説明

インバータ式発電機

【課題】 交流出力電流に応じてエンジンの回転数を制御するインバータ式発電機において、エンジンの振動を抑制して大きな騒音が発生しないようにする。
【解決手段】 インバータ式発電機は、エンジン10の回転により交流出力を発生する3相巻線12aからの交流出力を全波整流回路20及び平滑回路30により直流出力に変換し、変換した直流出力をインバータ回路40により交流出力に変換して外部へ出力する。このインバータ式発電機においては、コンピュータ部60が、エンジン10の回転数を,電流センサ82により検出された交流出力電流が増加するに従って増加するように制御する。この制御において、コンピュータ部60は、エンジン10が共振する付近の回転数をスキップするように、交流出力電力に応じて変化する目標回転数を決定して、エンジン10の回転数を前記決定した目標回転数に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの回転によって発電体から発生される交流出力を、整流回路によって整流することにより直流出力に変換し、変換された直流出力をインバータ回路によって交流出力に変換して外部へ出力するインバータ式発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置において、例えば下記特許文献1,2に示されているように、インバータ回路から外部へ出力される交流出力電流を電流センサによって検出し、検出された交流出力電流が増加するに従って増加するエンジンの目標回転数を決定して、決定された目標回転数にエンジンの回転数を制御するようにすることは知られている。この場合、エンジンの回転数(目標回転数)は交流出力電流に対して、例えば、図6の実線で示すように変化する。なお、図6の一点差線で示す交流出力電流に対するエンジンの回転数(目標回転数)は、交流出力電流が小さくなっても、エンジンの回転数を大きく保つ従来のインバータ式発電機の他の運転モードに対応したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−284397号公報
【特許文献2】特開2006−217780号公報
【発明の概要】
【0004】
上記従来のインバータ式発電機によれば、外部で必要とされる交流電力が少ない場合には、エンジンの回転数を下げることにより、エンジンで消費される燃料を削減でき、発電機の燃費を向上させることができる。しかし、前記目標回転数は交流出力電流の変化に対して連続的かつ広範囲にわたって変化するので、目標回転数がエンジンの共振点付近になると、エンジンが振動して大きな騒音を発生するという問題がある。特に、図6の実線で示すように、エンジンが共振し易い回転数未満(例えば、一分間当たり4500回転未満)で、エンジンの回転数を連続的かつ広範囲にわたって制御するために、エンジンは振動し易くなる。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、交流出力電流が増加するに従って増加する目標回転数にエンジンの回転数を制御するようにしたインバータ式発電機において、エンジンの振動を抑制して大きな騒音が発生しないようにすることにある。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、エンジンと、エンジンの回転により交流出力を発生する発電体と、発電体からの交流出力を整流して直流出力に変換する整流回路と、整流回路によって変換された直流出力を交流出力に変換して外部へ出力するインバータ回路と、インバータ回路から外部へ出力される交流出力電流を検出する電流センサと、電流センサによって検出された交流出力電流が増加するに従って増加するエンジンの目標回転数を決定する目標回転数決定手段と、目標回転数決定手段によって決定された目標回転数にエンジンの回転数を制御する回転制御手段とを備えたインバータ式発電機において、目標回転数決定手段は、エンジンが共振する付近の回転数をスキップするように目標回転数を決定するようにしたことにある。
【0007】
上記のように構成した本発明によれば、目標回転数決定手段は、エンジンが共振する回転数付近をスキップするように目標回転数を決定し、回転制御手段がこの決定された目標回転数にエンジンの回転数を制御するので、エンジンは共振点付近の回転数で回転しなくなる。これにより、交流出力電流が増加するに従って増加する目標回転数にエンジンの回転数を制御するようにしたインバータ式発電機においても、エンジンの共振点に関係したエンジンの振動が抑制されて、大きな騒音が発生しなくなる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記目標回転数決定手段が、エンジンが共振する複数の回転数に対してそれぞれスキップするように目標回転数を決定するようにしたことにある。これによれば、エンジンが複数の異なる回転数で共振する場合でも、エンジンの振動が確実に抑制されて常に大きな騒音が発生しなくなる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、前記目標回転数決定手段が、エンジンの回転数が上昇するときの目標回転数のスキップ幅に比べて、エンジンの回転数が減少するときの目標回転数のスキップ幅を大きくするようにしたことにある。このインバータ式発電機に接続される外部負荷が減少してエンジンの回転数が減少するときには、外部負荷が増加してエンジンの回転数が増加するときに比べて、エンジンは共振点付近で振動し易くなる傾向にある。しかし、この本発明の他の特徴によれば、目標回転数のスキップ幅は、エンジンの回転数が上昇するときに比べて、エンジンの回転数が減少するときに大きくなるので、エンジンの共振による振動を確実に防止することができ、エンジンによる騒音の発生を確実に小さくできる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記目標回転数決定手段が、エンジンが共振する付近の回転数をスキップする目標回転数に決定において、前記交流出力電流の変化に対してヒステリシスをもって変化する目標回転数を決定するようにしたことにある。すなわち、目標回転数を上昇方向にスキップさせる場合の交流出力電流の大きさと、目標回転数を減少方向にスキップさせる場合の交流出力電流の大きさとを異ならせる。これによれば、エンジンが共振する付近の回転数をスキップする目標回転数に決定において、交流出力電流に対するエンジンの回転数の変化にヒステリシスがもたらされるので、交流出力電流が、エンジンが共振する回転数に対応した電流付近で増減を繰り返しても、エンジンの回転数が繰り返し急変することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るインバータ式発電機の全体概略図である。
【図2】図1のコンピュータ部により実行される回転数制御プログラムを示すフローチャートである。
【図3】図1のコンピュータ部の制御による交流出力電流とエンジンの回転数との関係を示すグラフである。
【図4】前記実施形態の変形例に係る回転数制御プログラムの一部を示すフローチャートである。
【図5】前記変形例における交流出力電流とエンジンの回転数との関係を示すグラフである。
