説明

ウェハーボンディングのための改善された方法及び装置

半導体構造を結合するための改善された装置が、第1の半導体構造の第1の表面及び第2の半導体構造の第1の表面を蟻酸で処理するための装置と、第1の半導体構造の第1の表面を第2の半導体構造の第1の表面と向かい合わせに、かつ接触させて配置するための装置と、第1の半導体構造及び第2の半導体構造を互いに押圧することによって、第1の半導体構造の処理された第1の表面と第2の半導体構造の処理された第1の表面との間に結合界面を形成するための装置とを備える。第1の半導体構造の表面及び第2の半導体構造の表面を蟻酸で処理するための装置は、一部を液体蟻酸で、及び一部を蟻酸蒸気で満たされた密閉タンクを備える。入口バルブを開くことによって、タンクが窒素ガス源に接続されて、窒素ガスがタンクに流れ込むことができるようになる。出口バルブを開くことによって、蟻酸蒸気と窒素ガスとの混合物が、タンクから流れ出ることができるようになる。混合物は、第1の半導体構造の表面及び第2の半導体構造の表面を処理するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウェハーボンディングのための改善された方法及び装置に関し、より詳細には、ウェハー表面処理と、その後の直接ウェハーボンディングとを組み合わせる改善された工業規模の半導体ウェハーボンディング工程に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを形成するための広範な半導体工程の用途においてウェハー間(W2W)ボンディングが実施されている。ウェハーボンディングが適用される半導体工程の応用例は、集積回路の基板処理及び製造、微小電気機械システム(MEMS)のパッケージング及び封入、並びに純粋なマイクロエレクトロニクスの多数の処理層のスタッキング(3D集積)を含む。ウェハー間結合の品質は、これらのデバイスの全体的な工程の歩留まり及び製造コストに、そして最終的には、これらのデバイスを組み込むエレクトロニクス製品のコストに影響を及ぼす。
【0003】
多数のウェハー間ボンディング方法がある。ここで対象となるのは、接着剤としてウェハー表面金属構造に依存する方法である。これらの金属構造の例は、銅、金、又はアルミニウムパッド及びラインである。多くの場合に、一方又は両方のウェハーが向かい合う金属構造を有し、少なくとも一方のウェハーが金属はんだを保持し、接合点において接着剤としての役割を果たす。他の場合には、ウェハーを接合するために、金属構造そのものが溶接される。全ての金属接合方法において、強い結合を確保するために、接合する金属では、酸化物及び有機汚染物質がないようにしなければならない。金属接合を用いたW2Wボンディングのための2つの方法が、直接ウェハーボンディング及び熱圧着ボンディングである。
【0004】
直接ウェハーボンディングは、2つの別個のウェハー表面が接触されると共にいかなる中間接着剤も外力も用いることなく結合される工程を指す。初期結合強度は通常弱く、したがって一般的に引き続きアニーリングステップが実行されて結合が強化される。直接ウェハーボンディング工程は、表面活性化、室温ボンディング及びアニーリングを含む3ステップの工程とみなすことができる。プレボンディングとしても既知である室温ボンディングは、ファンデルワールス力としても既知である原子間力及び分子間力、水素結合又は水架橋に基づく。これらの力は比較的弱い。しかしながら、多くの事例において、2つの清浄かつ平坦な表面の自然に起こるボンディングは、ただ1つの点のみにおいて開始される場合に発生する。一般的に、このボンディングは中心内で又は端部において開始される。図1のIR画像に示すように、ボンディングが開始されると、いわゆるボンディング先端(bonding front)がボンディング界面にわたって伝播する。図1を参照すると、第1のステップにおいて2つのウェハー表面40が、それらの間に小さな空隙が存在するように近接近させられ、その後、それらの2つのウェハー表面は単一の点35において互いに押し付けられて、その単一の点においてウェハー表面間の距離は原子スケールに達する(30A)。上述したように、この点35は通常ウェハー40の端部又は中心にある。次に、結合先端36が、界面間隙のない結合領域34を背後に残しながら10ミリメートル毎秒〜30ミリメートル毎秒の速度で自身の推進力の下に界面全体にわたって伝播する(30B)。最後に、結合先端36はウェハー表面の反対の端部に達し、ボンディングが完了する(30C)。結合先端伝播速度及びボンディング時間は、材料、湾曲(bow)、平坦性、微視的粗度、及び清浄度のような多くの基板パラメーターによって決まる。デバイス設計及び相対結合表面は、結合先端伝播においても主要な役割を果たす。最後に、結合表面の前処理がボンディング品質全体に大きな影響を及ぼす。
