説明

インバータ電源装置

【課題】従来技術のソフトスイッチング方式では、インバータ回路と電力開閉用スイッチング素子との導通及び遮断するタイミングが複雑で高度な制御を必要とした。
【解決手段】高周波交流電圧に変換するインバータ回路と負荷の電圧と出力設定値とを誤差増幅して制御信号を出力する誤差増幅回路と制御信号に応じてパルス幅変調を行いかつ両信号間にデッドタイム時間を有する第1及び第2の出力制御信号を出力するパルス幅変調制御回路とインバータ回路を常に最大パルス幅で駆動するインバータ駆動回路と電力を供給する電力開閉用素子とこの素子を同一電圧でターンオンさせる補助コンデンサと電力開閉用素子を駆動しこの駆動時間の最大値をインバータ駆動回路の最大パルス幅よりも補助コンデンサ放電時間だけ短い時間に制限する電力開閉用駆動回路と高周波交流電圧を負荷に応じた出力に変換する出力変換回路とを備えたインバータ電源装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に電力を供給する高周波電源のインバータ電源装置において、特に直流電圧をスイッチング素子によって高周波交流電圧に変換する時に発生するインバータ部のスイッチング損失の値を低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来技術のインバータ電源装置の代表的な例であるアーク加工用電源装置の電気接続図である。同図を用いて従来技術の電源装置の動作について説明する。直流電源回路は、三相交流商用電源ACの出力を整流して直流電圧に変換する一次整流回路DR1と、上記直流に変換した電圧を平滑する平滑コンデンサC1とから形成されている。
【0003】
図6に示すブリッジ接続されたインバータ回路は、第1のスイッチング素子TR1乃至第4のスイッチング素子TR4によって形成され、相対向する辺を形成する第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4と、第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3とがそれぞれ対をなし、これらの対をなす第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4又は第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3が交互に導通と遮断を繰り返して直流電圧を高周波交流電圧に変換する。
【0004】
第1の逆導通ダイオードD1乃至第4の逆導通ダイオードD4は、第1のスイッチング素子TR1乃至第4のスイッチング素子TR4に逆極性で並列に接続し、導通から遮断に移行するときに発生するサージ電圧を平滑コンデンサC1及び補助コンデンサC2にバイパスして逆電圧の印加を防止する。変圧器INTは、一次側の高周波交流電圧をアーク加工に適した電圧に変換する。二次整流回路DR2は、上記変圧器INTの出力を整流してアーク加工用直流電圧に変換し直流リアクトルDCLを通じて供給する。
【0005】
出力電流検出回路IDは、出力電流を検出して出力電流検出信号Idとして出力する。誤差増幅回路ERは、出力電流設定信号Irと出力電流検出信号Idとを誤差増幅して、フィードバック信号Erを出力する。パルス幅変調制御回路SCは、パルス周波数が一定でパルス幅を変調するパルス幅変調制御を行い、フィードバック信号Erの値に応じてパルス幅変調制御を行い互いに半周期ずれた信号でありかつ両信号間にデッドタイム時間を有する第1の出力制御信号Sc1及び第2の出力制御信号Sc2を出力する。
【0006】
電力開閉用スイッチング素子TR5は、平滑コンデンサC1と補助コンデンサC2との間に直列に接続されたチョッパ用スイッチング素子であり、直流電源回路からの出力の供給を制御する。また、インバータ回路のターンオフした後に変圧器INTの漏れインダクタンスによって溜まったエネルギーによって起電力が発生して、上記補助コンデンサC2が高電圧に充電され電力開閉用スイッチング素子TR5の定格電圧以上になると素子が破壊する。第5の逆導通ダイオードD5はこの高電圧を平滑コンデンサC1にバイパスさせて高電圧の発生を防止する。
【0007】
補助コンデンサC2は、電力開閉用スイッチング素子TR5の入力電圧と出力電圧を略同一電圧(零電圧)でスイッチングするものである。かつブリッジ接続したインバータ回路の第1のスイッチング素子TR1乃至第4のスイッチング素子TR4を略零電圧でターンオフさせる。
【0008】
インバータ駆動回路SRは補助コンデンサ時限回路を含み、第1の出力制御信号Sc1がオンすると第1のスイッチング素子駆動信号Tr1及び第4のスイッチング素子駆動信号Tr4をオンにし、上記第1の出力制御信号Sc1がオフすると、この変化した時点から補助コンデンサC2が相当に放電する補助コンデンサ放電時間Taが経過した後に上記第1のスイッチング素子駆動信号Tr1及び第4のスイッチング素子駆動信号Tr4をオフにする。続いて、第2の出力制御信号Sc2がオンすると第2のスイッチング素子駆動信号Tr2及び第3のスイッチング素子駆動信号Tr3をオンにし、上記第2の出力制御信号Sc2がオフすると、この変化した時点から補助コンデンサC2が相当に放電する補助コンデンサ放電時間Taが経過した後に上記第2のスイッチング素子駆動信号Tr2及び第3のスイッチング素子駆動信号Tr3のオフにする。
【0009】
電力開閉用駆動回路CRは、第1の出力制御信号Sc1と第2の出力制御信号Sc2とをオア論理すると共に第1のスイッチング素子駆動信号Tr1と第2のスイッチング素子駆動信号Tr2のオア論理し、上記各オア論理した信号を続いてアンド論理して電力開閉用駆動信号Crとして出力する。
【0010】
