説明

エポキシ官能性およびシラン官能性のオリゴマーおよびポリマーの加水分解物および/または縮合物、ならびに、それらの製造および使用

本発明は、エポキシ基およびシラン基を有するオリゴマーおよびポリマーの加水分解物および/または縮合物であって、少なくとも1つのエポキシ基(a1)と少なくとも1つの加水分解可能なシラン基(a2)を有する少なくとも1種のオリゴマーおよび/またはポリマー(A)を加水分解および/または縮合させることによって得られる加水分解物および縮合物に関する。また本発明は、側方および/または末端のエポキシ基(a1)と側方および/または末端の一般式(II):SiR(式中、添え字および変数は明細書で定義された通りである)の加水分解可能なシラン基(a2)を有する(メタ)アクリラートコポリマー(A)に関する。基(a1):(a2)のモル比は1.5:1〜1:15、有利には1.3:1〜1:13、特に1.1:1〜1.1:1である。また本発明は前記の物質の製造方法およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ官能性およびシラン官能性のオリゴマーおよびポリマーの新規な加水分解物および/または縮合物に関する。本発明はまた、エポキシ官能性およびシラン官能性のオリゴマーおよびポリマーの加水分解物および/または縮合物を製造するための新規な方法に関する。本発明はさらに、エポキシ官能性およびシラン官能性のオリゴマーおよびポリマーの新規な加水分解物および/または縮合物の使用、ならびに、新規な方法によって製造されるエポキシ官能性およびシラン官能性のオリゴマーおよびポリマーの加水分解物の使用であって、新規な硬化可能な組成物としてのそのような使用、および、新規な硬化可能な組成物を製造するためのそのような使用に関する。本発明は特に、新規な硬化した組成物(特に、被覆および塗料システム)、そしてまた、成形物(特に、光学用成形物)、ならびに、自耐シートを製造するための硬化可能な組成物の使用に関する。
【0002】
エポキシ官能性シランの加水分解物および/または縮合物に基づく硬化可能な組成物が、例えば、EP1179575A2、WO00/35599A、WO99/52964A、WO99/54412A、DE19726829A1またはDE19540623A1の特許出願明細書から知られている。そのような組成物は、耐ひっかき性が大きい被覆を作製するために役立つ。
【0003】
少なくとも1つのオレフィン性不飽和基(特に、ビニル基またはメタクリラート基またはアクリラート基)を含有するシラン(例えば、ビニルトリメトキシシランまたはメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTS)など)に基づく硬化可能な組成物が、例えば、WO00/22052A、WO99/54412A、DE19910876A1またはDE19719948A1の特許出願明細書から知られている。
【0004】
WO99/54412Aの国際特許出願明細書によれば、例えば、MPTSがγ−AlO(OH)ナノ粒子の存在下で加水分解および/または縮合される。得られるゲルはエバポレーションされ、粉末クリアコート材として使用される。塗布された粉末クリアコート材は熱硬化させられる。
【0005】
WO00/22052A、DE19910876A1またはDE19719948A1の特許出願明細書によれば、例えば、SiOナノ粒子がMPTSによりシラン化され、多官能性アクリラート(例えば、トリメチロールプロパントリアクリラートなど)と混合される。得られる懸濁物はUV照射または電子線により重合させることができる。
【0006】
エポキシ基および加水分解可能なシラン基を含有する共重合体に基づく様々な熱硬化可能な組成物が米国特許第4,772,672号から知られている。これらの硬化可能な組成物は、アルミニウムまたはジルコニウムのキレート錯体を使用して硬化させなければならない。これらの硬化可能な組成物は、硬化を促進させるために、それらのそれぞれの総量に基づいて0.1重量%〜1重量%の水を加えることができる。
【0007】
これらの開発品の本質的な目的の1つは、硬化した組成物(特に、被覆および塗料システム)、そしてまた、成形物(特に光学用成形物)、ならびに、自耐シートを製造するための硬化可能な組成物を提供することである。
【0008】
そのような硬化可能な組成物は、大きな再現性を伴って製造することが容易でなければならず、また、液体状態での使用については、30重量%を超える固体含有量を、それにより、その輸送性、貯蔵安定性または加工特性(特に、その適用特性)に対する不利益を伴うことなく有しなければならない。
【0009】
そのような硬化可能な組成物は、耐ひっかき性が大きく、かつ、化学薬品に対して非常に安定である硬化した組成物、特に、被覆および塗料システム(より具体的には、クリアコート)、成形物(特に、光学用成形物)、ならびに、自耐シートを提供できなければならない。特に、被覆および塗料システム(より具体的には、クリアコート)を、40μmを超える薄膜厚さにおいて、応力亀裂の出現を伴うことなく作製することが可能でなければならない。このことは、自動車のOEM仕上げの技術的および審美的に特に厳しいセグメントにおける被覆および塗料システム(特に、クリアコート)の使用のための必須の必要条件である。これに関連して、それらは、特に大きい洗車耐性(これは、最初の光沢の70%を超えるDIN67530による残留光沢(20°)によって、実用に関連するAMTEC洗車試験で表される)を示すことが特に要求される。
【0010】
しかしながら、存在する硬化可能な組成物および硬化した組成物はこの必要条件プロフィルを完全に満たすことができない。
【0011】
上記に示された必要条件プロフィルを完全にまさに満たす新規な硬化可能な組成物および硬化した組成物の製造を可能にする、エポキシ基およびシラン基を含有する新規な材料を提供することが本発明の目的の1つである。その上、そのような新規なエポキシ官能性およびシラン官能性の材料は、非常に大きな再現性を伴って製造することが容易でなければならず、また、何らかの環境問題をもたらしてはならず、また、結果として、化学薬品規制法による何らかの承認を要求するようであってはならない。
【0012】
従って、本発明は、少なくとも1つのエポキシ基(a1)および少なくとも1つの加水分解可能なシラン基(a2)を含有する少なくとも1つのオリゴマーおよび/またはポリマー(A)を加水分解および/または縮合することによって製造することができる、エポキシ官能性およびシラン官能性のオリゴマーおよびポリマーの新規な加水分解物および/または縮合物を提供する。
【0013】
エポキシ基(a1)およびシラン基(a2)を含有するオリゴマーおよび/またはポリマー(A)の新規な加水分解物および/または縮合物は、下記では、「本発明の加水分解物および/または縮合物」として示される。
【0014】
本発明はさらに、本発明の加水分解物および/または縮合物を製造するための新規な方法を提供し、この方法では、オリゴマーおよび/またはポリマー(A)を7未満のpHで加水分解および/または縮合することを伴い、この方法は下記では「本発明の方法」として示される。
