説明

エアリザーバタンクの取付装置およびエアリザーバタンクの取付方法

【課題】車両のフレームに円筒状のエアリザーバタンクを取り付けるための装置において、エアリザーバタンクを作業員一人で車両のフレームに取り付けられるようにする。
【解決手段】フレームに一端が上下方向へ突出するように取り付けられるステイ12と、エアリザーバタンク11の外周にUボルト16を介して取り付けられるブラケット15と、ステイ12のフレームから突出する一端側にブラケット15を所定の取付状態に保持する係止手段25と、ブラケット15をステイ12にを取り付ける結合手段(21,26,27など)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のフレームにエアリザーバタンクを取り付けるための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のブレーキ系などに用いられる圧縮エアを蓄積するエアリザーバタンクは、トラックなど商用車両においては、車両の梯子型フレームに取り付けられる(特許文献1〜特許文献5)。
【0003】
このような取付装置として、図6のようなものが考えられる。図6において、10は梯子型フレームのサイドレールであり、サイドレール10の所定位置に取り付けられる円筒状のエアリザーバタンク11である。梯子型フレームは、車両の前後方向へ延びる左右1対のサイドレール10と、これらサイドレール10間を連結する複数のクロスメンバと、から構成される。
【0004】
12はサイドレール10の所定位置に配置されるステイであり、断面が略コ字形の長尺部材から形成される。ステイ12は、車両の内方に開口する断面略コ字形のサイドレール10に対し、基端側がそのリブ10a(断面略コ字形の中央部)の車両外方の側面にボルト13,ナット14を介して取り付けられる。
【0005】
ステイ12のサイドレール10の上方へ突出する一端(先端)側にブラケット15が設けられる。ブラケット15は、エアリザーバタンク11の外周に接する円弧状の凹面を持つ湾曲部15aと、その両端部に形成される締付用のフランジ15bと、を備えるものであり、湾曲部15aの凹面が車両の内方に向くように形成される。各フランジ15bは、Uボルト16のネジ軸16aを挿入するためのネジ止め孔15cが形成される。
【0006】
Uボルト16は、エアリザーバタンク11の外周に掛け回され、両端のネジ軸16aをフランジ5bのネジ止め孔15cに挿入すると共にこれらの先端にそれぞれナット17を螺合することにより、ブラケット15の湾曲部15aにエアリザーバタンク11を締め付ける。
【0007】
エアリザーバタンク11をサイドレール10に取り付ける手順(方法)については、エアリザーバタンク11,ブラケット15,ステイ12を順次に一体化したものを、サイドレール10にステイ12を介して取り付ける仕方、または、サイドレール10にステイ12を取り付ける一方、エアリザーバタンク11にブラケット15を取り付けておき、ブラケット15をエアリザーバタンク11と共にサイドレール10のステイ12に取り付ける仕方、が想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−158344号
【特許文献2】特開2001−018789号
【特許文献3】特開平11−105704号
【特許文献4】特開平08−282309号
【特許文献5】特開平08−282720号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような取付装置においては、いずれの手順によっても、エアリザーバタンク11を所定の取付状態に持ち上げながら、それと同時に最終的な締結を行うことが必要となり、二人以上の作業員が居ないと、エアリザーバタンク11をサイドレール10に組み付けられない、という不具合が考えられる。
【0010】
この発明は、このような課題を想定しつつ、エアリザーバタンクを作業員一人で車両のフレームに取り付けられる取付装置および取付方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、車両のフレームに円筒状のエアリザーバタンクを取り付けるための装置において、前記フレームに一端が上下方向へ突出するように取り付けられるステイと、前記エアリザーバタンクの外周にUボルトを介して取り付けられるブラケットと、前記ステイのフレームから突出する一端側に前記ブラケットを所定の取付状態に保持する係止手段と、前記ブラケットを前記ステイに取り付ける結合手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記ブラケットは、前記エアリザーバタンクの外周に接する円弧状の凹面を持つ湾曲部と、その両端部にそれぞれネジ止め孔に挿入される前記Uボルトのネジ軸と垂直な締付用の座面を形成する第1フランジと、これらの一側に前記ステイのフレームから突出する一端側との合わせ面を形成する第2フランジと、を備えることを特徴とする。