図7は、図6に示す従来技術のアーク加工用電源装置の動作を説明する波形タイミング図であり、同図(A)の波形は第1の出力制御信号Sc1を示し、同図(B)の波形は第2の出力制御信号Sc2を示す。同図(C)の波形は第1のスイッチング素子駆動信号Tr1を示し、同図(D)の波形は第2のスイッチング素子駆動信号Tr2を示す。同図(E)の波形は電力開閉用駆動信号Crを示し、同図(F)の波形は補助コンデンサC2の端子電圧Vc2を示し、同図(G)の波形は第1のスイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧V1を示し、同図(H)の波形は第1のスイッチング素子TR1のコレクタ電流Ic1を示す。同図(I)の波形は第2のスイッチング素子TR2のコレクタ・エミッタ間電圧V2を示し、同図(J)の波形は第2のスイッチング素子TR2のコレクタ電流Ic2を示す。同図(K)の波形は電力開閉用スイッチング素子TR5のコレクタ・エミッタ間電圧V5を示し、同図(L)の波形は電力開閉用スイッチング素子TR5のコレクタ電流Ic5を示す。
【0011】
以下、図7の波形タイミング図を用いて動作について説明する。起動信号Tsが入力されるとパルス幅変調制御回路SCは、フィードバック信号Erの値に応じて定まる図7(A)に示す第1のパルス幅T1の第1の出力制御信号Sc1、続いて、同図(B)に示す第2のパルス幅T2の第2の出力制御信号Sc2を出力する。同図(A)に示す時刻t=t1において、第1の出力制御信号Sc1がインバータ駆動回路SRに入力されると、同図(C)に示す第1のスイッチング素子駆動信号Tr1及び(図示省略の)第4のスイッチング素子駆動信号Tr4をオンして第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4を導通させる。このときに図7(H)に示すコレクタ電流Ic1は、変圧器INTの漏れインダクタンスの存在により、コレクタ電流Ic1の立ち上がりが緩やかとなり、図7(G)に示すコレクタ・エミッタ間電圧V1との積で生じるターンオン損失がほとんど発生せず、いわゆる零電流ターンオンとなる。
【0012】
図7(A)に示す時刻t=t2において、第1の出力制御信号Sc1がオフすると、インバータ駆動回路SRは時限を開始して補助コンデンサが相当に放電する補助コンデンサ放電時間Taが経過した同図(C)に示す時刻t=t3の時点で第1のスイッチング素子駆動信号Tr1及び第4のスイッチング素子駆動信号Tr4をオフにする。上記よりT1+Ta=T3の間は、第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4を導通し、このときに飽和損失が発生する。また、時刻t=t2において、第1の出力制御信号Sc1がオフすると電力開閉用駆動回路CRは電力開閉用駆動信号Crをオフにする。このとき電力開閉用スイッチング素子TR5は第5のパルス幅T5の間は飽和損失が発生する。続いて、上記電力開閉用スイッチング素子TR5が遮断すると直流電源回路からの出力の供給が停止する。このとき、補助コンデンサC2の存在により、上記電力開閉用スイッチング素子TR5の遮断時に上記電力開閉用スイッチング素子TR5のコレクタ・エミッタ間に印加される電圧V5は、同図(K)のように電圧が緩やかに上昇するため、上記上記電力開閉用スイッチング素子TR5は零電圧でターンオフされる。
【0013】
図7(C)に示す時刻t=t3において、第1のスイッチング素子駆動信号Tr1及び第4のスイッチング素子駆動信号Tr4がオフになり、第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4が遮断するが、このとき既に同図(F)に示す補助コンデンサC2の端子電圧Vc2が相当に放電され略零電圧になっているので、第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4の遮断と同時に、第2の逆導通ダイオードD2及び第3の逆導通ダイオードD3が導通し、変圧器INTの漏れインダクタンスに蓄えられたエネルギーは略零となっている上記補助コンデンサC2に充電され、上記補助コンデンサC2の端子電圧は同図(F)のように緩やかに上昇する。このとき、上記第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4には上記補助コンデンサC2の端子電圧、同図(F)に示すVc2と同じ電圧が印加されるので、上記第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4のターンオフ時の電圧と電流の積は略零となり、いわゆる零電圧ターンオフが実現できる。また、時刻t=t3〜t4はアーム短絡を防止するデッドタイム時間である。
【0014】
時刻t=t3〜t31は、補助コンデンサC2を充電する回生電流が流れる期間であり、この期間中は図7(F)に示すように上記補助コンデンサC2は平滑コンデンサC1と同じ電圧まで充電される。時刻t=t31〜t32は、第5の逆導通ダイオードD5がオンして、変圧器INTに蓄えられたエネルギーが平滑コンデンサC1に回生される期間である。続いて、時刻t=t31〜t4はインバータ回路が休止状態にあり、この期間において、同図(I)に示す第2のスイッチング素子TR2のコレクタ・エミッタ間に電圧V2が発生する。
【0015】
時刻t=t4において、図7(E)に示す電力開閉用駆動信号Crは第2のスイッチング素子駆動信号Tr2がオンになると上記電力開閉用駆動信号Crもオンになり電力開閉用スイッチング素子TR5が導通する。この時点では、前期時刻t=t3〜t32の期間において、既に変圧器INTの漏れインダクタンスに溜まったエネルギーによって、補助コンデンサC2に電荷が充分充電されており、このため電力開閉用スイッチング素子TR5は入力電圧と出力電圧とを略同一電圧であり、零電圧でターンオンすることができる。
