説明

エポキシ官能性ポリシロキサン、シリコーン組成物、および被覆された光ファイバ

エポキシ基と脂肪族不飽和を含まないヒドロカルビル基とを含有するエポキシ官能性ポリシロキサン、前記エポキシ官能性ポリシロキサンから選択されたポリシロキサンを含有するシリコーン組成物、シリコーン組成物を紫外線に曝露することによって調製された硬化されたポリシロキサン、硬化されたポリシロキサンを含む被覆された光ファイバ、および被覆された光ファイバを調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年4月12日に出願された米国特許仮出願第60/670364号の、合衆国法典第35巻(35U.S.C.)第119条(e)に基づく利益を主張する。米国特許仮出願第60/670364号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、エポキシ官能性ポリシロキサンに関し、より詳しくはエポキシ基と脂肪族不飽和を含まないヒドロカルビル基とを含有するエポキシ官能性ポリシロキサンに関する。本発明は、また、前記エポキシ官能性ポリシロキサンから選択されたポリシロキサンを含有するシリコーン組成物、シリコーン組成物を紫外線に曝露することによって調製された硬化されたポリシロキサン、硬化されたポリシロキサンを含む被覆された光ファイバ、および被覆された光ファイバを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
被覆された光ファイバは、少なくとも3つの構成要素:コア、コアの周りのクラッド、およびクラッド上の保護被覆を通常有する。コアおよびクラッドは両方とも、通常、シリカガラスでできているが、コアには、屈折率を上昇させ、その結果、コアからの光の損失を最小限にするために、通常、ゲルマニウムがドーピングされている。
【0004】
被覆された光ファイバは、また、少なくとも1つのブラッググレーティング、屈折率が周期的に変化しているファイバコアのセグメント、を含む。ブラッググレーティング(ファイバブラッググレーティング)を含む光ファイバは、遠隔通信、センサおよびセンサアレイを含むさまざまな用途において有用であることが分かっている。例えば、ファイバブラッググレーティングは、遠隔通信構成品およびデバイス(例えば、ポンプレーザの波長安定器、波長分割多重方式の狭帯域アッド/ドロップフィルタ、および利得平坦化フィルタなど)において広く使用されている。ファイバブラッググレーティングは、また、光ファイバセンサ、特に歪、圧力、および温度測定用のセンサにおいて広く使用されている。
【0005】
ファイバブラッググレーティングは、光ファイバコアを紫外線レーザビームに曝露することによって、通常作製され、曝露された領域におけるコアの屈折率の周期的な変化をもたらしている。しかし、ほとんどの保護被覆は、グレーティングを書き込むのに通常使用される波長(例えば、193nmおよび240nm)において紫外線を透過しないので、コアを紫外線に曝露する前に被覆を除去しなければならない。次いで、光ファイバを再び被覆してファイバの損傷を防止し、その機械的強度を維持しなければならない。これらの引き剥がしおよび被覆操作は問題があり、時間を費やし、費用が掛かる。例えば、一旦、保護被覆が引き剥がされると、ファイバは、湿気およびゴミによって引き起こされる、非可逆的な環境劣化を受ける。また、ファイバを再び被覆するために使用される材料は、クラッドのシリカ表面に良好に接着しなければならない。
【0006】
光ファイバの引き剥がしおよび再被覆に伴う問題を解決するためのさまざまな取り組みが報告されてきた。例えば、Starodubovの特許出願公開第2003/0152352A1号は、多層被覆を有する光ファイバ内に作製された屈折率グレーティング、および光ファイバ内のグレーティングなどの屈折率パターンを、元のファイバの機械的強度が維持されるように作製する方法を開示している。ファイバの外側の被覆を部分的に引き剥がし、被覆の残りの部分を通してファイバのコアを化学線に曝露し、ファイバの感光性コア内にパターンを形成することによって、このパターンを光ファイバ内に書き込み、次いで、引き剥がされた領域内のファイバを再び被覆することによって、新たに形成されたパターンを破損から守り、ファイバの機械特性を維持する。
【0007】
Andreらの米国特許出願公開第US 2004/0228594A1号は、少なくとも1つのブラッググレーティングを有する光ファイバを開示しており、このファイバは、クラッドおよび被覆によって連続的に取り囲まれたコアを含み、前記グレーティングは、前記グレーティングを書き込むために使用される紫外線タイプの放射を、実質的に透過する材料からできている被覆を通して、ファイバのコアおよび/またはクラッド内に直接書き込みされることによって得られ、前記被覆の材料は、第2のポリマーによって浸透された第1のポリマーネットワークを含む。
【0008】
Reekieらの米国特許第6240224B1号は、被覆、光ファイバ、少なくとも1つの導波路領域および屈折率グレーティングを含む、被覆された光ファイバを開示している。導波路領域は、少なくとも1つの感光性領域を含み、屈折率グレーティングは、紫外線を用いて被覆を通して書き込みを行うことによって形成され、被覆は、屈折率グレーティングが書き込まれる波長の紫外線を透過する。'224特許は、また、光開始剤は、しばしば紫外線感光性であるので、光開始剤を含有してはならないことを教示している。
【0009】
Chaoら(Electronics Letters, 1999年5月27日, Vol.35(11), 924〜926頁)は、244nmの波長逓倍Ar+イオンおよび248nmのKrFエキシマレーザを使用して、ファイバ被覆を通して書き込むことによって作製されるファイバブラッググレーティングを開示している。
【特許文献1】米国特許仮出願第60/670364号
【特許文献2】特許出願公開第2003/0152352A1号
【特許文献3】米国特許出願公開第US2004/0228594A1号
【特許文献4】米国特許第6240224B1号
【特許文献5】米国特許第3419593号
【特許文献6】欧州特許出願EP0562922
【非特許文献1】Chaoら、Electronics Letters, 1999年5月27日, Vol.35(11), 924〜926頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の参考試料は、ファイバブラッググレーティングのさまざまな製造方法を開示しているが、大規模生産に適した、速くて安いグレーティングの製造方法に対する、絶えざる要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、式:
R7R12SiO(R12SiO)m(R1R4SiO)n(R1R6SiO)pSiR12R7 (I)
(式中、R1はC1からC3のアルキルまたはフェニルであり;R4は-CH2-CHR2R3(ここで、R2は脂肪族不飽和を含まないC2からC10のヒドロカルビルであり、R3はR1またはHである)であり;R6は-CH2-CHR3R5(ここで、R5はエポキシ基である)であり;R7はR1、R4、またはR6であり;mは0.1から0.9であり;nは0.1から0.5であり;pは0.1から0.6であり;m+n+p=1である)を有するエポキシ官能性ポリシロキサンを対象とする。
【0012】
本発明は、また、式:
(R7R12SiO1/2)v(R12SiO2/2)w(R4SiO3/2)x(R6SiO3/2)y(SiO4/2)z (II)
(式中、R1はC1からC3のアルキルまたはフェニルであり;R4は-CH2-CHR2R3(ここで、R2は脂肪族不飽和を含まないC2からC10のヒドロカルビルであり、R3はR1またはHである)であり;R6は-CH2-CHR3R5(ここで、R5はエポキシ基である)であり;R7はR1、R4、またはR6であり;vは0から0.5であり;wは0.1から0.9であり;xは0.1から0.7であり;yは0.1から0.5であり;zは0から0.5であり;v+w+x+y+z=1である)を有するエポキシ官能性ポリシロキサンを対象とする。
【0013】
本発明は、また、上記のエポキシ官能性ポリシロキサンから選択されたポリシロキサンおよびカチオン光開始剤を含むシリコーン組成物を対象とする。
【0014】
本発明は、また、上記のシリコーン組成物を紫外線に曝露することによって作製された、硬化されたポリシロキサンを対象とする。