【0015】
本発明は特に、本発明の加水分解物および/または縮合物の新規な使用、ならびに、本発明の方法によって製造される加水分解物および/または縮合物の新規な使用であって、硬化可能な組成物としての使用、および、硬化可能な組成物を製造するための使用を提供し、これは下記では「本発明による使用」として示される。
【0016】
本発明のさらなる主題が記載から明らかになる。
【0017】
先行技術を考慮して、本発明が基づいた目的が、本発明の加水分解物および/または縮合物、本発明の方法、ならびに、本発明による使用によって達成され得ることは、当業者にとって驚くべきことであり、かつ、予測できないことであった。
【0018】
特に驚くべきことは、本発明の加水分解物および/または縮合物が、特に本発明の方法(この場合、標準的な市販の出発用製造物を使用することが可能である)によって、特に容易に、かつ、非常に良好な再現性を伴って製造可能であったことであり、また、本発明の加水分解物および/または縮合物は環境問題を全くもたらさず、従って、化学薬品規制法による承認を全く要求しなかったことであった。
【0019】
さらなる驚くべきことは、本発明の加水分解物および/または縮合物が、新規な硬化可能な組成物として、または、新規な硬化可能な組成物を製造するための出発物質として優れて好適であったことであった。
【0020】
本発明の硬化可能な組成物は、容易に、かつ、非常に良好な再現性を伴って製造することができ、また、液体状態で使用されるときには、30重量%を超える固体含有量に、それにより、その非常に良好な輸送性、貯蔵安定性および加工特性(特に、その適用特性)に対する不利益を伴うことなく調節することができた。驚くべきことに、本発明の硬化可能な組成物は、アルミニウムまたはジルコニウムのキレート錯体を伴わない場合でさえ、完全かつ迅速に硬化させることができた。
【0021】
本発明の硬化可能な組成物は、耐ひっかき性が大きく、かつ、化学薬品に対して非常に安定である新規な硬化した組成物、特に、被覆および塗料システム(より具体的には、クリアコート)、成形物(特に、光学用成形物)、ならびに、自耐シートをもたらした。特に、本発明の被覆および塗料システム(より具体的には、クリアコート)を、40μmを超える薄膜厚さにおいてさえ、応力亀裂の発生を伴うことなく作製することが可能であった。従って、本発明の被覆および塗料システム(特に、クリアコート)は自動車のOEM仕上げの技術的および審美的に特に厳しいセグメントにおいて使用することができた。これに関連して、本発明の被覆および塗料システム(特に、クリアコート)は、特に大きい洗車耐性および耐ひっかき性によって特に区別することができ、これは、ときには、最初の光沢の70%を超えるDIN67530による残留光沢(20°)によって、実施のために関連するAMTEC洗車試験に基づいて強調することができた。
【0022】
本発明の加水分解物および/または縮合物は、エポキシ基および加水分解可能なシラン基を含有するオリゴマーおよび/またはポリマー(A)を、好ましくは、ゾル・ゲル法として知られている方法に関連して、加水分解および/または縮合することによって製造することができる。その基本的な反応を、テトラオルトシリケートを参照して例示することができる。後者は加水分解されるが、場合により共溶媒の存在下において加水分解および/または縮合される。
【0023】
加水分解
Si(OR') + HO → (R'O)Si−OH + R'OH
加水分解および/または縮合
−Si−OH + HO−Si− → −Si−O−Si− + H
−Si−OH + R'O−Si− → −Si−O−Si− + R'OH
(式中、R'はアルキル基(例えば、メチルまたはエチルなど)であり得る)。これらの反応は、酸、塩基またはフッ化物イオンを使用して触媒される。
【0024】
オリゴマー(A)は、平均して、3以上で、15以下の取り込まれたモノマーユニットを含有する。一般的に言えば、ポリマー(A)は、10を超える取り込まれたモノマーユニットを含有し、好ましくは、15を超える取り込まれたモノマーユニットを含有する。
【0025】
本発明の加水分解物および/または縮合物は、それぞれの場合において、少なくとも1つ(特に、1つ)のオリゴマー(A)またはポリマー(A)から製造することができる。しかしながら、特定の適用については、少なくとも2つの異なるオリゴマー(A)、ポリマー(A)、または、オリゴマーおよびポリマー(A)の混合物を使用することもまた可能である。
【0026】
オリゴマーおよびポリマー(A)は、それぞれの場合において、少なくとも1つエポキシ基(a1)と、上記の意味で加水分解可能である少なくとも1つのシラン基(a2)とを含有する。オリゴマーおよびポリマー(A)は、好ましくは、平均して、少なくとも2つ(特に、少なくとも3つ)のポキシド基(a1)と、少なくとも2つ(特に、少なくとも3つ)の加水分解可能なシラン基(a2)とを含有する。これらは末端および/または側方のポキシド基(a1)および加水分解可能なシラン基(a2)であり得る。
【0027】
オリゴマーおよびポリマー(A)は、線状構造、星型形状の構造またはデンドリマー構造、あるいは、くし形構造を有することができる。これらの構造は、1つのオリゴマーまたはポリマー(A)の内部において互いに組み合わせて存在させることができる。モノマーユニットは、ランダムに、または交互に、またはブロック状に分布させることができ、これらの分布を1つのオリゴマーまたはポリマー(A)の内部において互いに組み合わせて存在させることが可能である。
【0028】
オリゴマーおよびポリマー(A)の数平均分子量および質量平均分子量ならびに分子量の多分散度は広範囲に変化させることができ、また、検討中のその事案の必要条件によって導かれる。数平均分子量は好ましくは800〜3000ダルトンであり、より好ましくは1000〜2500ダルトンであり、特に1000〜2000ダルトンである。質量平均分子量は好ましくは1000〜8000ダルトンであり、より好ましくは1500〜6500ダルトンであり、特に1500〜6000ダルトンである。多分散度は好ましくは10未満であり、より好ましくは8未満であり、特に5未満である。
【0029】
オリゴマーおよびポリマー(A)は、その製造およびその後においてエポキシ基(a1)および加水分解可能なシラン基(a2)が反応しないそのようなクラスのポリマーのいずれかに由来し得る。従って、当業者は、当業者の当該技術分野での一般的な知識に基づいて、好適なクラスのポリマーを容易に選択することができる。オリゴマーおよびポリマー(A)は、好ましくは付加ポリマーであり、特に、オレフィン性不飽和モノマーの付加共重合体である。
【0030】
エポキシ基(a1)は連結有機基(G1)によってオリゴマーおよびポリマー(A)の主鎖に共有結合的に結合する。この場合、1つのエポキシ基(a1)が1つの二価の連結有機基(G1)を介して主鎖に連結されること、または、少なくとも2つのエポキシ基(a1)が1つの少なくとも三価の連結有機基(G1)を介して主鎖に連結されることが可能である。好ましくは、1つのエポキシ基(a1)が1つの二価の連結有機基(G1)を介して主鎖に連結される。
