説明

ウエハの処理方法

【課題】薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理を施すウエハ処理工程を有し、破損等することなく確実にウエハを処理できるウエハの処理方法を提供する。
【解決手段】接着剤成分と、刺激により気体を発生する気体発生剤とを含有する接着剤組成物を介してウエハを支持板に固定する支持板固定工程と、前記支持板に固定されたウエハの表面に薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理を施すウエハ処理工程と、前記処理後のウエハに刺激を与えて前記気体発生剤から気体を発生させて、支持板をウエハから剥離する支持板剥離工程とを有するウエハの処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理を施すウエハ処理工程を有し、破損等することなく確実にウエハを処理できるウエハの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの製造工程においては、ウエハの加工時に取扱いを容易にし、破損したりしないようにするためにウエハを支持板に固定することが行われている。例えば、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研削して薄膜ウエハとする場合に、厚膜ウエハを接着剤を介して支持板に接着することが行われる。
【0003】
ウエハを支持板に接着する接着剤には、加工工程中にウエハを強固に固定できるだけの高い粘着性とともに、工程終了後にはウエハを損傷することなく剥離できることが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
高接着易剥離を実現した接着剤組成物として特許文献1には、紫外線等の光を照射することにより硬化して粘着力が低下する光硬化型粘着剤を用いた粘着テープが開示されている。このような粘着テープは、加工工程中には確実に半導体を固定できるとともに、紫外線等を照射することにより容易に剥離することができるとされている。
【0004】
特許文献2には、熱膨張性微小球を含有する粘着層を有する加熱剥離型粘着シートが開示されている。特許文献2の加熱剥離型粘着シートを一定の温度以上に加熱すると、熱膨張性微小球が膨張して粘着層全体が発泡して表面に凹凸が形成され、被着体との接着面積が減少することから、容易に被着体を剥離することができるとされている。
【0005】
特許文献3には、アゾ化合物等の刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着層を有する両面粘着テープが記載されている。特許文献3の両面粘着テープに刺激を与えると、気体発生剤から発生した気体がテープの表面と被着体との界面に放出され、その圧力によって被着体の少なくとも一部が剥離される。特許文献3の両面粘着テープを用いれば、薄膜ウエハや半導体チップ等を損傷することなく、かつ、糊残りもすることなく剥離できる。
【0006】
近年の半導体チップの高性能化に伴い、ウエハの表面に薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理を施す事が行われるようになってきた。例えば、次世代の技術として、複数の半導体チップを積層させてデバイスを飛躍的に高性能化、小型化したTSV(Si貫通ビヤ/Through Si via)を使った3次元積層技術が注目されている。TSVは、半導体実装の高密度化ができるほか、接続距離が短くできることにより低ノイズ化、低抵抗化が可能であり、アクセススピードが飛躍的に速く、使用中に発生する熱の放出にも優れる。このようなTSVの製造では、研削して得た薄膜ウエハをバンピングしたり、裏面にバンプ形成したり、3次元積層時にリフローを行ったりする等の200℃以上の高温処理プロセスを行うことが必要となる。
このような過酷な処理工程を伴うウエハの処理においては、特許文献1〜3に記載された従来の接着剤組成物では、高い粘着力と工程終了後にウエハを損傷することなく剥離できる剥離性とを両立させることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−32946号公報
【特許文献2】特開平11−166164号公報
【特許文献3】特開2003−231872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理を施すウエハ処理工程を有し、破損等することなく確実にウエハを処理できるウエハの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、接着剤成分と、刺激により気体を発生する気体発生剤とを含有する接着剤組成物を介してウエハを支持板に固定する支持板固定工程と、前記支持板に固定されたウエハの表面に薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理を施すウエハ処理工程と、前記処理後のウエハに刺激を与えて前記気体発生剤から気体を発生させて、支持板をウエハから剥離する支持板剥離工程とを有するウエハの処理方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明のウエハの処理方法は、接着剤成分と、刺激により気体を発生する気体発生剤とを含有する接着剤組成物を介してウエハを支持板に固定する支持板固定工程を有する。
ウエハを支持板に固定することにより、加工時に取扱いを容易にし、破損したりしないようにすることができる。
【0011】
上記接着剤組成物は、接着剤成分と、刺激により気体を発生する気体発生剤とを含有する。
上記接着剤成分は特に限定されず、非硬化型の接着剤、硬化型の接着剤のいずれを含有するものであってもよい。
上記接着剤成分が非硬化型の接着剤を含有する場合には、後述する支持板剥離工程において接着剤組成物に刺激を与えることにより上記気体発生剤から気体が発生し、発生した気体により柔らかい接着剤成分の全体が発泡して表面に凹凸が形成され、被着体との接着面積が減少して剥離する。
