説明

ウイルス感染のための併用療法処置

ウイルス感染に関連したヒトの呼吸器疾患の治療のために、抗ウイルス剤及びEP4受容体アゴニストの組み合わせを用いる治療法は、記述される。ウイルス感染は、インフルエンザAウイルス、例えば、H1N1、H3N2、及びH5N1、並びにそれらの変異体、並びに/又はコロナウイルス、例えば、重症急性呼吸器症候群「SARS」を引き起こすウイルスを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2009年10月14日に出願された、米国仮特許出願第61/251,561号の利益及び優先権を主張し、その内容は、それらの全体において及び全ての目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
概要
本発明は、ウイルス感染のための併用療法に関する。より具体的には、一つ又は複数のプロスタグランジン受容体アゴニストと共に、一つ又は複数の抗ウイルス剤を用いる併用療法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ウイルスは、それらの遺伝物質、DNA又はRNA、及びそれらの保護被覆に基づくボルティモア分類方法を用いて同定される感染因子である。ウイルスは、それら自身で複製することができないので、それらは、植物又は動物細胞に感染し、細胞活動をウイルス粒子の生産に変更する。
【0004】
植物及び動物は、ウイルス感染を撃退するための複雑な機構を設けている。ヒトにおいて、この防御機構は、適応免疫反応が続く先天性免疫反応により特徴付けられる。先天性免疫反応は、侵入する微生物を標的とする特異的な適応反応と比較して、任意の異質の有機体に対する迅速で、非選択的な攻撃である。ウイルス感染の成功は、宿主の免疫系による迅速な排除を回避するウイルスの能力に依存する。気道のヒト疾患に関与する特定の場合は、インフルエンザウイルス、及び重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こすコロナウイルスを含む。
【0005】
ウイルス感染に関連する疾患状態は、感染細胞の直接溶解による組織損傷の結果である(例えば、MD de Jong et al.,N.Engl.J.Med.2005 352:686−691を参照のこと)。ウイルス感染に反撃するために、ヒト免疫系は、炎症誘発性サイトカインの産生を増加することにより応答する。しかしながら、サイトカイン産生が長期に亘る、又は過剰になる場合、それは、例えば気道に炎症を起こさせ、息苦しくさせ、それは、順に肺炎及び急性呼吸困難をもたらし得る。炎症誘発性サイトカインの過剰な産生は、「サイトカインストーム」として記述される(例えば、CW Chan,et al.,Respiratory Research 2005,6:135;MD de Jong,et al.Nat Med 2006 12:1203−1207を参照のこと)。長期に亘る、又は過剰なサイトカイン産生は、他の器官をまた損傷し得、それは深刻な、命に関わる合併症をもたらし得る。一つの例のように、ヒトにおけるインフルエンザAサブタイプH5N1感染に関連した重症度、及び高い罹患率、及び死亡率は、高ウイルス負荷及び高サイトカイン血症により特徴付けられる。第二の例のように、ヒトにおける季節性インフルエンザA感染に関連した重症度は、高サイトカイン血症に相関している(例えば、ML Heltzer,et al.,J.Leukoc. Biol.2009;85(6):1036−1043を参照のこと)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要約
ウイルス感染に関連したヒト呼吸器疾患の治療のための抗ウイルス剤及びEP4受容体アゴニストの組み合わせを用いる治療法は記述される。ウイルス感染は、インフルエンザAウイルス、例えば、H1N1、H3N2、及びH5N1、並びにそれらの変異体、並びに/又はコロナウイルス、例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こすウイルスを含み得る。インフルエンザAウイルス感染に関連した疾患、及び/又はコロナウイルス感染に関連した疾患を治療する方法は、記述される。呼吸器のウイルス感染を治療する方法は、記述される。
【0007】
特定の実施形態では、方法は、ウイルス疾患及び関連するサイトカインストーム治療において、それらの併用効果が、それらの個別の効果の合計よりも高いような、相乗的な組み合わせにおける少なくとも一つの抗ウイルス剤、及び少なくとも一つのEP4受容体アゴニストを、それを必要とする患者に投与することを含む。特定の実施形態では、一つの抗ウイルス剤は、相乗的治療効果を得るために、一つのEP4アゴニストと組み合わせて投与される。抗炎症剤、鎮痛剤、PPAR−γアゴニスト、及び/又は免疫反応調節剤は、組み合わせに加えられ得る。
【0008】
一つの実施形態は、インフルエンザウイルス及び/又はコロナウイルスによるヒトにおける感染の治療に使用のための、EP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤の組み合わせである。一つの実施形態では、組み合わせにおける少なくとも一つのEP4受容体アゴニスト及び/又は抗ウイルス薬は、本明細書で記述されるように準最適な用量である。一つの実施形態では、抗ウイルス剤は、本明細書で記述される抗ウイルス剤から選択される。一つの実施形態では、EP4アゴニストは、本明細書で記述されるそれらから選択される。組み合わせは、本明細書に記述されるように、抗炎症性剤と共に補助的に投与され得る。組み合わせはまた、本明細書に記述されるように鎮痛剤と共に投与され得る。一つの実施形態は、本明細書で記述され又は言及される任意の治療の方法に従って用いられる医薬組成物である。一つの実施形態は、本明細書で記述され又は言及される任意の治療の方法に従って用いられるEP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤の組み合わせである。
【0009】
これら及び他の特徴及び利点は、関連する図面への言及と共に、さらに下記に記述される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
排他的にウイルスに焦点を合わせた抗ウイルス剤、例えば、ノイラミニダーゼ阻害剤、例えば、オセルタミビル、ザナミビル、又はペラミビル;M2チャネル阻害剤、例えば、アマンタジン及びリマンタジン;又はポリメラーゼ阻害剤T−705を用いた治療は、ウイルス負荷を減少させることができるが、炎症誘導性サイトカインの放出、又はそれらにより引き起こされて生じる組織損傷を防ぐために作用しない。また、抗ウイルス剤は、導入される又はランダムなウイルス変異を経て無効にされ得る。同時に、排他的に、サイトカインストームを減少させることに焦点を当てる治療、例えば、EP4受容体アゴニスト、例えば、ニレプロスト、ベラプロスト、シカプロスト、エプタロプロスト、シプロステン、エンプロスチル、CP−533536、リベンプロスト、ONO−8815Ly、ノクロプロスト、及びAGN−205203は、高いウイルス負荷を直接的に減少させる、又はサイトカインストームのウイルス誘導を停止することはできない。例えば、ステロイドは典型的に免疫系を阻害するので、鳥インフルエンザに対する標準的なステロイド系抗炎症性治療剤は、少ない治療的価値を有する。従って、ウイルス負荷又はサイトカインストームのいずれかの減少は、ウイルス感染の部分的な治療のみをもたらす。
