説明

エッチング液の管理方法、及びガラス基板再生装置

【課題】カラーフィルタ又はダミー基板の再生にて、ダミー基板を酸処理に投入した場合、エッチング液の補充或いは更新の適切な時点を見過ごし、透明導電膜の除去不良を発生させないエッチング液の管理方法、ガラス基板再生装置。
【解決手段】カラーフィルタ又はダミー基板の透明導電膜3の膜厚を連続測定して累計膜厚を算出し、累計膜厚が、予め設定された累計膜厚(1)に達した時点で、エッチング液を補充、或いは更新するエッチング液の管理方法。上記管理方法に基づいたエッチング液の管理機構10を具備するガラス基板再生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタをガラス基板として再生する際のエッチング液の管理方法に関するものであり、特に、その透明導電膜の膜厚が通常の数倍〜数十倍のダミー基板を投入しても、透明導電膜の除去不良を発生させないエッチング液の管理方法、及びガラス基板再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置において、カラー表示、反射率の低減、コントラストの調整、分光特性制御などの目的にカラーフィルタを用いることは有用な手段となっている。この表示装置に用いられるカラーフィルタは、多くの場合、画素として形成され用いられる。表示装置に用いられるカラーフィルタの画素を形成する方法として、これまで実用されてきた方法には、印刷法、フォトリソグラフィ法などが挙げられる。
【0003】
図1は、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの画素の一例を拡大して示す平面図である。また、図2は、図1に示すカラーフィルタの画素のX−X線における断面図である。図1、及び図2に示すように、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、ガラス基板(4)上にブラックマトリックス(1)、着色画素(2)、及び透明導電膜(3)が順次に形成されたものである。
【0004】
液晶表示装置に用いられる上記カラーフィルタの製造方法としては、先ず、ガラス基板(4)上にブラックマトリックス(1)を形成し、次に、ブラックマトリックス(1)が形成されたガラス基板上のブラックマトリックスのパターン(開口部)に位置合わせして着色画素(2)を形成し、更に透明導電膜(3)を形成するといった方法が広く用いられている。
【0005】
ブラックマトリックス(1)は遮光性を有し、その開口部にてガラス基板上での着色画素の位置を定め、着色画素の大きさを均一なものとしている。また、表示装置に用いられた際に、好ましくない光を遮蔽し、表示装置の画像をムラのない均一な、且つコントラストを向上させた画像にする機能を有している。このブラックマトリックス(1)の形成は、例えば、ガラス基板(4)上に、黒色フォトレジストの塗布膜を設け、この塗布膜へのフォトマスクを介したパターン露光、現像によって不要な部分のレジストを除去し、残存したレジストにてブラックマトリックスを形成するといったフォトリソグラフィ法がとられている。
【0006】
また、着色画素(2)は、例えば、赤色、緑色、青色の色再現フィルタの機能を有するものであり、ブラックマトリックスが形成されたガラス基板(4)上に、顔料などの色素を分散させたネガ型の着色フォトレジストの塗布膜を設け、この塗布膜へのフォトマスクを介した露光、現像によって着色画素を形成するといったフォトリソグラフィ法がとられている。
また、透明導電膜(3)の形成は、着色画素が形成されたガラス基板上に、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)を用いスパッタ法によって透明導電膜を形成するといった方法がとられている。
【0007】
実際の製造においては、ガラス基板(4)上にブラックマトリックス(1)、着色画素(2)、透明導電膜(3)を形成する各工程では、樹脂の残渣、パーティクルなどの異物(異物付着)や、ピンホール、パターン欠けなどの欠陥が発生することがある。
この欠陥が、品質基準に達しないカラーフィルタは不良品扱いとなるが、ガラス基板自体
に傷などの不良がないものは、このカラーフィルタをガラス基板として再生し、再利用されてきた。
【0008】