上記接着剤成分が硬化型の接着剤を含有する場合には、後述する支持板剥離工程において接着剤組成物に刺激を与えることにより上記気体発生剤から気体が発生し、発生した気体は硬化した接着剤成分から被着体との界面へと放出され、その圧力によって被着体の少なくとも一部が剥離する。
なかでも、糊残りを生ずることなく確実な剥離を行うことができることから、刺激により弾性率が上昇する硬化型の接着剤を含有することが好ましい。
【0012】
上記非硬化型の接着剤は特に限定されず、例えば、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、ビニルアルキルエーテル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ウレタン系接着剤、スチレン・ジエンブロック共重合体系接着剤等が挙げられる。
【0013】
上記硬化型の接着剤は特に限定されないが、例えば、重合性ポリマーを主成分として、光重合開始剤や熱重合開始剤を含有する光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤が挙げられる。
このような光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤は、光の照射又は加熱により接着剤の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、接着力が大きく低下する。また、弾性率の上昇した硬い硬化物中で上記気体発生剤から気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出され、放出された気体は、被着体から粘着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
【0014】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)をあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させることにより得ることができる。
【0015】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0016】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0017】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0018】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0019】
上記光重合開始剤は、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
上記熱重合開始剤としては、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエール、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
ただし、本発明の接着剤組成物が高い耐熱性を発揮するためには、上記熱重合開始剤は、熱分解温度が200℃以上である熱重合開始剤を用いることが好ましい。このような熱分解温度が高い熱重合開始剤は、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては特に限定されないが、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(以上いずれも日油社製)等が好適である。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
上記光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤は、更に、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することが好ましい。ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することにより、光硬化性、熱硬化性が向上する。
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。
【0022】
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
上記気体発生剤は特に限定されないが、後述する薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理によっても剥離しない、即ち、これらの処理に対する耐性に優れた気体発生剤が好適である。
上記気体発生剤は、例えば、下記一般式(1)で表されるカルボン酸化合物又はその塩が好適である。このような気体発生剤は、紫外線等の光を照射することにより気体(二酸化炭素ガス)を発生する一方、200℃程度の高温化でも分解しない高い耐熱性を有する。また、酸、アルカリ、有機溶剤等の薬液に対する耐性にも優れる。このような気体発生剤は、後述する過酷なウエハ処理工程においても反応して気体を発生してしまうことがない。
【0024】
【化1】

【0025】
式(1)中、R〜Rは、それぞれ水素又は有機基を示す。R〜Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。R〜Rのうちの2つが互いに結合し、環状構造を形成していてもよい。
【0026】
上記一般式(1)における有機基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基等のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基や、カルボキシル基や、水酸基や、ニトロ基や、フェニル基等の芳香族基や、ナフチル基、フルオレニル基、ピレニル基等の多環式炭化水素基や、ビフェニル基等の環集合炭化水素基や、キサンテニル基等のヘテロ環基等が挙げられる。
なかでも、上記式(1)中のR〜Rのうちの1つが、下記式(2)で表される有機基であるか、又は、上記式(1)中のR〜Rのうちの隣り合う2つが互いに結合して下記式(3)で表される環状構造を形成していることが好ましい。
【0027】
【化2】

【0028】
