説明

エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体およびそれを含む熱可塑性エラストマー

【課題】本発明は、ペレットハンドリング可能なエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を提供しようとしてなされたものである。
【解決手段】本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク(融点)を一つ以上有するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体であって、少なくとも1つの融点が、40℃以上であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体、特にゴム物性を損なうことなくペレットとして扱うことが可能なエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体およびそれを含む熱可塑性エラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、主鎖に不飽和結合を持たないため、共役ジエン系のゴムと比較して耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れる。エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体およびエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含むゴム組成物、該ゴム組成物の架橋体は上記性質を利用し、自動車工業部品、工業用ゴム製品、電気絶縁材、土木建材用品、ゴム引布等のゴム製品等に広く用いられている。
【0003】
近年、前記ゴム組成物の架橋体に代わって、生産性、環境対応性および軽量化の見地から、加硫工程が不要な熱可塑性エラストマー組成物が使用され始めている。その中でも、動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマーは、優れた耐熱性、耐候性を有することから、自動車のウェザーストリップ用途に多く使用されている。一般に、動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレンに代表される熱可塑性樹脂とエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を架橋剤と共に押出機中で動的架橋して製造される。従って、原料となるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は一般にエチレン含量の高いペレット形状のものが用いられる。
【0004】
一方、エチレン含量の高いエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、低温における圧縮永久ひずみに劣るため、低温特性が要求される用途にはエチレン含量の低いエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を使用する必要がある。エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、エチレン含量が低い場合ペレット化してもすぐにブロッキングしてしまうため、ペレット形状を維持する方策としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどの結晶性樹脂を混ぜる方策が知られている。この場合、結晶性樹脂の架橋効率がエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体と比較して低いことから、依然として圧縮永久ひずみなどのゴム物性が低下するという問題が解決されていない。
【0005】
したがって、圧縮永久ひずみなどのゴム物性を維持したまま、エチレン含量の低いエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体をペレット形状に成形する方策が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3849340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ペレットとして扱うことが可能なエチレン含量の低いエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を提供しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記の課題を解決するため鋭意検討の結果、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク(融点)のうち少なくとも1つのピーク(融点)が、40℃以上であるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を使用すれば目的が達成されることを見出し本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、エチレンから導かれる構成単位が40〜85モル%、(但し、エチレンおよびα−オレフィンから導かれる構成単位の合計を100モル%とする)、ヨウ素価が0.5〜40g/100gであるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体であって、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク(融点)の少なくとも1つが、40℃以上にあることを特徴とするエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体である。
【0010】
上記のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、2種類もしくはそれ以上のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体をブレンドするか、または2種類以上の触媒を用いて重合することにより得ることができる。
上記のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体はペレット形状にすることができる。
【0011】
また、上記のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体と熱可塑性樹脂を含む熱可塑性エラストマーは低温特性の点で好ましい態様である。
【0012】
また、上記の熱可塑性エラストマーと架橋剤を含む組成物を動的架橋して得られる熱可塑性エラストマーは低温特性の点で好ましい態様である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンは、エチレン含量が低くてもペレットとして扱うことが可能である。
また、本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いることにより、低温特性に優れた熱可塑性エラストマーを得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体について具体的に説明する。