【0016】
また、時刻t=t4において、図7(B)に示す第2の出力制御信号Sc2がインバータ駆動回路SRに入力されると、同図(D)に示す第2のスイッチング素子駆動信号Tr2及び(図示省略の)第3のスイッチング素子駆動信号Tr3を出力して第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3を導通させる。このときにコレクタ電流Ic2は、変圧器INTの漏れインダクタンスの存在により、図7(J)に示すコレクタ電流Ic2の立ち上がりが緩やかとなり、図7(I)に示すコレクタ・エミッタ間電圧V2との積で生じるターンオン損失がほとんど発生せず、いわゆる零電流ターンオンとなる。
【0017】
図7(B)に示す時刻t=t5において、第2の出力制御信号Sc2がオフすると、インバータ駆動回路SRは時限を開始して補助コンデンサが相当に放電する補助コンデンサ放電時間Taが経過した時刻t=t6の時点で第2のスイッチング素子駆動信号Tr2及び第3のスイッチング素子駆動信号Tr3をオフにする。上記よりT2+Ta=T4の間は、第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3を導通し飽和損失が発生する。また、時刻t=t5において、第2の出力制御信号Sc2がオフすると電力開閉用駆動回路CRは電力開閉用駆動信号Crをオフにする。このときに、電力開閉用スイッチング素子TR5の第6のパルス幅T6の間は飽和損失が発生する。続いて、上記電力開閉用スイッチング素子TR5が遮断すると直流電源回路からの出力の供給が停止する。このとき、上記補助コンデンサC2の存在により上記電力開閉用スイッチング素子TR5の遮断時に上記電力開閉用スイッチング素子TR5のコレクタ・エミッタ間に印加される電圧V5は、同図(K)のように電圧が緩やかに上昇するため、上記電力開閉用スイッチング素子TR5は零電圧でターンオフされる。
【0018】
図7(D)に示す時刻t=t6において、第2のスイッチング素子駆動信号Tr2及び第3のスイッチング素子駆動信号Tr3がオフになり、第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3が遮断するが、このとき既に同図(F)に示す補助コンデンサC2の端子電圧Vc2が相当に放電され略零電圧になっているので、第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3の遮断と同時に、第1の逆導通ダイオードD1及び第4の逆導通ダイオードD4が導通し、変圧器INTの漏れインダクタンスに蓄えられたエネルギーは略零となっている上記補助コンデンサC2に充電され、上記補助コンデンサC2の端子電圧は同図(F)のように緩やかに上昇する。このとき、上記第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチングTR3には上記補助コンデンサC2の端子電圧、同図(F)に示すVc2と同じ電圧が印加されるので、上記第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3のターンオフ時の電圧と電流の積は略零となり、いわゆる零電圧ターンオフが実現できる。また、時刻t=t6〜t61はアーム短絡を防止するデッドタイム時間である。
【0019】
時刻t=t6〜t61は、補助コンデンサC2を充電する回生電流が流れる期間であり、この期間中に図7(F)に示すように上記補助コンデンサC2は平滑コンデンサC1と同じ電圧まで充電される。時刻t=t61〜t62は、第5の逆導通ダイオードD5がオンして、変圧器INTに蓄えられたエネルギーが平滑コンデンサC1に回生される期間である。続いて、時刻t=t61〜t7は、インバータ回路が休止状態にあり、この期間において、同図(G)に示す第1のスイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間に電圧V1が発生する。
【0020】
時刻t=t7において、図7(E)に示す電力開閉用駆動信号Crは第1のスイッチング素子駆動信号Tr1がオンになると上記電力開閉用駆動信号Crもオンになり電力開閉用スイッチング素子TR5が導通する。この時点では、前期時刻t=t6〜t62の期間において、既に変圧器INTの漏れインダクタンスに溜まったエネルギーよって、補助コンデンサC2に電荷が充分充電されており、このため電力開閉用スイッチング素子TR5は入力電圧と出力電圧とを略同一電圧であり、零電圧でターンオンすることができる。また、同図(A)に示す第1の出力制御信号Sc1がインバータ駆動回路SRに入力されると、同図(D)に示す第1のスイッチング素子駆動信号Tr1及び(図示省略の)第4のスイッチング素子駆動信号Tr4を出力して第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4を導通させる。このときにコレクタ電流Ic1は、変圧器INTの漏れインダクタンスの存在により、図7(H)に示すコレクタ電流Ic1の立ち上がりが緩やかとなり、図7(G)に示すコレクタ・エミッタ間電圧V1との積で生じるターンオン損失がほとんど発生せず、いわゆる零電流ターンオンとなる。特許文献1では、上述に示すソフトスイッチング技術が開示されている。
【0021】
