説明

インラインスクリュー式射出成形機およびその制御方法

【課題】射出機構および計量機構間での干渉を抑制することにより射出機構および計量機構の構成を簡易化することのできるインラインスクリュー式射出成形機を提供する。
【解決手段】インラインスクリュー式射出成形機において、スクリューの後端側に配置され計量モータ9と、スクリューの後端側と一体に回転するナット体とナット体に嵌合するねじ軸の回転運動をナット体を介してスクリューの直線運動に変換するねじ機構と、ねじ機構のねじ軸を回転駆動する射出モータ16と、予め設定した位置指令パターンにスクリュー位置が追随するように駆動する射出モータ駆動回路と、予め設定した速度設定パターンにその回転が追随するように駆動する計量モータ駆動回路と、計量モータ駆動回路の速度設定パターン信号を射出モータ駆動回路の速度指令信号に加減算することにより、計量モータの回転に伴って発生するスクリューの軸方向位置ずれを補償する加減算回路を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インラインスクリュー式射出成形機に係り、特に計量および射出に際して、スクリューを回転駆動し、さらに軸方向に駆動する駆動機構を備えたインラインスクリュー式射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機として、スクリューを回転しつつ後退することによりプラスチック材料を溶融すると共に計量し、次いで、前記スクリューの回転を止めて前進することにより溶融樹脂を金型内に射出・充填するインラインスクリュー式の射出成形機が知られている。この方式の射出成形機は、前記スクリューを回転駆動する手段として計量モータを備え、溶融樹脂を射出充填する手段として射出モータを備え、これらのモータを軸方向に直列に配置している(特許文献1参照)。
【0003】
計量モータは、例えばスクリュー後端に連結されている基体に連結され、射出モータは、前記基体に衝合するねじ軸を回転駆動し、該基体をねじ軸にそって軸方向に移動させる。
【0004】
そして、計量モータを駆動してスクリューを回転すると共に、前記射出モータを駆動して、ねじ軸を駆動することにより、スクリューを回転しつつ後退して、樹脂を溶融・計量し、また、前記ねじ軸を逆方向に回転することにより、前記ねじ軸を介してスクリューを前方向に押し出して樹脂を射出する。
【0005】
図4は、従来のインラインスクリュー式射出成形機の制御回路を説明する図である。射出成形機は、例えば加熱シリンダ内に回転および前後進可能に配設されたスクリュー6、該スクリュー6を回転駆動する計量モータ9および前記スクリュー6を前後進方向に駆動する射出モータ16を備える。
【0006】
加熱シリンダ内のスクリュー6を逆転(図示モータ軸端からみてCW方向)させると、ホッパーから投入された原料樹脂(例えば熱可塑性樹脂)は、加熱シリンダ内で混練・可塑化されつつスクリューの先端側(左側)に移送され、先端側に計量された溶融樹脂が蓄積される。次に、射出モータ16を急速に正転させる。このときスクリュー6は図の左方向に押圧されて急速に前進する。これにより、溶融した樹脂はノズルを介して図示しない金型内に射出される。
【0007】
射出モータ用エンコーダ57は射出モータ16の回転位置を計測し、計量モータ用エンコーダ58は計量モータ9の回転位置を計測する。なお、射出用のエンコーダ57は回転位置の絶対値を出力するアブソリュートタイプのエンコーダであり、計量モータ用エンコーダ58はインクリメンタルエンコーダである。また、ロードセル49はスクリュー6にかかる射出圧及び背圧を測定するためのセンサである
図4において、xij0は、スクリューの後退位置を表す後退位置指令パターン信号、vij0はスクリューの後退速度を表す後退速度指令パターン信号、bp0はスクリューにかかる背圧を設定する背圧設定パターン信号、vcg0は計量用モータの回転速度を設定する計量モータ回転速度設定パターン信号であり、これらの信号は例えば図示しない上位コントローラから供給される。
【0008】
後退位置指令パターン信号xij0と、スクリュー位置信号xijmは、スクリュー位置信号xijmをフィードバック信号として、加算器32において偏差e1がとられ、この偏差e1をもとに射出モータ16をフィードバック制御する。
【0009】
なお、前記スクリュー位置信号xijmは、射出モータ16の基準位置からの回転量により求めることができる。
【0010】
