説明

インダクタおよびDC−DCコンバータ

【課題】磁気飽和し難く、直流重畳特性に優れる低背のインダクタおよび特性劣化し難い低背で省スペースのDC−DCコンバータを実現する。
【解決手段】インダクタ1は、同一平面上に並び同方向に巻回する第1スパイラル電極101と第2スパイラル電極102とが接続電極105により接続されたコイル電極部10を有する。コイル電極部10は、前記平面に直交する方向の両側から第1磁性体層11および第2磁性体層12により挟持される。第1スパイラル電極101と第2スパイラル電極102の接続電極105側と反対の端部である第1突起電極103および第2突起電極104は、前記平面に垂直な方向へ延びる形状からなり、第1磁性体層11からも突出する長さを有し、インダクタ1の両端電極として機能する。そして、この低背のインダクタ1を実装回路基板20上に配置することで、2層構造からなる低背のDC−DCコンバータが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インダクタおよび当該インダクタを用いたDC−DCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、電子機器の小型化に伴い、当該電子機器に用いられるDC−DCコンバータも小型化や低背化が求められている。このため、当該DC−DCコンバータの中でも比較的大きなスペースを要するインダクタの小型化や低背化が求められている。
【0003】
このような小型のインダクタとしては、例えば、特許文献1に示すように、平面状のスパイラルコイルを有し、当該スパイラルコイルを対向する両面側から絶縁層で挟持した後に、さらに当該絶縁層を挟持するように磁性体を配置したインダクタが、開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、三層の絶縁層の各層間にスパイラルコイルを配置し、これら絶縁層とスパイラルコイルとからなる層状部材を磁性体で挟持する構造のインダクタが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3410876号公報
【特許文献2】特開平1−157507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1や特許文献2に記載のインダクタでは、必ず絶縁層を形成しなければならず、当該絶縁層が低背化の規制要因となってしまう。また、特許文献1や特許文献2に記載のインダクタでは、複数のスパイラルコイルで発生される磁界が結合するため、磁性体が薄いと磁気飽和が起きやすく、直流重畳特性が悪い。特に、DC−DCコンバータの出力インダクタでは、使用用途によって負荷電流が大きくなる場合があり、インダクタが磁気飽和しやすいと特性劣化が生じやすい。一方で、磁気飽和を起きにくくし、直流重畳特性を良くするには、磁性体を厚くしなければならず、これも低背化の規制要因となってしまう。
【0007】
したがって、本発明の目的は、負荷電流が大きくなるような状況で使用されても磁気飽和し難く、直流重畳特性に優れる低背のインダクタを実現することにある。さらには、当該インダクタを用いることで、各種特性に優れ、低背化、小型化されたDC−DCコンバータを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)この発明は、コイル電極と磁性体層とからなるインダクタに関するものである。コイル電極は、螺旋状に形成された第1スパイラル電極と、該第1スパイラル電極と同一平面上に第1スパイラル電極と同方向に巻回される螺旋状に形成された第2スパイラル電極と、該第2スパイラル電極の外周端と第1スパイラル電極の外周端とを接続する接続電極と、第1スパイラル電極の内周端に形成された平面に略直交する方向に延びる第1突起電極および第2スパイラル電極の内周端に形成された平面に略直交する方向に延びる第2突起電極と、を有する。そして、コイル電極部は、第1突起電極および第2突起電極を両端電極とし、磁性体層は、該コイル電極部を挟持し第1突起電極および第2突起電極が外部へ露出するように形成されている。
【0009】
この構成では、絶縁層を有さないので、インダクタが低背化される。また、第1スパイラル電極により生じる磁界と、第2スパイラル電極により生じる磁界とが同じ方向を向いて並列して存在するため、互いに結合せず強めあわないので、磁気飽和し難く、直流重畳特性に優れる。さらに、この特性により、磁性体層の厚みを薄くすることができ、より低背化が可能になる。
【0010】
(2)また、この発明のインダクタの磁性体層は、磁性体粉と絶縁性樹脂とを混練して形成されている。
【0011】
この構成では、磁性体層の抵抗率を容易に高くすることができる。上記絶縁層の無い構成を容易に実現できる。
【0012】
(3)また、この発明のインダクタの磁性体層は、第1スパイラル電極、第2スパイラル電極、および接続電極を平面に直交する方向から挟み込む第1磁性体層と第2磁性体層とからなる。第1磁性体層には突起電極が挿通する貫通孔が形成される。第2磁性体層には、第1スパイラル電極、第2スパイラル電極、および接続電極が収納される凹部が形成されている。
【0013】
この構成では、インダクタの具体的構成を示しており、コイル電極の第1突起電極および第2突起電極を除く部分が、完全に第1磁性体層および第2磁性体層で内包された構造を実現できる。これにより、インダクタの特性を向上することができる。
【0014】
(4)また、この発明のインダクタの第2磁性体層は、第1スパイラル電極および第2スパイラル電極の巻回の中央領域において第1磁性体層に当接もしくは近接する高さの凸部を備える。該凸部と、該凸部の平面領域を第1磁性体層の厚み方向の全長に亘って仮想的に伸延させた第1の立体領域と、凸部の平面領域を当該凸部を除き第2磁性体層の厚み方向の全長に亘って仮想的に伸延させた第2の立体領域と、からなる領域を中央の立体領域とする。そして、第1スパイラル電極もしくは第2スパイラル電極に対応して、該中央の立体領域において第1磁性体層もしくは凸部を除く第2磁性体層を横断する厚み方向に平行な側面の面積Svと、中央の立体領域の第1もしくは第2スパイラル電極の厚み方向の中央断面に沿った断面の面積Shとが、0.1<Sv/Sh<0.65となるように形成されている。
【0015】
この構成では、インダクタの形状をより具体的に示したものであり、このような寸法設定の構造とすることで、低背でありながら磁気飽和が生じにくい構造を、より効果的に実現できる
(5)また、この発明のインダクタの第1スパイラル電極、第2スパイラル電極、および接続電極は、単一の金属板の打ち抜き加工により形成されている。
【0016】
この構成では、第1スパイラル電極、第2スパイラル電極、および接続電極の一体構造を容易に成型できる。