【0011】
驚くべきことに、EP4受容体アゴニスト及び特定の抗ウイルス剤の組み合わせは、サイトカインストームを誘導するウイルス減少を治療するために、相乗的に働くことが発見された。つまり、抗ウイルス剤と組み合わせてEP4受容体アゴニストを用いたウイルス疾患の治療は、いずれかの薬物単独での治療と比較して、生存率において、著しい、加法的以上の増加をもたらす。EP4受容体アゴニストは、一つ又は双方の薬剤の準最適用量が用いられる抗ウイルス剤と併せて同時投与される。一つの実施形態では、抗炎症剤化合物はまた、EP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤と併せて同時投与され得る。一つの実施形態では、抗炎症剤は、非ステロイド系の抗炎症剤である。
【0012】
ウイルス感染
本明細書で記述される方法は、ウイルス感染を治療するために用いられる。サイトカインストームのレベルを上げるそのような誘導を含む炎症誘導性サイトカインの増加した産生を誘導するウイルス感染は、特に重要である。一つの実施形態では、ウイルス感染は、例えば、サブタイプH1N1、H3N2、及びH5N1、並びにそれらの変異体であるがこれに限定されないインフルエンザウイルス、により引き起こされる。一つの実施形態では、ウイルス感染は、コロナウイルス、例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こすウイルスにより引き起こされる。
【0013】
EP4受容体アゴニスト
本明細書で記述される方法を実施するために有用なEP4受容体アゴニストは、サイトカインストームのレベルまで上げる誘導を含む、炎症誘導性サイトカインの過剰産生を誘導するウイルス感染に応答するサイトカイン及び/又はケモカインの放出を阻害する全てのそれらを含む。
【0014】
一つの実施形態では、EP4受容体アゴニストは、5−シアノ−プロスタサイクリン誘導体から選択される。そのような5−シアノ−プロスタサイクリン誘導体、それらの薬理効果、及び化合物の合成、及び医薬的に許容されるそれらの塩は、米国特許第4,219,479号、同4,049,582号、及び同7,776,896号に報告され、そのそれぞれは、全ての目的のために、本明細書に参照により組み込まれる。5−シアノ−プロスタサイクリン誘導体のシクロデキストリンキレートはまた、本明細書に記述されるEP4アゴニストの範囲内に含まれる。そのようなシクロデキストリンキレートは、米国特許第5,010,065号に記述され、それは、全ての目的のために、本明細書に参照により組み込まれる。
【0015】
一つの実施形態では、EP4受容体アゴニストは、特定の以下の特許:米国特許第4,423,067号、同4,474,802号、同4,692,464号、同4,708,963号、同5,013,758号;ヨーロッパ特許EP0084856号、及びカナダ特許CA1248525号、そのそれぞれは、全ての目的のために本明細書に参照により組み込まれる、においてそれらの合成のための方法と共に開示される特定のプロスタサイクリン及びカルバサイクリン誘導体から選択される。
【0016】
別の実施形態では、EP4受容体アゴニストは、以下の特許又は特許出願公開:US6747037、WO20044071428、US20040102499、US2005049227、US2005228185、US2006106088、WO2006052630、WO2006047476、US2006111430、WO2006058080、US20070010495、US20070123568、US20070123569、US7776896、WO2004065365、US20050020686、US20080234337、US20100010222、US20100216689、WO03/047513、WO2004085421、WO2004085430、WO2005116010、WO2005116010、WO2007014454、US20040198701、US20040204590、US20050227969、US20050239872、US20060154899、US20060167081、US20060258726、US20060270721、US20090105234、US20090105321、US20090247596、US20090258918、US20090270395、WO2006080323、US20040087624、US20040102508、US20060252799、US20090030061、US20090170931、US20100022650、US20090312388、US20090318523、US20100069457、US20100076048、WO06137472、US20070066618、US20040259921、US20050065133、及びUS20070191319の一つに記載の化合物から選択される。
【0017】
一つの実施形態では、EP4受容体アゴニストは、(E)−4−(2−ヒドロキシ−1−(3−ヒドロキシ−4−メチルオクタ−1−エン−6−イニル)−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[d]シクロペンタ[b]フラン−5−イル)ブタン酸、(E)−5−シアノ−5−(5−ヒドロキシ−4−((E)−3−ヒドロキシ−4−メチルオクタ−1−エニル)ヘキサヒドロ−2H−シクロペンタ[b]フラン−2−イリデン)ペンタン酸、(E)−2−(5−ヒドロキシ−4−((E)−3−ヒドロキシ−4−メチルオクタ−1−エニル)ヘキサヒドロ−2H−シクロペンタ[b]フラン−2−イリデン)−5−(1H−テトラゾール−5−イル)ペンタンニトリル、(E)−7−(3−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−4−フェノキシブタ−1−エニル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタ−4,5−ジエン酸、(Z)−7−(5−クロロ−3−ヒドロキシ−2−((E)−3−ヒドロキシ−4,4−ジメチルオクタ−1−エニル)シクロペンチル)ヘプタ−5−エン酸、(Z)−7−(3−ヒドロキシ−2−((E)−3−ヒドロキシ−3−メチルオクタ−1−エニル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタ−5−エン酸、2−(3−((N−(4−tert−ブチルベンジル)ピリジン−3−スルホンアミド)メチル)フェノキシ)酢酸、(E)−4−(2−(3−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−4−(3−(メトキシメチル)フェニル)ブタ−1−エニル)−5−オキソシクロペンチル)エチルチオ)ブタン酸、(E)−2−(3−(3−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−4−(3−(メトキシメチル)フェニル)ブタ−1−エニル)−5−オキソシクロペンチルチオ)プロピルチオ)酢酸、4−(2−(2−((1Z,3E)−4−メチルオクタ−1,3−ジエニル)−5−オキソピロリジン−1−イル)エチル)安息香酸、(E)−7−(2−(3−ヒドロキシ−4−フェニルブタ−1−エニル)−6−オキソピペリジン−1−イル)ヘプタン酸、(E)−1−(6−(1H−テトラゾール−5−イル)ヘキシル)−5−(4,4−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−4−フェニルブト−1−エニル)ピロリジン−2−オン、(E)−4−(2−(5−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1,6−ジイニル)ヘキサヒドロペンタレン−2(1H)−イリデン)エトキシ)ブタン酸、及びそれらの医薬的に許容される塩からなる群から選択される。また、任意の前述のカルボン酸のC1-6アルキルエステルは含まれる。