式(2)中、R〜R12は、それぞれ水素又は有機基を示す。R〜R12は、同一であってもよく、異なっていてもよい。R〜R12のうちの2つが互いに結合し、環状構造を形成していてもよい。
式(3)中、R13〜R16は、それぞれ水素又は有機基を示す。R13〜R16は、同一であってもよく、異なっていてもよい。R13〜R16のうちの2つが互いに結合し、環状構造を形成していてもよい。
また、上記式(1)中のRは、メチル基であることが好ましい。
【0029】
上記式(1)で表されるカルボン酸化合物の具体例としては、例えば、フェニル酢酸、ジフェニル酢酸、トリフェニル酢酸、2−フェニルプロピオン酸、2,2−ジフェニルプロピオン酸、2,2,2−トリフェニルプロピオン酸、2−フェニルブチル酸、α−メトキシフェニル酢酸、マンデリック酸、アトロラクトン酸、ベンジリック酸、トロピック酸、フェニルマロン酸、フェニルコハク酸、3−メチル−2−フェニル酪酸、オルトトルイル酢酸、メタトルイル酢酸、4−イソブチル−α−メチルフェニル酢酸、パラトルイル酢酸、1,2−フェニレンジ酢酸、1,3−フェニレンジ酢酸、1,4−フェニレンジ酢酸、2−メトキシフェニル酢酸、2−ヒドロキシフェニル酢酸、2−ニトロフェニル酢酸、3−ニトロフェニル酢酸、4−ニトロフェニル酢酸、2−(4−ニトロフェニル)プロピオン酸、3−(4−ニトロフェニル)プロピオン酸、4−(4−ニトロフェニル)プロピオン酸、3,4−ジメトキシフェニル酢酸、3,4−(メチレンジオキシ)フェニル酢酸、2,5−ジメトキシフェニル酢酸、3,5−ジメトキシフェニル酢酸、3,4,5−トリメトキシフェニル酢酸、2,4−ジニトロフェニル酢酸、4−ビフェニル酢酸、1−ナフチル酢酸、2−ナフチル酢酸、6−メトキシ−α−メチル−2−ナフチル酢酸、1−ピレン酢酸、9−フルオレンカルボン酸又は9H−キサンテン−9−カルボン酸等が挙げられる。
【0030】
なかでも上記式(1)で表されるカルボン酸化合物は、下記式(1−1)で表されるケトプロフェン、又は、下記式(1−2)で表される2−キサントン酢酸であることが好ましい。
【0031】
【化3】

【0032】
上記式(1)で表されるカルボン酸化合物の塩も、上記式(1)で表されるカルボン酸化合物に由来する骨格を有することから、光が照射されると容易に脱炭酸を起こし、二酸化炭素ガスを発生させることができる。
【0033】
上記式(1)で表されるカルボン酸化合物の塩は、上記式(1)で表されるカルボン酸化合物と塩基性化合物とを容器中で混合するだけで、複雑な合成経路を経ること簡単に調製することができる。
上記塩基性化合物は特に限定されないが、例えば、アミン、ヒドラジン化合物、水酸化四級アンモニウム塩、ホスフィン化合物等が挙げられる。
上記アミンは特に限定されず、一級アミン、二級アミン及び三級アミンのいずれをも用いることができる。
なかでも上記塩基性化合物は、モノアルキルアミン又はジアルキルアミンが好適である。モノアルキルアミン又はジアルキルアミンを用いた場合には、得られる上記式(1)で表されるカルボン酸化合物の塩の極性を低極性化でき、接着剤成分との溶解性を高めることができる。より好ましくは、炭素数6〜12のモノアルキルアミン又はジアルキルアミンである。
【0034】
上記接着剤成分として刺激により弾性率が上昇する硬化型の接着剤を含有する場合、上記式(1)で表されるカルボン酸化合物又はその塩は、接着剤成分に溶解していることが好ましい。上記式(1)で表されるカルボン酸化合物又はその塩が接着剤に溶解することにより、これらの化合物自身が発泡の核となることがなく、発生した気体のほぼ全てが接着剤成分から被着体との界面へと放出されることから、より確実な剥離を行うことができる。従って、より溶解性の高い、上記式(1)で表されるカルボン酸化合物の塩が好適である。
【0035】
上記接着剤成分として上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを用い、上記式(1)で表されるカルボン酸化合物が上記式(1−1)で表されるケトプロフェンである場合には、ケトプロフェンもその塩も接着剤成分に高い溶解性を示す。
上記接着剤成分として上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを用い、上記式(1)で表されるカルボン酸化合物が上記式(1−2)で表される2−キサントン酢酸である場合には、2−キサントン酢酸は、低極性化して接着剤成分に対する溶解性を高めた塩として用いることが好ましい。
【0036】
上記気体発生剤は、また、下記一般式(4)、一般式(5)又は一般式(6)で表されるテトラゾール化合物若しくはその塩も好適である。これらの気体発生剤も、紫外線等の光を照射することにより気体(チッソガス)を発生する一方、200℃程度の高温化でも分解しない高い耐熱性を有する。また、酸、アルカリ、有機溶剤等の薬液に対する耐性にも優れる。これらの気体発生剤は、後述する過酷なウエハ処理工程においても反応して気体を発生してしまうことがない。
【0037】
【化4】

【0038】
式(4)〜(6)中、R21、R22は、水素、炭素数が1〜7のアルキル基、アルキレン基、フェニル基、メルカプト基、水酸基又はアミノ基を表す。
【0039】
上記一般式(4)〜(6)で表されるテトラゾール化合物の塩も、上記一般式(4)〜(6)で表されるテトラゾール化合物に由来する骨格を有することから、光が照射されるとチッソガスを発生させることができる。
上記一般式(4)〜(6)で表されるテトラゾール化合物の塩は特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0040】
上記一般式(4)〜(6)で表されるテトラゾール化合物の塩は、上記一般式(4)〜(6)で表されるテトラゾール化合物と塩基性化合物とを容器中で混合するだけで、複雑な合成経路を経ること簡単に調製することができる。
上記塩基性化合物は特に限定されないが、例えば、アミン、ヒドラジン化合物、水酸化四級アンモニウム塩、ホスフィン化合物等が挙げられる。
上記アミンは特に限定されず、一級アミン、二級アミン及び三級アミンのいずれをも用いることができる。