【特許文献1】特開2003−311408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上述に示す従来技術のインバータ電源装置において、直流電源回路とインバータ回路との間に上記直流電源回路からの出力を供給する電力開閉用スイッチング素子と上記インバータ回路の入力側に並列に上記電力開閉用スイッチング素子の入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオンさせる補助コンデンサとを設け、上記インバータ電源装置の出力を互いに半周期ずれた第1の出力制御信号及び第2の出力制御信号をフィードバック制御し、上記第1の出力制御信号及び第2の出力制御信号がオンすると上記電力開閉用スイッチング素子を導通させオフすると上記記電力開閉用スイッチング素子を遮断させ、上記第1の出力制御信号がオンすると第1のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子を導通させ、上記第1の出力制御信号がオフすると上記補助コンデンサが相当に放電する補助コンデンサ放電時間が経過した後に上記第1のスイッチング素子及び上記第4のスイッチング素子を遮断させ、続いて上記第2の出力制御信号がオンすると第2のスイッチング素子及び第3のスイッチング素子を導通させ、上記第2の出力制御信号がオフすると上記補助コンデンサが相当に放電する補助コンデンサ放電時間が経過した後に上記第2のスイッチング素子及び上記第3のスイッチング素子を遮断させるので、上記補助コンデンサの端子間電圧が略零に放電され、このときに上記インバータ回路の各スイッチング素子が遮断すると略零電圧でターンオフが行われターンオフ損失値が略零となる。また、第1のスイッチング素子TR1乃至第4のスイッチング素子TR4のターンオン時は、変圧器INTの漏れインダクタンスの存在により零電流ターンオンとなり、上記各スイッチング素子に掛かる電圧と流れる電流の積によるターンオン損失は略零である。しかし、上記各スイッチング素子のターンオン損失には、上記各スイッチング素子の出力端(IGBTでは、コレクタ・エミッタ間、MOSFETでは、ドレイン・ソース間)に存在する寄生容量に充電された電荷を、上記各スイッチング素子のターンオン時に素子内で短絡・放電することによる損失が存在する。一般的に寄生容量が少ないIGBTを100kHz程度以下でスイッチングする場合は、この損失は無視出来るが、上記IGBTを100kHz程度以上でスイッチングする場合や、寄生容量が大きいMOSFETをスイッチング素子として使用する場合は、各スイッチング素子の寄生容量に充電された電荷の短絡・放電による損失を無視出来なくなる。また、素子の寄生容量に充電された電荷の短絡・放電にするときに、di/dtが非常に高い放電電流が流れ、電磁ノイズが発生する問題もある。
【0023】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するインバータ電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、直流電圧を出力する直流電源回路と第1のスイッチング素子と第1のスイッチング素子に相対向する第4のスイッチング素子と、第2のスイッチング素子と第2のスイッチング素子に相対向する第3のスイッチング素子とからブリッジを形成し上記直流電圧を高周波交流電圧に変換するインバータ回路と、負荷の電圧又は電流と予め定めた出力設定信号とを誤差増幅してフィードバック制御信号を出力する誤差増幅回路と、上記フィードバック制御信号に応じてパルス幅変調制御を行い互いに半周期ずれた信号でありかつ両信号間にデッドタイム時間を有する第1の出力制御信号及び第2の出力制御信号を出力するパルス幅変調制御回路と、上記第1の出力制御及び上記第2の出力制御信号に同期して上記インバータ回路を常に最大パルス幅で駆動するインバータ駆動回路と、上記直流電源回路と上記インバータ回路との間に設けて上記直流電源回路からの出力を供給する電力開閉用スイッチング素子と、上記インバータ回路の入力側に並列に設けて上記電力開閉用スイッチング素子の入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオンさせる補助コンデンサと、上記第1の出力制御及び上記第2の出力制御信号によって上記電力開閉用スイッチング素子を駆動すると共にこの各駆動時間の最大値を上記インバータ駆動回路の最大パルス幅よりも上記補助コンデンサが相当に放電する補助コンデンサ放電時間だけ短い時間に制限する電力開閉用駆動回路と、上記高周波交流電圧を負荷に適した電圧に変換する変圧器と上記変換した高周波交流電圧を負荷に応じた出力に変換する出力変換回路と、を具備したことを特徴とするインバータ電源装置である。
【0025】
第2の発明は、アーム短絡を防止する時間以上であり前記変圧器の漏れインダクタンスに溜まったエネルギーによって前記補助コンデンサを充電する回生電流が流れている時間以内であることを特徴とする請求項1記載のインバータ電源装置である。
【0026】
第3の発明は、上記デッドタイム時間は、前記デッドタイム時間は、アーム短絡を防止する時間以上であり、前記変圧器の漏れインダクタンスに溜まったエネルギーによって前記補助コンデンサを充電する回生電流の通電が略終了する時間であることを特徴とする請求項1記載のインバータ電源装置である。
【発明の効果】
【0027】
第1の発明によれば、2組の相対向する1対のスイッチング素子がブリッジ接続されたインバータ回路において、上記インバータ回路を常に最大パルス幅で駆動させ、電力開閉用スイッチング素子のパルス幅をフィードバック制御信号に応じて制御し直流電源回路からの出力を供給するために、上記インバータ回路と電力開閉用スイッチング素子との導通及び遮断するタイミングが非常に簡単になる。更に補助コンデンサが相当に放電された後に上記インバータ回路の最大パルス幅が終了するのでターンオフ時の損失も発生しない。
【0028】