【図6】従来例に係る交流出力電流とエンジンの回転数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインバータ式発電機の全体概略図である。このインバータ式発電機は、エンジン10を備えている。エンジン10は、ガソリン、バイオ燃料などの燃料で駆動される内燃機関である。エンジン10は、スロットルバルブの開度を調整して、エンジンの回転数Nを変更制御するための開度調整部11を備えている。この開度調整部11は、例えばステップモータにより構成されている。
【0013】
エンジン10の出力軸には、発電機12が連結されている。発電機12は、エンジン10の出力回転軸(又はそれに連結された回転軸)の周囲に配置されたロータ側の複数の磁石(図示省略)と、これらの磁石の磁束と交差する位置に配置されたステータ側の3相巻線12a及び単相巻線12bとを備えている。3相巻線12aは、本発明の発電体を構成するもので、エンジン10の回転により3相交流電圧を発生する。単相巻線12bは、このインバータ式発電機の作動を制御するための各種制御回路へ直流電力を供給するためのもので、エンジン10の回転により単相交流電圧を発生する。
【0014】
3相巻線12aには、全波整流回路20、平滑回路30、インバータ回路40及び出力回路50がこの順に接続されている。全波整流回路20は、ダイオードD1,D2,D3及びサイリスタT1,T2,T3からなる3相ブリッジ回路で構成され、3相巻線12aから出力される3相交流出力を全波整流することにより直流に変換して直流電源ラインL1,L2に出力する。全波整流回路20には、サイリスタT1,T2,T3の導通をそれぞれ制御するためのゲート制御回路21a,21b,21cを含む電圧安定化回路21が接続されている。電圧安定化回路21は、全波整流回路20から出力される直流電圧のタイミングを制御するもので、エンジン10の回転数Nに対して全波整流回路20から出力される直流電圧がなるべく変化しないように安定化させるためものである。なお、この直流電圧の変化が問題にならない場合には、この電圧安定化回路21を省略することもできる。この場合、サイリスタT1,T2,T3を、それぞれダイオードで構成すればよい。
【0015】
平滑回路30は、直流電源ラインL1,L2間に接続された電解コンデンサで構成され、全波整流回路20から出力される直流電圧を平滑化する。インバータ回路40は、スイッチング回路41及びパルス幅変調制御回路42(以下、単にPWMコントローラ42という)からなり、直流電源ラインL1,L2上の直流出力を交流出力(例えば、周波数が50Hz又は60Hzで、電圧が100V、120V又は230Vの交流電圧)に変換して出力する。なお、これらの交流出力の周波数及び電圧はユーザにより選択されるものであるが、本発明には直接関係しないので、前記周波数及び電圧はユーザによって適宜設定されているものとして、その説明を省略する。
【0016】
スイッチング回路41は、直流電源ラインL1,L2間にそれぞれ直列に接続された電界効果トランジスタFET1,FET2及び電界効果トランジスタFET3,FET4を備えている。電界効果トランジスタFET3,FET4の接続点には交流電源ラインL3が接続され、電界効果トランジスタFET1,FET2の接続点には交流電源ラインL4が接続されている。PWMコントローラ42は、電界効果トランジスタFET1,FET2,FET3,FET4の導通及び非導通を制御するためのゲート制御回路42a,42b,42c,42dを含む。そして、PWMコントローラ42は、後述するコンピュータ部60により制御されて、選択された周波数及び電圧に加えて、交流電源ラインL3,L4から外部へ出力される実際の交流出力電圧に応じて、スイッチング回路を構成する電界効果トランジスタFET1〜FET4をスイッチング制御(すなわちオン・オフ制御)するためのパルス列信号を出力する。なお、このパルス列信号が、直流電力を交流電力に変換するための制御信号である。
【0017】
出力回路50は、コイル51及びコンデンサ52からなるフィルタ回路を備えており、インバータ回路40から出力される矩形波状の交流出力を正弦波状の交流出力に変換して一対の出力端子OUT1,OUT2から出力する。コイル51は、交流電源ラインL1に介装されている。コンデンサ52は、交流電源ラインL1,L2間に接続されている。
【0018】
また、このインバータ式発電機は、エンジン10の回転数N及びインバータ回路40の作動を制御するためのコンピュータ部60を備えている。コンピュータ部60は、CPU61、ROM62、RAM63及びタイマ64を有する。CPU61は、図2に示す回転数制御プログラムを所定の短時間(例えば、25ミリ秒)ごとに実行することによりエンジン10の回転数Nを制御するとともに、図示しないプログラムの実行によりPWMコントローラ42を制御する。ROM62は、これらのプログラムに加えて、回転数制御プログラムにおいて利用される変換テーブルを記憶している。RAM63は、前記プログラムの実行時に変数を一時的に記憶する。タイマ64は、時間の経過を計測して、前記回転数制御プログラムの実行間隔を含む各種時間制御に用いられる。
【0019】
ここで、前記変換テーブルに関して説明しておく。この変換テーブルは、詳しくは後述する回転数制御プログラムの実行により、交流出力電流Iに応じてエンジン10の目標回転数N*を設定するためのもので、交流出力電流Iに対応させて目標回転数N*を規定している。この変換テーブルにより規定される目標回転数N*は、基本的には、図3に実線で示すように交流出力電流Iが増加するに従って増加する。このエンジン10の目標回転数N*の変化について、一例をもって詳細に説明すると、交流出力電流Iが略0〜3.3アンペア(すなわち、0〜3.3A)程度の間であるときには、目標回転数N*は略一分間当たり3000回転(すなわち、3000rpm)に保たれる。交流出力電流Iが略3.3Aを越えて略8.7A(この電流をIp2とする)に達するまで、目標回転数N*は略3000rpmから略3800rpmまで徐々に増加する。交流出力電流Iが電流Ip2に達すると、目標回転数N*は、略3800〜4200rpmをスキップして(すなわち飛び越して)、略4200rpm(この回転数をN1とする)まで変化する。これは、エンジン10の共振点が略3900〜4000rpm付近の間にあり、エンジン10が略3900〜4000rpm付近で振動し易いためである。そして、交流出力電流Iが電流値Ip2を越えて略13.3A(この電流をIp3とする)に達するまで、目標回転数N*は略4200rpmから略4500rpm(この回転数をN2とする)まで徐々に増加する。その後、交流出力電流Iが電流Ip3を超えて略15.5Aに達するまで、目標回転数N*は、前記場合よりも大きな変化率で、回転数N2から略5500rpmまで徐々に増加する。さらに、交流出力電流Iが略15.5Aを超えると、目標回転数N*は略5500rpmに保たれる。
【0020】