【0015】
本発明は、さらに、ガラスファイバコアおよびコアを取り囲むクラッド(ここで、クラッドはコアの屈折率を下回る屈折率を有する)を含む光ファイバと、
光ファイバを取り囲むシリコーン被覆(前記被覆は、光ファイバに本発明のシリコーン組成物を塗布してフィルムを形成し、このフィルムを紫外線に曝露することによって作製された硬化されたポリシロキサンを含む)と
を含む、被覆された光ファイバを対象とする。
【0016】
本発明は、さらに、本発明のシリコーン組成物を光ファイバ(前記光ファイバは、ガラスファイバコアおよび前記コアを取り囲むクラッドを含み、前記クラッドは、前記コアの屈折率を下回る屈折率を有する)に塗布してフィルムを形成することと、このフィルムを紫外線に曝露してシリコーン被覆を形成することとを含む、被覆された光ファイバを製造する方法を対象とする。
【0017】
本発明のエポキシ官能性ポリシロキサンは、電磁波スペクトルの紫外線領域における吸収が非常に小さく、保存安定性が良好である。さらに、ポリシロキサンは高度に反応性に富むエポキシ基を含有しており、急速に硬化されて、耐久性のある架橋されたポリシロキサンをもたらすことができる。
【0018】
本発明のシリコーン組成物は、紫外線の非存在下で良好な保存安定性を有する、1パート組成物として便利に配合することができる。さらに、この組成物は、スピンコーティング、インラインの光ファイバコーティング、印刷および吹き付けなどの従来の高速法によって、基板に塗布することができる。さらに、シリコーン組成物は、紫外線に曝露されると急速に硬化する。
【0019】
シリコーン組成物を紫外線に曝露することによって作製した硬化されたポリシロキサンは、高い透過性(60μmの厚さを有する自立フィルム(すなわち、基板なし)の場合は、248nmの波長において、通常少なくとも70%の透過率、または少なくとも80%の透過率、または少なくとも85%の透過率)を示す。さらに、硬化されたポリシロキサンは、さまざまな基板に対して下塗りなしで良好な接着性を示す。硬化されたポリシロキサンは、また、優れた耐久性、耐薬品性、および低温における可撓性を示す。
【0020】
本発明の被覆された光ファイバは、摩耗、有機溶媒、水蒸気、および酸素に対して良好な耐久性を示す。さらに、被覆された光ファイバは、良好な熱安定性および機械的強度を有する。
【0021】
本発明の被覆された光ファイバを調製する方法は、高処理量の製造工程に拡張することができる。また、この方法は、従来の光ファイバ製造技法(例えば、被覆および硬化)および装置を使用する。重要なことには、この方法は、さらに、ファイバのコアに少なくとも1つのブラッググレーティングを、シリコーン被覆を通して直接書き込むことを含むことができ、それによって、従来の引き剥がしおよび再被覆操作ならびにこれに伴う諸問題を解消する。
【0022】
本発明の被覆された光ファイバは、遠隔通信、センサ、およびセンサアレイを含むさまざまな用途において有用である。特に、少なくとも1つのブラッググレーティングを含む被覆された光ファイバは、遠隔通信構成品およびデバイス(狭帯域および広帯域チューナブルフィルタ、光ファイバモード変換器、スペクトル分析器、狭帯域レーザ、ポンプレーザの波長安定器、波長分割多重方式用のアド/ドロップフィルタ、および利得平坦化フィルタなど)、および光ファイバセンサ(特に歪、圧力、および温度測定用のセンサ)において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本明細書において使用される用語「脂肪族不飽和を含まないヒドロカルビル」は、ヒドロカルビル基が、脂肪族炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を含まないことを意味する。また、「エポキシ基」は、酸素原子が、炭素鎖または炭素環系の2つの隣接炭素原子に直接結合している、1価の有機基を云う。
【0024】
本発明による第1エポキシ官能性ポリシロキサンは、式:
R7R12SiO(R12SiO)m(R1R4SiO)n(R1R6SiO)pSiR12R7 (I)
(式中、R1はC1からC3のアルキルまたはフェニルであり;R4は-CH2-CHR2R3(ここで、R2は脂肪族不飽和を含まないC2からC10のヒドロカルビルであり、R3はR1またはHである)であり;R6は-CH2-CHR3R5(ここで、R5はエポキシ基である)であり;R7はR1、R4、またはR6であり;mは0.1から0.9であり;nは0.1から0.5であり;pは0.1から0.6であり;m+n+p=1である)を有する。
【0025】
第1エポキシ官能性ポリシロキサンは、式R12SiO2/2、R1R4SiO2/2、およびR1R6SiO2/2を有する繰り返し単位と、式R7R12SiO1/2を有する末端基とを含有するコポリマーである。繰り返し単位は、いかなる順序にでも配列されうる。例えば、繰り返し単位は、無秩序な、交互の、ブロックの、または統計の順序で配列されうる。さらに、エポキシ基は、末端、ペンダント、または末端およびペンダントの両方の場所に位置することができる。
【0026】
R1によって表されるアルキル基は、通常、1から3個の炭素原子を有し、メチル、エチル、プロピル、および1-メチルエチルによって例示される。
【0027】
R2によって表されるヒドロカルビル基は、脂肪族不飽和を含まず、通常、2から10個の炭素原子、または2から6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビル基は、分岐または非分岐構造を有することができる。R2によって表されるヒドロカルビル基の例には、これらに限らないが、アルキル(エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルなど);シクロアルキル(シクロペンチル、シクロヘキシル、およびメチルシクロヘキシルなど);アリール(フェニルおよびナフチルなど);アルカリル(トリルおよびキシリルなど);ならびにアラルキル(ベンジルおよびフェネチルなど)が含まれる。
【0028】
式-CH2-CHR2R3(式中、R2は脂肪族不飽和を含まないC2からC10のヒドロカルビルであり、R3はR1またはHである)を有するR4によって表される基の例には、これらに限らないが、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、2-メチルブチル、2-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、2-メチルヘプチル、2-メチルオクチル、2-メチルノニル、および2-メチルデシルが含まれる。
【0029】
R5によって表されるエポキシ基は、通常、2から10個の炭素原子を有する。エポキシ基の例には、これらに限らないが、次式:
【0030】
【化1】

【0031】
を有する基が含まれる。
【0032】
式-CH2-CHR3R5(式中、R3はR1またはHであり、R5はエポキシ基である)を有するR6によって表される基の例には、これらに限らないが、次式:
【0033】
【化2】

【0034】
を有する基が含まれる。
【0035】
第1エポキシ官能性ポリシロキサンの式(I)において、括弧の外の下付き文字m、n、およびpは、ポリシロキサン中の繰り返し(非末端)シロキサン単位の全モル数を基準としたモル分率を意味する。下付き文字mは、通常、0.1から0.9、または0.1から0.8、または0.1から0.5の値を有し;下付き文字nは、通常、0.1から0.5、または0.1から0.4、または0.1から0.3の値を有し;下付き文字pは、通常、0.1から0.6、または0.1から0.4、または0.1から0.2の値を有し;和はm+n+p=1である。
【0036】
第1エポキシ官能性ポリシロキサンは、通常、500から500000、または1000から250000、または5000から25000の数平均分子量(Mn)を有し、分子量は、屈折率検出器およびポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって求める。
【0037】
第1エポキシ官能性ポリシロキサンの例には、これらに限らないが、次式:
【0038】
【化3】

【0039】
を有するポリシロキサンが含まれ、式中、Meはメチルであり、-C8H17はオクチルであり、Rは、-C8H17または式:
【0040】
