説明

エッチング方法及び半導体デバイス用基板の製造方法

【課題】 チタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層の両層を所望のエッチング速度で安定的にエッチングできる方法を提供する。
【解決手段】 珪フッ化水素酸、珪フッ化水素酸塩及び水を含有するエッチング液によりチタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層を同時にエッチングする方法であって、エッチングの進行に伴い、エッチングされたチタン及びアルミニウムの量に対して当量以上の珪フッ化水素酸を補充することを特徴とするエッチング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層を同時にエッチングする方法及びこれを用いた半導体デバイス用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶表示装置、ICカード等の製造において、シリコンウェハやガラス基板の上に金属配線を作製する際には、基板と金属配線との密着性が重要である。そこで、基板との密着性が悪い金属で配線を形成する場合、一般的に、基板と金属配線との密着性を向上させるために、基板と金属配線との間に下地層を形成する。
下地層の材料としては、基板との密着性に優れたものを選定する必要があり、基板がシリコンやガラスなどの場合、従来は、モリブデンが用いられていた。しかしながら、モリブデンは水分に弱く腐食しやすいために合金化が必要なこと、及び、近年のモリブデン価格の高騰に伴い、シリコンやガラスとの密着性が良く、合金化が不要なチタンを使用するケースが増えてきている。
【0003】
基板上に金属配線を形成する際は、一般的に、基板上に下地チタン層を成膜し、その上に配線となるアルミニウム層を成膜し、更に、このアルミニウム層に酸化防止用のチタン層を成膜してから、その表面の一部にレジスト層を形成して「レジスト層/チタン層/アルミニウム層/チタン層/基板」なる積層体とした後(図2参照)、レジストで覆われていない部分の「チタン層/アルミニウム層/チタン層」を除去する(図1参照)。
【0004】
アルミニウム層とチタン層とを同時にエッチングできるエッチング液としては、硝酸等の酸化剤を含有するフッ素系のエッチング液硝が知られているが(特許文献1及び2参照)、エッチング速度を上げるべく硝酸濃度を高くすると、速度制御が難しくなる上、ガラス基板を腐食しやすくなってしまう。また、シリコン基板又は珪酸系ガラス基板上のチタン及びチタン酸化物を珪フッ化水素酸を含有する液でエッチングできるとの文献もあるが、該文献にはチタンとアルミニウムの同時エッチングについては、記載も示唆も無い (特許文献3)参照 。
【0005】
ところで、半導体デバイス、液晶表示装置又はICカード等の製造においては、エッチング速度を一定に保ち、製品の寸法精度を高める上で、基板上の特定層をエッチングする場合のエッチング液組成を一定に制御することが極めて重要である。しかしながら、エッチング液により、大量のエッチング対象物をエッチングすると、エッチングの進行に伴い、エッチング液の組成が変化してしまい、エッチング速度が変動してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2004−71920号公報
【特許文献2】特開2007−67367号公報
【特許文献3】特開2005−97715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、チタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層の両層を一定のエッチング速度で安定的にエッチングできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた。この結果、珪フッ化水素酸及び珪フッ化水素酸塩を含有する水溶液によって、チタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層の両層をエッチングできることを見出し、特願2008−021114号として出願した。そして、今般、更に、珪フッ化水素酸及び珪フッ化水素酸塩及び水を含有するエッチング液でチタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層の両層をエッチングする場合に、エッチングされたチタン及びアルミニウム量に対し、当量以上の珪フッ化水素酸を補充することにより、両層のエッチング速度を安定的に制御できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち本発明は以下を要旨とする。
[1] 珪フッ化水素酸、珪フッ化水素酸塩及び水を含有するエッチング液によりチタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層を同時にエッチングする方法であって、エッチングの進行に伴い、エッチングされたチタン及びアルミニウムの量に対して当量以上の珪フッ化水素酸を補充することを特徴とするエッチング方法。
[2] 前記珪フッ化水素酸塩がヘキサフルオロ珪酸アンモニウムであることを特徴とする[1]に記載のエッチング方法。
[3] エッチングされたチタン及びアルミニウムの合計量1モル当たり、珪フッ化水素酸を3モル以上補充することを特徴とする[1]又は[2]に記載のエッチング方法。
[4] 補充する珪フッ化水素酸は45重量%以下の珪フッ化水素酸水溶液として補充することを特徴とする[1]乃至[3]の何れかに記載のエッチング方法。
[5] [1]乃至[4]の何れかに記載の方法において、チタンを主成分とする層及び/又はアルミニウムを主成分とする層のエッチング速度をモニターすることを特徴とするエッチング方法。
[6] エッチング速度のモニターを光を用いて行うことを特徴とする[5]に記載の方法。
[7] 珪フッ化水素酸、珪フッ化水素酸塩及び水を含有するエッチング液によりチタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層を同時にエッチングする工程を含む半導体デバイス用基板の製造方法であって、該エッチング工程では、エッチングの進行に伴い、エッチングされたチタン及びアルミニウムの量に対して当量以上の珪フッ化水素酸を補充しながらエッチングすることを特徴とする半導体デバイス用基板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエッチング方法によれば、チタンを主成分とする層(以下、単に「チタン層」と記す場合もある)とアルミニウムを主成分とする層(以下、単に「アルミニウム層」と記す場合もある)とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層の両層を均一に、エッチング残り等無く、一定の速度で連続して安定的にエッチングすることが可能である。特に、本発明のエッチング方法は、半導体デバイス、液晶表示装置、又はICカード等の製造において、シリコンウェハやガラス等の含シリコン基板の上にゲート、ソース及びドレン配線を作製する際に、チタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層の両層をエッチングするのに好適である。具体的には、含シリコン基板上にチタン層(基板と配線との密着性を向上させるための下地層)、アルミニウム層(配線)、チタン層(酸化防止層)をこの順に成膜した後、その表面の一部にレジスト層を形成して「レジスト層/チタン層/アルミニウム層/チタン層/基板」なる積層体とした後に(図2参照)、レジストで覆われていない部分の「チタン層/アルミニウム層/チタン層」を除去するのに本発明のエッチング方法を用いると、エッチング後の断面に庇状のエッチング残りなどが生じることなく、また、基板を腐食することなく、チタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層のみを高速で安定的にエッチングすることが可能である(図1参照)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明のエッチング方法の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明のエッチング方法は、珪フッ化水素酸、珪フッ化水素酸塩及び水を含有するエッチング液を用いる。
