エアバッグ用織物及びその製造方法
【課題】エアバッグ用織物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明はエアバッグ用織物に関し、エアバッグ用原糸として、繊維の断面が扁平な形態のポリエステル繊維を使用することにより、エアバッグの膨張時に空気遮断の効果が非常に優れており、織物の厚さが円形断面の原糸に比べて薄くて、表面屈曲性及び空隙率も低く、コーティング織物におけるコーティング樹脂の使用量を減少させて、製品の軽量化が可能であり、モジュールシステムで収納性及びフォールディング性に優れたエアバッグ用織物及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明はエアバッグ用織物に関し、エアバッグ用原糸として、繊維の断面が扁平な形態のポリエステル繊維を使用することにより、エアバッグの膨張時に空気遮断の効果が非常に優れており、織物の厚さが円形断面の原糸に比べて薄くて、表面屈曲性及び空隙率も低く、コーティング織物におけるコーティング樹脂の使用量を減少させて、製品の軽量化が可能であり、モジュールシステムで収納性及びフォールディング性に優れたエアバッグ用織物及びその製造方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ用織物及びその製造方法に関し、より詳しくは、ポリエステル繊維を含むエアバッグ用織物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エアバッグ(air bag)とは、走行中の車両が約40km/h以上の速度で正面衝突時、車両に加えられる衝突衝撃を衝撃感知センサで感知した後、火薬を爆発させて、エアバッグクッション内部にガスを供給して膨張させることにより、運転者及び乗客を保護する装置をいう。
エアバッグ用織物として要求される項目は、衝突時に円滑に展開されるための低通気性、エアバッグ自体の損傷及び破裂を防止するための高強力、高耐熱性、及び乗客に加えられる衝撃を軽減させるための柔軟性などがある。
【0003】
特に、自動車が転覆して回転する場合、運転者や乗客が自動車のガラス窓や周辺の構造物によってケガするのを防止する目的で、事故時にエアバッグが広がるようになるが、この時、上記エアバッグが安全に乗客を保護するためには、少なくとも一定時間の間にエアバッグが膨らんだ状態を保持しなければならないので、このためにはエアバッグ織物の空気遮断効果が非常に重要である。
【0004】
しかし、乗客の安全のために優れた空気遮断の効果を維持し、エアバッグが受ける衝撃に十分に耐えると同時に、自動車内の厳しい環境下でも十分な信頼性を有して使用できるエアバッグ用織物は、提案されていない状況である。
従来は、ナイロン66などのポリアミド繊維がエアバッグ用原糸の材料として使用されたことがある。しかし、ナイロン66は耐衝撃性が優れているが、ポリエステル繊維に比べて耐湿熱性、耐光性の側面で劣り、かつ原料費用も高い。
【0005】
一方、日本特開平04−214437号には、このような欠点が軽減されるポリエステル繊維の使用が提案されているが、エアバッグとして優れたフォールディング性及び十分な耐衝撃性を有する織物ではないという問題点がある。
したがって、エアバッグ用織物として使用するのに適するように、優れた空気遮断の効果を維持し、乗客に加えられる衝撃を減らすための柔軟性、及び優れた機械的強度を有する織物の材料の開発に対する研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、平滑性に優れていて、収縮応力及び収縮率が改善された均一な構造を有する扁平な形態のポリエステル繊維を使用して、優れたフォールディング性及び柔軟性と共に、エアバッグの膨張時に空気遮断の効果が優れたエアバッグ用織物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記エアバッグ用織物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、繊維断面の扁平度が1.3乃至3.0であり、前記断面の最長軸両端点をW1及びW2と定義し、前記最長軸の中央点Oから垂直方向への最短軸両端点をD1及びD2と定義し、前記W1とD1とを連結する斜線をL1、D1とW2とを連結する斜線をL2、W1とD2とを連結する斜線をL3、W2とD2とを連結する斜線をL4と定義し、L1、L2、L3及びL4から断面の外側に最も遠い周縁までの距離をそれぞれR1、R2、R3及びR4と定義し、前記L1、L2、L3及びL4から中央点Oまでの距離をそれぞれH1、H2、H3、及びH4と定義すると、全体フィラメントのR1乃至R4の変動係数(CV%)が20%以下であるポリエステル繊維を含むエアバッグ用織物を提供する。
【0008】
本発明は、また、扁平度が1.3乃至3.0であり、150℃での収縮応力(@0.1g/d、2.5℃/sec)が0.005乃至0.1g/dであり、200℃での収縮応力(@0.1g/d、2.5℃/sec)が0.005乃至0.1g/dであり、収縮率(@190℃、15分、0.01g/d)が1.5%乃至10.0%であるエアバッグ用織物を提供する。
【0009】
本発明は、また、ポリエステル固体重合チップをスリット形態の口金を通じて溶融紡糸し、延伸して、断面の扁平度が1.3乃至3.0であるポリエステル繊維を製造する段階と、前記ポリエステル繊維を利用してエアバッグ用生地を製織する段階と、前記製織されたエアバッグ用生地を精練する段階と、前記精練された織物をテンダリングする段階とを含むエアバッグ用織物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、扁平な形態の断面を有するポリエステルを使用することにより、エアバッグの膨張時の空気気密性に優れて、車両用エアバッグとして効果的な乗客保護機能を発揮することができる。また、織物の厚さが薄くて軽く、モジュールシステムで収納性及びフォールディング性に優れており、向上した柔軟性によってエアバッグの膨張時に人体に対する衝撃を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のエアバッグ用織物に使用されるポリエステル繊維の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明のエアバッグ用織物に使用されるポリエステル繊維の製造工程を模式的に示した工程図である。
【図3】本発明の紡糸に使用された口金の一例を模式的に示した平面図である。
【図4】使用された口金の断面図であって、口金のキャピラリーを示した模式図である。
【図5】本発明の紡糸に使用された紡糸パックの一例を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明の紡糸に使用された分散板の一例を示した底面図である。
【図7】本発明の紡糸に使用された分散板の一例を示した断面図である。
【図8】集束エアーを原糸の走行方向に対して垂直方向に付与した集束機を示した模式図である。
【図9】集束エアーを原糸の走行方向に対して斜線方向に付与した集束機を示した模式図である。
【図10】第2集速機及び上記アフターオイル付与装置と共に使用することを示した模式的な工程図である。
【図11】本発明の実施例1によって製造された扁平断面原糸の断面を示した光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明において、エアバッグ用織物とは、自動車用エアバッグの製造に使用される織物または不織布などをいい、一般的なエアバッグ用織物としては、レピア織機で製織されたナイロン66またはナイロン6からなる平織物や不織布を使用しているが、本発明ではポリエステルフィラメント糸を使用することを特徴とする。
【0013】
特に、本発明は、扁平な形態の断面を有するポリエステル繊維を使用することで、円形断面の繊維を使用する場合に比べて織物の厚さが薄くてフォールディング性に優れているので、収納性を向上させることができ、表面屈曲性及び空隙率も低いので、優れたコーティング性能を確保することができる。また、エアバッグが膨張する場合、空気流出現象を最大限抑制できるエアバッグ用織物及びこれを製造する方法に関するものである。
【0014】
本発明のエアバッグ(airbag)用織物は、ポリエステルフィラメント糸を使用して、ナイロン66やナイロン6を使用した織物に比べ、形態安定性に優れており、長期間放置しても通気時の変化が少ない特徴を有する。また、ポリエステルポリマーが高分子環中に水素結合を有しないので、ポリエステルで製造された織物は柔軟性及びフォールディング性に優れていて、エアバッグモジュールでの収納性及び膨張時に人体に対する低衝撃性に優れた特徴を有する。
【0015】
本発明のエアバッグ用織物は、米国材料試験協会規格(ASTM D 5034−GRAB法)で測定した引張強度が190乃至280kgf/inch、好ましくは220乃至270kgf/inch程度の範囲を有する。特に、上記引張強度は49×49コーティング織物に対して測定した値とすることができる。上記引張強度の場合、エアバッグの展開時に十分な機械的物性及び優れた形態安定性を確保するための側面で、常温引張強度は190kgf/inch以上とならなければならず、エイジング(aging:cycle、heat、humidity)後の引張強度は160kgf/inch以上とならなければならない。
【0016】
また、エアバッグ用織物は、高温−高圧のガスによって急速に膨張するため、優れた引裂強度の水準が要求されるが、上記エアバッグ用織物の破裂強度を示す引裂強度を米国材料試験協会規格(ASTM D 2261−TONGUE)方法で測定した時、23乃至50kgf、好ましくは28乃至45kgfの値となり得る。ここで、織物の引裂強度が23kgf未満であれば、エアバッグの展開時にエアバッグの破裂が発生することにより、エアバッグ機能に大きな危険を招く可能性もある。
【0017】
本発明のエアバッグ用織物は、上述のように、扁平な形態の断面を有するポリエステル繊維を使用することで、円形断面の繊維を使用する場合に比べて織物の厚さが薄いので、フォールディング性に優れていて、収納性を向上させることができる。特に、上記エアバッグ用織物の厚さ(T)は、既存の円形断面繊維を使用した織物の厚さ(t)に比べ、好ましくは95%以下、好ましくは93%以下、または70%乃至93%とすることができる。このように、本発明のエアバッグ用織物は、その厚さが円形断面の原糸を使用した場合の織物の厚さに比べ、薄くて、表面屈曲性及び空隙率も低いので、コーティング織物においてコーティング樹脂の使用量を減少させ、製品の軽量化が可能であり、モジュールシステムで収納性及びフォールディング性に優れた特徴を有する。
【0018】
本発明のエアバッグ用織物は、米国材料試験協会規格(ASTM D 737法)を利用して、125Paの気圧差で測定した空気透過度が0乃至10.0cfmであり得るが、空気透過度が5cfm以上となる場合には、エアバッグ用織物の気密性を維持する側面では好ましくないこともある。
本発明におけるポリエステル繊維は、従来の産業用ポリエステル繊維の製造方法と比較して見れば、口金のキャピラリー(Capillary)構造をスリット形に採択して、原糸の断面の形態を円形でなく扁平に形成させることにより、製織時に織物の厚さを減らし、表面屈曲性及び空隙率を低くすることができる。
【0019】
また、本発明は、上述したように、 扁平な断面を有するポリエステル繊維を使用して、エアバッグ用原糸の形態的特性または収縮応力及び収縮率を特定の範囲に制御することにより、エアバッグ用織物に適用する時に、形態安定性を最適化し、収縮異常のような問題点を解決することができる。
図1は、本発明のエアバッグ用織物に使用されるポリエステル繊維の一例を示す断面模式図である。図1に示したように、上記ポリエステル繊維は長軸の長さ(W1〜W2)/短軸の長さ(D1〜D2)と定義される扁平度が1.3乃至3.0であるのが好ましい。
【0020】
また、上記図1において、繊維断面の最長軸両端点をW1及びW2と定義し、前記最長軸の中央点Oから垂直方向への最短軸両端点をD1及びD2と定義し、前記W1とD1とを連結する斜線をL1、D1とW2とを連結する斜線をL2、W1とD2とを連結する斜線をL3、W2とD2とを連結する斜線をL4と定義し、L1、L2、L3及びL4から断面の外側に最も遠い周縁までの距離をそれぞれR1、R2、R3、及びR4と定義し、前記L1、L2、L3及びL4から中央点Oまでの距離をそれぞれH1、H2、H3、及びH4と定義すると、R1乃至R4の変動係数(CV%)が20%以下であるのが好ましい。
【0021】
上記変動係数(CV%)が20%を超える場合には、エアバッグ用原糸としてポリエステル繊維の物性及び断面形態が不均一になり、製織工程で糸切りや部分的な形態の変形、または、歪み現象が起こるなど、工程性及び品質に影響を与えることがある。
また、上記断面において、R1/H1、R2/H2、R3/H3、及びR4/H4と定義される長さ比の平均値が0.2乃至0.9であるのが好ましい。上記長さ比の平均値が大きいほど原糸の肩部分が厚い形態を有し、上記長さ比の平均値が小さいほど原糸の肩部分が薄くなって、楕円形または菱形の断面を有するようになる。
【0022】
本発明の扁平断面の原糸が安定した物性を有するためには、上記R1/H1、R2/H2、R3/H3、及びR4/H4の変動係数(CV%)が20%以下であるのが好ましい。言い換えると、上記R1/H1、R2/H2、R3/H3、及びR4/H4の変動係数値が20%を超えれば、断面の形状が歪んで物性の低下及び織物の製造時に平滑性の低下をもたらす。
【0023】
また、本発明において、上記ポリエステル繊維は、一般的なコーティング織物のラミネートコーティング温度に相当する150℃での収縮応力が0.005乃至0.1g/dであるのが好ましく、一般的なコーティング織物のゾルコーティング温度に相当する200℃での収縮応力が0.005乃至0.1g/dであるのが好ましい。即ち、上記150℃と200℃での収縮応力がそれぞれ0.005g/d以上である場合にのみ、コーティング工程中の熱による織物が垂れる現象を防ぐことができ、0.1g/d以下である場合にのみ、コーティング工程を経て常温で冷却される時に弛緩応力を緩和させることができる。
【0024】
また、上記ポリエステル繊維は、コーティング工程中の熱処理時に一定の水準以上の張力を与えて製織形態を維持し、結果的にエアバッグ用原糸として形態変形を防止するために、190℃での収縮率が1.5%以上であるのが好ましく、熱的形態安定性の確保のために190℃での収縮率が10.0%以下であるのが好ましく、7.0%以下であるのがさらに好ましい。
【0025】
本発明で定義する上記収縮応力は0.1g/dの固定荷重下で測定した値を基準とし、収縮率は0.01g/dの固定荷重下で測定した値を基準とする。
上記ポリエステル繊維は、通常のポリエステルの中でもポリエチレンテレフタレート(PET)原糸であるのが好ましく、さらに好ましくは、PETを90モル%以上含むPET原糸である。