なお、図3の実線は、インバータ式発電機をエコノミーモードで運転している状態で、交流出力電流Iが電流Ip2よりも減少して電流Ip2〜略6.7A(この電流をIp1とする)の範囲にあるという条件を除く場合に、交流出力電流Iに対して設定される目標回転数N*を示している。一方、図3の破線は、インバータ式発電機をエコノミーモードで運転している状態で、交流出力電流Iが電流Ip2よりも減少して電流Ip2〜Ip1の範囲にある場合に、交流出力電流Iに対して設定される目標回転数N*を示すものである。すなわち、この場合には、交流出力電流Iが電流Ip2よりも減少して電流Ip2から電流Ip1に低下するまで、目標回転数N*は固定の回転数N1に保たれる。そして、交流出力電流Iが電流Ip1より低下すると、目標回転数N*は前述した変換テーブル(すなわち図3の実線)によって規定される交流出力電流Iに応じた値に設定される。また、図3の一点鎖線は、インバータ式発電機をノーマルモードで運転している状態で、交流出力電流Iに対して設定される目標回転数N*を示すものであって、前記実線の場合と異なる部分のみを示している。すなわち、この場合には、交流出力電流Iが略0〜Ip3A程度の間であるときには、目標回転数N*は固定の回転数N2に保たれる。それ以外の場合には、目標回転数N*は前述した変換テーブル(すなわち図3の実線)によって規定される交流出力電流Iに応じた値に設定される。
【0021】
ふたたび、図1の説明に戻ると、単相巻線12bには、全波整流回路71、平滑回路72及び制御用電源回路73がこの順に接続されている。全波整流回路71は、ダイオードD4,D5,D6,D7からなる単相ブリッジ回路で構成され、単相巻線12bから出力される単相交流出力を全波整流することにより直流に変換して直流電源ラインL5,L6に出力する。平滑回路72は、直流電源ラインL5,L6間に接続された電解コンデンサで構成され、全波整流回路71から出力される直流電圧を平滑化する。制御用電源回路73は、平滑回路72により平滑化されて直流電源ラインL5,L6から入力される直流電圧を所定の直流電圧に変更して、コンピュータ部60の電源電圧として供給する。なお、この制御用電源回路73は、電圧安定化回路21、PWMコントローラ42などのインバータ式発電機の作動制御のための各種回路にも直流電圧を供給する。
【0022】
また、インバータ式発電機は、エコノミーモード選択スイッチ81、電流センサ82、電圧センサ83及びエンジン回転数センサ84も備えている。エコノミーモード選択スイッチ81は、オフ状態によりノーマルモードを選択し、ユーザのオン操作によりエコノミーモードを選択するためのスイッチであり、ノーマルモード又はエコノミーモードを表す選択信号を出力する。電流センサ82は、交流出力ラインL4に介装され、外部へ出力される交流出力電流Iを検出して、検出した交流出力電流Iを表す検出信号を出力する。電圧センサ83は、交流出力ラインL3,L4間に接続され、外部へ出力される交流出力電圧を検出して、検出した交流出力電圧を表す検出信号を出力する。エンジン回転数センサ84は、エンジン10の出力回転軸(又はそれに連結された回転軸)の近傍に配置され、エンジン10の回転数Nを検出して、検出した回転数Nを表す検出信号を出力する。
【0023】
これらのエコノミーモード選択スイッチ81、電流センサ82、電圧センサ83及びエンジン回転数センサ84は、インターフェース回路85に接続されている。インターフェース回路85は、エコノミーモード選択スイッチ81、電流センサ82、電圧センサ83及びエンジン回転数センサ84から出力される検出信号を入力してコンピュータ部60に供給する。この場合、インターフェース回路85は、例えば、電流センサ82及び電圧センサ83から出力される信号がアナログ信号であれば、ディジタル信号に変更してコンピュータ部60に供給する。また、エンジン回転数センサ84から入力される信号がエンジン10の回転に対応したパルス列信号であれば、このパルス列信号の周期を計測してエンジン10の回転数Nを計算し、この回転数Nを表すディジタル信号をコンピュータ部60に出力する。なお、この回転数Nの計算をコンピュータ部60に担当させてもよい。
【0024】
次に、上記のように構成した実施形態の動作を説明する。ユーザは、出力端子OUT1,OUT2に交流で動作する外部交流機器を接続するとともに、エコノミーモード選択スイッチ81の操作によりエンジン10の運転モードを選択した後、エンジン10を始動する。そして、エンジン10が始動されて、その出力回転軸が回転されると、3相巻線12aは3相交流電圧を発生するとともに、単相巻線12bは単相交流電圧を発生する。単相巻線12bに発生された単相交流電圧は、全波整流回路71によって全波整流され、かつ平滑回路72によって平滑化されて、平滑化された直流電圧が直流電源ラインL5,L6を介して制御用電源回路73に供給される。制御用電源回路73は、この供給された直流電圧に基づいてコンピュータ部60を含む各種制御回路に直流電圧を電源電圧として供給する。これにより、コンピュータ部60を含む各種制御回路は作動を開始する。
【0025】
一方、3相巻線12aに発生された3相交流電圧は、全波整流回路20によって全波整流され、かつ平滑回路30によって平滑化されて、平滑化された直流電圧が直流電源ラインL1,L2を介してインバータ回路40に供給される。インバータ回路40は、供給された直流出力を矩形波状の交流出力に変換して出力回路50に供給する。出力回路50は、前記供給された矩形波状の交流出力を正弦波状の交流信号に変換して、出力端子OUT1、OUT2を介して外部交流機器に供給する。したがって、外部交流機器は、前記供給された交流電力を用いて動作可能となる。
【0026】
この場合、電圧安定化回路21は、全波整流回路20のサイリスタT1,T2,T3を制御することにより、全波整流回路20からの出力を安定させる。CPU61は、図示しないプログラムの実行により、電圧センサ83から交流出力電圧を入力して、PWMコントローラ42を制御する。PWMコントローラ42は、このコンピュータ部60の制御に従ってインバータ回路40のスイッチング回路41をスイッチング制御して、外部交流機器に供給される交流電圧を安定させる。また、CPU61は、タイマ64の制御のもとに、図2の回転数制御プログラムを所定の短時間ごと(例えば、25ミリ秒ごと)に繰り返し実行して、交流出力電流Iに応じてエンジン10の回転数Nを制御する。
【0027】
以下、このエンジン10の回転数Nの制御について、図2の回転数制御プログラムを用いて詳しく説明する。この回転数制御プログラムの実行は、ステップS10にて開始され、CPU61は、ステップS11にて、電流センサ82及びエンジン回転数センサ84からインターフェース回路85を介して交流出力電流I及びエンジン10の回転数Nをそれぞれ入力して、入力した回転数Nを一時的に記憶するとともに、入力した交流出力電流Iを今回交流出力電流Inewとして一時的に記憶する。この場合、今回交流出力電流Inewとは、今回の回転数制御プログラムの実行時に入力した交流出力電流Iを表すものである。これに対して、後述する前回交流出力電流Ioldは、前回の回転数制御プログラムの実行時に入力した交流出力電流Iを表す。
【0028】
