説明

エアバッグ装置を備えたステアリングホイール

【課題】 車両衝突時にパッド部からドーナツ状に膨張展開するエアバッグクッションを備えたステアリングホイールにおいて、該パッド部の固定部に設けられた操作部の視認性を向上する。
【解決手段】 固定部2に設けられたホーンスイッチ30のスイッチカバー31の乗員側に間接照明としての照明装置60を設ける。具体的には、前記スイッチカバー31の乗員側にアクリル板61を配設し、その乗員側の面に黒色等の塗料を塗布してマスク部63を、車両前方側の面に白色等の塗料を塗布して反射部64をそれぞれ形成する。前記マスク部63の車両前方側で且つアクリル板61の内部にLED62を配設する。前記マスク部63は、乗員側から見てメーカーのエンブレム等を象るように形成されていて、前記LED62が点灯すると、エンブレム部分が光るようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時に乗員を保護するためのエアバッグ装置を備えたステアリングホイールに関し、特に、該ステアリングホイールのパッド部に車載装置などの操作部を設ける場合の構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般に、車両衝突時に乗員の受ける衝撃を軽減するために、ステアリングホイールにエアバッグ装置を設けたものが知られている。このように、ステアリングホイールにエアバッグ装置を設ける場合、該エアバッグ装置は、ステアリングホイールのパッド部内に配設されて、衝突を感知した際に、エアバッグクッションを乗員の前方に展開させるように構成される。
【0003】
また、上述の如くエアバッグ装置を設けたステアリングホイールのパッド部に、ホーンスイッチなどの車載装置の操作部や液晶パネル等の表示部を設けるとともに、その操作部などを避けてエアバッグクッションが展開するように構成されたものもある。すなわち、例えば特許文献1に開示されるステアリングホイールでは、エアバッグクッションを、前記操作部などの設けられたパッド部の中央部分を避けるように正面視でリング状に配設するとともに、パッド部の中央部分から放射状に破断溝を形成し、該エアバッグクッションの膨張展開時には、固定部としてのパッド部中央部分を残してその周囲のカバー部分だけを放射状に展開させるようにしている(以下、ドーナツ型エアバッグともいう)。
【0004】
このようなドーナツ型エアバッグを備えたステアリングホイールにおいては、前記操作部などの設けられているパッド部の中央部分は固定部となってエアバッグクッションの膨張展開時でも展開されないため、前記特許文献1に示すような液晶パネルや、或いは別の特許文献2に示すようなホーンスイッチを避けてエアバッグクッションが膨張展開することになり、これにより、該エアバッグクッションの展開性を確保しつつ展開時に前記スイッチ等が乗員に接触するのを防止できる。
【0005】
なお、一般的に、ステアリングホイールのパッド部には、自動車メーカーのエンブレムなどが設けられていて、このエンブレムを発光させることで装飾機能及び広告機能を高めるようにしたものも知られている(例えば特許文献3を参照)。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/135163号明細書
【特許文献2】特開2004−224145号公報
【特許文献3】特開2000−118320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようなドーナツ型エアバッグにおいて、ステアリングホイールのパッド部の固定部に操作スイッチやホーンスイッチ等を設けると、スイッチ等の操作性は向上するが、運転時の乗員の目線から下方に位置することになるため、それらスイッチ等の視認性は良好なものとは言えず、特に夜間では緊急時等に的確な操作を行うことは困難である。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両衝突時にパッド部からドーナツ状に膨張展開するエアバッグクッションを備えたステアリングホイールにおいて、固定部としてのパッド部に車載装置の操作部などを配設する場合の構成に工夫を凝らして、その固定部に設けた操作部の視認性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係るエアバッグ装置を備えたステアリングホイールでは、パッド部の固定部に厚み方向の寸法の余裕があることに着目して、その固定部に操作部のための照明手段を設けた。
【0009】
すなわち、請求項1の発明では、車両の乗員が把持する外周側のリング部と、該リング部の略中心に位置付けられ、該リング部とスポーク部を介して接続されるパッド部とを備え、前記パッド部内に、リング状に収納されたエアバッグクッションを車両衝突時に乗員側に膨張展開させるエアバッグ装置が配設されたステアリングホイールを前提とする。
【0010】
そして、前記パッド部は、その乗員側をカバーによって覆われていて、エアバッグクッションの膨張展開時でもカバーの展開されない固定部と、該固定部の周囲に設けられて、前記エアバッグクッションの膨張展開時に展開される展開部とを備え、前記固定部には、車載装置を操作するための操作部が設けられているとともに、該操作部を照明可能な照明手段が設けられているものとする。
【0011】
この構成により、車両衝突時にドーナツ状に膨張展開するエアバッグクッションを備えたステアリングホイールにおいて、パッド部の固定部に操作部と該操作部のための照明手段とを設けることで、運転時には運転者の視界の下方に位置し且つ比較的面積の狭い固定部に設けられる操作部の視認性を向上することができ、夜間等でも操作部の操作性を向上することができる。
【0012】
また、前記照明手段をエアバッグクッションの膨張展開時でも展開されない固定部に設けることで、例えば厚み方向の寸法が大きくなる間接照明など、多様な構造の照明を採用することができ、照明設計の自由度を拡げることができる。
【0013】
上述の構成において、前記操作部は、ホーンスイッチであるものとする(請求項2の発明)。このように、ホーンスイッチに照明手段を設けることで、夜間等でもホーンスイッチの視認性を向上することができ、緊急性の高い場合でも確実にホーンを鳴らすことができる。
【0014】
請求項3の発明では、車両の乗員が把持する外周側のリング部と、該リング部の略中心に位置付けられ、該リング部とスポーク部を介して接続されるパッド部とを備え、前記パッド部内に、リング状に収納されたエアバッグクッションを車両衝突時に乗員側に膨張展開させるエアバッグ装置が配設されたステアリングホイールを前提とする。
【0015】
そして、前記パッド部は、その乗員側をカバーによって覆われていて、エアバッグクッションの膨張展開時でもカバーの展開されない固定部と、該固定部の周囲に設けられて、前記エアバッグクッションの膨張展開時に展開される展開部とを備え、前記固定部及び展開部によってホーンスイッチが構成されるとともに、前記固定部には、該固定部を照明可能な照明手段が設けられているものとする。
