説明

ウエハ加工用テープ

【課題】接着剤層が粘着テープの粘着剤層から剥離するのを防止する。
【解決手段】ウエハ加工用テープは、接着剤層3の外周部32の剥離力が、接着剤層3の半導体ウエハが貼り合わせられる予定の貼合予定部30の剥離力よりも大きく、貼合予定部30の剥離力が0.01以上で0.4N/inch未満の場合は、外周部32の剥離力が貼合予定部30の30倍以上または0.9N/inch以上のどちらか小さい方であり、貼合予定部30の剥離力が0.4N/inch以上で0.9N/inch未満の場合は、外周部32の剥離力が0.9N/inch以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウエハ加工用テープに関し、特に半導体ウエハのダイシング・ピックアップに使用されるウエハ加工用テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハを個々の半導体チップに切断する際に、半導体ウエハを固定するためのダイシングテープと、切断された半導体チップを基板等に接着するためのダイボンディングフィルムとの双方の機能を併せもつ「ウエハ加工用テープ」が開発されている。ウエハ加工用テープは主に、剥離フィルムと、ダイシングテープとして機能する粘着テープと、ダイボンディングフィルムとして機能する接着剤層とから、構成されている。
【0003】
近年では、携帯機器向けのメモリ等の電子デバイス分野において、より一層の薄型化と高容量化が求められている。そのため、厚さ50μm以下の半導体チップを多段積層する実装技術に対する要請は年々高まっている。
このような要請に応えるべく、薄膜化を図ることができ、半導体チップの回路表面の凹凸を埋め込むことができるような柔軟性を有する上記ウエハ加工用テープが開発され、開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
ウエハ加工用テープは、一般的には、半導体ウエハのサイズよりも大きいがリングフレームには接触しない程度の形状で、接着剤層側から接着剤層と粘着剤層との界面部分までが打ち抜かれており、貼合の際にはウエハマウンターにより半導体ウエハとそれを支持するリングフレームに貼合され、リングフレーム上で円形にカットされる。
【0005】
最近では、上記作業性を考慮し、ウエハ加工用テープはプリカット加工がなされている。「プリカット加工」とは、粘着テープ(基材フィルム上に粘着剤層が形成されている。)に対し、あらかじめ打ち抜き加工を施すことをいい、詳しくは、基材フィルムおよび粘着剤層を、リングフレームに貼合可能でかつリングフレームからはみ出さない大きさで、円形に打ち抜き加工を施すことである。
プリカット加工を施したウエハ加工用テープを使用すれば、図5に示すとおり、ウエハマウンターによる半導体ウエハ(W)への貼合工程において、円形に打ち抜かれたウエハ加工用テープ(1)が剥離用くさび(101)によって剥離フィルム(2)からの剥離のきっかけを得た後、貼合ローラー(103)によって半導体ウエハ(W)およびリングフレーム(5)への貼合が実施され、リングフレーム上で粘着テープをカットする工程を省くことができ、更にはリングフレームへのダメージをなくすこともできる。
【0006】
その後は、半導体ウエハをダイシングして複数の半導体チップを作製し、粘着テープの基材フィルム側から放射線を照射するなどして粘着剤層と接着剤層との間の剥離強度(粘着力)を十分に低下させてから、粘着テープの基材フィルムをエキスパンドさせて半導体チップのピックアップを行う。「放射線」とは、紫外線のような光線または電子線などの電離性放射線をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−154356号公報
【特許文献2】特開2003−60127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のようなウエハマウンターによる半導体ウエハへの貼合工程において、このようなプリカット加工を施したウエハ加工用テープから剥離フィルムを剥離すると、ウエハ加工用テープの先端部分が剥離用くさびを通過した場合に、接着剤層の先端部分が粘着テープの粘着剤層から剥離してしまい、接着剤層が半導体ウエハに密着していない部分ができてしまうという不具合を生じる問題があった。
【0009】