透明導電膜(3)の材料としては、ITOが広く用いられている。ITO膜を溶解除去し、カラーフィルタをガラス基板として再生する際の処理液としては、例えば、塩酸と硝酸の混合液、塩化第二鉄と塩酸の混合液、希塩酸などの酸液(以降、エッチング液と称す)が挙げられる。このエッチング液を使用した酸処理、すなわち、酸化還元反応によってITO膜を除去している。
【0009】
一般に、エッチング液は酸処理により次第に疲労するので、適切な時点でエッチング液の補充、或いはエッチング液の更新を行うことにしている。上記不良品扱いとなったカラーフィルタのITO膜の膜厚は、通常は140nm程度のものであるので、例えば、酸処理に投入した不良品扱いのカラーフィルタの数量を算出しておくことによって、略適切な時点でのエッチング液の補充、或いはエッチング液の更新が行われている。
【0010】
一方、ITO膜を成膜するスパッタ装置は、例えば、メンテナンスなどのために一時製造を停止した後、連続的な製造を再開する前には条件設定用のガラス基板を用い、成膜条件を確認する。
この条件設定用のガラス基板はダミー基板と称されている。このダミー基板は製品(良品)扱いにはされず、同じ目的で複数回用いられた後に不良品扱いとなる。この不良品扱いとなったダミー基板は、、ガラス基板自体に傷などの不良がないものは、このダミー基板をガラス基板として再生し、再利用されてきた。
【0011】
さて、上記不良品扱いとなったカラーフィルタに酸処理を施す酸処理装置に、この不良品扱いとなったダミー基板を投入して酸処理を施すと、ダミー基板のITO膜の膜厚は、通常の膜厚の数倍〜数十倍の膜厚となっているので、エッチング液へのITOの溶解量はカラーフィルタ上のITO膜の際の溶解量よりも多いものとなる。
従って、ダミー基板への酸処理を行うことにより、例えば、酸処理へ投入した枚数は少ないにもかかわらず、エッチング液の疲労が早く進行した状態になる。
【0012】
このため、エッチング液の酸処理能力は不足気味となり、ITO残り、白濁などの品質不良(ITO膜の除去不良)を発生させる可能性がある。
なお、ダミー基板のITO膜の膜厚は、カラーフィルタにおける通常の膜厚(140nm程度)の整数倍といった、一律の膜厚ではなく、数倍〜数十倍といった幅のある範囲の膜厚となっているため、酸処理により次第に疲労するエッチング液に、適切な時点でエッチング液の補充、或いはエッチング液の更新を行うことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−279915号公報
【特許文献2】特開2005−189679号公報
【特許文献3】特開2002−179438号公報
【特許文献4】特願2008−176654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、不良品扱いとなったカラーフィルタ又はダミー基板に、エッチング液による酸処理を施し、ガラス基板として再生する際に、その透明導電膜の膜厚が通常の数倍〜数十倍の範囲であるダミー基板を酸処理に投入した場合、エッチング液の疲労が早く進行してエッチング液の補充或いは更新の適切な時点を見過ごし、その結果、酸処理能力が不足気味となり、透明導電膜残り、白濁などの品質不良(透明導電膜の除去不良)を発生させることのないエッチング液の管理方法を提供することを課題とするものである。
また、上記エッチング液の管理方法に基づいた管理機構を設けたガラス基板再生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、カラーフィルタ上又はダミー基板上の透明導電膜を酸処理により除去してガラス基板を再生するエッチング液の管理方法において、前記カラーフィルタ又はダミー基板を酸処理へ連続投入する際に、カラーフィルタ上又はダミー基板上の透明導電膜の膜厚を連続測定して累計膜厚を算出し、該算出した累計膜厚が、予め設定された累計膜厚(1)に達した時点で、エッチング液を補充することを特徴とするエッチング液の管理方法である。
【0016】
また、本発明は、上記発明によるエッチング液の管理方法において、前記膜厚を連続測定する際に、カラーフィルタ又はダミー基板の面積を連続測定し、各膜厚と各面積の積の累計膜厚・面積を算出し、該算出した累計膜厚・面積が、予め設定された累計膜厚・面積(1)に達した時点で、エッチング液を補充することを特徴とするエッチング液の管理方法である。
【0017】
