ウエハキャリア
【課題】発塵が抑制されるウエハキャリアを提供する。
【解決手段】ウエハキャリア10は、半導体ウエハが載置される下部ユニット30と、下部ユニット30が着脱可能であり、取り付けられた下部ユニット30との間に半導体ウエハ200を収容する密閉空間を形成する上部ユニット20を備えている。下部ユニット30には、載置された半導体ウエハ200の外周縁に当接する位置決め部材40が、周方向に沿って複数設けられている。各々の位置決め部材40は、例えば一軸回りに回転可能なローラ部材であって、回転可能に支持されている。
【解決手段】ウエハキャリア10は、半導体ウエハが載置される下部ユニット30と、下部ユニット30が着脱可能であり、取り付けられた下部ユニット30との間に半導体ウエハ200を収容する密閉空間を形成する上部ユニット20を備えている。下部ユニット30には、載置された半導体ウエハ200の外周縁に当接する位置決め部材40が、周方向に沿って複数設けられている。各々の位置決め部材40は、例えば一軸回りに回転可能なローラ部材であって、回転可能に支持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを収容するウエハキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、加工プロセスの微細化により、非常に高度なクリーン環境が要求される。そのようなクリーン環境を実現するために、製造工程の全体を一様にクリーン化するのではなく、半導体ウエハが存在する空間のみを重点的にクリーン化するSMIF(Standard Mechanical Interface)方式の製造工程が提案されている。SMIF方式の製造工程では、半導体ウエハを搬送、保管する際に、ウエハキャリアと呼ばれる密閉容器が利用される。そして、各種のプロセスを実施する各々の加工装置には、ロードポート装置が設けられており、ロードポート装置によって、雰囲気とは隔離された状態でウエハキャリアの開閉が行われる。
【0003】
特許文献1に、従来のウエハキャリアが開示されている。このウエハキャリアは、半導体ウエハを支持する下部ユニットと、下部ユニットが着脱可能な上部ユニットを備えている。上部ユニットは、取り付けられた下部ユニットとの間に、半導体ウエハを収容する密閉空間を形成する。下部ユニットには、載置された半導体ウエハの外周縁に当接する位置決め部材が、周方向に沿って複数設けられている。位置決め部材により、半導体ウエハは下部ユニットに対して定位置に載置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−175321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウエハキャリアに位置決め部材を設けると、例えは半導体ウエハを出し入れする際に、半導体ウエハが位置決め部材で擦られてしまい、塵埃を発生させてしまうことがある。しかしながら、ウエハキャリアに位置決め部材を設けなければ、ウエハキャリアで半導体ウエハが移動してしまい、やはり塵埃を発生させてしまうことになる。この問題を鑑み、本発明は、発塵が抑制されるウエハキャリアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るウエハキャリアは、半導体ウエハが載置される下部ユニットと、下部ユニットが着脱可能であり、取り付けられた下部ユニットとの間に半導体ウエハを収容する密閉空間を形成する上部ユニットを備えている。下部ユニットには、載置された半導体ウエハの外周縁に当接する位置決め部材が、周方向に沿って複数設けられている。このウエハキャリアでは、各々の位置決め部材が、回転可能に支持されている。
【0007】
上記したウエハキャリアでは、下部ユニットに対して半導体ウエハを出し入れする際に、位置決め部材が半導体ウエハに対して受動的に回転することができる。それにより、半導体ウエハと位置決め部材との間の摺動が防止され、塵埃の発生が有意に抑制される。
【0008】
上記したウエハキャリアにおいて、各々の位置決め部材は、少なくとも、下部ユニットに載置された半導体ウエハに対して平行な軸を中心に、回転可能であることが好ましい。
このような構成によると、下部ユニットに対して出し入れされる半導体ウエハに対して、位置決め部材がスムーズに回転することができる。ここで、各々の位置決め部材には、一例ではあるが、一軸回りに回転可能なローラ部材や、球体を任意の方向に回転可能に支持するフリーベアリングを採用することができる。
【0009】
上記したウエハキャリアにおいて、少なくとも一つの位置決め部材は、半導体ウエハの外周縁に形成されたノッチに当接することが好ましい。
このような構成によると、複数の位置決め部材は、半導体ウエハの位置決めだけでなく、半導体ウエハの位相決めも同時に行なうことができる。即ち、ウエハキャリアは、半導体ウエハを常に一定の位相で支持することができる。
【0010】
上記したノッチに当接する位置決め部材は、他の位置決め部材と比較して、異なる形状を有することが好ましい。即ち、ノッチの箇所で半導体ウエハに当接するものは、ノッチに応じた形状を有することが好ましい。
【0011】
上記したウエハキャリアによれば、位置決め部材に起因する発塵を有意に抑制することができる。しかしながら、従来のウエハキャリアには、発塵の原因となる箇所が他にも存在する。例えば、特許文献1のウエハキャリアは、上部ユニットと下部ユニットをクランプするクランプ部材をさらに備えている。そのクランプ部材は、上部ユニットによって揺動可能に支持されているとともに、クランプ位置で下部ユニットに当接する当接部を有している。
【0012】
ウエハキャリアにクランプ部材を設けると、例えはクランプ部材が開閉する際に、下部ユニットがクランプ部材で擦られてしまい、塵埃を発生させてしまうことがある。しかしながら、ウエハキャリアにクランプ部材を設けなければ、上部ユニットと下部ユニットを強固に固定することができず、半導体ウエハを収容する空間の密閉性を維持することができないこともある。
【0013】
上記の問題を鑑み、ウエハキャリアが上記したクランプ部材を備える場合は、当接部が回転可能に支持されており、接触する上部ユニット又は下部ユニットに対して、受動的に回転できる構成とすることが好ましい。
このような構造によれば、クランプの開閉時には、当接部が受動的に回転することによって、上部ユニット又は下部ユニットと当接部との間の摺動が防止され、塵埃の発生が有意に抑制される。
【0014】
上記したクランプ部材の当接部は、少なくとも、クランプ部材の揺動軸に対して平行な軸を中心に、回転可能であることが好ましい。
このような構成によると、揺動するクランプ部材の動きに対して、当接部がスムーズに回転することができる。ここで、当接部には、一例ではあるが、一軸回りに回転可能なローラ部材や、球体を任意の方向に回転可能に支持するフリーベアリングを採用することができる。
【0015】