【0015】
〔エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体〕
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、エチレンから導かれる構成単位、炭素数3以上、好ましくは炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位および非共役ポリエンから導かれる構成単位を含む共重合体である。
【0016】
エチレンから導かれる構成単位は40〜85モル%、好ましくは40〜80モル%、特に好ましく50〜76モル%(但し、エチレンおよびα−オレフィンから導かれる構成単位の合計を100モル%とする)であり、ヨウ素価は0.5〜40g/100g、好ましくは、0.5〜35g/100g、より好ましくは、1〜35g/100g、さらに好ましくは、3〜35g/100g、特に好ましくは5〜20g/100gである。
それぞれの構成単位の含有量は、H−NMRの測定から求めることができる。
【0017】
α−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチルデセン−1、11−メチルドデセン−1および12−エチルテトラデセン−1などが挙げられる。なかでも、プロピレン、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセンおよび1−オクテンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
これらα−オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0018】
また、非共役ポリエンとしては、具体的には、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4s−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、8−メチル−4−エチリデン−1,7−ノナジエンおよび4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−イソブテニル−2−ノルボルネン、シクロペンタジエンおよびノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン等のトリエンなどが挙げられる。なかでも、5−エチリデン−2−ノルボルネンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンが好ましい。
これらの非共役ポリエンは、単独で、または2種類以上組み合わせて用いられる。
【0019】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、通常、135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が通常、0.5〜5.0dL/g、好ましくは0.5〜4.0dL/gである。
【0020】
この極限粘度[η]が上記範囲内にあると、本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いた場合に、ペレット形状になり易くなる。
【0021】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体のGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)に特に制限は無いが、好ましくは1.5〜50、より好ましくは1.5〜30、さらに好ましくは1.5〜10、特に好ましくは2〜5、最も好ましくは2〜4である。
【0022】
この分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いた場合に、ペレット形状になり易くなる。
【0023】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピークのうち少なくとも1つのピークが、40℃以上であり、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60℃以上である。
【0024】
示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピークのうち少なくとも1つのピークが上記範囲内にあると、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体をペレットとして扱うことが可能になる。なお本願において前記の吸熱曲線のピーク値を融点(Tm)とする。
【0025】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピークのうち少なくとも1つのピークの融解熱量(ΔH)が、好ましくは20J/g以下、より好ましくは15J/g以下、更に好ましくは10J/g以下である。
【0026】
示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピークのうち少なくとも1つのピークの融解熱量(ΔH)が上記範囲内にあると本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いた場合に、圧縮永久ひずみなどのゴム物性を維持したままペレット形状として扱うことが容易になる。
【0027】
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネンランダム共重合体、エチレン・ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネンランダム共重合体などを例示することができる。
【0028】
〔エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の調製方法〕
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の調製方法に特に制限は無いが、以下の調製方法によって製造することが出来る。
【0029】
(エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の調製方法(1))
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、例えば、2種類以上のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体をブレンドすることによって得ることが出来る。ブレンドされるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の少なくとも1つは、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピークのうち少なくとも1つのピークが、40℃以上である。
【0030】
この条件を満たすことによって、高融点成分が存在しているので、エチレンから導かれる構成単位の含有量が本願発明の範囲内であっても高融点成分によるブロッキング防止効果が発現し、ペレット形状に成形可能なエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体となる。