【0005】
熱圧着ボンディングは、力及び圧力を用いてウェハー対の向かい合う金属構造をはんだ付けするか又は溶接することによって、2つのウェハーを接合する。図4Aは、2つのウェハーを加熱及び押圧(熱圧着)して結合対を形成するために用いられる装置の概略図である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
結合表面のいくつかの前処理方法が提案されてきた。しかしながら、提案される方法の大部分は、大規模の半導体製造工程に適応させるには効率的でないか、又は拡張性がない。それゆえ、ウェハー表面処理と、その後の直接ウェハーボンディングとを組み合わせる工業規模の半導体ウェハーボンディング工程が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概して、1つの態様において、本発明は、半導体構造を結合するための改善された装置であって、第1の半導体構造の第1の表面及び第2の半導体構造の第1の表面を蟻酸で処理するための装置と、第1の半導体構造の第1の表面を第2の半導体構造の第1の表面と向かい合わせに、かつ接触させて配置するための装置と、第1の半導体構造及び第2の半導体構造を互いに押圧することによって、第1の半導体構造の処理された第1の表面と第2の半導体構造の処理された第1の表面との間に結合界面を形成するための装置とを備える、半導体構造を結合するための改善された装置を特徴とする。
【0008】
本発明のこの態様の実施態様は以下の特徴のうちの1つ又は複数を含む場合がある。第1の半導体構造の表面及び第2の半導体構造の表面を蟻酸で処理するための装置は、一部を液体蟻酸で、及び一部を蟻酸蒸気で満たされた密閉タンクを備える。タンクは入口バルブ及び出口バルブを備える。入口バルブを開くことによって、タンクが窒素ガス源に接続されて、窒素ガスがタンクに流れ込むことができるようになる。出口バルブを開くことによって、蟻酸蒸気と窒素ガスとの混合物が、タンクから流れ出ることができるようになる。そして、混合物は、第1の半導体構造の表面及び第2の半導体構造の表面を処理するために用いられる。蟻酸蒸気と窒素ガスとの混合物は、4%の蟻酸を含むように調整される。第1の半導体構造の表面及び第2の半導体構造の表面を蟻酸で処理するための装置は、蟻酸処理装置の外部の低レベルの蟻酸蒸気を検出するための漏れ検出器をさらに備える。第1の半導体構造の表面及び第2の半導体構造の表面を蟻酸で処理するための装置は、窒素ガス圧力センサー、圧力モニターデバイス、窒素ガス圧力レギュレーター、窒素ガス流量計、蟻酸と物質的に適合するように構成されるガス制御バルブ、設定値未満の窒素ガス圧力を指示するためのエラーインジケーター、及びエラーが指示されるか又は蟻酸漏れが検出される場合に装置への電源を遮断するように構成される電気的ロックアウトスイッチをさらに備える。タンクは、タンク内部の圧力をモニターするタンク圧力ゲージ及びタンク内の液体蟻酸の充填レベルを指示する高蟻酸レベルセンサー及び低蟻酸レベルセンサーをさらに備える。第1の半導体構造の表面及び第2の半導体構造の表面を蟻酸で処理するための装置は、蟻酸に適合する材料から作製される。第1の半導体構造の表面及び第2の半導体構造の表面を蟻酸で処理するための装置は、装置が傾かないようにするための手段、第1の密閉キャビネット、及び第2の密閉キャビネットをさらに備える。第1の密閉キャビネットは、タンク、タンク圧力ゲージ、タンク入口バルブ及びタンク出口バルブ、タンクバイパスバルブ、タンク遮断バルブ、並びに高蟻酸レベルセンサー及び低蟻酸レベルセンサーを封入する。第2の密閉キャビネットは、窒素ガス圧力センサー、圧力モニターデバイス、窒素ガス圧力レギュレーター、窒素ガス流量計、ガス制御バルブ、エラーインジケーター、電気的ロックアウトスイッチ、ステータスインジケーター及びパージバルブを封入する。第1の半導体構造の表面及び第2の半導体構造の表面を蟻酸で処理するための装置は、タンクを、配置する装置及び/又は結合する装置に接続する少なくとも1つの管をさらに備える。管とタンクとの間の全ての連結部が第1の密閉キャビネット内に封入される。
