説明

エネルギー変換装置

【課題】 内燃機関から排出される熱エネルギーを動力エネルギーに変換するエネルギー変換装置の比出力および理論効率の両立を図る。
【解決手段】 内燃機関11から排出される排ガスの熱エネルギーで加熱される熱源壁面24aに水供給装置31から水を供給して水蒸気に相転移させ、熱源壁面24aを膨張室24の一部として含む膨張機17により水蒸気の膨張圧力を動力エネルギーとして取り出す際に、膨張室24内に排ガスタービン19から空気を供給するとともに、膨張機17から出力される動力エネルギー、水供給装置31による水の供給量および水供給装置31による水の供給時期を制御手段により制御するので、内燃機関11の出力を損なうことなく、比較的に簡単な構造で広範囲の温度域の熱エネルギーを高い効率で動力エネルギーに変換し、比出力および理論効率の両立を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される熱エネルギーを動力エネルギーに変換するエネルギー変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクシャフトを共有するAシリンダおよびBシリンダを並置し、Aシリンダで空気を圧縮して発生する熱で受熱部を加熱し、この受熱部に水を噴射して発生した水蒸気をBシリンダに供給することでクランクシャフトを駆動するものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
またジェットエンジンの燃焼室に燃料としての水と圧縮空気とを供給し、燃焼室に設けた高周波加熱部で水を高周波加熱することで水蒸気爆発を起こさせ、発生した爆発エネルギーを推力として利用するものが、下記特許文献2により公知である。
【0004】
またシリンダおよびピストンにより区画された膨張室に局部加熱装置を配置し、局部加熱装置に噴射ノズルから水を噴射して発生させた水蒸気でピストンを駆動するものが、下記特許文献3により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−280601号公報
【特許文献2】特開平11−229965号公報
【特許文献3】特開2006−90143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上記特許文献1に記載された発明は、AシリンダおよびBシリンダがクランクシャフトを共有しているので、起動時等に受熱部の温度が低温であってBシリンダが駆動力を発生しないときに、AシリンダにとってBシリンダが抵抗となって受熱部の温度が上昇し難く、エネルギー損失が大きいという問題がある。しかもBシリンダに供給されるのは水蒸気のみであるため、水蒸気の温度が充分に高くない場合には、Bシリンダにおける膨張時に水蒸気が液化してしまう場合があり、充分なエネルギー効率が期待できないという問題がある。
【0007】
また上記特許文献2、3に記載された発明は、高周波加熱部あるいは局部加熱装置において電気→熱の変換によるエネルギーロスが発生するだけでなく、熱伝達の損失が発生する問題がある。
【0008】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、内燃機関から排出される熱エネルギーを動力エネルギーに変換するエネルギー変換装置の比出力および理論効率の両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、内燃機関から排出される熱エネルギーを動力エネルギーに変換するエネルギー変換装置において、前記内燃機関から排出される熱エネルギーで加熱される受熱部と、前記受熱部を膨張室の一部として含むとともに、前記受熱部で水を水蒸気に相転移させて生じる前記膨張室内の膨張圧力を動力エネルギーとして取り出す膨張機と、前記受熱部に水を供給する水供給装置と、前記膨張室内に空気を供給する空気供給装置と、前記膨張機から出力される動力エネルギー、前記水供給装置による水の供給量および前記水供給装置による水の供給時期を制御する制御手段とを備えることを特徴とするエネルギー変換装置が提案される。
【0010】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記制御手段は、前記受熱部の温度および前記内燃機関から排出される熱エネルギーに基づいて、前記膨張機から出力される動力エネルギー、前記水供給装置による水の供給量および前記水供給装置による水の供給時期を制御することを特徴とするエネルギー変換装置が提案される。
【0011】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記制御手段は、前記受熱部の温度が予め設定された設定温度以上である場合に、前記膨張機を作動させることを特徴とするエネルギー変換装置が提案される。