【0031】
2種類以上のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体をブレンドする場合、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク(融点)のうち少なくとも1つのピーク(融点)が40℃以上であるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体のエチレンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは75〜95モル%、より好ましくは77〜95モル%(但し、エチレンおよびα−オレフィンから導かれる構成単位の合計を100モル%とする)である。また、40℃以上のピークが存在しないエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体のエチレンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは45〜75モル%、更に好ましくは45〜70モル%(但し、エチレンおよびα−オレフィンから導かれる構成単位の合計を100モル%とする)である。
2種類以上のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体をブレンドする場合のブレンド比率は、少なくとも1つのピークが40℃以上であるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の総重量Aと40℃以上のピークが存在しないエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の総重量Bから求まる重量比〔A/(A+B)〕が、好ましくは0.05〜0.7、より好ましくは0.05〜0.5、更に好ましくは0.1〜0.5である。この範囲にすることにより本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体のエチレンから導かれる構成単位の含有量を40〜85モル%にすることができ、ブレンドによって得られた本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、ペレット形状に成形できる。
【0032】
ブレンド方法には特に制限は無いが、例えば2種類以上のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体をバンバリーミキサー、ニーダー、押出機などにより混練することにより、本発明の共重合体を得る方法が挙げられる。
前記調製法に用いるバンバリーミキサー、ニーダーとしては、従来公知の各種バンバリーミキサー、ニーダーが使用可能である。
【0033】
ブレンド方法として、押出機により混練する場合には、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒が存在しても良い。脂肪族炭化水素溶媒が存在する場合において、溶媒は、共重合体の重合の際に用いた溶媒であってもよく、製造した共重合体に別途溶媒を加えてもよい。
【0034】
この調製法においては、溶媒が存在しているため、共重合体同士を、溶媒不存在下でアロイ化した場合と比べ、共重合体同士を均一に混合することができる。
【0035】
押出機によって溶媒の存在下共重合体を混練する場合には、混練した後に、脱溶媒する。
【0036】
前記調製法に用いる押出機としては、従来公知の各種押出機が使用可能である。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、例えば2つ以上の重合器を用いてそれぞれの重合器で組成の異なるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を製造し、ブレンドする方法が挙げられる。この場合、それぞれの重合器で製造されるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体のエチレンから導かれる構成単位の含有量が5モル%以上、好ましくは7モル%以上、より好ましくは10モル%以上異なる組み合わせが好ましい。
【0037】
(エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の調製方法(2))
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、例えば以下に示すように2種類以上の主触媒を用いて調製することができる。
2種類以上の主触媒としては、例えば2種類以上のメタロセン触媒を用いることが出来る。この場合には以下に例示するメタロセン触媒から選定し、主触媒として用いることが好ましい。
メタロセン触媒としては、特許第2535249号公報に記載の下記一般式[I]

【0038】
【化1】

(式[I]中、Mはチタン、ジルコニウム又はハフニウムであり;CはMにη結合様式で結合するシクロペンタジエニルまたは置換シクロペンタジエニル基であり;Xはそれぞれの場合30個までの炭素原子を有するアニオン性リガンド基であり;nは1または2であり;Yは−O−,−S−,NR−または−PR−であり;ZはSiR,CR,SiRSiR,CRCR,CR=CR,CRSiR,GeR,BRまたはBRであり;Rはそれぞれの場合に水素、またはアルキル、アリール、シリル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール基、および20個までの非水素原子をもつそれらの組合せからえらばれた部分であるか、あるいはZ、またはYとZの双方からの2個またはそれ以上のR基は縮合環系を形成する)に相当する金属配位錯体や、特許第3407074号公報に記載の下記一般式[II]
【0039】
【化2】

(式[II]中MはTiであり;jは1又は2であって、jが1のときTはOであり、jが2のときTはN又はPであり;Rは、それぞれの場合独立して、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、そしてjが2の場合には2個のR基は互いに共有結合してNと共に5−又は6−員ヘテロ環を形成していてもよく;R、R、R、R及びRは、独立して、水素又は1〜20個の炭素原子をもつヒドロカルビル基であり、そして所望によりRとRは互いに共有結合していてもよく;Zは−SiRNR−であって窒素原子はMに結合しており、Rは1〜20個の炭素原子をもつヒドロカルビルであり;Xはハロゲンであるか又は20個以下の原子をもつアニオン性又はジアニオン性リガンド基であり;X’は、それぞれの場合独立して、20個以下の原子をもつ中性ジエンであり;pは0、1又は2であり、そしてXがアニオン性リガンドであるときMの形式酸化状態より2少なく;Xがジアニオン性リガンドであるとき、pは1であり;そしてqは0、1又は2である)に相当する金属錯体、特許第3486005号公報に記載の下記一般式[III]または下記一般式[IV]
【0040】
【化3】