珪フッ化水素酸は、以下の反応式の通り、フッ酸と珪素又は酸化珪素との反応により生成させることができる。従って、本発明のエッチング方法で用いる珪フッ化水素酸は、当然に、このように液中で珪フッ化水素酸を生じているものも含むこととする。
【0011】
6HF+Si →2H+HSiF (1)
6HF+SiO→2HO+HSiF(2)
【0012】
本発明のエッチング方法で用いるエッチング液中の珪フッ化水素酸の濃度は、チタン及びアルミニウムのエッチング速度を支配すると考えられる。エッチングを始めるときの珪フッ化水素酸の濃度(珪フッ化水素酸の初期濃度)の下限は、0.5重量%であるのが好ましく、1.0重量%であるのが更に好ましく、3.0重量%であるのが特に好ましく、同上限が40重量%であるのが好ましく、20重量%であるのが更に好ましく、10重量%であるのが特に好ましい。珪フッ化水素酸の初期濃度が上記範囲内であると、珪フッ化水素酸濃度に比例してチタン及びアルミニウムのエッチング速度が速くなる傾向にある。また、珪フッ化水素酸の初期濃度が上記上限以下であると、珪フッ化水素酸の分解等によるエッチング液の不安定化が起こりにくい。特に、珪フッ化水素酸の初期濃度が40重量%以下であると入手が容易である点でも好ましい。更に、後述の通り、含シリコン基板の上に配線を形成させる際に作製する「チタン層/アルミニウム層/チタン層/基板」中の上側チタン層は、酸化されやすいが、本発明のエッチング液に含まれる珪フッ化水素酸の初期濃度が上記上限以下であると、エッチング後の断面形状のテーパ角Dが大きくなるため好ましい(図3参照)。
【0013】
本発明のエッチング方法に用いるエッチング液に含まれる水は、本発明のエッチング方法を半導体デバイス基板の微細配線作製などで行うことから高純度であるのが好ましい。具体的には、導電性イオン不純物量の指標となる比抵抗値が1MΩ・cm以上であるものが好ましく、10数MΩ・cm以上である超純水が特に好ましい。
チタンとアルミニウムは、イオン化電位が非常に近く(チタン−1.63V、アルミニウム−1.66V)、共にアルカリ金属、アルカリ土類金属を除いた金属の中では、非常に低い。そこで、両元素ともに還元雰囲気下でも十分にイオン化され、エッチングされると推定される。
【0014】
但し、チタンは酸化されやすい。このため、後述のように、含シリコン基板上に配線を形成させる際に層構成が「レジスト層/チタン層/アルミニウム層/チタン層/基板」である積層体を作製すると、レジストパターニングにより、レジスト層側のチタン層には、酸化膜が形成されてしまう。従って、従来の珪フッ化水素酸水溶液で「チタン層(部分酸化)/アルミニウム層(金属)/チタン層(金属)」をエッチングすると、アルミニウム層や基板側のチタン層のエッチング速度に対し、レジスト側のチタン層のエッチング速度が遅くなってしまう。
【0015】
レジスト側のチタン層は、層全体が酸化チタンとなっているのではなく、金属と酸化物が混在された状態になっており、表面に近いほど酸化が進んでいる。しかしながら、その酸化部分の厚みが必ずしも一定で無いことから、層構成が「レジスト層/チタン層/アルミニウム層/チタン層/基板」である積層体中の「チタン層(部分酸化)/アルミニウム層/チタン層(金属)」を一括エッチングするのは難しい。即ち、チタン(金属)層とチタン(部分酸化)の積層体を同時にエッチングすると、酸化膜の有無及びその厚みムラによって、酸化膜の薄い部分のエッチングが先に進行するために、上側チタン層のエッチングに残部ができ、庇状に残る、又はエッチング断面がギザギザになる等の状態になりやすい。
【0016】
本発明のエッチング方法で用いるエッチング液は、珪フッ化水素酸塩を含有する。従来、アルミニウム層とチタン層とを含んでなる積層体中のアルミニウム層とチタン層をエッチングするのには、硝酸等の酸化剤を含有するフッ素系のエッチング液が用いられていた。硝酸等の酸化剤を含有するフッ素系のエッチング液は、シリコン及びシリコン酸化物のエッチング液として広く使用されているが、硝酸濃度を高くして、チタンのエッチング速度を上げると、速度制御が難しくなり、また、ガラス基板を腐食しやすくなってしまう。これに対し、本発明のエッチング方法では、ガラス基板を腐食することなく、アルミニウム層とチタン層のみを高速でエッチングすることが可能となる。また、珪フッ化水素酸塩は、酸化されたチタン層をマイルドにエッチングするため、より均一なエッチングが可能となる。
【0017】
珪フッ化水素酸水溶液系のエッチング液で、珪フッ化水素酸塩が酸化されたチタン層のエッチング速度を向上させる効果を奏する理由については、以下のように推定される。
アルミニウムは、アルミニウムカチオンとアルミン酸アニオンの形態をとることが可能である。また、チタンは、チタンカチオンとチタン酸アニオンの形態をとることが可能である。即ち、チタン(0価)は、還元雰囲気下の酸により、以下の(3)式のように、チタンカチオンを溶解させることができる。
【0018】
Ti+2HSiF→Ti(SiF)2+2H (3)
また、チタン酸化物は、塩(カチオン)の存在により、以下の(4)式のように、チタン酸アニオンとしても溶解させることができる((4)式では、塩としてヘキサフルオロ珪酸アンモニウムを用いた例を示す)。
TiO+HO+(NH)SiF→(NH)TiO+HSiF (4)
【0019】
このように、珪フッ化水素酸塩を含む珪フッ化水素酸の水溶液は、酸化状態の異なるチタン層を均一にエッチングさせることができると推定される。このため、エッチング残りやエッチング完了部分の下側層への影響を小さくすることができ、「チタン層(部分酸化)/アルミニウム層/チタン層(金属)」を断面がきれいになるようにエッチングすることが可能となり、レジスト側チタン層のエッチング残部が庇状に残る、エッチング断面がギザギザになる、等の現象が生じにくくなるものと推定される。レジスト側チタン層が庇状になったり、垂れたりすると、その下側に隙間ができ、エッチング液や水分がそこに取り込まれたり、レジスト剥離後に、レジスト側チタン層上に絶縁膜を付ける際に庇が影響してヒビが入る、庇が垂れた隙間に異物が入る等のことがあるが、本発明のエッチング方法を用いれば、こうした現象が起こりにくくなり、デバイスの製造の収率が大幅に向上すると期待される。
【0020】
珪フッ化水素酸塩としては、強酸/弱塩基としてのバッファ効果を有することから、アンモニウム塩が好ましく、ヘキサフルオロ珪酸アンモニウム(別称:珪フッ酸アンモニウ
ム)及びヘキサフルオロ珪酸のテトラメチルアンモニウム(別称:珪フッ酸テトラメチルアンモニウム)が更に好ましく、また、安価であることから、ヘキサフルオロ珪酸アンモニウムが特に好ましい。本発明のエッチング液に含まれる珪フッ化水素酸塩は、1種類でも、2種類以上の混合物でもよい。
【0021】