【0012】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記空気供給装置は、前記内燃機関の排ガスにより作動する排ガスタービンであることを特徴とするエネルギー変換装置が提案される。
【0013】
尚、実施の形態の排ガスタービン19は本発明の空気供給装置に対応し、実施の形態の熱源壁面24aは本発明の受熱部に対応し、実施の形態の電子制御ユニット39は本発明の制御手段に対応する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の構成によれば、内燃機関から排出される熱エネルギーで加熱される受熱部に水供給装置から水を供給して水蒸気に相転移させ、受熱部を膨張室の一部として含む膨張機により水蒸気の膨張圧力を動力エネルギーとして取り出す際に、膨張室内に空気供給装置から空気を供給するとともに、膨張機から出力される動力エネルギー、水供給装置による水の供給量および水供給装置による水の供給時期を制御手段により制御するので、内燃機関の出力を損なうことなく、比較的に簡単な構造で広範囲の温度域の熱エネルギーを高い効率で動力エネルギーに変換し、比出力および理論効率の両立を図ることができる。
【0015】
また請求項2の構成によれば、受熱部の温度および内燃機関から排出される熱エネルギーに基づいて、膨張機から出力される動力エネルギー、水供給装置による水の供給量および水供給装置による水の供給時期を制御するので、常に最大の効率で熱エネルギーを動力エネルギーとして回収することができる。
【0016】
また請求項3の構成によれば、受熱部の温度が予め設定された設定温度以上である場合に膨張機を作動させるので、内燃機関が起動直後であって受熱部の温度が低いときに、膨張機が低効率で作動して内燃機関の出力を無駄に消費するのを防止することができる。
【0017】
また請求項4の構成によれば、内燃機関の排ガスにより作動する排ガスタービンで膨張室に空気を供給するので、排ガスのエネルギーを利用して充分な量の空気を供給することが可能になって効率が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】内燃機関および膨張機よりなるエネルギー変換装置の全体構成を示す図。(第1の実施の形態)
【図2】エネルギー変換装置の制御系および作動媒体の流れを示す図。(第1の実施の形態)
【図3】膨張機の熱サイクルの各過程を示す図。(第1の実施の形態)
【図4】膨張機の熱サイクルの圧力線図。(第1の実施の形態)
【図5】膨張機の熱源壁面の温度を説明する図。(第1の実施の形態)
【図6】膨張機の運転制御のフローチャート。(第1の実施の形態)
【図7】膨張機の出力軸回転数、給水量および給水時期の指令値の求め方の説明図。(第1の実施の形態)
【図8】各理論サイクルの理論効率および比出力の分布を示す図。(第1の実施の形態)
【図9】膨張機の構造を示す図。(第2の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図8に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0020】
図1および図2に示すように、例えばガソリンエンジンのような内燃機関11は、シリンダ12と、シリンダ12に摺動自在に嵌合するピストン13と、シリンダ12およびピストン13間に区画される燃焼室14と、ピストン13にコネクティングロッド15を介して接続されたクランクシャフト16とを備える。
【0021】
内燃機関11から排出される熱エネルギーを動力エネルギーに変換する膨張機17は、内燃機関11の排気通路18に接続された空気供給装置としての排ガスタービン19と、シリンダ20と、シリンダ20に摺動自在に嵌合するピストン21と、ピストン21にコネクティングロッド22を介して接続されたクランクシャフト23と、シリンダ20およびピストン21間に区画された膨張室24と、膨張室24の壁面の一部を構成するとともに内燃機関11の排気通路18に臨んで排ガスにより加熱される熱源壁面24aと、膨張室24に連なる給気通路25と、膨張室24に連なる排気通路26と、電磁アクチュエータ27により駆動されて給気通路25を開閉する給気バルブ28と、電磁アクチュエータ29により駆動されて排気通路26を開閉する排気バルブ30と、膨張室24の内部に水を噴射する水供給装置31と備える。
【0022】
排ガスタービン19は、内燃機関11の排気通路18に臨むタービン32と、タービン32により駆動されて膨張機17の給気通路25に臨むコンプレッサ33とを備える。また水供給装置31は、水タンク34と、モータ35により駆動される水ポンプ36と、水ポンプ36に水供給通路37を介して接続されて膨張室24の内部の熱源壁面24aに水を噴射する水噴射ノズル38とを備える。