この理由として、接着剤層と粘着テープの粘着剤層との間の剥離力(粘着力)が非常に低いことが挙げられる。
しかしながら、接着剤層と粘着剤層との間の剥離力を上昇させることは、その後の工程において、基材フィルムをエキスパンドさせ、半導体チップをピックアップする際に、ピックアップミスを発生させる原因になりうることが分かっている。
最近の傾向として、1つの半導体パッケージ内にてより多くの半導体チップを積層するため、半導体チップを薄肉化することが益々進んでおり、そのような薄肉の半導体チップのピックアップをミスなく行うためには、接着剤層と粘着剤層との間の剥離力がより低いものが求められている状況にあり、安易に剥離力を上昇させることは困難になっている。
【0010】
したがって、本発明の主な目的は、半導体ウエハへの貼合工程において、接着剤層が粘着テープの粘着剤層から剥離するのを防止することができるウエハ加工用テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
剥離フィルムと、
前記剥離フィルム上に部分的に形成された接着剤層と、
基材フィルム上に粘着剤層が形成された粘着テープであって、前記接着剤層を覆いかつ前記接着剤層の周囲で前記剥離フィルムに接するように形成された前記粘着テープとが、積層されたウエハ加工用テープにおいて、
前記接着剤層の外周部の前記粘着剤層との間の剥離力が、前記接着剤層の半導体ウエハが貼り合わせられる予定の貼合予定部の前記粘着剤層との間の剥離力よりも大きく、
前記貼合予定部の剥離力が0.01以上で0.4N/inch未満の場合は、前記外周部の剥離力が前記貼合予定部の30倍以上または0.9N/inch以上のどちらか小さい方であり、
前記貼合予定部の剥離力が0.4N/inch以上で0.9N/inch未満の場合は、前記外周部の剥離力が0.9N/inch以上であるウエハ加工用テープが提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、
剥離フィルムと、
前記剥離フィルム上に部分的に形成された接着剤層と、
基材フィルム上に粘着剤層が形成された粘着テープであって、前記接着剤層を覆いかつ前記接着剤層の周囲で前記剥離フィルムに接するように形成された前記粘着テープとが、積層されたウエハ加工用テープにおいて、
前記接着剤層の外周部の一部であって、半導体ウエハの貼合時に前記剥離フィルムとの剥離の起点となる起点部を含む部位の前記粘着剤層との間の剥離力が、前記接着剤層の半導体ウエハが貼り合わせられる予定の貼合予定部の前記粘着剤層との間の剥離力よりも大きく、
前記貼合予定部の剥離力が0.01以上で0.4N/inch未満の場合は、前記外周部の一部の剥離力が前記貼合予定部の30倍以上または0.9N/inch以上のどちらか小さい方であり、
前記貼合予定部の剥離力が0.4N/inch以上で0.9N/inch未満の場合は、前記外周部の一部の剥離力が0.9N/inch以上であるウエハ加工用テープが提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、
剥離フィルムと、
前記剥離フィルム上に部分的に形成された接着剤層と、
基材フィルム上に粘着剤層が形成された粘着テープであって、前記接着剤層を覆いかつ前記接着剤層の周囲で前記剥離フィルムに接するように形成された前記粘着テープとが、積層されたウエハ加工用テープにおいて、
前記接着剤層の外周部のうち、半導体ウエハの貼合時に剥離フィルムとの剥離の起点となる起点部の前記粘着剤層との間の剥離力が、前記接着剤層の半導体ウエハが貼り合わせられる予定の貼合予定部の前記粘着剤層との間の剥離力よりも大きく、
前記貼合予定部の剥離力が0.01以上で0.4N/inch未満の場合は、前記起点部の剥離力が前記貼合予定部の30倍以上または0.9N/inch以上のどちらか小さい方であり、
前記起点部の剥離力が0.4N/inch以上で0.9N/inch未満の場合は、前記外周部の剥離力が0.9N/inch以上であるウエハ加工用テープが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接着剤層の剥離フィルムとの剥離の起点となる部分の剥離力が、半導体ウエハの貼合予定部よりも大きいため、半導体ウエハへの貼合工程において、接着剤層が粘着テープの粘着剤層から剥離するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ウエハ加工用テープの概略構成を示す図面である。