【0018】
一つの実施形態では、EP4アゴニストは、表1の化合物から選択される:
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
一つの実施形態では、EP4アゴニストは、ベラプロスト(1)、ニレプロスト(2)、ニレプロストのテトラゾールアナログ(3)、エンプロスチル(4)、ノクロプロスト(5)、アルバプロスチル(6)、CP−533,536(7)、リベンプロスト(8)、ONO−AE−1329(9)、AS−02(10)、AGN−205203(11)、L−902688(12)、エプタロプロスト(13)、ONO−8815Ly(14)、シプロステン(15)、又は(2E)−17,18,19,20−テトラノル−16−(3−ビフェニル)−2,3,13,14−テトラデヒドロ−PGE1と称され、EP4RAGとしてまた知られるFTA−2062(16)である。特定の実施形態では、EP4受容体アゴニストは、(+)−[1R,2R,3aS,8bS]−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシル−1−[(E)−(3S,4RS)−3−ヒドロキシル−4−メチル−1−オクテン−6−イニル)−1H−シクロペンタ[b]ベンゾフラン−5−ブタン酸ナトリウム塩と称される化合物である、ベラプロストナトリウムである。
【0022】
抗ウイルス剤
一つの実施形態では、抗ウイルス剤は、ノイラミニダーゼ阻害剤である。好適なノイラミニダーゼ阻害剤は、オセルタミビル(South San Francisco,CA,USAのGenentechによる商標であるTamiflu(登録商標))、ザナミビル(Brentford,London,UKのGlaxoSmithKlineによる商標であるRelenza(登録商標))、及びペラミビル(Birmingham,ALのBioCryst Pharmaceuticals Inc.により製造される)を含むがこれに限定されない。一つの実施形態では、抗ウイルス剤は、M2チャネル阻害剤、例えば、アマンダジン、及びリマンタジンを含むがこれに限定されない。別の実施形態では、抗ウイルス剤は、ポリメラーゼ阻害剤、例えば、T−705阻害剤(Toyama,JapanのToyama Chemical Co.,Ltd.により製造される6−フルオロ−3−ヒドロキシ−2−ピラジンカルボキサミドであるファビピラビル)を含むがこれに限定されない。
【0023】
投与の形態
化合物は、組み合わせて、又は補助的に患者に投与され得る。EP4受容体アゴニスト、及び抗ウイルス剤は、同時に又は続けて投与され得る。それらは、別々の製剤であってもよく、又はそれらは一つの製剤として合わされ、送達されてもよい。用量は、一度に投与される、又は一日に2回若しくは複数回に分けられる単回用量として与えられてもよい。一つの実施形態では、EP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤は、1日2回それぞれ投与され、別の実施形態では、それぞれは一日に1回投与される。
【0024】
「効果的」であるEP4アゴニスト、及び抗ウイルス剤の個々の量は、EP4受容体アゴニスト又は抗ウイルス剤が、同じウイルス疾患を治療するために単独(つまり、組み合わせない)で用いられた場合、最適又は準最適である量である。活性成分の有効量は、投与の経路、患者の年齢及び体重、治療される疾患の性質及び重症度、並びに同様の要因に依存して変化し得る。有効量は、当業者に知られている方法により決定され得る。本明細書で列挙されるEP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤は、典型的には、よく研究され、ヒトのための投与計画を有する。
【0025】
一般的に、EP4受容体アゴニストは、抗ウイルス剤と共に投与される。EP4受容体ゴニスト及び抗ウイルス剤は、個々の治療のために最適な用量で投与され得、又は一つ若しくは双方のアゴニスト及び抗ウイルス剤が、所定の患者について個別に投与される場合、準最適であるレベルで投与され得る。一つの実施形態では、少なくとも一つのEP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤は、所定の患者についての最適用量又はそれ未満である。一つの実施形態では、EP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤の双方は、準最適な用量で投与される。
【0026】
一つの実施形態では、EP4受容体アゴニストは最適用量で投与され、抗ウイルス剤は準最適用量で投与される、ここで準最適用量は、所定の患者についての最適用量の約10%〜80%である。一つの実施形態では、EP4受容体アゴニストは最適用量で投与され、抗ウイルス剤は準最適用量で投与される、ここで準最適用量は、所定の患者についての最適用量の約15%〜50%である。一つの実施形態では、EP4受容体アゴニストは最適用量で投与され、抗ウイルス剤は準最適用量で投与される、ここで準最適用量は、所定の患者についての最適用量の約20%〜50%である。
【0027】
一つの実施形態では、抗ウイルス剤は最適用量で投与され、EP4受容体アゴニストは準最適用量で投与される、ここで準最適用量は、所定の患者についての最適用量の範囲の中央値の約10%〜100%である。一つの実施形態では、抗ウイルス剤は最適用量で投与され、EP4受容体アゴニストは準最適用量で投与される、ここで準最適用量は、所定の患者についての最適用量の範囲の中央値の約30%〜80%である。一つの実施形態では、抗ウイルス剤は最適用量で投与され、EP4受容体アゴニストは準最適用量で投与される、ここで準最適用量は、所定の患者についての最適用量の範囲の中央値の約30%〜50%である。
【0028】
