説明

インターナルクランプ装置

【課題】接続する管に挿入してセットした状態で作業者等が管路内を自由に行き来することができ、接合する管の開先合わせ及び開先部の裏当て金を設置して溶接するときの作業性を向上する。
【解決手段】インターナルクランプ装置1を使用して管2aと管2bを溶接するとき、接合する一方の管2aの内部にインターナルクランプ装置1を挿入し、ヘッド6に取り付けてある裏当て銅板11の中央が管2aの開先線と一致するようにインターナルクランプ装置1の位置を調整する。このインターナルクランプ装置1を管2a内に挿入して位置調整しているとき、管2aが大口径の場合には、作業者はインターナルクランプ装置1のシリンダ保持部5に設けた貫通孔7を通って管2a内に行き来できるから、インターナルクランプ装置1の位置決め作業等を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大口径の鋼管を突き合わせ溶接するときに、接合する鋼管の開先合わせ及び開先部の裏当て金を設置するために使用するインターナルクランプ装置、特に作業性の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大口径のガス管等を円周溶接して接続するとき、良好な裏ビ−ドを形成するために、接続する管を固定して開先合わせをするとともに溶接開先の裏面全体に銅板等の裏当て金を保持するため、特許文献1や特許文献2に示すように、インターナルクランプ装置が使用されている。このインターナルクランプ装置21は、図6の側面断面図と図7の正面図に示すように、複数の走行車輪22を有する円筒状の本体23と、本体23の一方の端部に放射状に設けられた複数の固定用クランプ24と、本体23の他方の端部に放射状に設けられたクランプヘッド25を有する。各固定用クランプ24はそれぞれ本体23内部に設けられた油圧シリンダに連結され、油圧シリンダに供給する作動油により伸縮する。
【0003】
クランプヘッド25は、図7に示すように、両端部が扇形状に形成されたAヘッド26aと、両端部が逆扇形状に形成されたBヘッド26bとを有し、Aヘッド26aとBヘッド26bが交互に配置されている。このAヘッド26aとBヘッド26bの内面中央部にはプランジャー27が固定されている。本体23内には2組のヘッド拡張用の油圧シリンダ28,29を有する。そして、一方の油圧シリンダ28と、油圧シリンダ28のピストン30に連結され外周部に複数の歯を有する支持ブロック31と、一方の端部が支持ブロック31の歯部に回動自在に取り付けられ他方の端部がAヘッド26aに固定されたプランジャー27に回動自在に取り付けられたアーム32及びプランジャー27とでAヘッド26aの加圧機構を構成している。また、他方の油圧シリンダ29と、油圧シリンダ29のピストン33に連結され先端外周部に支持ブロック31の歯と嵌合する溝を有する爪付き支持ブロック34と、一方の端部が爪付き支持ブロック34の先端爪部に回動自在に取り付けられ他方の端部がBヘッド26bに固定されたプランジャー27に回動自在に取り付けられたアーム32及びプランジャー27とでBヘッド6bの加圧機構を構成している。このAヘッド26aとBヘッド26bの外周面の中央には、裏当て材保持溝35が設けられ、裏当て材保持溝35に裏当て銅板36が挿入されて固定されている。
【0004】
そして、図6に示すように、接合する一方の管2aの内部にインターナルクランプ装置21を挿入し、クランプヘッド26に取り付けてある裏当て銅板36の中央が管2aの開先線と一致するようにインターナルクランプ装置21の位置を調整してから固定用クランプ24を張り出してインターナルクランプ装置21を管2aに固定する。その後、他方の管2bを管2aの方に引き寄せて、クランプヘッド26を軽く張り出して管2a,2bにクランプヘッド26を仮にセットする。そしてルートギャップが規定範囲になるように管2bの位置を調節してからクランプヘッド26を強く張り出して双方の管2a,2bの円周継手部の内側にクランプヘッド26を固定する。このようにクランプヘッド26を拡張するときに、まず一方の油圧シリンダ28を作動させて両端部が扇形状に形成されたAヘッド26aを張り出し、その後、他方の油圧シリンダ29を作動させて両端部が逆扇形状に形成されたBヘッド26bを張り出すことにより、Aヘッド26aの端面とBヘッド26bの端面及び裏当て銅板36の端面を密着することができ、円周継手部の内側全体を裏当て銅板36で覆うことができる。
【特許文献1】特許第3153714号公報
【特許文献2】特許第3295552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記インターナルクランプ装置は、放射状に設けたクランプヘッド25を管の半径方向に伸縮させるため、本体23の中心部に複数のプランジャー27やアーム32等を有する加圧機構を設けているため、管2の内部にインターナルクランプ装置21を挿入した状態では作業者がインターナルクランプ装置21を乗り越えて管2aの内部に行くことは困難であり、インターナルクランプ装置21の調整等を行う場合や管2aの内部で作業を行う等の場合には管2aからインターナルクランプ装置21から取り出す必要があり、作業性が悪いという短所があった。
【0006】