通常、ウエハキャリアのクランプ部材は、ロードポート装置などに設けられたクランプ開閉装置によって開閉操作される。そのことから、クランプ部材には、外部のクランプ開閉装置に係合する係合部が設けられ、その係合部が、回転可能に支持されていることが好ましい。
この構成によると、クランプ開閉装置がクランプ部材を開閉操作する際に、クランプ部材の係合部とクランプ開閉装置の可動治具との間の摺動が抑制され、その摺動に伴う発塵を有意に抑制することができる。
【0016】
上記したクランプ部材の係合部は、少なくとも、クランプ部材の揺動軸に対して平行な軸を中心に、回転可能であることが好ましい。
このような構成によると、クランプ部材を揺動させるクランプ開閉装置の可動治具の動きに対して、係合部がスムーズに回転することができる。また、クランプ開閉装置の可動治具をU字形状とすれば、係合部と可動治具を容易に係合させることができるとともに、係合時における両者の摺動を防止することもできる。ここで、係合部には、一例ではあるが、一軸回りに回転可能なローラ部材や、球体を任意の方向に回転可能に支持するフリーベアリングを採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のウエハキャリアによれば、二つの部材の摺動に伴う発塵を有意に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例のウエハキャリアを示す平面図。
【図2】図1中のII−II線断面図であり、閉じた状態のウエハキャリアを示す。
【図3】図1中のII−II線断面図であり、開けた状態のウエハキャリアを示す。
【図4】定型の位置決めユニットの平面図。
【図5】定型の位置決めユニットの側面図。
【図6】ノッチ用の位置決めユニットの平面図。
【図7】ノッチ用の位置決めユニットの側面図。
【図8】クランプ位置にあるクランプ部材を示す図。
【図9】アンクランプ位置にあるクランプ部材を示す図。
【図10】ウエハキャリアが載置されたロードポート装置を示す図。
【図11】クランプ開閉装置を示す図(クランプ位置の状態)。
【図12】クランプ開閉装置を示す図(アンクランプ位置の状態)。
【図13】ウエハキャリアを開放するロードポート装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
最初に、実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1) ウエハキャリアは、上部ユニットと、上部ユニットに着脱可能な下部ユニットを備える。上部ユニットには、下方に開口する空洞が形成されており、その開口部に下部ユニットが着脱可能となっている。下部ユニットは、上部ユニットの空洞を気密に閉塞し、上部ユニットと下部ユニットとの間には、半導体ウエハを収容可能な密閉空間が形成される。
(形態2) 下部ユニットには、複数の位置決めユニットが設けられている。複数の位置決めユニットは、下部ユニットに載置される半導体ウエハの中心軸に対し、周方向に配列されている。各々の位置決めユニットは、半導体ウエハの外周縁に当接する位置決めローラと、位置決めローラを回転可能に支持する支持ブロックを有している。支持ブロックには、半導体ウエハの下面に当接する下面支持部が設けられている。
(形態3) 上部ユニットには、複数のクランプ部材が設けられている。クランプ部材は、揺動可能に支持されており、下部ユニットの下面に当接するクランプ位置と、下部ユニットから離間するアンクランプ位置との間で、移動することができる。クランプ部材は、回転可能に支持された当接ローラを有しており、クランプ部材がクランプ位置にあるときに、当接ローラが下部ユニットの下面に当接する。
【実施例】
【0020】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、実施例のウエハキャリア10の平面図である。図2は、図1中のII−II線におけるウエハキャリア10の断面図であり、閉じた状態のウエハキャリア10を示している。図3は、図1中のII−II線におけるウエハキャリア10の断面図であり、開いた状態のウエハキャリア10を示している。なお、図1では、トッププレート24の一部が図示省略されている。
【0021】
ウエハキャリア10は、半導体ウエハ200を気密に収容する収容容器であり、SMIF方式が採用された半導体装置の製造工程において、半導体ウエハ200の搬送や運搬に用いられる。この種のウエハキャリア10は、例えばクリーンボックスと称されることもある。
【0022】
図1から図3に示すように、ウエハキャリア10は、半導体ウエハ200が載置される下部ユニット30と、下部ユニット30が着脱可能な上部ユニット20を備えている。上部ユニット20には、下方に開口する空洞22が形成されている。なお、空洞22の上部は、トッププレート24によって気密に閉塞されている。上部ユニット20には、下部ユニット30が着脱可能となっている。下部ユニット30が上部ユニット20に取り付けられると、上部ユニット20の空洞22が気密に閉塞される。それにより、上部ユニット20と下部ユニット30との間には、半導体ウエハ200が収容される密閉空間が形成される。
【0023】
下部ユニット30には、複数の位置決めユニット40が設けられている。なお、本実施例では五つの位置決めユニット40が設けられているが、少なくとも三つの位置決めユニット40を設ければよい。複数の位置決めユニット40は、載置される半導体ウエハ200の中心軸に対し、周方向に沿って配列されている。複数の位置決めユニット40は、半導体ウエハ200に当接し、半導体ウエハ200を定位置及び定位相(一定の向き)に支持する。五つの位置決めユニット40のうち、四つの位置決めユニット40aは定型のものであるが、一つの位置決めユニット40bはノッチ用のものである。定型の位置決めユニット40aは、周方向に関して等間隔に配置されており、ノッチ用の位置決めユニット40bは、隣り合う定型の位置決めユニット40aの中間位置に配置されている。
【0024】
図4から図7を参照し、位置決めユニット40について詳細に説明する。図4、図5は、定型の位置決めユニット40aの平面図、側面図をそれぞれ示しており、図6、図7は、ノッチ用の位置決めユニット40bの平面図、側面図をそれぞれ示している。
図4から図7に示すように、定型の位置決めユニット40aは、位置決めローラ46と、位置決めローラ46を回転可能に支持する支持ブロック42を有している。位置決めローラ46は、半導体ウエハ200の外周縁200eに当接することで、半導体ウエハ200の面方向における位置決めを行う。位置決めローラ46は、一例ではあるが、半導体ウエハ200の汚染が防止されるように、PEEK樹脂で形成されている。
【0025】
ここで、図6、図7に示すように、ノッチ用の位置決めユニット40bについては、位置決めローラ46の形状が異なっており、半導体ウエハ200の外周縁200eに形成されたノッチ200nに当接することができる。本実施例のように、複数の位置決め部材40のなかにノッチ用の位置決めユニット40bを含めることで、下部ユニット30に半導体ウエハ200を載置する際に、半導体ウエハ200の位相決め(半導体ウエハを特定の向きとすること)についても同時に行なうことができる。