【図2】剥離フィルム、接着剤層および粘着テープの概略的な積層構造を示す縦断面図である。
【図3】接着剤層の概略構成を示す平面図である。
【図4】ウエハ加工用テープを半導体ウエハおよびリングフレームに貼合した概略的な状態を示す縦断面図である。
【図5】ウエハ加工用テープを半導体ウエハおよびリングフレームに貼合する装置・方法を概略的に説明するための図面である。
【図6】図3の比較例の態様を示す平面図である。
【図7】実施例中のサンプルの剥離力測定方法を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0017】
[ウエハ加工用テープ(1)]
図1に示すとおり、ウエハ加工用テープ1は、芯材となるコア6にロール状に巻回されており、使用時においてコア6から繰り出される。
図2に示すとおり、ウエハ加工用テープ1は主に剥離フィルム2、接着剤層3および粘着テープ4から構成されている。
ウエハ加工用テープ1を用いた半導体ウエハ(W)への貼合工程においては、ウエハ加工用テープ1から剥離フィルム2が剥離され、露出した接着剤層3に半導体ウエハ(W)が貼合される。
【0018】
[剥離フィルム(2)]
図1に示すとおり、剥離フィルム2は、矩形の帯状に形成され、一方向が十分に長くなるように形成されている。剥離フィルム2は、製造時及び使用時にキャリアフィルムとしての役割を果たすものである。
剥離フィルム2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系、ポリエチレン系、その他、剥離処理がされたフィルム等周知のものを使用することができる。
【0019】
[粘着テープ(4)]
(1)構成
図1および図2に示すとおり、粘着テープ4は、接着剤層3を覆うと共に、接着剤層3の周囲全域で剥離フィルム2に接触可能となっている。
粘着テープ4は、ダイシング用のリングフレーム5(図4参照)の形状に対応するラベル部4aと、ラベル部4aの外周を囲むように形成された周辺部4bとを有している。粘着テープ4はウエハ加工用テープ1の使用前にプリカット加工され、周辺部4bが除去される(ラベル部4aが残る。)。
図2に示すとおり、粘着テープ4は基材フィルム10上に粘着剤層12が形成された構成を有している。
粘着テープ4としては、ウエハWをダイシングする際にはウエハWが剥離しないように粘着剤層12が十分な剥離力を有し、ダイシング後にチップをピックアップする際には容易に接着剤層3から剥離できるように粘着剤層12が低い剥離力を示すものであればよい。
【0020】
(2)基材フィルム10
基材フィルム10は通常、プラスチック、ゴムなどを好ましく用い、粘着剤層12が放射線重合成分を含む場合は、放射線の透過性の良いものを選択することが好ましい。
基材フィルム10として選択し得るポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のエンジニアリングプラスチック、ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテンもしくはペンテン系共重合体、ポリアミド−ポリオール共重合体等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
基材フィルム10はこれらの群から選ばれる2種以上の材料が混合されたものでもよく、これらが単層又は複層化されたものでもよい。
【0021】
(3)粘着剤層12
粘着剤層12に用いられる材料は、特に制限されるものでは無いが、放射線重合性成分を含有してなるのが好ましい。
放射線重合性成分としては、放射線照射によって三次元網状化しうるものであれば特に制限は無く、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、ペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、オリゴエステルアクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、イソシアネート化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ジアミン及びイソシアネート化合物、尿素メタクリレート化合物、側鎖にエチレン性不飽和基を有する放射線重合性共重合体が挙げられる。