本発明のエッチング方法で用いるエッチング液に含まれる珪フッ化水素酸塩の珪フッ化水素酸に対する初期濃度比(エッチングを始めるときの珪フッ化水素酸塩濃度の珪フッ化水素酸濃度に対するモル比)の下限は、酸化状態が異なる2つ以上のチタン層をも均一にエッチングできること等から、下限が0.5であるのが好ましく、0.7であるのが更に好ましく、1.0であるのが特に好ましい。また、同上限が4.0であるのが好ましく、3.5であるのが更に好ましい。珪フッ化水素酸塩の珪フッ化水素酸に対する比により、基板側チタン層(金属)とレジスト側チタン層(部分酸化)のエッチング速度のバランスが変わる。即ち、該モル比が上記下限以上であると、レジスト側チタン層のエッチング速度が速くなり、テーパ角度(図3のD)が小さくなるため好ましく、一方、該モル比が上記上限以下であると、基板側チタン層(金属)のエッチング速度が速くなり、レジスト側チタン層のエッチング残部が庇状に残ったり、エッチング断面がギザギザになったりしにくくなる点で好ましい。
【0022】
本発明のエッチング方法で用いるエッチング液に含まれる珪フッ化水素酸塩の初期濃度(エッチングを始めるときの珪フッ化水素酸塩濃度)は、下限が0.3重量%であるのが好ましく、1.0重量%であるのが更に好ましく、3重量%であるのが特に好ましく、5重量%であるのが最も好ましい。また、同上限が50量%であるのが好ましく、40量%であるのが更に好ましく、30量%であるのが特に好ましく、20量%であるのが最も好ましい。本発明のエッチング方法で用いるエッチング液に含まれる珪フッ化水素酸塩の初期濃度が上記下限以上であると、レジスト側チタン層のエッチング速度が速くなり、テーパ角度(図3のD)が小さくなることから好ましく、上記上限以下であると、基板側チタン層(金属)のエッチング速度が速くなり、レジスト側チタン層のエッチング残部が庇状に残ったり、エッチング断面がギザギザになったりしにくい上、アンモニウム塩の溶解度の点からも好ましい。
【0023】
本発明のエッチング方法で用いるエッチング液に含まれる珪フッ化水素酸と珪フッ化水素酸塩の初期濃度は、合計で0.8重量%以上含まれているのが好ましく、8.0重量%以上含まれているのが更に好ましい。
本発明のエッチング方法で用いるエッチング液には、本発明の効果を著しく損なわない限り、珪フッ化水素酸、水及び珪フッ化水素酸塩以外の成分を含んでいても構わない。本発明のエッチング方法で用いるエッチング液に含まれる珪フッ化水素酸、珪フッ化水素酸塩及び水の合計量は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。珪フッ化水素酸、水及び珪フッ化水素酸塩以外の成分が含まれる場合、これらのその他成分としては、例えば、アルコール等の溶媒、酸化剤、界面活性剤、酸などが挙げられる。特に、本発明のエッチング方法で液晶系のゲート配線を作製する場合等、レジストまで剥離しない必要がある場合は、そうなる範囲で選択する。また、溶媒等は、本発明のエッチング方法の安全性を考慮して選択するのが好ましい。
【0024】
アルコールを使用する場合は、1価でも2価以上でもよい。例えば、メタノール,エタノール,プロパノール及びグリコール類等が挙げられる。これらの内、エッチング速度等から、エーテル結合を有するアルコール(珪フッ化水素酸水溶液に溶解し、エーテル結合と水酸基を有しているもの)が好ましく、特に、本発明のエッチング方法を液晶系のゲート配線作製に適用する場合は、レジストを溶解しにくいこと等から、下記一般式(5)の構造を有するアルコールが更に好ましい。
【0025】
HO−(R1−O)n−H (5)
(式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは2〜6の整数を示す。)
上記一般式(5)におけるアルキレン基Rの炭素数の下限は、2以上が好ましい。また、同上限は4以下が好ましく、3以下が更に好ましく、Rの炭素数は2が最も好ましい。アルキレン基Rの炭素数が上記下限以上であると、化合物としての安定性の点で好ましく、また、上記上限以下であると、分子量が小さいことによる、粘度低下の起こり難さ、蒸留精製のし易さ、水への溶解性等から好ましい。
【0026】
としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられ、プロピレン基等は、直鎖状でも分岐状でも構わないが、分岐すると2級炭素は酸化剤等に対する反応性が高いなるため、直鎖状が好ましい。
は、界面活性能及び水への溶解性を大幅に損なわなければ、置換基を有していても構わない。
【0027】
上記一般式(5)におけるnは、2以上であるのが好ましい。また、6以下であるのが好ましく、5以下であるのが更に好ましく、4以下であるのが特に好ましく、2であるのが最も好ましい。nが上記範囲であるのが好ましい理由としては、親水基が小さくなるため粘度が下がる、蒸留精製がし易い、短分子構造となるため水に溶解しやすいなどの点が挙げられる。
【0028】
本発明のエッチング方法で用いるエッチング液がアルコールを含有する場合は、1種類でも、2種類以上の混合物でもよい。
本発明のエッチング方法で用いるエッチング液は、硝酸等の酸化剤を含有しても良いが、安全性の点からは少ない方が好ましい。また、特に、本発明のエッチング方法でシリコン又はシリコン酸化物基板上のチタン層とアルミニウム層のみをエッチングする場合は、シリコン又はシリコン酸化物基板をエッチングしない必要がある。以上の理由から、本発明のエッチング方法で用いるエッチング液は、酸化剤濃度を10重量%以下とするのが好ましく、7重量%以下とするのが更に好ましく、1重量%以下とするのが特に好ましく、0.1重量%以下とするのが最も好ましい。また、本発明のエッチング液中における酸化剤濃度が低いと、危険性が低い分、多様な添加剤を含むことが可能となる。
【0029】
本発明のエッチング方法で用いるエッチング液は、濡れ性向上の点からは、界面活性剤を含有するのが好ましい。界面活性剤は、アニオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤が好ましく、アニオン系界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられ、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレングリコールエーテル類等が挙げられる。界面活性剤を用いる場合のエッチング液中での濃度は、10重量ppm以上が好ましく、また、500重量ppm以下が好ましく、200重量ppm以下が更に好ましい。界面活性剤濃度が上記下限以上であると、エッチング液の濡れ性がアップしやすく、また、上記上限以下であると、発泡し難い点で好ましい。
【0030】
本発明のエッチング方法で用いるエッチング液は、酸を含有してもよい。酸としては、炭素数1〜4の有機カルボン酸が好ましく、例えば、一塩基酸として、蟻酸,酢酸,プロピオン酸,ブチル酸が、二塩基酸として、蓚酸,マロン酸,クエン酸,コハク酸,グルタル酸,リンゴ酸等が挙げられる。
本発明のエッチング方法で用いるエッチング液中の粒子に関しては、近年の基板上のパターンサイズの微細化に伴う均一エッチングを阻害する危険性があるので少ないことが望ましい。具体的には、粒径0.5μm以上の微粒子数は、1000個/ミリリットル以下とすることが好ましい。エッチング液中に粒子がふくまれる場合は、例えば、精密フィルターを用いて濾過するなどして除くことができる。この場合、濾過の方式はワンパス式でも良いが、微粒子の除去効率の点からは、循環式がより好ましい。
【0031】
本発明のエッチング方法は、チタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層の両層を同時にエッチングすることができる。チタンを主成分とする層(チタン層)とは、層中の金属元素について、通常、その90重量%以上がチタンである層をいい、好ましくは95重量%以上がチタンである層をいう。チタンを主成分とする層中のチタンは、その一部が酸化されていても構わない。また、アルミニウムを主成分とする層(アルミニウム層)とは、通常、アルミニウムの含有量が90重量%以上、好ましくは95重量%以上である層をいう。