【0009】
概して、別の態様において本発明は、半導体構造を結合するための改善された方法であって、第1の半導体構造の第1の表面及び第2の半導体構造の第1の表面を蟻酸で処理すること、第1の半導体構造の第1の表面を第2の半導体構造の第1の表面と向かい合わせに、かつ接触させて配置すること、及び第1の半導体構造及び第2の半導体構造を互いに押圧することによって、第1の半導体構造の処理された第1の表面と、第2の半導体構造の処理された第1の表面との間に結合界面を形成することを含む、方法を特徴とする。蟻酸は、一部を液体蟻酸で、及び一部を蟻酸蒸気で満たされた密閉タンクによって与えられる。タンクは入口バルブ及び出口バルブを備える。入口バルブを開くことによって、タンクが窒素ガス源に接続されて、窒素ガスがタンクに流れ込むことができるようになる。出口バルブを開くことによって、第1の半導体構造の表面及び第2の半導体構造の表面を処理するための蟻酸蒸気と窒素ガスとの混合物が、タンクから流れ出ることができるようになる。
【0010】
図面を参照する際に、いくつかの図面全体を通して、同じ番号は同じ部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】種々のウェハーボンディング段階のIR画像を示す図である。図中30A は、「ウェハーが極めて近接している(2つのウェハー間に空隙がある)。ウェハーを互いに押圧することによって、表面が単一の点において原子距離になる。(ボンディング初期化)」を示す。図中30Bは「結合先端が自らの推進力の下に界面全体にわたって広がる(10〜30mm/s)。結合先端の背後に界面間隙は存在しない。」を示す。図中30Cは、「2つの表面間が原子距離になる。融着→接着剤を使用しない接着。」を示す。図中、各符号の意味。30:ボンディング完了、32:結合されていないエリア、34:結合されたエリア、35:ウェハーエッジにおける開始ボンディング点、36:結合先端
【図2】ボンディングが開始される前の段階における2つのウェハーのボンディング配置の概略図である。
【図3】上側ウェハーが下側ウェハー上に浮かぶ段階における図2の2つのウェハーのボンディング配置の概略図である。
【図4】ボンディングが開始される段階における図2の2つのウェハーのボンディング配置の概略図である。
【図4A】熱圧着ウェハーボンディングチャンバー80の側断面図である。図中英文の意味は以下;ProgrammableCenter-Pin: プログラム可能センターピンForceColumn Air-Pressure: 力カラム空気圧Water-CooledFlange: 水冷フランジVacuumInsulation: 真空断熱Air-CooledHeater: 空冷ヒーターHeaterIsolation Vacuum:ヒーター断熱真空ToolPressure Preload Piston: ツール予圧ピストンContactWEC: コンタクトWECWEC LockPiston: WECロックピストンZ-AxisPositioner:Z軸ポジショナーZ-AxisGuide: Z軸ガイドTie-Rod(3X):タイロッド(3X)
【図5】本発明のウェハーボンディング装置の概略図である。
【図6】図5の蟻酸バブラーの概略図である。図中英文は以下の意味;StatusIndicator: ステータスインジケーターErrorIndicators: エラーインジケーターElectricalLock out: 電気的ロックアウトPurgeCycle: パージサイクルFormic gasCabinet: 蟻酸キャビネットElectricalPneumatic Cabinet: 電気的空気圧キャビネットDragerSensor: Dragerセンサー