(式[III]中、Mは、周期律表第IVB族の遷移金属であり、R11およびR12は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基またはリン含有基であり、R13およびR14は、それぞれ炭素原子数1〜20のアルキル基であり、X およびXは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基またはイオウ含有基であり、Yは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−P(R)−、−P(O)(R)−、−BR−または−AlR−である。〔ただし、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。〕)
【0041】
【化4】

(式[IV]中、Mは、周期律表第IVB族の遷移金属であり、R21は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基または−NR、−SR、−OSiR、−SiR または−PR基(Rは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基または炭素原子数6〜10のアリール基)であり、R22〜R28は、上記のR21と同様であるか、あるいは隣接するR22〜R28がそれらの結合する原子とともに、芳香族環または脂肪族環を形成していてもよく、XおよびX は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、OH基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基であり、
Zは、
【0042】
【化5】

=BR29、=AlR29、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO、=NR29、=CO、=PR29または=P(O)R29である。〔ただし、R29およびR30は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基であるか、またはR29とR30とは、それぞれそれらの結合する原子とともに環を形成してもよく、Mは、珪素、ゲルマニウムまたはスズの原子である。〕)で示されるメタロセン化合物、特開2011−001497号公報に記載の下記一般式[V]、下記一般式[VI]
【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
(式[V]および式[VI]において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14は水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数が1〜20の炭化水素基、およびケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、RからR14までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。Yはケイ素原子もしくは炭素原子であり、Mはチタニウム原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子から選ばれる。但し、式[V]において、Yがケイ素原子で、RからR12までが全て水素原子である場合は、R13とR14はメチル基、ブチル基、フェニル基、ケイ素置換フェニル基、シクロヘキシル基、ベンジル基以外の基から選ばれ;Yがケイ素原子で、RとR11とが共にt−ブチル基であり、R、R、R、R、R10、R12がt−ブチル基でない場合は、R13とR14はベンジル基、ケイ素置換フェニル基以外の基から選ばれ;Yが炭素原子で、RからR12が全て水素原子である場合は、R13、R14はメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、イソブチル基、フェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−n−ブチルフェニル基、ケイ素置換フェニル基、4−ビフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、キシリル基以外の基から選ばれ;Yが炭素原子で、RおよびR11がt―ブチル基、メチル基およびフェニル基から選ばれる共通の基であり、R、R、R、R、R10およびR12と異なる基または原子である場合は、R13、R14はメチル基、フェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−n−ブチルフェニル基、ケイ素置換フェニル基、ベンジル基以外の基から選ばれ;Yが炭素原子で、Rがジメチルアミノ基、メトキシ基またはメチル基であり、R、R、R、R、R10、R11およびR12が、Rと異なる基または原子である場合は、R13、R14はメチル基、フェニル基以外の基から選ばれ;Yが炭素原子で、フルオレニル基及びR〜R12で構成される部位が、b,h−ジベンゾフルオレニルあるいはa,i−ジベンゾフルオレニルである場合は、R13、R14はメチル基、フェニル基以外の基から選ばれる。式[VI]におけるAは芳香環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の二価の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を示し、AはYと共に形成する環を含めて二つ以上の環構造を含んでいてもよい。但し、YとAが形成する環は、RからR12が同時に水素原子である場合は、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン以外の基から選ばれる。
【0046】
Qは、ハロゲン原子、炭素数が1〜10の炭化水素基、炭素数が10以下の中性、共役または非共役ジエン、アニオン配位子、および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれる。jは1〜4の整数であり、jが2以上の場合は、Qは互いに同一でも異なってもよい。)で表される遷移金属化合物を例示することができる。
【0047】
エチレン含量の多いエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の製造には特にα−オレフィン共重合性の低い触媒の使用が好ましく、エチレン含量の少ないエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(B)の製造には特にα−オレフィン共重合性の高い触媒の使用が好ましい。
【0048】
α−オレフィン共重合性の異なる触媒の組み合わせとしては、それぞれ単独で触媒を使用して同一重合条件において製造されるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体のエチレンから導かれる構成単位の含有量が5モル%以上、好ましくは7モル%以上、より好ましくは10モル%以上異なる共重合体が得られる組み合わせが好ましい。
エチレン含量の多いエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の製造には、特に式[V]、式[VI]で表される遷移金属化合物のうちMがジルコニウム原子である触媒の使用が好ましく、エチレン含量の少ないエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(B)の製造には、特に式[V]、式[VI]で表される遷移金属化合物のうちMがハフニウム原子である触媒の使用が好ましい。