【0026】
上記ポリエステル繊維は、0.005g/d以上の収縮応力を有するために、原糸の固有粘度が0.7dl/g以上であるのが好ましく、形態安定性を維持し、高強力を確保するためには、原糸の固有粘度が1.2dl/g以下、好ましくは1.0以下である。
また、本発明の上記ポリエステル繊維は、製造工程において紡糸工程の前集束機にポリエステル繊維を通過時、集束エアーを付与することにより、次の物性を発現することができる。
【0027】
つまり、前集束機に所定範囲の風向きを有するエアーを付与することにより、上記ポリエステル繊維は単糸繊度が2.1de乃至11.0deであるのが好ましい。また、熱的形態安定性維持のために結晶化度が35%以上であるのが好ましく、35%乃至52%であるのがさらに好ましい。また、上記ポリエステル繊維は産業用原糸として必要な物理的特性を確保するために、引張強度が7.0乃至10.0g/dであり、切断伸度が12%乃至30%であるのが好ましい。
【0028】
本発明のエアバッグ用織物は、上記のような物性を有するポリエステル繊維を使用して、製織及び樹脂コーティング時に後工程収率が高く、織物の厚さを低くしながら、形態安定性に優れている。
また、本発明のエアバッグ用織物は、表面にコーティングまたはラミネートされたシリコン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂などの1種以上からなるコーティング層をさらに含むのが好ましく、コーティング樹脂の種類は上述した物質に限定されない。上記樹脂コーティング層は、ナイフコート法、ドクターブレード法、または噴霧コーティング法で適用できるが、これも上述した方法に限定されない。
【0029】
上記ゴム成分コーティング層の単位面積当たりコーティング量は20乃至200g/m2、好ましくは20乃至100g/m2となるように使用できる。特に、OPW(One PieceWoven)タイプのサイドカーテンエアバッグ用織物の場合は、上記コーティング量が30g/m2乃至95g/m2が好ましく、エアバッグ用平織織物の場合は、上記コーティング量が20g/m2乃至50g/m2水準が好ましい。
【0030】
本発明のエアバッグ用織物に含まれる扁平断面糸は、一般的な円形断面糸に比べ、パッキング特性に優れており、厚さが薄く、織物の製造時に原糸がカバーする面積が大きいため、これから製造される本発明のエアバッグ用織物は、その厚さが薄く、空隙が少なく、表面照度が低くて、少量のコーティング液でも優れたコーティング特性を現わすことができ、コーティング時に不良率が低い長所がある。そのために、本発明のエアバッグ用織物は、空気膨張時に空気流出現象を最大限抑制することができる特徴を有する。
【0031】
本発明において、織物の製織形態は特定形態に限定されず、平織タイプとOPW(One Piece Woven)タイプの製織形態いずれも好ましい。
本発明のエアバッグ用織物は、上記ポリエステル繊維を緯糸及び縦糸で利用して、ビーミング(beaming)、製織、精練、及びテンター工程を経て製造することができる。上記織物は通常の製織機を使用して製造でき、ある特定織機の使用に限られない。但し、平織形態の織物は、レピア織機(Rapier Loom)やエアージェット織機(Air Jet Loom)またはウォータージェット織機(Water Jet Loom)などを使用して製造でき、OPW形態の織物は、ジャカード織機(Jacquard Loom)を使用して製造できる。
【0032】
また、本発明において、エアバッグ用織物に使用される上記の扁平断面を有するポリエステル繊維は、固有粘度が0.7乃至1.2dl/gのポリエステル固体重合チップを270乃至310℃の紡糸温度で溶融して、スリット形態の口金キャピラリーを通じて紡糸することによって製造できる。上記チップの固有粘度は0.7dl/g以上である場合にのみ、好ましい収縮応力及び収縮率を有する原糸が製造でき、1.2dl/g以下である場合にのみ、チップの溶融温度の上昇による分子鎖切断及び紡糸パックにおける圧力増加を防止できる。
【0033】
図2は、上記ポリエステル繊維製造工程を模式的に示す工程図である。図2に示したように、本発明のエアバッグ用原糸としてのポリエステル繊維の製造方式は、口金を通じて紡糸した溶融高分子を急冷空気(quenching−air)で冷却させ、油剤ロール120(またはオイルジェット)を利用して未延伸糸に油剤を付与し、前集束機(pre−interlacer)130を使用して一定の空気圧力で未延伸糸に付与された油剤を原糸の表面に均一に分散させる。以降、多段の延伸装置(141〜146)を通じて延伸過程を経た後、最終的に第2集速機(2nd Interlacer)150で一定の圧力で原糸をインターミングル(intermingle)させ、巻取機160で巻取って原糸を生産している。
【0034】
図3は、上記紡糸工程に使用された口金110の一例を模式的に示す平面図である。図3を参照すると、上記ポリエステル繊維の製造時に紡糸口金の上部には、複数の紡糸口金キャピラリー111が形成されている。上記キャピラリーの配列形態は特に制限されず、好ましくは三角配列形態またはダイヤモンド型配列形態であるか、同一の円周(pitch of center distance)内にキャピラリーが配列された環状配列形態である。
【0035】
図4は、使用された口金110の断面図であって、口金のキャピラリー111を描写してものである。図4に示したように、液状ポリマーを最終的に吐出するキャピラリーの構造をスリット(slit)形態にすることにより、吐出された原糸の断面形態が円形でなく平面形態を有するようにする。
特に、図4のスリット形態において、スリットの長軸の長さ(W)と短軸の長さ(D)の比を変更させることによって原糸の扁平度を調整することができるが、ここで、「W/D」の比を口金の扁平度といい、この値が1.2以上、さらに好ましくは2.0以上である場合にのみ、平面断面の特性が現われ、延伸性及び高強力特性を確保するためには、上記扁平度が10以下であるのが好ましい。
【0036】
溶融状態の高分子を紡糸して原糸を製造する紡糸パックは、その構造が特に限定されないが、図5のような構成を有する紡糸パックを使用するのが好ましい。図5のような構成の本発明に適用された紡糸パック装置は、高分子導入孔42を備えるブロック41の下部にボディー43を結合し、ボディー43の内部には高分子導入孔42と連通する状態で分散面44’を有する分散板44、レンズ環45、スペーサ46、メタル不織布からなるフィルター47、分配板48、及び口金49が順次に積層設置され、図6及び図7に示したように、上記分散板44に少なくとも1つ以上の従に貫通する高分子流通孔40が形成される。
【0037】
上記分散板44の底面44’’とフィルター47の間の間隔は、4乃至44mmに維持することによって、分散板44の外縁部側の高分子流動通路50を通過する高分子溶融物の滞留時間と、分散板44の高分子流通孔40を通過する高分子溶融物の滞留時間とを同一に維持して、全体的な滞留時間を減少させることができる。また、上記分散板44の底面44’’の形態は特に限定されず、全体的に平面またはゆるやか円錘形であるのが好ましい。
【0038】
前記分散板は、中心に高分子流通孔が形成され、連続して隣接する流通孔の間の放射状間隔(PCD:pitch of Center Diameter)が5乃至40mmであり、分散板の最外郭を直径とする円の面積を基準にして1乃至35%の面積比に該当する流通孔が形成されているのが好ましい。隣接する流通孔の間の放射状間隔が5mm未満である場合には、製作が困難であり、40mmを超える場合には、高分子の分散性が低下する。また、全体分散板の円の面積に対する流通孔の総面積が1%未満である場合には、分散性の低下及び高分子紡糸パックの圧力の上昇を誘発して適用が困難であり、35%を超える場合には、高分子の紡糸パック内の分散効果が低下する。
【0039】
高分子導入孔42に導入された高分子溶融物が本発明の分散板44の円錐状の分散面44’の傾斜角によって自然に流れて、一次的に分散板を縦に貫通する高分子流通孔40に一部が流入し、残り一部は外縁部側の高分子流動通路50に流入して、順次にフィルター47、分配板48、及び口金49を通じて外部に吐出されて繊維を形成する。
本発明に使用された紡糸パック装置では、分散板44での高分子溶融物の流動時に、高分子流動通路50が分散面44’の中央頂点から最も離れた距離に位置する代わりに、分散面44’の傾斜角度によって分散面44’の端部から分散板44の底面44’’までの長さが最も短い。
【0040】
反面、高分子流通孔40は、上記高分子流動通路50に比べて分散板44の中央から近い代わりに、高分子流通孔40を通過して分散板の底面44’’に到達する距離が長い。
したがって、高分子流動通路50を通じて分配板48に到達する高分子溶融物の滞留時間と、高分子流通孔40を通じて分配板48に到達する高分子溶融物の滞留時間が均一になり、全体的な滞留時間が減少できる。
【0041】
また、本発明に適用された紡糸パック装置において、フィルター47は、金属粉末でなく焼結金属の不織布フィルターを使用するので、紡糸時間の経過による原糸の物性変動を防止することができる。
本発明の分散板44は、また、必要に応じて外周縁の周りに形成された少なくとも1つ以上の凹入溝を具備でき、上記前記凹入溝は、等間隔で配列されるのが好ましい。上記凹入溝は、高分子溶融物の流出をより容易にする。
【0042】
このような構造の紡糸パックを適用することによって、紡糸パック内の高分子の流動を均一にすることができるだけでなく、口金の背面圧を高めて、高圧紡糸による放射性を向上させることができる。
口金から吐出されたポリマーは、紡糸張力を低くして、熱履歴を緩和させるために、Hood−Heater(H/H)及び断熱板の組み合わせによって構成された遅延冷却区間を経て急冷(Quenching)される。この時、上記フードヒーター(Hood−Heater: H/H)の温度は200乃至350℃であるのが好ましくて、長さは100乃至400mmであるのが好ましく、断熱板の長さは70乃至400mmであるのが好ましい。上記吐出されたポリマーが上記遅延冷却区間に滞留する時間は0.01乃至0.1秒であるのが好ましく、0.02乃至0.08秒であるのがさらに好ましい。
【0043】
前記フードヒーターの温度が200℃未満であり、長さが100mm未満である場合には、延伸性が低下して、製糸が困難であり、温度が350℃を超えて、長さが400mmを超える場合には、ポリエステルの分解を誘発して、原糸の強力が低下し、溶融ポリエステルの弾性が低下して、扁平な形態の安定化が低下する。また、上記断熱板の長さが70mm未満である場合には、延伸性が低下して、毛羽の発生を誘発し、400mmを超える場合には、固化点が過度に低くなって、紡糸張力の急激な減少によって巻取りが難しくなる。上記遅延冷却区間での滞留時間が0.01秒未満である場合には、遅延急冷の役割を果たすのが難しく、未延伸糸の複屈折率が高くて、延伸性を確保するのが難しく、0.1秒を超える場合には、口金から吐出された未延伸糸の張力の低下によって糸乱及び渦流現象が発生し、毛羽の発生及び切糸などによって操業が困難で、溶融ポリエステルの過度な弾性の低下によって要求される繊維の断面の形態を得るのが難しい。
【0044】
上記急冷過程を経たポリエステル繊維を油剤ロールに通過させて紡糸油剤を付与する。上記紡糸油剤は、通常のポリエステル繊維の製造工程に使用されるものであれば、いずれのものでも使用することができ、好ましくは、エチレンオキシド/プロピレンオキシド付加ジオールエステル、エチレンオキシド付加ジオールエステル、グリセリルトリエステル、トリメチルプロパントリエステル、またはその他のエチレンオキシド付加物から選択される1種または2種以上の混合物である紡糸油剤を使用することができ、上記紡糸油剤は、帯電防止剤などをさらに含むことができる。但し、本発明では、紡糸油剤の種類が上記例に限定されることではない。
【0045】
上記紡糸油剤が付与されたポリエステル繊維は、前集束機(pre−interlacer)を通過した後、延伸装置を経て延伸され、上記延伸条件は、通常のポリエステル繊維の延伸方法によって行うことができる。
この時、本発明の紡糸工程では、前集束機にポリエステル繊維をそのまま通過させたり、または、選択的に前集束機に特定の範囲の風向きの集束エアー(interlacing air)を付与することができる。
【0046】
前集束機に集束エアーが付与される場合、後述される延伸以降の過程を経て、上記のような物性を有するポリエステル繊維を提供し、特に、結晶化度が35%乃至52%であり、引張強度が7.0乃至10.0g/dであり、切断伸度が12%乃至30%である物性を有するポリエステル繊維を提供することができるようにする。
上記前集束機に集束エアーを付与する方法は、図8のように、上記前集束機で原糸の走行方向に対して垂直方向に集束エアーを付与したり、または、図9のように、集束エアーを原糸の走行方向に対して斜線方向に付与することができる。しかし、未延伸糸の断面の形態が扁平なので、エアーによる未延伸糸の渦流現象を防止するために、図9のように、繊維の進行方向に対して斜線方向にエアーを付与するのがさらに好ましく、上記集束エアーの風向きは、前記繊維の進行方向に垂直な面から0゜乃至80゜の角度であるのが最も好ましい。
【0047】
また、上記集束エアーの風圧は、未延伸糸に付与された油剤を原糸に均一に移動(migration)させると同時に、未燃糸を並行に集めることによって延伸性を向上させるために、0.1kg/cm2以上であるのが好ましく、未延伸糸の過度な集束による延伸性の低下を防止するために、1.5kg/cm2以下であるのが好ましい。
上記紡糸工程において、上記紡糸速度が400m/min未満である場合には、糸乱の発生によって原糸の品質が低下し、900m/minを超える場合には、毛羽の発生などによって操業性が低下する。
【0048】
また、上記紡糸工程の延伸比が4.5倍未満である場合には、要求される高強力特性を現わすのが難しく、6.2倍を超える場合には、毛羽の発生などによって原糸の品質が低下するので、延伸比4.5乃至6.2倍であるのが好ましい。特に、本発明の延伸工程は、モノフィラメント(Mono−Filament)間の均一な延伸性の確保のために、図2の141と142の間で発生する予備延伸、142と143の間で発生する1段延伸、143と144の間で発生する2段延伸からなり、上記予備延伸の延伸比は1.01乃至1.1であるのが好ましく、1段延伸の延伸比は全体延伸比に対して60%乃至85%であるのが好ましい。
【0049】
上記延伸装置144で行われる熱処理温度が215℃未満である場合には、収縮率の上昇によって形態安定性が低下し、250℃を超える場合には、切糸及びゴデットローラ上にタールの発生が頻繁で操業性が低下するので、熱処理温度が215乃至250℃であるのが好ましく、220乃至245℃であるのがさらに好ましい。