【0026】
位置決めローラ46は、シャフト47によって支持されている。位置決めローラ46とシャフト47の間にはラジアルベアリング48が設けられており、位置決めローラ46はシャフト47を中心軸として回転可能に支持されている。位置決めローラ46が回転可能に支持されていると、下部ユニット30に対して半導体ウエハ200が出し入れする際に、位置決めローラ46が半導体ウエハ200に対して受動的に回転することができる。それにより、半導体ウエハ200と位置決めローラ46との間の摺動が防止され、塵埃の発生が有意に抑制される。特に、本実施例の位置決めローラ46は、回転軸となるシャフト47が、載置される半導体ウエハ200に対して平行に伸びている。このような構成によると、出し入れされる半導体ウエハ200に対して、位置決めローラ46がスムーズに回転することができ、発塵を効果的に抑制することができる。なお、一軸回りに回転可能な位置決めローラ46に代えて、球体を任意の方向に回転可能に支持するフリーベアリングを採用してもよい。
【0027】
また、各々の位置決めユニット40には、半導体ウエハ200の下面200bに当接する下面支持部44が形成されている。下面支持部44は、位置決めユニット40の支持ブロック42に一体に形成されている。下面支持部44は、半導体ウエハ200の下面200bに当接し、半導体ウエハ200の上下方向の位置を規定する。加えて、図1、図2に示すように、下部ユニット30には、中心支持ユニット49がさらに設けられている。中心支持ユニット49は、載置される半導体ウエハ200の中心軸上に位置している。中心支持ユニット49は、円錐形状を有しており、その頂部によって半導体ウエハ200の中心部分を支持する。下部ユニット30では、半導体ウエハ200の周縁部分が複数の位置決めユニット40によって支持され、半導体ウエハ200の周縁部分が中心支持ユニット49によって支持される。それにより、載置された半導体ウエハ200の湾曲することが防止される。
【0028】
図1から図3に示すように、上部ユニット20には、複数のクランプ部材50が設けられている。複数のクランプ部材50は、上部ユニット20と下部ユニット30をクランプし、上部ユニット20と下部ユニット30を圧接させることによって、収容空間の密閉性を確保する。なお、図示省略するが、上部ユニット20と下部ユニット30との接合面には、シール部材が設けられている。
クランプ部材50は、上部ユニット20によって揺動可能に支持されており、図2に示すクランプ位置と、図3に示すアンクランプ位置との間で、移動することができる。図3に示すように、クランプ部材50がアンクランプ位置へ移動すると、クランプ部材50によるクランプが解除され、上部ユニット20から下部ユニット30を取り外すことによって、ウエハキャリア10を開放することができる。詳しくは後述するが、クランプ部材50をクランプ位置とアンクランプ位置との間で移動させる開閉操作は、ロードポート装置100のクランプ開閉装置150によって行われる。
【0029】
図8、図9を参照し、クランプ部材50について詳細に説明する。図8は、クランプ位置にあるクランプ部材50を示しており、図9は、アンクランプ位置にあるクランプ部材50を示している。
図8、図9に示すように、クランプ部材50は、上部ユニット20に設けられたシャフト51によって支持されている。クランプ部材50は、シャフト51を揺動軸として揺動可能であり、下部ユニット30へ接近するクランプ位置と、下部ユニット30から離間するアンクランプ位置との間で、揺動することができる。
【0030】
クランプ部材50には、当接ローラ52が設けられている。当接ローラ52は、シャフト53によって、回転可能に支持されている。当接ローラ52は、下部ユニット30に当接する位置に設けられている。即ち、クランプ部材50がクランプ位置にあると、当接ローラ52は下部ユニット30の下面30bに当接し、クランプ部材50がアンクランプ位置へ移動すると、当接ローラ52は下部ユニット30の下面30bから離反する。
【0031】
当接ローラ52が回転可能であることから、開閉されるクランプ部材50の動きに対して、当接ローラ52は受動的に回転することができる。それにより、クランプ部材50を開閉する際に、当接ローラ52と下部ユニット30との間の摺動が防止され、塵埃の発生が有意に抑制される。特に、本実施例の当接ローラ52では、その回転軸となるシャフト53が、クランプ部材50の揺動軸であるシャフト51に対して平行に伸びている。このような構成によると、揺動するクランプ部材50の動きに対して、当接ローラ52がスムーズに回転することができ、発塵を効果的に抑制することができる。なお、一軸回りに回転可能な当接ローラ52に代えて、球体を任意の方向へ回転可能に支持するフリーベアリングを採用してもよい。
【0032】
また、クランプ部材50には、係合ローラ54が設けられている。係合ローラ54は、シャフト55によって、回転可能に支持されている。係合ローラ54は、後述するクランプ開閉装置150の可動治具152と係合する。ここで、クランプ開閉装置150は、図10に示すロードポート装置100に設けられている。従って、係合ローラ54の説明を行うのに先立ち、先ずはロードポート装置100の説明を行う。
【0033】
図10に示すように、ロードポート装置100は、半導体ウエハ200に各種の加工プロセスを施す加工装置170に設けられている。ロードポート装置100は、受け取ったウエハキャリア10を開閉する装置である。ロードポート装置100の内部空間102及び加工装置170の内部空間172は、周囲の雰囲気と比較して、高いレベルでクリーン化されている。
【0034】
ロードポート装置100は、ウエハキャリア10が載置される固定ステージ110及び可動ステージ120を備えている。固定ステージ110はリング状のステージであり、略中央に位置する可動ステージ120を取り囲んでいる。可動ステージ120は、直動ガイド130及びシリンダ装置132によって、上下方向に昇降可能となっている。
固定ステージ110及び可動ステージ120には、ウエハキャリア10を吸着するバキューム流路112、122がそれぞれ形成されている。なお、このロードポート装置100では、ウエハキャリア10が載置されたときに、ウエハキャリア10が固定ステージ110のみで支持され、可動ステージ120とウエハキャリア10との間に隙間を形成が形成される。この構成によると、可動ステージ120のバキューム流路122によって、ウエハキャリア10の底面に付着している塵埃を吸引することができ、ロードポート装置100及び加工装置170の内部空間102、172への侵入を防ぐことができる。
【0035】
図10には図示されないが、クランプ開閉装置150は、固定ステージ110に設けられている。なお、クランプ開閉装置150は、載置されるウエハキャリア10のクランプ部材50に対応する位置に設けられている。図11、図12を参照して、クランプ開閉装置150を説明する。