【0049】
エチレン含量の多いエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の製造には、特に式[V]、式[VI]で表される遷移金属化合物のうちYがケイ素原子である触媒の使用が好ましく、エチレン含量の少ないエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(B)の製造には、特に式[V]、式[VI]で表される遷移金属化合物のうちYが炭素原子である触媒の使用が好ましい。
【0050】
そのほかの制限は特にないが、例えばメタロセン触媒を主触媒として用いる場合には、共触媒を用いることができる。共触媒の例として特許第2535249号公報に例示されているAlーO結合を含むアルミニウム化合物、特許第3407074号公報に例示されているプロトン供与可能なカチオンからなるイオン形成性化合物、特許第3486005号に例示されている有機アルミニウムオキシ化合物、メタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物、および有機アルミニウム化合物、特願2009−146896に例示されている有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、および遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物および上記の混合物があげられる。
【0051】
反応温度は、例えばメタロセン触媒を主触媒として用いる場合には、通常は−20〜200℃、好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲であり、圧力は、0を超えて〜8MPa(ゲージ圧)、好ましくは0を超えて〜5MPa(ゲージ圧)の範囲である。上記範囲内では触媒の活性に優れ好適にエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムを製造することができる。
【0052】
また、上記反応に用いる原料の量比はエチレン1molあたり、通常はα−オレフィンが0.2〜1.0mol、非共役ポリエンが0.01〜0.10mol、好ましくはα−オレフィンが0.4〜0.8mol、非共役ポリエンが0.04〜0.08molである。
【0053】
また、原料の供給量によっても異なるが、例えばエチレン4.6kg/hで供給する際には主触媒の使用量は、0.03mmol/h〜0.11mmol/hであり、共触媒の使用量は0.10mmol/h〜0.46mmol/hであり、有機アルミニウム化合物の使用量は0.6mmol/h〜3.0mmol/hである。
【0054】
また、反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは10分間〜3時間である。さらに、共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0055】
〔エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体のペレット化〕
本発明に係るエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体のペレットは、ペレタイザーを備えた押出機を用いて、混練、造粒することによって得られる。
【0056】
〔熱可塑性エラストマー〕
本発明の熱可塑性エラストマーは、前記のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンと熱可塑性樹脂を含む熱可塑性エラストマーである。
また、本発明に係る熱可塑性エラストマーは、上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体および熱可塑性樹脂からなるブレンド物を、架橋剤の存在下に、動的に熱処理することによって調整してもよい。
【0057】
熱可塑性樹脂はオレフィン系樹脂であることが加工性の点で好ましい。オレフィン系樹脂は、高圧法または低圧法の何れかの方法により、1種または2種以上のモノオレフィンを重合して得られる結晶性の高分子量固体生成物である。このようなオレフィン系樹脂としては、例えばアイソタクチックおよびシンジオタクチックのモノオレフィン重合体樹脂があげられる。これらの代表的な樹脂は商業的に入手できる。
【0058】
上記オレフィン系樹脂の適当な原料オレフィンとしては、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセンなどの、炭素数2〜20、好ましくは2〜12のα−オレフィンがあげられる。これらのα−オレフィンは、単独で、または2種以上混合して用いられる。重合様式はランダム型でもブロック型でも、樹脂状物が得られればどのような重合様式を採用しても差支えない。
【0059】
オレフィン系樹脂としてはプロピレン系重合体が好ましく、具体的にはプロピレンホモポリマー、プロピレン・エチレンブロックコポリマー、プロピレン・エチレン、およびプロピレン・エチレン・ブテンランダムコポリマーなどが好ましい。
オレフィン系樹脂は、メルトフローレート(MFR:ASTM D1238−65T、230℃、2.16kg荷重)が、通常0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分の範囲にあることが望ましい。
オレフィン系樹脂は、熱可塑性エラストマーの流動性および耐熱性を向上させる役割を持っている。オレフィン系樹脂は単独で用いてもよく、また2種以上組み合せて用いてもよい。前記オレフィン系樹脂としては、特に制限はないが、ポリプロピレンなどを例示することができ、特にポリプロピレンが好ましい。
【0060】
熱可塑性樹脂および本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の使用割合は、熱可塑性樹脂および本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の合計に対して熱可塑性樹脂が10〜80重量%、好ましくは15〜60重量%、本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体が90〜20 重量%、好ましくは85〜40重量%であるのが加工性の点で望ましい。
【0061】
(架橋剤)
本発明で用いられる架橋剤としては、たとえば有機過酸化物、イオウ、イオウ化合物、フェノール樹脂等のフェノール系加硫剤などが挙げられるが、中でも有機過酸化物が好ましく用いられる。
【0062】
有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
【0063】
中でも、臭気性、スコーチ安定性の点で2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびn−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレートが好ましい。
【0064】
