説明

ウェハー搬送容器

【課題】 ウェハーの性能を保持すると共にウェハーケースに対するウェハーの出し入れ
の効率化を図ったウェハー搬送容器を提供する。
【解決手段】 第1,第2端壁7,9の他方の中央に支持軸13で回動可能に一体にして
、ウェハー押さえ24はウェハーWを均一に押さえるようにし、第1,第2ウェハーケー
ス2C,2Dの相対回動時に共回りする現象、すなわちウェハーとウェハー押さえ24と
の摩擦による異物粒子の発生、及びこれによるウェハーWの性能劣化を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の精密基板の収納及び搬送に用いられるウェハー搬送容器
に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚の半導体ウェハー(以下、ウェハーという)を貯蔵及び搬送する方法とし
て、ウェハーケース(ハウジング)内に1枚のウェハーを収納し、このウェハーの上に板
状のウェハー押さえ(スプリング)を載せると共にウェハーケースにカバーを係合させて
、ウェハー押さえとウェハーケースとによりウェハーを挟持するようにしたものがある。
しかも、このようなウェハーケースを複数段重ねたのち、最上のウェハーケースに蓋体(
カバー)をして複数枚のウェハーの貯蔵及び搬送をする容器が知られている(例えば、特
許文献1参照)。
【特許文献1】特公昭48−28953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ウェハーをウェハーケースに押さえるためのウェハー押さえは、単にウ
ェハー上に載置されているので、ウェハーの中心とウェハー押さえの中心とがずれること
があってウェハー押さえが均一にウェハーを押圧しないことがあった。
【0004】
このため、ウェハー押さえを押圧する蓋体又は上側のウェハーケースを開閉する方向に
回動させるとき、これに従動してウェハー押さえが蓋体又は上側のウェハーケースと一体
に共回りして、ウェハー押さえがウェハーに対して摺動することがある。このように、ウ
ェハー押さえがウェハーに対して摺動するとウェハーが損傷すると共に、ウェハー及びウ
ェハー押さえの摩擦により摩耗紛(異物粒子)がウェハーケース内に発生し半導体ウェハ
ー表面が汚染されて、性能を損なう虞があった。
【0005】
また、蓋体とウェハー押さえとは分離しているので、ウェハーケースからウェハーを取
り出す場合には蓋体とは別にウェハー押さえを取り出さねばならず作業性が低下する問題
があった。
【0006】
本発明は、ウェハーの性能を保持すると共にウェハーケースに対するウェハーの出し入
れの効率化を図ったウェハー搬送容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述事情に鑑みなされたものであって、請求項1に記載の発明は、一端が第
1端壁により閉鎖されて筒状をなす第1ウェハーケースの第1筒部に、一端が第2端壁に
より閉鎖されて筒状をなす第2ウェハーケースの第2筒部を周方向に回動可能に係合する
ことにより、前記第1,第2端壁の一方とこの該第1,第2端壁間に配設されたウェハー
押さえとによりウェハーの周縁部を挟持させると共に、前記第1,第2筒部を周方向に相
対回動させることにより互いに係合脱着可能にしたウェハー搬送容器であって、前記ウェ
ハー押さえは、前記第1,第2端壁の他方の中央に支持軸で回動可能に保持されているこ
とを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、第1筒部及び該第1筒部の一端を閉鎖する第1端壁を
有する第1ウェハーケースと、第2筒部及び該第2筒部の一端を閉鎖する第2端壁を有し
且つ前記第2筒部が前記第1筒部に周方向へ回動可能に係合された第2ウェハーケースと
、前記第1,第2端壁間に配設されたウェハー押さえと、前記第1,第2ウェハーケース
の第1,第2筒部を周方向に相対回動させることにより、前記第1,第2ウェハーケース
の前記第1,第2筒部を互いに固定及び固定解除可能にする係合固定手段を備えると共に
、前記ウェハー押さえを介して前記第1,第2端壁との間にウェハーの周縁部を挟持させ
るようにしたウェハー搬送容器であって、前記ウェハー押さえは、前記第1,第2端壁の
他方の中央に支持軸で回動可能に保持させられることにより、前記ウェハー押さえと前記第1,第2端壁との一方が前記第1,第2端壁との他方に対して一体に回動するように設