【化4】

【0041】
であり、括弧の外の下付き文字は、ポリシロキサン中の繰り返し(非末端)シロキサン単位の全モル数を基準としたモル分率を意味する。また、前記の式において、繰り返し単位の順序は指定されていない。
【0042】
第1エポキシ官能性ポリシロキサンは、(a)式R3R12SiO ( R12SiO ) m ( R1HSiO ) n ( R1HSiO ) pSiR12R3を有するオルガノ水素ポリシロキサンを、(b)式H2C=CR2R3を有するアルケン、および(c)式H2C=CR3R5を有するエポキシ官能性アルケンと、(d)ヒドロシリル化触媒、および場合により(e)有機溶媒の存在下で、反応させることによって調製することができ、式中、R1、R2、R3、R5、m、n、pおよび和m+n+pは、第1エポキシ官能性ポリシロキサンについて上で定義し、例示した通りである。
【0043】
オルガノ水素ポリシロキサン(a)は、式R3R12SiO ( R12SiO ) m ( R1HSiO ) n ( R1HSiO ) pSiR12R3を有し、式中、R1、R3、m、n、p、および和m+n+pは、第1エポキシ官能性ポリシロキサンについて上で定義し、例示した通りである。
【0044】
オルガノ水素ポリシロキサン(a)は、通常、150から300000、または1500から100000、または3000から30000の数平均分子量を有し、分子量は、屈折率検出器およびポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって求める。
【0045】
オルガノ水素ポリシロキサン(a)として使用するのに適したオルガノ水素ポリシロキサンの例には、これらに限らないが、トリメチルシロキシ末端処理されたポリ[ジメチルシロキサン-コ-(メチル水素シロキサン)]、水素ジメチルシロキシ末端処理されたポリ[ジメチルシロキサン-コ-(メチル水素シロキサン)]、トリエチルシロキシ末端処理されたポリ[ジメチルシロキサン-コ-(メチル水素シロキサン)]、水素ジエチルシロキシ末端処理されたポリ[ジメチルシロキサン-コ-(メチル水素シロキサン)]、トリメチルシロキシ末端処理されたポリ[ジエチルシロキサン-コ-(エチル水素シロキサン)]、水素ジメチルシロキシ末端処理されたポリ[ジエチルシロキサン-コ-(エチル水素シロキサン)]、トリエチルシロキシ末端処理されたポリ[ジエチルシロキサン-コ-(エチル水素シロキサン)]、水素ジエチルシロキシ末端処理されたポリ[ジエチルシロキサン-コ-(エチル水素シロキサン)]、トリメチルシロキシ末端処理されたポリ[ジメチルシロキサン-コ-(フェニル水素シロキサン)]、水素ジメチルシロキシ末端処理されたポリ[ジメチルシロキサン-コ-(フェニル水素シロキサン)]、トリエチルシロキシ末端処理されたポリ[ジメチルシロキサン-コ-(フェニル水素シロキサン)]、および水素ジエチルシロキシ末端処理されたポリ[ジメチルシロキサン-コ-(フェニル水素シロキサン)]が含まれる。
【0046】
線状オルガノ水素ポリシロキサンの調製法(オルガノハロシランの加水分解および縮合またはシクロシランの平衡など)は、当技術分野において公知である。
【0047】
アルケン(b)は、式H2C=CR2R3を有する少なくとも1つのアルケンであり、式中、R2およびR3は、第1エポキシ官能性ポリシロキサンについて上で定義し、例示した通りである。
【0048】
アルケン(b)として使用するのに適したアルケンの例には、これらに限らないが、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、2-メチル1-ブテン、2-メチル1-ペンテン、2-メチル1-ヘキセン、2-メチル1-ヘプテン、2-メチル1-オクテン、2-メチル1-ノネン、および2-メチル1-デセン含まれる。
【0049】
アルケン(b)は、それぞれ式H2C=CR2R3を有する、単独アルケンまたは2つ以上の異なるアルケンを含有する混合物であることができ、式中、R2およびR3は、第1エポキシ官能性ポリシロキサンについて上で定義し、例示した通りである。末端アルケンを調製する方法は、当技術分野において公知であり、これらの化合物の多くは、商業的に入手可能である。
【0050】
エポキシ官能性アルケン(c)は、式H2C=CR3R5を有する少なくとも1つのアルケンであり、式中、R3およびR5は、第1エポキシ官能性ポリシロキサンについて上で定義し、例示した通りである。
【0051】
エポキシ官能性アルケン(c)として使用するのに適したアルケンの例には、これらに限らないが、次式:
【0052】
【化5】

【0053】
を有するアルケンが含まれる。
【0054】
エポキシ官能性アルケン(c)は、それぞれ式H2C=CR3R5を有する、単独アルケンまたは2つ以上の異なるアルケンを含有する混合物であることができ、式中、R3およびR5は、第1エポキシ官能性ポリシロキサンについて上で定義し、例示した通りである。エポキシ官能性アルケンを調製する方法は、当技術分野において公知である。
【0055】
ヒドロシリル化触媒(d)は、白金族金属(すなわち、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウムおよびイリジウム)または白金族金属を含有する化合物を含む、公知の任意のヒドロシリル化触媒でありうる。好ましくは、白金族金属は、ヒドロシリル化反応における高い活性に基づいて、白金である。
【0056】
ヒドロシリル化触媒には、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3419593号においてWillingによって開示されている、塩化白金酸とある種のビニル含有オルガノシロキサンとの錯体が含まれる。この種の触媒は、塩化白金酸と1,3-ジエチル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとの反応生成物である。
【0057】
ヒドロシリル化触媒は、その表面上に白金族金属を有する固体担体を備えたヒドロシリル化担持触媒でありうる。担持触媒は、例えば、反応混合物を濾過することによって、オルガノ水素ポリシロキサン樹脂生成物から都合良く分離することができる。担持触媒の例には、これらに限らないが、炭素上の白金、炭素上のパラジウム、炭素上のルテニウム、炭素上のロジウム、シリカ上の白金、シリカ上のパラジウム、アルミナ上の白金、アルミナ上のパラジウム、およびアルミナ上のルテニウムがある。
【0058】
有機溶媒(e)は、少なくとも1種の有機溶媒である。この有機溶媒は、オルガノ水素ポリシロキサン(a)、アルケン(b)、エポキシ官能性アルケン(c)、またはエポキシ官能性ポリシロキサン生成物と、本方法の条件下において反応しない、任意の非プロトン性または両性非プロトン性有機溶媒であることができ、成分(a)、(b)、(c)およびエポキシ官能性ポリシロキサンと混和する。
【0059】
有機溶媒の例には、これらに限らないが、飽和脂肪族炭化水素(n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタンおよびドデカンなど);シクロ脂肪族炭化水素(シクロペンタンおよびシクロヘキサンなど);芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレンおよびメシチレンなど);環状エーテル(テトラヒドロフラン(TFH)およびジオキサンなど);ケトン(メチルイソブチルケトン(MIBK)など);ハロゲン化アルカン(トリクロロエタンなど);ならびにハロゲン化芳香族炭化水素(ブロモベンゼンおよびクロロベンゼンなど)が含まれる。有機溶媒(e)は、それぞれが上記の通りである、単独の有機溶媒または2種類以上の異なった有機溶媒を含む混合物でありうる。
【0060】
反応は、ヒドロシリル化反応に適した、任意の標準反応器において実施することができる。適切な反応器には、ガラス反応器およびテフロン(登録商標)をライニングしたガラス反応器が含まれる。好ましくは、この反応器には、スターラなどの撹拌手段が装備されている。好ましくは、また、この反応は、湿気の存在していない、不活性雰囲気(窒素またはアルゴンなど)において実行される。
【0061】
オルガノ水素ポリシロキサン(a)、アルケン(b)、エポキシ官能性アルケン(c)、ヒドロシリル化触媒(d)、および有機溶媒(e)は、任意の順序で混合することができる。通常、アルケン(b)およびエポキシ官能性アルケン(c)を、ヒドロシリル化触媒(d)を導入する前に、オルガノ水素ポリシロキサン(a)、および場合により有機溶媒(e)に、同時にまたは任意の順序で添加する。