【0016】
この構成により、ステアリングホイールのパッド部の固定部と展開部とによってホーンスイッチが構成された場合でも、内部にエアバッグクッションが収納されておらず、乗員の操作に対して応答性良く確実にホーンを鳴らすことのできる固定部を照らすように照明手段を設けることで、該固定部の視認性を向上することができ、ホーンスイッチの操作性を向上することができる。
【0017】
そして、前記照明手段は、固定部の乗員側に配設され、該乗員側若しくは車両前方側のいずれか一方の面に凹凸部の形成されたクリア板と、前記クリア板の凹凸部に対して車両前方側から光を照射させる発光体とによって構成されるのが好ましい(請求項4の発明)。
【0018】
これにより、発光体からの光がクリア板の凹凸部によって分散されて、運転者に届く光量が低減されるため、夜間等でも固定部の視認性を確保しつつ、車両走行中における運転者の車両前方の視認性の悪化を防止することができる。しかも、前記クリア板の凹凸部によって照明部分が立体的に光って見えるなどの装飾効果も得ることができる。
【0019】
さらに、前記照明手段は、発光体が乗員の視界に直接、入らないような位置に配設された間接照明であるのが好ましい(請求項5の発明)。運転者の近くに位置するステアリングホイールのパッド部に直接照明を設けると、光量が強すぎて運転時の前方の視認性を阻害するが、上述のように、直接、乗員の視界に入らないような間接照明にすることで、適度な光量にすることができ、運転時の前方の視認性が阻害されるのを防止することができる。しかも、間接照明の柔らかな光によって高級感のある装飾効果も得ることができる。
【0020】
また、上述の請求項1、3の発明において、前記照明手段は、固定部の乗員側に配設され、遮光性を有するマスク部が車両前方側の面に設けられたクリア板と、前記クリア板との間に空間部を形成するように該クリア板の車両前方に配設され、前記固定部によって支持される基部と、を備え、前記基部の乗員側の面及び前記クリア板の車両前方側の面のうち少なくとも一方に光を照射するように、前記空間部内に発光体が配設されていてもよい(請求項6の発明)。
【0021】
これにより、発光体はクリア板と基部との間の空間部分に設けられ、乗員側に配設されるクリア板に発光体を設けるための穴等を形成する必要がなくなるため、該クリア板の剛性が低下するのを防止することができ、エアバッグ展開時に固定部の周囲で展開膨張されるエアバッグの圧力によりクリア板が破損するのを確実に防止することができる。
【0022】
そして、上述の構成において、前記基部の乗員側の面には、光を反射するための反射部が設けられていて、発光体は、乗員の視界に入らないようにクリア板のマスク部の車両前方に配置されるのが好ましい(請求項7の発明)。こうすれば、乗員の視界に発光体が直接、入らないような間接照明にすることができるため、運転者に届く光を適度な光量にして、運転時に前方の視認性が阻害されるのを防止することができる。しかも、間接照明の柔らかな光によって高級感のある装飾効果も得ることができる。
【0023】
さらに、上述の請求項1、3の発明において、前記照明手段は、固定部の乗員側に配設される第1クリア板と、前記第1クリア板の車両前方に配設される第2クリア板と、を備え、前記第1クリア板の車両前方側の面若しくは前記第2クリア板の乗員側の面のいずれか一方には、遮光性を有するマスク部が設けられていて、前記第2クリア板の内部には、発光体が埋設されていてもよい(請求項8の発明)。
【0024】
これにより、発光体は第2クリア板内に設けられて、乗員側に配設される第1クリア板に発光体を設けるための穴等を形成する必要がなくなるため、該クリア板の剛性を低下させることはなく、エアバッグ展開時に固定部の周囲で展開膨張されるエアバッグの圧力により乗員側の第1クリア板が損傷を受けるのを防止することができる。
【0025】
そして、前記照明手段は、第2クリア板の車両前方に配設され、固定部によって支持される基部を備え、前記基部の乗員側の面には、光を反射するための反射部が設けられていて、発光体は、乗員の視界に入らないようにマスク部の車両前方に配置されるのが好ましい(請求項9の発明)。これにより、上述の請求項7の発明と同様、間接照明を構成することができ、運転時の前方の視認性が阻害されるのを防止することができるとともに高級感のある装飾効果も得られる。
【0026】
また、前記照明手段は、第2クリア板の車両前方に配設され、固定部によって支持される基部を備え、第1クリア板と前記第2クリア板とは互いに固定されていて、該第2クリア板は前記基部に対しても固定されていてもよい(請求項10の発明)。これにより、第1及び第2クリア板は、固定部によって支持された基部に固定されるため、該第1及び第2クリア板の剛性を高めることができ、エアバッグ展開時に固定部の周囲で展開膨張されるエアバッグの圧力により破損するのを確実に防止することができる。
【0027】
さらに、前記マスク部によって象られたエンブレム部には、発光体の光を低減しながら乗員側へ透過させるフィルター部が設けられているのが好ましい(請求項11の発明)。これにより、運転者の近くに位置するステアリングホイールのパッド部から強い光が該運転者に届くのを防止できるため、運転時に前方の視認性が阻害されるのを防止することができる。
【0028】
さらにまた、上述の請求項1、3の発明において、前記照明手段は、固定部の乗員側に配設され、エンブレム部を構成する溝部が車両前方側の面に形成されたクリア板と、前記クリア板の車両前方に配設される基部と、前記クリア板に対して光を照射するように前記基部内に配設される発光体と、を備えていてもよい(請求項12の発明)。
【0029】
これにより、発光体は基部に設けられて、乗員側に位置するクリア板には設けられないため、該クリア板の剛性が低下するのを防止することができ、エアバッグ展開時に固定部の周囲で展開膨張されるエアバッグの圧力によりクリア板が破損して飛散するのを確実に防止することができる。
【0030】
そして、前記基部は、クリア板の車両前方側を覆う基部本体と、前記クリア板を囲むように前記基部本体から乗員側に向かって延びる突出部と、を備え、発光体は、前記クリア板に対して側方から光を照射するように前記突出部内に配設されているのが好ましい(請求項13の発明)。これにより、発光体が運転者の視界に直接入ることはないので、運転時に前方の視認性が阻害されるのを防止することができる。しかも、間接照明の柔らかな光によって高級感のある装飾効果も得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上より、本発明に係るエアバッグ装置を備えたステアリングホイールによれば、パッド部の固定部に操作部を照らす照明手段を設けたため、夜間等でも該操作部の視認性を向上することができる。特に、操作部がホーンスイッチである場合には、緊急性の高い場合でも、確実にホーンを鳴らすことが可能になる。
【0032】