図11、図12に示すように、クランプ開閉装置150は、可動治具152と、可動治具152を動かすシリンダ装置154を備えている。シリンダ装置154は、可動治具152を動かすアクチュエータの一例であり、他の種類のアクチュエータに置き換えることもできる。可動治具152は、概してU字形状の部材であり、上方に開口するスリット152aを有している。
【0036】
図11に示すように、ウエハキャリア10がロードポート装置100に載置されると、クランプ部材50の係合ローラ54は、可動治具152のスリット152aに係合する。ここで、スリット152aは、係合ローラ54の直径よりも僅かに大きく、両者の間には隙間が形成される。先にも説明したように、係合ローラ54は、回転可能に支持されている。従って、クランプ部材50と可動治具152との係合時には、可動治具152に対して係合ローラ54が受動的に回転することによって、クランプ部材50と可動治具152との間の摺動が抑制される。それにより、発塵を有意に抑制することができる。
【0037】
係合ローラ54が係合した可動治具152は、シリンダ装置154によって、ウエハキャリア10から離間する方向へ移動される。それにより、図12に示すように、クランプ部材50はアンクランプ位置へ移動する。このクランプ部材50の開放操作においても、係合ローラ54が受動的に回転することによって、クランプ部材50と可動治具152との間の摺動が抑制される。それにより、発塵が有意に抑制される。
【0038】
図13に示すように、クランプ部材50によるクランプが解除されると、ロードポート装置100は、可動ステージ120を下降させることによって、ウエハキャリア10を開放する。半導体ウエハ200は、下部ユニット30と共に、ロードポート装置100の内部空間102へ引き込まれる。ロードポート装置100内へ移動した半導体ウエハ200は、ロボットアーム180によって取り上げられ、加工装置170へと搬入される。半導体ウエハ200の取り上げ時には、位置決めローラ46が受動的に回転することで、発塵が抑制される。加工装置170による加工プロセスの終了後は、上記とは逆の流れにより、半導体ウエハ200がウエハキャリア10に収容される。半導体ウエハ200を再度収容したウエハキャリア10は、次の加工プロセスを実施する別の加工装置170へ送られる。
【0039】
以上のように、本実施例のウエハキャリア10では、半導体ウエハ200の位置決め部材に、回転可能に支持された位置決めローラ46が採用されている。それにより、半導体ウエハ200と位置決め部材の接触に伴う発塵を、有意に抑制することができる。
また、本実施例のウエハキャリア10では、クランプ部材50の下部ユニット30に当接する部分に、回転可能に支持された当接ローラ52が設けられている。それにより、クランプ部材50と下部ユニット30の接触に伴う発塵を、有意に抑制することができる。
【0040】
さらに、本実施例のウエハキャリア10では、クランプ部材50に回転可能な係合ローラ54を設け、その係合ローラ54をクランプ開閉装置150の可動治具152に係合させている。それにより、クランプ部材50と可動治具152との接触に伴う発塵を、有意に抑制することができる。
このように、本実施例のウエハキャリア10では、発塵の要因となり得る接触箇所に、回転可能な部材を配することによって、高レベルなクリーン環境の実現を可能とするものである。
【0041】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0042】
10:ウエハキャリア
20:上部ユニット
30:下部ユニット
40、40a、40b:位置決めユニット
46:位置決めローラ
50:クランプ部材
52:当接ローラ
54:係合ローラ
100:ロードポート装置
150:クランプ開閉装置
152:クランプ開閉装置の可動治具
152a:可動治具のスリット
200:半導体ウエハ
200e半導体ウエハの外周縁
200n:半導体ウエハのノッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを収容するウエハキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、加工プロセスの微細化により、非常に高度なクリーン環境が要求される。そのようなクリーン環境を実現するために、製造工程の全体を一様にクリーン化するのではなく、半導体ウエハが存在する空間のみを重点的にクリーン化するSMIF(Standard Mechanical Interface)方式の製造工程が提案されている。SMIF方式の製造工程では、半導体ウエハを搬送、保管する際に、ウエハキャリアと呼ばれる密閉容器が利用される。そして、各種のプロセスを実施する各々の加工装置には、ロードポート装置が設けられており、ロードポート装置によって、雰囲気とは隔離された状態でウエハキャリアの開閉が行われる。
【0003】
特許文献1に、従来のウエハキャリアが開示されている。このウエハキャリアは、半導体ウエハを支持する下部ユニットと、下部ユニットが着脱可能な上部ユニットを備えている。上部ユニットは、取り付けられた下部ユニットとの間に、半導体ウエハを収容する密閉空間を形成する。下部ユニットには、載置された半導体ウエハの外周縁に当接する位置決め部材が、周方向に沿って複数設けられている。位置決め部材により、半導体ウエハは下部ユニットに対して定位置に載置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−175321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウエハキャリアに位置決め部材を設けると、例えは半導体ウエハを出し入れする際に、半導体ウエハが位置決め部材で擦られてしまい、塵埃を発生させてしまうことがある。しかしながら、ウエハキャリアに位置決め部材を設けなければ、ウエハキャリアで半導体ウエハが移動してしまい、やはり塵埃を発生させてしまうことになる。この問題を鑑み、本発明は、発塵が抑制されるウエハキャリアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るウエハキャリアは、半導体ウエハが載置される下部ユニットと、下部ユニットが着脱可能であり、取り付けられた下部ユニットとの間に半導体ウエハを収容する密閉空間を形成する上部ユニットを備えている。下部ユニットには、載置された半導体ウエハの外周縁に当接する位置決め部材が、周方向に沿って複数設けられている。このウエハキャリアでは、各々の位置決め部材が、回転可能に支持されている。
【0007】
上記したウエハキャリアでは、下部ユニットに対して半導体ウエハを出し入れする際に、位置決め部材が半導体ウエハに対して受動的に回転することができる。それにより、半導体ウエハと位置決め部材との間の摺動が防止され、塵埃の発生が有意に抑制される。