上記多段延伸装置144乃至146で行われる延伸工程の弛緩率が4%未満の場合には、過度な張力によって原糸の断面が変形され、13%を超える場合には、ゴデットローラ上で過度な糸乱の発生によって操業が難しいので、4%乃至13%であるのが好ましく、弛緩温度は150乃至245℃であるのが好ましい。
【0050】
また、本発明は、上記延伸されたポリエステル繊維に対して、再び第2集速機(2nd Interlacer)を適用して原糸を集束させる。
上記第2集速機(2nd Interlacer)は、空気圧力を利用してポリエステル繊維にインターミングル(intermingle)を付与する。上記第2集速機(2nd Interlacer)は、従来の集束機の空気圧力の低下による集束性の低下を改善して、原糸の長さ方向(原糸の走行方向)に対して均一なインターミングルを付与する役割を果たす。
【0051】
上記第2集速機(2nd Interlacer)は、巻取機の上部または延伸装置のゴデットローラ(Godet−roller)(図2の141乃至146に該当)の間に単独あるいは混用されて位置し、前記第2集速機(2nd Interlacer)に使用される集束空気は、図9のように、繊維の進行方向に対して斜線方向に付与されなければならない。上記集束エアーの風向きは、上記繊維の進行方向に垂直な面から20°乃至80°の角度を有するのが好ましい。また、この時の空気圧力は0.1乃至4kg/cm2であるのが好ましい。
【0052】
上記空気圧力が0.1kg/cm2未満である場合には、原糸に対して集束性を付与するのに不充分であり、結果的に、原糸の抱合性の低下を誘発して、巻取り不良及び毛羽の発生を誘発する。また、空気圧力が4.0kg/cm2を超える場合には、原糸のフィラメントの間に強い交絡が非常に多く存在して(またはCFP値が大きくて)、要求する平滑性を得るのが難しく、原糸の長さ方向に対して屈曲程度が大きい。
【0053】
上記第2集速機(2nd Interlacer)は、微細交絡数を増加させるために、連続して多段に適用することができ、多段の場合、2個以上、好ましくは2乃至4個の集束機が連続的に設置されたのが好ましい。上記第2集速機(2nd Interlacer)を多段に設置する時、多段集束機の数が5個以上である場合には、設置が困難で、作業性も低下するので、最大4個以下であるのが好ましい。
【0054】
特に、上記前集束機(pre−interlacer)及び第2集速機(2nd Interlacer)のそれぞれで、上述したように特定の範囲の風向きを有する集束エアー(interlacing air)を特定の範囲の風圧で付与することにより、本発明のエアバッグ用織物を製造する全体工程で操業性を効果的に向上させることができ、ポリエステル原糸及びこれから製造されるエアバッグ用織物の品質(毛羽水準)を向上させることができるだけでなく、後工程収率も高くて、顕著な経済的な効果を得ることができる。
【0055】
上記第2集速機(2nd Interlacer)を通過したポリエステル繊維は、巻取機を利用して巻取ることにより、本発明のエアバッグ用織物に含まれるポリエステル繊維を製造する。
また、上記ポリエステル繊維の製造方法において、上記原糸の帯電防止性及び集束性の向上を通して後工程性を向上させるために、上記第2集速機(2nd Interlacer)と巻取機の間にアフターオイル付与(after−oiling)装置を設置して、アフターオイル(after−oil)を付与する工程を追加的に含むことができる。
【0056】
図10は、第2集速機(2nd Interlacer)を2個以上多段に適用して、上記アフターオイル付与装置と共に使用することを示した模式的な工程図である。図10に示したように、第2集速機(2nd Interlacer)150は、ポリエステル繊維の延伸装置145、146の次に位置する。また、上記アフターオイル付与装置430は、ジェットガイド形態であり、原糸の走行方向に対して上下または左右に設置され、原糸にアフターオイルを付与する役割を果たす。
【0057】
上記アフターオイル付与装置の付随装置として、アフターオイルを保管するオイル浴槽(bath)431、アフターオイル付与装置に定量的にオイルを供給するメータリングポンプ(metering−pump)432、原糸に供給され残った残量または上記アフターオイル付与装置で発生する落油を集め、オイル浴槽に移送して、再循環させて、巻取機440の汚染防止などの役割を果たすオイル回収浴槽433などがさらに含まれる。
【0058】
上記アフターオイル付与工程で付与されるオイルの量は、ポリエステル繊維の重量に対して0.1乃至2.0重量%であるのが好ましい。アフターオイルの量が0.1重量%未満である場合には、ポリエステル繊維に要求される集束性の向上及び帯電防止性の改善の効果が微々たるものであり、2.0重量%を超える場合には、経済性が低下して、オイルによる汚染を誘発し、コーティング織物に適用する時には接着力を阻害することがある。
【0059】
上記アフターオイルとしては、通常のポリエステル繊維用アフターオイル(after−oil)を使用することができる。上記原糸用アフターオイルは、延伸工程を経る前に付与された油剤とは区別されるもので、好ましくは、ポリオール−ポリアルキレートを主成分として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、酸化防止剤、及び帯電防止剤などを含むオイルを使用することができる。
【0060】
上記ポリエステル繊維の製造方法においては、また、弛緩工程(図2の144と146の間)中に糸乱によってモノフィラメントが互いに重なるのを防止し、走行原糸の扁平な形態を維持するために、弛緩工程以降(図2の145と146の間)にテンションガイドをさらに適用することができる。
本発明において、上記ポリエステル繊維は、通常の製織方法と、精練、テンダリング工程、及びシリコン樹脂のコーティング工程を経て最終的なエアバッグ用織物に製造される。このようにコーティングされたエアバッグ用織物は、裁断と縫製工程を経て一定の形態を有するエアバッグクッション形態に製造される。上記エアバッグは特別な形態に限定されず、一般的な形態に製造することができる。
【0061】
また、本発明は、上記エアバッグを含むエアバッグシステムを提供し、上記エアバッグシステムは、関連業者らによく知られた通常の装置を備えることができる。上記エアバッグは、大きくフロンタルエアバッグ(Frontal Airbag)とサイドカーテンエアバッグ(Side Curtain Airbag)に区分できる。上記フロンタル用エアバッグには、運転席用、助手席用、側面保護用、膝保護用、足首保護用、歩行者保護用エアバッグなどがあり、サイドカーテンタイプのエアバッグは、自動車の側面衝突や転覆事故時に乗客を保護する。したがって、本発明のエアバッグは、フロンタル用エアバッグとサイドカーテンエアバッグを全て含む。
【0062】
本発明において、上述した内容以外の事項は必要によって加減が可能であるので、本発明では特に限定しない。
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されることではない。
【実施例】
【0063】
<実施例1乃至7>
(1)ポリエステル繊維の製造
固有粘度0.85g/dLのポリエステル固体重合チップを285℃の温度で溶融して、スリット形紡糸口金を通して溶融ポリエステルを吐出した。
上記吐出された溶融ポリエステルをフードヒーター及び断熱板から構成された遅延冷却区間に通過させて、遅延急冷(delayed quenching)した。
【0064】
蒸気遅延急冷されたポリエステル繊維に、ロール形態の油剤付与装置を利用して油剤を付与した。この時、上記油剤の量は、原糸100重量部に対して0.8重量部であり、使用された油剤は、エチレンオキシド/プロピレンオキシド付加ジオールエステル(30重量部)、エチレンオキシド付加ジオールエステル(15重量部)、グリセリルトリエステル(10重量部)、トリメチルプロパントリエステル(10重量部)、及び少量の帯電防止剤を混合した紡糸油剤を使用した。
【0065】
上記油剤が付与された原糸を前集束機に通過させて、ゴデットローラを利用して延伸した。
上記延伸後に、第2集速機(2nd Interlacer)を利用して上記延伸されたポリエステル繊維にインターミングルを付与した後、巻取機で巻取ってポリエステル繊維を製造した。
【0066】
本発明の実施例において、紡糸口金のキャピラリーの形態及び扁平度、口金でのシヤーレート(Shear−rate;秒−1)及び適用紡糸パックの構造、フードヒーターの温度及び長さ、断熱板の長さ、遅延冷却区間の滞留時間、紡糸速度、弛緩率、熱処理温度などの条件をそれぞれ下記表1に表した。また、紡糸パックの形態は特に限定されないが、好ましいように図5の形態の紡糸パックを適用してポリエステル繊維を製造した。
【0067】
(2)エアバッグ用織物の製造
上記のように製造されたそれぞれのポリエステル繊維原糸を使用して、レピア織機によってエアバッグ用織物生地を製造した。この時に要求される空気透過度を達成するために、緯糸と縦糸の本数を同一にして平織に製織し、この時の繊維の総繊度、フィラメント数、及び製織密度は下記表1に表したように行った。
【0068】
水酸化ナトリウム1.5g/L、界面活性剤1.08g/L、浸透剤1.08g/L、及び分散剤1.25g/Lとなるように水と混合して、2つの薬品槽に分けて投入し、各薬品槽の温度を75℃に維持させた。また、上記各薬品槽のそばに80℃及び85℃の温度を有する水洗槽2つずつをそれぞれ連続配置した。
上記織機で製織されたエアバッグ用生地を、前記準備された薬品槽に1次通過させた後、2つの水洗槽に連続的に通過させ、さらに薬品槽と2つの水洗槽に2次通過させた。
【0069】
上記水洗槽を通過したエアバッグ用生地をマングルに通過させて脱水した後、110℃の熱風で乾燥して残留水分を完全に乾燥させて、エアバッグ用織物を製造した。
また、下記表1に表したようなコーティング量となるように、上記織物にポリ塩化ビニル(PVC)樹脂をナイフコーティング(knife over ro1lcoating)方法でコーティングして、PVCコーティングされた織物を製造した。
【0070】
<比較例1>
下記表1の諸般条件によってポリエステル繊維を製造したことを除いては、上記実施例1と同様の方法でエアバッグ用織物を製造した。
【0071】
【表1】
【0072】
<実験例1>
上記実施例1〜7及び比較例1によって製造されたポリエステル繊維に対して、下記の方法によって扁平度、収縮応力、収縮率、固有粘度、引張強度、切断伸度、及び原糸の断面形態指数(R1、H1、R1/H1、CV%)、後工程収率、及び工程操業性(F/D)を測定し、上記ポリエステル繊維を利用して製造されたエアバッグ用織物に対して、下記の方法によって厚度、引張強度、引裂強度、及び空気透過度を測定した。
【0073】
以降、それぞれの物性測定結果を下記表2に表し、実施例1で製造された扁平断面糸の断面写真を図11に示した。
(1)扁平度
繊維断面の扁平な程度を示す値で、銅板を利用して繊維断面を切断し、これを光学顕微鏡で拡大撮影して、繊維断面の長軸の長さ(W)と繊維断面の短軸の長さ(D)を測定し、これを通じて下記の計算式1によってそれぞれのフィラメントに対する扁平度を計算し、全体フィラメントの平均値を求めて、ポリエステル繊維の扁平度を求めた。
【0074】
[計算式1]
個別フィラメントの扁平度(Fi)=W/D、
原糸の扁平度=(個別フィラメントの扁平度の合計)/(フィラメント数)
(2)R1、R2、R3及びR4の変動係数(CV%)
上記光学顕微鏡で拡大撮影した繊維断面から、図1に示したようにそれぞれのフィラメントに対するR1、R2、R3及びR4を測定して、計算式2によって全体フィラメントのR1、R2、R3及びR4の平均値及び標準偏差を計算して、下記の計算式3によって変動係数(CV%)を求めた。
【0075】
[計算式2]
平均(R)=フィラメント全体の(R1+R2+R3+R4)合計/(4×n)
上記式において、nは、測定されたフィラメントの全体数であり、Rは、全体フィラメントのR1、R2、R3及びR4の平均値である。
[計算式3]
変動係数(CV%)=標準偏差(σ)/平均(R)×100(%)
(3)R1/H1、R2/H2、R3/H3、及びR4/H4の平均値及び標準偏差
上記光学顕微鏡で拡大撮影した繊維断面から、図1のR1、R2、R3及びR4とH1、H2、H3及びH4を測定して、計算式4によって全体フィラメントのR1/H1、R2/H2、R3/H3及びR4/H4の平均値及び標準偏差を計算して、計算式3によって変動係数(CV%)を求めた。
【0076】
[計算式4]
平均(R/H)=フィラメント全体の(R1/H1+R2/H2+R3/H3+R4/H4)合計/(4×n)
上記式において、nは、測定されたフィラメントの全体数であり、R/Hは全体フィラメントのR1/H1、R2/H2、R3/H3及びR4/H4の平均値である。
【0077】
(4)収縮応力(g/d)
カネボ(Kanebo)社の熱応力測定機を利用して、初期荷重0.1g/d下で昇温速度2.5℃/secに昇温しながら150℃と200℃でそれぞれの応力値を測定した。試料はループ(Loop)形態に結び目を結んで準備する。
[計算式5]
熱応力(g/d)=熱応力測定値(g)/測定原糸繊度×2
(5)収縮率(%)
収縮率は、特定温度で熱による試料の長さ変化を百分率に示す値で、下記の計算式6によって定義される。
【0078】
[計算式6]
収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
上記式において、L0は、熱収縮前の試料の長さであり、L1は熱収縮後の試料の長さである。
上記収縮率は、テスライト(TesRite)社の収縮動き試験器(Testrite MKV)を利用して、0.01g/dの一定の荷重下で原糸を固定させた後、収縮率を測定し、測定条件は、190℃で0.01g/dの荷重を加えた状態で15分経過した状態を基準にした。
【0079】
(6)固有粘度
四塩化炭素を利用して試料で油剤を抽出し、160±2℃でOCP(Ortho Chloro Phenol)で溶解した後、25℃の条件で自動粘度測定器(Skyvis−4000)を利用して粘度管での試料粘度を測定して、下記の計算式7によってポリエステル繊維の固有粘性度(intrinsic viscosity、IV)を求めた。
【0080】
[計算式7]
固有粘性度(IV)={(0.0242×Rel)+0.2634}×F
上記式において、
Rel=(溶液秒数×溶液比重×粘度係数)/(OCP粘度)、
F=Standard ChipのIV/ Standard Chipを標準動作で測定した3つの平均IV
(7)引張強度(g/d)、切断伸度(%)
ポリエステル繊維の引張強度及び切断伸度を万能材料試験器(Instron)を使用して測定し、試料長は250mmであり、引張速度は300mm/minとし、初期ロードは0.05g/dに設定した。
【0081】
(8)工程操業性(F/D)