また、開先合わせや溶接時には、インターナルクランプ装置21で管路を塞ぐため、溶接作業が終了するまでインターナルクランプ装置21の設置位置を境に作業者等が管路内を行き来したり、管内作業装置や管内作業に使用する各種ケーブルやワイヤロープを通すことが困難であるという短所があった。
【0007】
この発明は、このような短所を改善し、接続する管に挿入してセットした状態で作業者管路内を自由に行き来したり、各種管内作業装置等を通すことができ、作業性を向上することができるインターナルクランプ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のインターナルクランプ装置は、複数の走行車輪を有する台車と、台車の一方の端部に設けられたシリンダ保持部及び複数のクランプヘッドを有し、シリンダ保持部は適用する管の径に応じた貫通孔を中心部に有し、クランプヘッドは油圧シリンダと、油圧シリンダのピストンロッドの先端に固定されたヘッドを有し、複数のクランプヘッドの油圧シリンダはシリンダ保持部の外周部に放射状に固定され、ヘッドは外周面が適用する管の内周面の半径と一致した凸状の湾曲面で形成され、外周面の中央部に所定長さに分割された裏当て金が固定されていることを特徴とする。
【0009】
この発明の他のインターナルクランプ装置は、複数の走行車輪を有する台車と、台車の中心部に設けられ、適用する管の径に応じた貫通孔が中心部に設けられたピストンロッドを有する油圧シリンダと、台車の一方の端部の外周部に放射状に設けられ、外周面が適用する管の内周面の半径と一致した凸状の湾曲面で形成され、外周面の中央部に所定長さに分割された裏当て金が固定されている複数のヘッドと、ピストンロットの一方の端部と各ヘッドとを連結するトグル装置とを有することを特徴とする。
【0010】
前記貫通孔の大きさは、大口径の管に適用する場合は、人が通れる大きさを有し、小口径の管に適用する場合は、各種管内作業機械等を通すの大きさを有することが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、接合する管の円周継手部内側に裏当て金を押し付ける複数のクランプヘッドの油圧シリンダをシリンダ保持部の外周部で放射状に保持することにより、簡単な構造で裏当て金を円周継手部内側に押し付けることができるとともにインターナルクランプ装置の軽量化を図ることができる。
【0012】
また、クランプヘッドを保持したシリンダ保持部の中心部に貫通孔を設けることにより、インターナルクランプ装置を管にセットするときやセットした後に貫通孔を利用した資材や作業者を移動することができ、作業性を向上させることができる。
【0013】
また、台車の中心部に設けられた油圧シリンダのピストンロットと台車の一方の端部外周部に放射状に設けられた各ヘッドとをそれぞれトグル装置で連結することにより、簡単な構造で裏当て金を円周継手部内側に押し付けることができる。
【0014】
さらに、貫通孔を中心部に有するピストンロッドを使用することにより、インターナルクランプ装置を管にセットするときやセットした後に貫通孔を利用した資材等を移動することができ、作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜図3はこの発明のインターナルクランプ装置の構成を示し、図1は側面断面図、図2は正面図、図3は背面図である。インターナルクランプ装置1は、接合する管2a,2bの開先合わせ及び開先部の裏当て金を設置するために使用するものであり、複数の走行車輪3を有する半円筒状の台車4と、台車4の一方の端部に設けられたシリンダ保持部5及び複数のクランプヘッド6を有する。シリンダ保持部5は適用する管2の径に応じた貫通孔7が中心部に設けられている。この貫通孔7の直径は、例えば呼び径1800A等の大口径の管2に適用する場合は、作業者が通れる程度の大きさを有し、小口径の管2に適用する場合は、各種管内作業機械等を通す程度の大きさを有する。クランプヘッド6は油圧シリンダ8と、油圧シリンダ8のピストンロッドの先端に固定されたヘッド9を有する。各クランプヘッド6の油圧シリンダ8はシリンダ保持部5の外周部に放射状に固定されている。ヘッド9の外周面は適用する管2の内周面の半径と一致した凸状の湾曲面で形成され、外周面の中央部に裏当て材保持溝10を有する。この裏当て材保持溝10に所定長さに分割された裏当て銅板11が固定されている。台車4には各クランプヘッド6の油圧シリンダ8に供給する作動油を加圧する油圧ポンプ12を有する油圧装置13と、各油圧シリンダ8に作動油を供給し、供給した作動油を戻して各油圧シリンダ8の動作を制御するバルブユニット14を有する。シリンダ保持部5の前面には油圧ポンプ12とバルブユニット14に電源を供給する分電盤15と、油圧ポンプ12とバルブユニット14の動作を制御する操作盤16を有する。
【0016】
このインターナルクランプ装置1を使用して管2aと管2bを溶接するときは、まず、接合する一方の管2aの内部にインターナルクランプ装置1を挿入し、ヘッド6に取り付けてある裏当て銅板11の中央が管2aの開先線と一致するようにインターナルクランプ装置1の位置を調整する。このようにインターナルクランプ装置1を管2a内に挿入して位置調整しているとき、管2aが大口径の場合には、作業者はインターナルクランプ装置1のシリンダ保持部5に設けた貫通孔7を通って管2a内に行き来できるから、インターナルクランプ装置1の位置決め作業等を容易に行うことができる。
【0017】