【0031】
二価の連結有機基(G1)は、好ましくは、置換および非置換(好ましくは非置換)で、分岐および非分岐(好ましくは非分岐)で、環状および非環状(好ましくは非環状)のアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基(特に、アルキル基)、そして同様に、置換および非置換(好ましくは非置換)のアリール基からなる群から選択される少なくとも1つ(特に、1つ)の少なくとも二価(特に、二価)の基(G11)を含むか、または、そのような群から選択される少なくとも1つ(特に、1つ)の少なくとも二価(特に、二価)の基(G11)からなる。
【0032】
二価の基(G11)は、特に、1個〜10個(好ましくは2個〜6個、特に1個〜4個)の炭素原子を有する非分岐で、非環状で、非置換の二価アルキル基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基またはテトラメチレン基などである。
【0033】
好ましくは、二価の連結有機基(G1)はさらに、エーテル基、チオエーテル基、カルボキシラート基、チオカルボキシラート基、カルボナート基、チオカルボナート基、ホスファート基、チオホスファート基、ホスホナート基、チオホスホナート基、ホスフィト基、チオホスフィト基、スルホナート基、アミド基、アミン基、チオアミド基、ホスホルアミド基、チオホスホルアミド基、ホスホンアミド基、チオホスホンアミド基、スルホンアミド基、イミド基、ヒドラジド基、ウレタン基、ウレア基、チオウレア基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホン基およびスルホキシド基からなる群から、特に、カルボキシラート基からなる群から選択される好ましくは選択される少なくとも1つ(特に、1つ)の少なくとも二価(特に、二価)の連結官能基(G12)を含む。
【0034】
好適な置換基の例は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子および塩素原子)、ニトリル基、ニトロ基またはアルコキシ基である。上記の基(G1)および基(G11)は好ましくは非置換である。
【0035】
エポキシ基(a1)は、好ましくは、基(G12)を介して主鎖に連結される基(G11)を介して、より好ましくは下記の一般式Iに従って主鎖に連結される:
−(−G12−)−(G11−)−エポキシド (I)
特に、使用される一般式Iの基は、
−C(O)−O−CH−エポキシド (I1)
である。
【0036】
加水分解可能なシラン基(a1)は種々の構造を有することができる。加水分解可能なシラン基(a1)は、好ましくは、下記の一般式IIの加水分解可能なシラン基(a2)からなる群から選択される:
−SiR (II)
一般式IIにおいて、添え字および変数は下記のように定義される:
Rは一価の加水分解可能な原子または一価の加水分解可能な基である;
は一価の非加水分解性の基である;
mは1〜3の整数(好ましくは3)であり、かつ
nは0または1または2(好ましくは0または1)であり、
ただし、m+n=3である。
【0037】
好適な一価の加水分解可能な原子Rの例は、水素、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素である。
【0038】
好適な一価の加水分解可能な基Rの例は、ヒドロキシル基、アミノ基(−NH)、および、下記の一般式IIIの基である:
−X− (III)
式中、変数は下記のように定義される:
Xは、酸素原子、イオウ原子、カルボニル基、チオカルボニル基、カルボキシル基、チオカルボン酸S−エステル基、チオカルボン酸O−エステル基またはアミノ基(−NH−または−NR−)であり、好ましくは酸素原子である;かつ
は一価の有機基である。
【0039】
一価の有機基Rは、置換および非置換(好ましくは非置換)で、分岐および非分岐(好ましくは非分岐)で、環状および非環状(好ましくは非環状)のアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基(特に、アルキル基)、そして同様に、置換および非置換(好ましくは非置換)のアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの基(G2)を含むか、または、そのような群から選択される少なくとも1つの基(G2)からなり、特に、非置換の非分岐の非環状アルキル基を含むか、または、非置換の非分岐の非環状アルキル基からなる。
【0040】
好適な置換基の例は上記の置換基である。
【0041】
基Rが基(G2)から構成されるならば、基Rは一価である。
【0042】
基Rが基(G2)を含む場合、基Rは少なくとも二価(特に、二価)であり、−X−に対して直接に連結される。基Rはさらに上記の基(G12)の少なくとも1つ(特に、1つ)を含むことができる。
【0043】
基Rが少なくとも2つの基(G2)を含む場合、そのうちの少なくとも1つは少なくとも二価(特に、二価)であり、−X−に対して直接に連結される。−X−に対して直接に連結されたこの基(G12)は少なくとも1つのさらなる基(G2)に連結される。−X−に対して直接に連結されたこの基(G2)は、好ましくは、1つの基(G12)を介して残る基(G2)に連結されるか、または、少なくとも2つの基(G12)を介して残る基(G2)に連結される。
【0044】
基Rは、好ましくは、基(G2)から構成される。特に、基Rは、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群から選択される。
【0045】
加水分解可能なシラン基(a2)は、特に、メチルジエトキシシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、トリプロポキシシリルおよびトリブトキシシリルからなる群から選択され、特に、トリメトキシシリルおよびトリエトキシシリルからなる群から選択される。
【0046】
加水分解可能なシラン基(a2)は、好ましくは上記の連結有機基(G1)を介して、オリゴマーおよびポリマー(A)の主鎖に共有結合的に結合する。この場合、1つの加水分解可能なシラン基(a2)が1つの二価の連結有機基(G1)を介して主鎖に連結され得るか、または、そうでなければ、少なくとも2つの加水分解可能なシラン基(a2)が少なくとも三価の連結有機基(G1)を介して主鎖に連結され得る。好ましくは、1つの加水分解可能なシラン基(a2)が1つの二価の連結有機基(G1)を介して主鎖に連結される。
【0047】
好ましくは、ここで再度ではあるが、一価の連結有機基(G1)は、上記の少なくとも二価(特に、二価)の基(G11)の少なくとも1つ(特に、1つ)を含み、または、上記の少なくとも二価(特に、二価)の基(G11)の少なくとも1つ(特に、1つ)からなる。より好ましくは、二価の連結有機基(G1)はさらに、上記の少なくとも二価(特に、二価)の連結官能基(G12)の少なくとも1つ(特に、1つ)を含む。