【0008】
上記したウエハキャリアにおいて、各々の位置決め部材は、少なくとも、下部ユニットに載置された半導体ウエハに対して平行な軸を中心に、回転可能であることが好ましい。
このような構成によると、下部ユニットに対して出し入れされる半導体ウエハに対して、位置決め部材がスムーズに回転することができる。ここで、各々の位置決め部材には、一例ではあるが、一軸回りに回転可能なローラ部材や、球体を任意の方向に回転可能に支持するフリーベアリングを採用することができる。
【0009】
上記したウエハキャリアにおいて、少なくとも一つの位置決め部材は、半導体ウエハの外周縁に形成されたノッチに当接することが好ましい。
このような構成によると、複数の位置決め部材は、半導体ウエハの位置決めだけでなく、半導体ウエハの位相決めも同時に行なうことができる。即ち、ウエハキャリアは、半導体ウエハを常に一定の位相で支持することができる。
【0010】
上記したノッチに当接する位置決め部材は、他の位置決め部材と比較して、異なる形状を有することが好ましい。即ち、ノッチの箇所で半導体ウエハに当接するものは、ノッチに応じた形状を有することが好ましい。
【0011】
上記したウエハキャリアによれば、位置決め部材に起因する発塵を有意に抑制することができる。しかしながら、従来のウエハキャリアには、発塵の原因となる箇所が他にも存在する。例えば、特許文献1のウエハキャリアは、上部ユニットと下部ユニットをクランプするクランプ部材をさらに備えている。そのクランプ部材は、上部ユニットによって揺動可能に支持されているとともに、クランプ位置で下部ユニットに当接する当接部を有している。
【0012】
ウエハキャリアにクランプ部材を設けると、例えはクランプ部材が開閉する際に、下部ユニットがクランプ部材で擦られてしまい、塵埃を発生させてしまうことがある。しかしながら、ウエハキャリアにクランプ部材を設けなければ、上部ユニットと下部ユニットを強固に固定することができず、半導体ウエハを収容する空間の密閉性を維持することができないこともある。
【0013】
上記の問題を鑑み、ウエハキャリアが上記したクランプ部材を備える場合は、当接部が回転可能に支持されており、接触する上部ユニット又は下部ユニットに対して、受動的に回転できる構成とすることが好ましい。
このような構造によれば、クランプの開閉時には、当接部が受動的に回転することによって、上部ユニット又は下部ユニットと当接部との間の摺動が防止され、塵埃の発生が有意に抑制される。
【0014】
上記したクランプ部材の当接部は、少なくとも、クランプ部材の揺動軸に対して平行な軸を中心に、回転可能であることが好ましい。
このような構成によると、揺動するクランプ部材の動きに対して、当接部がスムーズに回転することができる。ここで、当接部には、一例ではあるが、一軸回りに回転可能なローラ部材や、球体を任意の方向に回転可能に支持するフリーベアリングを採用することができる。
【0015】
通常、ウエハキャリアのクランプ部材は、ロードポート装置などに設けられたクランプ開閉装置によって開閉操作される。そのことから、クランプ部材には、外部のクランプ開閉装置に係合する係合部が設けられ、その係合部が、回転可能に支持されていることが好ましい。
この構成によると、クランプ開閉装置がクランプ部材を開閉操作する際に、クランプ部材の係合部とクランプ開閉装置の可動治具との間の摺動が抑制され、その摺動に伴う発塵を有意に抑制することができる。
【0016】
上記したクランプ部材の係合部は、少なくとも、クランプ部材の揺動軸に対して平行な軸を中心に、回転可能であることが好ましい。
このような構成によると、クランプ部材を揺動させるクランプ開閉装置の可動治具の動きに対して、係合部がスムーズに回転することができる。また、クランプ開閉装置の可動治具をU字形状とすれば、係合部と可動治具を容易に係合させることができるとともに、係合時における両者の摺動を防止することもできる。ここで、係合部には、一例ではあるが、一軸回りに回転可能なローラ部材や、球体を任意の方向に回転可能に支持するフリーベアリングを採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のウエハキャリアによれば、二つの部材の摺動に伴う発塵を有意に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例のウエハキャリアを示す平面図。
【図2】図1中のII−II線断面図であり、閉じた状態のウエハキャリアを示す。
【図3】図1中のII−II線断面図であり、開けた状態のウエハキャリアを示す。
【図4】定型の位置決めユニットの平面図。
【図5】定型の位置決めユニットの側面図。
【図6】ノッチ用の位置決めユニットの平面図。
【図7】ノッチ用の位置決めユニットの側面図。
【図8】クランプ位置にあるクランプ部材を示す図。
【図9】アンクランプ位置にあるクランプ部材を示す図。
【図10】ウエハキャリアが載置されたロードポート装置を示す図。
【図11】クランプ開閉装置を示す図(クランプ位置の状態)。
【図12】クランプ開閉装置を示す図(アンクランプ位置の状態)。
【図13】ウエハキャリアを開放するロードポート装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
最初に、実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1) ウエハキャリアは、上部ユニットと、上部ユニットに着脱可能な下部ユニットを備える。上部ユニットには、下方に開口する空洞が形成されており、その開口部に下部ユニットが着脱可能となっている。下部ユニットは、上部ユニットの空洞を気密に閉塞し、上部ユニットと下部ユニットとの間には、半導体ウエハを収容可能な密閉空間が形成される。
(形態2) 下部ユニットには、複数の位置決めユニットが設けられている。複数の位置決めユニットは、下部ユニットに載置される半導体ウエハの中心軸に対し、周方向に配列されている。各々の位置決めユニットは、半導体ウエハの外周縁に当接する位置決めローラと、位置決めローラを回転可能に支持する支持ブロックを有している。支持ブロックには、半導体ウエハの下面に当接する下面支持部が設けられている。
(形態3) 上部ユニットには、複数のクランプ部材が設けられている。クランプ部材は、揺動可能に支持されており、下部ユニットの下面に当接するクランプ位置と、下部ユニットから離間するアンクランプ位置との間で、移動することができる。クランプ部材は、回転可能に支持された当接ローラを有しており、クランプ部材がクランプ位置にあるときに、当接ローラが下部ユニットの下面に当接する。
【実施例】
【0020】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は、実施例のウエハキャリア10の平面図である。図2は、図1中のII−II線におけるウエハキャリア10の断面図であり、閉じた状態のウエハキャリア10を示している。図3は、図1中のII−II線におけるウエハキャリア10の断面図であり、開いた状態のウエハキャリア10を示している。なお、図1では、トッププレート24の一部が図示省略されている。
