説明

インナーパレット

【課題】 本発明は、高い密度で集積された薄板基板を、湾曲させた状態で損傷したり汚したりすることなく、安全に搬送および保管することができるパレットの提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、薄板基板1を湾曲させて収納する基板保持用枠体10を、多段に積層し載置するための湾曲形状保持部30と、移動搬送装置のための移動搬送装置対応部40を上下に固着した2層構造からなり、湾曲した湾曲形状保持部30の上面に固着した嵌合用枠体20の嵌合用金属枠部21の上面から内周下方向に傾斜して突出しているパレット側嵌合部22と、載置される基板保持用枠体10の金属枠部11の下面から内周下方向に傾斜して突出している第1嵌合部12との嵌め合わせにより、上記の課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性である矩形状(四角形状)の薄板基板を、同じく矩形状でより大きな外形の基板保持用枠体の内側に、該薄板基板を下方に湾曲させた状態で1枚ずつ載せ、その載せた状態の基板保持用枠体を多段に積み重ねして保管あるいは搬送する際に、最下段の枠体のさらに下段に挿入して、基板保持用枠体の多段積み重ね体内への塵埃等の混入を防止するとともに、安定した直立状態を維持する目的のパレットに関する。
【0002】
表示装置用で代表される基板は、薄層であって大サイズであることから、平面状態で保管することは困難であり、通常は中央部を下方にやや湾曲させた状態で保管される。また、表面に機能層を有することから、基板の相互面間を接触させてはならない問題がある。
さらに、輸送コストの節減や省スペース化の要求から高密度に集積して保管することが必要であり、搬送時または保管時における破損や割れから基板を保護し、塵埃の混入や汚染を防止することも要求される。
【0003】
なお、薄板基板の例としては薄板ガラス基板があり、特には、プラズマや液晶表示用のカラーフィルター、それらの中間製品、その他の各種基板等を挙げることができる。
本発明は、このように薄板基板を湾曲させて載置する基板保持用枠体を、多段に積み重ねてなる基板保持用枠体の積み重ね体を、荷崩れやガタツキの生じないように、安全に保管あるいは搬送するためのパレットに関するものである。
【背景技術】
【0004】
液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネル、それら表示装置に使用されるカラーフィルター等の薄板ガラス基板は、表面に機能層を備えた板状物である。その板状物の搬送および保管に際し、表面の機能層を損傷したり、汚したりすることなく搬送および保管することが重要である。このような板状物を搬送する際は、板状物表面の機能層を保護するため、表面同士や、表面と裏面間が接触しないように所定間隔で並列収納する必要がある。
【0005】
また、これら薄板ガラス基板であるカラーフィルターやその中間製品等は、表示装置自体が大型化していることや、小型の表示装置であってもコストダウンのため、多面付けによる製造方法が取り入れられ、大サイズの薄板ガラス基板が使用されている。
【0006】
カラーフィルター基板には、一定の剛性を有するガラス材料が使用されており、大サイズ化された薄板ガラス基板は、1メートル角程度サイズ以上のものでも、ガラス基板の厚さは0.5mmから1.0mm程度に過ぎない。このように薄く大サイズ化されたガラス基板を、従来使用されているような平面に載置した状態で搬送すると、搬送中の振動や衝撃により跳ね上がりの発生がより大きくなり表面の機能層は元より基板そのものを損傷する可能性がある。しかし、薄く大サイズ化されたガラス基板を湾曲させた状態で載置すると、ガラス基板自体が水平方向に戻ろうとする力に対して反発力が働くため、平面の場合よりは却って跳ね上がりが発生しにくくなる。よって、特に振動の多い搬送時においてこの搬送方法は有効である。
【0007】
ちなみに、第8世代といわれるガラス基板は、2200mm×2500mmのサイズ、第9世代は、2400mm×2800mmのサイズとなっている。
【0008】
薄板基板を、枠を使用し、湾曲状態で多段に積み重ねて搬送するものに特許文献1がある。この文献の図1に記載される載置台8は、湾曲形状にされているが、ガラス基板と接触しない構造や嵌合構造が記載されているようには見えない。
特許文献2の図9に記載されるパレットも湾曲形状面を有するが、同様にガラス基板と接触しない構造や嵌合構造が考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−168749号公報