【0032】
本発明のエッチング方法は、特に、アルミニウム層及び酸化状態が互いに異なるチタン層を2層以上有する積層体中のアルミニウム層及びチタン層を同時にエッチングするのに適しており、具体的には、例えば、層構成が上述の「レジスト層/チタン層(部分酸化)/アルミニウム層/チタン層(金属)/基板」である積層体中の「チタン層(部分酸化)/アルミニウム層/チタン層(金属)」等のエッチングに適している。
【0033】
本発明によりエッチングされるチタンを主成分とする層の厚さ(チタンを主成分とする層が2つ以上ある場合は、その各層)は、特に制限はないが、本発明のエッチング方法は、下限が、通常5nm、好ましくは10nm、更に好ましくは15nmで、特に好ましくは20nmで、上限が通常300nm、好ましくは200nm、更に好ましくは100nm、特に好ましくは50nmのものに対して、好適に適用される。また、本発明のエッチング方法によりエッチングされるアルミニウムを主成分とする層の厚さは、特に制限はないが、本発明のエッチング方法は、下限が、通常5nm、好ましくは20nm、更に好ましくは50nmで、特に好ましくは100nmで、上限が通常1000nm、好ましくは500nm、更に好ましくは300nmのものに対して、好適に用いられる。
【0034】
本発明の方法により、チタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層の両層を均一に、エッチング残り等無く、一定の速度で連続して安定的にエッチングすることができる。本発明の方法を含む工程で得られる液晶デバイス用基板は、従来のモリブデンが下地であるものに比べ、安定性、耐腐食性に優れる。また、モリブデン上にアルミニウムを成膜すると、熱処理等によってヒロックを生じることがあるため、モリブデン上にアルミニウムを成膜する場合は、アルミニウムをネオジウム等と合金化する必要があり、それに伴い電気抵抗が上がってしまう。一方、チタン上にアルミニウムをスパッタ成膜しても、アルミニウムの配向性が揃う((1,1,1)面をとる)ために、アルミニウムの合金化に伴う電気抵抗の上昇を小さくすることができる。
【0035】
本発明のエッチング方法を行う場合の条件については、本発明のエッチング方法の優れた特性が発揮できれば特に制限は無い。エッチング時の温度は、エッチング速度の点からは、高温である方が好ましく、エッチングの均一性の点からは低温である方が好ましい。具体的には、通常、常温(15〜25℃)、または、クリーンルーム内で一定温度(例えば23℃)に保つなどで行う。但し、珪フッ化水素濃度が高くなると、珪フッ化水素酸水溶液中の珪フッ化水素酸が分解しやすい傾向にある。珪フッ化水素酸が分解すると、HF(フッ酸ガス)とSiF(フッ化珪素ガス)が生成し、更にSiFは水と素早く反応してSiOを生成し、これが水溶液中に析出してしまう。そこで、珪フッ化水素酸水溶液の濃度が高い場合は、エッチング時の温度は、60℃以下が好ましく、50℃以下が更に好ましく、45℃以下が特に好ましい。エッチング時の圧力は、簡便性の点から、常圧が好ましい。
【0036】
エッチング方式としては、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、バッチ浸漬方式、スピン方式、スプレー方式等が挙げられる。エッチング処理は、エッチング液を撹拌、又はエッチング液中の処理基板を揺動させるのが好ましい。
エッチング速度については、エッチング工程の高速化の点では速い方が好ましいが、エッチングの均一性の点からは、遅い方が制御しやすい。本発明のエッチング方法におけるエッチング速度は、酸化されたチタン層をエッチングする場合等は、その酸化の程度等によっても変わるが、上述の観点から、下限が50nm/分であるのが好ましく、100nm/分であるのが更に好ましく、150nm/分であるのが特に好ましく、200nm/分であるのが最も好ましい。また、同上限は、1000nm/分であるのが好ましい。
【0037】
本発明のエッチング方法は、チタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層をエッチング液により同時に高速でエッチングすることができる。また、特に、前記積層体がチタンを主成分とする層を2層以上含み、各層におけるチタンの酸化状態が互いに異なる場合に、この酸化状態の異なる「チタンを主成分とする層」及びアルミニウムを主成分
とする層を同時にエッチングするのに適している。本発明のエッチング方法で、部分酸化されたチタン層が最上層にある積層体中のチタン層及びアルミニウム層をエッチングする場合、珪フッ化水素酸濃度が高いほど、エッチング速度は大きくなるが、テーパ角(図3のD)は小さくなる傾向にある。上記の好ましい条件で、層構成が「チタン層(部分酸化)/アルミニウム層/チタン層(金属)/基板」である積層体中の「チタン層(部分酸化)/アルミニウム層/チタン層(金属)」をエッチングすると、そのテーパ角(図3のD)を10〜20度とすることができる。
【0038】
即ち、本発明のエッチング方法は、「チタンを主成分とする層(部分酸化された金属層でもよい)」と「アルミニウムを主成分とする層」を均一速度で高速に一括エッチングすることが可能であるため、上層に部分酸化されたチタン層があっても、エッチング断面が庇状には垂れずにエッチングすることが可能となる。
本発明のエッチング方法は、特に、多量のチタン層及び/又はアルミニウム層をエッチングするのに好適である。
【0039】
一般的に、エッチング液により多量のエッチング対象物をエッチングしていくと、エッチングの進行に伴い、エッチング速度は低下する。そこで、多量のエッチング対象物をエッチングする場合は、エッチング速度が遅くなったところでエッチング液を交換(バッチ運転)又は補充(連続運転)する必要がある。
エッチング液を補充する場合は、通常、エッチング量からエッチング液成分の消費量を見積もり、その分を補充する。本発明のエッチング方法では、チタン層及びアルミニウム層は、各々、以下のように反応していると考えられる。
【0040】
Ti+2HSiF→Ti(SiF)2+2H (3)
2Al+3HSiF→Al(SiF+3H (6)
【0041】
この反応式より、理論的には、「チタン1モルをエッチングするのに、珪フッ化水素酸2モル」が、「アルミニウム2モルをエッチングするのに、珪フッ化水素酸3モル」が、各々消費されると推定される。ここで、この「チタン1モルをエッチングするのに要する2モルの珪フッ化水素酸」を本発明のエッチング方法における「エッチングされたチタンに対する当量の珪フッ化水素酸」とし、「アルミニウム1モルをエッチングするのに要する1.5モルの珪フッ化水素酸」を本発明のエッチング方法における「エッチングされたアルミニウムの量に対する当量の珪フッ化水素酸」とする。
【0042】
しかしながら、珪フッ化水素酸、珪フッ化水素酸塩及び水を含有するエッチング液で多量のチタン層及び/又はアルミニウム層をエッチングした後に、「エッチングされたチタン及びアルミニウムの量に対する当量の珪フッ化水素酸」を補充しても、エッチング速度は、エッチング初期の状態には戻らなかった。
本発明者らは、ここで、エッチング反応によりチタン及び/又はアルミニウムの珪フッ化物等が生成し、これがエッチング反応を阻害しているのではないかと推論し、且つ、この阻害物質もエッチングされたチタン及びアルミニウムの量に対する当量程度生じている可能性があると推論した。そして、この推論に基づいて検討した結果、通常、補充量と考えられる量に比べて明らかに過剰量の珪フッ化水素酸を補充することにより、エッチング速度が制御できることを見出した。即ち、珪フッ化水素酸、珪フッ化水素酸塩及び水を含有するエッチング液を用いて、チタン層とアルミニウム層とを含んでなる積層体中のチタン層及びアルミニウム層を同時にエッチングする場合において、エッチングの進行に伴い、エッチングされたチタン及びアルミニウムの量に対して当量以上の珪フッ化水素酸を補充することにより、エッチング速度を制御し得ることを見出した。
