのものを加飾層Saとなるべく構成されたものであってもよい。
また、加飾シートSは、先の実施形態で説明したように前記金属板20の全面にわたって設けられるものに限らず、例えば、前記金属体20の一部にのみに設けられる場合もある。
即ち、当該加飾装置Qは、上述のような成形品Zを形成するものであればよい。
【0030】
〈2〉 前記コア凸部3は、先の実施形態で説明したように、前記金属板20の偏平部20bに対応するコア凸部3の中央側の表層部位を、前記膨張性第2素材B2を使用した第2膨張部3bとして構成すると共に、前記金属板20の立ち上がり部20aに対応するコア凸部3の立ち上がり部位と、前記第2膨張部3bの下に位置する部位とを、前記膨張性第1素材B1を使用した第1膨張部3aとして一体に構成してあるものに限るものではない。
例えば、図9に示すように、前記金属板20の偏平部20bに対応するコア凸部3の中央側のすべてを、前記膨張性第2素材B2を使用した第2膨張部3bとして構成すると共に、前記金属板20の立ち上がり部20aに対応するコア凸部3の立ち上がり部位を、前記膨張性第1素材B1を使用した第1膨張部3aとして一体に構成してあるものであってもよい。この場合は、金属板20の偏平部20bへの押圧力は抑えながら、第1膨張部3aの熱膨張圧を金属板20の立ち上がり部20aに対してより集中的に作用させることができ、立ち上がり部20aの加飾の品質を良好に保つことができる。
また、異なる例としては、図10に示すように、コア凸部3のすべてを、前記膨張性第1素材B1で構成してあってもよい。この場合は、立ち上がり部20aへの押圧力をより強力に作用させることができることに加えて、コア凸部3の形成手間を軽減できるから、製作コストの低減を図ることができる。
【0031】
〈3〉 温度制御方法の別実施形態として、射出成形のウエルドレス成形法で用いられるヒートアンドクールシステムを用いてもよい。
【0032】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、自動車、家庭用電化製品、携帯電話、パーソナルコンピュータ等、さまざまな分野において、内装品、外装品を問わず、使用される金属を含む成形品において、インサート金属板の表面に加飾層が形成された成形品の製造に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 第1金型
1A ベース部
2 第2金型
3 コア凸部
3a 第1膨張部
3b 第2膨張部
20 インサート金属板
21 プレス対象材
B1 膨張性第1素材
B2 膨張性第2素材
S 加飾シート
T 温度調整機構
T1 電熱ヒータ
T2 エアークーラー
V キャビティ空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型と、第2金型とが設けられ、
前記第1金型のコア凸部と前記第2金型との間にキャビティ空間が設けられ、
前記第1金型と第2金型とは、膨出形状に成形されたインサート金属板と前記インサート金属板の膨出側の面の加飾に用いる加飾シートとを沿わせたプレス対象材を、前記キャビティ空間に配置して挟圧することで、前記インサート金属板に加飾できるように構成してあるインサート金属板の加飾装置であって、
金型温度を調整する温度調整機構が設けられ、
前記コア凸部の少なくとも一部を、前記第1金型のベース部と別部材で、且つ、前記第2金型より熱膨張率の高い膨張性第1素材を用いて構成してあるインサート金属板の加飾装置。
【請求項2】
前記コア凸部は、前記膨張性第1素材による第1膨張部と、前記膨張性第1素材より熱膨張率の低い膨張性第2素材による第2膨張部とを備えている請求項1に記載のインサート金属板の加飾装置。
【請求項3】
前記第1膨張部は、前記コア凸部の少なくとも外縁の立ち上がり部に位置し、前記第2膨張部は、前記立ち上がり部を除く前記コア凸部の中央側の部位に位置している請求項2に記載のインサート金属板の加飾装置。
【請求項4】
前記温度調整機構は、電熱ヒータと、エアークーラーとを備えて構成してある請求項1〜3の何れか一項に記載のインサート金属板の加飾装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−194739(P2011−194739A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64793(P2010−64793)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】