一つの実施形態では、EP4受容体アゴニストは、準最適用量で投与され、抗ウイルス剤はまた所定の患者についての準最適用量で投与される。一つの実施形態では、EP4受容体アゴニストについての準最適用量は、所定の患者についての最適用量の範囲の中央値の約10%〜100%であり、別の実施形態では、所定の患者についての最適用量の範囲の中央値の約30%〜80%であり、別の実施形態では、所定の患者についての最適用量の範囲の中央値の約30%〜50%である。一つの実施形態では、抗ウイルス剤についての準最適用量は、所定の患者についての最適用量の約10%〜80%であり、別の実施形態では、所定の患者についての最適用量の約15%〜50%であり、さらに別の実施形態では、所定の患者についての最適用量の約20%〜50%である。
【0029】
非限定的な例として、EP4受容体アゴニストであるベラプロストについて、最適用量についての現在の治療法は、1日3回までの20mcg〜60mcgであり、これは、所定の患者に応じて、1日あたり20mcg〜180mcgのベラプロストである。最適用量中央値は、1日あたり100mcgである。一つの実施形態では、ベラプロストの準最適用量は、1日あたり約10mcg〜約100mcgであり、別の実施形態では、1日あたり約30mcg〜約80mcgであり、別の実施形態では、1日あたり約30mcg〜約50mcgである。抗ウイルス剤オセルタミビルであるTamiflu(登録商標)の最適用量は、大人について75mg又は子供について30mgのいずれかで、1日2回、5日間であり、つまり、大人について1日当たり150mg及び子供について1日当たり60mgである。一つの実施形態では、オセルタミビルの準最適用量は、大人について1日当たり約15mg〜約120mg、及び子供について1日当たり約6mg〜約48mgである。一つの実施形態では、オセルタミビルの準最適用量は、大人について1日当たり約23mg〜約75mg、及び子供について1日当たり約9mg〜約30mgである。一つの実施形態では、オセルタミビルの準最適用量は、大人について1日当たり約30mg〜約75mg、及び子供について1日当たり約12mg〜約30mgである。特定の実施形態では、1日2回の20mcgのベラプロストは、大人について1日1回の30mgのオセルタミビル、又は子供について1日1回の15mgのオセルタミビルのいずれかと同時投与される。
【0030】
一つの実施形態では、抗炎症剤化合物はまた、EP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤と共に同時投与され得る。好適な抗炎症剤化合物は、例えば、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、及びステロイド系系抗炎症剤を含む。好適なNSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ケトロラック、ジクロフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、及びセレコキシブを含むがこれに限定されない。好適なステロイド系抗炎症剤は、コルチコステロイド、例えば、合成グルココルチコイドを含むがこれに限定されない。NSAIDの投与の経路は典型的には経口であり、ステロイドは、例えば、経口、吸入、注射等で摂取され得る。
【0031】
一つの実施形態では、一つ又は複数のNSAIDは、EP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤と共に同時投与される。一つの実施形態では、一つのNSAIDは、EP4受容体アゴニスト、及び抗ウイルス剤と共に同時投与される。一つの実施形態では、NSAIDは、イブプロフェンである。
【0032】
一つの実施形態では、鎮痛剤化合物はまた、EP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤と共に同時投与され得る。一つの実施形態では、鎮痛剤は、アセトアミノフェン(パラセタモール)である。
【0033】
独特の作用機構を有する免疫反応調節剤はまた、EP4受容体アゴニスト、及び抗ウイルス剤と共に同時投与され得る。免疫反応調節剤は、例えば、ウイルス感染の間、免疫系を変更するために用いられ得る。一つの実施形態では、免疫反応調節剤は、アゴニストとしてスピンゴシン1−リン酸(SIP)受容体との相互作用により免疫反応を調節するAAL−Rである。AAL−Rの化学名は、(R)−2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチルブタノールであり、例えば、Marsolais Mol Pharmaol 2008;74:896−903に記述され、それは全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
核受容体であるペルオキシソーム増殖剤活性化受容体ガンマ(PPAR−γ)アゴニストはまた、EP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤と共に同時投与され得る。PPAR−γアゴニストの生物学的効果は、EP4アゴニストと明らかに異なるシグナル伝達経路を介して免疫反応を調節することにより、部分的に仲介される。一つの実施形態では、PPAR−γアゴニストは、ピオグリタゾン又はロシグリタゾンである。
【0035】
医薬組成物
本明細書に記述される実施形態による使用のための医薬組成物は、有効量(つまり、併用療法として一緒に適用される場合、相乗的にインフルエンザウイルス疾患、又はSARS疾患を治療するための有効量)において、単回投与形態で一緒に又は別々の投与形態のいずれかでEP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤、並びに一つ又は複数の医薬的に許容される賦形剤を含む。医薬組成物はまた、一つ又は複数の抗炎症剤、及び/又は鎮痛剤、PPAR−γアゴニスト、及び免疫反応調節剤を含み得る。
【0036】
好適な賦形剤は、活性化合物と有害に反応しない、腸溶性、非経口又は局所投与に好適な医薬的な有機又は無機の不活性担体物質を含み得るがこれに限定されない。好適な医薬的に許容される担体は、水、塩溶液、アルコール、ゼラチン、アラビアゴム、乳酸、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシメチルセルロース、ケイ酸、粘性パラフィン、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリドなどを含むがこれに限定されない。医薬製品は、固体形態、例えば、錠剤、コーティング錠、座薬、若しくはカプセル、又は液体形態、例えば、溶液、懸濁液、又はエマルジョンでもよい。それらは、必要に応じて、活性化合物と有害に反応しない助剤、例えば、滑剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧を変える塩、バッファ、着色剤、香料、及び/又は芳香剤などさらに含み得る。
【0037】