第2の発明によれば、インバータ回路に使用されているIGBT又はMOSFETでは出力端子の寄生容量が大きいために上記インバータ回路がターンオンしたときにコレクタ・エミッタ間に電圧が発生し、このコレクタ・エミッタ電圧とコレクタ電流との積によってターンオン損失が発生する。しかし、本発明ではアーム短絡を防止する時間以上のデッドタイム時間を設け、この期間中に変圧器の漏れインダクタンスに溜まったエネルギーによって上記補助コンデンサを充電する回生電流が流れ、この回生電流が流れているときは上記インバータ回路の所定のスイッチング素子は短絡状態にある。上記アーム短絡を防止する時間が経過し上記インバータ回路の所定のスイッチング素子が短絡状態にあるときにターンオンを行うと、コレクタ・エミッタ間の電圧が略零となりターンオン損失が発生しない。
【0029】
第3の発明によれば、変圧器の漏れインダクタンスに溜まったエネルギーによって補助コンデンサを充電する回生電流が終了する略終了時に上記インバータ回路をターンオンさせると、上記インバータ回路のターンオン損失は発生しない。更に上記補助コンデンサの電圧が相当に充電されているので電力開閉用スイッチング素子は入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオンすることができ上記電力開閉用スイッチング素子のターンオン損失も発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明のインバータ電源装置の代表的な例であるスイッチング・レギュレータの電気接続図である。同図を用いて本発明の動作について説明する。
【0031】
出力変換回路は、1次側の高周波交流電圧を負荷に適した電圧に変換する変換器と上記高周波交流電圧を整流して直流電圧に変換する二次整流回路DR2と、上記直流電圧を整流及び平滑してリップル成分を減衰させて負荷に供給する直流リアクトルDCL及び2次平滑コンデンサC3とで形成されている。
【0032】
出力電圧検出回路VDは出力電圧を検出して出力電圧検出信号Vdとして出力する。誤差増幅回路ERは、出力電圧設定器VRによって設定された出力電圧設定信号Vrと上記出力電圧検出信号Vdとを誤差増幅してフィードバック信号Erを出力する。
【0033】
パルス幅変調制御回路SCは、パルス周波数が一定でパルス幅を変調するパルス幅変調制御を行い、フィードバック信号Erの値に応じてパルス幅変調制御を行い互いに半周期ずれた信号でありかつ両信号間にデッドタイム時間を有する第1の出力制御信号Sc1及び第2の出力制御信号Sc2を出力する。
【0034】
インバータ駆動回路MRは、図2に示すように、第1の時限回路TI1、第2の時限回路TI2、第1のバッフア回路BF1、第2のバッフア回路BF2、第3のバッフア回路BF3及び第4のバッフア回路BF4によって形成され、第1の出力制御信号Sc1がオンになると上記第1の時限回路TI1は時限を設定し、上記インバータ回路を常に最大パルス幅で駆動するように第1のスイッチング素子駆動信号Tr1及び第4のスイッチング素子駆動信号Tr4のパルス幅を設定し、第2の出力制御信号Sc2がオンになると上記第2の時限回路TI2は時限を設定し、上記インバータ回路を常に最大パルス幅で駆動するように第2のスイッチング素子駆動信号Tr2及び第3のスイッチング素子駆動信号Tr3のパルス幅を設定する。
【0035】
電力開閉用駆動回路CWは、図3に示す、第1のオア回路OR1、第3の時限回路T3及びアンド回路ANDによって形成され、第1の出力制御Sc1及び第2の出力制御信号Sc2に応じて予め定めた時限Tb経過した後に電力開閉用スイッチング素子TR5を駆動すると共にこの駆動時間の最大値を上記インバータ駆動回路MRの最大パルス幅よりも上記補助コンデンサC2が相当に放電する補助コンデンサ放電時間Taだけ短い時間に制限された電力開閉用駆動信号Cwを出力する。
【0036】
図4は、図1に示す本発明の電源装置の動作を説明する波形タイミング図であり、同図(A)の波形は第1の出力制御信号Sc1を示し、同図(B)の波形は第2の出力制御信号Sc2を示す。同図(C)の波形は第1のスイッチング素子駆動信号Tr1を示し、同図(D)の波形は第2のスイッチング素子駆動信号Tr2を示す。同図(E)の波形は電力開閉用駆動信号Cwを示し、同図(F)の波形は補助コンデンサC2の端子電圧Vc2を示し、同図(G)の波形は第1のスイッチング素子TR1のコレクタ・エミッタ間電圧V1を示し、同図(H)の波形は第1のスイッチング素子TR1のコレクタ電流Ic1を示す。同図(I)の波形は第2のスイッチング素子TR2のコレクタ・エミッタ間電圧V2を示し、同図(J)の波形は第2のスイッチング素子TR2のコレクタ電流Ic2を示す。同図4(K)の波形は電力開閉用スイッチング素子TR5のコレクタ・エミッタ間電圧V5を示し、同図(L)の波形は電力開閉用スイッチング素子TR5のコレクタ電流Ic5を示す。
【0037】
以下、図4の波形タイミング図を用いて動作について説明する。起動信号Tsが入力されるとパルス幅変調制御回路SCは、フィードバック信号Erの値に応じて定まる図4(A)に示す第1のパルス幅T1の第1の出力制御信号Sc1及び同図(B)に示す第2のパルス幅T2の第2の出力制御信号Sc2を出力する。時刻t=t1において、第1の出力制御信号Sc1がインバータ駆動回路MRに入力されると、同図(C)に示す第1のスイッチング素子駆動信号Tr1の第3のパルス幅T3及び(図示省略の)第4のスイッチング素子駆動信号Tr4の第3のパルス幅T3を最大パルス幅にして出力し、第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4を導通させる。また、第1の出力制御信号Sc1がオンになり所定の時限Tbが経過した時刻t=t11において、同図(E)に示す電力開閉用駆動信号Cwがオンとなり、上記電力開閉用スイッチング素子TR5を導通する。この時点では既に主変圧器INTの漏れインダクタンスに溜まったエネルギーでによって補助コンデンサC2の端子間には所定の電圧が充電されているので、電力開閉用スイッチング素子TR5は入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオンできターンオン損失が発生しなくなる。
