説明

ウォーキーフォークリフト

【課題】軽負荷時のドライブ輪の軸重を必要以上に大きくしなくても、ドライブ輪のスリップを確実に防ぐことができるウォーキーフォークリフトを提供する。
【解決手段】本発明に係るウォーキーフォークリフト1は、車両本体3(4)に対して上下動可能に備えられたドライブ輪懸架機構(11)と、ドライブ輪懸架機構(11)に懸架されたドライブ輪7と、車両本体3(4)とドライブ輪懸架機構(11)の間に備えられ、ドライブ輪懸架機構(11)を下方に付勢するバネ部材15とに加えて、バネ部材15の一端と車両本体3(4)の間、またはバネ部材15の他端とドライブ輪懸架機構(11)の間に、荷重が増加するにつれて上下方向に伸び、かつ荷重が減少するにつれて上下方向に縮む伸縮部材14を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングハンドルを握った運転者が歩きながら操縦するウォーキーフォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のウォーキーフォークリフトとしては、図6に示すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。同図に示すように、従来のウォーキーフォークリフト100には、車両本体3と、車両本体3内のリフトシリンダ16が伸縮することにより上下動するバッテリ格納部5と、バッテリ格納部5の前方に取り付けられた左右一対のフォーク6と、車両本体3の上部に旋回可能に取り付けられたステアリングハンドル2とが備えられている。また、車両本体3の下部には、ドライブ輪懸架機構に懸架されたドライブ輪7と、その左右両側に配置された一対のキャスタ輪8とが備えられ、各フォーク6の先端部には、ロードホイール9が備えられている。ウォーキーフォークリフト100の自重およびフォーク6上に積まれた積荷の荷重は、ドライブ輪7、キャスタ輪8およびロードホイール9によって荷担される。
【0003】
上記ドライブ輪懸架機構は、リンク機構13により車両本体3のフレーム4に対して上下動可能に備えられたベアリング機構11と、該ベアリング機構11のインナレース11bに取り付けられた減速機構12とからなる。運転者によってステアリングハンドル2が旋回軸Rまわりに旋回操作されると、走行モータ10、ベアリング機構11のインナレース11bおよび減速機構12も旋回軸Rまわりに旋回し、ドライブ輪7が操舵される。
【0004】
また、このウォーキーフォークリフト100には、ドライブ輪懸架機構を構成するベアリング機構11のアウタレース11aとフレーム4との間に、ドライブ輪懸架機構(ドライブ輪7)を車両本体3に対して下方に付勢するバネ部材15が備えられている。これにより、ドライブ輪7の軸重を、積荷の荷重にかかわらず常に一定に保っている。
【0005】
図7に、積荷30の荷重と、各ホイール7、8、9の軸重との関係を示す。同図に示すように、キャスタ輪8およびロードホイール9の軸重は積荷30の荷重増加に伴って増加するが、ドライブ輪7の軸重は積荷30の荷重が変化しても400kgのままである。なお、ドライブ輪7の軸重は、バネ部材15のバネ定数により任意に設定することができる。また、バネ定数は、最大荷重(例えば、600kg。図7(C)参照)時においても、ドライブ輪7の軸重がキャスタ輪8の軸重(200kg)より十分大きくなるように設定される。荷重の増加によりキャスタ輪8の軸重がドライブ輪7の軸重に近づくと、ドライブ輪7がスリップして、走行モータ10によるアシスト力を路面にうまく伝達することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−4586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のウォーキーフォークリフト100によれば、ドライブ輪7の軸重を一定とすることで重量物を運搬する際の操舵力を低減することができるが、その反面、軽負荷時の軸重が必要以上に大きくなってしまうという問題があった。
【0008】