前記ステップS11の処理後、CPU61は、ステップS12にて、エコノミーモード選択スイッチ81からインターフェース回路85を介して選択信号を入力して、エコノミーモードが選択されているか、ノーマルモードが選択されているかを判定する。最初に、エコノミーモードが選択されている場合について説明する。この場合、CPU61は、ステップS12にて「Yes」と判定して、ステップS13にて減少フラグDWFが“0”であるかを判定する。この減少フラグDWFは、“0”により図3の実線に示す変換特性でエンジン10の回転数Nを制御している状態を表し、“1”により図3の破線に示す変換特性でエンジン10の回転数Nを制御している状態を表す。そして、減少フラグDWFは、コンピュータ部60の作動開始時には図示しない初期設定により、“0”に設定されている。したがって、エンジン10の回転数Nの制御の初期においては、CPU61は、ステップS13に「Yes」判定してプログラムをステップS14以降に進める。
【0029】
ステップS14においては、CPU61は、今回交流出力電流Inewが電流Ip2(図3参照)に等しいかを判定する。エンジン10の始動開始から間もない状態では、今回交流出力電流Inewは小さく電流Ip2に等しいことはないので、CPU61は、ステップS14にて「No」と判定してプログラムをステップS20以降に進める。ステップS20においては、CPU61は、前記ステップS13の判定処理と同様に、減少フラグDWFが“0”であるかを判定する。この場合も、減少フラグDWFは“0”であるので、CPU61は、ステップS20にて「Yes」と判定して、ステップS22の処理を実行する。ステップS22においては、CPU61は、ROM62に記憶されている変換テーブル(図3の実線)を参照して、今回交流出力電流Inewに対応した目標回転数N*を計算する。なお、変換テーブルには離散した(連続していない)今回交流出力電流Inewに対して離散した目標回転数N*が記憶されているので、この目標回転数N*の計算では適宜補間演算を利用するものとする。
【0030】
前記ステップS22の処理後、CPU61は、ステップS25にて、前記計算した目標回転数N*から前記ステップS11の処理により入力したエンジン10の現在の回転数Nを減算し、この減算結果N*−Nに比例した制御値を表す制御信号を開度調整部11に出力する。開度調整部11は、制御値が大きくなるに従ってスロットルバルブの開度が大きくなるように制御、すなわちエンジン10の回転数Nが目標回転数N*に一致するように制御する。なお、制御値が負の値である場合には、開度調整部11は、制御値が小さくなる(制御値の絶対値が大きくなる)に従って、スロットルバルブの開度が小さくなるように制御する。
【0031】
前記ステップS25の処理後、CPU61は、ステップS26にて、前回交流出力電流Ioldを今回交流出力電流Inewに更新して、この回転数制御プログラムの実行を一旦終了する。これにより、次回の回転数制御プログラムの実行時には、1回前の回転数制御プログラムの実行時における交流出力電流Iが前回交流出力電流Ioldとして設定されていることになる。
【0032】
そして、所定の短時間が経過すると、CPU61は、ステップS10から前記回転数制御プログラムをふたたび実行する。この場合も、エコノミーモードが選択されており、減少フラグDWFは“0”に保たれたままであり、今回交流出力電流Inewは電流Ip2に達していないので、前記と同様なステップS22,S25の処理により、エンジン10の回転数Nは目標回転数N*に等しくなるように制御される。そして、前述した処理が繰り返し行われるので、外部交流機器の負荷が変動して交流出力電流Iが変化しても、エンジン10の回転数Nは、図3の実線により規定される交流出力電流Iに対応した目標回転数N*に等しく制御され続ける。これにより、外部交流機器の負荷に応じてエンジンの回転数Nが制御され、例えば外部交流機器で必要とされる交流電力が少ない場合には、エンジン10の回転数Nが下がるので、エンジン10で消費される燃料を削減でき、このインバータ式発電機の燃費を向上させることができる。
【0033】
このような外部交流機器の負荷の変動により、交流出力電流Iが増加して電流Ip2(図3参照)に達すると、CPU61は、ステップS14にて「Yes」と判定して、ステップS15の判定処理を実行する。ステップS15においては、CPU61は、今回交流出力電流Inewから前回交流出力電流Ioldを減算して、減算結果Inew−Ioldが負であるかを判定する。この判定は、交流出力電流I(すなわちエンジン10の回転数N)が増加傾向にあるか、減少傾向にあるかを判定するものである。前述のように、交流出力電流Iが増加して電流Ip2に達した場合には、今回交流出力電流Inewは前回交流出力電流Ioldよりも大きいので、CPU61は、ステップS15にて「No」と判定し、前述のように、ステップS20において「Yes」と判定して、ステップS22,S25の処理によりエンジン10の回転数Nを変換テーブルを用いて目標回転数N*に制御する。
【0034】
したがって、この場合も、エンジン10の回転数Nは、図3の実線に沿った特性に従って制御される。しかし、この場合には、交流出力電流Iが電流Ip2に等しくなった時点(又はその直後)で、目標回転数N*はポイントP2’における回転数N(例えば、略3800rpm)からポイントP2における回転数N1(例えば、略4200rpm)に、前記両回転数の間の回転数(例えば、略3800〜4200rpm)をスキップして(飛び越えて)増加する。これにより、エンジン10は、共振する回転数付近(例えば、略3900〜4000rpm)で回転しなくなり、交流出力電流Iが増加するに従って増加する回転数Nにエンジン10を制御するようにしたインバータ式発電機においても、エンジン10の共振点に関係したエンジン10の振動が抑制されて、大きな騒音が発生しなくなる。
【0035】
そして、外部交流機器の負荷がさらに増加して交流出力電流Iが増加すれば、エンジン10の回転数Nは、ポイントP2よりも図3の右上方に位置する実線によって規定される交流出力電流Iに対応した目標回転数N*に等しくなるように制御される。一方、前記状態から、交流出力電流Iが減少して電流Ip2(図3参照)に達した場合も、CPU61は、前述のように、ステップS14にて「Yes」と判定して、ステップS15の判定処理を実行する。しかし、この場合には、今回交流出力電流Inewは前回交流出力電流Ioldよりも小さいので、今回交流出力電流Inewから前回交流出力電流Ioldを減算した減算結果Inew−Ioldは負となる。したがって、この場合には、CPU61は、ステップS15にて「Yes」と判定して、ステップS16にて減少フラグDWFを“1”に設定する。
【0036】
このようにして、減少フラグDWFが“1”に設定されると、CPU61はステップS20にて「No」と判定して、ステップS23にて目標回転数N*を予め決めた固定値である回転数N1に設定する。そして、次のステップS25においては、CPU61は、前記と同様に、エンジン10の回転数Nが目標回転数N*に等しくなるように開度調整部11を制御するので、エンジン10の回転数Nは前記回転数N1になる。そして、次に回転数制御プログラムが実行された際には、減少フラグDWFが“1”に設定されているので、CPU61は、ステップS13にて「No」と判定して、ステップS17、S18の処理を実行する。ステップS17においては、CPU61は、今回交流出力電流Inewが図3に示すポイントP1’に対応した電流Ip1よりも小さいかを判定する。ステップS18においては、CPU61は、今回交流出力電流Inewが図3に示すポイントP2に対応した電流Ip2よりも大きいかを判定する。
【0037】