架橋剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の量100重量部に対して0.01〜15重量部、好ましくは0.03〜12重量部の割合で用いられる。架橋剤を上記割合で用いると、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体が架橋した熱可塑性エラストマーが得られ、耐熱性、引張特性およびゴム弾性が十分な成形体が得られる。また、この熱可塑性エラストマーは成形性に優れている。
【0065】
(架橋助剤)
本発明においては、前記架橋剤による架橋処理に際し、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N,4−ジニトロソアニリン、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミド等の架橋助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エレチングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラートまたはビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーを配合することができる。このような化合物により、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においてはジビニルベンゼンを用いると、取扱い易さ、前記被処理物の主成分たるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体への相溶性が良好であり、かつ有機過酸化物を使用する場合、有機ペルオキシド可溶化作用を有し、有機過酸化物の分散助剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性のバランスのとれた熱可塑性エラストマーが得られるため最も好ましい。
【0066】
(軟化剤)
また、本発明においては流動性や硬度の調整剤として軟化剤を添加しても良い。
具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤、コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、椰子油等の脂肪油系軟化剤、トール油、サブ(ファクチス)、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩、ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体、テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、末端変性ポリイソプレン、水添末端変性ポリイソプレン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油などが挙げられる。中でも、石油系軟化剤、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。
【0067】
(添加剤)
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物中に、必要に応じて、スリップ剤、核剤、充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、着色剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0068】
上記核剤としては、非融解型および融解型の結晶化核剤が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。非融解型の結晶化核剤としては、タルク、マイカ、シリカ、アルミニウムなどの無機物、臭素化ビフェニルエーテル、アルミニウムヒドロキシジ−p−tert−ブチルベンゾエート(TBBA)、有機リン酸塩、ロジン系結晶化核剤、置換トリエチレングリコールテレフタレートおよびTerylene&Nylon繊維などが挙げられ、特にヒドロキシ−ジ−p−tert−ブチル安息香酸アルミニウム、メチレンビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ロジン系結晶化核剤が望ましい。融解型の結晶化核剤としては、ジベンジリデンソルビトール(DBS)、置換DBS、低級アルキルジベンジリデンソルビトール(PDTS)、などのソルビトール系の化合物が挙げられる。
【0069】
上記スリップ剤としては、たとえば脂肪酸アミド、シリコーンオイル、グリセリン、ワックス、パラフィン系オイルなどが挙げられる。
【0070】
充填剤としては、従来公知の充填剤、具体的には、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、ケイソウ土、シリカ、アルミナ、グラファイト、ガラス繊維などが挙げられる。
【0071】
上記カーボンブラックとしては、SRF(Semi Reinforcing Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、FEF(Fast Extruding Furance)、MAF(Medium Abrasion Furance)、HAF(High Abrasion Furance)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furance)、SAF(Super Abrasion Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等のカーボンブラックを用いることができる。市販されているカーボンブラックとしては、「旭#50」、「旭#55」、「旭#60」、「旭#60H」、「旭#70」、「旭#80」、「旭#90」、「旭#15」(商品名;旭カーボン株式会社製)、「シーストSO」、「シースト116」、「シースト3」、「シースト6」、「シースト7HM」、「シースト9」(商品名;東海カーボン株式会社製)などを挙げることができる。
【0072】
〔実施例〕
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各特性の評価方法は次の通りである。
【0073】
(1)エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体の組成
日本電子製ECX400P型核磁気共鳴装置を用いて、測定温度120℃、測定溶媒ODCB−d、積算回数512回にて、Hのスペクトルを測定することで、エチレン、α−オレフィンそれぞれの組成を算出した。
(2)エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体のムーニー粘度ML1+4125℃
ASTM D1646に従って、温度125℃にて測定した。
(3)ヨウ素価(g/100g)の測定方法
JIS K0070に準じて測定した。
(4)融点(Tm)および融解熱量(ΔH)測定