【0048】
シラン基(a2)は、好ましくは、下記の一般式(IV)に従って、1つの二価の連結官能基(G12)を介して主鎖に連結される1つの二価の連結基(G11)を介してオリゴマーおよびポリマー(A)の主鎖に連結される:
−(−G12−)−(G11−)−SiR (IV)
式中、添え字および変数は上記で定義される通りである。非常に特に好ましくは、一般式IVの下記の基が使用される:
−C(O)−O−(−CH−)−Si(OCH (IV1)
−C(O)−O−(−CH−)−Si(OCH (IV2)
−C(O)−O−(−CH−)−Si(OC (IV3)
−C(O)−O−(−CH−)−Si(OC (IV4)
−C(O)−O−CH−Si(OC (IV5)
および
−C(O)−O−CH−SiCH(OC (IV6)
特に、(IV4)が使用される。
【0049】
オリゴマーおよびポリマー(A)におけるエポキシ基(a1)対加水分解可能なシラン基(a2)のモル比は広範囲に変化させることができる。オリゴマーおよびポリマー(A)におけるエポキシ基(a1)対加水分解可能なシラン基(a2)のモル比は、好ましくは1.5:1〜1:1.5であり、より好ましくは1.3:1〜1:1.3であり、特に1.1:1〜1:1.1である。
【0050】
非常に特に好都合なものは、側方および/または末端のエポキシ基(a1)と、下記の一般式IIの側方および/または末端の加水分解可能なシラン基(a2):
−SiR (II)
(式中、添え字および変数は上記で定義される通りである)とを、1.5:1〜1:1.5(好ましくは1.3:1〜1:1.3、特に1.1:1〜1:1.1)の(a1):(a2)のモル比で含有する(メタ)アクリラート共重合体(A)である。
本発明のこれらの(メタ)アクリラート共重合体(A)は、特に好都合な本発明の加水分解物および/または縮合物をもたらす。
【0051】
上記のエポキシ基(a1)およびシラン基(a2)のほかに、オリゴマーおよびポリマー(A)はさらに、さらなる側方および/または末端の基(a3)を含むことができる。基(a3)はエポキシ基(a1)およびシラン基(a2)と反応せず、かつ、加水分解および/または縮合の進行を妨害しないことが不可欠である。好適な基(a3)の例は、フッ素原子、塩素原子、ニトリル基、ニトロ基、アルコキシ基、ポリオキシアルキレン基、または上記の一価の基R(特に、アリール基、アルキル基およびシクロアルキル基)である。この基(a3)の助けを借りて、オリゴマーおよびポリマー(A)の特性のプロフィル、従って、本発明の加水分解物および/または縮合物の特性のプロフィルを、好都合な方法で広範囲に変化させることが可能である。
【0052】
オリゴマーおよびポリマー(A)は、少なくとも1つ(特に、1つ)のエポキシ基(a1)を含有する少なくとも1つ(特に、1つ)のモノマー(a1)を、少なくとも1つ(特に、1つ)のシラン基(a2)を含有する少なくとも1つ(特に、1つ)のモノマー(a2)と共重合することによって製造することができる。モノマー(a2)およびモノマー(a3)はさらに、少なくとも1つの基(a3)を含有する少なくとも1つのモノマー(a3)と共重合することができる。
【0053】
モノマー(a1)およびモノマー(a2)が1.5:1〜1:1.5(好ましくは1.3:1〜1:1.3、特に1.1:1〜1:1.1)の(a1):(a2)のモル比で互いに共重合されるならば、際立った利点が生じる。この場合においては、結果がオリゴマーおよびポリマー(A)におけるエポキシ基(a1)対加水分解可能なシラン基(a2)の上記モル比であるならば、非常に際立った利点が得られる。
【0054】
モノマー(a1)、モノマー(a2)およびモノマー(a3)は、好ましくは、少なくとも1つ(特に、1つ)のオレフィン性不飽和基を含む。
【0055】
好適なオレフィン性不飽和基の例は、(メタ)アクリラート、基、エタクリラート基、クロトナート基、シンナマート基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、ジシクロペンタジエニル基、ノルボルネニル基、イソプレニル基、イソプロペニル基、アリル基またはブテニル基;ジシクロペンタジエニルエーテル基、ノルボルネニルエーテル基、イソプレニルエーテル基、イソプロペニルエーテル基、アリルエーテル基またはブテニルエーテル基;あるいは、ジシクロペンタジエニルエステル基、ノルボルネニルエステル基、イソプレニルエステル基、イソプロペニルエステル基、アリルエステル基またはブテニルエステル基であり、好ましくは、メタクリラート基およびアクリラート基であり、特にメタクリラート基である。
【0056】
好適なモノマー(a1)の様々な例が米国特許第4,772,672号(第5欄7行〜第6欄66行)から知られている。特に好適なモノマー(a1)の一例がグリシジルメタクリラートである。
【0057】
好適なモノマー(a2)の様々な例が米国特許第4,772,672号(第2欄52行〜第5欄5行)から知られている。特に好適なモノマー(a2)の一例が、Dynasilan(登録商標)MEMOの商品名でDegussa社によって販売されているメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTS)であり、あるいは、Geniosil(登録商標)XL34およびGeniosil(登録商標)XL36の商品名でWacker社によって販売されているメタクリロイルオキシメチルトリエトキシシランまたはメタクリロイルオキシメチルメチルジエトキシシランである。
【0058】
好適なモノマー(a3)の様々な例が国際特許出願公開WO03/016411(24頁9行〜28頁8行)に記載されている。
【0059】
オリゴマーおよびポリマー(A)は、好ましくは、モノマー(a1)と、モノマー(a2)と、そしてまた、使用されるときにはモノマー(a3)とを、好ましくは無溶媒または溶液中で、特に、溶液中でラジカル共重合することによって従来的に製造することができる。
【0060】
本発明の加水分解物および/または縮合物は、好ましくは本発明の方法によって製造される。
【0061】
この目的のために、上記のオリゴマーおよび/またはポリマー(A)が、好ましくは、7未満のpHで加水分解および/または縮合される。加水分解および/または縮合は、有機酸または無機酸(好ましくは有機酸、特に酢酸)の存在下での水との反応によるゾル・ゲル法で行われる。加水分解および/または縮合は好ましくは−10℃〜+50℃で行われ、より好ましくは0℃〜+40℃で行われ、特に+10℃〜+30℃で行われる。
【0062】
加水分解および/または縮合は、例えば、ドイツ国特許出願DE19940857A1に記載されるような従来の低分子量の加水分解可能なシランおよび/または加水分解可能な金属アルコキシド、ならびに/あるいはナノ粒子(特に、ナノ粒子)の存在下で行うことができる。
【0063】
ナノ粒子は、好ましくは、金属、金属の化合物、および有機化合物からなる群から選択され、好ましくは、金属の化合物からなる群から選択される。
【0064】