【特許文献2】特開2009−234602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような中、近年、特に、液晶ディスプレイパネルにおいては、より大型のカラーフィルター形成基板の製造が要求されており、カラーフィルター基板やその中間工程基板の搬送、保管に対して、損傷したり汚したりすることなく、搬送効率向上と保管場所の省スペース化によるコスト低減が求められている。
【0011】
このようなガラス基板を嵩高にならないように、高い密度で集積して搬送・保管することは、搬送効率向上や保管スペースの節減のみだけではなく、取り扱い装置や搬送装置の大型嵩化を防ぎ、ひいては、資源の節減や製造コストの低減に寄与することになる。
【0012】
前述のように、薄板基板を撓み状態で枠体内に収めて集積することは、このような搬送・保管の目的に有効であるが、最下面が湾曲状になっているので、通常のように平面なパレットを使用することはできない。
【0013】
そこで本発明は、およそ総重量1.5トン以上となる高い密度で集積されたガラス基板の積み重ね体を、損傷したり汚したりすることなく、安全に搬送および保管すること、および湾曲面を有する薄板基板を通常のように扱い易くするインナーパレットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のインナーパレットは、以下の各態様に記載の手段により上記の課題を解決するものである。
【0015】
本発明の第1の態様は、矩形状の薄板基板を、左右の辺が平坦であって前後の辺が下方に湾曲している平面視矩形状の金属枠部と、該金属枠部の下面から内周下方向に傾斜して設けた嵌合部とからなる基板保持用枠体に、薄板基板を水平に、且つ下方に湾曲させた状態で収納した基板保持用枠体の多段積み重ね体を、その下面で支持する用途に供するインナーパレットであって、該インナーパレットは、前記薄板基板の湾曲形状に沿うように形成されてなる湾曲形状保持部である上層と、移動搬送装置対応部である下層と、を上下に固着してなる2層構造からなり、前記湾曲形状保持部の上面には、左右の辺が平坦であって前後の辺が下方に湾曲している平面視矩形状の嵌合用金属枠部と、該嵌合用金属枠部の上面から内周下方向に傾斜して設けたパレット側嵌合部とからなる嵌合用枠体が固着されており、前記基板保持用枠体の嵌合部と前記嵌合用枠体のパレット側嵌合部との嵌め合わせにより、前記金属枠部と前記嵌合用金属枠部間の位置合わせがされることを特徴とするインナーパレットである。
【0016】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様において、前記嵌合用枠体は、該嵌合用枠体の内周に設けてある前記パレット側嵌合部とさらにその先に延出してなるダミー基板支持部が形成されてなり、該ダミー基板支持部に前記嵌合用枠体の内周内側を覆う1枚の板状物からなるダミー基板が固定されていることを特徴とする請求項1記載のインナーパレットである。
【0017】
本発明の第3の態様は、前記第1または第2の態様において、前記湾曲形状保持部の上面の前後の辺の湾曲形状の曲率半径は、前記基板保持用枠体の曲率半径より13%の範囲内で小さいことを特徴とする請求項1または請求項2記載のインナーパレットである。
【0018】
本発明の第4の態様は、前記第1から第3の何れかの態様において、前記移動搬送装置対応部は、該移動搬送装置対応部の少なくとも正面および背面に、フォークリフトのフォークが抜差可能に設けられた2個一対の第1差込口が開設され、そして、前記下層パレットの左右の側面に、前記フォークリフトのフォークが抜差可能に設けられた2個一対の第2差込口が開設されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1の請求項に記載のインナーパレットである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様によれば、インナーパレットは、湾曲形状保持部の上層と移動搬送装置対応部の下層とを上下に固着した2重構造で、湾曲形状保持部は、上面が基板保持用枠体の湾曲形状に沿うように形成されていることにより、湾曲している基板保持用枠体を安定に載置することができ、移動搬送装置対応部は、ガラス基板が収納され高い密度で積層された基板保持用枠体の総重量が1.5トン以上となるため、フォークリフト等の移動搬送装置に対応できる構造を有し、湾曲形状保持部の上面に固着された嵌合用枠体のパレット側嵌合部と、積層された基板保持用枠体の最下段の嵌合部は、それぞれの金属枠部の内周下方向に傾斜して設けた形状となっているので、多少位置ずれして重ねられそうな場合でも自己調整(セルフアライメント)機能が働き正しく載置されると共に、高精度の位置決めが要求されないため、基板保持用枠体の載置時間の効率化が図れる。また、嵌合部分に緩衝材等の部材の必要がなく金属のみで嵌合するため、塵埃や異物の発生を抑えられるという効果がある。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、嵌合用枠体の内周に設けてあるパレット側嵌合部の先に延出して形成されたダミー基板支持部に、嵌合用枠体の内周内側を覆う1枚の板状物からなるダミー基板を固着したことにより、積層された基板保持用枠体の最下段のガラス基板が略密封状態になり、ガラス基板の保護および塵埃等の混入防止が図れるという効果がある。