【0062】
反応は、通常、室温(から23℃)から110℃、または60から90℃の温度で実施される。温度が室温を下回る場合、反応速度は通常非常に遅い。
【0063】
反応時間は、オルガノ水素ポリシロキサン(a)、アルケン(b)、およびエポキシ官能性アルケン(c)の構造、ならびに温度などのいくつかの要因に依存する。例えば、反応時間は、室温から100℃の温度においては、通常1から10時間である。最適反応時間は、以下の実施例の項目において明記されている方法を用いて、所定の実験により求めることができる。
【0064】
アルケン(b)の、オルガノ水素ポリシロキサン(a)におけるケイ素と結合している水素原子に対するモル比は、通常、0.1から0.9、または0.4から0.8である。エポキシ官能性アルケン(c)の、オルガノ水素ポリシロキサン(a)におけるケイ素と結合している水素原子に対するモル比は、通常、0.1から0.9、または0.2から0.6である。また、アルケン(b)およびエポキシ官能性アルケン(c)のモル数の和の、オルガノ水素ポリシロキサン(a)におけるケイ素と結合している水素原子のモル数に対する割合は、通常、1から2、または1から1.5、または1から1.2である。
【0065】
ヒドロシリル化触媒(d)の濃度は、オルガノ水素ポリシロキサン(a)と、アルケン(b)およびエポキシ官能性アルケン(c)との付加反応を触媒するのに十分な量である。通常、ヒドロシリル化触媒(d)の濃度は、オルガノ水素ポリシロキサン(a)、アルケン(b)およびエポキシ官能性アルケン(c)を一緒にした重量を基準として、白金族金属を0.1から1000ppm、または白金族金属を1から500ppm、または白金族金属を5から150ppmもたらすのに十分な量である。白金族金属が0.1ppmを下回ると、反応速度は非常に遅い。1000ppmを上回る白金族金属を使用しても、反応速度は目に見えて上昇することはなく、したがって経済的でない。
【0066】
有機溶媒(e)の濃度は、反応混合物の全重量を基準として、通常、0から50重量%、または10から30重量%である。
【0067】
第1エポキシ官能性ポリシロキサンは、下記のシリコーン組成物中で単離または精製することなしに使用することができるか、またはポリシロキサンを従来の蒸発法によってほとんどの溶媒から分離することができる。例えば、反応混合物を減圧下で加熱することができる。さらに、エポキシ官能性ポリシロキサンを調製するために使用するヒドロシリル化触媒が、上記の担持触媒である場合は、ポリシロキサンは、反応混合物を濾過することによって、ヒドロシリル化触媒から容易に分離することができる。
【0068】
本発明による第2エポキシ官能性ポリシロキサンは、式:
(R7R12SiO1/2)v(R12SiO2/2)w(R4SiO3/2)x(R6SiO3/2)y(SiO4/2)z (II)
(式中、R1はC1からC3のアルキルまたはフェニルであり;R4は-CH2-CHR2R3(ここで、R2は脂肪族不飽和を含まないC2からC10のヒドロカルビルであり、R3はR1またはHである)であり;R6は-CH2-CHR3R5(ここで、R5はエポキシ基である)であり;R7はR1、R4、またはR6であり;vは0から0.5であり;wは0.1から0.9であり;xは0.1から0.7であり;yは0.1から0.5であり;zは0から0.5であり;v+w+x+y+z=1である)を有する。
【0069】
第2エポキシ官能性ポリシロキサンの式(II)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、第1エポキシ官能性ポリシロキサンについて上で定義し、例示した通りである。また、括弧の外側の下付け文字v、w、x、y、およびzは、モル分率を意味し、ポリシロキサンにおけるシロキサン単位の全モル数を基準にしている。下付け文字vは、0から0.5、または0.1から0.3、または0.2から0.3の値を通常有し;下付け文字wは、0.1から0.9、または0.2から0.5、または0.2から0.3の値を通常有し;下付け文字xは、0.1から0.7、または0.1から0.5、または0.2から0.4の値を通常有し;下付け文字yは、0.1から0.5、または0.1から0.4、または0.2から0.3の値を通常有し;下付け文字zは、0から0.5、または0.1から0.3、または0.2から0.3の値を通常有し;和はv+w+x+y+z=1である。
【0070】
第2エポキシ官能性ポリシロキサンは、通常、200から50000、または1000から25000、または5000から10000の数平均分子量(Mn)を有し、分子量は、屈折率検出器およびポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる。
【0071】
第2エポキシ官能性ポリシロキサンは、R4SiO3/2単位(すなわち、T単位)、R6SiO3/2単位(すなわち、T単位)、およびR12SiO2/2単位(すなわち、D単位)を含有しており、式中、R1およびR4は上で記述し、例示した通りである。これらの単位に加えて、ポリシロキサンは、また、SiO4/2単位(すなわち、Q単位)および/またはR7R12SiO1/2単位(すなわち、M単位)を含有することができ、式中R1およびR7は上で記述し、例示した通りである。例えば、シリコーン樹脂は、TD樹脂、TDM樹脂、TDQ樹脂、またはTDMQ樹脂でありうる。
【0072】
第2エポキシ官能性ポリシロキサンには、これらに限らないが、次式:
( Me3SiO1/2 ) 0.2 ( Me2SiO2/2 ) 0.1 ( C8H17SiO3/2 ) 0.3 ( R'SiO3/2 ) 0.3 ( SiO4/2 ) 0.1および( MePh2SiO1/2 ) 0.2 ( Me2SiO2/2 ) 0.1 ( C8H17SiO3/2 ) 0.3 ( R'SiO3/2 ) 0.3 ( SiO4/2 ) 0.1を有するポリシロキサンが含まれ、式中、Meはメチル、Phはフェニル、C8H17はオクチル、R'は、
【0073】
【化6】

【0074】
であり、括弧の外の数字の下付け文字はモル分率を意味し、ポリシロキサンにおけるシロキサン単位の全モル数を基準としている。また、前述の式において、単位の順序は指定されていない。
【0075】
第2エポキシ官能性ポリシロキサンは、(a')式( R3R12SiO1/2 ) v ( R12SiO2/2 ) w ( HSiO3/2 ) x ( HSiO3/2 ) y ( SiO4/2 ) zを有するオルガノ水素ポリシロキサンを、(b)式H2C=CR2R3を有するアルケン、および(c)式H2C=CR3R5を有するエポキシ官能性アルケンと、(d)ヒドロシリル化触媒、および場合により(e)有機溶媒の存在下で、反応させることによって調製することができ、式中、R1、R2、R3、R5、v、w、x、y、zおよび和v+w+x+y+zは、第2エポキシ官能性ポリシロキサンについて上で定義し、例示した通りである。
【0076】
オルガノ水素ポリシロキサン(a')は、式( R3R12SiO1/2 ) v ( R12SiO2/2 ) w ( HSiO3/2 ) x ( HSiO3/2 ) y ( SiO4/2 ) zを有し、式中、R1、R3、v、w、x、y、z、および和v+w+x+y+zは、第2エポキシ官能性ポリシロキサンについて上で定義し、例示した通りである。
【0077】
オルガノ水素ポリシロキサン(a')は、通常、100から25000、または500から10000、または1000から5000の数平均分子量(Mn)を有し、分子量は、屈折率検出器およびポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる。
【0078】
オルガノ水素ポリシロキサン(a')として使用するのに適したオルガノ水素ポリシロキサンの例には、これらに限らないが、次式:
( Me3SiO1/2 ) 0.25 ( Me2SiO2/2 ) 0.1 ( HSiO3/2 ) 0.5 ( SiO4/2 ) 0.15および( Me2PhSiO1/2 ) 0.25 ( MePhSiO2/2 ) 0.25 ( HSiO3/2 ) 0.5を有するポリシロキサンが含まれ、式中、Meはメチル、Phはフェニルであり、括弧の外の数字の下付け文字はモル分率を意味し、ポリシロキサンにおけるシロキサン単位の全モル数を基準としている。また、前述の式において、単位の順序は指定されていない。