【0021】
ウエハキャリア10は、半導体ウエハ200を気密に収容する収容容器であり、SMIF方式が採用された半導体装置の製造工程において、半導体ウエハ200の搬送や運搬に用いられる。この種のウエハキャリア10は、例えばクリーンボックスと称されることもある。
【0022】
図1から図3に示すように、ウエハキャリア10は、半導体ウエハ200が載置される下部ユニット30と、下部ユニット30が着脱可能な上部ユニット20を備えている。上部ユニット20には、下方に開口する空洞22が形成されている。なお、空洞22の上部は、トッププレート24によって気密に閉塞されている。上部ユニット20には、下部ユニット30が着脱可能となっている。下部ユニット30が上部ユニット20に取り付けられると、上部ユニット20の空洞22が気密に閉塞される。それにより、上部ユニット20と下部ユニット30との間には、半導体ウエハ200が収容される密閉空間が形成される。
【0023】
下部ユニット30には、複数の位置決めユニット40が設けられている。なお、本実施例では五つの位置決めユニット40が設けられているが、少なくとも三つの位置決めユニット40を設ければよい。複数の位置決めユニット40は、載置される半導体ウエハ200の中心軸に対し、周方向に沿って配列されている。複数の位置決めユニット40は、半導体ウエハ200に当接し、半導体ウエハ200を定位置及び定位相(一定の向き)に支持する。五つの位置決めユニット40のうち、四つの位置決めユニット40aは定型のものであるが、一つの位置決めユニット40bはノッチ用のものである。定型の位置決めユニット40aは、周方向に関して等間隔に配置されており、ノッチ用の位置決めユニット40bは、隣り合う定型の位置決めユニット40aの中間位置に配置されている。
【0024】
図4から図7を参照し、位置決めユニット40について詳細に説明する。図4、図5は、定型の位置決めユニット40aの平面図、側面図をそれぞれ示しており、図6、図7は、ノッチ用の位置決めユニット40bの平面図、側面図をそれぞれ示している。
図4から図7に示すように、定型の位置決めユニット40aは、位置決めローラ46と、位置決めローラ46を回転可能に支持する支持ブロック42を有している。位置決めローラ46は、半導体ウエハ200の外周縁200eに当接することで、半導体ウエハ200の面方向における位置決めを行う。位置決めローラ46は、一例ではあるが、半導体ウエハ200の汚染が防止されるように、PEEK樹脂で形成されている。
【0025】
ここで、図6、図7に示すように、ノッチ用の位置決めユニット40bについては、位置決めローラ46の形状が異なっており、半導体ウエハ200の外周縁200eに形成されたノッチ200nに当接することができる。本実施例のように、複数の位置決め部材40のなかにノッチ用の位置決めユニット40bを含めることで、下部ユニット30に半導体ウエハ200を載置する際に、半導体ウエハ200の位相決め(半導体ウエハを特定の向きとすること)についても同時に行なうことができる。
【0026】
位置決めローラ46は、シャフト47によって支持されている。位置決めローラ46とシャフト47の間にはラジアルベアリング48が設けられており、位置決めローラ46はシャフト47を中心軸として回転可能に支持されている。位置決めローラ46が回転可能に支持されていると、下部ユニット30に対して半導体ウエハ200が出し入れする際に、位置決めローラ46が半導体ウエハ200に対して受動的に回転することができる。それにより、半導体ウエハ200と位置決めローラ46との間の摺動が防止され、塵埃の発生が有意に抑制される。特に、本実施例の位置決めローラ46は、回転軸となるシャフト47が、載置される半導体ウエハ200に対して平行に伸びている。このような構成によると、出し入れされる半導体ウエハ200に対して、位置決めローラ46がスムーズに回転することができ、発塵を効果的に抑制することができる。なお、一軸回りに回転可能な位置決めローラ46に代えて、球体を任意の方向に回転可能に支持するフリーベアリングを採用してもよい。
【0027】
また、各々の位置決めユニット40には、半導体ウエハ200の下面200bに当接する下面支持部44が形成されている。下面支持部44は、位置決めユニット40の支持ブロック42に一体に形成されている。下面支持部44は、半導体ウエハ200の下面200bに当接し、半導体ウエハ200の上下方向の位置を規定する。加えて、図1、図2に示すように、下部ユニット30には、中心支持ユニット49がさらに設けられている。中心支持ユニット49は、載置される半導体ウエハ200の中心軸上に位置している。中心支持ユニット49は、円錐形状を有しており、その頂部によって半導体ウエハ200の中心部分を支持する。下部ユニット30では、半導体ウエハ200の周縁部分が複数の位置決めユニット40によって支持され、半導体ウエハ200の周縁部分が中心支持ユニット49によって支持される。それにより、載置された半導体ウエハ200の湾曲することが防止される。
【0028】
図1から図3に示すように、上部ユニット20には、複数のクランプ部材50が設けられている。複数のクランプ部材50は、上部ユニット20と下部ユニット30をクランプし、上部ユニット20と下部ユニット30を圧接させることによって、収容空間の密閉性を確保する。なお、図示省略するが、上部ユニット20と下部ユニット30との接合面には、シール部材が設けられている。
クランプ部材50は、上部ユニット20によって揺動可能に支持されており、図2に示すクランプ位置と、図3に示すアンクランプ位置との間で、移動することができる。図3に示すように、クランプ部材50がアンクランプ位置へ移動すると、クランプ部材50によるクランプが解除され、上部ユニット20から下部ユニット30を取り外すことによって、ウエハキャリア10を開放することができる。詳しくは後述するが、クランプ部材50をクランプ位置とアンクランプ位置との間で移動させる開閉操作は、ロードポート装置100のクランプ開閉装置150によって行われる。
【0029】
図8、図9を参照し、クランプ部材50について詳細に説明する。図8は、クランプ位置にあるクランプ部材50を示しており、図9は、アンクランプ位置にあるクランプ部材50を示している。
図8、図9に示すように、クランプ部材50は、上部ユニット20に設けられたシャフト51によって支持されている。クランプ部材50は、シャフト51を揺動軸として揺動可能であり、下部ユニット30へ接近するクランプ位置と、下部ユニット30から離間するアンクランプ位置との間で、揺動することができる。
【0030】
クランプ部材50には、当接ローラ52が設けられている。当接ローラ52は、シャフト53によって、回転可能に支持されている。当接ローラ52は、下部ユニット30に当接する位置に設けられている。即ち、クランプ部材50がクランプ位置にあると、当接ローラ52は下部ユニット30の下面30bに当接し、クランプ部材50がアンクランプ位置へ移動すると、当接ローラ52は下部ユニット30の下面30bから離反する。