【0013】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、前記係止手段は、前記ブラケットに形成され、前記ステイのフレームから突出する一端に係止可能なフックであることを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、車両のフレームに円筒状のエアリザーバタンクを取り付ける方法において、前記フレームを反転する工程と、前記フレームにステイをその一端が上下方向へ突出するように取り付ける工程と、前記エアリザーバタンクの外周にブラケットを取り付ける工程と、前記ステイのフレームから突出する一端側に前記ブラケットを所定の取付状態に係止手段を介して保持する工程と、前記ブラケットを前記ステイに結合する工程と、前記フレームを反転して元に戻す工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1〜第3の発明においては、係止手段により、エアリザーバタンクを所定の取付状態に保持しつつ、その状態において、ブラケットとステイとの結合を行うことが可能となる。従って、エアリザーバタンクを車両のフレームに組み付ける作業を一人で簡単かつ容易に行うことができる。
【0016】
第4の発明においては、エアリザーバタンクをフレームの下方にステイおよびブラケットを介して簡単かつ容易に取り付けることができる。フレームの反転状態(通常と上下が逆となる状態)において、係止手段により、エアリザーバタンクを所定の取付状態に保持しつつ、ステイと第2ブラケットとの結合を行える。従って、エアリザーバタンクを車両のフレームに作業員一人で簡単かつ容易に取り付けられるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施形態に係る取付状態の斜視図である。
【図2】同じく組付状態の説明図である。
【図3】同じく要部の拡大斜視図である。
【図4】同じく図3のA矢視図である。
【図5】同じく組付手順の説明図である。
【図6】この発明の前提技術を例示する組付状態の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図に基づいて、この発明の実施形態に係るエアリザーバタンクの取付装置を説明する。
【0019】
図1,図2において、10は梯子型フレームのサイドレールであり、11はサイドレール10の所定位置に取り付けられる円筒状のエアエアリザーバタンクである。
【0020】
梯子型フレームは、車両の前後方向へ延びる左右1対のサイドレール10と、これらサイドレール10間を連結する複数のクロスメンバと、から構成される。図1,図2は、エアリザーバ11を取り付ける工程中の状態を表すものであり、梯子型フレームは、通常の状態に対し、上下が180度、反転した状態にある。
【0021】
12はサイドレール10に配置されるステイであり、断面が略コ字形の長尺部材から形成される。ステイ12は、車両の内方に開口する断面略コ字形のサイドレール10に対し、基端側がそのリブ10a(断面略コ字形の中央部)の車両外方の側面にボルト13,ナット14を介して取り付けられる。ボルト13は、プレート20と一体に形成され、プレート20とステイ12の基端側との間にリブ10aを挟み、これらをナット14の螺合によって締め付ける。
【0022】
ステイ12のサイドレール10の上方へ突出する一端(先端)側にブラケット15が設けられる。ブラケット15は、エアリザーバタンク11の外周に接する円弧状の凹面を持つ湾曲部15aと、その両端部にそれぞれネジ止め孔に挿入されるUボルト16のネジ軸16aと垂直な締付用の座面を形成する第1フランジ15bと、これらの一側にステイ12のフレームから突出する一端側との合わせ面を形成する第2フランジ21と、を備える。
【0023】
Uボルト16は、エアリザーバタンク11の外周に掛け回され、両端のネジ軸16aを第1フランジ15bのネジ止め孔に挿入すると共にこれらの先端にそれぞれナット17を螺合することにより、ブラケット15の湾曲部15aにエアリザーバタンク11を締め付ける。
【0024】
図3,図4にも示すように、ブラケット15は、ステイ12のフレームから突出する一端側にこれを所定の取付状態に保持する係止手段としてフック25が設けられる。フック25は、帯板の一端側が断面コ字形に折り曲げられ、他端側がブラケット15の第2フランジ21に溶接される。フック25は、ステイ12の一端(図1〜図4においては、ステイ12の上端)に掛け止めされ、第2フランジ21がステイ12に当接する所定の取付状態にブラケット15を保持する。ブラケット15は、ステイ12に第2フランジ21を介してボルト26、ナット27によって締め付けられる。