好適な医薬組成物の例は、当業者により知られるように、噴霧溶液、噴霧粉末、錠剤、カプセル、無菌注射溶液などを含む。噴霧溶液は、吸引による送達のために好都合な方法で製造される。錠剤、コーティング錠、又はタルクを含むカプセル、及び/又は糖質担体、又は結合剤、例えば、ラクトース、トウモロコシデンプン、又はポテトデンプンは、経口使用のために特に好適である。液体形態、例えば、必要に応じて甘味料が添加される液体での使用はまた、可能である。ベラプロストのための制御放出製剤は、特許化されている。無菌注射水溶液又は油性溶液は、非経口投与、及び懸濁液、エマルジョン、又は座薬を含む埋め込み物に用いられる。アンプルは、便利な単位用量である。徐放組成物は、活性化合物が、例えば、マイクロカプセル化、多重コーティングなどにより、差次的に分解可能なコーティングで保護されるそれらを含んで製剤化され得る。用いられ得る担体系は、表面活性賦形剤、例えば、胆汁酸の塩、又は動物性若しくは植物性リン脂質、及びそれらの混合物、及びそれらのリポソーム又は構成成分である。経皮塗布は、送達手段として用いられ得る。
【0038】
一つの実施形態は、EP4受容体アゴニストと組み合わせた抗ウイルス剤を含む、ウイルス疾患を治療するための医薬組成物である。一つの実施形態では、少なくとも一つのEP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤は、準最適用量で提供される。一つの実施形態では、EP4受容体アゴニストは、所定の患者についての最適用量の範囲の中央値の10%〜100%で提供される。一つの実施形態では、抗ウイルス剤は、所定の患者についての最適用量の10%〜80%で、別の実施形態では、所定の患者についての最適用量の15%〜50%で提供される。一つの実施形態では、ウイルス疾患は、インフルエンザウイルスにより、別の実施形態では、コロナウイルスにより、引き起こされる。一つの実施形態では、医薬組成物はヒトの患者に対する投与のために製剤化される。一つの実施形態では、抗ウイルス剤は、ウイルスタンパク質M2イオンチャネル阻害剤、ノイラミニダーゼ阻害剤、RNA複製及び転写阻害剤、及びポリメラーゼ阻害剤から選択され、別の実施形態では、抗ウイルス剤は、アマンタジン又はリマンタジンである。一つの実施形態では、抗ウイルス剤は、オセルタミビル、ザナミビル、又はペラミビル、又は{(4S,5R,6R)−5−アセトアミド−4−グアニジノ−6−[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メトキシ−3−(オクタノイルオキシ)プロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸であり、別の実施形態では、抗ウイルス剤は、リバビリン、又は6−フルオロ−3−ヒドロキシ−2−ピラジンカルボキサミドである。一つの実施形態では、EP4受容体アゴニストは、ベラプロストナトリウム、(+)−[1R,2R,3aS,8bS]−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシル−1−[(E)−(3S)−3−ヒドロキシル−4−メチル−1−オクテン−6−イニル)−1H−シクロペンタ[b]ベンゾフラン−5−ブタン酸ナトリウム塩、(+)−[1R,2R,3aS,8bS]−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシル−1−[(E)−(3S,、(R)−2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチルブタノールを同時投与することをさらに含む、請求項1の方法、である。別の実施形態では、EP4受容体アゴニストは、(4R)−3−ヒドロキシル−4−メチル−1−オクテン−6−イニル)−1H−シクロペンタ[b]ベンゾフラン−5−ブタン酸ナトリウム塩、(+)−[1R,2R,3aS,8bS]−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシル−1−[(E)−(3S,4S)−3−ヒドロキシル−4−メチル−1−オクテン−6−イニル)−1H−シクロペンタ[b]ベンゾフラン−5−ブタン酸ナトリウム塩、又は(+)−[1R,2R,3aS,8bS]−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシル−1−[(E)−(3S)−3−ヒドロキシル−4−メチル−1−オクテン−6−イニル)−1H−シクロペンタ[b]ベンゾフラン−5−ブタン酸ナトリウム塩である。別の実施形態では、EP4受容体アゴニストは、ニレプロスト、(E)−5−シアノ−5−[(1S,5R,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6−[(E)−(3S,4RS)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテニル]−2−オキサ−ビシクロ[3.3.0]オクタン−3−イリデン]ペンタン酸、及び異性体(E)−5−シアノ−5−[(1S,5R,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6−[(E)−(3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテニル]−2−オキサ−ビシクロ[3.3.0]オクタン−3−イリデン]ペンタン酸、又は(E)−5−シアノ−5−[(1S,5R,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6−[(E)−(3S,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテニル]−2−オキサ−ビシクロ[3.3.0]オクタン−3−イリデン]ペンタン酸、又は(E)−[(3aR,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−5−ヒドロキシ−4−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテニル]−2H−シクロペンタ[b]フラン−2−イリデン]−1H−テトラゾール−5−2E−ペンタンニトリルである。さらに別の実施形態では、医薬組成物におけるEP4受容体アゴニストは、
【0039】
【化1】

【0040】
である。
【0041】
一つの実施形態では、医薬組成物は、それがピオグリタゾン又はロシグリタゾンと同時投与されるように用いられることによりさらに特徴付けられる。一つの実施形態では、医薬組成物は、それが抗炎症剤と組み合わせて又は補助的に投与されるように用いられることによりさらに特徴付けられる。一つの実施形態では、抗炎症剤はNSAIDであり、別の実施形態では、抗炎症剤はステロイドである。一つの実施形態では、EP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤を含む医薬組成物は、一つ又は複数の医薬的に許容される賦形剤を含む単回用量形態である。
【0042】
下記の特定の実施形態は、単に説明として解釈され、従って限定するものではない。
【実施例】
【0043】
実施例1:
化合物:ベラプロスト、オセルタミビル、及びリバビリンは、動物試験のために、生理食塩水(PSS)で調製された。ベラプロスト溶液は、58mlのPSSに6.3mgのベラプロストを溶解することにより調製され、必要に応じて希釈された。0.9mg/mLのオセルタミビル溶液は、水に希釈された。リバビリン溶液は、29mLの水に217.5mg溶解することにより調製された。0.1mLの容量は、ip及びpo投与のために用いられた。
【0044】