そして、今回交流出力電流Inewが電流Ip1以上であり、かつ電流Ip2以下である限り、CPU61は、ステップS17,S18にて共に「No」と判定して、ステップS20以降の処理を実行する。この場合、減少フラグDWFは“1”に保たれているので、CPU61は、ステップS20にて「No」と判定し、ステップS23にて目標回転数N*を前記と同様な回転数N1に設定し、ステップS25にてエンジン10の回転数Nが目標回転数N*に等しくなるように開度調整部11を制御する。したがって、交流出力電流Iが電流Ip1以上であり、かつ電流Ip2以下である限り、図3の破線で示すように、エンジン10の回転数Nは回転数N1に保たれ続ける。
【0038】
しかし、今回交流出力電流Inewが電流Ip1よりも小さくなると、CPU61は、ステップS17にて「Yes」と判定して、ステップS19にて減少フラグDWFを“0”に変更する。したがって、この場合には、CPU61は、次のステップS20にて「Yes」と判定し、ステップS22,S25の処理により、エンジン10の回転数Nが前記変換テーブル(図3の実線)によって規定される目標回転数N*に等しくなるように、開度調整部11を制御する。したがって、この場合には、今回交流出力電流Inewが電流Ip2よりも小さくなった時点で、目標回転数N*はポイントP1’における回転数N(例えば、略4200rpm)からポイントP1における回転数N(例えば、略3500rpm)に、前記両回転数の間の回転数(例えば、略3500〜4200rpm)をスキップして(飛び越えて)減少する。
【0039】
これにより、エンジン10は、この場合も、共振する回転数付近(例えば、略3900〜4000rpm)で回転することなく、交流出力電流Iが増加するに従って増加する回転数Nにエンジン10を制御するようにしたインバータ式発電機において、エンジン10の共振点に関係したエンジン10の振動が抑制されて、大きな騒音が発生しなくなる。また、この交流出力電流Iの減少時におけるエンジン10の回転数Nのスキップ幅(例えば、700rpm)は、前述した交流出力電流Iの増加時のエンジン10の回転数Nのスキップ幅(例えば、400rpm)よりも大きい。エンジン10においては、一般的に、外部交流機器の負荷が減少して回転数Nが減少するときには、外部交流機器の負荷が増加して回転数Nが増加するときに比べて、共振点付近で振動し易くなる傾向にある。しかし、前述のように、エンジン10の回転数Nの減少時のスキップ幅をエンジン10の回転数Nの増加時のスキップ幅よりも大きくしたので、エンジン10の共振による振動を確実に防止することができ、エンジン10による騒音の発生を確実に小さくできる。
【0040】
さらには、交流出力電流Iの増加時には交流出力電流Iが電流Ip2になった時点でエンジン10の回転数Nを非連続的に大きく上昇させ、かつ交流出力電流Iの減少時には交流出力電流Iが前記電流Ip2よりも小さな電流Ip1を超えた時点でエンジン10の回転数Nを非連続的に大きく減少させた。これにより、交流出力電流Iに対するエンジン10の回転数Nの変化にヒステリシスがもたらされるので、交流出力電流Iが電流Ip1(又はIp2)付近で増減しても、エンジン10の回転数Nが繰り返し急変することを回避できる。
【0041】
また、今回交流出力電流Inewが電流Ip2よりも小さくなった後に(すなわち、減少フラグDWFが“1”に設定された状態で)、今回交流出力電流Inewが電流Ip2よりもふたたび大きくなった場合には、CPU61は、ステップS18にて「Yes」と判定して、前述したステップS19の処理により減少フラグDWFを“0”に変更する。したがって、この場合にも、CPU61は、次のステップS20にて「Yes」と判定し、ステップS22,S25の処理により、エンジン10の回転数Nが前記変換テーブル(図3の実線)によって規定される目標回転数N*に等しくなるように、開度調整部11を制御する。これにより、エンジン10の回転数Nは、ふたたび、図3のポイントP2よりも右上方に位置する実線によって規定される交流出力電流Iに対応した目標回転数N*に等しくなるように制御される。
【0042】
次に、ユーザが、エコノミーモード選択スイッチ81をオン操作しなくて、このインバータ式発電機をノーマルモードで運転することを選択した場合について説明する。この場合、CPU61は、ステップS12にて「No」と判定して、ステップS21にて今回交流出力電流Inewが図3のポイントP3に対応した電流Ip3以下であるかを判定する。今回交流出力電流Inewが電流Ip3以下であれば、CPU61は、ステップS21にて「Yes」と判定して、ステップS24にて目標回転数N*を予め決めた固定値である回転数N2に設定する。そして、CPU61は、前記と同様なステップS25の処理により、エンジン10の回転数Nが目標回転数N*に等しくなるように開度調整部11を制御するので、エンジン10の回転数Nは前記回転数N2に制御される。そして、今回交流出力電流Inewが電流Ip3以下である限り、ステップS21の「Yes」との判定のもとに、ステップS24,S25の処理が実行されるので、エンジン10の回転数Nは前記回転数N2に保たれ続ける。
【0043】
一方、今回交流出力電流Inewが電流Ip3よりも大きくなると、CPU61は、ステップS21にて「No」と判定し、ステップS22にて目標回転数N*を前記変換テーブル(図3の実線)に従って設定して、ステップS23にて、エンジン10の回転数Nが目標回転数N*に等しくなるように開度調整部11を制御する。これにより、エンジン10の回転数Nは、図3のポイントP2よりも右上方に位置する実線によって規定される交流出力電流Iに対応した目標回転数N*に制御されるようになる。
【0044】
上記説明のように、上記実施形態によれば、目標回転数N*がエンジン10が共振する回転数付近をスキップするように決定され、エンジン10の回転数Nが目標回転数N*に制御されるので、エンジン10は共振する回転数付近で回転しなくなる。これにより、交流出力電流Iが増加するに従って増加する回転数Nにエンジン10を制御するようにしたインバータ式発電機においても、エンジン10の共振点に関係したエンジン10の振動が抑制されて、大きな騒音が発生しなくなる。また、交流出力電流I(エンジン10の回転数N)の減少時のスキップ幅を交流出力電流I(エンジン10の回転数N)の増加時のスキップ幅よりも大きくしたので、エンジン10の共振による振動を確実に防止することができ、エンジン10による騒音の発生を確実に小さくできる。
【0045】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0046】
上記実施形態においては、エンジン10の共振点が略3900〜4000rpm付近に1つだけある場合について説明した。しかし、この共振点は、エンジン10の構造によっては、前記とは異なる回転数付近にある場合もある。この場合には、交流出力電流Iによって決まる目標回転数N*を、前記異なる共振点に対応した回転数付近をスキップさせるようにすればよい。また、エンジン10の構造によっては、複数の異なる共振点が存在する場合もある。この場合には、前記交流出力電流Iによって決まる目標回転数N*を、前記複数の異なる共振点に対応した複数の回転数付近をそれぞれスキップさせるようにすればよい。