【0023】
太い実線で示すように、内燃機関11に給気として吸入された空気は燃焼室14で燃料を燃焼させて高温の排ガスとなり、排気通路18を流れる間に排ガスタービン19のタービン32を駆動し、更に膨張機17の熱源壁面24aとの間で熱交換を行った後に大気に排出される。太い破線で示すように、排ガスタービン19のコンプレッサ33で圧縮された空気は給気通路25を介して膨張機17の膨張室24に供給される。また太い点線で示すように、水タンク34から水ポンプ36で汲み上げられた水は、水供給通路37を介して膨張機17の水噴射ノズル38に供給される。そして膨張機17の膨張室24において空気および水は熱源壁面24aの熱で加熱され、水が蒸発した水蒸気および膨張した空気はピストン21を駆動した後に、太い一点鎖線で示すように大気に排出される。
【0024】
膨張機17の作動を制御する電子制御ユニット39は、内燃機関11の排ガスエネルギーと、膨張機17の熱源壁面24aの温度である熱源温度と、膨張機17の出力軸回転数とに基づいて、水ポンプ36による水噴射量と、水ポンプ36による水噴射時期と、膨張機17の出力軸回転数とを制御する。
【0025】
次に、図3および表1に基づいて膨張機17の熱サイクルの各過程を説明する。
【0026】
【表1】

【0027】
過程1で排気バルブ30を閉じると同時に前過程で閉じていた給気バルブ28を開き、排ガスタービン19から膨張室24への空気の供給を開始し、空気の供給は過程2までに終了する。
【0028】
過程2で給気バルブ28を閉じてから過程3(上死点)までの間、膨張室24の空気を断熱圧縮する。この過程3は本来必要はないが、加熱された水が給気バルブ28から漏洩しないように、水供給装置31の作動タイミングを調整することで必ず発生する。過程2から過程3までの間、膨張室24の空気が断熱圧縮されて昇温することで熱源壁面24aとの温度差が小さくなり、熱源壁面24aから空気に伝達される熱量が減少してしまうが、一方で空気の温度が上昇して給気圧力が増加したのと同じ効果が得られるため、理論熱効率は上昇する。
【0029】
過程3から過程4までの間、水供給装置31により膨張室24の熱源壁面24aに水を噴射する。その結果、過程4から過程5までの間、熱源壁面24aからの熱で水が蒸発して水蒸気になり、膨張室24内の水蒸気および空気は等容積加熱される。過程5から過程6までの間、水蒸気および空気は断熱膨張してピストン21を駆動し、クランクシャフト16に駆動力を発生させる。過程6で断熱膨張が終了すると排気バルブ30を開いて排気を開始し、過程7までに排気が完了してシリンダ20の内圧が大気圧に一致する。
【0030】
図4には、膨張機17の圧力線図が示される。図中の四角で囲んだ数字は上記過程1〜過程7に対応する。
【0031】
このようにして、内燃機関11の排ガスの熱エネルギーは膨張機17によりクランクシャフト23を回転させる動力エネルギーに変換され、その動力エネルギーでジェネレータの駆動することで得られた電気エネルギーがバッテリに蓄えられる。尚、膨張機17で得られた動力エネルギーを、遊星歯車機構で内燃機関11のクランクシャフト16の駆動力に統合して出力することも可能である。
【0032】
ところで、熱源壁面24aに耐熱性および耐蝕性を有するステンレスのような一般的な金属材料を用いた場合には、その温度を500°C以上にすることは困難である。また熱源壁面24aの熱で水を蒸発させ、かつ排ガスタービン19を駆動する仕事以上の出力を得るには、熱源壁面24aの温度は150°C以上であることが必要である。熱源壁面24aにインコネル718のような耐熱性および耐蝕性に特に優れた金属を採用すれば800°C程度の温度に耐えることができるが、コスト面で採用することが困難である。熱源壁面24aの温度を高くするほど、気体サイクルおよび気液二相サイクルの理論熱効率が上がるのと同様に本実施の形態の膨張機17の理論熱効率も上がるが、上記理由から本実施の形態では一般的に300°C〜400°Cを熱源壁面24aの指令温度としている(図5参照)。
【0033】
また膨張機17は、内燃機関11の運転状態のうちで最も頻度が高い運転状態での排ガスの熱エネルギーを回収するように設計されており、その最大回転数が一般的にに100rpm〜500rpmになるように運転される。
【0034】
尚、膨張室24に供給される空気の温度が低いほど供給量が増えるため、最終的な仕事量が増えて効率が高くなる。また熱源壁面24aの温度が100°C以下になると膨張機17の運転が不能になるため、膨張室24に供給される水の温度は高い方が最終的な効率は高くなる。
【0035】
更に、熱源壁面24aが水の沸騰を伴う熱伝達を行うと仮定すると、ピストン21の頂面と同等の面積では熱源壁面24aの伝熱面積が足りない可能性が大きく、その場合には熱源壁面24aの伝熱面に凹凸を付けることで伝熱面積を増やすことが必要となる。