第2,けられていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記第1,第2ウェハーケースの外周面が、多角形の
形状に形成され、該形状の端面が平面視で略一致したときに前記第1,第2ウェハーケー
スが係合固定されていることを特徴としている。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記ウェハー押さえが、前記ウェハーの周縁部に延び
る複数の脚部を有し、該脚部の中間部には肉薄部が形成されていることを特徴としている

【0011】
また、請求項5に記載の発明は、前記支持軸が該支持軸の端面の対称位置に半径方向に
延びる1対の係止突部を有すると共に、前記ウェハー押さえは上記支持軸に内挿する円形
穴と前記係止突部が挿通可能な1対の突状穴とを有していて、前記ウェハー押さえの前記
突状穴が前記支持軸の前記係止突部に一致する位置で前記ウェハー押さえは前記支持軸に
挿脱可能であることを特徴としている。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、前記支持軸の前記1対の係止突部は、一方の係止突部
が他方の係止突部よりも長く形成されていることを特徴としている。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、前記支持軸の1対の係止突部が、該係止突部の先端に
前記ウェハー押さえ側に向く傾斜部を有することを特徴としている。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、前記ウェハー押さえが前記支持軸に挿脱可能な位置を
表示する位置合わせマークを前記第1,第2ウェハーケースと前記ウェハー押さえとにそ
れぞれ備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係わる発明によれば、第1,第2端壁の他方の中央に支持軸で回動可能に一
体にしたので、ウェハー押さえはウェハーを均一に押さえることができると共に、第1,
第2ウェハーケースの相対回動時に共回りする現象、すなわちウェハーとウェハー押さえ
との摩擦による異物粒子の発生、及びこれによるウェハーの性能劣化を抑えることができ
る。
【0016】
さらに、ウェハーの出し入れ時にウェハー押さえを別途に出し入れする必要がなくてウ
ェハー出し入れの作業性を向上させることができる。
【0017】
また、請求項2に係わる発明によれば、ウェハー押さえが、前記第1,第2端壁との他
方の中央に支持軸で回動可能に保持させられることにより、前記ウェハー押さえと前記第
1,第2端壁との一方が前記第1,第2端壁との他方に対して一体に回動するように設け
たので、ウェハー押さえはウェハーを均一に押さえることができると共に、第1,第2ウ
ェハーケースの相対回動時に共回りする現象、すなわちウェハーとウェハー押さえとの摩
擦による異物粒子の発生、及びこれによるウェハーの性能劣化をより確実に抑えることが
できる。
【0018】
さらに、第1,第2筒部は、係合固定手段により互いに固定及び固定解除されるので、
第1,第2筒部の相互の過締めが防止され、この過締めによる第1,第2ウェハーケース
の開けにくさ、及びこれによるウェハーの出し入れ操作の不便性を防止することができる

【0019】
ウェハー押さえが第1,第2端壁の他方の中央に一体であるので、第1,第2ウェハー
ケースに対するウェハーの出し入れ時にウェハー押さえを別途に出し入れする必要がなく
てウェハー出し入れの作業性を向上させることができる。
【0020】
また、請求項3に係わる発明によれば、第1,第2ウェハーケースの外周面が、多角形
の形状に形成され、該形状が平面視で略一致したときに、第1,第2ウェハーケースが係
合固定されているので、第1,第2ウェハーケースを容易に相対回動させることができて
ウェハー出し入れの作業の効率化を図ることができる。さらに、過締め防止の確実性が向
上すると共に、第1,第2ウェハーケースの適正な係合固定状態が、その外観から視認す
ることが可能となる。
【0021】
また、請求項4に係わる発明によれば、ウェハー押さえの脚部の中間部に薄肉部を形成
したので、ウェハー押さえのウェハー保持力をなるべく適正な範囲に調整保持することが