【図7】バブラー電子機器キャビネットの概略図である。図中英文は以下の意味;151 PressureMonitor:圧力モニター152 N2Pressure Monitor:N2圧力センサー153 DiluteN2 Flow meter:希薄N2流量計154 ProcessN2 Flow meter:プロセスN2流量計156 N2Regulator:N2レギュレーター157 PressureSensor Controller:圧力センサーコントローラー158 ValveManifold:バルブマニホールド300 ProcessN2:プロセスN2310 DiluteN2:希薄N2
【図8】バブラーガスキャビネットの概略図である。図中英文は以下の意味;164 FORMICACID VAPOR:蟻酸蒸気165 FORMICACID:蟻酸168 Inlet:入口169 Outlet:出口300 ProcessN2:プロセスN2310 DiluteN2:希薄N2DiluteN2+FORMIC:希薄N2+蟻酸BubblerExhaust:バブラー排出
【図9】図8に続くバブラーガスキャビネットの概略図である。図中英文は以下の意味;145 FacilitiesExhaust:施設排出部400a Chamber 1 Formic line:チャンバー1蟻酸ライン400b Chamber 2 Formic line:チャンバー2蟻酸ラインDiluteN2+FORMIC:希薄N2+蟻酸
【図10】プロセスチャンバーの概略図である。図中英文は以下の意味;410 Flowmeter:流量計411 ProcessChamber 1:プロセスチャンバー1412 ProcessChamber 2:プロセスチャンバー2ProcessExhaust:工程排出部
【図11】蟻酸蒸気に曝露された後(A、B)及び任意の表面洗浄にかけられる前のウェハー表面の画像の図である。
【図12】本発明の工程で製造されるウェハー結合の音像の図である。
【図13】蟻酸タンク及び密閉室を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
直接ボンディング工程では、典型的には、図2に示されるように、ウェハーは水平に向けられる。下側ウェハー84は、特定の直径を有するフラットキャリア(チャック)86上に、表を上にして配置される。上側ウェハー82は、機械スペーサー88a、88b上に、表を下にして配置される。ウェハー間の近接間隙85は、スペーサーの厚み及び位置によって画定される。次に、図3に示されるように、スペーサー88a、88bが除去されるが、2つの平坦な表面間にエアクッション85があるので、上側ウェハー82は下側ウェハーの上に浮かぶ。次に、図4に示されるように、単一の点83(典型的には、ウェハーエッジ又は中心)に力Fが加えられ、ウェハー82、84を原子接触させて、ファンデルワールス力に基づいて、ボンディングを開始する。図1に示されるように、直線又は円形の結合先端が広がり、界面85から空気を追い出し、それらの表面を原子接触状態にしておく。
【0013】
シリコンウェハーの直接ボンディングは、巨視的及び微視的両方のレベルにおいて平滑なウェハー表面を必要とする。これらの要件は、言い換えると、巨視的には40マイクロメートル未満の表面湾曲及び2マイクロメートル未満の総表示振れ(TIR:total indicated runout)を表し、微視的には、2マイクロメートル未満の表面粗さの二乗平均平方根(RMS)を表す。これらの要件は、大規模の製造工程において達成するのは非常に難しい。結果として、結合面における欠陥、空隙及びガスの閉じ込めを回避するために、通常、CMP及びボンディング中の大きな力による徹底した平坦化ステップが必要とされる。
【0014】
さらに、Cu−Cu又はAl−Alボンディングのような金属−金属結合は、表面酸化、及び粒径管理によって影響を及ぼされる。粒界は、粒界に沿った金属拡散の増加に寄与し、結果として、ボンディングスループットを増加させる。一方、金属表面が酸化する結果として、金属酸化物の層が生成され、金属が結合面まで拡散できるようにするために、その層を「砕く」必要がある。これは、室温及び真空環境であっても表面酸化が生じるAl−Al結合の場合に特に当てはまる。結果として、酸化物層を「砕く」ために、大きな力を加える必要がある。加えられる力は、通常、汚れていない金属を結合するために必要とされる力の2〜3倍高い。同じ酸化物形成はCu表面においても生じる。しかしながら、銅酸化物は銅に溶解し、洗浄及び不動態化を必要とするものの、非常に大きな力を加える必要はない。ボンディング工程前に酸化物を除去することは、必要とされる結合力を低減し、結合歩留まりを約100%まで高める。したがって、ボンディング前に酸化物を除去することは、直接シリコン−シリコン及び金属−金属結合において好都合である。