また、パッド部の固定部と展開部とによってホーンスイッチが構成されている場合でも、該固定部を照らすような照明手段を設けることで、内部にエアバッグクッションが収納されておらず、乗員の操作に対して応答性良くホーンを鳴らすことのできる固定部の視認性を向上することができ、緊急時でも確実にホーンを鳴らすことができる。
【0033】
さらに、前記照明手段を間接照明にすることで、直接照明よりも光量の小さい適度な光量にすることができ、走行中に運転者の前方の視認性が阻害されるのを防止できるとともに、高級感のある装飾効果も得ることができる。
【0034】
さらにまた、前記照明手段において、乗員側に位置するクリア板とその車両前方に位置する基部との間の空間部内に発光体を配設したり、該基部に発光体を配設したりすることにより、エアバッグ展開時にクリア板が破損するのを確実に防止して、照明手段を構成する部品の飛散により乗員が衝撃を受けるのを確実に防止することができる。このような効果は、クリア板を乗員側及び車両前方側の少なくとも2枚のクリア板によって構成して、その車両前方側のクリア板に発光体を設けたり、前記少なくとも2枚のクリア板を基部にしっかり固定したりすることによっても得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0036】
(実施形態1)
図1に、本発明の実施形態1に係るエアバッグ装置を備えたステアリングホイールWの概略構造を示す。このステアリングホイールWは、乗員Mが把持するための外周側のリング部1と、該リング部1の略中心に配置されたパッド部2と、該リング部1とパッド部2とを連結する4本のスポーク3,3,4,4(スポーク部)とからなり、前記パッド部2の内部には、図2に示すように車両衝突時にエアバッグクッション51を乗員M側に膨張展開させるエアバッグ装置5が設けられている。なお、本実施形態の場合、前記エアバッグクッション51は、後述するように乗員側から見てリング状に膨張展開する、いわゆるドーナツ型エアバッグクッションである。
【0037】
前記スポーク3,3,4,4は、図1に示すように、パッド部2の上部の左右両端部からそれぞれ車幅方向に延びる左右一対の横スポーク3,3と、該パッド部2の下部の左右両端部からそれぞれ斜め下方に延びる左右一対の斜めスポーク4,4とからなり、前記横スポーク3,3によって、ステアリングホイールWのリング部1とパッド部2との間の空間が上下に区画されるとともに、その下側の空間が、前記斜めスポーク4,4によって、さらに3つの空間に区画されている。これらの空間をステアリングホイールWに設けることによって、図2に示すように、膨張展開したエアバッグクッション51に乗員Mが衝突した際の該エアバッグクッション51の変形の逃げ場となり、乗員Mの受ける衝撃を効果的に軽減できるようになっている。
【0038】
ここで、前記リング部1及びスポーク3,3,4,4は、例えばウレタン材などからなる合成樹脂製の被覆層によって芯金を被覆したものであり、前記パッド部2は、ポリプロピレン系等の樹脂からなる乗員側及び車両前方側カバーによって前記エアバッグ装置5や芯金等を覆ったものである。
【0039】
前記パッド部2は、図1に示すように、乗員側から見て、略逆台形状に形成されたもので、内部にリング状に収納されたエアバッグクッション51が膨張展開する際に、破断溝21cに沿って破断し、ヒンジ部21dを中心として展開される展開部21と、該エアバッグクッション51の膨張展開時でも展開せずにパッド部2に固定される固定部22とからなる。なお、前記展開部21は、固定部22を取り囲むように設けられている。
【0040】
そして、図3及び図4に示すように、前記パッド部2の内部のうち、前記展開部21に対応する部分には、エアバッグクッション51の収納される収納室25が形成されている一方、固定部22に対応する部分には、エアバッグクッション51内にガスを供給するための略円筒状のインフレータ52が配設されている。すなわち、前記エアバッグクッション収納室25は、乗員側から見て、インフレータ52を囲むようなリング状の空間であり、前記エアバッグクッション51は該収納室25内にリング状のまま折り畳まれた状態で収納されている。なお、このエアバッグクッション51とインフレータ52とによってエアバッグ装置5が構成される。
【0041】
前記エアバッグクッション51は、袋状に形成されていて、車両前方側に位置する開口縁部がパッド部2に固定される(図示省略)一方、底部51aの中央部分は前記パッド部2の固定部22と後述する支持ブラケット27との間に挟持されている。これにより、エアバッグクッション51は、前記インフレータ52の乗員側を覆うように配設されるとともに、底部51aの中央部分が固定され、内部にガスが供給されると、乗員側から見て略ドーナツ状に展開するようになっている。
【0042】
前記インフレータ52は、ケース52aの内部にガスを発生させるためのガス発生剤(図示省略)が封入されたもので、該ガス発生剤に着火することによってガスを発生させて、そのガスを前記エアバッグクッション51に供給するように構成されている。すなわち、前記ケース52aの側面には、前記ガス発生剤によって発生したガスを排出するための複数のガス噴き出し口52b,52b,…が設けられており、上述のとおり、前記エアバッグクッション51はインフレータ52を覆うように配設されているため、前記ガス噴き出し口52b,52b,…から排出されたガスはエアバッグクッション51内に確実に供給されるようになっている。
【0043】
また、前記固定部22では、図3及び図4に示すように、すり鉢状の支持部材23が、乗員側に向かって開口するように配設されていて、前記支持部材23の周縁部で、前記展開部21と係合するように構成されている。具体的には、前記展開部21には、その略中央に前記支持部材23を配置できる程度の大きさの貫通孔が形成されており、前記支持部材23の周縁部は、前記貫通孔の周縁部分に車両前方へクランク状に屈曲するように形成された屈曲部21aと係合するようになっている。
【0044】
前記固定部22の支持部材23は、前記インフレータ52の乗員側を覆うように配設された断面略コの字状の支持ブラケット27の天板部27aにボルト締結されている。この支持ブラケット27は、特に図示しないが、その開口側端部がパッド部2に固定されたリテーナ(図示省略)に連結固定されていて、その連結部分には、袋状の前記エアバッグクッション51の開口端側が挟持されている。これにより、前記固定部22は支持ブラケット27を介してパッド部2に固定されるとともに、前記エアバッグクッション51の内側部分もパッド部2に固定され、該エアバッグクッション51の膨張展開時には固定部22が展開されないようになっている。
【0045】
上述のような構成により、車両衝突の際に、インフレータ52からエアバッグクッション51の内部にガスが供給されて該エアバッグクッション51が膨張すると、前記パッド部2の展開部21のみが破れて展開し、エアバッグクッション51が乗員側に膨張展開する。このとき、前記パッド部2の固定部22は、該パッド部2に固定されているため、展開せず、また、エアバッグクッション51もその内側部分が固定されているため、乗員側から見て略リング状に膨張展開する。