できてウェハー保持力を向上させることができる。
【0022】
また、請求項5に係わる発明によれば、支持軸の端面の対称位置に半径方向に延びる1
対の係止突部を有すると共に、前記ウェハー押さえは上記支持軸に内挿する円形穴と前記
係止突部が挿通可能な1対の突状穴とを有していて、前記ウェハー押さえの前記突状穴が
前記支持軸の前記係止突部に一致する位置で前記ウェハー押さえは前記支持軸に挿脱可能
にしたので、支持軸に対してウェハー押さえを回動可能に容易に着脱することができると
共に、挿脱時の発塵の発生が防止され、ウェハー押さえ及び第1,第2ウェハーケースの
清浄度を保持することができる。
【0023】
そして、ウェハー押さえを支持軸に挿入した後は、左右何れかの方向にウェハー押さえ
を少し回動しさえすれば、ウェハー押さえを確実にウェハーケースに保持させることがで
きる。
【0024】
また、請求項6に係わる発明によれば、支持軸に対するウェハー押さえの挿脱位置は3
60°の範囲で1箇所にすることができるので、第1,第2ウェハーケースの単独の取扱
時にウェハー押さえが支持軸から外れ難くすることができる。
【0025】
また、請求項7に係わる発明によれば、係止突部の先端にウェハー押さえが取り付けら
れる側に向く傾斜部を有するので、支持軸に対するウェハー押さえの取り付けを容易に行
うことができる。
【0026】
また、請求項8に係わる発明によれば、ウェハー押さえが支持軸に挿脱可能な位置を表
示する位置合わせマークを前記第1,第2ウェハーケースと前記ウェハー押さえとにそれ
ぞれ設けたので、支持軸に対するウェハー押さえの挿脱作業をさらに容易に行うことがで
きる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0028】
図1はウェハー搬送容器1の斜視図を示している。このウェハー搬送容器1はウェハー
ケース2A,2B,2C,2Dを積み重ねたのち上部を蓋体3により閉塞して一体にした
ものからなっている。前記ウェハーケース2A,2B,2C,2D及び蓋体3は樹脂成型
品からなっており、このウェハーケース2A,2B,2C,2Dの材料はポリカーボネー
ト樹脂が用いられて透明である。
【0029】
各ウェハーケース2A,2B,2C,2D及び蓋体3は、後述するようにして相互に相
対回動できるようになっていて、上側のウェハーケース及び蓋体3が下側のウェハーケー
スに対して矢印4で示す時計方向に回動させたときに上側のウェハーケースが開くように
なっている。
【0030】
ここで、ウェハーケース2A,2B,2C,2Dは、上下において係合するもののうち
下側に位置するものがそれぞれ第1ウェハーケースとなり、上側に位置するものがそれぞ
れ第2ウェハーケースとなる。すなわち、ウェハーケース2Aに対してウェハーケース2
Bが第2ウェハーケースとなる。
【0031】
同様にウェハーケース2Bを第1ウェハーケースとすると、ウェハーケース2Bに対し
てウェハーケース2Cが第2ウェハーケースとなる。また、ウェハーケース2Cを第1ウ
ェハーケースとすると、ウェハーケース2Cに対してウェハーケース2Dが第2ウェハー
ケースとなる。さらに、ウェハーケース2Dを第1ウェハーケースとすると、ウェハーケ
ース2Dに対して蓋体3が第2ウェハーケースとなる。
【0032】
図2は、図1のウェハー搬送容器1の一部、すなわち、第1ウェハーケースとしてのウ
ェハーケース2Cと第2ウェハーケースとしてのウェハーケース2D及び蓋体3の横断側
面図を示している。ウェハーケース2A,2B,2C,2Dの構造は同一であるが、上下
に隣設するウェハーケース2C,ウェハーケース2D及び蓋体3においては同じ箇所を異
なる符号で表示することにする。
【0033】
図2において、ウェハーケース2Cは、円筒形の厚肉筒部6を有していて、一端(図2
においては上端)が第1端壁7により閉鎖されている。また、ウェハーケース2C上に後
述するように結合されているウェハーケース2Dは、円筒形の第2筒部としての厚肉筒部
8を有して、一端(上端)が第2端壁9により閉鎖されている。
【0034】
図3はウェハーケース2Cの平面図を示し、図4はウェハーケース2Cの横断正面図を
、図5はウェハーケース2Cの底面図をそれぞれ示している。図2及び図4に示すように
、第1端壁7は上側に向けて凹面に湾曲した形状になっており、この第1端壁7の周縁部
7aは厚肉筒部6の上部に接続している。