【0017】
(6)また、この発明のインダクタのコイル電極部には、第1突起電極および第2突起電極と同一方向に延びる形状の更なる突起電極が形成されている。
【0018】
この構成では、更なる突起電極を形成することで、インダクタの中間タップや、当該インダクタを実装する際の補助用の脚にも利用できる。
【0019】
(7)また、この発明のインダクタの第1突起電極、第2突起電極、および更なる突起電極の全ては、コイル電極部を金属板の打ち抜き加工により形成した場合に、更なる折り曲げ加工により形成されている。
【0020】
この構成では、更なる突起電極を容易に成型できる。
【0021】
(8)また、この発明のインダクタの少なくとも第1突起電極および第2突起電極を補強する補強材が磁性体層の外面に形成されている。
【0022】
この構成では、補強材を用いることで、第1突起電極および第2突起電極の強度を高めることができる。
【0023】
(9)また、この発明のインダクタの第1突起電極、第2突起電極、および更なる突起電極の全ては、打ち抜き加工と前記更なる折り曲げ加工との間に、非平面的形状となる異形加工が施されている。
【0024】
この構成では、各突起電極を非平面的形状に異形加工することで、これらの突起電極の厚みが薄くても、強度を高めることができる。
【0025】
(10)また、この発明のインダクタの磁性体層は、第1突起電極および第2突起電極と同一方向に突出する形状の磁性体突起部を備える。
【0026】
この構成では、当該インダクタを実装する際の脚となり得る部材を、磁性体により形成でき、当該磁性体を利用することで、強度の高い脚をより自由な形状で成型できる。
【0027】
(11)また、この発明のインダクタの磁性体層の第1突起電極および第2突起電極が露出する面と反対側の面は、平坦に形成されている。
【0028】
この構成では、当該インダクタを実装回路基板上に実装する際に、実装面と反対側の面が平坦であるので、マウンタのピックアップノズルに吸着させやすい。
【0029】
(12)また、この発明は、インダクタと実装回路基板とからなるDC−DCコンバータに関するものである。インダクタは、コイル電極部と磁性体層とを備える。コイル電極部は、螺旋状に形成された第1スパイラル電極と、該第1スパイラル電極と同一平面上に第1スパイラル電極と同方向に巻回される螺旋状に形成された第2スパイラル電極と、該第2スパイラル電極の外周端と第1スパイラル電極外周端とを接続する接続電極と、第1スパイラル電極の内周端に形成された平面に略直交する方向に延びる第1突起電極および第2スパイラル電極の内周端に形成された平面に略直交する方向に延びる第2突起電極と、を有する。コイル電極は、第1突起電極および第2突起電極を両端電極とし、磁性体層は、該コイル電極部を挟持し第1突起電極および第2突起電極が外部へ露出するように形成されている。そして、インダクタは、平面に沿って広がりを有し、平面に直交する厚み方向に薄い平板状からなる。実装回路基板は、DC−DCコンバータを構成するための回路パターンが形成され、該回路パターンの所定ランドに少なくともキャパシタとスイッチ素子とを含む複数の電子部品が実装されている。そして、平板状のインダクタは、実装回路基板の実装面側に、複数の電子部品の少なくとも一部を覆うように配置され、回路パターンの出力インダクタが接続されるべきランドに、第1突起電極および第2突起電極が接続されている。
【0030】
この構成では、平板状で低背化されたインダクタが実装回路基板上に配置される2層構造になることで、DC−DCコンバータを省スペース化且つ低背化できる。
【0031】
(13)また、この発明のDC−DCコンバータのインダクタの磁性体層は、磁性体粉と絶縁性樹脂とを混練して形成されている。
【0032】
この構成では、磁性体層の抵抗率を容易に高くすることができ、絶縁層の無い低背化されたインダクタを容易に実現できる。これにより、DC−DCコンバータの低背化も容易に実現できる。
【0033】
(14)また、この発明のDC−DCコンバータの平板状のインダクタの磁性体層は、第1スパイラル電極、第2スパイラル電極、および接続電極を平面に直交する方向から挟み込む第1磁性体層と第2磁性体層とからなる。第1磁性体層には、突起電極が挿通する貫通孔が形成され、第2磁性体層には、第1スパイラル電極、第2スパイラル電極、および接続電極が収納される凹部が形成されている。
【0034】
この構成では、DC−DCコンバータにおけるインダクタの具体的構成を示しており、コイル電極の第1突起電極および第2突起電極を除く部分が、完全に第1磁性体層および第2磁性体層で内包される構造を実現できる。これにより、インダクタの特性を向上することができ、ひいてはDC−DCコンバータの特性も向上することができる。
【0035】
(15)また、この発明のDC−DCコンバータの平板状のインダクタの第2磁性体層は、第1スパイラル電極および第2スパイラル電極の巻回の中央領域において第1磁性体層に当接または近接する高さの凸部を備える。該凸部と、該凸部の平面領域を第1磁性体層の厚み方向の全長に亘って仮想的に伸延させた第1の立体領域と、凸部の平面領域を当該凸部を除き第2磁性体層の厚み方向の全長に亘って仮想的に伸延させた第2の立体領域と、からなる領域を中央の立体領域とする。そして、第1スパイラル電極もしくは第2スパイラル電極に対応して、該中央の立体領域において第1磁性体層および凸部を除く第2磁性体層を横断する厚み方向に平行な側面の面積Svと、中央の立体領域の第1もしくは第2スパイラル電極の厚み方向の中央断面に沿った断面の面積Shとが、0.1<Sv/Sh<0.65となるように形成されている。
【0036】
この構成では、DC−DCコンバータの平板状インダクタの形状をより具体的に示したものであり、このような寸法設定の構造とすることで、低背でありながら磁気飽和が生じにくい構造を、より効果的に実現できる
(16)また、この発明のDC−DCコンバータの平板状のインダクタのコイル電極部には、第1突起電極および第2突起電極と同一方向に延びる形状の更なる突起電極が形成されており、更なる突起電極の少なくとも1個は、実装回路基板の回路パターンにおける出力インダクタの中間タップとなる位置に接続されている。
【0037】
この構成では、中間タップを有するインダクタを容易に形成することができるので、例えば、DC−DCコンバータを並列接続するような構成の場合に、中間タップにより分割された各インダクタをそれぞれのDC−DCコンバータに割り当てる構成を、低背且つ省スペースで実現できる。
【0038】
(17)また、この発明のDC−DCコンバータの平板状のインダクタのコイル電極部には、第1突起電極および第2突起電極と同一方向に延びる形状の更なる突起電極が形成されており、これら更なる突起電極は、平板状のインダクタと実装回路基板との距離と略同じ長さで形成され、実装回路基板の浮き電極に接続されている。