ポリエステル繊維の生産性を示す指標として、全体ドッフィング(Doffing)数に対する完全チーズドッフィング(Full−Cheese Doffing)数の分率を下記の計算式8で計算した。
[計算式8]
F/D(%)=完全チーズドッフィング数/完全チーズドッフィング数+部分チーズドッフィング(Partial Cheese Doffing)数×100
(9)整経毛羽数
毛羽感知機(fluff−detector)のチェック回数を106mに換算して計算した。
【0082】
(10)後工程収率
全体投入されたポリエステル繊維に対する正常製品の百分率値を下記の計算式9によって計算した。
[計算式9]
後工程収率=正常製品数量/全体投入原糸量×100
(11)コーティング織物の厚度
実施例1乃至7及び比較例1によって製造されたコーティングされたエアバッグ用織物に対して厚さを測定し、実施例1乃至7によって製造されたポリエステル繊維で製造された織物の厚さ(T)を比較例1によって製造された織物の厚さ(t)で割って、百分率に計算した。
【0083】
[計算式10]
織物の厚度(%、相対値)=T/t×100
(12)引張強度
エアバッグ用織物から試片を裁って、米国材料試験協会規格(ASTM)D5034による引張強度測定装置の下部クランプに固定させ、上部クランプを上に移動させながらエアバッグクッション試片が破断する時の強度を測定した。
【0084】
(13)引裂強度
エアバッグ用織物で試片を裁った後、緯糸または縦糸方向に7cmを切開して、米国材料試験協会規格(ASTM)D2261による引裂強度測定装置のクランプに上記切開部の左右織物を挟んで装着した。上記織物が装着された状態でそれぞれのクランプを上、下に交差移動させながら織物を破裂させて強度を測定した。
【0085】
(14)空気透過度
米国材料試験協会規格(ASTM)D1338により、エアバッグ用織物を20℃、65%RH下で1日以上放置した後、125Paの圧力の空気が38cm2の円形断面を通過する量を測定した。
【0086】
【表2】
【0087】
上記表2に示したように、本発明の実施例1乃至7によって製造されたエアバッグ用織物は、収縮応力と収縮率が低くて、熱的形態安定性に優れているだけでなく、原糸のフラットした断面形態が均一であることで、コーティング織物の厚度を低くして、エアバッグ織物のフォールディング性を改善でき、収納性を向上させることができる。また、織物の引張強度、引裂強度、及び空気透過度の側面に優れた性能を有することが分かる。しかし、比較例1によって製造された一般的な円形断面のポリエステル繊維を使用したエアバッグ用織物の場合、織物の引張強度、引裂強度は類似しているが、空気透過度が顕著に低下することが分かる。
【0088】
<実施例8乃至14及び比較例2>
(1)ポリエステル繊維の製造
固有粘度0.85g/dLのポリエステル固体重合チップを285℃の温度で溶融して、スリット形紡糸口金を通じて溶融ポリエステルを吐出した。
上記吐出された溶融ポリエステルをフードヒーター及び断熱板から構成された遅延冷却区間に通過させて遅延急冷(delayed quenching)した。
【0089】
蒸気遅延急冷されたポリエステル繊維に、ロール形態の油剤付与装置を利用して油剤を付与した。この時、上記油剤の量は原糸100重量部に対して0.8重量部であり、使用された油剤はエチレンオキシド/プロピレンオキシド付加ジオールエステル(30重量部)、エチレンオキシド付加ジオールエステル(15重量部)、グリセリルトリエステル(10重量部)、トリメチルプロパントリエステル(10重量部)、及び少量の帯電防止剤を混合した紡糸油剤を使用した。
【0090】
上記油剤が付与された原糸を図9の前集束機に通過させ、ゴデットローラを利用して延伸した。
上記延伸後に、図9の第2集速機(2nd Interlacer)を利用して、上記延伸されたポリエステル繊維にインターミングルを付与した。
上記集束機を通過したポリエステル繊維にジェットガイド形態のオイル付与装置を利用してアフターオイル(after−oil)を付与した。この時、上記アフターオイルの量は原糸100重量部に対して0.7重量部であり、使用されたアフターオイルは、ポリオール−ポリアルキレート(70重量部)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(20重量部)、酸化防止剤(2重量部)、及び帯電防止剤(2重量部)を混合したオイルである。
【0091】
上記アフターオイル付与工程が終わって、巻取機で巻取ってポリエステル繊維を製造した。
本発明の実施例において、紡糸口金のキャピラリーの形態及び扁平度、フードヒーターの温度及び長さ、断熱板の長さ、遅延冷却区間の滞留時間、前集束機の風向き及び風圧、紡糸速度、延伸比(予備延伸比、全体延伸比に対する1段延伸倍率)、弛緩率、熱処理温度、第2集速機(2nd Interlacer)の個数、風向き、及び風圧、油剤、及びアフターオイル付与などの条件をそれぞれ上記表3に表した。
【0092】
集束機の風向きは、図9に示したように、繊維走行方向の直角方向を基準としてエアー(Air)が噴射される角度を意味する。即ち、0°は繊維進行方向に対して直角方向であり、90°は繊維進行方向と平行することを意味する。
(2)エアバッグ用織物の製造
上記のように製造されたそれぞれのポリエステル繊維原糸を使用して、レピア織機によってエアバッグ用織物生地を製造した。この時に要求される空気透過度を達成するために、緯糸と縦糸の本数を同一にして平織で製織し、この時の繊維の総繊度、フィラメント数、及び製織密度は、下記表3に表したように行った。
【0093】
水酸化ナトリウム1.5g/L、界面活性剤1.08g/L、浸透剤1.08g/L、及び分散剤1.25g/Lとなるように水と混合して、2つの薬品槽に分けて投入し、各薬品槽の温度を75℃に維持させた。また、上記各薬品槽のそばに80℃及び85℃の温度を有する水洗槽2つずつをそれぞれ連続配置した。
上記織機で製織されたエアバッグ用生地を、上記準備された薬品槽に1次通過させた後、2つの水洗槽に連続的に通過させ、さらに薬品槽と2つの水洗槽に2次通過させた。
【0094】
上記水洗槽を通過したエアバッグ用生地をマングルに通過させて脱水した後、110℃の熱風で乾燥して残留水分を完全に乾燥させて、エアバッグ用織物を製造した。
また、下記表3に表したようなコーティング量となるように、上記織物にポリ塩化ビニル(PVC)樹脂をナイフコーティング(knife over ro1l coating)方法でコーティングして、PVCコーティングされた織物を製造した。
【0095】
【表3】
【0096】
<実験例2>
上記実施例8乃至14及び比較例2によって製造されたポリエステル繊維に対し、上記と同様の方法で扁平度、収縮応力、収縮率、固有粘度、引張強度、切断伸度、工程操業性、及び整経毛羽数を測定し、前記ポリエステル繊維を利用して製造されたエアバッグ用織物に対し、上記と同様の方法で厚度、引張強度、引裂強度、及び空気透過度を測定した。また、ポリエステル繊維に対して下記の方法で結晶化度を測定した。
【0097】
この時、コーティングされた織物の厚度は、上記比較例1の代わりに比較例2の値を基準として、上記計算式10によって実施例8乃至14の相対値を測定した。
以降、それぞれの物性測定結果を下記表4に表し、実施例8によって製造された扁平断面糸の断面写真は図11と同一に得られた。
(15)結晶化度(%)
ポリエステル繊維原糸の密度ρは、n−ヘプタンと四塩化炭素を利用した密度勾配管法によって25℃で測定し、結晶化度は下記の計算式11によって計算した。
【0098】
[計算式11]
Xc(結晶化度)=ρc(ρ−ρa)/ ρ( ρc− ρa )
上記計算式11において、ρは、原糸の密度、ρcは、結晶の密度(PETの場合は1.457g/cm3)、ρaは、非結晶の密度(PETの場合は1.336g/cm3)である。
【0099】
【表4】
【0100】
上記表4に示したように、本発明の実施例8乃至14によって製造されたエアバッグ用織物は、収縮応力と収縮率が低くて、熱的形態安定性に優れているだけでなく、原糸のフラットした断面形態が均一であることで、コーティング織物の厚度を低くすることができ、織物の引張強度、引裂強度、及び空気透過度の側面で優れた性能を有することが分かる。
特に、実施例8乃至14によって製造されたエアバッグ用織物は、繊維の断面を扁平な形態に効果的に製造して、断面の形態を均一化させることにより、表面平滑性を極大化させ、全体的な製造工程で操業性を向上させ、原糸及びこれから製造される織物の品質(毛羽水準)に優れているだけでなく、後工程収率も高くて経済的な効果を得ることができる。
【0101】
しかし、比較例2によって製造された一般的な円形断面のポリエステル繊維を使用したエアバッグ用織物の場合、織物の引張強度、引裂強度、及び空気透過度が顕著に低下することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明はエアバッグ用織物に関し、エアバッグ用原糸として繊維の断面が扁平な形態のポリエステル繊維を使用することで、エアバッグの膨張時の空気遮断効果が非常に優れており、織物の厚さが円形断面の原糸に比べて薄く、表面屈曲性及び空隙率も低いので、コーティング織物におけるコーティング樹脂の使用量を減少させて製品の軽量化が可能であり、モジュールシステムで収納性及びフォールディング性に優れた製品を製造することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ用織物及びその製造方法に関し、より詳しくは、ポリエステル繊維を含むエアバッグ用織物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エアバッグ(air bag)とは、走行中の車両が約40km/h以上の速度で正面衝突時、車両に加えられる衝突衝撃を衝撃感知センサで感知した後、火薬を爆発させて、エアバッグクッション内部にガスを供給して膨張させることにより、運転者及び乗客を保護する装置をいう。
エアバッグ用織物として要求される項目は、衝突時に円滑に展開されるための低通気性、エアバッグ自体の損傷及び破裂を防止するための高強力、高耐熱性、及び乗客に加えられる衝撃を軽減させるための柔軟性などがある。
【0003】
特に、自動車が転覆して回転する場合、運転者や乗客が自動車のガラス窓や周辺の構造物によってケガするのを防止する目的で、事故時にエアバッグが広がるようになるが、この時、上記エアバッグが安全に乗客を保護するためには、少なくとも一定時間の間にエアバッグが膨らんだ状態を保持しなければならないので、このためにはエアバッグ織物の空気遮断効果が非常に重要である。
【0004】
しかし、乗客の安全のために優れた空気遮断の効果を維持し、エアバッグが受ける衝撃に十分に耐えると同時に、自動車内の厳しい環境下でも十分な信頼性を有して使用できるエアバッグ用織物は、提案されていない状況である。
従来は、ナイロン66などのポリアミド繊維がエアバッグ用原糸の材料として使用されたことがある。しかし、ナイロン66は耐衝撃性が優れているが、ポリエステル繊維に比べて耐湿熱性、耐光性の側面で劣り、かつ原料費用も高い。
【0005】
一方、日本特開平04−214437号には、このような欠点が軽減されるポリエステル繊維の使用が提案されているが、エアバッグとして優れたフォールディング性及び十分な耐衝撃性を有する織物ではないという問題点がある。
したがって、エアバッグ用織物として使用するのに適するように、優れた空気遮断の効果を維持し、乗客に加えられる衝撃を減らすための柔軟性、及び優れた機械的強度を有する織物の材料の開発に対する研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、平滑性に優れていて、収縮応力及び収縮率が改善された均一な構造を有する扁平な形態のポリエステル繊維を使用して、優れたフォールディング性及び柔軟性と共に、エアバッグの膨張時に空気遮断の効果が優れたエアバッグ用織物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記エアバッグ用織物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、繊維断面の扁平度が1.3乃至3.0であり、前記断面の最長軸両端点をW1及びW2と定義し、前記最長軸の中央点Oから垂直方向への最短軸両端点をD1及びD2と定義し、前記W1とD1とを連結する斜線をL1、D1とW2とを連結する斜線をL2、W1とD2とを連結する斜線をL3、W2とD2とを連結する斜線をL4と定義し、L1、L2、L3及びL4から断面の外側に最も遠い周縁までの距離をそれぞれR1、R2、R3及びR4と定義し、前記L1、L2、L3及びL4から中央点Oまでの距離をそれぞれH1、H2、H3、及びH4と定義すると、全体フィラメントのR1乃至R4の変動係数(CV%)が20%以下であるポリエステル繊維を含むエアバッグ用織物を提供する。
【0008】
本発明は、また、扁平度が1.3乃至3.0であり、150℃での収縮応力(@0.1g/d、2.5℃/sec)が0.005乃至0.1g/dであり、200℃での収縮応力(@0.1g/d、2.5℃/sec)が0.005乃至0.1g/dであり、収縮率(@190℃、15分、0.01g/d)が1.5%乃至10.0%であるエアバッグ用織物を提供する。
【0009】
本発明は、また、ポリエステル固体重合チップをスリット形態の口金を通じて溶融紡糸し、延伸して、断面の扁平度が1.3乃至3.0であるポリエステル繊維を製造する段階と、前記ポリエステル繊維を利用してエアバッグ用生地を製織する段階と、前記製織されたエアバッグ用生地を精練する段階と、前記精練された織物をテンダリングする段階とを含むエアバッグ用織物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、扁平な形態の断面を有するポリエステルを使用することにより、エアバッグの膨張時の空気気密性に優れて、車両用エアバッグとして効果的な乗客保護機能を発揮することができる。また、織物の厚さが薄くて軽く、モジュールシステムで収納性及びフォールディング性に優れており、向上した柔軟性によってエアバッグの膨張時に人体に対する衝撃を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のエアバッグ用織物に使用されるポリエステル繊維の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明のエアバッグ用織物に使用されるポリエステル繊維の製造工程を模式的に示した工程図である。
【図3】本発明の紡糸に使用された口金の一例を模式的に示した平面図である。
【図4】使用された口金の断面図であって、口金のキャピラリーを示した模式図である。
【図5】本発明の紡糸に使用された紡糸パックの一例を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明の紡糸に使用された分散板の一例を示した底面図である。
【図7】本発明の紡糸に使用された分散板の一例を示した断面図である。