【0035】
また、厚肉筒部6の上部には、厚肉筒部6の外径よりも小径の第1筒部としての薄肉筒
部11が形成されており、この薄肉筒部11の下部は第1端壁7により閉鎖されている。
薄肉筒部11の内面11aは図6(a)に示すように上部側が広くなるように傾斜してい
る。
【0036】
前記第1端壁7及び薄肉筒部11によりウェハーWを収納する収納部12の一部が形成
されている。なお、薄肉筒部11の内径は第1端壁7の周縁部7a上にウェハーWが位置
するように充分広くなっている。
【0037】
図2及び図4に示すように、前記第1端壁7の下面7bの中央には、支持軸13が一体
的に形成されている。この支持軸13は、図6(b)(c)に示すように下端部側(ウェ
ハーW側)の対称位置に1対の係止突部14,14を有している。この支持軸13は、後
述するウェハー押さえを取り付けるためのものである。
【0038】
図3に示すように、薄肉筒部11の外周面11aには複数(実施例では4つ)の突起1
6が等間隔で一体的に設けられている。この突起16の反時計方向側には半径方向に向く
複数の段部16aがそれぞれ形成されている。
【0039】
また、厚肉筒部6の外周面6bには複数箇所(実施例では8箇所)に切り欠き面17が
形成されている。このような複数の切り欠き面(多角形形状)17を厚肉筒部6に形成す
ることにより厚肉筒部6の外周面は略16角形の形状を成していて、厚肉筒部6を回動さ
せ易くすることができる。図13に示すように、厚肉筒部8の外周面8bにも同様の切り
欠き面17が形成されている。
【0040】
図5に示すように、厚肉筒部6の内周面6aには複数(実施例では4つ)の段部18が
形成されている。厚肉筒部6の内周面6aは、任意の段部18から図5において時計方向
に向けて次第に半径が小さくなるように形成されている。
【0041】
なお、第1端壁7の下面7bには、位置合わせマーク10が印されており、この位置合
わせマーク10は後述するウェハー押さえ24を支持軸13に取り付けるときに、第1端
壁7に対するウェハー押さえ24の取付位置を合わせるときに使用されるものである。
【0042】
図2において、上部側のウェハーケース2Dは上述したウェハーケース2Cと同様に形
成されていて、第2端壁9の下面の中央には第1端壁7の支持軸13と同様の支持軸13
が一体的に設けられている。
【0043】
また、ウェハーケース2Dの厚肉筒部8の上部には厚肉筒部6の薄肉筒部11と同様の
薄肉筒部11が一体的に設けられていて、図3に示すような突起16(図示せず)が外周
面に形成されている。上記第2端壁9及び薄肉筒部11により、ウェハーWを収納するた
めの収納部19の一部が形成されている。
【0044】
このウェハーケース2Dの薄肉筒部11も図3に示すような複数の突起16が設けられ
ている。また、ウェハーケース2Dの厚肉筒部8の内面8aは第1端壁7の内周面6aと
同様に形成されており、この内面8aにも図5の段部18と同様の複数の段部18(図1
3参照)が設けられる。
【0045】
薄肉筒部11の突起16と厚肉筒部8の内面8aとにより、ウェハーケース2C,2D
と固定するための係合固定手段22が構成されている。
【0046】
図2のウェハーケース2Dの上部は、蓋体3(図1参照)により開閉自在に閉塞されて
いる。図7は前記蓋体3の平面図、図8は横断正面図、図9は底面図をそれぞれ示してい
る。
【0047】
図2及び図8に示すように、蓋体3は筒部20の一端(実施例においては上端)が端壁
21により閉鎖されて形成されている。端壁21の下面21aには、前記第1端壁7及び
第2端壁9の支持軸13と同様の支持軸13が設けられている。
【0048】
この支持軸13は、図10(a)(b)に示すように下端部側(ウェハーW側)の対称
位置に1対の係止突部14,14を有している。この支持軸13は、後述するウェハー押
さえを取り付けるためのものである。
【0049】
図9に示すように、筒部20の内周面20aには複数(実施例では4つ)の段部23が
形成されている。内周面20aは任意の段部23から図9において時計方向に向けて次第
に半径が大きくなるように形成されている。
【0050】
また、厚肉筒部20の外周縁には複数箇所(実施例では8箇所)に切り欠き面17が形
成されている。このような切り欠き面17を筒部20に形成することにより筒部20の外