【0031】
当接ローラ52が回転可能であることから、開閉されるクランプ部材50の動きに対して、当接ローラ52は受動的に回転することができる。それにより、クランプ部材50を開閉する際に、当接ローラ52と下部ユニット30との間の摺動が防止され、塵埃の発生が有意に抑制される。特に、本実施例の当接ローラ52では、その回転軸となるシャフト53が、クランプ部材50の揺動軸であるシャフト51に対して平行に伸びている。このような構成によると、揺動するクランプ部材50の動きに対して、当接ローラ52がスムーズに回転することができ、発塵を効果的に抑制することができる。なお、一軸回りに回転可能な当接ローラ52に代えて、球体を任意の方向へ回転可能に支持するフリーベアリングを採用してもよい。
【0032】
また、クランプ部材50には、係合ローラ54が設けられている。係合ローラ54は、シャフト55によって、回転可能に支持されている。係合ローラ54は、後述するクランプ開閉装置150の可動治具152と係合する。ここで、クランプ開閉装置150は、図10に示すロードポート装置100に設けられている。従って、係合ローラ54の説明を行うのに先立ち、先ずはロードポート装置100の説明を行う。
【0033】
図10に示すように、ロードポート装置100は、半導体ウエハ200に各種の加工プロセスを施す加工装置170に設けられている。ロードポート装置100は、受け取ったウエハキャリア10を開閉する装置である。ロードポート装置100の内部空間102及び加工装置170の内部空間172は、周囲の雰囲気と比較して、高いレベルでクリーン化されている。
【0034】
ロードポート装置100は、ウエハキャリア10が載置される固定ステージ110及び可動ステージ120を備えている。固定ステージ110はリング状のステージであり、略中央に位置する可動ステージ120を取り囲んでいる。可動ステージ120は、直動ガイド130及びシリンダ装置132によって、上下方向に昇降可能となっている。
固定ステージ110及び可動ステージ120には、ウエハキャリア10を吸着するバキューム流路112、122がそれぞれ形成されている。なお、このロードポート装置100では、ウエハキャリア10が載置されたときに、ウエハキャリア10が固定ステージ110のみで支持され、可動ステージ120とウエハキャリア10との間に隙間を形成が形成される。この構成によると、可動ステージ120のバキューム流路122によって、ウエハキャリア10の底面に付着している塵埃を吸引することができ、ロードポート装置100及び加工装置170の内部空間102、172への侵入を防ぐことができる。
【0035】
図10には図示されないが、クランプ開閉装置150は、固定ステージ110に設けられている。なお、クランプ開閉装置150は、載置されるウエハキャリア10のクランプ部材50に対応する位置に設けられている。図11、図12を参照して、クランプ開閉装置150を説明する。
図11、図12に示すように、クランプ開閉装置150は、可動治具152と、可動治具152を動かすシリンダ装置154を備えている。シリンダ装置154は、可動治具152を動かすアクチュエータの一例であり、他の種類のアクチュエータに置き換えることもできる。可動治具152は、概してU字形状の部材であり、上方に開口するスリット152aを有している。
【0036】
図11に示すように、ウエハキャリア10がロードポート装置100に載置されると、クランプ部材50の係合ローラ54は、可動治具152のスリット152aに係合する。ここで、スリット152aは、係合ローラ54の直径よりも僅かに大きく、両者の間には隙間が形成される。先にも説明したように、係合ローラ54は、回転可能に支持されている。従って、クランプ部材50と可動治具152との係合時には、可動治具152に対して係合ローラ54が受動的に回転することによって、クランプ部材50と可動治具152との間の摺動が抑制される。それにより、発塵を有意に抑制することができる。
【0037】
係合ローラ54が係合した可動治具152は、シリンダ装置154によって、ウエハキャリア10から離間する方向へ移動される。それにより、図12に示すように、クランプ部材50はアンクランプ位置へ移動する。このクランプ部材50の開放操作においても、係合ローラ54が受動的に回転することによって、クランプ部材50と可動治具152との間の摺動が抑制される。それにより、発塵が有意に抑制される。
【0038】
図13に示すように、クランプ部材50によるクランプが解除されると、ロードポート装置100は、可動ステージ120を下降させることによって、ウエハキャリア10を開放する。半導体ウエハ200は、下部ユニット30と共に、ロードポート装置100の内部空間102へ引き込まれる。ロードポート装置100内へ移動した半導体ウエハ200は、ロボットアーム180によって取り上げられ、加工装置170へと搬入される。半導体ウエハ200の取り上げ時には、位置決めローラ46が受動的に回転することで、発塵が抑制される。加工装置170による加工プロセスの終了後は、上記とは逆の流れにより、半導体ウエハ200がウエハキャリア10に収容される。半導体ウエハ200を再度収容したウエハキャリア10は、次の加工プロセスを実施する別の加工装置170へ送られる。
【0039】
以上のように、本実施例のウエハキャリア10では、半導体ウエハ200の位置決め部材に、回転可能に支持された位置決めローラ46が採用されている。それにより、半導体ウエハ200と位置決め部材の接触に伴う発塵を、有意に抑制することができる。
また、本実施例のウエハキャリア10では、クランプ部材50の下部ユニット30に当接する部分に、回転可能に支持された当接ローラ52が設けられている。それにより、クランプ部材50と下部ユニット30の接触に伴う発塵を、有意に抑制することができる。
【0040】
さらに、本実施例のウエハキャリア10では、クランプ部材50に回転可能な係合ローラ54を設け、その係合ローラ54をクランプ開閉装置150の可動治具152に係合させている。それにより、クランプ部材50と可動治具152との接触に伴う発塵を、有意に抑制することができる。
このように、本実施例のウエハキャリア10では、発塵の要因となり得る接触箇所に、回転可能な部材を配することによって、高レベルなクリーン環境の実現を可能とするものである。
【0041】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0042】
10:ウエハキャリア
20:上部ユニット
30:下部ユニット
40、40a、40b:位置決めユニット
46:位置決めローラ
50:クランプ部材
52:当接ローラ
54:係合ローラ
100:ロードポート装置
150:クランプ開閉装置
152:クランプ開閉装置の可動治具
152a:可動治具のスリット
200:半導体ウエハ