なかでも上記塩基性化合物は、モノアルキルアミン又はジアルキルアミンが好適である。モノアルキルアミン又はジアルキルアミンを用いた場合には、得られる上記一般式(4)〜(6)で表されるテトラゾール化合物の塩の極性を低極性化でき、接着剤成分との溶解性を高めることができる。より好ましくは、炭素数6〜12のモノアルキルアミン又はジアルキルアミンである。
【0041】
上記接着剤成分として刺激により弾性率が上昇する硬化型の接着剤を含有する場合、上記一般式(4)〜(6)で表されるテトラゾール化合物又はその塩は、接着剤成分に溶解していることが好ましい。上記一般式(4)〜(6)で表されるテトラゾール化合物又はその塩が接着剤に溶解することにより、これらの化合物自身が発泡の核となることがなく、発生した気体のほぼ全てが接着剤成分から被着体との界面へと放出されることから、より確実な剥離を行うことができる。従って、より溶解性の高い、上記一般式(4)〜(6)で表されるテトラゾール化合物の塩が好適である。
【0042】
上記一般式(4)で表されるテトラゾール化合物又はその塩は特に限定されないが、具体的には例えば、1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5,5−アゾビス−1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、1−メチル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−メチル−5−エチル−1H−テトラゾール、1−(ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール等が挙げられる。
【0043】
上記一般式(5)で表されるテトラゾール化合物又はその塩は特に限定されないが、具体的には例えば、5,5’−ビステトラゾールジアンモニウム塩等が挙げられる。
【0044】
上記一般式(6)で表されるテトラゾール化合物又はその塩は特に限定されないが、具体的には例えば、5,5’−ビステトラゾールアミンモノアンモニウム塩等が挙げられる。
【0045】
上記気体発生剤の含有量は、上記接着剤成分100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が50重量部である。上記気体発生剤の含有量が5重量部未満であると、光照射による二酸化炭素ガス又は窒素ガスの発生が少なくなり充分な剥離を行うことができないことがあり、50重量部を超えると、接着剤成分へ溶けきれなくなり接着力が低下してしまうことがある。上記気体発生剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0046】
上記接着剤組成物は、光増感剤を含有してもよい。
上記光増感剤は、上記気体発生剤への光による刺激を増幅する効果を有することから、より少ない光の照射により気体を放出させることができる。また、より広い波長領域の光により気体を放出させることができる。
【0047】
上記光増感剤は、耐熱性に優れるものであれば特に限定されない。
耐熱性に優れた光増感剤は、例えば、アルコキシ基を少なくとも1つ以上有する多環芳香族化合物が挙げられる。なかでも、一部がグリシジル基又は水酸基で置換されたアルコキシ基を有する置換アルコキシ多環芳香族化合物が好適である。これらの光増感剤は、耐昇華性が高く、高温下で使用することができる。また、アルコキシ基の一部がグリシジル基や水酸基で置換されることにより、上記接着剤成分への溶解性が高まり、ブリードアウトを防止することができる。
【0048】
上記多環芳香族化合物は、アントラセン誘導体が好ましい。上記アルコキシ基は、炭素数1〜18のものが好ましく、炭素数1〜8のものがより好ましい。
【0049】
上記アルコキシ基を少なくとも1つ以上有する多環芳香族化合物は、例えば、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9−メトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジエトキシアントラセン、9−エトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、9−イソプロポキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、9−ベンジルオキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、9−(α−メチルベンジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(2−カルボキシエトキシ)アントラセン等のアントラセン誘導体等が挙げられる。
【0050】
上記一部がグリシジル基又は水酸基で置換されたアルコキシ基を有する置換アルコキシ多環芳香族化合物は、例えば、9,10−ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、2−tブチル−9,10−ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、9−(グリシジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ビニルオキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(2−ビニルオキシエトキシ)アントラセン、2−tブチル−9,10−ジ(2−ビニルオキシエトキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(2−ビニルオキシエトキシ)アントラセン、9−(2−ビニルオキシエトキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(3−メチル−3−オキセタニルメメトキシ)アントラセン、2−tブチル−9,10−ジ(3−メチル−3−オキセタニルメメトキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(3−メチル−3−オキセタニルメメトキシ)アントラセン、9−(3−メチル−3−オキセタニルメメトキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