【0038】
図4(A)に示す時刻t=t2において、第1の出力制御信号Sc1の第1のパルス幅T1が電力開閉用駆動信号Cwの最大パルス幅T7より短いとき、上記第1の出力制御信号Sc1がオフになると電力開閉用駆動回路CWの電力開閉用駆動信号Cwもオフになる。このとき、電力開閉用スイッチング素子TR5の第5のパルス幅T5の期間中において飽和損失が発生する。続いて、上記電力開閉用スイッチング素子TR5が遮断すると直流電源回路からの出力の供給が停止する。このとき補助コンデンサC2の端子電圧は充電されており、上記電力開閉用スイッチング素子TR5を遮断しても入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオフされてターンオフ損失は発生しない。
【0039】
補助コンデンサC2は、時刻t=t2において電力開閉用スイッチング素子TR5が遮断すると放電を開始し、補助コンデンサ放電時間Taが経過した時刻t3の時点では上記補助コンデンサC2の端子電圧Vc2が略零になっている。続いて、時刻t=t2〜t3において、第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4は導通し続け、変圧器INT、第2の逆導通ダイオードD2、第1のスイッチング素子TR1及び変圧器INT並びに変圧器INT、第4のスイッチング素子TR4、第3の逆導通ダイオードD3、変圧器INTの二つの経路で循環電流が流れ、図4(H)に示す様にコレクタ電流Ic1は略1/2に減少する。
【0040】
時刻t=t3において、第1のスイッチング素子駆動信号Tr1及び第4のスイッチング素子駆動信号Tr4の第3のパルス幅T3が終了すると第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4が遮断するが、このとき、図4(F)に示す補助コンデンサC2の端子電圧Vc2が既に零電圧になっているので、零電圧でターンオフが可能となりターンオフ損失は発生しない。
【0041】
時刻t=t3〜t4の期間は、アーム短絡を防止する時間以上のデッドタイム時間Tdであり、変圧器INTの漏れインダクタンスに溜まったエネルギーによって補助コンデンサC2の端子間に所定の電圧を充電する充電時間でもある。このとき、上記変圧器INT、第2の逆導通ダイオードD2、補助コンデンサC2及び第3の逆導通ダイオードD3の経路で図4(J)に負の電流が回生する。この負の電流が回生している期間は第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3は短絡状態にあり、この短絡が継続されている時刻t=t4において、上記第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3を遮断から導通すると同図(I)に示すコレクタ・エミッタ間に電圧が発生せず、略零電圧でターンオンが可能となりターンオン損失が発生しなくなる。更に、ターンオン時に電圧が発生しなくなると電磁ノイズも減少する。
【0042】
第2の出力制御信号Sc2がオンになり所定の時限Tbが経過した時刻t=t41において、同図(E)に示す電力開閉用駆動信号Cwがオンとなり上記電力開閉用スイッチング素子TR5を導通する。この時点では既に主変圧器INTの漏れインダクタンスに溜まったエネルギーによって補助コンデンサC2の端子間には所定の電圧が充電されているので、電力開閉用スイッチング素子TR5は入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオンできターンオン損失が発生しなくなる。
【0043】
時刻t=t5において、第2の出力制御信号Sc2の第2のパルス幅T2が電力開閉用駆動信号Cwの最大パルス幅T8より短いとき、上記第2の出力制御信号Sc2がオフになると電力開閉用駆動回路CWの電力開閉用駆動信号Cwもオフになる。このとき、電力開閉用スイッチング素子TR5は第6のパルス幅T6の期間中において飽和損失が発生する。続いて、上記電力開閉用スイッチング素子TR5が遮断すると直流電源回路からの出力の供給が停止する。このとき補助コンデンサC2の端子電圧は充電されており、上記電力開閉用スイッチング素子TR5を遮断しても入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオフされてターンオフ損失は発生しない。
【0044】
補助コンデンサC2は、時刻t=t5において電力開閉用スイッチング素子TR5が遮断すると放電を開始し、補助コンデンサ放電時間Taが経過した時刻t6の時点では上記補助コンデンサC2の端子電圧Vc2が略零になっている。続いて、時刻t=t5〜t6において、第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3は導通し続け、変圧器INT、第1の逆導通ダイオードD1、第2のスイッチング素子TR2、変圧器INT及び変圧器INT、第3のスイッチング素子TR3、第4の逆導通ダイオードD4、変圧器INTの二つの経路で循環電流が流れ、図4(J)に示す様にコレクタ電流Ic2は略1/2に減少する。
【0045】
時刻t=t6において、第2のスイッチング素子駆動信号Tr2及び第3のスイッチング素子駆動信号Tr3の第4のパルス幅T4が終了すると第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3が遮断するが、このとき、図4(F)に示す補助コンデンサC2の端子電圧Vc2が既に略電圧になっているので零電圧でターンオフか可能となりターンオフ損失が発生しない。