また、本発明は、カラーフィルタ上又はダミー基板上の透明導電膜を酸処理により除去してガラス基板を再生するエッチング液の管理方法において、前記カラーフィルタ又はダミー基板を酸処理へ連続投入する際に、カラーフィルタ上又はダミー基板上の透明導電膜の膜厚を連続測定して累計膜厚を算出し、該算出した累計膜厚が、予め設定された累計膜厚(2)に達した時点で、エッチング液を更新することを特徴とするエッチング液の管理方法である。
【0018】
また、本発明は、上記発明によるエッチング液の管理方法において、前記膜厚を連続測定する際に、カラーフィルタ又はダミー基板の面積を連続測定し、各膜厚と各面積の積の累計膜厚・面積を算出し、該算出した累計膜厚・面積が、予め設定された累計膜厚・面積(2)に達した時点で、エッチング液を更新することを特徴とするエッチング液の管理方法である。
【0019】
また、本発明は、上記発明によるエッチング液の管理方法において、前記エッチング液を補充、又はエッチング液を更新する際に、酸処理の前処理装置及び後処理装置を停止させることを特徴とするエッチング液の管理方法である。
【0020】
また、本発明は、カラーフィルタ又はダミー基板のガラス基板再生装置において、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載するエッチング液の管理方法に基づいたエッチング液の管理機構を具備することを特徴とするガラス基板再生装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、カラーフィルタ又はダミー基板を酸処理へ連続投入する際に、カラーフィルタ上又はダミー基板上の透明導電膜の膜厚を連続測定して累計膜厚を算出し、該算出した累計膜厚が、予め設定された累計膜厚(1)に達した時点で、エッチング液を補充、或いは、該算出した累計膜厚が、予め設定された累計膜厚(2)に達した時点で、エッチング
液を更新するので、その透明導電膜の膜厚が通常の数倍〜数十倍の範囲であるダミー基板を酸処理に投入した場合、エッチング液の疲労が早く進行してエッチング液の補充、或いは更新の適切な時点を見過ごし、その結果、酸処理能力が不足気味となり、透明導電膜残り、白濁などの品質不良(透明導電膜の除去不良)を発生させることのないエッチング液の管理方法となる。
【0022】
また、本発明は、カラーフィルタ又はダミー基板の面積を連続測定し、各膜厚と各面積の積の累計膜厚・面積を算出し、該算出した累計膜厚・面積が、予め設定された累計膜厚・面積(1)に達した時点で、エッチング液を補充、或いは、該算出した累計膜厚・面積が、予め設定された累計膜厚・面積(2)に達した時点で、エッチング液を更新するので、その透明導電膜の膜厚が通常の数倍〜数十倍の範囲であるダミー基板を酸処理に投入した場合、エッチング液の疲労が早く進行してエッチング液の補充、或いは更新の適切な時点を見過ごし、その結果、酸処理能力が不足気味となり、透明導電膜残り、白濁などの品質不良(透明導電膜の除去不良)はより的確に発生させないエッチング液の管理方法となる。
【0023】
また、本発明は、カラーフィルタ又はダミー基板のガラス基板再生装置において、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載するエッチング液の管理方法に基づいたエッチング液の管理機構を具備するガラス基板再生装置であるので、その透明導電膜の膜厚が通常の数倍〜数十倍の範囲であるダミー基板を酸処理に投入した場合、エッチング液の疲労が早く進行してエッチング液の補充、或いは更新の適切な時点を見過ごし、その結果、酸処理能力が不足気味となり、透明導電膜残り、白濁などの品質不良(透明導電膜の除去不良)を発生させることのないガラス基板再生装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】液晶表示装置用カラーフィルタの画素の一例を拡大して示す平面図である。
【図2】図1に示すカラーフィルタの画素のX−X線における断面図である。
【図3】本発明によるガラス基板再生装置の一例における構成の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図3は、本発明によるガラス基板再生装置の一例における構成の概略を示す説明図である。図3に示すように、ガラス基板再生装置は、酸処理装置(50)、酸処理の前処理装置(100)、後処理装置(200)、エッチング液の給排系(70)、エッチング液の管理機構(10)で構成されている。