他にも、放射線重合性成分として、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られるウレタンアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
これらの放射線重合性化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせても、使用することができる。
【0022】
[接着剤層(3)]
図1および図2に示すとおり、接着剤層3は剥離フィルム2と粘着テープ4との間に介在されている。接着剤層3は粘着テープ4の粘着剤層12と密着しており、チップのピックアップ時においてチップに付着した状態で粘着剤層12から剥離される。
接着剤層3に用いられる材料は、特に限定されるものでは無く、接着剤に使用される公知のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコンオリゴマー系等を使用することができる。
【0023】
図3に示すとおり、接着剤層3はウエハWの形状に応じた円形状を呈している。
接着剤層3は、ウエハWが貼り合わされる予定の部位(貼合予定部30)と、その外側の外周部32とに、区画される。
接着剤層3の外周部32の図3(a)中の上側が剥離フィルム2との剥離の起点部34となっている。
【0024】
図3(a)中斜線部に示すとおり、接着剤層3の外周部32はその全域にわたって粘着剤層12に対する剥離力が貼合予定部30より大きくなっている。
具体的には、
(i)貼合予定部30の粘着剤層12に対する剥離力が0.01以上で0.4N/inch未満の場合は、外周部32の粘着剤層12に対する剥離力が、貼合予定部30の粘着剤層12に対する剥離力の30倍以上または0.9N/inch以上のどちらか小さい方であり、
(ii)貼合予定部30の粘着剤層12に対する剥離力が0.4N/inch以上で0.9N/inch未満の場合は、外周部32の粘着剤層12に対する剥離力が0.9N/inch以上となっている。
【0025】
剥離力を増大させる手法としては下記(a)〜(e)の手法をとりうる。
上記(a)〜(e)の手法は単独で使用してもよいし、これらを組み合わせて使用してもよい(その組合せも適宜変更可能である。)。
(a)レーザー照射
粘着剤層3の外周部32に対しレーザーを照射する。
照射されるレーザーは一般的にレーザーマークで利用されるレーザー種類・波長であればどれでも良く、品質を損なわずに効果を発揮できる程度で種類・波長・照射時間を適宜調節してもよい。
(b)コロナ表面改質処理
接着剤層3の外周部32に対しコロナ表面改質処理を施す。
コロナ表面改質処理は一般的に表面改質処理で利用される方法であればどれでもよく、品質を損なわずに効果を発揮できる程度で種類・処理時間を適宜調節してもよい。
(c)加熱処理
接着剤層3の外周部32に対し加熱処理を施す。
加熱処理は、一般的に加熱により接着力が強固となるものであればどれでも良く、たとえば、熱線を照射することがあげられる。
(d)補強テープ貼付け
接着剤層3の外周部32(外縁部)に対し、接着剤層3と粘着テープ4の粘着剤層12との境界をはさむようにして別の粘着テープを貼り付け補強する。
補強用の粘着テープは、一般的に使われる粘着テープであればどれでも良い。
(e)接着剤による補強
接着剤層32の外周部32において、接着剤層3と粘着テープ4の粘着剤層12との間に接着剤を塗布する。
接着剤は、一般的に使われる接着剤であればどれでも良い。
【0026】
なお、図3(b)に示すとおり、接着剤層3の外周部32のうち、起点部34とその他の部位(36)とが貼合予定部30より粘着剤層12に対する剥離力が大きくなっていてもよいし、終局的には、図3(c)に示すとおり、起点部34だけが貼合予定部30より粘着剤層12に対する剥離力が大きくなってもよい。
この場合も、接着剤層3の起点部34やその他の部位36で剥離力を増大させる手法として、上記(a)〜(e)の手法をとりうるし、上記(a)〜(e)の手法は単独で使用してもよいし、これらを組み合わせて使用してもよい(その組合せも適宜変更可能である。)。
【0027】
[ウエハ加工用テープ(1)の使用方法]
ウエハ加工用テープ1を半導体ウエハWおよびリングフレーム5に貼りつける。
詳しくは、図5に示すとおり、ウエハ加工用テープ1をそのロール体から巻き取り、ウエハ加工用テープ1をローラ100により引き出す。