後退位置指令用のPID制御器33は、前記偏差e1をもとにスクリュー位置の操作量u1を算出し、速度演算器34は前記操作量u1をもとに速度指令v1を演算する。加算器35は後退速度指令パターン信号vij0をフィードフォワード信号として前記速度指令v1に加算し後退速度制御値v3を得る。最小値選択器36は、後述する背圧時速度指令計算値v2と前記後退速度制御値v3のいずれか小さい方の値を選択し、選択した値をスクリュー後退速度指令vijとして出力する。
【0011】
サーボアンプ38は前記速度指令vijにしたがって射出モータ16の回転を制御する。射出モータの回転位置はサーボアンプ38を介して加算器32に供給される。
【0012】
背圧設定用のPID制御器44は、加算器43にて背圧設定パターンで示される背圧bp0とロードセル49が計測した背圧との偏差e2をもとに操作量u2を算出する。速度演算器45は前記操作量u2をもとに背圧時速度指令v2を演算し、演算結果を最小値選択器36に供給する。これにより、背圧時速度指令値v2が過大となりスクリュー6の後退位置をオーバーする場合においても、後退位置指令パターンxij0により設定された位置以上となることを阻止することができる。
【0013】
計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0はサーボアンプ47に供給され、サーボアンプ47は前記計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0にしたがって計量モータ9を駆動制御する。
【特許文献1】特開平5−345337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記従来技術のインラインスクリュー式の射出成形機においては、例えば、計量モータはスクリュー後端に連結されている基体に連結され、射出モータは前記基体に衝合するねじ軸を回転駆動し、該基体をねじ軸にそって軸方向に移動させる。
【0015】
このように射出機構と計量機構を衝合して構成すると、射出機構および計量機構の構成が複雑となる。また、射出機構と計量機構とを、ねじ軸およびこれに螺合するナット体を介して螺合して構成すると、計量時に射出モータを停止した場合、前記スクリューが前進または後退してしまう。
【0016】
このような機構の電動モータを用いた射出成形機は、スクリュー前後進用の射出モータと、スクリュー回転用の計量モータとを備えており、成形に当たっては、これら2個の電動モータの協調制御を必要とする。このため、制御が極めて複雑で面倒となって、所望の射出速度及び圧力を得ることが難しい。特にスクリューを回転しつつ樹脂の圧力により後退する可塑化時に、スクリューの後退位置がオーバーしやすい。
【0017】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたもので、前記射出機構、計量機構および制御回路の構成を簡易化したインラインスクリュー式射出成形機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0019】
加熱シリンダ内のスクリューを回転させることにより、原料樹脂を混練・可塑化しつつスクリューの先端側に移送して、該先端側に計量した溶融樹脂を貯え、スクリューの前進によって金型内に前記溶融樹脂を射出・充填するインラインスクリュー式射出成形機において、前記スクリューの後端側に配置されスクリューの後端側を回転駆動する計量モータ、並びにスクリューの後端側に取り付けられスクリューと一体に回転するナット体および該ナット体に嵌合するねじ軸を備え、該ねじ軸を回転駆動する射出モータの回転運動を前記ナット体を介してスクリューの直線運動に変換するネジ機構と、予め設定した位置指令パターンにスクリュー位置が追随するように前記射出モータを駆動する射出モータ駆動回路と、予め設定した速度設定パターンにその回転が追随するように前記計量モータを駆動する計量モータ駆動回路と、前記計量モータ駆動回路の速度設定パターン信号を射出モータ駆動回路の速度指令信号に加算または減算することにより、計量モータの回転に伴って発生するスクリューの軸方向位置のずれを補償する加減算回路を備えた。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上の構成を備えるため、射出機構、計量機構および制御回路の構成を簡易化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、最良の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態にかかるインラインスクリュー式射出成形機の概要を説明する図である。