【0021】
本発明の第3の態様によれば、ガラス基板を収納し多段に積層された基板保持用枠体は、自重により湾曲部中央が下方に向けてさらに撓むため、湾曲形状保持部の上面の曲率半径を、基板保持用枠体の曲率半径より小さくすることで、基板保持用枠体が多段に積層された状態において、よりいっそう隙間の無い、密着性の高い嵌合状態が形成でき、搬送時におけるガタツキや荷崩れをさらに低減できるという効果がある。
【0022】
本発明の第4の態様によれば、移動搬送装置対応部の少なくとも正面および背面に、フォークリフトのフォークが抜差可能に設けられた2個一対の第1差込口が開設され、そして、前記移動搬送装置対応部の左右の側面に、前記フォークリフトのフォークが抜差可能に設けられた2個一対の第2差込口が開設されていることで、前後左右からフォークリフトのフォークが抜差可能となり、前後左右どちらからでもパレットを取り出すことができるため、搬送移動の効率化や保管場所の自由度が高くなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】インナーパレットの斜視図である。
【図2】インナーパレットの湾曲形状保持部を示す図である。
【図3】湾曲形状保持部に嵌合用枠体およびダミー基板を固着する斜視図である。
【図4】湾曲形状保持部に固着された嵌合用枠体に基板保持用枠体が載置された断面図である。
【図5】基板保持用枠体の平面図である。
【図6】基板保持用枠体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明するが、理解を容易にするために、本発明のインナーパレットについて詳細に説明する前に、インナーパレットと共に使用される薄板基板収納用の基板保持用枠体の説明からすることとする。
【0025】
図5は、基板保持用枠体の平面図である。
基板保持用枠体10は、平面視は矩形状の枠体であるが、斜視図(図6参照)では、前後の辺が下方(重力方向)に湾曲した枠体となっている。四辺に、フレーム状の金属枠部11(11a,11b、11c、11dからなる)を有している。図5において、薄板基板1は、金属枠部の四辺11a,11b、11c、11dから延出して設けた基板支持部13にその四周縁部がのるように載置されている。
【0026】
基板保持用枠体10は、図4にも図示されるので、図4を参照してさらに説明する。
金属枠部11の上面からは、内周下方向に傾斜して一定幅で延出して設けられている第2嵌合部13と、同じく金属枠部11の下面からは、内周下方向に傾斜して短く延出する突起片として設けられている第1嵌合部12とからなる。この第2嵌合部13の上面と第1嵌合部12の下面の嵌め合わせにより、上下の基板保持用枠体10相互間の位置合わせがなされ、多段に積み重ねを可能にしている。
【0027】
金属枠部11は、多段に積み重ねる基板保持用枠体10自体と薄板基板の全重量を支えられる構造部材を採用している。また、第1嵌合部12及び第2嵌合部13は、基板保持用枠体10を多段積みした場合に金属枠部11自体の荷重を受けない内周部分に形成するのが誤って枠体を重ねた際の変形を防止できる観点から好ましい。
【0028】
金属枠部11には、軽量化の目的からアルミやアルミ合金等の材料を使用する。図4のように、断面が矩形状または正方形状であって、中空構造を好適に採用できる。
【0029】
ここで、枠体の前後辺と左右辺は、本来、対向する2辺のいずれを前後または左右としても良いが、本明細書では、区別し易いように矩形状の基板の長辺側の2辺がのる辺を左右辺としている。
【0030】
第6世代のガラス基板の場合、1500mm×1850mmのサイズとなる(1500mm×1800mmの第6世代もある)。そのガラス基板を、長辺の端部10〜20mmの範囲で下側から支持すると、中央部で約350mm程度下がる(撓む)ことになる。前後の辺11c、11dをこの自然の撓み量に合わせると過大になり過ぎるので、基板保持用枠体10の撓みを100mm程度、曲率半径で約3.1mとなるようにした。
【0031】
なお、前記第6世代の場合、1枚のガラス基板がおよそ5kgあり、一枚の基板保持用枠体10が5.5kgになるので、仮に150段積層した場合、基板保持用枠体10自体とガラス基板の総重量1.5トン以上となる。