(p−エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(p−エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、2−tブチル−9,10−ジ(p−エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(p−エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、9−(p−エポキシフェニルメトキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(p−ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(p−ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、2−tブチル−9,1−ジ(p−ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ(p−ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、9−(p−ビニルフェニルメトキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシブトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)アントラセン等が挙げられる。
【0051】
上記光増感剤の含有量は、上記接着剤成分100重量部に対する好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が10重量部である。上記光増感剤の含有量が0.05重量部未満であると、充分な増感効果が得られないことがあり、10重量部を超えると、光増感剤に由来する残存物が増え、充分な剥離を行えなくなることがある。上記光増感剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0052】
上記接着剤組成物は、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、所望によりイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物を適宜含有してもよい。
上記接着剤組成物は、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0053】
上記支持板固定工程においてウエハと支持板との接着は、上記接着剤組成物により直接接着してもよいし、少なくとも一方の面に上記接着剤組成物からなる接着剤層を有する両面粘着テープを用いて接着してもよい。
【0054】
上記両面粘着テープは、基材の両面に粘着剤層を有するサポートテープであってもよく、基材を有しないノンサポートテープであってもよい。
上記両面粘着テープがサポートテープである場合、上記基材は、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。
【0055】
本発明のウエハの処理方法は、上記支持板に固定されたウエハの表面に薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理を施すウエハ処理工程を有する。上記気体発生剤として上記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩、上記一般式(2)で表される化合物若しくはその塩、又は、上記一般式(3)で表される化合物を用いた場合には、このような過酷な処理を施した場合でも気体発生剤が反応して予期せぬ剥離が生じることはない。
【0056】
上記薬液処理は、酸、アルカリ又は有機溶剤を用いる処理であれば特に限定されず、例えば、電解めっき、無電解めっき等のめっき処理や、フッ酸、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)等によるウェットエッチング処理や、N−メチル−2−ピロリドン、モノエタノールアミン、DMSO等によるレジスト剥離プロセスや、濃硫酸、アンモニア水、過酸化水素水等による洗浄プロセス等が挙げられる。
【0057】
上記加熱処理又は発熱を伴う処理は、例えば、スパッタリング、蒸着、エッチング、化学気相成長法(CVD)、物理気相成長法(PVD)、レジスト塗布・パターンニング、リフロー等が挙げられる。
【0058】
本発明のウエハの処理工程は、後述する支持板剥離工程に先立って、上記記処理後のウエハの処理面にダイシングテープを貼付するダイシングテープ貼付工程を有してもよい。予めダイシングテープを貼付しておくことにより、支持板剥離工程において支持板を剥離した後、速やかにダイシング工程に進むことができる。
【0059】
本発明のウエハの処理方法は、前記処理後のウエハに刺激を与えて前記気体発生剤から気体を発生させて、支持板をウエハから剥離する支持板剥離工程とを有する。
上記ウエハと支持板とを接着する接着剤組成物が気体発生剤を含有することにより、刺激を与えることによりウエハを破損することなく、容易にウエハを支持板から剥離することができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理を施すウエハ処理工程を有し、破損等することなく確実にウエハを処理できるウエハの処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、2−エチルヘキシルアクリレート94重量部、アクリル酸1重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5重量部、ラウリルメルカプカプタン0.01重量部と、酢酸エチル180重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt−ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分55重量%、重量平均分子量60万のアクリル共重合体を得た。
得られたアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、光重合開始剤(エサキュアワン、日本シイベルヘグナー社製)0.1重量部、ポリイソシアネート系架橋剤(コロネートL45、日本ポリウレタン社製)2.5重量部を混合し接着剤(1)の酢酸エチル溶液を調製した。
【0063】
接着剤(1)の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ケトプロフェン(東京化成工業社製)20重量部、光増感剤として9,10−ジグリシジルオキシアントラセン1重量部を混合して、接着剤組成物を得た。
【0064】
得られた接着剤組成物を、片面にコロナ処理を施した厚さ50μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面上に、乾燥皮膜の厚さが30μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。その後、40℃、3日間静置養生を行い、接着テープを得た。
【0065】
(実施例2)
光増感剤として9,10−ジグリシジルオキシアントラセン1重量部の代わりに、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)アントラセン1重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0066】
(実施例3)
光増感剤として9,10−ジグリシジルオキシアントラセン1重量部の代わりに、9,10−ジブトキシアントラセン1重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0067】
(実施例4)
ケトプロフェン20重量部の代わりに2−キサントン酢酸20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0068】
(実施例5)
ケトプロフェン20重量部の代わりに2−キサントン酢酸ジステアリルアミン塩20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0069】
(実施例6)
ケトプロフェン20重量部の代わりに5,5’−ビステトラゾールジアンモニウム塩(増田化学社製)20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0070】
(実施例7)
ケトプロフェン20重量部の代わりに5,5’−ビステトラゾールアミンモノアンモニウム塩(増田化学社製)20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0071】
(実施例8)
ケトプロフェン20重量部の代わりに5−フェニル−1H−テトラゾール(東洋化成工業社製)20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0072】
(実施例9)
ケトプロフェン20重量部の代わりに5,5−アゾビス−1H−テトラゾール(東洋化成工業社製)20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0073】
(実施例10)
ケトプロフェン20重量部の代わりに1H−テトラゾール(東洋化成工業製)20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0074】
(実施例11)
ケトプロフェン20重量部の代わりに5−アミノ−1H−テトラゾール(東洋化成工業社製)20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0075】
(実施例12)
ケトプロフェン20重量部の代わりに5−メチル−1H−テトラゾール(東洋化成工業社製)20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0076】
(実施例13)
5ケトプロフェン20重量部の代わりに1−メチル−5−メルカプト−1H−テトラゾール(東洋化成工業社製)20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0077】
(実施例14)
ケトプロフェン20重量部の代わりに1−メチル−5−エチル−1H−テトラゾール(東洋化成工業社製)20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0078】
(実施例15)
ケトプロフェン20重量部の代わりに1−(ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール(東洋化成工業社製)20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0079】
(比較例1)
気体発生剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0080】
(比較例2)
ケトプロフェン20重量部の代わりに、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)20重量部、9,10−ジグリシジルオキシアントラセン1重量部の代わりにジエチルチオキサントン3重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物及び接着テープを得た。
【0081】
(比較例3)
アクリル酸ブチル50重量部、アクリル酸エチル50重量部及びアクリル酸5重量部からなるモノマー混合物を共重合して得たアクリル系共重合体100重量部を含むトルエン溶液に、テルペン系粘着付与剤15重量部とポリウレタン系架橋剤5重量部を配合して、アクリル系粘着剤を得た。
得られたアクリル系粘着剤100重量部(固形分)に対して、マイクロスフェアF−50D(松本油脂社製)50重量部を混合して接着剤組成物を得た。
得られた接着剤組成物を、片面にコロナ処理を施した厚さ100μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面上に、乾燥皮膜の厚さが約38μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。その後、40℃、3日間静置養生を行い、接着テープを得た。