示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments社製)を用い、測定用アルミパンに試料約10mgを詰めて、50℃/分で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持した後、10℃/分で−100℃まで降温し、次いで10℃/分で200℃まで昇温した吸熱曲線より求めた。ピークが1つの場合は、ピークをTm1とし対応する融解熱量をΔH1とする。ピークが2つ以上の場合は、最も温度が低いピークをTm1、対応する融解熱量をΔH1とし、最も温度が高いピークをTm2、対応する融解熱量をΔH2とする。
(5)ブロッキング性
ステアリン酸カルシウムを0.1重量パーセント塗したエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ペレットを50g用意し、直径5cmの筒に入れる。この筒の中のペレットに対して4kgの荷重を加え、40℃にて48時間経過した後のペレットの状態を観察する。観察結果から以下の基準に従ってブロッキング性の評点を決定する。ブロッキング性の評点は、値が大きいほどペレットとして扱うのが容易になり、ペレットとして扱うためには、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、最も好ましくは5が望ましい。
1:完全に固着。
2:手でほぐせるが小塊が残る。
3:ペレット形状までほぐせる。
4:簡単に手でほぐせる。
5:まったくブロッキングしていない
(6)メルトフローレート(MFR)
熱可塑性エラストマーのメルトフローレートは、ASTM D 1238−65Tに準拠して230℃、2.16kg荷重で測定した。
(7)引張試験
成形体をJIS K6251に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、破断時強度(TB)および破断伸び(EB)を測定した。
(8)硬さ試験
成形体の平らな部分を重ねて12mmとし、JIS K6253に従いショアーA硬度を測定した。
(9)圧縮永久ひずみ(CS)
JIS K6262に従い、実施例、比較例で得られた成形体の圧縮永久ひずみを測定した。成形体の平らな部分を重ねて12mmとし、圧縮永久ひずみ測定金型に取り付け、試験片の高さが荷重をかける前の高さの3/4になるよう圧縮し、金型ごと所定の温度のギヤーオーブンもしくは冷却槽の中にセットして22時間熱処理した。次いで試験片を取出し、30分間放冷後、試験片の高さを測定し以下の計算式で圧縮永久ひずみ(%)を算出した。
圧縮永久ひずみ(%)={(t0−t1)/(t0−t2)}×100
t0:試験片の試験前の高さ。
t1:試験片を熱処理し30分間放冷した後の高さ。
t2:試験片の測定金型に取り付けた状態での高さ。
【0074】
〔実施例A−1〕
〔エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A−1)の調製〕
容積130LのSUS製攪拌機つき反応器を用いて、温度を110℃に保ち、液レベルを28Lとして、ヘキサンを12kg/h、エチレンを2kg/h、プロピレンを2.4kg/h、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)を0.3kg/hの速度で、水素を0.2NL/hの速度で、主触媒としてジ(p−トリル)シリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリドを0.0495mmol/hおよびジ(p−トリル)シリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.0005mmol/h、共触媒として(CCB(Cを0.25mmol/h、有機アルミニウム化合物としてTIBAを10mmol/hの速度で連続的に反応器へ供給し、エチレンとプロピレンと5−エチリデン−2−ノルボルネンとの三元共重合体の重合液を得た。
ジ(p−トリル)シリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリドおよびジ(p−トリル)シリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドは、WO2004/029062に記載の方法で合成した。
こうして得られた重合溶液を脱溶媒し、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A−1)を得た。得られた共重合体は、エチレン含量が62.9モル%(エチレンおよびα−オレフィンの含有量を100モル%とする)、ヨウ素価が16.8g/100gであった。
得られたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を、ペレタイザー[型式:PASC214−HS型、田辺プラスチックス(株)製]を備えた押出機[型式:VG−50−30押出機、田辺プラスチックス(株)製、シリンダー温:D/C4/C3/C2/C1/F=260/260/230/200/140/50℃、スクリュー回転数:50rpm、樹脂圧:47kgf/cm、カッター回転数:1200rpm]を用いて、混練、造粒することによってエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ペレットを得た。
得られた共重合体およびペレットの物性を表1に示した。
【0075】
〔実施例A−2〕
エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体[エチレン含量:66.1モル%(エチレンおよびα−オレフィンの含有量を100モル%とする)、ヨウ素価:16.0g/100g、ムーニー粘度[ML1+4100℃:45]、製品名 三井EPT 4045M、Tmは測定されなかった]84重量部と、エチレン・ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体[エチレン含量:90.1モル%(エチレンおよびα−オレフィンの含有量を100モル%とする)、ヨウ素価:20.3g/100g、ムーニー粘度[ML1+4100℃:22]、Tm:69℃、製品名 三井EPT K−9720]16重量部を3Lニーダーで4分混合し、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A−2)を得た。
【0076】
ゴム成分として得られたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A−2)を用いた以外は実施例A−1に示すとおりの方法でエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ペレットを得た。得られた共重合体およびペレットの物性を表1に示した。
【0077】
〔実施例A−3〕
容積310LのSUS製攪拌機つき反応器を用いて、温度を(90℃)に保ち、液レベルを100Lとして、ヘキサンを28kg/h、エチレンを4kg/h、プロピレンを3kg/h、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)を200kg/hの速度で、水素を0.2NL/hの速度で、主触媒としてジ(p−トリル)シリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリドを0.0198mmol/hおよびジ(p−トリル)シリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.0002mmol/h、共触媒として(CCB(Cを0.1mmol/h、有機アルミニウム化合物としてTIBAを20mmol/hの速度で連続的に反応器へ供給し、エチレンとプロピレンと5−エチリデン−2−ノルボルネンとの三元共重合体の重合液を得た。こうして得られた重合溶液を脱溶媒し、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A−3)を得た。得られた共重合体は、エチレン含量が69.1モル%(エチレンおよびα−オレフィンの含有量を100モル%とする)、ヨウ素価が11.7g/100gであった。