【0043】
一般的に、エッチング時の反応生成物がエッチング速度に影響を及ぼしている場合、複雑な反応の影響で、エッチング速度を所望の速度に制御するために補充するエッチング液成分の量を定めるのは困難であることが多い。しかしながら、意外なことに、本発明の方法では、エッチングされたチタン及びアルミニウムの量に対して当量以上の珪フッ化水素酸を補充することにより、エッチング速度を制御することが可能である。
【0044】
本発明のエッチング方法では、補充する珪フッ化水素酸の量により、所望の速度に制御が可能である。具体的には、補充する珪フッ化水素酸の量により、エッチング開始当初より速くすることも、遅くすることも、エッチング開始当初と同じ速度に維持することの何れもが可能である。
本発明のエッチング方法でエッチング速度をエッチング開始当初と同じ速度に維持したい場合について、エッチングの進行に応じて補充する珪フッ化水素酸の量は、具体的には、1モルのチタンをエッチングする毎に、下限が通常2.5モル、好ましくは3モル、上限が通常10モル、好ましくは7モル、更に好ましくは4モルの珪フッ化水素酸を補充するのがよい。また、1モルのアルミニウムをエッチングする毎に、下限が通常2.5モル、好ましくは3モル、更に好ましくは4モル、特に好ましくは6モル、上限が通常10モル、好ましくは8モル、更に好ましくは7モルの珪フッ化水素酸を補充するのがよい。そして、チタン及びアルミニウムを同時にエッチングする場合は、上述のチタン1モル毎及びアルミニウム1モル毎の珪フッ化水素酸の補充量の合計量を補充するのがよい。
【0045】
本発明のエッチング方法で補充する珪フッ化水素酸の量は、エッチング対象物の組成、エッチング液の組成及び温度や撹拌の有無などのエッチング条件にも依存すると考えられる。そこで、本発明の方法により実際にエッチング速度を制御する場合は、予め、実際にエッチングする条件で、珪フッ化水素酸の補充量とチタン及びアルミニウムのエッチング速度との関係がチタン及びアルミニウムのエッチング量に応じてどのように変化するか調べておくのが良い。具体的には、例えば、チタン及びアルミニウムのエッチング速度を一定にしたい場合は、チタンのエッチング速度を一定にするのに必要な珪フッ化水素酸の補充量とアルミニウムのエッチング速度を一定にするのに必要な珪フッ化水素酸の補充量を調べておいて、その合計量の珪フッ化水素酸を補充する方法などが挙げられる。ここで、チタンのエッチング速度を一定にするのに必要な珪フッ化水素酸の補充量は、一定量のチタンを溶解させたエッチング液に珪フッ化水素酸を徐々に補充して、珪フッ化水素酸の補充量とチタンのエッチング速度との相関を調べることにより求められる。同様に、アルミニウムのエッチング速度を一定にするのに必要な珪フッ化水素酸の補充量は、一定量のアルミニウムを溶解させたエッチング液に珪フッ化水素酸を徐々に補充して、珪フッ化水素酸の補充量とアルミニウムのエッチング速度との相関を調べることにより求められる。なお、チタン及び/又はアルミニウムのエッチング量は、基板一枚当たりの面積とチタン及び/又はアルミニウムの膜厚から算出できる。
【0046】
補充する珪フッ化水素酸は、珪フッ化水素酸をそのままエッチング液に導入しても、予め溶液としてからエッチング液に導入してもよいが、液組成を均一に保つには、溶液として導入するのが好ましい。珪フッ化水素酸を溶液として補充する場合は、通常、水溶液として補充する。
補充する珪フッ化水素酸水溶液の濃度は、エッチング速度、補充すべき珪フッ化水素酸量及びエッチング液中の水の蒸発量等を考慮して適宜定めればよいが、エッチング速度が遅い場合は、低いことが好ましく、一方、エッチング速度が速い場合は、高いことが好ましい。また、コストの点では、高濃度の珪フッ化水素酸水溶液が高価であることから、低濃度であるのが好ましい。具体的には、45重量%以下の珪フッ化水素酸水溶液として導入するのが好ましく、40重量%以下の珪フッ化水素酸水溶液として導入するのが更に好ましく、また、20重量%以上の珪フッ化水素酸水溶液として導入するのが好ましく、30重量%以上の珪フッ化水素酸水溶液として導入するのが更に好ましい。
【0047】
珪フッ化水素酸を補充する際には、反応に大きな影響を及ぼさなければ、珪フッ化水素酸及び水以外の成分が含まれていてもよい。その他成分としては、珪フッ化水素酸塩、アルコール、酸化剤及び界面活性剤など、本発明の方法で用いるエッチング液に含まれていても良い成分などが挙げられる。また、珪フッ化水素酸を溶液として補充する際の補充液中の粒子についても、本発明の方法で用いるエッチング液中の粒子について述べたのと同様のことが言える。
【0048】
珪フッ化水素酸をラインから補充する際は、補充成分を1つのラインから導入してもよいし、複数のラインから導入してもよい。複数のラインから供給する場合は、水の蒸発量に応じた対応をとりやすいことから、一方のラインから珪フッ化水素酸水溶液を補充し、他方のラインから水分のみを補充するのが好ましく、一方のラインから40重量%の珪フッ化水素酸水溶液として珪フッ化水素酸を補給し、他方のラインから水のみを補充するのが更に好ましい。なお、エッチング液中の水分の蒸発量は、エッチング槽の液面から知ることができる。また、循環タンク中のエッチング液を基板に噴霧することによりエッチングする場合は、この循環タンクの液面から知ることができる。
【0049】
エッチング速度の振れ幅は、補充する珪フッ化水素酸水溶液の濃度と量及び補充頻度により調整できる。そこで、エッチング対象物の組成及び所望のエッチング速度等に応じて適宜決めればよい。具体的には、例えば、エッチング速度の振れ幅は、5%以下であるのが好ましく、3%以下であるのが更に好ましく、1%以下であるのが特に好ましい。なお、エッチング速度の振れ幅の下限は、通常、0.1%である。
【0050】
多量のエッチング対象物をエッチングする場合、通常、エッチング液組成を分析して、一定以上の組成変化が生じたところで液を交換(バッチ運転)又は液を補充(連続運転)する。本発明の方法では、エッチングにより消費された成分を同量(消費量分)補充して初期組成に戻すのではないため、エッチング量の増大に伴いエッチング液組成は変化(珪フッ化水素酸濃度が増加)してしまう。しかしながら、本発明の方法では、エッチング速度の計測により、エッチング速度を制御することが可能である。エッチング速度は、例えば、光を用いて計測することができる。具体的には、例えば、チタン層及びアルミニウム層がガラス基板等の透明な基板上に成膜されている場合、エッチングによりチタン層及びアルミニウム層が除去された部分は透明になる。この変化を利用して、ガラス基板の片面から光を照射し、その反対面側の透過光をセンサーで検知すれば、その経時変化からエッチング速度が計算できる。そして、このエッチング速度の変化をエッチング液供給系にフィードバックすることにより、エッチング速度を一定に保つことが可能となる。
【0051】