【0015】
一実施形態では、図5に示されるように、蟻酸を用いて、ボンディング工程前に任意の表面酸化物を除去する。蟻酸130が4%の濃度まで窒素蒸気及び水蒸気と混合され、毎分10リットルの速度でプロセスチャンバー190に供給される。プロセスチャンバー190において、半導体ウェハー表面及び金属表面が、25℃〜60℃の範囲の温度において、1〜10分の時間間隔にわたって蟻酸蒸気に曝露される。このように蟻酸蒸気に曝露した後に、上記の工程に従って、ウェハー表面がボンディングチャンバー80において結合される。蟻酸で酸化物を除去した直後のウェハーボンディングが、低い工程圧(小さな加えられる力)及び低い工程温度において行なわれ、結合品質及び歩留まりが高められることが観測されている。一例では、蟻酸に表面を曝露した後のAl−Alボンディングが、350℃の工程温度において、40KN未満の力を加えて行なわれるのに対して、事前に蟻酸に曝露しないAl−Alボンディングは90KNの大きな力で行なわれる。同様に、蟻酸に曝露した後のCu−Cuボンディングが、450℃の工程温度において、30KN未満の力を加えて行なわれるのに対して、事前に蟻酸に曝露しない場合、Cu−Cuボンディングは80KNの力を加えて行なわれる。デバイスのタイプの中には極端な圧力に影響を受けやすいものもあるので、加えられる力を低減すると、熱圧着ボンディングで処理することができる半導体デバイスのタイプの範囲が広がる。図11は、蟻酸蒸気で処理されたウェハーの光学画像(A、B)及び未処理のウェハー表面の画像(C、D)を示す。未処理の表面(C、D)において激しい表面酸化を見ることができる。図12は、蟻酸蒸気で表面を前処理した後の200mmCu−Cuボンディングの音像を示す。ボンディングは、SUSS SB8eボンダーにおいて、20KNの力を加えて、450℃の温度において1時間実行された。
【0016】
蟻酸(又はメタン酸)はカルボン酸であり、ハチの毒及びアリの毒針において自然に発生する。工業レベルでは、蟻酸は、酢酸のような他の化学薬品の製造中に副産物として生成されるか、又は高温及び高圧(80℃及び40atm)においてメタノールと一酸化炭素とを反応させることによって合成される。製造方法及び蟻酸そのものの両方に関して、安全性が大きな懸念である。蟻酸からの主な危険は、液体の蟻酸に皮膚又は目が晒されること、又は濃縮蒸気と接触することに起因する。これらの曝露経路のいずれも激しい化学的火傷を引き起こす可能性があり、目の曝露の結果として、永久に目が損傷を受ける可能性がある。同様に、吸い込まれる蒸気も、気道内に炎症又は火傷を引き起こす可能性がある。蟻酸蒸気内には一酸化炭素が存在する場合もあるので、大量の蟻酸ガスが存在する場合にはいつでも注意すべきである。作業環境における蟻酸蒸気のUS OSHA許容曝露レベル(PEL:Permissible Exposure Level)は空気の5ppm(parts per million parts)である。蟻酸は容易に代謝し、身体によって除去される。それにもかかわらず、アレルギー、肝臓又は腎臓損傷を含む、いくつかの慢性効果が実証されている。したがって、酸化物除去チャンバー内に蟻酸を送り込む安全な方法が必要とされている。
【0017】
図5を参照すると、ボンディング工程80を適用する前に、蟻酸バブラー100が、プロセスチャンバー190内で使用するための窒素雰囲気内に4%の蟻酸エアロゾルを与える。バブラーは、液体蟻酸で満たされたタンクの中に室温の窒素を流し、窒素雰囲気内の4%の蟻酸エアロゾルを生成する。バブラーは、図6にも示されるように、ガスキャビネット140及び電気/空気圧キャビネット150を含む。
【0018】