【図8】集束エアーを原糸の走行方向に対して垂直方向に付与した集束機を示した模式図である。
【図9】集束エアーを原糸の走行方向に対して斜線方向に付与した集束機を示した模式図である。
【図10】第2集速機及び上記アフターオイル付与装置と共に使用することを示した模式的な工程図である。
【図11】本発明の実施例1によって製造された扁平断面原糸の断面を示した光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明において、エアバッグ用織物とは、自動車用エアバッグの製造に使用される織物または不織布などをいい、一般的なエアバッグ用織物としては、レピア織機で製織されたナイロン66またはナイロン6からなる平織物や不織布を使用しているが、本発明ではポリエステルフィラメント糸を使用することを特徴とする。
【0013】
特に、本発明は、扁平な形態の断面を有するポリエステル繊維を使用することで、円形断面の繊維を使用する場合に比べて織物の厚さが薄くてフォールディング性に優れているので、収納性を向上させることができ、表面屈曲性及び空隙率も低いので、優れたコーティング性能を確保することができる。また、エアバッグが膨張する場合、空気流出現象を最大限抑制できるエアバッグ用織物及びこれを製造する方法に関するものである。
【0014】
本発明のエアバッグ(airbag)用織物は、ポリエステルフィラメント糸を使用して、ナイロン66やナイロン6を使用した織物に比べ、形態安定性に優れており、長期間放置しても通気時の変化が少ない特徴を有する。また、ポリエステルポリマーが高分子環中に水素結合を有しないので、ポリエステルで製造された織物は柔軟性及びフォールディング性に優れていて、エアバッグモジュールでの収納性及び膨張時に人体に対する低衝撃性に優れた特徴を有する。
【0015】
本発明のエアバッグ用織物は、米国材料試験協会規格(ASTM D 5034−GRAB法)で測定した引張強度が190乃至280kgf/inch、好ましくは220乃至270kgf/inch程度の範囲を有する。特に、上記引張強度は49×49コーティング織物に対して測定した値とすることができる。上記引張強度の場合、エアバッグの展開時に十分な機械的物性及び優れた形態安定性を確保するための側面で、常温引張強度は190kgf/inch以上とならなければならず、エイジング(aging:cycle、heat、humidity)後の引張強度は160kgf/inch以上とならなければならない。
【0016】
また、エアバッグ用織物は、高温−高圧のガスによって急速に膨張するため、優れた引裂強度の水準が要求されるが、上記エアバッグ用織物の破裂強度を示す引裂強度を米国材料試験協会規格(ASTM D 2261−TONGUE)方法で測定した時、23乃至50kgf、好ましくは28乃至45kgfの値となり得る。ここで、織物の引裂強度が23kgf未満であれば、エアバッグの展開時にエアバッグの破裂が発生することにより、エアバッグ機能に大きな危険を招く可能性もある。
【0017】
本発明のエアバッグ用織物は、上述のように、扁平な形態の断面を有するポリエステル繊維を使用することで、円形断面の繊維を使用する場合に比べて織物の厚さが薄いので、フォールディング性に優れていて、収納性を向上させることができる。特に、上記エアバッグ用織物の厚さ(T)は、既存の円形断面繊維を使用した織物の厚さ(t)に比べ、好ましくは95%以下、好ましくは93%以下、または70%乃至93%とすることができる。このように、本発明のエアバッグ用織物は、その厚さが円形断面の原糸を使用した場合の織物の厚さに比べ、薄くて、表面屈曲性及び空隙率も低いので、コーティング織物においてコーティング樹脂の使用量を減少させ、製品の軽量化が可能であり、モジュールシステムで収納性及びフォールディング性に優れた特徴を有する。
【0018】
本発明のエアバッグ用織物は、米国材料試験協会規格(ASTM D 737法)を利用して、125Paの気圧差で測定した空気透過度が0乃至10.0cfmであり得るが、空気透過度が5cfm以上となる場合には、エアバッグ用織物の気密性を維持する側面では好ましくないこともある。
本発明におけるポリエステル繊維は、従来の産業用ポリエステル繊維の製造方法と比較して見れば、口金のキャピラリー(Capillary)構造をスリット形に採択して、原糸の断面の形態を円形でなく扁平に形成させることにより、製織時に織物の厚さを減らし、表面屈曲性及び空隙率を低くすることができる。
【0019】
また、本発明は、上述したように、 扁平な断面を有するポリエステル繊維を使用して、エアバッグ用原糸の形態的特性または収縮応力及び収縮率を特定の範囲に制御することにより、エアバッグ用織物に適用する時に、形態安定性を最適化し、収縮異常のような問題点を解決することができる。
図1は、本発明のエアバッグ用織物に使用されるポリエステル繊維の一例を示す断面模式図である。図1に示したように、上記ポリエステル繊維は長軸の長さ(W1〜W2)/短軸の長さ(D1〜D2)と定義される扁平度が1.3乃至3.0であるのが好ましい。
【0020】
また、上記図1において、繊維断面の最長軸両端点をW1及びW2と定義し、前記最長軸の中央点Oから垂直方向への最短軸両端点をD1及びD2と定義し、前記W1とD1とを連結する斜線をL1、D1とW2とを連結する斜線をL2、W1とD2とを連結する斜線をL3、W2とD2とを連結する斜線をL4と定義し、L1、L2、L3及びL4から断面の外側に最も遠い周縁までの距離をそれぞれR1、R2、R3、及びR4と定義し、前記L1、L2、L3及びL4から中央点Oまでの距離をそれぞれH1、H2、H3、及びH4と定義すると、R1乃至R4の変動係数(CV%)が20%以下であるのが好ましい。
【0021】
上記変動係数(CV%)が20%を超える場合には、エアバッグ用原糸としてポリエステル繊維の物性及び断面形態が不均一になり、製織工程で糸切りや部分的な形態の変形、または、歪み現象が起こるなど、工程性及び品質に影響を与えることがある。
また、上記断面において、R1/H1、R2/H2、R3/H3、及びR4/H4と定義される長さ比の平均値が0.2乃至0.9であるのが好ましい。上記長さ比の平均値が大きいほど原糸の肩部分が厚い形態を有し、上記長さ比の平均値が小さいほど原糸の肩部分が薄くなって、楕円形または菱形の断面を有するようになる。
【0022】
本発明の扁平断面の原糸が安定した物性を有するためには、上記R1/H1、R2/H2、R3/H3、及びR4/H4の変動係数(CV%)が20%以下であるのが好ましい。言い換えると、上記R1/H1、R2/H2、R3/H3、及びR4/H4の変動係数値が20%を超えれば、断面の形状が歪んで物性の低下及び織物の製造時に平滑性の低下をもたらす。
【0023】
また、本発明において、上記ポリエステル繊維は、一般的なコーティング織物のラミネートコーティング温度に相当する150℃での収縮応力が0.005乃至0.1g/dであるのが好ましく、一般的なコーティング織物のゾルコーティング温度に相当する200℃での収縮応力が0.005乃至0.1g/dであるのが好ましい。即ち、上記150℃と200℃での収縮応力がそれぞれ0.005g/d以上である場合にのみ、コーティング工程中の熱による織物が垂れる現象を防ぐことができ、0.1g/d以下である場合にのみ、コーティング工程を経て常温で冷却される時に弛緩応力を緩和させることができる。
【0024】
また、上記ポリエステル繊維は、コーティング工程中の熱処理時に一定の水準以上の張力を与えて製織形態を維持し、結果的にエアバッグ用原糸として形態変形を防止するために、190℃での収縮率が1.5%以上であるのが好ましく、熱的形態安定性の確保のために190℃での収縮率が10.0%以下であるのが好ましく、7.0%以下であるのがさらに好ましい。
【0025】
本発明で定義する上記収縮応力は0.1g/dの固定荷重下で測定した値を基準とし、収縮率は0.01g/dの固定荷重下で測定した値を基準とする。
上記ポリエステル繊維は、通常のポリエステルの中でもポリエチレンテレフタレート(PET)原糸であるのが好ましく、さらに好ましくは、PETを90モル%以上含むPET原糸である。
【0026】
上記ポリエステル繊維は、0.005g/d以上の収縮応力を有するために、原糸の固有粘度が0.7dl/g以上であるのが好ましく、形態安定性を維持し、高強力を確保するためには、原糸の固有粘度が1.2dl/g以下、好ましくは1.0以下である。
また、本発明の上記ポリエステル繊維は、製造工程において紡糸工程の前集束機にポリエステル繊維を通過時、集束エアーを付与することにより、次の物性を発現することができる。
【0027】
つまり、前集束機に所定範囲の風向きを有するエアーを付与することにより、上記ポリエステル繊維は単糸繊度が2.1de乃至11.0deであるのが好ましい。また、熱的形態安定性維持のために結晶化度が35%以上であるのが好ましく、35%乃至52%であるのがさらに好ましい。また、上記ポリエステル繊維は産業用原糸として必要な物理的特性を確保するために、引張強度が7.0乃至10.0g/dであり、切断伸度が12%乃至30%であるのが好ましい。
【0028】
本発明のエアバッグ用織物は、上記のような物性を有するポリエステル繊維を使用して、製織及び樹脂コーティング時に後工程収率が高く、織物の厚さを低くしながら、形態安定性に優れている。
また、本発明のエアバッグ用織物は、表面にコーティングまたはラミネートされたシリコン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂などの1種以上からなるコーティング層をさらに含むのが好ましく、コーティング樹脂の種類は上述した物質に限定されない。上記樹脂コーティング層は、ナイフコート法、ドクターブレード法、または噴霧コーティング法で適用できるが、これも上述した方法に限定されない。
【0029】
上記ゴム成分コーティング層の単位面積当たりコーティング量は20乃至200g/m2、好ましくは20乃至100g/m2となるように使用できる。特に、OPW(One PieceWoven)タイプのサイドカーテンエアバッグ用織物の場合は、上記コーティング量が30g/m2乃至95g/m2が好ましく、エアバッグ用平織織物の場合は、上記コーティング量が20g/m2乃至50g/m2水準が好ましい。
【0030】
本発明のエアバッグ用織物に含まれる扁平断面糸は、一般的な円形断面糸に比べ、パッキング特性に優れており、厚さが薄く、織物の製造時に原糸がカバーする面積が大きいため、これから製造される本発明のエアバッグ用織物は、その厚さが薄く、空隙が少なく、表面照度が低くて、少量のコーティング液でも優れたコーティング特性を現わすことができ、コーティング時に不良率が低い長所がある。そのために、本発明のエアバッグ用織物は、空気膨張時に空気流出現象を最大限抑制することができる特徴を有する。
【0031】
本発明において、織物の製織形態は特定形態に限定されず、平織タイプとOPW(One Piece Woven)タイプの製織形態いずれも好ましい。
本発明のエアバッグ用織物は、上記ポリエステル繊維を緯糸及び縦糸で利用して、ビーミング(beaming)、製織、精練、及びテンター工程を経て製造することができる。上記織物は通常の製織機を使用して製造でき、ある特定織機の使用に限られない。但し、平織形態の織物は、レピア織機(Rapier Loom)やエアージェット織機(Air Jet Loom)またはウォータージェット織機(Water Jet Loom)などを使用して製造でき、OPW形態の織物は、ジャカード織機(Jacquard Loom)を使用して製造できる。
【0032】
また、本発明において、エアバッグ用織物に使用される上記の扁平断面を有するポリエステル繊維は、固有粘度が0.7乃至1.2dl/gのポリエステル固体重合チップを270乃至310℃の紡糸温度で溶融して、スリット形態の口金キャピラリーを通じて紡糸することによって製造できる。上記チップの固有粘度は0.7dl/g以上である場合にのみ、好ましい収縮応力及び収縮率を有する原糸が製造でき、1.2dl/g以下である場合にのみ、チップの溶融温度の上昇による分子鎖切断及び紡糸パックにおける圧力増加を防止できる。
【0033】
図2は、上記ポリエステル繊維製造工程を模式的に示す工程図である。図2に示したように、本発明のエアバッグ用原糸としてのポリエステル繊維の製造方式は、口金を通じて紡糸した溶融高分子を急冷空気(quenching−air)で冷却させ、油剤ロール120(またはオイルジェット)を利用して未延伸糸に油剤を付与し、前集束機(pre−interlacer)130を使用して一定の空気圧力で未延伸糸に付与された油剤を原糸の表面に均一に分散させる。以降、多段の延伸装置(141〜146)を通じて延伸過程を経た後、最終的に第2集速機(2nd Interlacer)150で一定の圧力で原糸をインターミングル(intermingle)させ、巻取機160で巻取って原糸を生産している。
【0034】
図3は、上記紡糸工程に使用された口金110の一例を模式的に示す平面図である。図3を参照すると、上記ポリエステル繊維の製造時に紡糸口金の上部には、複数の紡糸口金キャピラリー111が形成されている。上記キャピラリーの配列形態は特に制限されず、好ましくは三角配列形態またはダイヤモンド型配列形態であるか、同一の円周(pitch of center distance)内にキャピラリーが配列された環状配列形態である。
【0035】
図4は、使用された口金110の断面図であって、口金のキャピラリー111を描写してものである。図4に示したように、液状ポリマーを最終的に吐出するキャピラリーの構造をスリット(slit)形態にすることにより、吐出された原糸の断面形態が円形でなく平面形態を有するようにする。
特に、図4のスリット形態において、スリットの長軸の長さ(W)と短軸の長さ(D)の比を変更させることによって原糸の扁平度を調整することができるが、ここで、「W/D」の比を口金の扁平度といい、この値が1.2以上、さらに好ましくは2.0以上である場合にのみ、平面断面の特性が現われ、延伸性及び高強力特性を確保するためには、上記扁平度が10以下であるのが好ましい。
【0036】
溶融状態の高分子を紡糸して原糸を製造する紡糸パックは、その構造が特に限定されないが、図5のような構成を有する紡糸パックを使用するのが好ましい。図5のような構成の本発明に適用された紡糸パック装置は、高分子導入孔42を備えるブロック41の下部にボディー43を結合し、ボディー43の内部には高分子導入孔42と連通する状態で分散面44’を有する分散板44、レンズ環45、スペーサ46、メタル不織布からなるフィルター47、分配板48、及び口金49が順次に積層設置され、図6及び図7に示したように、上記分散板44に少なくとも1つ以上の従に貫通する高分子流通孔40が形成される。
【0037】