【0047】
この具体的な一例として、共振点が3箇所ある場合について説明する。この場合、変換テーブルにより規定されるエンジン10の目標回転数N*(回転数N)は、図5の実線で示すように変化する。この図5においても、ポイントP1,P1’,P2,P2’,P3に関しては、図3の場合と同じである。但し、ポイントP1,P1’,P2,P2’に対応する交流出力電流I及び目標回転数N*の値は前記図3の場合とは異なる。この図5の例においても、交流出力電流Iの増加時には、ポイントP2’にて目標回転数N*が、ポイントP2’,P2間に存在する共振点に対応する回転数付近を所定幅だけスキップして増加する。また、この図5の例においては、交流出力電流Iの増加時には、ポイントP5’,P3’においても、目標回転数N*がポイントP5’,P5及びポイントP3’,P3間にそれぞれ存在する共振点に対応する回転数付近を所定幅だけそれぞれスキップして増加するようになっている。
【0048】
さらに、交流出力電流Iの減少時には、ポイントP1’にて目標回転数N*がポイントP2’,P2間に存在する共振点に対応する回転数付近を所定幅だけスキップして減少するのに加えて、ポイントP4’,P6’においても目標回転数N*がポイントP5’,P5及びポイントP3’,P3間にそれぞれ存在する共振点に対応する回転数付近を所定幅だけそれぞれスキップして減少するようになっている。この交流出力電流Iの減少時には、ポイントP2において目標回転数N*が回転数N1に固定されるのに加えて、ポイントP3,P5においても目標回転数N*が回転数N2,N3にそれぞれ固定されるようになっている。なお、この場合も、交流出力電流Iの減少時におけるスキップ量は、交流出力電流Iの増加時におけるスキップ量よりも大きく、ポイントP1’,P4’,P6’におけるスキップ量は、それぞれポイントP1’,P1間、ポイントP4’,P4間及びポイントP6’,P6間の回転数に等しい。また、ポイントP1,P1’に対応する電流はIp1であり、ポイントP2,P2’に対応する電流はIp2であり、ポイントP4,P4’に対応する電流はIp4であり、ポイントP5,P5’に対応する電流はIp5であり、ポイントP6,P6’に対応する電流はIp6であり、ポイントP3,P3’に対応する電流はIp3である。
【0049】
このような変化特性に目標回転数N*を設定するためには、CPU61は、図2の回転数制御プログラムの一部を変形した回転数制御プログラムを、上記実施形態の場合と同様に、所定の短時間ごとに繰り返せばよい。この変形例に係る回転数制御プログラムは、図2のステップS12とステップS25との間の処理を図4に示すように変更されている。ただし、この変形例に係る回転数制御プログラムにおいても、図2のステップS21,24の処理は同じであり、これらのステップS21、S24は図4において省略されている。また、図2の回転数制御プログラムと同じ処理に関しては図2と同じ符号を付している。さらに、図1に示したインバータ式発電機の構成は、この変形例においても同じである。
【0050】
この変形例に係る回転数制御プログラムの処理動作について説明すると、エコノミーモードが選択されている状態で、減少フラグDWFが“0”に設定されている場合には、上記実施形態と同様に、CPU61は、ステップS13にて「Yes」と判定して、ステップS14,S15,S16a,S31〜S36の処理を実行する。この場合も、上記実施形態と同様に、CPU61は、ステップS14,S15,S16aの処理により、今回交流出力電流Inewが減少中に電流Ip2に達しない限り、減少フラグDWFを“0”に保つ。一方、今回交流出力電流Inewが減少中に電流Ip2に達した場合には、CPU61は、ステップS16aにて減少フラグDWFを“1”に変更する。ただし、この場合には、上記実施形態とは異なり、CPU61は、ステップS16aの処理により、第1減少サブフラグDWF1を“1”に変更する。この第1減少サブフラグDWF1は、“1”により、目標回転数N*が回転数N1に固定される状態、すなわち目標回転数N*がポイントP2,P1’間の破線で示された特性に従って制御される状態を表す。また、この第1減少サブフラグDWF1は、“0”によりそれ以外の状態を示し、初期には“0”に設定されている。
【0051】
また、前記ステップS14,S15,S16aの処理後、CPU61は、ステップS31〜S33の処理を実行する。これらのステップS31〜S33の処理は、前記ステップS14,S15,S16aと同種の処理であり、異なる点は、ステップS31において今回交流出力電流Inewが電流Ip5と比較される点と、ステップS33にて減少フラグDWFに加えて第2減少サブフラグDWF2が“1”に設定される点である。このようなステップS31〜S33の処理により、CPU61は、今回交流出力電流Inewが減少中に電流Ip5に達しない限り、減少フラグDWFを“0”に保つ。一方、今回交流出力電流Inewが減少中に電流Ip5に達した場合には、CPU61は、ステップS33にて減少フラグDWF及び第2減少サブフラグDWF2を“1”に変更する。この第2減少サブフラグDWF2は、“1”により、目標回転数N*が回転数N3に固定される状態、すなわち目標回転数N*がポイントP5,P4’間の破線で示された特性に従って制御される状態を表す。また、この第2減少サブフラグDWF2も、“0”によりそれ以外の状態を示し、初期には“0”に設定されている。
【0052】
また、前記ステップS31〜S33の処理後、CPU61は、ステップS34〜S36の処理を実行する。これらのステップS34〜S36の処理も、前記ステップS14,S15,S16aと同種の処理であり、異なる点は、ステップS34において今回交流出力電流Inewが電流Ip3と比較される点と、ステップS36にて減少フラグDWFに加えて第3減少サブフラグDWF3が“1”に設定される点である。このようなステップS34〜S36の処理により、CPU61は、今回交流出力電流Inewが減少中に電流Ip3に達しない限り、減少フラグDWFは“0”に保つ。一方、今回交流出力電流Inewが減少中に電流Ip3に達した場合には、CPU61は、ステップS36にて減少フラグDWF及び第3減少サブフラグDWF3を“1”に変更する。この第3減少サブフラグDWF3は、“1”により、目標回転数N*が回転数N2に固定される状態、すなわち目標回転数N*がポイントP3,P6’間の破線で示された特性に従って制御される状態を表す。また、この第3減少サブフラグDWF3も、“0”によりそれ以外の状態を示し、初期には“0”に設定されている。
【0053】
前記ステップS34〜S36の処理後、上記実施形態の場合と同様に、ステップS20にて減少フラグDWFが“0”であるかが判定される。減少フラグDWFが“0”であれば、この場合も、ステップS22にて変換テーブルが参照されて、今回交流出力電流Inewに対応した目標回転数N*が計算される。したがって、この場合には、エンジン10の回転数Nは、変換テーブルによって規定される、今回交流出力電流Inewに対応した目標回転数N*に制御される。
【0054】