【0046】
また、前記固定部22には、支持部材23の乗員側に、ホーン(警告音)を鳴らすためのホーンスイッチ30と、オーディオやナビゲーション装置等の車載機器を操作するための操作スイッチ41と、例えばELや液晶によって構成され、警告等を表示するためのディスプレイ42と、音声案内等を出力するためのスピーカー43と、運転者の音声を認識するためのマイク44とが配設されている。このように、パッド部2の略中央に位置する固定部22に各種スイッチ(操作部)を設けることで、運転者の利き手に関係なく容易に操作することができ、操作性を向上することができる。
【0047】
なお、上述の操作スイッチ41の操作性をさらに向上するために、図1に示すように、前記固定部22の乗員側から見て上方には、前記展開部21の一部が乗員側に突条に盛り上がった突条部21bが形成されている。このような突条部21bを設けることで、乗員がパッド部2上に手のひらを置いて親指以外の4本の指を該パッド部2上端に掛けた状態では、該乗員の親指が前記操作スイッチ41に位置付けられるため、操作する際に運転者がスイッチの位置を確認する必要がなくなる。
【0048】
前記ホーンスイッチ30は、図3及び図4に示すように、スイッチカバー31が前記支持部材23に対してばね部材32を介して弾性連結されたもので、該スイッチカバー31は車両前後方向(ステアリングホイールがほぼ水平に倒れた状態で配設されている場合には上下方向。その場合には、それぞれ、車両前方が下方に、車両後方が上方に対応する。)に相対移動可能となっている。このように、前記スイッチカバー31を相対移動可能に構成することで、該スイッチカバー31が車両前方(図4中の白抜き矢印方向)に押圧された場合、該スイッチカバー31側に設けられた接点33と支持部材23側に設けられた接点34(図3参照)とが接することによってホーン(警告音)が鳴るようになっている。
【0049】
具体的には、すり鉢状の前記支持部材23の内側には、有底円筒状のガイド部材35が乗員側に向かって開口するように設けられている一方、前記スイッチカバー31の車両前方側には、前記ガイド部材35の内部を摺動可能なように車両前方に向かって突出する突出部31aが一体形成されている。また、前記ガイド部材35の外周側には、前記スイッチカバー31を支持部材23に対して弾性支持するためのばね部材32が配設されていて、前記ガイド部材35の乗員側及びそれに対応する前記スイッチカバー31の車両前方側には、それぞれ接点33,34が設けられている。この構成により、前記スイッチカバー31が車両前方に向かって押圧されると、該スイッチカバー31はばね部材32の弾性復元力に抗して移動し、前記接点33,34の接触によりホーン回路(図示省略)が閉成されて、図示しないスピーカから車外に対してホーンが鳴るようになっている。一方、前記スイッチカバー31への押圧力がなくなると、前記ばね部材32の弾性復元力によって該スイッチカバー31は初期位置まで戻るように構成されている。
【0050】
さらに、前記スイッチカバー31の乗員側には、後述するように、透明なアクリル板61(クリア板)及びLED62(発光体)からなる照明装置60(照明手段)が設けられていて、装飾効果を高めるとともに、夜間等の暗闇でもホーンスイッチ30の視認性を向上する役割を果たしている。
【0051】
前記操作スイッチ41は、例えばオーディオ機器やナビゲーション装置などの車載機器を操作するスティックタイプの操作スイッチであり、図3及び図4に示すように、断面略ハット状の円柱部41aと、その下部に設けられた軸部41bと、その先端に設けられた球状部41cとからなる。そして、前記操作スイッチ41は、円柱部41aが固定部22から乗員側に向かって突出するとともに、前記軸部41b及び球状部41cが固定部22の内方に位置するように配設されていて、乗員が前記円柱部41aを任意の方向に傾倒させることで、その動きが軸部41bを介して球状部41cに伝達され、該球状部41cの動きを検出部(図示省略)によって検出することで、乗員の操作を車載機器側に信号として出力するようになっている。なお、上述の操作スイッチ41、ディスプレイ42、スピーカー43及びマイク44は、前記固定部22の支持部材23の乗員側から見て上側に形成された収納スペース内に設けられていて、該収納スペースは、ホーンスイッチ30の配設されるスペースとは区画されている。
【0052】
次に、本願発明の特徴部分である前記ホーンスイッチ30のスイッチカバー31に設けられた照明装置60の構成及び作動について、図3及び図4に基づいて以下で詳しく説明する。
【0053】
前記ホーンスイッチ30のスイッチカバー31の乗員側には、該スイッチカバー31の基部31bを覆うように透明なアクリル板61が配設されていて、該アクリル板61の乗員側の面上には、メーカーのエンブレム等を象るように遮光性の塗料が塗布されてマスク部63が構成されている。すなわち、図1に示すように、塗料の塗布されていない部分では、前記アクリル板61の表面が乗員側に露出していて、その露出部分によってメーカーのエンブレム等が現れるようになっている。一方、前記スイッチカバー31の基部31bの乗員側の面、すなわちアクリル板61と接する面には、白色若しくは銀色などの明るい色の塗料が塗布されていて光を乗員側に反射する反射部64が構成されている。なお、この反射部64は、前記アクリル板61の車両前方側の面に形成されていてもよい。
【0054】
そして、前記アクリル板61の内部には、発光体としてのLED62が配設されており、このLED62は配線を介して電力供給されるとともに、車両に搭載された制御装置(図示省略)によって点灯若しくは消灯の制御が行われるようになっている。なお、前記LED62は、車幅灯や前照灯などと連動して点灯させるようにしてもよいし、ルームランプの点灯などと連動させて点灯させるようにしてもよい。
【0055】
前記LED62が制御装置からの信号に応じて点灯すると、前記アクリル板61の内部で前記LED62からの光が反射して、前記塗料の塗布されていない部分、すなわちエンブレム部分から乗員側に光が洩れて、該エンブレム部分が光って見えるようになっている。なお、前記LED62は、間接照明となるように、すなわち乗員の視界に反射部64を介さずに直接、光が届かないように、前記塗料が塗布されていてほとんど光の透過しないマスク部63の車両前方側に配設するのが好ましく、エンブレム部分全体が光るように複数箇所(本実施形態の場合では図1に示すように5箇所)設けるのが好ましい。
【0056】
すなわち、前記照明装置60は、パッド部2の固定部22に設けられたスイッチカバー31の基部31bの乗員側を覆うように設けられた例えばアクリル板などの透明板61と、該透明板61の表面の一部を覆うように例えば塗料などを塗布したマスク部63と、前記透明板61において、マスク部63によって覆われた部分からマスク部63で覆われていない部分に光を拡散させるLEDなどの発光体62とによって構成される。
【0057】
