説明

インダクタンス素子

【課題】容易に製造可能な新たな構造のインダクタンス素子を提供すること。
【解決手段】インダクタンス素子14aは、トロイダル形状の磁気コア15をリング状の絶縁性ケース16に組み込んでなる組込体に対して被覆導線17,18を巻回して形成したインダクタンス主部を、キャパシタ形成用部品たるケース22aに対して部分的に収容することで構成される。ケース22aには導体23aが埋設されており、ケース22aにインダクタンス主部を部分的に収容することで、被覆導線17,18とケース22a及び導体23aはキャパシタを構成し、高周波動作において問題となる被覆導線17,18の線間容量をキャンセルすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として交流線(ACライン)等においてノイズフィルタとして用いられるインダクタンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタンス素子が高周波領域にて用いられる際にコイルの線間容量がノイズ抑制に与える悪影響を排除するために、磁気コアを接地すると共に接地された磁気コアに被覆導線を直接巻回することでコイルを形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
これに対して、被覆導線における被覆の耐電圧などを問題とし、接地導体を形成された磁気コア上に、誘電体及び近接導体を順に形成し、更にその上に被覆導線を巻回することにより、磁気コアと被覆導線とを離し、それによって信頼性を高めたものも提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−102426号公報
【特許文献2】特開2004−311866号公報
【特許文献3】特開2004−235709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、容易に製造可能であり、以って製造過程において不具合が生じる確率を下げることのできインダクタンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するための手段として、磁気コア及びコイルを有するインダクタンス主部と、導体を設けられた絶縁体からなり且つ該インダクタンス主部に近接配置されるキャパシタ形成用部品とを備えたインダクタンス素子を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、磁気コア及びコイルを有するインダクタンス主部に対して、予め導体を含むようにして形成された絶縁性のケースなどを取り付けるだけで、コイルを構成する被覆導線間に発生する線間容量をキャンセルしうるだけの大きな容量を有するキャパシタをインダクタンス主部に付加することができることから、製造過程において欠陥品が発生する確率を下げることができる。
【0008】
また、本発明は、導体により十分な容量を有するキャパシタをインダクタに対して負荷することができることから、インダクタンス素子単独でもフィルタを構成することができる。なお、このことは、本発明によるインダクタンス素子とキャパシタとを組み合わせてフィルタを構成することを制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。以下に説明する実施の形態におけるインダクタンス素子は、コモンモード用のものであり、被覆導線を2本備えて構成したものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、被覆導線を1本のみ用いたノーマルモード用のインダクタンス素子にも適用可能である。
【0010】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態によるインダクタンス素子は、インダクタンス主部をキャパシタ形成用部品に近接配置して構成されたものである。詳しくは、図1及び図2に示されるように、本実施の形態によるインダクタンス素子14aは、トロイダル形状の磁気コア15と、磁気コア15の外周表面を覆うリング状の絶縁性ケース16と、絶縁性ケース16に磁気コア15を組み込んでなる組込体に被覆導線17,18を巻回して形成したコイルとからなるインダクタンス主部を備えている。
【0011】
被覆導線17,18は、例えば、ウレタン線又はエナメル線からなる。尚、被覆導線17,18のリード部分は、実際には等間隔に引き出されるものであるが、図1においては、理解を容易にするために幾分間隔をずらして示してある。
【0012】
本実施の形態におけるキャパシタ形成用部品は、図1及び図2に示されるように、インダクタンス主部の下側半分を収容する絶縁体からなるケース22aである。このケース22aは、図3及び図4に示されるように、トロイダルコアの直径に沿って切断した場合の切断面が向かい合った2つのコの字形状を呈する主部22a1と、略半円筒形の残部22a2からなる。図1乃至図4から理解されるように、主部22a1には、寸法は小さいが主部22a1とほぼ同じような形状を有する導体23aが埋設されている。即ち、本実施の形態におけるキャパシタ形成用部品に設けられた導体23aは、インダクタンス主部のコイルを形成する被覆導線と直接接することはない。この導体23aからは、グランド端子21が引き出されており、実使用時において導体23aは接地されることとなる。
【0013】
ケース22aの主部22a1は、例えば、導体23aを内包させるようにして絶縁体をモールド成型することによって構成される。本実施の形態における導体23aは、銅からなるものであるが、銅に代えて、例えば、アルミニウム、銀若しくは金のいずれか、又はそれらの金属を含む合金からなるものであっても良い。
【0014】
導体23aは、絶縁体をモールド成型して得られるケース22aの主部22a1の内表面に箔状に形成することとしても良い。箔状導体は、例えば、メッキや蒸着、スパッタリングにより形成されても良いし、ケース22aの内表面上に導電性塗料を塗布することにより形成することとしても良い。
【0015】
このようなケース22aの収容部22a3にインダクタンス主部を収容することにより、本実施の形態におけるインダクタンス素子14aを得ることができる。このインダクタンス素子14aによれば、巻回した被覆導線17,18間に形成された線間容量をキャンセルしうるような大きな容量を有するキャパシタがインダクタンス主部に付加されることとなるので、高周波帯域においても良好な減衰特性を得ることができる。
【0016】
なお、導体23aを被覆導線17,18と相対させる個所や面積等は、被覆導線17,18の巻回数(ターン数),太さ,長さや、磁気コア15の大きさ,材料特性等により適宜変更することが可能である。
【0017】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、上述した第1の実施の形態と同様に、ケースタイプのキャパシタ形成部品に対してインダクタンス主部を収容してなるものである。インダクタンス主部の構成は、前述した第1の実施の形態と同じであるので、以下においては説明を省略することとし、主としてキャパシタ形成部品について説明する。