【0082】
(評価)
実施例及び比較例で得られた接着テープについて、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0083】
(1)接着性評価、剥離性評価
直径20cmの円形に切断した接着テープを、直径20cm、厚さ約750μmのシリコンウエハに貼り付けた。
接着性評価として、この状態で接着テープを引張り、全く剥離できなかった場合を「×」と、比較的軽く剥離できた場合を「△」と、ほとんど抵抗なく剥離できた場合を「○」と評価した。
【0084】
次いで、ガラス板側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線をガラス板表面への照射強度が40mW/cmとなるよう照度を調節して2分間照射した。紫外線照射後の剥離性評価として、接着テープを引張り、全く抵抗なく剥離できた場合を「○」と、抵抗はあったものの剥離できた場合を「△」と、全く剥離できなかった場合を「×」と評価した。
【0085】
(2)耐熱性評価
直径20cmの円形に切断した接着テープを、直径20cm、厚さ約750μmのシリコンウエハに貼り付けた。この積層体を、200℃、1時間加熱した後、室温に戻した。
加熱後の積層体について、上記の接着性評価、剥離性評価を行った。
【0086】
(3)耐薬品性評価
直径20cmの円形に切断した接着テープを、直径20cm、厚さ約750μmのシリコンウエハに貼り付けた。この積層体を、pH4に調整した塩酸水溶液中に80℃、2時間浸漬した後、乾燥した。酸処理後の積層体について、上記の接着性評価、剥離性評価を行った。
同様に、pH12に調整した水酸化ナトリウム水溶液中に80℃、2時間浸漬した後、及び、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)中に60℃、1時間浸漬した後にも接着性評価、剥離性評価を行った。
【0087】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理を施すウエハ処理工程を有し、破損等することなく確実にウエハを処理できるウエハの処理方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤成分と、刺激により気体を発生する気体発生剤とを含有する接着剤組成物を介してウエハを支持板に固定する支持板固定工程と、前記支持板に固定されたウエハの表面に薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理を施すウエハ処理工程と、前記処理後のウエハに刺激を与えて前記気体発生剤から気体を発生させて、支持板をウエハから剥離する支持板剥離工程とを有することを特徴とするウエハの処理方法。
【請求項2】
気体発生剤は、下記一般式(1)で表されるカルボン酸化合物又はその塩であることを特徴とする請求項1記載のウエハの処理方法。
【化1】

式(1)中、R〜Rは、それぞれ水素又は有機基を示す。R〜Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。R〜Rのうちの2つが互いに結合し、環状構造を形成していてもよい。
【請求項3】
一般式(1)中のR〜Rのうちの1つが、下記一般式(2)で表される有機基であるか、又は、一般式(1)中のR〜Rのうちの隣り合う2つが互いに結合して下記一般式(3)で表される環状構造を形成していることを特徴とする請求項2記載のウエハの処理方法。
【化2】

式(2)中、R〜R12は、それぞれ水素又は有機基を示す。R〜R12は、同一であってもよく、異なっていてもよい。R〜R12のうちの2つが互いに結合し、環状構造を形成していてもよい。
式(3)中、R13〜R16は、それぞれ水素又は有機基を示す。R13〜R16は、同一であってもよく、異なっていてもよい。R13〜R16のうちの2つが互いに結合し、環状構造を形成していてもよい。
【請求項4】
一般式(1)中のRがメチル基であることを特徴とする請求項2又は3記載のウエハの処理方法。
【請求項5】
一般式(1)で表されるカルボン酸化合物が、下記式(1−1)で表されるケトプロフェン、又は、下記式(1−2)で表される2−キサントン酢酸であることを特徴とする請求項2、3又は4記載のウエハの処理方法。
【化3】

【請求項6】
気体発生剤は、下記一般式(4)、一般式(5)又は一般式(6)で表されるテトラゾール化合物若しくはその塩であることを特徴とする請求項1記載のウエハの処理方法。
【化4】

式(4)〜(6)中、R21、R22は、水素、炭素数が1〜7のアルキル基、アルキレン基、フェニル基、メルカプト基、水酸基又はアミノ基を表す。
【請求項7】
接着剤成分は、光硬化型接着剤又は熱硬化型接着剤であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のウエハの処理方法。
【請求項8】
支持板固定工程において、少なくとも一方の面に接着剤成分と刺激により気体を発生する気体発生剤とを含有する接着剤組成物からなる接着剤層を有する両面粘着テープを用いてウエハを支持板に固定することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のウエハの処理方法。
【請求項9】
薬液処理は、酸、アルカリ又は有機溶剤を用いる処理であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載のウエハの処理方法。
【請求項10】
加熱処理又は発熱を伴う処理は、スパッタリング、蒸着、エッチング、化学気相成長法(CVD)、物理気相成長法(PVD)、レジスト塗布・パターンニング又はリフローであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載のウエハの処理方法。


【公開番号】特開2011−204793(P2011−204793A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68792(P2010−68792)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】