また、前記LED62に電力を供給するためのコード62aは、図3及び図4に示すように、前記固定部22内を車両前方に向かって延びるように配設される。すなわち、前記すり鉢状の支持部材23の底部まで延びたコード62aは、該支持部材23及び支持ブラケット27の貫通孔を挿通した後、該支持ブラケット27の天板部27aの車両前方側の面(図において下側の面)に沿うように配設され、該支持ブラケット27の側板部27bに設けられた貫通孔を挿通して、該側板部27bに沿って車両前方側へ延びるように配設される。そして、前記コード62aは、パッド部2の車両前方側に連結されるステアリングシャフト(図示省略)の内部を通って制御装置まで延びている。このように、前記固定部22内にコード62aを配線することで、展開部21にはコード62aが配線されないため、該展開部21でエアバッグクッション51の膨張展開が阻害されるのを防止することができる。なお、その他のLEDや操作スイッチ41等のコードも、前記支持部材23の貫通孔付近で一本に撚られて、上述のような経路で制御装置まで配線されるのが好ましい。
【0058】
また、前記照明装置60は、前記制御手段によって、車両走行時に前記照明装置60から運転者の目に届く光量がインパネの計器盤を照らす計器板照明装置(計器盤照明手段)から運転者の目に届く光量よりも小さくなるように設定されている。これにより、パッド部2に設けられた照明装置60から運転者に届く光が、走行中に運転者の車両前方の視認性を阻害するのを防止することができ、安全性を確保することができる。
【0059】
なお、前記照明装置60は、制御装置によって、緊急時(衝突予知時や自動ブレーキ時、車両の異常検出時等)には、平常時と異なる照明動作を行うように構成されていてもよい。すなわち、緊急時には、照明の光量を増大させたり、点滅させたりするなどの動作を行うことで、運転者に緊急度の高い状態であることを報知する報知手段としての役割を果たすようにしてもよい。これにより、運転者に対してより近い位置で報知することが可能となり、安全性の向上を図ることができる。
【0060】
以上の構成により、本実施形態では、ステアリングホイールWのパッド部2において、エアバッグクッション51の膨張展開時でも展開されない固定部22に、ホーンスイッチ30を設けて、該ホーンスイッチ30のための照明も設けるようにしたので、該ホーンスイッチ30の視認性を向上することができ、緊急性の高い場合でも確実にホーンスイッチ30の操作を行うことができる。しかも、エアバッグクッション51の収納されていない固定部22にホーンスイッチ30を設けることで、エアバッグクッション51が乗員の押圧操作を阻害することなく、応答性良くホーンを鳴らすことができる。
【0061】
また、前記ホーンスイッチ30のための照明は、エンブレム部分が間接照明によって光るものであるため、直接照明ほど光量は大きくなく、運転者の前方の視認性を阻害しないため、走行中の安全性を確保できるとともに、高級感のある装飾効果も得ることができる。
【0062】
−実施形態1の変形例1−
前記照明装置60は、上述の実施形態1のように、透明なアクリル板61の乗員側の面に遮光性の塗料を塗布して、車両前方側からLED62によって照らすものに限らず、例えば、図5に示すように、アクリル板61の車両前方側の面に複数の溝部61a,61a,…(凹凸部)を設けて、該溝部61a,61a,…の側方から光を当てるようにしてもよい。
【0063】
具体的には、ホーンスイッチ30のスイッチカバー31の乗員側に配設されるアクリル板61には、その車両前方側の面に断面略V字状の複数の溝部61a,61a,…が設けられていて、該アクリル板61と前記スイッチカバー31の基部31bとの間に断面略V字状の空間が形成されるようになっている。
【0064】
また、前記アクリル板61の車両前方側の面のうち、溝部61a,61a,…が形成されていない部分には、黒色等のダーク系の塗料が塗布されて、上述の実施形態と同様のマスク部63が構成される一方、前記スイッチカバー31の基部31bの乗員側の面には、白色や銀色などの明るい色の塗料が塗布されて反射部64が構成され、乗員側から見て、溝部61a,61a,…の形成された部分、すなわちエンブレム部分が浮き上がって見えるようになっている。
【0065】
そして、光源としてのLED62,62は、前記基部31b内にアクリル板61を側方から照らすように配設されている。すなわち、該基部31bは、アクリル板61の車両前方側を覆うように配設された基部本体31cと、該基部本体31cからアクリル板61を囲むように乗員側に向かって延びる突出部31dとを備えていて、前記LED62,62は、該突出部31d内にアクリル板61を側方から照らすように埋設されている。これにより、該アクリル板61の側方から入射される光は、該アクリル板61に形成された前記溝部61a,61a,…で反射し、乗員側からは、該溝部61a,61a,…が立体的に光って見える。
【0066】
以上より、前記LED62,62は運転者の視界に直接入らない間接照明になるので、光源からの強い光によって運転者の前方の視認性が阻害されるのを防止することができる。また、ホーンスイッチ30の視認性を向上できるとともに、高級感のある装飾効果を得ることもできる。
【0067】
しかも、前記LED62,62は、アクリル板61ではなく基部31bに設けられており、該LED62,62を配置するための穴等を設ける必要がなくなるため、アクリル板61の剛性が低下するのを防止することができ、エアバッグ展開時のアクリル板61の破損を防止することができる。
【0068】
なお、前記溝部61a,61a,…の表面は、平滑な面ではなくて微細な凹凸処理が施されていてもよい。このように凹凸処理を施すことによって、白色光のLEDであれば該溝部61a,61a,…が乳白色に光り、赤色光のLEDであれば該溝部61a,61a,…は乳白色で且つ赤みがかったように光るため、より高級感のある装飾効果を得ることができる。
【0069】
−実施形態1の変形例2−
前記照明装置60は、上述の実施形態1の変形例1のように、透明なアクリル板61の車両前方側の面に溝部61a,61a,…を設けて、該アクリル板61の側方からLED62によって光を当てるものに限らず、例えば、図6に示すように、2枚のアクリル板71,72によって構成し、両者の間に断面略V字状の空間を設けて、車両前方側から光を照射するようにしてもよい。
【0070】
具体的には、2枚のアクリル板71,72のうち、乗員側のアクリル板71(第1クリア板)の車両前方側の面に断面略V字状の溝部71a,71a,…が形成され、該アクリル板71の車両前方側の面のうち、溝部71a,71a,…の設けられていない部分に黒色などのダーク系の色の塗料が塗布されてマスク部63が構成される。一方、前記スイッチカバー31の基部31bの乗員側の面には白色や銀色などの明るい色の塗料が塗布されて反射部64が構成される。これにより、乗員側から見て、前記溝部71a,71a,…の形成された部分、すなわち、エンブレム部分が浮き上がって見える。
【0071】