【0079】
オルガノ水素ポリシロキサン樹脂の調製法は、当技術分野において公知である。例えば、オルガノ水素ポリシロキサン(a')は、式R3R12SiCl、R12SiCl2、HSiCl3およびSiCl4を有するクロロシランの混合物を、トルエンなどの有機溶媒中で共加水分解することによって調製することができ、式中、R1およびR3は上で定義し、例示した通りである。水溶性塩酸およびシリコーン加水分解産物は分離され、加水分解産物は、残留している酸を除去するために水洗され、中程度の縮合触媒の存在下で加熱され、樹脂の粘度を必要とされる「粘度に高める(body)」。所望する場合は、樹脂は、有機溶媒中で縮合触媒によってさらに処理され、ケイ素と結合したヒドロキシ基の含有量を低減させることができる。あるいは、塩素以外の加水分解可能な基、例えば、-Br、-OR8、-OCH2CH2OR8、CH3C(=O)O-、Et(Me)C=N-O-、CH3C(=O)N(CH3)-、および-ONH2(式中、R8はC1からC8のヒドロカルビルまたはC1からC8のハロゲン置換カルビルである)を含有するシランを、共加水分解反応における出発原料として利用することができる。樹脂生成物の特性は、シランの種類、シランのモル比、縮合の程度、および処理条件に依存する。
【0080】
R8によって表されるヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基は、通常、1から8個の炭素原子、または3から6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を含有する非環式ヒドロカルビルおよびハロゲン置換ヒドロカルビル基は、分岐または非分岐構造を有する。R8によって表されるヒドロカルビル基の例には、これらに限らないが、非分岐および分岐アルキル(メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルなど);シクロアルキル(シクロペンチル、シクロヘキシル、およびメチルシクロヘキシルなど);フェニル;アルカリル(トリルおよびキシリルなど);アラルキル(ベンジルおよびフェネチルなど);アルケニル(ビニル、アリル、およびプロペニルなど);アリールアルケニル(スチリルなど);ならびにアルキニル(エチニルおよびプロピニルなど)が含まれる。R8によって表されるハロゲン置換ヒドロカルビル基の例には、これらに限らないが、3,3,3-トリフルオロプロピル、3-クロロプロピル、クロロフェニル、およびジクロロフェニルが含まれる。
【0081】
アルケン(b)、エポキシ官能性アルケン(c)、ヒドロシリル化触媒(d)、および有機溶媒(e)は、第1エポキシ官能性ポリシロキサンを調製する方法において記述し、例示した通りである。
【0082】
第2エポキシ官能性ポリシロキサンを調製するための反応は、第1エポキシ官能性ポリシロキサンを調製するために上に記述したやり方で実行することができ、アルケン(b)の、オルガノ水素ポリシロキサン(a')におけるケイ素と結合した水素原子に対するモル比は、通常、0.1から0.9、または0.4から0.8であり;エポキシ官能性アルケン(c)の、オルガノ水素ポリシロキサン(a')におけるケイ素と結合した水素原子に対するモル比は、通常、0.1から0.9、または0.2から0.6である。また、アルケン(b)およびエポキシ官能性アルケン(c)のモル数の和の、オルガノ水素ポリシロキサン(a')におけるケイ素と結合した水素原子に対するモル比は、通常、1から2、または1から1.5、または1から1.2である。さらに、第2エポキシ官能性ポリシロキサンを、第1エポキシ官能性ポリシロキサンについて上で記述したように、反応混合物から回収することができる。
【0083】
本発明によるシリコーン組成物は、
(A)(i)式R7R12SiO ( R12SiO ) m ( R1R4SiO ) n ( R1R6SiO ) pSiR12R7 (I)を有する、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリシロキサン、(ii)式( R7R12SiO1/2 ) v ( R12SiO2/2 ) w ( R4SiO3/2 ) x ( R6SiO3/2 ) y ( SiO4/2 ) z (II)を有する、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリシロキサン、および(iii) (i)および(ii)を含む混合物(式中、R1はC1からC3のアルキルまたはフェニルであり;R4は-CH2-CHR2R3(ここで、R2は脂肪族不飽和を含まないC2からC10のヒドロカルビルであり、R3はR1またはHである)であり;R6は-CH2-CHR3R5(ここで、R5はエポキシ基である)であり;R7はR1、R4、またはR6であり;mは0.1から0.9であり;nは0.1から0.5であり;pは0.1から0.6であり;m+n+p=1であり;vは0から0.5であり;wは0.1から0.9であり;xは0.1から0.7であり;yは0.1から0.5であり、zは0から0.5であり、v+w+x+y+z=1である)から選択されたポリシロキサン、ならびに
(B)カチオン光開始剤
を含む。
【0084】
成分(A)(i)および(A)(ii)は、それぞれ、上で記述し、例示した第1エポキシ官能性ポリシロキサンおよび第2エポキシ官能性ポリシロキサンである。
【0085】
成分(B)は、少なくとも1つのカチオン光開始剤である。光開始剤の例には、これらに限らないが、オニウム塩、スルホン酸のジアリールヨードニウム塩、スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ボロン酸のジアリールヨードニウム塩、およびボロン酸のトリアリールスルホニウム塩が含まれる。
【0086】
適切なオニウム塩には、R92I+MXz-、R93S+MXz-、R93Se+MXz-、R94P+MXz-、およびR94N+MXz-から選択された式を有する塩が含まれ、式中、それぞれのR9は、1から30個の炭素原子を有する、独立したヒドロカルビルまたは置換されたヒドロカルビルであり;Mは、遷移金属、希土類金属、ランタニド金属、メタロイド、リン、および硫黄から選択された元素であり;Xは、ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、ヨード)であり、zは、(X上の電荷+Mの酸化数)=-1となるような値を有する。ヒドロカルビル基の置換基の例には、これらに限らないが、C1からC8のアルコキシ、C1からC16のアルキル、ニトロ、クロロ、ブロモ、シアノ、カルボキシル、メルカプト、および複素環式芳香族基(ピリジル、チオフェニル、およびピラニルなど)が含まれる。Mによって表される金属の例には、これらに限らないが、遷移金属(Fe、Ti、Zr、Sc、V、Cr、およびMnなど);ランタニド金属(Pr、およびNdなど);その他の金属(Cs、Sb、Sn、Bi、Al、Ga、およびMnなど);メタロイド(B、およびAsなど);およびPが含まれる。式MXz-は、非塩基、非求核アニオンを表す。式MXz-を有するアニオンの例には、これらに限らないが、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6=、SbCl6-およびSnCl6-が含まれる。
【0087】
オニウム塩の例には、これらに限らないが、ビス-ジアリールヨードニウム塩(ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアーセネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、およびジアルキルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなど)が含まれる。
【0088】