金属は、好ましくは、元素周期表の3族〜5族の主族、ならびに3族〜6族の遷移族、ならびに同様に、1族および2族から、ならびに同様に、ランタニドから選択され、より好ましくは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、ヒ素、アンチモン、銀、亜鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンおよびセリウムからなる群から選択される。特に、アルミニウムおよびケイ素が使用される。
【0065】
金属の化合物は、好ましくは、酸化物、酸化物水和物、硫酸塩、水酸化物またはリン酸塩であり、特に、酸化物、酸化物水和物および水酸化物である。
【0066】
好適な有機化合物の例はリグニンおよびデンプンである。
【0067】
ナノ粒子は、好ましくは、一次粒子サイズが50nm未満であり、より好ましくは5nm〜50nmであり、特に5nm〜30nmである。
【0068】
本発明の加水分解物および/または縮合物、特に、ナノ粒子の存在下で製造された加水分解物および/または縮合物は、それ自体で、硬化可能な組成物として使用することができる。
【0069】
加えて、本発明の加水分解物および/または縮合物、特に、ナノ粒子の存在下で製造された加水分解物および/または縮合物を、硬化可能な組成物を製造するために使用することが可能である。
【0070】
驚くべきことに、上記のナノ粒子は、カチオン的に安定化されたときには特に、本発明の加水分解物および/または縮合物を架橋するための触媒として、ならびに/あるいは、その後に単に加えられただけでさえ、本発明の硬化可能な組成物を架橋するための触媒として使用されることが可能である。
【0071】
触媒として、さらには、本発明の加水分解物および/または縮合物に、ならびに/あるいは、本発明の硬化可能な組成物に、金属の化合物を、キレート配位子を形成することができる少なくとも1つの有機(好ましくは非芳香族)化合物とともに加えることが可能である。キレート配位子を形成する化合物は、金属原子または金属イオンに配位することができる少なくとも2つの官能基を有する有機化合物である。このような官能基は、通常、電子を電子アクセプターとしての金属原子または金属イオンに手放す電子ドナーである。本発明の硬化可能な組成物を本発明の硬化した組成物に架橋することを完全に妨げることは言うまでもなく、そのような架橋に悪影響を及ぼさないならば、原理的には、述べられたタイプのすべての有機化合物が好適である。好適な有機化合物の例が、ジメチルグリオキシム、または、カルボニル基を1位および3位に含有する化合物(例えば、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルなど)である。さらなる詳細については、Roempp Chemie Lexikon、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、1989、第1巻、634頁を参照のこと。触媒として、例えば、米国特許第4,772,672号(第8欄1行〜第9欄49行)に記載されるようなアルミニウムのキレート錯体およびジルコニウムのキレート錯体を使用することもまた可能である。しかしながら、本発明の硬化可能な組成物が、キレート錯体を使用しない場合でさえ、迅速かつ完全に硬化し得ることは、本発明の硬化可能な組成物の際立った利点である。
【0072】
本発明の加水分解物および/または縮合物、ならびに/あるいは、本発明の硬化可能な組成物に、例えば、Bryan Ellisによる書籍“Chemistry and Technology of Epoxy Resins”(Shefield大学、Blackie Academic&Professional)に記載されるように、エポキシ基を架橋させるための従来の触媒(例えば、ルイス酸、アミンまたは複素環のアルミニウム化合物またはスズ化合物など)を加えることはさらなる可能性の1つである。
【0073】
本発明の加水分解物および/または縮合物、ならびに/あるいは、本発明の硬化可能な組成物に従来の典型的な被覆構成成分を加えることもまた可能である。好適な構成成分の例が、例えば、国際特許出願公開WO03/016411(14頁9行〜35頁31行)に記載されている。
【0074】
本発明の硬化可能な組成物の製造は、その方法に関する限り、特別な特徴を有しておらず、しかし、代わりに、国際特許出願公開WO03/016411(36頁13行〜20行)に記載される装置および方法を使用して行うことができる。
【0075】
本発明の硬化可能な組成物は従来の有機溶媒(国際特許出願公開WO03/016411(35頁12行〜14行)を参照のこと)を含み、また同様に、好ましくは水を含む。このことは、本発明の液体の硬化可能な組成物の際立った利点の1つである。すなわち、本発明の液体の硬化可能な組成物は、30重量%を超える固体含有量を、それにより、その非常に良好な輸送性、貯蔵安定性および加工特性(特に、その適用特性)に対する不利益を伴うことなく有することができる。
【0076】
本発明の硬化可能な組成物は、本発明の硬化した組成物を製造するために役立つ。これに関連して、本発明の硬化した組成物は、着色および非着色の被覆材(特に、クリアコート材)として、また同様に、成形物(特に、光学用成形物)および自耐シートのための出発材料として好んで使用される。
【0077】
本発明の硬化した組成物は、好ましくは、着色および非着色の被覆材および塗料システム(より好ましくは、透明な(特に、透き通った)クリアコート)、成形物(特に、光学用成形物)、ならびに自耐シートである。非常に特に好ましくは、本発明の硬化した組成物は、従来の下地に対するクリアコート(単独で、また、多層コート色の一部として、その両方で)、および/または効果的な塗料システムである(これに関しては、国際特許出願公開WO03/016411の41頁6行〜43頁6行を44頁6行〜45頁6行と併せて参照のこと)。
【0078】
本発明の硬化可能な組成物からの本発明の硬化した組成物の製造は、この方法に関する限り、特別な特徴を有しておらず、しかし、代わりに、本発明の特定の硬化した組成物のために典型的な装置および方法を使用して行われる。
【0079】
特に、本発明の硬化可能な被覆材は、国際特許出願公開WO03/016411(37頁4行〜24行)に記載される従来の装置および方法によって下地に適用される。
【0080】
本発明の硬化可能な組成物は、国際特許出願公開WO03/016411(38頁1行〜41頁4行)に記載されるように硬化させることができる。
【0081】
本発明の硬化可能な組成物は、耐ひっかき性が大きく、かつ、化学薬品に対して非常に安定である新規な硬化した組成物、特に、被覆および塗料システム(より具体的には、クリアコート)、成形物(特に、光学用成形物)、ならびに自耐シートを提供する。特に、本発明の被覆および塗料システム(より具体的には、クリアコート)は、40μmを超える薄膜厚さにおいてさえ、応力亀裂の発生を伴うことなく作製することができる。
【0082】