図7を参照すると、電気/空気圧キャビネット150は、窒素プロセスガス圧力センサー152と、圧力モニター151と、ガス制御部のバルブマニホールド158と、窒素プロセスガス圧力レギュレーター156と、希薄窒素のための流量計153及び窒素プロセスガスのための流量計154と、圧力センサーコントローラー157と、制御電子回路とを備える。ガス制御部158は、蟻酸に適合するシールと共に用いられる、空気圧で駆動されるステンレス鋼バルブである。キャビネット150は、ステータスインジケーター121、エラーインジケーター122、電気的ロックアウト123、パージバルブ124も備える。バブラーキャビネットへの窒素供給圧が或る一定の圧力(すなわち、30psi)未満に降下する場合には、システムは緊急停止(EMO)状態に移行し、対応するエラーインジケーターが点灯されることになり、システムへの電源が遮断される。同様に、バブラー内の蟻酸漏れ(すなわち、10ppmよりも高い蟻酸)が存在する場合には、システムはEMO状態に移行し、対応するインジケーターがオンになり、電源が遮断される。
【0019】
図8を参照すると、ガスキャビネット140は、取替式蟻酸タンク142と、タンク圧ゲージ163と、手動遮蔽バルブ167と、入口クイックカップリング168及び出口クイックカップリングと、タンク入口バルブ170と、タンクバイパスバルブ171と、タンク出口バルブと、図9に示されるような蟻酸漏れ検出器409を含む排液口401とを備える。一例では、漏れ検出器409は、Draeger Safety社によって製造される、低レベルの酸蒸気を検出することができる電気化学センサーである。Draegerセンサーは、蟻酸と反応して、色を変える化学試薬で満たされたガラスバイアルを含む。ガラスバイアル内の色の変化の長さが、蟻酸の測定濃度を指示する。蟻酸タンク142は、手動遮断バルブ167及びクイック切断部168、169を用いて容易に変更される。また、タンク142は、タンク内の蟻酸液の充填レベルを指示する、高蟻酸レベルセンサー161及び低蟻酸レベルセンサー162も含む。ガスキャビネットは、安全のために、施設溶剤排出部145に接続される。排出部接続は、ガスキャビネットの右側にある4”OD取付具145を経由し、ステンレス鋼のような腐蝕性ガスへの曝露に対して高く評価される材料から形成される。窒素プロセスライン300は、窒素を蟻酸タンク142の中に送り込み、タンクにおいて窒素が蟻酸蒸気164と混合され、蟻酸/窒素エアロゾルが形成される。蟻酸/窒素アエロゾルはタンク142から出て、希薄窒素ライン310からの窒素でさらに希釈され、ガスバブラーから出るライン400内に4%蟻酸/窒素アエロゾルが形成される。ライン400は2つのライン400a、400bに分かれ、それぞれプロセスチャンバー411、412に4%蟻酸/窒素エアロゾルを送り込み、プロセスチャンバーにおいて、ウェハー表面からの表面酸化物除去が行なわれる。酸化物除去ステップ後に、ウェハーはボンディングチャンバー80に移動される。
【0020】
蟻酸の危険な特性を考えて、バブラーは、以下の防護対策を含む。排出ライン145上の酸蒸気検出器409、排出圧力損失検出器、蟻酸に不適合の部品の別個のキャビネットへの配置、窒素圧力損失スイッチ、チャンバー毎の手動ロックアウト、及び蟻酸ガスキャビネット内の液漏れ検出器。さらに、バブラーは、傾かないように機械的に固定される。一例では、傾かないようにするために、バブラーの脚は床にボルトで固定される。
【0021】
他の実施形態では、酸化物除去は、ボンディングが行なわれるのと同じチャンバー内で行なわれる。いずれの場合でも、バブラーは、ステンレス鋼管を介して、蟻酸エアロゾルを工程及び/又はボンディングチャンバーに送り込む。工程/ボンディングチャンバーとバブラーとの間のライン内に連結部は存在しない。全ての連結部は排出エリア内に配置される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態が記述されてきた。それにもかかわらず、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更を加えることができることは理解されよう。したがって、他の実施形態も添付の特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0023】