スルホン酸のジアリールヨードニウム塩の例には、これらに限らないが、ペルフルオロアルキルスルホン酸のジアリールヨードニウム塩(ペルフルオロブタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ペルフルオロエタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、およびトリフルオロメタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩など);ならびにアリールスルホン酸のジアリールヨードニウム塩(パラ-トルエンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、および3-ニトロベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩など)が含まれる。
【0089】
スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩の例には、これらに限らないが、ペルフルオロアルキルスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩(ペルフルオロブタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ペルフルオロエタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、およびペルフルオロメタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩など);ならびにアリールスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩(パラ-トルエンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、および3-ニトロベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩など)が含まれる。
【0090】
ボロン酸のジアリールヨードニウムの例には、これに限らないが、ペルハロアリールボロン酸のジアリールヨードニウムが含まれる。ボロン酸のトリアリールスルホニウム塩の例には、これに限らないが、ペルハロアリールボロン酸のトリアリールスルホニウム塩が含まれる。ボロン酸のジアリールヨードニウム塩およびボロン酸のトリアリールスルホニウム塩は、欧州特許出願EP0562922において例示されているように、当技術分野においては公知である。
【0091】
成分(B)は、それぞれ上で定義した通りの、単独カチオン光開始剤または2種類以上の異なったカチオン光開始剤を含む混合物でありうる。成分(B)の濃度は、シリコーン組成物の全重量を基準にして、通常、0.01から5重量%、または0.1から2重量%である。
【0092】
シリコーン組成物は、追加の成分が、硬化された製品の物理的特性、特に弾性率、引張り強さ、および接着に悪影響を及ぼさないならば、追加の成分を含有することができる。追加の成分の例には、これらに限らないが、光安定剤;増感剤;酸化防止剤;フィラー(補強フィラー、伸展剤フィラー、および導電性フィラーなど);接着促進剤;および蛍光染料が含まれる。
【0093】
シリコーン組成物は、成分(A)および成分(B)を単独の構成要素中に含む1パート組成物であるか、または、別法として、成分(A)および成分(B)を2つ以上の部分の中に含むマルチパート組成物でありうる。
【0094】
本発明のシリコーン組成物は、成分(A)、(B)および場合により添加する任意の成分を、環境温度において指定された分量で混合することによって調製することができる。混合は、粉砕、ブレンド、および撹拌などの当技術分野において知られた任意の技法によって、バッチ工程または連続工程において遂行することができる。成分の粘度およびシリコーン組成物の粘度によって、特定の装置が決まる。
【0095】
本発明による硬化されたポリシロキサンは、上記のシリコーン組成物を紫外線に曝露することによって調製することができる。紫外線は、通常、200から800nm、または200から600nm、または250から400nmの波長を有する。さらに、放射の線量は、通常、50から1000mJ/cm2、または50から500mJ/cm2である。紫外線は、中圧水銀アークランプを用いて発生させることができる。
【0096】
本発明による被覆された光ファイバは:
ガラスファイバコアおよび前記コアを取り囲むクラッド(ここで、前記クラッドは、前記コアの屈折率を下回る屈折率を有する)を含む光ファイバと、前記光ファイバを取り囲むシリコーン被覆(ここで、前記被覆は、本発明のシリコーン組成物を前記光ファイバに塗布してフィルムを形成し、このフィルムを紫外線に曝露することによって調製した、硬化されたポリシロキサンを含む)とを備えている。
【0097】
被覆された光ファイバの光ファイバは、ガラスファイバコアおよびコアを取り囲むクラッドを備えており、前記クラッドは、前記コアの屈折率を下回る屈折率を有する。コアおよびクラッドは両方とも、通常、シリカガラスでできているが、コアには、屈折率を上昇させ、その結果、コアからの光の損失を最小限にするために、通常、ゲルマニウムがドーピングされている。コアは、589nmの波長を有する光の場合、20℃において少なくとも1.46の屈折率を通常有する。ガラスファイバコアおよびクラッドの屈折率の差は、コアのドーパントの種類と濃度水準に依存するが、通常、少なくとも0.2である。
【0098】
光ファイバは、多重モード光ファイバであるか、または単モード光ファイバでありうる。多重モードファイバは、通常、より大きなコアを有し、したがって、多重光波経路を支援する。多重モードファイバは、通常、50μmまたは62.5μmのコア径および125μmのクラッドの厚さを有する。加えて、多重モードファイバは、通常、2km未満の長さを有する。単モードファイバは、多重モードファイバより小さなコア、例えば、50μmまたは62.5μmに対して7.1μmまたは8.3μm、を有する。また、単モード光ファイバは、通常、125μmのクラッドの厚さおよび2kmを超える長さを有する。
【0099】
光ファイバを製造する方法(プリフォームガラスシリンダを製造し、このプリフォームを所望の寸法を有する光ファイバに引き伸ばすことなど)は、当技術分野において公知である。さまざまな寸法、ドーパントおよびドーパントの濃度水準を有する光ファイバは、市販されている。
【0100】
光ファイバを取り囲んでいるシリコーン被覆は、本発明のシリコーン組成物を光ファイバに塗布してフィルムを形成し、このフィルムを紫外線に曝露することによって調製した、硬化されたポリシロキサンを含む。シリコーン組成物は、被覆された光ファイバを調製する方法において、下で記述する通りに調製される。シリコーン被覆は、通常、50から150μm、または60から100μmの厚さを有する。
【0101】
被覆された光ファイバは、少なくとも1つのブラッググレーティングを、さらに備えることができる。このブラッググレーティングは、周期的に変化する屈折率を有するファイバコアのセグメントである。このブラッググレーティングは、通常、0.5から5cm、または1から3cmの長さを有する。
【0102】
本発明による被覆された光ファイバを調製する方法は、ガラスファイバコアおよびコアを取り囲むクラッドを備え、前記クラッドが前記コアの屈折率を下回る屈折率を有する光ファイバに、本発明のシリコーン組成物を塗布してフィルムを形成する段階と、前記フィルムを紫外線に曝露してシリコーン被覆を形成する段階とを含む。
【0103】
本方法の第1段階においては、シリコーン組成物を光ファイバ上に塗布してフィルムを形成する。シリコーン組成物および光ファイバの両方とも、上で定義し、例示した通りである。シリコーン組成物は、従来の被覆技法(刷毛塗り、吹き付け、およびディッピングなど)を用いて、光ファイバ上に塗布することができる。光ファイバは、通常、連続工程においてガラスプリフォームから引き伸ばした後で、被覆することができる。塗布条件、例えば時間と温度は、この方法の第2段階において所望の厚さを有するシリコーン被覆をもたらすフィルムを形成するように、調節することができる。
【0104】
この方法の第2段階において、光ファイバ上のフィルムを紫外線に曝露してシリコーン被覆を形成させる。シリコーン被覆は上で述べた通りである。紫外線は、通常、200から800nm、または200から600nm、または250から400nmの波長を有する。また、放射の線量は、通常、50から1000mJ/cm2、または50から500mJ/cm2である。紫外線は、中圧水銀アークランプを用いて、発生させることができる。
【0105】