ウエハ加工用テープ1の引き出し経路には、剥離用くさび101が設けられており、剥離用くさび101の先端部を折り返し点として、剥離フィルム2のみが引き剥がされ、剥離フィルム2が巻き取りローラ100に巻き取られる。
剥離用くさび101の先端部の下方には、吸着ステージ102が設けられており、吸着ステージ102の上面には、半導体ウエハWおよびリングフレーム5が設けられている。
剥離用くさび101により剥離フィルム2が引き剥がされた接着剤層3および粘着テープ4は、半導体ウエハW上に導かれ、貼合ローラ103によってウエハWに貼合される。
【0028】
その後、接着剤層3および粘着テープ4を半導体ウエハWおよびリングフレーム5に貼りつけた状態で、半導体ウエハWをダイシングする。
その後、粘着テープ4に放射線照射等の硬化処理を施してダイシング後の半導体ウエハW(半導体チップ)をピックアップする。このとき、粘着テープ4は硬化処理によって剥離力が低下しているので、接着剤層3は粘着テープ4の粘着剤層12から容易に剥離し、半導体チップは裏面に接着剤層3が付着した状態でピックアップされる。
半導体チップの裏面に付着した接着剤層3は、その後、半導体チップをリードフレームやパッケージ基板、あるいは他の半導体チップに接着する際に、ダイボンディングフィルムとして機能する。
【実施例】
【0029】
(1)サンプルの作製
(1.1)基材フィルムの準備および粘着剤層の形成
基材フィルムとしてポリオレフィン系基材フィルムZ(厚さ100μm)を準備した。
他方で、放射線重合性炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーX(分子量70万Mw、Tg=−65℃)あるいはY(分子量20万Mw、Tg=−20℃)100部、ポリイソシアネート系硬化剤2〜18部に対し、光重合開始剤(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)1部を配合し、その溶液を上記基材フィルム上に乾燥膜厚が10μmとなるように塗布し、その後110℃で2分間乾燥させ、基材フィルム上に「粘着剤層A〜F」を形成した。
粘着剤層A〜Fのポリマーの種類(XまたはY)や、硬化剤,光重合開始剤の配合比は表1のとおりである。
その後、粘着剤層A〜Fを形成した基材フィルムに対してプリカット加工を施し、粘着テープを作製した(完成させた)。
【0030】
【表1】

【0031】
(1.2)接着剤層の形成
アクリル系共重合体100部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂100部、キシレンノボラック型フェノール樹脂10部に、エポキシ硬化剤として2−フェニルイミダゾール5部とキシレンジアミン0.5部を配合し、その溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布し、その後110℃で2分間乾燥させ、PETフィルム上に接着剤層を形成した。
【0032】
その後、接着剤層の外周部であって接着剤層の半導体ウエハの貼合予定部分を除く部位に対し、下記(1.2.1)〜(1.2.5)に記載のレーザー照射、コロナ表面改質処理、加熱処理、補強テープの貼付けまたは接着剤の塗布のいずれかの処理を施した。
処理を施した部位や処理方法は表2および表3に示すとおりとした。
なお、比較例1,2では、図6(a)に示すとおり、接着剤層の外周部に対しなんらの処理も施さなかった。
比較例3,5,7,8,10,12〜14では、図6(b)および図6(c)に示すとおり、接着剤層の外周部の一部であって接着剤層の剥離フィルムとの剥離の起点を除く部位(斜線部参照)に対し、上記いずれかの処理を施した。
【0033】
(1.2.1)レーザー照射
COレーザーマーカを使用し、接着剤層の表面に対しレーザー照射を行った。
(1.2.2)コロナ表面改質処理
コロナ表面改質処理機を使用し、接着剤層の表面に対しコロナ表面改質処理を行った。
(1.2.3)加熱処理
接着剤層の表面に対し熱線を照射し、加熱処理を行った。
(1.2.4)補強テープ貼付け
接着剤層の外縁部に対し、粘着テープと接着剤層との境界をはさむようにして補強用の粘着テープを貼り付けた。
(1.2.5)接着剤の塗布
接着剤層の外周部において接着剤層と粘着テープの粘着剤層との間に接着剤を塗布し、接着剤層と粘着テープとを接着剤により貼り付けた。