周面は略16角形の形状を成していて、筒部20を回動させ易くすることができる。
【0051】
図2において、収納部12はウェハーケース2Cの第1端壁7及び薄肉筒部11とウェ
ハーケース2Dの厚肉筒部8及び第2端壁9とで囲まれる空間により形成されている。こ
の収納部12内に収納されるウェハーWは、第2端壁9の支持軸13に取り付けられてい
るウェハー押さえ24により押さえられている。
【0052】
前記ウェハー押さえ24を図11及び図12により説明する。
【0053】
ウェハー押さえ24は、図11(a)に示すように板バネ状の薄板からなっていて、複
数本(実施例では4本)の脚部25を有している。この脚部25は図11(b)に示すよ
うに各先端25aが一方の側(図2におけるウェハーW側)に湾曲する形状になっている

【0054】
前記各脚部25の基部近傍には図12(a)に示すように薄肉部26がそれぞれ形成さ
れており、この薄肉部26は半径Rで切り欠くことにより形成されている。図11(b)
における両先端25a間の寸法を例えば74mmとすると、前記Rの寸法は10mmにな
っている。
【0055】
前記ウェハー押さえ24の材料は、本実施例では有機汚染の発生し難いポリブチレンテ
レフタレート樹脂が好適に用いられている。
【0056】
このウェハー押さえ24の材料選択は重要な問題であって、ウェハーWの押さえをして
時間が経過してもウェハーWを一定の力で押さえること(クリープが生じ難い)、及びウ
ェハーWに有機汚染や金属汚染等を発生しないことを選択基準とする必要がある。
【0057】
また、ウェハー押さえ24の肉厚が薄いため、ウェハー押さえ24が成型し易い樹脂特
性を有する材料を用いることも必要である。ウェハーWを適正な力で保持するためには、
図12(a)の薄肉部26の肉厚を0.3〜0.8mmにする必要がある。
【0058】
また、ウェハー押さえ24の中央には円形穴27が穿設されている。この円形穴27に
は、図12(b)に示すように対称位置に突状穴28が形成されている。この突状穴28
は、ウェハー押さえ24を図2の第2端壁9に取り付けるときに第2端壁9の係止突部1
4(図6(c)参照)を挿通させるためのものである。
【0059】
さらに、ウェハー押さえ24には図11(a)に示すようにウェハー押さえ24の取り
付け時に使用される位置合わせマーク30が設けられている。この位置合わせマーク30
を図5に示す位置合わせマーク10に合わせることにより、ウェハー押さえ24の突状穴
28の位置と支持軸13の係止突部14の位置とが一致するようになっている。
【0060】
支持軸13の係止突部14にウェハー押さえ24の突状穴28を挿通させてウェハー押
さえ24を支持軸13に内挿したのち、係止突部14と突状穴28の位置をずらすことに
より、ウェハー押さえ24は支持軸13に対して回動自在であって且つ抜け止めされた状
態で容易に取り付けることができる。
【0061】
次に、第1,第2ウェハーケースとしてのウェハーケース2C,2Dに対するウェハー
Wの収納、ならびに係合固定及び解除作用について説明する。
【0062】
図2に示すウェハーケース2Cに対するウェハーWを収納する前に、ウェハーケース2
Dの第2端壁9に対してウェハー押さえ24が予め取り付けられる。次に、ウェハーケー
ス2Cの第1端壁7上にウェハーWを載置したのちウェハーケース2Dがウェハーケース
2Cに取り付けられる。
【0063】
図2におけるD−D線断面矢視図を図13に示す。図13ではウェハーケース2Cの薄
肉筒部11にウェハーケース2Dの厚肉筒部8がすでに回動して締め付けられている状態
を示している。この状態では、薄肉筒部11の各突起16が厚肉筒部8の内面8aに圧接
していて厚肉筒部8が薄肉筒部11に強くしまった状態にある。
【0064】
このウェハーケース2Dが締まった状態からウェハーケース2Dを開けるには矢印4で
示す方向に厚肉筒部8を回動させることにより行われる。
【0065】
図13の厚肉筒部8を矢印4方向に回動させると、各突起16の段部16aが図14に
示すように厚肉筒部8の段部18にそれぞれ当接して停止する。この状態では突起16の
外周部は厚肉筒部8の内面8aから離隔しているので、ウェハーケース2Dをウェハーケ
ース2Cに対して開けることができる。
【0066】
また、ウェハーケース2Cに図2のウェハーWを収納したのちウェハーケース2Cに対
してウェハーケース2Dを取り付けるには、図14のようにウェハーケース2Dの厚肉筒