【0026】
前処理装置(100)は、酸処理の前処理である水洗処理1、アルカリ処理1、水洗処理2を各々行う、水洗処理装置1(30−1)、アルカリ処理装置1(40−1)、水洗処理装置2(30−2)、及び基板受入れ装置(20)で構成されている。
また、酸処理装置(50)は、カラーフィルタ上又はダミー基板上の、ITO膜などの透明導電膜を酸処理により除去する酸処理装置であり、エッチング液としては、例えば、表1に示す組成のエッチング液が用いられる。
【表1】

【0027】
後処理装置(200)は、酸処理の後処理である水洗処理3、水洗処理4、アルカリ処理2、水洗処理5、乾燥処理を各々行う、水洗処理装置3(30−3)、水洗処理装置4(30−4)、アルカリ処理装置2(40−2)、水洗処理装置5(30−5)、及び乾
燥処理装置(60)で構成されている。
エッチング液の管理機構(10)は、透明導電膜であるITO膜の膜厚を測定するための接触式表面形状測定装置(図示せず)、測定した各膜厚の累計膜厚を算出し、予め設定された累計膜厚(1)などと対比した判定をするための累計算出/判定計(図示せず)などで構成されている。
【0028】
接触式表面形状測定装置は、カラーフィルタ上のITO膜、又はダミー基板上のITO膜面を接触式の針にて走査し、ガラス基板とITO膜面との段差によりITO膜の膜厚を測定する。この際の針圧は3mg程度、走査速度は50μm/sec程度のものである。
【0029】
累計算出/判定計は、接触式表面形状測定装置により連続して測定した各膜厚、すなわち、酸処理に連続して投入されるカラーフィルタ上又はダミー基板上のITO膜の膜厚を積算して累計膜厚を算出する。また、この算出した累計膜厚を、エッチング液の補充などの基準となる予め設定された累計膜厚(1)などと対比し、算出した累計膜厚が累計膜厚(1)などに達した時点を判定し、伝達路(80)を経て酸処理装置(50)及び給排系(70)へのエッチング液の補充などを指示する。
【0030】
エッチング液の給排系(70)は、フィルタ(71)、ポンプ(72)、中継タンク(73)、電磁弁(74)、流量計(75)、一次側供給路(76)、廃液/廃水路(78)で構成されている。
エッチング液の給排系(70)は、エッチング液の補充、或いは更新を行う際には、エッチング液の貯蔵槽(77)から供給されるエッチング液を一次側供給路(76)を経て中継タンク(73)に一時貯留し、ポンプ(72)にてフィルタ(71)を介して酸処理装置(50)の槽へ送液する。
【0031】
また、疲労したエッチング液を酸処理装置(50)の槽から排出する際は、中継タンクに備えたバルブを作動させて中継タンク(73)、廃液/廃水路(78)を経て廃液処理装置(79)へと送液する。
【0032】
カラーフィルタ又はダミー基板に形成された透明導電膜(ITO膜)を酸処理により除去してガラス基板を再生する際には、枚葉のカラーフィルタ又はダミー基板を、図3に示す前処理装置(100)に連続して投入し、前処理装置(100)における前処理を施した後に、酸処理装置(50)にて酸処理を施して透明導電膜(ITO膜)を溶解除去し、次に、後処理装置(200)にて後処理施し、再生されたガラス基板を連続して得る。
【0033】
本発明においては、前処理装置(100)への投入に先立ち、連続して投入するカラーフィルタ上又はダミー基板上の透明導電膜(ITO膜)の各膜厚を連続して測定する。 この連続して測定する各膜厚の累計膜厚を算出しておき、この算出している累計膜厚が、予め設定された累計膜厚(1)に達した時点で、エッチング液の給排系(70)の中継タンク(73)からエッチング液を酸処理装置(50)の槽へ送液して補充する。
【0034】
この累計膜厚(1)は、事前に、エッチング液の疲労と、酸処理を行った累計膜厚との関係を精査したデータを基に、エッチング液を補充するのに適切な時点と定めた累計膜厚である。
【0035】
また、本発明においては、上記連続して測定する各膜厚の累計膜厚を算出しておき、この算出している累計膜厚が、予め設定された累計膜厚(2)に達した時点で、エッチング液の更新を行う。エッチング液の更新は、先ず、酸処理装置(50)の槽中のエッチング液を給排系(70)の廃液/廃水路(78)を経て廃液処理装置(79)へと排出する。次に、給排系(70)の中継タンク(73)からエッチング液を酸処理装置(50)の槽