【0039】
この構成では、インダクタと他の回路とを電気的に接続する第1突起電極および第2突起電極以外の突起電極を、インダクタと実装回路基板とを所定間隔に保持する脚として利用できる。これにより、第1突起電極および第2突起電極のみからなる構造よりも、DC−DCコンバータの強度を高くすることができる。
【0040】
(18)また、この発明のDC−DCコンバータの平板状のインダクタの磁性体層は、第1突起電極および第2突起電極と同一方向に突出する形状で、且つ平板状のインダクタと実装回路基板との距離と略同じ長さからなる磁性体突起部を備える。
【0041】
この構成では、インダクタと実装回路基板とを所定間隔に保持する脚として磁性体突起部を利用できる。これにより、DC−DCコンバータの強度を高くすることができる。さらに、磁性体を利用した突起部であるので、上述の突起電極を用いた場合よりも、形状および設置位置の自由度が高くなり、必要な強度を得やすい。
【0042】
(19)また、この発明のDC−DCコンバータの平板状のインダクタと実装回路基板との間には、樹脂が充填されている。
【0043】
この構成では、インダクタと実装回路基板とを所定間隔に保持する脚として、充填した樹脂を利用できる。これにより、DC−DCコンバータの強度を高くすることができる。また、実装回路基板上の電子部品や電極パターンが樹脂により保護され、信頼性が向上する。
【0044】
(20)また、この発明のDC−DCコンバータは、当該DC−DCコンバータが実装されるマザー基板に対して、該マザー基板側から実装回路基板、平板状のインダクタの順に配置され、実装回路基板にマザー基板に対する接続手段を備える。
【0045】
この構成では、2層構造のDC−DCコンバータの具体的形状を示している。ここでは、マザー基板に対して、実装回路基板、平板状のインダクタの順で配置される。
【0046】
(21)また、この発明のDC−DCコンバータは、当該DC−DCコンバータが実装されるマザー基板に対して、該マザー基板側から平板状のインダクタ、実装回路基板の順に配置され、平板状のインダクタの側面に実装回路基板をマザー基板に接続する接続手段を備える。
【0047】
この構成では、2層構造のDC−DCコンバータの具体的形状を示している。ここでは、マザー基板に対して、平板状のインダクタ、実装回路基板の順で配置される。この場合、実装回路基板とマザー基板とがインダクタにより離間するが、インダクタの側面に接続手段を設けることで、これら実装回路基板とマザー基板とが接続されDC−DCコンバータとして機能する。
【0048】
(22)また、この発明のDC−DCコンバータは、当該DC−DCコンバータが実装されるマザー基板に対して、該マザー基板側から平板状のインダクタ、実装回路基板の順に配置されるとともに、マザー基板に投影される実装回路基板の面積が平板状のインダクタの面積よりも広い形状からなる。そして、平板状のインダクタを間に介さない領域に実装回路基板をマザー基板に接続する接続手段を備える。
【0049】
この構成でも、2層構造のDC−DCコンバータの具体的形状を示している。ここでも、マザー基板に対して、平板状のインダクタ、実装回路基板の順で配置される。ただし、この場合、実装回路基板がインダクタよりも広いので、インダクタの配置されていない領域に、実装回路基板とマザー基板とを接続する機構が設けられている。この機構でも、実装回路基板とマザー基板とが接続されDC−DCコンバータとして機能する。
【発明の効果】
【0050】
この発明によれば、磁気飽和し難く直流重畳特性に優れる簡素な構造で低背のインダクタを実現することができる。また、この発明によれば、負荷変動が大きく、負荷電流が大きくなるような状況になっても特性劣化しない小型で低背のDC−DCコンバータを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1の実施形態のインダクタ1の外観斜視図、および、インダクタ1の分解斜視図である。
【図2】第1の実施形態のインダクタ1におけるコイル電極部10の平面図および側面図と、第1磁性体層11の平面図および側面図と、第2磁性体層12の平面図および側面図である。
【図3】第1の実施形態のインダクタ1から発生する磁界の様子を模式的に示した側面断面図である。
【図4】中央立体領域の寸法の定義を説明するための図である。
【図5】中央立体領域の寸法設定によるインダクタとしての特性変化を示す図である。
【図6】第1の実施形態の他の構成からなるインダクタの例を示す外観斜視図である。
【図7】第2の実施形態のインダクタ1Dの外観斜視図およびコイル電極10Bの外観斜視図である。
【図8】第3の実施形態のDC−DCコンバータの等価回路図である。
【図9】第3の実施形態のDC−DCコンバータの機構的構成を模式的に示す側面図である。
【図10】第3の実施形態のDC−DCコンバータの機構的構成を模式的に示す側面図である。
【図11】第4の実施形態のDC−DCコンバータの機構的構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の第1の実施形態に係るインダクタについて、図を参照して説明する。
図1(A)は本実施形態のインダクタ1の外観斜視図であり、図1(B)はインダクタ1の分解斜視図である。
図2(A)はコイル電極部10の平面図であり、図2(B)はコイル電極部10の側面図である。図2(C)は第1磁性体層11の平面図であり、図2(D)は第1磁性体層11の側面図である。図2(E)は第2磁性体層12の平面図であり、図2(F)は第2磁性体層12の側面図である。
図3は、本実施形態のインダクタ1から発生する磁界の様子を模式的に示した側面断面図である。なお、図3において太線の二点鎖線がインダクタ1で発生する磁界の一部を模式的に示している。
【0053】
インダクタ1は、図1に示すように、平板状のコイル電極部10と、当該コイル電極部10を囲む磁性体を構成する第1磁性体層11および第2磁性体層12と、を備える。コイル電極部10の殆どの部分は、当該コイル電極部10の平板面に直交する方向の両側から第1磁性体層11と第2磁性体層12とで挟持されているが、コイル電極10の第1突起電極103および第2突出電極104は、第1磁性体層11から所定長だけ突出している。そして、これら第1突起電極103および第2突出電極104は、インダクタ1の両端電極として機能する。
【0054】