200e半導体ウエハの外周縁
200n:半導体ウエハのノッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハを収容するウエハキャリアであって、
半導体ウエハが載置される下部ユニットと、
下部ユニットが着脱可能であり、取り付けられた下部ユニットとの間に半導体ウエハを収容する密閉空間を形成する上部ユニットを備え、
下部ユニットには、載置された半導体ウエハの外周縁に当接する位置決め部材が、周方向に沿って複数設けられており、
各々の位置決め部材は、回転可能に支持されていることを特徴とするウエハキャリア。
【請求項2】
各々の位置決め部材は、少なくとも、下部ユニットに載置された半導体ウエハに対して平行な軸を中心に、回転可能であることを特徴とする請求項1に記載のウエハキャリア。
【請求項3】
少なくとも一つの位置決め部材は、半導体ウエハの外周縁に形成されたノッチに当接することを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハキャリア。
【請求項4】
ノッチに当接する位置決め部材は、他の位置決め部材と比較して、異なる形状を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のウエハキャリア。
【請求項5】
上部ユニットと下部ユニットをクランプするクランプ部材をさらに備え、
そのクランプ部材は、上部ユニットと下部ユニットの一方によって揺動可能に支持されているとともに、クランプ位置で上部ユニットと下部ユニットの他方に当接する当接部を有しており、
その当接部は、回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のウエハキャリア。
【請求項6】
クランプ部の当接部は、少なくとも、クランプ部材の揺動軸に対して平行な軸を中心に、回転可能であることを特徴とする請求項5に記載のウエハキャリア。
【請求項7】
クランプ部材には、外部のクランプ開閉装置に係合する係合部が設けられており、
その係合部は、回転可能に支持されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のウエハキャリア。
【請求項8】
係合部は、少なくとも、クランプ部材の揺動軸に対して平行な軸を中心に、回転可能であることを特徴とする請求項7に記載のウエハキャリア。
【請求項9】
係合部は、クランプ開閉装置に設けられたU字形状の可動部材に係合可能であることを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載のウエハキャリア。
【請求項10】
半導体ウエハを収容するウエハキャリアであって、
半導体ウエハが載置される下部ユニットと、
下部ユニットが着脱可能であり、取り付けられた下部ユニットとの間に半導体ウエハを収容する密閉空間を形成する上部ユニットと、
上部ユニットと下部ユニットをクランプするクランプ部材を備え、
そのクランプ部材は、上部ユニットと下部ユニットの一方によってクランプ位置とアンクランプ位置の間を揺動可能に支持されているとともに、クランプ位置で上部ユニットと下部ユニットの他方に当接する当接部を有しており、
その当接部は、回転可能に支持されていることを特徴とするウエハキャリア。
【請求項1】
半導体ウエハを収容するウエハキャリアであって、
半導体ウエハが載置される下部ユニットと、
下部ユニットが着脱可能であり、取り付けられた下部ユニットとの間に半導体ウエハを収容する密閉空間を形成する上部ユニットを備え、
下部ユニットには、載置された半導体ウエハの外周縁に当接する位置決め部材が、周方向に沿って複数設けられており、
各々の位置決め部材は、回転可能に支持されていることを特徴とするウエハキャリア。
【請求項2】
各々の位置決め部材は、少なくとも、下部ユニットに載置された半導体ウエハに対して平行な軸を中心に、回転可能であることを特徴とする請求項1に記載のウエハキャリア。
【請求項3】
少なくとも一つの位置決め部材は、半導体ウエハの外周縁に形成されたノッチに当接することを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハキャリア。
【請求項4】
ノッチに当接する位置決め部材は、他の位置決め部材と比較して、異なる形状を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のウエハキャリア。
【請求項5】
上部ユニットと下部ユニットをクランプするクランプ部材をさらに備え、
そのクランプ部材は、上部ユニットと下部ユニットの一方によって揺動可能に支持されているとともに、クランプ位置で上部ユニットと下部ユニットの他方に当接する当接部を有しており、
その当接部は、回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のウエハキャリア。
【請求項6】
クランプ部の当接部は、少なくとも、クランプ部材の揺動軸に対して平行な軸を中心に、回転可能であることを特徴とする請求項5に記載のウエハキャリア。
【請求項7】
クランプ部材には、外部のクランプ開閉装置に係合する係合部が設けられており、
その係合部は、回転可能に支持されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のウエハキャリア。
【請求項8】
係合部は、少なくとも、クランプ部材の揺動軸に対して平行な軸を中心に、回転可能であることを特徴とする請求項7に記載のウエハキャリア。
【請求項9】
係合部は、クランプ開閉装置に設けられたU字形状の可動部材に係合可能であることを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載のウエハキャリア。
【請求項10】
半導体ウエハを収容するウエハキャリアであって、
半導体ウエハが載置される下部ユニットと、
下部ユニットが着脱可能であり、取り付けられた下部ユニットとの間に半導体ウエハを収容する密閉空間を形成する上部ユニットと、
上部ユニットと下部ユニットをクランプするクランプ部材を備え、
そのクランプ部材は、上部ユニットと下部ユニットの一方によってクランプ位置とアンクランプ位置の間を揺動可能に支持されているとともに、クランプ位置で上部ユニットと下部ユニットの他方に当接する当接部を有しており、
その当接部は、回転可能に支持されていることを特徴とするウエハキャリア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−108698(P2011−108698A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259391(P2009−259391)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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