部8を矢印4a方向に回動させることにより行われる。
【0067】
すなわち、ウェハーケース2Cに対してウェハーケース2Dの厚肉筒部8を矢印4a方
向に回動させると、係合固定手段22を構成している薄肉筒部11の突起16が厚肉筒部
8の内面8aに対して楔作用により次第に強く当接し図13の状態となって、ウェハーケ
ース2Dはウェハーケース2Cに固く係合される。
【0068】
このように、係合固定手段22はウェハーケース2Cに対してウェハーケース2Dを回
動しながら係合固定する際に、次第に回動抵抗が強くなっていくのでウェハーケース2D
の過度の締め付けを防止することができる。
【0069】
そして、ウェハーケース2Cにウェハーケース2Dを取り付けたときには、ウェハー押
さえ24の先端24aがウェハーWを第1端壁7の周縁部7aに押圧することにより、ウ
ェハーWを挟持して保持する。このウェハー押さえ24には、図11に示す薄肉部26が
設けられているので、ウェハーWの押さえ力を適正に保つことで、ウェハーWの破損を防
止することができる。
【0070】
このようなウェハーケース2Cに対するウェハーケース2Dの接合は、図1の各ウェハ
ーケース2A,2B,2C,2Dに対してそれぞれ行われて、複数段(例えば、10段)
のウェハーケースに10枚のウェハーWをそれぞれ収納したのち、ウェハーケース2Dに
蓋体3を取り付けることで、1つのウェハー搬送容器1を構成することができる。
【0071】
このように、第1端壁7の支持軸13に対してウェハー押さえ24を予め取り付けてお
くことにより、ウェハー押さえ24の先端24aはウェハーWの周縁部を均一に押圧する
ことができる。そして、ウェハーケース2Cに対するウェハーケース2Dの取り付け又は
取り外し時に、ウェハー押さえ24はウェハーケース2Dに対して回動しウェハーWには
回動しないようになっている。
【0072】
すなわち、ウェハーケース2Cに対するウェハーケース2Dの着脱時に、ウェハー押さ
え24はウェハーWに対して摺動することがないので、この摺動による異物粒子の発生、
及びこれによるウェハーWの精度劣化を防止することができる。
【0073】
また、ウェハー押さえ24がウェハーケース2Dの第2端壁9に対して一体となってい
るので、ウェハーケース2Cに対するウェハーWのウェハーの出し入れ時に、ウェハー押
さえを別途に出し入れする必要がなくてウェハー出し入れの作業性を向上させることがで
きる。
【0074】
また、ウェハー押さえ24は、これが取り付けられたウェハーケース2Dの支持軸13
から容易に取り外すことができるので、ウェハー押さえ24及びウェハーケース2Dの清
浄を部品毎に効率的に行うことができる。
【0075】
さらに、ウェハーケース2A,2B,2C,2Dの外周面には、切り欠き面17が設け
られているので、ウェハーケース2A,2B,2C,2Dの着脱時における回動を容易に
行うことができると共に、ウェハーWの取扱時に使用される薄手の手袋の損傷も防ぐこと
ができる。
【0076】
そして、ウェハーケース2A,2B,2C,2Dが適正な締め付け力により相互に 係
合固定されたときには、各切り欠き面17は図1に示すように平面視において略一致した
状態にある。
【0077】
換言すると、ウェハーケース2A,2B,2C,2Dの各切り欠き面17を図1のよう
に略一致させることで、ウェハーケース2A,2B,2C,2Dの相互の過締め防止の確
実性が向上すると共に、適正な係合固定状態がウェハーケース2A,2B,2C,2Dの
外観から認識することができる。
【0078】
次に、図15はウェハー押さえ31の変形例を示している。
【0079】
図15(a)(b)に示すように、このウェハー押さえ31の各脚部25にも薄肉部2
6がそれぞれ設けられている。そして、脚部25の基部近傍の両側には括れ部32がそれ
ぞれ形成されている。図16(a)は薄肉部26の拡大図を示している。また、ウェハー
押さえ31の中央には、図16(b)に示すように円形穴27と1対の突状穴28がそれ
ぞれ設けられている。
【0080】
このように脚部25に括れ部32を設けて脚部25の幅を調整すると共に、薄肉部26
と相まってウェハー押さえ31によるウェハーW(図2参照)の押さえ力を適正なものに
調整することができる。
【0081】
図17はウェハー押さえ34の別の変形例を示しており、図18はウェハー押さえ34