コイル電極部10は、同一の平面上においてそれぞれに異なる領域で巻回された第1スパイラル電極101と第2スパイラル電極102とを有する。第1スパイラル電極101と第2スパイラル電極102とは、巻回方向が同じである。例えば、本実施形態の場合であれば、第1スパイラル電極101は、内周端を始点とし、外周端を終点として第1磁性体層11側から見れば、反時計回りに巻回する形状であり、これに連続する形状となる第2スパイラル電極102は、外周端を始点とし、内周端を終点として第1磁性体層11側から見れば、反時計回りに巻回する形状である。
【0055】
これら第1スパイラル電極101の外周端と第2スパイラル電極102の外周端とは、所定の距離間隔で近接した位置にあり、外周端同士とは、接続電極105により接続されている。一方、第1スパイラル電極101の内周端には、当該第1スパイラル電極101の形成される平面に直交する方向に延びる形状の第1突起電極103が形成されている。また、第2スパイラル電極102の内周端には、第1突起電極104と平行に延びる形状からなる第2突起電極104が形成されている。これら第1突起電極103、第2突起電極104の長さは、第1磁性体層11の厚みよりも長く、且つ、後述するDC−DCコンバータに実装する際に、実装用回路基板との接続が可能な長さに設定されている。
【0056】
コイル電極部10を構成するこれらの第1スパイラル電極101、第2スパイラル電極102、第1突起電極103、第2突起電極104、および接続電極105は、一体成形されている。具体的な成形方法としては、所定厚み(例えば、0.2mm程度)からなる銅板等の金属板を、上記全ての部位が一体化した状態で打ち抜き加工した後に、第1突起電極103および第2突起電極104に対応する部位を折り曲げ加工する方法を用いている。このような金属板の打ち抜き加工と折り曲げ加工とを用いることで、コイル電極部10を簡素な工程で容易に形成することができる。
【0057】
第1磁性体層11は、所定厚み(例えば、0.4mm〜0.6mm程度)の平板形状からなり、コイル電極部10の第1突起電極103および第2突起電極104を挿通させるための貫通孔113,114が形成されている。
【0058】
第2磁性体層12も、同じく所定厚み(例えば、0.4mm〜0.6mm程度、望ましくは凹部121底面に対応する領域の厚みが第1磁性体層の厚みに等しい)の平板形状からなり、コイル電極部10の第1スパイラル電極101、第2スパイラル電極102および接続電極105を収納する凹部121が形成されている。この凹部121は、第1スパイラル電極101、第2スパイラル電極102および接続電極105の厚みと略同じで且つこれらが完全に収納される深さに形成されている。
【0059】
そして、第1スパイラル電極101、第2スパイラル電極102の巻回の中央領域には、第2磁性体層12の周辺部が第1磁性体層11に当接した際に、当該第1磁性体層11に当接するか近接する高さの凸部122が形成されている。なお、本実施形態では、第1スパイラル電極101、第2スパイラル電極102および凸部122の形状を直方体とした場合を示したが、直方体の側壁稜線を角面取りやR面取りした形状や、円柱形、楕円柱形、さらには平面断面が多角形の柱状体であってもよい。
【0060】
このような構造の第1磁性体層11と第2磁性体層12とで、第1スパイラル電極101、第2スパイラル電極102、および接続電極105を挟持することで、側面を含め、第1スパイラル電極101、第2スパイラル電極102および接続電極105を、第1磁性体層11および第2磁性体層12で、完全に内包することができる。これにより、単に平板状の磁性体層同士で挟持するよりも、優れた特性のインダクタを構成することができる。
【0061】
第1磁性体層11と第2磁性体層12は、フェライト系、ダスト系、メタル系等のうちの抵抗率が高い磁性材料が用いられており、例えば、抵抗率が約10Ω・m以上の磁性体材料が用いられている。このような高抵抗率の材質を用いて第1磁性体層11および第2磁性体層12を形成することで、従来技術に示した通常のインダクタのように、第1磁性体層11とコイル電極部10との間、および第2磁性体層12とコイル電極部10との間に絶縁層を挿入する必要がなくなる。したがって、これら2個の絶縁層の厚み分を低背化させることができ、従来よりも低背のインダクタを構成することができる。
【0062】
さらに、上述のように第1スパイラル電極101と第2スパイラル電極102とを、同一平面の異なる位置に同じ巻回方向で形成していることで、図3に示すように、第1スパイラル電極101と第2スパイラル電極102とのそれぞれが発生する磁界は結合せず、互いに強めあわない。このため、大電流が流れたとしても、発生する磁界は、2つの電極の磁界が結合する場合よりも弱く抑えることができる。このため、磁性体層を厚くしなくても、磁気飽和し難い。したがって、磁性体層の厚みを薄くしながらも優れた直流重畳特性を得られる。すなわち、直流重畳特性に優れる低背のインダクタを構成することができる。
【0063】
また、上述のような構成でインダクタ1を形成し、第1突起電極103、第2突起電極104側を実装回路基板側として実装する場合、第2磁性体層12の表面は平坦であるので、実装時にピックアップノズルで吸着しやすく、特に別部材を用いることなく、実装作業性に優れるインダクタを構成することができる。
【0064】
また、このような構成のインダクタ1は、第1スパイラル電極101、第2スパイラル電極102に囲まれる凸部122を含む所定立体領域の寸法を、次に示すように設定することがより望ましい。図4(A)は当該立体領域の寸法の定義を説明するための平面図および直交する二側面方向から見た断面図であり、図4(B)は、図4(A)のA−A’断面を拡大した図であり、図4(C)は、図4(A)のB−B’断面を拡大した図である。また、図5は、立体領域の寸法設定によるインダクタとしての特性変化を示す図である。
【0065】
図4に示すように、凸部122を含む立体領域は、第2磁性体層12の凸部122と、当該凸部122の平面領域を第1磁性体層11の厚み方向の全長に亘り仮想的に伸延させた第1の立体領域110Brと、凸部122の平面領域を、該凸部122を除き第2磁性体層12の厚み方向の全長に亘り仮想的に伸延させた第2の立体領域120Brと、から構成される。ここで、例えば、凸部122が直方体である場合、面積Svは、第1磁性体層11においては、第1磁性体層11の第1の立体領域110Brの厚み方向に平行な周辺面の側面積(Svs(110),Svt(110))とした時、Sv(110)=2×(Svs(110)+Svt(110))で表される。同様に、第2磁性体層12においては、第2磁性体層の第2の立体領域120Brの厚み方向に平行な周辺面の側面積(Svs(120),Svt(120))とした時、Sv(120)=2×(Svs(120)+Svt(120))で表される。そして、この凸部122の第1スパイラル電極101もしくは第2スパイラル電極102の厚み方向の中央断面に沿った断面の面積Sh(図4(A)における実線型斜線のハッチング部)と、面積Sv(110)および面積Sv(120)とを所定の比率で設定する。