【0046】
時刻t=t6〜t7の期間は、アーム短絡を防止する時間以上のデッドタイム時間Tdであり、上記変圧器INTの漏れインダクタンスに溜まったエネルギーによって補助コンデンサC2の端子間に所定電圧を充電する充電時間でもある。このとき、変圧器INT、第1の逆導通ダイオードD1、補助コンデンサC2及び第4の逆導通ダイオードD4の経路で図4(H)に負の電流が回生する。この負の電流が回生している期間は第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4は短絡状態にあり、この短絡が継続されている時刻t=t7において、上記第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4を遮断から導通すると同図(I)に示すコレクタ・エミッタ間に電圧が発生せず、略零電圧でターンオンが可能となりターンオン損失が発生しなくなる。更に、ターンオン時に電圧が発生しなくなると電磁ノイズも減少する。
【0047】
[実施の形態2]
図5は、実施の形態2に使用するインバータ駆動回路の詳細図であり、図1に示す本発明の実施の形態1のインバータ電源装置の電気接続図と同一符号は、同一動作を行うので説明は省略して相違する動作について説明する。
【0048】
図5に示すデッドタイム対応インバータ駆動回路MRDは、第1の時限回路TI1、第2の時限回路TI2、デッドタイム時限回路DT、第2のオア回路OR2、第3のオア回路OR3、第1のバッフア回路BF1、第2のバッフア回路BF2、第3のバッフア回路BF3及び第4のバッフア回路BF4によって形成され、第1の出力制御信号Sc1がオンになると上記第1の時限回路TI1は時限を設定し、上記インバータ回路を常に最大パルス幅で駆動するように第1の時限信号Ti1を設定し、上記デッドタイム時限回路DTはアーム短絡を防止する時間以上であり、上記補助コンデンサを充電する回生電流が流れる予め定めた時限を設定し、上記第1の時限信号Ti1がオフになると動作開始し、デッドタイム時限信号DtをLowレベルにして出力する。上記第3のオア回路OR3は、上記第1の時限信号Ti1と上記デッドタイム時限信号Dtとのオア論理を取って第1のスイッチング素子駆動信号Tr1及び第4のスイッチング素子駆動信号Tr4として出力する。
【0049】
続いて、第2の出力制御信号Sc2がオンになると上記第2の時限回路TI2は時限を設定し、上記インバータ回路を常に最大パルス幅で駆動するように第2の時限信号Ti2を設定し、上記デッドタイム時限回路DTは、上記第2の時限信号Ti2がオフになると動作開始してデッドタイム時限信号DtをLowレベルにして出力する。上記第4のオア回路OR4は、上記第2の時限信号Ti2と上記デッドタイム時限信号Dtとのオア論理を取って第2のスイッチング素子駆動信号Tr2及び第3のスイッチング素子駆動信号Tr3として出力する。
【0050】
以下、動作について図4の波形タイミング図を用いて説明する。時刻t=t1において、第1の出力制御信号Sc1がオンになると第1の時限回路TI1は動作を開始して、第1のスイッチング素子駆動信号Tr1及び第4のスイッチング素子駆動信号Tr4が最大パルス幅になる第1の時限信号Ti1をHighレベルにして出力する。続いて時刻t=t3において、上記第1の時限回路TI1は動作を停止して第1の時限信号Ti1をLowレベルにする。上記デッドタイム時限回路DTは、上記第1の時限信号Ti1がLowレベルになると動作を開始してアーム短絡を防止する時間以上であり、上記補助コンデンサを充電する回生電流が流れる時限のデッドタイム時限信号DtをLowレベルにして出力する。上記第3のオア回路OR3は、上記第1の時限信号Ti1と上記デッドタイム時限信号Dtとのオア論理を取って第1のスイッチング素子駆動信号Tr1及び第4のスイッチング素子駆動信号Tr4として出力する。このときデッドタイム時間Tdは上記デッドタイム時限信号Dtによって決定し、上記デッドタイム時限信号Dtの時間を上記アーム短絡を防止する時限まで短く設定すると、図4(D)に示す第2のスイッチング素子駆動信号Tr2及び第3のスイッチング素子駆動信号Tr3は時刻t=t4より前にオンする。
【0051】
時刻t=t4において、第2の出力制御信号Sc2がオンになると第2の時限回路TI2は動作を開始して、第2のスイッチング素子駆動信号Tr2及び第3のスイッチング素子駆動信号Tr3が最大パルス幅になる第2の時限信号Ti2をHighレベルにして出力する。続いて時刻t=t6において、上記第2の時限回路TI2は動作を停止して第2の時限信号Ti2をLowレベルにする。上記デッドタイム時限回路DTは、上記第2の時限信号Ti2がLowレベルになると動作を開始してアーム短絡を防止する時間以上であり、上記補助コンデンサを充電する回生電流が流れるデッドタイム時限信号DtをLowレベルにして出力する。上記第4のオア回路OR4は、上記第2の時限信号Ti2と上記デッドタイム時限信号Dtとのオア論理を取って第2のスイッチング素子駆動信号Tr2及び第3のスイッチング素子駆動信号Tr3として出力する。このときデッドタイム時間tdは上記デッドタイム時限信号Dtによって決定し、上記デッドタイム時限信号Dtの時間を上記アーム短絡を防止する時限まで短く設定すると、図4(C)に示す第1のスイッチング素子駆動信号Tr1及び第4のスイッチング素子駆動信号Tr4は時刻t=t7より前にオンする。このとき、負の電流が回生し第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4は短絡状態にあり短絡から導通する。
【0052】
[実施の形態3]