上記分散板44の底面44’’とフィルター47の間の間隔は、4乃至44mmに維持することによって、分散板44の外縁部側の高分子流動通路50を通過する高分子溶融物の滞留時間と、分散板44の高分子流通孔40を通過する高分子溶融物の滞留時間とを同一に維持して、全体的な滞留時間を減少させることができる。また、上記分散板44の底面44’’の形態は特に限定されず、全体的に平面またはゆるやか円錘形であるのが好ましい。
【0038】
前記分散板は、中心に高分子流通孔が形成され、連続して隣接する流通孔の間の放射状間隔(PCD:pitch of Center Diameter)が5乃至40mmであり、分散板の最外郭を直径とする円の面積を基準にして1乃至35%の面積比に該当する流通孔が形成されているのが好ましい。隣接する流通孔の間の放射状間隔が5mm未満である場合には、製作が困難であり、40mmを超える場合には、高分子の分散性が低下する。また、全体分散板の円の面積に対する流通孔の総面積が1%未満である場合には、分散性の低下及び高分子紡糸パックの圧力の上昇を誘発して適用が困難であり、35%を超える場合には、高分子の紡糸パック内の分散効果が低下する。
【0039】
高分子導入孔42に導入された高分子溶融物が本発明の分散板44の円錐状の分散面44’の傾斜角によって自然に流れて、一次的に分散板を縦に貫通する高分子流通孔40に一部が流入し、残り一部は外縁部側の高分子流動通路50に流入して、順次にフィルター47、分配板48、及び口金49を通じて外部に吐出されて繊維を形成する。
本発明に使用された紡糸パック装置では、分散板44での高分子溶融物の流動時に、高分子流動通路50が分散面44’の中央頂点から最も離れた距離に位置する代わりに、分散面44’の傾斜角度によって分散面44’の端部から分散板44の底面44’’までの長さが最も短い。
【0040】
反面、高分子流通孔40は、上記高分子流動通路50に比べて分散板44の中央から近い代わりに、高分子流通孔40を通過して分散板の底面44’’に到達する距離が長い。
したがって、高分子流動通路50を通じて分配板48に到達する高分子溶融物の滞留時間と、高分子流通孔40を通じて分配板48に到達する高分子溶融物の滞留時間が均一になり、全体的な滞留時間が減少できる。
【0041】
また、本発明に適用された紡糸パック装置において、フィルター47は、金属粉末でなく焼結金属の不織布フィルターを使用するので、紡糸時間の経過による原糸の物性変動を防止することができる。
本発明の分散板44は、また、必要に応じて外周縁の周りに形成された少なくとも1つ以上の凹入溝を具備でき、上記前記凹入溝は、等間隔で配列されるのが好ましい。上記凹入溝は、高分子溶融物の流出をより容易にする。
【0042】
このような構造の紡糸パックを適用することによって、紡糸パック内の高分子の流動を均一にすることができるだけでなく、口金の背面圧を高めて、高圧紡糸による放射性を向上させることができる。
口金から吐出されたポリマーは、紡糸張力を低くして、熱履歴を緩和させるために、Hood−Heater(H/H)及び断熱板の組み合わせによって構成された遅延冷却区間を経て急冷(Quenching)される。この時、上記フードヒーター(Hood−Heater: H/H)の温度は200乃至350℃であるのが好ましくて、長さは100乃至400mmであるのが好ましく、断熱板の長さは70乃至400mmであるのが好ましい。上記吐出されたポリマーが上記遅延冷却区間に滞留する時間は0.01乃至0.1秒であるのが好ましく、0.02乃至0.08秒であるのがさらに好ましい。
【0043】
前記フードヒーターの温度が200℃未満であり、長さが100mm未満である場合には、延伸性が低下して、製糸が困難であり、温度が350℃を超えて、長さが400mmを超える場合には、ポリエステルの分解を誘発して、原糸の強力が低下し、溶融ポリエステルの弾性が低下して、扁平な形態の安定化が低下する。また、上記断熱板の長さが70mm未満である場合には、延伸性が低下して、毛羽の発生を誘発し、400mmを超える場合には、固化点が過度に低くなって、紡糸張力の急激な減少によって巻取りが難しくなる。上記遅延冷却区間での滞留時間が0.01秒未満である場合には、遅延急冷の役割を果たすのが難しく、未延伸糸の複屈折率が高くて、延伸性を確保するのが難しく、0.1秒を超える場合には、口金から吐出された未延伸糸の張力の低下によって糸乱及び渦流現象が発生し、毛羽の発生及び切糸などによって操業が困難で、溶融ポリエステルの過度な弾性の低下によって要求される繊維の断面の形態を得るのが難しい。
【0044】
上記急冷過程を経たポリエステル繊維を油剤ロールに通過させて紡糸油剤を付与する。上記紡糸油剤は、通常のポリエステル繊維の製造工程に使用されるものであれば、いずれのものでも使用することができ、好ましくは、エチレンオキシド/プロピレンオキシド付加ジオールエステル、エチレンオキシド付加ジオールエステル、グリセリルトリエステル、トリメチルプロパントリエステル、またはその他のエチレンオキシド付加物から選択される1種または2種以上の混合物である紡糸油剤を使用することができ、上記紡糸油剤は、帯電防止剤などをさらに含むことができる。但し、本発明では、紡糸油剤の種類が上記例に限定されることではない。
【0045】
上記紡糸油剤が付与されたポリエステル繊維は、前集束機(pre−interlacer)を通過した後、延伸装置を経て延伸され、上記延伸条件は、通常のポリエステル繊維の延伸方法によって行うことができる。
この時、本発明の紡糸工程では、前集束機にポリエステル繊維をそのまま通過させたり、または、選択的に前集束機に特定の範囲の風向きの集束エアー(interlacing air)を付与することができる。
【0046】
前集束機に集束エアーが付与される場合、後述される延伸以降の過程を経て、上記のような物性を有するポリエステル繊維を提供し、特に、結晶化度が35%乃至52%であり、引張強度が7.0乃至10.0g/dであり、切断伸度が12%乃至30%である物性を有するポリエステル繊維を提供することができるようにする。
上記前集束機に集束エアーを付与する方法は、図8のように、上記前集束機で原糸の走行方向に対して垂直方向に集束エアーを付与したり、または、図9のように、集束エアーを原糸の走行方向に対して斜線方向に付与することができる。しかし、未延伸糸の断面の形態が扁平なので、エアーによる未延伸糸の渦流現象を防止するために、図9のように、繊維の進行方向に対して斜線方向にエアーを付与するのがさらに好ましく、上記集束エアーの風向きは、前記繊維の進行方向に垂直な面から0゜乃至80゜の角度であるのが最も好ましい。
【0047】
また、上記集束エアーの風圧は、未延伸糸に付与された油剤を原糸に均一に移動(migration)させると同時に、未燃糸を並行に集めることによって延伸性を向上させるために、0.1kg/cm2以上であるのが好ましく、未延伸糸の過度な集束による延伸性の低下を防止するために、1.5kg/cm2以下であるのが好ましい。
上記紡糸工程において、上記紡糸速度が400m/min未満である場合には、糸乱の発生によって原糸の品質が低下し、900m/minを超える場合には、毛羽の発生などによって操業性が低下する。
【0048】
また、上記紡糸工程の延伸比が4.5倍未満である場合には、要求される高強力特性を現わすのが難しく、6.2倍を超える場合には、毛羽の発生などによって原糸の品質が低下するので、延伸比4.5乃至6.2倍であるのが好ましい。特に、本発明の延伸工程は、モノフィラメント(Mono−Filament)間の均一な延伸性の確保のために、図2の141と142の間で発生する予備延伸、142と143の間で発生する1段延伸、143と144の間で発生する2段延伸からなり、上記予備延伸の延伸比は1.01乃至1.1であるのが好ましく、1段延伸の延伸比は全体延伸比に対して60%乃至85%であるのが好ましい。
【0049】
上記延伸装置144で行われる熱処理温度が215℃未満である場合には、収縮率の上昇によって形態安定性が低下し、250℃を超える場合には、切糸及びゴデットローラ上にタールの発生が頻繁で操業性が低下するので、熱処理温度が215乃至250℃であるのが好ましく、220乃至245℃であるのがさらに好ましい。
上記多段延伸装置144乃至146で行われる延伸工程の弛緩率が4%未満の場合には、過度な張力によって原糸の断面が変形され、13%を超える場合には、ゴデットローラ上で過度な糸乱の発生によって操業が難しいので、4%乃至13%であるのが好ましく、弛緩温度は150乃至245℃であるのが好ましい。
【0050】
また、本発明は、上記延伸されたポリエステル繊維に対して、再び第2集速機(2nd Interlacer)を適用して原糸を集束させる。
上記第2集速機(2nd Interlacer)は、空気圧力を利用してポリエステル繊維にインターミングル(intermingle)を付与する。上記第2集速機(2nd Interlacer)は、従来の集束機の空気圧力の低下による集束性の低下を改善して、原糸の長さ方向(原糸の走行方向)に対して均一なインターミングルを付与する役割を果たす。
【0051】
上記第2集速機(2nd Interlacer)は、巻取機の上部または延伸装置のゴデットローラ(Godet−roller)(図2の141乃至146に該当)の間に単独あるいは混用されて位置し、前記第2集速機(2nd Interlacer)に使用される集束空気は、図9のように、繊維の進行方向に対して斜線方向に付与されなければならない。上記集束エアーの風向きは、上記繊維の進行方向に垂直な面から20°乃至80°の角度を有するのが好ましい。また、この時の空気圧力は0.1乃至4kg/cm2であるのが好ましい。
【0052】
上記空気圧力が0.1kg/cm2未満である場合には、原糸に対して集束性を付与するのに不充分であり、結果的に、原糸の抱合性の低下を誘発して、巻取り不良及び毛羽の発生を誘発する。また、空気圧力が4.0kg/cm2を超える場合には、原糸のフィラメントの間に強い交絡が非常に多く存在して(またはCFP値が大きくて)、要求する平滑性を得るのが難しく、原糸の長さ方向に対して屈曲程度が大きい。
【0053】
上記第2集速機(2nd Interlacer)は、微細交絡数を増加させるために、連続して多段に適用することができ、多段の場合、2個以上、好ましくは2乃至4個の集束機が連続的に設置されたのが好ましい。上記第2集速機(2nd Interlacer)を多段に設置する時、多段集束機の数が5個以上である場合には、設置が困難で、作業性も低下するので、最大4個以下であるのが好ましい。
【0054】
特に、上記前集束機(pre−interlacer)及び第2集速機(2nd Interlacer)のそれぞれで、上述したように特定の範囲の風向きを有する集束エアー(interlacing air)を特定の範囲の風圧で付与することにより、本発明のエアバッグ用織物を製造する全体工程で操業性を効果的に向上させることができ、ポリエステル原糸及びこれから製造されるエアバッグ用織物の品質(毛羽水準)を向上させることができるだけでなく、後工程収率も高くて、顕著な経済的な効果を得ることができる。
【0055】
上記第2集速機(2nd Interlacer)を通過したポリエステル繊維は、巻取機を利用して巻取ることにより、本発明のエアバッグ用織物に含まれるポリエステル繊維を製造する。
また、上記ポリエステル繊維の製造方法において、上記原糸の帯電防止性及び集束性の向上を通して後工程性を向上させるために、上記第2集速機(2nd Interlacer)と巻取機の間にアフターオイル付与(after−oiling)装置を設置して、アフターオイル(after−oil)を付与する工程を追加的に含むことができる。
【0056】
図10は、第2集速機(2nd Interlacer)を2個以上多段に適用して、上記アフターオイル付与装置と共に使用することを示した模式的な工程図である。図10に示したように、第2集速機(2nd Interlacer)150は、ポリエステル繊維の延伸装置145、146の次に位置する。また、上記アフターオイル付与装置430は、ジェットガイド形態であり、原糸の走行方向に対して上下または左右に設置され、原糸にアフターオイルを付与する役割を果たす。
【0057】
上記アフターオイル付与装置の付随装置として、アフターオイルを保管するオイル浴槽(bath)431、アフターオイル付与装置に定量的にオイルを供給するメータリングポンプ(metering−pump)432、原糸に供給され残った残量または上記アフターオイル付与装置で発生する落油を集め、オイル浴槽に移送して、再循環させて、巻取機440の汚染防止などの役割を果たすオイル回収浴槽433などがさらに含まれる。
【0058】
上記アフターオイル付与工程で付与されるオイルの量は、ポリエステル繊維の重量に対して0.1乃至2.0重量%であるのが好ましい。アフターオイルの量が0.1重量%未満である場合には、ポリエステル繊維に要求される集束性の向上及び帯電防止性の改善の効果が微々たるものであり、2.0重量%を超える場合には、経済性が低下して、オイルによる汚染を誘発し、コーティング織物に適用する時には接着力を阻害することがある。
【0059】
上記アフターオイルとしては、通常のポリエステル繊維用アフターオイル(after−oil)を使用することができる。上記原糸用アフターオイルは、延伸工程を経る前に付与された油剤とは区別されるもので、好ましくは、ポリオール−ポリアルキレートを主成分として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、酸化防止剤、及び帯電防止剤などを含むオイルを使用することができる。
【0060】
上記ポリエステル繊維の製造方法においては、また、弛緩工程(図2の144と146の間)中に糸乱によってモノフィラメントが互いに重なるのを防止し、走行原糸の扁平な形態を維持するために、弛緩工程以降(図2の145と146の間)にテンションガイドをさらに適用することができる。
本発明において、上記ポリエステル繊維は、通常の製織方法と、精練、テンダリング工程、及びシリコン樹脂のコーティング工程を経て最終的なエアバッグ用織物に製造される。このようにコーティングされたエアバッグ用織物は、裁断と縫製工程を経て一定の形態を有するエアバッグクッション形態に製造される。上記エアバッグは特別な形態に限定されず、一般的な形態に製造することができる。
【0061】
また、本発明は、上記エアバッグを含むエアバッグシステムを提供し、上記エアバッグシステムは、関連業者らによく知られた通常の装置を備えることができる。上記エアバッグは、大きくフロンタルエアバッグ(Frontal Airbag)とサイドカーテンエアバッグ(Side Curtain Airbag)に区分できる。上記フロンタル用エアバッグには、運転席用、助手席用、側面保護用、膝保護用、足首保護用、歩行者保護用エアバッグなどがあり、サイドカーテンタイプのエアバッグは、自動車の側面衝突や転覆事故時に乗客を保護する。したがって、本発明のエアバッグは、フロンタル用エアバッグとサイドカーテンエアバッグを全て含む。
【0062】
本発明において、上述した内容以外の事項は必要によって加減が可能であるので、本発明では特に限定しない。