【0036】
次に、電子制御ユニット39による膨張機17の制御について説明する。電子制御ユニット39は、膨張機17の実効率を最大にすべく、膨張機17の出力軸回転数と、水供給装置31による水供給量と、水供給装置31による水供給時期とを制御する。膨張機17の実効率とは、その出力軸(クランクシャフト23)から出力される動力エネルギーを、熱源である排ガスから入力された熱エネルギーで割ったものである。
【0037】
先ず、図6のフローチャートのステップS1で、水供給装置31の水ポンプ36の運転を開始し、ステップS2で各センサで検出した計測値と、計測値から算出した算出値とを読み込む。内燃機関11側の計測値は、燃料噴射時間、排ガス温度、排ガス圧力、空燃費および内燃機関回転数であり、内燃機関11側の算出値は、供給燃料質量流量、供給空気質量流量、排ガス質量流量および単位時間に流れる排ガスのエンタルピと基準状態の排ガスのエンタルピとの差である。また膨張機17側の計測値は、出力軸回転数、熱源壁面温度および水噴射圧であり、膨張機17側の算出値は、外部ポンプ(内燃機関11の排ガスで駆動される排ガスタービン19以外の外部ポンプを使用して空気を供給する場合)の動力である。
【0038】
続くステップS3で、熱源壁面24aの温度が熱源壁面下限温度(例えば、150°C)以上であり、かつ水噴射圧が水噴射圧下限圧力以上である場合には、膨張機17の運転が可能であるため、ステップS4〜ステップS6で膨張機17の実効率を最大にする制御を実行し、それ以外の場合にはステップS7で膨張機17の運転を停止する。
【0039】
ステップS4で前記内燃機関11側の計測値および算出値から内燃機関11が単位時間当りに排出する熱量を算出し、その熱量を膨張機17が単位時間当りに処理する熱量とする。即ち、内燃機関11が排出する熱量のうち、膨張機の熱源壁面24aまで到達する熱量を見積もる。また指令熱源壁面温度よりも熱源壁面温度が低い場合には処理熱量を小さく見積もり、高い場合には処理熱量を大きく見積もることで、熱源壁面24aの温度を指令熱源壁面温度(例えば、300°C〜400°C)に一致させる制御を行う。
【0040】
続くステップS5で膨張機17の実効率を最大にする出力軸回転数(Nexp d)と、1サイクル当りの水噴射量(qw d)と、図示仕事を最大にする水噴射時期(Tinj d)とを特定し、ステップS6で上記出力軸回転数(Nexp d)、水噴射量(qw d)および水噴射時期(Tinj d)を目標値として膨張機17を運転する。
【0041】
次に、図7に基づいて前記ステップS5の内容を説明する。図7(A)の実効率等値線図は、横軸に膨張機17の出力軸回転数をとり、縦軸に1サイクル当りの水噴射量をとったもので、複数の細線はそれぞれ実効率が一定になるラインを実効率の大きさ毎に示している。膨張機17が単位時間当りに処理する熱量が一定の場合、出力軸回転数および1サイクル当りの水噴射量は反比例の関係を有しており、それらの出力軸回転数および1サイクル当りの水噴射量の可能な組合せは太線で示される。従って、太線と実効率が最大である細線とがa点で接するとき、そのa点に対応する出力軸回転数(Nexp d)および1サイサイクル当りの水噴射量(qw d)を指令値とすることで、最大の実効率を得ることができる。
【0042】
図7(B)は膨張機17の水噴射時期および図示仕事の関係を予めマップ化したもので、図示仕事が最大になる水噴射時期のクランクアングル(b点参照)を水噴射時期の指令値(Tinj d)とすることで、最大の実効率を得ることができる。
【0043】
尚、本実施の形態では膨張機17に対する空気の供給量を制御していないが、それは空気の供給量は大きれば大きいほど良いからである。なぜならば、熱源壁面24aの温度が100°C〜150°Cの低温時に膨張機17に水だけを供給すると、膨張行程で水蒸気が凝縮して水になることで圧力が急激に低下してしまうが、空気の存在によって前記圧力の低下を緩和できるからである。
【0044】
図8は各種熱サイクルの理論効率および比出力(熱機関の出力を行程容積で割った値)の特性を示すものである。スターリングサイクルやブレイトンサイクルのような気体を作動媒体とする気体サイクルは理論効率が高いという利点があるが、圧縮行程での断熱圧縮により作動媒体の温度が熱源の温度を超えてしまい、低温の熱源から作動媒体への熱の移動ができなくなるという問題や、内燃機関ほどは作動媒体を高温にできないために比出力が低く、大きな出力を得ようとすると機関の寸法が大型化するという問題がある。一方、ランキンサイクルのような気液2相の流体を作動媒体とする気液2相サイクルは、比出力が高いという利点があるが、膨張行程において作動媒体が気相から液相に相変化すると圧力が急激に低下して仕事を取り出せなくなり、潜熱を仕事に変えられないために理論効率が低くなるという問題がある。