従って、本発明の硬化した組成物は、あらゆる種類の輸送手段(特に、筋肉の力によって運転される輸送手段、例えば、自転車、乗り物または鉄道トロリー、航空機(例えば、飛行機、ヘリコプターまたは飛行船など)、浮遊構造物(例えば、船またはブイなど)、鉄道車輌、および自動車輌(例えば、オートバイ、バス、トラックまたは自動車など))の車体またはその一部;建物の内部および外部;家具、窓およびドア;ポリマー成形物(具体的にはポリカーボネートの成形物、特に、CDおよび窓);小さい産業用部品、コイル、容器および包装物;白色物品;シート;光学的成分、電気的成および機械的成分;ならびに、日常的に使用される中空ガラス製品および日常品における装飾的で、保護的で、かつ/または、効果をもたらす、耐ひっかき性が大きい被覆および塗料システムとしての使用のために優れて好適である。
【0083】
本発明の被覆および塗料システム(特に、クリアコート)は、特に、自動車のOEM仕上げの技術的および審美的に特に厳しいセグメントにおいて用いることができる。その有用性において、本発明の被覆および塗料システム(特に、クリアコート)は、特に大きい洗車耐性および耐ひっかき性によって特に区別され、これは、最初の光沢の70%を超えるDIN67530による残留光沢(20°)によって、実用に関連するAMTEC洗車試験に基づいて強調され得る。
【0084】
実施例
実施例1
メタクリラート共重合体(A1)の製造
攪拌機、還流冷却器、ガス導入管および2つの供給物容器を備えた三つ口のガラス製フラスコに、669.5重量部のエトキシプロパノールを仕込んだ。この最初の仕込み物を窒素雰囲気下で撹拌しながら130℃に加熱した。続いて、377重量部のグリシジルメタクリラート、658.5重量部のメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasilan(登録商標)MEMO)および48.25重量部の1,1’−ジフェニルエチレンからなる第1の供給物流と、11.75重量部のtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアートおよび134重量部のエトキシプロパノールからなる第2の供給物流とを、その後、同時に開始して、撹拌下で最初の仕込み物にゆっくり加えた。第1の供給物流は2時間かけて加えられたが、第2の供給物流は2.5時間かけて加えられた。得られた反応混合物を、130℃で5時間、撹拌しながら後重合した。
【0085】
得られたメタクリラート共重合体(A1)をゲル浸透クロマトグラフィー(溶媒:テトラヒドロフラン;内部標準:ポリスチレン)によって特徴づけた。下記の数字が分子量および多分散度について得られた。
質量平均分子量:3967ダルトン
数平均分子量:1721ダルトン
分子量の多分散度:2.3。
【0086】
実施例2
メタクリラート共重合体(A2)の製造
攪拌機、還流冷却器、ガス導入管および2つの供給物容器を備えた三つ口のガラス製フラスコに、150重量部のエトキシプロパノールを仕込んだ。この最初の仕込み物を窒素雰囲気下で撹拌しながら130℃に加熱した。続いて、70.36重量部のグリシジルメタクリラート、122.93重量部のメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、0.7重量部の2,5−ジヒドロフランおよび0.2重量部の1,1’−ジフェニルエチレンからなる第1の供給物流と、21.02重量部のtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアートからなる第2の供給物流とを、その後、同時に開始して、撹拌下で最初の仕込み物にゆっくり加えた。第1の供給物流は2時間かけて加えられたが、第2の供給物流は2.5時間かけて加えられた。得られた反応混合物を、130℃で5時間、撹拌しながら後重合した。
【0087】
得られたメタクリラート共重合体(A2)をゲル浸透クロマトグラフィー(溶媒:テトラヒドロフラン;内部標準:ポリスチレン)によって特徴づけた。下記の数字が分子量および多分散度について得られた。
質量平均分子量:3960ダルトン
数平均分子量:1701ダルトン
分子量の多分散度:2.3。
【0088】
製造例1
カチオン的に安定化されたナノ粒子の製造
2.78重量部のベーマイトナノ粒子(Disperal(登録商標)P3、これはSasol社(ドイツ)から得られる)を、撹拌下、25重量部の1N酢酸と、2.5重量部の脱イオン化水との混合物に加えた。得られた混合物を、ベーマイトナノ粒子が溶解されるまで超音波浴において3分間処理した。
【0089】
製造例2
カチオン的に安定化されたナノ粒子の製造
製造例1を繰り返したが、1N酢酸を0.1N酢酸に置き換えた。
【0090】
実施例3
クリアコート材3.1〜3.5の製造およびクリアコート3.1〜3.5の作製
製造のための一般的な指示
磁石撹拌機を備えた丸底のガラス製フラスコに、製造例1のナノ粒子溶液または製造例2のナノ粒子溶液を10重量%の濃度で仕込んだ。この最初の仕込み物に、実施例1からのメタクリラート共重合体(A1)と、脱イオン水とを加えた。得られた反応混合物を室温で1時間撹拌した。その後、イソプロパノールを加え、この方法で得られた反応混合物を室温で4時間撹拌した。この期間中、反応混合物は、最初は乳濁していたが、透明になり、半透明のクリアコート材が形成された。
【0091】
第1表は、これらの一般的な製造指示に従って製造されたクリアコート材3.1〜3.5の材料組成の概略を示す。これらの製造されたクリアコート材は容易に輸送することができ、かつ貯蔵安定であった。
【0092】
第1表:クリアコート材3.1〜3.5の材料組成
【0093】
【表1】

【0094】
クリアコート材3.1〜3.5を、エレクトロコート、中塗りコートおよび黒色の水性の下塗りで(示された順序で)前もって被覆されているスチール製パネルに、重力送りカップ型ガンを使用して空気圧により塗布した。塗布されたクリアコート薄膜3.1〜3.5の湿潤時の薄膜厚さは、硬化したクリアコートが40μmの乾燥薄膜厚さを有するように選ばれた。塗布されたクリアコート薄膜3.1〜3.5は、溶媒を室温で10分間蒸発させ、140℃で22分間熱硬化させた。Heraeus社から得られる強制エアオーブンを熱硬化のために使用した。
【0095】
これにより、透明な高光沢クリアコート3.1〜3.5が得られ、これらは非常に良好な均展性を示し、かつ、応力亀裂および表面きず(例えば、くぼみなど)がなかった。クリアコート3.1〜3.5の硬さ、たわみ性および耐ひっかき性を調べた。
【0096】
スチールウールひっかき試験を、DIN1041に合わせてハンマー(柄を除いた重量:800g;柄の長さ:35cm)を使用して行った。試験パネルは、試験前の24時間、室温で貯蔵された。
【0097】
ハンマーの平らな面を1層のスチールウールで包み、テサクレップ(tesakrepp)テープを使用して高くなった面で固定した。ハンマーをクリアコートに対して直角に当てた。ハンマーの頭を、傾けることなく、かつ、さらなる物理的力を加えることなく、クリアコートの表面における行路において誘導した。
【0098】
各試験について、10往復の前後運動を手によって行った。これらの個々の試験のそれぞれの後で、スチールウールを取り替えた。