そして、車両前方側のアクリル板72(第2クリア板)の車両前方側で、前記マスク部63の車両前方に対応する位置に穴を形成し、その穴内にLED62を配設して、前記溝部71a,71a,…によって形成される空間に車両前方側から光を当てるようにした。その際、前記LED62を埋設するためにアクリル板72に形成された穴の最も深い部分と該アクリル板72の乗員側の面との最短距離は、前記アクリル板71に形成された溝部71aの最も深い部分と該アクリル板71の乗員側の面との最短距離よりも短くなる。このような構成により、乗員側から見ると、前記空間部分のみが立体的に光って見える。
【0072】
こうすることで、前記LED62はマスク部63に隠れて運転者の視界に直接入らない間接照明になるので、光源からの強い光によって運転者の前方の視認性が阻害されるのを防止することができる。また、ホーンスイッチ30の視認性を向上することができるとともに、高級感のある装飾効果も得られる。
【0073】
しかも、前記LED62は車両前方側に位置するアクリル板72内に配設されるため、乗員側に位置するアクリル板71の剛性が低下することはなく、エアバッグ展開時に該アクリル板71が破損して飛散するのを確実に防止することができる。
【0074】
なお、前記溝部71a,71a,…は、乗員側のクリア板71の車両前方側の面ではなく、車両前方側のクリア板72の乗員側の面に設けるようにしてもよいし、前記マスク部63を車両前方側のアクリル板72の乗員側の面に形成したり、前記反射部64を該アクリル板72の車両前方側の面に形成してもよい。
【0075】
また、上述のように2枚のアクリル板71,72によって構成するのではなく、乗員側のみにアクリル板71を配設して、その車両前方側には空気層としての空間を設け、該空間内にLED62を配設するようにしてもよい。これにより、LED62からの光は空間内を拡散するため、光の拡散性を向上させることができ、より均一で明るい間接照明を得ることができる。さらに、前記空間内にLED62を配設することで、アクリル板71にLED62を配設するための穴等を形成する必要がなくなるため、該アクリル板71の剛性を低下させることがなく、エアバッグ展開時に該アクリル板71が破損するのを防止することができる。
【0076】
さらに、前記2枚のアクリル板71,72同士を接着固定するとともに、車両前方側のアクリル板72を前記スイッチカバー31の基部31bに接着固定するのが好ましい。これにより、乗員側のアクリル板71を固定部22によって支持される基部31bに固定することができ、該アクリル板71の支持剛性を高めることができる。よって、エアバッグ展開時に乗員側のアクリル板71が破損して飛散するのをより確実に防止することができる。
【0077】
−実施形態1の変形例3−
前記照明装置60は、上述の実施形態1やその変形例1、2のように、乗員側から直接、光源の見えない間接照明のものに限らず、例えば、図7に示すように、直接、エンブレム部分を車両前方側から光らせるように構成されていて、アクリル板にマジックミラー(例えば、アクリル板などのクリア板の表面若しくは裏面に水銀等を薄くコーティングしたもの)となるような処理を施すことによって光量を低減するようにしたものであってもよい。
【0078】
具体的には、2枚のアクリル板81,82のうち、乗員側のアクリル板81の車両前方側の面には、断面略V字状の複数の溝部81a,81a,…が形成されていて、該溝部81a,81a,…に対応して、車両前方側のアクリル板82の車両前方側にLED62が配設されている。そして、前記車両前方側のアクリル板82の乗員側の面のうち、前記溝部81a,81a,…に対応する部分には、マジックミラーとなるような処理を施したマジックミラー部83(フィルター部)を設ける一方、それ以外の部分には黒色などのダーク系の塗料を塗布してマスク部64とする。
【0079】
このように、前記溝部81a,81a,…に対応する部分をマジックミラーにすることで、乗員側から見ると、前記LED62が点灯していない状態では、該溝部分が、エンブレム部分としてマジックミラーの乗員側の色、つまりミラー作用を有することから一般的に銀色に見える一方、前記LED62が点灯している状態では、該LED62からの光量が低減された状態でエンブレム部分が光って見える。そのうえ、前記溝部81a,81a,…によって、乗員側からはエンブレム部分が立体的に見え、しかも、これによりLED62の光が拡散されるため、より高級感のある装飾効果を得ることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、図7に示すように、前記車両前方側のアクリル板82とホーンスイッチ30のスイッチカバー31の基部31bとの間に空間を設けるようにしているが、これに限らず、不透明な樹脂等を充填するようにしてもよいし、図8に示すように、車両前方側のアクリル板の一部が車両前方に向かって延びて、前記基部31bに固定されるようにしてもよい。
【0081】
ここで、前記図8について詳しく説明すると、車両前方側に位置するアクリル板92には、その車両前方側の面から車両前方に向かって延びるように複数の支持部92a,92a,…が設けられていて、該支持部92a,92a,…によって前記基部31bに固定されるようになっている。このように、前記アクリル板92の少なくとも一部を前記基部31bに固定されせることで、該アクリル板92の支持剛性、及び該アクリル板92の乗員側に位置する前記アクリル板81の支持剛性を高めることができ、エアバッグ展開時のアクリル板81の破損を確実に防止することができる。
【0082】
また、上述の実施形態では、車両前方側のアクリル板82の乗員側の面にマスク部64及びマジックミラー部83を形成するようにしているが、この限りではなく、乗員側のアクリル板81の車両前方側の面にマスク部64を形成して、車両前方側のアクリル板82の乗員側の面にマジックミラー部83を形成してもよい。
【0083】
さらに、上述の実施形態では、エンブレム部分をマジックミラーにしているが、この限りではなく、運転者の前方の視認性を阻害しないようにLED62の光量を減らすことのできる構成であればどのようなものであってもよい。例えば、透過する光量を減らすことのできる塗料を塗布したり、フィルムを貼り付けるようにしたりしてもよい。
【0084】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係るエアバッグ装置を備えたステアリングホイールW’のパッド部の縦断面を示していて、前記実施形態1とは、ホーンスイッチの構成が異なるだけなので、以下、同一の部分には同一の符号を付し、異なる部分だけを説明する。すなわち、この実施形態2では、パッド部102の固定部122及び展開部121によってホーンスイッチを構成するようになっている。
【0085】
具体的には、図9に示すように、展開部121の車両前方側は、平板状の部材であるリテーナ28によって覆われていて、その内部にエアバッグクッション51を収納するための収納室25が形成されるようになっている。そして、前記展開部121と固定部122とが、パッド部102内の車両前方側に配設された前記芯金10に対して、ばね部材26cを備えた複数のホーンスイッチ装置26(図9では、1つのホーンスイッチ装置のみを開示)を介して弾性連結されていて、車両前後方向に相対移動可能に構成されている。