より詳しくは、上記ウォーキーフォークリフト100では、最大荷重時を基準にドライブ輪7の軸重が決定されているので、軽負荷時(例えば、図7(A)に示す積荷なしの状態)のドライブ輪7に必要以上に大きな軸重がかかっていた。そして、その結果、ドライブ輪7の早期磨耗、操舵力増加に伴う運転者の負担増加、ドライブ輪懸架機構周辺部材(4、11、12、13、15等)の早期劣化、走行抵抗増加に伴うバッテリ消費量の増加といった諸問題が発生していた。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、軽負荷時のドライブ輪の軸重を必要以上に大きくしなくても、ドライブ輪のスリップを確実に防ぐことができるウォーキーフォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るウォーキーフォークリフトは、車両本体に対して上下動可能に備えられたドライブ輪懸架機構と、ドライブ輪懸架機構に懸架され、ステアリングハンドル操作により操舵されるドライブ輪と、車両本体とドライブ輪懸架機構の間に備えられ、ドライブ輪懸架機構を車両本体に対して下方に付勢するバネ部材とを備えたウォーキーフォークリフトであって、バネ部材の一端と車両本体の間、またはバネ部材の他端とドライブ輪懸架機構の間に、荷重が増加するにつれて上下方向に伸び、かつ荷重が減少するにつれて上下方向に縮む伸縮部材を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成では、ドライブ輪懸架機構と車両本体との間にバネ部材と伸縮部材とが直列に接続されているので、ドライブ輪の軸重がバネ部材のバネ定数および伸縮部材の伸縮量の双方に依存する。また、この構成では、荷重が増加するにつれて伸縮部材が伸びる。したがって、この構成によれば、荷重の増加に伴ってドライブ輪の軸重を大きくすることができ、重負荷時のスリップを防ぎつつ、軽負荷時にドライブ輪の軸重が必要以上に大きくなるのを防ぐことができる。
【0012】
上記ウォーキーフォークリフトの伸縮部材は、例えば、油圧シリンダとすることができる。また、伸縮部材を油圧シリンダとした場合は、該油圧シリンダのボトム室にリフトシリンダに作動油を送る作動油送出ラインから分岐した分岐ラインを接続することにより、比較的簡素な構成で上記荷重に応じた伸縮を実現することができる。
【0013】
なお、ドライブ輪の軸重と荷重との関係は、油圧シリンダ(伸縮部材)およびリフトシリンダの油圧面積比を変えることにより、任意に設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軽負荷時のドライブ輪の軸重を必要以上に大きくしなくても、ドライブ輪のスリップを確実に防ぐことができるウォーキーフォークリフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るウォーキーフォークリフトであって、(A)は側面から見た部分断面模式図、(B)は正面から見た部分断面模式図である。
【図2】本発明に係るウォーキーフォークリフトの油圧回路図である。
【図3】本発明に係るウォーキーフォークリフトの、積荷の荷重と各ホイールの軸重との関係を示す模式図である。
【図4】本発明に係るウォーキーフォークリフトの、積荷の荷重と各ホイールの軸重との関係をまとめたグラフである。
【図5】本発明の変形例に係るウォーキーフォークリフトを正面から見た部分断面模式図である。
【図6】従来のウォーキーフォークリフトであって、(A)は側面から見た部分断面模式図、(B)は正面から見た部分断面模式図である。