その後、他方の管2bを管2aの方に引き寄せ、シリンダ保持部5の前面で操作盤16を操作して油圧ポンプ12を駆動し、バルブユニット14を駆動して各クランプヘッド6の油圧シリンダ8に供給する油圧を制御して各ヘッド9を前進させて裏当て銅板11を管2a,2bの内面に軽く接触させて仮にセットする。この状態で管2aと管2bの間のルートギャップが規定範囲になるように管2bの位置を調節した後、各油圧シリンダ8に供給している油圧を制御してヘッド9を強く張り出して管2a,2bの円周継手部内側に裏当て銅板11を固定する。
【0018】
この状態で管2a,2bの円周継手部を溶接装置で溶接する。この円周継手部を溶接するとき、複数のクランプヘッド6で管2a,2bの円周継手部近傍を強力に保持して拘束しているから、管2a,2bの熱変形や歪を抑制することができ、良質な溶接継手を得ることができる。
【0019】
また、インターナルクランプ装置1を管2a,2bにセットするとき、管2a,2bが大口径の場合には、作業者はインターナルクランプ装置1のシリンダ保持部5に設けた貫通孔7を通って管2a,2bを行き来したり、溶接部を検査するX線装置や検査用のカメラ等の管内作業装置等を通すことができ、作業性を向上することができる。また、管2a,2bが小口径の場合にも貫通孔7を利用して管内作業装置や管内作業に使用する各種ケーブルやワイヤロープを通すことができる。
【0020】
前記説明ではヘッド9を各クランプヘッド6に設けた油圧シリンダ8により管2a,2bの円周継手部内側に押圧する場合について説明したが、図4の側面断面図を図5の正面図に示すように、中心部に貫通孔17が設けられたピストンロッド18を有する油圧シリンダ19を、複数の走行車輪22と固定用クランプ24を有するインターナルクランプ装置1aの中心に沿って設け、ピストンロッド18の先端部と各ヘッド9との間をトグル装置20で連結し、1個の油圧シリンダ19と各トグル装置20で各ヘッド9を管2a,2bの円周継手部内側に押圧するようにしても良い。この場合もピストンロッド18の貫通孔17を利用して管内作業装置や管内作業に使用する各種ケーブルやワイヤロープを通すことができる。また、大口径の管2a,2bに適用する場合は、ピストンロッド18の中空部17を利用して作業者が管2a,2bを行き来することができ、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明のインターナルクランプ装置の構成を示す側面断面図である。
【図2】インターナルクランプ装置の構成を示す正面図である。
【図3】インターナルクランプ装置の構成を示す後面図である。
【図4】第2のインターナルクランプ装置の構成を示す側面断面図である。
【図5】第2のインターナルクランプ装置の構成を示す正面図である。
【図6】従来のインターナルクランプ装置の構成を示す側面断面図である。
【図7】従来のインターナルクランプ装置の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1;インターナルクランプ装置、2;管、3;走行車輪、4;台車、
5;シリンダ保持部、6;クランプヘッド、7;貫通孔、8;油圧シリンダ、
9;ヘッド、10;裏当て材保持溝、11;裏当て銅板、12;油圧ポンプ、
13;油圧装置、14;バルブユニット、15;分電盤、16;操作盤、
17;中空部、18;ピストンロッド、19;油圧シリンダ、20;トグル装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走行車輪を有する台車と、前記台車の一方の端部に設けられたシリンダ保持部及び複数のクランプヘッドを有し、
前記シリンダ保持部は適用する管の径に応じた貫通孔を中心部に有し、前記クランプヘッドは油圧シリンダと、油圧シリンダのピストンロッドの先端に固定されたヘッドを有し、前記複数のクランプヘッドの油圧シリンダは前記シリンダ保持部の外周部に放射状に固定され、前記ヘッドは外周面が適用する管の内周面の半径と一致した凸状の湾曲面で形成され、外周面の中央部に所定長さに分割された裏当て金が固定されていることを特徴とするインターナルクランプ装置。
【請求項2】
複数の走行車輪を有する台車と、前記台車の中心部に設けられ、適用する管の径に応じた貫通孔が中心部に設けられたピストンロッドを有する油圧シリンダと、前記台車の一方の端部の外周部に放射状に設けられ、外周面が適用する管の内周面の半径と一致した凸状の湾曲面で形成され、外周面の中央部に所定長さに分割された裏当て金が固定されている複数のヘッドと、前記ピストンロットの一方の端部と前記各ヘッドとを連結するトグル装置とを有することを特徴とするインターナルクランプ装置。
【請求項3】
前記貫通孔の大きさは、大口径の管に適用する場合は、人が通れる大きさを有し、小口径の管に適用する場合は、各種管内作業機械等を通す大きさを有する請求項1又は2に記載のインターナルクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−185663(P2007−185663A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3294(P2006−3294)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【Fターム(参考)】