【0086】
このように、パッド部102全体を相対移動可能に構成することで、該パッド部102が車両前方(図中の白抜き矢印方向)に押圧された場合、前記ホーンスイッチ装置26の作動によってホーン(警告音)が鳴るようになっている。以下で該ホーンスイッチ装置26の構造及び作動について説明する。
【0087】
前記ホーンスイッチ装置26は、下部が芯金10に螺合固定され、乗員側に向かって延びるように配設されたガイド軸26aと、エアバッグクッション収納室25の一部を構成する有底円筒状部材の壁部25aからステアリングホイールWの外方に延設され、前記ガイド軸26aの挿通する板状の延出部26bと、該延出部26bと芯金10との間で前記ガイド軸26aの外周側に配設されたばね部材26cとからなるもので、パッド部102を芯金10に対して弾性支持するように構成されている。
【0088】
また、前記延出部26bには、ガイド軸26aの挿通する挿通孔周縁にスリーブ接点26dが設けられているとともに、前記ガイド軸26aの芯金10側には、ピン接点26eが設けられている。これにより、パッド部102が車両前方(図中の白抜き矢印方向)に押圧されると、延出部26bはばね部材26cの弾性復元力に抗しながら車両前方側に相対移動して、前記スリーブ接点26dとピン接点26eとが接することでホーン回路(図示省略)が閉成されて、ホーンが鳴るようになっている。一方、パッド部102への押圧力がなくなると、前記ばね部材26cの弾性復元力によって該パッド部102は初期位置まで戻るように構成されている。
【0089】
そして、上述のような構成のパッド部102において、固定部122の乗員側に、エンブレム等が浮かび上がるような照明装置60や乗員による車載機器の操作を可能とする操作スイッチ41等が設けられている。前記照明装置60及び操作スイッチ41等の構成は上述の実施形態1と同様の構成であるため、詳しい説明は省略する(ただし、本実施形態では、ディスプレイ42をパッド部2に設けないか若しくは設けても表示面積が小さい方が好ましい)が、該照明装置60は、固定部122を構成するすり鉢状の支持部材123の乗員側に設けられていて、透明なアクリル板61の内部に配設されたLED62からの光が該アクリル板61内に反射し、乗員側の面のマスク部63の形成されていない部分から乗員側に向かって通過するようになっている。ここで、前記マスク部63は、例えば乗員側から見てエンブレム等を象るように形成されていて、前記LED62はマスク部63の車両前方側に位置付けられて間接照明を構成するようになっている。
【0090】
このように、固定部122及び展開部121、すなわちパッド部102全体がホーンスイッチとなるような構成において、該固定部122に照明装置60を設けることで、装飾効果を得ることができるとともに、エアバッグクッション51が収納されておらず、乗員の押圧操作を該エアバッグクッションによって阻害されることなく操作に対して応答性の良い固定部122の視認性を向上することができ、緊急性の高い場合でも、乗員が確実にホーンを鳴らすことが可能になる。
【0091】
なお、前記照明装置60の構成は、上述のように実施形態1の構成に限らず、実施形態1の変形例1〜3のような構成としてもよい。
【0092】
(その他の実施形態)
本発明の構成は、前記各実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、前記各実施形態では、パッド部2の固定部22に設けられたホーンスイッチ30若しくは固定部122を照らすための照明装置として間接照明を用いているが、この限りではなく、EL等を用いて固定部(エンブレム部分)を直接、光らせるような照明装置としてもよい。また、前記各実施形態に合わせて、LED62の代わりにシート状のELを基部31bの乗員側の面や側面、若しくは、乗員側に位置するアクリル板(61,71,81)の車両前方側の面に配置してもよい。これにより、アクリル板に、LED62を配置するための比較的大きな穴を形成する必要がないので、LED62を設ける場合よりもアクリル板の剛性を増大させることができる。
【0093】
また、前記実施形態1では、固定部22に設けられたホーンスイッチを間接照明で光らせるようにしているが、これに限らず、固定部22に設けられた他のスイッチを間接照明で光らせるようにしてもよい。さらに、発光体として、LED以外のもの(例えば電球など)を用いるようにしてもよい。
【0094】
また、前記実施形態1の変形例1、3では、アクリル板の車両前方側の面に溝部を設けているが、これに限らず、突部を設けるようにしてもよいし、乗員側の面に凹凸部を設けるようにしてもよい。なお、この場合でもマスク部63をアクリル板の乗員側若しくは車両前方側のいずれか一方に設ける必要がある。
【0095】
また、前記各実施形態では、パッド部2,102の固定部22,122及び展開部21,121を別体で形成して、該固定部22,122の周縁部と展開部21,121の貫通孔周縁に設けられた屈曲部21a,121aとを係合させて一体にするとともに、エアバッグクッション51の膨張展開時には、その係合が外れて前記展開部21,121を展開させるようにしているが、この限りではなく、前記固定部22,122と展開部21,121とを一体形成し、両者の間に破断溝を設けるようにしてもよい。
【0096】
さらに、前記各実施形態では、ステアリングホイールWに4本のスポーク3,3,4,4を設けているが、この限りではなく、スポークを3本にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上説明したように、本発明におけるエアバッグ装置を備えたステアリングホイールは、パッド部の固定部に照明装置を設けることで、該固定部の視認性を向上することができるから、例えば、エアバッグクッションがドーナツ状に膨張展開するパッド部の固定部に操作部を設けたものに特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態1に係るステアリングホイールの概略構造を示す正面図である。
【図2】ステアリングホイールに設けられたエアバッグクッションが展開した状態を示す図である。
【図3】ステアリングホイールのパッド部のうち、固定部周辺の内部構造を拡大して示す図1のA−A断面図である。
【図4】パッド部の固定部周辺の内部構造を拡大して示す図1のB−B断面図である。
【図5】ホーンスイッチのスイッチカバーに設けられた照明装置の一例を示す部分拡大断面図である。
【図6】ホーンスイッチのスイッチカバーに設けられた照明装置の一例を示す部分拡大断面図である。
【図7】ホーンスイッチのスイッチカバーに設けられた照明装置の一例を示す部分拡大断面図である。
【図8】ホーンスイッチのスイッチカバーに設けられた照明装置の一例を示す部分拡大断面図である。