【0032】
次に、本発明の主題であるインナーパレットについて図1を参照して説明する。
上記のことから図1に示すように、湾曲した基板保持用枠体10を多段に積層し、安定に搬送および保管するには、ガラス基板を湾曲させた状態で安定に載置出来る上面が湾曲した湾曲形状保持部30が必要となる。また、積層された基板保持用枠体10と収納されたガラス基板の総重量は1.5トン以上となるため、頑丈な構造が求められる。さらに、フォークリフト等の移動搬送装置に対応できる移動搬送装置対応部40が必要となる。そのため、これらを上下に固着した2層構造からなるインナーパレット100が採用されている。
【0033】
図2は、インナーパレットの湾曲形状保持部を示す図であって、図2(A)は、湾曲形状保持部30の平面図である。
湾曲形状保持部30は、4辺を厚さ2mmから2.5mmの金属枠からなるフレーム枠部31(31a,31b、31c、31dからなる)を有している。
図2(B)は湾曲形状保持部30の右側面図である。左側面も同様になる。フレーム枠部31の右辺31bは平坦な金属枠からなり、その内部には平坦部補強柱33をフレーム枠部31bの両端と中間2箇所に等間隔に配置し補強してある。左辺31aも同様である。
【0034】
図2(C)は、湾曲形状保持部30の正面図である。フレーム枠部31の前辺31cは、上面を下方に撓ませ、下面は平坦にした金属枠からなり、その内部には湾曲部補強柱34を、湾曲形状の高さに合わせて、フレーム枠部31cの両端と中間4箇所に等間隔に配置し補強してある。後辺31dも同様である。このようにフレーム枠部31(31a,31b、31c、31d)は、それぞれを補強柱により補強され、4辺のフレーム枠部31は、溶接により固着されている。
【0035】
移動搬送装置対応部40は図1に示すように、総重量1.5トン以上となる重量を移動搬送装置により支えるため、板厚25mm程度の金属板を使用し、溶接により組み上げられており、構造堅固にして強度も大きくされている。
【0036】
また、移動搬送装置対応部40の前後左右の側面に2箇所づつあるフォークリフトのフォークの抜差用開口部41が設けられている。これらは、金属板を刳り貫き形成されている。前後左右どちらからでもパレットを取り出すことができるため、搬送時の効率化や保管場所の自由度も高い。
【0037】
図3は、湾曲形状保持部に嵌合用枠体およびダミー基板を固着する斜視図である。
嵌合用枠体20は図3に示すように、基板保持用枠体10と同様で、四辺に、フレーム状の嵌合用金属枠部21を有している。嵌合用金属枠部21から内周側下方向に傾斜して一定幅で延出して設けられたパレット側嵌合部22とからなる。
【0038】
図3の後の状態では、嵌合用枠体20は、湾曲形状保持部30の上面の固着される。(図3は、固着前の分解図である。)固着手段は、溶接、ねじ止め、の何れかにより行われる。さらに、固着された嵌合用枠体20のパレット側嵌合部21からさらに延出して設けられた板状部支持部23に、嵌合用枠体20の内周内側を覆う1枚の板状物からなるダミー基板50が固着されている。積層される基板保持用枠体10の最下段のガラス基板の保護および塵埃等の混入防止を図るためであり、隙間が生じないようにされる。この固着手段は、ねじ止め、鋲着の何れかにより行われる。なお、塵埃等の混入防止の効果は十分ではないが、ダミー基板50を使用しない場合でもインナーパレットとしての機能が果たせるのは明らかである。
【0039】
図4は、湾曲形状保持部30に固着された嵌合用枠体20と、その嵌合用枠体20に基板保持用枠体10が載置された状態の断面図である。
基板保持用枠体10の第2嵌合部13は、金属枠部11の上面からは内周側下方向に傾斜して一定幅で延出して設けられ、第1嵌合部12は金属枠部11の下面から内周側下方向に傾斜して短く延出する突起片として設けられている。
【0040】
湾曲形状保持部30の上面に固着された嵌合用枠体20のパレット側嵌合部22の上面と、多段に積層された基板保持用枠体10の最下段の第1嵌合部12の下面とが、嵌め込みできる傾斜面となっている。このようにパレット側嵌合部22も基板保持用枠体10の嵌合部と同様に傾斜屈曲して形成されている。
【0041】
嵌合部分を、金属枠部11自体や薄板基板1の荷重を直接受けない金属枠部11の内周部分と嵌合用金属枠部21の内周部分に形成することで、誤って基板保持用枠体10をずらして重ねそうになった場合でも、傾斜屈曲による嵌合により自己調整(セルフアライメント)機能が働くため、位置決めが容易であり、すばやく安定的に載置することができる。また、嵌合部分は、金属のみで緩衝材等を使用していないため、塵埃や異物の発生を抑えられる。
【0042】