本発明のエッチング方法は、半導体デバイス用基板の製造に際して行われる、チタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層を同時にエッチングする工程に適している。即ち、本発明のエッチング方法によれば、チタン層とアルミニウム層とを含んでなる積層体中のチタン層及びアルミニウム層の両層を均一に、エッチング残り等無く、一定の速度で連続して安定的にエッチングすることが可能である。特に、本発明のエッチング方法は、半導体デバイスの製造等において、シリコンウェハやガラス等の含シリコン基板の上にゲート、ソース及びドレン配線を作製する際に、チタン層とアルミニウム層の両層をエッチングするのに好適である。具体的には、含シリコン基板上にチタン層(基板と配線との密着性を向上させるための下地層)、アルミニウム層(配線)、チタン層(酸化防止層)をこの順に成膜した後、その表面の一部にレジスト層を形成して「レジスト層/チタン層/アルミニウム層/チタン層/基板」なる積層体とした後に(図2参照)、レジストで覆われていない部分の「チタン層/アルミニウム層/チタン層」を除去するのに本発明のエッチング方法を用いると、エッチング後の断面に庇状のエッチング残りなどが生じることなく、また、基板を腐食することなく、チタン層及びアルミニウム層のみを高速で安定的にエッチングすることが可能である(図1参照)。
【実施例】
【0052】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例1〜6及比較例1〜10は、以下のサンプル及び測定条件で実験を行った。
<エッチング用積層体の作製>
ガラス基板(コーニングジャパン株式会社製「#1737(50mm×50mm×0.7mm)」の表面をフルウチ化学株式会社製「セミコクリーン56」により洗浄した。
このガラス基板(図2の1)上に、真空スパッタ装置(株式会社アルバック製高周波スパッタリング装置「SH−350」)を用いて、スパッタ出力400Wで10分間チタン30nmをスパッタ成膜し(図2の2)、その上に続けて、スパッタ出力400Wで40分間アルミニウム216nmをスパッタ成膜し(図2の3)、その上に続けてスパッタ出力400Wで40分間チタン116nmをスパッタ成膜(図2の4)した。この上にレジスト(東京応化工業株式会社製フォトレジスト「OFPR800−20CP」)を1μm塗布した後、プロキシミティベーク方式で90℃で30分間プリベークを行った。この上に、キヤノン株式会社製プロキシミティマスクアライナー装置「PLA−501F」を用いて5秒間露光を行い、コンタクトベーク方式で140℃で5分間ポストベークを行った後、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(東京応化工業株式会社製「PMER P−7G」)により1分間現像を行い、ラインアンドスペース(10μmライン幅/10μmスペース形状)のレジストパターンを形成した(図2の5)。これを4分割して「エッチング用積層体」(50mm×12.5mm×0.7mm)とした。エッチング用積層体の層構成は、「(部分)レジスト層/チタン層(膜厚116nm)/アルミニウム層(膜厚216nm)/チタン層(膜厚30nm)」/基板」(図2)である。ここで、レジスト側のチタン層は、表面が部分酸化されている。
【0053】
<エッチング速度の測定>
「チタン層(膜厚116nm)/アルミニウム層(膜厚216nm)/チタン層(膜厚30nm)」(3層の合計膜厚362nm)のエッチング速度は、以下の実施例又は比較例に示す35℃の液を入れたビーカー内に評価用サンプルを入れ、その端を保持して遥動させ、目視にて、「チタン層/アルミニウム層/チタン層」がエッチング除去され、試料の積層体のレジストが無い部分の色が、金属光沢の銀色から下地ガラス基板の透明に変わった時点をエッチングの終点(ジャストエッチング)として、エッチング時間と「チタン層/アルミニウム層/チタン層」の膜厚から計算した。
【0054】
<エッチング液Aの調製及びそのエッチング速度の測定>
4.8重量%(0.0666モル)の珪フッ化水素酸及び8.9重量%(0.0999モル)のヘキサフルオロ珪酸アンモニウムを含む水溶液を調製した(「エッチング液A」)。
エッチング液A200g入った300cmガラスビーカーを恒温水槽に入れて、35℃に保持した。これに、上記の「エッチング用積層体」を入れ、手で振って遥動させながらエッチングを行った。「チタン層/アルミニウム層/チタン層」のジャストエッチング時間は80秒であり、エッチング速度は、271nm/分であった。
【0055】
(比較例1)
「エッチング液A」200gが入った300cmガラスビーカーに、チタン粉末(株式会社高純度化学研究所製。純度99.9重量%以上)0.2412g(0.00504モル)を添加し、マグネチックスターラーを用いて攪拌したところ、気体が発生した。気体の発生が無くなり、溶液が透明になったところで撹拌を止め、チタン粉末が溶解したと判断した。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した。ここに、「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色は、透明にはならなかった。
【0056】
この「エッチング用積層体」を浸漬させていた溶液に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液3.70g(珪フッ化水素酸0.01027モル)を添加した。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色は、透明にはならなかった。
【0057】
(比較例2)
比較例1でエッチングを行った溶液に、更に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液を1.85g添加した(珪フッ化水素酸の添加量は合計0.01541モル)。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色は、透明にはならなかった。
【0058】
(実施例1)
比較例2でエッチングを行った溶液に、更に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液を1.85g添加した(珪フッ化水素酸の添加量は合計0.02054モル)。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら浸漬させたところ、80秒間後に「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色が透明になった。
【0059】
(比較例3)
実施例1でエッチングを行った溶液に、更に、チタン粉末(株式会社高純度化学研究所製.純度99.9重量%以上)を、0.2759g(0.00576モル)を添加し、気体の発生が無くなり、溶液が透明になるまでマグネチックスターラーを用いて攪拌し、溶解させた。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した。ここに、「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色は、透明にはならなかった。
【0060】
この「エッチング用積層体」を浸漬させていた溶液に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液4.20g(珪フッ化水素酸0.01166モル)添加した。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色は、透明にはならなかった。
【0061】
(比較例4)
比較例3でエッチングを行った後の溶液に、更に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液を2.10g添加した(比較例3以降の珪フッ化水素酸の添加量は合計0.01749モル)。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色は、透明にはならなかった。
【0062】
(実施例2)