【図9】本発明の実施形態2に係るステアリングホイールのパッド部の縦断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0099】
W、W’ ステアリングホイール
1 リング部
2、102 パッド部
3、4 スポーク(スポーク部)
5 エアバッグ装置
21、121 展開部
22、122 固定部
23、123 支持部材
30 ホーンスイッチ(操作部)
31 スイッチカバー
31b 基部
51 エアバッグクッション
60 照明装置(照明手段)
61、71、72、81、82 アクリル板(クリア板)
61a、71a、81a 溝部(凹凸部)
62 LED(発光体)
63 マスク部
64 反射部
83 マジックミラー部(フィルター部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員が把持する外周側のリング部と、該リング部の略中心に位置付けられ、該リング部とスポーク部を介して接続されるパッド部とを備え、前記パッド部内に、リング状に収納されたエアバッグクッションを車両衝突時に乗員側に膨張展開させるエアバッグ装置が配設されたステアリングホイールであって、
前記パッド部は、その乗員側をカバーによって覆われていて、エアバッグクッションの膨張展開時でもカバーの展開されない固定部と、該固定部の周囲に設けられて、前記エアバッグクッションの膨張展開時に展開される展開部とを備え、
前記固定部には、車載装置を操作するための操作部が設けられているとともに、該操作部を照明可能な照明手段が設けられていることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項2】
請求項1において、
操作部がホーンスイッチであることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項3】
車両の乗員が把持する外周側のリング部と、該リング部の略中心に位置付けられ、該リング部とスポーク部を介して接続されるパッド部とを備え、前記パッド部内に、リング状に収納されたエアバッグクッションを車両衝突時に乗員側に膨張展開させるエアバッグ装置が配設されたステアリングホイールであって、
前記パッド部は、その乗員側をカバーによって覆われていて、エアバッグクッションの膨張展開時でもカバーの展開されない固定部と、該固定部の周囲に設けられて、前記エアバッグクッションの膨張展開時に展開される展開部とを備え、
前記固定部及び展開部によってホーンスイッチが構成されるとともに、前記固定部には、該固定部を照明可能な照明手段が設けられていることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つにおいて、
照明手段は、
固定部の乗員側に配設され、該乗員側若しくは車両前方側のいずれか一方の面に凹凸部の形成されたクリア板と、
前記クリア板の凹凸部に対して車両前方から光を照射する発光体とによって構成されていることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つにおいて、
照明手段は、発光体が乗員の視界に直接、入らないように配設された間接照明であることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項6】
請求項1または3のいずれか一方において、
照明手段は、
固定部の乗員側に配設され、遮光性を有するマスク部が車両前方側の面に設けられたクリア板と、
前記クリア板との間に空間部を形成するように該クリア板の車両前方に配設され、前記固定部によって支持される基部と、
を備え、
前記基部の乗員側の面及び前記クリア板の車両前方側の面のうち少なくとも一方に光を照射するように、前記空間部内に発光体が配設されていることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項7】
請求項6において、
基部の乗員側の面には、光を反射するための反射部が設けられていて、
発光体は、乗員の視界に入らないようにクリア板のマスク部の車両前方に配置されることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項8】
請求項1または3のいずれか一方において、
照明手段は、
固定部の乗員側に配設される第1クリア板と、
前記第1クリア板の車両前方に配設される第2クリア板と、
を備え、
前記第1クリア板の車両前方側の面若しくは前記第2クリア板の乗員側の面のいずれか一方には、遮光性を有するマスク部が設けられていて、
前記第2クリア板の内部には、発光体が埋設されていることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項9】
請求項8において、
照明手段は、第2クリア板の車両前方に配設され、固定部によって支持される基部を備え、
前記基部の乗員側の面には、光を反射するための反射部が設けられていて、
発光体は、乗員の視界に入らないようにマスク部の車両前方に配置されることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項10】
請求項8において、
照明手段は、第2クリア板の車両前方に配設され、固定部によって支持される基部を備え、
第1クリア板と前記第2クリア板とは互いに固定されていて、該第2クリア板は前記基部に対しても固定されていることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項11】
請求項8において、
マスク部によって象られたエンブレム部には、発光体の光を低減しながら乗員側へ透過させるフィルター部が設けられていることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項12】
請求項1または3のいずれか一方において、
照明手段は、
固定部の乗員側に配設され、エンブレム部を構成する溝部が車両前方側の面に形成されたクリア板と、
前記クリア板の車両前方に配設される基部と、
前記クリア板に対して光を照射するように前記基部内に配設される発光体と、
を備えていることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。
【請求項13】
請求項12において、
基部は、
クリア板の車両前方側を覆う基部本体と、
前記クリア板を囲むように前記基部本体から乗員側に向かって延びる突出部と、
を備え、
発光体は、前記クリア板に対して側方から光を照射するように前記突出部内に配設されていることを特徴とするエアバッグ装置を備えたステアリングホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−168704(P2006−168704A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225600(P2005−225600)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】