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されることではない。
【実施例】
【0063】
<実施例1乃至7>
(1)ポリエステル繊維の製造
固有粘度0.85g/dLのポリエステル固体重合チップを285℃の温度で溶融して、スリット形紡糸口金を通して溶融ポリエステルを吐出した。
上記吐出された溶融ポリエステルをフードヒーター及び断熱板から構成された遅延冷却区間に通過させて、遅延急冷(delayed quenching)した。
【0064】
蒸気遅延急冷されたポリエステル繊維に、ロール形態の油剤付与装置を利用して油剤を付与した。この時、上記油剤の量は、原糸100重量部に対して0.8重量部であり、使用された油剤は、エチレンオキシド/プロピレンオキシド付加ジオールエステル(30重量部)、エチレンオキシド付加ジオールエステル(15重量部)、グリセリルトリエステル(10重量部)、トリメチルプロパントリエステル(10重量部)、及び少量の帯電防止剤を混合した紡糸油剤を使用した。
【0065】
上記油剤が付与された原糸を前集束機に通過させて、ゴデットローラを利用して延伸した。
上記延伸後に、第2集速機(2nd Interlacer)を利用して上記延伸されたポリエステル繊維にインターミングルを付与した後、巻取機で巻取ってポリエステル繊維を製造した。
【0066】
本発明の実施例において、紡糸口金のキャピラリーの形態及び扁平度、口金でのシヤーレート(Shear−rate;秒−1)及び適用紡糸パックの構造、フードヒーターの温度及び長さ、断熱板の長さ、遅延冷却区間の滞留時間、紡糸速度、弛緩率、熱処理温度などの条件をそれぞれ下記表1に表した。また、紡糸パックの形態は特に限定されないが、好ましいように図5の形態の紡糸パックを適用してポリエステル繊維を製造した。
【0067】
(2)エアバッグ用織物の製造
上記のように製造されたそれぞれのポリエステル繊維原糸を使用して、レピア織機によってエアバッグ用織物生地を製造した。この時に要求される空気透過度を達成するために、緯糸と縦糸の本数を同一にして平織に製織し、この時の繊維の総繊度、フィラメント数、及び製織密度は下記表1に表したように行った。
【0068】
水酸化ナトリウム1.5g/L、界面活性剤1.08g/L、浸透剤1.08g/L、及び分散剤1.25g/Lとなるように水と混合して、2つの薬品槽に分けて投入し、各薬品槽の温度を75℃に維持させた。また、上記各薬品槽のそばに80℃及び85℃の温度を有する水洗槽2つずつをそれぞれ連続配置した。
上記織機で製織されたエアバッグ用生地を、前記準備された薬品槽に1次通過させた後、2つの水洗槽に連続的に通過させ、さらに薬品槽と2つの水洗槽に2次通過させた。
【0069】
上記水洗槽を通過したエアバッグ用生地をマングルに通過させて脱水した後、110℃の熱風で乾燥して残留水分を完全に乾燥させて、エアバッグ用織物を製造した。
また、下記表1に表したようなコーティング量となるように、上記織物にポリ塩化ビニル(PVC)樹脂をナイフコーティング(knife over ro1lcoating)方法でコーティングして、PVCコーティングされた織物を製造した。
【0070】
<比較例1>
下記表1の諸般条件によってポリエステル繊維を製造したことを除いては、上記実施例1と同様の方法でエアバッグ用織物を製造した。
【0071】
【表1】
【0072】
<実験例1>
上記実施例1〜7及び比較例1によって製造されたポリエステル繊維に対して、下記の方法によって扁平度、収縮応力、収縮率、固有粘度、引張強度、切断伸度、及び原糸の断面形態指数(R1、H1、R1/H1、CV%)、後工程収率、及び工程操業性(F/D)を測定し、上記ポリエステル繊維を利用して製造されたエアバッグ用織物に対して、下記の方法によって厚度、引張強度、引裂強度、及び空気透過度を測定した。
【0073】
以降、それぞれの物性測定結果を下記表2に表し、実施例1で製造された扁平断面糸の断面写真を図11に示した。
(1)扁平度
繊維断面の扁平な程度を示す値で、銅板を利用して繊維断面を切断し、これを光学顕微鏡で拡大撮影して、繊維断面の長軸の長さ(W)と繊維断面の短軸の長さ(D)を測定し、これを通じて下記の計算式1によってそれぞれのフィラメントに対する扁平度を計算し、全体フィラメントの平均値を求めて、ポリエステル繊維の扁平度を求めた。
【0074】
[計算式1]
個別フィラメントの扁平度(Fi)=W/D、
原糸の扁平度=(個別フィラメントの扁平度の合計)/(フィラメント数)
(2)R1、R2、R3及びR4の変動係数(CV%)
上記光学顕微鏡で拡大撮影した繊維断面から、図1に示したようにそれぞれのフィラメントに対するR1、R2、R3及びR4を測定して、計算式2によって全体フィラメントのR1、R2、R3及びR4の平均値及び標準偏差を計算して、下記の計算式3によって変動係数(CV%)を求めた。
【0075】
[計算式2]
平均(R)=フィラメント全体の(R1+R2+R3+R4)合計/(4×n)
上記式において、nは、測定されたフィラメントの全体数であり、Rは、全体フィラメントのR1、R2、R3及びR4の平均値である。
[計算式3]
変動係数(CV%)=標準偏差(σ)/平均(R)×100(%)
(3)R1/H1、R2/H2、R3/H3、及びR4/H4の平均値及び標準偏差
上記光学顕微鏡で拡大撮影した繊維断面から、図1のR1、R2、R3及びR4とH1、H2、H3及びH4を測定して、計算式4によって全体フィラメントのR1/H1、R2/H2、R3/H3及びR4/H4の平均値及び標準偏差を計算して、計算式3によって変動係数(CV%)を求めた。
【0076】
[計算式4]
平均(R/H)=フィラメント全体の(R1/H1+R2/H2+R3/H3+R4/H4)合計/(4×n)
上記式において、nは、測定されたフィラメントの全体数であり、R/Hは全体フィラメントのR1/H1、R2/H2、R3/H3及びR4/H4の平均値である。
【0077】
(4)収縮応力(g/d)
カネボ(Kanebo)社の熱応力測定機を利用して、初期荷重0.1g/d下で昇温速度2.5℃/secに昇温しながら150℃と200℃でそれぞれの応力値を測定した。試料はループ(Loop)形態に結び目を結んで準備する。
[計算式5]
熱応力(g/d)=熱応力測定値(g)/測定原糸繊度×2
(5)収縮率(%)
収縮率は、特定温度で熱による試料の長さ変化を百分率に示す値で、下記の計算式6によって定義される。
【0078】
[計算式6]
収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
上記式において、L0は、熱収縮前の試料の長さであり、L1は熱収縮後の試料の長さである。
上記収縮率は、テスライト(TesRite)社の収縮動き試験器(Testrite MKV)を利用して、0.01g/dの一定の荷重下で原糸を固定させた後、収縮率を測定し、測定条件は、190℃で0.01g/dの荷重を加えた状態で15分経過した状態を基準にした。
【0079】
(6)固有粘度
四塩化炭素を利用して試料で油剤を抽出し、160±2℃でOCP(Ortho Chloro Phenol)で溶解した後、25℃の条件で自動粘度測定器(Skyvis−4000)を利用して粘度管での試料粘度を測定して、下記の計算式7によってポリエステル繊維の固有粘性度(intrinsic viscosity、IV)を求めた。
【0080】
[計算式7]
固有粘性度(IV)={(0.0242×Rel)+0.2634}×F
上記式において、
Rel=(溶液秒数×溶液比重×粘度係数)/(OCP粘度)、
F=Standard ChipのIV/ Standard Chipを標準動作で測定した3つの平均IV
(7)引張強度(g/d)、切断伸度(%)
ポリエステル繊維の引張強度及び切断伸度を万能材料試験器(Instron)を使用して測定し、試料長は250mmであり、引張速度は300mm/minとし、初期ロードは0.05g/dに設定した。
【0081】
(8)工程操業性(F/D)
ポリエステル繊維の生産性を示す指標として、全体ドッフィング(Doffing)数に対する完全チーズドッフィング(Full−Cheese Doffing)数の分率を下記の計算式8で計算した。
[計算式8]
F/D(%)=完全チーズドッフィング数/完全チーズドッフィング数+部分チーズドッフィング(Partial Cheese Doffing)数×100
(9)整経毛羽数
毛羽感知機(fluff−detector)のチェック回数を106mに換算して計算した。
【0082】
(10)後工程収率
全体投入されたポリエステル繊維に対する正常製品の百分率値を下記の計算式9によって計算した。
[計算式9]
後工程収率=正常製品数量/全体投入原糸量×100
(11)コーティング織物の厚度
実施例1乃至7及び比較例1によって製造されたコーティングされたエアバッグ用織物に対して厚さを測定し、実施例1乃至7によって製造されたポリエステル繊維で製造された織物の厚さ(T)を比較例1によって製造された織物の厚さ(t)で割って、百分率に計算した。
【0083】
[計算式10]
織物の厚度(%、相対値)=T/t×100
(12)引張強度
エアバッグ用織物から試片を裁って、米国材料試験協会規格(ASTM)D5034による引張強度測定装置の下部クランプに固定させ、上部クランプを上に移動させながらエアバッグクッション試片が破断する時の強度を測定した。
【0084】
(13)引裂強度
エアバッグ用織物で試片を裁った後、緯糸または縦糸方向に7cmを切開して、米国材料試験協会規格(ASTM)D2261による引裂強度測定装置のクランプに上記切開部の左右織物を挟んで装着した。上記織物が装着された状態でそれぞれのクランプを上、下に交差移動させながら織物を破裂させて強度を測定した。
【0085】
(14)空気透過度
米国材料試験協会規格(ASTM)D1338により、エアバッグ用織物を20℃、65%RH下で1日以上放置した後、125Paの圧力の空気が38cm2の円形断面を通過する量を測定した。
【0086】
【表2】
【0087】
上記表2に示したように、本発明の実施例1乃至7によって製造されたエアバッグ用織物は、収縮応力と収縮率が低くて、熱的形態安定性に優れているだけでなく、原糸のフラットした断面形態が均一であることで、コーティング織物の厚度を低くして、エアバッグ織物のフォールディング性を改善でき、収納性を向上させることができる。また、織物の引張強度、引裂強度、及び空気透過度の側面に優れた性能を有することが分かる。しかし、比較例1によって製造された一般的な円形断面のポリエステル繊維を使用したエアバッグ用織物の場合、織物の引張強度、引裂強度は類似しているが、空気透過度が顕著に低下することが分かる。
【0088】
<実施例8乃至14及び比較例2>
(1)ポリエステル繊維の製造
固有粘度0.85g/dLのポリエステル固体重合チップを285℃の温度で溶融して、スリット形紡糸口金を通じて溶融ポリエステルを吐出した。
上記吐出された溶融ポリエステルをフードヒーター及び断熱板から構成された遅延冷却区間に通過させて遅延急冷(delayed quenching)した。
【0089】
蒸気遅延急冷されたポリエステル繊維に、ロール形態の油剤付与装置を利用して油剤を付与した。この時、上記油剤の量は原糸100重量部に対して0.8重量部であり、使用された油剤はエチレンオキシド/プロピレンオキシド付加ジオールエステル(30重量部)、エチレンオキシド付加ジオールエステル(15重量部)、グリセリルトリエステル(10重量部)、トリメチルプロパントリエステル(10重量部)、及び少量の帯電防止剤を混合した紡糸油剤を使用した。
【0090】
上記油剤が付与された原糸を図9の前集束機に通過させ、ゴデットローラを利用して延伸した。
上記延伸後に、図9の第2集速機(2nd Interlacer)を利用して、上記延伸されたポリエステル繊維にインターミングルを付与した。
上記集束機を通過したポリエステル繊維にジェットガイド形態のオイル付与装置を利用してアフターオイル(after−oil)を付与した。この時、上記アフターオイルの量は原糸100重量部に対して0.7重量部であり、使用されたアフターオイルは、ポリオール−ポリアルキレート(70重量部)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(20重量部)、酸化防止剤(2重量部)、及び帯電防止剤(2重量部)を混合したオイルである。
【0091】
上記アフターオイル付与工程が終わって、巻取機で巻取ってポリエステル繊維を製造した。
本発明の実施例において、紡糸口金のキャピラリーの形態及び扁平度、フードヒーターの温度及び長さ、断熱板の長さ、遅延冷却区間の滞留時間、前集束機の風向き及び風圧、紡糸速度、延伸比(予備延伸比、全体延伸比に対する1段延伸倍率)、弛緩率、熱処理温度、第2集速機(2nd Interlacer)の個数、風向き、及び風圧、油剤、及びアフターオイル付与などの条件をそれぞれ上記表3に表した。
【0092】
集束機の風向きは、図9に示したように、繊維走行方向の直角方向を基準としてエアー(Air)が噴射される角度を意味する。即ち、0°は繊維進行方向に対して直角方向であり、90°は繊維進行方向と平行することを意味する。
(2)エアバッグ用織物の製造
上記のように製造されたそれぞれのポリエステル繊維原糸を使用して、レピア織機によってエアバッグ用織物生地を製造した。この時に要求される空気透過度を達成するために、緯糸と縦糸の本数を同一にして平織で製織し、この時の繊維の総繊度、フィラメント数、及び製織密度は、下記表3に表したように行った。
【0093】
水酸化ナトリウム1.5g/L、界面活性剤1.08g/L、浸透剤1.08g/L、及び分散剤1.25g/Lとなるように水と混合して、2つの薬品槽に分けて投入し、各薬品槽の温度を75℃に維持させた。また、上記各薬品槽のそばに80℃及び85℃の温度を有する水洗槽2つずつをそれぞれ連続配置した。
上記織機で製織されたエアバッグ用生地を、上記準備された薬品槽に1次通過させた後、2つの水洗槽に連続的に通過させ、さらに薬品槽と2つの水洗槽に2次通過させた。
【0094】
上記水洗槽を通過したエアバッグ用生地をマングルに通過させて脱水した後、110℃の熱風で乾燥して残留水分を完全に乾燥させて、エアバッグ用織物を製造した。
また、下記表3に表したようなコーティング量となるように、上記織物にポリ塩化ビニル(PVC)樹脂をナイフコーティング(knife over ro1l coating)方法でコーティングして、PVCコーティングされた織物を製造した。
【0095】
【表3】
【0096】
<実験例2>
上記実施例8乃至14及び比較例2によって製造されたポリエステル繊維に対し、上記と同様の方法で扁平度、収縮応力、収縮率、固有粘度、引張強度、切断伸度、工程操業性、及び整経毛羽数を測定し、前記ポリエステル繊維を利用して製造されたエアバッグ用織物に対し、上記と同様の方法で厚度、引張強度、引裂強度、及び空気透過度を測定した。また、ポリエステル繊維に対して下記の方法で結晶化度を測定した。