【0066】
具体的に、この比率は、0.1<Sv(110)/Sh<0.65、および、0.1<Sv(120)/Sh<0.65で設定される。これは、Sv/Shが0.1より小さければ、図5に示すように磁束密度が上昇して部分的な磁気飽和を発生する可能性が高いからであり、Sv/Shが0.65より大きければ、図5に示すように、側面積Svを増やす、すなわちインダクタ1の厚みを増加させても磁束密度低減効果が飽和するからである。また、本実施形態では、凸部122が第1磁性体層11に当接する例を示したが、当接しない場合にも同様の設定を行うことができる。
【0067】
なお、本実施形態では、平板状の第1突起電極103および第2突起電極104をそのままインダクタ1の両端電極にする例を示したが、上述のように実装回路基板へ実装する場合には、図6に示すような構造により、当該第1突起電極103および第2突起電極104を補強することで、実装時および実装後の接続部の強度を得ることができる。
【0068】
図6は本実施形態の他の構成からなるインダクタの例を示す図である。図6(A)は補強材13を用いる例であり、図6(B)は第1突起電極および第2突起電極の形状を立体的(非平面的)に変更した例であり、図6(C)は磁性体突起部115を用いる例である。
【0069】
図6(A)に示すインダクタ1Aは、第1突起電極103および第2突起電極104が第1磁性体層11から突出する位置で補強材13により補強された構造を有する。他の構成は、図1に示したインダクタ1と同じである。補強材13は、絶縁性樹脂等の絶縁性を有する素材を用いる。このような構造とすることで、単に第1突起電極113、第2突起電極114の強度に、補強材13の強度が加えられるので、機械的強度を高めることができる。
【0070】
図6(B)に示すインダクタ1Bは、第1突起電極103A、第2突起電極104Aが、単なる平板形状ではなく、幅方向の中間で屈曲する非平面的な形状からなる。第1突起電極103A、第2突起電極104Aは、第1スパイラル電極101および第2スパイラル電極102に接続する位置から、屈曲する形状に形成されている。この屈曲形状は、例えば、第1突起電極103Aおよび第2突起電極104Aを折り曲げ加工により形成する前に、平板面に屈曲形状に相当する窪みをプレス等により形成しておけば、容易に成形することができる。このような第1突起電極103A、第2突起電極104Aの形状の場合、第1磁性体層11には、平面視して孔の長手方向の中間で屈曲する略長方形の断面を有する貫通孔113A,114Aが形成されている。このような平板の幅方向において屈曲形状の第1突起電極103A、第2突起電極104Aとすることで、単に平板形状の第1突起電極103、第2突起電極104よりも機械的強度を高めることができる。なお、図6(B)に示す立体的屈曲形状は一例であり、平板を幅方向へ屈曲させる等の非平面的な構造であれば、他の形状であってもよい。
【0071】
図6(C)に示すインダクタ1Cは、第1突起電極103、第2突起電極104の突出部分の長さと略同じ長さを有する複数の磁性体突起部115が第1磁性体層11の第1突起電極103、第2突起電極104が突出する側の表面に形成されている。磁性体突起部115は、第1磁性体層11の表面に、インダクタ1Cが実装回路基板上に実装された際に第1突起電極103、第2突起電極104に係る力を代替的に受けられるように配置されている。例えば、図6(C)の例であれば、第1磁性体層11の第1突起電極103、第2突起電極104に近い側の側辺の中央近傍位置と、第1突起電極103、第2突起電極104から遠い側の側辺の両端近傍位置に配置されている。これら磁性体突起部115は、第1磁性体層11と同じ材質構成からなり、第1磁性体層11と一体成形されている。このような一体成形を用いれば、個別に成型しても同様の構造が実現できるものの、より簡素な工程で成形することができる。そして、このような構成とすることで、第1突起電極103、第2突起電極104に係る力が磁性体突起部115へ分散され、機械的強度を高めることができる。なお、図6(C)に示す磁性体突起部115の形状、形成位置および形成個数は一例であり、実装回路基板への実装仕様に応じて適宜設定すればよい。
【0072】
次に、第2の実施形態に係るインダクタについて図を参照にして説明する。
図7(A)は、本実施形態のインダクタ1Dの外観斜視図であり、図7(B)は本実施形態のインダクタ1Dに用いられるコイル電極10Bの外観斜視図である。
【0073】
本実施形態のインダクタ1Dは、第1の実施形態の図1に示したインダクタ1に対して、コイル電極部10Bに、更なる突起電極106A〜106Dが形成されたものである。突起電極106A〜106Dは、第1スパイラル電極101、第2スパイラル電極102および接続電極105における第1突起電極103および第2突起電極104とは、異なる位置に形成されている。また、突起電極106A〜106Dは、第1突起電極113、第2突起電極114と略同じ幅および略同じ長さで形成されている。このようなコイル電極部10Bに対して、第1磁性体層11Cには、突起電極106A〜106Dに対応する位置に貫通孔116A〜116Dが形成されている。
【0074】
このような構造とすることで、当該インダクタ1Dを実装する際に、各突起電極106A〜106Dを実装回路基板の浮き電極に接合すれば、第1突起電極103や第2突起電極104と平行する補強材として利用することができる。これにより、インダクタ1Dの実装状態で機械的強度を高くすることができる。また、各突起電極106A〜106Dの所定の少なくとも1個を、実装回路基板の所定の回路位置に接続することで、インダクタ1Dの中間タップ電極として利用することもできる。中間タップ電極として使用する場合としては、例えば複数のDC−DCコンバータを並列接続して用いる場合に、当該中間タップ電極により分割される各インダクタを、それぞれのDC−DCコンバータの出力インダクタに割り当てることができ、並列接続される各DC−DCコンバータの出力を常時同じにすることができる。このように、本実施形態の構成を用いれば、より使用用途の広いインダクタを形成することができる。
【0075】
そして、これら突起電極106A〜106Dは、第1スパイラル電極101や第2スパイラル電極102の最外周辺や最内周辺に形成することで、第1突起電極103や第2突起電極104と同様に、単純な折り曲げ加工により成形することができる。
【0076】
なお、図7に示す突起電極106A〜106Dの形成位置、形成個数は一例であり、これらは仕様に応じて適宜設定すればよい。
【0077】
次に、第3の実施形態に係るDC−DCコンバータについて、図を参照して説明する。