図1(a)において、1は、図示しない射出ユニットベース盤上に配設されたヘッドストック、2は、ヘッドストック1と所定距離をおいて対向するように、同じく図示しない射出ユニットベース盤上に配設された保持プレート、3は、その後端部をヘッドストック1に固定した加熱シリンダ、4は、加熱シリンダ3の先端に取り付けられたノズル、5は、加熱シリンダ3の外周に巻装されたバンドヒータ、6は、加熱シリンダ3内に回転および前後進可能であるように配設されたスクリュー、1aおよび3aは、図示しないホッパーから落下・供給される原料樹脂を加熱シリンダ3の後端部内に供給するために、ヘッドストック1および加熱シリンダ3にそれぞれ穿設された原料樹脂供給穴である。
【0022】
また、7は、ヘッドストック1と保持プレート2との間に架け渡された連結バー、8は、ヘッドストック1と保持プレート2との間で前後進可能なように、図示しないレール部材上に直動ガイドを介して設けられた直動体、9は、直動体8上に搭載された計量用の内部が中空のビルトイン(Built-In)型モータ(以下、計量用ビルトインモータ9と記す)、10は、計量用ビルトインモータ9のケーシング、11は、ケーシング10に固定された計量用ビルトインモータ9の円筒形の固定子、12は、固定子11の内側で回転可能な計量用ビルトインモータ9の円筒形の回転子、13は、回転子12の内周面に強嵌合などで固定されたスリーブ、14は、スリーブ13を回転可能に支承するため、ケーシング10とスリーブ13との間に介装された軸受け、15は、スクリュー6の基端部を固定し、スリーブ13に固定された回転連結体である。
【0023】
また、16は、保持プレート2に搭載された射出用の内部が中空のビルトイン型モータ(以下、射出用ビルトインモータ16と記す)、17は、射出用ビルトインモータ16のケーシング、18は、ケーシング17に固定された射出用ビルトインモータ16の円筒形の固定子、19は、固定子18の内側で回転可能な射出用ビルトインモータ16の円筒形の回転子、20は、回転子19の内周面に強嵌合などで固定されたスリーブで、図示では簡略化して描かれているが、スリーブ20は、図示しない軸受けを介して、ケーシング17に回転可能に保持されるようになっている。
【0024】
また、21は、射出用ビルトインモータ16の回転を直線運動に変換するボールネジ機構、22は、保持プレート2に軸受け24を介して回転可能に保持されたボールネジ機構21のネジ軸(ボールネジ機構21の回転部)、23は、ネジ軸22に螺合されて、ネジ軸22の回転でネジ軸22に沿って直線移動すると共に、その端部を、計量用ビルトインモータ9側のスリーブ13に直接または適宜の部材を介して固定されたボールネジ機構21のナット体(ボールネジ機構21の直動部)、25は、射出用ビルトインモータ16側のスリーブ20とネジ軸22の端部とを連結・固定する連結具である。
【0025】
本実施形態では、計量工程時には、マシン(射出成形機)全体の制御を司る後述する制御回路からの指令で、後述するサーボアンプを介して、計量用ビルトインモータ9が回転速度(回転数)フィードバック制御で駆動制御され、これにより、スリーブ13、回転連結体15と一体となってスクリュー6が所定方向に回転する。このスクリュー6の回転によって、図示しないホッパーから原料樹脂供給穴1a、3aを通ってスクリュー6の後端側に供給された原料樹脂を、混練・可塑化しつつスクリュー6のネジ送り作用によって前方に移送するのが、一般的な計量動作であるが、本実施形態では、スクリュー6が所定方向に回転すると、スリーブ13に固定されたナット体23も回転することになり、このスクリュー6の回転駆動に伴うナット体23の回転で、ナット体23がネジ軸22に沿って直線移動する。そこで、このスクリュー6の回転駆動に伴うナット体23の回転によるナット体23の直線移動(計量用ビルトインモータ9やスクリュー6の直線移動)を打ち消すように、制御回路は、後述するサーボドライバ38を介して、射出用ビルトインモータ16を設定背圧を目標値とする圧力フィードバック制御によって駆動制御し、これによって、スクリュー6に付与する背圧を所定の圧力に保ちつつ、スクリュー6の先端側に溶融樹脂が送り込まれるのにしたがって、スクリュー6を適正制御で後退させる。例えば、計量用ビルトインモータ9を単位時間当たり10回転させるとすると、射出用ビルトインモータ16を単位時間当たり9.9回転させることで、スクリュー6の回転駆動に伴うナット体23の回転によるナット体23の直線移動をキャンセルしつつ、スクリュー6に所定の背圧が付与されるように制御するようになっている。そして、スクリュー6の先端側に1ショット分の溶融樹脂が貯えられた時点で、計量用ビルトインモータ9によるスクリュー6の回転駆動は停止される。