【0099】
暴露後、試験区域を、スチールウールの残渣を除くために柔らかい布できれいにした。試験区域を人工光のもとで目視により評価し、下記のように採点した:
採点 損傷
1 なし
2 軽微
3 軽度
4 軽度〜中程度
5 ひどい
6 非常にひどい
評価を試験終了後直ちに行った。
【0100】
第2表は結果の概略を示す。結果から、クリアコート3.1〜3.5は硬く、曲げやすく、かつ、耐ひっかき性が大きかったという事実が強調される。
【0101】
第2表:クリアコート3.1〜3.5の硬さ、たわみ性および耐ひっかき性
【0102】
【表2】

【0103】
実施例4
クリアコート材4.1〜4.5の製造およびクリアコート4.1〜4.5の作製
磁石撹拌機を備えた丸底フラスコに、製造例1のナノ粒子溶液を10重量%の濃度で仕込んだ。この最初の仕込み物に、撹拌しながら、実施例2からのメタクリラート共重合体(A2)を加えた。得られた反応混合物を室温で1時間撹拌した。その後、イソプロパノールを加え、この方法で得られた反応混合物を室温で4時間撹拌した。この期間中、反応混合物は、最初は乳濁していたが、透明になり、半透明のクリアコート材が形成された。
【0104】
第3表は、これらの一般的な製造指示に従って製造されたクリアコート材4.1〜4.5の材料組成の概略を示す。これらの製造されたクリアコート材は容易に輸送することができ、かつ貯蔵安定であった。
【0105】
第3表:クリアコート材4.1〜4.5の材料組成
【0106】
【表3】

【0107】
クリアコート材4.1〜4.5を、エレクトロコート、中塗りコートおよび黒色の水性の下塗りで(示された順序で)前もって被覆されているスチール製パネルに、重力送りカップ型ガンを使用して空気圧により塗布した。塗布されたクリアコート薄膜4.1〜4.5の湿潤時の薄膜厚さは、硬化したクリアコートが20μmの乾燥薄膜厚さを有するように選ばれた。塗布されたクリアコート薄膜4.1〜4.5は、溶媒を室温で10分間蒸発させ、140℃で22分間熱硬化させた。Heraeus社から得られる強制エアオーブンを熱硬化のために使用した。
【0108】
これにより、透明な高光沢クリアコート4.1〜4.5が得られ、これらは非常に良好な均展性を示し、かつ、応力亀裂および表面きず(例えば、くぼみなど)がなかった。耐ひっかき性をスチールウールひっかき試験によって調べ、クリアコート4.1〜4.5のBARTによる化学的安定性を調べた。
【0109】
BART(BASF酸耐性試験)を使用して、酸、アルカリおよび水滴に対するクリアコートの抵抗性を明らかにした。クリアコートを、40℃で30分間のベーキング処理の後、傾斜オーブンにおいて温度負荷にさらした。前もって、試験物質(10%および36%の濃度の硫酸;6%の濃度の亜硫酸、10%の濃度の塩酸、5%の濃度の水酸化ナトリウム溶液、DI(すなわち、完全に脱塩または脱イオン化された)水−1滴、2滴、3滴または4滴)を、メスピペットを使用して、規定された様式で加えた。これらの物質への暴露後、これらの物質を流水のもとで除き、損傷を、所定の尺度に従って24時間後に目視により評価した。
採点 外観
0 きずなし
1 軽微な跡
2 跡/曇り/非軟化
3 跡/曇り/色の変化/軟化
4 亀裂/鈍い(insipient)エッチング
5 クリアコートの除去
それぞれの個々の斑点(スポット)を評価し、その結果をそれぞれの試験物質についての採点の形態で表した。
【0110】
第4表は結果の概略を示す。結果から、クリアコート4.1〜4.5は化学薬品に対して安定であり、かつ、耐ひっかき性が大きいという事実が強調される。
【0111】
第4表:クリアコート4.1〜4.5の化学的安定性および耐ひっかき性
【0112】
【表4】

【0113】
実施例5
メタクリラート共重合体(A1)の縮合物の製造
攪拌機、還流冷却器、温度計および外部加熱を備えたガラス製の丸底フラスコに、1502.7重量部の実施例1からのメタクリラート共重合体(A1)と、2693.7重量部のイソプロパノールと、365.4重量部の0.1N酢酸とを仕込み、この最初の仕込み物を撹拌しながら70℃で3時間加熱した。続いて、1394.4重量部のSolventnaphtha(登録商標)を加え、その後、得られた反応混合物を70℃でさらに5分間撹拌した。その後、低沸点成分(特に水)を減圧下において70℃で留去して(3737.9重量部)、2218.3重量部の縮合物を得た。残留する水(0.2重量%)およびイソプロパノール(2.5重量%)の含有量をガスクロマトグラフィーによって決定した。縮合物は、4週間を超えて40℃で貯蔵したとき、安定であった。縮合物は、クリアコートを製造するために優れて好適であった。
【0114】
実施例6
二成分クリアコート材6.1および6.2の製造ならびにクリアコート6.1および6.2の製造
二成分クリアコート材6.1を、100重量部の実施例5の縮合物を20重量部のDecanol(登録商標)EX−252(Nagase Chemtex Corporation(大阪、日本)の製品)および1重量部の市販の均展剤(Byk(登録商標)301、これはByk Chemieから得られる)と混合することによって製造した。
【0115】
二成分クリアコート材6.2を、20重量部の代わりに、30重量部のDecanol(登録商標)EX−252を使用して製造した。
【0116】
9.7重量部の製造例1からの触媒を、得られた混合物(6.1および6.2)のそれぞれに加えた。得られた二成分クリアコート材6.1および6.2を、エレクトロコート、中塗りコートおよび黒色の水性の下塗りで(示された順序で)前もって被覆されているスチール製パネルに、重力送りカップ型ガンを使用して空気圧により塗布した。塗布されたクリアコート薄膜6.1および6.2の湿潤時の薄膜厚さは、硬化したクリアコート6.1および6.2が40μmの乾燥薄膜厚さを有するように選ばれた。塗布されたクリアコート薄膜6.1および6.2は、溶媒を室温で10分間蒸発させ、60℃で5分間乾燥し、140℃で22分間熱硬化させた。Heraeus社から得られる強制エアオーブンを熱硬化のために使用した。
【0117】
クリアコート6.1および6.2の耐ひっかき性をAMTEC洗車試験によって求めた。クリアコート6.1および6.2の化学的安定性を傾斜オーブン試験によって求めた。それらの結果を第5表に表す。結果はクリアコート6.1および6.2の耐ひっかき性および化学的安定性が大きいことを強調している。
【0118】
第5表:クリアコート6.1および6.2の耐ひっかき性および化学的安定性
【0119】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエポキシ基(a1)および少なくとも1つの加水分解可能なシラン基(a2)を含有する少なくとも1つのオリゴマーおよび/またはポリマー(A)を加水分解および/または縮合することによって製造することができる、エポキシ官能性およびシラン官能性のオリゴマーおよびポリマーの加水分解物および/または縮合物。
【請求項2】