【0078】
図8は、本実施形態のDC−DCコンバータの等価回路図であり、ここでは、図8(A)〜図8(C)の三種類を例に示しているが、他の構成であってもよい。
【0079】
図8(A)のDC−DCコンバータは、出力電流値に応じてスイッチング制御を行う非絶縁型の降圧コンバータであり、スイッチ具素子Q1,Q2、出力インダクタLo、平滑用キャパシタCo、出力電流検出用の抵抗素子R1,R2、制御ICを有する。
【0080】
図8(B)のDC−DCコンバータは、出力電流値のみでなく出力インダクタLoの電流検出結果を用いてスイッチング制御を行う非絶縁型の降圧コンバータであり、図8(A)の構成に加えて、出力インダクタLoの電流値を検出するための抵抗器RD、オペアンプOPを有する。
【0081】
図8(C)のDC−DCコンバータは、出力電流のみでなく出力インダクタLoの電流検出結果を用いてスイッチング制御を行う非絶縁型の降圧コンバータであり、図8(A)の構成に加えて、出力インダクタLoの電流値を取得するための抵抗器RD1とキャパシタCD1との直列回路、およびキャパシタCD2と抵抗器RD2との直列回路を有する。
【0082】
これらのようなDC−DCコンバータにおいて、出力インダクタLoが上述の第1実施形態や第2実施形態で示したインダクタにより実現される。そして、他の回路素子および回路パターンが、後述する実装回路基板上に形成された電極パターンおよび実装される実装電子部品SMDにより実現される。このような構成を用いれば、特に、POL(Point of Load)に利用されるDC−DCコンバータの場合、負荷電流が急激に増減し、且つ小型で低背化が要求されるので、以下に示す本実施形態の構成は、より一層有効である。
【0083】
次に、具体的なDC−DCコンバータの機構的構成について示す。図9(A)〜(C)および図10(A),(B)は、本実施形態のDC−DCコンバータの機構的構成を模式的に示す側面図である。
これらのDC−DCコンバータM1〜M5は、基本構造として、2層構造からなり、図示しないマザー基板に、上述の各回路素子が実装された実装回路基板が実装され、当該実装回路基板上に出力インダクタLoとなるインダクタが配置される構造からなる。
【0084】
図9(A)のDC−DCコンバータM1は、上述の実施形態で示した突起電極106(106A〜106D)を有するインダクタ1Dと、実装回路基板20とを備える。実装回路基板20には、図8(A)〜図8(C)のいずれかを構成するための回路パターンが形成されており、実装面には、接続用ランド電極21、実装用ランド電極22が形成されている。各実装用ランド電極22には、図8(A)〜図8(C)のいずれかを構成する回路素子SMD1〜SMD4が実装されている。また、各接続用ランド電極21には、インダクタ1Dの第1突起電極103および第2突起電極104のそれぞれが接続されている。また、各突起電極106は、図示しない浮き電極に接合されている。このような構成では、第1突起電極103、第2突起電極104、突起電極106がインダクタ1Dを実装回路基板20上の所定位置に支持するための脚として機能する。
【0085】
このような2層構造を用いることで、従来のディスクリート型のインダクタを実装回路基板20の実装面に直接設置して実装するよりも、DC−DCコンバータのマザー基板に対する平面面積を小さくし、省スペース化することができる。さらに、上述の低背化されたインダクタを用いることで、2層構造でありながらもDC−DCコンバータを低背に形成することができる。
【0086】
図9(B)のDC−DCコンバータM2は、上述の実施形態で示した磁性体突起部115を有するインダクタ1Cと実装回路基板20とを備える。実装回路基板20の構成は、図9(A)と基本的に同じであるが、DC−DCコンバータM2は、磁性体突起部115が実装回路基板20の実装面に当接する構造からなり、当該磁性体突起部115をインダクタ1Cの支持のための脚として用いている。このような構成であっても、省スペースで低背のDC−DCコンバータを形成することができる。さらに、磁性体突起部115の延びる方向に垂直な断面積を大きくすることで、より高い機械的強度を得ることができる。
【0087】
図9(C)のDC−DCコンバータM3は、上述の実施形態で示した基本構成のインダクタ1と実装回路基板20とを備える。実装回路基板20の構成は、図9(A)と同じであるが、DC−DCコンバータM3は、インダクタ1の下部すなわち第1磁性体層11の表面に補強脚30を配置している。この補強脚30は絶縁性材料で所定の機械的強度を有する材料が用いられており、上述の磁性体突起部115と同様に機能を果たす。このような構成であっても、省スペースで低背のDC−DCコンバータを形成することができる。さらに、補強脚30の延びる方向に垂直な断面積を大きくすることで、より高い機械的強度を得ることができる。
【0088】
図10(A)のDC−DCコンバータM4は、図9(C)のDC−DCコンバータM3と同様に、上述の最も単純な構成のインダクタ1と実装回路基板20とを備える。実装回路基板20の基本的構成は、図9(A)と同じであるが、実装回路基板20の実装面上に、第1突起電極103および第2突起電極104の突出部分の長さに準じた誘電体の支持部材25が形成されている。このような構成であっても、省スペースで低背のDC−DCコンバータを形成することができる。さらに、支持部材25の延びる方向に垂直な断面積を大きくすることで、より高い機械的強度を得ることができる。
【0089】
図10(B)のDC−DCコンバータM5は、図9(A)のDC−DCコンバータM1に対して、インダクタ1Dと実装回路基板20との間に絶縁性樹脂等からなるアンダーフィル40を充填させた構成を有する。このような構成であっても、省スペースで低背のDC−DCコンバータを形成することができ、アンダーフィル40により機械的強度を高くすることができる。さらに、アンダーフィル40により、第1突起電極103、第2突起電極104、突起電極106、および回路素子SMD1〜SMD4を外的に保護できるので、より信頼性の高いDC−DCコンバータを形成することができる。
【0090】
なお、これら図9(A)〜(C)、図10(A),(B)の構成は一例であり、これらの構成を適宜組み合わせ、DC−DCコンバータを形成してもよい。
【0091】
次に、第4の実施形態に係るDC−DCコンバータについて図を参照して説明する。
図11は本実施形態のDC−DCコンバータの機構的構成を模式的に示す側面図である。
【0092】
これらのDC−DCコンバータM1R,M2Rも、基本構造として2層構造からなるが、図9、図10のDC−DCコンバータと異なり、マザー基板にインダクタ1が配置され、当該インダクタ1上に、各回路素子が実装された実装回路基板が配置される構造を有する。