比較例4でエッチングを行った後の溶液に、更に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液を2.10g添加した(比較例3以降の珪フッ化水素酸の添加量は合計0.02332モル)。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら浸漬させたところ、実施例1と同様に、80秒間後に「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色が透明になった。
【0063】
(比較例5)
「エッチング液A」200gが入った300cmガラスビーカーに、アルミニウム粉末(株式会社高純度化学研究所製。純度99.9重量%以上)0.2430g(0.00901モル)を添加し、マグネチックスターラーを用いて攪拌したところ、気体が発生した。気体の発生が無くなり、溶液が透明になったところで撹拌を止め、アルミニウム粉末が溶解したと判断した。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した。ここに、「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色は、透明にはならなかった。
【0064】
この「エッチング用積層体」を浸漬させていた溶液に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液4.90g(珪フッ化水素酸0.01360モル)添加した。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色は、透明にはならなかった。
【0065】
(比較例6)
比較例5でエッチングを行った後の溶液に、更に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液を4.90g添加した(珪フッ化水素酸の添加量は合計0.02720モル)。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色は、透明にはならなかった。
【0066】
(比較例7)
比較例6でエッチングを行った後の溶液に、更に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液を3.27g添加した(珪フッ化水素酸の添加量は合計0.03628モル)。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色は、透明にはならなかった。
【0067】
(実施例3)
比較例7でエッチングを行った溶液に、更に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液を6.53g添加した(珪フッ化水素酸の添加量は合計0.05441モル)。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら浸漬させたところ、実施例1及び2と同様に、80秒間後に「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色が透明になった。
【0068】
(比較例8)
実施例3でエッチングを行った溶液に、更に、アルミニウム粉末(株式会社高純度化学研究所製。純度99.9重量%以上)を、0.2760g(0.0102モル)を添加し、気体の発生が無くなり、溶液が透明になるまでマグネチックスターラーを用いて攪拌し、溶解させた。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した。ここに、「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色は、透明にはならなかった。
【0069】
この「エッチング用積層体」を浸漬させていた溶液に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液5.60g(珪フッ化水素酸0.01555モル)添加した。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色は、透明にはならなかった。
【0070】
(比較例9)
比較例8でエッチングを行った後の溶液に、更に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液を5.60g添加した(比較例8以降の珪フッ化水素酸の添加量は合計0.0306モル)。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」は、透明にはならなかった。
【0071】
(比較例10)
比較例9でエッチングを行った後の溶液に、更に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液を3.73g添加した(比較例8以降の珪フッ化水素酸の添加量は合計0.04145モル)。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら80秒間浸漬させたが、「エッチング用積層体」は、透明にはならなかった。
【0072】
(実施例4)
比較例10でエッチングを行った後の溶液に、更に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液を7.47g添加した(比較例8以降の珪フッ化水素酸の添加量は合計0.06218モル)。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら浸漬させたところ、実施例1〜3と同様に、80秒間後に「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色が透明になった。
【0073】
(実施例5)
「エッチング液A」200gが入った300cmガラスビーカーに、チタン粉末(株式会社高純度化学研究所製。純度99.9重量%以上)0.0198g(0.000414モル)及びアルミニウム粉末(株式会社高純度化学研究所製。純度99.9重量%以上)0.0175g(0.000649モル)を添加し、マグネチックスターラーを用いて攪拌したところ、気体が発生した。気体の発生が無くなり、溶液が透明になったところで撹拌を止め、チタン粉末及びアルミニウム粉末が溶解したと判断した。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持しつつ、これに、「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら浸漬させたところ、「チタン層/アルミニウム層/チタン層」のジャストエッチング時間は85秒であり、エッチング速度は、256nm/分であった。
【0074】
この「エッチング用積層体」を浸漬させていた溶液に、更にチタン粉末(株式会社高純度化学研究所製。純度99.9重量%以上)0.0197g(0.000412モル)及びアルミニウム粉末(株式会社高純度化学研究所製。純度99.9重量%以上)0.0174g(0.000645モル)を添加し、マグネチックスターラーを用いて攪拌したところ、気体が発生した。気体の発生が無くなり、溶液が透明になったところで撹拌を止め、チタン粉末及びアルミニウム粉末が溶解したと判断した。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持しつつ、これに、「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら浸漬させたところ、「チタン層/アルミニウム層/チタン層」のジャストエッチング時間は90秒であり、エッチング速度は、241nm/分であった。
【0075】