【0025】
図5は、エアリザーバタンク11を梯子型フレームのサイドレール10に取り付ける手順(方法)を説明するものである。
【0026】
(a)工程においては、梯子型フレームは、通常の状態に対し、上下が180度反転される。このフレームのサイドレール10にステイ12が取り付けられる。ステイ12は、基端側がサイドレール10のリブ10aに締結され、一端側がサイドレール10の上方へ突出する取付状態に配置される。ボルト13は、プレート20とステイ12の基端側との間にリブ10aを挟み、これらをナットによって締め付ける。
【0027】
(b)工程においては、エアリザーバタンク10の外周にブラケット15が取り付けられる。ブラケット15は、第1フランジ15bのネジ止め孔に挿入されるUボルト16のネジ軸16aにそれぞれナット17を螺合することにより、エアリザーバタンク11の外周に湾曲部15aを介して締め付けられる。
【0028】
(c)工程においては、フック25により、ステイ12のフレーム10から突出する一端側にブラケット15が所定の取付状態に保持される。この状態において、ブラケット15は、ステイ12に第2フランジ21を介して締め付けられる。その後、フレーム10は、上下を180度、反転して通常状態に戻される。
【0029】
このような構成により、エアリザーバタンク11を梯子型フレームの下方にステイ12およびブラケット15を介して簡単かつ容易に取り付けることができる。梯子型フレームの反転状態において、フック25により、エアリザーバタンク11を所定の取付状態に保持しつつ、ステイ12とブラケット15との結合(図2において、ボルト26,ナット27の締結)を行うことができる。つまり、エアリザーバタンク11を車両の梯子型フレームに作業員一人で簡単かつ容易に取り付けられる。
【0030】
フック25(係止手段)は、ブラケット15の第2フランジ21に溶接されるが、これに限らず、第2フランジ21に対し、脱着可能に構成することにより、エアリザーバタンクを取り付ける作業が完了したら、第2フランジ21およびステイ12から外せるようにしても良い。
【符号の説明】
【0031】
10 サイドレール
11 エアリザーバタンク
12 ステイ
13,26 ボルト
14,17,27 ナット
15 ブラケット
15a 湾曲部
15b 第1フランジ
16 Uボルト
21 第2フランジ
25 フック(係止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフレームに円筒状のエアリザーバタンクを取り付けるための装置において、前記フレームに一端が上下方向へ突出するように取り付けられるステイと、前記エアリザーバタンクの外周にUボルトを介して取り付けられるブラケットと、前記ステイのフレームから突出する一端側に前記ブラケットを所定の取付状態に保持する係止手段と、前記ブラケットを前記ステイに取り付ける結合手段と、を備えることを特徴とするエアリザーバタンクの取付装置。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記エアリザーバタンクの外周に接する円弧状の凹面を持つ湾曲部と、その両端部にそれぞれネジ止め孔に挿入される前記Uボルトのネジ軸と垂直な締付用の座面を形成する第1フランジと、これらの一側に前記ステイのフレームから突出する一端側との合わせ面を形成する第2フランジと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の取付装置。
【請求項3】
前記係止手段は、前記ブラケットに形成され、前記ステイのフレームから突出する一端に係止可能なフックであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の取付装置。
【請求項4】
車両のフレームに円筒状のエアリザーバタンクを取り付ける方法において、前記フレームを反転する工程と、前記フレームにステイをその一端が上下方向へ突出するように取り付ける工程と、前記エアリザーバタンクの外周にブラケットを取り付ける工程と、前記ステイのフレームから突出する一端側に前記ブラケットを所定の取付状態に係止手段を介して保持する工程と、前記ブラケットを前記ステイに結合する工程と、前記フレームを反転して元に戻す工程と、を含むことを特徴とするエアリザーバタンクの取付方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−241288(P2010−241288A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92904(P2009−92904)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】