【図7】従来のウォーキーフォークリフトの、積荷の荷重と各ホイールの軸重との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るウォーキーフォークリフトの好ましい実施形態について説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明に係るウォーキーフォークリフト1には、車両本体3と、車両本体3内のリフトシリンダ16が伸縮することにより上下動するバッテリ格納部5と、バッテリ格納部5の前方に取り付けられた左右一対のフォーク6と、車両本体3の上部に旋回可能に取り付けられたステアリングハンドル2とが備えられている。また、車両本体3の下部には、ドライブ輪懸架機構に懸架されたドライブ輪7と、その左右両側に配置された一対のキャスタ輪8とが備えられ、各フォーク6の先端部には、ロードホイール9が備えられている。ウォーキーフォークリフト1の自重およびフォーク6上に積まれた積荷の荷重は、ドライブ輪7、キャスタ輪8およびロードホイール9によって荷担される。
【0018】
上記ドライブ輪懸架機構は、リンク機構13により車両本体3のフレーム4に対して上下動可能に備えられたベアリング機構11と、該ベアリング機構11のインナレース11bに取り付けられた減速機構12とからなる。運転者によってステアリングハンドル2が旋回軸Rまわりに旋回操作されると、走行モータ10、ベアリング機構11のインナレース11bおよび減速機構12も旋回軸Rまわりに旋回し、ドライブ輪7が操舵される。
【0019】
このウォーキーフォークリフト1には、ドライブ輪懸架機構を構成するベアリング機構11のアウタレース11aとフレーム4との間に、軸重調整シリンダ14とバネ部材15とを直列に接続したものが備えられている。軸重調整シリンダ14は、本発明の伸縮部材に相当する油圧シリンダである。図1に示すように、軸重調整シリンダ14のボトム側はフレーム4に接続され、軸重調整シリンダ14の先端はバネ部材15の上端に接続され、バネ部材15の下端はベアリング機構11のアウタレース11aに接続されているが、これは単なる一例であって、種々の変形例が考えられる。例えば、図5に示すように、軸重調整シリンダ14のボトム側をベアリング機構11のアウタレース11aに接続し、軸重調整シリンダ14の先端をバネ部材15の下端に接続し、バネ部材15の上端をフレーム4に接続してもよい。
【0020】
バネ部材15は、そのバネ定数により定まる付勢力で、ドライブ輪懸架機構(ドライブ輪7)を車両本体3に対して下方に付勢する。
【0021】
また、軸重調整シリンダ14は、フォーク6上に積まれた積荷の荷重が増加するとその増加量に応じた長さだけ伸び、荷重が減少するとその減少量に応じた長さだけ縮むよう構成されている。
【0022】
上記軸重調整シリンダ14の伸縮動作を実現するために、本発明に係るウォーキーフォークリフト1は図2に示す油圧回路20を備えている。油圧回路20は、作動油を貯留するタンク21と、フォーク6を上昇させる際に、タンク21の作動油を作動油送出ライン25経由でリフトシリンダ16のボトム室に送る油圧ポンプ22と、フォーク6を下降させる際に、リフトシリンダ16の作動油をタンク21に戻す作動油回収ライン26およびフォーク下降制御弁24と、作動油の逆流を防ぐために作動油送出ライン25の途中に設けられたチェック弁23とを備えている。
【0023】
また、油圧回路20は、作動油送出ライン25から分岐した分岐ライン27を備えている。図2に示すように、分岐ライン27の始端は作動油送出ライン25(より詳しくは、チェック弁23とリフトシリンダ16の間)に接続され、分岐ライン27の終端は軸重調整シリンダ14のボトム室に接続されている。したがって、積荷の荷重が増加して作動油送出ライン25内の圧力が高まると、軸重調整シリンダ14のボトム室内の圧力も高まり、軸重調整シリンダ14は伸びる。一方、積荷の荷重が減少して作動油送出ライン25内の圧力が低くなると、軸重調整シリンダ14のボトム室内の圧力も低くなり、軸重調整シリンダ14は縮む。軸重調整シリンダ14が伸縮すると、その伸縮量に応じてバネ部材15による付勢力は増減し、ドライブ輪7の軸重が増減する。
【0024】
荷重の増減量と軸重調整シリンダ14の伸縮量(ドライブ輪7にかかる軸重の増減量)との関係は、リフトシリンダ16と軸重調整シリンダ14の油圧面積比を調整することにより、任意に設定することができる。
【0025】