【0093】
図11(A)のDC−DCコンバータM1Rは、マザー基板200上に、上述のインダクタ1が配置される。この際、インダクタ1は、平坦面である第2磁性体層12側がマザー基板200に当接するように配置される。このインダクタ1の第1磁性体層11側の表面には、実装回路基板20が配置される。この際、実装回路基板20は、各回路素子が実装される実装面と反対側の面がインダクタ1の第1磁性体層11に当接するように配置される。実装回路基板20の各回路素子SMD1〜SMD4の実装構成は、上述の図9、図10に示した実装回路基板20と同じであるが、図11(A)の実装回路基板20には、インダクタ1の第1突起電極103および第2突起電極104が、実装面側に露出するための貫通孔(図示せず)が形成されており、当該貫通孔を介して、実装面側の接続用ランド電極21に第1突起電極103および第2突起電極104が接続されている。また、インダクタ1の側面には、図示しない配線電極が形成されており、当該配線電極を介して、実装回路基板20とマザー基板200とが電気的に接続されている。このような構成であっても、省スペースで低背のDC−DCコンバータを形成することができる。
【0094】
図11(B)のDC−DCコンバータM2Rは、図11(A)のDC−DCコンバータM1Rと同様に、マザー基板200上にインダクタ1が直接配置されている。そして、DC−DCコンバータM2Rでは、インダクタ1上に配置される実装回路基板20Aが、インダクタ1から所定距離離間され、且つ実装面がインダクタ1側を向くように配置されている。また、実装回路基板20Aは、平面視した面積が、インダクタ1よりも広く形成されている。インダクタ1と実装回路基板20Aとの電気的な接続や支持構造は上述の図9(A)の構造を天地反転した構造からなり、第1突起電極103および第2突起電極104を接続用ランド電極21に接合することで電気的な接続を実現し、第1突起電極103、第2突起電極104、誘電体の支持部材25により実装回路基板20Aの支持機構を実現している。そして、図11(B)に示すように、実装回路基板20Aがインダクタ1よりも広ければ、インダクタ1を介さない領域における実装回路基板20Aの接続用ランド電極21Tとマザー基板200の接続用ランド電極203とを、導電支柱部材211で接続することで、実装回路基板20Aとマザー基板200との電気的接続を実現している。このような構成であっても、省スペースで低背のDC−DCコンバータを形成することができる。
【0095】
なお、図11(A),(B)に示す構成も一例であり、これらの構成を適宜組み合わせて、DC−DCコンバータを形成してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1,1A〜1D−インダクタ素子、10,10A,10B−コイル電極部、11,11A〜11C−第1磁性体層、12−第2磁性体層、13−補強材、101−第1スパイラル電極、102−第2スパイラル電極、103,104,106,106A〜106D−突起電極、105−接続電極、110,120−磁性体、110Br,120Br−立体領域、113,114,116A〜116D−貫通孔、115−磁性体突起部、121−凹部、122−凸部、20−実装回路基板、21,21T,203−接続用ランド電極、22−実装用ランド電極、25−支持部材、30−補強脚、40−アンダーフィル、200−マザー基板、211−導電支柱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に形成された第1スパイラル電極と、
該第1スパイラル電極と同一平面上に前記第1スパイラル電極と同方向に巻回される螺旋状に形成された第2スパイラル電極と、
該第2スパイラル電極の外周端と前記第1スパイラル電極の外周端とを接続する接続電極と、
前記第1スパイラル電極の内周端に形成された前記平面に略直交する方向に延びる第1突起電極および前記第2スパイラル電極の内周端に形成された前記平面に略直交する方向に延びる第2突起電極と、を有し、
前記第1突起電極および第2突起電極を両端電極とするコイル電極部と、該コイル電極部を挟持し前記第1突起電極および第2突起電極が外部へ露出するように形成された磁性体層と、を備える、ことを特徴とするインダクタ。
【請求項2】
前記磁性体層は、磁性体粉と絶縁性樹脂とを混練して形成される請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記磁性体層は、前記第1スパイラル電極、前記第2スパイラル電極、および前記接続電極を前記平面に直交する方向から挟み込む第1磁性体層と第2磁性体層とからなり、
前記第1磁性体層には、前記突起電極が挿通する貫通孔が形成され、
前記第2磁性体層には、前記第1スパイラル電極、前記第2スパイラル電極、および前記接続電極が収納される凹部が形成されている、請求項1または請求項2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記第2磁性体層は、前記第1スパイラル電極および前記第2スパイラル電極の巻回の中央領域において前記第1磁性体層に当接もしくは近接する高さの凸部を備え、
該凸部と、該凸部の平面領域を前記第1磁性体層の厚み方向の全長に亘って仮想的に伸延させた第1の立体領域と、前記凸部の平面領域を該凸部を除き前記第2磁性体層の厚み方向の全長に亘って仮想的に伸延させた第2の立体領域と、からなる領域を中央の立体領域とし、
前記第1スパイラル電極もしくは前記第2スパイラル電極に対応して前記中央の立体領域における前記第1磁性体層もしくは前記凸部を除く前記第2磁性体層を横断する前記厚み方向に平行な側面の面積Svと、前記中央の立体領域の前記第1スパイラル電極もしくは前記第2スパイラル電極の厚み方向の中央断面に沿った断面の面積Shとが、0.1<Sv/Sh<0.65となるように形成されている、請求項3に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記第1スパイラル電極、前記第2スパイラル電極、および前記接続電極は、単一の金属板の打ち抜き加工により形成されている請求項1〜請求項4のいずれかに記載のインダクタ。
【請求項6】
前記コイル電極部には、前記第1突起電極および前記第2突起電極と同一方向に延びる形状の更なる突起電極が形成されている請求項1〜請求項5のいずれかに記載のインダクタ。
【請求項7】
前記第1突起電極、前記第2突起電極、および前記更なる突起電極の全ては、前記コイル電極部を金属板の打ち抜き加工により形成した場合に、更なる折り曲げ加工により形成される、請求項6に記載のインダクタ。
【請求項8】
少なくとも前記第1突起電極および前記第2突起電極を補強する補強材が前記磁性体層の外面に形成されている、請求項1〜請求項7のいずれかに記載のインダクタ。