ウイルス:インフルエンザA/アヒル/MN/1525/81(H5N1)ウイルスは、St.Jude Hospital,Memphis,TNのDr.Robert Websterから得られた。それは、動物において肺炎に関連した死を誘導することができる点に適合するまで、マウスを通して継代された。
【0045】
動物:雌性18〜20g BALB/cマウスは、この試験のためにCharles River Laboratories(Wilmington,MA)から得られた。それらは、Wayne Lab Blox及び水道水で自由に養われた。それらは、使用の24時間前に検疫を受けた。
【0046】
マウスにおけるA/アヒル/MN/1525/81(H5N1)ウイルスの病原性の試験:Charles River Laboratoriesからの雌性18〜20g BALB/cマウスは、PSS(ip、bid)、ベラプロスト(ip)、オセルタミビル(os)、リバビリン(ip)、及びベラプロストとオセルタミビルの組み合わせで、ウイルス投与の0日に開始から5〜10日間、投与された。動物は、午前8時、及び午後4時に投与された。LD100ウイルス用量[約1x105TCID50(1:400)]のインフルエンザA/アヒル/MN/1525/81(H5N1)ウイルスは、鼻腔内に投与された。マウスは、処置の前、及びその後、毎日個別に重さを量られ、その後、ウイルス感染による体重減少を改善することに関するそれぞれの処置の効果を評価された。選択された日において、それぞれの処置群からの5匹のマウス、及びプラセボ群からの10匹のマウスは、可能であれば屠殺され、肺は、硬化及び変色について記録され、その後均一化され、ウイルスの存在について滴定された。それぞれの群からの生存したマウスは、21日目までに屠殺された。毒性対象は、群につき3匹の動物を用いて平行して行われた。
【0047】
マウスにおける致死的なインフルエンザ感染に関するベラプロスト又はオセルタミビル処置の効果。10日を通してウイルスからの投与を含む実験では、PSS群において、10匹のマウスのうち1匹のマウスが生存し、ベラプロスト(1.2mg/kg/日)において10匹のマウスのうち6匹のマウスが、及びオセルタミビル(5mg/kg/日)群において、10匹のマウスのうち8匹が、21日まで生存した。ベラプロスト(1.2mg/kg/日)及びオセルタミビル(5mg/kg/日)の併用処置群において、全てのマウスが生存した。死亡の平均日数(MDD)は、PSS、ベラプロスト、及びオセルタミビルで処置された群のそれぞれ4±1.2、9.0±3.9、及び9.0±0.0と比較して、併用群において、>21日と著しく高かった。
【0048】
統計学的に互いと異ならない同様の生存率は、それぞれ、11.4±1.8、8.4±3.2、及び8.0±2.0のMDD値を有する、低用量のオセルタミビル(1mg/kg/日、70%)、PSS(20%)、及びベラプロスト(1.2mg/kg/日、50%)で観察された。オセルタミビル(1mg/kg/日)及びベラプロスト(1.2mg/kg/日)の併用療法は、全てのマウスの生存をもたらし、>21日までのMDDの延長は、対照及び単独療法と著しく異なった。
【0049】
様々な処置を受けたマウスにおいて観察される実際の発病の改善と関係のある肺機能における改善は、未処置のマウスにおいて観察されるものと比較された。マウスのそれぞれの群からの肺の薄片は、専門の病理学者により病理学について特徴付けられた。プラセボで処置されたマウスを含む6日目における全ての治療群について、肺は、壊死した上皮細胞で分節的に線を引かれた散在した細気管支、及び内腔細胞残屑を含む細気管支により、典型的に特徴付けられた。周辺肺胞は、好中球及びマクロファージの適度な数を含む。しかしながら、ベラプロスト及びいずれかの用量のオセルタミビルの併用を受けた5匹のマウスのうち3匹では、好中球及びマクロファージによる侵入は、少なく、適度でないとして記述された。
【0050】
マウスにおける致命的なインフルエンザ感染に関するリバビリン処置の効果。リバビリン(75mg/kg/日)で処置を受けた群における全てのマウスは、5及び10日の投与計画の双方において、死亡(100%、P<0.001)に対して著しく保護された。
【0051】
実施例2:
動物:雌性18〜20g BALB/cマウスは、Charles River Laboratoriesから得られた。マウスは、使用の72時間前に検疫を受け、ユタ州立大学の実験動物研究センターで、Teklad Rodent Diet(Harlan Teklad)、及び水道水で養われた。
【0052】
ウイルス:インフルエンザA/NWS/33(H1N1)は、Dr.Kenneth Cochran(ミシガン大学、Ann Arbor)により最初に提供された。ウイルスは、MDCK細胞で9回継代され、プールは調製され、マウスにおける致死率について事前に用量設定された。
【0053】
化合物:化合物は、上述のように投与のためにPBSで調製された。
【0054】
実験計画:動物の数及び試験群は、表2に記載される。マウスは、インフルエンザウイルスの90μl懸濁液を用いて鼻腔内経路によりチャンレンジされる前に、ケタミン/キシラジンのi.p.注射により麻酔された。単独療法処置群は、0.05又は0.1mg/kg/日で経口経路により1日2回投与されるオセルタミビル、及び1.2mg/kg/日で腹腔内経路により1日2回投与されるベラプロストからなる。全てのオセルタミビル及びベラプロスト群は、ウイルス曝露の4時間前に開始した10日間の処置を受けた。薬物併用処置は、1.2mg/kg/日でのベラプロストを組み合わせた、0.05又は0.1mg/kg/日でのオセルタミビルからなる。リバビリンは、ウイルス曝露の4時間前に開始し、5日間、75mg/kg/日で腹腔内経路により1日2回投与された。全ての処置は、12時間空けて投与された。感染に続いて、マウスは21日間観察された。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
動脈血酸素飽和度(SaO2)測定:SaO2測定は、齧歯動物においてSaO2レベルを測定するために特別に設計されたカラーアタッチメントを備えたMouseOx(商標)(STARR Life Sciences,Pittsburgh,PA)パルス酸素濃度計を用いて行われた。SaO2レベルは、ウイルス曝露後5、6、7、及び8日に測定され、それは、これらの日において、多くの動物は、深刻な臨床兆候及び/又は死亡を示したからであった。平均SaO2レベルは、それぞれの処置群についてそれぞれの日に測定され、有意な一対比較を評価するために、クラスカル・ウォリス検定、続いてダンの事後検定により、処置群間の有意差について分析された。
【0058】
さらなる統計的分析:カプラン・マイヤー生存曲線は、ログランク(マンテル・コックス)検定、続いてPrism 5.0b(GraphPad Software Inc.)のゲーハン・ブレスロー・ウィルコクソン検定を用いた一対比較により作られ、比較された。平均体重は、一元配置ANOVA、続いてPrism 5.0bを用いたテューキーの多重比較検定により分析された。
【0059】