この「エッチング用積層体」を浸漬させていた溶液に、更にチタン粉末(株式会社高純度化学研究所製.純度99.9重量%以上)0.1971g(0.00412モル)及びアルミニウム粉末(株式会社高純度化学研究所製。純度99.9重量%以上)0.1734g(0.00643モル)を添加し、マグネチックスターラーを用いて攪拌したところ、気体が発生した。気体の発生が無くなり、溶液が透明になったところで撹拌を止め、チタン粉末及びアルミニウム粉末が溶解したと判断した。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持しつつ、これに、「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら浸漬させたところ、「チタン層/アルミニウム層/チタン層」のジャストエッチング時間は150秒であり、エッチング速度は、145nm/分であった。
【0076】
この「エッチング用積層体」を浸漬させていた溶液に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液を23.8g添加した(珪フッ化水素酸の添加量は合計0.06607モル)。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら浸漬させたところ、実施例1〜4と同様に、80秒間後に「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色が透明になった。
【0077】
(実施例6)
実施例5でエッチングを行った後の溶液に、更に、チタン粉末株式会社高純度化学研究所製。純度99.9重量%以上)0.2697g(0.00563モル)及びアルミニウム粉末(株式会社高純度化学研究所製。純度99.9重量%以上)0.2373g(0.00879モル)を添加し、マグネチックスターラーを用いて攪拌したところ、気体が発生した。気体の発生が無くなり、溶液が透明になったところで撹拌を止め、チタン粉末及びアルミニウム粉末が溶解したと判断した。このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持しつつ、これに、「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら浸漬させたところ、「チタン層/アルミニウム層/チタン層」のジャストエッチング時間は145秒であり、エッチング速度は、150nm/分であった。
【0078】
この「エッチング用積層体」を浸漬させていた溶液に、40重量%の珪フッ化水素酸水溶液を27.1g添加した(珪フッ化水素酸の添加量は0.07523モル。珪フッ化水素酸の液中濃度は9.5重量%。)このガラスビーカーを恒温水槽に入れ、35℃に保持した状態で、ここに「エッチング用積層体」を入れ、手で振って揺動させながら浸漬させたところ、実施例1〜5と同様に、80秒間後に「エッチング用積層体」のレジストが無い部分の色が透明になった。
【0079】
以上の結果を表1に纏める。実施例1及び2より、エッチング液中に1モルのチタンが溶解している場合、珪フッ化水素酸4モルを補充すると、エッチング速度がチタン溶解前の状態に回復することが判明した。また、実施例3及び4より、エッチング液中に1モルのアルミニウムが溶解している場合、珪フッ化水素酸6モルを補充すると、エッチング速度がチタン溶解前の状態に回復することが判明した。そして、実施例5及び6より、エッチング液中にチタン及びアルミニウムが溶解している場合、珪フッ化水素酸を「チタン1モル当たり4モル」+「アルミニウム1モル当たり6モル」補充することにより、エッチング速度がチタン及びアルミニウムが溶解する前の状態に回復することが確認された。
【0080】
なお、珪フッ化水素酸濃度が4.8重量%の「エッチング液A」及び同9.5重量%の実施例6のエッチング液で、濃度が大きく異なっているにも係わらず、どちらも「エッチング用積層体」のレジストが無い部分が80秒で透明になり、チタン及びアルミニウムのエッチング速度が同等であることから、本発明の方法によりチタン及びアルミニウムを同時エッチングする場合のエッチング速度を制御できることが裏付けられている。
【0081】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図2の層構成の積層体中のレジスト層が無い部分の「チタン層/アルミニウム層/チタン層」をエッチングした後の鳥瞰図である。
【図2】「(部分的に)レジスト層/チタン層/アルミニウム層/チタン層/基板」の層構成を有する積層体の鳥瞰図である。
【図3】テーパ角の測定方法を説明するエッチング断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 基板
2 下側チタン層
3 アルミニウム層
4 上側チタン層
5 レジスト層
A 上側チタン層、アルミニウム層及び下側チタン層の合計膜厚
B レジスト膜の下側チタン層の下部に対するはみ出し長さ
C レジスト膜の上側チタン層の上部に対するはみ出し長さ
D テーパ角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪フッ化水素酸、珪フッ化水素酸塩及び水を含有するエッチング液によりチタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層を同時にエッチングする方法であって、エッチングの進行に伴い、エッチングされたチタン及びアルミニウムの量に対して当量以上の珪フッ化水素酸を補充することを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
前記珪フッ化水素酸塩がヘキサフルオロ珪酸アンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
エッチングされたチタン及びアルミニウムの合計量1モル当たり、珪フッ化水素酸を3モル以上補充することを特徴とする請求項1又は2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
補充する珪フッ化水素酸は45重量%以下の珪フッ化水素酸水溶液として補充することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のエッチング方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の方法において、チタンを主成分とする層及び/又はアルミニウムを主成分とする層のエッチング速度をモニターすることを特徴とするエッチング方法。
【請求項6】
エッチング速度のモニターを光を用いて行うことを特徴とする請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
珪フッ化水素酸、珪フッ化水素酸塩及び水を含有するエッチング液によりチタンを主成分とする層とアルミニウムを主成分とする層とを含んでなる積層体中のチタンを主成分とする層及びアルミニウムを主成分とする層を同時にエッチングする工程を含む半導体デバイス用基板の製造方法であって、該エッチング工程では、エッチングの進行に伴い、エッチングされたチタン及びアルミニウムの量に対して当量以上の珪フッ化水素酸を補充しながらエッチングすることを特徴とする半導体デバイス用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−267115(P2009−267115A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115553(P2008−115553)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】