一方、減少フラグDWFが“1”に設定されると、CPU61は、ステップS20にて「No」と判定して、ステップS45,S46の判定処理を実行する。ステップS45においては、第1減少サブフラグDWF1が“1”であるかが判定される。ステップS46においては、第2減少サブフラグDWF2が“1”であるかが判定される。第1減少サブフラグDWF1が“1”であれば、CPU61は、ステップS45にて「Yes」と判定して、ステップS23にて目標回転数N*を固定の回転数N1に設定する。また、第2減少サブフラグDWF2が“1”であれば、CPU61は、ステップS46にて「Yes」と判定して、ステップS47にて目標回転数N*を固定の回転数N3に設定する。さらに、第3減少サブフラグDWF3が“1”であれば、CPU61は、ステップS45,S46にて共に「No」と判定して、ステップS48にて目標回転数N*を固定の回転数N2に設定する。
【0055】
このようなステップS45〜S48の処理により、今回交流出力電流Inewが減少中に電流Ip2に達した場合にはエンジン10の回転数Nは回転数N1に固定制御され続け、今回交流出力電流Inewが減少中に電流Ip5に達した場合にはエンジン10の回転数Nは回転数N3に固定制御され続け、今回交流出力電流Inewが減少中に電流Ip3に達した場合にはエンジン10の回転数Nは回転数N2に固定制御され続ける。
【0056】
そして、前記のように、減少フラグDWFが“1”に設定されると、上記実施形態と同様に、CPU61は、ステップS13にて「No」と判定して、ステップS37以降の処理を実行する。ステップS37においては、第1減少サブフラグDWF1が“1”であるかが判定される。第1減少サブフラグDWF1が“1”であれば、CPU61は、ステップS37にて「Yes」と判定して、上記実施形態と同様なステップS17、S18の判定処理を実行する。そして、この場合も、今回交流出力電流Inewが電流Ip1よりも小さくなるか又は電流Ip2よりも大きくならない限り、CPU61は、ステップS17,S18にて共に「No」と判定して、プログラムをステップS20に進める。したがって、この場合には、減少フラグDWF及び第1減少サブフラグDWF1は“1”に設定され続ける。そして、前述したステップS20,S45,S23の処理により目標回転数N*は回転数N1に保たれ続けるので、エンジン10の回転数Nは回転数N1に制御され続ける。
【0057】
一方、今回交流出力電流Inewが電流Ip1よりも小さくなり、又は電流Ip2よりも大きくなると、CPU61は、ステップS17又はステップS18にて「Yes」と判定する。そして、CPU61は、ステップS19aにて減少フラグDWF及び第1減少サブフラグDWF1を共に“0”に戻して、プログラムをステップS20に進める。したがって、この場合には、前述したステップS20,S22の処理により、目標回転数N*が変換テーブルによって規定される値に設定されるので、エンジン10の回転数Nは変換テーブルによって規定される目標回転数N*にふたたび制御されるようになる。
【0058】
また、第1減少サブフラグDWF1が“0”に設定されている場合には、CPU61は、ステップS37にて「No」と判定して、プログラムをステップS38に進める。ステップS38においては、第2減少サブフラグDWF2が“1”であるかが判定される。第2減少サブフラグDWF2が“1”であれば、CPU61は、ステップS38にて「Yes」と判定して、ステップS39〜S41からなる処理を実行する。これらのステップS39〜S41の処理は、前記ステップS17,S18,S19aの処理と同種の処理であり、異なる点は、ステップS39にて今回交流出力電流Inewが電流Ip4よりも小さいかを判定する点、ステップS40にて今回交流出力電流Inewが電流Ip5よりも大きいかを判定する点、及びステップS41にて第2減少サブフラグDWF2を“1”に設定する点である。
【0059】
したがって、今回交流出力電流Inewが電流Ip4よりも小さくなるか又は電流Ip5よりも大きくならない限り、減少フラグDWF及び第2減少サブフラグDWF2は“1”に設定され続ける。そして、この場合には、前述したステップS20,S45,S46,S47の処理により、目標回転数N*が固定の回転数N3に保たれ続けるので、エンジン10の回転数Nは回転数N3に制御され続ける。一方、今回交流出力電流Inewが電流Ip4よりも小さくなり、又は電流Ip5よりも大きくなると、CPU61は、ステップS39又はステップS40にて「Yes」と判定する。そして、CPU61は、ステップS41にて減少フラグDWF及び第2減少サブフラグDWF2を共に“0”に戻して、プログラムをステップS20に進める。したがって、この場合には、前述したステップS20,S22の処理により、目標回転数N*が変換テーブルによって規定される値に設定されるので、エンジン10の回転数Nは変換テーブルによって規定される目標回転数N*にふたたび制御されるようになる。
【0060】
また、第1及び第2減少サブフラグDWF1,DWF2が共に“0”に設定されている場合には、すなわち第3減少サブフラグDWF3が“1”に設定されている場合には、CPU61は、ステップS37,S38にて共に「No」と判定して、ステップS42〜S44からなる処理を実行する。これらのステップS42〜S44の処理は、前記ステップS17,S18,S19aの処理と同種の処理であり、異なる点は、ステップS42にて今回交流出力電流Inewが電流Ip6よりも小さいかを判定する点、ステップS43にて今回交流出力電流Inewが電流Ip3よりも大きいかを判定する点、及びステップS44にて第3減少サブフラグDWF3を“1”に設定する点である。
【0061】
したがって、今回交流出力電流Inewが電流Ip6よりも小さくなるか又は電流Ip3よりも大きくならない限り、減少フラグDWF及び第3減少サブフラグDWF3は“1”に設定され続ける。そして、この場合には、前述したステップS20,S45,S46,S48の処理により、目標回転数N*が固定の回転数N2に保たれ続けるので、エンジン10の回転数Nは回転数N2に制御され続ける。一方、今回交流出力電流Inewが電流Ip6よりも小さくなり、又は電流Ip3よりも大きくなると、CPU61は、ステップS42又はステップS43にて「Yes」と判定する。そして、CPU61は、ステップS44にて減少フラグDWF及び第3減少サブフラグDWF3を共に“0”に戻して、プログラムをステップS20に進める。したがって、この場合には、前述したステップS20,S22の処理により、目標回転数N*が変換テーブルによって規定される値に設定されるので、エンジン10の回転数Nは変換テーブルによって規定される目標回転数N*にふたたび制御されるようになる。
【0062】
上記説明からも理解できるとおり、上記変形例によれば、複数の共振点があっても、目標回転数N*は、エンジン10が共振する複数の回転数付近をそれぞれスキップするように決定され、エンジン10の回転数Nが目標回転数N*に制御されるので、エンジン10は共振する複数の回転数付近で回転しなくなる。これにより、この場合も、エンジン10の共振点に関係したエンジン10の振動が抑制されて、大きな騒音が発生しなくなる。また、この変形例においても、交流出力電流I(エンジン10の回転数N)の減少時のスキップ幅を交流出力電流I(エンジン10の回転数N)の増加時のスキップ幅よりも大きくしたので、エンジン10の共振による振動を確実に防止することができ、エンジン10による騒音の発生を確実に小さくできる。