【0018】
本実施の形態におけるキャパシタ形成用部品は、図5乃至図7に示されるように、低背で底を有する円筒形状のケース22bである。このケース22bは、絶縁体からなるものであり、図7に示されるように、寸法は小さいがケース22bとほぼ同じような形状を有する導体23bが埋設されている。この導体23bからは、グランド端子21が引き出されており、実使用時において導体23bは接地されることとなる。
【0019】
本実施の形態によるケース22bは、導体23bを内包させるようにして絶縁体をモールド成型することによって構成される。本実施の形態における導体23bは、銅からなるものであるが、銅に代えて、例えば、アルミニウム、銀若しくは金のいずれか、又はそれらの金属を含む合金からなるものであっても良い。
【0020】
導体23bは、絶縁体をモールド成型して得られるケース22bの内表面に箔状に形成することとしても良い。箔状導体は、例えば、メッキや蒸着、スパッタリングにより形成されても良いし、ケース22bの内表面上に導電性塗料を塗布することにより形成することとしても良い。
【0021】
このようなケース22bの収容部22b3にインダクタンス主部を収容することにより、本実施の形態におけるインダクタンス素子14bを得ることができる。なお、導体23bを被覆導線17,18と相対させる個所や面積等は、被覆導線17,18の巻回数(ターン数),太さ,長さや、磁気コア15の大きさ,材料特性等により適宜変更することが可能である。
【0022】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態は、上述した第1及び第2の実施の形態とは異なり、ケースタイプではなく端子台タイプのキャパシタ形成部品に対してインダクタンス主部を収容してなるものである。インダクタンス主部の構成は、前述した第1の実施の形態と同じであるので、以下においては説明を省略することとし、主としてキャパシタ形成部品について説明する。
【0023】
本実施の形態におけるキャパシタ形成用部品は、図8及び図9に示されるように、所謂端子台22cを応用したものである。この端子台22cは、絶縁体からなるものであり、この端子台22cには、図8及び図9に点線で示されるように、導体23cが埋設されている。この導体23cからはグランド端子21が引き出されており、実使用時において導体23cは接地されることとなる。
【0024】
本実施の形態による端子台22cは、導体23cを内包させるようにして絶縁体をモールド成型することによって構成されるが、絶縁体をモールド成型して得られる端子台のインダクタンス主部を搭載する面の上に箔状の導体をメッキ等により形成することとしても良い。
【0025】
このような端子台22cにインダクタンス主部を搭載することにより、本実施の形態におけるインダクタンス素子14cを得ることができる。なお、導体23cを被覆導線17,18と相対させる個所や面積等は、被覆導線17,18の巻回数(ターン数),太さ,長さや、磁気コア15の大きさ,材料特性等により適宜変更することが可能である。
【0026】
また、かかる構成の端子台22cを前述の第1及び第2の実施の形態によるインダクタンス素子14a,14bと組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、例えば、ノイズフィルタやノイズフィルタを備えたスイッチング電源装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるインダクタンス素子を示す正面図である。
【図2】図1に示されるインダクタンス素子の側面図である。
【図3】図1に示されるインダクタンス素子のキャパシタ形成用部品の正面図である。
【図4】図3に示されるキャパシタ形成用部品の断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態によるインダクタンス素子を示す正面図である。
【図6】図5に示されるインダクタンス素子の側面図である。
【図7】図5に示されるインダクタンス素子のキャパシタ形成用部品の断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態によるインダクタンス素子を示す正面図である。
【図9】図8に示されるインダクタンス素子の側面図である。
【符号の説明】
【0029】
14a,14b,14c インダクタンス素子
15 磁気コア
16 絶縁性ケース
17,18 被覆導線
21 グランド端子
22a,22b ケース
22c 端子台
23a,23b,23c 導体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気コア及びコイルを有するインダクタンス主部と、導体を設けられた絶縁体からなり且つ該インダクタンス主部に近接配置されるキャパシタ形成用部品とを備えたインダクタンス素子。
【請求項2】
前記インダクタンス主部は、前記磁気コアの外周を覆う絶縁性ケースを備えており、前記コイルは、前記磁気コアを前記絶縁性ケースに組み込んでなる組込体に対して被覆導線を巻回してなる、請求項1記載のインダクタンス素子。
【請求項3】
前記キャパシタ形成用部品は、前記インダクタンス主部の一部分を覆う絶縁体からなるケースを備えており、前記導体は、該ケースに内包され又は当該ケースの内表面上に形成されている、請求項1又は請求項2記載のインダクタンス素子。
【請求項4】
前記キャパシタ形成用部品は、前記インダクタンス主部を搭載する前記絶縁体からなる端子台を備えており、前記導体は、該端子台に内包され又は当該端子台の前記インダクタンス主部を搭載する搭載面上に形成されている、請求項1又は請求項2記載のインダクタンス素子。
【請求項5】
前記導体は、銅、アルミニウム、銀若しくは金のいずれか又はそれらの金属を含む合金からなる、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインダクタンス素子。
【請求項6】
前記キャパシタ形成用部品は、前記導体に接続されたグランド端子を更に備えている、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインダクタンス素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のインダクタンス素子を備えたフィルタ回路。
【請求項8】
請求項7記載のフィルタ回路を備えたスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−98304(P2008−98304A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276883(P2006−276883)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】