【0045】
それに対して本実施の形態の熱サイクルは、気体(空気)の作動媒体と気液2相(水および水蒸気)の作動媒体とを併用しているので、膨張行程で気液2相媒体が湿って液化しようとするときに、気相媒体の存在によって気液2相媒体の液化による急激な圧力低下を緩和することで気液2相媒体の潜熱をより多く仕事に変換し、かつ高い圧力を維持することで高い理論効率を得ることができる。
【0046】
これにより、本実施の形態の熱サイクルでは、気体サイクルに比べて理論効率はやや低くなるものの比出力は数倍から数十倍になり、また気液2相サイクルに比べて比出力は低くなるものの理論効率を高めることができる。
【0047】
また外燃機関でありながら、空気および水を外部から供給し、膨張した後の空気および水(水蒸気)を外部に排出することで、それらの作動媒体の冷却装置が不要になり、装置の小型化が可能になる。
【0048】
次に、図9に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。尚、第2の実施の形態において、第1の実施の形態の部材に対応する部材には同じ符号が付してある。
【0049】
第1の実施の形態の膨張機17は、シリンダ20およびピストン21を備えているが、第2の実施の形態の膨張機17はシリンダ20およびピストン21の代わりに伸縮自在にベローズ41を備えており、ベローズ41の内部空間が膨張室24となり、ベローズ41の端面が熱源壁面24aとなる。第1の実施の形態の給気バルブ28の代わりにエアインジェクタ42が設けられており、排気バルブ30は熱源壁面24aに設けられている。
【0050】
この第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果を達成することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0052】
例えば、実施の形態では内燃機関11の排ガスで駆動される排ガスタービン19で空気を圧縮して膨張機17に供給しているが、内燃機関11の駆動力で駆動されるスーパーチャージャや電動モータ等の駆動源で駆動されるエアポンプで空気を圧縮して膨張機17に供給しても良い。
【符号の説明】
【0053】
11 内燃機関
17 膨張機
19 排ガスタービン(空気供給装置)
24 膨張室
24a 熱源壁面(受熱部)
31 水供給装置
39 電子制御ユニット(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(11)から排出される熱エネルギーを動力エネルギーに変換するエネルギー変換装置において、
前記内燃機関(11)から排出される熱エネルギーで加熱される受熱部(24a)と、 前記受熱部(24a)を膨張室(24)の一部として含むとともに、前記受熱部(24a)で水を水蒸気に相転移させて生じる前記膨張室(24)内の膨張圧力を動力エネルギーとして取り出す膨張機(17)と、
前記受熱部(24a)に水を供給する水供給装置(31)と、
前記膨張室(24)内に空気を供給する空気供給装置(19)と、
前記膨張機(17)から出力される動力エネルギー、前記水供給装置(31)による水の供給量および前記水供給装置(31)による水の供給時期を制御する制御手段(39)と、
を備えることを特徴とするエネルギー変換装置。
【請求項2】
前記制御手段(39)は、
前記受熱部(24a)の温度および前記内燃機関(11)から排出される熱エネルギーに基づいて、前記膨張機(17)から出力される動力エネルギー、前記水供給装置(31)による水の供給量および前記水供給装置(31)による水の供給時期を制御することを特徴とする、請求項1に記載のエネルギー変換装置。
【請求項3】
前記制御手段(39)は、
前記受熱部(24a)の温度が予め設定された設定温度以上である場合に、前記膨張機(17)を作動させることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエネルギー変換装置。
【請求項4】
前記空気供給装置(17)は、前記内燃機関(11)の排ガスにより作動する排ガスタービンであることを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のエネルギー変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−185135(P2011−185135A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50221(P2010−50221)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】