【0063】
また、上記実施形態及び変形例においては、変換テーブルを用いて、交流出力電流Iに応じて変化する目標回転数N*を計算するようにした。しかし、この変換テーブルに代えて、回転数制御プログラムに組込まれた関数又は回転数制御プログラムとは別途ROM62内に記憶した関数を用いて、交流出力電流Iに応じて変化する目標回転数N*を計算するようにしてもよい。この場合、図3又は図5の実線に示す特性の関数を定義しておけばよい。
【0064】
また、上記実施形態及び変形例においては、交流出力電流I(すなわちエンジン10の回転数N)の減少中に、エンジン10が共振する1つ又は複数の回転数付近をスキップさせて目標回転数N*を決定する際、交流出力電流Iが減少しても目標回転数N*を固定の回転数N1,N2,N3に固定するようにした。しかし、これに代えて、交流出力電流Iの減少中に目標回転数N*をスキップさせる場合でも、交流出力電流Iの減少に従って小さな変化率で減少する目標回転数N*を決定するようにしてもよい。ただし、交流出力電流Iの減少中のスキップ量を交流出力電流Iの増加中のスキップ量よりも大きくする関係上、前記小さな変化率に対応した傾きを交流出力電流Iの増加中の目標回転数N*の傾きよりも小さく必要がある。この場合、図3において交流出力電流Iが電流Ip2から電流Ip1に変化する際、及び図5において交流出力電流Iが電流Ip3から電流Ip6に、電流Ip5から電流Ip4に、又は電流Ip2から電流Ip1に変化する際に、前記交流出力電流Iの減少に従って小さな変化率で減少する目標回転数N*を規定するための変換テーブル又は関数を用いて、交流出力電流Iに応じて変化する目標回転数N*を決定するようにすればよい。
【0065】
また、上記実施形態及び変形例においては、図2及び図4のステップS14,S15,S31,S32,S34,S35の判定処理により、今回交流出力電流Inewが電流Ip2,Ip5,Ip3を減少する方向に超えることを検出するようにした。しかし、これらの処理に代えて、今回交流出力電流Inewが電流Ip2,Ip5,Ip3をそれぞれ増加方向に超えた時点で、これらの電流Ip2,Ip5,Ip3をそれぞれ増加方向に超えたことを表すフラグをそれぞれ立て(すなわち“1”に設定し)、これらのフラグが立っていることを条件に、今回交流出力電流Inewが電流Ip2,Ip5,Ip3にふたたび等しくなったことを検出することにより、今回交流出力電流Inewが電流Ip2,Ip5,Ip3を減少する方向に超えることを検出するようにしてもよい。なお、この場合には、前記今回交流出力電流Inewが電流Ip2,Ip5,Ip3を減少する方向に超えた時点で、前記各フラグをリセットする(すなわち“0”に設定する)。
【0066】
また、上記実施形態及び変形例においては、交流出力電流I(エンジン10の回転数N)の増加時と減少時とで、目標回転数N*が共振する回転数付近をスキップするスキップ幅を異ならせた。しかし、エンジン10の回転数Nの増加時のエンジン10の振動し易さと、エンジン10の回転数Nの減少時のエンジン10の振動し易さとが問題にならない場合には、エンジン10の回転数Nの増加時の前記スキップ幅と、エンジン10の回転数Nの減少時のスキップ幅を同一にしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態及び変形例においては、交流電力を出力するための3相巻線12aを一つだけ設けるようにした。しかし、一つの発電機内に、エンジン10によって駆動されて、交流電力を出力するための複数の3相巻線を設けるようにしてもよい。この場合、複数の3相巻線の交流出力をそれぞれ全波整流するともに平滑化した複数の直流出力を合成するようにすればよい。また、交流電力を出力するための一つの3相巻線12a又は前記複数の3相巻線に代えて、一つ又は複数の単相巻線を用いてもよい。
【0068】
さらに、上記実施形態及び変形例においては、一つのインバータ式発電機を用いて外部交流機器(外部負荷)に交流電力を供給するようにした。しかし、これに代えて、他のインバータ式発電機を別途用意して、上記実施形態及び変形例に係るインバータ式発電機の出力端子OUT1,OUT2に、他のインバータ式発電機の出力端子を並列に接続して、複数のインバータ式発電機の交流出力を合成して外部交流機器に供給するようにしてもよい。この場合、複数のインバータ式発電機からの交流出力の位相を、インバータ回路のPWMコントロール回路42を制御することにより一致させる必要がある。
【符号の説明】
【0069】
10…エンジン、11…開度調整部、12…発電機、12a…3相巻線、20…全波整流回路、30…平滑回路、40…インバータ回路、50…出力回路、60…コンピュータ部、81…エコノミーモード選択スイッチ、82…電流センサ、83…電圧センサ、84…エンジン回転数センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの回転により交流出力を発生する発電体と、
前記発電体からの交流出力を整流して直流出力に変換する整流回路と、
前記整流回路によって変換された直流出力を交流出力に変換して外部へ出力するインバータ回路と、
前記インバータ回路から外部へ出力される交流出力電流を検出する電流センサと、
前記電流センサによって検出された交流出力電流が増加するに従って増加するエンジンの目標回転数を決定する目標回転数決定手段と、
前記目標回転数決定手段によって決定された目標回転数に前記エンジンの回転数を制御する回転制御手段とを備えたインバータ式発電機において、
前記目標回転数決定手段は、前記エンジンが共振する付近の回転数をスキップするように目標回転数を決定することを特徴とするインバータ式発電機。
【請求項2】
請求項1に記載したインバータ式発電機において、
前記目標回転数決定手段は、前記エンジンが共振する複数の回転数に対してそれぞれスキップするように目標回転数を決定するインバータ式発電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載したインバータ式発電機において、
前記目標回転数決定手段は、前記エンジンの回転数が上昇するときの目標回転数のスキップ幅に比べて、前記エンジンの回転数が減少するときの目標回転数のスキップ幅を大きくすることを特徴とするインバータ式発電機。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれ一つに記載したインバータ式発電機において、
前記目標回転数決定手段は、前記エンジンが共振する付近の回転数をスキップする目標回転数に決定において、前記交流出力電流の変化に対してヒステリシスをもって変化する目標回転数を決定する車両の操舵アシスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−233351(P2010−233351A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78075(P2009−78075)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000201766)ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】