マウスの生存率に関する感染前4時間の投与に伴う併用療法の効果:対照群では、リバビリン群において、全ての動物は生存し、PSS群において、マウスは生存しなかった。単独療法群(2用量のオセルタミビル、又は1用量のベラプロスト)では、生存したマウスはなかった。ベラプロスト及びオセルタミビル(0.05mg/kg/日)の併用群では、10匹の動物のうち1匹が生存した。ベラプロスト+オセルタミビル(0.1mg/kg/日)の併用群では、10匹の動物のうち8匹が生存した。
【0060】
実施例3:
動物:雌性18〜20g BALB/cマウスは、Charles River Laboratoriesから得られた。マウスは、使用の72時間前に検疫を受け、ユタ州立大学の実験動物研究センターで、Teklad Rodent Diet(Harlan Teklad)、及び水道水で養われた。
【0061】
ウイルス:インフルエンザA/NWS/33(H1N1)は、Dr.Kenneth Cochran(ミシガン大学、Ann Arbor)により最初に提供された。ウイルスは、MDCK細胞で9回継代され、プールは調製され、マウスにおける致死率について事前に用量設定された。
【0062】
化合物:化合物は、投与のためにPBSで調製された。
【0063】
実験計画:動物の数及び試験群は、表3に記述される。マウスは、インフルエンザウイルスの90μl懸濁液を用いて鼻腔経路によるチャレンジの前に、ケタミン/キシラジンのi.p.注射により麻酔された。単独療法処置群は、0.05又は0.1mg/kg/日で経口経路により1日2回投与されるオセルタミビル、及び1.2mg/kg/日で腹腔内経路により1日2回投与されるベラプロストからなる。全てのオセルタミビル及びベラプロスト群は、マウスに対するウイルス曝露後24時間に開始した10日間の処置を受けた。薬物併用処置は、1.2mg/kg/日でのベラプロストを組み合わせた、0.05又は0.1mg/kg/日でのオセルタミビルからなる。リバビリンは、ウイルス曝露の4時間前に開始し、5日間、75mg/kg/日で腹腔内経路により1日2回投与された。全ての処置は、12時間空けて投与された。感染に続いて、マウスは21日間観察された。
【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
動脈血酸素飽和度(SaO2)測定:SaO2測定は、齧歯動物においてSaO2レベルを測定するために特別に設計されたカラーアタッチメントを備えたMouseOx(商標)(STARR Life Sciences,Pittsburgh,PA)パルス酸素濃度計を用いて行われた。SaO2レベルは、ウイルス曝露後5、6、7、及び8日に測定され、それは、これらの日において、多くの動物は、深刻な臨床兆候及び/又は死亡を示したからであった。平均SaO2レベルは、それぞれの処置群についてそれぞれの日に測定され、有意な一対比較を評価するために、クラスカル・ウォリス検定、続いてダンの事後検定により、処置群間の有意差について分析された。
【0067】
さらなる統計的分析:カプラン・マイヤー生存曲線は、ログランク(マンテル・コックス)検定、続いてPrism 5.0b(GraphPad Software Inc.)のゲーハン・ブレスロー・ウィルコクソン検定を用いた一対比較により作られ、比較された。平均体重は、一元配置ANOVA、続いてPrism 5.0bを用いたテューキーの多重比較検定により分析された。
【0068】
マウスの生存率に関する、感染後24時間の投与に伴う併用療法の効果:ウイルス曝露後24時間に開始した処置を伴う群についての生存曲線は、リバビリンで処置された陽性対照群において全ての10匹の動物が生存し、陰性対照又はPSS処置群において動物は生存しなかったことを示した。単独療法群における全ての動物は、いずれかのオセルタミビル又はベラプロスト処置後、死亡した。ベラプロスト(1.2mg/kg/日)+オセルタミビル(0.1mg/kg/日)の併用群では、10匹の動物のうち8匹が生存した。加えて、ウイルス曝露後24時間に開始した処置を伴う試験群についての平均体重の多重比較検定は、ベラプロスト(1.2mg/kg/日)+オセルタミビル(0.1mg/kg/日)処置が、単独療法処置のみと比較して、マウスにより早い回復及び体重増加を許容することを示した。感染後18及び20日まで、リバビリンと、ベラプロスト(1.2mg/kg/日)+オセルタミビル(0.1mg/kg/日)処置群間で、有意差は観察されなかった。プラセボ群に対する比較は、プラセボ群におけるマウスが10日後に生存しなかったので、これらの日について、完成させることができなかった。ベラプロスト単独又は併用のいずれかを伴う試験群についてのSaO2レベルの結果は、プラセボから有意差(P<0.05)を有する未感染の動物と同様であった。オセルタミビル単独療法群についてのSaO2の結果は、プラセボ群(PSS処置)と同様であった。
【0069】
この試験は、10日間の1.2mg/kg/日でのベラプロストと0.1mg/kg/日でのオセルタミビルとを組み合わせた1日2回の処置が、インフルエンザA/NWS/33(H1N1)ウイルスでの鼻腔内感染を受けたマウスの生存率を向上させ得ることを実証する。これらの結果は、チャレンジ曝露後24時間に処置を開始したマウスについて観察された。チャレンジ感染後24時間に開始した併用療法を受けたマウスは、単独治療処置のみを受けたマウスよりも、体重増加により示されるように、より早く回復することができた。さらに、動脈血酸素飽和(SaO2)レベルは、チャレンジ曝露後24時間に開始した併用療法に従って、著しく高かった。
【0070】
先述の発明は、理解を促進するために詳細に記述されているが、記述された実施形態は、実例として解釈されるものであり、限定するものではない。所定の変更及び修正が添付の特許請求の範囲内で実施され得ることは、当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス疾患を治療する方法であって、それを必要とする患者に、EP4受容体アゴニストと組み合わせて抗ウイルス剤を投与することを含む、方法。
【請求項2】
少なくとも一つの前記EP4受容体アゴニスト及び前記抗ウイルス剤が、準最適用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記EP4受容体アゴニストが、所定の患者についての最適用量の範囲の中央値の約10%〜約100%で投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗ウイルス剤が、所定の患者についての最適用量の約10%〜約80%で投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記抗ウイルス剤が、所定の患者についての最適用量の約15%〜約50%で投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルス疾患が、インフルエンザウイルスにより引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイルス疾患が、コロナウイルスにより引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記患者がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗ウイルス剤が、ウイルスタンパク質M2イオンチャネル阻害剤、ノイラミニダーゼ阻害剤、RNA複製及び転写阻害剤、並びにポリメラーゼ阻害剤から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抗ウイルス剤が、アマンタジン又はリマンタジンである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記抗ウイルス剤が、オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、又は{(4S,5R,6R)−5−アセトアミド−4−グアニジノ−6−[(1R,2R)−2−ヒドロキシ−1−メトキシ−3−(オクタノイルオキシ)プロピル]−5,6−ジヒドロ−4H−ピラン−2−カルボン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記抗ウイルス剤が、リバビリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記抗ウイルス剤が、6−フルオロ−3−ヒドロキシ−2−ピラジンカルボキサミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記EP4受容体アゴニストが、ベラプロストナトリウム、(+)−[1R,2R,3aS,8bS]−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシル−1−[(E)−(3S)−3−ヒドロキシル−4−メチル−1−オクテン−6−イニル)−1H−シクロペンタ[b]ベンゾフラン−5−ブタン酸ナトリウム塩、(+)−[1R,2R,3aS,8bS]−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシル−1−[(E)−(3S,、(R)−2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチルブタノールを同時投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法、である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ピオグリタゾン、又はロシグリタゾンを同時投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記EP4アゴニストが、(4R)−3−ヒドロキシル−4−メチル−1−オクテン−6−イニル)−1H−シクロペンタ[b]ベンゾフラン−5−ブタン酸ナトリウム塩、(+)−[1R,2R,3aS,8bS]−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシル−1−[(E)−(3S,4S)−3−ヒドロキシル−4−メチル−1−オクテン−6−イニル)−1H−シクロペンタ[b]ベンゾフラン−5−ブタン酸ナトリウム塩、又は(+)−[1R,2R,3aS,8bS]−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシル−1−[(E)−(3S)−3−ヒドロキシル−4−メチル−1−オクテン−6−イニル)−1H−シクロペンタ[b]ベンゾフラン−5−ブタン酸ナトリウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記EP4受容体アゴニストが、ニレプロスト、(E)−5−シアノ−5−[(1S,5R,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6−[(E)−(3S,4RS)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテニル]−2−オキサ−ビシクロ[3.3.0]オクタン−3−イリデン]ペンタン酸、及び異性体(E)−5−シアノ−5−[(1S,5R,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6−[(E)−(3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテニル]−2−オキサ−ビシクロ[3.3.0]オクタン−3−イリデン]ペンタン酸、又は(E)−5−シアノ−5−[(1S,5R,6R,7R)−7−ヒドロキシ−6−[(E)−(3S,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテニル]−2−オキサ−ビシクロ[3.3.0]オクタン−3−イリデン]ペンタン酸、又は(E)−[(3aR,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−5−ヒドロキシ−4−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテニル]−2H−シクロペンタ[b]フラン−2−イリデン]−1H−テトラゾール−5−2E−ペンタンニトリルである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記EP4受容体アゴニストが、
【化1】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記抗ウイルス剤及び前記EP4受容体アゴニストが、抗炎症剤と組み合わせて、又は補助的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記抗炎症剤が、NSAIDである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗炎症剤が、ステロイドである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
一つ又は複数の医薬的に許容される賦形剤を含む、単回用量形態でEP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤を含む医薬組成物。
【請求項23】
抗ウイルス剤及びEP4受容体アゴニストを含む医薬製剤を含むキット。
【請求項24】
抗ウイルス剤を含む第一の医薬製剤、及びEP4受容体アゴニストを含む第二の医薬製剤を含むキット。
【請求項25】
インフルエンザウイルス及び/又はコロナウイルスによる、ヒトにおける感染の治療に使用のための、EP4受容体アゴニスト及び抗ウイルス剤の組み合わせ。

【公表番号】特表2013−508282(P2013−508282A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534324(P2012−534324)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/052506
【国際公開番号】WO2011/047048
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(511028685)ジェンムス ファーマ インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】