F:力
80:ボンディングチャンバー
80:ボンディング工程
82:上側ウェハー
83:単一の点(典型的には、ウェハーエッジ又は中心)
84:下側ウェハー
85:ウェハー間の近接間隙
85:界面
85:エアクッション
86:フラットキャリア(チャック)
88a、88b:機械スペーサー
100:蟻酸バブラー
121:ステータスインジケーター
122:エラーインジケーター
123:電気的ロックアウト
124:パージバルブ
130:蟻酸
140:ガスキャビネット
142:取替式蟻酸タンク
145:施設溶剤排出部
145:排出ライン
150:電気/空気圧キャビネット
151:圧力モニター
152:窒素プロセスガス圧力センサー
153:流量計
154:窒素プロセスガスのための流量計
156:窒素プロセスガス圧力レギュレーター
157:圧力センサーコントローラー
158:ガス制御部のバルブマニホールド
158:ガス制御部
161:高蟻酸レベルセンサー
162:低蟻酸レベルセンサー
163:タンク圧ゲージ
164:蟻酸蒸気
167:手動遮蔽バルブ
168:入口クイックカップリング
168,169:クイック切断部
170:タンク入口バルブ
171:タンクバイパスバルブ
190:プロセスチャンバー
300:窒素プロセスライン
310:希薄窒素ライン
400:ガスバブラーから出るライン
400a、400b:ライン
401:排液口
411、412:プロセスチャンバー
409:漏れ検出器
409:酸蒸気検出器






【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体構造を結合するための改善された装置であって、
第1の半導体構造の第1の表面及び第2の半導体構造の第1の表面を蟻酸で処理するための装置と、
前記第1の半導体構造の前記第1の表面を前記第2の半導体構造の前記第1の表面と向かい合わせに、かつ接触させて配置するための装置と、
前記第1の半導体構造及び前記第2の半導体構造を互いに押圧することによって、前記第1の半導体構造の前記処理された第1の表面と、前記第2の半導体構造の前記処理された第1の表面との間に結合界面を形成するための装置とを備える、半導体構造を結合するための改善された装置。
【請求項2】
前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を蟻酸で処理するための前記装置は、一部を液体蟻酸で、及び一部を蟻酸蒸気で満たされた密閉タンクを備え、前記タンクは入口バルブ及び出口バルブを備え、前記入口バルブを開くことによって、前記タンクが窒素ガス源に接続されて、窒素ガスが前記タンクに流れ込むことができるようになり、前記出口バルブを開くことによって、蟻酸蒸気と窒素ガスとの混合物が、前記タンクから流れ出ることができるようになり、前記混合物は、前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を処理するために用いられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
蟻酸蒸気と窒素ガスとの前記混合物は、4%の蟻酸を含むように調整される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を蟻酸で処理するための前記装置は、前記蟻酸処理装置の外部の低レベルの蟻酸蒸気を検出するための漏れ検出器をさらに備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を蟻酸で処理するための前記装置は、窒素ガス圧力センサー、圧力モニターデバイス、窒素ガス圧力レギュレーター、及び窒素ガス流量計をさらに備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を蟻酸で処理するための前記装置は、蟻酸と物質的に適合するように構成されるガス制御バルブをさらに備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を蟻酸で処理するための前記装置は、設定値未満の窒素ガス圧力を指示するためのエラーインジケーターをさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