【0034】
(1.3)ウエハ加工用テープの形成
接着剤層に対しウエハサイズよりも大きい形状で打ち抜き加工を施し、この厚さ10μmの接着剤層を粘着テープの粘着剤層上に貼合し、ウエハ加工用テープを形成した(完成させた)。当該ウエハ加工用テープには、接着剤層の形成工程で使用したPET系のセパレーターが剥離フィルムが設けられている。
【0035】
(2)サンプルの評価
(2.1)剥離力測定方法
各サンプルについて、剥離フィルム(PET)を剥した後、剥離試験時の接着剤層の伸びを防止するため、接着剤層側に支持テープ(積水化学工業化株式会社製の梱包用オリエンスパットテープ、38mm幅)を平らな硝子板上で手動の貼合ローラー(2kg)を用いて貼合し、粘着テープ、接着剤層、支持テープの積層体とした。
その後、この積層体を、図7に示すように、接着剤層の剥離フィルム(PETフィルム)との剥離の起点となる部分を含み、外周部から中心に向かう方向に対し、長さ100m、幅25mmの短冊状に切り取り、試験片とした。
その後、各試験片について、図7の矢印方向、すなわち接着剤層の中心から外周部に向かう方向に向かって、剥離角度180度、剥離速度300mm/min(分)で、粘着剤層と接着剤層との間を引き剥がし、半導体ウエハの貼合予定部に相当する部分と、剥離の起点部に相当する部分の剥離力をそれぞれ求めた。測定結果を表2〜表6に示す。
【0036】
(2.2)貼合試験
実施例及び比較例の各サンプルに対し、厚さ50μm、直径200mmのシリコンウエハを、図5に示す装置・方法により、加熱温度70℃,貼合速度12mm/sで貼合した。
上記貼合作業を10回試行し、接着剤層が粘着テープから一部捲れ上がった状態でシリコンウエハに貼合されていないか否かを確認した。試験結果を表2〜表6に示す。
10回の貼合作業後において、すべての回で接着剤層が粘着テープから捲れ上がることなく粘着テープに付着していた場合を「○(貼合良好)」と、少なくとも1回は接着剤層が粘着テープから一部捲れ上がった場合を、「×(貼合不良)」とみなして評価した。
【0037】
(2.3)ピックアップ試験
実施例および比較例の各サンプルに対し厚み50μmのシリコンウエハを70℃×10秒で加熱貼合した後、10mm×10mmにダイシングした。
その後、粘着剤層に紫外線を空冷式高圧水銀灯(80W/cm、照射距離10cm)により200mJ/cm照射した後、シリコンウエハ中央部のチップ50個についてピックアップ装置(キヤノンマシナリー製、商品名:CAP−300II)によるピックアップ試験を行った。試験結果を表2〜表6に示す。
50個すべてのチップのピックアップに成功したものを「○」と、50個のチップのうち1個でもピックアップに失敗したものを「×」とみなして評価した。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
【表6】

【0043】
(3)まとめ
表2〜表6に示すとおり、実施例1〜12では貼合試験,ピックアップ試験のいずれにおいても結果が良好であり、接着剤層の外周部であって剥離フィルムとの剥離の起点を含む部分において半導体ウエハの貼合予定部位よりも剥離力を増大させれば、接着剤層が粘着テープの粘着剤層から剥離するのを防止することができ、ピックアップミスも誘引されないことがわかる。なお、比較例1は、半導体ウエハの貼合予定部位も剥離力が高いため、シリコンウエハへの貼合は良好に行うことが出来たが、ピックアップミスが多発した。
【符号の説明】
【0044】
1 ウエハ加工用テープ
2 剥離フィルム
3 接着剤層
4 粘着テープ
4a ラベル部
4b 周辺部
6 コア
10 基材フィルム
12 粘着剤層
100 巻き取りローラ
101 剥離用くさび
102 吸着ステージ
103 貼合ローラ
A 剥離フィルムの引き出し方向
B 剥離フィルムの引き剥がし方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離フィルムと、
前記剥離フィルム上に部分的に形成された接着剤層と、
基材フィルム上に粘着剤層が形成された粘着テープであって、前記接着剤層を覆いかつ前記接着剤層の周囲で前記剥離フィルムに接するように形成された前記粘着テープとが、積層されたウエハ加工用テープにおいて、
前記接着剤層の外周部の前記粘着剤層との間の剥離力が、前記接着剤層の半導体ウエハが貼り合わせられる予定の貼合予定部の前記粘着剤層との間の剥離力よりも大きく、