【0026】
一方、射出充填工程時には、計量が完了した後の適宜タイミングにおいて、後述する制御回路からの指令で、後述するサーボドライバ38を介して、射出用ビルトインモータ16が速度フィードバック制御で駆動制御され、これにより、射出用ビルトインモータ16の回転がボールネジ機構21によって直線運動に変換されて、この直線運動が前記した直線運動伝達系を介してスクリュー6に伝達されて、スクリュー6が急速に前進駆動されることで、スクリュー6の先端側に貯えられた溶融樹脂が、型締め状態にある図示しない金型のキャビティ内に射出充填され、1次射出工程が実行される。1次射出工程に引き続く保圧工程では、制御回路からの指令でサーボドライバ38を介して、射出用ビルトインモータ16が、図示しない圧力フィードバック制御で駆動制御され、これにより、設定された保圧力がスクリュー6から図示しない金型内の樹脂に付加される。
【0027】
図1(b)は、樹脂の射出時、計量時および射出後退(サックバック)時における、計量モータ9および射出モータ16の駆動方向を説明する図である。
【0028】
図1(b)に示すように、(1)射出時には射出モータ16のみを逆転(モータ取付面からみてCW方向)させる。これにより、スクリュー6は急速に左方向に駆動される。(2)計量時(原料樹脂を可塑化し計量するとき:可塑化時とも称する)においては、計量モータ9を正転(モータ取付面からみてCCW方向)させる。これにより加熱シリンダ内で混練・可塑化された樹脂はスクリューの先端側(左側)に移送され、前記先端側に計量された溶融樹脂が蓄積される。
【0029】
ところで、前述したように、前記計量モータ9によりスクリュー6を正転方向(図示矢印方向からみてCCW方向)に回転駆動すると、スクリュー6に結合されたナット体も正転方向(図示矢印方向からみてCCW方向)に回転する。このときナット体に螺合するねじ軸22を回転駆動する射出用モータ16が停止したままであると、前記ナット体およびこれに結合されたスクリュー6は図の右方向に移動することになる。
【0030】
この移動を打ち消すためには、前述のように射出モータ16を計量モータ9と同一方向(逆転方向)に同一量だけ回転駆動すればよい。なお、射出用モータ16の回転量を計量モータ9のそれよりも僅かに小さく設定することにより、スクリュー6を徐々に右方向に移動させてスクリューに最適な背圧を与えることができる。(3)射出後退時においては、計量モータ9の駆動を停止した状態において射出用モータ16を正方向に駆動し、スクリュー6を図の右方向に駆動する。これにより、ノズル4からの樹脂漏れを抑制することができる。
【0031】
図2は、射出モータ16および計量モータ9の駆動を制御する制御回路を説明する図である。図2において、xij0は、スクリューの後退位置を表す後退位置指令パターン信号、vij0はスクリューの後退速度を表す後退速度指令パターン信号、bp0はスクリューにかかる背圧を設定する背圧設定パターン信号、vcg0は計量用モータの回転速度を設定する計量モータ回転速度設定パターン信号であり、これらの信号は、例えば図示しない上位コントローラから供給される。
【0032】
後退位置指令パターン信号xij0と、後述するように加算器52において演算されたスクリュー位置信号xijmは、スクリュー位置信号xijmをフィードバック信号として、加算器32において偏差e1がとられ、この偏差e1をもとに射出モータ16をフィードバック制御する。
【0033】
なお、前記スクリュー位置信号xijmは、射出モータ16の基準位置からの回転量(回転角の絶対値)および計量モータ9の基準位置からの回転量(回転角の絶対値)の差(両モータの回転方向が一致する場合)または和(両モータの回転方向が一致しない場合)により求めることができる。なお、前記和または差の演算は掛け算器51の係数の切り替えにより行うことができる。
【0034】
後退位置指令用のPID演算器33は、前記偏差e1をもとにスクリュー位置の操作量u1を算出し、速度演算器34は前記操作量u1をもとに速度指令v1を演算する。加算器35は後退速度指令パターン信号vij0をフィードフォワード信号vffとして前記速度指令v1に加算し後退速度制御値v3を得る。最小値選択器36は、後述する背圧時速度指令計算値v2と前記後退速度制御値v3のいずれか小さい方の値を選択し、選択した値をスクリュー後退速度指令値v4として出力する。