を蟻酸で処理するための前記装置は、エラーが指示されるか又は蟻酸漏れが検出される場合に前記装置への電源を遮断するように構成される電気的ロックアウトスイッチをさらに備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記タンクは、前記タンク内部の圧力をモニターするタンク圧力ゲージをさらに備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記タンクは、前記タンク内の該液体蟻酸の該充填レベルを指示する高蟻酸レベルセンサー及び低蟻酸レベルセンサーをさらに備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を蟻酸で処理するための前記装置は、蟻酸に適合する材料を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を蟻酸で処理するための前記装置は、前記装置が傾かないようにするための手段をさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を蟻酸で処理するための前記装置は、前記タンク、前記タンク圧力ゲージ、前記タンク入口バルブ及び前記タンク出口バルブ、タンクバイパスバルブ、タンク遮断バルブ、並びに前記高蟻酸レベルセンサー及び前記低蟻酸レベルセンサーを封入するように構成される第1の密閉キャビネットをさらに備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を蟻酸で処理するための前記装置は、前記タンクを、前記配置する装置及び/又は前記結合する装置に接続する少なくとも1つの管をさらに備え、前記管と前記タンクとの間の全ての連結部が前記第1の密閉キャビネット内に封入される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を蟻酸で処理するための前記装置は、前記窒素ガス圧力センサー、前記圧力モニターデバイス、前記窒素ガス圧力レギュレーター、前記窒素ガス流量計、前記ガス制御バルブ、前記エラーインジケーター、前記電気的ロックアウトスイッチ、ステータスインジケーター及びパージバルブを封入するように構成される第2の密閉キャビネットを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
半導体構造を結合するための改善された方法であって、
第1の半導体構造の第1の表面及び第2の半導体構造の第1の表面を蟻酸で処理すること、
前記第1の半導体構造の前記第1の表面を前記第2の半導体構造の前記第1の表面と向かい合わせに、かつ接触させて配置すること、及び
前記第1の半導体構造及び前記第2の半導体構造を互いに押圧することによって、前記第1の半導体構造の前記処理された第1の表面と、前記第2の半導体構造の前記処理された第1の表面との間に結合界面を形成することを含み、
前記蟻酸は、一部を液体蟻酸で、及び一部を蟻酸蒸気で満たされた密閉タンクによって与えられ、前記タンクは入口バルブ及び出口バルブを備え、前記入口バルブを開くことによって、前記タンクが窒素ガス源に接続されて、窒素ガスが前記タンクに流れ込むことができるようになり、前記出口バルブを開くことによって、前記第1の半導体構造の前記表面及び前記第2の半導体構造の前記表面を処理するための蟻酸蒸気と窒素ガスとの混合物が、前記タンクから流れ出ることができるようになる、半導体構造を結合するための改善された方法。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−524637(P2011−524637A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513671(P2011−513671)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/046967
【国際公開番号】WO2009/152284
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(508375309)
【Fターム(参考)】