の側面図を示している。本例のウェハー押さえ34は、幅狭の複数個(本例では8個)の
脚部35を有している。このように、脚部35を幅狭にすることによって、図11のウェ
ハー押さえ24や図15のウェハー押さえ31のような薄肉部26のないウェハー押さえ
34を使用することも可能である。
【実施例2】
【0082】
次に、本発明に係わるウェハー搬送容器の実施例2を図19に基づいて説明する。
【0083】
図19(a)(b)に示すように、第1端壁7(図2、図4参照)に設けられている支
持軸13には、この支持軸13の端部の対称位置に係止突部14とこの係止突部14より
も長い係止突部14aとが設けられている。
【0084】
また、図19(c)に示すようにウェハー押さえ24(図11参照)の中央には、円形
穴27とこの円形穴27の対称位置に突状穴28とこの突状穴28よりも長い突状穴28
aがそれぞれ形成されている。
【0085】
実施例1における支持軸13(図6参照)では、1対の係止突部14の長さは同じであ
るため、ウェハー押さえ24は支持軸13に対して180°毎に位置が合致している。こ
のため、ウェハー押さえ24が取り付けられたウェハーケース2C又は2Dを取り扱うと
きに、支持軸13の係止突部14とウェハー押さえ24の突状穴28(図12参照)とが
偶然一致した状態にあると、ウェハー押さえ24がウェハーケース2C,2Dから抜け落
ちることがある。
【0086】
図19(a)(b)に示すように、一方の係止突部14よりも他方の係止突部14aの
長さを長くしたことによって、ウェハー押さえ24の突状穴28,28aが支持軸13の
係止突部14,14a支持軸13に一致するのが360°に一カ所となって、支持軸13
からウェハー押さえ24が落ちにくくすることができる。
【実施例3】
【0087】
図20に示す支持軸13の1対の係止突部14は、同じ長さになっており、この係止突
部14の端部の第1端壁7と反対側には傾斜部36がそれぞれ形成されている。係止突部
14にこのような傾斜部36を設けることにより、支持軸13に対するウェハー押さえ2
4(図11参照)の取り付けを容易に行うことができる。
【0088】
図21に示す支持軸13は、係止突部14と長い係止突部14aとを有しており、この
係止突部14,14aの端部にも図20の傾斜部36と同様の傾斜部36がそれぞれ形成
されている。このように、長さの異なる係止突部14,14aを有する支持軸13の場合
も、支持軸13に対するウェハー押さえ24の取り付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】ウェハー搬送容器の斜視図である。
【図2】2つのウェハーケース及び蓋体の横断正面図である。
【図3】ウェハーケースの平面図である。
【図4】ウェハーケースの横断正面図である。
【図5】ウェハーケースの底面図である。
【図6】(a)は図4のA部の拡大断面図、(b)は図4のB部の拡大断面図、(c)は(b)の下方視図である。
【図7】蓋体の平面図である。
【図8】蓋体の横断正面図である。
【図9】蓋体の底面図である。
【図10】(a)は図9における支持軸の拡大断面図、(b)は(a)の下方視図である。
【図11】(a)はウェハー押さえの平面図、(b)はウェハー押さえの側面図である。
【図12】(a)は図11(b)の薄肉部の拡大図、(b)は図11(a)の円形穴の拡大図である。
【図13】図2におけるD−D線断面矢視図であって、ウェハーケースが締まった状態を示す図ある。
【図14】図13におけるウェハーケースが開けられた状態を示す図である。
【図15】(a)はウェハー押さえの変形例を示す平面図、(b)はウェハー押さえの側面図である。
【図16】(a)は図15における薄肉部26の拡大図、(b)は図15における円形穴の拡大図である。
【図17】ウェハー押さえの別の変形例を示す平面図である。
【図18】図17のウェハー押さえの側面図である。
【図19】(a)は本発明の実施例2に係わる支持軸13の平面図、(b)は支持軸13の側面図、(c)は支持軸13に係合されるウェハー押さえの円形穴及び突状穴の平面図である。
【図20】(a)は本発明の実施例3に係わる支持軸13の平面図、(b)は支持軸13の側面図である。
【図21】(a)は実施例3に係わる別の支持軸13の平面図、(b)は支持軸13の側面図である。
【符号の説明】
【0090】
W ウェハー