【0035】
加算器37は前記スクリュー後退速度指令値v4に計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0(回転補正信号v5)を加算(両モータの回転方向が不一致の場合)または減算(両モータの回転方向が一致する場合)して、その演算結果を速度指令vijとしてサーボアンプ38に供給する。サーボアンプ38は前記速度指令vijにしたがって射出モータ16の回転を制御する。射出モータ16の回転位置は、該射出用モータ16に取り付けられているエンコーダによって測定され、サーボアンプ38を介して加算器52に供給される。
【0036】
背圧設定用のPID制御器44は、加算器43において背圧設定設定パターンで示される背圧bp0とロードセル49が計測した背圧との偏差e2をもとに操作量u2を算出する。速度演算器45は前記操作量u2をもとに背圧時速度指令v2を演算し、演算結果を最小値選択器36に供給する。これにより、背圧時速度指令値V2が過大となり、スクリュー6の後退位置をオーバーする場合においても、後退位置指令xijにより設定された位置以上となることを阻止することができる。
【0037】
計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0はサーボアンプ47に供給され、サーボアンプ47は前記計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0にしたがって計量モータ9を駆動制御する。
【0038】
前述のように、計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0は、回転補正信号v5として計量モータ回転によるスクリュー6の後退位置を加算器37に供給する。すなわち、射出モータ16の回転速度の指令値(スクリュー後退速度指令値v4)に対し、計量モータ9の回転速度速度設定パターン信号vcg0(回転補正信号v5)を加算(両モータの回転方向が不一致の場合)または減算(両モータの回転方向が一致する場合)することにより、射出モータ用サーボアンプ38に対する速度指令vijに対して予め補正を加えている。このため、計量モータ回転によるスクリュー6の後退位置の変化に対応して、速やかに射出モータ用サーボアンプ38に対する速度指令vijを出力することができる。
【0039】
図3は、図2に示す制御回路における各種制御量の変動を説明する図である。図において、(a)はスクリュー位置xij0、(b)はスクリュー後退速度制御値v3およびスクリュー後退速度指令値v4、(c)は射出速度指令vijおよび計量モータ回転速度設定パターン信号(回転方向補正後の値)v5、(d)は背圧設定パターン信号bp0、(e)は計量モータ回転速度指令vcg0を示す。
【0040】
図3(b)に示すように、後退位置指令パターンxij0と後退速度指令パターンvij0から計算されるスクリュー後退速度制御値v3と背圧設定パターンbp0から計算される背圧時速度指令計算値をv2のいずれか小さい方をスクリュー後退速度指令v4としている。
【0041】
また、図3(c)に示すように、前記スクリュー後退速度指令v4に計量モータ回転速度設定パターン信号の回転補方向補正値v5を加算して、射出モータ用サーボアンプへの速度指令vijを生成している。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、図1に示すように、インラインスクリューを用いた計量機構と射出機構を一体に形成することができる。このため、計量機構および射出機構をコンパクトにかつ安価に形成することができる。また、射出機構および計量機構を一体に形成すると、これらの機構間に動作上の干渉が発生するが、これらの干渉は、制御回路に変更(例えば図2に示す加算器52、37)を加えることにより、解消することができる。すなわち、本実施形態は、射出機構および計量機構を一体化することによりコストを削減するとともに、一体化することにより生じる制御の複雑化を制御回路に変更を加えることにより吸収したものということができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施形態にかかるインラインスクリュー式射出成形機の概要を説明する図である。
【図2】射出モータおよび計量モータの駆動を制御する制御回路を説明する図である。
【図3】図2に示す制御回路における各種制御量の変動を説明する図である。