【0097】
この時、コーティングされた織物の厚度は、上記比較例1の代わりに比較例2の値を基準として、上記計算式10によって実施例8乃至14の相対値を測定した。
以降、それぞれの物性測定結果を下記表4に表し、実施例8によって製造された扁平断面糸の断面写真は図11と同一に得られた。
(15)結晶化度(%)
ポリエステル繊維原糸の密度ρは、n−ヘプタンと四塩化炭素を利用した密度勾配管法によって25℃で測定し、結晶化度は下記の計算式11によって計算した。
【0098】
[計算式11]
Xc(結晶化度)=ρc(ρ−ρa)/ ρ( ρc− ρa )
上記計算式11において、ρは、原糸の密度、ρcは、結晶の密度(PETの場合は1.457g/cm3)、ρaは、非結晶の密度(PETの場合は1.336g/cm3)である。
【0099】
【表4】
【0100】
上記表4に示したように、本発明の実施例8乃至14によって製造されたエアバッグ用織物は、収縮応力と収縮率が低くて、熱的形態安定性に優れているだけでなく、原糸のフラットした断面形態が均一であることで、コーティング織物の厚度を低くすることができ、織物の引張強度、引裂強度、及び空気透過度の側面で優れた性能を有することが分かる。
特に、実施例8乃至14によって製造されたエアバッグ用織物は、繊維の断面を扁平な形態に効果的に製造して、断面の形態を均一化させることにより、表面平滑性を極大化させ、全体的な製造工程で操業性を向上させ、原糸及びこれから製造される織物の品質(毛羽水準)に優れているだけでなく、後工程収率も高くて経済的な効果を得ることができる。
【0101】
しかし、比較例2によって製造された一般的な円形断面のポリエステル繊維を使用したエアバッグ用織物の場合、織物の引張強度、引裂強度、及び空気透過度が顕著に低下することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明はエアバッグ用織物に関し、エアバッグ用原糸として繊維の断面が扁平な形態のポリエステル繊維を使用することで、エアバッグの膨張時の空気遮断効果が非常に優れており、織物の厚さが円形断面の原糸に比べて薄く、表面屈曲性及び空隙率も低いので、コーティング織物におけるコーティング樹脂の使用量を減少させて製品の軽量化が可能であり、モジュールシステムで収納性及びフォールディング性に優れた製品を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維断面の扁平度が1.3乃至3.0であり、前記断面の最長軸両端点をW1及びW2と定義し、前記最長軸の中央点Oから垂直方向への最短軸両端点をD1及びD2と定義し、前記W1とD1とを連結する斜線をL1、D1とW2とを連結する斜線をL2、W1とD2とを連結する斜線をL3、W2とD2とを連結する斜線をL4と定義し、L1、L2、L3及びL4から断面の外側に最も遠い周縁までの距離をそれぞれR1、R2、R3及びR4と定義し、前記L1、L2、L3及びL4から中央点Oまでの距離をそれぞれH1、H2、H3、及びH4と定義すると、
全体フィラメントのR1乃至R4の変動係数(CV%)が20%以下であるポリエステル繊維を含むエアバッグ用織物。
【請求項2】
前記ポリエステル繊維は、全体フィラメントに対するR1/H1、R2/H2、R3/H3及びR4/H4の平均値が0.2乃至0.9である、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項3】
前記ポリエステル繊維は、全体フィラメントのR1/H1、R2/H2、R3/H3及びR4/H4の変動係数(CV%)が20%以下である、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項4】
前記ポリエステル繊維は、150℃での収縮応力(@0.1g/d、2.5℃/sec)が0.005乃至0.1g/dであり、200℃での収縮応力(@0.1g/d、2.5℃/sec)が0.005乃至0.1g/dであり、収縮率(@190℃、15分、0.01g/d)が1.5%乃至10.0%である、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項5】
前記ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレートを90モル%以上含む、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項6】
前記ポリエステル繊維は、固有粘度が0.7乃至1.2dl/gである、請求項5に記載のエアバッグ用織物。
【請求項7】
前記ポリエステル繊維は、引張強度が7.0乃至10.0g/dであり、切断伸度が12%乃至30%である、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項8】
ポリエステル繊維は、単糸繊度が2.1de乃至11.0deである、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項9】
扁平度が1.3乃至3.0であり、150℃での収縮応力(@0.1g/d、2.5℃/sec)が0.005乃至0.1g/dであり、200℃での収縮応力(@0.1g/d、2.5℃/sec)が0.005乃至0.1g/dであり、収縮率(@190℃、15分、0.01g/d)が1.5%乃至10.0%であるポリエステル繊維を含むエアバッグ用織物。
【請求項10】
前記ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレートを90モル%以上含む、請求項9に記載のエアバッグ用織物。
【請求項11】
前記ポリエステル繊維は、固有粘度が0.7乃至1.2dl/gである、請求項9に記載のエアバッグ用織物。
【請求項12】
前記ポリエステル繊維は、結晶化度が35%乃至52%である、請求項9に記載のエアバッグ用織物。
【請求項13】
前記ポリエステル繊維は、引張強度が7.0乃至10.0g/dであり、切断伸度が12%乃至30%である、請求項9に記載のエアバッグ用織物。
【請求項14】
前記織物の表面にコーティングまたはラミネートされた樹脂コーティング層を追加的に含む、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項15】
前記樹脂コーティング層は、シリコン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群より選択した1種以上を含む、請求項14に記載のエアバッグ用織物。
【請求項16】
前記樹脂コーティング層の単位面積当たりコーティング量が20乃至200g/m2である、請求項14に記載のエアバッグ用織物。
【請求項17】
前記織物は、米国材料試験協会規格(ASTM D 737)方法で測定した空気透過度が0乃至10.0cfmである、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項18】
ポリエステル固体重合チップをスリット形態の口金を通じて溶融紡糸して延伸し、断面の扁平度が1.3乃至3.0であるポリエステル繊維を製造する段階と、
前記ポリエステル繊維を利用してエアバッグ用生地を製織する段階と、
前記製織されたエアバッグ用生地を精練する段階と、
前記精練された織物をテンダリングする段階と、
を含むエアバッグ用織物の製造方法。
【請求項19】
前記口金の扁平度は1.2乃至10である、請求項18に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
【請求項20】
前記ポリエステル固体重合チップの固有粘度が0.7乃至1.2dl/gである、請求項18に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
【請求項21】
前記織物の表面に樹脂コーティング層をコーティングまたはラミネートする段階を追加的に含む、請求項18に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
【請求項22】
前記紡糸工程は270乃至310℃で行う、請求項18に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
【請求項1】
繊維断面の扁平度が1.3乃至3.0であり、前記断面の最長軸両端点をW1及びW2と定義し、前記最長軸の中央点Oから垂直方向への最短軸両端点をD1及びD2と定義し、前記W1とD1とを連結する斜線をL1、D1とW2とを連結する斜線をL2、W1とD2とを連結する斜線をL3、W2とD2とを連結する斜線をL4と定義し、L1、L2、L3及びL4から断面の外側に最も遠い周縁までの距離をそれぞれR1、R2、R3及びR4と定義し、前記L1、L2、L3及びL4から中央点Oまでの距離をそれぞれH1、H2、H3、及びH4と定義すると、
全体フィラメントのR1乃至R4の変動係数(CV%)が20%以下であるポリエステル繊維を含むエアバッグ用織物。
【請求項2】
前記ポリエステル繊維は、全体フィラメントに対するR1/H1、R2/H2、R3/H3及びR4/H4の平均値が0.2乃至0.9である、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項3】
前記ポリエステル繊維は、全体フィラメントのR1/H1、R2/H2、R3/H3及びR4/H4の変動係数(CV%)が20%以下である、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項4】
前記ポリエステル繊維は、150℃での収縮応力(@0.1g/d、2.5℃/sec)が0.005乃至0.1g/dであり、200℃での収縮応力(@0.1g/d、2.5℃/sec)が0.005乃至0.1g/dであり、収縮率(@190℃、15分、0.01g/d)が1.5%乃至10.0%である、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項5】
前記ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレートを90モル%以上含む、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項6】
前記ポリエステル繊維は、固有粘度が0.7乃至1.2dl/gである、請求項5に記載のエアバッグ用織物。
【請求項7】
前記ポリエステル繊維は、引張強度が7.0乃至10.0g/dであり、切断伸度が12%乃至30%である、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項8】
ポリエステル繊維は、単糸繊度が2.1de乃至11.0deである、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項9】
扁平度が1.3乃至3.0であり、150℃での収縮応力(@0.1g/d、2.5℃/sec)が0.005乃至0.1g/dであり、200℃での収縮応力(@0.1g/d、2.5℃/sec)が0.005乃至0.1g/dであり、収縮率(@190℃、15分、0.01g/d)が1.5%乃至10.0%であるポリエステル繊維を含むエアバッグ用織物。
【請求項10】
前記ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレートを90モル%以上含む、請求項9に記載のエアバッグ用織物。
【請求項11】
前記ポリエステル繊維は、固有粘度が0.7乃至1.2dl/gである、請求項9に記載のエアバッグ用織物。
【請求項12】
前記ポリエステル繊維は、結晶化度が35%乃至52%である、請求項9に記載のエアバッグ用織物。
【請求項13】
前記ポリエステル繊維は、引張強度が7.0乃至10.0g/dであり、切断伸度が12%乃至30%である、請求項9に記載のエアバッグ用織物。
【請求項14】
前記織物の表面にコーティングまたはラミネートされた樹脂コーティング層を追加的に含む、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項15】
前記樹脂コーティング層は、シリコン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群より選択した1種以上を含む、請求項14に記載のエアバッグ用織物。
【請求項16】
前記樹脂コーティング層の単位面積当たりコーティング量が20乃至200g/m2である、請求項14に記載のエアバッグ用織物。
【請求項17】
前記織物は、米国材料試験協会規格(ASTM D 737)方法で測定した空気透過度が0乃至10.0cfmである、請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項18】
ポリエステル固体重合チップをスリット形態の口金を通じて溶融紡糸して延伸し、断面の扁平度が1.3乃至3.0であるポリエステル繊維を製造する段階と、
前記ポリエステル繊維を利用してエアバッグ用生地を製織する段階と、
前記製織されたエアバッグ用生地を精練する段階と、
前記精練された織物をテンダリングする段階と、
を含むエアバッグ用織物の製造方法。
【請求項19】
前記口金の扁平度は1.2乃至10である、請求項18に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
【請求項20】
前記ポリエステル固体重合チップの固有粘度が0.7乃至1.2dl/gである、請求項18に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
【請求項21】
前記織物の表面に樹脂コーティング層をコーティングまたはラミネートする段階を追加的に含む、請求項18に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
【請求項22】
前記紡糸工程は270乃至310℃で行う、請求項18に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−502194(P2012−502194A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525985(P2011−525985)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【国際出願番号】PCT/KR2009/005047
【国際公開番号】WO2010/027228
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【国際出願番号】PCT/KR2009/005047
【国際公開番号】WO2010/027228
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】
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