前記貼合予定部の剥離力が0.01以上で0.4N/inch未満の場合は、前記外周部の剥離力が前記貼合予定部の30倍以上または0.9N/inch以上のどちらか小さい方であり、
前記貼合予定部の剥離力が0.4N/inch以上で0.9N/inch未満の場合は、前記外周部の剥離力が0.9N/inch以上であるウエハ加工用テープ。
【請求項2】
剥離フィルムと、
前記剥離フィルム上に部分的に形成された接着剤層と、
基材フィルム上に粘着剤層が形成された粘着テープであって、前記接着剤層を覆いかつ前記接着剤層の周囲で前記剥離フィルムに接するように形成された前記粘着テープとが、積層されたウエハ加工用テープにおいて、
前記接着剤層の外周部の一部であって、半導体ウエハの貼合時に前記剥離フィルムとの剥離の起点となる起点部を含む部位の前記粘着剤層との間の剥離力が、前記接着剤層の半導体ウエハが貼り合わせられる予定の貼合予定部の前記粘着剤層との間の剥離力よりも大きく、
前記貼合予定部の剥離力が0.01以上で0.4N/inch未満の場合は、前記外周部の一部の剥離力が前記貼合予定部の30倍以上または0.9N/inch以上のどちらか小さい方であり、
前記貼合予定部の剥離力が0.4N/inch以上で0.9N/inch未満の場合は、前記外周部の一部の剥離力が0.9N/inch以上であるウエハ加工用テープ。
【請求項3】
剥離フィルムと、
前記剥離フィルム上に部分的に形成された接着剤層と、
基材フィルム上に粘着剤層が形成された粘着テープであって、前記接着剤層を覆いかつ前記接着剤層の周囲で前記剥離フィルムに接するように形成された前記粘着テープとが、積層されたウエハ加工用テープにおいて、
前記接着剤層の外周部のうち、半導体ウエハの貼合時に剥離フィルムとの剥離の起点となる起点部の前記粘着剤層との間の剥離力が、前記接着剤層の半導体ウエハが貼り合わせられる予定の貼合予定部の前記粘着剤層との間の剥離力よりも大きく、
前記貼合予定部の剥離力が0.01以上で0.4N/inch未満の場合は、前記起点部の剥離力が前記貼合予定部の30倍以上または0.9N/inch以上のどちらか小さい方であり、
前記起点部の剥離力が0.4N/inch以上で0.9N/inch未満の場合は、前記外周部の剥離力が0.9N/inch以上であるウエハ加工用テープ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のウエハ加工用テープにおいて、
前記外周部、前記外周部の一部または前記起点部が、レーザー照射されていることを特徴とするウエハ加工用テープ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のウエハ加工用テープにおいて、
前記外周部、前記外周部の一部または前記起点部が、コロナ表面改質処理されていることを特徴とするウエハ加工用テープ。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のウエハ加工用テープにおいて、
前記外周部、前記外周部の一部または前記起点部が、加熱処理されていることを特徴とするウエハ加工用テープ。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のウエハ加工用テープにおいて、
前記外周部、前記外周部の一部または前記起点部では、前記接着剤層と前記粘着剤層との間に補強テープが貼り付けられていることを特徴とするウエハ加工用テープ。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のウエハ加工用テープにおいて、
前記外周部、前記外周部の一部または前記起点部では、前記接着剤層と前記粘着剤層との間に接着剤が塗布されていることを特徴とするウエハ加工用テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−182268(P2012−182268A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43504(P2011−43504)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【特許番号】特許第4904432号(P4904432)
【特許公報発行日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】