図3は、フォーク6上に積まれた積荷30の荷重と、ウォーキーフォークリフト1の各ホイール7、8、9にかかる軸重との関係を示す図である。同図に示すように、積荷30の荷重が0kg(積荷なし)→400kg→600kgのように増加すると、軸重調整シリンダ14の長さも増加し、L0→L400→L600となる。そして、これにより、バネ部材15による付勢力が増加し、ドライブ輪7の軸重が250kg→300kg→400kgに増加する。
【0026】
積荷30の荷重が増加すると、それに応じてキャスタ輪8の荷重も増加するが、図3(A)〜(C)および図4に示すように、ドライブ輪7の荷重はキャスタ輪8の荷重よりも常に十分大きいので、ドライブ輪7がスリップすることはない。
【0027】
以上のように、本発明に係るウォーキーフォークリフト1では、ドライブ輪7の軸重が、バネ部材15のバネ定数と軸重調整シリンダ14の伸縮量の双方に依存している。また、軸重調整シリンダ14は、積荷30の荷重が増加するにつれて伸びるよう構成されている。したがって、本発明に係るウォーキーフォークリフト1によれば、荷重の増加に伴ってドライブ輪7の軸重を大きくすることができ、重負荷時のスリップを防ぎつつ、軽負荷時にドライブ輪7の軸重が必要以上に大きくなるのを防ぐことができる。
【0028】
なお、上記の構成は単なる一例であって、本発明は上記の構成に限定されない。
【0029】
例えば、上記ウォーキーフォークリフト1では、積荷30の荷重に応じて伸縮する伸縮部材として軸重調整シリンダ14(油圧シリンダ)を使用したが、同様の伸縮動作が可能な他の部材に変更することができる。
【0030】
また、軸重調整シリンダ14およびバネ部材15の取り付け態様には、種々の変形例が考えられる。要は、荷重が変化して軸重調整シリンダ14が伸縮すると、バネ部材15のいずれか一端の位置が上下動し、ドライブ輪懸架機構(ドライブ輪7)に作用するバネ部材15の下方への付勢力が変化するようになっていればよい。
【符号の説明】
【0031】
1 ウォーキーフォークリフト
2 ステアリングハンドル
3 車両本体
4 フレーム
5 バッテリ格納部
6 フォーク
7 ドライブ輪
8 キャスタ輪
9 ロードホイール
10 走行モータ
11 ベアリング機構
12 減速機構
13 リンク機構
14 軸重調整シリンダ
15 バネ部材
16 リフトシリンダ
20 油圧回路
21 タンク
22 油圧ポンプ
23 チェック弁
24 フォーク下降制御弁
25 作動油送出ライン
26 作動油回収ライン
27 分岐ライン
30 積荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に対して上下動可能に備えられたドライブ輪懸架機構と、前記ドライブ輪懸架機構に懸架され、ステアリングハンドル操作により操舵されるドライブ輪と、前記車両本体と前記ドライブ輪懸架機構の間に備えられ、前記ドライブ輪懸架機構を前記車両本体に対して下方に付勢するバネ部材とを備えたウォーキーフォークリフトであって、
前記バネ部材の一端と前記車両本体の間、または前記バネ部材の他端と前記ドライブ輪懸架機構の間に、荷重が増加するにつれて上下方向に伸び、かつ荷重が減少するにつれて上下方向に縮む伸縮部材を備えたことを特徴とするウォーキーフォークリフト。
【請求項2】
前記伸縮部材が、油圧シリンダであることを特徴とする請求項1に記載のウォーキーフォークリフト。
【請求項3】
前記油圧シリンダのボトム室に、リフトシリンダに作動油を送る作動油送出ラインから分岐した分岐ラインが接続されていることを特徴とする請求項2に記載のウォーキーフォークリフト。
【請求項4】
荷重が増加するにつれて路面にかかる前記ドライブ輪の軸重が増加するように、前記油圧シリンダおよび前記リフトシリンダの油圧面積比が設定されていることを特徴とする請求項3に記載のウォーキーフォークリフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−225126(P2011−225126A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97479(P2010−97479)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】