1 ウェハー搬送容器
2C ウェハーケース
2D ウェハーケース
6 厚肉筒部
6b 第1取付部の外周面
7 第1端壁
8 厚肉筒部(第2筒部)
8b 厚肉筒部の外周面
9 第2端壁
10 位置合わせマーク
11 薄肉筒部(第1筒部)
13 支持軸
14 係止突
14a 係止突部
17 ウェハー及び蓋体の複数の切り欠き面
22 係合固定手段
24 ウェハー押さえ
25 ウェハー押さえの脚部
26 脚部の薄肉部
27 円形穴
28 突状穴
30 位置合わせマーク
31 ウェハー押さえ
36 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が第1端壁により閉鎖されて筒状をなす第1ウェハーケースの第1筒部に、一端が
第2端壁により閉鎖されて筒状をなす第2ウェハーケースの第2筒部を周方向に回動可能
に係合することにより、前記第1,第2端壁の一方とこの該第1,第2端壁間に配設され
たウェハー押さえとによりウェハーの周縁部を挟持させると共に、前記第1,第2筒部を
周方向に相対回動させることにより互いに係合脱着可能にしたウェハー搬送容器であって

前記ウェハー押さえは、前記第1,第2端壁の他方の中央に支持軸で回動可能に保持さ
れていることを特徴とするウェハー搬送容器。
【請求項2】
第1筒部及び該第1筒部の一端を閉鎖する第1端壁を有する第1ウェハーケースと、
第2筒部及び該第2筒部の一端を閉鎖する第2端壁を有し且つ前記第2筒部が前記第1
筒部に周方向へ回動可能に係合された第2ウェハーケースと、
前記第1,第2端壁間に配設されたウェハー押さえと、
前記第1,第2ウェハーケースの第1,第2筒部を周方向に相対回動させることにより
、前記第1,第2ウェハーケースの前記第1,第2筒部を互いに固定及び固定解除可能に
する係合固定手段を備えると共に、前記ウェハー押さえを介して前記第1,第2端壁との
間にウェハーの周縁部を挟持させるようにしたウェハー搬送容器であって、
前記ウェハー押さえは、前記第1,第2端壁の他方の中央に支持軸で回動可能に保持さ
せられることにより、前記ウェハー押さえと前記第1,第2端壁との一方が前記第1,第
2端壁との他方に対して一体に回動するように設けられていることを特徴とするウェハー
搬送容器。
【請求項3】
前記第1,第2ウェハーケースの外周面が、多角形の形状に形成され、該形状の端面が
平面視で略一致したときに前記第1,第2ウェハーケースが係合固定されていることを特
徴とする請求項1又は2に記載のウェハー搬送容器。
【請求項4】
前記ウェハー押さえが、前記ウェハーの周縁部に延びる複数の脚部を有し、該脚部の中
間部には肉薄部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載
のウェハー搬送容器。
【請求項5】
前記支持軸が該支持軸の端面の対称位置に半径方向に延びる1対の係止突部を有すると
共に、前記ウェハー押さえは上記支持軸に内挿する円形穴と前記係止突部が挿通可能な1
対の突状穴とを有していて、前記ウェハー押さえの前記突状穴が前記支持軸の前記係止突
部に一致する位置で前記ウェハー押さえは前記支持軸に挿脱可能であることを特徴とする
請求項1ないし4の何れか1項に記載のウェハー搬送容器。
【請求項6】
前記支持軸の前記1対の係止突部は、一方の係止突部が他方の係止突部よりも長く形成
されていることを特徴とする請求項5に記載のウェハー搬送容器。
【請求項7】
前記支持軸の1対の係止突部が、該係止突部の先端に前記ウェハー押さえ側に向く傾斜
部を有することを特徴とする請求項5又は6の何れか1項に記載のウェハー搬送容器。
【請求項8】
前記ウェハー押さえが前記支持軸に挿脱可能な位置を表示する位置合わせマークを前記
第1,第2ウェハーケースと前記ウェハー押さえとにそれぞれ備えることを特徴とする請
求項1ないし7の何れか1項に記載のウェハー搬送容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−56573(P2006−56573A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241536(P2004−241536)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(596163747)株式会社ヴァンテック (10)
【Fターム(参考)】