【請求項9】
前記第1突起電極、前記第2突起電極、および前記更なる突起電極の全ては、前記打ち抜き加工と前記更なる折り曲げ加工との間に、非平面的形状となる異形加工が施されている、請求項7に記載のインダクタ。
【請求項10】
前記磁性体層は、前記第1突起電極および前記第2突起電極と同一方向に突出する形状の磁性体突起部を備える、請求項1〜請求項9のいずれかに記載のインダクタ。
【請求項11】
前記磁性体層の前記第1突起電極および第2突起電極が露出する面と反対側の面は、平坦に形成されている、請求項1〜請求項10のいずれかに記載のインダクタ。
【請求項12】
螺旋状に形成された第1スパイラル電極と、該第1スパイラル電極と同一平面上に前記第1スパイラル電極と同方向に巻回される螺旋状に形成された第2スパイラル電極と、該第2スパイラル電極の外周端と前記第1スパイラル電極の外周端とを接続する接続電極と、前記第1スパイラル電極の内周端に形成された前記平面に略直交する方向に延びる第1突起電極および前記第2スパイラル電極の内周端に形成された前記平面に略直交する方向に延びる第2突起電極と、を有し、前記第1突起電極および第2突起電極を両端電極とするコイル電極部と、該コイル電極部を挟持し前記第1突起電極および第2突起電極が外部へ露出するように形成された磁性体層と、を備える前記平面に沿って広がりを有し、前記平面に直交する厚み方向に薄い平板状のインダクタと、
DC−DCコンバータを構成するための回路パターンが形成され、該回路パターンの所定ランドに少なくともキャパシタとスイッチ素子とを含む複数の電子部品が実装された実装回路基板と、を備え、
前記平板状のインダクタは、該実装回路基板の実装面側に、前記複数の電子部品の少なくとも一部を覆うように配置され、前記回路パターンの出力インダクタが接続されるべきランドに、前記第1突起電極および第2突起電極が接続されている、
ことを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項13】
前記磁性体層は、磁性体粉と絶縁性樹脂とを混練して形成される請求項12に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項14】
前記平板状のインダクタの前記磁性体層は、前記第1スパイラル電極、前記第2スパイラル電極、および前記接続電極を前記平面に直交する方向から挟み込む第1磁性体層と第2磁性体層とからなり、
前記1磁性体層には、前記突起電極が挿通する貫通孔が形成され、
前記第2磁性体層には、前記第1スパイラル電極、前記第2スパイラル電極、および前記接続電極が収納される凹部が形成されている、請求項12または請求項13に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項15】
前記平板状のインダクタの第2磁性体層は、前記第1スパイラル電極および前記第2スパイラル電極の巻回の中央領域において前記第1磁性体層に当接もしくは近接する高さの凸部を備え、
該凸部と、該凸部の平面領域を前記第1磁性体層の厚み方向の全長に亘って仮想的に伸延させた第1の立体領域と、前記凸部の平面領域を該凸部を除き前記第2磁性体層の厚み方向の全長に亘って仮想的に伸延させた第2の立体領域と、からなる領域を中央の立体領域とし、
前記第1スパイラル電極もしくは前記第2スパイラル電極に対応して前記中央の立体領域における前記第1磁性体層もしくは前記凸部を除く前記第2磁性体層を横断する前記厚み方向に平行な側面の面積Svと、前記中央の立体領域の前記第1スパイラル電極もしくは前記第2スパイラル電極の厚み方向の中央断面に沿った断面の面積Shとが、0.1<Sv/Sh<0.65となるように形成されている、請求項14に記載のインダクタ。
【請求項16】
前記平板状のインダクタの前記コイル電極部には、前記第1突起電極および前記第2突起電極と同一方向に延びる形状の更なる突起電極が形成されており、
該更なる突起電極の少なくとも1個は、前記実装回路基板の前記回路パターンにおける前記出力インダクタの中間タップとなる位置に接続されている、
請求項12〜請求項15のいずれかに記載のDC−DCコンバータ。
【請求項17】
前記平板状のインダクタの前記コイル電極部には、前記第1突起電極および前記第2突起電極と同一方向に延びる形状の更なる突起電極が形成されており、
該更なる突起電極は、前記平板状のインダクタと前記実装回路基板との距離と略同じ長さで形成され、前記実装回路基板の浮き電極に接続されている、
請求項12〜請求項15のいずれかに記載のDC−DCコンバータ。
【請求項18】
前記平板状のインダクタの磁性体層は、前記第1突起電極および前記第2突起電極と同一方向に突出する形状で、且つ前記平板状のインダクタと前記実装回路基板との距離と略同じ長さからなる磁性体突起部を備える、請求項12〜請求項17のいずれかに記載のDC−DCコンバータ。
【請求項19】
前記平板状のインダクタと前記実装回路基板との間には、樹脂が充填されている、請求項12〜請求項18のいずれかに記載のDC−DCコンバータ。
【請求項20】
当該DC−DCコンバータが実装されるマザー基板に対して、該マザー基板側から前記実装回路基板、前記平板状のインダクタの順に配置され、前記実装回路基板に前記マザー基板に対する接続手段を備える、請求項12〜請求項18のいずれかに記載のDC−DCコンバータ。
【請求項21】
当該DC−DCコンバータが実装されるマザー基板に対して、該マザー基板側から前記平板状のインダクタ、前記実装回路基板の順に配置され、前記平板状のインダクタの側面に前記実装回路基板を前記マザー基板に接続する接続手段を備える、請求項12〜請求項19のいずれかに記載のDC−DCコンバータ。
【請求項22】
当該DC−DCコンバータが実装されるマザー基板に対して、該マザー基板側から前記平板状のインダクタ、前記実装回路基板の順に配置されるとともに、前記マザー基板に投影される前記実装回路基板の面積が前記平板状のインダクタの面積よりも広い形状からなり、
前記平板状のインダクタを間に介さない領域に前記実装回路基板を前記マザー基板に接続する接続手段を備える、請求項12〜請求項19のいずれかに記載のDC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−54585(P2011−54585A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199133(P2009−199133)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【出願人】(000221498)東大無線株式会社 (2)
【Fターム(参考)】