【0078】
ゴム成分として得られたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A−3)を用いた以外は実施例A−1に示すとおりの方法でエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ペレットを得た。得られた共重合体およびペレットの物性を表1に示した。
【0079】
〔比較例AC−1〕
ゴム成分としてエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体[エチレン含量:66.1モル%(エチレンおよびα−オレフィンの含有量を100モル%とする)、ヨウ素価:16.0g/100g、ムーニー粘度[ML1+4100℃:45]、製品名 三井EPT 4045M、Tm1は測定されなかった]を用い、実施例A−1と同様の方法でエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ペレットを得た。共重合体およびペレットの物性を表1に示した。得られたペレットは、ブロッキング性が著しく悪く、ペレット同士が完全に固着してしまうため、ペレットとして扱うことが出来なかった。
【0080】
〔比較例AC−2〕
ゴム成分としてエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体(AC−2)[エチレン含量:66.4モル%、ヨウ素価:10.5g/100g、ムーニー粘度[ML1+4150℃:56]、Tm1:−1.9℃]を用い、実施例A−1と同様の方法でエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ペレットを得た。共重合体およびペレットの物性を表1に示した。
【0081】
【表1】

【0082】
〔実施例B−1〕
〔熱可塑性エラストマー組成物の調製〕
ゴム成分としてエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A−1)100重量部と、可塑剤としてパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名 PW−100)を100重量部、ポリプロピレンとしてプロピレン単独重合体[MFR(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重):0.5g/10分、融点(Tm):165℃;商品名 E111G]82重量部とを3Lニーダーで4分混合したのち、架橋剤として有機過酸化物[日本油脂(株)製、商品名 パーヘキサ25B]0.73重量部と、架橋助剤としてジビニルベンゼン81%マスターバッチ(DVB)0.68重量部を加えて、120℃で2分混練し、190℃で1分混練することで熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0083】
上記(B−1)をプレス成形機を用いて、金型中で190℃、10分間の条件で成形し、2mm(厚さ)×20cm(縦)×20cm(横)の熱可塑性エラストマー組成物成形体を得る。得られた熱可塑性エラストマー成形体について、MFR、圧縮永久ひずみ(CS)、を測定した。
【0084】
〔実施例B−2〕
ゴム成分として得られたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A−2)を用いた以外は、実施例B−1に示すとおりの方法で熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0085】
〔実施例B−3〕
ゴム成分として得られたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A−3)を用いた以外は、実施例B−1に示すとおりの方法で熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0086】
〔比較例BC−1〕
ゴム成分としてエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体[エチレン含量:77モル%、ヨウ素価:9.8、ムーニー粘度[ML1+4125℃:61、融点:20.8℃]、製品名 三井EPT 3092PM]を用いた以外は実施例B−1に示すとおりの方法で熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0087】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、ペレットハンドリングが可能である。そのため、熱可塑性エラストマー原料として用いることが可能であり、自動車部品、工業機械部品、電気電子部品、土木建築部品、医療部品をはじめ種々の用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンから導かれる構成単位が40〜85モル%(但し、エチレンおよびα−オレフィンの構成単位の合計を100モル%とする)、ヨウ素価が0.5〜40g/100gであるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体であって、
示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピークの少なくとも1つが、40℃以上にあることを特徴とするエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体。
【請求項2】
2種類以上のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を、ブレンドすることによって得られることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体。
【請求項3】
2種類以上の触媒を用いて重合されることを特徴とする請求項1に記載のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を含むペレット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体および熱可塑性樹脂を含む熱可塑性エラストマー。
【請求項6】
請求項5に記載の熱可塑性エラストマーと架橋剤を含む組成物を動的架橋して得られる熱可塑性エラストマー。

【公開番号】特開2012−153756(P2012−153756A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12038(P2011−12038)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】