パレット側嵌合部22は、四辺の全て少なくとも三辺に設けるのが好ましい。基板保持用枠体10との前後左右を位置合わせするためである。また、嵌合部により外部からの塵埃等の混入も少なくできる。
【0043】
図3等では明示されないが、湾曲形状保持部30の上面の前後の辺の湾曲形状の曲率半径は、基板保持用枠体10の薄板基板1の曲率半径より4%から13%の範囲で小さく形成するのが好ましい。その理由は、基板保持用枠体10の前後の辺の湾曲形状の撓みは100mm程度、曲率半径約3.1mで形成されている。その基板保持用枠体10にガラス基板を収納し150段積層した状態では総重量1.5トン以上となり、その自重により積層された状態での基板保持用枠体10は、前後の辺の湾曲形状の撓みが、約110ミリ前後となり、曲率半径で約2.9mとなる。よって約9%曲率半径が小さくなるため、湾曲形状保持部30の上面の前後の辺の湾曲形状の曲率半径を、基板保持用枠体10の薄板基板1の曲率半径より小さくする必要がある。
【0044】
このようにすることにより、湾曲形状保持部30と基板保持用枠体10は、基板保持用枠体10が多段に積層された状態で、よりいっそう隙間の無い、密着性の高い嵌合状態が作れ、搬送時のガタツキや荷崩れを低減させることができる。
【0045】
(材質に関する実施形態)
インナーパレット100に使用する材料には、軽量で腐食を生じない金属材料を使用できる。具体的には、純アルミニウム、ジュラルミン(アルミ、銅(3.5〜5.5%)、マグネシウム)系、アルミニウム−マンガン系等のアルミニウム合金等を使用できる。
ダミー基板50の材質には、軽量で腐食を生じない金属材料および樹脂等が使用される。変形しないように、0.5mmから1.0mm程度の厚みのもが採用される。
【符号の説明】
【0046】
1 薄板基板
10 基板保持用枠体
11 金属枠部(11a,11b,11c,11d)
12 第1嵌合部
13 第2嵌合部
20 嵌合用枠体
21 嵌合用金属枠部
22 パレット側金属枠部
23 ダミー基板支持部
30 湾曲形状保持部
31 フレーム枠部(31a,31b,31c,31d)
33 平坦部補強柱
34 湾曲部補強柱
40 移動搬送装置対応部
41 フォークの抜差用開口部
50 ダミー基板
100 インナーパレット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の薄板基板を、左右の辺が平坦であって前後の辺が下方に湾曲している平面視矩形状の金属枠部と、該金属枠部の下面から内周下方向に傾斜して設けた嵌合部とからなる基板保持用枠体に、薄板基板を水平に、且つ下方に湾曲させた状態で収納した基板保持用枠体の多段積み重ね体を、その下面で支持する用途に供するインナーパレットであって、該インナーパレットは、前記薄板基板の湾曲形状に沿うように形成されてなる湾曲形状保持部である上層と、移動搬送装置対応部である下層と、を上下に固着してなる2層構造からなり、前記湾曲形状保持部の上面には、左右の辺が平坦であって前後の辺が下方に湾曲している平面視矩形状の嵌合用金属枠部と、該嵌合用金属枠部の上面から内周下方向に傾斜して設けたパレット側嵌合部とからなる嵌合用枠体が固着されており、前記基板保持用枠体の嵌合部と前記嵌合用枠体のパレット側嵌合部との嵌め合わせにより、前記金属枠部と前記嵌合用金属枠部間の位置合わせがされることを特徴とするインナーパレット。
【請求項2】
前記嵌合用枠体は、該嵌合用枠体の内周に設けてある前記パレット側嵌合部とさらにその先に延出してなるダミー基板支持部が形成されてなり、該ダミー基板支持部に前記嵌合用枠体の内周内側を覆う1枚の板状物からなるダミー基板が固定されていることを特徴とする請求項1記載のインナーパレット。
【請求項3】
前記湾曲形状保持部の上面の前後の辺の湾曲形状の曲率半径は、前記基板保持用枠体の曲率半径より13%の範囲内で小さいことを特徴とする請求項1または請求項2記載のインナーパレット。
【請求項4】
前記移動搬送装置対応部は、該移動搬送装置対応部の少なくとも正面および背面に、フォークリフトのフォークが抜差可能に設けられた2個一対の第1差込口が開設され、そして、前記下層パレットの左右の側面に、前記フォークリフトのフォークが抜差可能に設けられた2個一対の第2差込口が開設されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1の請求項に記載のインナーパレット。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−227403(P2012−227403A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94659(P2011−94659)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】