へ送液して更新する。
【0036】
この累計膜厚(2)は、事前に、エッチング液の疲労と、酸処理を行った累計膜厚との関係を精査したデータを基に、エッチング液を更新するのに適切な時点と定めた累計膜厚である。
【0037】
具体的には、同一サイズのガラス基板上に、透明導電膜としてのITO膜を通常の膜厚である140nm±15nm成膜したものを再生用ガラス基板として用い、また、酸処理に用いるエッチング液としては、前記表1に示す組成のものを用い、酸処理装置では、0.15MPaの吐出圧でエッチング液を噴射させて、エッチング液の疲労と、酸処理を行った累計膜厚との関係を精査したデータを得た。このデータを基にエッチング液を更新するのに好適な累計膜厚(累計膜厚(2))は、概ね、150×103 nmであることを、一例として見出している。
【0038】
また、同様に、エッチング液を補充するのに好適な累計膜厚(累計膜厚(1))は、概ね、どの程度であるか、具体的に見出すことによって対応することができる。
【0039】
従って、本発明によるエッチング液の管理方法によれば、透明導電膜(ITO膜)の膜厚が、通常の数倍〜数十倍の範囲であるダミー基板を酸処理に投入した場合でも、エッチング液の補充或いは更新の適切な時点を見過ごすことはなくなる。
これにより、カラーフィルタ又はダミー基板に、エッチング液による酸処理を施し、ガラス基板として再生する際に、透明導電膜残り、白濁などの品質不良(透明導電膜の除去不良)を発生させることは回避されるものとなる。
【0040】
また、一般に、例えば、前記塩酸と硝酸の混合液、塩化第二鉄と塩酸の混合液、希塩酸などの酸液を使用した酸処理では、エッチング液の疲労に伴いエッチングに要する所要時間は次第に長くなる。
酸処理において、時間当たりの処理能力(枚数)を低下させず、処理能力を維持した処理をするために、すなわち、疲労に伴い、設定された1枚当たりの所要時間(エッチング時間)を超過させずにエッチング処理を行うために、例えば、初期の建浴時から末期の更新時に至る間、エッチング液の液温を段階的に上昇させる手法を採用することがある。
【0041】
本発明においては、上記エッチング液の液温を段階的に上昇させる際に、ある疲労に対応した、膜厚の累計膜厚(累計膜厚(i))を、予め設定しておき、この累計膜厚(i)を用いて液温を段階的に上昇させる手法を採用することができる。
【0042】
具体的には、表2に例示するように、酸処理の初期は累計膜厚(i)が30×103 nm以下、中期は累計膜厚(i)が30×103 nm〜60×103 nm間、末期は累計膜厚(i)が60×103 nm以上とし、液温を段階的に上昇させる累計膜厚(i)を30×103 nmとする。
【表2】

【0043】
表2に示すように、酸処理の初期は液温55℃にて処理を施し、中期は液温60℃にて処理を施し、末期は液温65℃にて処理を施す。この間、いずれの処理にても処理時間は180secである。
つまり、設定された1枚当たりの所要時間(初期のエッチング時間)である180secを超過させずに、疲労しつつあるエッチング液をより的確に使い切ることが可能となる。
【0044】
すなわち、本発明においては、エッチング液の疲労と、酸処理を行った累計膜厚との関係を精査したデータを基に、エッチング液を更新するのに適切な時点となる前記累計膜厚
(2)を、事前に設定する際に、上記液温を段階的に上昇させる累計膜厚(i)の手法を用いた際の、エッチング液の疲労と、酸処理を行った累計膜厚との関係を基にして、更新の適切な時点となる累計膜厚(2’)を設定してもよい。
【0045】
また、本発明によるガラス基板再生装置は、エッチング液を補充、又はエッチング液を更新する際には、前処理装置(100)、及び後処理装置(200)を自動で停止させる機構を備えていることが好ましい。
【0046】
また、請求項2に係わるエッチング液の管理方法は、膜厚を連続測定する際に、カラーフィルタ又はダミー基板の面積を連続測定し、各膜厚と各面積の積の膜厚・面積を算出し、該算出した膜厚・面積を積算した累計膜厚・面積が、予め設定された累計膜厚・面積(1)に達した時点で、エッチング液を補充することを特徴としている。
これにより、酸処理へ投入されるカラーフィルタ、又はダミー基板のサイズが複数種であっても、エッチング液を補充する適切な時点はより的確なものとなる。
【0047】