実施の形態3は、図5に示すデッドタイム対応インバータ駆動回路MRDのデッドタイム時限回路DTの時限を、アーム短絡を防止する時間以上であり、上記変圧器INTの漏れインダクタンスに溜まったエネルギーによって上記補助コンデンサC2を充電する回生電流の通電が略終了する時間に設定するので、図4(F)に示す上記補助コンデンサC2の端子電圧が相当に充電され、上記第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4並びに第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3が短絡状態が終了する直前で導通する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1のインバータ電源装置の電気接続図である。
【図2】図1に示すインバータ駆動回路の詳細図である。
【図3】図1に示す電力開閉用駆動回路の詳細図である。
【図4】本発明のインバータ電源装置の動作を説明する波形タイミング図である。
【図5】実施の形態2及び形態3に使用するインバータ駆動回路の詳細図である。
【図6】従来技術のアーク加工用電源装置の電気接続図である。
【図7】従来技術の動作を説明する波形タイミング図である。
【符号の説明】
【0054】
AND アンド回路
BF1 第1のバッフア回路
BF2 第2のバッフア回路
BF3 第3のバッフア回路
BF4 第4のバッフア回路
C1 平滑コンデンサ
C2 補助コンデンサ
C3 2次平滑コンデンサ
CR 電力開閉用駆動回路
CW 電力開閉用駆動回路(駆動時間制限対応)
DT デッドタイム時限回路
D1 第1の逆導通ダイオード
D2 第2の逆導通ダイオード
D3 第3の逆導通ダイオード
D4 第4の逆導通ダイオード
D5 第5の逆導通ダイオード
DCL 直流リアクトル
DR1 1次整流回路
DR2 2次整流回路
ER 誤差増幅回路
ID 出力電流検出回路
IR 出力電流設定回路
INT 変圧器
MR インバータ駆動回路(最大パルス幅対応)
MRD デッドタイム対応インバータ駆動回路
OR1 第1のオア回路
OR2 第2のオア回路
OR3 第3のオア回路
OR4 第4のオア回路
SC パルス幅変調制御回路
SR インバータ駆動回路
TI1 第1の時限回路
TI2 第2の時限回路
TI3 第3の時限回路
TS 起動スイッチ
TR1 第1のスイッチング素子
TR2 第2のスイッチング素子
TR3 第3のスイッチング素子
TR4 第4のスイッチング素子
TR5 電力開閉用スイッチング素子
VD 出力電圧検出回路
VR 出力電圧設定回路
Cw 電力開閉用駆動信号(駆動時間制限対応)
Dt デッドタイム時限信号
Er フィードバック信号
Id 出力電流検出信号
Ir 出力電流設定信号
Ts 起動信号
Ti1 第1の時限信号
Ti2 第2の時限信号
Ti3 第3の時限信号
Tr1 第1のスイッチング素子駆動信号
Tr2 第2のスイッチング素子駆動信号
TR3 第3のスイッチング素子駆動信号
TR4 第4のスイッチング素子駆動信号
Sc1 第1の出力制御信号
Sc2 第2の出力制御信号
Vd 出力電圧検出信号
Vr 出力電圧設定信号




【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を出力する直流電源回路と第1のスイッチング素子と第1のスイッチング素子に相対向する第4のスイッチング素子と第2のスイッチング素子と第2のスイッチング素子に相対向する第3のスイッチング素子とからブリッジを形成し前記直流電圧を高周波交流電圧に変換するインバータ回路と、負荷の電圧又は電流と予め定めた出力設定信号とを誤差増幅してフィードバック制御信号を出力する誤差増幅回路と、前記フィードバック制御信号に応じてパルス幅変調制御を行い互いに半周期ずれた信号でありかつ両信号間にデッドタイム時間を有する第1の出力制御信号及び第2の出力制御信号を出力するパルス幅変調制御回路と、前記第1の出力制御及び前記第2の出力制御信号に同期して前記インバータ回路を常に最大パルス幅で駆動するインバータ駆動回路と、前記直流電源回路と前記インバータ回路との間に設けて前記直流電源回路からの出力を供給する電力開閉用スイッチング素子と、前記インバータ回路の入力側に並列に設けて前記電力開閉用スイッチング素子の入力電圧と出力電圧とを略同一電圧でターンオンさせる補助コンデンサと、前記第1の出力制御及び前記第2の出力制御信号によって前記電力開閉用スイッチング素子を駆動すると共にこの各駆動時間の最大値を前記インバータ駆動回路の最大パルス幅よりも前記補助コンデンサが相当に放電する補助コンデンサ放電時間だけ短い時間に制限する電力開閉用駆動回路と、前記高周波交流電圧を負荷に適した電圧に変換する変圧器と、前記変換した高周波交流電圧を負荷に応じた出力に変換する出力変換回路と、を具備したことを特徴とするインバータ電源装置。
【請求項2】
前記デッドタイム時間は、アーム短絡を防止する時間以上であり前記変圧器の漏れインダクタンスに溜まったエネルギーによって前記補助コンデンサを充電する回生電流が流れている時間以内であることを特徴とする請求項1記載のインバータ電源装置。
【請求項3】
前記デッドタイム時間は、アーム短絡を防止する時間以上であり、前記変圧器の漏れインダクタンスに溜まったエネルギーによって前記補助コンデンサを充電する回生電流の通電が略終了する時間であることを特徴とする請求項1記載のインバータ電源装置。






















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−311668(P2006−311668A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128904(P2005−128904)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】