この方法は、さらに、ガラスファイバコア中に少なくとも1つのブラッググレーティングを書き込む段階を含む。グレーティングは、被覆された光ファイバの領域を、干渉計または位相マスクを用いて作りだした紫外線レーザ光の周期的なパターンに曝露することによって書き込まれ、曝露された領域においてファイバコアに沿って屈折率の周期的な変化をもたらす。紫外線レーザ光は、通常、157から350nm、または180から300nm、または200から250nmの波長を有する。特に、248nmの波長は、ガラスファイバコア中にブラッググレーティングを書き込むのに有用である。上記の範囲における紫外線レーザ光の特定の波長は、シリコーン被覆がその波長の光に対して透過性であるように、通常選択する。本明細書において使用される用語「透過性」は、シリコーン被覆が、通常、選択された波長において少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも85%のパーセント透過率を有することを意味する。
【0106】
紫外線は、レーザ(エキシマレーザ、周波数2倍アルゴンレーザ、周波数2倍染料レーザ、周波数4倍高出力レーザ、窒素レーザ、アルゴンイオンレーザ、クリプトンイオンレーザ、または銅蒸気レーザなど)を用いて発生させることができる。
【0107】
本発明のエポキシ官能性ポリシロキサンは、電磁波スペクトルの紫外線領域における吸収が非常に小さく、保存安定性が良好である。さらに、ポリシロキサンは高度に反応性に富むエポキシ基を含有しており、急速に硬化されて、二重に架橋されたポリシロキサンをもたらすことができる。
【0108】
本発明のシリコーン組成物は、紫外線非存在下で良好な保存安定性を有する、1パート組成物として便利に配合することができる。さらに、この組成物は、スピンコーティング、インラインの光ファイバコーティング、印刷および吹き付けなどの従来の高速法によって、基板に塗布することができる。さらに、シリコーン組成物は、紫外線に曝露されると急速に硬化する。
【0109】
シリコーン組成物を紫外線に曝露することによって作製した硬化されたポリシロキサンは、高い透過性(60μmの厚さを有する自立フィルム(すなわち、基板なし)の場合は、248nmの波長において、通常少なくとも70%の透過率、または少なくとも80%の透過率、または少なくとも85%の透過率)を示す。さらに、硬化されたポリシロキサンは、さまざまな基板に対して下塗りなしで良好な接着性を示す。硬化されたポリシロキサンは、また、優秀な耐久性、耐薬品性、および低温における可撓性を示す。
【0110】
本発明の被覆された光ファイバは、摩耗、有機溶媒、水蒸気、および酸素に対して良好な耐久性を示す。さらに、被覆された光ファイバは、良好な熱安定性および機械的強度を示す。
【0111】
本発明の被覆された光ファイバを調製する方法は、高処理量の製造工程に拡張することができる。また、この方法は、従来の光ファイバ製造技法(例えば、被覆および硬化)および装置を使用する。重要なことには、この方法は、さらに、ファイバのコア中に少なくとも1つのブラッググレーティングを、シリコーン被覆を通して直接書き込む段階を含むことができ、それによって、従来の引き剥がしおよび再被覆操作ならびにこれに伴う諸問題を解消する。
【0112】
本発明の被覆された光ファイバは、遠隔通信、センサ、およびセンサアレイを含むさまざまな用途において有用である。特に、少なくとも1つのブラッググレーティングを含む被覆された光ファイバは、遠隔通信構成品およびデバイス(狭帯域および広帯域チューナブルフィルタ、光ファイバモード変換器、スペクトル分析器、狭帯域レーザ、ポンプレーザの波長安定器、波長分割多重方式用のアド/ドロップフィルタ、および利得平坦化フィルタなど)と、光ファイバセンサ(特に歪、圧力、および温度測定用のセンサ)とにおいて有用である。
【0113】
(実施例)
以下の実施例は、本発明のエポキシ官能性ポリシロキサン、シリコーン組成物、および硬化されたポリシロキサンをより良く説明するために提示されるものであり、添付の特許請求の範囲において詳しく説明されている本発明を、限定するものであると考えるべきではない。特段の記載がない限り、実施例において報告されるすべての部および百分率は、重量による。以下の方法および材料を、実施例において使用する:
【0114】
赤外スペクトル
エポキシ官能性ポリシロキサンの赤外スペクトルを、パーキンエルマーインストルメンツ1600FT-IR分光計で記録した。ポリシロキサンを含有する反応混合物の液滴を、KBrの窓に塗布して、薄膜を形成した。
【0115】
NMRスペクトル
重水素化クロロホルム(CDCl3)中のエポキシ官能性ポリシロキサンの核磁気共鳴スペクトル(29Si NMR)を、バリアンマーキュリー400MHz NMR分光計を用いて求めた。実施例において報告されたケミカルシフト値(δ)は、百万分の1(ppm)の単位で、内部標準(テトラメチルシラン)と比較して測定した。
【0116】
紫外線光源
シリコーンフィルムの照射は、10-インチモデルBT9無電極Hバルブを装着した、フュージョンモデルF450硬化システムを用いて実行した。
【0117】
屈折率
シリコンウエハ上の硬化されたポリシロキサンフィルムの屈折率を、ライヘルト(Reichert)モデル10494アッベマークIIプラス屈折計を用いて求めた。屈折率を、589nmの波長を有する光について20℃において測定した。
【0118】
透過率
ガラス基板上の、硬化されたポリシロキサンフィルムの、紫外-可視吸収スペクトル(250から800nm)を、オプティカルソリューション(Optical Solutions)PS-2ポータブルダイオードアレイ分光光度計システムを用いて求めた。自立の硬化されたポリシロキサンフィルムを、試料室に入れ、紫外-可視領域において200から800nmの範囲を走査した。参照およびバックグラウンド走査を、空の試料室を用いて空気中で実施した。パーセント透過率を、248nmの吸収から計算した。
【0119】
ジメチルシクロシロキサン:オクタメチルクロロテトラシロキサン(D4)を98重量%と、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)を2重量%含有する流体。
【0120】
メチル水素シクロシロキサン:2,4,6,8-テトラメチルシクロ-テトラシロキサン(DH4)を98重量%および2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン(DH5)を2重量%含有する流体。
【0121】
(実施例1)
ジメチルシクロシロキサン(267.3g、〜3.61molのD4)、メチル水素シクロシロキサン216.6g(〜3.61molのDH4)、および1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン9.97g(0.074mol)を、コンデンサ、撹拌機、および加熱マントルを装備したフラスコ中で混合した。混合物をTonsil(登録商標)Optimum粘土触媒5gにより処理した。混合物を撹拌しながら65℃に加熱し、この温度に2時間保持した。次いで、混合物を80℃に加熱し、混合物の29Si NMRスペクトルにおけるシクロシロキサンの、線状ポリシロキサンに対する一定の比率によって示される平衡に達するまで、この温度に保持した。混合物を室温になるまで放冷し、次いでグレード4ワットマン(Whatman)(登録商標)濾紙により濾過し、触媒を除去した。濾過物を、130℃、0.1mmHg(13.3Pa)の下でストリッピング(蒸溜)して、シクロシロキサンのほとんどを除去した。残渣は、29Si NMRによって求めた式HMe2SiO(Me2SiO)54(HMeSiO)51SiMe2Hを有する、ジメチル水素シロキシで末端処理されたポリ[ジメチルシロキサン-コ-(メチル水素シロキサン)]からなっていた。
【0122】
(実施例2)
1-オクテン(43.33g、0.39mol)および4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド47.94g(0.39mol)を、撹拌機、温度計、および滴下ロートを装備したフラスコ中で混合した。混合物を70℃に加熱し、アルミナ担持白金(0.5%)を3.83gフラスコに添加した。実施例1の、ジメチル水素シロキシで末端処理されたポリ[ジメチルシロキサン-コ-(メチル水素シロキサン)](100g、0.77molのケイ素結合水素原子)を、温度を100℃未満に維持することができるような速度で、混合物に添加した。反応の進行は、FT-IR分析のための混合物のアリコートを周期的に引き出すことにより監視した。2100から2200cm-1におけるSi-Hの吸収が、最早明白でなくなったとき、混合物を室温になるまで放冷した。混合物を膜(1μm)によって濾過して触媒を除去し、濾過物を、120℃の温度および0.05mmHg(6.7Pa)の圧力の下で、Pope Wiped-Film Stillに通して、29Si NMRによって求めた式:
【0123】
【化7】

【0124】
(式中、Rは-C8H17または
【0125】
【化8】

【0126】
であり、mは54であり、nは27であり、およびpは24である)を有するエポキシ官能性ポリシロキサンを得た。前式中、下付け文字m、n、およびpは、ポリシロキサン中の繰り返し(非末端)シロキサン単位の全モル数に基づく、モル分率を意味する。1.4537の屈折率、η20D、および419cS(419mm2/s)の粘度を有する無色の流体として、ポリシロキサンを得た。
【0127】
(実施例3)
29Si NMRによって求めた式:
【0128】
【化9】

【0129】
(式中、Rは-C8H17または
【0130】
【化10】

【0131】
であり、mは54であり、nは36であり、およびpは15である)を有するエポキシ官能性ポリシロキサンを、反応において1-オクテンを69.81g(0.62mol)および4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシドを23.41g(0.1885mol)使用したことを除いて、実施例2の方法によって調製した。前式中、下付け文字m、n、およびpは、ポリシロキサン中の繰り返し(非末端)シロキサン単位の全モル数に基づく、モル分率を意味する。1.4689の屈折率、η20D、および578cS(578mm2/s)の粘度を有する無色の流体として、ポリシロキサンを得た。
【0132】
(実施例4)
実施例3のエポキシ官能性ポリシロキサン(25g)を、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ビス[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]ジシロキサン[ケミカルアブストラクト登録番号18724-32-8]25gと完全に混合した。混合物の一部(3g)を、ジクロロメタン中の、(4-イソプロピルフェニル)(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[ケミカルアブストラクト登録番号47855-94-7]の10重量%溶液0.003gと混合した。得られた組成物を、測定棒を用いてテフロン(登録商標)基板に一様に塗布し、60μmの厚さを有するフィルムを形成した。このフィルムを、300mJ/cm2の線量で紫外線に曝露し、ポリシロキサンを硬化させた。硬化されたポリシロキサンをテフロン(登録商標)基板から引き剥がし、248nmにおける85.4%の透過率、632.8nmにおける1.474の屈折率、および1554nmにおける1.464の屈折率を有する、硬化された自立フィルムを得た。
【0133】
(実施例5)
硬化されたポリシロキサンフィルムを、組成物が、ジクロロメタン中の、ヨードニウム-[4-(1-メチルエチル)フェニル][4-メチルフェニル]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)]ボレートの10重量%溶液0.015gを含有していること、および紫外線の線量が100mJ/cm2であることを除いて、実施例4に記載された通りに調製した。自立した硬化されたポリシロキサンフィルムは、248nmにおいて72.3%の透過率を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式を有するエポキシ官能性ポリシロキサン
R7R12SiO ( R12SiO ) m ( R1R4SiO ) n ( R1R6SiO ) pSiR12R7
(式中、R1はC1からC3のアルキルまたはフェニルであり;R4は-CH2-CHR2R3(ここで、R2は脂肪族不飽和を含まないC2からC10のヒドロカルビルであり、R3はR1またはHである)であり;R6は-CH2-CHR3R5(ここで、R5はエポキシ基である)であり;R7はR1、R4、またはR6であり;mは0.1から0.9であり;nは0.1から0.5であり;pは0.1から0.6であり;m+n+p=1である)。
【請求項2】
次式を有するエポキシ官能性ポリシロキサン
( R7R12SiO1/2 ) v ( R12SiO2/2 ) w ( R4SiO3/2 ) x ( R6SiO3/2 ) y ( SiO4/2 ) z
(式中、R1はC1からC3のアルキルまたはフェニルであり;R4は-CH2-CHR2R3(ここで、R2は脂肪族不飽和を含まないC2からC10のヒドロカルビルであり、R3はR1またはHである)であり;R6は-CH2-CHR3R5(ここで、R5はエポキシ基である)であり;R7はR1、R4、またはR6であり;vは0から0.5であり;wは0.1から0.9であり;xは0.1から0.7であり;yは0.1から0.5であり、zは0から0.5であり、v+w+x+y+z=1である)。
【請求項3】
(A) (i)式R7R12SiO ( R12SiO ) m ( R1R4SiO ) n ( R1R6SiO ) pSiR12R7 (I)を有する、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリシロキサン、(ii)式( R7R12SiO1/2 )v( R12SiO2/2 )w( R4SiO3/2 )x( R6SiO3/2 )y( SiO4/2 )z (II)を有する、少なくとも1つのエポキシ官能性ポリシロキサン、および(iii) (i)および(ii)を含む混合物(式中、R1はC1からC3のアルキルまたはフェニルであり;R4は-CH2-CHR2R3(ここで、R2は脂肪族不飽和を含まないC2からC10のヒドロカルビルであり、R3はR1またはHである)であり;R6は-CH2-CHR3R5(ここで、R5はエポキシ基である)であり;R7はR1、R4、またはR6であり;mは0.1から0.9であり;nは0.1から0.5であり;pは0.1から0.6であり;m+n+p=1であり;vは0から0.5であり;wは0.1から0.9であり;xは0.1から0.7であり;yは0.1から0.5であり、zは0から0.5であり、v+w+x+y+z=1である)から選択されたポリシロキサン、および
(B)カチオン光開始剤
を含む、シリコーン組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の前記シリコーン組成物を紫外線に曝露することにより調製した、硬化されたポリシロキサン。
【請求項5】
ガラスファイバコアおよび前記コアを取り囲むクラッド(ここで、前記クラッドは、前記コアの屈折率を下回る屈折率を有する)を含む光ファイバと、
前記光ファイバを取り囲むシリコーン被覆(ここで、前記被覆は、本発明のシリコーン組成物を前記光ファイバに塗布してフィルムを形成し、前記フィルムを紫外線に曝露することによって調製した、硬化されたポリシロキサンを含む)と
を備えている、被覆された光ファイバ。
【請求項6】
ガラスファイバコアおよび前記コアを取り囲むクラッドを備え、前記クラッドが前記コアの屈折率を下回る屈折率を有する光ファイバに、本発明のシリコーン組成物を塗布してフィルムを形成する段階と、
前記フィルムを紫外線に曝露してシリコーン被覆を形成する段階と
を含む、被覆された光ファイバを調製する方法。
【請求項7】
前記ガラスファイバコア中に少なくとも1つのブラッググレーティングを書き込む段階をさらに含む、請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2008−536973(P2008−536973A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506454(P2008−506454)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/006189
【国際公開番号】WO2006/112943
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】