【図4】従来のインラインスクリュー式射出成形機の制御回路を説明する図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ヘッドストック
1a 原料樹脂供給穴
2 保持プレート
3 加熱シリンダ
3a 原料樹脂供給穴
4 ノズル
5 バンドヒータ
6 スクリュー
7 連結バー
8 直動体
9 計量用のビルトイン型モータ(計量用ビルトインモータ)
10 ケーシング
11 固定子
12 回転子
13 スリーブ
14 軸受け
15 回転連結体
16 射出用のビルトイン型モータ(射出用ビルトインモータ)
17 ケーシング
18 固定子
19 回転子
20 スリーブ
21 ボールネジ機構、
22 ネジ軸(ボールネジ機構の回転部)
23 ナット体(ボールネジ機構の直動部)
24 軸受け
25 連結具
32 加算器
33 PID演算器
34 速度演算器
35 加算器
36 最小値選択器
37 加算器
38 サーボアンプ
43 加算器
44 PID演算器
45 速度演算器
47 サーボアンプ
49 ロードセル
50,51 乗算器
52 加算器
57,58 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダ内のスクリューを回転させることにより、原料樹脂を混練・可塑化しつつスクリューの先端側に移送して、該先端側に計量した溶融樹脂を貯え、スクリューの前進によって金型内に前記溶融樹脂を射出・充填するインラインスクリュー式射出成形機において、
前記スクリューの後端側に配置されスクリューの後端側を回転駆動する計量モータと、
スクリューの後端側に取り付けられスクリューと一体に回転するナット体と該ナット体に嵌合するねじ軸を備え該ねじ軸の回転運動を前記ナット体を介してスクリューの直線運動に変換するねじ機構と、
前記ねじ機構を構成するねじ軸を回転駆動する射出モータと、
予め設定した位置指令パターンにスクリュー位置が追随するように前記射出モータを駆動する射出モータ駆動回路と、
予め設定した速度設定パターンにその回転が追随するように前記計量モータを駆動する計量モータ駆動回路と、
前記計量モータ駆動回路の速度設定パターン信号を射出モータ駆動回路の速度指令信号に加算または減算することにより、計量モータの回転に伴って発生するスクリューの軸方向位置のずれを補償する加減算回路を備えたことを特徴とするインラインスクリュー式射出成形機。
【請求項2】
請求項1記載のインラインスクリュー式射出成形機において、
前記ねじ軸の回転位置を計測する射出モータ用回転エンコーダおよび前記計量モータの回転位置を計測する計量モータ用回転エンコーダを備え、前記射出モータ用回転エンコーダの出力に前記計量モータ用回転エンコーダの出力を加算または減算することにより前記スクリューの位置を計測することを特徴とするインラインスクリュー式射出成形機。
【請求項3】
請求項2記載のインラインスクリュー式射出成形機において、
前記射出モータ用回転エンコーダおよび計量モータ用回転エンコーダは、回転位置の絶対値を出力するアブソリュートタイプのエンコーダであることを特徴とするインラインスクリュー式射出成形機。
【請求項4】
加熱シリンダ内のスクリューを回転させることにより、原料樹脂を混練・可塑化しつつスクリューの先端側に移送して、該先端側に計量した溶融樹脂を貯え、スクリューの前進によって金型内に前記溶融樹脂を射出・充填するとともに、
前記スクリューの後端側に配置されスクリューの後端側を回転駆動する計量モータ、スクリューの後端側に取り付けられスクリューと一体に回転するナット体に嵌合するねじ軸を有し、射出モータの回転運動を前記ねじ軸を介してスクリューの直線運動に変換するインラインスクリュー式射出成形機の制御方法において、
予め設定した位置指令パターンにスクリュー位置が追随するように前記射出モータを駆動し、予め設定した速度設定パターンにその回転が追随するように前記計量用モータを駆動するとともに、
前記計量モータ駆動回路の速度設定パターン信号を射出モータ駆動回路の速度指令信号に加算または減算することにより、計量モータの回転に伴って発生するスクリューの軸方向位置のずれを補償することを特徴とするインラインスクリュー式射出成形機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−241435(P2009−241435A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91366(P2008−91366)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】