なお、この際には、ガラス基板再生装置のエッチング液の管理機構(10)には、接触式表面形状測定装置、累計算出/判定計に加え、カラーフィルタ又はダミー基板の面積を自動測定する面積計を備えることが必要になる。
【0048】
また、請求項4に係わるエッチング液の管理方法は、膜厚を連続測定する際に、カラーフィルタ又はダミー基板の面積を連続測定し、各膜厚と各面積の積の膜厚・面積を算出し、該算出した膜厚・面積を積算した累計膜厚・面積が、予め設定された累計膜厚・面積(2)に達した時点で、エッチング液を更新することを特徴としている。
これにより、酸処理へ投入されるカラーフィルタ、又はダミー基板のサイズが複数種であっても、エッチング液を更新する適切な時点はより的確なものとなる。
【0049】
なお、この際には、ガラス基板再生装置のエッチング液の管理機構(10)には、接触式表面形状測定装置、累計算出/判定計に加え、カラーフィルタ又はダミー基板の面積を自動測定する面積計を備えることが必要になる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・ブラックマトリックス
2・・・着色画素
3・・・透明導電膜
4・・・ガラス基板
10・・・エッチング液の管理機構
20・・・基板受入れ装置
30−1〜30−5・・・水洗処理装置1〜水洗処理装置5
40−1〜40−2・・・アルカリ処理装置1〜水洗処理装置2
50・・・酸処理装置
60・・・燥処理装置
70・・・エッチング液の給排系
71・・・フィルタ
72・・・ポンプ
73・・・中継タンク
74・・・電磁弁
75・・・流量計
76・・・一次側供給路
78・・・廃液/廃水路
80・・・伝達路
100・・・前処理装置
200・・・後処理装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルタ上又はダミー基板上の透明導電膜を酸処理により除去してガラス基板を再生するエッチング液の管理方法において、前記カラーフィルタ又はダミー基板を酸処理へ連続投入する際に、カラーフィルタ上又はダミー基板上の透明導電膜の膜厚を連続測定して累計膜厚を算出し、該算出した累計膜厚が、予め設定された累計膜厚(1)に達した時点で、エッチング液を補充することを特徴とするエッチング液の管理方法。
【請求項2】
前記膜厚を連続測定する際に、カラーフィルタ又はダミー基板の面積を連続測定し、各膜厚と各面積の積の累計膜厚・面積を算出し、該算出した累計膜厚・面積が、予め設定された累計膜厚・面積(1)に達した時点で、エッチング液を補充することを特徴とする請求項1記載のエッチング液の管理方法。
【請求項3】
カラーフィルタ上又はダミー基板上の透明導電膜を酸処理により除去してガラス基板を再生するエッチング液の管理方法において、前記カラーフィルタ又はダミー基板を酸処理へ連続投入する際に、カラーフィルタ上又はダミー基板上の透明導電膜の膜厚を連続測定して累計膜厚を算出し、該算出した累計膜厚が、予め設定された累計膜厚(2)に達した時点で、エッチング液を更新することを特徴とするエッチング液の管理方法。
【請求項4】
前記膜厚を連続測定する際に、カラーフィルタ又はダミー基板の面積を連続測定し、各膜厚と各面積の積の累計膜厚・面積を算出し、該算出した累計膜厚・面積が、予め設定された累計膜厚・面積(2)に達した時点で、エッチング液を更新することを特徴とする請求項3記載のエッチング液の管理方法。
【請求項5】
前記エッチング液を補充、又はエッチング液を更新する際に、酸処理の前処理装置及び後処理装置を停止させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載するエッチング液の管理方法。
【請求項6】
カラーフィルタ又はダミー基板のガラス基板再生装置において、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載するエッチング液の管理方法に基づいたエッチング液の管理機構を具備することを特徴とするガラス基板再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−13529(P2011−13529A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158572(P2009−158572)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】