オリゴマーおよび/またはポリマー(A)がゾル・ゲル法によって縮合可能である、請求項1に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項3】
オリゴマーおよび/またはポリマー(A)の加水分解によって、ならびに、オリゴマーおよび/またはポリマー(A)の加水分解および/または縮合によって製造することができる、請求項1または2に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項4】
少なくとも1種のナノ粒子の存在下で製造することができる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項5】
オリゴマーおよびポリマー(A)が、オレフィン性不飽和モノマーの共重合体からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項6】
オリゴマーおよびポリマー(A)が(メタ)アクリラート共重合体である、請求項5に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項7】
オリゴマーまたはポリマー(A)におけるエポキシ基(a1)対加水分解可能なシラン基(a2)のモル比が1.5:1〜1:1.5である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項8】
加水分解可能なシラン基(a2)が、下記の一般式II:
−SiR (II)
[式中、添え字および変数は下記のように定義される:
Rは一価の加水分解可能な原子または一価の加水分解可能な基である;
は一価の非加水分解性の基である;
mは1〜3の整数であり、かつ
nは0または1または2であり、
ただし、m+n=3である]を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項9】
一価の加水分解可能な原子Rが、水素、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択され、一価の加水分解可能な基Rが、ヒドロキシル基、アミノ基(−NH2)、および、下記の一般式IIIの基:
−X− (III)
[式中、変数は下記のように定義される:
Xは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボキシル基、チオカルボン酸S−エステル基、チオカルボン酸O−エステル基、またはアミノ基(−NH−または−NR−)であり、
は、置換および非置換で、分枝状および非分枝状で、環状および非環状のアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基、ならびに同様に、置換および非置換のアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの基を含む一価の有機基であるか、または、そのような群から選択される少なくとも1つの基からなる一価の有機基である]からなる群から選択される、請求項8に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項10】
オリゴマーおよびポリマー(A)が、少なくとも1つのエポキシ基(a1)を含有する少なくとも1つのモノマー(a1)を、少なくとも1つの加水分解可能なシラン基(a2)を含有する少なくとも1つのモノマー(a2)と共重合することによって製造することができる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項11】
モノマー(a1)およびモノマー(a2)が、(a1)および(a2)とは異なる少なくとも1つのさらなるモノマー(a3)と共重合可能である、請求項10に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項12】
モノマー(a1)、モノマー(a2)およびモノマー(a3)が少なくとも1つのオレフィン性不飽和基を含有する、請求項10または11に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項13】
オレフィン性不飽和基がメタクリラート基および/またはアクリラート基である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項14】
オリゴマーおよびポリマー(A)が、モノマー(a1)、モノマー(a2)およびモノマー(a3)のラジカル共重合によって製造することができる、請求項10〜13のいずれか一項に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項15】
モノマー(a1)対モノマー(a2)のモル比が1.5:1〜1:1.5である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の加水分解物および/または縮合物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の加水分解物および/または縮合物を製造するための方法であって、オリゴマーおよび/またはポリマー(A)を7未満のpHで加水分解および/または縮合することを含む方法。
【請求項17】
加水分解および/または縮合が有機酸の存在下で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
加水分解および/または縮合が−10℃〜+50℃で行われる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか一項に記載される加水分解物および/または縮合物、あるいは、請求項16〜18のいずれか一項に記載される方法によって製造される加水分解物および/または縮合物の、硬化可能な組成物としての使用、または、硬化可能な組成物を製造するための使用。
【請求項20】
カチオン的に安定化されたナノ粒子が、硬化可能な組成物を硬化させるための触媒として使用される、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
側方および/または末端のエポキシ基(a1)と、下記の一般式II:
−SiR (II)
(式中、添え字および変数は上記で定義された通りである)の側方および/または末端の加水分解可能なシラン基(a2)とを、1.5:1〜1:1.5、好ましくは1.3:1〜1:1.3、特に1.1:1〜1:1.1のモル比(a1):(a2)で含有する(メタ)アクリラート共重合体(A)。

【公表番号】特表2007−512402(P2007−512402A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540441(P2006−540441)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052920
【国際公開番号】WO2005/049734
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】